S/TEMのサンプルを作成する方法およびサンプル構造
S/TEMサンプルの調製および分析用の改良された方法および装置である。本発明の好ましい実施形態により、TEMサンプル作成用、特に小さい形状(厚さ100nm未満)のTEMラメラ用の改良された方法が提供される。機械視覚ベースの計測および画像認識、高精度のフィデューシャルマーク、ならびに自動フィデューシャル配置の組み合わせを用いてラメラの配置正確度および精度を大幅に改善させる。本発明の好ましい実施形態により、TEMサンプル作成を一部または全部自動化するための方法、TEMサンプルの作成および分析のプロセスを労力のより少ないものにするための方法、ならびにTEM分析のスループットおよび再現性を高めるための方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって組み込まれた2006年10月20日出願の米国特許仮出願第60/853,183号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、透過型電子顕微鏡および走査型透過電子顕微鏡用のサンプル調製および分析方法に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路の作製などの半導体製造は、一般にフォトリソグラフィの使用を伴う。回路形成中の半導体基板、通常シリコン・ウェハは、放射で露光されると溶解度を変化させるフォトレジストなどの材料でコーティングされる。放射源と半導体基板の間に配置されるマスクまたはレチクルなどのリソグラフィ・ツールは、影を落とし、基板のどの領域が放射で露光されるか制御する。露光後、フォトレジストは露光された領域または露光されていない領域から除去され、その後のエッチングまたは拡散プロセス中にウェハの各部を保護するフォトレジストのパターン層をウェハ上に残す。
【0004】
フォトリソグラフィ・プロセスは、しばしは「チップ」と称される複数の集積回路デバイスまたは電気機械デバイスをウェハそれぞれの上に形成することを可能にする。次いでウェハは、単一の集積回路デバイスまたは電気機械デバイスをそれぞれ含む個々のダイに分割される。最終的に、これらダイは、さらなる工程にかけられ、個々の集積回路チップまたは電気機械デバイスにパッケージ化される。
【0005】
製造プロセス中には、露出および焦点が変動するので、リソグラフィ・プロセスによって現像されるパターンを継続的に監視または測定し、パターンの寸法が許容範囲内であるかどうか判定することが必要になる。しばしばプロセス制御と称されるそうした監視の重要性は、パターンの大きさが小さくなるにつれて、特に最小フィーチャ・サイズがリソグラフィ・プロセスによって利用可能な解像度の限界に近づくにつれて、かなり増している。かつてなく高いデバイス密度を達成するために、ますます小さいフィーチャ・サイズが要求されている。これには、相互接続ラインの幅および間隔、コンタクト・ホールの間隔および直径、ならびに様々なフィーチャの角およびエッジなどの表面形状が含まれる。ウェハのフィーチャは、3次元構造であり、完全な特徴付けでは、ラインまたはトレンチの上部幅など、表面の寸法だけでなく、フィーチャの全面的な3次元の外形(profile)を描写しなければならない。プロセス・エンジニアは、製造プロセスを微調整するためにそのような表面フィーチャの限界寸法(CD:critical dimensions)を正確に測定し、所望のデバイスの形状が得られることを確実にしなければならない。
【0006】
典型的には、CD測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)などの機器を用いて行われる。走査型電子顕微鏡(SEM)では、1次電子ビームが、観察される表面を走査する微細スポットに集束される。2次電子は、1次ビームが表面に当たると表面から放出される。この2次電子が検出され、画像が形成され、この画像の各点の輝度は、ビームが、表面上の対応するスポットに当たる際に検出される2次電子の個数によって決定される。しかし、フィーチャがますます小さくなり続けると、測定されるフィーチャが、通常のSEMによってもたらされる解像度に対して小さくなりすぎる時点が訪れる。
【0007】
透過型電子顕微鏡(TEM)により、観察者は、ナノメートル程度で極めて小さいフィーチャを見ることが可能になる。材料の表面を撮像するだけのSEMと対照的に、TEMは、サンプルの内部構造の分析も可能にする。TEMでは、幅広のビームがサンプルに当たり、サンプルを通って透過される電子は、サンプルの画像を形成するように集束される。サンプルは、1次ビーム中の多くの電子がサンプルを通って移動し反対側の部位に抜け出ることを可能にするために、十分に薄くなければならない。サンプルは、ラメラとも称され、典型的には厚さ100nm未満である。
【0008】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)では、1次電子ビームは微細スポットに集束され、このスポットはサンプル表面にわたって走査される。ワーク・ピース(work piece)を通って透過される電子は、サンプルの向こう側で電子検出器によって収集され、画像上の各点の強度は、1次ビームが、対応する表面上の点に当たる際に収集される電子の個数に対応する。
【0009】
サンプルは、(TEMとSTEMのいずれにしても)透過型電子顕微鏡法を用いて観測するため、薄くしなければならないので、サンプルの調製は、繊細な手間のかかる作業であり得る。「TEM」という用語は、本明細書では、TEMまたはSTEMを指し、TEM用のサンプルを調製することに言及することは、STEM上で観測するためにサンプルを調製することも含むと理解されたい。本明細書で使用される「S/TEM」という用語も、TEMおよびSTEMの両方を指す。
【0010】
TEMの試験片を調製することについては、いくつかの技法が知られている。これら技法は、劈開、化学研磨、機械研磨、または幅広のビームの低エネルギー・イオン・ミリング、あるいは上記の1つまたは複数の組み合わせを含んでよい。これら技法の欠点は、これら技法が特定部位に特化したもの(site−specific)でないことであり、出発材料をますます小さい断片に薄く切ることがしばしは必要であり、それによって原試料の大部分を破壊することになる。
【0011】
他の技法は、「リフト・アウト(lift−out)」法と一般に称され、取り囲んでいる基板の部分を破壊または損傷することなくサンプルを基板またはバルク試料から切断するために集束イオン・ビームを使用する。そのような技法は、物理科学または生物科学に一般的な材料と同様に、集積回路の製造に使用されるプロセスの結果を分析するのに役立つ。これら技法を使用して(例えば、断面図または平面図において)任意の配向のサンプルを分析することができる。TEMで直接用いるために十分に薄くサンプルを抽出する技法もあれば、観察前に追加の薄化を必要とする「チャンク」または大きいサンプルを抽出する技法もある。加えて、これら「リフト・アウト」試験片は、TEM以外の他の分析ツールによって直接分析されてもよい。サンプルがFIBシステムの真空チャンバ内で基板から抽出される技法は、通常「原位置(in−situ)」技法と称され(ウェハ全体がサンプルを取り除くために別のツールへ移されるときなど)、サンプルが真空チャンバの外側に取り出されるものは、「外位置(ex−situ)」技法と呼ばれる。
【0012】
抽出前に十分に薄化されたサンプルはしばしば、観測するために薄い電子透過膜で覆われた金属格子(grid)へ移され、その金属格子へ装着される。図1Aは、従来技術のTEM格子10の上へ装着されたサンプルを示す。典型的なTEM格子10は、銅、ニッケルまたは金製である。寸法は変わり得るが、典型的な格子は、例えば、直径3.05mmであってよく、90×90μmの大きさのセル14と、幅35μmのバー13とからなる中間部12を有する。衝突電子ビーム中の電子は、セル14を通過することはできるが、バー13によっては阻止されることになる。中間部12は、縁部16によって囲まれている。縁部の幅は、0.225mmである。縁部16には、方向マーク18を除き、セルがない。薄い電子透過支持膜の厚さ15は、サンプルキャリア全体にわたって均一であり、約20nmの値である。分析されるTEM試験片は、セル14内に配置または装着される。
【0013】
例えば、一般に使用される外位置のサンプル調製技法では、図2に示すように、タングステンなどの材料の保護層22は、電子ビームまたはイオン・ビーム蒸着を用いてサンプル表面21上の対象の領域を覆って蒸着される。次に、図3および図4に示すように、高ビーム電流(それに呼応して大きいビーム・サイズである)を用いる集束イオン・ビームを使用して多量の材料を対象の範囲の前後部から離れるようにミリングする。ミリングされた2つの矩形部24および25の間の残りの材料は、対象の領域を含む薄い垂直のサンプル・セクション20を形成する。対象の範囲の後側でミリングされたトレンチ25は、前トレンチ24より小さい。より小さい後トレンチは、主に時間を節約するためのものであるが、より小さいトレンチはまた、出来上がったサンプルが平坦部を越えてより大きいミリングされたトレンチの中に落下し、それにより微細加工の途中に試験片を除去することが困難になり得るのも防止する。
【0014】
図5に示すように、試験片が所望の厚さに達した後で、ステージは傾けられ、U字形の切り込み26が、サンプル・セクション20の周辺に部分的に沿ってある角度で作成され、サンプルの上部の両側で、タブ28によってサンプルは吊るされたままになる。小さいタブ28は、サンプルが十分にFIB研磨された後、最少量の材料を自由にミリングすることが可能になるので、薄い試験片の上に蓄積する再堆積アーチファクト(redeposition artifact)の可能性を低減する。次いで、サンプル・セクションは、次第により微細になるビーム・サイズを用いてさらに薄化される。最後に、タブ28は切断され、ラメラ27は完全に切り離される。材料の最後のタブが切り離されると、ラメラ27がトレンチの上でわずかに動いたり、倒れたりするのを観察できる。完成し分離したラメラ27を図6に示す。
【0015】
次いで、完成したラメラ27を含むウェハは、FIBから除去され、マイクロマニピュレータを装備する光学顕微鏡の下に配置される。マイクロマニピュレータに取り付けられたプローブは、ラメラの上に位置を定められ、ラメラと接触するまで慎重に降ろされる。図7に示すように、静電力が、ラメラ27をプローブ先端28に引き付けることになる。次いで、ラメラを引き付けた先端28は典型的には、図8に示すようにTEM格子10に動かされ、ラメラが、バー13とバー13の間のセル14のうちの1つにおける格子上に配置されるまで降ろされる。
【0016】
どの方法を使用するにしても、TEM分析用のサンプルの調製は、困難であり、時間のかかるものである。TEMサンプルの調製および分析に関係している多くのステップは、手動操作の機器を用いて行われなければならない。このため、TEMサンプルをうまく調製するには、高度な訓練を受け、熟達した操作者および技能者を使用することが一般に必要とされる。その場合にも、再現性およびスループットの任意の適当な水準を満たすことはとても難しい。
【0017】
サンプルの調製にFIB法を使用することにより、TEM分析用のサンプルを調製するために必要とされる時間が数時間だけに削減された。しかし、CD測定は、ある具体的なプロセスを十分に特徴付けし、適格と認めるために、ウェハ上の異なる位置からの複数のサンプルをしばしば必要とする。状況次第では、例えば、所与のウェハから15個から50個のTEMサンプルから分析することが望ましいことになる。そのように多くのサンプルを既知の方法を用いて抽出し、測定しなければならないときには、1つのウェハからのサンプルを処理するための合計時間は、数日または数週間にもなり得る。TEM分析によって発見できる情報は、とても有益であり得るが、TEMサンプルを作成および測定するプロセス全体は、従来とても手間を要し、時間のかかるものであり、製造プロセス制御のためにこのタイプの分析を使用することは、実用的ではなかった。
【0018】
さらに、既存のTEMサンプル構造は、自動化した抽出および実装に耐えるために十分には頑強でない。加えて、従来技術の方法を用いて作成されるTEMの構造は、しばしば、100nm以下に薄くされたときに湾曲または反りの問題がある。従来技術では、反りが操作者によって観察されたときには、TEMサンプルの手動の薄化は停止される。そのような手動の観察は、自動システムにおいて望ましいものではない。
【0019】
TEMサンプルの抽出および測定をより十分に自動化し、スループットおよび再現性を高め、それによりTEM測定が、プロセス制御用の統合された計測または原位置での計測に取り入れることができる方法が必要とされている。100nm以下に薄化したときに反り現象の問題がなく、自動化した抽出および実装に耐えるに十分に頑強であるTEMサンプルを作成する方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/853,183号
【特許文献2】PCT出願PCT/US07/82030
【特許文献3】米国特許出願第11/252,115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、TEMサンプル分析用の改良された方法を提供することにある。本発明の好ましい実施形態は、TEMサンプル作成用、特に小さい形状(厚さ100nm未満)のTEMラメラ用の改良された方法を提供することにある。本発明のいくつかの好ましい実施形態により、TEMサンプル作成を一部または全部自動化する方法が提供され、それによりTEMサンプルの作成および分析のプロセスを労力のより少ないものにし、TEM分析のスループットおよび再現性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記は以下の本発明の詳細な説明をより良く理解するために、本発明の特徴および技術的な利点をかなり幅広く概説した。本発明の追加の特徴および利点を、以下に説明することにする。当業者によれば、開示した概念および具体的な実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構造を変更または設計するための基礎として容易に利用できることが理解されよう。当業者によればそうした均等な構成は、添付した特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱しないことがやはり理解されよう。
【0023】
本発明およびその利点をより深く理解するために、次に、添付図面と併せて以下の説明に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】典型的な従来技術のTEM格子を示す図である。
【図2】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図3】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図4】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図5】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図6】従来技術による完成し分離したラメラの顕微鏡写真である。
【図7】従来技術によるプローブおよび静電気引力を用いたラメラの移送を示す図である。
【図8】従来技術によるプローブおよび静電気引力を用いたラメラの移送を示す図である。
【図9】本発明の好ましい実施形態による1つまたは複数のラメラを作成するステップを示す流れ図である。
【図10】高精度のフィデューシャル(fiducial)がミリングされ、保護層がラメラ位置を覆って蒸着された後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図11】低精度のフィデューシャルがミリングされた後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図12】バルク・ミリングが完了した後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図13】バルク・ミリングが完了した後の本発明によるラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真を示す図である。
【図14】図11のプロセスによって作成されるラメラを示す図である。
【図15】図11のプロセスによって作成されるラメラを示す図である。
【図16】本発明によるラメラの高解像度の顕微鏡写真を示す図である。
【図17A】一方のビームが、ラメラを薄化するために使用される一方、他方のビームが、ミリングのエンドポイントを見出すためにラメラを撮像する場合のデュアル・ビーム・システム示す図である。
【図17B】エンドポイントを見出すために、1つのビームがミリングおよび撮像することを可能にするために、サンプルを回転する場合の単一のビーム・システムを示す図である。
【図17C】ミリングのエンドポイントを見出すために、本発明により、撮像され得るミリング・プロセスおよび画像処理中のラメラ部位を示す図である。
