説明

SMタンパク質ベースの分泌操作

本発明は細胞培養技術の分野に関する。Munc18c、Sly1又はSMタンパク質ファミリーの他のメンバーの異種発現により、真核細胞においてタンパク質の分泌輸送を増強するための新規方法を記載する。この方法は、組換えタンパク質産物の発現及び製造のための増強した産生能力を伴う最適化された宿主細胞系の生成のために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は細胞培養技術の分野に関する。タンパク質を産生するための方法ならびに生物製剤の製造のための新規の発現ベクター及び宿主細胞を生成するための方法に関する。本発明は、さらに、医薬組成物及び処置の方法に関する。
【0002】
背景
ヒト治療における使用のための生物製剤の市場は、高速で成長し続けており、270の新たな生物製剤が臨床試験において評価されており、推定売上高は2003年に300億である。生物製剤は、種々の宿主細胞系(細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び哺乳動物細胞(ヒト由来細胞株を含む)を含む)から産生できる。現在、ますます多くの生物製剤が、ヒトタンパク質を正確にプロセシングし修飾するそれらの能力のため、真核生物細胞から産生される。これらの細胞からの生物製剤の成功した高収率の産生は、従って、極めて重要であり、プロセスにおいて使用する組換えモノクローナル細胞株の特徴に高度に依存する。従って、改善した特性を伴う新たな宿主細胞系を生成し、高収率プロセスのための基礎としての高い特異的な産生性を伴う産生細胞株を培養するための方法を確立する緊急の必要性が存在する。
【0003】
任意の生物製剤の産生プロセスでの収率は、産生細胞が、プロセス条件下で成長された場合に、時間当たりで分泌するタンパク質産物の量に大きく依存する。多くの複雑な生物化学的な細胞内プロセスが、真核細胞から治療用タンパク質を合成及び分泌するために必要である。全てのこれらの工程、例えば転写、RNA輸送、翻訳、翻訳後修飾、及びタンパク質輸送は、野生型宿主細胞株において厳重に調節されており、この宿主に由来する任意の産生細胞株の特異的な産生性に影響を及ぼしうる。
【0004】
過去に、大半の操作アプローチでは、プロセス、例えば転写及び翻訳などを促し、タンパク質産生におけるこれらの工程の収率を増加させる分子ネットワークに焦点が合わされてきた。しかし、任意の複数工程の産生プロセスについて、プロセス鎖の初期工程中にボトルネックを広げることによって、恐らくは、さらなる下流、特に分泌経路中の翻訳後にボトルネックが作られる。特定の閾値まで、産生細胞の特異的な産生性が、産物遺伝子の転写レベルと直線的に相関することが報告されている。
【0005】
mRNAレベルでの産物発現のさらなる増強は、しかし、タンパク質合成、折り畳み又は輸送機構の過負荷を導き、タンパク質産物の細胞内蓄積をもたらしうる。実際に、これは現在の製造プロセスにおいて頻繁に観察できる。従って、産生細胞株の分泌輸送機構は、新規の宿主細胞操作戦略のための興味深い標的である。
【0006】
分泌された治療用タンパク質の細胞内輸送の操作に関する最初の試験は、分子シャペロン様結合タンパク質BiP/GRP78及びタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の過剰発現の周辺に集中した。シャペロンは、小胞体(ER)内に宿る細胞タンパク質であり、新たに合成されたタンパク質の折り畳み及び組み立てを補助する。しかし、予測されうることと対照的に、哺乳動物細胞中でのBiP過剰発現は、それが関連するタンパク質の分泌を増加させるよりむしろ低下させることが示されており、CHO細胞中でのPDIの過剰発現は、様々なタンパク質産物を用いて矛盾する結果を生んだ。これらの驚くべき知見の可能な説明(細胞のタンパク質折り畳み能力の増加によって、さらに下流に産生ボトルネックが作られる)は、CHO細胞株におけるIFNガンマ産生でのERからシス−ゴルジ輸送問題を記載する報告により裏付けられる(Hooker et al., 1999)。
【0007】
要約すると、組換えタンパク質産生のための宿主細胞の分泌能力を改善するための必要性が存在する。これは、翻訳後のボトルネック及びタンパク質産物の細胞内蓄積を妨げるために、新規の転写増強技術との組み合わせで、高力価プロセスにおいてさらにより重要になりうる。しかし、現在、分泌輸送機構の標的操作への方法において2つの主要なハードル:基礎にある調節機構に関する依然として限定された知識、及び分泌プロセス中のさらに下流の工程へのボトルネックのシフトを妨げるための課題、が存在する。
【0008】
発明の概要
本発明では、Sec1/Munc18(SM)タンパク質ファミリーのメンバー、特に2つのメンバー、即ちMunc−18c及びSly1の、分泌タンパク質の細胞表面への輸送におけるいくつかの続く工程を一体化して促進させ、分泌小胞と細胞膜との融合を調節することによる全エキソサイトーシスを刺激する際の新規の驚くべき役割を記載する。本発明は、また、真核細胞から分泌経路を介して輸送されるタンパク質の産生を効率的に改善させるための方法を提供する。さらに、疾患及び炎症状態の処置のための分泌経路の標的操作の使用を記載する。
【0009】
タンパク質分泌は複雑な複数工程の機構である:細胞外空間又は細胞膜外へ輸送される運命にあるタンパク質は、最初に、翻訳と同時に、小胞体中へ輸入される。そこから、それらは脂質小胞中に充てんされ、ゴルジ装置へ、そして最後にトランスゴルジネットワークから細胞膜へ輸送され、そこで培養液中に放出される。
【0010】
各輸送工程で、小胞及び標的膜の両方からのSNARE[可溶性NSF(N−エチルマレイミド感受性因子)付着受容体]タンパク質が、融合が起こるために必要とされるコア機構を構成するトランスSNARE複合体を形成する。種々の状況における生理学的な必要条件を満たすために、SNARE媒介性の融合機構は、細胞内及び細胞外の両方の供給源からの刺激が適切に組込まれるように、空間的及び時間的に調節可能でなければならない。
【0011】
Sec1/Munc18(SM)タンパク質は、SNAREタンパク質の調節へのカギを握ると思われる。2つのSMタンパク質、Sly1及びMunc18(a、b及びc、3つのアイソフォームを含む)が、分泌経路(ER−ゴルジ−細胞膜)に沿った小胞融合に関与する。Sly1が小胞体(ER)由来COPII小胞のゴルジ装置への融合に、Munc18が分泌小胞の細胞膜(PM)への融合に必要とされる。
【0012】
本発明において、本発明者らは分泌経路に及ぼすSly1及びMunc18cの生理学的影響を分析し、2つのSMタンパク質が全エキソサイトーシスを一致して刺激することを初めて見出した。Munc18c及びSly1による活性化の役割の分子機構も保存されている可能性が高い。ここでの知見に基づき、本発明者らは、哺乳動物細胞において分泌増強をもたらすSMタンパク質ベースの分泌操作の先駆者となった。SMタンパク質ベースの分泌操作は、代謝操作の新規戦略を表わし、工業におけるタンパク質医薬品の製造のための新たなプラットフォームを提供する。
【0013】
本発明において記載する方法は、いくつかの点で有利である:第1に、本発明者らは、Munc−18c、Sly−1又は両方のタンパク質の一緒での異種発現が、宿主細胞の分泌能力を増加させることにより組換えタンパク質産生を増強するための戦略であることを実証する。
【0014】
工業的用途に関して、試験によって、分泌経路中で翻訳後にその作用を発揮するトランスジーンの導入を通じた遺伝子操作によりこのボトルネックを迂回するための既存の展望が開かれた。これは特に関連するように見える。なぜなら、最新世代の高度に効率的な発現ベクターの使用は、産生細胞株内でのタンパク質の折り畳み、修飾及び輸送機構の過負荷を導き、そのためその理論上の最高生産性が低下しうるからである。SMファミリー、例えばMunc18及び/又はSly1などの分泌増強タンパク質の異種導入によって、この限界を克服できる。
【0015】
第2に、SMタンパク質は進化的に酵母からヒトまで保存されている:酵母では、4つのSMタンパク質(Sec1p、Sly1p、Vps33p及びVps45p)、ショウジョウバエでは3つ(ROP、Sly1及びVps33/カーネーション)、寄生虫では6つ(Unc−18ならびにゲノム配列データベースに従った5つの他の遺伝子)ならびに脊椎動物では7つのタンパク質(Munc18−1、−2及び−3、VPS45、VPS33−A及び−BならびにSly1)が存在する。種にわたる高度の保存性の観点から、SMタンパク質を使用し、酵母から、寄生虫及び昆虫細胞を越えて、哺乳動物系までの全ての真核生物の宿主細胞種においてタンパク質の分泌及び細胞表面発現をモジュレートできる可能性が非常に高いと思われる。
【0016】
第3に、SMタンパク質ファミリーの全てのメンバーが、配列全体にわたり高度の配列類似性を示し、それらが同様の全構造を呈することを示唆する。さらに、機能喪失型の突然変異が、4つの種における9つのSM遺伝子について記載されており、全てが小胞輸送及び融合の重度障害を導き、SMタンパク質が小胞輸送及び分泌のプロセスにおいて同様の中心的な役割を果たすはずであることを示す。本発明者らは、従って、本発明に記載する目的のためのMunc18及び/又はSly1の適用性を、SMタンパク質ファミリーの任意の他のメンバーに等しく移すことができることを主張する。
【0017】
第4に、SNARE媒介性の小胞融合機構をモジュレートすることにより、SMタンパク質ファミリーのメンバーが、ERからゴルジ、ゴルジから細胞膜への小胞輸送の全ての様々な工程及び最終のエキソサイトーシス融合に関与する。このように、分泌輸送鎖の続く工程に関与する複数のSMタンパク質の異種発現は、膜貫通タンパク質の全エキソサイトーシス又は細胞表面発現に対する相加効果又はさらには相乗効果を生む潜在力を有する。さらに、転写因子XBP−1の異種同時発現によるタンパク質輸送の開始点としてのERの同時操作によって、さらに、この分泌増強効果が増加する。
【0018】
第5の利点として、SMタンパク質は、また、分泌経路のまさに最後の工程、即ち、細胞膜への小胞輸送に影響を及ぼし、そしてそれにより、さらに下流にボトルネックを作るリスクなしにタンパク質分泌を促進する。
【0019】
まとめると、ERからゴルジへ、及び、ゴルジ装置から細胞膜への小胞媒介性のタンパク質輸送の全ての工程におけるSMタンパク質の関与によって、Munc18c、Sly1及び他の全てのSMファミリータンパク質が、真核細胞の分泌能力を増強することを目指した(複数の)遺伝子操作アプローチのための非常に魅力的で有望な標的となる。
【0020】
本発明に記載される小胞媒介性のタンパク質輸送の標的操作を、広範な用途のために使用できる。特に、2つの基本的アプローチ:
(i)細胞の分泌輸送能力を増加させるためのSMタンパク質の過剰発現及び/又は活性増強、又は
(ii)癌細胞の増殖及び/又は浸潤を低下させるための遺伝子治療の手段としてのSMタンパク質の活性及び/又は発現の低下
を識別できる。
【0021】
SMタンパク質の過剰発現の適用性:
記載した発明には、細胞の全タンパク質分泌能力を、SMファミリーのタンパク質の過剰発現により改善させることによる、異種タンパク質の産生のための改善された真核生物の宿主細胞を生成するための方法が記載されている。
【0022】
これによって、真核細胞に基づく産生プロセスにおいてタンパク質の収率を増加させることが可能になる。それにより、そのようなプロセスでの商品のコストが低下し、同時に、治療用タンパク質の研究試験、診断、臨床試験又は市場供給のために必要とされる材料を生成するために産生される必要があるバッチ数が低下する。本発明は、さらに、薬物開発をスピードアップさせる。なぜなら、しばしば、前臨床試験のための十分量の材料の生成が、時系列に関する決定的なワークパッケージであるからである。
【0023】
本発明を使用し、診断目的、研究目的(標的同定、リード同定、リード最適化)、又は市場もしくは臨床開発のいずれかにおける治療用タンパク質の製造のいずれかのための1つ又はいくつかの特定タンパク質の産生のために使用される全ての真核細胞のタンパク質産生能力を増加できる。
【0024】
本願に示す通り、SMタンパク質の異種発現は、全てのクラスのタンパク質(分泌酵素、成長因子及び抗体を含む)の産生増加を導く。膜貫通タンパク質は、SMタンパク質及びSNAREの相互作用により調節される同じ小胞媒介性の輸送経路を共用するため、この操作アプローチは、膜貫通タンパク質の輸送を改善させ、細胞表面上でのそれらの存在量を増強するために等しく適用可能である。
【0025】
従って、本明細書に記載の方法は、また、細胞表面受容体の機能を特徴付けることを目指した学術的及び工業的な研究目的のために使用できる。例えば、表面タンパク質の産生ならびに続く精製、結晶化及び/又は分析のために使用することができる。さらに、記載の方法により生成される膜貫通タンパク質又はこれらのタンパク質を発現する細胞を、スクリーニングアッセイ、例えば、物質のスクリーニング、オーファン受容体のリガンドの同定、又はリード最適化中での有効性改善の探求のために使用することができる。これは、新たなヒト薬物療法の開発のために決定的に重要である。なぜなら、細胞表面受容体は主なクラスの薬物標的であるからである。
【0026】
さらに、本明細書に記載の方法は、細胞表面受容体と関連する細胞内シグナル伝達複合体の試験、又は、同じもしくは別の細胞上での可溶性成長因子とそれらの対応する受容体との相互作用により部分的に媒介される細胞間コミュニケーションの分析のために有利でありうる。
【0027】
SMタンパク質の発現及び/又は活性を減少/阻害する適用性:
本発明において、本発明者らは、SM発現の低下が、可溶性の細胞外タンパク質(Munc18c及びSly1について示す)の分泌低下を導くとの証拠を提供する。これによって、SMタンパク質は治療操作のための魅力的な標的となる。
【0028】
正常な健康細胞から癌細胞への変換における顕著な特徴の1つは、外因性成長因子の存在からの非依存性の獲得である。正常細胞とは対照的に、腫瘍細胞は、それらの生存及び増殖のために必要な全ての成長因子をそれ自体により産生することができる。このオートクライン機構に加えて、癌細胞は、しばしば、それらの表面上に成長因子受容体の上方調節された発現を示し、それは周囲組織中の細胞から分泌されるパラクライン作用性の成長因子及び生存因子に対する応答性の増加を導く。腫瘍細胞においてSly−1及びMunc18などのSMタンパク質を標的にすることにより、例えば、shRNA、siRNA又はアンチセンスRNAアプローチを使用することにより、オートクラインならびにパラクラインの成長刺激機構及び/又は生存機構を2つの方法:(i)成長因子の輸送及び分泌を低下させることによる、及び(ii)腫瘍細胞上の対応する成長因子受容体の量を減少させることによる、で破壊することが可能でありうる。それにより、両方、成長刺激シグナルの量、及び、これらのシグナルを認知して、応答する癌細胞の能力が低下しうる。癌細胞中でのSMタンパク質の発現又は活性の阻害は、従って、癌細胞の増殖及び生存を妨げるための強力なツールを表わすはずである。
【0029】
SMタンパク質は、さらに、腫瘍の浸潤及び転移を抑制するための強力な治療標的であると思われる。大半の型のヒト癌での後期中に、原発性腫瘍は先駆細胞を生み出し、それらは出て行き、隣接組織に浸潤し、遠隔部位まで移り、そこで新たなコロニーを作ることに成功しうる(転移として公知である)。
【0030】
組織浸潤の必要条件として、癌細胞は、それらが周囲の健康組織を通じて移動し、基底膜を越えて、血流に入り、最後に目的の組織に浸潤できるようにする全セットのプロテアーゼを発現する。これらのプロテアーゼの一部は、膜結合タンパク質、例えばMT−MMP及びADAMとして発現される。マトリクス再構築、成長因子の排出、及び腫瘍浸潤におけるそれらの決定的な役割のため、プロテアーゼ自体が癌療法のための薬物標的として考察される。本発明者らは、腫瘍細胞におけるSMタンパク質の発現及び/又は活性の阻害によって、標的細胞の表面上で膜結合プロテアーゼの量が低下することを主張する。これは、腫瘍細胞の浸潤能力ならびに成長因子の排出のためのその能力を減少又はさらに障害して、腫瘍の浸潤及び転移能力の低下をもたらすはずである。このように、SMファミリーのタンパク質を標的とすることによって、後期の腫瘍形成、特に良性/充実性結節から進行性、転移性腫瘍への変換を妨げる新規方法が提供される。
【0031】
治療的用途のために、このように、SMタンパク質の活性及び/又は発現を低下及び/又は阻害することが目標である。これは、SMタンパク質の機能を阻害することにより疾患を処置するためのヒト治療薬として使用されるヌクレオチド組成物(それにより薬物はshRNA、RNAi、siRNAで構成される)又はそのRNAの原動力となる配列への結合を通じてSMタンパク質を特異的に阻害するアンチセンスRNAのいずれかにより達成できる。SMタンパク質の活性/発現の低下/阻害は、また、それぞれのSMタンパク質遺伝子のプロモーターに結合して、発現停止させるヌクレオチドを含む薬物物質により達成できる。
【0032】
さらに、薬物物質又は産物は、SMタンパク質の発現又は活性を阻害する新たな化学物質又はペプチド又はタンパク質で構成されうる。タンパク質が活性な医薬的化合物である場合において、それは(i)SMタンパク質のプロモーターに結合して、それによりその発現を阻害するタンパク質、(ii)SMタンパク質又はその相互作用パートナー(例、シンタキシン又はSNARE複合体内のタンパク質)に結合して、それによりSMタンパク質とその結合パートナーとの機能的な相互作用を邪魔するタンパク質、(iii)SMタンパク質と同様であるが、しかし、その機能を満たさず、「ドミナントネガティブ」SMタンパク質変異体を意味するタンパク質、又は(iv)SMタンパク質及びその結合パートナーの両方のためのスキャフォールドとして作用して、タンパク質の不可逆的な結合及び安定で非機能的なタンパク質複合体の形成をもたらすタンパク質でありうる。
【0033】
本発明に従い、本発明の化合物を使用する新規方法が提供される。従って、本発明の化合物を使用して、癌又は他の異常増殖疾患を処置してよい。癌は2つの方法:癌が起因する組織の型(組織型)による、及び、原発部位又は癌が最初に発生した身体における位置による、で分類される。癌が発生する最も共通の部位は、皮膚、肺、女性の乳房、前立腺、結腸及び直腸、リンパ系、頚部及び子宮を含む。
【0034】
化合物は、このように、種々な癌(限定はされないが、以下:
AIDS関連癌、例えばカポジ肉腫など;骨関連癌、例えばユーイング肉腫ファミリー腫瘍及び骨肉腫など;脳関連癌、例えば成人脳腫瘍、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児上衣腫、小児髄芽腫、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児視覚路、及び視床下部神経膠腫ならびに他の小児脳腫瘍など;乳癌;消化器/胃腸関連癌、例えば肛門癌、肝外胆管癌、胃腸カルチノイド腫瘍、大腸癌、食道癌、胆嚢癌、成人原発性肝臓癌、小児肝臓癌、膵癌、直腸癌、小腸癌、及び胃(胃)癌など;内分泌関連癌、例えば副腎皮質性癌、胃腸カルチノイド腫瘍、島細胞癌(膵内分泌部)、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、及び甲状腺癌など;眼関連癌、例えば眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫など;泌尿生殖器関連癌、例えば膀胱癌、腎臓(腎細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、移行細胞腎盂癌及び尿管癌、精巣癌、尿道癌、ウィルムス腫瘍、ならびに他の小児腎臓腫瘍など;生殖細胞関連癌、例えば小児期頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍、及び精巣癌など;婦人科関連癌、例えば子宮頚癌、子宮内膜癌、妊娠性トロホブラスト腫瘍、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞性腫瘍、卵巣の低悪性度の潜在的腫瘍、子宮肉腫、腟癌、及び外陰癌など;頭頚部関連癌、例えば下咽頭癌、喉頭癌、口唇癌及び口腔癌、原発不明癌を伴う転移性扁平上皮頸部癌、鼻咽腔癌、中咽頭癌、副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌及び唾液腺癌など;血液学的/血液関連癌、例えば白血病、例えば成人急性リンパ芽球白血病、小児急性リンパ芽球白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及びヘアリーセル白血病など;ならびにリンパ腫、例えばAIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児ホジキンリンパ腫、妊娠中のホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群、皮膚T細胞リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症ならびに他の血液学的/血液関連癌、例えば慢性骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、及び骨髄異形成/骨髄増殖性疾患など;肺関連癌、例えば非小細胞肺癌及び小細胞肺癌、筋骨格関連癌、例えばユーイング家族性腫瘍、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、小児横紋筋肉腫、成人軟部組織肉腫、小児軟部組織肉腫、及び子宮肉腫など;神経系関連癌、例えば成人脳腫瘍、小児脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部の神経膠腫ならびに他の脳腫瘍、例えば神経芽細胞腫、下垂体腫瘍、及び原発性中枢神経系リンパ腫;呼吸器/胸部関連癌、例えば非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、胸腺腫及び胸腺癌;皮膚関連癌、例えば皮膚T細胞リンパ腫、カポジ肉腫、黒色腫、メルケル細胞癌及び皮膚癌
などを含む)の処置において有用である。
【0035】
これらの障害はヒトにおいて十分に特性付けされてきたが、しかし、他の哺乳動物においても同様の病因を伴い存在し、本発明の医薬組成物により処置できる。
【0036】
治療的使用のために、化合物は、治療的有効量で、任意の従来の投与形態で、任意の従来の様式で投与してよい。投与経路は、限定はされないが、静脈内、筋肉内、皮下、滑液嚢内、注入により、舌下、経皮、経口、局所又は吸入により、錠剤、カプセル、カプレット、液剤、溶液、懸濁剤、乳濁液、ロゼンジ、シロップ、再構成粉剤、顆粒、座薬及び経皮パッチを含む。そのような投与形態を調製するための方法は公知である(例えば、H. C. Ansel and N. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)を参照のこと)。治療的有効量は、当業者により、体重、代謝及び苦痛の重度などの因子に基づき決定することができる。好ましくは、活性化合物は、毎日、体重1キログラム当たり約1mg〜約500mgで投与される。より好ましくは、活性化合物は、毎日、体重1キログラム当たり約1mg〜約100mgで投与される。
【0037】
化合物は、単独で、又は、アジュバント(インヒビターの安定性を増強させ、特定の実施態様においてそれらを含む医薬組成物の投与を促し、溶解又は分散の増加を提供し、阻害活性を増加させ、アジュバント治療を提供するなど)と組み合わせて投与してよい。有利に、そのような組み合わせによって活性成分のより低い投与量を利用してよく、このように起こりうる毒性及び有害な副作用を低下させる。
本発明の化合物との使用のための医薬的に許容可能な担体及びアジュバントは、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、緩衝物質、水、塩又は電解質、及びセルロースベースの物質を含む。これは、可能な医薬的に許容可能な担体及びアジュバントの完全なリストではなく、当業者は他の可能性を知りうるが、それらは当技術分野において豊富である。
【0038】
まとめると、本発明では、Munc18c、Sly1、又はSMタンパク質ファミリーの他のメンバー及びその組み合わせの異種発現により、真核細胞においてタンパク質の分泌輸送を増強するための新規方法を記載する。この方法は、組換えタンパク質産物の発現及び製造のための増強した産生能力を伴う最適化された宿主細胞系の生成のために特に有用である。
【0039】
Sec1/Munc18(SM)タンパク質は、細胞内タンパク質輸送における膜融合のために必要とされるが、しかし、それらの作用の性質は、部分的にSMタンパク質とSNAREの間の相互作用の異質性のため、一体化というよりはむしろ多様であると長年提唱されている。本発明において、本発明者らは、2つのSMタンパク質の分泌経路に及ぼす生理学的影響を評価する。基本的な知見は、Munc18c及びSly1が、細胞膜及びゴルジへの小胞融合に関与し、一致して全エキソサイトーシスを刺激することである。このモデルと一致して、本発明者らは、Sly1及びMunc18cがノックダウンされた場合に全エキソサイトーシスが低下することを示す(図3)。対照的に、過剰発現によるSly1の上昇レベルによって分泌能力が増加する(図4)。重要かつ驚くべきことに、Munc18cは、宿主細胞の分泌能力も有意に刺激する。この裏付けとして、本発明者らは、Munc18cが、PM(細胞膜)への融合のために特化されたSNARE複合体に直接的に結合することを実証した(図5)。
【0040】
過去の試験では、エキソサイトーシスにおけるMunc18cの阻害的な役割が割り当てられており(Riento et al., 2000;Kanda et al., 2005;Tellam et al., 1997;Thurmond et al., 1998)、それは本発明の結果と相反する。輸送機構、特にシンタキシン4、SNAP−23及びVAMP2から成るエキソサイトーシスSNAREタンパク質とのその相互作用におけるMunc18cの役割に分子的洞察を提供するために、本発明者らは免疫沈降実験を報告する。図5に示す通り、Munc18c特異的抗体は、シンタキシン4、SNAP−23及びVAMP2の有意な分画と共にMunc18cを定量的に沈殿させ、Munc18cとこれらのSNAREとのインビボでの結合を示し、分泌経路において小胞−オルガネラ融合が促される(Peng and Gallwitz, 2002;Shen et al., 2007;Scott et al., 2004)。この知見は、Sly1(完全に組み立てられたSNARE複合体に結合して、ゴルジ装置への融合を促す)と同様に、Munc18cも直接的にSNARE複合体と相互作用することを強調しており、SNARE媒介性の輸送機構を促進することによる保存された作用機構を示唆する。
