説明

SATB2から誘導されるエピトープおよびその使用

本発明は、47以下のアミノ酸からなり、そして配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むエピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンドに関する。さらに、本発明は、エピトープ配列からなるポリペプチドならびに親和性リガンドおよびポリペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示物は、エピトープおよびそれに結合する親和性リガンドの分野に関する。さらに、本開示物のいくつかの態様は、例えば、大腸癌予後のために、親和性リガンドを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】

癌は、西洋における最も多い疾患および死亡の原因である。一般に、罹患率は、ほとんどの形態の癌について、年齢と共に増加している。一般的健康状態の増加によりヒト集団の寿命が続伸しているため、癌が影響を及ぼす個体数が増加している。最も多い癌タイプの原因はなお、大部分が不明であるが、環境因子(食事、喫煙、UV照射など)および遺伝的因子(p53、APC、BRCA1、XPなどのような「癌遺伝子」における生殖細胞系列変異)と癌の発達の危険性との間の関連を提供する知識体系が増大している。
【0003】
癌は、本質的に細胞の疾患であり、そして正味の細胞増殖および秩序に反する(anti−social)挙動を伴う形質転換された細胞集団として定義されているという事実にもかかわらず、細胞生物学的観点から見ると、癌の定義は、完全には満足できるものではない。悪性形質転換は、不可逆的な遺伝的変更に基づく悪性表現型への転移を表す。このことは正式には証明されていないが、悪性形質転換は、1個の細胞から生じ、その細胞を起源として、その後、腫瘍が発達する(「癌の形成」ドグマ)と考えられている。発癌は、癌が発生するプロセスであり、究極的に悪性腫瘍の増殖をもたらす多数の事象を含むことが一般的に認められている。この多段階プロセスは、変異の付加およびおそらくはまたエピジネティックな事象のようないくらかの律速段階を含み、前癌増殖のステージ後に癌の形成をもたらす。段階的変化は、細胞分裂、反秩序的な(asocial)挙動および細胞死を決定する生命の規則的経路におけるエラー(変異)の累積に関係する。これらの変化のそれぞれは、周囲の細胞と比較して、選択的なダーウィン(Darwinian)増殖の利点を提供し得、腫瘍細胞集団の正味の増殖を生じる。悪性腫瘍は、形質転換された腫瘍細胞自体だけではなく、また、支持間質として作用する周囲の正常細胞からも構成されることを強調することは重要である。この補充された癌間質は、結合組織、血管および他の様々な正常細胞から、例えば、腫瘍増殖の継続に必要なシグナルを形質転換された腫瘍細胞に、供給するために共同で作用する炎症細胞からなる。
【0004】
最も多い癌の形態は、体細胞において生じ、そして主に、上皮、例えば、前立腺上皮、乳腺上皮、結腸上皮、尿路上皮および皮膚上皮由来であり、その次に多い形態として、造血系統を起源とする癌、例えば、白血病およびリンパ腫、神経外胚葉、例えば、悪性神経膠腫、ならびに軟部組織腫瘍、例えば、肉腫が続く。
【0005】
癌診断および予後
腫瘍から採取した組織切片の顕微鏡的評価は、依然として、癌の診断を決定するための絶対的基準のままである。顕微鏡的診断では、疑わしい腫瘍由来の生検材料を回収し、そして顕微鏡下で調べる。確定診断を得るためには、腫瘍組織をホルマリン中で固定し、組織学的に処理(histo−processed)し、そしてパラフィン包埋する。得られるパラフィンブロックから、組織切片を生成し、そして組織化学的、即ち、ヘマトキシリン−エオシン染色、および免疫組織化学的方法の両方を使用して、染色する。次いで、外科的標本を、目視および顕微鏡分析を含む病理学的技術により評価する。この分析は、特異的診断、即ち、腫瘍タイプを分類し、そして腫瘍の悪性度を階層化(grading)するための基礎を形成する。
【0006】
悪性腫瘍は、各癌タイプに特異的な分類スキームに従って、いくらかのステージに分類することができる。固形腫瘍の最も一般的な分類システムは、腫瘍−リンパ節−転移(TNM)分類である。Tの病期分類は、原発腫瘍の局所進展度、即ち、腫瘍がどれだけ広範に周囲の正常組織に浸潤し、そして増殖したかについて説明し、Nの病期分類およびMの病期分類は、腫瘍がどれくらいの転移に進展しているかを説明しており、Nの病期分類は、腫瘍のリンパ節への拡大を説明し、そしてMの病期分類は、他の離れた器官における腫瘍の増殖について説明している。初期のステージとして:T0〜1、N0、M0が挙げられ、リンパ節転移陰性の局在性の腫瘍を表す。より進行期のステージとして:より広範な増殖を伴う局在性の腫瘍を表すT1〜4、N0〜4、M0が挙げられ、そしてリンパ節に転移した腫瘍を表すT1〜4、N1〜4、M0が挙げられ、そして離れた器官において転移が検出された腫瘍を表すT1〜4、N1〜4、M1が挙げられる。腫瘍の分類は、しばしば、外科的、放射線学的および病理組織学的分析を含むいくらかの形態の検査に基づく。分類に加えて、ほとんどの腫瘍タイプの悪性度のレベルを階層化するための分類システムも存在する。階層化システムは、腫瘍組織サンプルの形態学的評価に依存し、そして所与の腫瘍において見出される顕微鏡的特徴に基づく。これらの階層化システムは、腫瘍細胞の分化、増殖および異形の程度に基づき得る。一般的に用いられる階層化システムの例として、前立腺癌を階層化するGleasonおよび乳癌を階層化するElston−Ellisが挙げられる。
【0007】
的確な分類および階層化は、正確な診断に極めて重要であり、そして予後を予測するための道具を提供する。続いて、特定の腫瘍の診断および予後情報は、所与の癌患者の適切な治療計画を決定する。組織切片の組織化学染色に加えて、腫瘍に関する更なる情報を得るための最も一般に用いられる方法は、免疫組織化学染色(IHC)である。IHCは、特異的抗体を使用する組織および細胞におけるタンパク質発現パターンの検出を可能にする。臨床診断においてIHCを使用すると、組織化学的に染色した腫瘍組織切片から評価される組織構造および細胞形態学に関する情報に加えて、異なる細胞集団における免疫反応性を検出することが可能になる。IHCは、原発腫瘍の分類および階層化を含む的確な診断を支持すること、ならびに起源が不明な転移の診断において重要であり得る。今日の臨床診療において最も一般に使用される抗体として、細胞タイプ「特異的」タンパク質、例えば、PSA(前立腺)、MelanA(メラノサイト)、サイログロブリン(甲状腺)に対する抗体、ならびに中間径フィラメント(上皮細胞、間葉細胞、グリア細胞)、白血球分化(CD)抗原(造血(hematopoetic)細胞、リンパ系(lympoid)細胞の下位分類)および悪性度のマーカー、例えば、Ki67(増殖)、p53(通例、変異した腫瘍抑制因子遺伝子)およびHER−2(増殖因子受容体)を認識する抗体が挙げられる。
【0008】
IHCの他に、遺伝子増幅を検出するためのインサイチュハイブリダイゼーションおよび変異分析の遺伝子配列決定の使用も、癌診断分野での発展している技術である。加えて、転写物、タンパク質または代謝物の網羅的分析もすべて、重要な情報を追加する。しかし、これらの分析のほとんどはなお、基礎研究を想定しており、そして臨床医学における使用のための評価および標準化は未だ行われていない。
【0009】
結腸および直腸由来の腺癌(大腸癌)
大腸癌、腺癌として存在する悪性上皮腫瘍は、世界的に、ヒト癌の最も一般的な形態の1つである。Parkinらによって提示されたGLOBOCAN2002データベースのデータから、年間約100万人の大腸癌の新たな症例が示されている(非特許文献1)。さらに、世界における大腸癌の発症率は、すべての癌の約9.4%であり、そして大腸癌は、西洋において2番目に多い死亡原因である。大腸癌の5年生存率は、西洋において約60%であるが、東欧およびインドでは30%と低い。
【0010】
早期検出および腫瘍の摘出による手術は、現在、成功的治療に極めて重要である。局在する腫瘍、即ち、転移性疾患に発展していない腫瘍では、腫瘍ならびに周辺の腸および組織の根治的切除による外科的介入が実施される。大腸腫瘍は、Dukes分類A〜Dに従って、またはより最近では、TNM分類に従って、いくらかのステージに分類される。最も小さな悪性腫瘍(Dukes分類AおよびB)は、一般的に、比較的好適な結果に関連するが、転移を伴う高度に悪性の腫瘍(Dukes分類CおよびD)は、低い生存率を有する。不運にも、大腸癌は、しばしば、検出前に相当なサイズにまで増大し、それ故、転移も珍しくない。腫瘍は、典型的に、領域リンパ節に転移するが、肝臓および肺への遠隔転移もまた、一般的である。
【0011】
症状は、腫瘍が遠位消化管のどの場所に局在するかに依存し、そして腸窮迫、下痢、便秘、疼痛、および(腫瘍から腸への出血に付随する)貧血を含む。現行の診断は、患者病歴、臨床および内視鏡検査(直腸鏡検査および大腸内視鏡検査)、場合により、それに続く、腫瘍増殖の広がりを決定するための放射線マッピングに基づく。内視鏡検査と共同して、疑わしい病巣から組織生検が実施される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Parkin DM et al (2005) CA Cancer J Clin 55, 74-108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
鑑別診断では、サイトケラチン20(CK20)、消化管の腺細胞に豊富な中間径フィラメントマーカーは、一般的に、大腸癌を含む消化管における原発腫瘍を診断するために使用される。他のいくつかの腺癌もまたCK20抗体に対して陽性であり得るが、すべての大腸癌が陽性ではないため、CK20マーカーは理想的ではない。更なる予後データを提供する認められた階層化システムまたはタンパク質マーカーは存在しないため、予後情報は、主に、腫瘍ステージ分類から得られる。今日、悪性度が低くかつ転移性疾患に発達する危険性が低い腫瘍と生存の可能性が低減した高度に悪性の腫瘍とを区別することができる利用可能なマーカーは存在しない。それ故、患者の結果を推定し、そして治療介入を含む患者管理の指針を提示するために使用することができる分子マーカーが緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示物のいくつかの態様の目的は、新規のエピトープおよびそれに結合する親和性リガンドを提供することである。さらに、いくつかの態様の目的は、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後の確立に有用な手段および方法を提供することである。
【0015】
本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1は、モノクローナル抗体5E2を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、核画分≧2%(NF>0)を表し、そして破線は、核画分<2%(NF=0)を表す。図1Aは、すべての患者の結果を示す。
【図1B】図1は、モノクローナル抗体5E2を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、核画分≧2%(NF>0)を表し、そして破線は、核画分<2%(NF=0)を表す。図1Bでは、Dukeの分類CまたはDの大腸癌を伴う被験体のみを分析した。
【図2A】図2は、モノクローナル抗体5E2を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、弱い、中等度のまたは強い核強度(NI>0)を表し、そして破線は、不在の核強度(NI=0)を表す。図2Aは、すべての患者の結果を示す。
【図2B】図2は、モノクローナル抗体5E2を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、弱い、中等度のまたは強い核強度(NI>0)を表し、そして破線は、不在の核強度(NI=0)を表す。図2Bでは、Dukeの分類CまたはDの大腸癌を伴う被験体のみを分析した。
【図3A】図3は、モノクローナル抗体8F11を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、核画分≧75%(NF=1)を表し、そして破線は、核画分<75%(NF<1)を表す。図3Aは、すべての患者の結果を示す。
【図3B】図3は、モノクローナル抗体8F11を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、核画分≧75%(NF=1)を表し、そして破線は、核画分<75%(NF<1)を表す。図3Bでは、Dukeの分類CまたはDの大腸癌を伴う被験体のみを分析した。
【図4A】図4は、モノクローナル抗体8F11を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、強い核強度(NI=1)を表し、そして破線は、不在、弱いおよび中等度の核強度(NI<1)を表す。図4Aは、すべての患者の結果を示す。
【図4B】図4は、モノクローナル抗体8F11を使用して大腸S状結腸癌腫と診断された305例の被験体の免疫組織化学染色に基づく全生存分析(OS)の結果を示す。実線は、強い核強度(NI=1)を表し、そして破線は、不在、弱いおよび中等度の核強度(NI<1)を表す。図4Bでは、Dukeの分類CまたはDの大腸癌を伴う被験体のみを分析した。
【図5】図5は、モノクローナル抗体5E2と8F11との間のクロス集計を示す。
【図6A】図6は、大腸癌腫の2つのサンプルの免疫組織化学染色を示す。下の画像は、より高い倍率で示したものである。図6Aは、ポリクローナル抗体HPA001042(HPA msAB)を使用した染色結果を示す。
【図6B】図6は、大腸癌腫の2つのサンプルの免疫組織化学染色を示す。下の画像は、より高い倍率で示したものである。図6Bは、モノクローナル抗体5E2の結果を示す。
【図7A】図7は、大腸癌腫の2つのサンプルの免疫組織化学染色を示す。下の画像は、より高い倍率で示したものである。図7Aは、ポリクローナル抗体HPA001042(HPA msAB)を使用した染色結果を示す。
【図7B】図7は、大腸癌腫の2つのサンプルの免疫組織化学染色を示す。下の画像は、より高い倍率で示したものである。図7Bは、モノクローナル抗体8F11の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本開示物の第1の態様として、47以下のアミノ酸からなり、そして配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むエピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンドを提供する。
【0018】
本開示物に関して、「エピトープ配列との選択的相互作用」は、エピトープ配列に含有されるアミノ酸残基との選択的相互作用を指す。例えば、エピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンドは、エピトープ配列のアミノ酸残基からなるフラグメントとの選択的相互作用が可能であり得、このフラグメントは、溶液中に遊離して存在してもよく、または固定化されている、例えば、ビーズに結合していてもよい。また、そのようなフラグメントは、相互作用の検出のためのレポーター部分に結合されていてもよい。もう1つの例として、「エピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンド」は、エピトープ配列が、より長いポリペプチドに含まれる場合を指し得るが、但し、親和性リガンドが、エピトープ配列のアミノ酸残基と相互作用し、かつ周囲の、例えば、フランキングしているアミノ酸残基とは相互作用しないことが確立されている場合に限られる。
【0019】
本開示物に関して、例えば、親和性リガンドとその標的もしくは抗原との「特異的」または「選択的」相互作用は、特異的相互作用と非特異的相互作用との間、または選択的相互作用と非選択的相互作用との間の区別に意義が生じるような相互作用を意味する。2つのタンパク質間の相互作用は、時々、解離定数によって測定される。解離定数は、2つの分子間の結合の強さ(または親和性)を説明する。典型的に、抗体のような親和性リガンドとその抗原との間の解離定数は、10−7〜10−11Mである。しかし、高い特異性には、必ずしも高い親和性が必要であるわけではない。対応物に対する(モル範囲で)低い親和性を有する分子は、かなり高い親和性を有する分子と同じ程度に特異的であることが示されている。本開示物の場合、特異的または選択的相互作用は、特定の方法を使用して、天然に存在するかまたは処理された生物学的液体の組織サンプルもしくは液体サンプルにおいて他のタンパク質が存在する所与の条件下で、特異的エピトープ配列を含むタンパク質の存在ならびに/あるいは量を決定することができる程度を指す。言い換えれば、特異性または選択性は、関連するポリペプチド配列を区別する能力である。特異的および選択的は、時々、本明細書において交換可能に使用される。特異性および選択性の決定はまた、Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337にも記載されている。
【0020】
本開示物のこの第1の態様は、本発明者らが所定のエピトープ(即ち、配列番号1および2)を同定し、そしてこれらのエピトープに結合する親和性リガンドを開発したことに基づく。また、本発明者らは、配列番号1および/または2のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合する親和性リガンドが大腸癌を有する被験体の予後を確立するのに有用であり得ることを見出した。大腸癌患者における配列番号1および/または2を含むタンパク質の発現は、本明細書において、そのような患者の生存と相関することが示されている。それ故、第1の態様の親和性リガンドは、例えば、大腸癌を有する被験体の予後を確立するための様々な分析、方法、アッセイまたは設定において使用することができる。一般に、そのようなアプリケーションでは、全長タンパク質またはより長いそのフラグメント(例えば、抗原)に単に特異的であるポリクローナル抗体のような親和性リガンドより、所定のエピトープに特異的である親和性リガンドを有する方が、より望ましい。第1の態様に従う親和性リガンドのアプリケーションの例を、以下の態様3として提供する。
【0021】
配列番号1の配列を有するエピトープと相互作用する抗体は、大腸癌を有する被験体の予後を確立するのに特に適切であることを見出した。
【0022】
結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号1を含み得る。例えば、本発明者らは、そのような実施形態に従うモノクローナル抗体のほうが、そのようなタンパク質にも結合するが、配列番号1を含むエピトープ配列に対して選択的ではないポリクローナル抗体よりも、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む組織サンプルとのより強く、かつより明瞭な免疫反応性を提示することを見出した(図6〜7も参照のこと)。
【0023】
異なる2つのモノクローナル抗体を使用するエピトープマッピングによって、本発明者らは、両方ともが配列番号1を含む異なる2つのアミノ酸配列(配列番号3および配列番号4)を同定した。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号3および/または配列番号4を含み得る。
【0024】
配列番号3を同定するために使用されるモノクローナル抗体は、本明細書において、大腸癌を有する被験体の予後を確立することに関連することが示されている(図3および4を参照のこと)。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号3を含み得る。
【0025】
すべてが配列番号3を含む、定義された長さを有する多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号31〜37は、本明細書において、そのモノクローナル抗体と相互作用することが示されている。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0026】
配列番号4を同定するために使用されるモノクローナル抗体は、本明細書において、大腸癌を有する被験体の予後を確立することに特に関連することが示されている(図1および2を参照のこと)。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号4を含み得る。
