説明

SERPINE2によるコラーゲンおよび平滑筋アクチンの発現を調節するための組成物および方法

本発明は、SERPINE2およびSERPINE2のアンタゴニストを使用して、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1の発現および/またはα−平滑筋アクチンの発現を増大または減少させる方法および組成物を包含する。また、本発明は、筋線維芽細胞の形成を増大または減少させる方法および組成物を包含する。さらに、本発明は、特発性肺線維症および慢性閉塞性肺疾患といった肺疾患の治療のための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特発性肺線維症(IPF)、急性肺傷害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった、肺線維症に関連する多くの様々な肺疾患が存在する(Howell et al., Am. J. Path. 159:1383-1395 (2001)、米国特許出願公開第2009/0136500号)。
【0002】
例えば、特発性肺線維症(IPF)は、繊維芽細胞の増殖および過度のコラーゲン堆積によって特徴づけられる、間質性の肺疾患の一般的な形態である(Hardie et al., Am. J. of Respir. Cell Mol. Biol. 327:309-321 (2007))。IPFは慢性炎症プロセスに帰着する可能性があり、これは間質における細胞外マトリックスの限局性の蓄積を発生させる。あるいは、IPFは肺の上皮の損傷によって引き起こされる可能性があり、過度の細胞外マトリックス形成を伴う異常な創傷治癒をもたらす可能性がある。現在まで、IPFに対する有効な治療法は存在しない(Hardie et al., (2007); Meltzer et al., Orphanet Journal of Rare Diseases, 3:8 (2008))。
【0003】
肺繊維芽細胞から筋線維芽細胞への転換は、特発性肺線維症およびその他の肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態生理学的特徴である(Dunkern et al., Eur J Pharmacol. 572(1):12-22 (2007))。
【0004】
IPF患者の肺胞液では、抗繊維素溶解の活性のレベルが低下することが報告されている(Chapman et al., Am. Rev. Respir. Dis. 133:437-443 (1986))。肺液におけるプラスミノゲン・アクチベータ・インヒビター(PAI−1)抗原(SERPINE1としても知られる)の濃度および肺細胞ライセートにおけるPAI−2抗原(SERPINB2としても知られる)の濃度は、正常な被験者よりも患者のほうが高いことが報告された(同文献)。PAI−1は肺線維症に関与する(Gharee-Kermani et al., Expert Opin. Investig. Drugs 17:905-916, 2008)。ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)は、脈管外の組織における繊維素溶解の主要な活性化剤である(同文献)。PAI−1はuPAを阻害する(同文献)。したがって、プラスミノゲンシステムのタンパク質分解特性は、肺修復の調節および繊維症に重要な役割を果たす可能性がある(同文献)。
【0005】
SERPINE2は不可逆的な細胞外セリンプロティナーゼ阻害剤である。これは、膵臓、結腸および胃の癌において過剰発現する(Neesse et al., Pancreatology 7:380-385, 2007)。SERPINE2は、プロテアーゼ・ネキシンI(PN−1)および神経膠由来ネキシン(GDN)としても知られる。SERPINE2はさらに細胞外のウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子を阻害する(Scott et al., J. Biol. Chem. 258:4397-4403, 1983)。
【0006】
膵臓癌細胞株にSERPINE2をトランスフェクションすると、侵襲性の腫瘍における細胞外マトリックス(ECM)生産の大きな上昇と共に、異種移植片腫瘍の局所的な侵入の増強がもたらされた(Buchholz et al., Cancer Research 63:4945-4951 (2003))。ECM蓄積は、タイプIコラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンについては陽性であった(同文献)。
【0007】
SERPINE2タンパク質はマウスおよびヒトの肺において発現することがわかっている(DeMeo et al., Am. J. Hum. Gen. 78:253-264 (2006))。この文献は、SERPINE2の過剰発現は慢性閉塞性肺疾患と関連があることを示唆した。SERPINE2は、トロンビン、トリプシン、プラスミンおよびウロキナーゼといったトリプシン様セリンプロテアーゼの細胞外阻害剤であることが実証された(同文献)。
【0008】
SERPINE2は繊維芽細胞によって分泌される(Farrell et al., J. Cell Physiol. 134:179-188, 1988)。SERPINE2は、細胞外環境においてトロンビン、ウロキナーゼおよびプラスミンを含む特定のセリンプロテアーゼと複合体を形成し、これらはその後、細胞に取り込まれ、分解される(同文献)。SERPINE2は、細胞外マトリックスに結合して、繊維芽細胞の表面に存在する(同文献)。
【0009】
硬皮症患者の皮膚病変から単離した繊維芽細胞はコラーゲンおよびその他のマトリックス成分を過剰発現する(Strehlow et al., J. Clin. Invest. 103:1179-1190 (1999))。SERPINE2は硬皮症繊維芽細胞において過剰発現した(同文献)。マウス3T3繊維芽細胞におけるSERPINE2の一時的又は安定的な発現は、それぞれ、コラーゲンα−1(I)プロモーター活性または内因性コラーゲン転写物の濃度を増加させた(同文献)。活性部位に突然変異を導入したSERPINE2では、コラーゲンプロモーター活性の増大が生じなかった(同文献)。アンチセンス方向のSERPINE2の過剰発現は、マウス3T3繊維芽細胞において、コラーゲンプロモーターからの発現を阻害するようであった(同文献)。Strehlow et al., 1999の文献において、ヒトSERPINE2の点変異R364KおよびS365Tが行われており、これはトロンビンとの高い次元の複合体における形成を欠如させることが確認された。
【0010】
低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)は、プロテアーゼ−SERPINE2複合体の内部移行の原因となる受容体である(Knauer et al., J. Biol. Chem. 272: 29039-29045, 1997)。トロンビン−SERPINE2のLRPへの結合はアミノ酸47−58によって介在される(Knauer et al., J. Biol. Chem. 272:12261-12264, 1997)。LRP結合領域におけるSERPINE2点変異H48A、および二重変異体H48AおよびD49Aは、野生型と同様のトロンビン複合体形成速度を有するが、異化および内部移行が野生型と比較して50%および15%まで低下した(Knauer et al., J. Biol. Chem. 274:275-281, 1999)。
【0011】
IPFにおける主要なエフェクター細胞は筋線維芽細胞である(Scotton and Chambers, Chest 132:1311-1321 (2007))。筋線維芽細胞は、コラーゲンを高度に合成し、収縮性の表現型を有しており、α−平滑筋アクチンストレス・ファイバーの存在によって特徴づけられる(同文献)。筋線維芽細胞は、常在性の肺線維芽細胞の活性化/増殖、上皮−間充織の分化、循環する繊維芽幹細胞(繊維細胞)の動因に起因する可能性がある(同文献)。筋線維芽細胞は創傷治癒プロセスに関係する(Hinz et al., Am. J. Pathology 170:1807-1816 (2007))。トランスフォーミング成長因子(TGF)β1は、筋線維芽細胞の発生の誘導に関与することが示された(同文献)。
【0012】
肺線維症の患者における1つの研究において、α−平滑筋アクチン、γ−平滑筋アクチンおよびカルポニンといった筋タンパク質並びにインテグリンα7β1をコードする遺伝子の発現が著しく増大することがわかった(Zuo et al., P.N.A.S. 99:6292-6297 (2002))。
【0013】
肺線維症のマウスモデルにおいて、TGF−αによる繊維症の誘導は、1−4日以内に、プロコラーゲンタイプI、α1(COL1A1)、COL3A1、COL5A2およびCOL15A1、およびエラスチンを含むいくつかの細胞外マトリックスタンパク質の肺RNA濃度の上昇をもたらした(Hardie et al., 2007)。TGF−α後に増加した防御/免疫タンパク質をコード化する多数のRNAの濃度は、SERPINE2を含めて、もはや発現しなかった(同文献)。SERPINE2はIPFと関連づけられなかったことに注目される(同文献)。
【0014】
SERPINE2とトロンビンとの反応速度は、ヘパリンが増大させる(Wallace et al., Biochem J. (1989) 257, 191-196)。SERPINE2のヘパリン結合部位は、部位特異的突然変異によって局地化された(Stone et al., Biochem. 33:7731-7735, 1994)。SERPINE2のヘパリン結合領域は、アミノ酸90−105であることが明らかとなった。7つ全てのリジン残基のグルタミン酸残基への変異は、分解による測定と同様に、ヘパリン結合、ヘパリンが介在するトロンビン複合体形成を促進する能力、およびトロンビン−SERPINE1の繊維芽細胞表面に結合する能力を失わせた(Stone et al., 1994; Knauer et al., JBC 1997, 272:29039-29045, 1997)。
【0015】
Serpinsは、3つのβ−シートおよび8−9つのヘリックスから構成される(Law et al., Genome Biology 7:216, 2006)。反応中心ループ(RCL)は標的となるプロテアーゼと相互作用する(同文献)。serpinの切断は、プロテアーゼの活性部位を歪める構造変化をもたらし、これは、アシル中間体の効率的な加水分解および続くプロテアーゼの放出を妨げる(同文献)。したがって、serpinsは不可逆的で自殺的な阻害剤である(同文献)。
【0016】
serpinsの多くの異なるタイプのアンタゴニストが作られた。例えば、SERPINE2に対するモノクローナル抗体は、標的プロテアーゼの阻害を遮断することができる(Wagner et al., Biochemistry 27: 2173-2176, 1988; Boulaftali et al. Blood First Edition Paper, prepublished online October 23, 2009; DOI 10.1182/blood-2009-04-217240)。同様に、SERPINE1(すなわちプラスミノゲンアクチベータインヒビター−1)に対するscFV断片を含む中和抗体が作られた(例えば、 Verbeke et al., J. Thromb. Haemost. 2:298-305, 2004, and Brooks et al., Clinical & Experimental Metastasis 18:445-453, 2001)。アンチセンスRNAおよびオリゴヌクレオチドが、SERPINE2およびSERPINE1発現を阻害するために使用された(Kim and Loh, Mol. Biol. Cell. 17:789-798, 2006, and Sawa et al., J. Biol. Chem. 269:14149-14152, 1994)。
【0017】
RNA干渉もまた、SERPINE1発現の抑制のために使用された(Kortlever et al., Nature Cell Biology 8:877-884, 2006)。さらに、SERPINE1の反応中心ループに対応する14アミノ酸ペプチドを使用して、SERPINE1の不活性化が成功した(Eitzman et al., J. Cin. Invest. 95:2416-2420, 1995)。その他のserpinsは、反応中心ループに対応するペプチドによって同様に阻害された(Bjork et al., J. Biol. Chem. 267:1976-1982, 1992; Schulze et al., Eur. J. Biochem. 194:51-56, 1990)。低分子量分子XR5967(ジケトピペラジン)も、SERPINE1活性を抑制することが示された(Brooks et al., Anticancer Drugs 15:37-44, 2004)。
【0018】
肺線維芽細胞に関する多くの繊維症の肺疾患が存在する。例えば、特発性肺線維症は、慢性的で進行性の、しばしば致命的な間質性肺疾患であり、これに対して証明された薬物治療は存在しない(Gharaee-Kermani et al., 2008)。したがって、IPFおよびCOPDといった、肺線維芽細胞が関与する繊維症肺疾患を治療するための付加的な組成物および方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0019】
ヒト肺線維芽細胞に対して精製されたSERPINE2を投与すると、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現が増大することが分かった。低密度リポ蛋白質受容体関連タンパク質(LRP)に結合する能力を欠くSERPINE2 LRP結合変異体の投与もまた、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現を増大させる。その標的プロテアーゼと相互作用する能力を欠くSERPINE2プロテアーゼ相互作用変異体を投与した場合、コラーゲン1A1の発現およびα−平滑筋アクチンの発現を増大する能力を示さなかった。標的プロテアーゼと相互作用する能力を維持するが、プロテアーゼの活性を完全には遮断しないSERPINE2プロテアーゼ阻害変異体(Strehlow et al., 1999)の投与は、中程度のコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現をもたらした。
【0020】
SERPINE2に対するポリクローナル抗体の投与は、用量依存的に、SERPINE2−誘導型のコラーゲン1A1の増大を無効にした。さらに、TGF−βは、正常ヒト肺線維芽細胞におけるSERPINE2 mRNA発現の大きな上昇を誘導し、ブレオマイシンによるマウスの治療法は、肺ライセートにおけるSERPINE2タンパク質の発現濃度の上昇を引き起こした。
【0021】
これらの結果は、特発性肺線維症において見られるように、SERPINE2が、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の増大とともに、活性化された筋線維芽細胞の形成の上昇を引き起こし得ることを示す。本発明は、肺線維芽細胞において、コラーゲン1A1の発現を増大するおよび/またはα−平滑筋アクチンの発現を増大するための方法および組成物を包含する。例えば、組み換え型のSERPINE2は、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現および筋線維芽細胞形成を増大させるために肺線維芽細胞に添加することができる。SERPINE2は、細胞外のプロテアーゼ阻害剤であるため、肺線維芽細胞自身によって製造でき、またはタンパク質の添加または近隣の細胞による生産といった別の供給源由来とできる。これらの組成物および方法は、肺線維芽細胞においてコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現を増大させるのに有用であり、およびSERPINE2のアンタゴニストのための薬剤スクリーニング検査に有用である。さらに、これらの組成物および方法は、インビボでの繊維症の活性を相殺する組成物のための薬剤アッセイに有用である。例えば、マウスを、その他の化合物と一緒に精製されたSERPINE2で処理し、繊維症を相殺する化合物のスクリーニングに使用することができる。さらに、本発明の組成物および方法は、創傷治癒を助ける活性化された筋線維芽細胞の形成の上昇に有用である。
【0022】
様々な実施形態において、本発明は、ヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1産生および/またはα−平滑筋アクチン産生のレベルを増大するための方法であって、細胞へSERPINE2を投与し、ヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現の増大を検出することを含む方法を包含する。好ましい実施形態において、SERPINE2は発現ベクターにて、または精製されたタンパク質として投与される。好ましくは、コラーゲン発現の上昇は、コラーゲン1A1のRNAの濃度の上昇の測定により、および/またはα−平滑筋アクチンのRNA産生のレベルの上昇の測定により検出される。
【0023】
高い濃度のSERPINE2へのヒト肺線維芽細胞の曝露は、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の増大をもたらし、その発現の増大は、プロテアーゼ標的に結合するSERPINE2の能力を妨害することで遮断されるため、SERPINE2のアンタゴニストは、高い濃度のSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の減少を生じさせることが出来る。この方法において、SERPINE2のアンタゴニストは、筋線維芽細胞の発生のように、高い濃度のSERPINE2に対するヒト肺線維芽細胞の曝露の効果を遮断することができる。したがって、本発明は、SERPINE2のアンタゴニストを使用して、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1の発現を減少させ、および/またはα−平滑筋アクチンの発現を減少させるための方法および組成物を包含する。そのようなアンタゴニストは、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現の減少に、および筋線維芽細胞の作用による場合のように肺線維芽細胞に介在される繊維症の予防に有用である。
【0024】
様々な実施形態において、本発明は、高い濃度のSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現のレベルを阻害するための方法であって、ヒト肺線維芽細胞にSERPINE2のアンタゴニストを投与することを含む方法を包含する。1つの実施形態において、方法は、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現の減少の検出を含む。様々な実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にTGF−βに曝露される。ある実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にIL−13に曝露される。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは、抗体、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたはSERPINE2の小分子阻害剤である。
【0025】
SERPINE2のアンタゴニストは、抗体等のような、SERPINE1のアンタゴニストを含む、肺線維症のその他の阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明はさらに、高い濃度のSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞から筋線維芽細胞の形成を阻害するための方法であって、ヒト肺線維芽細胞へのSERPINE2のアンタゴニストの投与を含む方法を包含する。様々な実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にTGF−βに曝露される。ある実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にIL−13に曝露される。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは、抗体、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたはSERPINE2の小分子阻害剤である。
【0027】
本発明はさらに、SERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現のレベルを阻害するための方法であって、ヒト肺線維芽細胞へのSERPINE2のアンタゴニストの投与を含む方法を包含する。1つの実施形態において、方法は、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現の減少の検出を含む。様々な実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にTGF−βに曝露される。ある実施形態において、肺線維芽細胞は、アンタゴニストへの曝露の前にIL13に曝露される。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは、抗体、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたはSERPINE2の小分子阻害剤である。
【0028】
この発明の文脈において、SERPINE2のアンタゴニストは、SERPINE2のRNA発現、タンパク質発現またはタンパク質活性を特異的に阻害することができる任意の分子を含む。したがって、SERPINE2のアンタゴニストは、SERPINE2に特異的に結合し、その生物活動を抑制する抗体;SERPINE2の発現に干渉するアンチセンス核酸RNA;SERPINE2の発現に干渉する小型干渉RNA;SERPINE2の小ペプチド阻害剤、およびSERPINE2の小分子阻害剤を含む。例えば、SERPINE2への特異的に結合し、その生物活性を遮断するアンタゴニスト抗体を、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現を減少させるために、高い濃度のSERPINE2に曝露された肺線維芽細胞に添加することができる。同様に、SERPINE2に特異的に結合するアンタゴニスト抗体を、筋線維芽細胞の形成を減少させるために、高い濃度のSERPINE2に曝露された肺線維芽細胞に添加することができる。
