説明

RuO2コーティング

【解決手段】 本明細書で開示されるものは、物品であって、基材と、RuOのナノ粒子を有するRuOコーティングとを有するものである。また本明細書で開示されるものは、物品であって、基材と、RuOコーティングとを有するものである。前記コーティングは、RuOがRuOへと分解する温度より低い温度において、RuO溶液及び非極性溶媒中に前記基材を浸漬させる工程と、前記コーティングを形成させるために、前記基材及び溶液を、周囲条件下の周囲温度まで暖める工程とによって、作成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月30日出願の米国仮特許出願第61/246967号に対して優先権を主張するものである。本出願は、2007年10月5日出願の米国仮特許出願第60/977685号に対して優先権を主張する、2008年10月6日出願の米国特許出願第12/245978号の出願の、一部継続出願である。
【0002】
本開示は、二酸化ルテニウム(RuO)に関する。
【背景技術】
【0003】
透明導電材料は、光発電や発光ダイオード(LEDs:light−emitting diodes)などの、多くの技術的に重要な利用分野において、重要な役割を果たしている。導電性と透明性を同時に備えた素材は比較的珍しく、既知の例には、特定の、ドープされた又は混合された金属酸化物(一般に酸化スズベースである)、炭素ベースの素材(例えば、薄膜として調整された、グラフェン及びナノチューブ)、ドープされたポリマー、並びに絶縁体及び導体を積層したフィルムが含まれる。明らかに最も広く使用されており、商業的に利用可能な種類の透明導電体は、酸化インジウムスズ(ITO:indium−tin oxide)であり、これは典型的には化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)又はスパッタリングによって製造される。ITO及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO:fluorine−doped tin oxide)などの関連する素材について、良好な導電性と透明性を同時に達成するためには、そのドーピングレベル及び化学量論的組成を慎重に調整しなければならない。酸化インジウムスズは、可視光域においては透明であるが、遠赤外域においては反射性を持つ。ITOのような素材の光学定数は、計算学的手法によって、ドーピング及び厚さの関数として、光学的、電気的な特性を予測できるほどに、よく知られている事項である。ITO及び関連する透明導電酸化物は、CVD又はスパッタリングを使って製造されるため、これらの製造方法を、凹凸のある又は複雑な基材に対して適用するのは難しい場合が多く、ITOは通常、比較的平坦な表面に対してしか利用又は製造できない。
【0004】
炭素ベースの素材、特にカーボンナノチューブ及びグラフェンは、極薄フィルムとして作成された場合、可視光域だけでなく赤外域においても透明となる。これらのフィルムは、透明導電性について好適な特性をもったものを製造することが簡単ではなく、現時点では、構造を持った基材に対するコーティングには対応できない。ドープされたポリマー及び絶縁体−金属−絶縁体(IMI:insulator−metal−insulator)のコーティングもまた探索されているが、ニッチな適用先において利点があるに過ぎない。
【0005】
ナノスケールRuOの自己配線ネットワーク構造をメソ多孔性の高表面積SiOエアロゲルのような電気的及び電気化学的に不活性な基材に被着させる方法(Ryan et al.,Nature 406(2000)169−172;米国特許第6,290,880号及び第6,649,091号)又はマクロ多孔性SiOフィルター紙(Chervin et al.,Nano Lett.9(2009)2316−2321;米国特許出願第2009/0092834号公報)が、これまでに示されている。RuOのナノ粒子は、高曲率の基材上に、2nm厚の貫通接続されたネットワークを形成する(Ryan)か、又はシリカ繊維紙中の100nm超の直径の繊維のような低曲率の基材上に、隣接した殻を形成する(Chervin)。