【図18】TEMサンプルを薄化するために使用される、本発明によるミリング・パターンを示す図である。
【図19A】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図19B】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図19C】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図20】本発明により、より薄い中央の「窓」が作製されたラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態により、ラメラ(lamella)作成用の改良された方法が提供される。好ましい実施形態は、部位(site)間のばらつきがごく少ないS/TEM測定のために厚さ50〜100nmのS/TEMのサンプルを作成することができる。このプロセスは、幅10μm×深さ〜5μm×厚さ〜500nmのラメラであり、最終目標厚さ(50〜100nm)で最終的に薄化される窓(window)が3μm×3μmのものを製作できる。本発明によって製作されるS/TEMのサンプルは、100nm以下に薄化したときに反り現象の問題がなく、自動化した抽出および実装を耐え抜くために十分に頑強なものとなる。
【0026】
本発明の好ましい方法または装置は、多くの新規の態様を有しており、本発明は、様々な目的のために様々な方法または装置の中に具現化できるので、必要とされる態様すべてがすべての実施形態に存在するわけではない。また、説明した各実施形態の態様の多くは、別々に特許性があり得る。
【0027】
現在、FIBシステム用のTEMラメラ作成プロセスは、ラメラ作成のために手動入力を対象のフィーチャ(feature)または部位を位置決めするための1次的方法として使用する。典型的には、所望のラメラ位置が手動で位置決めされた後で、フィデューシャルまたは位置決めマークがすぐ近くにミリングされる。FIB撮像は必然的にいくらかのサンプルの損傷を引き起こすので、保護層が、撮像および/またはミリングの前に、所望のラメラ位置を覆うように蒸着される。この保護層は、基板上のフィーチャを見ることをより困難にさせるので、典型的には、フィデューシャルマークを保護層の中にミリングして、ビームを向け、切断するために適所に位置決めするのを助ける。このフィデューシャルは、位置決めマークとしてその後の処理に使用される。次いで、このフィデューシャルを手がかりに画像認識を使用してその後のラメラのミリングのための位置を見つける。このフィデューシャルをミリングするために、所望のラメラ部位近くの位置が、典型的には手動で選択され、次いで所望のフィデューシャル・パターンがその位置において自動でミリングされる。
【0028】
ラメラ部位を手動で識別し、次いでフィデューシャルの位置を手動で選択するこの方法は、高度の精度または正確度を与えない。結果として、既知の自動ラメラ・ミリングの手法は、厚さ約500nmであるラメラの粗いミリングに制限される。典型的には、さらなる薄化は、所望のラメラ厚さ100nm以下を達成するために手動制御される。
【0029】
図9は、本発明の好ましい実施形態による1つまたは複数のラメラを作成するステップを示す流れ図である。この実施形態では、機械視覚ベースの計測(machine−vision based metrology)および画像認識、高精度のフィデューシャルマーク、ならびに自動フィデューシャル配置を使用してラメラの配置の正確度および精度を大幅に改善させる。プロセス中の様々なステップを図10〜図16に示す。
【0030】
まず、ステップ401において、ウェハは、FEIカンパニー(オレゴン州ヒルズバラ)すなわち本発明の譲受人から市販のCertus Dual BeamシステムなどのFIBシステムの中に搭載される。ステップ402において、ウェハ表面上のラメラ部位は、画像認識ソフトウェアを用いて自動的に位置決めされる。適当な画像認識ソフトウェアは、例えば、マサチューセッツ州NatickのCognex Corporationから入手可能である。画像認識ソフトウェアは、同様のフィーチャのサンプル画像によって、またはCADデータからの形状の情報によって所望のラメラ位置を位置決めするように「トレーニング」できる。自動化したFIBまたはSEM計測を使用してラメラ部位を識別する、またはラメラ部位を識別するのを助けることもできる。計測は、画像ベースのパターン認識、エッジ検出、ADR、重心計算、ブロブ(brobs)などからなり得る。
【0031】
任意のステップ404において、ラメラ部位は、1時間20分の間、幅15μm×高さ3μmの保護用の5kV FIBタングステン蒸着が施される。これにより、30kV FIBの部位整列ステップ(site allignment step)および蒸着ステップ中の損傷を防ぐために十分なタングステンを部位表面上に与える。この保護層は、SEM同時計数に対する5kV180pA FIB開口が4μm未満の場合には、直接配置されてよく、それ以外の場合には部位整列のプロセスが、この蒸着の配置をさらに精確にするために使用できる。
【0032】
ステップ406において、所望のラメラ位置それぞれに対する任意の所望のフィデューシャルマークの精密な位置が特定される。例えば、サンプル位置を撮像するためにFIBまたはSEMを用いて、フィデューシャル位置は、操作者がマウスを使用して所望のフィデューシャル位置の周りに仮想ボックスをドラッグすることによって特定できる。次いで、自動化した計測ソフトウェアが、サンプル位置での識別可能なフィーチャ(例えば、フィーチャの右端から15nm)に対してフィデューシャル位置を精密に測定し得る。それぞれのラメラ部位が位置決めされると、次いでフィデューシャルは、それぞれのラメラ部位で、それぞれのフィデューシャルとそれぞれのラメラ位置の間の空間的関係が等しくなるように特定された精密な位置で自動的にミリングされ得る。フィデューシャル位置は、ウェハ表面上のある特定の構造に対するフィデューシャル位置を特定するためにCADデータを用いて特定されてもよい。
【0033】
好ましい実施形態では、IC3D(商標)ソフトウェアのビジョン・ツール(vision tool)の使用によって精細なフィデューシャルの配置が実現される。特定のパターンは、画像認識ソフトウェアによって位置決めすることができ、画像認識ソフトウェア使用して目標構造を位置決めすることができる。次いで、一連のカリパス(エッジを突き止めるパターン認識ツール)を使用して目標構造のエッジを見つけ、目標構造の近くの精細なフィデューシャルが中央にくるように精密に合わせる。IC3Dのシェイプ・リンク機能(shape linking capabilities)の広範な使用により、それぞれの部位の直接測定に基づいて部位のフィデューシャルを確実に配置できる。
【0034】
好ましくは、高精度の(精細な)フィデューシャルと低精度の(粗い)フィデューシャルの組み合わせを使用してラメラの配置精度および正確度を最適化する。現在、ラメラ位置およびミリングに用いられるフィデューシャルは、ミリングされた2本の線の交差点によって形成される「X」などの低精度のフィーチャだけからなる。しかし、十分なラメラを製作するのに必要な解像度では、それぞれのミリングされた線は、幅数ナノメートルになる。エッジ検出ソウトウェアを使用してそれぞれのミリングされた線の中心線、次いで具体的な基準点を決定するために使用される2本の数学的に決定された中心線の交差点を決定しなければならない。典型的には、このフィデューシャルを使用するこのタイプの決定には、あまりに多くの誤差があり、多くの小さい形状のラメラの応用に必要とされる誤差範囲内でラメラ位置を正確に決定することができない。
【0035】
好ましい実施形態では、典型的な低精度のフィデューシャルマークとより高精度のマークとの組み合わせが使用される。図10に示す矩形部506などの高精度のフィデューシャルによりラメラ位置がよりずっと正確に決定されることが可能になる。図10に示す矩形のフィデューシャル506は、所望のラメラ位置どちらの端部にも位置決めされる。高精度のフィデューシャルは、以下に述べる低精度のフィデューシャルより小さい。このため、高精度のフィデューシャルは、バルク・ミリングに用いられる大きいFIBビームを用いて識別可能でなく、より小さいFIBビームを用いたラメラの最終的な配置にのみ用いられる。図10中の矩形のフィデューシャルは、それらの上部エッジおよび底部エッジのY位置を決定するために画像分析を用いて位置決めされる。これにより、フィデューシャルがFIB撮像中に損傷を受ける場合でも、正確な位置決めになる。エッジ検出ソウトウェアは、ラメラの上部エッジおよび底部エッジを精密に位置決めするために上部エッジおよび底部エッジを識別さえすればよい。これら矩形のフィデューシャルのためのパターン認識は、2測定ストラテジに基づいており、すなわち、フィデューシャルの上部エッジおよび底部エッジが測定される。エッジ位置が位置決めされると、ラメラの上部エッジおよび底部エッジと平行である中心線または軸が決定できる。サンプルがFIBを用いて撮像される際、表面は漸次、スパッタされ除かれる。上述の高精度のフィデューシャルは、このFIBの損傷に非常に耐性があり、というのも測定される両エッジは、ほぼ同じ割合で変化することになり、それでラメラ配置の誤差全体は非常に低くなるからである。
【0036】
図11中の大きい円などの低精度のフィデューシャル504は、おおよそのラメラ位置を素早く見つけバルク・ミリングを行うなどの全体構造のパターン認識のために使用できる。適当な低精度のフィデューシャルは、迅速なバルク材料の除去に適している低解像度(より大きいビーム・サイズ)のイオン・ビームを用いてサンプルが撮像されるときに容易に識別することができる。複数のフィデューシャル、および低精度のフィデューシャルおよび高精度のフィデューシャルならびに様々なフィデューシャルの形(図11に示すような)の組み合わせを使用して、よりさらに正確な配向を決定することができる。
【0037】
フィデューシャル位置が決定されたら、ステップ408において、高精度のフィデューシャルは、所望の位置でミリングされる。図10に示すように、最終的な薄化プロセス中にラメラを垂直配置するために、1nA 30kVのFIBを用いて、小さい矩形のフィーチャ506が、ラメラ部位(破線507によって差し示される)の各端部でミリングされる。好ましい実施形態では、適当なフィデューシャルパターンにより、最終的なラメラ配置が10nmの範囲内で正確であることが可能になる。いくつかの実施形態では、このフィデューシャルのサイズおよび形は、所望のラメラのサイズ、幅、または位置に応じて変わり得る。
【0038】
ステップ410において、高精度のフィデューシャルがミリングされた後に、例えば、タングステンまたは白金から構成されるバルク保護層508は、ミリング・プロセス中にサンプルを損傷から保護するためにラメラ部位を覆って蒸着される。図5は、保護層508がウェハ表面503上の所望のラメラ位置を覆って蒸着されたラメラ部位502を示す。表面のごく近くで情報が必要とされる場合のいくつかのサンプルについては、蒸着を行うための低エネルギーFIB(〜5keV)を用いて保護層を蒸着することは役立ち得る。高精度のフィデューシャル506は、後々の処理中に高精度のフィデューシャル506を保護するために、保護材料を用いて軽く埋め戻されることも好ましい。
【0039】
ステップ412において、バルク保護用の蒸着後、図11に示すように大きい円形のフィデューシャル504が、精細なフィデューシャルの周りにミリングされる。これら低精度のフィデューシャルは、おおよそのラメラ位置の素早い再発見やラメラのバルク・ミリングのための位置の決定などの全体構造のパターン認識に用いられる。より大きいビーム・サイズが、バルク・ミリングに用いられることになるので、適当な低精度のフィデューシャルは、より低い解像度の画像においても、パターン認識ソフトウェアによって容易に識別されるはずである。次いで、このシステムは、フィデューシャルを位置決めすること、およびラメラ部位がフィデューシャルから一定のオフセットで配置されていることを知ることによって、それぞれの所望のラメラ部位に容易に再配置することができる。
【0040】
ステップ414において、ウェハ上に他のラメラ部位がある場合には、FIBシステムは、次のラメラ部位の座標に移動する。その場合は、このプロセスは、ステップ402へ戻り、ラメラ・ミリング・プロセスが開始される前にステップ402から414が残りのすべてのラメラ部位について繰り返される。
【0041】
すべてのラメラ部位でフィデューシャルがミリングされたら、ステップ416において、FIBシステムは、ミリングされていないラメラ部位に移動する。ステップ414において、バルク基板のミリングを使用してラメラを粗く成形する。図12は、ステップ314のバルク・ミリングが完了した後のラメラ部位を示す。より大きいイオン・ビーム・サイズがバルク材料の除去に適することになる。好ましい実施形態では、それぞれのラメラは、基板上の隣接する2つの矩形部512を切断するためにFIBを用いて形成され、2つの矩形部の間の残りの材料は対象の領域を含む薄い垂直ウエハ510を形成する。イオン・ビームは、基板表面に対してほぼ直角で基板に向けられることが好ましい。ビームは、抽出されるサンプル・セクションに隣接する矩形の領域内で走査され、所定の深さを有する矩形の穴512を形成する。ミリングされた穴は、抽出されたサンプル中の対象のフィーチャを含むのに十分に深くなくてはならない。このミリングされた穴は、以下に述べるようにサンプルの機械的剛性を増大させるために、薄化したサンプルの下部に(対象のフィーチャの下方に)バルク材料が残ってもよいほど十分に深いことが好ましい。ビームは、抽出されるサンプル・セクションに隣接する矩形の領域内で走査されるが、第1の矩形の穴からサンプル・セクションの反対側までは走査されない。好ましくは、2つの矩形の穴の間の残りの材料は、抽出されるサンプル・セクションを含む薄い垂直なウエハを形成する。
【0042】
低精度のフィデューシャル504を使用して、(より迅速にサンプルを取り除くためにより大きいビーム直径を用いた)ラメラのバルク・ミリングについてのビーム位置を制御できる。ラメラの両側面から中に入る典型的な断面ミル・パターンが使用でき、厚さ約2μmの粗ラメラを残す。次いで、このラメラは、アンダーカット・ステップの準備として両側に施される断面クリーニングのためのミリングで約800nmまでさらに薄化される。図13は、バルク・ミリングが完了した後のラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真を示す。
【0043】
ステップ420において、フィデューシャルおよびバルク・ミリングがなされた後に、ラメラは、アンダーカット・プロセスを受ける。好ましくは、FIBカラムは約4.5度傾けられ、ラメラの底部は、1nAの断面クリーニングでアンダーカットされる。またはサンプル・ステージが傾けられてもよい。アンダーカットの精密な位置は、精細なフィデューシャルを突き止めるとともに測定するためのビジョン・ツールを用いて位置決めすることができる。より大きいFIBの傾斜が(ハードウェアの制約に従って)採用され得るが、浅い入射角のアンダーカットは、TEMサンプル作製プロセスに2つの利益をもたらす。第1に、ラメラ面は、大きい入射角で撮像されず、したがってGa+注入量および損傷を低減する。第2に、アンダーカット・プロセスで、中間薄化ステップとしての役割を果たし、この中間薄化ステップは、いくつかの異なる基板(TI SiGe、TI STI、MetroCal、IFX DTMO、Fujitsu contact)について適度に狭い範囲の幅までラメラの厚さを減じる。ラメラ・サンプル601についてのアンダーカット602およびサイドカット604が、図14に示されている。
【0044】
ステップ422において、次いでサンプルは180度回転され、上記プロセスが底部を切り離すためにラメラの上部エッジで繰り返される。これにより、目標構造を中心とした厚さが約500nmである粗いラメラになる。
【0045】
ステップ424において、ラメラの側部を切り離すためにラメラの底部から上面近くまで2カ所切断するが、ラメラはタブ606(図14に示す)によってラメラの上部での両側で吊るされたままにしておく。ラメラの最終的な薄化が完了したら、プローブがラメラに取り付けられ、タブまたはヒンジが断ち切られ、それによりラメラが抽出される。あるいは、プローブは、参照によって組み込まれる2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030に記載されているように、ラメラのヒンジを破断するために使用される。
【0046】
任意のステップ426において、IC3Dビジョン・ツールは、精細なフィデューシャルを突き止めるために使用され、バルク・ミリング・プロセスによる任意の再堆積物およびフィデューシャルをミリングするプロセス中に蒸着された保護用のタングステン層を除去することができる。
【0047】
