説明

S−[2−([[1−(2−エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]2−メチルプロパンチオエートの経口吸収性を増加させる方法

本発明は、治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に投与することにより、当該薬剤の活性体の経口吸収性を増加する方法に関する。本発明はまた、治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートおよび医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、処方情報ならびに容器を含むキットであって、当該処方情報が経口吸収性を改善するために、当該薬剤を食物と共に投与することに関する患者への助言を含むキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管障害の治療または予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全コレステロールおよび低比重リポ蛋白質(LDL)コレステロールの濃度上昇に伴う高脂血症状態は、冠動脈心臓病および特にアテローム性動脈硬化症の主要な危険因子である。さらに、多くの研究により、高比重リポ蛋白質(HDL)コレステロールの低い血漿中濃度はアテローム性動脈硬化症の発症の強力な危険因子であることが示されている。
【0003】
コレステリルエステル転送蛋白質(CETP)は、血中の様々なリポ蛋白質の間でコレステリルエステルおよびトリグリセリドの移動を促進する血漿蛋白質である。CETPによりHDLからLDLへコレステリルエステルが移動することで、HDLコレステロールが減少し、かつLDLコレステロールが増加する効果がある。CETP活性の阻害は、血漿中HDLコレステロールを上昇させることおよび血漿中LDLコレステロールを低下させることによって、プラスミドHDL/ LDL比を効果的に変化させることが示されている。
【0004】
S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートは、ヒト(de Grooth et al., Circulation, 105, 2159-2165 (2002))およびウサギ(Shinkai et al., J. Med. Chem., 43,3566-3572 (2000); Kobayahi et al., Atherosclerosis, 162, 131-135 (2002); Okamoto et al., Nature, 406(13), 203-207 (2000))において、CETP活性の阻害剤であることが示されている。S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートは、ヒト(de Grooth et al., 上述)およびウサギ(Shinkai et al., 上述; Kobayahi et al., 上述; Okamoto et al., 上述)の血漿中HDLコレステロールを増加させることが示されている。さらに、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートは、ヒト(de Grooth et al., 上述)およびウサギ(Okamoto et al., 上述)においてLDLコレステロールを減少させることが示されている。加えて、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートは、ウサギにおいてアテローム性動脈硬化症の進行を阻害する(Okamoto et al., 上述)。S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエート、ならびにその化合物の製法および使用法は、米国特許第6,426,365号に開示されている。
【0005】
使用者における治療効果の程度を増加させるために、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の経口吸収性を増加させることが望ましいであろう。このような方法、例えば、その活性体の経口吸収性を増加させたS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを用いることによって患者への経口投与後の効能が改善される心血管障害の治療方法がなお必要とされている。本発明は、このような方法の他、治療上有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートおよび医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、処方情報ならびに容器を含むキットであって、当該処方情報が経口吸収性を改善するための薬剤投与に関する患者への助言を含むキットもまた提供する。本発明のこれらおよび他の利点、ならびにさらなる発明の特徴は、本明細書中に提供された発明の説明から明らかになるであろう。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエート治療を受ける患者において、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の経口吸収性を増加させる方法を提供する。当該方法では、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートが医薬組成物に含まれ、当該方法は、治療有効量の薬物を食物と共に患者に経口投与することを含む。活性体の経口吸収性の増加は、活性体の最大血漿中濃度の増加により証明され得る。
【0007】
本発明はまた、経口投与剤形で薬物を受容した患者の血流中で経時的に到達した活性体の濃度により測定されるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の吸収の程度を増加させる方法を提供する。当該方法は、治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に患者に経口投与することを含む。
【0008】
本発明はさらに、患者においてコレステリルエステル転送蛋白質(CETP)の活性を低下させる方法を提供する。当該方法は、治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に患者に経口投与することを含む。
【0009】
本発明はさらに、患者において心血管障害を治療または予防する方法を提供する。当該方法は、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に患者に経口投与することを含む。