後者において、生成されたRuO(SiO)紙は、2〜3nmのRuO粒子を、〜300μg cm−2で含有し、物体全容量のわずか0.1容量%を占めているにすぎないが、それでもこの紙は、空気中で熱処理後に、〜0.5S cm−1の幾何正規化された導電性を示す。前記RuO(SiO)紙はまた、大きな電気化学的容量(RuOの質量に対して正規化されたとき、<600F g−1)と、高い表面積の導電相(〜90m−1)を示し、このことは、被着したRuOの大部分が、その電気的回路内で接続されて電気化学的に特定可能であることを示しており、それによってこの高価な部品の利用法は最適化されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示されるものは、物品であって、基材と、当該基材の一部の上にRuOコーティングとを有するものである。前記コーティングはRuOナノ粒子を有するものである。
【0007】
また本明細書で開示されるものは、物品であって、基材と、当該基材の一部の上にRuOコーティングとを有するものである。前記コーティングは、ある方法によって作成されることを特徴とするものであって、当該方法は、前記基材存在下の非極性溶媒中でRuOがRuOへと分解する温度において、RuO溶液及び非極性溶媒中に前記基材を浸漬させる工程と、前記コーティングを形成させるために、前記基材及び溶液を、周囲条件下の周囲温度まで暖める工程とを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のより完全な理解は、以下の実施形態例の記載及びそれに付随する図面を参照することによって、容易に得られるであろう。
【図1】図1に、平面のCaF(上)及びSi(下)上に被着したRuOの2〜3nm厚フィルムの、電子顕微鏡写真を示す。コーティングは被着後に空気中で200℃まで加熱された。
【図2】図2に、平面CaF基材上のRuOの2〜3nm厚フィルムの吸光度(log(1/T)に等しい。式中、Tは透過強度である。T=I/Io)スペクトルを示す。実線はコーティングされた基材(CaFは減算されている)であり、破線はコーティングされていないCaFのサンプルである。
【図3】図3に、CaF(の両側)上の1、2、及び3層のRuOについての、紫外域から近赤外域までの吸光スペクトルを示す。下の線は、コーティング前のCaF基材である。
【図4】図4に、半分にプルシアンブルーを電着した、RuOでコーティングしたCaF窓の、写真(上)及び吸光スペクトル(下)を示す。
【図5】図5に、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS)によって計測した、シリコン基材上のRuO単層についてのテラヘルツの吸光(log(1/T)に等しい)スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の記述は、限定することでなく説明することを目的に、本開示の完全な理解を提供するために、具体的な詳細について記載するものである。しかしながら、本技術分野の当業者にとって、本対象をこうした具体的な詳細から離れた、別の実施形態において実施することができるのは明らかであろう。別の例では、既知の方法及び装置の詳細な記述が省略されているが、これは不必要な詳細によって本開示が不明瞭になることを避けるためである。
【0010】
開示されるものは、極薄(例えば、2〜10nm)で透明な、二酸化ルテニウム(RuO))の導電性フィルムであって、当該フィルムは有機溶液から基材上へ、四酸化ルテニウムが自己制限的に周囲温度以下の温度で被着することを通して製造されるものであって、前記基材には、誘電性、絶縁性の基材が含まれるがこれに限定されない。被着したままのフィルムをさらに温度処理することで、10S cm−1のオーダーの導電性を持つRuOコーティングを作ることができ、これらの伝導性フィルムは同時に、スペクトル的に広範な(紫外域からTHzまで)>85%の光透過率(吸光度では<0.13ODに相当)を示す。これらのRuOフィルムを製作するために用いる溶液ベースの被着方法は、ドーピング又はコンポジット及び化学気相成長法又は真空蒸着法に依存した典型的な透明導電体を製造する方法と比べて、単純で経済的な方法になりうる。このアプローチは、平面のものから複雑な3次元的形態を持つものまで、広い範囲の基材を共形的にコーティングする透明導電性フィルムを提供するものである。潜在的な実用的利点は、このRuOコーティングは、酸化金属の機能化において立証された技術を用いて、化学的又は電気化学的に改良することが可能な点である。本方法及び素材は、現行の透明伝導体における幾つかの制限事項を伴わない、透明導電体の機会を提供するものである。