第1の2つの矩形のバルク・ミリング切断およびアンダーカットによって形成されるラメラは、厚さ約500nmになることが好ましい。ステップ428において、(対象の領域を含む)ラメラの中央は、好ましくは、以下に述べるミル・パターンで、FIBの傾斜1.2度の30pAのビームを用いて、両側面から薄化される。以下に述べるように、ラメラ・ミリングに通常用いられる典型的なクリーニング・ミル・パターンは、非常に薄いラメラ(100nm未満)の湾曲または反りを引き起こす。ミル・パターンを用いることによりサンプル面上を複数のビームが通過し、サンプルの反りを防ぐことを出願人は発見した。このミル・パターンを、薄化プロセス中のラメラの反りをなくす方法の他の実施形態とともに、以下にもっと詳細に述べる。
【0048】
最終的な薄化切断が、ラメラのエッジを見つけるために(画像認識とともに)カリパスを用いて行われてよく、その上、最終的なラメラの厚さは、ラメラ面からのミリング位置のオフセットによって決定される。例えば、サンプルから抽出されるラメラごとに、ラメラの正確な位置がフィデューシャル位置から決定されてよい。第1の切断は、所望のサンプルの中央から離れるように所望のラメラの半分の厚さでミリングされる。FIBまたはSEM撮像を用いてトップ・ダウン方式でサンプルを見る際、自動化した計測ソフトウェアは、第1の切断のエッジおよびフィデューシャル位置を測定し、第2の切断の位置を精密に決定できる。ビーム位置を精密に制御するために高精度のフィデューシャルの位置を用いて、ラメラは反復可能なプロセスにおいて微細に集束されたFIBを用いて厚さ100nm以下まで薄化される。
【0049】
リアル・タイム・パターン認識を使用してFIBを配置するのが好ましい。リアル・タイム・パターン認識および計測を行う適当なFIBシステムは、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから入手可能であるCertus 3D Dual Beamシステムである。
【0050】
任意のステップ430において、低kVクリーニングが、傾斜4.5度の180pA 5kVのFIBを用いて最終的に薄化される窓に関して行われる。出願人は、ラメラのそれぞれの面上の10秒のクリーニング・ミルが、TEM撮像の状態の大幅な改善をもたらすことを発見した。
【0051】
ウェハ上に他のミリングされていないラメラ部位がある場合には、ステップ432において、FIBシステムは、次のミリングされていないラメラ部位の座標へ移動する。次いでプロセスはステップ416に戻り、ステップ416〜432が、残りのすべてのミリングされていないラメラ部位について繰り返される。
【0052】
図9を参照して述べた方法によって製作された最終的なラメラ構造を図14〜図16に示す。以下に述べるように、中央のラメラ「窓」610は、厚さ100nm以下まで薄くされてよく、機械的強度が増大したサンプルをもたらすために周囲の材料をより厚く残す。好ましくは、中央の窓は、幅約3μm、深さ4μmおよび厚さ50〜70nmである。窓610を囲むより厚い材料(図15に参照符合612によって示す)は、ミリング・プロセス中にラメラが反るのを防ぐ助けもする。この「窓のある」ラメラ構造の機械的強度の増大は、参照によって組み込まれる2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030に記載されるような外位置ラメラ抽出デバイスを用いるときには、やはり非常に望ましい。図16は、上述のプロセスを用いて作成されたラメラの高解像度の顕微鏡写真を示す。
【0053】
上述のようにフィデューシャルマークに対するミリング位置の決定に加えて、ミリング・プロセスは、トップ・ダウンのパターン認識および計測を用いてエンドポイントを見出すことができる。好ましい実施形態では、図17A中に概略的に示すように(原寸に比例していない)、FIBミリングは、垂直に装着されたFIBカラム710が基板503をミリングしてラメラ701を作成するために使用され、SEMカラム722がラメラ701を撮像するために使用されるデュアル・ビームFIB/SEMシステムにおいて行われ、それにより自動化した計測ソフトウェアが、ラメラが所望の厚さまで薄化されたか判定できる。あるいは、一方のビームがミリングするために使用され、他方が撮像するために使用されるデュアルFIBシステムを使用してもよい。図17B中に概略的に示すように(原寸に比例していない)、単一のFIBカラム710を備えるシステムを使用してもよく、(従来技術で知られているように)同じビームがミリングおよび撮像するために使用できるようにサンプルは傾けられ、回転される。FIBがサンプルを撮像するために使用される場合には、ラメラへの損傷の危険があることを当業者は認識するであろう。
【0054】
図17Cも参照すると、最初のバルク・ミリング711がラメラ701の一方の側で完了した後、第2のバルク・ミリング712のエンドポイント(endpoint)は、100nm未満のフィーチャについての断面がCD−SEMによって測定されるのと同じやり方でラメラの幅を監視することによって制御できる。
【0055】
典型的には、構造の断面の幅を測定するために、SEMが、自動計測ソフトウェアと併せて使用される。電子ビームが、露光される断面にわたって走査される際に、2次検出が用いられるのであれ、後方散乱検出が用いられるのであれ、典型的には構造のエッジでの電子強度の変化がある。構造のエッジでのコントラストに基づいてエッジ位置を特定するための、およびそれらエッジ間の距離を決定するためのアルゴリズムが使用される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、断面計測についてのこれら既知の技法の新規な応用を成す。最終的なラメラ位置および厚さは、デュアル・ビーム・システムのFIBをサンプルの断面を露光するために用い、SEMを自動化された計測分析のためのサンプル撮像に用いる既知のスライスアンドビューテクニック(slice and view techniques)に類似したミリングおよび撮像技術に基づくことになる。したがって、パターン認識ツールおよびエッジ検出ツールなどの画像処理ツールは、ラメラの厚さを精密に制御するために使用できる。これらのタイプの従来技術の「断面観察」技術は、例えば、参照によって組み込まれているChitturiらによる米国特許出願第11/252,115号に「Method Of Measuring Three−Dimensional Surface Roughness Of A Structure」として記載されており、この出願は、本発明の譲受人であるFEIカンパニーに譲渡されている。
【0057】
好ましくは、薄化はまず、ラメラの一方の側で完了されることになる。最初のミリングの位置は、上述したフィデューシャル位置または他の計測を用いて制御されることになる。次いでサンプルが、集束イオン・ビームまたは走査型電子顕微鏡を用いてトップ・ダウン方式で撮像されることになる。CD−SEMと同様に、イオン・ビームまたは電子ビームが基板の表面にぶつかるときに、2次電子および後方散乱電子が放出される。これらの電子はそれぞれ、当技術分野で知られているように2次電子検出器または後方散乱電子検出器によって検出される。2次電子検出器または後方散乱電子検出器によって生成されるアナログ信号は、ディジタルの輝度値に変換される。ビーム(イオンまたは電子)がラメラ表面にわたって走査される際に、構造のエッジで放出電子強度の変化がある。構造のエッジのうちのいずれかでの輝度値の差またはコントラストに基づいてエッジ位置を特定し、それらエッジの間の距離を決定するためのアルゴリズムが使用される。画像の分析が(例えば、所望のラメラ/サンプルの最小幅などの)ある特定の基準が満たされていないと判定する場合には、ミリングおよび画像処理のステップが繰り返される。
【0058】
CD−SEMを用いる自動化した断面計測は、100nm未満のレベルで限界寸法を決定するために長く使用されてきた。結果として、この関連のプロセスは、他のあまり一般的でない技法の信頼性をはるかに超えた信頼性のレベルまで洗練されてきている。したがって、CD−SEM計測技術は、インライン・プロセス制御に対してTEMサンプルの使用を可能にするのに十分な信頼性および反復性のレベルを与えることができる。このタイプの自動化したプロセス制御は、上述のサンプルの反りの問題のために従来技術において実用的ではなかった。しかし、本明細書に記載したミリング・アルゴリズムとサンプル構造の組み合わせを用いることによって、100nm以下のサンプルの反りは、大いに最小限度に抑えることができる。これにより、エンドポイント・プロセス(end−pointing process)の自動化を用いることが可能になり、従来技術の時間のかかる手動の薄化をなくし、したがって特定の構造に対して、より大量の自動化したラメラ作成を可能にする。
【0059】
本発明の好ましい実施形態を実施するための適当なデュアル・ビームFIB/SEMは、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから入手可能であるCLM−3D Dual Beamシステムであろう。本発明による完全にまたは部分的に自動化した画像処理、計測および機械制御を実行するための適当なソフトウェアは、やはりFEIカンパニーから入手可能であるIC3D(商標)ソフトウェアなどであり、パターン認識ツールおよびエッジ検出ツール、ならびに「ドゥ・ホワイル(do while)」ループ機能を備えているはずである。
【0060】
上述のように、薄い(厚さ100nm未満の)TEMサンプルに通常関連する湾曲または反りは、ラメラの中央の窓を薄くするために新規なミリング・パターンを用いることによって最小限度に抑えることができる。従来技術による最終的なラメラの薄化は典型的には、イオン・ビームが対象のフィーチャに向かって1ラインずつ走査されるクリーン・アップ・カットまたは断面クリーニングとしばしば称されるミリング・パターンを利用する。この切断パターンの場合、ビームは、順次モードにおいて一連のラインの切断を実行する。このアイデアは、その表面をきれいにするために、ラインの切断を、露出した表面の中で徐々に進ませることである。すべてのラインは連続してミリングされ、次に移動する前に、ミリングはラインごとに完了する。次いで、ビームは、所望のサンプル面に向かって(y方向に)進み、このプロセスが繰り返される。ミリングは、1回の通過で完了し、スパッタ物質がラメラ・サンプル面上に再堆積するのを大部分防ぐことになる。
【0061】
パターンはわずかに変わり得るが、基本的にはビームは、ほとんど連続的に切断面に接している。正確なメカニズムははっきりしないが、結末は、サンプルが約70nmより薄くなるときに、サンプルはビームから離れるように反り始める、または歪み始める。歪んだサンプルでの正確な計測はとても困難であるので、サンプルの歪みは、深刻な問題である。さらに、対象の範囲は、損傷を受ける可能があり、その結果、対象の範囲は、さらなる分析に対して使用できなくなる。
【0062】
図18および図19A〜図19Cを参照すると、本発明の好ましい実施形態では、TEMサンプル510は、サンプルの切断面の中に(矢印820によって示すように)y方向に走査速度の減少(およびしたがって、ビームがサンプルの中に進むする際のより長い滞留時間/滞留時間の増大)させて、繰り返して走査するFIBミリング・パターンを使用することによって薄くされる。「走査速度を減少させること」によって、出願人は、(ビームをx方向に前後に走査する速度は、変化することができないが)ビームが所望のサンプル面に近づくにつれて各走査間の時間がより長くなることを意味する。さらに、ビームを何回か通過させてサンプル面の所望のミリング深度に達する。ミリング・ボックス810は、走査の正確な回数または各走査間の距離を示すものではなく、むしろラインの勾配が、ビームが最終的なサンプル面に向かって動くにつれて走査速度が減少し、および滞留時間が増大することを示すものである。同様のラスタ・パターンが従来技術において既知であるが、それら同様のラスタ・パターンは典型的には、基板に深い穴を迅速にミリングするために使用されている。しかし、出願人は、このパターンを、サンプルの反りを引き起こすことなくラメラを精密に薄くするために使用できることを発見した。典型的には、このタイプのラスタ・パターンは、主にスパッタ物質の再堆積に対する懸念のために、非常に小さい構造の精密なミリングに用いられない。深い穴をミリングするために使用されるとき、プロセスはしばしば、ミリングの進捗状況を評価するために止められる。自動化したツールでこのパターンを使用することによって、ミリングを止めることなく仕上げさせ、再堆積物は大いに最小限度に抑えられる。
【0063】
ビームが矢印820によって示すようにy方向に動くにつれてイオン・ビームの走査速度を減少させる(したがって滞留時間を増大させる)ことによって、全ビーム電流は、ビームが所望のサンプル面850に向かって動くにつれて、連続的なビームのステップそれぞれでのx位置ごとに増加する。これにより、より深いミリングがサンプル面850で発生する、サンプルの差別化されたミリングを可能にする。図19A〜図19Cは、図18中の線19に沿ってミリング・プロセス中の様々な時間でのサンプル510の断面を示す。図18Bに示すように、ミリングされたトレンチ840の深さは、サンプル面850に向かって傾いている(サンプル面に近づくにつれてより深くなる)。したがって、ミリングのスループットは増大する(サンプル面から離れた領域は、深くなるようにミリングされる必要がないので)。ラメラ窓610の底部での試料バルク材料860の保護は、サンプルの機械的剛性をも増大させ、その取扱い特性を改善させる。
【0064】
滞留時間または走査間隔を変えることに加えて、イオン・ビームを何回か通過させてサンプル面の所望のミリング深度に達することが好ましい。これら複数回のビームの通過は、ビーム角度、エネルギー、電流、電流密度または直径を変化させることなくなされることが好ましい。上述のクリーン・アップ・カットと対照的に、イオン・ビームは、サンプル面と常に接触した状態で維持されない。例えば、ビームを5回または6回通過させて最終的なTEMサンプル510をミリングすることができる。通過する毎に、最初のy座標822から最終的なy座標824まで所望の深さの一部をミリングするだけである。所望のサンプル面の深さが達成されていない場合には、再度ビームを通過させるために、(矢印821によって示すようにy方向に)最初のy座標822までビームはサンプル面から離れて戻るように操作される。ここで、出願人は、従来技術のサンプルの反りは、ビームがサンプル面と接触する際の静電気力または熱の蓄積に起因すると考える。ビームがサンプル面と接触しないように複数回通過させることによって、任意の熱/帯電の蓄積は、イオン・ビームの通過と通過の間に消散できる。結果として、最終的なTEMサンプル510の反りは、50nmの薄さのサンプルについても、大部分除かれる。
【0065】
多くの実施形態では、すべての切断は、SiのFIBミリングに典型的に用いられる滞留時間および走査間隔を有する、多くの市販のFIB機器で容易に利用できるビーム・エネルギー(例えば、数10keV)を用いて、単一のビーム電流、例えば20nAのビーム電流を用いて行うことができる。好ましいプロセス・パラメータを説明するが、当業者により、好ましいプロセス・パラメータは、サンプルのサイズおよび形ならびに基板の材料によって異なることが理解されよう。当業者は、様々な応用例においてサンプルを抜き出すための適当なプロセス・パラメータを容易に決定できるであろう。
【0066】
図14〜図16に示すように、(好ましくは、上述のミリング・パターンを用い、サンプルに機械的強度の増大をもたらす、より厚い周囲の材料を残して)上述のプロセスを使用して中央のラメラ「窓」610を厚さ100nm以下までさらに薄くすることができる。好ましくは、中央の窓は、幅約3μm、深さ約4μm、および厚さ約50〜70nmである。図15中の参照符合612によって示す窓610を囲んでいる、より厚い材料は、ミリング・プロセス中にラメラが反るのを防ぐのを助けもする。この「窓」のラメラ構造の機械的強度の増大は、参照によって組み込まれている2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030で説明するように、外位置ラメラ抽出デバイスを用いるときにやはりとても望ましい。図20は、上述のミル・パターンを用いる本発明により、より薄い中央の「窓」が作製されたラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真である。
【0067】
代替として、状況次第では、ラメラ全体を100nm以下の均一な厚さに薄くするために、(より薄い中央の「窓」なしで)上述のミル・パターンを使用することが望ましい可能性がある。そのような構造は、窓のある構造の機械的強度の増大を有することはないが、(側面および底で材料がより厚いので)サンプルの反りは、それでもやはり従来技術を上回って大幅に低減されることになる。
【0068】
本発明は、従来技術を上回るいくつかの重要な利点をもたらす。TEMサンプル調製用の典型的な方法を用いると、高度な訓練を受けたおよび熟達した操作者がTEM分析に適している1個のサンプル・ラメラを作成および抽出するのに約3時間かかる。トップ・ダウンのSEMまたはCD−SEM分析のような現在のインライン計測技法については、ウェハにわたって20個もの異なる部位が測定される必要があり得る。従来技術のTEMサンプル調製の方法を用いると、20個の異なる部位から適当なTEMサンプルを調製するためだけに約60分かかる。
