説明

RFIDタグ

【課題】回路チップへの曲げ応力が低減されるとともにアンテナの断線も回避されるRFIDタグを提供する。
【解決手段】ベース111と、そのベース111上に配線された通信用のアンテナ112と、そのアンテナ112に電気的に接続された、そのアンテナ112を介して無線通信を行う回路チップ113と、その回路チップ113の周囲および上記アンテナ112の配線の一部を覆うチップ補強体114と、ベース111、アンテナ112、回路チップ113、およびチップ補強体114を被覆する、そのチップ補強体114の柔軟性に勝る柔軟性を有する被覆体120とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で外部機器と情報のやり取りを行なうRFID(Radio_Frequency_IDentification)タグに関する。尚、本願技術分野における当業者間では、本願明細書で使用する「RFIDタグ」のことを、「無線ICタグ」と称する場合もある。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダライタに代表される外部機器と、電波によって非接触で情報のやり取りを行なう種々のRFIDタグが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照)。このRFIDタグの一種として、プラスチックや紙からなるベースシート上に電波通信用のアンテナパターンと回路チップが搭載された構成のものが提案されており、このようなタイプのRFIDタグについては、物品などに取り付けられ、その物品に関する情報を外部機器とやり取りすることで物品の識別などを行なうという利用形態が考えられている。
【0003】
RFIDタグの利用形態の中には、例えば衣服のように変形し易い物品に取り付けるという形態があるが、このような利用形態においては、ベースシートの曲がり易さに対して回路チップが曲がり難いために曲げ応力が回路チップにかかり、回路チップが割れることや回路チップが剥がれること等が大きな問題の1つとなっている。そこで、従来、回路チップの周辺部分を含んでその回路チップを硬質の補強体等で覆うことでRFIDタグの変形が回路チップの周辺に及ぶことを防ぎ、これにより回路チップにかかる曲げ応力の低減を図る等といった技術が提案されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のRFIDタグの第1実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のRFIDタグの第2実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明のRFIDタグの第3実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明のRFIDタグの第4実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明のRFIDタグ製造方法の一実施形態である、図4に示す第4実施形態のRFIDタグ400を製造するためのRFIDタグ製造方法を示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートにおける準備過程(ステップS110)の詳細を示す図である。
【図7】図5のフローチャートにおける被覆過程(ステップS120)の詳細を示す図である。
【図8】本発明のRFIDタグの第5実施形態を示す模式図である。
【図9】図8のRFIDタグ900を製造する製造方法を示す図である。
【図10】本発明のRFIDタグの第6実施形態を示す模式図である。
【図11】図10のRFIDタグ1000を製造する製造方法を示す図である。
【図12】本発明のRFIDタグの第7実施形態を示す模式図である。
【図13】図12のRFIDタグ1100の製造方法における被覆過程の詳細を示す図である。
【図14】本発明のRFIDタグの第8実施形態を示す模式図である。
【図15】図14のRFIDタグ1200の製造方法における被覆過程の詳細を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
まず、本発明のRFIDタグの第1実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明のRFIDタグの第1実施形態を示す模式図である。
【0028】
この図1のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第1実施形態であるRFIDタグ100の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ100の長手方向の断面図が示されている。
【0029】