【0011】
立証された金属導電性酸化物を、極薄層の透明導電材料として製作することで、固有の特性を持つようになる可能性がある。化学的に合成されるRuOフィルムは、その特性と合成の観点において、多数の利点を持っている。透明導電体として広範囲に研究されていないが(Hara et al.,Electrochemistry 70(2002)13−17)、RuOは十分に立証され、技術的に重要な化学的及び電気化学的な素材であり、電気分解、電極触媒作用、電気化学的エネルギー貯蔵、並びに厚い及び薄いフィルム抵抗体などの適用先に調製することが可能な素材である(Adams et al.,J.Phys.Chem.B 107(2003),6668−6697)。高い電気的な導電性は、RuOの単結晶及び多結晶において生じるが、電極触媒的挙動は、ルテニウムの欠陥を持つ形態において最も一般的ものであって、この形態は概して水和しており、表面及びバルク内部の両方において、構造的な障害を様々な量で含んでいる(RuO・xHO又はRuO)。
【0012】
米国特許出願第2009/0092834号公報の無電解蒸着は、平面の基材への、自己制限的な極薄(2〜3nm)のRuOコーティングであって、特にそれら自体が電磁スペクトルの特定の領域(紫外(UV)、可視光、赤外(IR)テラヘルツ(THz))において透明であるRuOコーティングに、拡張可能である。RuOのナノレベルのスキンで覆われた二次元の絶縁性の基材には、CaF窓、シリコンウェハー、並びにガラススライド及び石英スライドが含まれる。結果得られる極薄RuOフィルムの分光学的研究は、これらのフィルムが高い透過率(>80%)を示し、紫外域から、可視光域、遠赤外域に至る広いスペクトル範囲にわたってほぼ平坦なバックグラウンド吸収を見せ、また一方で同時に電気的な〜10S cm−1の導電性を示すことを明らかにしている。この導電性RuOフィルムは電気化学的に特定可能であり、無電解法か電着法のどちらかを用いて改良することができ、例えば、無機的な金属シアン化物の色素であるプルシアンブルーの薄フィルムの電着が挙げられる。こうした追加コーティングの、可視光域から中赤外域までの範囲のスペクトル特性は、下地となっているRuOの透明性、及び同スペクトル範囲における平坦で一様な応答性のおかげで、特定可能である。
【0013】
極薄(2〜10nm)で共形のRuOフィルムは、紫外域からテラヘルツ域の広いスペクトル範囲にわたって透明であって、その一方で同時に高い電気的導電性(〜1000S cm−1)を示し、単純及び複雑な誘電性及び絶縁性の基材に、均一な厚さでコーティングを作ることを可能にする、単純で用途の広い化学的方法によって製造することが出来る。この素材に特有な側面は、RuOの金属的特性の結果であるその本来の電気的導電性と、周囲温度以下の温度での四酸化ルテニウムの被着及びそれに続く加熱によって製造される、この特定のタイプのRuOに特有の特性とに関連している。結果として、またITOのような典型的な導電性酸化物とは対照的に、導電性を付与するのにドーピングを必要としないことから、合成が非常に単純化し、広範囲での適用先、例えば、複雑な基材、非平面の基材、視線遮蔽のある基材、又は構造を持つ基材、といった適用先において使用されることを可能にする。もう一つの重要性は、光学的な透明性が、紫外域から近赤外域、中赤外域を通し、THz域に至るまでの、広いスペクトル範囲にわたっていることである。さらに、この素材は、酸化物表面についての標準的な手法を用いて、機能化することができる。一つの特有の性能は、その後に行う、燃料電池、バッテリー、エレクトロクロミック素子、及び光電素子に関連するであろう、電気化学蒸着又は透過光診断のために、絶縁性の表面を透明導電層によってコーティングすることである。この基材は、RuOが被着しうるどのような表面でもよく、CaF基材、シリコンウェハー、平面の基材、絶縁性の基材、無孔の基材、又は透明もしくは非不透明の基材が含まれるが、これらに限定されない。非不透明の(不透明でない)基材は、1つまたは複数の所望の波長において、所望の最小%透過率(例えば、50%、60%、70%、80%、又は90%)を少なくとも持つ基材であって、前記所望の波長には、可視光域、紫外域、及び/又は赤外域の全スペクトル領域といった広い波長域が含まれる。RuOがその透明性に拘らずに、その導電的性質のために用いられるとき、シリコンのような不透明性の基材が使われてもよい。基材を浸漬させたときに、コーティングを望む部分がRuO溶液と接触できている限り、基材は平面である必要はない。結果得られるRuOコーティングは、そうした非平面の基材に適合させることができる。