【0027】
すべてが配列番号4を含む、定義された長さを有する多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号6〜14は、本明細書において、特に関連するモノクローナル抗体と相互作用することが示されている。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号6〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0028】
異なる2つのモノクローナル抗体を使用するエピトープマッピングによって、本発明者らは、両方ともが配列番号2を含む異なる2つのアミノ酸配列(配列番号2および配列番号5)を同定した。
【0029】
結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号5を含み得る。
【0030】
定義された長さを有する多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号52〜59および78〜82を、配列番号2の同定に使用した。結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0031】
配列番号3を含む上記のフラグメントは、それぞれ、33、38、39、42、43、45および47アミノ酸長である。さらに、配列番号4を含む上記のフラグメントは、それぞれ、31、34、37、38、41、42、43、45、および47アミノ酸長である。
【0032】
結果的に、第1の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、45以下のアミノ酸残基、例えば、43以下のアミノ酸残基、例えば、42以下のアミノ酸残基、例えば、41以下のアミノ酸残基、例えば、39以下のアミノ酸残基、例えば、38以下のアミノ酸残基、例えば、37以下のアミノ酸残基、例えば、34以下のアミノ酸残基、例えば、33以下のアミノ酸残基、例えば、31以下のアミノ酸残基からなる。
【0033】
しかし、エピトープ配列は、配列番号1または2を含む限り、第1の態様の親和性リガンドとの相互作用を可能にするほど長い(>30アミノ酸)必要はないかもしれない。結果的に、第1態様の実施形態では、エピトープ配列は、25以下のアミノ酸、例えば、20以下のアミノ酸、例えば、17以下のアミノ酸、例えば、14以下のアミノ酸、例えば、12以下のアミノ酸からなり得る。エピトープ配列では、配列番号1または配列番号2にフランキングするアミノ酸は、例えば、タンパク質SATB2においてそれらにフランキングしているアミノ酸であってもよい。
【0034】
一旦、本明細書において開示される本エピトープ情報が提供されれば、第1の態様に従う親和性リガンドを選択または製造することは当業者の能力の範囲内にあるものとみなされる。それでも敢えて、有用性を証明し得る親和性リガンドの例、ならびに検出および/または定量化の形式および条件の例を、例示目的のために以下に示すことにする。
【0035】
それ故、第1の態様の実施形態では、親和性リガンドは、抗体、そのフラグメントおよびその誘導体、即ち、免疫グロブリン足場に基づく親和性リガンドからなる群から選択され得る。例えば、抗体は、単離されたおよび/または単一特異的であり得る。例えば、抗体は、マウス、ウサギ、ヒトおよび他の抗体を含む任意の起源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに部分的にヒト化された抗体、例えば、部分的にヒト化されたマウス抗体のような異なる種由来の配列を含むキメラ抗体を含む。ポリクローナル抗体は、好適な抗原による動物の免疫化によって産生される。定義された特異性を有するモノクローナル抗体は、KoehlerおよびMilstein(Koehler G and Milstein C (1976) Eur. J. Immunol. 6:511-519)によって開発されたハイブリドーマ技術を使用して、産生させることができる。本明細書において、大腸癌を有する被験体の予後を確立することに特に関連することが示された親和性リガンドは、モノクローナル抗体である。それ故、第1の態様の実施形態では、親和性リガンドは、モノクローナル抗体であってもよい。
【0036】
本開示物に関して、「単一特異的抗体」は、それ自体の抗原に対してアフィニティー精製されているポリクローナル抗体の集団の1つであり、それによって、他の抗血清タンパク質および非特異的抗体からそのような単一特異的抗体を分離している。このアフィニティー精製は、その抗原に選択的に結合する抗体を生じる。本発明の場合、ポリクローナル抗血清は、標的タンパク質に選択的な単一特異的抗体を得るための2工程の免疫アフィニティーに基づくプロトコルによって、精製される。捕捉因子として固定化されたタグタンパク質を使用する1次枯渇工程において、抗原フラグメントの包括的親和性タグに対する抗体を取り出す。第1の枯渇工程後、抗原に特異的な抗体を富化するために、捕捉因子として抗原を伴う第2のアフィニティーカラム上で、血清を単離する(Nilsson P et al. (2005) Proteomics 5:4327-4337も参照のこと)。
【0037】
抗体フラグメントおよび誘導体は、無傷(intact)な免疫グロブリンタンパク質の重鎖(CH1)の第1の定常ドメイン、軽鎖(CL)の定常ドメイン、重鎖(VH)の可変ドメインおよび軽鎖(VL)の可変ドメインからなるFabフラグメント;2つの可変抗体ドメインVHおよびVLからなるFvフラグメント(Skerra A and Plueckthun A (1988) Science 240:1038-1041);可撓性ペプチドリンカーによって共に連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fvフラグメント(scFv)(Bird RE and Walker BW (1991) Trends Biotechnol. 9:132-137);Bence Jonesダイマー(Stevens FJ et al. (1991) Biochemistry 30:6803-6805);ラクダ科重鎖ダイマー(Hamers-Casterman C et al. (1993) Nature 363:446-448)および単一可変ドメイン(Cai X and Garen A (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:6280-6285;Masat L et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:893-896)、ならびに例えば、コモリザメ由来のNew Antigen Receptor(NAR)のような単一ドメイン足場(Dooley H et al. (2003) Mol. Immunol. 40:25-33)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(Skerra A and Plueckthun A (1988) Science 240:1038-1041)を含む。
【0038】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体は、下記の方法態様に従う標的タンパク質の検出および/または定量化におけるような選択的生体分子認識を必要とするアプリケーションにおいて、親和性リガンドを従来どおり選択する。しかし、当業者は、選択的結合リガンドのハイスループット作製および低コスト生産システムの需要が増加しているため、新たな生体分子多様性技術が、最近10年間の間に開発されてきたことを知っている。これは、生体分子認識アプリケーションにおいて結合リガンドとして有用であることが同様に証明されており、そして免疫グロブリンの代わりに、または免疫グロブリンと共に使用することができる免疫グロブリンならびに非免疫グロブリン起源の両方の新規のタイプの親和性リガンドの作製を可能にした。
【0039】
第1の態様に従う親和性リガンドの選択に必要な生体分子多様性は、複数の可能な足場分子のうちの1つのコンビナトリアル操作によって作製することができ、次いで、親和性リガンドが、適切な選択プラットホームを使用して、選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質由来(Bradbury AR and Marks JD (2004) J. Immunol. Meths. 290:29-49)、非免疫グロブリンタンパク質由来(Nygren PA and Skerra A (2004) J. Immunol. Meths. 290:3-28)、またはオリゴヌクレオチド由来(Gold L et al. (1995) Annu. Rev. Biochem. 64:763-797)であってもよい。
【0040】
多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が、新規の結合タンパク質の開発において支持構造として使用されている。第1の態様に従って使用するための親和性リガンドを作製するのに有用なそのような構造の非制限的例には、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメインならびにこれらのドメインの誘導体、例えば、プロテインZ(Nord K et al. (1997) Nat. Biotechnol. 15:772-777);リポカリン(Beste G et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:1898-1903);アンキリンリピートドメイン(Binz HK et al. (2003) J. Mol. Biol. 332:489-503);セルロース結合ドメイン(CBD)(Smith GP et al. (1998) J. Mol. Biol. 277:317-332;Lehtioe J et al. (2000) Proteins 41:316-322);γクリスタリン(Fiedler U and Rudolph R、WO01/04144);緑色蛍光タンパク質(GFP)(Peelle B et al. (2001) Chem. Biol. 8:521-534);ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(Hufton SE et al. (2000) FEBS Lett. 475:225-231;Irving RA et al. (2001) J. Immunol. Meth. 248:31-45);プロテアーゼ阻害剤、例えば、Knottinタンパク質(Wentzel A et al. (2001) J. Bacteriol. 183:7273-7284;Baggio R et al. (2002) J. Mol. Recognit. 15:126-134)およびKunitzドメイン(Roberts BL et al. (1992) Gene 121:9-15;Dennis MS and Lazarus RA (1994) J. Biol. Chem. 269:22137-22144);PDZドメイン(Schneider S et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17:170-175);ペプチドアプタマー、例えば、チオレドキシン(Lu Z et al. (1995) Biotechnology 13:366-372;Klevenz B et al. (2002) Cell. Mol. Life Sci. 59:1993-1998);ブドウ球菌ヌクレアーゼ(Norman TC et al. (1999) Science 285:591-595);テンダミスタット(McConell SJ and Hoess RH (1995) J. Mol. Biol. 250:460-479;Li R et al. (2003) Protein Eng. 16:65-72);フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(Koide A et al. (1998) J. Mol. Biol. 284:1141-1151;Xu L et al. (2002) Chem. Biol. 9:933-942);ならびにジンクフィンガー(Bianchi E et al. (1995) J. Mol. Biol. 247:154-160;Klug A (1999) J. Mol. Biol. 293:215-218;Segal DJ et al. (2003) Biochemistry 42:2137-2148)がある。
【0041】
非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例として、新規の結合特異性の作製に使用される単一の無作為化ループを提示する足場タンパク質、堅牢な2次構造を伴うタンパク質足場が挙げられ、ここで、タンパク質表面から突出している側鎖が、新規の結合特異性の作製、および新規の結合特異性の作製に使用される非連続的超可変ループ領域を示す足場のために無作為化される。
【0042】
非免疫グロブリンタンパク質に加えて、オリゴヌクレオチドもまた、第1の態様に従う親和性リガンドとして使用してもよい。一本鎖核酸は、アプタマーまたはデコイと呼ばれ、良好に定義された3次元構造に折り畳まれ、そして高い親和性および特異性でそれらの標的に結合する。(Ellington AD and Szostak JW (1990) Nature 346:818-822;Brody EN and Gold L (2000) J. Biotechnol. 74:5-13;Mayer G and Jenne A (2004) BioDrugs 18:351-359)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであり得、そして広範な標的分子クラスに結合することができる。
【0043】
上記の足場構造のいずれかの変異体のプールから第1の態様に従う親和性リガンドを選択するために、多くの選択プラットホームが、好適な標的タンパク質に対する新規の特異的なリガンドの単離に利用可能である。選択プラットホームとして、ファージディスプレイ(Smith GP (1985) Science 228:1315-1317)、リボソームディスプレイ(Hanes J and Plueckthun A (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:4937-4942)、酵母ツーハイブリッドシステム(Fields S and Song O (1989) Nature 340:245-246)、酵母ディスプレイ(Gai SA and Wittrup KD (2007) Curr Opin Struct Biol 17:467-473)、mRNAディスプレイ(Roberts RW and Szostak JW (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:12297-12302)、細菌ディスプレイ(Daugherty PS (2007) Curr Opin Struct Biol 17:474-480、Kronqvist N et al. (2008) Protein Eng Des Sel 1-9、Harvey BR et al. (2004) PNAS 101(25):913-9198)、マイクロビーズディスプレイ(Nord O et al. (2003) J Biotechnol 106:1-13、WO01/05808)、SELEX(System Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(Tuerk C and Gold L (1990) Science 249:505-510)およびタンパク質フラグメント相補性アッセイ(PCA)(Remy I and Michnick SW (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96:5394-5399)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
それ故、第1の態様の実施形態では、親和性リガンドは、上記で列挙したタンパク質足場のうちのいずれかから誘導された非免疫グロブリン親和性リガンドであってもよく、またはオリゴヌクレオチド分子であってもよい。
【0045】
親和性リガンドは、様々な分析、アッセイ、方法および設定に使用するために標識してもよい。第1の態様に従う標識された親和性リガンドの実施形態については、第3および4の態様に関連して以下に考察する。
【0046】
第1の態様に従うリガンドは、インビボでの画像のようなインビボ診断に使用され得る。
【0047】
本発明者らは、S状結腸における標的タンパク質発現が大腸癌の予後の確立に特に関連することを認識した。それ故、親和性リガンドは、標的タンパク質の発現を検出するのにインビボで使用され得る(以下の定義を参照のこと)。
【0048】
それ故、第1の態様の実施形態では、親和性リガンドは、例えば、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するために、標的タンパク質の発現を検出するためのインビボ方法(以下の定義を参照のこと)に使用され得る。
【0049】
インビボでの実施形態では、親和性リガンドは、例えば、即ち、放射性同位元素のような検出可能な標識で標識された画像を可能にするために標識され得る。抗体のような親和性リガンドを標識するための適切な標識は、当業者に周知である。大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのインビボ方法は、例えば、インビボでの腫瘍における標的タンパク質の発現を示し得、次いで、処置決定の基礎を形成し得る。
【0050】
本明細書に示すように、第1の態様に従う親和性リガンドは、大腸癌を有する被験体の予後の確立に関連する様々なアプリケーションを有し得る。結果的に、本開示物の第2の態様として、予後作用剤として第1の態様に従う親和性リガンドの使用が提供される。
【0051】
本開示物に関して、「予後作用剤」は、予後の確立において価値のある少なくとも1つの特性を指す。例えば、「予後作用剤」は、マーカータンパク質のような予後マーカーとの選択的相互作用が可能であり得る。
【0052】
さらに、本開示物に関して、「予後マーカー」は、存在することで予後の確立において価値を有する何らかの材料を指す。例えば、予後マーカーは、以下に定義するような標的タンパク質であってもよい。
【0053】
第2の態様の実施形態では、使用は、大腸癌のような癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものであってもよい。
【0054】
本開示物の第3の態様として、以下の工程を含む、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵するかどうかを決定するための方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られたサンプルを提供する工程;
b)第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する標的タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と前記対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵すると結論付ける工程。
【0055】
本開示物の態様1〜7に関して、「標的タンパク質」は、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。SATB1タンパク質およびSATB2タンパク質は、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質の例である。実施形態では、標的タンパク質は、配列番号1を含むSATB2であってもよい。
【0056】
第3の態様の第1の構成に従えば、以下の工程を含む、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を決定するための方法が提供される:
a)前記被験体からより早期に得られたサンプルを提供する工程;
b)第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する標的タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵すると結論付ける工程。