【0041】
そのため、Sly1及びMunc18c機能の生理学的な役割及び機構は、SNARE媒介性の分泌経路において保存されている。
【0042】
SMタンパク質ベースの分泌操作によって、Sly1、Munc18c、及び一般的なオルガネラ膨張因子Xbp−1が過剰発現された場合、種々のタンパク質(酵素、成長ホルモン、及び免疫療法用モノクローナル抗体を含む)のエキソサイトーシスが増強される。
【0043】
本願のデータは、同じ細胞内での2つのSMタンパク質の同時過剰発現時にタンパク質分泌に対する相加的又はさらには相乗的な効果を実証する(Munc18c及びSly1について示す)。本発明者らのデータは、このように、SNARE媒介性の輸送機構を刺激する際のSMタンパク質の一体化した機能についてのモデルを裏付け、分泌増強のための翻訳後操作の新規戦略を表わす。
【0044】
まとめると、本願において、本発明者らは、エキソサイトーシス/分泌経路におけるSMタンパク質の一体化した活性化の役割についての最初の驚くべき証拠を提供する。この知見に基づき、本発明者らはSMタンパク質ベースの翻訳後操作(それによりエキソサイトーシス増強の達成に成功している)の先駆者となる。
【0045】
タンパク質治療薬の効率的な産生は、バイオテクノロジー工業への大きな課題のままである。今までに、種々の異なる代謝操作戦略が開発されてきた。例えば、転写を増加させることにより(転写操作);哺乳動物細胞の翻訳性能をモジュレートさせることにより(翻訳操作);特定の糖型の産生を増進させることにより(グリコシル化操作);代謝エネルギーを産物形成へ排他的に向け直すこと(増殖技術の制御)により、及び産生細胞株の生存を改善させることにより(抗アポトーシス操作)。しかし、組織化された分泌機構に基づく代謝操作は、分かりにくいままである。Sly1及びMunc18cが一致して全エキソサイトーシスを刺激するとの知見に基づき、本発明者らは本明細書で初めて、哺乳動物細胞の分泌能力の増強を導くSMタンパク質ベースの翻訳後操作を報告する。システムは、発現の配置、使用されるプロモーターの型、及びプロモーター媒介性の転写レベルに非依存的であり、組換えタンパク質及び医薬品の工業的産生のために特に適する。
【0046】
本発明は、さらに、SMタンパク質発現に干渉することによりタンパク質のエキソサイトーシスを阻害又は低下させるための手段を提供する。これは、癌又は炎症状態の処置のための有用な手段を提供するはずである。
【0047】
過去に、真核細胞において、膜結合輸送小胞が、細胞内の区画/オルガネラの間でタンパク質及び脂質を行き来させることが記載されている。各輸送工程で、小胞及び標的膜の両方からのSNARE[可溶性NSF(N−エチルマレイミド感受性因子)付着受容体]タンパク質が、融合が起こるために必要とされるコア機構を構成するトランスSNARE複合体を形成する。種々の状況における生理学的な必要条件を満たすために、SNARE媒介性の融合機構は、細胞内及び細胞外の両方の供給源からの刺激が適切に組込まれるように、空間的及び時間的に調節可能でなければならない。このように、SNAREの機能がインビボでモジュレート又は微調節され、膜融合の特異性とスピードのいずれも損なわれないことが極めて重要である。Sec1/Munc18(SM)タンパク質は、SNAREタンパク質の調節へのカギを握りうる。最初に酵母及び線虫において同定され、SMタンパク質は融合に必須である。SNARE以外の相互作用パートナーが少ししか存在しないとの事実は、SMタンパク質がSNAREタンパク質と機能的に共役しているとの広く知られた概念を導いてきた(Gallwitz and Jahn, 2003;Jahn et al., 2003;Toonen and Verhage, 2003)。しかし、SMタンパク質についての機能モデルを一般化するための試みは、それらのSNAREとの相互作用の異質な性質により大幅に阻まれてきた。別個の輸送工程で、及び、異なる生物において、単量体のシンタキシン(Dulubova et al., 1999;Yang et al., 2000;Peng and Gallwitz, 2002)、小胞関連SNARE(Li et al., 2005;Carpp et al., 2006;Peng and Gallwitz; 2004;Shen et al., 2007)、ヘテロダイマーt−SNARE複合体(Scott et al., 2004;Zilly et al., 2006)ならびに三元の完全に組み立てられたSNARE複合体(Carpp et al., 2006;Peng and Gallwitz; 2004;Shen et al., 2007;Togneri et al., 2006;Carr et al., 1999;Dulubova et al., 2007)が、個々のSMタンパク質に簡単に結合することが示されてきた。結果として、これらの相互作用の生理学的意義が、膜融合におけるSMタンパク質機能についてポジティブ及びネガティブの両方で解釈されてきた。
【0048】
結果的に、分子機構、特に分泌経路におけるSMタンパク質の生理学的な役割は、依然として不可解である。例えば、Sly1は単量体のシンタキシン5、単量体の小胞結合SNARE、及び完全に組み立てられたSNARE複合体と相互作用し(Li et al., 2005; Peng and Gallwitz; 2004)、SNARE複合体の形成及び融合特異性にポジティブな影響をもたらすことが示されている(Peng and Gallwitz, 2002; Kosodo et al., 2002)。
他方で、過去の試験は、Munc18タンパク質についての阻害的な役割を膜融合及びエキソサイトーシスに割り当てた:ニューロン特異的Munc18a(シナプス小胞の調節されたエキソサイトーシスのために特異的に必要とされる)は、SNAREとの2つの機能的に矛盾する相互作用を担う:シンタキシン1の閉鎖立体構造への結合(このようにSNARE複合体組み立てを阻害し(Dulubova et al., 1999;Yang et al., 2000))、及び完全に組み立てられたSNARE複合体への結合(従って、膜融合を促進する(Shen et al., 2007;Dulubova et al., 2007))による。これと一致して、エキソサイトーシスに対するMunc18aの阻害的及び促進的な効果の両方が報告された(Wu et al., 1998;Verhage et al., 2000;Voets et al., 2001)。Munc18b及びMunc18cは配列においてMunc18aと相同であるが、しかし、遍在的に発現される。インビトロでのデータは、Munc18cが、SNARE結合においてMunc18aと同様であり(Latham et al., 2006;D'Andrea-Merrins et al., 2007)、2つのタンパク質の構造が保存されている(Misura et al., 2000;Hu et al., 2007)ことを示した。遺伝学的及び生理学的な試験は、しかし、今までに、Munc18b及びMunc18cによるエキソサイトーシスにおける阻害的な役割についての排他的な証拠を提供してきた(Riento et al., 2000;Kanda et al., 2005;Tellam et al., 1997;Thurmond et al., 1998)。例えば、1)ハエにおけるMunc18aの過剰発現は、ニューロンの移動を阻害する(Wu et al., 1998)、2)Caco−2細胞におけるMunc18bの過剰発現は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素の頂端送達を阻害する(Riento et al., 2000)、3)Munc18cはVAMP2とシンタキシン4結合を競合する(Thurmond et al., 1998);4)脂肪細胞におけるインシュリン刺激GLUT小胞の転位置は、Munc18cの過剰発現により阻害されるが、しかし、Munc18cヌルマウスにおいて増強される(Tellam et al., 1997;Thurmond et al., 1998)。
【0049】
これらの報告とは対照的に、及び、支配的な予想とは反対に、本願において、本発明者らは、2つのSMタンパク質(Sly1及びMunc18c)についての新規の驚くべき役割を、両方のタンパク質が一般的にエキソサイトーシスを等しく刺激することを実証することにより実証する。Munc18c及びSly1による活性化の役割の分子機構も保存されている可能性が高い。これらの驚くべき知見に基づき、本発明者らは、哺乳動物細胞において分泌増強をもたらすSMタンパク質ベースの分泌操作の先駆者となった。SMタンパク質ベースの分泌操作は、代謝操作の新規戦略を表わし、工業におけるタンパク質医薬品の製造のための新たなプラットフォームを提供する。
【0050】
特に、哺乳動物細胞の分泌能力に対するSly1及びMunc18c発現のポジティブな効果は、分泌増加のために哺乳動物産生細胞株を操作するための新規の翻訳後アプローチを指摘する。
【0051】
実施例5において、sly1及びmunc18cの同時過剰発現は、sly1又はmunc18c単独による5倍と比較して、SEAP産生における8倍の増加を導くことが実証されている(図4a)。SAMY及びVEGF121の分泌も増加する(図4b、4c)。sly1、munc18c及びxbp−1の過剰発現は、一斉に、SEAP、SAMY及びVEGFの分泌をそれぞれ10倍、12倍及び8倍増加させ(図4a、4b、4c)、Sly1とMunc18cの間、及び2つのSMタンパク質と一般的なオルガネラ膨張因子Xbp−1の間での分泌に対する相乗効果の存在を明確に実証する。
【0052】
さらに、実施例6において、sly1(CHO−Sly116及びCHO−Sly123)又はmunc18c(CHO−Munc18c及びCHO−Munc18c)のいずれかの構成的発現のために操作された安定なCHO−K1由来細胞株の生成により、CHO−Sly116及びCHO−Sly123は、4倍及び8倍だけSEAP分泌を(図6a)、4倍及び5倍だけSAMY産生を(図6b)刺激することが実証されている。興味深いことに、より多くのSEAPを産生するCHO−Sly123は、また、より高いSly1レベルを示し、SMタンパク質と産物タンパク質とのポジティブな相関を示唆する(図6c)。同様に、構成的なmunc18c発現のためのトランスジェニック細胞(CHO−Munc18c)は、9倍及び6.5倍多いSEAP及びSAMYを産生し(図6e及び6f)、より多くのSEAPを産生するCHO−Munc18もより高いMunc18cレベルを示す(図6d)。安定な細胞株CHO−Sly1−Munc18c(構成的なSly1及びMunc18c発現のためのダブルトランスジェニック)及びCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1(構成的なSly1、Munc18c及びXbp−1発現のためのトリプルトランスジェニック)は、親CHO−K1と比較し、13倍及び16倍高いSEAP産生を示す(図6g)。
【0053】
特に、SMタンパク質ベースの分泌操作によって、産生細胞株の特異的な抗体産生性が増加する。実施例7では、これを、プロトタイプ生物製剤の製造シナリオにおいてSMタンパク質ベースの分泌操作を使用し、モノクローナル抗ヒトCD20 IgG1(リツキシマブとして公知)をCHO−Sly116及びCHO−Sly123において(最高10倍増加)、CHO−Sly1−Munc18cにおいて(最高15倍増加)、ならびにCHO−Sly1−Xbp−1において(最高13倍増加)及びCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において(最高19倍増加)発現させることにより例証する(図7a)。CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1においてリツキシマブを産生する場合、その場限りの産生レベルである最高40pg/細胞/日に達することができ、それはアイソジェニックなコントロール細胞株と比較し20倍近くの増加に相当する(図7a)。SDS−PAGE分析によって、CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及び野生型CHO−K1細胞により産生される抗体は、構造的にインタクトであり、互いに識別不能であることが示される(図7b、7c)。CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されるリツキシマブからのN結合型Fcオリゴ糖のMaldi−TOFベースの糖プロファイリングによって天然産生細胞株と比較しても、差異は明らかにならず、SM/Xbp−1ベースの分泌操作が産物の品質を損なわないことを示す(図7d及び7e)。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1a】HEK−293におけるSly1及びMunc18の発現及び局在化。(a)及び(b)アクチンを内因性コントロールとして使用したsly1(a)及びmunc18(b)転写物のRT−PCRベースの検出。1Kbラダーをサイズスタンダードとして使用する。(c)Munc18a/b/cのウエスタンブロット。(d)YFP−Munc18c(pRP23)及びCFP−Syntaxin 4(Stx4,pRP29)又はYFP−Sly1(pRP32)及びCFP−Syntaxin 5(Stx5,pRP40)のセットを用いてトランスフェクトしたHEK−293におけるSly1及びMunc18cの細胞内局在化を示す共焦点顕微鏡写真。矢印はSly1及びシンタキシン5(上パネル)又はMunc18c及びシンタキシン4(下パネル)のいずれかの共局在化を示す。
【図1b】HEK−293におけるSly1及びMunc18の発現及び局在化。(a)及び(b)アクチンを内因性コントロールとして使用したsly1(a)及びmunc18(b)転写物のRT−PCRベースの検出。1Kbラダーをサイズスタンダードとして使用する。(c)Munc18a/b/cのウエスタンブロット。(d)YFP−Munc18c(pRP23)及びCFP−Syntaxin 4(Stx4,pRP29)又はYFP−Sly1(pRP32)及びCFP−Syntaxin 5(Stx5,pRP40)のセットを用いてトランスフェクトしたHEK−293におけるSly1及びMunc18cの細胞内局在化を示す共焦点顕微鏡写真。矢印はSly1及びシンタキシン5(上パネル)又はMunc18c及びシンタキシン4(下パネル)のいずれかの共局在化を示す。
【図1c】HEK−293におけるSly1及びMunc18の発現及び局在化。(a)及び(b)アクチンを内因性コントロールとして使用したsly1(a)及びmunc18(b)転写物のRT−PCRベースの検出。1Kbラダーをサイズスタンダードとして使用する。(c)Munc18a/b/cのウエスタンブロット。(d)YFP−Munc18c(pRP23)及びCFP−Syntaxin 4(Stx4,pRP29)又はYFP−Sly1(pRP32)及びCFP−Syntaxin 5(Stx5,pRP40)のセットを用いてトランスフェクトしたHEK−293におけるSly1及びMunc18cの細胞内局在化を示す共焦点顕微鏡写真。矢印はSly1及びシンタキシン5(上パネル)又はMunc18c及びシンタキシン4(下パネル)のいずれかの共局在化を示す。
【図1d】HEK−293におけるSly1及びMunc18の発現及び局在化。(a)及び(b)アクチンを内因性コントロールとして使用したsly1(a)及びmunc18(b)転写物のRT−PCRベースの検出。1Kbラダーをサイズスタンダードとして使用する。(c)Munc18a/b/cのウエスタンブロット。(d)YFP−Munc18c(pRP23)及びCFP−Syntaxin 4(Stx4,pRP29)又はYFP−Sly1(pRP32)及びCFP−Syntaxin 5(Stx5,pRP40)のセットを用いてトランスフェクトしたHEK−293におけるSly1及びMunc18cの細胞内局在化を示す共焦点顕微鏡写真。矢印はSly1及びシンタキシン5(上パネル)又はMunc18c及びシンタキシン4(下パネル)のいずれかの共局在化を示す。
【図2a】sly1及びMunc18cのshRNAベースのノックダウン。(a)異なるsly1特異的shRNAのためのsly1特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンsly1/GFPをコードする発現ベクターpRP3の模式図。(b)pRP3及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたCHO−K1の蛍光顕微鏡写真。(c)異なるMunc18c特異的shRNAのためのMunc18c特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンMunc18c/GFPをコードする発現ベクターpRP4の模式図。pRP4及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたHEK−293の蛍光顕微鏡写真。
【図2b】sly1及びMunc18cのshRNAベースのノックダウン。(a)異なるsly1特異的shRNAのためのsly1特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンsly1/GFPをコードする発現ベクターpRP3の模式図。(b)pRP3及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたCHO−K1の蛍光顕微鏡写真。(c)異なるMunc18c特異的shRNAのためのMunc18c特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンMunc18c/GFPをコードする発現ベクターpRP4の模式図。pRP4及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたHEK−293の蛍光顕微鏡写真。
【図2c】sly1及びMunc18cのshRNAベースのノックダウン。(a)異なるsly1特異的shRNAのためのsly1特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンsly1/GFPをコードする発現ベクターpRP3の模式図。(b)pRP3及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたCHO−K1の蛍光顕微鏡写真。(c)異なるMunc18c特異的shRNAのためのMunc18c特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンMunc18c/GFPをコードする発現ベクターpRP4の模式図。pRP4及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたHEK−293の蛍光顕微鏡写真。
【図2d】sly1及びMunc18cのshRNAベースのノックダウン。(a)異なるsly1特異的shRNAのためのsly1特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンsly1/GFPをコードする発現ベクターpRP3の模式図。(b)pRP3及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたCHO−K1の蛍光顕微鏡写真。(c)異なるMunc18c特異的shRNAのためのMunc18c特異的ノックダウンレポーターコンストラクトとして使用されるジシストロンMunc18c/GFPをコードする発現ベクターpRP4の模式図。pRP4及び異なるshRNAをコードする発現ベクターを用いてコトランスフェクトされ、48時間培養されたHEK−293の蛍光顕微鏡写真。
【図3a】sly1及びmunc18cのshRNAベースのノックダウンによって全エキソサイトーシスが減少する。(a)sly1標的shRNA発現ベクター(shRNAsly1_1/2/3;pRP5−7)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のsly1特異的ウエスタンブロット。親ベクターpmU6、コントロールshRNA及びp27Kip1をコントロールとして使用する。(b)pSEAP2−Control及び異なるshRNAsly1発現ベクターを用いてコトランスフェクトした(48時間)HEK−293のSEAP発現プロファイル。(c)munc18c標的shRNA発現ベクター(shRNAmunc18c_1/2/3;pRP12、14、38、39)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のmunc18c特異的ウエスタンブロット。(d)pSEAP2−Control及び異なるshRNAmunc18発現ベクターを用いてコトランスフェクトしたHEK−293のSEAP発現プロファイル。
【図3b】sly1及びmunc18cのshRNAベースのノックダウンによって全エキソサイトーシスが減少する。(a)sly1標的shRNA発現ベクター(shRNAsly1_1/2/3;pRP5−7)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のsly1特異的ウエスタンブロット。親ベクターpmU6、コントロールshRNA及びp27Kip1をコントロールとして使用する。(b)pSEAP2−Control及び異なるshRNAsly1発現ベクターを用いてコトランスフェクトした(48時間)HEK−293のSEAP発現プロファイル。(c)munc18c標的shRNA発現ベクター(shRNAmunc18c_1/2/3;pRP12、14、38、39)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のmunc18c特異的ウエスタンブロット。(d)pSEAP2−Control及び異なるshRNAmunc18発現ベクターを用いてコトランスフェクトしたHEK−293のSEAP発現プロファイル。
【図3c】sly1及びmunc18cのshRNAベースのノックダウンによって全エキソサイトーシスが減少する。(a)sly1標的shRNA発現ベクター(shRNAsly1_1/2/3;pRP5−7)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のsly1特異的ウエスタンブロット。親ベクターpmU6、コントロールshRNA及びp27Kip1をコントロールとして使用する。(b)pSEAP2−Control及び異なるshRNAsly1発現ベクターを用いてコトランスフェクトした(48時間)HEK−293のSEAP発現プロファイル。(c)munc18c標的shRNA発現ベクター(shRNAmunc18c_1/2/3;pRP12、14、38、39)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のmunc18c特異的ウエスタンブロット。(d)pSEAP2−Control及び異なるshRNAmunc18発現ベクターを用いてコトランスフェクトしたHEK−293のSEAP発現プロファイル。
【図3d】sly1及びmunc18cのshRNAベースのノックダウンによって全エキソサイトーシスが減少する。(a)sly1標的shRNA発現ベクター(shRNAsly1_1/2/3;pRP5−7)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のsly1特異的ウエスタンブロット。親ベクターpmU6、コントロールshRNA及びp27Kip1をコントロールとして使用する。(b)pSEAP2−Control及び異なるshRNAsly1発現ベクターを用いてコトランスフェクトした(48時間)HEK−293のSEAP発現プロファイル。(c)munc18c標的shRNA発現ベクター(shRNAmunc18c_1/2/3;pRP12、14、38、39)を用いてトランスフェクトしたHEK−293のmunc18c特異的ウエスタンブロット。(d)pSEAP2−Control及び異なるshRNAmunc18発現ベクターを用いてコトランスフェクトしたHEK−293のSEAP発現プロファイル。
【図4a】Sly1及びMunc18cの異所性発現によって、転写後に、CHO−K1のタンパク質産生が増進される。(a−c)SEAP(pSEAP1−Control)(a)、SAMY(pSS158)(b)又はVEGF121(pWW276)(c)産生ベクターならびにSly1−(pRP24)、Munc18c−(pRP17)及びXbp−1(pcDNA3.1−Xbp−1)をコードする発現ベクター(の異なる組み合わせ)を用いてコトランスフェクトしたCHO−K1の産生プロファイル。(d)SMタンパク質発現の存在下又は非存在下での産物mRNAレベルの定量的RT−PCRベースのプロファイリング。
【図4b】Sly1及びMunc18cの異所性発現によって、転写後に、CHO−K1のタンパク質産生が増進される。(a−c)SEAP(pSEAP1−Control)(a)、SAMY(pSS158)(b)又はVEGF121(pWW276)(c)産生ベクターならびにSly1−(pRP24)、Munc18c−(pRP17)及びXbp−1(pcDNA3.1−Xbp−1)をコードする発現ベクター(の異なる組み合わせ)を用いてコトランスフェクトしたCHO−K1の産生プロファイル。(d)SMタンパク質発現の存在下又は非存在下での産物mRNAレベルの定量的RT−PCRベースのプロファイリング。
【図4c】Sly1及びMunc18cの異所性発現によって、転写後に、CHO−K1のタンパク質産生が増進される。(a−c)SEAP(pSEAP1−Control)(a)、SAMY(pSS158)(b)又はVEGF121(pWW276)(c)産生ベクターならびにSly1−(pRP24)、Munc18c−(pRP17)及びXbp−1(pcDNA3.1−Xbp−1)をコードする発現ベクター(の異なる組み合わせ)を用いてコトランスフェクトしたCHO−K1の産生プロファイル。(d)SMタンパク質発現の存在下又は非存在下での産物mRNAレベルの定量的RT−PCRベースのプロファイリング。