【0029】
コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の増大に対する高いSERPINE2濃度の効果は、発明者らに対して、高い濃度のSERPINE2に対するヒト肺線維芽細胞の曝露が、IPFおよびCOPDを含む様々な肺疾患に関連する主要なエフェクター細胞である筋線維芽細胞の形成を促進したことを示した。したがって、本発明は、肺線維芽細胞に対するSERPINE2のアンタゴニストの投与により、および筋線維芽細胞形成を減少させることにより、コラーゲン1A1の発現および/またはα−平滑筋アクチンの過剰発現を患う患者における肺線維芽細胞においてα−平滑筋アクチンの発現を減少させるためのおよび/またはコラーゲン1A1の発現を減少させるための方法および組成物を包含する。
【0030】
本発明は、医学的状態の治療法のための医薬の製造のためのSERPINE2のアンタゴニストの使用であって、医学的状態は肺線維症、特にヒト肺線維芽細胞が高い濃度のSERPINE2に曝露される肺線維症である使用を含む。好ましい実施形態において、医学的状態は特発性肺線維症(IPF)または慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは抗体、例えばモノクローナル抗体である。様々な実施形態において、SERPINE2のアンタゴニストは、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたはSERPINE2の小分子阻害剤である。SERPINE2のアンタゴニストもまた、抗体等といった、SERPINE1のアンタゴニストを含む肺線維症のその他の阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0031】
このように、本発明は、IPF、ALI、ARDS、喘息およびCOPDのような肺疾患の治療のための方法および組成物を提供する。そのような組成物は、そのような疾病の病徴を有するまたはそのリスクのある患者に対して、予防的にまたは治療的に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、ヒト肺線維芽細胞に対する精製されたSERPINE2タンパク質の効果のためのアッセイの結果を示す。bDNAアッセイを、0、2.5または5μg/mlの濃度の精製されたSERPINE2および0.5ng/mlのTGF−βで48時間処理した正常ヒト肺線維芽細胞に対して行った。β−アクチン(ACTB)、α−平滑筋アクチン(ACTA2)およびコラーゲン1A1(COL1A1)のRNA濃度を測定した。
【図2】図2は、野生型(WT)SERPINE2、SERPINE2LRP結合変異体、SERPINE2プロテアーゼ阻害変異体およびSERPINE2プロテアーゼ相互作用変異体を形質移入した細胞からのタンパク質上清の、β−アクチン(ACTB)、α−平滑筋アクチン(ACTA2)およびコラーゲン1A1(COL1A1)のRNA濃度に対する効果のためのアッセイの結果を示す。ベクターコントロール(VCM)からの上清も使用した。bDNAアッセイを、SERPINE2含有上清またはVCM上清および0.05ng/mlのTGF−βで48時間処理した正常ヒト肺線維芽細胞に対して行った。
【図3】図3は、野生型(WT)SERPINE2、SERPINE2LRP結合変異体、SERPINE2プロテアーゼ阻害変異体およびSERPINE2プロテアーゼ相互作用変異体を形質移入した細胞からのタンパク質上清の、β−アクチン(ACTB)、α−平滑筋アクチン(ACTA2)およびコラーゲン1A1(COL1A1)のRNA濃度に対する効果のためのアッセイの結果を示す。ベクターコントロール(VCM)からの上清も使用した。bDNAアッセイは、SERPINE2含有上清またはVCM上清および0.5ng/mlのTGF−βで48時間処理した正常ヒト肺線維芽細胞に対して行った。
【図4】図4Aおよび4Bは、2つの異なる濃度でTGF−β1が存在する状態において、SERPINE2タンパク質の濃度を増大することによるコラーゲンタンパク質生産の誘導を示す。
【図5】図5は、NHLF細胞におけるTGF−b1によるSERPINE2 RNA生産の誘導を示す。
【図6】図6は、マウスSERPINE2に対するポリクローナル抗体を使用した、肺線維芽細胞におけるマウスSERPINE2誘導性コラーゲン産生の誘導の阻害を示す。###p<0.001は処理なしの場合と比較、***p<0.001は0.5ng/mlのTGFβの場合と比較、一次元配置分散分析およびNewman Keuls。
【図7】図7は、7または14日間食塩水またはブレオマイシンで処理したマウスの肺ライセートにおけるSERPINE2タンパク質濃度を示す。統計的有意性は、一次元配置分散分析およびテューキーポスト試験(Tukey's Post test)を使用して決定した。SERPINE2濃度(51KDバンド)は、ブレオ処理した肺ライセートにおいて著しく増加し、SERPINE2タンパク質が増大した。***p<0.0001は、食塩水処理したマウス肺と比較した。
【発明の詳細な説明】
【0033】
本発明は、SERPINE2を使用して、肺線維芽細胞においてコラーゲン1A1の発現を増大させるためのおよび/またはα−平滑筋アクチンの発現を増大させるための方法および組成物を包含する。
【0034】
本発明はさらに、SERPINE2のアンタゴニストを使用して、肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1の発現を減少させるためのおよび/またはα−平滑筋アクチンの発現を減少させるための方法および組成物を包含する。コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現を減少させるために、SERPINE2のアンタゴニストを高い濃度のSERPINE2に曝露された肺線維芽細胞に添加することができる。同様に、筋線維芽細胞の形成を減少させるために、SERPINE2のアンタゴニストを高い濃度のSERPINE2に曝露された肺線維芽細胞に添加することができる。
【0035】
SERPINE2への肺線維芽細胞の曝露は、SERPINE2のアンタゴニストの投与によって阻害することができる。アンタゴニストは、SERPINE2のRNA発現、タンパク質発現またはタンパク質活性を低下させるか、または遮断することができる。
【0036】
「高い」濃度のSERPINE2とは、細胞および/または組織について、平均値を超えるSERPINE2タンパク質の濃度を意味する。例えば、肺線維芽細胞の培養物に対するSERPINE2の付加は、高い濃度のSERPINE2をもたらす。さらに、患者の気管支洗浄におけるSERPINE2の濃度が、気管支洗浄サンプルについてのSERPINE2の平均値を超える場合、その濃度は高い。
【0037】
高い濃度のSERPINE2に対する肺線維芽細胞の曝露は、SERPINE2のアンタゴニストの投与によって阻害することができる。アンタゴニストは、SERPINE2のRNA発現、タンパク質発現またはタンパク質活性を低下させるか、または遮断することができる。
【0038】
本発明は、肺線維芽細胞に対するSERPINE2のアンタゴニストの投与により、および筋線維芽細胞形成を減少させることにより、IPF患者における肺線維芽細胞においてコラーゲン1A1の発現を減少させるためのおよび/またはα−平滑筋アクチンの発現を減少させるための方法および組成物を包含する。このように、本発明は特発性肺線維症の治療のための方法および組成物を提供する。
【0039】
核酸分子
1つの実施形態において、本発明は、内因性の物質の混入がない一定の単離されたSERPINE2ヌクレオチド配列に関する。「ヌクレオチド配列」とは、分離した断片の形態におけるポリヌクレオチド分子またはより大きな核酸構成物の成分を意味する。核酸分子は、実質的に純粋な形態で、および、標準的な生化学的方法(概要は、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載される)による、その成分となるヌクレオチド配列の同定、操作および回収を可能とする量または濃度で、少なくとも一度単離されたDNAまたはRNAに由来した。そのような配列は、好ましくは、真核生物の遺伝子に典型的に存在する内在的な翻訳されない配列またはイントロンによって中断されていない、オープンリーディングフレームの形態で提供され、および/または構築される。翻訳されないDNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’または3’に存在することができ、そこでは、前記配列はコード領域の操作または発現に干渉しない。
【0040】
SERPINE2核酸分子は、一本鎖および二本鎖の双方の形態のDNA並びにそのRNA相補物を含む。DNAは、例えば、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成されたDNA、PCRによって増幅されたDNAおよびそれらの組み合わせを含む。本発明のDNA分子は、SERPINE2をコードする全長遺伝子並びにポリヌクレオチドおよびその断片を含む。本発明の核酸は、通常ヒト供給源に由来するが、本発明は、その他の供給源に由来したものも含む。
【0041】
本発明の特に好ましいヌクレオチド配列は、配列番号1に記載されるSERPINE2のヒト配列である。配列番号1のDNAによってコードされるアミノ酸の配列は配列番号2に示される。
【0042】
1以上のコドンが同一のアミノ酸をコード化することができるという、既知の遺伝暗号の縮重により、DNA塩基配列は、配列番号1に示される配列とは異なるものの、配列番号2のアミノ酸配列を有したポリペプチドをコードする配列にすることができる。そのような様々なDNA塩基配列は、サイレント突然変異(例えば、PCR増幅の際に生じる)に起因する場合がありえ、または本来の配列の計画的な突然変異による生成物と成り得る。
【0043】
したがって、本発明は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むDNA;(b)配列番号2のポリペプチドをコードするDNA;(c)中程度に厳密な条件の下、(a)または(b)のDNAに対してハイブリダイゼーションすることができ、且つSERPINE2またはその断片をコードするDNA;(d)高度に厳密な条件の下、(a)または(b)のDNAに対してハイブリダイゼーションすることができ、且つSERPINE2またはその断片をコードするDNA;および(e)(a)、(b)、(c)または(d)で定義されたDNAに対して、遺伝暗号の結果として縮重しており、且つSERPINE2またはその断片をコードするDNAから選択される、SERPINE2ポリペプチドをコードする単離されたDNA配列を包含する。当然、そのようなDNA塩基配列によってコードされたポリペプチドは、本発明に包含される。
【0044】
本発明はしたがって、(a)本来の哺乳類SERPINE2遺伝子のコード領域に由来したDNA;(b)配列番号1のDNAまたはその断片、(c)中程度に厳密な条件の下、(a)または(b)のDNAに対してハイブリダイゼーションでき、且つ生物学的に活性なSERPINE2ポリペプチドをコードするDNA;および(d)(a)、(b)または(c)で定義されたDNAに対して遺伝暗号の結果として縮重し、且つ生物学的に活性なSERPINE2ポリペプチドをコードするDNAから選択される、生物学的に活性なSERPINE2ポリペプチドをコードする単離されたDNA配列を提供する。そのようなDNAの等価な配列によってコードされたSERPINE2ポリペプチドは、本発明に包含される。その他の哺乳類の種に由来したDNAによってコードされるSERPINE2ポリペプチドもまた包含される。当該DNAは、配列番号1のDNAの相補体にハイブリダイズすると考えられる。
【0045】
ここで使用される「中程度に厳密な条件」とは、ニトロセルロース膜のためのプレ洗浄溶液5xSSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の使用、約42℃で約50%のホルムアミド、6xSSCのハイブリダイゼーション条件(または、約42℃で約50%のホルムアミドにおいて、Stark's溶液といったその他の同様のハイブリダイゼーション溶液)、約60℃、0.5xSSC、0.1%のSDSの洗浄条件を意味する。「高度に厳密な条件」とは、ほぼ68℃、0.2xSSC、0.1%のSDSで洗浄することを伴う、上記のようなハイブリダイゼーション条件を意味する。
【0046】
後述されるような、SERPINE2ポリペプチド断片および保存的なアミノ酸置換を含むポリペプチドをコードするDNAも本発明の実施形態に含まれる。
【0047】
その他の実施形態において、本発明の核酸分子は、さらに、本来のSERPINE2配列と比較して少なくとも80%同一のヌクレオチド配列を含む。さらに、核酸分子が本来のSERPINE2配列と比較して、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一または少なくとも99.9%同一である配列を含む実施形態も意図される。
【0048】
ここに使用される、2つの核酸配列のパーセント同一性は、Devereuxらによって記述され(Nucl. Acids Res. 12:387, 1984)、ウィスコンシン遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から利用可能な、GAPコンピュータ・プログラム・バージョン6.0を使用し、デフォルトパラメーターをGAPプログラムに使用することで配列情報を比較して決定することができる。このデフォルトパラメーターは、(1)ヌクレオチドのための一成分比較マトリックス(同一の場合1および非同一の場合0の値を含む)およびGribskov and Burgess, Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986の重みつき比較マトリックス(例えば、Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358, 1979に記載)、(2)それぞれの相違に対して3.0のペナルティー、およびそれぞれの相違におけるそれぞれの記号に対して付加的に0.10のペナルティー;および(3)末端の相違に対してペナルティーはなし、ということを含む。
【0049】
本発明はさらに、ポリペプチドの生産に有用な単離した核酸を提供する。そのようなポリペプチドは、任意の多くの従来技術によって調製することができる。SERPINE2をコードするDNA塩基配列またはその所望の断片は、ポリペプチドまたは断片の生産のために発現ベクターにサブクローン化することができる。DNA塩基配列は、有利に、適切なリーダーペプチドまたはシグナルペプチドをコードする配列に融合される。あるいは、所望の断片は、既知の技術を使用して、化学的に合成することができる。さらにDNA断片は、全長がクローン化されたDNA塩基配列の制限酵素による消化によって製造し、アガロースゲルの電気泳動によって単離してもよい。必要ならば、5’または3’末端を所望の点に再構築するオリゴヌクレオチドを、制限酵素消化によって生じたDNA断片に結紮することができる。そのようなオリゴヌクレオチドは、付加的に、所望のコード配列の上流に位置する制限酵素切断部位を含み、およびコード配列のN末端に開始コドン(ATG)を有しうる。
【0050】
さらに、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の手法を、所望のタンパク質断片をコードするDNA塩基配列を単離および増幅するために使用することができる。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドが、5’および3’プライマーとして使用される。オリゴヌクレオチドは、さらに、増幅されたDNA断片の発現ベクターへの挿入を容易にするために、制限酵素のための認識部位を含むことができる。PCR技術は、Saiki et al., Science 239:487 (1988);Recombinant DNA Methodology, Wu et al., eds., Academic Press, Inc., San Diego (1989), pp. 189-196;および PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, innis et al., eds., Academic Press, Inc. (1990)に記載されている。
【0051】
ポリペプチドおよびその断片
本発明は、自然発生したもの、または組換えDNA技術に関する手法といった様々な技術によって製造されたものを含む、様々な形態におけるポリペプチドおよびその断片を包含する。例えば、SERPINE2ポリペプチドをコードするDNAは、部位特異的突然変異、ランダム突然変異およびインビトロの核酸合成を含むインビトロ突然変異誘発によって配列番号1から派生したものであってよい。そのような形態は、誘導体、変種およびオリゴマー並びに融合タンパク質またはその断片を含むが、これらに限定されない。
【0052】
SERPINE2ポリペプチドは、上述された核酸配列によってコードされた全長タンパク質を含む。特に好ましいSERPINE2ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0053】
本発明は、さらに、コラーゲン1A1またはα−平滑筋アクチン生産の活性化またはヒト肺線維芽細胞からの筋線維芽細胞の発生といった、所望の生物学的活性を維持するSERPINE2のポリペプチドおよび断片を提供する。そのような断片は好ましくは可溶性ポリペプチドである。
【0054】
さらに、異なる長さのポリペプチド断片も提供される。1つの実施形態において、好ましいSERPINE2ポリペプチド断片は、アミノ酸配列の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含む。その他の実施形態において、好ましいSERPINE2ポリペプチド断片は、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、最大で少なくとも100までの接触するアミノ酸を含む。これらのポリペプチドは可溶性形態において製造することができる。さらに、ポリペプチド断片は、抗体を生産において、免疫原として使用することができる。
【0055】
本発明は、SERPINE2およびその断片の変種を包含する。好ましくは、SERPINE2の変種は、配列番号2との間で少なくとも50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を示すアミノ酸配列またはその断片を含む。そのような断片は、例えば、50、100、150、200、250、300、350または375のアミノ酸サイズであり得る。
【0056】
パーセント同一性は、Devereuxらによって記述され(Nucl. Acids Res. 12:387, 1984)、ウィスコンシン遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)から利用可能であるGAPコンピュータ・プログラム・バージョン6.0を使用して、配列情報を比較して決定することができる。GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunschのアライメント方法(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)を、SmithおよびWatermanにより改定される通りに(Adv. Appl. Math 2:482, 1981)使用する。GAPプログラムのための好ましいデフォルトパラメーターは、(1)ヌクレオチドのための一成分比較マトリックス(同一の場合の値1および非同一の場合の値0を含む)およびGribskov and Burgess, Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986の重みつき比較マトリックス(Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358, 1979に記載)、(2)それぞれの相違に対する3.0のペナルティー、およびそれぞれの相違におけるそれぞれの記号に対する付加的な0.10のペナルティー;および(3)末端の相違に対してペナルティーはないことを含む。
【0057】
ポリペプチドおよびその断片の製造
本発明のポリペプチドおよび断片の発現、単離および精製は、以下を含むがこれらに限定されない、任意の適切な技術によって達成することができる。
【0058】
発現系
本発明は、SERPINE2のDNAを含む組み換えクローニングおよび発現ベクター、並びに組み換えベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。SERPINE2のDNAを含む発現ベクターは、当該DNAによってコードされたSERPINE2ポリペプチドまたは断片を調製するために使用することができる。ポリペプチドを製造する方法は、ポリペプチドをコードする組み換え発現ベクターが形質転換された宿主細胞を、ポリペプチドの発現を促進する条件の下で培養すること、その後、培養物から発現されたポリペプチドを回収することを含む。当業者は、発現されたポリペプチドを精製するための手順は、使用された宿主細胞のタイプ、ポリペプチドが膜結合型か宿主細胞から分泌されるような可溶性形態かといった因子によって変わることを理解するだろう。
【0059】
任意の適切な発現システムを使用することができる。ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来するものといった、適切な転写または翻訳の調節ヌクレオチド配列に実施可能に繋がった、本発明のSERPINE2ポリペプチドまたは断片をコードするDNAを含む。調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAのリボソームの結合部位、および転写および翻訳の開始および終了を制御するのに適切な配列を含む。調節配列がDNA配列に機能的に関係する場合、ヌクレオチド配列は実施可能に繋がっている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御する場合、プロモーターヌクレオチド配列はDNA塩基配列に実施可能に繋がっている。所望の宿主細胞において複製する能力を付与する複製起点、および形質転換体の同定のための選択遺伝子が、一般に発現ベクターに組込まれる。
【0060】