【0057】
実施形態では、上記の方法のいずれか1つは、更なる工程を含み得る:
サンプル値が対照値より高い場合、
e)被験体の予後は、対照予後より良好であると結論付ける工程。
【0058】
第3の態様の第2の構成に従えば、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵するかどうか、または予後が前記対照予後より良好であるかどうかを決定するための方法が提供され、前記方法は以下の工程を含む:
a)前記被験体からより早期に得られたサンプルを提供する工程;
b)第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する標的タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d1)前記被験体の予後は、前記対照予後に匹敵するかもしくはそれより不良であると結論付ける工程、または
前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d2)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より良好であると結論付ける工程。
【0059】
しかし、同じ概念に密接に関連および包含される第3の態様の第2の構成のd1)およびd2)は、2つの別の結論への選択肢を提供する。従って、第3の態様の第2の構成の方法は、前記被験体の予後が前記対照予後に匹敵するかもしくはそれより不良であるかという問題、または前記被験体の予後が前記対照予後より良好であるかどうかという問題に答え得る。しかし、第3の態様の第2の構成の方法は、適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d1)、および適合条件(語句「〜である場合」の部分)を随伴する工程d2)の両方を含んでもよいが、必ずしも含む必要はない。
【0060】
結果的に、第3の態様は、第1の態様に従う親和性リガンドの使用、即ち、本開示物のエピトープの認識に限定される。例えば、第3の態様は、侵攻性の形態の大腸癌の同定のためのツールを提供し得、次いで、侵攻性の形態の大腸癌を早期に同定することは、医師が、適切な治療計画を選択するのに役立つため、極めて重要である。また、早期のステージにおいてそれほど侵攻性ではない形態を同定することによって、過度の治療を回避することができる。
【0061】
本開示物では、様々な予後に対応する異なるタンパク質の発現の値(サンプル値)を提示する。典型的に、低いサンプル値は、高いサンプル値より不良な予後に関連する。上記の方法では、サンプル値を対照値と比較し、そしてサンプル値が対照値以下である場合、被験体の予後は対照値に関連する対照予後に匹敵するかもしくはそれより不良であると結論付けられる。
【0062】
結果的に、上記の方法は、対照値に応用することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与のサンプル値から開始して、所与のサンプル値以上の対照値を選択することができる。続いて、その対照値に関連する対照予後を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照値に対応する対照予後を確立する仕方について理解している。例えば、タンパク質発現値と癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4にあるように調べてもよく、そして本明細書に記載の手順を、所与の対照値に応用してもよい。次いで、所与の対照値に対応する予後を、対照予後として選択してもよい。
【0063】
また、上記の方法は、所与の対照予後に応用することができる。そのような場合、所定の環境下で関連すると考えられる所与の対照予後から開始して、例えば、適切な治療を選択するために、対応する対照値を確立することができる。本開示物を指針として、当業者は、所与の対照予後に対応する対照値を確立する仕方について理解している。例えば、サンプル値と癌患者のグループにおける生存率のデータとの間の関係を、下記の実施例、セクション4にあるように調べてもよいが、但し、本明細書に記載の手順を適用して、所与の対照予後に対応する対照値を確立する。例えば、所与の対照予後と相関する対照値が見出されるまで、異なる対照値を試験してもよい。例えば、本開示物は、適切な開始値を提示して、試験の必要量を減少することができるため、当業者は、過度の負担を伴わずに、そのような試験を行うことができる。
【0064】
従って、上記の態様の方法の実施形態では、対照予後は、例えば、同じ被験体または被験体の集団の検査によって得られる予め確立された予後に基づき得る。また、対照予後は、一般集団におけるバックグランドの危険率、統計的予後/危険率または被験体の検査に基づく仮定に応用することができる。そのような試験では、被験体の年齢、全身状態、性別、人種および/または医学的状態および既往歴、例えば、癌の既往歴または大腸癌の状態を考慮してもよい。例えば、医師は、対照予後を、被験体の癌の既往歴、腫瘍の分類、腫瘍の形態学、腫瘍の位置、転移の存在および広がりならびに/あるいは更なる癌の特徴に応用することができる。
【0065】
第3の態様の第3の構成に従えば、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための方法が提供される:
a)被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する標的タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)のサンプル値を、被験体の予後に相関させる工程。
【0066】
本開示物に関して、「予後を確立すること」とは、特定の予後または予後の期間を確立することを指す。
【0067】
上記の方法の実施形態では、サンプルは、早期に得られたサンプルであってもよい。
【0068】
工程c)の相関させる工程は、被験体の予後を確立するように、生存率のデータを、得られたサンプル値に関連付ける任意の方法を指す。
【0069】
第1の態様に従う親和性リガンドの結合活性と大腸癌予後との間の同定された相関はまた、処置決定のための基礎を形成し得る。例えば、そのような相関に基づく方法は、相関に基づかなければ考慮しなかったであろう処置レジメンを示唆し得る。それ故、本開示物の第4の態様に従えば、以下の工程を含む、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、被験体は大腸癌を有している:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する標的タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程b)において得られた前記サンプル値と対照値とを比較する工程;および
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)アジュバント大腸癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0070】
第2の態様の一実施形態では、方法は、以下の更なる工程を含み得る:
および、前記サンプル値が前記対照値より高い場合、
d)アジュバント大腸癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0071】
第4の態様の1つの実施形態では、工程c)の対照値は対照予後に関連し得、そして工程d)の前記大腸癌処置レジメンは、対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵する予後に応用され得る。そのような実施形態では、方法は、次の更なる工程を含み得る:e)および前記サンプル値が対照値より高い場合、前記被験体を、対照予後より良好である予後に応用させる処置レジメンで治療する工程。
【0072】
例えば、第2の態様の処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0073】
それ故、処置レジメンは、術前アジュバント療法であってもよい。そのような術前アジュバント療法は、放射線療法のみまたは化学療法と組み合わされた放射線療法からなり得る。
【0074】
一般に、大腸癌を有する患者に適切な治療計画を決定する場合、処置を担当する医師は、免疫組織化学的評価の結果、患者の年齢、全身状態、腫瘍のステージ、血管侵襲および分化度のようないくつかのパラメータを考慮することができる。そのような決定において指針とするために、医師は、上記で提示した方法態様のいずれかの実施形態に従って、試験を実施するか、または試験の実施を指令することができる。
【0075】
本開示物に関して、「予後」は、疾患の経過もしくは結果の予測およびその処置または疾患を患う被験体の生存率を指す。例えば、予後は、疾患からの生存または回復の可能性の決定、ならびに被験体の予想される生存期間の予測を指し得る。それはまた、疾患の再発、例えば、局部、局所または遠位での事象の可能性でもあり得る。さらに、予後は、3年間、5年間、10年間、15年間または他の任意の期間のような将来に至るある期間中の被験体の生存の可能性を確立することに関与し得る。結果的に、被験体の予後は、例えば、認識された生存測定値である「全生存率」のような生存の確率であってもよい。
【0076】
予後および対照予後に関与する上記の方法では、これらの2つの予後は、同じタイプの予後である。例として、対照予後が全生存率の対照確率である場合、結論は、対照確率全生存率(reference probability over−all survival)に関係する被験体の全生存率の確率であると言える。
【0077】
それ故、第3および適用可能であれば第4の態様の方法の実施形態では、予後は、生存の確率であってもよく、これは、被験体の予後が生存の確率であり、そして対照予後が生存の確率であることを伴う。例えば、生存の確率は、5年生存、10年生存または15年生存の確率であってもよい。
【0078】
さらに、本開示物に関して、「大腸癌を有する哺乳動物被験体」は、原発性もしくは続発性大腸腫瘍を有する哺乳動物被験体、あるいは結腸および/または直腸から腫瘍が摘出された哺乳動物被験体を指し、ここで、腫瘍の摘出は、任意の適切なタイプの手術または治療によって腫瘍を殺すか、もしくは摘出することを指す。例えば、被験体から腫瘍が摘出されていた場合、腫瘍は摘出されてから、5年未満、例えば、1年または6箇月未満である可能性がある。本開示物の方法および使用態様では、「大腸癌を有する哺乳動物被験体」はまた、哺乳動物被験体が、この使用または方法の実施時に大腸癌を有することが疑われており、そして後に大腸癌診断が確定される場合を含む。
【0079】
本開示物の方法態様に関して、「早期に得られた」は、方法が実施される前に得られたことを指す。結果的に、被験体から早期に得られたサンプルが、ある方法で提供される場合、方法は、サンプルを被験体から得る工程を必要としない、即ち、サンプルは、この方法とは個別の工程で被験体から予め得られた。
【0080】
従って、本開示物のすべての方法および使用は、全体をインビトロで実施することができる。
【0081】
本開示物の上記の方法態様の工程b)は、サンプルの少なくとも一部に存在するタンパク質の量を評価し、そして対応するサンプル値を決定することを必要とする。「サンプルの少なくとも一部」は、予後を確立するか、または適切な処置に関する結論を導き出すためのサンプルの関連する部分を指す。当業者は、方法を実施する場合に存在する状況下で関連する部分について理解している。例えば、サンプルが腫瘍および非腫瘍細胞を含む場合、当業者は、サンプルの腫瘍細胞のみ、および腫瘍細胞の核のみを考慮すればよい。
【0082】
さらに、工程b)では、量を評価し、そして量に対応するサンプル値を決定する。結果的に、サンプル値を得るために、タンパク質の量の正確な測定値は必要ではない。例えば、タンパク質の量は、染色された組織サンプルの目視検査によって評価してもよく、次いで、サンプル値は、評価された量に基づいて、例えば、高いかまたは低いかに分類してもよい。当業者は、そのような評価および決定を実施するための仕方を理解している。
【0083】
また、上記の態様に従う方法の工程b)に関して、タンパク質の量が増加すると、典型的に、サンプル値も増加する。しかし、いくつかの実施形態では、評価された量は、予め決定した数の個別のサンプル値のいずれかに対応し得る。そのような実施形態では、第1の量および第2の増加した量は、同じサンプル値に対応し得る。いずれにせよ、上記の態様に従う方法に関して、タンパク質の量が増加しても、サンプル値は減少しない。
【0084】
しかし、不便ではあるが、等価な様式では、工程c)とd)との間の定性化が「サンプル値が対照値以上である場合」に行われる場合、評価される量は、サンプル値に反比例するかもしれない。
【0085】
なおさらに、本開示物に関して、「対照値」は、被験体の予後もしくは処置に関して、決定を行うこと、または結論を導き出すことに関連する予め決定された値を指す。
【0086】
また、本開示物に関して、対照値に「関連」する対照予後は、エンピリカルデータおよび/または臨床的に意味のある仮定に基づいて対照予後に割り当てられている参照値を指す。例えば、第3の態様の方法の工程c)、および第4の態様の所定の実施形態を参照のこと。対照値は、対照値を示す被験体のグループの予後データから直接誘導される対照予後に割り当てる必要はない。対照予後は、例えば、対照値以下の値を示す被験体の予後に対応してもよい。即ち、対照値が0〜3の尺度で1である場合、対照予後は、0または1の値を示す被験体の予後であってもよい。結果的に、対照予後はまた、入手可能なデータの性質に応用することができる。上記でさらに考察したように、対照予後は、他のパラメータにも適用することができる。
【0087】
前記サンプル値を得るための工程b)における評価には、様々な条件を使用することができる。態様3および4の方法の実施形態では、工程b)は、前記サンプル中のタンパク質に対する前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で前記親和性リガンドを前記サンプルに応用することを含み得、そして前記評価した量は、前記サンプルの前記少なくとも一部に関連する前記親和性リガンドの量を評価することによって、得られる。ここで、「関連」は、親和性リガンドと成分、例えば、サンプル中のタンパク質との間の特異的および/または選択的相互作用を指す。
【0088】
態様3および4の方法の実施形態では、工程b)は、以下の工程を含み得る:
b1)前記サンプル中のタンパク質に対する前記親和性リガンドの結合を可能にする前記条件において、前記親和性リガンドを前記サンプルに応用する工程;
b2)前記サンプルから非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルの前記少なくとも一部に関連して残留している親和性リガンドの量を評価して、前記評価した量を入手する工程。
【0089】
ここで、「サンプルとの関連において残留する親和性リガンド」は、工程b2)において取り出されなかった親和性リガンド、例えば、サンプルに結合した親和性リガンドを指す。結合は、例えば、抗体とサンプル中に存在する抗原との間の特異的および/または選択的相互作用であってもよい。さらに、そのような実施形態では、工程b2)は、洗浄緩衝液による洗浄であってもよい。洗浄緩衝液の例は、当業者に周知である。また、そのような実施形態におけるサンプルは、組織サンプルであってもよく、そしてそのような場合、工程b1)〜b3)は、染色手順に反映する。例えば、そのような手順における洗浄は、当該技術分野内において標準的な操作である。
【0090】
態様3および4の方法のいくつかの実施形態では、親和性リガンドは、検出可能および/または定量可能であり得る。そのような親和性リガンドの検出および/または定量化は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおいて結合試薬の検出および/または定量化について当業者に公知の任意の方法で達成することができる。それ故、上記の任意の親和性リガンドを、定量的または定性的に使用して、標的タンパク質の存在を検出することができる。これらの「1次」親和性リガンドは、それら自体が、様々なマーカーによって標識され得、あるいは次いで、2次標識親和性リガンドによって検出されて、検出、可視化および/または定量化を可能にし得る。これは、当業者に公知であり、そして過度の実験に関係しない多数の技術のいずれか1つ以上を使用して、標的タンパク質との相互作用が可能な親和性リガンドまたは任意の2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる多数の標識のいずれか1つ以上を使用して、達成することができる。
【0091】
1次および/または2次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる標識の非制限的例として、蛍光染料または金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレスカミン)、発色団染料(例えば、ロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナール、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えば、ビオチン)が挙げられる。多様な他の有用な蛍光物質および発色団については、Stryer L (1968) Science 162:526-533およびBrand L and Gohlke JR (1972) Annu. Rev. Biochem. 41:843-868に記載されている。親和性リガンドは、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ラクタマーゼ)、放射性同位元素(例えば、H、14C、32P、35Sまたは125I)および粒子(例えば、金)で標識することができる。本開示物に関して、「粒子」は、分子を標識するのに適切な粒子、例えば、金属粒子を指す。さらに、親和性リガンドはまた、蛍光半導体ナノ結晶(量子ドット)で標識することができる。量子ドットは、より優れた量子収量を有し、そして有機蛍光団と比較してより光安定性であり、従って、より容易に検出される(Chan et al. (2002) Curr Opi Biotech. 13: 40-46)。様々な化学、例えば、アミン反応またはチオール反応を使用して、異なるタイプの標識を、親和性リガンドにコンジュゲートすることができる。しかし、アミンおよびチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸およびグルタミンを使用することもできる。
【0092】
本開示物の方法態様は、いくらかの既知の形式および設定のいずれかで利用することができ、その非制限的選択について以下で考察する。
【0093】
組織学に基づく設定では、その標的タンパク質に結合した標識親和性リガンドの検出、局在および/または定量化は、可視化技術、例えば、光学顕微鏡または免疫蛍光(immunofluoresence)顕微鏡に関係し得る。他の方法は、フローサイトメトリーまたはルミノメトリーを介する検出に関係し得る。
【0094】
例えば、被験体から取り出した大腸組織由来の腫瘍組織サンプル(生検)のような生物学的サンプルは、標的タンパク質の検出および/または定量化に使用することができる。生検のような生物学的サンプルは、早期に得られたサンプルであってもよい。ある方法において早期に得られたサンプルを使用する場合、ヒトまたは動物身体に対して実践される方法の工程はない。親和性リガンドを、標的タンパク質の検出および/または定量化のために、生物学的サンプルに適用してもよい。この手順は、標的タンパク質の検出を可能にするではなく、加えて、その発現の分布および相対的レベルを示すことができる。
【0095】
親和性リガンド上の標識の可視化の方法として、フルオロメトリー、ルミノメトリーおよび/または酵素的技術を挙げることができるが、これらに限定されない。蛍光は、蛍光標識を特定の波長の光に暴露し、その後、特定の波長領域において放射された光を検出および/または定量することによって、検出および/または定量される。発光タグ化親和性リガンドの存在は、化学反応中に発生する発光によって、検出および/または定量することができる。酵素反応の検出は、化学反応から生じるサンプルの色のシフトによるものである。当業者は、適切な検出および/または定量化のために、異なる多様なプロトコルを改変することができることを知っている。
【0096】
