説明

RFIDタグ

【課題】電子レンジで過熱しても破壊されないRFIDタグを提供すること。
【解決手段】電子レンジでの加熱による破壊を防止するため、RFIDタグ200のICチップ210は、吸熱材に埋め込まれた構造を有する。また、アンテナ220は、一部が細くなった形状を有し、電子レンジが発生させる電磁波による共振によって高熱が発生しても、自らの熱で断線し、熱がICチップ210に伝わらないようになっている。さらに、アンテナ220には2.45GHzの電磁波を遮断するローパスフィルタ230が差し込まれ、電子レンジが発生させる電磁波による共振を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報を記憶するためのICチップと無線通信をおこなうためのアンテナとを有するRFIDタグに関し、特に、電子レンジで過熱しても破壊されないRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグの用途は、人やモノを識別・管理するしくみ及び、社会の自動化を推進する上での基盤技術として様々な検討が行われている。情報を記憶するためのICチップと、無線通信のためのアンテナとを備えるRFIDタグと(IC(Integrated Circuit))タグとも呼ばれる)、リーダライタと呼ばれるRFIDタグ内の情報を非接触で読み書きする装置によって、電波や電磁波で交信が行われている。
【0003】
RFIDタグの用途としては、例えば、商品の識別情報を記憶させたRFIDタグを出荷時に商品に付加し、従来のバーコードの代替として利用することが検討されている。RFIDタグは、記憶できる情報量が多い点、リーダライタによって同時に複数のRFIDタグの情報を読み取ることができる点、情報の書き換えが可能である点等においてバーコードよりも優れており、商品流通の効率化に貢献すると期待されている。
【0004】
また、特許文献1や特許文献2においては、調理食材の容器等にRFIDタグを付加し、食材の調理方法を記憶させておく用途が検討されている。これらの文献では、容器等に付加されたRFIDタグが記憶する調理方法を電子レンジが読み取り、読み取った情報に基づいて調理時間等を制御する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−317741号公報
【特許文献2】特開2005−242629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、RFIDタグを付加した食材を電子レンジで調理する場合、電子レンジが発生させる強い電磁波によってRFIDタグが破壊され、部材が飛び散って電子レンジを損傷させる危険性がある。現在一般的に使用されているRFIDタグを電子レンジで過熱すると、数秒で高熱を帯び、場合によってはICチップ等が破裂して金属成分が飛散することが分かっている。
【0007】
今後、商品流通においてRFIDタグの技術利用が一般化すると、様々な食品にRFIDタグが付加されることになると考えられる。その場合、調理方法を記憶したRFIDタグも食品と共に電子レンジで過熱される可能性が高くなり、この問題は非常に重大になる。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、電子レンジで過熱しても破壊されないRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、情報を記憶するためのICチップと無線通信をおこなうためのアンテナとを有するRFIDタグであって、前記ICチップが吸熱材中に埋め込まれた構造を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記吸熱材は、シリコン樹脂とセラミック樹脂の混合材であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記吸熱材は、シリカゲルを含むことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ICチップを吸熱材中に埋め込むように構成したので、ICチップの耐熱性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記アンテナは、一部が他の部分よりも細い形状となっていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、アンテナが共振によって発熱した場合に自らの熱で断線するように構成したので、ICチップにアンテナの熱が伝わることを回避することができる。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、マグネトロンが発生させる周波数帯の電磁波を遮断するローパスフィルタをさらに有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、マグネトロンが発生させる周波数帯の電磁波をローパスフィルタで遮断するように構成したので、マグネトロンが発生させる電磁波による共振を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ICチップを吸熱材中に埋め込むように構成したので、ICチップの耐熱性を向上させることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明によれば、アンテナが共振によって発熱した場合に自らの熱で断線するように構成したので、ICチップにアンテナの熱が伝わることを回避することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明によれば、マグネトロンが発生させる周波数帯の電磁波をローパスフィルタで遮断するように構成したので、マグネトロンが発生させる電磁波による共振を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るRFIDタグの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
まず、従来のRFIDタグについて説明する。図3は、従来のRFIDタグの概形を示すサンプル図である。同図に示すように、RFIDタグ100は、ICチップ110と、アンテナ120とを有する。ICチップ110は、情報を記憶するためのメモリと、リーダライタとの通信を制御するための制御回路とを有する半導体回路である。アンテナ120は、リーダライタとの間で無線通信をおこなうためのアンテナである。