この図1に示すRFIDタグ100は、衣服のように変形し易く人間が身につける物品に取り付けられることを前提としたRFIDタグであり、PETフィルムで形成されたベース111と、そのベース111上に配線された通信用のアンテナ112と、そのアンテナ112に電気的に接続されて、そのアンテナ112を介して無線通信を行う回路チップ113と、その回路チップ113の周囲を覆う繊維強化樹脂製のチップ補強体114とを備えたインレイ110が、ゴム製の被覆体120で被覆された構成を有している。また、回路チップ113は、アンテナ112に電気的に接続されると共に接着剤113aでベース111に接着固定されている。さらに、チップ補強体114は、図1に示すように内部に回路チップ113が収納されるようにベース111上に配置されており、そのベース111には熱硬化性の接着剤115で接着固定されている。また、この接着剤115は、チップ補強体114と回路チップ113との間にも充填されている。ここで、ベース111、アンテナ112、回路チップ113、チップ補強体114、インレイ110、および被覆体120は、それぞれ本発明にいうベース、アンテナ、回路チップ、チップ補強体、インレイ、および被覆体の各一例に相当する。
【0030】
RFIDタグ100では、そのRFIDタグ100が例えば衣服に取り付けられたときにその衣服の変形が、回路チップ113自体や回路チップ113の周辺に及ぶことが、繊維強化樹脂という硬い物質で形成されたチップ補強体114でその回路チップ113の周囲を覆うことで防がれている。これにより、回路チップ113自体や回路チップ113とアンテナ112との接続部分や回路チップ113とベース111との接着部分が破損してしまうこと等が防がれている。
【0031】
ここで、RFIDタグ100では、チップ補強体114によって保護される範囲が回路チップ113の近辺に限られている。そのため、PETフィルムで形成され柔軟性を有するベース111は、チップ補強体114による保護範囲外の広い範囲において自由度を残している。また、RFIDタグ100は、上述したように柔らかいゴム製の被覆体120で被覆されている。これにより、接着剤115の縁とアンテナ112とが交わる部分が、柔軟な被覆体120によって被覆されていることから、この部分への曲げ応力の集中が抑制され、これによりアンテナ112の断線が回避されることとなる。つまり、この図1のRFIDタグ100では、回路チップへの曲げ応力が低減されるとともにアンテナの断線も回避される。
【0032】
また、このRFIDタグ100は、チップ補強体114によって保護されている回路チップ113の近辺を除いた広い範囲で、このRFIDタグ100が取り付けられた例えば衣服等といった物品の変形に従動して変形することができる。また、このRFIDタグ100が直接に人間に触れるような場合であっても、このRFIDタグ100が柔らかい被覆体120で全体的に被覆されているので、硬いチップ補強体114が人間に触れることが回避される。さらに、このRFIDタグ100では、万が一このRFIDタグ100が破損したとしても、このRFIDタグ100を全体的に覆っている被覆体120が存在するので、破片等が人間を傷つけることが防がれている。つまり、この図1のRFIDタグ100は、過酷な環境への耐性を持たせつつも人間への配慮がなされた構成となっている。
【0033】
次に、本発明のRFIDタグの第2実施形態について説明する。
【0034】
図2は、本発明のRFIDタグの第2実施形態を示す模式図である。
【0035】
この図2のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第2実施形態であるRFIDタグ200の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ200の長手方向の断面図が示されている。
【0036】
尚、この図2では、上述した図1に示す第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0037】
本実施形態のRFIDタグ200は、インレイ210が、第1実施形態のチップ補強体114とは形状が異なるチップ補強体211を有している。この図2に示すインレイ210およびチップ補強体211も、それぞれ本発明にいうインレイおよびチップ補強体の各一例に相当する。
【0038】
この図2に示すチップ補強体211は、図1に示す第1実施形態のチップ補強体114における天井部分が除かれて、回路チップ113の上方が解放された形状となっている。このチップ補強体211でも、RFIDタグ200の変形が回路チップ113の周辺に及ぶことが十分に防がれ、また、接着剤115の縁とアンテナ112とが交わる部分が柔軟な被覆体120によって被覆されていることからアンテナ112の断線が回避される。さらに、回路チップ113の上方が解放されているので、図1のチップ補強体114における天井部分に相当する分だけRFIDタグ200の薄型化が図られている。
【0039】
このように図2に示すRFIDタグ200は、第1実施形態のRFIDタグ100においてなされている回路チップの保護やアンテナの断線の回避等はそのままに薄型化が図られた構成となっている。
【0040】
次に、本発明のRFIDタグの第3実施形態について説明する。
【0041】
図3は、本発明のRFIDタグの第3実施形態を示す模式図である。
【0042】
