説明

SIMカードのサスペンド制御装置、サスペンド制御方法および情報処理装置

【課題】SIMカードへのアクセスに対応してサスペンドおよびレジューム制御を効率的におこなえ、SIMカードへのアクセス全体の効率化と消費電力の低減化を達成する。
【解決手段】移動体端末101に取り付けられるSIMカード111をサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるSIMコントロール部110を備える。SIMコントロール部110は、SIMカード111に対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、データの送受信時にSIMカード111がサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、SIMカード111に対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、この判断結果に対応してSIMカード111をサスペンド状態にするかレジューム状態にするか、状態を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIMカードのサスペンド制御装置、サスペンド制御方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SIMカード(Subscriber Identity Module Card)は、携帯電話などの移動体端末などに装着され用いられている。移動体端末に設けられたSIMコントロール部は、SIMカードに対するデータ送受信の制御などをおこなう(たとえば、下記特許文献1参照。)。また、USBデバイスでは、デバイスの消費電力を低減化させるためにサスペンドの機能が実装されている(たとえば、下記特許文献2参照。)。近年、SIMカードには、IC(Inter−Chip)−USBのインターフェース(I/F)が用いられている。このIC−USBでは、SIMコントロール部と、SIMカードの間の物理I/Fに一般のUSB方式と同様のI/Fが用いられ、高速化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−317170号公報
【特許文献2】特開2008−84230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のSIMコントロール部は、SIMカードに対して、ファイルアクセスやSIMカードの脱着チェックなど、頻繁かつ高速なアクセスをおこなう必要があり、これらの制御は通常(レジューム)状態でおこなっている。
【0005】
一方、携帯電話などの移動体端末は、消費電力を抑えたいために、できるだけ低消費電力(サスペンド)状態にしておきたい要望がある。この際、考えておかねばならないのは、サスペンドとレジュームの相互間で状態変化させるのに一定の処理時間がかかる点である。この点を考慮すると、サスペンド制御をおこなう場合に、効率的なサスペンド制御が必要となる。たとえば、SIMカードへのアクセス状態に応じたサスペンド/レジューム制御がおこなわれずに、不必要にサスペンド状態が頻発したときには、その都度、サスペンド状態とレジューム状態との相互間での変更に時間がかかることになる。そして、状態変更にかかる時間分だけSIMカードへのアクセスがおこなえず、SIMカードに対するアクセス効率が全体的に低下する問題が生じる。
【0006】
上記従来の技術では、SIMカードのサスペンド/レジューム間の変更にかかる制御の効率化が考慮されておらず、これに伴いSIMカードに対するファイルアクセスも効率化できなかった。また、消費電力についても低減化できなかった。
【0007】
開示のSIMカードのサスペンド制御装置、サスペンド制御方法および情報処理装置は、上述した問題点を解消するものであり、SIMカードへのアクセスに対応してサスペンドおよびレジューム制御を効率的におこなえ、SIMカードへのアクセス全体の効率化と消費電力の低減化を達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示のSIMカードのサスペンド制御装置は、SIMカードが取り付けられる電子機器に設けられるサスペンド制御装置において、前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるコントロール部を備え、前記コントロール部は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、SIMカードへのアクセスに対応してサスペンドおよびレジューム制御を効率的におこなえ、SIMカードへのアクセス全体の効率化と消費電力の低減化をいずれも達成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態にかかるSIMカードのサスペンド制御装置を示すブロック図である。
【図2】SIMカードに対するアクセス状態別の状態遷移を示す説明図である。
【図3−1】状態遷移にかかる処理を示すフローチャートである(その1)。
【図3−2】状態遷移にかかる処理を示すフローチャートである(その2)。