【0022】
このRFIDタグ100を電子レンジに入れて加熱すると、電子レンジに組み込まれているマグネトロンが発生させる2.45GHzの電磁波にアンテナ120が共振し、高熱と放電を生じさせる。そして、この高熱と放電は、ICチップ110に伝わってこれを破壊させ、場合によっては、破壊されたICチップの破片が電子レンジ内に飛散することになる。
【0023】
加熱を開始してからICチップ110が破壊されるまでの時間は数秒であり、電子レンジにて食品を調理するための時間よりも短い。このため、従来のRFIDタグが付加されたままの状態で食品を電子レンジで加熱した場合、調理が完了する前にRFIDタグが破壊され、電子レンジを破損させる可能性がある。
【0024】
次に、本実施例に係るRFIDタグについて説明する。図1は、本実施例に係るRFIDタグの概形を示すサンプル図である。同図に示すように、RFIDタグ200は、ICチップ210と、アンテナ220と、ローパスフィルタ230とを有する。
【0025】
ICチップ210は、情報を記憶するためのメモリと、リーダライタとの通信を制御するための制御回路とを有する半導体回路であり、機能的にはICチップ110と同様であるが、図2に示すように、吸熱材中に埋め込まれた構造となっている。このように、ICチップ210の周りを吸熱材で埋め固めることにより、熱への耐性が向上し、破壊され難くなる。
【0026】
吸熱材としては、例えば、シリコン樹脂、セラミック樹脂、もしくは、これらの混合材が有効である。また、これらの樹脂ないし混合材にシリカゲルを加えることにより、耐熱性をさらに向上させることもできる。
【0027】
アンテナ220は、リーダライタとの間で無線通信をおこなうためのアンテナであり、機能的にはアンテナ120と同様であるが、一部が他の部分よりも細くなった形状を有している。電子レンジにてRFIDタグ200を加熱すると、高熱と放電によってこの細くなった部分が断線し、ICチップ110へ熱が伝わることを回避することができる。なお、予めアンテナ220の一部を断線させておいても同様の効果が得られる。
【0028】
ローパスフィルタ230は、2.45GHzの電磁波を遮断するローパスフィルタである。このローパスフィルタ230をアンテナ220の途中に差し込むことにより、マグネトロンが発生させる電磁波に対してアンテナ220が共振し難くなる。ローパスフィルタ230は、例えば、約1ミリ角のセラミック素材で実現することができる。
【0029】
上述してきたように、本実施例では、アンテナにローパスフィルタを差し込むことにより共振の発生を抑え、アンテナの形状を断線しやすい形状とすることによりICチップに熱が伝わり難くし、さらに、ICチップを吸熱材中に埋め込むことにより耐熱性が向上するように構成したので、電子レンジで過熱しても破壊されないRFIDタグを実現することができる。
【0030】
(付記1)情報を記憶するためのICチップと無線通信をおこなうためのアンテナとを有するRFIDタグであって、
前記ICチップが吸熱材中に埋め込まれた構造を有することを特徴とするRFIDタグ。
【0031】
(付記2)前記吸熱材は、シリコン樹脂であることを特徴とする付記1に記載のRFIDタグ。
【0032】
(付記3)前記吸熱材は、セラミック樹脂であることを特徴とする付記1に記載のRFIDタグ。
【0033】
(付記4)前記吸熱材は、シリコン樹脂とセラミック樹脂の混合材であることを特徴とする付記1に記載のRFIDタグ。
【0034】
(付記5)前記吸熱材は、シリカゲルを含むことを特徴とする付記2〜4のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【0035】
(付記6)前記アンテナは、一部が他の部分よりも細い形状となっていることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【0036】
(付記7)マグネトロンが発生させる周波数帯の電磁波を遮断するローパスフィルタをさらに有することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るRFIDタグは、食品等の商品に関する情報の記憶に有用であり、特に、電子レンジで過熱しても破壊されないことが必要な場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施例に係るRFIDタグの概形を示すサンプル図である。
【図2】本実施例に係るRFIDタグにおけるICチップの加工例を示すサンプル図である。
【図3】従来のRFIDタグの概形を示すサンプル図である。
【符号の説明】
【0039】
100 RFIDタグ
110 ICチップ
120 アンテナ
200 RFIDタグ
210 ICチップ
220 アンテナ
230 ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するためのICチップと無線通信をおこなうためのアンテナとを有するRFIDタグであって、
前記ICチップが吸熱材中に埋め込まれた構造を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記吸熱材は、シリコン樹脂とセラミック樹脂の混合材であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記吸熱材は、シリカゲルを含むことを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記アンテナは、一部が他の部分よりも細い形状となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のRFIDタグ。
【請求項5】
マグネトロンが発生させる周波数帯の電磁波を遮断するローパスフィルタをさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−164528(P2007−164528A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360851(P2005−360851)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】