さらに、適切なシグナルペプチド(本来または異種性)をコードする配列を発現ベクターに組込むことができる。シグナルペプチド(分泌のリーダー)のためのDNA配列を、本発明の核酸配列にインフレームで融合することができ、これにより、DNAは最初に転写され、mRNAが翻訳され、シグナルペプチドを含む融合タンパク質が得られる。意図された宿主細胞において機能的なシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外の分泌を促進する。シグナルペプチドは、細胞からポリペプチドの分泌の際にポリペプチドから切断される。
【0061】
ポリペプチドの発現に適している宿主細胞は、原核生物、酵母またはより高等な真核細胞を含む。哺乳類または昆虫の細胞は、宿主細胞としての使用に関して一般に好まれる。細菌、真菌、酵母および哺乳類の細胞の宿主とともに使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Pouwels et al. Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, (1985)に記載されている。無細胞翻訳系を使用して、ここに開示されたDNA構築物に由来したRNAを使用してポリペプチドを製造することもできる。
【0062】
原核生物系
原核生物はグラム陰性またはグラム陽性の生物を含む。形質転換に適した原核生物の宿主細胞は、例えば、E.コリ、バチルス・サブチリス、サルモネラ・ティフィムリウム、並びにシュードモナス属、ストレプトマイセス属およびスタフィロコッカス属内の様々なその他の種を含む。E.コリのような原核生物宿主細胞において、ポリペプチドは、原核生物宿主細胞における組み換えポリペプチドの発現を容易にするために、N−端末のメチオニン残基を含み得る。N−端末Metは、発現された組み換えポリペプチドから切断することができる。
【0063】
原核生物宿主細胞で使用される発現ベクターは、一般に1以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか、または独立栄養要求を提供するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物の宿主細胞のための有用な発現ベクターの例は、クローニングベクターpBR322(ATCC 37017)のような購入可能なプラスミドに由来したものを含む。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン抵抗性のための遺伝子を含んでおり、これにより、形質転換細胞を同定するための単純な手段を提供する。適切なプロモーターおよびDNA塩基配列がpBR322ベクターに挿入される。その他の購入可能なベクターは、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)およびpGEM1(Promega Biotec, Madison, Wis., USA)を含む。
【0064】
組み換え原核生物宿主の細胞発現ベクターに一般に使用されるプロモーター配列は、ベータラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモータシステム(Chang et al., Nature 275:615, 1978; and Goeddel et al., Nature 281:544, 1979)、トリプトファン(trp)プロモーターシステム(Goeddel et al., Nucl. Acids Res. 8:4057, 1980; and EP-A-36776)およびtacプロモーター(Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, p. 412, 1982)を含む。特に有用な原核生物の宿主細胞発現システムは、ファージlambdaPLプロモーターおよびcI857ts熱不安定性リプレッサー配列を用いる。lambdaPLプロモーターの誘導体を取り込む、アメリカンタイプカルチャーコレクションから利用可能なプラスミドベクターは、プラスミドpHUB2(E.コリ種JMB9、ATCC37092中に存在)およびpPLc28(E.コリRR1、ATCC53082に存在)を含む。
【0065】
SERPINE2のDNAは、通常の細菌の発現ベクターのマルチクローニングサイトにインフレームでクローニングされる。理想的には、ベクターはクローニング部位の上流に誘導可能なプロモーターを含み、誘導物の付加は、研究者の選択した時に、組換え型タンパク質の高いレベルの生産をもたらす。あるタンパク質について、プロモーターと関心ある遺伝子との間に、融合パートナー(例えばヘキサヒスチジン)をコードするコドンを取り込むことで、発現レベルを上昇させることができる。得られる「発現プラスミド」は、E.コリの様々な株において増幅することができる。
【0066】
組換え型タンパク質の発現のために、細菌細胞は、予め決めた光学濃度に達するまで増殖培地中で増殖される。その後、例えば、タンパク質の発現を活性化するIPTG(イソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシド)の添加により、lacオペレーター/プロモーターを含むプラスミドから、組換え型タンパク質の発現が誘導される。誘導(典型的に1−4時間)の後、例えば、遠心分離機における4℃、20分間および5,000XGによるペレッティングにより、細胞を収集する。
【0067】
発現されたタンパク質の回収のために、ペレットにした細胞は、10倍量の50mMのTris−HCl(pH8)/1MのNaClで再懸濁し、その後、フレンチプレスに2または3回通すことができる。最も高度に発現した組換え型タンパク質は、封入体として知られる不溶性の凝集物を形成する。封入体は、遠心分離機において4℃、20分および5,000XGでペレッティングすることにより可溶性タンパク質から精製することができる。封入体ペレットは、50mMのTris−HCl(pH8)/1%のトリトンX−100で洗浄し、その後、50mMのTris−HCl(pH8)/8Mの尿素/0.1MのDTTに溶解する。溶解しない任意の物質は、遠心分離(20℃、20分および10,000XG)によって除去される。関心あるタンパク質は、ほとんどの場合、得られる精製された上清中で最も豊富なタンパク質となると考えられる。このタンパク質は、50mMのTris−HCl(pH8)/5mMのCaCl/5mMのZn(OAc)/1mMのGSSG/0.1mMのGSHに対して透析することで、活性ある高次構造に「リフォールディング」することができる。リフォールディングの後に、イオン交換またはゲルろ過のような様々なクロマトグラフ法により精製を行うことができる。あるプロトコールでは、最初の精製はリフォールディングの前に実行することができる。例として、ヘキサヒスチジン標識した融合タンパク質は固定化ニッケルにて部分的に精製することができる。
【0068】
先の精製およびリフォールディングの手順では、タンパク質は封入体から最も取り出されると考えられるものの、タンパク質精製の当業者は、多くの組換え型タンパク質は、細胞ライセートの可溶性画分から最も精製されると認識するだろう。これらの場合において、リフォールディングはしばしば必要ではなく、標準的クロマトグラフ法による精製を直接実行することができる。
【0069】
酵母系
あるいは、SERPINE2ポリペプチドは、酵母宿主細胞、好ましくはサッカロマイセス属(例えばS.セレビジエ)にて発現させることができる。ピチアまたはクルイベロマイセス(Kluyveromyces)のようなその他の酵母の種類も使用することができる。酵母ベクターは、しばしば、2μm酵母プラスミドからの複製起点の配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終了のための配列および選択可能マーカー遺伝子を含むだろう。酵母ベクターに適したプロモーター配列は、特に、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255:2073, 1980)、またはその他の解糖系酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg. 7:149, 1968; and Holland et al., Biochem. 17:4900, 1978)、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフクルトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホ−グルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのためのプロモーターを含む。酵母発現で使用されるその他の適切なベクターおよびプロモーターは、さらにHitzeman, EPA-73,657に記載されている。その他の代替は、グルコース抑制可能なADH2プロモーターであり、これはRussellら (J. Biol. Chem. 258:2674, 1982)およびBeierら(Nature 300:724, 1982)により記述されている。酵母およびE.コリの両方において複製可能なシャトルベクターは、E.コリにおける選択および複製のためのpBR322からのDNA塩基配列(Amp遺伝子および複製起点)を上記の酵母ベクターに挿入することで構築することができる。
【0070】
酵母アルファ因子リーダー配列を、ポリペプチドの分泌の誘導のために使用することができる。アルファ因子リーダー配列は、プロモーター配列と構造遺伝子配列の間にしばしば挿入される。Kurjan et al., Cell 30:933, 1982およびBitter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:5330, 1984を参照されたい。酵母宿主からの組み換えポリペプチドの分泌を容易にするのに適したその他のリーダー配列は当業者に既知である。リーダー配列は1以上の制限部位を含むためにその3’末端付近を改変することができる。これは、構造遺伝子に対するリーダー配列の融合を容易にするだろう。
【0071】
酵母形質転換プロトコールは当業者に既知である。そのような1つのプロトコールはHinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929, 1978に記載されている。Hinnenらのプロトコールは、0.67%の酵母窒素ベース、0.5%のカザミノ酸、2%のグルコース、10mg/mlのアデニンおよび20mg/mlのウラシルを含む選択培地においてTrp形質転換体を選択する。
【0072】
ADH2プロモーター配列を含むベクターによって形質転換された酵母宿主細胞は、「豊富な」培地における発現の誘導のために増殖することができる。豊富な培地の一例は、1%の酵母抽出物、2%のペプトン、および1%のグルコースから成り、80mg/mlのアデニンおよび80mg/mlのウラシルが添加された培地である。培地においてグルコースが枯渇すると、ADH2プロモーターの抑制解除が生じる。
【0073】
哺乳類系または昆虫系
哺乳類または昆虫の宿主細胞培養物システムも、組み換えSERPINE2ポリペプチドを発現するために使用することができる。昆虫細胞の異種性タンパク質の生産のためのBacculovirusシステムは、Luckow and Summers, Bio/Technology 6:47 (1988)に概説されている。哺乳類起源の樹立細胞株も使用することができる。適切な哺乳類の宿主細胞株の例は、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., Cell 23:175, 1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびアフリカミドリザル腎臓細胞線CV1に由来したCV1/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)(McMahan et al. (EMBO J. 10: 2821, 1991)に記載)を含む。
【0074】
哺乳類細胞へDNAを導入する確立された方法は、Kaufman, R. J., Large Scale Mammalian Cell Culture, 1990, pp. 15-69に記載されている。Lipofectamine脂質試薬(Gibco/BRL)またはLipofectamine−Plus脂質試薬といった購入可能な試薬を使用する付加的なプロトコールを、細胞をトランスフェクトするために使用できる(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7417, 1987)。さらに、エレクトロポレーションは、哺乳類細胞をトランスフェクトするために、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2 ed. Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているように従来の手順を使用して使用することができる。安定した形質転換体の選択は、例えば細胞毒に対する抵抗性のように、当該分野において既知の方法を使用して行なうことができる。Kaufman et al., Meth. in Enzymology 185:487-511, 1990には、ジヒドロ葉還元酵素(DHFR)抵抗性といったいくつかの選択スキームが記載されている。DHFR選択に適している宿主種は、DHFRを欠損するCHO種DX−B11とすることができる(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)。DHFR cDNAを発現するプラスミドは、種DX−B11へ導入することができ、プラスミドを含む細胞のみを適切な選択培地にて増殖させることができる。発現ベクターに組込むことができる選択可能マーカーのその他の例は、G418およびハイグロマイシンBといった抗生物質耐性を付与するcDNAを含む。ベクターを保持する細胞は、これらの化合物に対する抵抗性に基づいて選択することができる。
【0075】
哺乳類宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳の制御配列は、ウィルスゲノムから切除することができる。一般に使用されるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)およびヒト・サイトメガロウイルスに由来する。SV40ウィルスゲノムに由来したDNA塩基配列、例えば、SV40オリジン、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位は、哺乳類の宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のためのその他の遺伝要素を提供するために使用することができる。ウイルスの初期および後期プロモーターは特に有用である。なぜならば、それらは、断片としてウィルスゲノムから容易に得ることができ、それはウイルスの複製起点を含むことができるためである(Fiers et al., Nature 273:113, 1978; Kaufman, Meth. in Enzymology, 1990)。SV40のウイルスの複製起点部位に位置する、HindIIIサイトからBglIサイトに伸びる約250bp配列が含まれる限り、より小さい、またはより大きなSV40断片も使用することができる。
【0076】
哺乳類発現ベクターからの異種遺伝子の発現が改善されることが示された付加的なコントロール配列は、CHO細胞に由来した発現増大配列因子(EASE)のような因子(Morris et al., Animal Cell Technology, 1997, pp. 529-534 and PCT Application WO 97/25420)およびトリパータイトリーダー(tripartite leader)(TPL)およびアデノウイルス2由来のVA遺伝子RNA(Gingeras et al., J. Biol. Chem. 257:13475-13491, 1982)を含む。ウイルス由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)配列は、ジシストロニック(dicistronic)なmRNAが効率的に翻訳されることを可能にする(Oh and Sarnow, Current Opinion in Genetics and Development 3:295-300, 1993; Ramesh et al., Nucleic Acids Research 24:2697-2700, 1996)。ジシストロニックなmRNAの一部としての異種起源のcDNAの発現および続く選択可能マーカー(例えばDHFR)のための遺伝子の発現は、宿主のトランスフェクト可能性および異種起源のcDNAの発現を改善することが示された(Kaufman, Meth. in Enzymology, 1990)。ジシストロニックなmRNAを使用する典型的な発現ベクターは、pTR−DC/GFP(Mosser et al., Biotechniques 22:150-161, 1997)およびp2A5I(Morris et al., Animal Cell Technology, 1997, pp. 529-534)である。
【0077】
哺乳類宿主細胞にて使用されるその他の発現ベクターは、OkayamaおよびBergによって記述されるように構築することができる (Mol. Cell. Biol. 3:280, 1983)。また別の代替として、ベクターはレトロウイルスに由来するものとすることができる。付加的な有用な発現ベクターはpFLAG(登録商標)である。FLAG(登録商標)技術は、低分子量(1kD)で親水性のFLAG(登録商標)マーカーペプチドの、pFLAG(登録商標)発現ベクターによって発現された組み換えタンパク質のN末端への融合に集中する。
【0078】
精製
本発明は、さらにポリペプチドおよびその断片を単離して精製する方法を含む。本発明に係る単離され且つ精製されたSERPINE2ポリペプチドは、上記の通り組み換え発現系によって製造でき、または天然の細胞から精製することができる。SERPINE2ポリペプチドは、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分析において単一のタンパク質バンドが示されるように、実質的に精製することができる。SERPINE2を製造する1つのプロセスは、SERPINE2の発現を促進するのに十分な条件下で、SERPINE2ポリペプチドをコードするDNA塩基配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することを含む。その後、SERPINE2ポリペプチドは、使用される発現系に依存して培地または細胞抽出液から回収される。
【0079】
SERPINE2ポリペプチドの精製のための典型的な方法は当該分野において既知である。例えば、SERPINE2ポリペプチドは、中空繊維ろ過、その後のヘパリン−セファロースカラムにおける再循環によって単離し、精製することができる(Howard et al., J. Biol. Chem. 261:684-689, 1986; Scott et al., J. Biol. Chem. 258:10439-10444, 1983; Scott et al., J. Biol. Chem. 258:4397-4403, 1983)。SERPINE2に対する特定のポリクローナル抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィー (Howard et al., 1986)を使用することもできる。
【0080】
単離および精製
ここに使用されるような「単離され且つ精製された」という表現は、SERPINE2は、例えば、組み換え宿主細胞培養物の精製物として、または非組み換えソースから精製された生成物として、その他の宿主DNA、タンパク質またはポリペプチドと本質的に関連がないことを意味する。「単離され且つ精製された」SERPINE2タンパク質は、アルブミンのように、タンパク質のSERPINE2の精製を安定化させまたは支援するために、SERPINE2に添加されたその他のタンパク質を含むことができる。ここに使用されるような「実質的に精製された」という用語は、SERPINE2を含む混合物であって、特定の抗体を使用して除去できる既知のDNAまたはタンパク質の存在を除けば、その他のDNA、タンパク質またはポリペプチドと本質的に関連がなく、実質的に精製されたSERPINE2タンパク質が生物学的活性を保つ混合物を意味する。「精製されたSERPINE2」という用語は、ここに記載されるように、SERPINE2の「単離され且つ精製された」形態またはSERPINE2の「実質的に精製された」形態のいずれかを意味する。
【0081】
SERPINE2タンパク質について「生物学的に活性」という用語は、SERPINE2タンパク質が、トロンビン、トリプシン、プラスミンおよびウロキナーゼのようなSERPINE2標的トリプシン様セリンプロテアーゼと関連させて、それらを不活性化することができることを意味する。
【0082】
1つの好ましい実施形態において、組み換えポリペプチドまたは断片の精製は、ポリペプチドまたは断片の精製を助けるために、SERPINE2ポリペプチドまたは断片の別のポリペプチドへの融合を使用して達成することができる。そのような融合パートナーは、ポリ−His、Fc成分またはその他の抗原同定ペプチドを含むことができる。
【0083】
当業者に既知のように、任意の種の宿主細胞に関して、組み換えポリペプチドまたは断片を精製するための手順は、使用される宿主細胞の種といった因子および組み換えポリペプチドまたは断片が培地へ分泌されるかどうかによって異なるだろう。
【0084】
一般に、組み換えSERPINE2ポリペプチドまたは断片は、分泌されなければ宿主細胞から単離し、または可溶性であり分泌されるならば培地もしくは上清から単離し、その後、1以上の濃縮、塩析、イオン交換、疎水的相互作用、親和性精製または体積排除クロマトグラフィーステップを行うことができる。これらのステップを達成する特定の方法に関して、培地は、最初に、購入可能なタンパク濃縮フィルター、例えばアミコンまたはミリポアPellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮することができる。濃縮ステップに続いて、濃縮物は、ゲルろ過培地のような精製マトリックスに適用することができる。あるいは、陰イオン交換樹脂、例えばペンダント・ジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基体を使用することができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製において一般に使用されるその他の種とすることができる。あるいは、陽イオン交換ステップを使用することができる。適切な陽イオン交換体は、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスを含む。さらに、等電点電気泳動ステップを使用することができる。あるいは、疎水性相互作用クロマトグラフィーステップを使用することができる。適切なマトリックスは、樹脂に結合したフェニル基またはオクチル成分を含むことができる。さらに、選択的に組み換えタンパク質に結合するマトリックスを備えたアフィニティークロマトグラフィーを使用することができる。使用されるそのような樹脂の例は、ヘパリンカラム、レクチンカラム、色素カラムおよび金属をキレート化カラムである。最後に、疎水性RP−HPLC培地(例えばペンダントメチル、オクチル、オクチルデシルまたはその他の脂肪性基を有するシリカゲルまたはポリマー樹脂)を使用する1以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)ステップを、ポリペプチドをさらに精製するために使用することができる。前述の精製ステップのいくつかまたはすべては、様々な組み合わせにおいて、周知であり、単離され且つ精製された組み換えタンパク質を提供するために使用することができる。