態様3および4の方法の実施形態では、生物学的サンプルを、ニトロセルロースもしくは適用される生物学的サンプルに存在する標的タンパク質を固定化することが可能な他の任意の固相支持体マトリックスのような固相支持体またはキャリアに固定化することができる。本発明において有用ないくつかの周知の固体状態支持材料として、ガラス、炭水化物(例えば、Sepharose)、ナイロン、プラスチック、ウール、ポリスチレン、ポリエテン(polyethene)、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、ガブロおよびマグネタイトが挙げられる。生物学的サンプルの固定化後、第1の態様に従う1次親和性リガンドは、例えば、本開示物の実施例、セクション4または5に記載のように適用することができる。1次親和性リガンドがそれ自体で標識されない場合、支持マトリックスを、当該分野において公知の1つ以上の適切な緩衝液で洗浄することができ、続いて、2次標識親和性リガンドに暴露し、もう1回、緩衝液で洗浄して、結合していない親和性リガンドを取り出すことができる。その後、従来の方法で、選択的親和性リガンドを検出および/または定量することができる。親和性リガンドの結合特性は、固体状態支持体によって変動し得るが、当業者は、日常的な実験によって、それぞれの決定のための作動条件および至適アッセイ条件を決定することが可能であるべきである。
【0097】
結果的に、態様3および4の方法の実施形態では、b1)において適用される親和性リガンド(1次親和性リガンド)は、定量可能な親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して検出することができる。それ故、b3)の定量化は、1次親和性リガンドに対して親和性を有する2次親和性リガンドによって行うことができる。例として、2次親和性リガンドは、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体であり得る。
【0098】
例として、標的タンパク質の検出および/または定量化の1つの利用可能な方法は、後に酵素イムノアッセイ(例えば、EIAもしくはELISA)で検出および/または定量することができる酵素に第1の態様に従う親和性リガンドを連結させることによる。そのような技術は、良好に確立されており、そしてそれらは、当業者にとって過度の困難を伴わずに実現される。そのような方法では、生物学的サンプルは、固体材料、または親和性リガンドにコンジュゲートされた固体材料と接触され、次いで、酵素標識された2次親和性リガンドで検出および/または定量される。この後、適切な基質を、酵素標識を伴う適切な緩衝液と反応させて、例えば、分光光度計、蛍光光度計、発光測定装置を使用して、または目視手段によって、検出および/または定量される化学部分を生成させる。
【0099】
上記で述べたように、1次および2次親和性リガンドは、検出および/または定量化を可能にする放射性同位元素で標識することができる。本開示物における適切な放射性標識の非制限的例は、H、14C、32P、35Sまたは125Iである。標識された親和性リガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体の純度、および標識がどのようにして親和性リガンドに組み入れられたかに依存する。親和性リガンドは、好ましくは、周知の技術(Wensel TG and Meares CF (1983) in: Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy (Burchiel SW and Rhodes BA eds.) Elsevier, New York, pp 185-196)を使用して標識される。そのような放射性標識された親和性リガンドを使用して、インビボまたはインビトロでの放射能の検出により、標的タンパク質を可視化することができる。例えば、γカメラ、磁気共鳴分光法または放射トモグラフィーによる放射性核種スキャニングは、インビボおよびインビトロでの検出に機能し、γ/βカウンター、シンチレーションカウンターおよびラジオグラフィーもまた、インビトロで使用される。
【0100】
態様3および4の方法の実施形態では、被験体は、異なる形態および/またはステージの大腸癌を有し得る。
【0101】
これらの態様のいくつかの実施形態では、問題の大腸癌は、リンパ節転移陰性の大腸癌、即ち、リンパ節転移のステージにまで進行していない大腸癌である。他の類似の実施形態では、問題の大腸癌は、Dukes分類AまたはBのいずれか一方であると特徴付けられる。なお他の実施形態では、問題の大腸癌は、大腸腺腫または大腸癌腫である。これらの実施形態では、被験体が低い標的タンパク質発現を示すことを決定する工程は、疾患の将来の進行の予後の値が大きくあり得、それ故、将来の疾患管理に関する十分な情報に基づいた決定の基礎を形成する。そのような比較的早期のステージの疾患を患う被験体のグループのうち、低い標的タンパク質発現を伴う被験体は、おそらく、より侵攻性の疾患を生じる危険性が比較的高い。従って、リンパ節転移陰性大腸癌またはDukes分類AもしくはBの大腸癌を有する被験体の中での低い標的タンパク質発現は、これらの被験体を、より厳密にモニターすべきであり、および/または低い標的タンパク質発現を示さない被験体とは異なる処置を行うべきであることを示し得る。従って、本発明に従う方法は、第1の態様に従う親和性リガンドを使用する方法によって更なる予後情報を与え、このため、そのような被験体に一定期間にわたる生存へのより大きな機会および/またはより長い生存期間の可能性を付与する。Dukes分類Aの大腸癌を有する被験体は、従来、アジュバント化学療法による処置を受けない。しかし、本開示物の教示内容を指針として、医師は、標的タンパク質発現の低い、または不在の被験体にそのようなアジュバント化学療法を施すように決定することができる。
【0102】
結果的に、態様3および4の方法の実施形態では、大腸癌はDukes分類Aである。代替的または相補的実施形態では、前記大腸癌は、上記のTNM分類に従えば、T1〜2、N0およびM0である。
【0103】
さらに、本明細書に示すように、標的タンパク質発現解析は、Dukes分類CまたはDの大腸癌を有する被験体の予後を確立することに関連する(図1B、2B、3Bおよび4Bを参照のこと)。そのような進行期の大腸癌を有する被験体は、重度の副作用を有するレジメンで頻繁に処置されている。例として、そのような被験体の標的タンパク質が、比較的高発現であると診断される場合、その被験体らには、副作用の頻度がより低いかまたは重度が低い、それ程広範ではない処置が施され得る。
【0104】
態様3および4の方法の実施形態では、サンプルは、体液サンプルであってもよい。例えば、体液サンプルは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出物からなる群から選択されていてもよい。あるいは、サンプルは、細胞学的サンプルであってもよく、または糞便サンプルであってもよい。
【0105】
態様3および4の方法の更なる実施形態では、サンプルは、大腸組織サンプル、例えば、結腸または直腸から誘導されるサンプルのような組織サンプルであってもよい。例えば、組織サンプルは、S状結腸から誘導され得る。本発明者らは、結腸/直腸のこの部分における標的タンパク質発現が大腸癌の予後の確立に特に関連することを認識した。当該技術分野において、S状結腸はまた、時々、骨盤結腸(pelvic colon)またはS字状屈曲部とも称される。
【0106】
態様3および4の方法の相補的実施形態では、サンプルは、腫瘍組織サンプルであってもよい。
【0107】
態様3および4の方法の実施形態では、サンプルは、前記被験体由来の腺細胞を含み得る。結果的に、組織サンプルに加えて、例えば、糞便サンプルまたは血液サンプルもまた、第1の態様に従う親和性リガンドを使用して、標的タンパク質の発現を評価することができるような細胞を含み得る。
【0108】
本発明者らは、標的タンパク質が、関連する細胞の核において発現されることを見出した。結果的に、サンプル中の標的タンパク質発現の評価は、サンプル、例えば、大腸癌の外科的切除によって早期に得られた腫瘍組織生検材料または標本中に存在する腫瘍細胞における核発現に限定され得る。例として、上記の方法の工程b)の評価は、上皮細胞、例えば、前記サンプルの腺細胞を起源とする腫瘍細胞のような腫瘍細胞の核における標的タンパク質の量を評価する工程に限定され得る。評価を核に限定する場合、親和性リガンドと核との相互作用のような特徴のみが、評価において考慮される。そのような評価は、例えば、免疫組織化学染色であってもよい。さらに、本発明者らは、標的タンパク質の核での発現が、予後に関連し得ることを見出した。
【0109】
対照値より高い標的タンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「標的タンパク質が高い」と称する。さらに、対照値以下の標的タンパク質のサンプル値、またはそのようなサンプル値が得られる被験体を、時々、本明細書において「標的タンパク質が低い」と称する。
【0110】
本開示物に関して、用語「サンプル値」および「対照値」は、広範に解釈すべきである。これらの値を得るための標的タンパク質の定量化は、第1の態様に従う抗体が用いられる限り、自動化手段を介するか、サンプルの目視もしくは顕微鏡検査に基づく評価システムを介するか、またはそれらの組み合わせを介して行うことができる。しかしまた、組織病理学の当業者のような熟練者は、例えば、問題の親和性リガンド使用して、標的タンパク質発現に対して染色されている組織スライドの検査だけで、サンプル値および対照値を決定することが可能である。それ故、対照値より高いサンプル値の決定は、目視または顕微鏡検査時に、サンプル組織スライドがより濃染されている、および/または対照組織スライドの場合、より大きな画分の染色細胞を示している、という決定に対応し得る。サンプル値はまた、文言で記載された対照値のような文字の参照によって示された対照値と比較してもよい。結果的に、サンプル値および/または対照値は、検査および比較時に当業者が決定する心証に基づく値として考えられ得る。
【0111】
例えば、当業者は、サンプルを標的タンパク質が高いまたは低いとして分類してもよく、ここで、サンプルが、先に検査した対照サンプルより多くの標的タンパク質を含有する場合、サンプルは高いに分類され、そしてサンプルが対照サンプル以下である場合、低いに分類される。そのような評価は、サンプル、および必要であれば、第1の態様に従う抗体を含む染色溶液で対照サンプルを染色することによって、補助され得る。
【0112】
大腸癌を有する被験体の予後の提供のため、または被験体由来のサンプル値との比較として使用するためのそのような被験体に関する処置の決定を行うために関連することが見出されている対照値は、様々な方法で提供することができる。当業者は、本開示物の教示内容の知識を用いて、過度の負担を伴うことなく、態様3および4の方法を実施するための関連する対照値を提供することができる。
【0113】
態様3および4の方法を実施する者は、例えば、対照値を所望の予後情報に応用してもよい。例えば、対照値を応用して、重要な予後情報、例えば、高い生存率曲線と低い生存率曲線との間の最も大きな隔たりを得ることができる(図を参照のこと)。
【0114】
あるいは、対照値を適用して、予め決定された予後を有する被験体のグループ、例えば、予め決定された百分率より低い5年全生存率の確率を有する被験体のグループを同定してもよい。
【0115】
態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、方法の被験体の健康な乳腺または間質組織のような健康な組織における標的タンパク質発現の量に対応し得る。もう1つの例として、対照値は、比較可能な他の被験体由来の正常組織の標準サンプルにおいて測定した標的タンパク質発現の量によって提供され得る。もう1つの例として、対照値は、腫瘍組織、例えば、大腸癌の対照サンプルのような腫瘍細胞を含む対照サンプルにおいて測定した標的タンパク質発現の量によって提供され得る。対照サンプルの標的タンパク質発現の量は、好ましくは、予め確立され得る。結果的に、対照値は、予め決定された量の標的タンパク質を発現する細胞を含む対照サンプルにおいて測定した標的タンパク質の量によって提供され得る。
【0116】
さらに、対照値は、例えば、予め決定されたか、または制御された量の標的タンパク質を発現する癌細胞系統のような細胞系統を含む対照サンプルにおいて測定した標的タンパク質発現の量によって提供され得る。当業者は、例えば、Rhodes et al. (2006) The biomedical scientist, p 515-520の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。
【0117】
結果的に、態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、対照サンプルにおける標的タンパク質発現の量に対応する予め決定された値であってもよい。
【0118】
しかし、さらに以下において考察されるように、対照サンプル中の標的タンパク質の量は、必ずしも対照値に直接対応する必要はない。対照サンプルはまた、方法の実施者が様々な対照値を評価するのを援助する標的タンパク質の量を提供し得る。例えば、対照サンプルは、「陽性」(高い)および/または「陰性」(低い)を提供することによって、対照値の心的イメージを作成するのに役立ち得る。
【0119】
本発明者らは、本明細書において、大腸癌を患い、そして標的タンパク質発現を本質的に有さない被験体が、一般的に比較的不良な予後を有することを示している(例えば、図1を参照のこと)。それ故、態様3および4の方法の実施形態では、工程b)のサンプル値は、検出可能な標的タンパク質がサンプルに認められたことに対応する1、または検出可能な標的タンパク質がサンプルに認められないことに対応する0のいずれかであり得る。結果的に、そのような実施形態では、サンプルの評価はデジタルである:標的タンパク質は、存在するかまたは存在しないかのいずれかとみなされる。本開示物に関して、「検出可能な標的タンパク質が認められない」は、通常の操作状況中に、態様3および4のいずれか1つに従って方法を操作する人または装置による検出が可能ではないほどに少ない標的タンパク質の量を指す。「通常の操作状況」とは、当業者が本発明を実施するのに適切であることを見出す検査方法および技術を指す。
【0120】
従って、態様3および4の方法の実施形態では、工程c)の対照値は、0であってもよい。そして、態様3および4の方法の更なる実施形態では、当然、工程c)の対照値は、検出可能な標的タンパク質が認められない対照サンプルに対応し得ることになる。これは、対照値が、標的タンパク質を含まない対照サンプルの分析によって得ることができることを意味する。
【0121】
被験体からより早期に得られたサンプルまたは対照サンプルのようなサンプルにおける標的タンパク質発現の定量化のための1つの別法は、所定のレベルを超える標的タンパク質発現を示すサンプルにおける細胞の画分の決定である。画分は、例えば、次のものであり得る:細胞全体の標的タンパク質発現を考慮する「細胞画分」;細胞の細胞質のみの標的タンパク質発現を考慮する「細胞質画分」;または細胞の核のみの標的タンパク質発現を考慮する「核画分」。核画分は、例えば、関連する細胞集団の<2%、2〜25%、>25〜75%または>75%の免疫反応性細胞として分類することができる。代替的に、または相補物として、核画分は、≦10%もしくは>10〜100%、または≦1%もしくは>1〜100%として分類することができる。「核画分」は、核において陽性染色を示すサンプル中の関連する細胞の百分率に対応し、ここで、核における中等度のまたは明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核における認められないまたは軽度の免疫反応性は陰性とみなされる。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核画分を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞画分」または「細胞質画分」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0122】
被験体からより早期に得られたサンプルまたは対照サンプルのようなサンプルにおける標的タンパク質発現の定量化のためのもう1つの別法は、サンプルの全体的染色強度を決定することである。強度は、例えば、次のものであり得る:細胞全体の標的タンパク質発現を考慮する「細胞強度」;細胞の細胞質のみの標的タンパク質発現を考慮する「細胞質強度」;または細胞の核のみの標的タンパク質発現を考慮する「核強度」。核強度は、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、主観的に評価される。核強度決定の結果は、次のように分類することができる:不在=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が認められない、弱=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が軽度である、中=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が中等度である、または強=サンプルの関連する細胞の核において全体的な免疫反応性が明瞭かつ強力である。病理学の当業者は、方法を実施する場合に存在する条件下でどの細胞が関連するかを理解しており、そして当業者の一般的知識および本開示物の教示内容に基づく核強度を決定することができる。関連する細胞は、例えば、腫瘍細胞であってもよい。さらに、当業者は、「細胞強度」または「細胞質強度」を用いて対応する測定を実施する仕方について理解している。
【0123】
本発明者らは、標的タンパク質の核発現が、予後を確立するのに特に関連することを見出した。それ故、態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。従って、サンプル値は、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0124】
好ましくは、サンプル値および対照値は、両方とも、同じタイプの値である。従って、態様3および4の方法の実施形態では、サンプル値および対照値は、それぞれ、核画分、核強度またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0125】
態様3および4の方法の実施形態では、工程d)における結論のための基準は、標的タンパク質陽性細胞の核画分に対するサンプル値、即ち、90%である対照値以下である、例えば、80%以下、例えば、70%以下、例えば、60%以下、例えば、50%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%に等しい「核画分」であってもよい。
【0126】
上記の態様の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、90%以下、例えば、80%以下、例えば、70%以下、例えば、60%以下、例えば、50%以下、例えば、40%以下、例えば、35%以下、例えば、30%以下、例えば、25%以下、例えば、20%以下、例えば、15%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0%の核画分である。
【0127】
さらに、態様3および4の方法の実施形態では、工程d)における結論の基準は、サンプルの染色強度に対するサンプル値、即ち、中等度以下の核強度、例えば、弱以下の核強度、例えば、不在の核強度であってもよい。態様3および4の方法の代替的または相補的な実施形態では、工程c)の対照値は、中等度の核強度以下の標的タンパク質発現であってもよく、例えば、弱い核強度以下の標的タンパク質発現であってもよく、例えば、標的タンパク質発現の核強度が不在であってもよい。
【0128】
さらに、態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、2つの値から構成され得、ここで、工程d)における結論の基準は、これらの2つの値より高いサンプル値である。
【0129】
あるいは、態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、画分値と強度値、例えば、核画分値と核強度値との組み合わせであってもよい。
【0130】
また、態様3および4の方法の実施形態では、対照値は、核画分値および核強度値の関数であってもよい。例えば、そのような関数は、染色スコアであり得る。「染色スコア」は、以下の実施例、セクション3および表1に記載のように計算される。例えば、対照値は、0、1または2の染色スコアであってもよい。