【0014】
RuOコーティングは、例えば、Ryan et al.,Nature 406(2000)169−172、Chervin et al.,Nano Lett.9(2009)2316−2321、及び米国特許出願第2009/0092834号公報に開示されている方法に従って作成することができる。四酸化ルテニウム(RuO)を非水系溶液中に抽出し、このRuOの尚早の分解を避けるために、常に冷却した状態にしておいてもよい。この冷却は、例えば、氷/アセトン浴槽によって行ってもよい。基材もまた溶液中に入れるときに冷却されていてもよいし、又は冷却されてなくてもよい。この溶液が周囲温度又は室温まで暖められるにつれて、前記RuOがRuOへと分解し、前記基材上にナノ粒子の形で被着する。このナノ粒子は、電気的に接続されたナノ粒子のネットワークを形成しうる。
【0015】
RuOの被着後、前記基材をコーティングの導電性、又は透明性を上昇させるために加熱してもよい。障害を持つRuOが、例えば、150℃〜250℃において形成される可能性がある。より高い温度まで加熱すると、X線回折で観察可能なルチル型のRuOが生産される可能性があり、このルチル型はこうした薄いコーティングにおいては透明性がより低く、より低い導電性を持つ。粒子はルチル型への変換の際に互いに分散し、そのことがコーティング中の電気的な接続性を失わせている可能性がある。前記加熱する工程は、例えば、酸素又は空気中で行うことができる。
【0016】
RuOは、例えば、10nm以下の厚さであってもよい。本明細書に開示される方法によって作成した単層は、わずか2〜3nmの厚さであってもよい。処理を複数回繰り返して、より厚い層を作成することができる。コーティングは、複合材料とは対照的に、単一成分でのコーティングであって、例えば、少なくとも重量比で90%、95%、又は99%のRuOを有していてもよい。
【0017】
コーティングの透明性を、その吸光度(OD:optical density)によって定義してもよい。コーティングは、広範囲の波長にわたって低いODを持ちうる。前記波長範囲は、例えば、600nm、1μm又は10μmから、100μm又は600μm(0.5THz)までの範囲をとりうる。RuOの単層において、前波長域にわたるODは、0.1、0.2、0.3、又は0.5の値をとりうる。コーティングのODは、コーティングされた基材のODを測定し、コーティングされていない基材のODを減算することによって、決定することができる。複数のRuO被着層においては、前記コーティングのODが、0.1、0.2、0.3、又は0.5に層の数を乗算した値となるというように、ODは線形的に上昇しうる。基材が両側をコーティングされた場合、層の数はコーティング方法を実施した回数の2倍となる。ODは600nmより短い波長において、上昇する傾向にある。しかしながら、例えば、225nm、又は紫外もしくは近紫外のスペクトルの他の波長におけるODは、600nmにおけるODの、2倍、3倍、5倍、又は10倍以下の値をとりうる。
【0018】
コーティングは低い抵抗を持ちうる。コーティングがRuO単層を持つとき、その面積抵抗は、例えば、1000Ω、1500Ω、5000Ωの値をとりうる。多層コーティングは一般的に、より低い面積抵抗を持つ。
【0019】
以下の実施例は、具体的な適用先を例示するために提供するものである。これらの具体的な実施例は、この適用先における本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0020】