【図4d】Sly1及びMunc18cの異所性発現によって、転写後に、CHO−K1のタンパク質産生が増進される。(a−c)SEAP(pSEAP1−Control)(a)、SAMY(pSS158)(b)又はVEGF121(pWW276)(c)産生ベクターならびにSly1−(pRP24)、Munc18c−(pRP17)及びXbp−1(pcDNA3.1−Xbp−1)をコードする発現ベクター(の異なる組み合わせ)を用いてコトランスフェクトしたCHO−K1の産生プロファイル。(d)SMタンパク質発現の存在下又は非存在下での産物mRNAレベルの定量的RT−PCRベースのプロファイリング。
【図5】Munc18cとエキソサイトーシスSNARE複合体との相互作用。親和性精製プロテインA−Sepharose共役抗Munc18c抗体を使用したHEK−293ライセートの免疫沈降に続く、Munc18c、シンタキシン4、SNAP−23及びVAMP2/シナプトブレビン2(SybII)のウエスタンブロット分析。非沈降タンパク質(上清)ならびにSly1をコントロールとして使用する。
【図6a】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6b】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6c】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6d】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6e】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6f】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図6g】SMタンパク質ベースの分泌操作によって、CHO−KI由来細胞株における異種タンパク質の産生が増強される。(a)構成的なSly1及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mix)(48時間培養)でのSEAP産生。(b)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Sly116及びCHO−Sly123及びCHO−Sly1mixでのSAMY産生。(c)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Sly116及びCHO−Sly123のSly1特異的ウエスタンブロット。(d)負荷コントロールとしてp27Kip1を伴うCHO−K1、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cのMunc18c特異的ウエスタンブロット。(e)構成的なMunc18c及びSEAP発現のためのトランスジェニックである安定な混合されたクローンCHO−K1由来集団(CHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18cmix)(48時間培養)でのSEAP産生。(f)pSS158を用いて一過性にトランスフェクトされたCHO−Munc18c、CHO−Munc18c及びCHO−Munc18mixのSAMY産生。(g)Sly1及びMunc18c(CHO−Sly1−Munc18c)、Sly1及びXbp−1(CHO−Sly1−Xbp1)及びSly1、Munc18cならびにXbp−1(CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1)を構成的に発現する、48時間培養された、安定な細胞クローンのSEAP産生プロファイル。
【図7a】分泌操作されたCHO−K1派生物において産生されたリツキシマブの産生及び糖プロファイリング。(a)様々に分泌操作されたCHO−K1派生物での特異的なリツキシマブ産生性。(SMタンパク質ベースの代謝操作によるヒトIgG1の分泌増加)(b、c)CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及びCHO−K1細胞から精製したリツキシマブを、非還元(b)及び還元(c)SDS−PAGEにより分析する。スタンダードタンパク質の分子量(kDa)及びIgG1の重鎖及び軽鎖(HC、LC)を示す。(d、e)CHO−K1及び分泌操作されたCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されたリツキシマブのMALDI−TOFベースの糖プロファイリング。
【図7b】分泌操作されたCHO−K1派生物において産生されたリツキシマブの産生及び糖プロファイリング。(a)様々に分泌操作されたCHO−K1派生物での特異的なリツキシマブ産生性。(SMタンパク質ベースの代謝操作によるヒトIgG1の分泌増加)(b、c)CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及びCHO−K1細胞から精製したリツキシマブを、非還元(b)及び還元(c)SDS−PAGEにより分析する。スタンダードタンパク質の分子量(kDa)及びIgG1の重鎖及び軽鎖(HC、LC)を示す。(d、e)CHO−K1及び分泌操作されたCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されたリツキシマブのMALDI−TOFベースの糖プロファイリング。
【図7c】分泌操作されたCHO−K1派生物において産生されたリツキシマブの産生及び糖プロファイリング。(a)様々に分泌操作されたCHO−K1派生物での特異的なリツキシマブ産生性。(SMタンパク質ベースの代謝操作によるヒトIgG1の分泌増加)(b、c)CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及びCHO−K1細胞から精製したリツキシマブを、非還元(b)及び還元(c)SDS−PAGEにより分析する。スタンダードタンパク質の分子量(kDa)及びIgG1の重鎖及び軽鎖(HC、LC)を示す。(d、e)CHO−K1及び分泌操作されたCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されたリツキシマブのMALDI−TOFベースの糖プロファイリング。
【図7d】分泌操作されたCHO−K1派生物において産生されたリツキシマブの産生及び糖プロファイリング。(a)様々に分泌操作されたCHO−K1派生物での特異的なリツキシマブ産生性。(SMタンパク質ベースの代謝操作によるヒトIgG1の分泌増加)(b、c)CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及びCHO−K1細胞から精製したリツキシマブを、非還元(b)及び還元(c)SDS−PAGEにより分析する。スタンダードタンパク質の分子量(kDa)及びIgG1の重鎖及び軽鎖(HC、LC)を示す。(d、e)CHO−K1及び分泌操作されたCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されたリツキシマブのMALDI−TOFベースの糖プロファイリング。
【図7e】分泌操作されたCHO−K1派生物において産生されたリツキシマブの産生及び糖プロファイリング。(a)様々に分泌操作されたCHO−K1派生物での特異的なリツキシマブ産生性。(SMタンパク質ベースの代謝操作によるヒトIgG1の分泌増加)(b、c)CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及びCHO−K1細胞から精製したリツキシマブを、非還元(b)及び還元(c)SDS−PAGEにより分析する。スタンダードタンパク質の分子量(kDa)及びIgG1の重鎖及び軽鎖(HC、LC)を示す。(d、e)CHO−K1及び分泌操作されたCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されたリツキシマブのMALDI−TOFベースの糖プロファイリング。
【図8】発現コンストラクトの模式図:少なくとも1つの目的のタンパク質(GOI)及び別々の発現ユニット(a)から又は1つのバイシストロンユニット(b)からのSMタンパク質をコードするベクター。別々の発現カセットから(c)又はバイシストロン(2つの遺伝子がIRESエレメントを介して連結される)(d)のいずれかでコードされる2つのSMタンパク質の遺伝子を含む発現ベクター。少なくとも2つのSMタンパク質及び目的の遺伝子(e)又は1つのマルチシストロン発現ユニットからのいくつかのSMタンパク質をコードする発現ベクター。
【図9】SMタンパク質はヒト細胞からのHRP分泌を増強する:分泌型の西洋ワサビペルオキシダーゼ(ssHRP)及び空ベクター(Mock、黒色バー)、Munc18c(灰色バー)、Sly1(影付きバー)又はMunc18c及びSly1(Munc−IRES−Sly、縞模様バー)をコードするバイシストロンのコンストラクトを用いてコトランスフェクトしたヒトHT1080細胞の上清中でのHRP活性の測定。トランスフェクションから24及び48時間後に測定された相対的ssHRP力価ならびに特異的な産生性を、1.0に設定したMockコントロールと比較してプロットする。値は3通りのサンプルでの平均値に相当する(エラーバー=SEM)。
【図10A】IgG産生細胞株におけるSMタンパク質の過剰発現によって、特異的な産生性及び最終的なIgG力価が増加する。(A)空ベクター(Mock)又はSly−1(Sly1)、Munc−18c(Munc)もしくは両方のSMタンパク質(Munc/Sly1)のための発現コンストラクトのいずれかを安定的に発現する細胞の相対的な特異的IgG1産生性。産生性は、流加産生プロセス中での力価及び生存細胞数から算出した。バーは、n=2(Mock)からn=6のモノクローナルトランスジェニックIgG産生細胞株での平均値を表わし、100%に設定されたMock細胞における特異的な産生性との比較で描写する。(B)記載のコンストラクトを9日間の流加発酵プロセスにわたり安定的に発現する安定な細胞集団からのIgG力価。
【図10B】IgG産生細胞株におけるSMタンパク質の過剰発現によって、特異的な産生性及び最終的なIgG力価が増加する。(A)空ベクター(Mock)又はSly−1(Sly1)、Munc−18c(Munc)もしくは両方のSMタンパク質(Munc/Sly1)のための発現コンストラクトのいずれかを安定的に発現する細胞の相対的な特異的IgG1産生性。産生性は、流加産生プロセス中での力価及び生存細胞数から算出した。バーは、n=2(Mock)からn=6のモノクローナルトランスジェニックIgG産生細胞株での平均値を表わし、100%に設定されたMock細胞における特異的な産生性との比較で描写する。(B)記載のコンストラクトを9日間の流加発酵プロセスにわたり安定的に発現する安定な細胞集団からのIgG力価。
【0055】
発明の詳細な説明
一般的な実施態様「含む」又は「含まれる」は、より具体的な実施態様「から成る」を包含する。さらに、単数形及び複数形は、限定的な方法において使用されない。
【0056】
本発明の経過において使用される用語は、以下の意味を有する。
【0057】
「遺伝子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)配列(例、cDNA、ゲノムDNA又はmRNA)を意味する。本発明において、遺伝子は、好ましくは、ヒトDNA配列を指すが、しかし、他の哺乳動物種、好ましくはマウス、ハムスター及びラットからの相同配列、ならびに追加の真核生物種(ニワトリ、アヒル、コケ、寄生虫、ハエ及び酵母を含む)からの相同配列が等しく含まれる。
【0058】
集合語「Sec1/Munc−18タンパク質」又は「SMタンパク質」又は「Sec1/Munc18群のタンパク質」又は「SMタンパク質」又は「SMタンパク質をコードする遺伝子」又は「SMファミリー」は、高度の構造的類似性を共有する60〜70kDaの親水性タンパク質のファミリーを含み、酵母からヒトまで進化的に保存されている。
Munc18及びSly1は両方ともSec1/Munc18タンパク質のファミリーに属する。このファミリーは、さらに、今までに以下:
酵母において:Sec1p、Sly1p、Vps33p及びVps45p
ショウジョウバエにおいて:ROP、Sly1及びVps33/カーネーション
線虫において:Unc−18ならびにゲノム配列データベースに従った5つの他の遺伝子
脊椎動物において:Munc18−1、−2及び−3、VPS45、VPS33−A及び−B、ならびにSly1
を含む。
【0059】
SMタンパク質という用語は、そのようなタンパク質の派生物、突然変異体及びフラグメント、例えば、flagタグ付き、HISタグ付き又は他の方法でのタグ付きSMタンパク質も包含する。そのような派生物は、頻繁に、例えば、タンパク質の精製又は単離又は可視化を簡単にするために使用される。
【0060】
SMタンパク質は全配列にわたり高い相同性を示し、それらが同様の全構造を呈しうることを示唆する。さらに、機能喪失突然変異が、4種中の9つのSM遺伝子について記載されており、それらは全て小胞輸送及び融合の重度の障害を導き、SMタンパク質が小胞輸送及び分泌のプロセスにおいて同様の中心的な役割を果たすことを示唆する。
【0061】
本発明の実施例では、モデルタンパク質としてMunc18及びSly1を使用しているが、しかし、本発明は、SMタンパク質ファミリーの他のメンバーに等しく上手く移すことができる。
【0062】
さらに、種にわたる高度の保存の観点から、SMタンパク質を使用して、酵母を越えて寄生虫及び昆虫細胞から哺乳動物系までの全ての真核生物宿主細胞種におけるタンパク質の分泌及び細胞表面発現をモジュレートできる。
【0063】
真核細胞においては、膜結合輸送小胞が、細胞内の区画/オルガネラの間でタンパク質及び脂質を行き来させる。細胞輸送小胞と細胞膜又は標的区画(例えばリソソーム、ゴルジ複合体又は細胞膜など)との融合は、SNARE[可溶性NSF(N−エチルマレイミド感受性因子)付着受容体]タンパク質により媒介される。細胞の生理学的な必要条件を満たし、区画特異的な膜組成を維持するために、SNARE媒介性の融合機構が、Sec1/Munc18(SM)ファミリーの小タンパク質により空間的及び時間的に制御される。SNARE及びシンタキシンへの直接的な結合により、SMタンパク質は、細胞内の区画/オルガネラと細胞膜の間の小胞媒介性輸送の全工程を調節する。
【0064】
「Munc−18」又は「Munc−18タンパク質」又は「Munc−18タンパク質ファミリー」という用語は、真核生物中に存在する全てのMunc−18遺伝子及び遺伝子産物/タンパク質を含む。これは、明確に、3つのMunc−18パラログ、即ち、Munc−18a(「Munc−18−1」とも呼ばれる)、Munc−18b及びMunc−18cを含み、それらは脊椎動物において進化してきた。
【0065】
より具体的には、「Munc−18c」という用語は、ヒト遺伝子及びタンパク質Munc18cを指し、「シンタキシン結合タンパク質3」(STXBP3)又は「血小板Sec1タンパク質」(PSP)、配列番号39としても公知であり、他の哺乳動物種(マウス、ハムスター、ラット、イヌ及びウサギを含む)におけるそのホモログを含む。
【0066】
「Sly−1」又は「Sly−1タンパク質」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物における全てのSly1遺伝子及びこれらの遺伝子から発現されるタンパク質を指す。より具体的には、「Sly−1」はヒトSly−1タンパク質を指し、「Sec1ファミリードメイン含有タンパク質1」(SCFD1)又は「シンタキシン結合タンパク質1様タンパク質2」(STXBP1L2)、配列番号41としても公知である。
【0067】
「XBP−1」という用語は、等しく、XBP−1 DNA配列及びこの遺伝子(XBP−1 DNAスプライス変異体を含む)から発現される全てのタンパク質を指す。優先的に、XBP−1は、ヒトXBP−1配列を、好ましくは、スプライシングされた活性型のXBP−1(「XBP−1(s)」とも呼ばれる)を指す。転写因子XBP−1は、分泌細胞分化ならびにERホメオスタシス及び膨張の維持の重要調節因子の1つであることが公知である(Lee, 2005;Iwakoshi, 2003)。これらの機能によって、XBP−1が分泌操作アプローチのための候補になる。
【0068】
より具体的には、「XBP−1」はヒトXBP−1タンパク質、配列番号43を指す。
【0069】
「産生性」又は「特異的な産生性」という用語は、定められた時間内に定められた細胞数により産生される特定タンパク質の量を記載する。特異的な産生性は、従って、目的タンパク質を発現/合成/産生するための細胞の能力についての定量的測定である。工業的な製造に関連し、特異的な産生性は、通常、1細胞当たり1日に産生されるピコグラム量(「pg/細胞*日」又は「pcd」)のタンパク質として表わす。
【0070】
分泌タンパク質の「特異的な産生性」を測定するための1つの方法は、培養液中に分泌される目的のタンパク質の量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により定量的に測定することである。この目的のために、細胞を定められた密度で新鮮培養液中に播種する。定められた時間後、例えば24、48又は72時間後、細胞培養液のサンプルを採取し、目的のタンパク質の力価を測定するためのELISA測定に供する。特異的な産生性は、力価を平均細胞数及び時間により割ることにより決定できる。
【0071】
細胞の「特異的な産生性」を測定する方法の別の例は、均一系時間分解蛍光(HTRF(登録商標):homogenous time resolved fluorescence)アッセイにより提供される。
【0072】
細胞内の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質についての細胞の「産生性」は、ウエスタンブロッティングによっても検出及び定量化できる。細胞を最初に洗浄し、続いて、界面活性剤(例えばTriton−X、NP−40又はSDSなど)又は高塩濃度のいずれかを含む緩衝液中で溶解する。細胞ライセート内のタンパク質は、次に、サイズごとにSDS−PAGEで分離し、ナイロンメンブレンにトランスファーし、そこで目的のタンパク質は、続いて、特異的抗体を使用することにより検出及び可視化される。
【0073】
細胞の「特異的な産生性」を測定するための別の方法は、目的のタンパク質を、目的のタンパク質に対して惹起された蛍光標識抗体により免疫学的に検出し、蛍光シグナルをフローサイトメーターで定量化することである。細胞内タンパク質の場合では、細胞を最初に、例えばパラホルムアルデヒド緩衝液中で固定し、そして次に透過処理し、検出抗体の細胞中への浸透を可能にする。細胞表面タンパク質を、事前の固定化又は透過処理の必要なしに、生細胞上で定量化することができる。
【0074】
細胞の「産生性」を、さらに、レポータータンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)(目的のタンパク質を伴う融合タンパク質として、又は、2、3もしくは複数の発現ユニットの部分としての目的のタンパク質と同じmRNAからのいずれかで発現される))の発現を測定することにより間接的に決定することができる。
【0075】
「産生性の増強/増加」という用語は、細胞の特異的な産生性を増加/増強するための方法を含む。特異的な産生性は、産生性が、それぞれのコントロール細胞と比較し、研究中の細胞においてより高い場合に、及び、この差異が統計的に有意である場合に、増加又は増強される。研究中の細胞は、処理、トランスフェクト又は遺伝子改変された細胞の異種集団又はクローン細胞株でありうる;未処理、未トランスフェクト又は未改変の細胞はコントロール細胞として役立てることができる。目的の分泌タンパク質に関連し、「増強/増加/改善された産生性」及び「増強/増加/改善されたエキソサイトーシス」及び「増強/増加/改善された分泌」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用される。
【0076】
「派生物」という用語は、一般的に、本発明の使用目的を実現するために適した配列を含み、配列が細胞中での分泌輸送における増加を媒介することを意味する。
【0077】
本発明において使用する「派生物」という用語は、配列において元の配列又はその相補配列と少なくとも70%同一であるポリペプチド分子又は核酸分子を意味する。好ましくは、ポリペプチド分子又は核酸分子は、配列において、元の配列又はその相補配列と少なくとも80%同一である。より好ましくは、ポリペプチド分子又は核酸分子は、配列において、元の配列又はその相補配列と少なくとも90%同一である。最も好ましくは、配列において、元の配列又はその相補配列と少なくとも95%同一であり、元の配列と同じ又は同様である、分泌に対する効果を呈するポリペプチド分子又は核酸分子である。
【0078】
配列の差異は、異なる生物からの相同配列における差異に基づきうる。それらは、また、1つ又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸、好ましくは1、2、3、4、5、7、8、9又は10の置換、挿入又は欠失による配列の標的改変に基づきうる。欠失、挿入又は置換突然変異体は、部位特異的な突然変異誘発及び/又はPCRベースの突然変異誘発技術を使用して生成されうる。参照配列の配列同一性は、例えば標準的な「アラインメント」アルゴリズム(例、「BLAST」)を使用することにより決定できる。配列は、それらの配列において一致し、標準的な「アラインメント」アルゴリズムの助けを用いて同定可能である場合、整列化する。
【0079】
さらに、本発明において、「派生物」という用語は、他の核酸配列とハイブリダイズする核酸分子(一本鎖又は二本鎖)を意味する。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄の条件下(例、65℃の5×SSCを含む緩衝液中でのハイブリダイゼーション;42℃の0.2×SSC/0.1% SDSを使用した洗浄)で実施する。
【0080】
「派生物」という用語は、さらに、タンパク質欠失及び/又は挿入突然変異体、特にセリン、スレオニン又はチロシンの位置でのリン酸化突然変異体、及びタンパク質キナーゼC(PKC)又はカゼインキナーゼII(CKII)での結合部位の欠失を持つ突然変異体を意味する。
【0081】
「活性」という用語は、細胞内又はインビトロアッセイにおけるタンパク質の生物学的機能を記載及び定量化する。
【0082】
SMタンパク質の「活性」を測定するための1つのアッセイは、例えば、モデルタンパク質、目的の抗体又はタンパク質についての分泌アッセイである。細胞を、ss−HRP−Flagプラスミドを用いて、空ベクター又は研究中の遺伝子(例えばMunc−18c又はSly−1など)のいずれかと一緒にコトランスフェクトする。24時間トランスフェクション後の細胞を無血清培地で洗浄し、HRP分泌を、0、1、3及び6時間後に、ECL試薬を用いた清澄化細胞上清のインキュベーションにより定量化する。測定は、ルミノメーター(Lucy2、Anthos)を用いて450nmで行う。
【0083】
SMタンパク質の機能的結合という点での「活性」の検出のための別の方法は、SMタンパク質のその公知の相互作用パートナーへの結合、例えば、Munc−18cのSyntaxin−4への結合又はSly1のSyntaxin−5との物理的相互作用を示すことである。SMタンパク質の他のタンパク質への結合は、同時免疫沈降、例えばビーズに共役させた特異的抗体を使用したSMタンパク質のプルダウン、ビーズの変性、及び続くSDS−PAGE及びウエスタンブロットによる同時免疫沈降タンパク質の分離及び検出により実証することができる。
SMタンパク質の別のタンパク質(例、シンタキシン)への直接結合は、さらに、酵母ツーハイブリッドアッセイにおいて検出することができる。このアッセイにおいて、両方のタンパク質は、酵母細胞において、1つの転写因子のそれぞれDNA結合ドメイン及びトランス活性化ドメインとの融合タンパク質として発現される。両方のタンパク質の直接的な相互作用は、活性が比色測定で又は酵母細胞が選択的条件下で成長する能力により検出される転写因子の再構成を導く。
【0084】
別の、さらに間接的な方法が、SMタンパク質及びその結合パートナーの同時免疫蛍光ならびに細胞内でのそれらの同時局在化の検出により提供される。
【0085】
XBP−1の「活性」を測定するための1つの方法は、XBP−1転写因子のそのDNA結合部位への結合を検出するためのバンドシフト実験を実施することである。別の方法は、活性XBP−1スプライス変異体のサイトゾルから核への転位置を検出することである。あるいは、XBP−1「活性」は、XBP−1の異種発現時の真正のXBP−1標的遺伝子(例えば結合タンパク質(BiP)など)の発現誘導を測定することにより間接的に確認することができる。
【0086】
本発明の意味における「宿主細胞」は、ハムスター細胞などの細胞、好ましくはBHK21、BHK TK−、CHO、CHO Pro−5、CHO由来の突然変異細胞株Lec1からLec35、CHO−K1、CHO−DUKX、CHO−DUKX B1、及びCHO−DG44細胞又はそのような細胞株のいずれかの派生物/後代である。特に好ましいのは、CHO−DG44、CHO−DUKX、CHO−K1及びBHK21であり、さらにより好ましいのはCHO−DG44細胞及びCHO−DUKX細胞である。本発明のさらなる実施態様では、宿主細胞は、また、マウスミエローマ細胞、好ましくはNS0細胞及びSp2/0細胞又はそのような細胞株のいずれかの派生物/後代を意味する。本発明の意味において使用することができるマウス細胞及びハムスター細胞の例も表1にまとめる。しかし、それらの細胞、他の哺乳動物細胞、限定はされないが、ヒト、マウス、ラット、サル及びげっ歯類の細胞株又は真核細胞、限定はされないが、酵母、昆虫、植物及びトリの細胞の派生物/後代も、本発明の意味において、特に生物製剤タンパク質の産生のために使用することができる。
【0087】
【表1】