【0131】
当業者は、強度値または画分値である他の対照値もまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。同様に、当業者は、画分と強度との他の組み合わせもまた、本発明の範囲内に当てはまることを理解している。結果的に、対照値は、2つ、そしておそらくは、なおそれを超える基準に関係し得る。
【0132】
一般に、対照値としての核強度値および/または核画分値の選択は、染色手順、例えば、用いられる第1の発明に従う適用された抗体の性質および染色試薬に依存し得る。
【0133】
本開示物を指針として、当業者、例えば、病理学者は、細胞、細胞質もしくは核画分のような画分、または細胞、細胞質もしくは核強度のような強度をもたらす評価を実施する仕方について理解している。例えば、当業者は、所定の画分または強度の出現を確立するための予め決定された量の標的タンパク質を含む対照サンプルを使用することができる。
【0134】
しかし、対照サンプルは、実際の対照値を供給するためだけではなく、対照値に対応する量より高い標的タンパク質の量を伴うサンプルの例を供給するために使用することができる。例として、免疫組織化学染色のような組織化学染色では、当業者は、高量の標的タンパク質を有する染色されたサンプル、例えば、陽性対照の出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。続いて、当業者は、対照値に対応する量の標的タンパク質を伴うサンプルの出現のような、より低量の標的タンパク質を有するサンプルの出現を評価することができる。言い換えれば、当業者は、対照サンプルを使用して、対照サンプルより低い標的タンパク質の量に対応する対照値の心的イメージを作成することができる。代替的に、または相補物として、そのような評価では、当業者は、例えば、「陰性対照」としてのそのようなサンプルの出現を確立するための低量の標的タンパク質を有するか、または標的タンパク質を本質的に含まないもう1つの対照サンプルを使用することができる。
【0135】
例えば、10%の核画分の対照値を使用する場合、検出可能な標的タンパク質が認められず、それ故、0の核画分に対応する、対照値より低い第1の対照サンプルを、75%以上の核画分に対応する標的タンパク質の量を有する、対照値より高い第2の対照サンプルと共に使用してもよい。
【0136】
結果的に、評価では、当業者は、高量の標的タンパク質を伴うサンプルの出現を確立するための対照サンプルを使用することができる。そのような対照サンプルは、高量の標的タンパク質を発現する組織を含むサンプル、例えば、予め確立された高発現の標的タンパク質を有する大腸腫瘍組織を含むサンプルであってもよい。
【0137】
従って、対照サンプルは、強い核強度(NI)の例を提供し得る。次いで、強いNIを伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、サンプルを次のNIカテゴリー、例えば、上記の不在、弱、中および強に分割することができる。この分割は、検出可能な標的タンパク質(陰性対照)を含まない対照サンプル、即ち、核強度が不在である対照サンプルによって、さらに援助され得る。また、対照サンプルは、75%以上の核画分(NF)を伴うサンプルの例を提供し得る。次いで、75%を超える陽性細胞を伴うサンプルの出現の知識を用いて、当業者は、例えば、より低い百分率の陽性細胞を有する他のサンプルの核画分を評価することができる。この分割は、標的タンパク質を本質的に含まない対照サンプル(陰性対照)、即ち、低いNF(例えば、<2%)、または0のNFを提供する対照サンプルによって、さらに援助され得る。
【0138】
上記のように、制御された量の標的タンパク質を発現する細胞系統は、対照、特に、陽性対照として使用することができる。
【0139】
上記で考察したように、第3および第4の態様の方法を、選択された対照値、例えば、上記で提示した対照値のうちの1つに応用してもよく、そしてそのような場合、対照予後は、選択された対照値の結果である。非制限的例として、<2%の核画分(nf<2%)を対照値として使用する場合、関連する対照予後は、「低い」曲線(破線)を調べることによって、図1A(全生存率を分析したすべてのステージの腫瘍)から誘導することができる。診断からの所与の時間において、「低い」曲線に対応する累積生存率を、図から読み取ることができ、例えば、5年(60箇月)後の25%は、25%の5年全生存率の確率である対照予後を生じる。結果的に、NF<2%の対照値に等しいサンプル値を有する被験体は、25%の5年全生存率の確率を有する。
【0140】
しかし、上記の対照予後は、例示的な例としてのみ提供するものであって、そして当業者は、上記の態様に従う方法の有用性が、任意の特定の対照予後または予後の測定値に限定されるわけではないことを理解している。
【0141】
本開示物の第5の態様として、以下を含む、態様3および4の実施形態に従う方法を行うためのキットが提供される:
a)第1の態様に従う親和性リガンド;および
b)前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0142】
第6の態様に従うキットの様々な成分は、本開示物の方法態様に関連して上記のように選択および指定することができる。結果的に、試薬は、例えば、上記の2次親和性リガンドを含み得る。さらに、キットは、対照値の供給のための1つ以上の対照サンプルを含み得る。語句「対照値の供給のための対照サンプル」は、本開示物に関して、広範に解釈すべきである。対照サンプルは、実際に対照値に対応する標的タンパク質の量を含み得るが、それはまた、対照値より高い値に対応する標的タンパク質の量を含み得る。後者の場合、「高い」値は、例えば、「高い」値より低い対照値の出現を評価するための上位対照(陽性対照)として方法を実施する者によって、使用され得る。免疫組織化学の当業者は、そのような評価をする仕方について理解している。さらに、代替的または相補的な例として、当業者は、例えば、陰性対照として、そのような評価における「低い」値の供給のための低い量の標的タンパク質を含むもう1つの対照サンプルを使用することができる。これについては、さらに、方法態様に関連して上記で考察している。キット態様の実施形態では、対照サンプルは、組織サンプル、例えば、肉眼または顕微鏡的評価に応用される組織サンプルであってもよい。例として、組織対照サンプルは、パラフィンもしくは緩衝ホルマリン中に固定化され得る、および/または顕微鏡ガラススライド上にマウントされるμm薄切片に組織処理され得る。組織対照サンプルは、さらに、第1の態様に従う親和性リガンドのような親和性リガンドによる染色に応用され得る。
【0143】
それ故、本開示物に従うキットは、第1の態様に従う親和性リガンド、ならびにそれが特異的および/または選択的に標的タンパク質に結合した後、親和性リガンドを定量するのに役立つ他の手段を含む。例えば、キットは、標的タンパク質および問題の親和性リガンドによって形成される複合体を検出および/または定量するための2次親和性リガンドを含有することができる。キットはまた、キットを容易かつ効率的に使用することを可能にするための親和性リガンド以外の様々な補助物質を含有することができる。補助物質の例として、キットの凍結乾燥タンパク質成分を溶解または再構成するための溶媒、洗浄緩衝液、酵素を標識として使用する場合、酵素活性を測定するための基質、パラフィンまたはホルマリン固定された組織サンプルを使用する場合、抗原へのアクセス可能性を増大するための抗原賦活液(target retrieval solution)、および反応抑止剤(reaction arrester)のような物質、例えば、イムノアッセイ試薬キットにおいて一般に使用されるバックグランド染色を減少するための内因性酵素ブロック溶液および/または染色の対比を増加するための対比染色溶液が挙げられる。
【0144】
本発明の第6の態様として、47以下の酸残基(acid residues)からなり、そして配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0145】
本開示物のこの第6の態様は、所定のエピトープは、例えば、様々な文脈において標的タンパク質の発現を検出するのに特に興味深いこと、およびそれらのエピトープを含むフラグメントが診断もしくは予後手段の産生、選択または精製に利用することができることの本発明者らの洞察に基づくが、それに限定されるものではない。
【0146】
下記の第6の態様の異なる実施形態については、第1の態様に関連して上記で考察している。
【0147】
第6の態様の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなり得る。さらに、そのような実施形態では、ポリペプチドは、配列番号3および/または配列番号4のアミノ酸配列を含む。なおさらに、ポリペプチドが配列番号3の配列を含む実施形態では、ポリペプチドは、配列番号31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。そして、ポリペプチドが配列番号4の配列を含む実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0148】
また、第6の態様の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列からなり得る。そのような実施形態では、ポリペプチドは、配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るかまたはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0149】
第6の態様の実施形態では、ポリペプチドは、45以下のアミノ酸残基、例えば、43以下のアミノ酸残基、例えば、42以下のアミノ酸残基、例えば、41以下のアミノ酸残基、例えば、39以下のアミノ酸残基、例えば、38以下のアミノ酸残基、例えば、37以下のアミノ酸残基、例えば、34以下のアミノ酸残基、例えば、33以下のアミノ酸残基、例えば、31以下のアミノ酸残基からなる。
【0150】
さらに、第6態様の実施形態では、ポリペプチドは、25以下のアミノ酸残基、例えば、20以下のアミノ酸残基、例えば、17以下のアミノ酸残基、例えば、14以下のアミノ酸残基からなり得る。
【0151】
例えば、第6の態様のポリペプチドは、免疫化、例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の精製において使用され得る。
【0152】
結果的に、第6の態様の実施形態では、ポリペプチドは、免疫化、例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の精製における抗原として使用され得る。
【0153】
従って、本開示物の第7の態様として、例えば、免疫化における抗原として第6の態様に従うポリペプチドの使用が提供される。例えば、免疫化は、非ヒト動物であってもよい。同様に、モノクローナルまたはポリクローナル抗体のような抗体の製造における第6の態様に従うポリペプチドの使用が提供される。
【0154】
さらに、親和性リガンドの選択または精製における第6の態様に従うポリペプチドの使用が提供される。そのような親和性リガンドは、例えば、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後またはもう1つのタイプの予後手段を確立するためのものであり得る。例えば、そのような使用は、ポリペプチドが固定化されている固相支持体上でのアフィニティー精製を含み得る。固相支持体は、例えば、カラムにおいて配置されていてもよい。さらに、使用は、ポリペプチドが固定化されている固相支持体を使用する、第3の態様に従うポリペプチドに対して特異性を有する親和性リガンドの選択を含み得る。そのような固相支持体は、96ウェルプレート、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズであってもよい。さらに、使用は、例えば、デキストランマトリックスを使用する可溶性マトリックス上の親和性リガンドの分析、またはBiacoreTM装置のような表面プラズモン共鳴装置における使用を含み得、ここで、分析は、例えば、固定化されたポリペプチドおよび多くの潜在的な親和性リガンドに対する親和性をモニターすることを含み得る。
【0155】
本開示物の第8の態様として、26以下のアミノ酸からなり、そして配列番号87、配列番号105および/または配列番号106のアミノ酸配列を含むエピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンドが提供される。
【0156】
本開示物のこの第8の態様は、本発明者らが、SATB2抗原(配列番号111)に対して作製されたポリクローナル抗体と相互作用する所定のエピトープ(即ち、配列番号87、配列番号105および/または配列番号106)を同定したことに基づく。そのようなエピトープと相互作用する親和性リガンドは、例えば、大腸癌を有する被験体の予後を確立するための様々な分析、方法、アッセイまたは設定において使用することができる。一般に、そのようなアプリケーションでは、所定のエピトープに特異的である親和性リガンドを有する方が、単に全長タンパク質またはより長いそのフラグメント(例えば、抗原)にのみ特異的であるポリクローナル抗体のような親和性リガンドよりも、より望ましい。さらに、全長SATB2タンパク質およびその抗原フラグメント(配列番号111)は、SATB1タンパク質およびSATB2タンパク質が共有するいくらかの配列部分を含む。場合によって、例えば、それらが両方とも発現される場合、2つのタンパク質を区別することが所望され得る。配列番号87、配列番号105および/または配列番号106は、すべて、SATB2に対して固有であり、従ってこれらのいずれかとの選択的相互作用が可能な親和性リガンドは、そのような要件を満たす。
【0157】
定義された長さを有する多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号88〜91を、配列番号87の同定に使用した。結果的に、第8の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号88〜91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るか、またはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0158】
さらに、定義された長さを有する他の多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号108〜110を、配列番号105の同定に使用した。結果的に、第8の態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、配列番号108〜110からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るか、またはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0159】
上記のフラグメントは、それぞれ、25、26、22、24および14アミノ酸長である。
【0160】
結果的に、第8態様の実施形態では、問題のエピトープ配列は、25以下のアミノ酸残基、例えば、24以下のアミノ酸残基、例えば、22以下のアミノ酸残基、例えば、14以下のアミノ酸残基からなり得る。第8の態様に従うエピトープ配列では、配列番号87、配列番号105または配列番号106にフランキングするアミノ酸は、例えば、タンパク質SATB2においてそれらにフランキングしているアミノ酸であってもよい。
【0161】
第1の態様に従う親和性リガンドの様々な実施形態、例えば、それらのタイプおよび製造が、必要な変更を加えて、第8の態様の親和性リガンドに当てはまる。
【0162】
第2の態様の使用もまた、同様である。それ故、第8の態様に従う親和性リガンドの使用は、本開示物の第9の態様を構成する。
【0163】
さらに、第8の態様に従う親和性リガンドは、第3の態様に対応する方法において使用してもよい。それ故、本開示物の第10の態様として、以下の工程を含む、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後が対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵するかどうかを決定するための方法が提供される:

a)前記被験体からより早期に得られたサンプルを提供する工程;
b)第8の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在するSATB2タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と前記対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値より低いかまたはそれに等しい場合、
d)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵すると結論付ける工程。
【0164】
結果的に、第10の態様におけるSATB2タンパク質は、第3における標的タンパク質に対応する。
【0165】
また、第8の態様に従う親和性リガンドは、第4の態様に対応する方法において使用してもよい。それ故、本開示物の第11の態様として、以下の工程を含む、処置を必要とする被験体の処置の方法が提供され、ここで、前記被験体は大腸癌を有している:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)第8の態様に従う親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在するSATB2タンパク質の量を評価し、そして前記評価された量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と前記対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が記対照値より低いかまたはそれに等しい場合、
d)アジュバント大腸癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程。
【0166】
第3および第4の態様の様々な構成および実施形態は、必要な変更を加えて、それぞれ、第10および第11の態様に当てはまる。
【0167】
本開示物の第12の態様として、以下を含む、態様10および11の実施形態に従う方法を行うためのキットが提供される:
a)第8の態様に従う親和性リガンド;および
b)前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬。
【0168】
第5の態様の様々な実施形態は、必要な変更を加えて、第12の態様に当てはまる。
【0169】
本開示物の第13の態様として、26以下のアミノ酸からなり、そして配列番号87、配列番号105および/または配列番号106のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0170】
上記のように、定義された長さを有する多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号88〜91を、配列番号87の同定に使用した。結果的に、第12の態様の実施形態では、問題のポリペプチドは、配列番号88〜91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るか、またはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0171】
また、上記のように、定義された長さを有する他の多くのポリペプチドフラグメント、即ち、配列番号108〜110を、配列番号105の同定に使用した。結果的に、第13の態様の実施形態では、問題のポリペプチドは、配列番号108〜110からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得るか、またはそのアミノ酸配列からなり得る。
【0172】
最終的に、上記においてもまた考察したように、上記のフラグメントは、それぞれ、25、26、22、24および14アミノ酸長である。
【0173】
それ故、第13態様の実施形態では、問題のポリペプチドは、25以下のアミノ酸残基、例えば、24以下のアミノ酸残基、例えば、22以下のアミノ酸残基、例えば、14以下のアミノ酸残基からなる。第13の態様に従うポリペプチドでは、配列番号87、配列番号105または配列番号106にフランキングするアミノ酸は、例えば、タンパク質SATB2においてそれらにフランキングしているアミノ酸であってもよい。