RuOの合成及び特性評価。酸化ルテニウムコーティングを、RuOの有機溶液からの分解を通して作成した。前駆体溶液を作成するために、前もって氷/アセトン浴槽で1分間冷却した複数の石油エーテルの分注物を用いて、前もってT<5℃に冷却した水溶液(0.5重量%溶液、Strem Chemicals社)からRuO4を抽出した。相転移後、非水性の前駆体溶液の各分注物を、分注物ミリリットルあたり数ミリグラムのMgSO(又はその他の水除去のための乾燥剤)と素早く混合し、粗いフィルターに通し、ドライアイス/アセトン浴槽中に保持したフラスコ中に収集した。前記非水性溶液(分注物を合わせたもの)を、次いで、水の氷浴槽中で熱的に平衡させ、前もって(水の氷浴槽で)冷却した、対象とする基材(例えば、フッ化カルシウム窓、石英スライド、ガラススライド、シリコンウェハー、チタン箔)を入れたガラスバイアル中にデカントし、十分な量の石油エーテルに浸漬させた。次いで、蓋をしたバイアルを浴槽から取り除き、室温で一晩(〜15時間)置き、その後、かすかに茶/黒色のコーティングが観察された。このRuOにより改質された基材を、次いで、超音波破砕をしながら幾つかの石油エーテル分注物で洗浄し、その後空気中で数時間乾燥させた。
【0021】
結果得られた被着したままのRuOフィルムは、二探触子法によって計測すると、中程度の導電性を持っている。このフィルムの導電性は、空気又は酸素下で150℃〜250℃の温度まで加熱することによって、数オーダー上昇させることができる。そうした加熱処理後、このRuOフィルムの導電性は、10S cm−1のオーダーになる。様々な二次元的な透明基材上に作成されたRuOコーティングの厚さは、過去にシリカ紙上に作成されたコーティング(〜3nm)と同等のものであると見積もられる。RuOの追加の層を、その後の被着工程において被着させることが可能であり、各層毎にさらに〜3nmのRuOが追加され、フィルムの吸光度は、平坦で一様なバックグラウンドを保ったまま、対応して比例的に上昇することが、実証されている。
【実施例2】
【0022】
RuOフィルムの光学的特性。RuO薄フィルムの光学的特性を、平面CaF基材の透過度測定(紫外域から中赤外域について周波数領域の透過度を用いて測定)と半絶縁性のシリコン基材の透過度測定(THz領域についてTHz−TDSを用いて測定)とによって決定した。分光学的測定を、1層、2層、及び3層のRuOについて、概して、導電性を最大化するために前記フィルムの各層について200℃まで最初に加熱した後に、実施した。コーティングされた前記基材を加熱すると、吸光度は不可逆的に上昇し(つまり、透過度は減少し吸光度は上昇)たが、これはRuO極薄フィルム加熱時の導電性上昇に基づいて予想されることである。CaF上のRuOフィルムの周波数領域における透過度は高い値を示し、スペクトル的に平坦であった。つまり、単層(表と裏の両面がコーティングされている)について述べると、紫外域の250nmから赤外域の10μmまで、50%のオーダー(log(1/T)=OD 〜0.3)で、変動は殆ど無かった(ODは0.3から0.4の間で<30%の変動)。ここで長波長域はCaF基質の透過度によって制限されている。Si上のRuOフィルムの透過度を、より長波長の周波数域、つまりTHz領域(別名、遠赤外域で、より具体的には0.5〜3.5THzの領域で、15cm−1まで下がる)まで測定したところ、紫外域から近赤外域までの透過度と同様である(2層について<0.5OD)ことが分かった。前記THz領域における複雑な導電性の見積もりを、THz−TDSと、以下の確立された手順(Walther et al.,Phys.Rev.B 76(2007)125408)を用いて決定した。フィルム厚を3nmと仮定すると、導電性の実数部分は前記THz領域においてほぼ一定であり、その平均値は〜3000Ω−1cm−1である。CaF上RuOのスペクトル依存性は、過去に報告された光学特性(Hones et al.,Appl.Phys.Lett.67(1995)3078−3080、de Almeid et al.,Phys.Rev.B.73(2006)165102)に比べて大きく異なっており、このMOCVDによって作成されたバルクRuOのフィルムについての報告においては、近赤外域において可視光域よりもかなり高い吸光度(報告されている反射率の値を使用)を示している。素材が電着について適切な導電性を持つことを実証するために、プルシアンブルーを、前もってRuO単層を被着した標準的なCaF窓に電着させた(RuO(CaF)を電着の作用電極として使用し、300秒間50μAcm−2の一定電流条件を適用した)。このプルシアンブルーコーティングRuO(Caf2)窓は、700nm近くの広い明らかなバンドの結果として、その色素の特徴的な青色を目に見えて示しており、フーリエ変換赤外(FTIR:Fourier−transform IR)スペクトルは、赤外域の2000cm−1付近で、予期されるシアン化物の振動をバンドとしてはっきりと示している(図4)。