【0010】
さらに、本発明は、治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートおよび医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、処方情報ならびに容器を含むキットを提供する。当該処方情報は、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に投与することに関する患者への助言を含む。
【0011】
本発明は、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエート(本明細書中、化合物Iという)の投与の効果を改善する方法、および/または特定の心血管障害の治療もしくは予防方法に関する。これらの障害には、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低αリポ蛋白血症(低レベルのHDLコレステロール)、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法により治療または予防され得るさらなる疾患には、高脂血症、高血圧症、高トリグリセリド血症および高脂蛋白血症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
化合物Iは、以下の構造式を有する:
【0013】
【化1】

【0014】
化合物Iの活性体の薬物動態学における食物の影響を評価するための薬物動態学的研究はこれまでになされていなかった。一般に、食物は活性薬剤の経口吸収性において種々の影響を有する。薬物−食物相互作用の結果、全身性薬物利用能の低下、遅延または増加が生じ得る(例えば、Welling, Clin. Pharmacokinet., 9(5), 404-34 (1984)を参照)。
【0015】
このような患者に対する化合物Iの治療効果を増加させる治療法において、化合物Iが患者に投与され得ることが発見された。有利には、化合物Iは、食物と共に経口投与する場合、患者において化合物Iの活性体の経口吸収性の増加を示す。
【0016】
従って、本発明は、患者において化合物Iの活性体の経口吸収性を増加させる方法であって、治療有効量の化合物Iを食物と共に患者に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本明細書中で用いられる「経口吸収性」との用語は、一般的に、活性成分もしくはその活性体が医薬品から吸収されて、作用部位で有効となる割合および程度を意味する(U.S. Code of Federal Regulations, Title 21, Part 320.1 (2001 ed.)を参照)。経口投与剤形については、経口吸収性は、活性成分が経口投与剤形(例えば錠剤)から遊離する過程、活性体に変換される過程(もし活性成分がそれまでに活性体でない場合)、および作用部位に移動する過程(例えば体循環系に吸収される過程)に関連する。
【0018】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、患者の体内で、化合物Iは、血漿、肝臓および/または小腸で加水分解されて、S-[2([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]チオール(本明細書中、化合物IIという)を形成すると仮定される。システインおよびグルタチオンのような低分子量チオール成分(すなわち、R−SH)ならびにペプチドおよび蛋白質(例えば、酵素および細胞膜)のような高分子量チオール成分(すなわち、Prot−SH)が、分子間または分子内で酸化されたジスルフィド結合(S−S結合)を含む混合ジスルフィドとして体内に存在することが知られている(Shimade et al., J. Chromatogr. B, 659, 227 (1994)参照)。従って、患者の体内では、化合物IIは低分子量または高分子量チオールと複合体化して混合ジスルフィドを生じるかまたは化合物IIの二量体を生じると仮定される。これらの分子型は、化合物IIを介して互いに酸化還元平衡状態にあるため、これら全ての分子型および化合物IIは、本明細書中の以下で、包括的にではあるが排他的にではなく、化合物Iの活性体と考えられ、かつ化合物Iの活性体と呼ばれる。以下のスキームは、上述の仮説を図示する。
【0019】
【化2】

【0020】
化合物Iの投与は、本発明の特に好ましい実施態様であるが、本発明はまた、化合物Iの活性体を生じるであろう他の化合物、すなわち、化合物Iの活性体の他のプロドラッグの投与も意図する。このようなプロドラッグは、例えば、異なるメルカプト保護基を有するが、患者の身体内(すなわち、インビボ)で、結果として化合物Iの活性体(例えば、化合物II)を形成する化合物であり得る。「メルカプト保護基」なる用語は、一般的に用いられるメルカプト保護基(例えば、Wolman, The Chemistry of the Thiol Group; D. Patai, Ed., Wiley-Interscience, New York, 1974)をいう。インビボで解離され得る有機残基はいずれも特に限定されることなく用いられ得る。特に適切なメルカプト保護基の例は、米国特許第6,426,365号に開示されている。本発明はさらに、化合物Iの活性体を得るために、化合物I'(式中、R'はイソプロピル基以外の有機残基を示す)を投与することも意図する。
【0021】
【化3】

【0022】
加えて、インビボで化合物IIと平衡状態にあると考えられる化合物III、IVおよびV(式中、Rは有機残基を示し、Protはペプチドまたは蛋白質を示す)も、同様に患者に直接投与することができる。
【0023】
本明細書中で用いられる「食物と共に」との用語は、一般的に、化合物Iの投与の約1時間前から化合物Iの投与の約2時間後までの間の期間に食物を摂取した状態を意味すると定義される。好ましくは、食物は胃中で速やかに溶解および吸収されない十分な体積と脂肪含量を有する固形食である。より好ましくは、食物は、朝食、昼食または夕食のような食事である。
【0024】
有利には、化合物Iは、食物と共に日中のいつでも投与される。食物は化合物Iの投与の約1時間前から化合物Iの投与の約2時間後の間の期間内にいつでも摂取することができる。例えば、食物は化合物Iの投与の約1時間前、約45分前、約30分前、約15分前、約10分前または約5分前の時間内に摂取することができる。同様に、食物は、化合物Iの投与の約5分後、約10分後、約15分後、約30分後、約45分後、約1時間後、約1.25時間後、約1.5時間後、約1.75時間後または約2時間後の時間内に摂取することができる。より好ましくは、化合物Iの患者への投与は、食物の摂取直後(例えば、食物の摂取後約1分以内)から食物の摂取後約1時間までに行われる。理想的には、化合物Iは、食物の摂取と実質的に同時に投与される。