【0085】
細菌培養において製造された組み換えタンパク質は、宿主細胞の最初の破壊、遠心分離、不溶性ポリペプチドの場合には細胞ペレットからの抽出、または可溶性ポリペプチドの場合には上清液からの抽出、その後の1以上の濃縮、塩析、イオン交換、親和性精製または体積排除クロマトグラフィーステップにより通常単離される。最後に、RP−HPLCを最終的な精製ステップのために使用することができる。微生物の細胞は、凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含む任意の都合のよい方法によって破壊できる。
【0086】
さらに、発現されたポリペプチドを親和性精製するために、SERPINE2ポリペプチドに対して得られたモノクローナル抗体といったSERPINE2結合タンパク質を含むアフィニティカラムを利用することが可能である。これらのポリペプチドは、従来技術を使用して、例えば高塩溶出緩衝液にてアフィニティカラムから除去し、その後、使用のためのより低塩の緩衝液に透析し、もしくは利用した親和性マトリックスに依存してpHまたはその他の成分を変更することにより除去し、または、本発明に由来したポリペプチドのような親和性成分の天然の基質を競合的に使用して除去することができる。
【0087】
望ましい純度の程度は、タンパク質の意図された使用に依存する。例えば、SERPINE2ポリペプチドがインビボで投与される場合、相対的に高い純度が望ましい。そのような場合、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分析において、その他のタンパク質に対応するタンパク質バンドが検知できない程度にSERPINE2ポリペプチドは精製される。関係する分野の当業者は、ポリペプチドに対応する複数のバンドは、差異化糖鎖形成、差異化翻訳後修飾等によりSDS−PAGEによって視覚化することができる。最も好ましくは、SDS−PAGE分析における単一のタンパク質バンドによって示されるように、本発明のポリペプチドは本質的に均質に精製される。タンパク質バンドは、銀染色法、クマシーブルー染色または(タンパク質が放射性同位体で識別される場合)オートラジオグラフィーによって視覚化することができる。
【0088】
SERPINE2の精製した製剤は、購入可能であり、本発明の方法において使用することができる。
【0089】
SERPINE2のアンタゴニスト
本発明は、SERPINE2のアンタゴニストを包含する。SERPINE2のアンタゴニストは、例えばSERPINE2のプロテアーゼ抑制機能を抑止することによりSERPINE2の機能を妨げる。好ましい実施形態において、アンタゴニストは、高い濃度のSERPINE2によって引き起こされるコラーゲン1A1の発現をダウンレギュレートし、または減少させる。好ましい実施形態において、アンタゴニストは、高い濃度のSERPINE2によって引き起こされるα−平滑筋アクチンの発現をダウンレギュレートし、または減少させる。最も好ましくは、アンタゴニストは、高い濃度のSERPINE2によって引き起こされるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現をダウンレギュレートし、または減少させる。好ましくは、ダウンレギュレーションは、肺線維芽細胞、最も好ましくはヒト肺線維芽細胞にて生じる。発現は、RNAの測定により直接測定することができ、または例えばタンパク質の測定により間接的に測定することができる。
【0090】
そのようなアンタゴニストは、SERPINE2に特異的に結合し、SERPINE2を生物学的活性を阻害する抗体;SERPINE2の発現を妨げるアンチセンス核酸RNA;SERPINE2の発現を妨げる小型干渉RNA;SERPINE2の反応中心ループに対応する小ペプチド;およびSERPINE2の小分子阻害剤を含む。
【0091】
SERPINE2の候補アンタゴニストは、当該分野において既知の多数の技術および/または本願に開示される技術によって、トロンビン、トリプシン、プラスミンおよびウロキナーゼのようなトリプシン様セリンプロテアーゼのSERPINE2による阻害;インビトロでのコラーゲンおよび/またはα−平滑筋アクチンの発現の阻害;およびマウスモデルにおけるブレオマイシン誘導型線維症からの保護を妨げる能力といった機能についてスクリーニングすることができる。
【0092】
抗体
1つの実施形態において、SERPINE2のアンタゴニストは抗体である。抗体は、合成、モノクローナルまたはポリクローナルであってよく、当該分野において周知の技術によって作ることができる。そのような抗体は、(非特異的結合とは反対に)抗体の抗原結合部位によって、特異的にSERPINE2に結合する。上述のような、SERPINE2ポリペプチド、断片、変種、融合タンパク質等は、免疫反応性の抗体の製造における免疫原として使用することができる。より特に、ポリペプチド、断片、変種、融合タンパク質等は、抗体の形成を誘発する抗原決定基またはエピトープを含む。
【0093】
これらの抗原決定基またはエピトープは、線形または高次構造的(不連続)の何れかとすることができる。線形のエピトープはポリペプチドのアミノ酸の単一セクションからできており、高次構造的または不連続的エピトープは、タンパク質のフォールディングの際に、隣接するポリペプチド鎖の異なる領域由来のアミノ酸部分からできている(C. A. Janeway, Jr. and P. Travers, Immuno Biology 3:9 (Garland Publishing Inc., 2nd ed. 1996))。フォールディングしたタンパク質は複合の表面を有するため、利用可能なエピトープの数は非常に莫大である;しかしながら、タンパク質の立体配座および立体障害により、エピトープに実際に結合する抗体の数は利用可能なエピトープの数よりも小さい(C. A. Janeway, Jr. and P. Travers, Immuno Biology 2:14 (Garland Publishing Inc., 2nd ed. 1996))。エピトープは、当該分野において既知の任意の方法によって同定することができる。
【0094】
したがって、本発明の1つの側面は、SERPINE2ポリペプチドの抗原エピトープに関係がある。以下に詳細に記載されるように、そのようなエピトープは、抗体、特にモノクローナル抗体の作製に有用である。さらに、SERPINE2ポリペプチドからのエピトープは、アッセイにおいて、研究試薬として使用することができ、培養されたハイブリドーマからのポリクローナルの血清または上清のような物質から特異的結合抗体を精製するために使用できる。そのようなエピトープまたはその変種は、固相法、ポリペプチドの化学的または酵素的分裂のような当該分野において周知の技術を使用して、または組み換えDNA技術を使用して製造することができる。
【0095】
特異的にSERPINE2に結合し、標的プロテアーゼのその阻害を遮断する、scFV断片を含む抗体は本発明に包含される。そのような抗体は、例えばVerbeke et al., J. Thromb. Haemost. 2:298-305, 2004およびBrooks et al., Clinical & Experimental Metastasis 18:445-453, 2001に記述される手法を使用して得ることができる。
【0096】
本発明は、標的プロテアーゼのその阻害を遮断する、SERPINE2に対するモノクローナル抗体を包含する。SERPINE2に対する典型的な遮断型モノクローナル抗体は、Wagner et al., Biochemistry 27: 2173-2176, 1988およびBoulaftali et al. Blood First Edition Paper, prepublished online October 23, 2009; DOI 10.1182/blood-2009-04-217240に記載される。
【0097】
特に、その標的プロテアーゼへのSERPINE2の結合を遮断するか、またはヘパリンへのSERPINE2の結合を遮断するモノクローナル抗体が好ましい。そのような抗体は、日常的なインビトロ結合アッセイを使用して、または例において述べられるアッセイを使用してスクリーニングすることができる。
【0098】
1つの実施形態において、SERPINE2のプロテアーゼ相互作用ドメインへ結合するモノクローナル抗体が得られる。この抗体は、免疫原としてSERPINE2のプロテアーゼ相互作用ドメインを含む、完全なSERPINE2ポリペプチドまたはSERPINE2の断片を使用して得ることができる。抗体は、SERPINE2と標的プロテアーゼとの相互作用を遮断するその能力について評価することができる。
【0099】
抗体は、高い親和性および特異性で、標的に結合することができる。抗体結合部位がタンパク質間相互作用部位の近くに存在する場合、それらは相対的に大きな分子(〜150kDa)であり、立体的に2つのタンパク質(例えばSERPINE2およびその標的プロテアーゼ)間の相互作用を阻害することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、SERPINE2の「反応中心ループ」(RCL)に結合し、同族のプロテアーゼへの結合を阻害し、SERPINE2によるその不活性化を妨げることができる抗体を包含する。本発明は、直接プロテアーゼと接触するRCL残基に結合する抗体を包含する。本発明は、SERPINE2−プロテアーゼ結合部位に対して近接した位置におけるエピトープに結合する抗体をさらに包含する。
【0100】
様々な実施形態において、本発明は、ヘパリンのようなSERPINE2補因子と接触する残基に結合する抗体、またはSERPINE2抑制活性の補因子介在増強を妨げることによりSERPINE2抑制活性を減じる補因子結合部位の近接の残基に結合する抗体を含む。
【0101】
様々な実施形態において、本発明は、分子間相互作用(例えばタンパク質−タンパク質間相互作用)を妨げる抗体、並びに分子の相互作用(例えば分子内構造変化)を混乱させる抗体を包含する。したがって、SERPINE2のRCL、好ましくはSERPINE2のアミノ酸348〜364またはアミノ酸348〜374に結合し、プロテアーゼ結合に続いて「ベータシートA」へのループの挿入を妨げ、および付着したプロテアーゼの歪みおよび続く分解に干渉することによりSERPINE2抑制活性を妨げる抗体は本発明に包含される。同様に、占有されていないSERPINE2のRCLに「挿入された」立体配座を適応させることを強制し、プロテアーゼ結合部位をプロテアーゼ結合から隔離し、利用不可能に維持することによりserpin活性に干渉する抗体は、本発明に包含される。
【0102】
特異的標的に結合する抗体の能力は、関心ある標的に特異的に様々な種の機能的な分子を送達するために開発されている。そのような分子の例は、毒素、サイトカイン、放射性同位元素、および小分子薬剤またはプロドラッグを含む。そのような場合、これらの分子は、共有結合性化学薬品またはペプチドリンカーを介して抗体に付着してよく、またはサイトカインのようなポリペプチドの場合には、それらは、ペプチド結合によって直接付着してもよい。同様に、SERPINE2を標的とする抗体は、特異的にそのプロテアーゼ阻害活性を不活性化する分子を送達するために使用することができる。1つの実施形態において、本発明は、SERPINE2に変異したプロテアーゼを直接送達する抗体を包含する。この変異したプロテアーゼは、プロテアーゼ活性を保ち、SERPINE2を持った共有結合のエステル結合を形成し、RCLを分断し、ベータシートへRCLの挿入を誘導することができるが、それ自体の本来の基質に結合(および分断)する能力を維持しない。SERPINE2がその同族のプロテアーゼに1:1のモル比で結合し、且つSERPINE2はプロテアーゼに結合し不活性化すると、それ自体を破壊するため、抗体によるSERPINE2へのこの変異したプロテアーゼの送達は有効にSERPINE2の供給を消費し、本来の同族プロテアーゼの活性レベルを増大することができる。変異したプロテアーゼは、同時翻訳のまたは翻訳後の手段によって抗体に付着することができる。
【0103】
抗体は、SERPINE2の生物学的活性を遮断する能力またはリガンドへのSERPINE2の結合について、および/またはその他の特性についてスクリーニングすることができる。例えば、抗体は、トロンビン、トリプシン、プラスミンおよびウロキナーゼのようなトリプシン様セリンプロテアーゼをインビトロで結合し且つ遮断する能力についてスクリーニングすることができる(Wagner et al., Biochemistry 27: 2173-2176, 1988を参照されたい)。さらに、抗体は、ここに記載される手法を用いて、筋線維芽細胞形成を遮断するための、または高い濃度のSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現を阻害するための能力についてスクリーニングすることができる。さらに、Yaekashiwa et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 156:1937-1944 (1997)およびDohi et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. 162:2302-2307 (2000)に記載されるように、マウスモデルを使用して、ブレオマイシン誘導型肺線維症に対してインビボで保護する能力についてスクリーニングすることができる。
【0104】
SERPINE2ポリペプチドのエピトープによって誘発することができる抗体に関して、エピトープが単離されている場合であっても、ポリペプチドの一部として残っている場合であっても、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方は下記に述べられるような従来技術によって作製することができる。
【0105】
本発明のこの側面において、SERPINE2およびSERPINE2のアミノ酸配列に基づくペプチドを、SERPINE2に特異的に結合する抗体を作製するために利用することができる。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、その断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、一本鎖可変断片(scFvs)、単一ドメイン抗体断片(VHHまたはNanobodies)、二価抗体断片(diabodies)、並びに任意の組換え型のおよび合成により作製された結合パートナーを含むことを意味する。
【0106】
抗体は、約10−1以上のKaでSERPINE2ポリペプチドに結合する場合、特異的に結合していると定義される。結合パートナーまたは抗体の親和性は、例えばScatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 51:660 (1949)に記載される従来技術を使用して、容易に決定することができる。
【0107】
ポリクローナル抗体は、当該分野において周知である手順を使用して、様々な供給源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウスまたはラットから容易に作製することができる。一般に、精製されたSERPINE2またはSERPINE2のアミノ酸配列に基づくペプチドは、適切に結合させて、典型的に注射によって宿主動物に投与される。SERPINE2の免疫原性は、アジュバント、例えばフロインドの完全または不完全アジュバントを使用して、増強することができる。ブースター免疫化に続いて、血清の小標本を採取し、SERPINE2ポリペプチドに対する反応性に関して試験する。そのような測定に有用な様々なアッセイの例は、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に記載されるもの、並びに向流免疫電気泳動法(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、ラジオ免疫沈殿、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットブロットアッセイ、およびサンドイッチアッセイといった手法を含む(米国特許4,376,110号および4,486,530号を参照されたい)。
【0108】
モノクローナル抗体は容易に周知の手順を使用して作製することができる。例えば、米国特許第32,011号、第4,902,614号、第4,543,439号および第4,411,993号に記載される手法、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKeam, and Bechtol (eds.), 1980を参照されたい。
【0109】
例えば、マウスのような宿主動物に対し、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、約3週間の間隔で、単離されおよび精製されたSERPINE2または結合型SERPINE2ペプチド、例えばアミノ酸348〜364またはアミノ酸348〜374を含むまたはそれから成るペプチドを、任意にアジュバントの存在下で、腹腔内に注入することができる。その後、マウス血清を従来のドットブロット技術または抗体捕獲(ABC)によって分析し、どの動物が融合において最良か決定する。約2〜3週間後に、SERPINE2または結合型SERPINE2ペプチドをマウスの静脈内に注入してブーストする。その後、マウスを犠牲にし、確立したプロトコールに従って、脾臓細胞をAg8.653(ATCC)といった市販される髄腫細胞と融合させる。簡潔には、ミエローマ細胞を培地で数回洗浄し、1つのミエローマ細胞に対して約3つの脾臓細胞の比率でマウス脾臓細胞と融合させる。融合剤は、当該分野において使用される任意の適した薬剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)でありえる。融合物は、融合細胞の選択的な増殖を可能にする培地を含むプレートにまかれる。その後、融合した細胞を約8日間増殖させる。得られたハイブリドーマからの上清を収集し、ヤギ抗マウス一次抗体で覆われたプレートに添加する。洗浄後、標識が付されたSERPINE2ポリペプチドといった標識をそれぞれ十分に添加し、その後インキュベーションする。続いて、陽性ウェルを発見することができる。陽性クローンをバルクの培養液で増殖させ、上清をプロテインAカラム(ファルマシア)で精製する。
【0110】
本発明のモノクローナル抗体は、例えばAlting-Mees et al., "Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas", Strategies in Molecular Biology 3:1-9 (1990)に記載される代替技術を使用して製造することができる。当該文献は本願に援用される。同様に、結合パートナーは、組み換えDNA技術を使用して、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を組み込むよう構築することができる。そのような技術はLarrick et al., Biotechnology, 7:394 (1989)に記載される。
【0111】
それらは従来技術によって製造することができる、そのような抗体の抗原結合性フラグメントも本発明に包含される。そのような断片の例は、FabおよびF(ab’)2断片を含むがこれらに限定されない。遺伝子工学技術によって生産された抗体断片および誘導体も提供される。
【0112】
本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体、例えばマウスのモノクローナル抗体のヒト化バージョンを含む。そのようなヒト化抗体は、既知の技術によって作製することができ、抗体がヒトに投与される場合、免疫原性の低下という長所を示す。1つの実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体は、マウスの抗体の可変領域(またはその単なる抗原結合部位)およびヒト抗体に由来した定常領域を含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体に由来した可変領域断片(抗原結合部位を欠く)を含み得る。キメラの、およびさらに操作された抗体の製造のための手順は、Riechmann et al. (Nature 332:323, 1988)、Liu et al. (PNAS 84:3439, 1987)、Larrick et al. (Bio/Technology 7:934, 1989)およびWinter and Harris (TIPS 14:139, May, 1993)に記載される手順を含む。抗体を遺伝子組換えにより得る手順は、英国特許第2,272,440号、米国特許第5,569,825号および第5,545,806号に見ることができる。
【0113】
遺伝子工学的方法によって製造された抗体、例えばヒト部分および非ヒト部分の双方を含み、標準的組み換えDNA技術を使用して作ることができるキメラのおよびヒト化されたモノクローナル抗体を使用することができる。そのようなキメラのおよびヒト化されたモノクローナル抗体は、当該分野において既知の標準的なDNA技術を用いて遺伝子工学によって製造することができ、例えばRobinsonらによる国際公開番号WO87/02671;Akiraらによるヨーロッパ特許出願0184187;Taniguchi,M.によるヨーロッパ特許出願0171496;Morrisonらによるヨーロッパ特許出願0173494;NeubergerらによるPCT国際公開WO86/01533;Cabillyらによる米国特許第4,816,567号;Cabillyらによるヨーロッパ特許出願0125023;BetterらによるScience 240:1041 1043, 1988;LiuらによるPNAS 84:3439 3443, 1987;LiuらによるJ. Immunol. 139:3521 3526, 1987;SunらによるPNAS 84:214 218, 1987;NishimuraらによるCanc. Res. 47:999 1005, 1987;Woodらによる Nature 314:446 449, 1985;およびShawらによるJ. Natl. Cancer Inst. 80:1553 1559, 1988;Morrison, S. Lによる Science 229:1202 1207, 1985;Oiらによる BioTechniques 4:214, 1986;Winterによる米国特許第5,225,539号;JonesらによるNature 321:552 525, 1986;VerhoeyanらによるScience 239:1534, 1988;およびBeidler らによるJ. Immunol. 141:4053 4060, 1988に記載の方法を使用することができる。