この図3のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第3実施形態であるRFIDタグ300の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ300の長手方向の断面図が示されている。
【0043】
尚、この図3でも、上述した図1に示す第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0044】
本実施形態のRFIDタグ300は、インレイ310が、図2示す第2実施形態のチップ補強体211と同等なチップ補強体311と、そのチップ補強体311に対しベース111を挟んで位置する裏側補強体312とを有している。この図3に示すインレイ310およびチップ補強体は、それぞれ本発明にいうインレイおよびチップ補強体の各一例に相当し、また、上記の裏側補強体312は、本発明にいう裏側補強体の一例に相当する。
【0045】
この裏側補強体312は、チップ補強体311と同様に繊維強化樹脂で形成されたものであり、チップ補強体311をベース111に接着している接着剤115と同じ熱硬化性の接着剤115でベース111の裏面に接着固定されている。また、本実施形態では、この裏側補強体312の形状は、回路チップ113を収納するための孔が設けられていないことを除いて、チップ補強体311の形状と同じである。
【0046】
この図3に示すRFIDタグ300は、上記の第2実施形態においてなされているアンテナの断線の回避等はそのままに、回路チップの保護がこの裏側補強体312によって強化された構成となっている。
【0047】
次に、本発明のRFIDタグの第4実施形態について説明する。
【0048】
図4は、本発明のRFIDタグの第4実施形態を示す模式図である。
【0049】
この図4のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第4実施形態であるRFIDタグ400の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ400の長手方向の断面図が示されている。
【0050】
尚、この図4でも、上述した図1に示す第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0051】
本実施形態のRFIDタグ400は、インレイ410が、図2示す第2実施形態のチップ補強体211と同等なチップ補強体411を有し、そのチップ補強体411に対しベース111を挟む、このインレイ410の裏側の位置に裏側補強体420を有している。ただし、本実施形態における裏側補強体420は、上記の第3実施形態とは異なり、ベース111からは離されている。また、この本実施形態における裏側補強体410は、第3実施形態のようにチップ補強体に対して同材質同形状ではなく、曲げに対して柔軟性を有するが延びを抑制するプラスチックシートで形成されており、チップ補強体411よりも若干広い範囲を保護するような広めの形状となっている。この裏側補強体420とベース111との間にはゴム製の被覆体120が延在している。この図4に示すインレイ410およびチップ補強体411は、それぞれ本発明にいうインレイおよびチップ補強体の各一例に相当し、また、上記の裏側補強体420は、本発明にいう裏側補強体の一例に相当する。
【0052】
この図4に示すRFIDタグ400も、第3実施形態のRFIDタグ300と同様にアンテナの断線の回避等はそのままに、回路チップの保護が裏側補強体420によって強化された構成となっている。
【0053】
次に、本発明のRFIDタグ製造方法の一実施形態について説明する。
【0054】
尚、以下では、本発明のRFIDタグ製造方法の一実施形態として、図4に示す第4実施形態のRFIDタグ400を製造するためのRFIDタグ製造方法を説明する。ここでは、図4に示す構成要素については特に図番を断らずに参照する。
【0055】
図5は、本発明のRFIDタグ製造方法の一実施形態である、図4に示す第4実施形態のRFIDタグ400を製造するためのRFIDタグ製造方法を示すフローチャートである。
【0056】
この図5のフローチャートが示すRFIDタグ製造方法は、インレイ410を用意する準備過程(ステップS110)と、インレイ410を被覆する被覆過程(ステップS120)とを有する。ここで、準備過程(ステップS110)と被覆過程(ステップS120)とは、それぞれ本発明にいう準備過程と被覆過程との各一例に相当する。
【0057】
まず、準備過程(ステップS110)について説明する。
【0058】
図6は、図5のフローチャートにおける準備過程(ステップS110)の詳細を示す図である。
【0059】
この準備過程では、まず、表面にアンテナ112が形成されたベース111に回路チップ113が搭載される(ステップS111)。この回路チップ113の搭載については、公知であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