【図3−3】状態遷移にかかる処理を示すフローチャートである(その3)。
【図3−4】状態遷移にかかる処理を示すフローチャートである(その4)。
【図4】一定時間T1の監視処理内容を示すシーケンス図である。
【図5】単位時間t1あたりのSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。
【図6】継続性のないSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。
【図7】単位時間t2あたりのSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
(移動体端末の全体構成)
図1は、実施の形態にかかるSIMカードのサスペンド制御装置を示すブロック図である。このSIMカードのサスペンド制御装置100は、ICカードであるSIMカード111が装着される携帯電話などの移動体端末101に設けられる。このSIMカード111は、不揮発性のメモリと、コントローラと、データ入出力用のインターフェース(I/F)等を有している。
【0013】
移動体端末101には、操作ボタン、表示部などの操作者に対するユーザインターフェース102と、外部の通信網を介して通信データを送受する通信制御部103などが設けられている。SIMコントロール部110は、データ送受信部110a、サスペンド制御部110b、レジューム制御部110cを有する。このSIMコントロール部110は、IC−USBのI/F112を介してSIMカード111に接続されている。
【0014】
データ送受信部110aは、SIMカード111との間でデータを送受信する。また、通信制御部103を介した外部装置との間の送受信データについても、データ送受信部110aが処理する。
【0015】
サスペンド制御部110bは、SIMカード111の電力消費を低減させる低消費電力状態(サスペンド状態)への変更とSIMカード111へのアクセスの機能制限を実行制御する。具体的には、SIMカード111へのクロック供給を停止するなどにより、SIMカード111の消費電流を低減化させる。一方、レジューム制御部110cは、SIMカード111の電力消費を通常状態(レジューム状態)とし、SIMカード111へのアクセスの機能制限がない通常状態として実行制御する。このサスペンド制御部110bは、移動体端末101が有する電源、特に、バッテリの消費を抑えるために設けられている。
【0016】
これらサスペンド制御部110bとレジューム制御部110cは、ユーザインターフェース102の操作状態や、通信制御部103でのデータの送受信の状態に応じて、SIMカード111をサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれかの状態に変化させる。
【0017】
具体的には、移動体端末101におけるSIMカード111へのアクセスの量(あるいは頻度)により、(1)SIMアクセス多発区間と、(2)SIMアクセス間欠区間のいずれかの状態とする。(1)SIMアクセス多発区間においては、SIMカード111内のファイルへのアクセス時間短縮を優先させる。(2)SIMアクセス間欠区間においては、IC−USBサスペンド状態を優先させる。このように、SIMカード111に対するアクセス量に適したサスペンド状態、あるいはレジューム状態に変更させる制御をおこなうことで、SIMカード111へのアクセス時間の短縮、および低消費電力(消費電流の効率化)をいずれも両立させるものである。
【0018】
図2は、SIMカードに対するアクセス状態別の状態遷移を示す説明図である。SIMコントロール部110における状態遷移を示している。以下、(1)SIMアクセス多発区間201と、(2)SIMアクセス間欠区間202の各状態と、これらの間の状態遷移について説明する。
【0019】
(1)SIMアクセス多発区間(SIM内のファイルへのアクセス時間短縮優先)201について
移動体端末101の起動時、および通信制御部103に対する発着信呼制御時などは、ユーザ操作や、これらの処理に必要な情報(自局の電話番号、言語情報、ID、セキュリティ処理の情報など)が格納されているSIMカード111へのアクセス頻度が非常に多く発生する。そのため、SIMカード111へのアクセス頻度が多く発生する状態においては、レジューム状態とし、アクセスをおこなう。これにより、無駄なサスペンド・レジュームの変更の処理をなくし、サスペンド・レジュームへの変更時間削減によりSIMカード111へのアクセス時間短縮を優先しアクセスの効率化および高速化を図る。
【0020】
遷移状態がこのSIMアクセス多発区間201にあるときには、以降、a)レジューム開始から一定時間T1(たとえば2分)の経過、あるいは、b)単位時間t1(たとえば2〜5秒)あたりのSIMアクセス頻度の低下が検出されると、(2)SIMアクセス間欠区間202へと遷移する。
【0021】
(2)SIMアクセス間欠区間(IC−USBサスペンド状態優先)202について