【0174】
本開示物の第14の態様として、第13の態様に従うポリペプチドの使用が提供される。第7の態様の様々な実施形態は、必要な変更を加えて、第14の態様に当てはまる。
【実施例】
【0175】
1)抗原の作製
a.材料および方法
テンプレートとしてヒトゲノム配列を有するバイオインフォマティクスツールを使用して、EnsEMBL Gene ID ENSG00000119042によってコードされる標的タンパク質の適切なフラグメントを設計した(Lindskog M et al. (2005) Biotechniques 38:723-727, EnsEMBL, www.ensembl.org)。タンパク質SATB2(EnsEMBL登録番号ENSP00000260926)のアミノ酸377〜499(配列番号111)に対応する123アミノ酸からなるフラグメントを設計した。標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド(このポリヌクレオチドは、長いSATB2遺伝子転写物(EnsEMBL登録番号ENST00000260926)のヌクレオチド 1542〜1910を含有した)を、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen)を有するSuperscriptTMOne−Step RT−PCR増幅キットおよびテンプレートとしてのヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA Panel IV,BD Biosciences Clontech)によって単離した。フランキング制限部位NotIおよびAscIを、PCR増幅プライマーを介してフラグメントに導入して、発現ベクターへのインフレームクローニングを可能にした(順方向プライマー:GTGTCCCAAGCTGTCTTTG、逆方向プライマー:CTTGGCCCTTTTCATCTCC)。下流プライマーをビオチン化して、先に記載のように、固相クローニングを可能にし、そして得られたビオチン化PCR産物を、Dynabeads M280Streptavidin(Dynal Biotech, Oslo, Norway)上に固定化した(Larsson M et al. (2000) J. Biotechnol. 80:143-157)。フラグメントを、NotI−AscI消化(New England Biolabs)によって、固相支持体から遊離させ、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製のためのヘキサヒスチジルタグおよび連鎖球菌プロテインG由来の免疫増強アルブミン結合タンパク質(ABP)からなる二重親和性タグ(Sjoelander A et al. (1997) J. Immunol. Methods 201:115-123;Stahl S et al. (1999) Encyclopedia of Bioprocess Technology: Fermentation, Biocatalysis and Bioseparation (Fleckinger MC and Drew SW, eds) John Wiley and Sons Inc., New York, pp 49-63)を伴うフレーム内のpAff8cベクター(Larsson M et al、上掲)にライゲートし、そして大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)に形質転換した。クローンの配列を、製造者の推奨に従って、TempliPhi DNA配列決定増幅キット(GE Healthcare,(Uppsala,Sweden))を使用して増幅したプラスミドDNAのダイターミネーターサイクルシーケンスによって、確認した。
【0176】
発現ベクターを所有するBL21(DE3)細胞を、同じ培養培地の1mlの1晩培養物の添加によって、5g/l酵母抽出物(Merck KGaA)および50mg/lカナマイシン(Sigma−Aldhch,(St−Louis))を補充した100mlの30g/lトリプティックソイブロス(Merck KGaA)に播種した。細胞培養物を、1リットル振盪フラスコ中37℃および150rpmで、600nmでの光学密度が0.5〜1.5に到達するまでインキュベートした。次いで、1mMの最終濃度へのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(Apollo Scientific)の添加によって、タンパク質発現を誘導し、そしてインキュベーションを、1晩、25℃および150rpmで継続した。2400gでの遠心分離によって、細胞を回収し、そしてペレットを、5ml溶解緩衝液(7M塩酸グアニジン、47mMのNaHPO、2.65mMのNaHPO、10mMのTris−HCl、100mMのNaCl、20mMのβ−メルカプトエタノール;pH=8.0)に再懸濁し、そして2時間、37℃および150rpmでインキュベートした。35300gでの遠心分離後、変性および可溶化した遺伝子産物を含有する上清を回収した。
【0177】
His6−タグ化融合タンパク質を、ASPEC XL4TM(Gilson)上の自動化タンパク質精製手順(Steen J et al. (2006) Protein Expr. Purif. 46:173-178)を使用する1mlのTalon(登録商標)金属(Co2+)アフィニティー樹脂(BD Biosciences Clontech)を伴うカラム上での固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)によって、精製した。澄明化した細胞溶解物を充填する前に、樹脂を、20mlの変性洗浄緩衝液(6M塩酸グアニジン、46.6mMのNaHPO、3.4mMのNaHPO、300mMのNaCl、pH8.0〜8.2)で平衡化した。次いで、2.5ml溶出緩衝液(6M尿素、50mMのNaHPO、100mMのNaCl、30mM酢酸、70mM酢酸Na、pH5.0)への溶出前に、樹脂を、最低でも31.5mlの洗浄緩衝液で洗浄した。溶出した材料を、3つのプール500、700および1300μlに分画した。ここで、抗原画分と称する700μl画分、ならびにプールした500および1300μl画分を、更なる使用のために貯蔵した。
【0178】
抗原画分を、リン酸緩衝食塩水(PBS;1.9mMのNaHPO、8.1mMのNaHPO、154mMのNaCl)で1M尿素の最終濃度に希釈し、続いて、7500Daでの分子量カットオフを伴うVivapore10/20ml濃縮装置(Vivascience AG)を使用して、タンパク質濃度を増加するための濃縮工程を行った。製造者の推奨に従って、ウシ血清アルブミン標準を伴うビシンコニン酸(BCA)マイクロアッセイプロトコル(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定した。タンパク質の品質を、Protein50もしくは200アッセイ(Agilent Technologies)を使用するBioanalyzer装置上で分析した。
【0179】
b.結果
SATB2遺伝子の長い転写物のヌクレオチド1542〜1910に対応し、そしてSATB2タンパク質のアミノ酸377〜499からなるペプチド(配列番号111)をコードする遺伝子フラグメントを、タンパク質フラグメントに特異的なプライマーを使用するヒトRNAプールからのRT−PCRによって、首尾よく単離した。しかし、EnsEMBL由来のENSG00000119042の配列と比較して、配列中に1つの単一のサイレントヌクレオチド変異が存在する。標的タンパク質の123アミノ酸フラグメント(配列番号111)は、成熟タンパク質において切断除去されるため、膜貫通領域を含まず、大腸菌(E.coli)における効率的な発現を確実にし、そしていずれのシグナルペプチドも含まないように設計した。加えて、タンパク質フラグメントを、コンフォメーショナルエピトープの形成を可能にし、そしてなお細菌系における効率的なクローニングおよび発現を可能にするのに適切なサイズであるように設計した。
【0180】
正確なアミノ酸配列をコードするクローンを同定し、そして大腸菌(E.coli)での発現時、正確なサイズの単一のタンパク質を産生させ、続いて、固定化金属イオンクロマトグラフィーを使用して、精製した。抗原画分を1M尿素の最終濃度に希釈した後、タンパク質フラグメントの濃度を、7,4mg/mlに決定し、そして純度分析に従って、98%純度を得た。
【0181】
2)モノクローナル抗体の作製
a)材料および方法
実施例、セクション1において得られる精製されたフラグメント(配列番号111)を、モノクローナル抗体の産生のための抗原として使用した。抗原をAbSea Biotechnology Ldt(Beijing,China)に送付したが、簡単に説明すると、抗原を、3週間間隔で、BALB/cマウス(4〜6週齢、雌性)に皮下注入した。抗原を、最初の注入のために、完全フロイントアジュバントと混合し、そして以降の注入のために、不完全フロイントアジュバントと混合した。融合の3日前に、マウスに対し、静脈内への抗原の最終チャレンジを施した。マウス脾細胞とSp2/0骨髄腫細胞系統との融合によって、ハイブリドーマを作製した。ELISAを使用していくらかの細胞系統をスクリーニングすることによって、抗原(配列番号111)に特異的な抗体を分泌する細胞を同定し、そして将来の特徴付けのために、Atlas Antibodies ABに送達した。ELISA、ウエスタンブロット(WB)および免疫組織化学(IHC)において陽性の結果を示した細胞系統を、AbSea Biotechnology Ldtにより実施されるサブクローニングのために選択した。
【0182】
加えて、モノクローナル抗体の免疫組織化学染色パターンを、インハウスのモノクローナル抗SATB2抗体(HPA001042、Atlas Antibodies AB,(Sweden);抗原、配列番号111を使用して作製した)のパターンと比較した。この抗体を、時々、本明細書において、「HPAポリクローナル抗体」または「HPAmsAb」と称する。
【0183】
b)結果
細胞系統を、(AbSeaにおいて)ELISAによってスクリーニングして、抗原(配列番号111)を認識するが、親和性タグHis−ABPを認識しないモノクローナル抗体(mAb)を産生する系統を同定した。13の細胞系統は、ELISAにおいて抗原配列番号111に対する特異的結合を示し、そして将来の試験のために選択された。選択した13のクローンのそれぞれについて、150〜300μlの上清を回収し、アジドを添加し、そして上清を、湿性氷上、Atlas Antibodies ABに送達した。上清を、AbSeaの指示に従い、到着時に4℃で貯蔵した。さらに、細胞系統の試験により、4つの細胞系統(クローン)(3B10、8F11、2B11および5E2)が同定され、ウエスタンブロットおよびIHC分析の両方において陽性の結果を生じた。これらの4つのクローンを、AbSea Biotechnology Ldt.において実施されるサブクローニングおよび拡大のために選択した。
【0184】
ポリクローナル抗体HPA001042およびモノクローナル抗体5E2および8F11を使用する大腸癌腫の免疫組織化学染色により、試験した抗体に対し腫瘍細胞の核染色が示された。モノクローナル抗体5E2および8F11は、ポリクローナル抗体HPA001042と比較して、より明瞭かつ強力なパターンを生じた(図6および7)。結果的に、5E2および8F11は、少なくともいくつかの態様では、ポリクローナル抗体HPA001042よりも免疫組織化学に適切である。
【0185】
3)細菌ディスプレイを使用するエピトープマッピング
a)ライブラリーのブドウ球菌ディスプレイベクターへのサブクローニング
大腸菌(E.coli)株RR1ΔM15(Ruether, U. pUR 250 allows rapid chemical sequencing of both DNA strands of its inserts. Nucleic. Acids Res. 10, 5765- 5772 (1982))を、プラスミド構築のための宿主株として使用した。新たなブドウ球菌ベクター、pSCEMIを、新たな制限部位(Pmel)を含有する遺伝子フラグメントを、BamHIおよびSalI(New England Biolabs, Beverly, MA)で消化した先に記載のブドウ球菌ベクターpSCXm(Wernerus, H. & Stahl, S. Vector engineering to improve a staphylococcal surface display system. FEMS Microbiol Lett 212, 47-54 (2002))にライゲートすることによって作製した。SATB2フラグメント遺伝子の増幅のためのテンプレートは、Anja Persson(Royal institute of Technology,Stockholm;Sweden)より恵与された。遺伝子フラグメントを、PCR(9.6ml、プールされた)によって増幅し、そして無作為のフラグメントを作製するために、氷上での50mlのFalconチューブ中60分間、マイクロチップを使用して、音波処理(21%振幅、一定音波処理)した。その後、サンプルを、Centricon Plus 20カラム(CO 10kDa;Millipore,(Billerica,MA))を使用する限外ろ過によって濃縮した。濃縮したフラグメントを平滑末端化し、そして供給者の推奨に従うT4 DNAポリメラーゼおよびT4ポリヌクレオチド キナーゼ(New England Biolabs)の添加によって、リン酸化した。その後、平滑末端化された遺伝子フラグメントを、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen,(Carlsbad,CA))を使用して、Pmel(New England Biolabs)で消化したブドウ球菌ディスプレイベクター、pSCEMIにライゲートした。ライブラリーを、先に記載(Loefblom, J., Kronqvist, N., Uhlen, M., Stahl, S. & Wernerus, H. Optimization of electroporation-mediated transformation: Staphylococcus carnosus as model organism. J Appl Microbiol 102, 736-747 (2007))のように、エレクトロコンピテントS.カルノーサス(S.carnosus)TM300(Goetz, F. Staphylococcus carnosus: a new host organism for gene cloning and protein production. Soc. Appl. Bacteriol. Symp. Ser. 19, 49S-53S (1990))に形質転換し、そして15%グリセロール中に−80℃で貯蔵した。
【0186】
b)細胞ラベリングおよび蛍光標識細胞分取(FACS)
Sc:SATB2−libのアリコート(ライブラリーサイズの少なくとも10倍)を、20μg ml−1クロラムフェニコールを伴う100mlのTSB+Y(トリプティックソイブロス+酵母抽出物)に播種し、そして1晩、37℃および150rpmで増殖させた。16時間後、10個の細胞を、0.1%のPluronic(登録商標)F108 NF Surfactant(PBSP;BASF Corporation,(Mount Olive,NJ))を伴う1mlリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で洗浄した。細胞を、遠心分離(3500×g、4℃、6分間)によりペレット化し、そして抗体(即ち、エピトープマッピングに使用する抗体;典型的に、約100nMの濃度)を含有する100μlのPBSPに懸濁し、そして1時間、穏やかに撹拌しながら室温でインキュベートして、平衡結合に到達させた。その後、細胞を、1mlの氷冷PBSPで洗浄し、続いて、4μg ml−1Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen)または4μg ml−1Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗マウスIgG(Invitrogen)および225nMのAlexa Fluor(登録商標)647HSAコンジュゲート(Invitrogen)を含有する1mlのPBSPにおいて、1時間、氷上、暗所でインキュベーションを行った。1mlの氷冷PBSP中での最後の洗浄工程後、分取前に、細胞を、300μlの氷冷PBSPに再懸濁した。FACSVantage SE(BD Biosciences,(San Jose,CA))フローサイトメーターを使用して、細胞を分取した。細胞を、0.5mlのB2培地(Loefblom, J., Kronqvist, N., Uhlen, M., Stahl, S. & Wernerus, H. Optimization of electroporation-mediated transformation: Staphylococcus carnosus as model organism. J Appl Microbiol 102, 736-747 (2007))に直接分取し、そして10μg ml−1クロラムフェニコールを含有する血液寒天基礎培地(Merck)プレート上に広げ、そして37℃で24時間、インキュベートした。最後のラウンドにおいて、細胞を、半固体培地を含有する96ウェルプレート中の個々のウェルに分取して、コロニーを形成させた。
【0187】
c)DNA配列決定およびBLASTアラインメント
各コロニーの部分を、PCRのために、96ウェルプレート中の個別の2つのウェルに移した。ブドウ球菌ディスプレイベクターの挿入領域を、別個の2つのプライマー対を使用するPCRによって増幅させ、それぞれ、順方向末端および逆方向末端にビオチン分子を含有する2つのPCR産物を生じさせた。単一鎖DNAを、ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズ(Dynabeads M−270;Dynal Biotech,(Oslo,Norway))上の固定化されたビオチン化PCR産物のNaOH鎖分離によって、作製した。パイロシークエンシングプライマーの鎖分離およびアニーリングを、製造者の指示に従い、Magnatrix1200ピペッティングロボット(Magnetic Biosolutions AB,(Stockholm,Sweden))を使用して、実施した。各挿入物の両末端における10サイクルのパイロシークエンシングを、製造者の指示に従い、PSQTM96HS装置(Biotage AB,(Uppsala,Sweden))を使用して、実施した。リーディングフレーム、ならびに抗原とのBLASTアラインメントの決定を含むパイロシークエンシング出力ファイルの自動分析のための拡張ソフトウェアが、Perlにおいて作成された。
【0188】
d)結果
SATB2ペプチドライブラリーを、上記のように構築し、そして形質転換により、約60,000個の個々のクローンを生じさせ、ブドウ球菌表面上にディスプレイされた推定2,400(4%)の明瞭な機能的抗原由来のフラグメントを得た。フローサイトメトリー分取を、抗原配列番号111(ポリクローナル抗体HPA001042)および4つのモノクローナル抗体(3B10、8F11、2B11および5E2)(すべて、同じ抗原(配列番号111)に対して作製した)を使用する免疫化によって先に産生させたポリクローナル抗体のプールを使用して行った。抗体結合性細胞の首尾良い富化後、陽性細胞を、第2のラウンドの分取において単離した。ポリクローナル抗体では、個別の2つのゲートを使用して、僅かに異なる抗体結合特性を伴う細胞集団を回収し、モノクローナル抗体のそれぞれに対して1つのゲートを使用した。各抗体に基づく分取から回収されたクローンの配列決定から、ポリクローナル抗体に対する個別の5つのエピトープが示され、すべてのモノクローナル抗体の結合パターンから、単一の結合エピトープが実証された。モノクローナル抗体の同定されたコンセンサスエピトープ(配列番号1および2)は、ポリクローナル抗体HPA001042(配列は含まれない)に対して同定されたエピトープのうちの2つと重複することを見出した。2つのこれらのエピトープを、エピトープ1(配列番号1)および2(配列番号2)として示す。
【0189】