【0025】
「食物なし」または「絶食した」との用語は、化合物Iの投与の約1時間前から化合物Iの投与の約2時間後までの時間内に食物を摂取していない状態を意味すると定義される。
【0026】
用語「患者」は、ヒト患者を意味する。
【0027】
本発明の方法は、治療上許容され得る量の化合物Iまたは化合物Iの活性体のプロドラッグ(例えば、化合物IIのプロドラッグ)の投与に関する。一般的に、患者に投与するための化合物Iの治療有効量の適切な用量は、1日当たり約100 mg〜約1800 mgの間であろう。適切な用量は、好ましくは1日当たり約300 mg〜約900 mgである。好ましい用量は、1日当たり約600 mgである。
【0028】
所望ならば、有効一日用量の化合物Iが、適度な間隔で1日にわたって、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の個別に投与される準用量で、必要に応じて単位投与剤形で投与され得る。このような準用量は、それぞれ、治療有効量の化合物Iを含む。本発明の方法によれば、化合物Iは、食物と共に、1日当たり複数回または1日当たり1回投与され得る。1日にわたって複数回投与する場合は、個々の用量はそれぞれ治療有効量の化合物Iを含む。本発明の好ましい実施態様では、化合物Iは食物と共に1日当たり1回投与される。
【0029】
本明細書中で用いられる「単位投与剤形」との用語は、化合物Iが患者に投与される剤形を意味すると定義される。特に、単位投与剤形は、例えば、ピル、カプセルまたは錠剤であり得る。好ましくは、単位投与剤形は錠剤である。本発明で有用な単位投与剤形における化合物Iの代表的な量は、約100 mg〜約1800 mgであり、好ましくは約100 mg〜約900 mg(例えば、約100 mg〜約300 mg)である。本発明の好ましい実施態様において、単位投与剤形は約300 mgの化合物Iを含み、かつ錠剤の剤形である。好ましくは、それぞれ約300 mgの化合物Iを含む2個または3個の錠剤が、1日当たり1回患者に投与される(すなわち、1日当たりの全用量はそれぞれ約600 mgまたは約900 mgである)。
【0030】
化合物I療法を受けている患者に対する化合物Iの活性体の経口吸収性が増加することは、任意の適当な方法で証明することができる。望ましくは、食物なしの化合物Iの投与と比較して化合物Iの活性体の最大血漿中濃度が増加することにより証明されるように、化合物Iを食物と共に経口投与する結果、化合物Iの活性体の経口吸収性が増加する。
【0031】
化合物Iは、望ましくは、化合物Iを食物と共に経口投与するよう患者へ助言し、望ましくはそうすることにより化合物Iの活性体の経口吸収性が増加するであろうことも記載した処方情報を添付した容器で、患者に供給される。化合物Iは、好ましくは、医薬組成物中の用量の化合物Iを食物と共に投与する結果、絶食状態での薬物の投与と比較して化合物Iの活性体の最大血漿中濃度が増加することにより反映されるように、化合物Iの活性体の吸収の程度が増加することを患者へ助言する処方情報を添付した容器で、患者へ供給される。
【0032】
本発明はまた、化合物Iの活性体の治療効果を必要とする患者の血流中で経時的に到達した活性体の濃度により測定される、化合物Iの活性体の吸収の程度を増加させる方法を提供する。この方法は、医薬組成物中の治療有効量の化合物Iを食物と共に患者に経口投与することを含む。血流中の活性体濃度は、化合物Iの活性体の血漿中濃度(μg/mL)として測定される。血漿中濃度の測定に関与する薬物動態学的パラメータには、最大実測血漿中濃度(Cmax)、時間0から最終定量可能濃度までの血漿中濃度−時間曲線(AUC)下の面積(AUC0-tz)、および時間0から無限大(AUC0-∞)までのAUC下の面積が挙げられる。絶食状態での薬剤投与と比較した場合に上述の薬物動態学的パラメータの1つ以上(および好ましくは全て)の値が増加することによって測定されるように、化合物Iを食物と共に患者へ投与することにより、活性体の経口吸収性が増加する。
【0033】
本発明はさらに、患者においてコレステリルエステル転送蛋白質(CETP)の活性を低下させる方法であって、治療有効量の化合物Iを食物と共に当該患者に経口投与することを含む方法を提供する。CETP活性の低下は、絶食状態での投与と比べて、化合物Iを食物と共に投与した後により大きい。
【0034】
加えて、本発明は、患者に化合物Iを投与することを含む、患者において心血管障害を治療または予防する方法であって、治療有効量の化合物Iを食物と共に当該患者へ経口投与することを含む方法を提供する。これらの障害には、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低αリポ蛋白血症(低レベルのHDLコレステロール)、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。本発明方法により治療もしくは予防され得るさらなる障害には、高脂血症、高血圧症、高トリグリセリド血症および高脂蛋白血症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
化合物Iは、治療のために、任意の通常の方法で患者へ投与され得る。化合物Iは、未加工の化学物質として投与することが可能であるが、好ましくは医薬組成物として投与される。このような医薬組成物は、化合物Iを、1つ以上の医薬上許容され得る担体もしくは賦形剤ならびに必要に応じて他の治療薬および/または成分と共に含む。担体または賦形剤は、他の成分との適合性の点で許容されるべきであり、かつ、そのレシピエントに有害であってはならない。経口投与のための担体または賦形剤の例には、コーンスターチ、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、微結晶性セルロース、ステアリン酸、ポビドン、クロスポビドン、二塩基性リン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、低置換ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910)およびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0036】
医薬組成物は、薬学の分野で周知の方法のような任意の適切な方法(例えば、Gennaro et al., Remington's Pharmaceutical Sciences (18th ed., Mack Publishing Co., 1990)、特にPart 8: Pharmaceutical Preparations and their Manufactureに記載の方法)により調製され得る。このような方法は、化合物Iを、担体または賦形剤および必要に応じて1つ以上の付加成分と配合する工程を含む。このような付加成分には、当該分野で通常用いられる、充填剤、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤、着香剤および湿潤剤のような成分が挙げられる。