【0069】
また、TEMサンプル調製の大半は手動で行わなければならないので、そのプロセスは、とても手間を要し、高度な熟練者の使用を必要とする(それはもちろん高い労働コストにつながる)。
【0070】
さらに、現在の手動のTEMサンプル調製方法では、サンプルにはばらつきが多い。プロセス制御用の計測技術を使用するために、サンプルができる限り均一であることが非常に望ましい。現在の方法は、TEMラメラの最終的な薄化が手動制御されることを必要とするので、様々なサンプルの部位からのラメラについて避けられないサンプルの厚さのばらつきがある。フィデューシャルの配置(実際のラメラ位置を決定する)などのサンプル作成プロセスにおける他の重要な要素の手動制御は、よりいっそうのばらつきをもたらし、最終的なラメラ調整の精度をさらに低減する。ラメラが異なる操作者によって調製されるときは、サンプル同士の間のばらつきが、よりいっそう大きくなる。
【0071】
しかし、本発明を用いると、TEMサンプル調製プロセスの大幅な改善になる。上述のように、本発明の好ましい実施形態は、部位間のばらつきが非常に少ない、厚さ50〜100nmのSTEMサンプルを作成し、抽出するために使用されている。このプロセスは、約18分で、部位間で3シグマの最終的なラメラの厚さのばらつき約20nmでラメラを製作する。ウェハ表面上の20個の異なる部位を標本抽出するために必要とされる時間は、(現在の方法の60時間に対して)約6時間まで低下する。また、このプロセスは、それほど手間を要さず、高度の鍛錬または経験を有する操作者を必要としない。より多くのプロセスが自動化されているので、ラメラ・サンプル同士の間のばらつきは、やはり最小限度に抑えられる。
【0072】
本発明によってもたらされるTEM分析のスループットおよび再現性の増大により、半導体ウェハ上の集積回路などの対象に対するTEMベースの計測をインライン・プロセス制御に用いられることが可能になる。例えば、本発明によるTEM分析は、迅速なフィードバックをトラブルに対応するまたはプロセスを改善するためのプロセス・エンジニアに与えるためにウェハ製造施設内で利用できる。TEMによってのみ測定され得る非常に小さいフィーチャについてのこの種のプロセス制御は、従来技術のTEMサンプル調製の方法を用いては不可能である。
【0073】
本発明は、幅広い適用可能性を有し、述べたような、上記例に示される多くの利益をもたらすことができる。本実施形態は、具体的な応用例に応じて大きく変わることになり、すべての実施形態が、すべての利益をもたらし、本発明によって達成可能な目的のすべてに適合するわけではない。例えば、好ましい実施形態において、TEMラメラ・サンプルは、サブ・ミクロンのスポットに集束されるガリウム・イオンのビームを発生させるためのガリウム液体金属イオン源を用いて作成される。そのような集束イオン・ビーム・システムは、例えば、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから市販されている。しかし、先の説明の大半は、FIBミリングの使用に向けられているのであるが、所望のTEMサンプルを処理するために使用されるミリング・ビームは、例えば、電子ビーム、レーザ・ビーム、または例えば液体金属イオン源もしくはプラズマ・イオン源からの集束もしくは成形イオン・ビーム、あるいは他の任意の荷電粒子ビームを含んでよい。
【0074】
また、上述の本発明は、ダイ・トゥ・ダイADRまたはセル・トゥ・セルADRによって欠陥を識別できる自動欠陥レビュー(ADR)技法を用いて使用可能である。欠陥を含むラメラは、ミリングのフィデューシャルの有無に関わらず作成され、除去され得る。先の説明の大半は、半導体ウェハに向けられているのであるが、本発明は、任意の適当な基板または表面に適用されてよい。さらに、「自動(automatic)」「自動化した、自動(automated)」という用語、または類似する用語が、本明細書中で使用されるときはいつでも、それら用語は、自動または自動化したプロセスまたはステップの手動開始を含むと理解されよう。添付図面は、本発明の理解に役立つものであり、別段の指示がない限り、正確な縮尺率で描かれていない。
【0075】
本発明および本発明の利点を詳細に説明してきたが、様々な変形、置換、および変更が、本明細書に記載した本実施形態に対して添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。さらに、本発明の範囲は、本明細書に記載したプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、およびステップの具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者が、本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載した対応する実施形態と実質的に同じ機能を行いまたは実質的に同じ結果を達成する現在存在するまたは後に開発されるプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップは、本発明によって利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内にそうしたプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップを含むものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって組み込まれた2006年10月20日出願の米国特許仮出願第60/853,183号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、透過型電子顕微鏡および走査型透過電子顕微鏡用のサンプル調製および分析方法に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路の作製などの半導体製造は、一般にフォトリソグラフィの使用を伴う。回路形成中の半導体基板、通常シリコン・ウェハは、放射で露光されると溶解度を変化させるフォトレジストなどの材料でコーティングされる。放射源と半導体基板の間に配置されるマスクまたはレチクルなどのリソグラフィ・ツールは、影を落とし、基板のどの領域が放射で露光されるか制御する。露光後、フォトレジストは露光された領域または露光されていない領域から除去され、その後のエッチングまたは拡散プロセス中にウェハの各部を保護するフォトレジストのパターン層をウェハ上に残す。
【0004】
フォトリソグラフィ・プロセスは、しばしは「チップ」と称される複数の集積回路デバイスまたは電気機械デバイスをウェハそれぞれの上に形成することを可能にする。次いでウェハは、単一の集積回路デバイスまたは電気機械デバイスをそれぞれ含む個々のダイに分割される。最終的に、これらダイは、さらなる工程にかけられ、個々の集積回路チップまたは電気機械デバイスにパッケージ化される。
【0005】
製造プロセス中には、露出および焦点が変動するので、リソグラフィ・プロセスによって現像されるパターンを継続的に監視または測定し、パターンの寸法が許容範囲内であるかどうか判定することが必要になる。しばしばプロセス制御と称されるそうした監視の重要性は、パターンの大きさが小さくなるにつれて、特に最小フィーチャ・サイズがリソグラフィ・プロセスによって利用可能な解像度の限界に近づくにつれて、かなり増している。かつてなく高いデバイス密度を達成するために、ますます小さいフィーチャ・サイズが要求されている。これには、相互接続ラインの幅および間隔、コンタクト・ホールの間隔および直径、ならびに様々なフィーチャの角およびエッジなどの表面形状が含まれる。ウェハのフィーチャは、3次元構造であり、完全な特徴付けでは、ラインまたはトレンチの上部幅など、表面の寸法だけでなく、フィーチャの全面的な3次元の外形(profile)を描写しなければならない。プロセス・エンジニアは、製造プロセスを微調整するためにそのような表面フィーチャの限界寸法(CD:critical dimensions)を正確に測定し、所望のデバイスの形状が得られることを確実にしなければならない。
【0006】
典型的には、CD測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)などの機器を用いて行われる。走査型電子顕微鏡(SEM)では、1次電子ビームが、観察される表面を走査する微細スポットに集束される。2次電子は、1次ビームが表面に当たると表面から放出される。この2次電子が検出され、画像が形成され、この画像の各点の輝度は、ビームが、表面上の対応するスポットに当たる際に検出される2次電子の個数によって決定される。しかし、フィーチャがますます小さくなり続けると、測定されるフィーチャが、通常のSEMによってもたらされる解像度に対して小さくなりすぎる時点が訪れる。
【0007】
透過型電子顕微鏡(TEM)により、観察者は、ナノメートル程度で極めて小さいフィーチャを見ることが可能になる。材料の表面を撮像するだけのSEMと対照的に、TEMは、サンプルの内部構造の分析も可能にする。TEMでは、幅広のビームがサンプルに当たり、サンプルを通って透過される電子は、サンプルの画像を形成するように集束される。サンプルは、1次ビーム中の多くの電子がサンプルを通って移動し反対側の部位に抜け出ることを可能にするために、十分に薄くなければならない。サンプルは、ラメラとも称され、典型的には厚さ100nm未満である。
【0008】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)では、1次電子ビームは微細スポットに集束され、このスポットはサンプル表面にわたって走査される。ワーク・ピース(work piece)を通って透過される電子は、サンプルの向こう側で電子検出器によって収集され、画像上の各点の強度は、1次ビームが、対応する表面上の点に当たる際に収集される電子の個数に対応する。
【0009】
サンプルは、(TEMとSTEMのいずれにしても)透過型電子顕微鏡法を用いて観測するため、薄くしなければならないので、サンプルの調製は、繊細な手間のかかる作業であり得る。「TEM」という用語は、本明細書では、TEMまたはSTEMを指し、TEM用のサンプルを調製することに言及することは、STEM上で観測するためにサンプルを調製することも含むと理解されたい。本明細書で使用される「S/TEM」という用語も、TEMおよびSTEMの両方を指す。
【0010】
TEMの試験片を調製することについては、いくつかの技法が知られている。これら技法は、劈開、化学研磨、機械研磨、または幅広のビームの低エネルギー・イオン・ミリング、あるいは上記の1つまたは複数の組み合わせを含んでよい。これら技法の欠点は、これら技法が特定部位に特化したもの(site−specific)でないことであり、出発材料をますます小さい断片に薄く切ることがしばしは必要であり、それによって原試料の大部分を破壊することになる。
【0011】
他の技法は、「リフト・アウト(lift−out)」法と一般に称され、取り囲んでいる基板の部分を破壊または損傷することなくサンプルを基板またはバルク試料から切断するために集束イオン・ビームを使用する。そのような技法は、物理科学または生物科学に一般的な材料と同様に、集積回路の製造に使用されるプロセスの結果を分析するのに役立つ。これら技法を使用して(例えば、断面図または平面図において)任意の配向のサンプルを分析することができる。TEMで直接用いるために十分に薄くサンプルを抽出する技法もあれば、観察前に追加の薄化を必要とする「チャンク」または大きいサンプルを抽出する技法もある。加えて、これら「リフト・アウト」試験片は、TEM以外の他の分析ツールによって直接分析されてもよい。サンプルがFIBシステムの真空チャンバ内で基板から抽出される技法は、通常「原位置(in−situ)」技法と称され(ウェハ全体がサンプルを取り除くために別のツールへ移されるときなど)、サンプルが真空チャンバの外側に取り出されるものは、「外位置(ex−situ)」技法と呼ばれる。
【0012】
抽出前に十分に薄化されたサンプルはしばしば、観測するために薄い電子透過膜で覆われた金属格子(grid)へ移され、その金属格子へ装着される。図1Aは、従来技術のTEM格子10の上へ装着されたサンプルを示す。典型的なTEM格子10は、銅、ニッケルまたは金製である。寸法は変わり得るが、典型的な格子は、例えば、直径3.05mmであってよく、90×90μmの大きさのセル14と、幅35μmのバー13とからなる中間部12を有する。衝突電子ビーム中の電子は、セル14を通過することはできるが、バー13によっては阻止されることになる。中間部12は、縁部16によって囲まれている。縁部の幅は、0.225mmである。縁部16には、方向マーク18を除き、セルがない。薄い電子透過支持膜の厚さ15は、サンプルキャリア全体にわたって均一であり、約20nmの値である。分析されるTEM試験片は、セル14内に配置または装着される。
【0013】
例えば、一般に使用される外位置のサンプル調製技法では、図2に示すように、タングステンなどの材料の保護層22は、電子ビームまたはイオン・ビーム蒸着を用いてサンプル表面21上の対象の領域を覆って蒸着される。次に、図3および図4に示すように、高ビーム電流(それに呼応して大きいビーム・サイズである)を用いる集束イオン・ビームを使用して多量の材料を対象の範囲の前後部から離れるようにミリングする。ミリングされた2つの矩形部24および25の間の残りの材料は、対象の領域を含む薄い垂直のサンプル・セクション20を形成する。対象の範囲の後側でミリングされたトレンチ25は、前トレンチ24より小さい。より小さい後トレンチは、主に時間を節約するためのものであるが、より小さいトレンチはまた、出来上がったサンプルが平坦部を越えてより大きいミリングされたトレンチの中に落下し、それにより微細加工の途中に試験片を除去することが困難になり得るのも防止する。
【0014】
図5に示すように、試験片が所望の厚さに達した後で、ステージは傾けられ、U字形の切り込み26が、サンプル・セクション20の周辺に部分的に沿ってある角度で作成され、サンプルの上部の両側で、タブ28によってサンプルは吊るされたままになる。小さいタブ28は、サンプルが十分にFIB研磨された後、最少量の材料を自由にミリングすることが可能になるので、薄い試験片の上に蓄積する再堆積アーチファクト(redeposition artifact)の可能性を低減する。次いで、サンプル・セクションは、次第により微細になるビーム・サイズを用いてさらに薄化される。最後に、タブ28は切断され、ラメラ27は完全に切り離される。材料の最後のタブが切り離されると、ラメラ27がトレンチの上でわずかに動いたり、倒れたりするのを観察できる。完成し分離したラメラ27を図6に示す。
【0015】
次いで、完成したラメラ27を含むウェハは、FIBから除去され、マイクロマニピュレータを装備する光学顕微鏡の下に配置される。マイクロマニピュレータに取り付けられたプローブは、ラメラの上に位置を定められ、ラメラと接触するまで慎重に降ろされる。図7に示すように、静電力が、ラメラ27をプローブ先端28に引き付けることになる。次いで、ラメラを引き付けた先端28は典型的には、図8に示すようにTEM格子10に動かされ、ラメラが、バー13とバー13の間のセル14のうちの1つにおける格子上に配置されるまで降ろされる。
【0016】
どの方法を使用するにしても、TEM分析用のサンプルの調製は、困難であり、時間のかかるものである。TEMサンプルの調製および分析に関係している多くのステップは、手動操作の機器を用いて行われなければならない。このため、TEMサンプルをうまく調製するには、高度な訓練を受け、熟達した操作者および技能者を使用することが一般に必要とされる。その場合にも、再現性およびスループットの任意の適当な水準を満たすことはとても難しい。
【0017】
サンプルの調製にFIB法を使用することにより、TEM分析用のサンプルを調製するために必要とされる時間が数時間だけに削減された。しかし、CD測定は、ある具体的なプロセスを十分に特徴付けし、適格と認めるために、ウェハ上の異なる位置からの複数のサンプルをしばしば必要とする。状況次第では、例えば、所与のウェハから15個から50個のTEMサンプルから分析することが望ましいことになる。そのように多くのサンプルを既知の方法を用いて抽出し、測定しなければならないときには、1つのウェハからのサンプルを処理するための合計時間は、数日または数週間にもなり得る。TEM分析によって発見できる情報は、とても有益であり得るが、TEMサンプルを作成および測定するプロセス全体は、従来とても手間を要し、時間のかかるものであり、製造プロセス制御のためにこのタイプの分析を使用することは、実用的ではなかった。
【0018】
さらに、既存のTEMサンプル構造は、自動化した抽出および実装に耐えるために十分には頑強でない。加えて、従来技術の方法を用いて作成されるTEMの構造は、しばしば、100nm以下に薄くされたときに湾曲または反りの問題がある。従来技術では、反りが操作者によって観察されたときには、TEMサンプルの手動の薄化は停止される。そのような手動の観察は、自動システムにおいて望ましいものではない。
【0019】