【0023】
明らかに、上述の教示を踏まえた多くの改変、変形が可能である。それゆえに、請求される対象は、具体的に記載された通り以外の方法で実施される可能性がある。要素の請求のための単数の言及、例えば、「a]、「an]、「the」、又は「said」の冠詞の使用については、いかなるものも、当該要素を単数に制限するものとして解釈されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
基材と、
当該基材の一部の上のRuOコーティングとを有し、
当該コーティングはRuOのナノ粒子を有するものであることを特徴とする、物品。
【請求項2】
請求項1記載の物品において、前記基材は平面である、物品。
【請求項3】
請求項1記載の物品において、前記基材は不透明ではないものである、物品。
【請求項4】
請求項1記載の物品において、前記基材は絶縁性である、物品。
【請求項5】
請求項1記載の物品において、前記コーティングは10nm以下の厚さである、物品。
【請求項6】
請求項1記載の物品において、
前記コーティングは、1又はそれ以上のRuO層を有するものであり、
前記コーティングは、600nmから600μmまでの全波長において、層毎に0.2以下の吸光度を有するものである、物品。
【請求項7】
請求項1記載の物品において、前記コーティングの225nmにおける吸光度は、600nmにおける吸光度の3倍以下である、物品。
【請求項8】
請求項1記載の物品において、前記コーティングは、1500Ω未満の面積抵抗を持つRuO単層を有するものである、物品。
【請求項9】
請求項1記載の物品において、前記コーティングは、少なくとも90%のRuOを有するものである、物品。
【請求項10】
物品であって、
基材と、
当該基材の一部の上のRuOコーティングとを有し、
当該コーティングは、
前記基材存在下の非極性溶媒中でRuOがRuOへと分解する温度において、RuO溶液及び非極性溶媒中に前記基材を浸漬させる工程と、
前記コーティングを形成させるために、前記基材及び溶液を、周囲条件下の周囲温度まで暖める工程と
を有する方法によって作成されるものであることを特徴とする、物品。
【請求項11】
請求項10記載の物品において、前記基材は平面である、物品。
【請求項12】
請求項10記載の物品において、前記基材は不透明ではないものである、物品。
【請求項13】
請求項10記載の物品において、前記コーティングを作成する方法は、さらに、
前記コーティングを最大温度150℃〜250℃まで加熱する工程を有するものである、物品。
【請求項14】
請求項10記載の物品において、前記コーティングを作成する方法は、さらに、
前記コーティング中に複数のRuO層を形成させるために、前記基材を浸漬させる工程及び暖める工程を1回又は複数回繰り返す工程を有するものである、物品。
【請求項15】
請求項10記載の物品において、前記非極性溶媒は石油エーテルである、物品。
【請求項16】
請求項10記載の物品において、前記コーティングを作成する方法は、さらに、
前記基材をRuO溶液に浸漬させる工程の前に、前記RuOを、水溶液から非極性溶媒中に抽出する工程を有するものである、物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−512130(P2013−512130A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541217(P2012−541217)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/058147
【国際公開番号】WO2011/066488
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(500238790)アメリカ合衆国 (13)
【Fターム(参考)】