【0114】
合成および半合成抗体に関して、抗体断片、アイソタイプスイッチング抗体(isotype switched antibodies)、ヒト化抗体(例えばマウス−ヒト、ヒト−マウス)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、および完全に合成された抗体様分子を含むが、これらに限定されないと意図される。
【0115】
好ましい実施形態において、アンタゴニストは、SERPINE2の活性部位(すなわち反応中心ループ)を特異的に認識する抗体である。治療の適用のために、ヒトの定常領域および可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体は、抗体に対する患者の免疫反応を最小化するためにしばしば好まれる。そのような抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む遺伝子組み換え動物を免疫することで得ることができる。Jakobovits et al. Ann NY Acad Sci 764:525-535 (1995)を参照されたい。
【0116】
SERPINE2ポリペプチドに対するヒトモノクローナル抗体は、対象のリンパ細胞に由来するmRNAから作製された免疫グロブリン軽鎖および重鎖cDNAを使用して、FabファージディスプレーライブラリーまたはscFvファージディスプレーライブラリーのようなコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーを構築することで作製することができる。例えば、McCaffertyらによるPCT公報WO92/01047;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol. 222:581 597;およびGriffths et al. (1993) EMBO J 12:725 734を参照されたい。さらに、抗体可変領域のコンビナトリアルライブラリーは、既知のヒト化抗体を変異することで得ることができる。例えば、SERPINE2に結合することが既知のヒト化抗体の可変領域は、例えば無作為に突然変異により変更されたオリゴヌクレオチドを使用して変異を導入することができ、その後SERPINE2への結合についてスクリーニングすることができる変異した可変領域のライブラリーを作製できる。免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖のCDR領域内のランダムな突然変異生成を誘導する方法、重鎖および軽鎖を無作為に交叉させ、対を形成さえる方法およびスクリーニング法は、例えば、BarbasらによるPCT公報WO96/07754、Barbas et al. (1992) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4457 446に見ることができる。
【0117】
免疫グロブリンライブラリーは、好ましくは線状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団によって発現させ、抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。抗体ディスプレイライブラリーの取得に特に使用できる方法および試薬の例は、例えば、Ladnerらによる米国特許第5,223,409号;KangらによるPCT出願WO92/18619;DowerらによるPCT出願WO91/17271;WinterらによるPCT出願WO92/20791;MarklandらによるPCT出願WO92/15679;BreitlingらによるPCT出願WO93/01288;McCaffertyらによるPCT出願WO92/01047;GarrardらによるPCT出願WO92/09690;LadnerらによるPCT出願WO90/02809;Fuchsらによる(1991) Bio/Technology 9:1370 1372;Hay らによる(1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81 85;Huseらによる (1989) Science 246:1275 1281;Griffthsらによる (1993)同上;Hawkinsらによる (1992) J Mol Biol 226:889 896;Clacksonらによる (1991) Nature 352:624 628;Gram らによる (1992) PNAS 89:3576 3580;Garrad らによる(1991) Bio/Technology 9:1373 1377;Hoogenboom らによる (1991) Nuc Acid Res 19:4133 4137;およびBarbas らによる (1991) PNAS 88:7978 7982に見ることができる。一旦ディスプレイパッケージ(例えば線状ファージ)の表面に表示されると、抗体ライブラリーは、SERPINE2ポリペプチドに結合する抗体を発現するパッケージを同定し単離するためにスクリーニングされる。好ましい実施形態において、ライブラリーの主要なスクリーニングは、固定化SERPINE2ポリペプチドによるパニングに関与し、固定化SERPINE2ポリペプチドに結合する抗体を示すディスプレイパッケージが選択される。
【0118】
有機的およびペプチド小分子阻害剤
本発明のその他の実施形態において、SERPINE2の活性部位(すなわち反応中心ループ)に結合する能力の存在に基づいてSERPINE2のためのリガンドとして設計された、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはペプチドミメティクスであるアンタゴニストが使用される。インテグリンのためのリガンドとしてのそのような分子のデザインは、例えば、Pierschbacher et al., J. Cell. Biochem. 56:150-154 (1994)、Chorev et al. Biopolymers 37:367-375 (1995)、Pasqualini et al., J. Cell. Biol. 130:1189-1196 (1995)およびSmith et al., J. Biol, Chem, 269:32788-32795 (1994)に例証される。
【0119】
反応中心ループに対応するアミノ酸ペプチドを使用するSERPINE2の不活性化のための典型的な手順は、Eitzman et al., J. Cin. Invest. 95:2416-2420, 1995、Bjork et al., J. Biol. Chem. 267:1976-1982, 1992およびSchulze et al., Eur. J. Biochem. 194:51-56, 1990に提供される。
【0120】
本発明のその他の実施形態において、SERPINE2活性を不活性化または抑制する低分子量有機分子であるアンタゴニストが使用される。SERPINE2の不活性化のための低分子量有機分子の使用のための典型的な手順は、Brooks et al., Anticancer Drugs 15:37-44, 2004および米特許第7,368,471号、第7,259,182号および第6,599,925号に提供され、これらはSERPINE1の不活性化のための低分子量有機分子を提供する。
【0121】
アンチセンス核酸分子
本発明のある実施形態において、アンチセンス核酸分子はSERPINE2のアンタゴニストとして使用される。アンチセンス核酸分子は、標的タンパク質の産生を抑制するためのヌクレオチドの特異的な配列に結合するように設計された核酸の相補的なオリゴヌクレオチド鎖である。
【0122】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、本発明によれば、DNAの断片(配列番号1)を含む。そのような断片は、一般に、少なくとも約14のヌクレオチド、好ましくは約14から約30のヌクレオチドを含む。所定のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいてアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドを得る能力は、例えば、Stein and Cohen (Cancer Res. 48:2659, 1988)およびvan der Krol et al. (BioTechniques 6:958, 1988)に記載される。
【0123】
アンチセンスRNAおよびオリゴヌクレオチドは、Kim and Loh, Mol. Biol. Cell. 17:789-798, 2006およびSawa et al., J. Biol. Chem. 269:14149-14152, 1994に記載されるように、SERPINE2発現を阻害するために作製し使用することができる。
【0124】
これらの成分をコードするコード鎖配列が与えられると、アンチセンス核酸は、ワトソンおよびクリックの塩基対の規則に従って設計することができる。アンチセンス核酸分子は、mRNAの全コード領域に相補的にすることができるが、より好ましくは、mRNAのコーディングまたは非コーディング領域の一部のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドとできる。例えば、アンチセンスのオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳開始部位を囲む領域に対して相補的にできる。アンチセンスのオリゴヌクレオチドは、例えば、約10、15、20、25、30、35、40または50の長さのヌクレオチドにできる。アンチセンス核酸は、当該分野において既知の手法を使用して化学合成および酵素の結紮反応を使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然のヌクレオチドを使用して、または分子の生物学的安定性を増大するように若しくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増大するように設計された様々に修飾されたヌクレオチドを使用して(例えば、ホスホロチオネート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる)、化学的に合成できる。アンチセンス核酸を得るために使用することができる修飾されたヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキノシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キノシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンを含む。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向でサブクローン化された発現ベクターを使用して(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、関心のある標的核酸に対するアンチセンス方向になるだろう)、生物学的に製造することができる。
【0125】
標的核酸配列へのアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの結合は、RNAseHによるmRNAの増強された分解、スプライシングの阻害、転写または翻訳の早期終止を含むいくつかの手段の1つにより、またはその他の手段により、タンパク質発現を遮断または阻害する二重鎖の形成をもたらす。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、したがって、SERPINE2の発現を遮断するために使用することができる。アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、さらに、改変された糖−リン酸ジエステル骨格を有するオリゴヌクレオチド(または、WO91/06629に記載されるようなその他の糖結合)を含み、そのような糖結合は内因性ヌクレアーゼに強い。耐性のある糖結合を有するそのようなオリゴヌクレオチドは、インビボで安定であり(すなわち、酵素の分解に耐性があり)、しかし、標的ヌクレオチド配列に結合することができる配列特異性を維持する。
【0126】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのその他の例は、WO90/10448に記載されるような有機成分、およびポリ−(L−リジン)のような標的核酸配列のためのオリゴヌクレオチドの親和性を増大するその他の成分に共有結合するオリゴヌクレオチドを含む。またさらに、挿入剤、例えばエリプティシン(ellipticine)およびアルキル化剤または金属複合体をセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合し、標的ヌクレオチド配列に対するアンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を改変することができる。
【0127】
アンチセンスまたはセンスオリゴヌクレオチドは、例えばリポフェクション、CaPO介在DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む任意の遺伝子導入方法により、またはエプスタインバーウイルスのような遺伝子導入ベクターの使用により、標的核酸配列を含む細胞に導入することができる。
【0128】
センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、適切なレトロウイルスベクターにセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを挿入し、その後細胞をインビボまたはエクスビボのいずれかで挿入された配列を含むレトロウイルスベクターに接触させることで、標的核酸配列を含む細胞に導入される。適切なレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスM−MuLV、N2(M−MuLV由来のレトロウイルス)またはDCT5A、DCT5BおよびDCT5Cと名付けられる二重コピーベクター(PCT出願米国番号第90/02656号を参照されたい)を含む。
【0129】
さらに、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO91/04753に記載されたように、リガンド結合分子との結合の形成により標的ヌクレオチド配列を含む細胞へ導入することができる。適切なリガンド結合分子は、細胞表面レセプタ、成長因子、その他のサイトカイン、または細胞表面レセプタに結合するその他のリガンドを含むが、これらに限定されない。好ましくは、リガンド結合分子の結合は、実質的に、対応する分子または受容体に結合するリガンド結合分子の能力に影響を与えず、またはセンスもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその結合したバージョンの細胞への侵入を遮断しない。
【0130】
あるいは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、WO90/10448に記載されたように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成によって標的核酸配列を含む細胞へ導入することができる。センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは、内因性リパーゼによって細胞内で分離される。
【0131】
アンチセンスアンタゴニストは、RNAのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドとして提供することができる(例えば、Murayama et al. Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:109-114 (1997)参照)。アンチセンス遺伝子もまた、ウイルスベクター、例えば、B型肝炎ウイルス(例えばJi et al., J. Viral Hepat. 4:167-173 (1997)参照);アデノ関連性ウイルス(例えば、Xiao et al. Brain Res. 756:76-83 (1997)参照);またはHVJ(センダイウイルス)−リポソーム遺伝子運搬システムを含むが、これらに限定されないその他のシステム(例えばKaneda et al. Ann, N.Y. Acad. Sci. 811:299-308 (1997)参照);「ペプチドベクター」(例えばVidal et al. CR Acad. Sci III 32):279-287 (1997) 参照参照);エピソームまたはプラスミドベクターにおける遺伝子(例えば、Cooper et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:6450-6455 (1997), Yew et al. Hum Gene Ther 8:575-584 (1997)参照);ペプチド−DNA凝集物における遺伝子(例えばNiidome et al. J. Biol. Chem. 272:15307-15312 (1997)参照);「ネイキッドDNA」(例えば、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号参照);および脂質ベクターシステム(例えばLee et al. Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 14:173-206 (1997)参照)において提供することができる。
【0132】
小型干渉RNA
本発明のある実施形態において、RNAi分子はSERPINE2のアンタゴニストとして使用される。RNAiは、配列特異的な方式にて標的mRNAの分解により遍在的な機構によって遺伝子発現を調節する(McManus et al., 2002, Nat Rev Genet 3:737 747)。哺乳類細胞では、RNAの干渉(RNAi)は、siRNAの21〜23のヌクレオチド二重鎖が引き金となり得る(Lee et al., 2002, Nat Biotechnol 20: 500 505; Paul et al., 2002, Nat Biotechnol. 20:505 508; Miyagishi et al., 2002, Nat Biotechnol. 20:497 500; Paddison et al., 2002, Genes Dev. 16: 948 958)。U6プロモーターによって駆動されたsiRNAまたはショートヘアピンRNA(shRNA)の発現は、効果的に、哺乳類細胞の標的mRNA分解を介在する。合成的siRNA二重鎖およびプラスミド由来siRNAは、HIVゲノムRNAを特異的に分解することにより、HIV−1感染および複製を阻害することができる(McManus et al., J. Immunol. 169:5754 5760; Jacque et al., 2002, Nature 418:435 438; Novina et al., 2002, Nat Med 8:681 686)。さらに、HCVゲノムRNAを標的とするsiRNAはHCV複製を阻害する(Randall et al., 2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:235 240; Wilson et al., 2003, Proc Natl Acad Sci USA 100: 2783 2788)。siRNAによって標的とされたFasは、劇症肝炎および繊維症から肝臓を保護する(Song et al., 2003, Nat Med 9:347 351)。
【0133】
好ましい実施形態において、RNA干渉(RNAi)分子はSERPINE2の遺伝子発現を減少させるために使用される。RNA干渉(RNAi)とは、二本鎖RNA(dsRNA)または小型干渉RNA(siRNA)の使用して、関連するヌクレオチド配列を含む遺伝子の発現を抑えることを意味する。RNAiはまた、転写後遺伝子抑制(またはPTGS)とも呼ばれる。細胞の細胞質において通常見つかる唯一のRNA分子は一本鎖mRNAの分子であるため、細胞は、dsRNAを認識し21−25の塩基対を含む断片(二重らせんの約2つのターン、小型干渉RNAまたはsiRNAと呼ばれる)に切断する酵素を有す。断片のアンチセンス鎖は、内因性の細胞のmRNAの分子上における相補的センス配列とハイブリダイズするように、センス鎖から十分離れている。このハイブリダイゼーションは、二本鎖領域のmRNAの切断のきっかけとなり、これにより、ポリペプチドに翻訳される能力を破壊する。特定の遺伝子に対応するdsRNAの導入は、したがって、特定の組織および/または選択された時間における、細胞自身のその遺伝子の発現をノックアウトする。
【0134】
SERPINE2発現を抑制するRNA干渉の使用のための典型的な手順は、Kortlever et al., Nature Cell Biology 8:877-884, 2006に提供される。
【0135】
二本鎖(ds)RNAは哺乳動物における遺伝子発現に干渉するために使用することができる。dsRNAは、SERPINE2核酸分子の無発現変異体と同様な表現型をもたらす本発明の核酸分子の機能の抑制性RNAまたはRNAiとして使用される(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000, Nature Cell Biology 2: 70 75参照)。
【0136】