TEMサンプルの抽出および測定をより十分に自動化し、スループットおよび再現性を高め、それによりTEM測定が、プロセス制御用の統合された計測または原位置での計測に取り入れることができる方法が必要とされている。100nm以下に薄化したときに反り現象の問題がなく、自動化した抽出および実装に耐えるに十分に頑強であるTEMサンプルを作成する方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/853,183号
【特許文献2】PCT出願PCT/US07/82030
【特許文献3】米国特許出願第11/252,115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、TEMサンプル分析用の改良された方法を提供することにある。本発明の好ましい実施形態は、TEMサンプル作成用、特に小さい形状(厚さ100nm未満)のTEMラメラ用の改良された方法を提供することにある。本発明のいくつかの好ましい実施形態により、TEMサンプル作成を一部または全部自動化する方法が提供され、それによりTEMサンプルの作成および分析のプロセスを労力のより少ないものにし、TEM分析のスループットおよび再現性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記は以下の本発明の詳細な説明をより良く理解するために、本発明の特徴および技術的な利点をかなり幅広く概説した。本発明の追加の特徴および利点を、以下に説明することにする。当業者によれば、開示した概念および具体的な実施形態は、本発明と同じ目的を実行するための他の構造を変更または設計するための基礎として容易に利用できることが理解されよう。当業者によればそうした均等な構成は、添付した特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱しないことがやはり理解されよう。
【0023】
本発明およびその利点をより深く理解するために、次に、添付図面と併せて以下の説明に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】典型的な従来技術のTEM格子を示す図である。
【図2】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図3】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図4】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図5】従来技術による外位置サンプル調製技法の各ステップを示す図である。
【図6】従来技術による完成し分離したラメラの顕微鏡写真である。
【図7】従来技術によるプローブおよび静電気引力を用いたラメラの移送を示す図である。
【図8】従来技術によるプローブおよび静電気引力を用いたラメラの移送を示す図である。
【図9】本発明の好ましい実施形態による1つまたは複数のラメラを作成するステップを示す流れ図である。
【図10】高精度のフィデューシャル(fiducial)がミリングされ、保護層がラメラ位置を覆って蒸着された後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図11】低精度のフィデューシャルがミリングされた後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図12】バルク・ミリングが完了した後の図11のプロセスによるラメラ部位を示す図である。
【図13】バルク・ミリングが完了した後の本発明によるラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真を示す図である。
【図14】図11のプロセスによって作成されるラメラを示す図である。
【図15】図11のプロセスによって作成されるラメラを示す図である。
【図16】本発明によるラメラの高解像度の顕微鏡写真を示す図である。
【図17A】一方のビームが、ラメラを薄化するために使用される一方、他方のビームが、ミリングのエンドポイントを見出すためにラメラを撮像する場合のデュアル・ビーム・システム示す図である。
【図17B】エンドポイントを見出すために、1つのビームがミリングおよび撮像することを可能にするために、サンプルを回転する場合の単一のビーム・システムを示す図である。
【図17C】ミリングのエンドポイントを見出すために、本発明により、撮像され得るミリング・プロセスおよび画像処理中のラメラ部位を示す図である。
【図18】TEMサンプルを薄化するために使用される、本発明によるミリング・パターンを示す図である。
【図19A】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図19B】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図19C】TEMサンプルの断面図に関する図18のミリング・プロセスにおけるステップを示す図である。
【図20】本発明により、より薄い中央の「窓」が作製されたラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態により、ラメラ(lamella)作成用の改良された方法が提供される。好ましい実施形態は、部位(site)間のばらつきがごく少ないS/TEM測定のために厚さ50〜100nmのS/TEMのサンプルを作成することができる。このプロセスは、幅10μm×深さ〜5μm×厚さ〜500nmのラメラであり、最終目標厚さ(50〜100nm)で最終的に薄化される窓(window)が3μm×3μmのものを製作できる。本発明によって製作されるS/TEMのサンプルは、100nm以下に薄化したときに反り現象の問題がなく、自動化した抽出および実装を耐え抜くために十分に頑強なものとなる。
【0026】
本発明の好ましい方法または装置は、多くの新規の態様を有しており、本発明は、様々な目的のために様々な方法または装置の中に具現化できるので、必要とされる態様すべてがすべての実施形態に存在するわけではない。また、説明した各実施形態の態様の多くは、別々に特許性があり得る。
【0027】
現在、FIBシステム用のTEMラメラ作成プロセスは、ラメラ作成のために手動入力を対象のフィーチャ(feature)または部位を位置決めするための1次的方法として使用する。典型的には、所望のラメラ位置が手動で位置決めされた後で、フィデューシャルまたは位置決めマークがすぐ近くにミリングされる。FIB撮像は必然的にいくらかのサンプルの損傷を引き起こすので、保護層が、撮像および/またはミリングの前に、所望のラメラ位置を覆うように蒸着される。この保護層は、基板上のフィーチャを見ることをより困難にさせるので、典型的には、フィデューシャルマークを保護層の中にミリングして、ビームを向け、切断するために適所に位置決めするのを助ける。このフィデューシャルは、位置決めマークとしてその後の処理に使用される。次いで、このフィデューシャルを手がかりに画像認識を使用してその後のラメラのミリングのための位置を見つける。このフィデューシャルをミリングするために、所望のラメラ部位近くの位置が、典型的には手動で選択され、次いで所望のフィデューシャル・パターンがその位置において自動でミリングされる。
【0028】
ラメラ部位を手動で識別し、次いでフィデューシャルの位置を手動で選択するこの方法は、高度の精度または正確度を与えない。結果として、既知の自動ラメラ・ミリングの手法は、厚さ約500nmであるラメラの粗いミリングに制限される。典型的には、さらなる薄化は、所望のラメラ厚さ100nm以下を達成するために手動制御される。
【0029】
図9は、本発明の好ましい実施形態による1つまたは複数のラメラを作成するステップを示す流れ図である。この実施形態では、機械視覚ベースの計測(machine−vision based metrology)および画像認識、高精度のフィデューシャルマーク、ならびに自動フィデューシャル配置を使用してラメラの配置の正確度および精度を大幅に改善させる。プロセス中の様々なステップを図10〜図16に示す。
【0030】
まず、ステップ401において、ウェハは、FEIカンパニー(オレゴン州ヒルズバラ)すなわち本発明の譲受人から市販のCertus Dual BeamシステムなどのFIBシステムの中に搭載される。ステップ402において、ウェハ表面上のラメラ部位は、画像認識ソフトウェアを用いて自動的に位置決めされる。適当な画像認識ソフトウェアは、例えば、マサチューセッツ州NatickのCognex Corporationから入手可能である。画像認識ソフトウェアは、同様のフィーチャのサンプル画像によって、またはCADデータからの形状の情報によって所望のラメラ位置を位置決めするように「トレーニング」できる。自動化したFIBまたはSEM計測を使用してラメラ部位を識別する、またはラメラ部位を識別するのを助けることもできる。計測は、画像ベースのパターン認識、エッジ検出、ADR、重心計算、ブロブ(brobs)などからなり得る。
【0031】
任意のステップ404において、ラメラ部位は、1時間20分の間、幅15μm×高さ3μmの保護用の5kV FIBタングステン蒸着が施される。これにより、30kV FIBの部位整列ステップ(site allignment step)および蒸着ステップ中の損傷を防ぐために十分なタングステンを部位表面上に与える。この保護層は、SEM同時計数に対する5kV180pA FIB開口が4μm未満の場合には、直接配置されてよく、それ以外の場合には部位整列のプロセスが、この蒸着の配置をさらに精確にするために使用できる。
【0032】
ステップ406において、所望のラメラ位置それぞれに対する任意の所望のフィデューシャルマークの精密な位置が特定される。例えば、サンプル位置を撮像するためにFIBまたはSEMを用いて、フィデューシャル位置は、操作者がマウスを使用して所望のフィデューシャル位置の周りに仮想ボックスをドラッグすることによって特定できる。次いで、自動化した計測ソフトウェアが、サンプル位置での識別可能なフィーチャ(例えば、フィーチャの右端から15nm)に対してフィデューシャル位置を精密に測定し得る。それぞれのラメラ部位が位置決めされると、次いでフィデューシャルは、それぞれのラメラ部位で、それぞれのフィデューシャルとそれぞれのラメラ位置の間の空間的関係が等しくなるように特定された精密な位置で自動的にミリングされ得る。フィデューシャル位置は、ウェハ表面上のある特定の構造に対するフィデューシャル位置を特定するためにCADデータを用いて特定されてもよい。
【0033】
好ましい実施形態では、IC3D(商標)ソフトウェアのビジョン・ツール(vision tool)の使用によって精細なフィデューシャルの配置が実現される。特定のパターンは、画像認識ソフトウェアによって位置決めすることができ、画像認識ソフトウェア使用して目標構造を位置決めすることができる。次いで、一連のカリパス(エッジを突き止めるパターン認識ツール)を使用して目標構造のエッジを見つけ、目標構造の近くの精細なフィデューシャルが中央にくるように精密に合わせる。IC3Dのシェイプ・リンク機能(shape linking capabilities)の広範な使用により、それぞれの部位の直接測定に基づいて部位のフィデューシャルを確実に配置できる。
【0034】
好ましくは、高精度の(精細な)フィデューシャルと低精度の(粗い)フィデューシャルの組み合わせを使用してラメラの配置精度および正確度を最適化する。現在、ラメラ位置およびミリングに用いられるフィデューシャルは、ミリングされた2本の線の交差点によって形成される「X」などの低精度のフィーチャだけからなる。しかし、十分なラメラを製作するのに必要な解像度では、それぞれのミリングされた線は、幅数ナノメートルになる。エッジ検出ソウトウェアを使用してそれぞれのミリングされた線の中心線、次いで具体的な基準点を決定するために使用される2本の数学的に決定された中心線の交差点を決定しなければならない。典型的には、このフィデューシャルを使用するこのタイプの決定には、あまりに多くの誤差があり、多くの小さい形状のラメラの応用に必要とされる誤差範囲内でラメラ位置を正確に決定することができない。
【0035】
好ましい実施形態では、典型的な低精度のフィデューシャルマークとより高精度のマークとの組み合わせが使用される。図10に示す矩形部506などの高精度のフィデューシャルによりラメラ位置がよりずっと正確に決定されることが可能になる。図10に示す矩形のフィデューシャル506は、所望のラメラ位置どちらの端部にも位置決めされる。高精度のフィデューシャルは、以下に述べる低精度のフィデューシャルより小さい。このため、高精度のフィデューシャルは、バルク・ミリングに用いられる大きいFIBビームを用いて識別可能でなく、より小さいFIBビームを用いたラメラの最終的な配置にのみ用いられる。図10中の矩形のフィデューシャルは、それらの上部エッジおよび底部エッジのY位置を決定するために画像分析を用いて位置決めされる。これにより、フィデューシャルがFIB撮像中に損傷を受ける場合でも、正確な位置決めになる。エッジ検出ソウトウェアは、ラメラの上部エッジおよび底部エッジを精密に位置決めするために上部エッジおよび底部エッジを識別さえすればよい。これら矩形のフィデューシャルのためのパターン認識は、2測定ストラテジに基づいており、すなわち、フィデューシャルの上部エッジおよび底部エッジが測定される。エッジ位置が位置決めされると、ラメラの上部エッジおよび底部エッジと平行である中心線または軸が決定できる。サンプルがFIBを用いて撮像される際、表面は漸次、スパッタされ除かれる。上述の高精度のフィデューシャルは、このFIBの損傷に非常に耐性があり、というのも測定される両エッジは、ほぼ同じ割合で変化することになり、それでラメラ配置の誤差全体は非常に低くなるからである。
【0036】
図11中の大きい円などの低精度のフィデューシャル504は、おおよそのラメラ位置を素早く見つけバルク・ミリングを行うなどの全体構造のパターン認識のために使用できる。適当な低精度のフィデューシャルは、迅速なバルク材料の除去に適している低解像度(より大きいビーム・サイズ)のイオン・ビームを用いてサンプルが撮像されるときに容易に識別することができる。複数のフィデューシャル、および低精度のフィデューシャルおよび高精度のフィデューシャルならびに様々なフィデューシャルの形(図11に示すような)の組み合わせを使用して、よりさらに正確な配向を決定することができる。
【0037】
フィデューシャル位置が決定されたら、ステップ408において、高精度のフィデューシャルは、所望の位置でミリングされる。図10に示すように、最終的な薄化プロセス中にラメラを垂直配置するために、1nA 30kVのFIBを用いて、小さい矩形のフィーチャ506が、ラメラ部位(破線507によって差し示される)の各端部でミリングされる。好ましい実施形態では、適当なフィデューシャルパターンにより、最終的なラメラ配置が10nmの範囲内で正確であることが可能になる。いくつかの実施形態では、このフィデューシャルのサイズおよび形は、所望のラメラのサイズ、幅、または位置に応じて変わり得る。
【0038】
ステップ410において、高精度のフィデューシャルがミリングされた後に、例えば、タングステンまたは白金から構成されるバルク保護層508は、ミリング・プロセス中にサンプルを損傷から保護するためにラメラ部位を覆って蒸着される。図5は、保護層508がウェハ表面503上の所望のラメラ位置を覆って蒸着されたラメラ部位502を示す。表面のごく近くで情報が必要とされる場合のいくつかのサンプルについては、蒸着を行うための低エネルギーFIB(〜5keV)を用いて保護層を蒸着することは役立ち得る。高精度のフィデューシャル506は、後々の処理中に高精度のフィデューシャル506を保護するために、保護材料を用いて軽く埋め戻されることも好ましい。
【0039】
ステップ412において、バルク保護用の蒸着後、図11に示すように大きい円形のフィデューシャル504が、精細なフィデューシャルの周りにミリングされる。これら低精度のフィデューシャルは、おおよそのラメラ位置の素早い再発見やラメラのバルク・ミリングのための位置の決定などの全体構造のパターン認識に用いられる。より大きいビーム・サイズが、バルク・ミリングに用いられることになるので、適当な低精度のフィデューシャルは、より低い解像度の画像においても、パターン認識ソフトウェアによって容易に識別されるはずである。次いで、このシステムは、フィデューシャルを位置決めすること、およびラメラ部位がフィデューシャルから一定のオフセットで配置されていることを知ることによって、それぞれの所望のラメラ部位に容易に再配置することができる。
【0040】
ステップ414において、ウェハ上に他のラメラ部位がある場合には、FIBシステムは、次のラメラ部位の座標に移動する。その場合は、このプロセスは、ステップ402へ戻り、ラメラ・ミリング・プロセスが開始される前にステップ402から414が残りのすべてのラメラ部位について繰り返される。
【0041】