c)待ち受け時などユーザ非利用時におけるSIMカード111へのアクセスは、移動体端末101が自動で定期的にSIMカード111にアクセスする処理(SIMカード111の定期チェック)がおこなわれている。この定期チェックは、移動体端末101からSIMカード111が取り外されていないかを確認する脱着チェックである。この定期チェックは、SIMカード111に対するデータの読み書きとは異なり、継続したアクセスは発生せず、短時間(たとえば50msec程度)で終了するSIMアクセスとなる。そのため、このSIMカード111の定期チェックにかかる時間のアクセス時のみ、一時的にレジューム状態に変更させ、定期チェックの処理終了後、すぐにサスペンド状態に戻し、(2)SIMアクセス間欠区間202の状態を維持する。これにより、サスペンド状態を優先させ、SIMカード111の定期チェックの処理を最低限の電力消費で実現できるようになる。たとえば、レジューム状態からサスペンド状態への遷移(および逆の遷移)は50msec程度で処理できる。
【0022】
d)待ち受け状態におけるユーザ操作(たとえば、電話帳の読み込みなど)におけるSIMカード111へのアクセスや、通信制御部103による発着信制御開始時にSIMカード111へのアクセスが生じた場合には、SIMカード111へのアクセスが所定時間継続して発生する可能性がある。これらの場合には、単位時間t2(たとえば2〜5秒)のSIMカード111へのアクセス監視をおこない、単位時間t2内に再度アクセスが発生した場合、(1)のSIMアクセス多発区間201に遷移する。単位時間t2内でのアクセスが未発生の場合には、サスペンド状態を優先のままとする。単位時間t1は第1の単位時間であり、単位時間t2は第2の単位時間であり、並行して互いに異なる時間を計時可能である。
【0023】
図3−1〜図3−4は、状態遷移にかかる処理を示すフローチャートである。この遷移処理は、SIMコントロール部110のCPU(不図示)が実行する。まず、図3−1を用いて移動体端末101の電源投入時の処理について説明する。移動体端末101が電源投入(電源ON)されると(ステップS301)、図2に示した(1)SIMアクセス多発区間201の状態となり(ステップS302)、移動体端末101は通常(レジューム)状態となる(ステップS303:Resume)。
【0024】
移動体端末101のSIMコントロール部110は、電源ONにより一定時間T1を計時するタイマを開始させる(ステップS304)。SIMコントロール部110は、図示しない計時用のタイマを有している。この一定時間T1の間、レジューム制御部110cによりSIMカード111はレジューム状態が保持される。そして、電源ON時には、移動体端末101の起動のために、この一定時間T1の間、SIMカード111に対してデータの送受信が連続(頻繁)して発生し(ステップS305)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してデータ送受信をおこなう(ステップS306)。ステップS306の実行後、一定時間T1の間は、ステップS305に復帰して複数回のデータ送受信がおこなわれる。
【0025】
タイマによる電源投入から一定時間T1の計時が満了(タイムアウト)すると(ステップS307)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対し、レジューム状態からサスペンド状態に変更させるサスペンド処理をおこない(ステップS308)、SIMカード111をサスペンド状態にする(ステップS309:Suspend)。これにより、移動体端末101は、図2に示した(2)SIMアクセス間欠区間202となる(ステップS310)。この後、図3−2に示す処理に移行する。このときの状態遷移は、図2の(1)a)に該当する。
【0026】
次に、図3−2を用いて、主にSIMアクセス間欠区間202における処理について説明する。移動体端末101は、(2)SIMアクセス間欠区間202の状態のとき(ステップS311)、サスペンド状態である(ステップS312:Suspend)。このサスペンド状態に対しては、その後のSIMカード111へのアクセス状態の変化により複数の遷移状態がある。
【0027】
まず、はじめに示すのは、サスペンド状態のときに、継続性のあるSIMアクセスが発生したときであり、通信制御部103を介した呼制御開始などには(ステップS313)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してサスペンド状態からレジューム状態に変更させるレジューム処理をおこない(ステップS314)、SIMカード111をレジューム状態にする(ステップS315:Resume)。このときの状態遷移は、図2の(2)d)に該当する。そして、SIMコントロール部110は、呼制御開始に伴いSIMカード111との間のデータ送受信をおこない(ステップS316)、単位時間t2を計測するタイマを開始させる(ステップS317)。上記処理により、移動体端末101は、図2に示した(1)SIMアクセス多発区間201となる(ステップS318)。この後、図3−3に示す処理に移行する。
【0028】