モノクローナル抗体8F11および5E2を使用して得られる配列決定情報に基づいて、本発明者らは、エピトープ1(配列番号1、QNFLNLPE)に対するコンセンサス配列を見出した。8F11のマッピングにより、配列番号31〜51によって支持される16アミノ酸長のエピトープ(配列番号3、LRAMQNFLNLPEVERD)が示された。言い換えれば、フラグメント配列番号31〜51は、8F11と相互作用することを見出し、そして配列番号3のコンセンサス配列を同定した。モノクローナル抗体5E2に関して、マッピングにより、配列番号6〜30によって支持される13アミノ酸長のエピトープ(配列番号4、QNFLNLPEVERDI)が示された。言い換えれば、フラグメント配列番号6〜30は、5E2と相互作用することを見出し、そして配列番号4のコンセンサス配列を同定した。
【0190】
さらに、本発明者らは、モノクローナル抗体3B10および2B11を使用して得られる配列決定情報に基づいて、エピトープ2(配列番号2、GLLSEILRK)に対するコンセンサス配列を見出した。3B10のマッピングにより、配列番号78〜86によって支持される10アミノ酸長のエピトープ(配列番号5、QGLLSEILRKE)が示された。モノクローナル抗体2B11に関して、マッピングにより、配列番号52〜77によって支持される9アミノ酸長のエピトープ(epitop)(配列番号2、GLLSEILRK)が示された。
【0191】
また、本発明者らは、ポリクローナル抗体HPA001042を使用して、更なる3つのエピトープ、即ち、エピトープ3(配列番号87)、エピトープ4(配列番号105)およびエピトープ5(配列番号106)を同定した。12アミノ酸のエピトープ3(KTSTPTTDLPIK)が、本発明者らにより、マッピングを使用して同定されたが、エピトープは、配列番号88〜104からの配列決定情報に基づくコンセンサス配列である。同様に、12アミノ酸のエピトープ5が、本発明者らにより、マッピングを使用して同定されたが、エピトープは、配列番号107〜110からの配列決定情報に基づくコンセンサス配列である。さらに、24アミノ酸のエピトープ4(VSSASSSPSSSRTPQAKTSTPTTD)もまた、本発明者らにより、マッピングを使用して同定された。
【0192】
4)結腸癌腫TMA(S字状コホート)
a)材料および方法
1993年〜2003年の間にS状結腸癌に対して外科的処置を受けた305例の患者(148例の女性および157例の男性)由来のアーカイブホルマリン固定パラフィン包埋組織を、Department of Pathology,Malmoe University Hospital,(Sweden)から回収した。患者の年齢の中央値は、74(39〜97)歳であった。49の腫瘍がDukes分類A、127がDukes分類B、89がDukes分類Cであり、そして46がDukes分類Dであった。死亡の日付に関する情報は、すべての患者について地域死因登録から入手した。倫理的許可は、地方倫理委員会(Local Ethics Committees)から得た。
【0193】
すべての305例を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色したスライド上で、組織病理学的に再評価した。次いで、TMA:sを、S状結腸癌腫の代表的領域から1症例あたり2×1.0mmのコアを採取することによって、構築した。
【0194】
自動化された免疫組織化学を、既に記載のとおりに実施した(Kampf C et al. (2004) Clin. Proteomics 1:285-300)。簡単に述べると、ガラススライドを、60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、等級化されたアルコールに水和した。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,Dako,(Copenhagen,Denmark))中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内、125℃で4分間、煮沸した。スライドを、Autostainer(登録商標)(Dako)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H(Dako)でブロックした。スライドを、実施例、セクション2で得た第一抗体5E2および8F11と共に30分間、室温でインキュベートし、続いて、30分間、室温で、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共にインキュベーションした。すべての工程の間、スライドを、洗浄緩衝液(Dako)中で濯いだ。最後に、ジアミノベンジジン(Dako)を色素原として使用し、そしてHarrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)を対比染色に使用した。スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントした。
【0195】
免疫組織化学的に染色した組織のすべてのサンプルを、顕微鏡下において手動で評価し、そして認定された病理学者によってアノテートした。各サンプルのアノテーションを、IHC結果の分類のための簡素化されたスキームを使用して、実施した。各組織における代表性(representativity)および免疫反応性について検査した。腫瘍細胞および間質の両方をアノテートした。基本的なアノテーションパラメータは、i)細胞内局在化(核および/または細胞質/膜)、ii)染色強度(SI)およびiii)染色細胞の画分(FSC)の評価を含んだ。染色強度は、臨床組織病理学的診断で使用される基準に従って、主観的に評価し、そして結果を次のように分類する:不在=免疫反応性なし、弱い=僅かな免疫反応性、中等度=中等度の免疫反応性、または強い=明瞭かつ強い免疫反応性。当業者は、この手順がAllredスコアの計算に類似することを理解するであろう(例えば、Allred et al. (1998) Mod Pathol 11(2), 155を参照のこと)。
【0196】
統計分析のために、核画分(NF)および核強度(Nl)レベルを評価した。NFおよびNIの両方を、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、主観的に評価した。「核画分」は、核において陽性染色を示すサンプル中の腫瘍細胞の百分率に対応したが、ここで、核における中等度のまたは明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核における認められないまたは軽度の免疫反応性は陰性とみなされる。「核強度」は、サンプルの全体的な染色強度に対応した。しかし、細胞の核の発現のみを考慮した。核強度決定の結果は、次のように分類した:不在=サンプルの腫瘍細胞の核において全体的な免疫反応性が認められない、弱=サンプルの腫瘍細胞の核において全体的な免疫反応性が軽度である、中=サンプルの腫瘍細胞の核において全体的な免疫反応性が中等度である、または強=サンプルの腫瘍細胞の核において全体的な免疫反応性が明瞭かつ強力である。個々の層に対する生存率の傾向に基づいて、更なる統計分析のために、二分類の変数を構築した。5E2抗体を使用する分析では、高い核画分(NF>0)を、染色した細胞の2〜100%の画分として定義し、そして低い核画分(NF=0)を、染色した細胞の<2%の画分として定義した。さらに、弱い、中等度および強い核強度(NI>0)を、高タンパク質発現レベルとして定義し、そして不在の核強度(NI=0)を、低いタンパク質発現レベルとして定義した。8F11抗体でより強く染色された、それ故高い核画分(NF=1)を、染色した細胞の>75%の画分として定義し、そして低い核画分(NF<1)を、染色した細胞の0〜75%の画分として定義した。さらに、強い核強度(NI=1)を、高タンパク質発現として定義し、そして不在、弱いおよび中等度の核強度(NI<1)を、低いタンパク質発現として定義した。
【0197】
サンプルの上記の分類を、Kaplan−Meier方法に従って、全生存(OS)分析に使用し、そしてログランク検定を使用して、異なる層における生存率を比較した。すべての統計的検定は、両側検定であり、そして<0.05%のp値を有意とみなした。すべての計算は、統計パッケージSPSS 16.0(SPSS Inc.Illinois,USA)により行った。
【0198】
b)結果
305例のS状結腸癌患者の組織マイクロアレイに基づく分析は、モノクローナル抗体5E2の使用により、強力かつ明瞭な核染色が生じたことが示され、ここで、261例の被験体(86%)は、高発現(NF>2%)を示した。全体のコホートの核画分に基づく生存分析は、5E2が結合するタンパク質の発現が低い腫瘍を有する患者について、有意に(p=0.001)より低い5年全生存(OS)を示した(図1A)。高い発現レベルを有する患者の約60%は、5年後もなお生存しているが、低い発現レベルを有する患者では、その期間後に約25%しか生存していない。さらに、Dukes分類のCおよびDと診断された被験体について研究する場合、予想される生存率の差異は、なおより顕著であると考えられ得る:このサブグループにおいて高い発現レベルを有する患者の約40%は、5年後もなお生存しているが、低い発現レベルを有する患者では、同じ期間後に約10%しか生存していない(p=0.001)。図1Bを参照のこと。使用したカットオフの結果として、「低い」カテゴリーは、それらの発現が本質的に消失した患者を含有した。それ故、タンパク質発現の消失は、有意に不良な予後と関連するようであり、そしてこれは、Dukes分類CおよびDと診断された患者のような、疾患のより後期において特に顕著であると考えられ得る。核強度について研究する場合にも、同様の結果が得られた(図2Aおよび2B)。
【0199】
305例のS状結腸癌患者の組織マイクロアレイに基づく分析は、モノクローナル抗体8F11の使用により、強力かつ明瞭な核染色が生じたことが示され、ここで、275例の被験体(90%)は、高発現(NF>75%)を示した。全体のコホートの核画分に基づく生存分析は、タンパク質の発現が低い腫瘍を有する患者について、有意に(p=0.004)より短い5年全生存(OS)を示した(図3A)。高いタンパク質レベルを有する患者の約60%は、5年後もなお生存しているが、低い発現レベルを有する患者では、同じ期間後に約27%しか生存していない。さらに、Dukes分類のCおよびDと診断された被験体について研究する場合、予想される生存率の差異は、なおより顕著であると考えられ得る:このサブグループにおいて高いタンパク質レベルを有する患者の約40%は、5年後もなお生存しているが、低いタンパク質発現レベルを有する患者では、同じ期間後に約12%しか、生存していない。図3Bを参照のこと。それ故、低いレベルのタンパク質発現は、有意に不良な予後と関連し、そしてその相関は、Dukes分類CおよびDと診断された患者のような、疾患のより後期においてなおより顕著であると考えられ得る。核強度について研究する場合にも、同様の結果が得られた(図4Aおよび4B)。
【0200】
図5では、5E2および8F11の染色における相関を分析する。染色した腫瘍細胞の核画分を、クロス集計によって比較したところ、2つのモノクローナル抗体の間に有意な(p=0.001)相関が認められる。結果的に、これは、2つのモノクローナル抗体が同じエピトープと相互作用することを支持する。
【0201】
結論として、大腸癌、例えば、S状結腸癌腫として診断された患者では、5E2および8F11の使用は、図1〜4に認められ得るように患者の予後を確立するための有意な値、即ち、5年生存率のような生存の確率であってもよい。
【0202】
大腸癌患者に対する予後の確立
5.非制限的例
癌患者は、腫瘍増殖由来の症状もしくは徴候、腫瘍が増殖する領域からの疼痛および窮迫を含む病巣症状、または体重減少および疲労のようなより全身的な症状を呈することがあり得る。大腸腫瘍の増殖由来の徴候はまた、排泄物中の血液および/または機能不全、例えば、下痢/便秘を介して明白になり得る。
【0203】
以下では、配列番号1のエピトープ配列との選択的相互作用が可能なモノクローナル抗体(mAB)が用いられる。そのようなモノクローナル抗体の例は、上記の実施例、セクション2において得られる5E2である。
【0204】
患者における大腸癌診断の確立後、S状結腸から腫瘍組織サンプルが入手される。腫瘍組織サンプルは、癌の診断中早期に、または腫瘍の早期の外科的切除からの標本から実施された生検から入手することができる。さらに、「陰性対照」の供給では、サンプルは、配列番号1を含むタンパク質(標的タンパク質)の検出可能な発現のない組織を含むアーカイブ材料から採取される。そのようなアーカイブ組織は、例えば、mABで染色する場合、発現が認められないことが予め示されている大腸癌組織であってもよい。さらに、「陽性対照」の供給では、サンプルは、予め確立された高い標的タンパク質発現を有する組織を含むアーカイブ材料から採取される。そのようなアーカイブ組織は、例えば、mABで染色する場合、高発現、例えば、NF>75%、またはNI=強い、を呈することが予め示されている大腸癌組織であってもよい。サンプル材料の薄切片(4μm)を得るために、サンプル材料を緩衝ホルマリン中で固定化し、そして組織処理を行った。
【0205】
免疫組織化学は、実施例、セクション4によって記載のように実施される。各サンプルから1つ以上のサンプル切片をガラススライド上にマウントし、これを、45分間、60℃でインキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分間)、そして等級化されたアルコールに水和する。抗原賦活化のために、スライドをTRS(Target Retrieval Solution,pH6.0,Dako)中に浸漬し、そしてDecloakingチャンバ(登録商標)(Biocare Medical)内で、125℃で4分間、煮沸する。スライドを、Autostainer(登録商標)(Dako)内に置き、そして内因性ペルオキシダーゼを、最初に、H2O2(Dako)でブロックする。複数のサンプル切片をマウントする理由は、結果の確度を向上させることができるからである。
【0206】
mABをスライドに添加し、そして30分間、室温でインキュベートし、続いて、標識した第二抗体;例えば、ヤギ抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲートEnvision(登録商標)と共に室温で30分間のインキュベーションを行う。第二抗体を検出するために、ジアミノベンジジン(Dako)を色素原として使用し、Harrisヘマトキシリン(Sigma−Aldrich)対比染色で対比させる。すべての工程と工程の間で、スライドを、洗浄緩衝液(Dako)中で濯ぐ。次いで、スライドを、Pertex(登録商標)(Histolab)でマウントする。
【0207】
染色手順を確認するためのツールとして、次の2つのコントロール細胞系統を使用してもよい;例えば、標的タンパク質を発現する細胞(陽性細胞系統)を有する1つのスライドおよび標的タンパク質発現が認められない細胞(陰性細胞系統)を有する1つのスライド。当業者は、例えば、Rhodes et al. (2006) The biomedical scientist, p 515-520の開示内容を指針として、そのような細胞系統を提供する仕方について理解している。コントロール系統のスライドは、大腸癌スライドと同じ手順で同時に染色され得、即ち、同じ第一および第二抗体と共にインキュベートされる。
【0208】
例えば、S状結腸腫瘍組織スライド、染色対照スライド、および場合により、コントロール細胞系統を有するスライドを、ScanScope T2自動化スライド走査システム(Aperio Technologies)を×20倍率で使用して、光学顕微鏡下で走査してもよい。
【0209】
コントロール細胞系統を使用する場合、染色手順を確認するために、これらについて調べる。細胞系統が許容基準外の染色結果を示す、例えば、人工物の染色が当業者によって認識される場合、その生検サンプルの染色は妥当でないとみなされ、そして染色手順全体が、新たなスライドで反復される。陽性細胞系統が強い染色強度、および陰性細胞系統が、不明瞭か、または認められない染色強度をそれぞれを示す場合、その染色は妥当なものとみなされる。
【0210】
腫瘍組織生検由来の染色されたサンプルスライドは、臨床病理組織学的診断において使用される基準に従って、手動で目視検査により評価され、そして大腸腫瘍スライドの免疫反応性は、実施例、セクション4に記載のように、階層化される。
【0211】
例えば、核画分(NF)を決定してもよい。即ち、核において陽性染色を示すサンプルスライドにおける腫瘍細胞の百分率が評価される。腫瘍細胞の核において中等度または明瞭かつ強力な免疫反応性は陽性とみなされ、そして核において認められないか、または弱い免疫反応性は陰性とみなされる。例えば、NF<2%の対照値を使用してもよく、そしてそのような場合、サンプルは、NF<2%であるか、NF≧2%であるかに分けられる。
【0212】
NFの決定では、評価を実施し、そして階層化する者は、染色された対照スライド、即ち、「陽性対照」および「陰性対照」の目視検査によって援助される。
【0213】
次いで、サンプル値、即ち、腫瘍組織由来サンプルスライドのNFを、対照値と比較する。サンプル値が対照値以下である場合、予後は、対照値に関連する対照予後より不良であるか、もしくはそれに匹敵すると結論付けられる。上記のように、対照値は、NF<2%であってもよい。そのような場合、対照値と関連する対照予後は、図1Aから誘導され得る。図1Aでは、NF<2%(破線)は、25%の5年全生存の確率に関連する。結果的に、問題の患者のサンプル値がNF<2%(対照値と同じ)である場合、患者の予後は、25%の5年全生存の確率(対照予後に匹敵する)である。
【0214】
一般論
刊行物、DNAまたはタンパク質データの入力、および特許を含むが、これらに限定されない本出願において言及した引用したすべての材料は、本明細書において、参考として援用される。
【0215】
本発明を上記のように説明してきたが、本発明は、多くの方法で改変することができることは明らかであろう。そのような改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱するものと認識されるべきではなく、そのようなすべての変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが、当業者には明らかであろう。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
47以下のアミノ酸からなり、そして配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むエピトープ配列との選択的相互作用が可能な親和性リガンド。
【請求項2】
前記エピトープ配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の親和性リガンド。
【請求項3】
前記エピトープ配列は、配列番号3および/または配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の親和性リガンド。
【請求項4】
前記エピトープ配列は、配列番号6〜14および31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2および3のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項5】
前記エピトープ配列は、配列番号6〜14および31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の親和性リガンド。
【請求項6】
前記エピトープ配列は、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の親和性リガンド。
【請求項7】
前記エピトープ配列は、配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または6に記載の親和性リガンド。
【請求項8】
前記エピトープ配列は、配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項7に記載の親和性リガンド。
【請求項9】
前記エピトープ配列は、34以下のアミノ酸残基からなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項10】
前記エピトープ配列は、17以下のアミノ酸残基からなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項11】
抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項12】