すべてのラメラ部位でフィデューシャルがミリングされたら、ステップ416において、FIBシステムは、ミリングされていないラメラ部位に移動する。ステップ414において、バルク基板のミリングを使用してラメラを粗く成形する。図12は、ステップ314のバルク・ミリングが完了した後のラメラ部位を示す。より大きいイオン・ビーム・サイズがバルク材料の除去に適することになる。好ましい実施形態では、それぞれのラメラは、基板上の隣接する2つの矩形部512を切断するためにFIBを用いて形成され、2つの矩形部の間の残りの材料は対象の領域を含む薄い垂直ウエハ510を形成する。イオン・ビームは、基板表面に対してほぼ直角で基板に向けられることが好ましい。ビームは、抽出されるサンプル・セクションに隣接する矩形の領域内で走査され、所定の深さを有する矩形の穴512を形成する。ミリングされた穴は、抽出されたサンプル中の対象のフィーチャを含むのに十分に深くなくてはならない。このミリングされた穴は、以下に述べるようにサンプルの機械的剛性を増大させるために、薄化したサンプルの下部に(対象のフィーチャの下方に)バルク材料が残ってもよいほど十分に深いことが好ましい。ビームは、抽出されるサンプル・セクションに隣接する矩形の領域内で走査されるが、第1の矩形の穴からサンプル・セクションの反対側までは走査されない。好ましくは、2つの矩形の穴の間の残りの材料は、抽出されるサンプル・セクションを含む薄い垂直なウエハを形成する。
【0042】
低精度のフィデューシャル504を使用して、(より迅速にサンプルを取り除くためにより大きいビーム直径を用いた)ラメラのバルク・ミリングについてのビーム位置を制御できる。ラメラの両側面から中に入る典型的な断面ミル・パターンが使用でき、厚さ約2μmの粗ラメラを残す。次いで、このラメラは、アンダーカット・ステップの準備として両側に施される断面クリーニングのためのミリングで約800nmまでさらに薄化される。図13は、バルク・ミリングが完了した後のラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真を示す。
【0043】
ステップ420において、フィデューシャルおよびバルク・ミリングがなされた後に、ラメラは、アンダーカット・プロセスを受ける。好ましくは、FIBカラムは約4.5度傾けられ、ラメラの底部は、1nAの断面クリーニングでアンダーカットされる。またはサンプル・ステージが傾けられてもよい。アンダーカットの精密な位置は、精細なフィデューシャルを突き止めるとともに測定するためのビジョン・ツールを用いて位置決めすることができる。より大きいFIBの傾斜が(ハードウェアの制約に従って)採用され得るが、浅い入射角のアンダーカットは、TEMサンプル作製プロセスに2つの利益をもたらす。第1に、ラメラ面は、大きい入射角で撮像されず、したがってGa+注入量および損傷を低減する。第2に、アンダーカット・プロセスで、中間薄化ステップとしての役割を果たし、この中間薄化ステップは、いくつかの異なる基板(TI SiGe、TI STI、MetroCal、IFX DTMO、Fujitsu contact)について適度に狭い範囲の幅までラメラの厚さを減じる。ラメラ・サンプル601についてのアンダーカット602およびサイドカット604が、図14に示されている。
【0044】
ステップ422において、次いでサンプルは180度回転され、上記プロセスが底部を切り離すためにラメラの上部エッジで繰り返される。これにより、目標構造を中心とした厚さが約500nmである粗いラメラになる。
【0045】
ステップ424において、ラメラの側部を切り離すためにラメラの底部から上面近くまで2カ所切断するが、ラメラはタブ606(図14に示す)によってラメラの上部での両側で吊るされたままにしておく。ラメラの最終的な薄化が完了したら、プローブがラメラに取り付けられ、タブまたはヒンジが断ち切られ、それによりラメラが抽出される。あるいは、プローブは、参照によって組み込まれる2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030に記載されているように、ラメラのヒンジを破断するために使用される。
【0046】
任意のステップ426において、IC3Dビジョン・ツールは、精細なフィデューシャルを突き止めるために使用され、バルク・ミリング・プロセスによる任意の再堆積物およびフィデューシャルをミリングするプロセス中に蒸着された保護用のタングステン層を除去することができる。
【0047】
第1の2つの矩形のバルク・ミリング切断およびアンダーカットによって形成されるラメラは、厚さ約500nmになることが好ましい。ステップ428において、(対象の領域を含む)ラメラの中央は、好ましくは、以下に述べるミル・パターンで、FIBの傾斜1.2度の30pAのビームを用いて、両側面から薄化される。以下に述べるように、ラメラ・ミリングに通常用いられる典型的なクリーニング・ミル・パターンは、非常に薄いラメラ(100nm未満)の湾曲または反りを引き起こす。ミル・パターンを用いることによりサンプル面上を複数のビームが通過し、サンプルの反りを防ぐことを出願人は発見した。このミル・パターンを、薄化プロセス中のラメラの反りをなくす方法の他の実施形態とともに、以下にもっと詳細に述べる。
【0048】
最終的な薄化切断が、ラメラのエッジを見つけるために(画像認識とともに)カリパスを用いて行われてよく、その上、最終的なラメラの厚さは、ラメラ面からのミリング位置のオフセットによって決定される。例えば、サンプルから抽出されるラメラごとに、ラメラの正確な位置がフィデューシャル位置から決定されてよい。第1の切断は、所望のサンプルの中央から離れるように所望のラメラの半分の厚さでミリングされる。FIBまたはSEM撮像を用いてトップ・ダウン方式でサンプルを見る際、自動化した計測ソフトウェアは、第1の切断のエッジおよびフィデューシャル位置を測定し、第2の切断の位置を精密に決定できる。ビーム位置を精密に制御するために高精度のフィデューシャルの位置を用いて、ラメラは反復可能なプロセスにおいて微細に集束されたFIBを用いて厚さ100nm以下まで薄化される。
【0049】
リアル・タイム・パターン認識を使用してFIBを配置するのが好ましい。リアル・タイム・パターン認識および計測を行う適当なFIBシステムは、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから入手可能であるCertus 3D Dual Beamシステムである。
【0050】
任意のステップ430において、低kVクリーニングが、傾斜4.5度の180pA 5kVのFIBを用いて最終的に薄化される窓に関して行われる。出願人は、ラメラのそれぞれの面上の10秒のクリーニング・ミルが、TEM撮像の状態の大幅な改善をもたらすことを発見した。
【0051】
ウェハ上に他のミリングされていないラメラ部位がある場合には、ステップ432において、FIBシステムは、次のミリングされていないラメラ部位の座標へ移動する。次いでプロセスはステップ416に戻り、ステップ416〜432が、残りのすべてのミリングされていないラメラ部位について繰り返される。
【0052】
図9を参照して述べた方法によって製作された最終的なラメラ構造を図14〜図16に示す。以下に述べるように、中央のラメラ「窓」610は、厚さ100nm以下まで薄くされてよく、機械的強度が増大したサンプルをもたらすために周囲の材料をより厚く残す。好ましくは、中央の窓は、幅約3μm、深さ4μmおよび厚さ50〜70nmである。窓610を囲むより厚い材料(図15に参照符合612によって示す)は、ミリング・プロセス中にラメラが反るのを防ぐ助けもする。この「窓のある」ラメラ構造の機械的強度の増大は、参照によって組み込まれる2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030に記載されるような外位置ラメラ抽出デバイスを用いるときには、やはり非常に望ましい。図16は、上述のプロセスを用いて作成されたラメラの高解像度の顕微鏡写真を示す。
【0053】
上述のようにフィデューシャルマークに対するミリング位置の決定に加えて、ミリング・プロセスは、トップ・ダウンのパターン認識および計測を用いてエンドポイントを見出すことができる。好ましい実施形態では、図17A中に概略的に示すように(原寸に比例していない)、FIBミリングは、垂直に装着されたFIBカラム710が基板503をミリングしてラメラ701を作成するために使用され、SEMカラム722がラメラ701を撮像するために使用されるデュアル・ビームFIB/SEMシステムにおいて行われ、それにより自動化した計測ソフトウェアが、ラメラが所望の厚さまで薄化されたか判定できる。あるいは、一方のビームがミリングするために使用され、他方が撮像するために使用されるデュアルFIBシステムを使用してもよい。図17B中に概略的に示すように(原寸に比例していない)、単一のFIBカラム710を備えるシステムを使用してもよく、(従来技術で知られているように)同じビームがミリングおよび撮像するために使用できるようにサンプルは傾けられ、回転される。FIBがサンプルを撮像するために使用される場合には、ラメラへの損傷の危険があることを当業者は認識するであろう。
【0054】
図17Cも参照すると、最初のバルク・ミリング711がラメラ701の一方の側で完了した後、第2のバルク・ミリング712のエンドポイント(endpoint)は、100nm未満のフィーチャについての断面がCD−SEMによって測定されるのと同じやり方でラメラの幅を監視することによって制御できる。
【0055】
典型的には、構造の断面の幅を測定するために、SEMが、自動計測ソフトウェアと併せて使用される。電子ビームが、露光される断面にわたって走査される際に、2次検出が用いられるのであれ、後方散乱検出が用いられるのであれ、典型的には構造のエッジでの電子強度の変化がある。構造のエッジでのコントラストに基づいてエッジ位置を特定するための、およびそれらエッジ間の距離を決定するためのアルゴリズムが使用される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、断面計測についてのこれら既知の技法の新規な応用を成す。最終的なラメラ位置および厚さは、デュアル・ビーム・システムのFIBをサンプルの断面を露光するために用い、SEMを自動化された計測分析のためのサンプル撮像に用いる既知のスライスアンドビューテクニック(slice and view techniques)に類似したミリングおよび撮像技術に基づくことになる。したがって、パターン認識ツールおよびエッジ検出ツールなどの画像処理ツールは、ラメラの厚さを精密に制御するために使用できる。これらのタイプの従来技術の「断面観察」技術は、例えば、参照によって組み込まれているChitturiらによる米国特許出願第11/252,115号に「Method Of Measuring Three−Dimensional Surface Roughness Of A Structure」として記載されており、この出願は、本発明の譲受人であるFEIカンパニーに譲渡されている。
【0057】
好ましくは、薄化はまず、ラメラの一方の側で完了されることになる。最初のミリングの位置は、上述したフィデューシャル位置または他の計測を用いて制御されることになる。次いでサンプルが、集束イオン・ビームまたは走査型電子顕微鏡を用いてトップ・ダウン方式で撮像されることになる。CD−SEMと同様に、イオン・ビームまたは電子ビームが基板の表面にぶつかるときに、2次電子および後方散乱電子が放出される。これらの電子はそれぞれ、当技術分野で知られているように2次電子検出器または後方散乱電子検出器によって検出される。2次電子検出器または後方散乱電子検出器によって生成されるアナログ信号は、ディジタルの輝度値に変換される。ビーム(イオンまたは電子)がラメラ表面にわたって走査される際に、構造のエッジで放出電子強度の変化がある。構造のエッジのうちのいずれかでの輝度値の差またはコントラストに基づいてエッジ位置を特定し、それらエッジの間の距離を決定するためのアルゴリズムが使用される。画像の分析が(例えば、所望のラメラ/サンプルの最小幅などの)ある特定の基準が満たされていないと判定する場合には、ミリングおよび画像処理のステップが繰り返される。
【0058】
CD−SEMを用いる自動化した断面計測は、100nm未満のレベルで限界寸法を決定するために長く使用されてきた。結果として、この関連のプロセスは、他のあまり一般的でない技法の信頼性をはるかに超えた信頼性のレベルまで洗練されてきている。したがって、CD−SEM計測技術は、インライン・プロセス制御に対してTEMサンプルの使用を可能にするのに十分な信頼性および反復性のレベルを与えることができる。このタイプの自動化したプロセス制御は、上述のサンプルの反りの問題のために従来技術において実用的ではなかった。しかし、本明細書に記載したミリング・アルゴリズムとサンプル構造の組み合わせを用いることによって、100nm以下のサンプルの反りは、大いに最小限度に抑えることができる。これにより、エンドポイント・プロセス(end−pointing process)の自動化を用いることが可能になり、従来技術の時間のかかる手動の薄化をなくし、したがって特定の構造に対して、より大量の自動化したラメラ作成を可能にする。
【0059】
本発明の好ましい実施形態を実施するための適当なデュアル・ビームFIB/SEMは、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから入手可能であるCLM−3D Dual Beamシステムであろう。本発明による完全にまたは部分的に自動化した画像処理、計測および機械制御を実行するための適当なソフトウェアは、やはりFEIカンパニーから入手可能であるIC3D(商標)ソフトウェアなどであり、パターン認識ツールおよびエッジ検出ツール、ならびに「ドゥ・ホワイル(do while)」ループ機能を備えているはずである。
【0060】
上述のように、薄い(厚さ100nm未満の)TEMサンプルに通常関連する湾曲または反りは、ラメラの中央の窓を薄くするために新規なミリング・パターンを用いることによって最小限度に抑えることができる。従来技術による最終的なラメラの薄化は典型的には、イオン・ビームが対象のフィーチャに向かって1ラインずつ走査されるクリーン・アップ・カットまたは断面クリーニングとしばしば称されるミリング・パターンを利用する。この切断パターンの場合、ビームは、順次モードにおいて一連のラインの切断を実行する。このアイデアは、その表面をきれいにするために、ラインの切断を、露出した表面の中で徐々に進ませることである。すべてのラインは連続してミリングされ、次に移動する前に、ミリングはラインごとに完了する。次いで、ビームは、所望のサンプル面に向かって(y方向に)進み、このプロセスが繰り返される。ミリングは、1回の通過で完了し、スパッタ物質がラメラ・サンプル面上に再堆積するのを大部分防ぐことになる。
【0061】
パターンはわずかに変わり得るが、基本的にはビームは、ほとんど連続的に切断面に接している。正確なメカニズムははっきりしないが、結末は、サンプルが約70nmより薄くなるときに、サンプルはビームから離れるように反り始める、または歪み始める。歪んだサンプルでの正確な計測はとても困難であるので、サンプルの歪みは、深刻な問題である。さらに、対象の範囲は、損傷を受ける可能があり、その結果、対象の範囲は、さらなる分析に対して使用できなくなる。
【0062】
図18および図19A〜図19Cを参照すると、本発明の好ましい実施形態では、TEMサンプル510は、サンプルの切断面の中に(矢印820によって示すように)y方向に走査速度の減少(およびしたがって、ビームがサンプルの中に進むする際のより長い滞留時間/滞留時間の増大)させて、繰り返して走査するFIBミリング・パターンを使用することによって薄くされる。「走査速度を減少させること」によって、出願人は、(ビームをx方向に前後に走査する速度は、変化することができないが)ビームが所望のサンプル面に近づくにつれて各走査間の時間がより長くなることを意味する。さらに、ビームを何回か通過させてサンプル面の所望のミリング深度に達する。ミリング・ボックス810は、走査の正確な回数または各走査間の距離を示すものではなく、むしろラインの勾配が、ビームが最終的なサンプル面に向かって動くにつれて走査速度が減少し、および滞留時間が増大することを示すものである。同様のラスタ・パターンが従来技術において既知であるが、それら同様のラスタ・パターンは典型的には、基板に深い穴を迅速にミリングするために使用されている。しかし、出願人は、このパターンを、サンプルの反りを引き起こすことなくラメラを精密に薄くするために使用できることを発見した。典型的には、このタイプのラスタ・パターンは、主にスパッタ物質の再堆積に対する懸念のために、非常に小さい構造の精密なミリングに用いられない。深い穴をミリングするために使用されるとき、プロセスはしばしば、ミリングの進捗状況を評価するために止められる。自動化したツールでこのパターンを使用することによって、ミリングを止めることなく仕上げさせ、再堆積物は大いに最小限度に抑えられる。
【0063】