一方、ステップS312を経たサスペンド状態のときに、継続性のないSIMアクセス(SIMカード111の定期チェックなど)が発生したときには(ステップS319)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してサスペンド状態をレジューム状態に一時的に変更させるレジューム処理をおこない(ステップS320)、SIMカード111を一時的にレジューム状態にする(ステップS321:Resume)。
【0029】
そして、SIMコントロール部110は、定期チェックに伴うSIMカード111との間のデータ送受信をおこなっただけで(ステップS322)、すぐにサスペンド状態に変更させるサスペンド処理をおこない(ステップS323)、SIMカード111をサスペンド状態にする(ステップS324:Suspend)。これにより、移動体端末101は、図2に示したSIMアクセス多発区間201の状態までには遷移せず、(2)SIMアクセス間欠区間202に戻る。このときの状態遷移は、図2の(2)c)に該当する。この後、ステップS311に戻りサスペンド状態以降の処理をおこなう。
【0030】
また、ステップS312を経たサスペンド状態のときに、継続性のあるSIMアクセスが発生したとき、たとえば、ユーザインターフェース102に対するユーザ操作などが発生したときには(ステップS325)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してレジューム処理をおこない(ステップS326)、SIMカード111をレジューム状態にする(ステップS327:Resume)。そして、SIMコントロール部110は、ユーザ操作に伴いSIMカード111との間のデータ送受信をおこない(ステップS328)、単位時間t2を計測するタイマを開始させる(ステップS329)。
【0031】
この後、SIMコントロール部110は、単位時間t1のタイマが起動中(計測中でタイムアウトしていない)かを判断する(ステップS329)。単位時間t2のタイマが停止していれば(ステップS329:No)、SIMコントロール部110は、再度、単位時間t2のタイマによる計測を開始させ(ステップS330)、サスペンド状態に変更させるサスペンド処理をおこない(ステップS331)、サスペンド状態にする(ステップS332:Suspend)。この後、ステップS311に戻りサスペンド状態以降の処理を継続しておこなう。
【0032】
一方、ステップS329で起動させた単位時間t2のタイマが起動中であれば(ステップS329:Yes)、SIMコントロール部110は、単位時間t1のタイマによる計測を開始させ(ステップS333)、(1)SIMアクセス多発区間201として(ステップS334)、図3−4に示す処理に移行する。この場合、SIMカード111はレジューム状態が保持される。
【0033】
最後に、ステップS3121を経たサスペンド状態のときに、単位時間t2のタイマによる計測がタイムアウトしたときには(ステップS335)、ステップS311に戻りサスペンド状態以降の処理を継続しておこなう。
【0034】
次に、図3−3を用いて、移動体端末101の(1)SIMアクセス多発区間における一定時間T1の監視処理について説明する。この処理は、図3−2のステップS318以降の処理である。このとき、SIMカード111はレジューム状態である(ステップS340:Resume)。このレジューム状態でSIM送受信が発生したときには(ステップS341)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してSIMデータを送受信し(ステップS342)、ステップS318に戻って以降の処理を継続する。
【0035】
また、ステップS340のレジューム状態のときに、一定時間T1を計時するタイマがタイムアウトしたときには(ステップS343)、SIMコントロール部110によりSIMカード111に対し、レジューム状態からサスペンド状態に変更させるサスペンド処理をおこない(ステップS344)、SIMカード111をサスペンド状態にする(ステップS345:Suspend)。これにより、移動体端末101は、図2に示した(2)SIMアクセス間欠区間202となる(ステップS346)。この後、図3−2のステップS311に示す処理に戻り、各処理を実行する。このときの状態遷移は、図2の(1)a)に該当する。
【0036】
次に、図3−4を用いて、移動体端末101の(1)SIMアクセス多発区間における単位時間t1の監視処理について説明する。この処理は、図3−2のステップS334以降の処理である。このとき、SIMカード111はレジューム状態である(ステップS351:Resume)。このレジューム状態でSIM送受信が発生したときには(ステップS352)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対してSIMデータを送受信する(ステップS353)。そして、単位時間t1のタイマによる計時を再度開始させ(ステップS354)、ステップS334に戻って以降の処理を継続する。
【0037】