ステップS111において回路チップ113が搭載されると、次に、ディスペンサ400が熱硬化性の接着剤115を、その接着剤115に回路チップ113が埋まるようにベース111上に塗布する(ステップS112)。次に、マウントツール500がチップ補強体411を回路チップ113の直上まで運び、そのチップ補強体411を、そのチップ補強体411に回路チップ113が収納されるようにベース111上に載せる(ステップS113)。そして、熱源600が熱硬化性の接着剤115を加熱することでこの接着剤115の硬化が行われてインレイ410が完成する(ステップS114)。
【0061】
次に、図5のフローチャートに示す被覆過程(ステップS120)について説明する。
【0062】
図7は、図5のフローチャートにおける被覆過程(ステップS120)の詳細を示す図である。
【0063】
この被覆過程では、1回の処理で3個のRFIDタグ400についての被覆が実行される。
【0064】
この被覆過程では、プレスステージ710とプレスヘッド720とで対象物を挟んで、その対象物を加圧および加熱するプレス装置700が使われる。
【0065】
上記の準備過程(ステップS110)でインレイ410が得られると、次のような加圧および加熱処理が実行される(ステップS121)。
【0066】
まず、プレスステージ710上に、インレイ410を被覆する被覆体120を形成する4枚のゴムシート121,…,124のうちの最下層のゴムシート121が載せられ、その最下層のゴムシート121の上に、上記の裏側補強体420が3個並べられる。続いて、下から2層目のゴムシート122が3個の裏側補強体420の上に重ねられ、そのゴムシート122を挟んで、3個の裏側補強体420それぞれに対向する位置に3個のインレイ410が置かれる。次に、下から3層目のゴムシート123が3個のインレイ410の上に重ねられるが、ここで、図7に示すように、この下から3層目のゴムシート123には、各インレイ410におけるチップ補強体411が収まる孔が設けられており、このゴムシート123は各孔に各チップ補強体411が収まるように置かれる。この下から3層目のゴムシート123は、本発明にいうスペーサの一例に相当する。そして、最後に、この3層目のゴムシート123の上に最上層のゴムシート124が重ねられる。
【0067】
このように、プレスステージ710上に、4枚のゴムシート121,…,124と裏側補強体420とインレイ410とが置かれると、プレスヘッド720が、最上層のゴムシート124の上に降下する。そして、プレス装置700では、プレスステージ710とプレスヘッド720とで挟まれた4枚のゴムシート121,…,124と裏側補強体420とインレイ410とが加圧および加熱される。この加圧および加熱によって、4枚のゴムシート121,…,124が、内部に3個分のRFIDタグ400の裏側補強体420とインレイ410とが埋め込まれた状態で一体化され、裏側補強体420とインレイ410とがゴム製の被覆体120で被覆されたRFIDタグ400が3個繋がったものが形成される。
【0068】
ステップS121の処理に続いて、各インレイ410の間にカッター800が降下して3つに裁断されて、RFIDタグ400が3個得られる(ステップS122)。
【0069】
以上に説明したRFIDタグ製造方法によれば、過酷な環境への耐性を持たせつつも人間への配慮がなされた構成を有する、図3にも示したRFIDタグ400を容易に製造することができる。また、このRFIDタグ製造方法では、この図7に示すステップS121の処理において、チップ補強体411が収まる孔が設けられた上記の下から3層目のゴムシート123が使われ、インレイ410の突起をなすチップ補強体411の周辺がこのゴムシート123で埋められることで、最終的に得られるRFIDタグ400の形状の平坦化が図られている。
【0070】
次に、本発明のRFIDタグの第5実施形態について説明する。
【0071】
図8は、本発明のRFIDタグの第5実施形態を示す模式図である。
【0072】
この図8のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第5実施形態であるRFIDタグ900の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ900の長手方向の断面図が示されている。
【0073】
尚、この図5でも、上述した図1に示す第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0074】
本実施形態のRFIDタグ900は、上述の第1から第4実施形態のいずれもが備えていた繊維強化樹脂製のチップ補強体や被覆体を備えておらず、回路チップ113がエポキシ系の硬質ポッティング剤901で覆われ、その硬質ポッティング剤901の縁がゴム系の柔軟な接着剤902で全周にわたって被覆されている。ここで、硬質ポッティング剤901は、本発明にいうチップ補強体の一例に相当し、柔軟な接着剤902は、本発明にいう縁被覆体の一例に相当する。
【0075】