【0088】
宿主細胞は、無血清条件下で、場合により動物由来の任意のタンパク質/ペプチドを含まない培地中で、樹立、適応、そして完全に培養される場合、最も好ましい。市販の培地、例えばHam’s F12(Sigma, Deisenhofen, Germany)、RPMI-1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma)、基礎培地(MEM;Sigma)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Sigma)、CD-CHO(Invitrogen, Carlsbad, CA)、CHO-S-Invtirogen)、無血清CHO培地(Sigma)、及び無タンパク質CHO培地(Sigma)などは、例示的な適切な栄養溶液である。培地のいずれにも必要に応じて種々の化合物を添加してよく、その例は、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子、インシュリン様成長因子など)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸など)、緩衝液(例えばHEPESなど)、ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジンなど)、グルタミン、グルコース、又は他の等価のエネルギー源、抗生物質、微量元素である。任意の他の必要な添加剤も、当業者に公知でありうる適切な濃度で含まれてよい。本発明において、無血清培地の使用が好ましいが、しかし、適量の血清を添加した培地も宿主細胞の培養のために使用することができる。選択可能な遺伝子を発現する遺伝子改変細胞の成長及び選択のために、適した選択剤を培養液に加える。
【0089】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基配列又はポリペプチドと互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。これらの用語は、また、反応(限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化又はタンパク質プロセシングを含む)を通じて翻訳後に修飾されるタンパク質を含む。修飾及び変化、例えば他のタンパク質への融合、アミノ酸配列の置換、欠失又は挿入を、分子がその生物学的な機能活性を維持したまま、ポリペプチドの構造中に施すことができる。例えば、特定のアミノ酸配列の置換を、ポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列中に施すことができ、同様の特性を伴うタンパク質を得ることができる。
【0090】
「ポリペプチド」という用語は、10個を超えるアミノ酸を伴う配列を意味し、「ペプチド」という用語は、最高10個までのアミノ酸長の配列を意味する。本発明は、生物製剤用ポリペプチド/タンパク質の産生のための宿主細胞を生成するために適する。本発明は、特に、増強した細胞産生性を示す細胞による、多数の異なる目的の遺伝子の高収率発現のために適する。
【0091】
「目的の遺伝子」(GOI)、「選択された配列」又は「産物遺伝子」は、本明細書において同じ意味を有し、目的の産物又は「目的のタンパク質」をコードする任意の長さのポリヌクレオチド配列を指し、「所望の産物」という用語によっても言及される。選択された配列は完全長の又は切断された遺伝子、融合又はタグ付き遺伝子でありうる。そして、cDNA、ゲノムDNA又はDNAフラグメント、好ましくはcDNAでありうる。それは、天然配列、即ち、天然形態でありうる。又は、所望の通りに突然変異させる、又は、他の方法で改変させることができる。これらの改変は、選択された宿主細胞におけるコドン使用を最適化するためのコドン最適化、ヒト化又はタギングを含む。選択された配列は、分泌、細胞質、核内、膜結合又は細胞表面のポリペプチドをコードしうる。「目的のタンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、そのフラグメント、ペプチドを含み、その全てを選択された宿主細胞において発現させることができる。所望のタンパク質は、例えば、抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体及びその派生物又はフラグメント、ならびにアゴニスト又はアンタゴニストとして役立ちうる、及び/又は、治療的又は診断的使用を有しうる任意の他のポリペプチドでありうる。所望のタンパク質/ポリペプチドの例も以下に与える。より複雑な分子(例えばモノクローナル抗体など)の場合において、GOIは2つの抗体鎖の1つ又は両方をコードする。
【0092】
「目的の産物」は、また、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi又はshRNAでよい。
【0093】
「目的のタンパク質」又は「所望のタンパク質」は上記のものである。特に、所望のタンパク質/ポリペプチド又は目的のタンパク質は、例えば、限定はされないが、インシュリン、インシュリン様成長因子、hGH、tPA、サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)、例、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、インターフェロン(IFN)アルファ、IFNベータ、IFNガンマ、IFNオメガ又はIFNタウ、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFアルファ及びTNFベータ、TNFガンマ、TRAILなど;G−CSF、GM−CSF、M−CSF、MCP−1及びVEGFである。また、エリスロポエチン又は任意の他のホルモン成長因子の産生が含まれる。本発明の方法は、また、抗体又はそのフラグメントの産生のために使用すると有利でありうる。そのようなフラグメントは、例えばFabフラグメント(Fragment antigen-binding=Fab)を含む。Fabフラグメントは、隣接する定常領域により一緒に保持される両鎖の可変領域からなる。これらは、プロテアーゼ消化、例えば、パパインを用いて、従来の抗体から形成されうるが、しかし、同様のFabフラグメントも平均時間中に遺伝子操作により産生されうる。さらなる抗体フラグメントはF(ab‘)2フラグメントを含み、それはペプシンを用いたタンパク質分解的切断により調製してよい。
【0094】
目的のタンパク質は、好ましくは、培養液から分泌ポリペプチドとして回収され、又は、それは、分泌シグナルなしに発現される場合、宿主細胞のライセートから回収できる。他の組換えタンパク質からの目的のタンパク質及び宿主細胞タンパク質を、実質的に均質な目的のタンパク質の調製物が得られる方法で、精製することが必要である。第1工程として、細胞及び/又は粒子状の細胞細片を、培養液又はライセートから除去する。目的の産物を、その後、混入する可溶性のタンパク質、ポリペプチド及び核酸から、例えば、免疫親和性カラム又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、Sephadexクロマトグラフィー、シリカ上又は陽イオン交換樹脂(例えばDEAEなど)上でのクロマトグラフィーにより精製する。一般的に、当業者に、宿主細胞により異種発現されたタンパク質をどのように精製するのかを教える方法は、当技術分野において周知である。
【0095】
遺伝子操作方法を使用し、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域だけから成る短縮した抗体フラグメントを産生することが可能である。これらは、Fvフラグメント(Fragment variable=可変部分のフラグメント)と呼ばれる。
【0096】
これらのFvフラグメントでは定常鎖のシステインによる2つの鎖の共有結合が欠けるため、Fvフラグメントはしばしば安定化される。短いペプチドフラグメント(例、10〜30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸)による重鎖及び軽鎖の可変領域を連結することが有利である。この方法において、単一のペプチド鎖(VH及びVLから成り、ペプチドリンカーにより連結される)が得られる。この種類の抗体タンパク質は、一本鎖Fv(scFv)として公知である。この種類のscFv抗体タンパク質の例は、先行技術から公知である。
【0097】
近年、種々の戦略が、scFvならびに多量体の派生物を調製するために開発されてきた。これは、特に、改善された薬物動態特性及び体内分布特性を伴う、ならびに、増加した結合力を伴う組換え抗体を導くことを意図する。scFvの多量体化を達成するために、scFvを、多量体化ドメインを伴う融合タンパク質として調製した。多量体化ドメインは、例えば、IgGのCH3領域又はコイルドコイル構造(ヘリックス構造)、例えばロイシン−ジッパードメインでありうる。しかし、また、scFvのVH/VL領域の間での相互作用を多量体化(例、ダイアボディ、トリアボディ及びペンタボディ)のために使用する戦略が存在する。ダイアボディにより、当業者は二価のホモ二量体scFv派生物を意味する。scFV分子中のリンカーの5〜10個のアミノ酸への短縮化は、鎖内VH/VL重ね合わせ(superimposition)が起こるホモ二量体の形成を導く。ダイアボディは、加えて、ジスルフィド架橋の取り込みにより安定化されうる。ダイアボディ−抗体タンパク質の例は、先行技術から公知である。
【0098】
ミニボディにより、当業者は二価のホモ二量体scFv派生物を意味する。それは、免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を、ヒンジ領域(例、IgG1からも)及びリンカー領域を介してscFvに連結される二量体化領域として含む融合タンパク質から成る。ミニボディ−抗体タンパク質の例が、先行技術から公知である。
【0099】
トリアボディにより、当業者は、三価のホモ三量体scFv派生物を意味する。scFc派生物(ここでVH−VLは、リンカー配列なしに、直接的に融合される)は、三量体の形成を導く。
【0100】
「スキャフォールドタンパク質」により、当業者は、遺伝子クローニングにより又は同時翻訳プロセスにより別のタンパク質又は別の機能を有するタンパク質の部分と共役するタンパク質の任意の機能的ドメインを意味する。
【0101】
当業者は、また、二価、三価又は四価の構造を有し、scFvに由来するいわゆるミニ抗体に精通しうる。多量体化は、二量体、三量体又は四量体のコイルドコイル構造により行われる。
【0102】
定義により、宿主細胞中に導入される任意の配列又は遺伝子は、導入された配列又は遺伝子が、宿主細胞中の内因性の配列又は遺伝子と同一である場合でさえ、宿主細胞に関して、「異種配列」又は「異種遺伝子」又は「トランスジーン」又は「組換え遺伝子」と呼ばれる。
【0103】
配列は、目的の配列が内因性配列であるが、しかし、配列が細胞中に(人工的/意図的/実験的に)取り込まれ、従って、内因性遺伝子の遺伝子座とは異なる宿主ゲノム中の遺伝子座から発現される場合でさえ、「異種配列」と呼ばれる。
【0104】
配列は、目的の配列(例、cDNA)が(人工的/意図的/実験的に)再導入された(=組換え)内因性配列であり、この配列の発現が、調節配列の変化/改変により(例えば、プロモーターの変化又は任意の他の手段による)影響を受ける場合でさえ、「異種配列」と呼ばれる。
【0105】
「異種」タンパク質は、このように、異種配列から発現されるタンパク質である。
【0106】
異種遺伝子配列を、標的細胞中に、「発現ベクター」、好ましくは真核生物、及びさらに好ましくは哺乳動物の発現ベクターを使用することにより導入することができる。ベクターを構築するために使用される方法は、当業者に周知であり、種々の刊行物に記載されている。特に、適したベクターを構築するための技術(機能的な構成要素、例えばプロモーター、エンハンサ―、終結シグナル及びポリアデニル化シグナル、選択マーカー、複製起点、ならびにスプライシングシグナルなどの記載を含む)が、先行技術において公知である。ベクターは、限定はされないが、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ染色体(例、ACE)、又はウイルスベクター、例えばバキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペス単純ウイルス、レトロウイルス、バクテリオファージなどを含みうる。真核生物の発現ベクターは、典型的に、ベクターの細菌中での増殖を促す原核生物の配列、例えば複製起点及び細菌中での選択のための抗生物質耐性遺伝子も含みうる。種々の真核生物発現ベクター(ポリヌクレオチドを機能的に連結できるクローニング部位を含む)が、当技術分野において周知であり、一部は、企業、例えばStratagene(La Jolla, CA);Invitrogen(Carlsbad, CA);Promega(Madison, WI)、又はBD Biosciences Clontech(Palo Alto, CA)などから市販されている。
【0107】
好ましい実施態様において、発現ベクターは、目的のペプチド/ポリペプチド/タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写及び翻訳のために必要な調節配列である少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0108】
本明細書において使用する「発現」という用語は、宿主細胞内の異種核酸配列の転写及び/又は翻訳を指す。宿主細胞における所望の目的の産物/タンパク質の発現レベルは、細胞中に存在する対応するmRNAの量、又は本実施例における選択された配列によりコードされる所望の目的のポリペプチド/タンパク質の量のいずれかに基づいて測定されうる。例えば、選択された配列から転写されるmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、細胞RNAへのin situハイブリダイゼーションにより、又はPCRにより定量化することができる。選択された配列によりコードされるタンパク質は、種々の方法により、例えば、ELISAにより、ウエスタンブロッティングにより、ラジオイムノアッセイにより、免疫沈降により、タンパク質の生物学的活性についてのアッセイにより、タンパク質の免疫染色、続くFACS分析により、又は、均一系時間分解蛍光(HTRF)アッセイにより定量化することができる。
【0109】
本発明において、「発現」という用語は、遺伝子(DNA配列を意味する)との関連で、ならびに、DNA配列が翻訳されるタンパク質産物との関連で等しく使用される。「遺伝子」及び「タンパク質」という用語は、このように、発現との関連で互換的に使用でき、例えば、「目的のタンパク質の発現」及び「目的の遺伝子の発現」を互換的に使用し、両方の表現は同じ事象を指す。本発明において、これらの用語は、好ましくは、ヒトの遺伝子及びタンパク質を指し、しかし、他の哺乳動物種、好ましくはマウス、ハムスター及びラットからの相同配列、ならびに追加の真核生物種(トリ、アヒル、コケ、寄生虫、ハエ及び酵母を含む)からの相同配列が等しく含まれる。
【0110】
本明細書において使用する目的のタンパク質の発現に「影響をもたらす」、又は、目的のタンパク質の分泌に「影響をもたらす」という用語は、同じものにポジティブに影響をもたらす、又は、同じものを引き起こすことを指す。本明細書において使用するこれらの用語は、好ましくは、「発現を増加させること」又は「分泌を増加させること」を指す。
【0111】
ポリヌクレオチド又は発現ベクターを用いた真核生物の宿主細胞の「トランスフェクション」は、遺伝子改変細胞又はトランスジェニック細胞をもたらし、当技術分野において周知の任意の方法により実施できる。トランスフェクション方法は、限定はされないが、リポソーム媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、ポリカチオン(例えばDEAEデキストラン)媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、ウイルス感染、及びマイクロインジェクションを含む。好ましくは、トランスフェクションは安定的トランスフェクションである。特定の宿主細胞の株及び型において異種遺伝子の最適なトランスフェクション頻度及び発現を提供するトランスフェクション方法が好まれる。適した方法は、ルーチンの手順により決定できる。安定なトランスフェクタントのために、コンストラクトを、宿主細胞のゲノム中又は人工染色体/ミニ染色体中のいずれかに組み込み、エピソームに位置させ、宿主細胞内に安定的に維持させる。
【0112】
本発明の実践では、特に明記しない限り、細胞生物学、分子生物学、細胞培養、免疫学などの従来の技術を用いるが、それらは当業者の技術中にある。これらの技術は、本文献中に完全に開示される。
【0113】
本発明は、目的の異種タンパク質を細胞中で産生させる方法に関し、a)SMタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現、あるいは、それぞれのタンパク質又はその少なくとも1つの派生物、突然変異体もしくはフラグメントの活性を増加させること、及びb)目的の異種タンパク質の発現に影響をもたらすことを含む。
【0114】
本発明は、具体的には、目的の異種タンパク質を細胞中で産生させる方法に関し、a)SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)からのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させること、及びb)目的の異種タンパク質の発現に影響をもたらすことを含む。好ましくは、方法の工程b)における目的のタンパク質の分泌を増加させる。本発明は、このように、好ましくは、目的の異種タンパク質を細胞中で産生させる方法に関し、a)SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)からのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させること、及びb)目的の異種タンパク質の分泌を増加させることを含む。
【0115】
本発明は、好ましくは、目的の異種タンパク質を細胞中で産生させる方法に関し、a)SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)(Sec1p、Sly1p、Vps33p及びVps45p、ROP、Sly1及びVps33/カーネーション、Unc−18、Munc18−1、2及び−3、VPS45、VPS33−A、VPS33−B、ならびにSly1から成る)より選択されるタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させること、
及びb)目的の異種タンパク質の発現に影響をもたらすこと、好ましくは、目的の異種タンパク質の発現、又は特に好ましくは分泌を増加させることを含む。
【0116】
好ましくは、工程a)におけるタンパク質は、SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)(Sec1p、Sly1p、Vps33p、Vps45p、Munc18−1、−2及び−3、VPS45、VPS33−A及び−B、ならびにSly1から成る)より選択される。
【0117】
より好ましくは、工程a)におけるタンパク質は、SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)(Munc18−1、−2及び−3、VPS45、VPS33−A及び−B、ならびにSly1から成る)より選択される。
【0118】
最も好ましくは、工程a)におけるタンパク質は、SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)(Munc18−3/Munc18c及びSly−1から成る)より選択される。
【0119】
本発明の特定の実施態様において、方法は、工程a)における1つの遺伝子がMunc−18タンパク質又はMunc−18タンパク質ファミリーメンバーをコードすることを特徴とする。本発明の特定の実施態様において、方法は、工程a)における1つの遺伝子が3つのMunc18アイソフォーム、Munc18a、b又はcの1つ、好ましくはMunc18cをコードすることを特徴とする。
【0120】
本発明の別の特定の実施態様において、方法は、工程a)における1つの遺伝子がMunc18c(配列番号39)をコードすることを特徴とする。
【0121】
本発明の特定の実施態様において、方法は、工程a)における1つの遺伝子がSly−1タンパク質又はSly−1タンパク質ファミリーメンバー、好ましくはSly−1をコードすることを特徴とする。本発明のさらなる特定の実施態様において、方法は、工程a)における1つの遺伝子がSly−1(配列番号41)をコードすることを特徴とする。
【0122】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、工程a)がSMタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の発現又は活性を増加させることを含み、それによりSMタンパク質が小胞輸送の2つの異なる工程に関与することを特徴とする。本発明の特定の実施態様において、方法は、a)1つの遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞と細胞膜との融合を調節し、b)第2の遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞とゴルジ複合体との融合を調節することを特徴とする。