また、ステップS351のレジューム状態のときに、単位時間t1を計時するタイマがタイムアウトしたときには(ステップS355)、SIMコントロール部110は、SIMカード111に対し、レジューム状態からサスペンド状態に変更させ、SIMカード111をサスペンド状態にする(ステップS356:Suspend)。これにより、移動体端末101は、図2に示した(2)SIMアクセス間欠区間202となる(ステップS357)。この後、図3−2のステップS311に示す処理に戻り、各処理を実行する。このときの状態遷移は、図2の(1)b)に該当する。すなわち、単位時間t1あたりのSIMアクセスの頻度低下によりサスペンド状態に変更する。
【0038】
次に、移動体端末101とSIMカード111との間の処理について説明する。図4は、電源ON後の一定時間T1の監視処理内容を示すシーケンス図である。この処理は、図2の(1)a)の遷移、および図3−1、および図3−3に示したフローチャートに対応している。
【0039】
移動体端末101の電源ON時には、(1)SIMアクセス多発区間201の状態(ステップS401)となり、このとき、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態(ステップS402)である。そして、移動体端末101(詳細にはSIMコントロール部110)は、SIMカード111に対し、レジューム要求をおこない(ステップS403)、SIMカード111は、移動体端末101に対しレジューム応答する(ステップS404)。これにより、SIMカード111は、消費電流が高いレジューム状態となる(ステップS405)。
【0040】
そして、移動体端末101は、ステップS403のレジューム要求時に一定時間T1のタイマを開始させ、一定時間T1を監視する。この一定時間T1の間、移動体端末101からSIMカード111に対しては、電源ON後のSIM読み込み/または書き込みの要求(ステップS406)と、SIMカード111から移動体端末101に対するSIM読み込み/書き込みの応答(ステップS407)が複数回、繰り返される。
【0041】
そして、移動体端末101は、レジューム要求後、一定時間T1が経過すると(ステップS408)、電源ONにかかる処理が終了していると判断して、SIMカード111に対しサスペンド要求し(ステップS409)、SIMカード111は、移動体端末101にサスペンド応答する(ステップS410)。これにより、移動体端末101は、(2)SIMアクセス間欠区間202に状態遷移する(ステップS411)。また、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態となる(ステップS412)。
【0042】
図5は、単位時間t1あたりのSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。この処理は、図2の(1)b)の遷移、および図3−4に示したフローチャートに対応している。移動体端末101が電源ONから少なくとも一定時間T1を経過した後に、(1)SIMアクセス多発区間201の状態(ステップS501)に遷移したとする。このとき、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態(ステップS502)である。そして、移動体端末101(詳細にはSIMコントロール部110)は、SIMカード111に対し、レジューム要求をおこない(ステップS503)、SIMカード111は、移動体端末101に対しレジューム応答する(ステップS504)。これにより、SIMカード111は、消費電流が高いレジューム状態となる(ステップS505)。
【0043】
そして、移動体端末101は、SIMカード111への読み込み/書き込み要求をおこない(ステップS506)、SIMカード111から読み込み/書き込み応答がある都度(ステップS507)、SIMコントロール部110は、単位時間t1内にアクセス発生と判断し(ステップS508)、単位時間t1のタイマを開始させ、単位時間t1を監視する。この単位時間t1の間、移動体端末101からSIMカード111に対してSIM読み込み/書き込みの要求(ステップS506)と、SIMカード111から移動体端末101に対するSIM読み込み/書き込みの応答(ステップS507)があった都度、単位時間t1のタイマの計時を開始させる。
【0044】
そして、移動体端末101は、単位時間t1が経過してもこの単位時間t1内にSIMカード111へのアクセスが未発生であると(ステップS509)、単位時間t1あたりのSIMアクセス頻度が低下したと判断し、SIMカード111に対しサスペンド要求し(ステップS510)、SIMカード111は、移動体端末101にサスペンド応答する(ステップS511)。これにより、移動体端末101は、(2)SIMアクセス間欠区間202に状態遷移する(ステップS512)。また、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態となる(ステップS513)。
【0045】
図6は、継続性のないSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。この処理は、図2の(2)c)の遷移、および図3−2のフローチャートのうち、ステップS319〜ステップS324の処理(図中点線範囲)に対応している。移動体端末101が(2)SIMアクセス間欠区間202の状態(ステップS601)にあるとき、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態にある(ステップS602)。