本実施形態のRFIDタグ900では、硬質ポッティング剤901によって回路チップ113の保護が図られている。さらに、本発明にいう「チップ補強体の縁」の一例に相当する硬質ポッティング剤901の縁が、柔軟な接着剤902によって、その縁とアンテナ112とが交わる部分を含んで全周にわたって被覆されていることから、この部分への曲げ応力の集中が抑制され、これによりアンテナ112の断線が回避されることとなる。つまり、この図8のRFIDタグ900でも、回路チップへの曲げ応力が低減されるとともにアンテナの断線も回避される。
【0076】
次に、この図8のRFIDタグ900を製造する製造方法について説明する。尚、ここでは、図8に示す構成要素については特に図番を断らずに参照する。
【0077】
図9は、図8のRFIDタグ900を製造する製造方法を示す図である。
【0078】
この製造方法では、まず、表面にアンテナ112が形成されたベース111に回路チップ113が搭載される(ステップS201)。この回路チップ113の搭載については、公知であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0079】
ステップS201において回路チップ113が搭載されると、次に、ディスペンサ400が熱硬化性の硬質ポッティング剤901を、その硬質ポッティング剤901に回路チップ113が埋まるようにベース111上に塗布し(ステップS202)、熱源600が熱硬化性の硬質ポッティング剤901を加熱することでこの硬質ポッティング剤901の硬化が行われる(ステップS203)。続いて、ディスペンサ400が熱硬化性の柔軟な接着剤902を、硬質ポッティング剤901の縁を覆うように塗布する(ステップS203)。そして、熱源600が熱硬化性の柔軟な接着剤902を加熱することでこの柔軟な接着剤902の硬化が行われてRFIDタグ900が完成する(ステップS205)。
【0080】
このような一連の処理により、図8のRFIDタグ900が簡単に製造される。
【0081】
次に、本発明のRFIDタグの第6実施形態について説明する。
【0082】
図10は、本発明のRFIDタグの第6実施形態を示す模式図である。
【0083】
この図10のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第6実施形態であるRFIDタグ1000の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ1000の長手方向の断面図が示されている。
【0084】
尚、この図10では、上述した図2に示す第2実施形態の構成要素と同等な構成要素については図2と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0085】
本実施形態のRFIDタグ1000は、上述の第2実施形態が備えている被覆体を備えておらず、チップ補強体211の縁がゴム系の柔軟な接着剤1002で全周にわたって被覆されている。また、この柔軟な接着剤1002は、チップ補強体211をベース111に接着固定する役割も担っている。さらに、このRFIDタグ1000では、チップ補強体211の内側に、回路チップ113を覆うようにエポキシ系の硬質ポッティング剤1001が充填されている。ここで、チップ補強体211は、本発明にいうチップ補強体の一例に相当し、柔軟な接着剤1002は、本発明にいう縁被覆体の一例に相当する。
【0086】
本実施形態のRFIDタグ1000では、チップ補強体211によって回路チップ113の保護が図られている。また、硬質ポッティング剤1001の充填によってこの回路チップ113の保護の強化も図られている。さらに、本発明にいう「チップ補強体の縁」の一例に相当するチップ補強体211の縁が、柔軟な接着剤1002によって、その縁とアンテナ112とが交わる部分を含んで全周にわたって被覆されていることから、この部分への曲げ応力の集中が抑制され、これによりアンテナ112の断線が回避されることとなる。つまり、この図10のRFIDタグ1000でも、回路チップへの曲げ応力が低減されるとともにアンテナの断線も回避される。
【0087】
次に、この図10のRFIDタグ1000を製造する製造方法について説明する。尚、ここでは、図10に示す構成要素については特に図番を断らずに参照する。
【0088】
図11は、図10のRFIDタグ1000を製造する製造方法を示す図である。
【0089】
この製造方法でも、まず、表面にアンテナ112が形成されたベース111に回路チップ113が搭載される(ステップS301)。この回路チップ113の搭載については、公知であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0090】
ステップS301において回路チップ113が搭載されると、次に、ディスペンサ400が熱硬化性の柔軟な接着剤1002を、回路チップ113の周囲を囲むようにベース111上に塗布する(ステップS302)。次に、マウントツール500がチップ補強体211を回路チップ113の直上まで運び、そのチップ補強体211を、そのチップ補強体211に回路チップ113が収納されるようにベース111上に載せる(ステップS303)。そして、熱源600が熱硬化性の柔軟な接着剤1002を加熱することでこの柔軟な接着剤1002の硬化が行われてチップ補強体211がベース111に接着固定される(ステップS304)。続いて、ディスペンサ400が、熱硬化性の硬質ポッティング剤1001を、チップ補強体211の内側に回路チップ113を覆うように充填し(ステップS305)、熱源600が熱硬化性の硬質ポッティング剤1001を加熱することでこの硬質ポッティング剤1001の硬化が行われてRFIDタグ1000が完成する(ステップS306)。