本発明の特に好ましい実施態様において、方法は、Munc18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)の発現又は活性が増加されることを特徴とする。
【0123】
本発明のさらなる実施態様において、方法は、工程a)が、a)SMタンパク質ファミリーのメンバーをコードする第1の遺伝子の発現又は活性を増加させること、b)SMタンパク質ファミリーの別のメンバーをコードする第2の遺伝子、及びc)XBP−1をコードする第3の遺伝子を含むことを特徴とする。
【0124】
本発明の特に好ましい実施態様において、方法は、Munc18c(配列番号39)、Sly−1(配列番号41)及びXBP−1(配列番号43)の発現又は活性が増加されることを特徴とする。
【0125】
本発明は、さらに、細胞を操作する方法に関し、a)細胞中に、1つ又は複数のベクターシステム(少なくとも2つのポリペプチドをコードする核酸配列を含み、それによりi)少なくとも1つの第1の核酸配列がSMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメントをコードし、及びii)第2の核酸配列が目的のタンパク質をコードする)を導入すること、b)目的のタンパク質及び少なくとも1つのSMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメントを細胞中で発現させることを含む。
【0126】
本発明の特定の実施態様において、方法は、核酸配列を連続的に細胞中に導入することを特徴とする。
【0127】
本発明のさらなる特定の実施態様において、方法は、SMタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列を、目的のタンパク質をコードする核酸配列の前に導入することを特徴とする。
【0128】
本発明の別の実施態様において、方法は、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列を、SMタンパク質をコードする核酸配列の前に導入することを特徴とする。
【0129】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、核酸配列を細胞中に同時に導入することを特徴とする。
【0130】
本発明の特定の実施態様において、方法は、SMタンパク質がMunc−18アイソフォームのいずれか1つ、好ましくはMunc−18c(配列番号39)又はSly−1(配列番号41)であることを特徴とする。
【0131】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、工程a)i)において、2つのSMタンパク質が組み合わせで使用され、それによりSMタンパク質が小胞輸送の2つの異なる工程に関与することを特徴とする。
【0132】
本発明のさらなる実施態様において、方法は、a)1つの遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞と細胞膜との融合を調節し、b)第2の遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞とゴルジ複合体との融合を調節することを特徴とする。
【0133】
本発明の特定の実施態様において、方法は、組み合わせで使用される2つのSMタンパク質がMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)であることを特徴とする。
【0134】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、工程a)i)において、2つのSMタンパク質がXBP−1との組み合わせで使用されることを特徴とする。
【0135】
本発明の特に好ましい実施態様において、方法は、SMタンパク質がXBP−1(配列番号43)と組み合わせたMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)であることを特徴とする。
【0136】
本発明の別の実施態様において、方法は、細胞が真核細胞、例えば酵母、植物、寄生虫、昆虫、トリ、魚、爬虫類又は哺乳動物の細胞などであることを特徴とする。
【0137】
本発明の特定の実施態様において、方法は、細胞が真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、最も好ましくは哺乳動物細胞であることを特徴とする。好ましくは、脊椎動物細胞はトリ細胞、例えばニワトリ又はアヒルの細胞などである。本発明のさらなる特定の実施態様において、方法は、哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6(商標)、ヒト胎児腎臓HEK293、ヒトミエローマ、ヒト羊膜細胞、ベビーハムスター腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍又はミエローマ細胞、NS0、イヌ、ブタ又はマカクの細胞、ラット、ウサギ、ネコ、ヤギ、好ましくはCHO細胞であることを特徴とする。
【0138】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、CHO細胞がCHO野生型、CHO K1、CHO DG44、CHO DUKX−B11、CHO Pro−5又はそれに由来する突然変異体(CHO突然変異体Lec1からLec35)、好ましくはCHO DG44であることを特徴とする。
【0139】
本発明のさらなる実施態様において、方法は、目的のタンパク質が治療用タンパク質であることを特徴とする。
【0140】
本発明の特定の実施態様において、方法は、目的のタンパク質が膜タンパク質又は分泌タンパク質、好ましくは抗体又は抗体フラグメントであることを特徴とする。
【0141】
本発明のさらなる特定の実施態様において、方法は、抗体がモノクローナル、ポリクローナル、哺乳動物、マウス、キメラ、ヒト化、霊長類化、霊長類、ヒト又はその抗体フラグメント又は派生物、例えば抗体、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖、Fab、F(ab’)2、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、一本鎖Fv、単一ドメインFv、四価の一本鎖Fv、ジスルフィド結合型Fv、欠失ドメイン、ミニボディ、ダイアボディ、又は上のフラグメントの1つと別のペプチドもしくはポリペプチドとの融合ポリペプチド、Fcペプチド融合、Fc毒素融合、スキャフォールドタンパク質であることを特徴とする。
【0142】
本発明のさらなる実施態様において、方法は、異種SMタンパク質が少なくとも1つのSNAREタンパク質を含む小胞融合複合体中に存在することを特徴とする。
【0143】
本発明の特定の実施態様において、方法は、異種SMタンパク質が少なくとも1つのSNAREタンパク質及びシンタキシン4又はシンタキシン5を含む小胞融合複合体中に存在することを特徴とする。
【0144】
本発明のさらなる実施態様において、方法は、細胞中での目的の異種タンパク質の特異的な産生性が、少なくとも5pg/細胞及び日、15pg/細胞及び日、20pg/細胞及び日、25pg/細胞及び日であることを特徴とする。
【0145】
本発明の別の実施態様において、方法は、方法が、目的のタンパク質を発現するコントロール細胞と比較し、細胞中で目的のタンパク質の特異的な細胞産生性の増加をもたらすが、しかし、それによりコントロール細胞が任意のSMタンパク質の発現又は活性の増加を有さないことを特徴とする。
【0146】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、産生性の増加が約5%〜約10%、約11%〜約20%、約21%〜約30%、約31%〜約40%、約41%〜約50%、約51%〜約60%、約61%〜約70%、約71%〜約80%、約81%〜約90%、約91%〜約100%、約101%〜約149%、約150%〜約199%、約200%〜約299%、約300%〜約499%、又は約500%〜約1000%であることを特徴とする。
【0147】
本発明は、さらに、目的の膜タンパク質又は分泌タンパク質の細胞中での特異的な細胞産生性又は力価を増加させる方法に関し、a)細胞中に、1つ又は複数のベクターシステム(少なくとも2つのポリペプチドをコードする核酸配列を含み、それによりi)少なくとも1つの第1のポリヌクレオチドがSMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメントをコードし、及びii)第2のポリヌクレオチドが目的のタンパク質をコードする)を導入すること、及びb)目的のタンパク質及びSMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメントを細胞中で発現させることを含む。
【0148】
本発明は、さらに、発現ベクター(少なくとも2つのポリペプチドをコードする発現ユニットを含み、それによりa)少なくとも1つのポリペプチドがSMタンパク質又はその派生物、突然変異体又はフラグメントであり、及びb)第2のポリペプチドが目的のタンパク質である)に関する。
【0149】
本発明の特定の実施態様において、発現ベクターは、目的のタンパク質が治療用タンパク質、好ましくは抗体又は抗体フラグメントであることを特徴とする。
【0150】
本発明の好ましい実施態様において、発現ベクターは、抗体がモノクローナル、ポリクローナル、哺乳動物、マウス、キメラ、ヒト化、霊長類化、霊長類、ヒト、又はその抗体フラグメント又は派生物、例えば抗体、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖、Fab、F(ab’)2、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、一本鎖Fv、単一ドメインFv、四価の一本鎖Fv、ジスルフィド結合型Fv、欠失ドメイン、ミニボディ、ダイアボディ、又は上のフラグメントの1つと別のペプチドもしくはポリペプチドとの融合ポリペプチド、Fcペプチド融合、Fc毒素融合、スキャフォールドタンパク質であることを特徴とする。
【0151】
本発明の別の実施態様において、発現ベクターは、発現ユニットがマルチシストロン、好ましくはバイシストロンであることを特徴とする。
【0152】
本発明の特定の実施態様において、発現ベクターは、ベクターが図8に記載する発現コンストラクトのいずれかを含むことを特徴とする。
【0153】
本発明の好ましい実施態様において、発現ベクターは、ベクターが少なくとも1つのバイシストロン発現ユニット(以下:a)SMタンパク質をコードする遺伝子、b)IRESエレメント、及びc)SMタンパク質をコードする第2の遺伝子、の通りに配置される)を含むことを特徴とする。図8d)を参照のこと。
【0154】
本発明の別の好ましい実施態様において、発現ベクターは、それが少なくとも1つの目的のタンパク質(GOI)及び1つのSMタンパク質(別々の発現ユニットから(図8a)又は1つのバイシストロンユニットから(図8b))をコードすることを特徴とする。本発明のさらなる好ましい実施態様において、発現ベクターは、それが別々の発現カセットから(図8c)又はバイシストロン(それにより2つの遺伝子がIRESエレメントを介して連結される(図8d))のいずれかでコードされる2つのSMタンパク質の遺伝子を含むことを特徴とする。本発明のさらなる実施態様において、発現ベクターは、それが少なくとも2つのSMタンパク質及び目的の遺伝子(図8e)又は1つのマルチシストロン発現ユニットからのいくつかのSMタンパク質をコードすることを特徴とする。
【0155】
本発明の好ましい実施態様において、発現ベクターは、SMタンパク質がMunc−18アイソフォームMunc a、b、cの1つ、好ましくはMunc−18c(配列番号39)であることを特徴とする。
【0156】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、発現ベクターは、SMタンパク質がSly−1(配列番号41)であることを特徴とする。
【0157】
本発明のさらなる実施態様において、発現ベクターは、少なくとも2つのSMタンパク質が組み合わせて使用されることを特徴とする。
【0158】
本発明の特定の実施態様において、発現ベクターは、少なくとも2つのSMタンパク質が小胞輸送の2つの異なる工程に関与することを特徴とする。
【0159】
本発明の別の実施態様において、発現ベクターは、a)1つのSMタンパク質が、小胞と細胞膜との融合を調節し、b)第2のSMタンパク質が、小胞とゴルジ複合体との融合を調節することを特徴とする。
【0160】
本発明の好ましい実施態様において、発現ベクターは、SMタンパク質がMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)であることを特徴とする。
【0161】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、発現ベクターは、少なくとも2つのSMタンパク質がXBP−1と組み合わせて、好ましくはMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)がXBP−1(配列番号43)と組み合わせて使用されることを特徴とする。
【0162】
本発明は、さらに、少なくとも2つの異種遺伝子:a)SMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメントをコードする少なくとも1つの遺伝子及びb)目的のタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞に関する。
【0163】
本発明の特定の実施態様において、細胞は、目的のタンパク質が治療用タンパク質、好ましくは抗体又は抗体フラグメントであることを特徴とする。本発明の好ましい実施態様において、細胞は、抗体がモノクローナル、ポリクローナル、哺乳動物、マウス、キメラ、ヒト化、霊長類化、霊長類、ヒト、又はその抗体フラグメント又は派生物、例えば抗体、免疫グロブリン軽鎖、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖、Fab、F(ab’)2、Fc、Fc−Fc融合タンパク質、Fv、一本鎖Fv、単一ドメインFv、四価の一本鎖Fv、ジスルフィド結合型Fv、欠失ドメイン、ミニボディ、ダイアボディ、又は上のフラグメントの1つと別のペプチドもしくはポリペプチドとの融合ポリペプチド、Fcペプチド融合、Fc毒素融合、スキャフォールドタンパク質であることを特徴とする。
【0164】
本発明の特定の実施態様において、細胞は、SMタンパク質の発現レベルが内因性レベルを有意に、好ましくは10%上回ることを特徴とする。本発明の別の実施態様において、細胞は、タンパク質の発現レベルが内因性レベルを5%上回り、好ましくは内因性レベルを10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、120%、150%、175%、200%、300%、400%、500%、1000%上回る。
【0165】
本発明のさらなる実施態様において、細胞は、本発明の発現ベクターのいずれかを含む。
【0166】
本発明の特定の実施態様において、細胞は、細胞が真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、最も好ましくは哺乳動物細胞であることを特徴とする。具体的には、げっ歯類細胞が好ましい。
【0167】
本発明の好ましい実施態様において、細胞は、真核細胞がトリ細胞であることを特徴とする。
【0168】
本発明のさらなる特定の実施態様において、細胞は、哺乳動物細胞がげっ歯類細胞、好ましくはハムスター細胞又はマウス細胞であることを特徴とする。本発明の好ましい実施態様において、細胞は、哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓CV1、サル腎臓COS、ヒトレンズ上皮PER.C6(商標)、ヒトミエローマ、ヒト羊膜細胞、ヒト胎児腎臓HEK293、ベビーハムスター腎臓、アフリカミドリザル腎臓、ヒト子宮頚癌、イヌ腎臓、バッファローラット肝臓、ヒト肺、ヒト肝臓、マウス乳腺腫瘍又はミエローマ細胞、NS0、イヌ、ブタ又はマカクの細胞、ラット、ウサギ、ネコ、ヤギ、好ましくはCHO細胞であることを特徴とする。
【0169】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、細胞は、CHO細胞がCHO野生型、CHO K1、CHO DG44、CHO DUKX−B11、CHO Pro−5又はそれに由来する突然変異体(CHO突然変異体Lec1からLec35)、好ましくはCHO DG44であることを特徴とする。
【0170】
本発明の特に好ましい実施態様において、細胞は、細胞がCHO細胞、好ましくはCHO DG44細胞であることを特徴とする。
【0171】
本発明は、さらに、目的のタンパク質、好ましくは本発明の方法のいずれかにより産生される抗体に関する。
【0172】
本発明は、さらに、1つ又はいくつかのSMタンパク質の活性又は発現、好ましくは発現をブロック又は低下させるために有用な化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0173】
本発明の特定の実施態様において、医薬組成物は、化合物がポリヌクレオチド配列であることを特徴とする。好ましくは、ポリヌクレオチド配列はshRNA、RNAi、siRNA又はアンチセンスRNA、最も好ましくはshRNAである。
【0174】
本発明のさらなる特定の実施態様において、医薬組成物は、SMタンパク質がMunc−18c(配列番号39)もしくはSly−1(配列番号41)又は2つの組み合わせであることを特徴とする。
【0175】
本発明は、さらに、a)少なくともSMタンパク質又はその派生物、突然変異体もしくはフラグメント、好ましくはMunc−18cを提供すること、b)工程a)のSMタンパク質をテスト薬剤と接触させること、c)タンパク質分泌又は細胞表面タンパク質の発現の増加又は減少に関連する効果を判断することを含む、SMタンパク質機能のモジュレーターを同定するための方法に関する。
【0176】
本発明は、さらに、癌、自己免疫疾患及び炎症の処置のための方法であって、それを必要とする患者に治療的有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0177】
本発明は、また、癌、自己免疫疾患及び炎症の処置のための本発明の医薬組成物の適用を含む方法に関する。
【0178】
本発明は、また、細胞を本発明の医薬組成物と接触させることを含む、細胞の増殖又は移動を阻害又は低下させる方法に関する。
【0179】
本発明の可能な治療的適用は、癌治療、自己免疫疾患及び炎症における細胞間コミュニケーションを制御するために、タンパク質、例えば細胞又は組織からの炎症メディエータ、成長因子、血管新生因子などの分泌を妨げること、又は、浮遊状態での成長を促し、細胞凝集を妨げる目的のためのアンカー型膜貫通タンパク質の細胞表面での存在を低下させることによる細胞付着の低下を含む。
【0180】
本発明は、さらに、目的のタンパク質の分泌及び/又は産生を増加させるための、SMタンパク質又はSMタンパク質をコードするポリヌクレオチドのインビトロ細胞又は組織培養システムでの使用に関する。好ましくは、SMタンパク質は、Munc 18タンパク質は、例えばMunc18c(配列番号39)である。また、Sly−1タンパク質、例えばSly−1(配列番号41)が好ましい。
【0181】
本発明は、さらに、本発明の方法、発現ベクター、細胞又は医薬組成物のいずれかの診断的使用に関する。
【0182】
本発明は、追加で、細胞のタンパク質分泌を増強する/細胞を操作する/細胞中で目的の異種タンパク質を産生するための方法に関し、以下
a)ヒトSec1/Munc18及びSly1/SCFD1の、発現ベクター(例、哺乳動物BI−HEX(登録商標)発現プラットフォーム)中へのクローニング、それによりタンパク質は1つ又は異なるバイ/マルチシストロン発現ユニットによりコードされうる、及び、それによりタンパク質は同じ又は異なるプラスミド上に含まれうる、
b)コンストラクトの、単独又は組み合わせのいずれかでの、同時又は連続的のいずれかでの、真核生物の宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばCHO、BHK、NS0、HEK293、PerC.6などへのトランスフェクション、
c)場合により、トランスジーン発現の検証、
d)目的の遺伝子(GOI)、好ましくは分泌タンパク質又は膜貫通タンパク質をコードするコンストラクトの導入、
e)GOIの、例えばELISA、ウエスタンブロット又はフローサイトメトリーによる発現分析を含む。あるいは、工程(b+c)及び(d+e)の順番を変えることができ、それによりGOIを最初に導入し、又は工程(b)及び(d)を同時に行うことができる。
【0183】
一般的に上に記載する本発明は、以下の実施例の参照によりより容易に理解されうる。実施例は、本明細書により、単に、本発明の特定の実施態様の例証の目的のために含まれる。以下の実施例は非限定的である。それらは、単に、本発明の可能な実施態様を示す。当業者は、条件を簡単に調整し、それを他の実施態様に適用しうる。
【0184】
実験
材料及び方法
プラスミドの設計
ヒトsly1をHEK−293全RNAからオリゴヌクレオチドORP70
【表2】