【0046】
そして、SIMカード111の定期チェックが発生すると(ステップS603)、移動体端末101(詳細にはSIMコントロール部110)は、SIMカード111に対し、レジューム要求をおこない(ステップS604)、SIMカード111は、移動体端末101に対しレジューム応答する(ステップS605)。これにより、SIMカード111は、消費電流が高いレジューム状態となる(ステップS606)。そして、移動体端末101は、SIMカード111に対してSTATUSコマンド等によるSIM定期チェック要求をおこない(ステップS607)、SIMカード111は、移動体端末101に対してSTATUSコマンド等によるSIM定期チェック応答をおこなう(ステップS608)。
【0047】
そして、移動体端末101は、一時的にSIMカード111をレジューム状態としてSIM定期チェック実行をおこなった。しかし、移動体端末101は、SIMカード111に対して長時間に渡る継続したアクセスは発生せず、継続性のないSIMアクセスであると判断している。このため、移動体端末101は、ステップS607,ステップS608によるSIM定期チェックの実行後、直ちに、SIMカード111に対するサスペンド処理を実施判断する(ステップS609)。
【0048】
そして、移動体端末101は、SIMカード111に対しサスペンド要求し(ステップS610)、SIMカード111は、移動体端末101にサスペンド応答する(ステップS611)。これにより、移動体端末101は、(2)SIMアクセス間欠区間202に状態遷移する(ステップS612)。また、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態となる(ステップS613)。
【0049】
上記の処理例では、移動体端末101のSIMコントロール部110は、SIMカード111の定期チェック後直ちにサスペンドを実施する構成としたが、これに限らず、アクセスをおこなったSIMカード111のファイル種別(関連ファイルの有無、継続性のあるデータ量の解析)や、特定のコマンドを用いて、サスペンドの実施時期を決定する構成とすることもできる。
【0050】
図7は、単位時間t2あたりのSIMアクセスの監視処理内容を示すシーケンス図である。この処理は、図3−2のフローチャート(ただし、ステップS319〜ステップS324の処理(図中点線範囲)を除く)の処理に対応している。移動体端末101が(2)SIMアクセス間欠区間202の状態(ステップS701)にあるとき、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態にある(ステップS702)。
【0051】
この後、一つ目の例として、SIMアクセスが単位時間t2内に未発生の場合について説明する。ユーザがユーザインターフェース102を操作することなどによるSIMカード111へのアクセスが発生すると(ステップS703)、移動体端末101(詳細にはSIMコントロール部110)は、SIMカード111に対し、レジューム要求をおこない(ステップS704)、SIMカード111は、移動体端末101に対しレジューム応答する(ステップS705)。これにより、SIMカード111は、消費電流が高いレジューム状態となる(ステップS706)。
【0052】
そして、移動体端末101は、SIMカード111への読み込み/書き込み要求をおこなう(ステップS707)。そして、移動体端末101は、SIMカード111からの読み込み/書き込み応答により(ステップS708)、単位時間t2のタイマを開始させ、単位時間t2を監視する(ステップS709)。この単位時間t2は、ユーザ操作等により、継続性のあるSIMファイルの処理(SIM読み込み/書き込みが発生する頻度)に対応した時間に設定されている。
【0053】
そして、図示のように、単位時間t2にSIMカード111へのアクセスが未発生のときには(ステップS710)、移動体端末101は、SIMカード111に対しサスペンド要求し(ステップS711)、SIMカード111は、移動体端末101にサスペンド応答し(ステップS712)、SIMカード111は、消費電流が低いサスペンド状態となる(ステップS713)。ステップS713までの処理は、図2の(2)c)の遷移に該当する。
【0054】
二つ目の例として、SIMアクセスが単位時間t2内に発生した場合について説明する。ユーザがユーザインターフェース102を操作することなどによるSIMカード111へのアクセスが発生すると(ステップS714)、移動体端末101は、SIMカード111に対し、レジューム要求をおこない(ステップS715)、SIMカード111は、移動体端末101に対しレジューム応答する(ステップS716)。これにより、SIMカード111は、消費電流が高いレジューム状態となる(ステップS717)。
【0055】