あるいは、siRNAは、RNA干渉を介在するために細胞に直接導入することができる(Elbashir et al., 2001, Nature 411:494 498)。多くの方法、例えば化学合成またはインビトロの転写が、siRNAの作製のために開発されている。一旦作製されると、siRNAsは一過的なトランスフェクションによって細胞へ導入される。さらに、多数の発現ベクターが、一過的および安定的にトランスフェクトされた哺乳類細胞においてsiRNAsを連続して発現させるために開発されている(Brummelkamp et al., 2002 Science 296:550 553; Sui et al., 2002, PNAS 99(6):5515 5520; Paul et al., 2002, Nature Biotechnol. 20:505 508)。これらのベクターのいくつかは、スモールヘアピンRNA(shRNA)を発現するように操作されている。shRNAは、インビボでプロセスされて、遺伝子特異的なサイレンシングを行なうことができるsiRNA様の分子となる。他の種のsiRNA発現ベクターは、分離したpolIIIプロモーターの制御の下でセンスおよびアンチセンスsiRNA鎖をコードする(Miyagishi and Taira, 2002, Nature Biotechnol. 20:497 500)。その他のベクターのshRNAsのように、このベクター由来のsiRNA鎖は、3’チミジン終止コドンを有する。両種の発現ベクターによるサイレンシングの効果は、一過的なsiRNAのトランスフェクトにより誘導される場合と比較された。
【0137】
RNAは、直接細胞へ導入することができ(すなわち細胞内に導入でき);または腔、間質空間に細胞外的に導入することができ、生物の循環に、または経口的に導入することができる。核酸を導入する物理的方法、例えば細胞への直接の注入または生物への細胞外の注入も使用することができる。血管または脈管外の循環、血液またはリンパ系、および脳脊髄液は、RNAを導入することができる部位である。
【0138】
核酸を導入する物理的方法は、RNAを含む溶液の注射、RNAによって覆われた粒子の照射、RNAの溶液への細胞または生物の浸漬またはRNA存在下における細胞膜のエレクトロポレーションを含む。ウイルス粒子にパッケージされたウイルスの構成物は、細胞への発現構築物の効率的な導入および発現構築物によりコードされたRNAの転写の両方を達成するだろう。脂質に介在されるキャリアー輸送、リン酸カルシウム等といった化学物質に介在される輸送といった、細胞に核酸を導入するための当該分野において既知のその他の方法を使用することができる。したがって、RNAは、1以上の下記の活性を達成する成分と共に導入することができる:細胞によるRNA取り込みの増強、二本鎖のアニーリングの促進、アニールされた鎖の安定化、またはそうでなければ標的遺伝子の阻害の増大。
【0139】
RNAは、重合されたリボヌクレオチドの1以上の鎖を含むことができる。それは、リン酸−糖骨格またはヌクレオシドのいずれかに対する修飾を含むことができる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素または硫黄のヘテロ原子の少なくとも1つを含むよう改変することができる。RNA構造における修飾は、dsRNAによって得られるいくつかの生物における一般的なパニック応答を回避しつつ、特異的な遺伝的阻害を可能にするよう調整することができる。同様に、塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するよう改変することができる。RNAは、酵素的にまたは部分的/全体的に有機合成により作製することができ、任意の修飾されたリボヌクレオチドも、インビトロで酵素的にまたは有機合成により導入することができる。
【0140】
二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖、または2つの相補的RNA鎖により形成することができる。RNA二重鎖形成は、細胞内または細胞外で発生させることができる。RNAは、1細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入することができる。より高用量(例えば、1細胞当たり少なくとも5、10、100、500または1000コピーの二本鎖物質)が、より有効な阻害を生じさせることができ;より低用量は、さらに特異的な用途に有用となり得る。阻害は配列特異的であり、RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列は遺伝的阻害のための標的とされる。RNA分子は、少なくとも10、12、15、20、21、22、23、24、25、30の長さのヌクレオチドでありえる。
【0141】
標的遺伝子の一部と同一のヌクレオチド配列を含むRNAは、阻害のために好ましい。標的配列に対して挿入、欠失および単一の点変異を有したRNA配列もまた、阻害に効果的であることがわかっている。したがって、配列同一性は、当該分野において既知の配列比較およびアラインメントアルゴリズム( Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991参照、当該文献は本願に援用される)および、例えば、デフォルトパラメーターを使用するBESTFITソフトウェアプログラムにおいて実行されるようなSmith−Watermanアルゴリズム(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)によるヌクレオチド配列間のパーセント差の計算により最適化することができる。抑制性RNAと標的遺伝子の部分との間における90%を越える配列同一性または100%の配列同一性が好ましい。あるいは、RNAの二重鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズできるヌクレオチド配列として機能的に定義できる(例えば、400mMのNaCl、40mMのPIPES pH6.4、1mMのEDTA、50℃または70℃でのハイブリダイゼーション、12−16時間;その後洗浄)。同一のヌクレオチド配列の長さは、少なくとも25、50、100、200、300または400塩基とすることができる。
【0142】
RNAと標的遺伝子との間における100パーセントの配列同一性は、本発明の実行には必要とされない。したがって、本発明は、遺伝子変異、種多形または進化的分岐により期待されるかもしれない配列変化を許容することができることという長所を有する。
【0143】
RNAは、インビボでまたはインビトロで合成することができる。細胞の内因性のRNAポリメラーゼは、インビボで転写を介在することができ、クローン化されたRNAポリメラーゼは、インビボまたはインビトロで転写に使用することができる。インビボのトランスジーンまたは発現構築物からの転写のために、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナーおよびアクセプター、ポリアデニル化)は、RNA鎖(または複数鎖)を転写するために使用することができる。阻害は、臓器、組織または細胞種における特異的な転写;環境要因(例えば感染症、ストレス、温度、化学的誘導物)の刺激;および/または発育の段階または年齢での転写の操作による標的とすることができる。RNA鎖はポリアデニル化されてよく;RNA鎖は細胞の翻訳の器官によりポリペプチドに翻訳されてよい。RNAは、手動または自動の反応により、化学的にまたは酵素的に合成することができる。RNAは、細胞性RNAポリメラーゼまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼ(例えばT3、T7、SP6)により合成することができる。発現構築物の使用および産生は当該分野において既知である(WO97/32016;米国特許第5,593,874号、第5,698,425号、第5,712,135号、第5,789,214号および第5,804,693号参照、これらは本願に援用される)。化学的またはインビトロにおける酵素的な合成により合成される場合、RNAは、細胞への導入に先立って精製することができる。例えば、RNAは、溶媒または樹脂による抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィーまたはそれらの組み合わせにより混合物から取り除くことができる。あるいは、RNAは、サンプル処理による損失を回避するために、精製を行わずまたは最小限の精製を行って使用することができる。RNAは、貯蔵のために乾燥させるか、または水溶液に溶解することができる。溶液は、アニーリング、および/または二本鎖の安定化を促進するための緩衝剤または塩を含み得る。
【0144】
本発明は、IPFのような疾病の治療または予防のために、細胞へのRNAの導入のために使用することができる。例えば、dsRNAは、ヒト肺線維芽細胞に導入し、それによって、SERPINE2の遺伝子発現を阻害することができる。治療は、疾病に関連した任意の病徴または病理学に関連した臨床的な徴候の改善を含むだろう。
【0145】
製剤および投与
SERPINE2アンタゴニストの多くの適切な製剤は、全ての薬剤師に既知の処方書Remington's Pharmaceutical Sciences, (15th Edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., (1975))、特に第87章(Blaug、Seymour)に見ることができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、無水吸収ベース、水中油型または油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物を含む。
【0146】
本発明は、医学的状態、特に肺線維症、特にヒト肺線維芽細胞が高い濃度のSERPINE2に曝露されるような症状の治療のための医薬の製造のためのSERPINE2のアンタゴニストの使用を含む。好ましい実施形態において、医学的状態は、ALI、IPF、COPD、喘息またはARDSである。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは、SERPINE2の抗体、例えばモノクローナル抗体、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたは小分子阻害剤である。
【0147】
本発明は、SERPINE2のアンタゴニストを患者に投与することを含む肺線維症を患う患者を治療する方法を含む。好ましくは、肺線維症は、ヒト肺線維芽細胞が高い濃度のSERPINE2に曝露されるものである。好ましい実施形態において、患者はALI、IPF、COPD、喘息またはARDSを有している。好ましくは、SERPINE2のアンタゴニストは、SERPINE2の抗体、例えばモノクローナル抗体、RNAi分子、アンチセンス核酸分子、ペプチドまたは小分子阻害剤である。
【0148】
様々な実施形態において、本発明の有効量の組成物が、月に一度または月に一度以上、例えば2、3、4、5または6か月に一度、対象に投与される。その他の実施形態において、本発明の有効量の組成物は、月に一度未満、例えば、2週毎または毎週投与される。本発明の有効量の組成物は、少なくとも一度対象に投与される。特定の実施形態において、有効量の組成物が、少なくとも1か月、少なくとも6か月または少なくとも1年の期間を含む、複数回投与されてよい。
【0149】
様々な実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1−5日の期間毎日投与されるものの、確立している肺線維症を持った患者は、数か月から数年の期間、治療量を受けることができる。ここに使用される「治療量」とは、予防し、緩和し、減少させ、またはそうでなければ患者における症状の重症度を低減する量である。
【0150】
SERPINE2は細胞外のプロテアーゼ阻害剤であるため、アンタゴニストのタンパク質(例えば抗体またはペプチド)または小分子の細胞外の投与は、SERPINE2機能を阻害するのに十分である。SERPINE2発現の阻害(例えば、アンチセンスまたはRNAi)は、SERPINE2を発現する細胞にアンタゴニストが入ることを必要とする。好ましい実施形態において、細胞はヒト肺線維芽細胞である。
【0151】
IPF患者に対する薬剤の様々な送達方法は当該分野において既知である。例えば、多数の臨床研究が、IPFを治療するための分子の様々な典型的な送達方法を使用して行なわれた。抗結合組織成長因子−特異的モノクローナル抗体の単一のIV注入が、臨床研究においてIPFを治療するために使用された。さらに、小分子の吸入ならびにインターフェロン−ガンマの皮下注射およびエアロゾル吸入が、臨床研究において使用された。更に、エタネルセプトが、臨床研究において皮下注射で週に2度IPFを治療するために使用された(Raghu et al., Am J Respir Crit Care Med. 178:948-55, 2008)。
【0152】
抗体について、患者に投与される用量は、典型的に、0.1mg/kg患者体重から100mg/kg患者体重である。好ましくは、患者に投与される用量は、0.1mg/kg患者体重から20mg/kg患者体重であり、より好ましくは患者の体重の1mg/kg患者体重から10mg/kg患者体重である。一般に、ヒト抗体およびヒト化抗体は、外来のポリペプチドに対する免疫反応に起因して、その他の種由来の抗体よりも人体において長い半減期を有する。したがって、より低い用量のヒト化抗体およびより頻度の小さい投与もしばしば可能である。
【0153】
有効な治療に必要な有効成分の量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的な状態および投与されるその他の薬剤を含む様々な因子に依存するだろう。したがって、治療用量は安全性および効果を最適化するように滴定すべきである。典型的に、インビトロで使用される用量は、有効成分のインサイチュー投与に有用な量における有用なガイダンスを提供することができる。特定の疾患の治療のための有効量の動物試験は、さらに、ヒトに対する用量の予測的な示度を提供するだろう。様々な考察が、例えば、Goodman and Gilman's the Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th Edition (1985), MacMillan Publishing Company, New York、およびRemington's Pharmaceutical Sciences 18th Edition, (1990) Mack Publishing Co, Easton Paに記載されている。そこでは、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮的、経鼻、イオン泳動的な投与等を含む投与のための方法が議論されている。好ましくは、その製剤は肺に投与される。より好ましくは、その製剤は吸入される。
【0154】
好ましくは、肺に対する局所的送達は、全身的送達で生じ得る潜在的な副作用を緩和するために使用される。このように、局所的に送達できる用量は、全身的(例えば、非経口的)送達様式において許容され得る量より実質的に高くなりえる。特発性肺線維症、嚢胞性繊維症、結核、肺腫瘍またはその他の炎症といった肺疾患に対しては、吸入経路による局所的送達が好ましい。静脈内投与も好ましい。
【0155】
肺に対する小分子の送達は当該分野において既知の技術により達成することができる。さらに、タンパク質薬剤は当該分野において既知の技術による吸入によって肺に送達することができる。例えば、肺に局所的に送達されたタンパク質薬剤は、インスリンから抗体まで、一連の分子量を示す。
【0156】
インスリンは吸入できるタンパク質の最もよく知られている例である一方(Exubera)、全身的送達が望ましくない肺を標的とするタンパク質の多くの例が存在する。最も古い例の1つは、肺結核を治療するためのエアロゾル化されたインターフェロンアルファまたはガンマである(Am J Respir Crit Care Med Vol 158. pp 1156-1162, 1998; Antimicrobial Agents and Chemotherapy, June 1984, p. 729-734)。今日、エアロゾルインターフェロンガンマは、目下、特発性肺線維症のためのフェーズ1臨床試験にある。皮下送達は、この示度には効果がないことを示された。インターフェロンのエアロゾル小滴は、一般に、圧縮空気によるジェット噴霧器を使用して、0.3−3.4uMの範囲にある。小さな粒子サイズは肺への深い曝露を保証する。
【0157】
抗体のようなより大きなタンパク質も、肺に直接送達することができる。例えば、T細胞レセプタに特異的なエアロゾル化されたモノクローナル抗体は、気道炎症および超反応性についての前臨床研究において成功裡に使用された(Intl Archives of Allergy and Immunology, 134, 49-55, 2004)。他の例において、リシン毒素に対するエアロゾル化された抗体は、毒素を吸入した動物の肺を保護することが分かった(Toxicon, 34, 1037-1033, 1996)。コントロール抗体を受けた動物は、重篤な浮腫および全肺葉の炎症をともなう気道の上皮の壊死を示し、リシン後48−96時間に死亡した。対照的に、エアロゾル化された抗リシン抗体を与えられた動物は肺傷を作らず、動物はすべて生き残った。
【0158】
液体製剤のためのネビュライザーおよびアトマイザーのような肺送達を支援するために使用することができる多数の装置が存在する。乾燥粉末吸入器は固形微粒子製剤のために使用することができる。既存の装置は「能動的」または「受動的」様式に送達することができる。
【0159】
1つの実施形態において、SERPINE2に対する抗体は、肺に対する送達の1つの経路として、液体溶液から直接霧状にすることができる。その他の実施形態において、SERPINE2に対する抗体は、リポソームまたはポリラクチドミクロスフェア(GRAS材料)のような固形微粒子と混合し、またはそれらでカプセル化することができる。多孔性の粒子は非常に高い薬剤ロードを可能にし、薬剤の遅い徐放性にさらに提供することができる。粒子は均一のサイズで作ることができ、5μmのサイズは、最も肺送達戦略のために好ましい。固形微粒子は、さらに、肺から潜在的で全身的な曝露を阻害することができる。液体および固体の肺送達様式の両方は、ブレオマイシン誘導型線維症のマウスモデルのような動物モデルにおいて容易に最適化することができる。肺組織および血流における薬剤濃度は、ELISAのような標準的アッセイを使用して容易に最適化することができる。
【0160】
本発明の組成物は、投与の方法に依存して、様々な単位剤形において投与することができる。例えば、経口投与に適している単位剤形は、粉末、錠剤、ピル、カプセルおよびドラジェといった固体剤形、およびエリキシル、シロップおよび懸濁剤といった液体剤形を含む。有効成分は、さらに、無菌の液体剤形において非経口的に投与することができる。ゼラチンカプセルは、有効成分、および非活性成分として、粉末キャリアー、例えばグルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、炭酸マグネシウム等を含む。好ましい色、味、安定性、緩衝能、分散またはその他の既知の好ましい特徴を提供するために添加できる付加的な非活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インク等である。同様の希釈剤を圧縮錠剤を作るために使用することができる。錠剤およびカプセルの両方は、数時間の期間にわたり薬剤の連続的な放出を提供する徐放性製剤として製造することができる。圧縮錠剤は、任意の不愉快な味を覆い、大気から錠剤を保護するために、糖でコーティングまたは膜でコーティングすることができ、または、胃腸管における選択的な崩壊のために腸溶性コーティングできる。経口投与のための液体剤形は、患者の許容性を高めるために着色および着味を含むことができる。
【0161】
医薬製剤における本発明の組成物の濃縮は、広く異ならせることができ、すなわち、約0.1重量%未満から、通常約2重量%以上から、20から50重量%以上まで異ならせることができ、選択された投与の特定の様式に従って、液体体積、粘性等により第1に選択されるだろう。
【0162】
本発明の組成物もリポソームによって投与することができる。リポソームは、エマルション、泡、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散、層状の層等を含む。これらの製剤において、送達される本発明の組成物は、単独で、あるいは、抗体のような所望の標的と結合する分子またはその他の治療的なもしくは免疫原の組成物とともに、リポソームの一部として組込むことができる。したがって、本発明の所望の組成物が充填されたまたはそれにより装飾されたリポソームは、全身的に送達できる、または、興味のある組織に導入でき、そこでその後リポソームは、選択された治療的/免疫原ペプチド組成物を送達する。
【0163】
本発明で使用されるリポソームは、一般に中性および負に帯電したリン脂質およびコレステロールといったステロールを含む標準的小胞形成脂質から形成することができる。脂質の選択は一般に、例えば、リポソーム・サイズ、血流におけるリポソームの酸不安定性および安定性を考慮して導かれる。例えば、Szoka et al. Ann. Rev. Biophys. Bioeng, 9:467 (1980)、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号および第5,019,369号に記載されるように、様々な方法がリポソームを作製するために利用可能である。
【0164】
本発明の組成物を含むリポソーム懸濁液は、とりわけ、投与の様式、送達される本発明の組成物および治療される疾病の段階に従って変化する用量で、静脈内投与、局所的(locally)投与、局所的(topically)投与を行うことができる。
【0165】
固体組成物のために、例えば、製薬の等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む従来の無毒な固体のキャリアーを使用することができる。経口投与のために、薬学的に許容される無毒の組成物は、通常使用される任意の賦形剤、例えば以前に記録されたキャリアー、および一般に10−95%の有効成分を、すなわち本発明の1以上の組成物をより好ましくは25%−75%の濃度で取り込んで形成される。
【0166】
固体組成物のために、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む従来の無毒の固体キャリアーを使用することができる。経口投与のために、上記のキャリアーのような任意の通常使用される賦形剤と、一般に10−95%の、より好ましくは25%−75%の濃度の有効成分、すなわち本発明の1以上の組成物とを取り込むことで、薬学的に許容可能な無毒の組成物を形成することができる。
【0167】