及びORP71
【表3】


を使用してRT−PCR増幅させ、BamHI/XhoIを用いてpcDNA3.1(Invitrogen)中にクローン化し、pRP24(PhCMV−sly1−pASV40)をもたらす。同様に、munc18cをクローン化
【表4】


し、pRP17(PhCMV−munc18c−pASV40)をもたらす。pRP32 (PhCMV−EYFP−sly1−pASV40)を、sly1(ORP29
【表5】


及びORP30
【表6】


を使用してpRP24からPCR増幅した)をBglII/SalIを用いてpEYFP−C1(Clontech)中に挿入することにより構築する。pRP23(PhCMV−EYFP−munc18c−pASV40)を、munc18cをBamHI/XhoIを用いてpRP17から切り出し、それをBglII/SalIを用いてpEYFP−C1中にクローン化することにより設計する。pRP3を、sly1(ORP9
【表7】


及びORP10
【表8】


を使用してPCR増幅した)をNotI/BamHIを用いてpRP1(pIRESneo(Clontech)に由来する)中に挿入し、ネオマイシン耐性を与える遺伝子をSmaI/XbaIを用いてGFP(ORP5
【表9】


及びORP6
【表10】


を使用してpLEGFP−N1(Clontech)からPCR増幅した)と置き換えることにより生成する。同様に、pRP4を、munc18c(pRP17
【表11】


からPCR増幅した)をNotI/BamHIを用いてpRP1中に挿入することにより構築する。pRP29(PhCMV−ECFP−syntaxin4−pASV40)を、シンタキシン4
【表12】


のPCR媒介性の増幅、それに続くHindIII/SalIを用いたpECFP−C1(Clontech)中へのクローン化により構築する。同様に、シンタキシン5をクローン化
【表13】


し、pRP40(PhCMV−ECFP−syntaxin5−pASV40)をもたらす。sly1又はmunc18c特異的shRNAを持つ発現ベクターを、二本鎖DNAフラグメントをBbsI/XbaIを用いてpmU6中に挿入することによりクローン化:(i)sly1
【表14】