そして、移動体端末101は、SIMカード111への読み込み/書き込み要求をおこなう(ステップS718)。そして、移動体端末101は、SIMカード111から読み込み/書き込み応答がある都度(ステップS719)、単位時間t2のタイマを開始させ、単位時間t2を監視する(ステップS720)。そして、図示のように、単位時間t2にSIMカード111へのアクセスが再度発生したとする(ステップS721)。これにより、移動体端末101は、SIMカード111への読み込み/書き込み要求をおこない(ステップS722)、SIMカード111は読み込み/書き込み応答する(ステップS723)。
【0056】
移動体端末101は、SIMカード111からの読み込み/書き込み応答(ステップS723)があった都度、タイマの単位時間t2の計時を開始する。そして、移動体端末101は、(1)SIMアクセス多発区間201の状態(ステップS724)に遷移する。ステップS715〜ステップS725までの処理は、図2の(2)d)の遷移に該当する。
【0057】
以上説明したように、上記の実施の形態によれば、サスペンド状態と、レジューム状態との間の変更の制御について、移動体端末のSIMカードのアクセス量に応じて動的に制御している。これにより、SIMカードに対するデータ送受信にかかる全体時間の効率化と、消費電力の効率化をいずれも両立し達成できるようになる。
【0058】
また、上記の実施の形態によれば、移動体端末が自発的におこなうSIMカードの定期チェックなどは、このSIMカードの定期チェックの間だけ一時的にサスペンド状態からレジューム状態とし、定期チェックの完了後にはすぐにサスペンド状態に復帰するよう変更させている。これにより、移動体端末の動作中の全期間において装置が自発的、かつ1回の処理が短時間で多数回生じるSIMカードへのアクセスを効率化でき、無駄に消費電流を消費せず、消費電力を抑えることができるようになる。これにより、移動体端末のバッテリの消費を抑え、長時間の動作を可能にする。
【0059】
また、上記の実施の形態では、サスペンド制御装置が移動体端末に設けられ、この移動体端末にSIMカードが装着される例を説明したが、上記のサスペンド制御装置は、携帯電話等の移動体端末に限らず、一般の電子機器や情報処理装置であってもよい。また、SIMカードについても、電子機器や情報処理装置に装着されるICカードであって、電子機器や情報処理装置がICカードに対する脱着チェックやデータの送受信を頻繁におこない、サスペンド制御する構成であれば、上記同様に適用できる。
【0060】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0061】
(付記1)SIMカードが取り付けられる電子機器に設けられるSIMカードのサスペンド制御装置において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるコントロール部を備え、
前記コントロール部は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とするSIMカードのサスペンド制御装置。
【0062】
(付記2)前記コントロール部は、
前記SIMカードに対するアクセスが多く発生したときには、前記SIMカードに対するアクセスを優先することを特徴とする付記1に記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0063】
(付記3)前記コントロール部は、
前記SIMカードに対するアクセスが少ないときには、前記SIMカードに対するサスペンド状態への変更を優先することを特徴とする付記1または2に記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0064】
(付記4)前記コントロール部は、
前記電子機器の電源投入時には、前記SIMカードをレジューム状態にするとともに、当該電子機器の起動に伴い前記SIMカードに対して連続するアクセスの所定時間をタイマ計時し、当該タイマ計時中は前記SIMカードに対するアクセスを優先させ、前記タイマの計時終了により前記SIMカードに対するサスペンド状態への変更を優先することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0065】
(付記5)前記コントロール部は、
前記SIMカードがレジューム状態のときに、前記SIMカードに対するアクセスの頻度を判断し、当該アクセス頻度が低下した場合に、前記SIMカードをサスペンド状態に変更することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0066】
(付記6)前記コントロール部は、
前記SIMカードがサスペンド状態のときに、当該SIMカードに対するアクセスが当該SIMカードの脱着チェックが生じたときには、当該1回の脱着チェックにかかるアクセスの期間だけ一時的に前記SIMカードをレジューム状態とし、脱着チェックの終了毎に前記SIMカードをサスペンド状態に戻すことを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0067】
(付記7)前記コントロール部は、