【0037】
医薬組成物は、所定の期間にわたって、化合物Iの制御された遅延放出性または徐放性を提供し得る。治療化合物の制御された遅延放出性または徐放性は、従来の処方物を用いる場合よりもより長い期間にわたって、化合物Iの活性体の濃度を患者の血流中で維持させることができる。このような医薬組成物には、コーティング錠、ペレットおよびカプセル錠ならびに生理的液体に不溶性の媒体中の治療化合物の分散物、あるいは機械的、化学的または酵素的作用による医薬組成物の崩壊後に治療化合物が放出されるものが挙げられる。
【0038】
本発明の状況における医薬組成物は、例えば、それぞれが所定量の化合物Iを含み、好ましくは嚥下を容易にするためにコーティングされるピル、カプセルまたは錠剤の剤形であるか、粉末または顆粒の剤形であるか、あるいは溶液または懸濁液の剤形であり得る。好ましくは、医薬組成物は、化合物I(または化合物Iの活性体のプロドラッグ)、および本明細書の実施例で利用されかつ記載された錠剤の成分を含む錠剤の剤形を有する。経口投与のために、微細粉末もしくは顆粒は、希釈剤、分散剤および/または界面活性剤を含んでもよく、また、例えば、懸濁液を含み得る場合には、水中もしくはシロップ中、乾燥状態のカプセルもしくは分包中または非水溶液もしくは懸濁液中に存在し得、あるいは、結合剤および潤滑剤を含み得る場合には、錠剤中に存在し得る。甘味料、着香剤、保存剤(例えば抗菌保存剤)、懸濁剤、増粘剤および/または乳化剤のような成分もまた、医薬組成物中に存在し得る。液状溶液または懸濁液の形で投与される場合は、該製剤は化合物Iおよび精製水を含むことができる。液状溶液または懸濁液中の任意成分には、適当な甘味料、着香剤、保存剤(例えば抗菌保存剤)、緩衝剤、溶剤およびその混合物が挙げられる。製剤中の1つの成分は1つより多くの機能を提供し得る。例えば、適当な緩衝剤は、着香剤および甘味料としても作用し得る。
【0039】
適当な甘味料には、例えば、サッカリンナトリウム、スクロースおよびマンニトールが挙げられる。必要に応じて、2以上の甘味料の混合物を用い得る。甘味料またはその混合物は、代表的には、全組成物重量の約0.001%〜約70%の量で存在する。患者が摂取しやすい医薬組成物を製造するために、サクランボの香味、綿飴の香味または他の適当な香味を提供するための適当な着香剤が医薬組成物中に存在し得る。着香剤またはその混合物は、代表的には、全組成物重量の約0.0001%〜約5%の量で存在する。
【0040】
適当な保存剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムおよびベンザルコニウムクロライドが挙げられる。必要に応じて、2以上の保存剤の混合物を用い得る。保存剤またはその混合物は、代表的には、全組成物重量の約0.0001%〜約2%の量で存在する。
【0041】
適当な緩衝剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムならびに種々の他の酸および塩が挙げられる。必要に応じて、2以上の緩衝剤の混合物を用い得る。緩衝剤またはその混合物は、代表的には、全組成物重量の約0.001%〜約4%の量で存在する。
【0042】
液状溶液または懸濁物に適当な溶媒には、例えば、ソルビタール(sorbital)、グリセリン、プロピレングリコールおよび水が挙げられる。必要に応じて、2以上の溶媒の混合物を用い得る。溶媒または溶媒系は、代表的には、全組成重量の約1%〜約90%の量で存在する。
【0043】
経口送達法は、消化管内で変動するpH、酵素への曝露および消化管膜の非透過性のような、生体により強いられる化学的および物理的障壁によりしばしば制限される。医薬組成物の経口投与はまた、補助剤を共投与することを含み得る。例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテルのような非イオン性界面活性剤を、医薬組成物と共に投与するかまたは医薬組成物に配合して、消化管壁の透過性を人為的に高めることができる。酵素阻害剤もまた、医薬組成物と共に投与するかまたは医薬組成物に配合することができる。
【0044】
さらに、本発明は、治療有効量の化合物Iおよび医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、処方情報ならびに容器を含むキットを提供する。該処方情報は、本発明方法および/または本明細書中で検討された他の方法に従った処方情報であり得る。該処方情報は、好ましくは、化合物Iを食物と共に投与することに関する患者への助言、特に、化合物Iの活性体の経口吸収性を改善するための患者への助言を含む。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、当然のことながら、当該実施例は、本発明の範囲を何らかの点で限定すると解釈されるべきではない。
【0046】
(実施例1)
患者の化合物Iの吸収に対する食物の影響は、900 mgの化合物Iを食物と共におよび食物なしで白人男性ボランティアに経口投与した場合の経口吸収性を比較するために設計された試験で確認した。
【0047】
本試験のために、6人の被験者の各々が、2回の処置期間(食物と共に1回(標準的な朝食の後)および絶食状態で1回)のそれぞれにおいて、900 mgの用量レベルで化合物Iを受けた。各処置期間の間は最低限7日間であった。処置の間のこの7日間の間隔は、被験体内での全てのキャリーオーバー効果を除くのに適すると考えられた。
【0048】
被験者は、それぞれ300 mgの錠剤3錠を投与することにより、900 mgの化合物Iを受けた。標準的な打錠手順を用いて、コートされていない白色錠を調製した。該錠剤は、化合物I(300 mg)、結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(18 mg)、潤滑剤としてタルク(18 mg)およびステアリン酸マグネシウム(1.2 mg)、ならびに崩壊剤としてクロスポビドン(119.8 mg)および低置換ヒドロキシプロピルセルロース(90 mg)を含んでいた。
【0049】
処置は、立った姿勢で水(150 mL)と共に経口投与で行った。被験者は投与後2時間、試験手順を除いては、仰向けに横たわることが許されなかった。
【0050】