エアロゾル投与のために、本発明の組成物は、好ましくは、界面活性剤および噴霧剤と共に細かく分離された形態において供給される。本発明の組成物の好ましいパーセンテージは、0.01%−20重量%、好ましくは1−10重量%である。界面活性剤は、当然無毒でなくてはならず、好ましくは噴霧剤に可溶である。そのような薬剤の代表は、カプロン酸(c−aproic acid)、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)およびオレイン酸といった6から22炭素原子を含む脂肪酸と脂肪性多価アルコールまたはその環状無水物とのエステルまたは部分的エステルである。混合グリセリドまたは天然のグリセリドのような混合エステルを使用することができる。界面活性剤は、組成物中0.1−20重量%、好ましくは0.25−5重量%を構成することができる。組成物のバランスは通常噴霧剤である。必要であれば、キャリアーは、例えば鼻腔内送達のためのレシチンとともに含むことができる。
【0168】
本発明の構築物は、さらに、当該分野において周知の技術により、デポー型システム、カプセル化形態または移植において送達することができる。同様に、構築物はポンプによって興味のある組織に送達することができる。
【0169】
製剤における活性剤が処方により不活性化されず、製剤が生理学的に適合するかぎり、任意の前述の製剤が、本発明に関して治療法および治療に適切となり得る。
【0170】
SERPINE2活性のアッセイおよびSERPINE2アンタゴニスト
肺線維芽細胞に対するSERPINE2の効果は、SERPINE2の存在下でヒト肺線維芽細胞をインキュベートし、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンにおける影響をここに記載されるように評価することで、評価することができる。例えば、正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)Lonza製品番号CC−2512をインスリン、rhFGF−B、ゲンタマイシン硫酸アンフォテリシン−Bおよびウシ胎児血清(FBS)を含む繊維芽細胞増殖培地で増殖させることができる。
【0171】
NHLF細胞は、Accutaseによってフラスコから採集することができ、酵素は、トリプシン中和溶液中で中和され、細胞はペレットにされ、完全増殖培地に再懸濁され、数を計測され、Falcon96ウェルプレートに、1ウェル当り8000細胞、1ウェル当り200ulで播種され、37℃、5%のCO下で6時間インキュベートされる。プレーティングから6時間後、完全増殖培地を除去し、細胞に200ulの飢餓培地を添加し、37℃、5%のCOで16−24時間をインキュベートすることで、細胞が血清を枯渇した状態とする。
【0172】
飢餓培地を細胞から除去し、75ulのタンパク質処理の直後に、75ulの共処理を添加する。共処理は、TGF−β1またはIL−13を次の3つの用量のうち1つで添加した飢餓培地である:TGF低処理は0.1ng/mlのTGF−β1(実験における終末濃度は0.05ng/ml);TGF高処理は1.0ng/mlのTGF−β1(実験における終末濃度は0.5ng/ml);IL−13処理は10ng/mlのIL−13(実験における終末濃度は5ng/ml)。SERPINE2タンパク質処理は、組み換えSERPINE2が添加された75ulの飢餓培地である。SERPINE2の濃度は0ng/mlから10,000ng/mlまでとできる。タンパク質処理の添加の後、細胞は、37℃、5%のCOで48時間培養される。
【0173】
48時間の処理の後、培地を除去し、細胞を溶解する。コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンのRNAのレベルを決定する。RNA発現のレベルは、S1ヌクレアーゼ/RNaseプロテクション、PCR、bDNA、ノーザンブロットなどのような当該分野において既知の多数の技術による決定することができる。β−アクチンのようなコントロールを使用することができる。
【0174】
高い濃度のSERPINE2にさらされる肺線維芽細胞は、SERPINE2のアンタゴニストを投与して、これらの細胞に対する高い濃度のSERPINE2の効果を転換することができる。例えば、SERPINE2のアンタゴニスト(例えばモノクローナル抗体)を肺線維芽細胞に投与し、48時間のインキュベーションの後に、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンのRNAのレベルを決定することができる。SERPINE2アンタゴニストのレベルは1ng/mlから10,000ng/mlまでとすることができる。RNAレベルは、並列のサンプルを実行することで、またはアンタゴニスト添加前の一定分量のサンプルと、アンタゴニストの投与後のある時間(例えば24、48および72時間)の一定分量のサンプルとを比較することで、アンタゴニストの存在下および非存在下で比較することができる。
【0175】
さらに、SERPINE2とともにアンタゴニストをインキュベートし、トリプシン様セリンプロテアーゼ、例えばトロンビン、トリプシン、プラスミンおよびウロキナーゼと複合体を形成し、それらを阻害するSERPINE2の能力が変更されたかどうかを決定することで、アンタゴニストの効果を評価することができる。例えばWagner et al., 1988を参照されたい。
【0176】
コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの合成に対するSERPINE2アンタゴニストの効果は、肺線維症のマウスモデルにて試験することができる。このモデルにおいて、繊維症は抗癌剤硫酸ブレオマイシンの気管内注射によるマウスの肺において誘導される。この疾病を有するマウスおよびヒトの両方における形態、生化学およびmRNAの変化の研究により裏付けられるように、ブレオマイシン誘導型線維症はヒト特発性肺線維症に非常に類似する(Phan, S. H. Fibrotic mechanisms in lung disease. In: Immunology of Inflammation, edited by P. A. Ward, New York: Elsevier, 1983, pp121 162; Zhang et. al. (1994) Lab. Invest. 70: 192 202; Phan and Kunkel (1992) Exper. Lung Res. 18:29 43)。
【0177】
マウスは、ブレオマイシンを投与し、好ましくは、その後、例えば10日後、SERPINE2アンタゴニストを投与することで治療することができる。Moeller et al, 2008を参照されたい。アンタゴニストの投与後10−21日目において、マウスの肺を採取し、食塩水で洗浄して血液を除去し、mRNAを抽出し、コラーゲンおよびα−平滑筋アクチンの発現を評価することができる。SERPINE2アンタゴニストの投与は、マウス肺における繊維症の症状を改善することができる。
【実施例】
【0178】
例1.RNA発現に対する精製されたSERPINE2タンパク質の効果
肺線維芽細胞に対するSERPINE2の効果を、繊維芽細胞増殖培地において、正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)をインキュベートすることで評価した。NHLF細胞を採取した。その後、細胞をペレット化し、増殖培地に再懸濁し、1ウェルあたり8000細胞で200ulでプレーティングし、37℃、5%のCOで6時間インキュベートした。6時間のプレーティング後、完全増殖培地を除去し、200ulの飢餓培地(Clonetics Fibroblast Basal Medium (FBM) from Lonza Cat. # CC-3131 + 0.5% BSA fraction V) を細胞に添加し、37℃、5%のCOで16−24時間インキュベートすることで、細胞を、血清が枯渇した状態にした。
【0179】
飢餓培地を細胞から除去し、75ulのタンパク質処理の直後に、75ulの共処理を添加した。共処理は、以下の3つの用量のうち1つでTGF−β1またはIL−13を添加した飢餓培地とした:TGF低処理は0.1ng/mlのTGF−β1(実験における終末濃度は0.05ng/ml);TGF高処理は1.0ng/mlのTGF−β1(実験における終末濃度は0.5ng/ml);IL−13処理は10ng/mlのIL−13(実験における終末濃度は5ng/ml)。SERPINE2タンパク質処理法は、組み換えSERPINE2を添加した75ulの飢餓培地であった。SERPINE2のレベルは約0−5000ng/mlであった。タンパク質処理の添加の後、細胞を37℃、5%のCOで48時間培養した。ヒトTGFベータ1(240−B−010)、組み換えヒトIL−13(213−IL−025)および組み換えヒトSERPINE2(2980−PI)は、R&Dシステムズから入手した。
【0180】
処理の48時間後、150ulの培地を除去し、細胞はプロテイナーゼKを含む100ulの1x溶解緩衝液に溶解した。コラーゲン1A1、β−アクチンおよびα−平滑筋アクチンのレベルを、bDNAアッセイ(Panomics)を使用して決定した。オーバーナイトハイブリダイゼーションおよびフィルタプレートにおけるサンプル処理のためのPanomicsキット説明書に従った。最終ステップにおいて、ビーズを80ulで再懸濁し、Luminexプレートリーダー上でランさせた。
【0181】
精製されたSERPINE2タンパク質および0.05ng/mlのTGF−βによるアッセイの結果を図1に示す。コントロールRNA、β−アクチンは、SERPINE2タンパク質添加による上昇を示さなかった。しかしながら、全3つの実験条件下において、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンのレベルは、用量依存的に上昇し、SERPINE2タンパク質が増加した。これらの結果は、高い濃度のSERPINE2に対するヒト肺線維芽細胞の曝露が、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの両方の発現の上昇をもたらしたことを示す。
【0182】
例2.野生型SERPINE2を発現する構築物の作製
野生型SERPINE2のDNAのヌクレオチド配列を含み、野生型SERPINE2タンパク質を発現する構築物を作製した。
【0183】
野生型SERPINE2のDNAのヌクレオチド配列は、
atgaactggcatctccccctcttcctcttggcctctgtgacgctgccttccatctgctcccacttcaatcctctgtctctcgaggaactaggctccaacacggggatccaggttttcaatcagattgtgaagtcgaggcctcatgacaacatcgtgatctctccccatgggattgcgtcggtcctggggatgcttcagctgggggcggacggcaggaccaagaagcagctcgccatggtgatgagatacggcgtaaatggagttggtaaaatattaaagaagatcaacaaggccatcgtctccaagaagaataaagacattgtgacagtggctaacgccgtgtttgttaagaatgcctctgaaattgaagtgccttttgttacaaggaacaaagatgtgttccagtgtgaggtccggaatgtgaactttgaggatccagcctctgcctgtgattccatcaatgcatgggttaaaaacgaaaccagggatatgattgacaatctgctgtccccagatcttattgatggtgtgctcaccagactggtcctcgtcaacgcagtgtatttcaagggtctgtggaaatcacggttccaacccgagaacacaaagaaacgcactttcgtggcagccgacgggaaatcctatcaagtgccaatgctggcccagctctccgtgttccggtgtgggtcgacaagtgcccccaatgatttatggtacaacttcattgaactgccctaccacggggaaagcatcagcatgctgattgcactgccgactgagagctccactccgctgtctgccatcatcccacacatcagcaccaagaccatagacagctggatgagcatcatggtccccaagagggtgcaggtgatcctgcccaagttcacagctgtagcacaaacagatttgaaggagccgctgaaagttcttggcattactgacatgtttgattcatcaaaggcaaattttgcaaaaataacaaggtcagaaaacctccatgtttctcatatcttgcaaaaagcaaaaattgaagtcagtgaagatggaaccaaagcttcagcagcaacaactgcaattctcattgcaagatcatcgcctccctggtttatagtagacagaccttttctgtttttcatccgacataatcctacaggtgctgtgttattcatggggcagataaacaaaccc (配列番号1)である。
【0184】
野生型SERPINE2タンパク質のアミノ酸配列は、
MNWHLPLFLLASVTLPSICSHFNPLSLEELGSNTGIQVFNQIVKSRPHDNIVISPHGIASVLGMLQLGADGRTKKQLAMVMRYGVNGVGKILKKINKAIVSKKNKDIVTVANAVFVKNASEIEVPFVTRNKDVFQCEVRNVNFEDPASACDSINAWVKNETRDMIDNLLSPDLIDGVLTRLVLVNAVYFKGLWKSRFQPENTKKRTFVAADGKSYQVPMLAQLSVFRCGSTSAPNDLWYNFIELPYHGESISMLIALPTESSTPLSAIIPHISTKTIDSWMSIMVPKRVQVILPKFTAVAQTDLKEPLKVLGITDMFDSSKANFAKITRSENLHVSHILQKAKIEVSEDGTKASAATTAILIARSSPPWFIVDRPFLFFIRHNPTGAVLFMGQINKP (配列番号2)である。
【0185】
例3.LRPに結合しないSERPINE2ムテインの作製
低密度リポ蛋白質受容体関連タンパク質(LRP)に結合できないSERPINE2ムテインのヌクレオチド配列を含む構築物を作製した。このムテインは、SERPINE2のアミノ酸位置48および49に次の変異を含んだ:H48AおよびD49E。
【0186】
SERPINE2のDNAのLRP結合ムテインのヌクレオチド配列は、
atgaactggcatctccccctcttcctcttggcctctgtgacgctgccttccatctgctcccacttcaatcctctgtctctcgaggaactaggctccaacacggggatccaggttttcaatcagattgtgaagtcgaggcctgcagaaaacatcgtgatctctccccatgggattgcgtcggtcctggggatgcttcagctgggggcggacggcaggaccaagaagcagctcgccatggtgatgagatacggcgtaaatggagttggtaaaatattaaagaagatcaacaaggccatcgtctccaagaagaataaagacattgtgacagtggctaacgccgtgtttgttaagaatgcctctgaaattgaagtgccttttgttacaaggaacaaagatgtgttccagtgtgaggtccggaatgtgaactttgaggatccagcctctgcctgtgattccatcaatgcatgggttaaaaacgaaaccagggatatgattgacaatctgctgtccccagatcttattgatggtgtgctcaccagactggtcctcgtcaacgcagtgtatttcaagggtctgtggaaatcacggttccaacccgagaacacaaagaaacgcactttcgtggcagccgacgggaaatcctatcaagtgccaatgctggcccagctctccgtgttccggtgtgggtcgacaagtgcccccaatgatttatggtacaacttcattgaactgccctaccacggggaaagcatcagcatgctgattgcactgccgactgagagctccactccgctgtctgccatcatcccacacatcagcaccaagaccatagacagctggatgagcatcatggtccccaagagggtgcaggtgatcctgcccaagttcacagctgtagcacaaacagatttgaaggagccgctgaaagttcttggcattactgacatgtttgattcatcaaaggcaaattttgcaaaaataacaaggtcagaaaacctccatgtttctcatatcttgcaaaaagcaaaaattgaagtcagtgaagatggaaccaaagcttcagcagcaacaactgcaattctcattgcaagatcatcgcctccctggtttatagtagacagaccttttctgtttttcatccgacataatcctacaggtgctgtgttattcatggggcagataaacaaaccc (配列番号3)である。
【0187】
SERPINE2のLRP結合ムテインのアミノ酸配列は、
MNWHLPLFLLASVTLPSICSHFNPLSLEELGSNTGIQVFNQIVKSRPAENIVISPHGIASVLGMLQLGADGRTKKQLAMVMRYGVNGVGKILKKINKAIVSKKNKDIVTVANAVFVKNASEIEVPFVTRNKDVFQCEVRNVNFEDPASACDSINAWVKNETRDMIDNLLSPDLIDGVLTRLVLVNAVYFKGLWKSRFQPENTKKRTFVAADGKSYQVPMLAQLSVFRCGSTSAPNDLWYNFIELPYHGESISMLIALPTESSTPLSAIIPHISTKTIDSWMSIMVPKRVQVILPKFTAVAQTDLKEPLKVLGITDMFDSSKANFAKITRSENLHVSHILQKAKIEVSEDGTKASAATTAILIARSSPPWFIVDRPFLFFIRHNPTGAVLFMGQINKP (配列番号4)である。
【0188】
例4.標的プロテアーゼに結合できるがプロテアーゼを不可逆的に阻害しないSERPINE2ムテインの作製
標的プロテアーゼに結合できるが、プロテアーゼを不可逆的に阻害しないSERPINE2ムテインのヌクレオチド配列を含む構築物を作製した。このムテイン(阻害ムテイン)は、SERPINE2のアミノ酸位置364および365に次のような変異を含む:R364KおよびS365T。
【0189】
SERPINE2阻害ムテインDNAのヌクレオチド配列は、
atgaactggcatctccccctcttcctcttggcctctgtgacgctgccttccatctgctcccacttcaatcctctgtctctcgaggaactaggctccaacacggggatccaggttttcaatcagattgtgaagtcgaggcctcatgacaacatcgtgatctctccccatgggattgcgtcggtcctggggatgcttcagctgggggcggacggcaggaccaagaagcagctcgccatggtgatgagatacggcgtaaatggagttggtaaaatattaaagaagatcaacaaggccatcgtctccaagaagaataaagacattgtgacagtggctaacgccgtgtttgttaagaatgcctctgaaattgaagtgccttttgttacaaggaacaaagatgtgttccagtgtgaggtccggaatgtgaactttgaggatccagcctctgcctgtgattccatcaatgcatgggttaaaaacgaaaccagggatatgattgacaatctgctgtccccagatcttattgatggtgtgctcaccagactggtcctcgtcaacgcagtgtatttcaagggtctgtggaaatcacggttccaacccgagaacacaaagaaacgcactttcgtggcagccgacgggaaatcctatcaagtgccaatgctggcccagctctccgtgttccggtgtgggtcgacaagtgcccccaatgatttatggtacaacttcattgaactgccctaccacggggaaagcatcagcatgctgattgcactgccgactgagagctccactccgctgtctgccatcatcccacacatcagcaccaagaccatagacagctggatgagcatcatggtccccaagagggtgcaggtgatcctgcccaagttcacagctgtagcacaaacagatttgaaggagccgctgaaagttcttggcattactgacatgtttgattcatcaaaggcaaattttgcaaaaataacaaggtcagaaaacctccatgtttctcatatcttgcaaaaagcaaaaattgaagtcagtgaagatggaaccaaagcttcagcagcaacaactgcaattctcattgcaaaaacatcgcctccctggtttatagtagacagaccttttctgtttttcatccgacataatcctacaggtgctgtgttattcatggggcagataaacaaaccc (配列番号5)である。
【0190】
SERPINE2阻害ムテインのアミノ酸配列は、
MNWHLPLFLLASVTLPSICSHFNPLSLEELGSNTGIQVFNQIVKSRPHDNIVISPHGIASVLGMLQLGADGRTKKQLAMVMRYGVNGVGKILKKINKAIVSKKNKDIVTVANAVFVKNASEIEVPFVTRNKDVFQCEVRNVNFEDPASACDSINAWVKNETRDMIDNLLSPDLIDGVLTRLVLVNAVYFKGLWKSRFQPENTKKRTFVAADGKSYQVPMLAQLSVFRCGSTSAPNDLWYNFIELPYHGESISMLIALPTESSTPLSAIIPHISTKTIDSWMSIMVPKRVQVILPKFTAVAQTDLKEPLKVLGITDMFDSSKANFAKITRSENLHVSHILQKAKIEVSEDGTKASAATTAILIAKTSPPWFIVDRPFLFFIRHNPTGAVLFMGQINKP (配列番号6)である。
【0191】
例5.標的プロテアーゼに結合できないSERPINE2ムテインの作製
標的プロテアーゼに結合できないSERPINE2ムテインのヌクレオチド配列を含む構築物(相互作用ムテイン)を作製した。このムテインは、SERPINE2のアミノ酸位置364および365に次の変異を含んだ:R364PおよびS365P。
【0192】
SERPINE2のDNAの相互作用ムテインのヌクレオチド配列は、