【0091】
このような一連の処理により、図10のRFIDタグ1000が簡単に製造される。
【0092】
次に、本発明のRFIDタグの第7実施形態について説明する。
【0093】
図12は、本発明のRFIDタグの第7実施形態を示す模式図である。
【0094】
この図12のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第7実施形態であるRFIDタグ1100の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ1100の長手方向の断面図が示されている。
【0095】
尚、この図12では、上述した図1に示す第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0096】
本実施形態のRFIDタグ1100では、インレイ1110が、第1実施形態のチップ補強体114とは形状が異なるチップ補強体1111を有しているとともに、チップ補強体1111が、ベース111、アンテナ112、および回路チップ113とは非接触で被覆体1120中に埋っている。この図12に示すインレイ1110、チップ補強体1111、および被覆体1120も、それぞれ本発明にいうインレイ、チップ補強体、および被覆体の各一例に相当する。
【0097】
この図12に示すチップ補強体1111は、ベース112に接着固定されておらず、回路チップ113の上方に浮いた状態で配置されている。このチップ補強体1111も、RFIDタグ1100の変形の回路チップ113周辺への伝播を妨げ、これにより、この回路チップ113の剥がれや破損等を防いでいる。さらに、本実施形態では、チップ補強体1111がアンテナ112に触れていないことからこのアンテナ112への局所的な応力の集中がなくアンテナ112の断線が回避される。
【0098】
次に、この図12のRFIDタグ1100を製造する製造方法について説明する。尚、ここでは、図12に示す構成要素については特に図番を断らずに参照する。
【0099】
この製造方法では、表面にアンテナ112が形成されたベース111に回路チップ113が搭載された後、インレイ1110を被覆する被覆過程がチップ補強体1111の配置とともに行われる。
【0100】
図13は、図12のRFIDタグ1100の製造方法における被覆過程の詳細を示す図である。
【0101】
この図13では、1個のRFIDタグ1100を対象とした被覆過程が示されている。
【0102】
以下に説明する被覆過程では、上述の図7に示すプレス装置700と同じプレス装置が使われる。このため、この図13では、このプレス装置が図7と同じ符号を付して示されている。
【0103】
まず、プレスステージ710上に、チップ補強体1111を除くインレイ1110の一部1112と、被覆体1120を形成する3枚のゴムシート1121,…,1123と、チップ補強体1111とが次のように置かれる(ステップS401)。まず、プレスステージ710上に、3枚のゴムシート1121,…,1123のうちの最下層のゴムシート1121が載せられ、その最下層のゴムシート1121の上に、インレイ1110の一部1112が載せられる。続いて、下から2層目のゴムシート1122がそのインレイ1110の一部1112の上に重ねられ、そのゴムシート1122を挟んで、回路チップ113と対向する位置にチップ補強体1111が載せられる。そして、最後に、最上層のゴムシート1123が重ねられる。
【0104】
このように、プレスステージ710上に、インレイ1110の一部1112と、被覆体1120を形成する3枚のゴムシート1121,…,1123と、チップ補強体1111とが置かれると、プレスヘッド720が最上層のゴムシート1123の上に降下し、プレスステージ710とプレスヘッド720とで挟まれた3枚のゴムシート1121,…,1123とインレイ1110の一部1112とチップ補強体1111が加圧および加熱されて一体化される(ステップS402)。この一体化により、図12にも示すRFIDタグ1100が完成する。
【0105】
このような一連の処理により、図12のRFIDタグ1100が簡単に製造される。
【0106】
次に、本発明のRFIDタグの第8実施形態について説明する。
【0107】
図14は、本発明のRFIDタグの第8実施形態を示す模式図である。
【0108】
この図14のパート(a)には、本発明のRFIDタグの第8実施形態であるRFIDタグ1200の上面図が、内部構造が透視された状態で示されており、パート(b)には、このRFIDタグ1200の長手方向の断面図が示されている。
【0109】