各処置期間において、各被験者に対し用量を同じ時間に投与した。投与は08時30分頃に開始した。投与(第1日目)前日の22時00分から第1日目の朝食まで(摂食状態で(すなわち、食物と共に)化合物Iを受ける被験者について)または第1日目の昼食時まで(絶食状態で化合物Iを受ける被験者について)、および試験後の、研究室での安全性評価が次の日になされるまでの検査前の夜間、全ての被験者は食物および流動物(水を除く)を絶食した。全ての流体物が許されなかった投与後2時間までの期間を除いて、水は試験中いつでも摂取することができた。
【0051】
摂食状態で被験者に化合物Iを投与する場合、被験者は投与約45分前に標準的な朝食を摂取した。食事は、投与の30分前に完了するように、15分間にわたって規則的な速度で摂食した。標準的な朝食は、以下から構成された:
オレンジジュース200 mL
シリアル2袋 (約60 g)
全粒小麦粉のトースト2枚
低脂肪スプレッド10 g (1包)
ジャム20 g (1包)
全脂肪乳 242 mL (約250 g)

全エネルギー含量:711 Kcal
全脂肪含量:15.72 g (全カロリーの19.9%)
全蛋白質量:20.82 g (全カロリーの11.7%)

【0052】
薬物動態学的分析のための血液サンプルは投与の直前および投与後の次の時間:1、2、4、6、7、10、12、24および36時間後に採取した。
【0053】
以下の薬物動態学的パラメータが2つのプロファイル(摂食状態および絶食状態)のために算出され、これらのパラメータは次のように定義される:

tmax 最大実測血漿中濃度時間;
Cmax 最大実測血漿中濃度;
t1/2 化合物Iの活性体の血漿中濃度の半減期
AUC 0-tz 時間0から最終定量可能濃度までの血漿中濃度時間曲線下の面積 (AUC)
(AUC(0-tz));および
AUC 0-∞ 時間0から無限大までのAUC

【0054】
薬物動態学的パラメータを分析により対数変換し、三方向分散分析から導かれたSAS(登録商標)最小二乗法(ANOVA)を用いて、被験者、処置および時間についてのフィッティング効果を評価した。処置は、各処置のパラメータ間における相違および対数SAS(登録商標)最小二乗法の相違の95%信頼区間(CI)を計算することにより比較した。この相違および相違のCIは、報告の目的でバック変換(back-transformation)された。
【0055】
化合物Iの活性体の血漿中濃度は以下のアッセイにより決定された。血漿サンプルは、化合物Iで処置した患者から単離した。該血漿サンプルを、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)で処理して、血漿中の化合物Iの活性体をチオール型(すなわち、化合物II)に変換した。次に、チオール基の酸化を防止するため(すなわち、チオール基を還元状態に維持するため)、該血漿サンプルをジチオスレイトール(DTT)(和光純薬工業株式会社製)で処理した。N-エチルマレイミド(NEM)付加体への誘導体化により遊離のスルフヒドリル基がブロックされると考えられるため、NEM (和光純薬工業株式会社製)を添加してチオール型(すなわち化合物II)を安定化した。次いで、該サンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。最後に、該血漿サンプルのHPLC分析結果を既知標準と比較して、化合物Iの活性体の血漿中濃度を決定した。既知濃度の標準は、ヒト血漿を化合物Iで処置されなかったヒトから分離したことを除いては、基本的に上述と同様に調製した。これらの「ブランク血漿」サンプルを、既知量の化合物Iと合わせた。
【0056】
血漿薬物動態学的パラメータの平均的な試験結果、化合物Iの活性体のAUC0-∞(μg h/mL)、AUC0-tz(μg h/mL)、Cmax(μg/mL)、t1/2(h)およびtmax(h)を表1にまとめる。
【0057】
【表1】

【0058】
化合物Iの活性体の吸収は比較的遅く、最大実測血漿中濃度の時間は、化合物Iの投与後4時間から5時間の間に発生した。表1から明らかなように、化合物Iを食物と共におよび食物なしで投与した後、最大実測血漿中濃度の時間は同等であった。加えて、化合物Iの活性体の半減期は、薬物を食物と共におよび食物なしで投与した後に同等であると測定された。
【0059】
しかしながら、化合物Iを食物と共に投与することによって影響を受けた薬物動態学的パラメータが幾つかあった。これらのパラメータには、AUC0-tz、AUC0-∞およびCmaxが挙げられ、これらは化合物Iを食物と共に投与した場合、絶食状態における化合物Iの投与と比較して、それぞれ65%、57%および126%高かった。これらの増加は、化合物Iの活性体の相乗平均血漿中濃度を図1で線形にプロットした場合および図2で片対数形にプロットした場合、顕著に明らかである。
【0060】
化合物Iを食物と共に投与した場合に観察された薬物動態学的パラメータの増加は、絶食状態で薬物を投与した場合と比較して活性体薬物の経口吸収性が増加することを示す。
【0061】
(実施例2)
白人男性患者における化合物Iの活性体の吸収に対する食物の影響を、900 mgの化合物Iを食物と共におよび食物なしで経口投与した後のCETP活性を比較するために設計された試験で確認した。
【0062】
投与、用量および試料採取計画は、実施例1に記載したものと実質的に同じであった。
【0063】
CETP活性を決定する手順はTollefson et al., Methods Enzymol., 129, 797-816 (1986)およびKato et al.,J. Biol. Chem., 264,4082-4087 (1989)に記載の手順と実質的に同じであった。
【0064】
CETP活性およびベースライン(投与前)からの変化を測定し、得られたデータを、ベースラインからの変化百分率として表2にまとめた。CETP活性のベースライン(投与前)からの経時的な平均変化を図3のプロットに示す。
【0065】
【表2】

【0066】
化合物Iを食物と共におよび食物なしで投与した場合、CETP活性の明らかな相違が観察された。摂食処置のプロトコルにおけるCETP活性の阻害は、絶食処置のプロトコルと比較して、なお一層顕著であった。例えば、投与後4時間から24時間の間、摂食状態では、絶食状態と比べて、CETP活性が顕著に低下した。このようなCETP活性の低下は、薬剤の活性体を食物と共に投与する場合、薬剤を食物なしで投与する場合と比較して、経口吸収性が増加することを示す。
【0067】
化合物Iの活性体の血漿中濃度と、摂食および絶食状態についてのCETP活性の阻害との関係を、図4および図5のプロットでそれぞれ示す。化合物Iの活性体の血漿中濃度が上昇するにつれて、CETPに対する阻害効果は増加した(すなわち、CETP活性は低下した)。
【0068】
(実施例3)