;(ii)munc18c
【表15】


;(iii)コントロールshRNA
【表16】


する。
【0185】
ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードするpSEAP2−controlを、Clontechから購入し、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来の分泌αアミラーゼ(SAMY)を持つpSS158が以前に記載されている49。ヒト血管内皮成長因子121(VGEF121)を含むpWW276ならびにヒトIgG1リツキシマブの重鎖及び軽鎖をそれぞれコードするpWW943及びpWW946が、ご厚意でWilfried Weberにより提供されている。xbp−1発現ベクターpcDNA3.1−Xbp−1(PhCMV−xbp−1−pASV40)は、以前に記載されている(Tigges and Fussenegger, 2006)。
【0186】
細胞培養及びトランスフェクション
a)付着細胞の培養:
チャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1;ATCC CCL−61)及びヒト胎児腎臓細胞(HEK−293;ATCC CRL−1573)を、ChoMaster HTS培地(Cell Culture Technology, Gravesano, Switzerland)又はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)(5% FCS(PAN Biotech, Aidenbach, Germany;cat. no. 3302, lot no.P231902)を添加)中で、37℃で、5% COを含む加湿空気中で培養する。一過性トランスフェクションのために、1×10個の細胞を12ウェルの組織培養プレートの1つのウェル中に播種し、24時間後に改変リン酸カルシウムベースのプロトコール47又はFuGENE6トランスフェクション試薬(Roche, Basel, Switzerland)を使用してトランスフェクトする。構成的なトランスジーン発現のために操作されたモノトランスジェニックな安定CHO−K1派生物を、以下の組み合わせの発現ベクター及び選択ベクターならびに抗生物質を使用して産生する:(i)CHO−Sly116及びCHO−Sly123;pRP24;400μg/ml G418(Merck);(ii)CHO−Munc18c及びCHO−Munc18c、pRP17;400μg/ml G418。ダブルトランスジェニック細胞株CHO−Sly1−Munc18c及びCHO−Sly1−Xbp1を、それぞれpRP17及びpPUR(Clontech)、pcDNA3.1−Xbp−135及びpPURの、CHO−Sly123中へのコトランスフェクション、それに続くG418及びピューロマイシン(4μg/ml)でのクローン選択により構築する。トリプルトランスジェニック細胞株CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1(sly1、munc18c及びxbp−1の構成的発現を可能にする)を、pcDNA3.1−Xbp−1及びpZeoSV2(Invitrogen)のCHO−Sly1−Munc18cへのコトランスフェクション、それに続くG418(400μg/ml)、ピューロマイシン(4μg/ml)、及びゼオシン(150μg/ml)での選択により構築する。
【0187】
b)浮遊培養
モノクローナル抗体(mAB)産生CHO−DG44細胞(Urlaub et al., 1986)及びその安定トランスフェクタントの浮遊培養物を、BI商標の化学的に定義された無血清培地中でインキュベートする。シードストック培養物を2〜3週間毎に継代培養する(播種密度はそれぞれ3×10〜2×10個細胞/ml)。細胞をTフラスコ又は振盪フラスコ(Nunc)中で成長させる。Tフラスコを加湿インキュベータ(Thermo)中で、振盪フラスコをMultitron HTインキュベータ(Infors)中で、5% CO、37℃及び120rpmでインキュベートする。細胞の濃度及び生存率を、血球計を使用したトリパンブルー排除により測定する。
【0188】
流加培養
細胞を、3×10個細胞/mlで、1000ml振盪フラスコ中へ、抗生物質又はMTXを伴わない250mlのBI商標産生培地(Sigma-Aldrich, Germany)中へ播種する。培養物を、120rpmで、37℃及び5% CO(後に、細胞数が増加するにつれて2%まで低下する)中で撹拌する。培養パラメータ(pH、グルコース及び乳酸の濃度を含む)を毎日測定し、pHを、必要に応じてNaCOを使用してpH 7.0に調整する。BI商標フィード溶液を24時間毎に加える。細胞の密度及び生存率を、自動CEDEX細胞定量化システム(Innovatis)を使用したトリパン−ブルー排除により測定する。細胞培養液からサンプルを回収し、ELISAによる力価測定に供する。
【0189】
ELISAでは、ヒトFcフラグメントに対する抗体(Jackson Immuno Research Laboratories)及びヒトカッパ軽鎖HRP抱合体に対する抗体(Sigma)を使用する。
【0190】
累積的で特異的な産生性を、所定の日での産物濃度(その時間点までの「生存細胞の積分」(IVC)により割る)として算出する。
【0191】
RNA単離、RT−PCR、及び定量的リアルタイムPCR
全RNAを、哺乳動物細胞から、NucleoSpin RNA IIキット(Macherey-Nagel, Oensingen, Switzerland)を使用して調製し、RT−PCRを、TITANIUM(商標)One-Step RT-PCRキット(Clontech)を用いて、製造業者のプロトコールに従って実施する。seap、samy及びvegf121 mRNAの相対的な定量化を、Applied Biosystems 7500リアルタイムPCRデバイスを用いて、25μlの反応(Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems, Warrington, UK)、100ngのcDNA、900nMのseapに特異的なフォワード及びリバースのプライマー
【表17】


)を使用して実施する。全てのサンプルを、リボソーム18S−RNA特異的な転写物アッセイ(Applied Biosystems)を使用して標準化し、融解曲線分析を全てのアンプリコンについて行い、非特異的な増幅の非存在を確認する。
【0192】
共焦点顕微鏡法
HEK−293を、ポリリジンコーティングしたガラススライド上に播種し、トランスフェクトし、48時間後にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、パラホルムアルデヒド(3% w/v)で固定し、PBSで再び洗浄し、共焦点顕微鏡により分析する。画像をLeica TCS SP1(Leica, Heerbrugg, Switzerland)を用いて記録し、Adobe Photoshop 10により分析する。
【0193】
抗体、免疫沈降法及びウエスタンブロット
哺乳動物細胞を氷上で溶解緩衝液(50mM Tris−HCL、pH 7.5、150mM NaCl、1mM DTT、1mM EDTA、1% Triton X−100)中に溶解する。全タンパク質ライセートを14,000xgでの遠心分離(10分間4℃)、それに続くプロテインA−Sepharoseビーズ(Amersham Biosicences, Uppsla, Sweden)を用いたインキュベーション(30分間4℃)により得る。免疫沈降は、2mgの全タンパク質を親和性精製Munc18c抗体(プロテインA−Sepharoseへ共役した)と、最終容積500μlの溶解緩衝液中で、4℃で一晩の回転により混合させることにより実施する。ビーズを次に500μl溶解緩衝液で4回洗浄し、タンパク質を溶出させ、SDS−PAGE、それに続くウエスタンブロット分析により分離する。Sly1に特異的な抗体は、ご厚意で、Jesse Hay(University of Montana, Missoula, MO, USA)により提供される。Munc18a、シンタキシン4及びVamp2に特異的な抗体をSynaptic Systems(Goettingen, Germany)から購入し、Munc18b、Munc18c及びp27Kip1に対する抗体はSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA, USA)からである。ブロットしたタンパク質をECL-Plus検出試薬及びHRP抱合二次抗体(Amersham, Piscataway, NJ, USA)を使用して可視化する。
【0194】
タンパク質の産生
タンパク質の産生を、48時間後に培養中で標準化アッセイ:SEAP、p−ニトロフェニルリン酸ベースの吸光度の時間経過、SAMY、ブルースターチPhadebas(登録商標)アッセイ(Pharmacia Upjohn, Peapack, NJ, cat. no. 10-5380-32);ヒトVEGF121特異的ELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN, cat. no. DY293)によるVEGF121及びELISA(Sigma, cat. no. I2136及びA0170)によるリツキシマブ、を使用して評価する。
【0195】
浮遊培養中で成長している細胞の抗体力価及び特異的な産生性を、以下の通りに測定する:
抗体産生CHO−DG44を、バイシストロンベクターを用いてトランスフェクトし、異種タンパク質発現のmAb産生性に対する効果を分析する。シードストック培養中での産生性を評価するために、細胞培養上清からのサンプルを3つの連続継代から回収する。産物の濃度を、次に、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により分析する。ELISAでは、ヒトFcフラグメントに対する抗体(Jackson Immuno Research Laboratories)及びヒトカッパ軽鎖HRP抱合体に対する抗体(Sigma)を使用する。細胞の密度及び生存率と一緒に、特異的な産生性を以下の通りに算出する:
【数1】