ビームが矢印820によって示すようにy方向に動くにつれてイオン・ビームの走査速度を減少させる(したがって滞留時間を増大させる)ことによって、全ビーム電流は、ビームが所望のサンプル面850に向かって動くにつれて、連続的なビームのステップそれぞれでのx位置ごとに増加する。これにより、より深いミリングがサンプル面850で発生する、サンプルの差別化されたミリングを可能にする。図19A〜図19Cは、図18中の線19に沿ってミリング・プロセス中の様々な時間でのサンプル510の断面を示す。図18Bに示すように、ミリングされたトレンチ840の深さは、サンプル面850に向かって傾いている(サンプル面に近づくにつれてより深くなる)。したがって、ミリングのスループットは増大する(サンプル面から離れた領域は、深くなるようにミリングされる必要がないので)。ラメラ窓610の底部での試料バルク材料860の保護は、サンプルの機械的剛性をも増大させ、その取扱い特性を改善させる。
【0064】
滞留時間または走査間隔を変えることに加えて、イオン・ビームを何回か通過させてサンプル面の所望のミリング深度に達することが好ましい。これら複数回のビームの通過は、ビーム角度、エネルギー、電流、電流密度または直径を変化させることなくなされることが好ましい。上述のクリーン・アップ・カットと対照的に、イオン・ビームは、サンプル面と常に接触した状態で維持されない。例えば、ビームを5回または6回通過させて最終的なTEMサンプル510をミリングすることができる。通過する毎に、最初のy座標822から最終的なy座標824まで所望の深さの一部をミリングするだけである。所望のサンプル面の深さが達成されていない場合には、再度ビームを通過させるために、(矢印821によって示すようにy方向に)最初のy座標822までビームはサンプル面から離れて戻るように操作される。ここで、出願人は、従来技術のサンプルの反りは、ビームがサンプル面と接触する際の静電気力または熱の蓄積に起因すると考える。ビームがサンプル面と接触しないように複数回通過させることによって、任意の熱/帯電の蓄積は、イオン・ビームの通過と通過の間に消散できる。結果として、最終的なTEMサンプル510の反りは、50nmの薄さのサンプルについても、大部分除かれる。
【0065】
多くの実施形態では、すべての切断は、SiのFIBミリングに典型的に用いられる滞留時間および走査間隔を有する、多くの市販のFIB機器で容易に利用できるビーム・エネルギー(例えば、数10keV)を用いて、単一のビーム電流、例えば20nAのビーム電流を用いて行うことができる。好ましいプロセス・パラメータを説明するが、当業者により、好ましいプロセス・パラメータは、サンプルのサイズおよび形ならびに基板の材料によって異なることが理解されよう。当業者は、様々な応用例においてサンプルを抜き出すための適当なプロセス・パラメータを容易に決定できるであろう。
【0066】
図14〜図16に示すように、(好ましくは、上述のミリング・パターンを用い、サンプルに機械的強度の増大をもたらす、より厚い周囲の材料を残して)上述のプロセスを使用して中央のラメラ「窓」610を厚さ100nm以下までさらに薄くすることができる。好ましくは、中央の窓は、幅約3μm、深さ約4μm、および厚さ約50〜70nmである。図15中の参照符合612によって示す窓610を囲んでいる、より厚い材料は、ミリング・プロセス中にラメラが反るのを防ぐのを助けもする。この「窓」のラメラ構造の機械的強度の増大は、参照によって組み込まれている2007年10月20日出願の同時係属中のPCT出願PCT/US07/82030で説明するように、外位置ラメラ抽出デバイスを用いるときにやはりとても望ましい。図20は、上述のミル・パターンを用いる本発明により、より薄い中央の「窓」が作製されたラメラ・サンプルの高解像度の顕微鏡写真である。
【0067】
代替として、状況次第では、ラメラ全体を100nm以下の均一な厚さに薄くするために、(より薄い中央の「窓」なしで)上述のミル・パターンを使用することが望ましい可能性がある。そのような構造は、窓のある構造の機械的強度の増大を有することはないが、(側面および底で材料がより厚いので)サンプルの反りは、それでもやはり従来技術を上回って大幅に低減されることになる。
【0068】
本発明は、従来技術を上回るいくつかの重要な利点をもたらす。TEMサンプル調製用の典型的な方法を用いると、高度な訓練を受けたおよび熟達した操作者がTEM分析に適している1個のサンプル・ラメラを作成および抽出するのに約3時間かかる。トップ・ダウンのSEMまたはCD−SEM分析のような現在のインライン計測技法については、ウェハにわたって20個もの異なる部位が測定される必要があり得る。従来技術のTEMサンプル調製の方法を用いると、20個の異なる部位から適当なTEMサンプルを調製するためだけに約60分かかる。
【0069】
また、TEMサンプル調製の大半は手動で行わなければならないので、そのプロセスは、とても手間を要し、高度な熟練者の使用を必要とする(それはもちろん高い労働コストにつながる)。
【0070】
さらに、現在の手動のTEMサンプル調製方法では、サンプルにはばらつきが多い。プロセス制御用の計測技術を使用するために、サンプルができる限り均一であることが非常に望ましい。現在の方法は、TEMラメラの最終的な薄化が手動制御されることを必要とするので、様々なサンプルの部位からのラメラについて避けられないサンプルの厚さのばらつきがある。フィデューシャルの配置(実際のラメラ位置を決定する)などのサンプル作成プロセスにおける他の重要な要素の手動制御は、よりいっそうのばらつきをもたらし、最終的なラメラ調整の精度をさらに低減する。ラメラが異なる操作者によって調製されるときは、サンプル同士の間のばらつきが、よりいっそう大きくなる。
【0071】
しかし、本発明を用いると、TEMサンプル調製プロセスの大幅な改善になる。上述のように、本発明の好ましい実施形態は、部位間のばらつきが非常に少ない、厚さ50〜100nmのSTEMサンプルを作成し、抽出するために使用されている。このプロセスは、約18分で、部位間で3シグマの最終的なラメラの厚さのばらつき約20nmでラメラを製作する。ウェハ表面上の20個の異なる部位を標本抽出するために必要とされる時間は、(現在の方法の60時間に対して)約6時間まで低下する。また、このプロセスは、それほど手間を要さず、高度の鍛錬または経験を有する操作者を必要としない。より多くのプロセスが自動化されているので、ラメラ・サンプル同士の間のばらつきは、やはり最小限度に抑えられる。
【0072】
本発明によってもたらされるTEM分析のスループットおよび再現性の増大により、半導体ウェハ上の集積回路などの対象に対するTEMベースの計測をインライン・プロセス制御に用いられることが可能になる。例えば、本発明によるTEM分析は、迅速なフィードバックをトラブルに対応するまたはプロセスを改善するためのプロセス・エンジニアに与えるためにウェハ製造施設内で利用できる。TEMによってのみ測定され得る非常に小さいフィーチャについてのこの種のプロセス制御は、従来技術のTEMサンプル調製の方法を用いては不可能である。
【0073】
本発明は、幅広い適用可能性を有し、述べたような、上記例に示される多くの利益をもたらすことができる。本実施形態は、具体的な応用例に応じて大きく変わることになり、すべての実施形態が、すべての利益をもたらし、本発明によって達成可能な目的のすべてに適合するわけではない。例えば、好ましい実施形態において、TEMラメラ・サンプルは、サブ・ミクロンのスポットに集束されるガリウム・イオンのビームを発生させるためのガリウム液体金属イオン源を用いて作成される。そのような集束イオン・ビーム・システムは、例えば、本発明の譲受人であるFEIカンパニーから市販されている。しかし、先の説明の大半は、FIBミリングの使用に向けられているのであるが、所望のTEMサンプルを処理するために使用されるミリング・ビームは、例えば、電子ビーム、レーザ・ビーム、または例えば液体金属イオン源もしくはプラズマ・イオン源からの集束もしくは成形イオン・ビーム、あるいは他の任意の荷電粒子ビームを含んでよい。
【0074】
また、上述の本発明は、ダイ・トゥ・ダイADRまたはセル・トゥ・セルADRによって欠陥を識別できる自動欠陥レビュー(ADR)技法を用いて使用可能である。欠陥を含むラメラは、ミリングのフィデューシャルの有無に関わらず作成され、除去され得る。先の説明の大半は、半導体ウェハに向けられているのであるが、本発明は、任意の適当な基板または表面に適用されてよい。さらに、「自動(automatic)」「自動化した、自動(automated)」という用語、または類似する用語が、本明細書中で使用されるときはいつでも、それら用語は、自動または自動化したプロセスまたはステップの手動開始を含むと理解されよう。添付図面は、本発明の理解に役立つものであり、別段の指示がない限り、正確な縮尺率で描かれていない。
【0075】
本発明および本発明の利点を詳細に説明してきたが、様々な変形、置換、および変更が、本明細書に記載した本実施形態に対して添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。さらに、本発明の範囲は、本明細書に記載したプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、およびステップの具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者が、本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載した対応する実施形態と実質的に同じ機能を行いまたは実質的に同じ結果を達成する現在存在するまたは後に開発されるプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップは、本発明によって利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内にそうしたプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップを含むものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板からTEM分析用の1つまたは複数のサンプルを抽出する方法であって、
抽出される前記サンプルを有する前記基板をイオン・ビーム・システムの中に搭載する工程と、
前記基板表面上の第1のサンプル部位を位置決めする工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程と、
前記所望の第1のフィデューシャル位置で少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマークおよび少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークの組み合わせをミリングする工程と、
前記フィデューシャルマークに対する所望の前記サンプルについてのエッジ位置を決定する工程と、
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程と、
前記サンプルを抽出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記基板が半導体ウェハを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、厚さ500nm未満の材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、厚さ100nm未満の材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板表面上の前記サンプル部位を位置決めする工程が、画像認識ソフトウェアを用いて前記基板表面上の前記サンプル部位を位置決めする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程が、前記第1のサンプル部位についての少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を手動で位置決めする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板表面上の第2のサンプル部位を位置決めする工程と、
第2のフィデューシャル位置と前記第2のサンプル部位の間の空間的関係が、前記第1のフィデューシャル位置と前記第1のサンプル部位の間の空間的関係に等しいものとなるように、前記第2のサンプル部位についての少なくとも1つの前記第2のフィデューシャル位置を識別するためにパターン認識を使用する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程が、CADデータから前記第1のフィデューシャル位置を位置決めする工程と、前記CADデータからの形状の情報に基づいてパターン認識によって前記基板上の前記所望のフィデューシャル位置を位置決めする工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマークおよび少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークの組み合わせをミリングする工程が、バルク・ミリングに適しているより低い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できる少なくとも1つのより大きいフィデューシャルマーク、およびより高い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できる少なくとも1つのより小さいフィデューシャルマークをミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、
バルク・ミリングに適している第1の大きいビーム直径を有するイオン・ビームを用いて前記所望のサンプル位置および前記少なくとも1つの低精度のフィデューシャルを撮像する工程と、
前記少なくとも1つの低精度のフィデューシャルの前記位置を用いて前記イオン・ビームを位置決めする工程と、
予め定められた深さを有する第1の矩形の穴を形成するように、前記所望のサンプル位置の第1の側面の矩形の領域内で前記ビームを走査する工程と、
第1および第2の矩形の穴の間に抽出されるサンプルセクションを含む材料の垂直な層を残したまま予め定められた深さを有する第2の矩形の穴を形成するように、前記第1の側面から前記所望のサンプル位置の反対側の第2の側面の矩形の領域内で前記ビームを走査する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精密ミリングに適している第2のより小さいビーム直径を有するイオン・ビームを用いて前記所望のサンプル位置、および、抽出されるサンプルの所望の最終的なエッジとほぼ平行な少なくとも1つの軸を有する高精度のフィデューシャルを撮像する工程と、
前記軸に対する前記所望のサンプルについての前記エッジ位置を決定する工程と、
厚さ500nm未満の薄化したサンプルを残して前記第1の側面と第2の側面の両方から前記サンプルセクションを薄化する工程と
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記残りの薄化したサンプルが、厚さ100nm未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の側面と第2の側面の両方から前記サンプルセクションを薄化する工程が、
材料の前記垂直な層のエッジを位置決めするために画像認識を使用する工程と、
材料の前記垂直な層の中央から離れるように前記所望のサンプルの厚さの半分で始まり、前記サンプルの前記第1の側面に向かって延在する領域内で材料をミリングして取り去ることによって前記サンプルの前記第1の側面を薄化する工程と、
材料の前記垂直な層の中央から離れるように前記所望のサンプルの厚さの半分で始まり、前記サンプルの前記第2の側面に向かって延在する領域内で材料をミリングして取り去ることによって前記サンプルの前記第2の側面を薄化する工程と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルの側面を薄化する工程が、
ほぼ直角のイオン・ビームをラスタ・パターンでサンプルセクションの外側から内側に向かって所望のサンプル面まで走査し、次いで前記サンプルセクションの外側まで戻す工程を含んでおり、前記サンプルセクションが所望の深さまで薄化するまで続く一連の走査によってサンプルセクションを薄化するミリング・パターンで、前記イオン・ビームを前記試料セクションの一方の側面に向ける工程と
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビームをラスタ・パターンで前記サンプル・セクションの外側から内側に向かって前記所望のサンプル面まで走査し、次いで前記サンプル・セクションの外側まで戻す工程が、前記所望のサンプル面と平行なx方向および前記所望のサンプル面に垂直なy方向を有するラスタ・パターンで前記ビームを走査する工程を含み、前記ラスタ・パターンが、前記ビームを前記x方向に前後に走査し、次いで前記所望のサンプル面に向かって前方に前記ビームを進ませる工程を含み、このビームを進ませる工程が、前記所望のサンプル面に達するまで続く、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ビーム滞留時間が、前記ビームが前記所望のサンプル面に近づくにつれて増大する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルセクションを薄化する工程が、薄化された部分の底部および側面でより厚い材料を残したまま、前記サンプルの中央部を薄化する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