前記SIMカードがサスペンド状態のときに、当該SIMカードに対するアクセスの頻度を判断し、当該アクセス頻度が高い場合に、前記SIMカードをレジューム状態に変更することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【0068】
(付記8)SIMカードが取り付けられる電子機器のサスペンド制御方法において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させる状態変更工程を含み、
前記状態変更工程は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とするSIMカードのサスペンド制御方法。
【0069】
(付記9)SIMカードが取り付けられ、当該SIMカードのサスペンド制御をおこなう情報処理装置において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるコントロール部を備え、
前記コントロール部は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0070】
100 サスペンド制御装置
101 移動体端末
102 ユーザインターフェース
103 通信制御部
110 SIMコントロール部
110a データ送受信部
110b サスペンド制御部
110c レジューム制御部
111 SIMカード
201 アクセス多発区間
202 アクセス間欠区間
T1 一定時間
t1 単位時間
t2 単位時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIMカードが取り付けられる電子機器に設けられるSIMカードのサスペンド制御装置において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるコントロール部を備え、
前記コントロール部は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とするSIMカードのサスペンド制御装置。
【請求項2】
前記コントロール部は、
前記SIMカードに対するアクセスが多く発生したときには、前記SIMカードに対するアクセスを優先することを特徴とする請求項1に記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【請求項3】
前記コントロール部は、
前記SIMカードに対するアクセスが少ないときには、前記SIMカードに対するサスペンド状態への変更を優先することを特徴とする請求項1または2に記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【請求項4】
前記コントロール部は、
前記電子機器の電源投入時には、前記SIMカードをレジューム状態にするとともに、当該電子機器の起動に伴い前記SIMカードに対して連続するアクセスの所定時間をタイマ計時し、当該タイマ計時中は前記SIMカードに対するアクセスを優先させ、前記タイマの計時終了により前記SIMカードに対するサスペンド状態への変更を優先することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【請求項5】
前記コントロール部は、
前記SIMカードがレジューム状態のときに、前記SIMカードに対するアクセスの頻度を判断し、当該アクセス頻度が低下した場合に、前記SIMカードをサスペンド状態に変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のSIMカードのサスペンド制御装置。
【請求項6】
SIMカードが取り付けられる電子機器のSIMカードのサスペンド制御方法において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させる状態変更工程を含み、
前記状態変更工程は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とするSIMカードのサスペンド制御方法。
【請求項7】
SIMカードが取り付けられ、当該SIMカードのサスペンド制御をおこなう情報処理装置において、
前記SIMカードをサスペンド状態あるいはレジューム状態に変更させるコントロール部を備え、
前記コントロール部は、前記SIMカードに対して発生したデータ送受信のアクセスの状態と、当該データの送受信時に前記SIMカードがサスペンド状態あるいはレジューム状態のいずれの状態であるかに基づいて、前記SIMカードに対するアクセス、あるいはサスペンド状態への変更のいずれを優先させるかを判断し、当該判断結果に対応して前記SIMカードの状態を決定することを特徴とする情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−80375(P2012−80375A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224418(P2010−224418)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】