前記抗体はポリクローナルである、請求項11に記載の親和性リガンド。
【請求項13】
前記抗体はモノクローナルである、請求項11に記載の親和性リガンド。
【請求項14】
ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞障害性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインおよびジンクフィンガーからなる群から選択される足場から誘導されるタンパク質リガンドである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項15】
オリゴヌクレオチド分子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項16】
大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのインビボ方法に使用するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の親和性リガンド。
【請求項17】
予後作用剤としての請求項1〜16のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。
【請求項18】
大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するための、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後が、対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵するかどうかを決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記被験体からより早期に得られたサンプルを提供する工程;
b)請求項1〜16のいずれか一項に記載の親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質の量を評価し、そして前記評価した量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と前記対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より不良であるかもしくはそれに匹敵すると結論付ける工程、
を含む、方法。
【請求項20】
処置を必要とする被験体の処置の方法であって、ここで、前記被験体は大腸癌を有し、以下の工程:
a)前記被験体由来のサンプルを提供する工程;
b)請求項1〜16のいずれか一項に記載の親和性リガンドを使用して、前記サンプルの少なくとも一部に存在する配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質の量を評価し、そして前記評価した量に対応するサンプル値を決定する工程;
c)工程d)において得られた前記サンプル値と前記対照予後に関連する対照値とを比較する工程;ならびに
前記サンプル値が前記対照値以下である場合、
d)アジュバント大腸癌処置レジメンにより前記被験体を処置する工程
を含む、方法。
【請求項21】
工程c)の前記対照値は対照の予後に関連し、そして工程d)の前記アジュバント大腸癌処置レジメンは、前記対照の予後より不良であるかもしくはそれに匹敵する前記被験体の予後に応用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アジュバント大腸癌処置レジメンは、化学療法、術前アジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記アジュバント大腸癌処置レジメンは術前アジュバント療法である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記術前アジュバント療法は、i)放射線療法のみおよびii)化学療法と組み合わせた放射線療法から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程b)のタンパク質は配列番号1を含む、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程b)は、前記サンプル中のタンパク質に対する前記親和性リガンドの結合を可能にする条件下で前記親和性リガンドを前記サンプルに応用する工程を含み、そして前記評価した量は、前記サンプルの前記少なくとも一部に関連する前記親和性リガンドの量を評価することによって得られる、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程b)は:
b1)前記サンプル中のタンパク質に対する前記親和性リガンドの結合を可能にする前記条件において、前記親和性リガンドを前記サンプルに応用する工程;
b2)前記サンプルから非結合親和性リガンドを取り出す工程;および
b3)前記サンプルの前記少なくとも一部に関連して残留している親和性リガンドの量を評価して、前記評価した量を入手する工程
を含む、請求項19〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項19〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記親和性リガンドは、前記親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを使用して、検出される、請求項19〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記大腸癌はDukes分類でAまたはBである、請求項19〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記大腸癌は大腸腺腫である、請求項19〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記大腸癌は大腸癌腫である、請求項19〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記大腸癌は転移性である、請求項19〜30および32〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記大腸癌はDukes分類でCまたはDである、請求項19〜30および32〜から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記予後は、全生存率のような生存の確率であり、そして前記対照予後は、全生存率のような生存の対照確率であって、ここで、両方の生存率とも同じタイプの生存率である、請求項19および21〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記生存の確率は、5年、10年または15年生存の確率である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記被験体はヒトである、請求項19〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記サンプルは体液サンプルである、請求項19〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記体液は、血液、リンパ、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出物からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記サンプルは細胞学的サンプルである、請求項19〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記サンプルは糞便サンプルである、請求項19〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記サンプルは、前記被験体由来の細胞を含む、請求項19〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記サンプルは、前記被験体由来の腫瘍細胞を含む、請求項19〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記サンプルは組織サンプルである、請求項19〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組織サンプルは大腸組織サンプルである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記大腸組織サンプルは大腸癌組織サンプルである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記組織サンプルはS状結腸から誘導される、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
工程b)の前記評価は、前記サンプルの細胞の核に限定される、請求項19〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記サンプルの前記細胞は、前記サンプルの腫瘍細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対照値は、対照サンプルにおける配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質の量に対応する値である、請求項19〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
工程b)の前記サンプル値は、前記サンプルにおいて配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む検出可能なタンパク質に対応する1、あるいは前記サンプルにおいて配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む検出可能なタンパク質が認められないことに対応する0のいずれかとして決定される、請求項19〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
工程c)の前記対照値は、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む検出可能なタンパク質が認められない対照サンプルに対応する、請求項19〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
工程c)の前記対照値は0である、請求項19〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対照値は、細胞質画分、細胞質強度、細胞質画分および細胞質強度の関数、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項19〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対照値は、核画分、核強度ならびに核画分および核強度の関数からなる群から選択される、請求項19〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対照値は核画分である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記対照値は、25%以下の核画分である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対照値は核強度である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記対照値は弱以下の核強度である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記対照値は不在の核強度である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記サンプル値が前記対照値以上である場合、以下の工程:
e)前記被験体の前記予後は、前記対照予後より良好であると結論付ける工程
をさらに含む、請求項19および25〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
a)請求項1〜16のいずれか一項に記載の親和性リガンド;および
b)前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬
を含む、請求項19〜62のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項64】
前記親和性リガンドは、蛍光染料および金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
前記親和性リガンドの前記量を定量するのに必要な前記試薬は、前記親和性リガンドを認識することが可能な2次親和性リガンドを含む、請求項63〜64のいずれか一項に記載のキット。
【請求項66】
前記2次親和性リガンドは、蛍光染料または金属、発色団染料、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位元素、粒子および量子ドットからなる群から選択される標識を含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
対照値の供給のための少なくとも1つの対照サンプルをさらに含む、請求項63〜66のいずれか一項に記載のキット。
【請求項68】
少なくとも1つの対照サンプルは、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む検出可能なタンパク質が認められない組織サンプルである、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
少なくとも1つの対照サンプルは、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項67〜68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
少なくとも1つの対照サンプルは、25%以下の核画分に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項67〜69のいずれか一項に記載のキット。
【請求項71】
少なくとも1つの対照サンプルは、弱以下の核強度に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項67〜70のいずれか一項に記載のキット。
【請求項72】
少なくとも1つの対照サンプルは、不在の核強度に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項67〜71のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
少なくとも1つの対照サンプルは、前記方法の前記対照値より高い値に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項67〜72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
少なくとも1つの対照サンプルは、強い核強度に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項73に記載のキット。
【請求項75】
少なくとも1つの対照サンプルは、75%以上の核画分に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項73に記載のキット。
【請求項76】
前記方法の前記対照値より高い値(陽性対照値)に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む第1の対照サンプル;ならびに
前記方法の前記対照値より低い値(陰性対照値)に対応する量の、配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むある量のタンパク質を含む第2の対照サンプル
を含む、請求項67〜75のいずれか一項に記載のキット。
【請求項77】
前記対照サンプルは組織サンプルである、請求項67〜76のいずれか一項に記載のキット。
【請求項78】
47以下の酸残基(acid residues)からなり、そして配列番号1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項79】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項78に記載のポリペプチド。
【請求項80】
配列番号3および/または配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項79に記載のポリペプチド。
【請求項81】
配列番号6〜14および31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項79および80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項82】
配列番号6〜14および31〜37からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項81に記載のポリペプチド。
【請求項83】
配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項78に記載のポリペプチド。
【請求項84】
配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項78または83に記載のポリペプチド。
【請求項85】
配列番号52〜59および78〜82からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項78または83に記載のポリペプチド。
【請求項86】
34以下のアミノ酸残基からなる、請求項78〜85のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項87】
17以下のアミノ酸残基からなる、請求項86に記載のポリペプチド。
【請求項88】
免疫化における抗原として使用するための、請求項78〜87のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項89】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造に使用するための、請求項78〜88のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項90】
抗原としての、請求項78〜89のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項91】
免疫化のための、請求項78〜89のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項92】
前記免疫化は、非ヒト哺乳動物の免疫化である、請求項91に記載の使用。
【請求項93】
抗体の製造における請求項78〜89のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項94】
前記抗体はモノクローナルまたはポリクローナルである、請求項93に記載の使用。
【請求項95】
親和性リガンドの選択または精製における請求項78〜89のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項96】
前記親和性リガンドは、大腸癌を有する哺乳動物被験体の予後を確立するためのものである、請求項95に記載の使用。

【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−504408(P2012−504408A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529582(P2011−529582)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062956
【国際公開番号】WO2010/040737
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(508178490)アトラス・アンティボディーズ・アクチボラゲット (11)
【氏名又は名称原語表記】Atlas Antibodies AB
【Fターム(参考)】