リアル・タイム・パターン認識を使用して前記イオン・ビームを位置決めし、前記サンプルが所望の厚さに達するとミリングのエンドポイントを見出す、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記薄化する工程中に電子ビームを用いて前記サンプルセクションを撮像する工程と、所望のサンプルの厚さに達したか判定するために自動計測ソフトウェアを使用する工程とをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
基板からサンプルを抽出するシステムであって、
前記基板を支持するサンプルステージと、
基板をミリングするためのイオン・ビームを生成するイオン・ビーム源と、
前記請求項1の方法を実施するように前記イオン・ビーム源および前記ステージを制御するようにプログラムされる制御部と
を備えるシステム。
【請求項21】
基板から抽出するための2つ以上のTEM分析用のサンプルの調製の方法であって
前記基板表面上の第1のサンプル部位を位置決めする工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程と、
前記サンプル部位についての少なくとも1つのフィデューシャルマークを作成する工程と、
前記基板表面上の第2のサンプル部位を位置決めする工程と、
第2のフィデューシャル位置と前記第2のサンプル部位の間の空間的関係が、前記第1のフィデューシャル位置と前記第1のサンプル部位の間の空間的関係と等しいものとなるように、前記第2のサンプル部位について少なくとも1つの前記第2のフィデューシャル位置を識別するためにパターン認識を使用する工程と、
前記識別された少なくとも1つの第2のフィデューシャル位置でフィデューシャルマークを自動的に作成する工程と、
前記フィデューシャルマークに対する所望の抽出されるサンプルについてのエッジ位置を決定する工程と、
前記抽出されるサンプルを含む材料の薄層を残して所望のサンプル位置の両側のウェハ表面をミリングする工程と、
前記サンプルを前記基板から分離する工程と、
前記サンプルを抽出する工程と、
を含む方法。
【請求項22】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記ウェハ表面をミリングする工程後、前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記材料の薄層の厚さを決定するために自動化した計測ソフトウェアを使用する工程と、
画像の分析により、前記層が、所望の厚さより厚いと判定された場合、前記層を薄化するために前記ウェハ表面をミリングする工程と、
前記所望の厚さに達するまでこれらの工程が繰り返される工程と
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程が、
前記サンプル部位での前記ウェハ表面上の構造の位置に対する精密なフィデューシャル位置を選択する工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記構造を位置決めし、前記精密なフィデューシャル位置を決定するためにパターン認識ソフトウェアを使用する工程と
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程が、前記抽出されるサンプルの所望の最終的なエッジとほぼ平行な少なくとも1つの軸を有する少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマーク、およびバルク・ミリングに適しているより低い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できるより大きいフィデューシャルマークを含む少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークについての所望のフィデューシャル位置を識別する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのフィデューシャルマークが、前記抽出されるサンプル上でミリングされる、請求項21記載の方法。
【請求項1】
基板からTEM分析用の1つまたは複数のサンプルを抽出する方法であって、
抽出される前記サンプルを有する前記基板をイオン・ビーム・システムの中に搭載する工程と、
前記基板表面上の第1のサンプル部位を位置決めする工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程と、
前記所望の第1のフィデューシャル位置で少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマークおよび少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークの組み合わせをミリングする工程と、
前記フィデューシャルマークに対する所望の前記サンプルについてのエッジ位置を決定する工程と、
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程と、
前記サンプルを抽出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記基板が半導体ウェハを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、厚さ500nm未満の材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、厚さ100nm未満の材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板表面上の前記サンプル部位を位置決めする工程が、画像認識ソフトウェアを用いて前記基板表面上の前記サンプル部位を位置決めする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程が、前記第1のサンプル部位についての少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を手動で位置決めする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板表面上の第2のサンプル部位を位置決めする工程と、
第2のフィデューシャル位置と前記第2のサンプル部位の間の空間的関係が、前記第1のフィデューシャル位置と前記第1のサンプル部位の間の空間的関係に等しいものとなるように、前記第2のサンプル部位についての少なくとも1つの前記第2のフィデューシャル位置を識別するためにパターン認識を使用する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のサンプル部位について少なくとも1つの所望の第1のフィデューシャル位置を識別する工程が、CADデータから前記第1のフィデューシャル位置を位置決めする工程と、前記CADデータからの形状の情報に基づいてパターン認識によって前記基板上の前記所望のフィデューシャル位置を位置決めする工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマークおよび少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークの組み合わせをミリングする工程が、バルク・ミリングに適しているより低い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できる少なくとも1つのより大きいフィデューシャルマーク、およびより高い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できる少なくとも1つのより小さいフィデューシャルマークをミリングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記基板表面を自動的にミリングする工程が、
バルク・ミリングに適している第1の大きいビーム直径を有するイオン・ビームを用いて前記所望のサンプル位置および前記少なくとも1つの低精度のフィデューシャルを撮像する工程と、
前記少なくとも1つの低精度のフィデューシャルの前記位置を用いて前記イオン・ビームを位置決めする工程と、
予め定められた深さを有する第1の矩形の穴を形成するように、前記所望のサンプル位置の第1の側面の矩形の領域内で前記ビームを走査する工程と、
第1および第2の矩形の穴の間に抽出されるサンプルセクションを含む材料の垂直な層を残したまま予め定められた深さを有する第2の矩形の穴を形成するように、前記第1の側面から前記所望のサンプル位置の反対側の第2の側面の矩形の領域内で前記ビームを走査する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精密ミリングに適している第2のより小さいビーム直径を有するイオン・ビームを用いて前記所望のサンプル位置、および、抽出されるサンプルの所望の最終的なエッジとほぼ平行な少なくとも1つの軸を有する高精度のフィデューシャルを撮像する工程と、
前記軸に対する前記所望のサンプルについての前記エッジ位置を決定する工程と、
厚さ500nm未満の薄化したサンプルを残して前記第1の側面と第2の側面の両方から前記サンプルセクションを薄化する工程と
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記残りの薄化したサンプルが、厚さ100nm未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の側面と第2の側面の両方から前記サンプルセクションを薄化する工程が、
材料の前記垂直な層のエッジを位置決めするために画像認識を使用する工程と、
材料の前記垂直な層の中央から離れるように前記所望のサンプルの厚さの半分で始まり、前記サンプルの前記第1の側面に向かって延在する領域内で材料をミリングして取り去ることによって前記サンプルの前記第1の側面を薄化する工程と、
材料の前記垂直な層の中央から離れるように前記所望のサンプルの厚さの半分で始まり、前記サンプルの前記第2の側面に向かって延在する領域内で材料をミリングして取り去ることによって前記サンプルの前記第2の側面を薄化する工程と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルの側面を薄化する工程が、
ほぼ直角のイオン・ビームをラスタ・パターンでサンプルセクションの外側から内側に向かって所望のサンプル面まで走査し、次いで前記サンプルセクションの外側まで戻す工程を含んでおり、前記サンプルセクションが所望の深さまで薄化するまで続く一連の走査によってサンプルセクションを薄化するミリング・パターンで、前記イオン・ビームを前記試料セクションの一方の側面に向ける工程と
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビームをラスタ・パターンで前記サンプル・セクションの外側から内側に向かって前記所望のサンプル面まで走査し、次いで前記サンプル・セクションの外側まで戻す工程が、前記所望のサンプル面と平行なx方向および前記所望のサンプル面に垂直なy方向を有するラスタ・パターンで前記ビームを走査する工程を含み、前記ラスタ・パターンが、前記ビームを前記x方向に前後に走査し、次いで前記所望のサンプル面に向かって前方に前記ビームを進ませる工程を含み、このビームを進ませる工程が、前記所望のサンプル面に達するまで続く、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ビーム滞留時間が、前記ビームが前記所望のサンプル面に近づくにつれて増大する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルセクションを薄化する工程が、薄化された部分の底部および側面でより厚い材料を残したまま、前記サンプルの中央部を薄化する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
リアル・タイム・パターン認識を使用して前記イオン・ビームを位置決めし、前記サンプルが所望の厚さに達するとミリングのエンドポイントを見出す、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記薄化する工程中に電子ビームを用いて前記サンプルセクションを撮像する工程と、所望のサンプルの厚さに達したか判定するために自動計測ソフトウェアを使用する工程とをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
基板からサンプルを抽出するシステムであって、
前記基板を支持するサンプルステージと、
基板をミリングするためのイオン・ビームを生成するイオン・ビーム源と、
前記請求項1の方法を実施するように前記イオン・ビーム源および前記ステージを制御するようにプログラムされる制御部と
を備えるシステム。
【請求項21】
基板から抽出するための2つ以上のTEM分析用のサンプルの調製の方法であって
前記基板表面上の第1のサンプル部位を位置決めする工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程と、
前記サンプル部位についての少なくとも1つのフィデューシャルマークを作成する工程と、
前記基板表面上の第2のサンプル部位を位置決めする工程と、
第2のフィデューシャル位置と前記第2のサンプル部位の間の空間的関係が、前記第1のフィデューシャル位置と前記第1のサンプル部位の間の空間的関係と等しいものとなるように、前記第2のサンプル部位について少なくとも1つの前記第2のフィデューシャル位置を識別するためにパターン認識を使用する工程と、
前記識別された少なくとも1つの第2のフィデューシャル位置でフィデューシャルマークを自動的に作成する工程と、
前記フィデューシャルマークに対する所望の抽出されるサンプルについてのエッジ位置を決定する工程と、
前記抽出されるサンプルを含む材料の薄層を残して所望のサンプル位置の両側のウェハ表面をミリングする工程と、
前記サンプルを前記基板から分離する工程と、
前記サンプルを抽出する工程と、
を含む方法。
【請求項22】
材料の薄層を残して前記所望のサンプル位置の両側の前記ウェハ表面をミリングする工程後、前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記材料の薄層の厚さを決定するために自動化した計測ソフトウェアを使用する工程と、
画像の分析により、前記層が、所望の厚さより厚いと判定された場合、前記層を薄化するために前記ウェハ表面をミリングする工程と、
前記所望の厚さに達するまでこれらの工程が繰り返される工程と
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程が、
前記サンプル部位での前記ウェハ表面上の構造の位置に対する精密なフィデューシャル位置を選択する工程と、
前記サンプル部位を撮像する工程と、
前記構造を位置決めし、前記精密なフィデューシャル位置を決定するためにパターン認識ソフトウェアを使用する工程と
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプル部位についての1つまたは複数の所望のフィデューシャル位置を識別する工程が、前記抽出されるサンプルの所望の最終的なエッジとほぼ平行な少なくとも1つの軸を有する少なくとも1つの高精度のフィデューシャルマーク、およびバルク・ミリングに適しているより低い解像度でのイオン・ビーム走査によって作成される前記サンプルの画像において認識できるより大きいフィデューシャルマークを含む少なくとも1つの低精度のフィデューシャルマークについての所望のフィデューシャル位置を識別する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのフィデューシャルマークが、前記抽出されるサンプル上でミリングされる、請求項21記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【公表番号】特表2010−507781(P2010−507781A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533596(P2009−533596)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082159
【国際公開番号】WO2008/051937
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082159
【国際公開番号】WO2008/051937
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】
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