実施例2に記載された試験と同様の試験で、日本人男性患者における化合物Iの活性体の吸収に対する食物の影響を、600 mgの化合物Iを食物と共におよび食物なしで経口投与した後の相対的なCETP活性を比較するために設計された試験で確認した。
【0069】
投与、用量および試料採取計画は、実施例1および2に記載のものと同じであった。しかし、患者には、(900 mgではなく)600 mgの化合物Iを食事と共におよび食事なしで投与した。患者にはそれぞれ300 mgの錠剤を2錠投与した。該錠剤は実施例1に記載のように調製した。
【0070】
相対的CETP活性(ベースラインCETP活性の百分率として計算)および標準偏差(SD)を測定し、得られたデータを表3にまとめた。
【0071】
【表3】

【0072】
化合物Iを食物と共におよび食物なしで投与した場合、実施例2で考察された結果と一致して、CETP相対活性における明らかな相違が観察された。絶食処置プロトコルと比較して、摂食処置プロトコルにおけるCETP活性の阻害はより一層顕著であった。例えば、投与後4時間から24時間の間、摂食状態では、絶食状態と比べてCETP活性が顕著に低下した。特に、化合物Iを食物と共に投与した後のCETP活性の阻害は、投与後6時間でそのピークに達し、CETP活性はベースラインに対して37.6%であった。これに対して、化合物Iを食物なしで投与した後のCETP活性の阻害は、投与後8時間でそのピークに達し、CETP活性はベースラインに対して87.8%であった。化合物Iを食物と共に投与した後のこのような相対CETP活性の低下は、薬剤の活性体を食物と共に投与した場合、薬剤を食物なしで投与した場合と比較して経口吸収性が増加することを示す。
【0073】
(実施例4)
実施例1に記載の試験と同様の試験で、患者における化合物Iの活性体の吸収に対する食物の影響を、日本人男性ボランティアに食物と共におよび食物なしで経口投与された600mgの化合物Iの経口吸収性を比較するために設計された試験で確認した。
【0074】
投与、用量および試料採取計画は、実施例1に記載のものと同じであった。しかし、患者には、(900 mgではなく)600 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共におよび食物なしで投与した。患者には各300 mgの錠剤2錠を投与した。該錠剤は実施例1に記載のように調製した。
【0075】
実施例1で観察されたように、最大実測血漿中濃度(Cmax)および時間ゼロから無限大での血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC0-∞)のような薬物動態学的パラメータは、化合物Iを食物と共に投与することによって影響を受けた。600 mgの化合物Iを食物と共に投与した後のCmax(平均)値は1.029 μg/mLであったが、食物なしで投与した場合には0.316 μg/mLにすぎなかった。600 mgの化合物を食物と共に投与した後のAUC0-∞(平均)値は10.458 μg h/mLであったが、食物なしで投与した場合には5.395 μg h/mLにすぎなかった。このように、患者に薬物を食物と共に投与した場合、食物なしで投与した場合と比べて、CmaxおよびAUC0-∞はそれぞれ約2〜3倍高くなった。
【0076】
化合物Iを食物と共に投与する場合に薬物動態学的パラメータにおいて観察される増加は、薬剤の活性体が、食物と共に(例えば食後に)投与した場合により迅速に吸収されることを示す。このように、化合物Iを食物と共に投与することにより、絶食状態の薬物投与と比較して、薬物の活性体の経口吸収性が増加する。
【0077】
本明細書中で引用された刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々にかつ詳細に参考として組み込まれるべきであることが示され、かつその全体が本明細書中に記載されているのと同程度に、参考として本明細書中に組み込まれる。
【0078】
本明細書中で他に示さない限りまたは文脈中で明確に否定しない限り、本発明を説明する文脈(特に、下記特許請求の範囲)における「a」、「an」および「the」との用語の使用は、単数形および複数形の両方を包含するものと解すべきである。他に示さない限り、「comprising」、「having」、「including」および「containing」との用語は、オープンエンドな用語である(すなわち、「含むが、それに限定されない」ことを意味する)と解すべきである。本明細書中で他に示さない限り、本明細書中の数値範囲の記載は、当該範囲内のそれぞれの独立した値を個々に説明する簡略な方法として役立つことを意図するにすぎず、それぞれの独立した値は、本明細書中に個別に記載されているのと同程度に本明細書中に組み込まれる。本明細書中に他に示さない限りまたは文脈で他に明確に否定しない限り、本明細書に記載の全ての方法は、任意の適切な順番で行うことができる。本明細書中に提供される任意および全ての実施例または例示の用語(例えば、「such as」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図するにすぎず、他に主張されない限り、発明の範囲に限定を加えるものではない。本明細書中のいずれの用語も、特許請求されない要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0079】
本発明の好ましい実施態様は本明細書中に記載されており、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含む。これらの好ましい実施態様の変更態様は、当業者が上記説明を読めば明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変更態様を必要に応じて用いることを予期し、また、本発明者らは、本発明が本明細書中で特に記載した以外の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は適切な法律で許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の主題の全ての改変態様および均等態様を含む。さらに、本明細書中で他に示さない限りまたは文脈で他に明確に否定しない限り、全ての考えられ得る本発明の変更態様における上述の要素のいかなる組合せも本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、900 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共にまたは食物なしで経口投与された白人男性患者における、36時間にわたるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の相乗平均血漿中濃度(μg/mL)の線形プロットである。