尚、この図14では、上述した図12に示す第7実施形態の構成要素と同等な構成要素については図12と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
【0110】
本実施形態のRFIDタグ1200では、インレイ1210が、図12示す第7実施形態のインレイ1110に、チップ補強体1111に対しベース111を挟んでそのベース111から離れて位置する裏側補強体1211を加えた構造を有している。この図14に示すインレイ1210および裏側補強体1211は、それぞれ本発明にいうインレイおよび裏側補強体の各一例に相当する。また、本実施形態における被覆体1220は、インレイ1210と裏側補強体1211との間にも入り込んでいる。この被覆体1220は、本発明にいう被覆体の一例に相当する。
【0111】
この図3に示すRFIDタグ1200は、上記の第7実施形態においてなされているアンテナの断線の回避等はそのままに、回路チップの保護がこの裏側補強体1211によって強化された構成となっている。
【0112】
次に、この図14のRFIDタグ1200を製造する製造方法について説明する。尚、ここでは、図14に示す構成要素については特に図番を断らずに参照する。
【0113】
この製造方法では、表面にアンテナ112が形成されたベース111に回路チップ113が搭載された後、インレイ1220を被覆する被覆過程が、チップ補強体1111および裏側補強体1211の配置とともに行われる。
【0114】
図15は、図14のRFIDタグ1200の製造方法における被覆過程の詳細を示す図である。
【0115】
この図15でも、1個のRFIDタグ1200を対象とした被覆過程が示されている。
【0116】
以下に説明する被覆過程では、上述の図7や図13に示すプレス装置700と同じプレス装置が使われる。このため、この図15でも、このプレス装置が図7や図13と同じ符号を付して示されている。
【0117】
まず、プレスステージ710上に、チップ補強体1111および裏側補強体1211を除くインレイ1210の一部1212と、被覆体1220を形成する4枚のゴムシート1221,…,1224と、チップ補強体1111と、裏側補強体1211とが次のように置かれる(ステップS501)。まず、プレスステージ710上に、4枚のゴムシート1221,…,1224のうちの最下層のゴムシート1221が載せられ、その最下層のゴムシート1221の上に、裏側補強体1211が載せられる。続いて、下から2層目のゴムシート11222がその裏側補強体1211の上に重ねられ、そのゴムシート1222を挟んで、その裏側補強体1211と回路チップ113とが互いに対向する位置にインレイ1210の一部1212が載せられる。次に、下から3層目のゴムシート1223がインレイ1210の一部1212の上に重ねられ、そのゴムシート1222を挟んで回路チップ113と対向する位置にチップ補強体1111が載せられる。そして、最後に、最上層のゴムシート1224が重ねられる。
【0118】
このように、プレスステージ710上に、チップ補強体1111および裏側補強体1211を除くインレイ1210の一部1212と、被覆体1220を形成する4枚のゴムシート1221,…,1224と、チップ補強体1111と、裏側補強体1211とが置かれると、プレスヘッド720が最上層のゴムシート1224の上に降下し、プレスステージ710とプレスヘッド720とで挟まれた4枚のゴムシート1221,…,1224とインレイ1210の一部1212とチップ補強体1111と裏側補強体1211が加圧および加熱されて一体化される(ステップS502)。この一体化により、図14にも示すRFIDタグ1200が完成する。
【0119】
このような一連の処理により、図14のRFIDタグ1200が簡単に製造される。
【0120】
尚、上記では、本発明にいうチップ補強体の一例として、繊維強化樹脂製のチップ補強体114を例示し、繊維強化樹脂の種類については特定しなかったが、本発明のチップ補強体を形成する繊維強化樹脂は、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics)であっても良く、ガラスエポキシ樹脂等であっても良い。また、本発明にいうチップ補強体は、このような繊維強化樹脂製に限るものではなく、例えば熱可塑性プラスチック製であっても良く、あるいは、熱硬化性樹脂製等であっても良い。
【0121】
また、上記では、チップ補強体114をベース111に接着固定する接着剤として、熱硬化性の接着剤を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、この接着剤は、紫外線硬化性の接着剤であっても良く、あるいは、嫌気性の接着剤であっても良く、あるいは、湿気硬化性の接着剤であっても良く、あるいは、2液式の接着剤等であっても良い。
【0122】
また、上記では、本発明にいう裏側補強体の一例のうち、インレイの裏面に接着固定されるタイプの裏側補強体の一例として、繊維強化樹脂製の裏側補強体312を例示し、繊維強化樹脂の種類については特定しなかったが、このタイプの裏側補強体を形成する繊維強化樹脂は、例えばFRPであっても良く、ガラスエポキシ樹脂等であっても良い。また、上記のタイプの裏側補強体は、このような繊維強化樹脂製に限るものではなく、例えば熱可塑性プラスチック製であっても良く、あるいは、熱硬化性樹脂製等であっても良い。