atgaactggcatctccccctcttcctcttggcctctgtgacgctgccttccatctgctcccacttcaatcctctgtctctcgaggaactaggctccaacacggggatccaggttttcaatcagattgtgaagtcgaggcctcatgacaacatcgtgatctctccccatgggattgcgtcggtcctggggatgcttcagctgggggcggacggcaggaccaagaagcagctcgccatggtgatgagatacggcgtaaatggagttggtaaaatattaaagaagatcaacaaggccatcgtctccaagaagaataaagacattgtgacagtggctaacgccgtgtttgttaagaatgcctctgaaattgaagtgccttttgttacaaggaacaaagatgtgttccagtgtgaggtccggaatgtgaactttgaggatccagcctctgcctgtgattccatcaatgcatgggttaaaaacgaaaccagggatatgattgacaatctgctgtccccagatcttattgatggtgtgctcaccagactggtcctcgtcaacgcagtgtatttcaagggtctgtggaaatcacggttccaacccgagaacacaaagaaacgcactttcgtggcagccgacgggaaatcctatcaagtgccaatgctggcccagctctccgtgttccggtgtgggtcgacaagtgcccccaatgatttatggtacaacttcattgaactgccctaccacggggaaagcatcagcatgctgattgcactgccgactgagagctccactccgctgtctgccatcatcccacacatcagcaccaagaccatagacagctggatgagcatcatggtccccaagagggtgcaggtgatcctgcccaagttcacagctgtagcacaaacagatttgaaggagccgctgaaagttcttggcattactgacatgtttgattcatcaaaggcaaattttgcaaaaataacaaggtcagaaaacctccatgtttctcatatcttgcaaaaagcaaaaattgaagtcagtgaagatggaaccaaagcttcagcagcaacaactgcaattctcattgcaccaccatcgcctccctggtttatagtagacagaccttttctgtttttcatccgacataatcctacaggtgctgtgttattcatggggcagataaacaaaccc (配列番号7)である。
【0193】
SERPINE2の相互作用ムテインのアミノ酸配列は、
MNWHLPLFLLASVTLPSICSHFNPLSLEELGSNTGIQVFNQIVKSRPHDNIVISPHGIASVLGMLQLGADGRTKKQLAMVMRYGVNGVGKILKKINKAIVSKKNKDIVTVANAVFVKNASEIEVPFVTRNKDVFQCEVRNVNFEDPASACDSINAWVKNETRDMIDNLLSPDLIDGVLTRLVLVNAVYFKGLWKSRFQPENTKKRTFVAADGKSYQVPMLAQLSVFRCGSTSAPNDLWYNFIELPYHGESISMLIALPTESSTPLSAIIPHISTKTIDSWMSIMVPKRVQVILPKFTAVAQTDLKEPLKVLGITDMFDSSKANFAKITRSENLHVSHILQKAKIEVSEDGTKASAATTAILIAPPSPPWFIVDRPFLFFIRHNPTGAVLFMGQINKP (配列番号8)である。
【0194】
例6.コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現に対するSERPINE2ムテインの効果
コントロールベクター構築物および野生型SERPINE2またはSERPINE2ムテインを発現する構築物を細胞にトランスフェクトし、細胞上清を採取した。
【0195】
SERPINE2およびムテインをコードするcDNA発現のためのCMVプロモーターを含むプラスミドにクローン化した。プラスミドと脂質試薬Fugene6との複合体を形成し、10%のFBSを添加したDMEM培地にまいたヒトHEK293T細胞にトランスフェクトし、37℃で5%のCOのもとでインキュベートした。40時間後、細胞をPBSで洗浄し、培地を5%のFBSを添加したDMEM培地で交換し、さらに48時間、37℃、5%のCOのもとでインキュベートした。発現されたタンパク質を含む細胞上清を、293T細胞から除去し、細胞に基づくアッセイにおけるNHLF細胞を治療するために使用した。
【0196】
正常ヒト肺線維芽細胞を、0.05ng/mlのTGF−βを有する細胞上清で48時間処理した。例1に示されるように、bDNAアッセイを行なった。結果を図2および3に示す。ハウスキーピングコントロールRNA、β−アクチンは、野生型SERPINE2またはSERPINE2ムテイン添加による上昇を示さなかった。しかしながら、コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンのレベルは野生型SERPINE2タンパク質の添加にともない増加した。SERPINE2のLRP結合領域の変異を有するSERPINE2ムテインは、野生型SERPINE2と判別不能だった。SERPINE2のプロテアーゼ相互作用領域の変異は効果を打ち消した。標的プロテアーゼに結合できるが、それらを不可逆的に阻害できない変異体は中間的効果を示した。これらの結果は、SERPINE2の標的プロテアーゼを阻害する能力は、高い濃度のSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞によるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の上昇に関与することを示している。
【0197】
例7.SERPINE2は、ヒト肺線維芽細胞においてコラーゲンタンパク質を誘導する
正常ヒト肺線維芽細胞は、37℃で一晩、150ulの繊維芽細胞増殖培地(FGM、Lonza)中で、96ウェルプレートに8000細胞/ウェルで播種した。150ulのFGM中の処理(0.05ng/mlのTGF−β、0.5ng/mlのTGF−βおよびrhSerpinE2用量曲線)を、翌日(0時間)、培地を吸引した後に添加した。25ug/mlアスコルビン酸を含む150ulのFGM中の処理を、24時間において、培地を吸引した後に添加した。72時間において、細胞をPBSで洗浄し、95%のエタノールを使用して固定した。その後、細胞を1%のBSA/PBSでブロッキングし、1次抗体として3ug/mlのマウス抗ヒトコラーゲン1抗体#AB6308 (Abcam)および2次抗体として1:5000のヤギ抗マウス cat# 115-035-071 (Jackson Labs)を用いて標識した。HRP−TMBを検出に使用し、吸光度を450nMで読みとった。結果を図4に示す。SERPINE2は、両方のTGF−β用量でNHLF細胞のコラーゲンタンパク質の発現を誘導する際に、強力な活性を有することが示された。
【0198】
例8.ヒト肺線維芽細胞におけるSERPINE2発現
NHLF細胞(Lonza)を96ウェルプレートに1ウェル当たり8000細胞で播種し、一晩血清枯渇状態とし(0.5%のBSA(Invitrogen)を添加したFBM(Lonza))、その後、新鮮な飢餓培地にて48時間TGF−β1(R&Dシステムズ)で処理した。RNAはRNeasy Plus Micro kit (Qiagen)を使用して抽出した。それぞれの治療条件の3つの独立した治療ウェルからの細胞ライセートをRNA単離のためにプールした。
【0199】
RNAは、QuantiTect Reverse Transcription kit (Qiagen)を使用して逆転写し、qRT−PCRは、QuantiTect SYBR Green PCR kit(Qiagen)を使用し、ヒトSERPINE2(Qiagen QT00008078)およびGusB(QT00046046)に特異的なプライマーにより、説明書に従ってABI7000機器にて行った。SERPINE2データはデルタ−デルタCT法(Applied Biosystems, Foster City, CA) を使用して、GusBハウスキーピング遺伝子に対して標準化し、未処理の細胞コントロールに対して標準化したmRNAとして表示した。結果を図5に示す。NHLF細胞のSERPINE2のmRNAレベルは、用量依存的にTGF−β処理で増大した。
【0200】
例9.マウスSERPINE2に対するポリクローナル抗体を使用した、肺線維芽細胞におけるマウスSERPINE2誘導型コラーゲン産生の阻害
正常ヒト肺線維芽細胞を96ウェル組織培養プレートに1ウェル当り8000細胞で播種し、一晩付着させた。細胞は、TGF−β(ポジティブコントロール)またはTGF−β+マウスSERPINE2の用量を増大させて刺激した。抗体処理のために、SERPINE2は、ポリクローナル抗マウスSERPINE2抗体またはアイソタイプコントロール抗体とともに、30分間室温でプレインキュベートし、その後細胞に添加した。24時間後、培地を吸引し、細胞は、25g/mlのL−アスコルビン酸の存在下、上記試薬とともにさらに24時間刺激した。刺激後、細胞をPBSで3回洗浄し、室温で10分間95%のエタノールにて固定し、PBSで再び洗浄し、室温で2時間1%のBSA−PBSでブロッキングした。その後、細胞を0.1%のtween−20を含むPBSで3回洗浄し、マウス抗ヒトコラーゲンI抗体(ブロッキング緩衝液中、Abcam Ab6308 1:2000)とともに2時間インキュベートした。プレートを前述のように洗浄し、2次抗体(抗マウスIgGHRP、1:5000、ブロッキング緩衝液中)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを前述のように洗浄し、TMB ONE溶液にて、暗所で20分間現像した。2N硫酸の添加によりアッセイを停止し、光学濃度(OD)を450nmで読みとった。結果を図6に示す。
【0201】
TGF−βによる肺線維芽細胞の処理は、製造されたコラーゲンの量の用量依存的な増大をもたらした。TGF−βを伴うマウスSERPINE2の添加は、TGF−β単独と比較して、コラーゲンタンパク質の著しい上昇をもたらした。図に示されるように、ポリクローナル抗マウスSERPINE2抗体によるマウスSERPINE2のプレインキュベーションは、用量依存的にコラーゲンIのSERPINE2誘導型増加を完全に打ち消し、一方で、アイソタイプコントロール抗体は効果を示さなかった。
【0202】
例10.ブレオマイシン治療マウスにおけるSERPINE2誘導
約6〜8週齢のC57BL/6のメスのマウス(ACE laboratories)を、麻酔(イソフルラン)をかける群、および0日目に40lの無菌リン酸緩衝生理食塩水(Gibco14190)を投与(I.T.)する群または0日目に40lの硫酸ブレオマイシン(Sigma B57705:0.9%無菌食塩水中1U/ml)を投与(I.T.)する群に分けた。
【0203】
マウスを7日目または14日目にi.p.ケタミン注射で安楽死させ、肺組織採取に使用した。動物に対して、心臓を通る潅流を行い、肺から血液を除去した。一旦潅流されると、マウス由来の肺葉を切除し、氷冷し、さらなる処理までファストプレップチューブ中に保持した。
【0204】
肺ライセートを、FastPrepマトリックスDチューブを用いて、Invitrogen Cat#FNN0021リシス緩衝液+プロテアーゼ阻害剤カクテルおよびホスファターゼ阻害剤カクテル1および2(Sigma)中で作製した。ライセートは、Pierce BCAアッセイを用いて定量し、Bioradローディングバッファー(Cat# 161−0791)+BMEを用いて95℃で5分間煮沸した。全2ugのタンパク質を4−12%のビス−トリスゲルのそれぞれのレーンにロードし、MOPS緩衝液中、200Vで50分間泳動させた。トランスファーはInvitrogen IBlotシステムを使用して行なった。0.1ug/mlのR&D AF2175により4℃で一晩標識することでブロットした。PBS/0.5% Tween20による3回の洗浄に続いて、ペルオキシダーゼ融合ウシ抗ヤギ(Jackson Cat#805−035−180)を1:10,000で、室温で1時間使用した。その後、PBS/0.5%のTween20とで6回ブロットを洗浄し、GE Biosciences ECLPlusを検出試薬として使用した。30秒、2分および4分の露出により膜を現像した。
【0205】
ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を平均ピクセル強度の定量するために使用した。特に、画像を反転させ、固定した次元の長方形の領域をそれぞれのバンド内に配置し、平均ピクセル強度を測定した。Raw API値はGraphPadプリズムを使用して、プロットし、統計的有意性をテューキーポスト試験により一次元配置分散分析を使用して決定した。結果を図7に示す。SERPINE2レベル(51KDバンド)は、食塩水処理と比較して、ble処理した肺ライセートにて著しく増大した。
【0206】
例11.ヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現に対するSERPINE2の効果の阻害
SERPINE2に結合し、それとトロンビンのような標的プロテアーゼとの相互作用を遮断するモノクローナル抗体を構築することができる(Wagner et al., Biochemistry 27: 2173-2176, 1988)。SERPINE2と標的プロテアーゼとの相互作用を遮断するこの抗体の能力は、精製された抗体および精製されたタンパク質によるインビトロ結合アッセイを使用して決定することができる。
【0207】
例1に記載されるアッセイにおいて、抗体は量を増大させて、固定量のSERPINE2とともにインキュベートすることができる。ヒト肺線維芽細胞によるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現レベルはbDNAアッセイを使用して決定することができる。抗体の量の増大は、ヒト肺線維芽細胞によるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現のレベルにおける減少をもたらし得る。
【0208】
例12.ブレオマイシンマウスモデルにおけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現に対するSERPINE2の効果の阻害
例11の抗体は、エアロゾルによって、量を増大させて、ブレオマイシン処理後の様々な時間、例えば12日目に開始して、肺に送達することができる。抗体処理後の様々な時間に、例えばブレオマイシン処理後15日目に、マウスの肺を採取して、食塩水を流して血液を除去し、mRNAを抽出し、コラーゲンおよびα−平滑筋アクチンの発現を評価した。抗体の量の増大は、ヒト肺線維芽細胞によるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現のレベルにおける減少を引き起こし得る。抗体の投与は、マウス肺における繊維症の症状を改善することができる。ヒトにおける肺線維症を治療するのに必要な抗体の送達の量およびタイミングは、これらの研究から決定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1および/またはα−平滑筋アクチンの発現のレベルを阻害するための方法であって、前記ヒト肺線維芽細胞へのSERPINE2のアンタゴニストの投与を含む方法。
【請求項2】
前記肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の減少の検出をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺線維芽細胞は、前記アンタゴニストへの曝露の前にTGF−βに曝露される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記肺線維芽細胞は、前記アンタゴニストへの曝露の前にIL−13に曝露される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
SERPINE2の前記アンタゴニストが抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体はモノクローナル抗体である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
SERPINE2の前記アンタゴニストがRNAi分子である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
SERPINE2の前記アンタゴニストがアンチセンス核酸分子である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
SERPINE2の前記アンタゴニストがペプチドである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
SERPINE2の前記アンタゴニストがSERPINE2の小分子阻害剤である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現のレベルが阻害される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コラーゲン1A1の前記レベルが阻害される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
α−平滑筋アクチンの発現のレベルが阻害される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
高いレベルのSERPINE2に曝露されたヒト肺線維芽細胞からの筋線維芽細胞の形成を阻害するための方法であって、前記ヒト肺線維芽細胞へのSERPINE2のアンタゴニストの投与を含む方法。
【請求項15】
前記肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の減少の検出をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記肺線維芽細胞は、前記アンタゴニストへの曝露の前にTGF−βに曝露される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記肺線維芽細胞は、前記アンタゴニストへの曝露の前にIL−13に曝露される請求項14に記載の方法。
【請求項18】
SERPINE2の前記アンタゴニストが抗体である請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体はモノクローナル抗体である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
SERPINE2の前記アンタゴニストがRNAi分子である請求項14に記載の方法。
【請求項21】
SERPINE2の前記アンタゴニストがアンチセンス核酸分子である請求項14に記載の方法。
【請求項22】
SERPINE2の前記アンタゴニストがペプチドである請求項14に記載の方法。
【請求項23】
SERPINE2の前記アンタゴニストがSERPINE2の小分子阻害剤である請求項14に記載の方法。
【請求項24】
ヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1生産のレベルを増大するための方法であって、細胞へSERPINE2を投与し、前記ヒト肺線維芽細胞におけるコラーゲン1A1およびα−平滑筋アクチンの発現の増大を検出することを含む方法。
【請求項25】
前記SERPINE2が発現ベクターにて投与される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記SERPINE2が精製されたタンパク質として投与される請求項24に記載の方法。
【請求項27】
コラーゲン発現の前記増大が、コラーゲン1A1のRNAのレベルの増大を測定することで検出される請求項24に記載の方法。
【請求項28】
α−平滑筋アクチンの発現の前記増大が、α−平滑筋アクチンのRNA産生のレベルの増大を測定することで検出される請求項24に記載の方法。
【請求項29】
医学的状態の治療のための医薬の製造のためのSERPINE2のアンタゴニストの使用であって、前記医学的状態は肺線維症である使用。
【請求項30】
医学的状態の治療のための医薬の製造のためのSERPINE2のアンタゴニストの使用であって、前記医学的状態は特発性肺線維症(IPF)である使用。
【請求項31】
医学的状態の治療のための医薬の製造のためのSERPINE2のアンタゴニストの使用であって、前記医学的状態は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である使用。
【請求項32】
SERPINE2の前記アンタゴニストが抗体である請求項29に記載の使用。
【請求項33】
前記抗体はモノクローナル抗体である請求項29に記載の使用。
【請求項34】
SERPINE2の前記アンタゴニストがRNAi分子である請求項29に記載の使用。
【請求項35】
SERPINE2の前記アンタゴニストがアンチセンス核酸分子である請求項29に記載の使用。
【請求項36】
SERPINE2の前記アンタゴニストがペプチドである請求項29に記載の使用。
【請求項37】
SERPINE2の前記アンタゴニストがSERPINE2の小分子阻害剤である請求項29に記載の使用。
【請求項38】
前記ヒト肺線維芽細胞が高いレベルのSERPIN2に曝露される請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−509941(P2012−509941A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538702(P2011−538702)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065991
【国際公開番号】WO2010/062995
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511128251)ファイブ・プライム・セラピューティクス,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FIVE PRIME THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】Two Corporate Drive, South San Francisco, CA 94080, the USA
【出願人】(511128262)セントコア・リサーチ・アンド・ディベロプメント,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CENTOCOR RESEARCH & DEVELOPMENT, INC.
【住所又は居所原語表記】145 King Of Prussia Road, Radnor, PA 19087, the USA
【Fターム(参考)】