【図2】図2は、900 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共にまたは食物なしで経口投与された白人男性患者における、36時間にわたるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の相乗平均血漿中濃度(μg/mL)の片対数プロットである。
【図3】図3は、900 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共にまたは食物なしで経口投与された白人男性患者における、24時間にわたるCETP活性のベースライン(投与前)からの平均変化のプロットである。
【図4】図4は、900 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に経口投与された白人男性患者における、24時間にわたるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の平均CETP活性および平均血漿中濃度のプロットである。
【図5】図5は、900 mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物なしに経口投与された白人男性患者における、24時間にわたるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の平均CETP活性および平均血漿中濃度のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエート治療を受けている患者に対して、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の経口吸収性を増加させる方法であって、医薬組成物中の治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に当該患者に経口投与することを含む、方法。
【請求項2】
治療有効量が約100mg〜約1800mgである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
患者への投与が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後の間に行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
患者への投与が、食物の摂取と実質的に同時に行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
患者への投与が、食物の摂取直後から食物の摂取の約1時間後までに行われる、請求項4記載の方法。
【請求項7】
医薬組成物が錠剤の単位投与剤形を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
錠剤が約100mg〜約1800mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
錠剤が約300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含み、かつ治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記投与の結果、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの食物なしでの投与と比較して、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の最大血漿中濃度が増加する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物が、当該医薬組成物が食物と共に投与されるべきであることを患者に助言する処方情報が添付された容器で患者に供給される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
処方情報が、医薬組成物中のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に投与する結果、絶食状態におけるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの投与と比較して、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の最大血漿中濃度が増加することを患者にさらに助言する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
処方情報が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後の間に医薬組成物を投与するよう患者にさらに助言する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
処方情報が、食物の摂取と実質的に同時に医薬組成物を投与するよう患者にさらに助言する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
処方情報が、食物の摂取の直後から食物の摂取の約1時間後までに医薬組成物を投与するよう患者にさらに助言する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の治療効果を必要とする患者において経時的に血流中で到達する当該活性体の濃度により測定されるS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートの活性体の吸収の程度を増加させる方法であって、当該患者に、医薬組成物中の治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを経口投与することを含む、方法。
【請求項17】
治療有効量が約100mg〜約1800mgである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
患者への投与が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後の間に行われる、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
患者への投与が、食物の摂取と実質的に同時に行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
患者への投与が、食物の摂取の直後から食物の摂取の約1時間後までに行われる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
医薬組成物が錠剤の単位投与剤形を有する、請求項16〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