【0123】
また、上記では、本発明にいう裏側補強体の一例のうち、インレイから離して配置されるタイプの裏側補強体の一例として、プラスチックシート製の裏側補強体420を例示したが本発明はこれに限るものではなく、このインレイから離して配置されるタイプの裏側補強体は、例えばナイロン(登録商標)製の網で形成されたもの等であっても良い。
【0124】
また、上記では、本発明にいう被覆体の一例として、ゴム製の被覆体120を例示し、特にゴムの種類は特定しなかったが、本発明の被覆体を形成するゴムは、例えば、ウレタン系ゴムであっても良く、あるいは、シリコーン系ゴムであっても良く、あるいは、フッ素系ゴムであっても良い。
【0125】
また、上記では、本発明にいうチップ補強体の一例として、回路チップが収納される孔が設けられたチップ補強体114示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明のチップ補強体は、例えば、そのような孔は設けられておらず単に板状の外形を有し、回路チップの上側を覆うように配置されるもの等であっても良い。
【0126】
また、上記では、本発明にいう縁被覆体の一例として、ゴム系の柔軟な接着剤を例示し、特にゴムの種類は特定しなかったが、本発明の縁被覆体を形成するゴムは、例えば、ウレタン系ゴムであっても良く、あるいは、シリコーン系ゴムであっても良い。
【0127】
また、上記では、本発明にいう縁被覆体の一例として、本発明にいうチップ補強体の一例に相当する硬質ポッティング剤901やチップ補強体211の縁を全周にわたって被覆する柔軟な接着剤を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の縁被覆体は、例えば、上記の縁のうちアンテナと交わる部分のみを被覆するもの等であっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に配線された通信用のアンテナと、
前記アンテナに電気的に接続された、該アンテナを介して無線通信を行う回路チップと、
前記回路チップの少なくとも周囲および前記アンテナの配線の一部を、前記ベースを下としたときの少なくとも上方については覆うチップ補強体と、
前記ベース、前記アンテナ、前記回路チップ、および前記チップ補強体を被覆する、該チップ補強体の柔軟性に勝る柔軟性を有する被覆体とを備えたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記チップ補強体が、前記ベース、前記アンテナ、および前記回路チップとは非接触で前記被覆体中に埋ったものであることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記チップ補強体に対し前記ベースを挟んで位置する、該ベースとは非接触で前記被覆体中に埋った裏側補強体を備えたことを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項4】
ベースと、
前記ベース上に配線された通信用のアンテナと、
前記アンテナに電気的に接続された、該アンテナを介して無線通信を行う回路チップと、
前記回路チップの少なくとも周囲および前記アンテナの配線の一部を、前記ベースを下としたときの少なくとも上方については覆うチップ補強体と、
前記チップ補強体の縁を、少なくとも、該縁と前記アンテナの配線とが交わる部分については被覆する、該チップ補強体の柔軟性に勝る柔軟性を有する縁被覆体とを備えたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項5】
前記ベースが、前記チップ補強体の柔軟性に勝る柔軟性を有するものであることを特徴とする請求項1又は4記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記チップ補強体が、前記回路チップの周囲のみと前記アンテナの配線の一部とを覆うものであることを特徴とする請求項1又は4記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記チップ補強体に対し前記ベースを挟んで位置する裏側補強体を備えたことを特徴とする請求項1又は4記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−277256(P2009−277256A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195724(P2009−195724)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【分割の表示】特願2006−352826(P2006−352826)の分割
【原出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】