錠剤が約100mg〜約1800mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
錠剤が約300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含み、かつ治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
患者においてコレステリルエステル転送蛋白質(CEFP)の活性を低下させる方法であって、医薬組成物中の治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に当該患者に経口投与することを含む、方法。
【請求項26】
治療有効量が約100mg〜約1800mgである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
患者への投与が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後までの間に行われる、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
患者への投与が、食物の摂取と実質的に同時に行われる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
患者への投与が、食物の摂取の直後から食物の摂取の約1時間後までに行われる、請求項28記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が錠剤の単位投与剤形を有する、請求項25〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
錠剤が約100mg〜約1800mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
錠剤が約300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含み、かつ治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを患者へ投与することを含む、患者において心血管障害を治療または予防する方法であって、医薬組成物中の治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に当該患者に経口投与することを含む、方法。
【請求項35】
心血管障害が、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低αリポ蛋白血症、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
治療有効量が約100mg〜約1800mgである、請求項34または35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
患者への投与が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後の間に行われる、請求項34〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
患者への投与が、食物の摂取と実質的に同時に行われる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
患者への投与が、食物の摂取の直後から食物の摂取の約1時間後までに行われる、請求項38記載の方法。
【請求項41】
医薬組成物が錠剤の単位投与剤形を有する、請求項34〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
錠剤が約100mg〜約1800mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
錠剤が約300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含み、かつ治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートおよび医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物、処方情報ならびに容器を含むキットであって、当該処方情報が、医薬組成物中のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に投与することに関する患者への助言を含む、キット。
【請求項45】
処方情報が、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを食物と共に投与することにより経口吸収性が改善されることを記載する、請求項44記載のキット。
【請求項46】
治療有効量が約100mg〜約1800mgである、請求項44または45記載のキット。
【請求項47】
治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項46記載のキット。
【請求項48】
患者への投与が、食物の摂取の約1時間前から食物の摂取の約2時間後の間に行われる、請求項44〜47のいずれかに記載のキット。
【請求項49】
患者への投与が、食物の摂取と実質的に同時に行われる、請求項48記載のキット。
【請求項50】
患者への投与が、食物の摂取の直後から食物の摂取の約1時間後までに行われる、請求項48記載のキット。
【請求項51】
医薬組成物が錠剤の単位投与剤形を有する、請求項44〜50のいずれかに記載のキット。
【請求項52】
錠剤が約100mg〜約1800mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含む、請求項51記載のキット。
【請求項53】
錠剤が約300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル] 2-メチルプロパンチオエートを含み、かつ治療有効量が約300mg〜約900mgである、請求項52記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−520810(P2006−520810A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507671(P2006−507671)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003589
【国際公開番号】WO2004/082675
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】