qp=特異的な産生性(pg/細胞/日)
mAb=抗体濃度(mg/L)
t=時間点(日)
cc=細胞数(×10個細胞/mL)
P=継代
【0196】
リツキシマブのN結合型グリコシル化プロファイル
リツキシマブをプロテインA−Sepharoseを使用して精製し、10mMグリシン緩衝液(pH2.8)を用いて溶出し、その後に2M Tris(pH9.0)で中和する。精製/完全性をSDS−PAGEにより確認する。オリゴ糖を、次に、抗体からNグリコシダーゼ消化(PNGaseF, EC 3.5.1.52, QA-Bio, San Mateo, CA)(2mM Tris(pH7)中の0.05mU/mgタンパク質で、37℃で3時間)により酵素的に放出させる。放出したオリゴ糖を、マトリクスとしてDHBを用いたMALDI分析(Papac et al., 1998)(陽イオンモードで動作するAutoflex MALDI/TOF(Bruker Daltonics, Faellanden, Switzerland)を使用する)の前に、150mM酢酸中でインキュベートする。
【0197】
HRP輸送アッセイ
ヒトHT1080線維肉腫細胞を、分泌西洋ワサビペルオキシダーゼ(ssHRP)をコードするコンストラクト及び空ベクター、Munc18c、Sly1のための発現コンストラクト、又はMunc18c、Sly1の両方をコードするバイシストロン発現ユニットのいずれかを用いてコトランスフェクトする。トランスフェクションから24時間及び48時間後、細胞培養液からのサンプルを採取し、レポーター−タンパク質ssHRPの分泌を清澄化した細胞上清とTMB試薬(BD Biosciences, Pharmingen)とのインキュベーションにより検出する。3分後、反応を停止させ、吸光度を450nmのELISAリーダー(Spectra Rainbow Thermo)を用いて測定し、ssHRP力価を測定する。特異的な産生性をさらに分析するために、細胞を最後の測定後にトリプシン処理し、CASY(登録商標)セルカウンター(Schaerfe System)を使用してカウントし、特異的な産生性を、ssHRP力価を全細胞数により割ることにより算出する。
【0198】
実施例
実施例1:Sly1及びMunc18cは、HEK−293において分泌経路に沿って局在化する。
本発明者らはRT−PCRベースの分析を使用し、HEK−293におけるSMタンパク質Sly1及びMunc18のアイソフォーム(a、b、c)の発現をプロファイリングする。図1a及び1bに示す通り、sly1(NM_016160)及びmunc18c(NM_007269)が高レベルで、muc18b(NM_006949)が微量レベルで発現されるが、ニューロン特異的munc18a(NM_003165)の転写物は検出できない。SMタンパク質プロファイルをウエスタンブロットにより確認する(図1c)。Sly1の細胞内局在化及び主要なMunc18アイソフォームMunc18cを、HEK−293においてYFP−Sly1(pRP32)及びCFP−シンタキシン5(pRP40)、又はYFP−Munc18c(pRP23)及びCFP−シンタキシン4(pRP29)を同時発現させることにより分析する。シンタキシン5はSly1結合SNAREであり、ゴルジ装置に局在化し、シンタキシン4はMunc18c相互作用SNAREであり、細胞膜に結合する。共焦点顕微鏡法によって、Sly1がゴルジ装置でシンタキシン5と非常にコンパクトな核周囲共局在化を呈し、細胞膜がMunc18c及びシンタキシン4について同時染色されることが示される(図1d)。これらの結果によって、Sly1及びMunc18cがHEK−293において発現され、ゴルジ装置及び細胞膜に局在化することが実証され、これはそれぞれのオルガネラでの2つの別個の融合工程におけるそれらの役割と一致する(Jahn et al., 2003)。
【0199】
実施例2:Sly1及びMunc18はタンパク質分泌を調節する。
SMタンパク質は小胞融合(細胞内タンパク質輸送に必須であるが、しかし、タンパク質分泌でのそれらの役割が分かりにくいままである)を制御することが公知である。全エキソサイトーシスに及ぼすSly1及びMunc18の影響を特性付けするために、本発明者らはこれらのSMタンパク質に特異的なshRNAを設計する。Sly1及びMunc18cのノックダウンは、ジシストロンSly1−(pRP3;PhCMV−sly1−IRES−eGFP−pA)及びMunc18c−(pRP4;PhCMV−munc18c−IRES−eGFP−pA)(レポーターコンストラクト、そして特異的ならびに非特異的なコントロールshRNAをコードする)を用いてコトランスフェクトした細胞の蛍光顕微鏡法により実証される(図2)。個々のshRNAが内因性Sly1及びMunc18c発現をノックダウンする能力が、HEK−293において確認され、最高70%に達する(図3a及び3c)。哺乳動物細胞の全タンパク質分泌能力に及ぼすSly1及びMunc18cノックダウンの影響を分析するために、本発明者らは、pSEAP2−control及びpRP5(shRNAsly1_1)、pRP6(shRNAsly1_2)、pRP7(shRNAsly1_3)、又はpRP12(shRNAmunc18c_1)、pRP14(shRNAmunc18c_2)、pRP38(shRNAmunc18c_3)、pRP39(shRNAmunc18c_4)をHEK−293中へコトランスフェクトし、培養上清中でのSEAPレベルをプロファイリングした。Sly1及びMunc18cノックダウンとSEAP産生における減少との直接的な相関は、哺乳動物の分泌経路におけるこれらのSMタンパク質の中心的な役割を示唆する(図3b及び3d)。
【0200】
実施例3:Sly1及びMunc18cの異所性発現によって哺乳動物細胞の分泌能力が増加する。
CHO−K1におけるSly1又はMunc18cの異所性発現に続き(図4a、4b、4c)、SEAP、SAMY又はVEGF121の異種産生が、産物遺伝子の転写を促すために使用されるプロモーター(PSV40、PhCMV、PEF1α)に非依存的に最高5倍増加される。同様の結果が、HEK−293細胞を使用する場合にも観察される(データ示さず)。異種タンパク質産生の増進は、翻訳後機構により媒介される。なぜなら、SEAP、SAMY及びVEGFのmRNAレベルは、Sly1、Munc18c、又は両方の上昇の存在又は非存在において、およそ一定であるからである(図4d)。本発明者らの結果は、過去の試験とは明瞭に対照的であり、一連の細胞型(脂肪細胞及び筋細胞)におけるエキソサイトーシスのためのMunc18タンパク質の阻害効果を主張し(Riento et al., 2000;Kanda et al., 2005;Tellam et al., 1997;Thurmond et al., 1998)、Munc18c及びSly1の両方が全エキソサイトーシスを促進するとの最初の証拠を提供する。
【0201】
実施例4:分泌経路に対するSMタンパク質及びXbp−1の相乗効果
Sly1及びMunc18ならびにXbp−1は、近年、分泌オルガネラのサイズを増加させることによりタンパク質分泌を増強し(Tigges and Fussenegger, 2006)、分泌経路において異なる標的を有することが確認されているため、それらはタンパク質産生を相乗的に増強することが可能でありうる。本発明者らは、従って、Sly1、Munc18c及びXbp−1をコードする、ならびに、SEAP、SAMY及びVEGF121を含む発現ベクターの異なる組み合わせをCHO−K1中にコトランスフェクトし、培養上清中のレポータータンパク質レベルをプロファイリングする。図4aに示す通り、sly1及びmunc18cの同時過剰発現は、sly1又はmunc18c単独による5倍と比較し、SEAP産生における8倍の増加を導く。SAMY及びVEGF121の分泌も増加する(図4b、4c)。sly1、munc18c及びxbp−1の過剰発現は、一斉に、SEAP、SAMY及びVEGFの分泌をそれぞれ10倍、12倍及び8倍増加させ(図4a、4b、4c)、Sly1とMunc18cの間、及び2つのSMタンパク質と一般的なオルガネラ膨張因子Xbp−1の間での分泌に対する相乗効果の存在を明確に実証する。
【0202】
実施例5:SMタンパク質は、SNARE媒介性の輸送機構を刺激することにより分泌経路を増強する。
過去の試験では、エキソサイトーシスにおけるMunc18cに阻害的な役割を割り当てており、それは本発明の結果とは対照的である(Riento et al., 2000;Kanda et al., 2005;Tellam et al., 1997;Thurmond et al., 1998)。輸送機構、特にシンタキシン4、SNAP−23及びVAMP2から成るエキソサイトーシスSNAREタンパク質とのその相互作用におけるMunc18cの役割に分子的洞察を提供するために、本発明者らは免疫沈降実験を実施する。図5に示す通り、Munc18c特異的抗体は、シンタキシン4、SNAP−23及びVAMP2の有意な分画と共にMunc18cを定量的に沈殿させ、Munc18cとこれらのSNAREとのインビボでの結合を示し、分泌経路において小胞−オルガネラ融合を促す(Peng and Gallwitz, 2002;Shen et al., 2007;Scott et al., 2004)。この知見は、Sly1(完全に組み立てられたSNARE複合体に結合し、ゴルジ装置への融合を促す)と同様に、Munc18cは直接的にSNARE複合体とも相互作用することを強調しており、SNARE媒介性の輸送機構を促進することによる保存された作用機構を示唆する。
【0203】
実施例6:哺乳動物細胞における分泌能力の増加のための哺乳動物細胞のSMタンパク質ベースの操作。
哺乳動物細胞の分泌能力に対するSly1及びMunc18c発現のポジティブな効果は、分泌増加のために哺乳動物産生細胞株を操作するための新規の翻訳後アプローチを指摘する。本発明者らは、従って、sly1(CHO−Sly116及びCHO−Sly123)又はmunc18c(CHO−Munc18c及びCHO−Munc18c)のいずれかの構成的発現のために操作された安定なCHO−K1由来細胞株を生成する。CHO−Sly116及びCHO−Sly123は、4倍及び8倍だけSEAP分泌を(図6a)、4倍及び5倍だけSAMY産生を(図6b)刺激する。興味深いことに、より多くのSEAPを産生するCHO−Sly123は、また、より高いSly1レベルを示し、SMタンパク質と産物タンパク質とのポジティブな相関を示唆する(図6c)。同様に、構成的munc18c発現のためのトランスジェニック細胞(CHO−Munc18c)は、9倍及び6.5倍多いSEAP及びSAMYを産生し(図6e及び6f)、より多くのSEAPを産生するCHO−Munc18は、また、より高いMunc18cレベルを示す(図6d)。安定な細胞株CHO−Sly1−Munc18c(構成的なSly1及びMunc18c発現のためのダブルトランスジェニック)及びCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1(構成的なSly1、Munc18c及びXbp−1発現のためのトリプルトランスジェニック)は、親CHO−K1と比較し、13倍及び16倍高いSEAP産生を示す(図6g)。
【0204】
実施例7:SMタンパク質ベースの分泌操作によって、産生細胞株の特異的な抗体産生性が増加する。
プロトタイプ生物製剤の製造シナリオにおいてSMタンパク質ベースの分泌操作を検証するために、本発明者らは、モノクローナル抗ヒトCD20 IgG1(リツキシマブとして公知)をCHO−Sly116及びCHO−Sly123において(最高10倍増加)、CHO−Sly1−Munc18cにおいて(最高15倍増加)、ならびにCHO−Sly1−Xbp−1において(最高13倍増加)及びCHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において(最高19倍増加)発現させる(図7a)。CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1中でリツキシマブを産生する場合、その場限りの産生レベルである最高40pg/細胞/日に達することができ、それはアイソジェニックなコントロール細胞株と比較し20倍近くの増加に相当する(図7a)。SDS−PAGE分析によって、CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1細胞及び野生型CHO−K1細胞により産生される抗体は、構造的にインタクトであり、互いに識別不能であることが示される(図7b、7c)。CHO−Sly1−Munc18c−Xbp−1において産生されるリツキシマブからのN結合型Fcオリゴ糖のMaldi−TOFベースの糖プロファイリングによって、SM/Xbp−1ベースの分泌操作が産物の品質を損なわないことを示す天然産生細胞株と比較し、差異は明らかにならなかった(図7d及び7e)。
【0205】
実施例8:SMタンパク質ベースの分泌操作によって、産生プロセスにおける全抗体収率が増加する。
a)SMタンパク質の異種発現を使用し、工業的な製造に関連する条件下での治療用タンパク質の分泌を増強することもできるか否かをテストするために、抗体産生CHO細胞株(CHO DG44)(ヒト化抗CD44v6 IgG抗体BIWA 4を分泌する)を、空ベクター(MOCKコントロール)あるいはSly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又はバイシストロン発現ユニットとしての両方のタンパク質をコードする発現コンストラクトを用いて安定的にトランスフェクトする。細胞を、次に、安定な細胞プールを得るための選択に供する。続く6継代中に、上清を全ての安定な細胞プールのシードストック培養から採取し、MCP−1力価をELISAにより測定し、平均細胞数により割り、特異的な産生性を算出する。SMタンパク質のいずれかを発現する全ての細胞中で、IgG発現が、MOCK又は非トランスフェクト細胞と比較して、有意に増強され、それにより最も高い値が、両方のSMタンパク質を同時に発現する細胞プール中で見られる。
【0206】
同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。全細胞数及び細胞生存率を、毎日ならびに3、5、7、9及び11日目に測定し、サンプルを細胞培養液から採取し、IgG力価及び特異的な産生性を測定する(図10A、B)。これらの条件下で、SMタンパク質トランスジェニック細胞は、MOCKコントロール及び非トランスフェクト親細胞株と比較し、同様の成長特性を示す。しかし、MOCKコントロールと比較し、特異的なIgG産生性が、Sly1もしくはMunc−18又は両方のSMタンパク質を同時に発現する細胞中で有意に増加し(最高50%高い)(図10A)、産生プロセス中でのモノクローナル抗体力価における明らかな増加をもたらす(図10B)。
【0207】
まとめると、このデータは、複数の培養型式(連続培養、バイオリアクターバッチ及び流加培養を含む)における治療用タンパク質産生を増強するためのSMタンパク質ベースの細胞操作アプローチの適用性を実証する。
【0208】
b)CHO宿主細胞(CHO DG44)を、最初に、Sly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又は両方のタンパク質を一緒にコードするベクターを用いてトランスフェクトする。細胞を選択圧に供し、SMタンパク質の異種発現を実証する細胞株を選別する。続いて、これらの細胞株及び並行してCHO DG 44野生型細胞を、目的の遺伝子としてヒトモノクローナルIgG型抗体をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトする。2回目の選択後、上清を、全ての安定な細胞プールのシードストック培養から、続く6継代の期間にわたり採取し、IgG力価をELISAにより測定し、平均細胞数により割り、特異的な産生性を算出する。
【0209】
最も高い値が両方のSMタンパク質を持つ細胞プールにおいて見られ、Sly1又はMunc−18のいずれか単独を発現するものが続き、それらは依然として、SMタンパク質のいずれも発現しないCHO DG−44細胞と比較して、有意に高い抗体力価を産生する。同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、両方のSMタンパク質の一緒での過剰発現は、両方(抗体力価及び特異的な産生性)における有意な増加を導く。これは、Sly1又はMunc−18単独の異種発現が、治療用抗体の分泌を増強するために十分であることを示す。加えて、両方のタンパク質の組み合わせでの異種発現は、一体化して、相乗的な様式で、一過性ならびに安定なトランスフェクト細胞株における全エキソサイトーシスを増加させる。
【0210】
実施例9:SMタンパク質の過剰発現は、生物製剤用タンパク質(線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP))の産生を増加させる。
(a)膜貫通ゼラチナーゼ線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)を発現するヒト線維肉腫細胞株(HT1080、ATCC CCL−121)を、空ベクター(MOCKコントロール)あるいはSly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又はバイシストロン発現ユニットとしての両方のタンパク質をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトする。細胞を、次に、安定な細胞プールを得るための選択に供する。これらのプールのシードストック培養から、細胞を回収し、そしてFACSによるFAP表面発現の決定のために固定化する、又は、細胞ライセートを、抗FAP抗体を使用したウエスタンブロットのために調製する。MOCK細胞と比較し、細胞表面上のFAPの量は、SMタンパク質を発現する全ての細胞において有意に増加し、発現は、両方(Sly1及びMunc−18)を発現する細胞において最も高い。この結果は、両方のSMタンパク質が相乗的に作用して、細胞表面の膜貫通タンパク質についての細胞の産生及び輸送能力を増強することを示す。
【0211】
b)ヒトHT1080又はHEK293細胞を、最初に、Sly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又は両方のタンパク質を一緒にコードするベクターを用いてトランスフェクトする。細胞を選択圧に供し、SMタンパク質の異種発現を実証する細胞株を選別する。続いて、これらの細胞株及び並行してHT1080又はHEK293野生型細胞を、目的の遺伝子としてFAPアルファをコードするベクターを用いてトランスフェクトする。2回目の選択後、細胞を、全ての安定な細胞プールの培養から採取し、FAPの発現レベルをFACS又はウエスタンブロッティングにより測定する。最も高い値が両方のSMタンパク質を持つ細胞プールにおいて見られ、Sly1又はMunc−18のいずれか単独を発現するものが続き、それらは依然として、SMタンパク質のいずれも発現しない親細胞と比較して、有意に高いFAPレベルを発現する。同様の結果を、安定なトランスフェクタントを浮遊状態での成長に適用させ、バッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、両方のSMタンパク質の一緒での過剰発現は、FAP発現における有意な増加を導く。これは、Sly1及びMunc−18の異種発現が、膜貫通タンパク質の産生及び細胞表面局在化の改善をもたらし、それにより効果が、両方のタンパク質の組み合わせでの異種導入時に最も高いことを示す。
【0212】
実施例10:SMタンパク質の過剰発現は、生物製剤用タンパク質(膜貫通タンパク質上皮成長因子受容体(EGFR))の産生を増加させる。
(a)膜貫通タンパク質上皮成長因子受容体(EGFR)を発現するCHO細胞株(例、CHO−DG44)を、空ベクター(MOCKコントロール)あるいはSly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又はバイシストロン発現ユニットとしての両方のタンパク質をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトする。細胞を、次に、安定な細胞プールを得るための選択に供する。これらのプールのシードストック培養から、細胞を続く4継代中に採取し、そしてEGFRの発現レベルをFACS又はウエスタンブロットにより測定する。MOCK細胞と比較し、細胞表面上のEGFRの量は、SMタンパク質を発現する全ての細胞において有意に増加し、発現は、両方(Sly1及びMunc−18)を発現する細胞において最も高い。極めて同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、Sly1又はMunc−18のいずれかの過剰発現が、コントロールと比較し、EGFR発現において中程度の増加をもたらすのに対して、EGFRレベルは、Sly1及びMunc−18の同時過剰発現時に有意に増加し、両方のSMタンパク質が相乗的に作用し、複数の培養型式(連続培養、バイオリアクターバッチ及び流加培養を含む)における細胞表面膜貫通タンパク質についての細胞の産生及び輸送能力を増強する。
【0213】
b)CHO宿主細胞(CHO DG44)を、最初に、Sly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又は両方のタンパク質を一緒にコードするベクターを用いてトランスフェクトする。細胞を選択圧に供し、SMタンパク質の異種発現を実証する細胞株を選別する。続いて、これらの細胞株及び並行してCHO DG 44野生型細胞を、目的の遺伝子としてEGFRをコードするベクターを用いてトランスフェクトする。2回目の選択後、細胞を、全ての安定な細胞プールのシードストック培養から、連続6継代について採取し、EGFRの発現レベルをFACS又はウエスタンブロッティングにより測定する。最も高い値が両方のSMタンパク質を持つ細胞プールにおいて見られ、Sly1又はMunc−18のいずれか単独を発現するものが続き、それらは依然として、SMタンパク質のいずれも発現しないCHO DG−44細胞と比較して、有意に高いEGFRレベルを発現する。同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、両方のSMタンパク質の一緒での過剰発現は、EGFR発現における有意な増加を導く。これは、Sly1及びMunc−18の異種発現が、膜貫通タンパク質の産生及び細胞表面局在化の改善をもたらし、それにより効果が、両方のタンパク質の組み合わせでの異種導入時に最も高いことを示す。
【0214】
実施例11:SMタンパク質の過剰発現は、生物製剤用タンパク質(単球走化性タンパク質1(MCP−1))の産生を増加させる。
(a)単球走化性タンパク質1(MCP−1)を分泌するCHO細胞株(CHO DG44)を、空ベクター(MOCKコントロール)あるいはSly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又はバイシストロン発現ユニットとしての両方のタンパク質をコードする発現コンストラクトを用いてトランスフェクトする。細胞を、次に、安定な細胞プールを得るための選択に供する。続く6継代中に、上清を全ての安定な細胞プールのシードストック培養から採取し、MCP−1力価をELISAにより測定し、平均細胞数により割り、特異的な産生性を算出する。SMタンパク質のいずれかを発現する全ての細胞中で、IgG発現が、MOCK又は非トランスフェクト細胞と比較し、有意に増強され、それにより最も高い値が、両方のSMタンパク質を同時に発現する細胞プール中で見られる。同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、両方のSMタンパク質の過剰発現は、MCP−1分泌の増強を導き、両方のSMタンパク質が相乗的に作用し、複数の培養型式(連続培養、バイオリアクターバッチ及び流加培養を含む)における細胞のタンパク質産生能力を改善することを示す。
【0215】
b)CHO宿主細胞(CHO DG44)を、最初に、Sly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又は両方のタンパク質を一緒にコードするベクターを用いてトランスフェクトする。細胞を選択圧に供し、SMタンパク質の異種発現を実証する細胞株を選別する。続いて、これらの細胞株及び並行してCHO DG 44野生型細胞を、目的の遺伝子として単球走化性タンパク質1(MCP−1)をコードするベクターを用いてトランスフェクトする。2回目の選択後、上清を、全ての安定な細胞プールのシードストック培養から、続く6継代の期間にわたり採取し、MCP−1力価をELISAにより測定し、平均細胞数により割り、特異的な産生性を算出する。
【0216】
最も高い値が両方のSMタンパク質を持つ細胞プールにおいて見られ、Sly1又はMunc−18のいずれか単独を発現するものが続き、それらは依然として、SMタンパク質のいずれも発現しないCHO DG−44細胞と比較して、有意に高いMCP−1力価を産生する。同様の結果を、安定なトランスフェクタントをバッチ発酵又は流加発酵に供する場合に得ることができる。これらの設定の各々において、両方のSMタンパク質の一緒での過剰発現は、両方(MCP−1力価及び特異的な産生性)における有意な増加を導く。これは、Sly1又はMunc−18単独の異種発現が、MCP−1分泌を増強するために十分であることを示す。しかし、両方のタンパク質の組み合わせでの異種発現は、一体化して、相乗的な様式で、一過性ならびに安定なトランスフェクト細胞株における全エキソサイトーシスを増加させる。
【0217】
実施例12:SMタンパク質は、ヒト細胞からのHRP分泌を増強する。
SMタンパク質の過剰発現を使用し、非げっ歯類、特にヒトの細胞における分泌輸送を増強することもできるか否かという疑問に答えるために、本発明者らは、分泌型西洋ワサビペルオキシダーゼ(ssHRP)(構成的なタンパク質分泌のためのレポーターとして使用できる)をコードするプラスミドを使用する。
【0218】
ヒト線維肉腫細胞株(HT1080、ATCC CCL−121)を、ssHRPをコードする発現プラスミドと、空ベクター(Mockコントロール)あるいはSly1(配列番号41)もしくはMunc−18(配列番号39)又はバイシストロン発現ユニットとしての両方のタンパク質をコードする発現コンストラクトのいずれかを用いてコトランスフェクトする。トランスフェクションから24及び48時間後、細胞培養上清からのサンプルを採取し、ペルオキシダーゼ活性について分析する。測定に続き、細胞をトリプシン処理及びカウントし、細胞の特異的な産生性を決定する。
【0219】
既に、24時間後には、コントロール細胞と比較し、ssHRP分泌におけるわずかな増加が、Munc18又はMunc18及びSly1の両方を発現する細胞において検出できる(図9)。トランスフェクションから48時間後、SMタンパク質を発現する全ての細胞が、Mockコントロールと比較し、ssHRP力価の増強を示す(図9)。最も高い値が、Munc18を用いてトランスフェクトした細胞からのサンプル中で測定され、それはコントロールサンプルと比較して1.4倍増加したHRP活性を示す。また、Munc18、Sly1、又は両方のSMタンパク質のいずれかを用いてトランスフェクトした細胞の特異的な産生性は、コントロール細胞と比較し、有意に増強された(図9)。
【0220】
これによって、両方のSMタンパク質が機能的に発現され、ヒト細胞からのタンパク質分泌を増強することが確認される。
【0221】
【表18】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の異種タンパク質を細胞中で産生させる方法であって、
a)SEC1/Munc18群のタンパク質(SMタンパク質)からのタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させること、及び
b)目的の異種タンパク質の発現に影響をもたらすこと
を含む方法。
【請求項2】
工程b)において、目的の異種タンパク質の発現を増加させ、好ましくは工程b)において、目的の異種タンパク質の分泌を増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程a)における1つの遺伝子が、3つのMunc18アイソフォーム、Munc18a、b又はcの1つ、好ましくはMunc18c(配列番号39)をコードする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程a)における1つの遺伝子が、Sly−1(配列番号41)をコードする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
工程a)がSMタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の発現を増加させることを含み、SMタンパク質が小胞輸送の2つの異なる工程に関与する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
a)1つの遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞と細胞膜との融合を調節し、
b)第2の遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞とゴルジ複合体との融合を調節する、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
Munc18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)の発現が、増加される、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
工程a)が、
i)SMタンパク質ファミリーのメンバーをコードする第1の遺伝子の発現を増加させること、
ii)SMタンパク質ファミリーの別のメンバーをコードする第2の遺伝子の発現を増加させること、及び
iii)XBP−1をコードする第3の遺伝子の発現を増加させること
を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項9】
Munc18c(配列番号39)、Sly−1(配列番号41)及びXBP−1(配列番号43)の発現が、増加される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
a)細胞中に、1つ又は複数のベクターシステム(少なくとも2つのポリペプチドをコードする核酸配列を含み、
i)少なくとも1つの第1の核酸配列がSMタンパク質をコードし、及び
ii)第2の核酸配列が目的のタンパク質をコードする)を導入すること、
b)目的のタンパク質及び少なくとも1つのSMタンパク質を発現させること
を含む、細胞を操作する方法。
【請求項11】
SMタンパク質が、Munc−18アイソフォームのいずれか1つ、好ましくはMunc−18c(配列番号39)又はSly−1(配列番号41)である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程a)i)において、2つのSMタンパク質が組み合わせで使用され、SMタンパク質が小胞輸送の2つの異なる工程に関与する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
a)1つの遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞と細胞膜との融合を調節し、
b)第2の遺伝子がSMタンパク質をコードし、それが小胞とゴルジ複合体との融合を調節すること
を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
組み合わせで使用される2つのSMタンパク質が、Munc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程a)i)において、2つのSMタンパク質がXBP−1との組み合わせで使用される、請求項10又は12記載の方法。
【請求項16】
SMタンパク質が、XBP−1(配列番号43)と組み合わせたMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
細胞が、真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、最も好ましくは哺乳動物細胞である、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
目的のタンパク質が、治療用タンパク質である、請求項1〜17記載の方法。
【請求項19】
目的のタンパク質が、抗体又は抗体フラグメントである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
a)少なくとも1つのポリペプチドがSMタンパク質であり、及び
b)第2のポリペプチドが目的のタンパク質である、
少なくとも2つのポリペプチドをコードする発現ユニットを含む発現ベクター。
【請求項21】
目的のタンパク質が、治療用タンパク質、好ましくは抗体又は抗体フラグメントである、請求項20記載の発現ベクター。
【請求項22】
発現ユニットが、マルチシストロン、好ましくはバイシストロンである、請求項20又は21記載の発現ベクター。
【請求項23】
SMタンパク質が、Munc−18アイソフォームMunc a、b、cの1つ、好ましくはMunc−18c(配列番号39)である、請求項20〜22記載の発現ベクター。
【請求項24】
SMタンパク質が、Sly−1(配列番号41)である、請求項20〜22記載の発現ベクター。
【請求項25】
少なくとも2つのSMタンパク質が、組み合わせて使用される、請求項20〜24記載の発現ベクター。
【請求項26】
ベクターが、少なくとも1つのバイシストロン発現ユニット(以下:
a)SMタンパク質をコードする遺伝子、
b)IRESエレメント、及び
c)SMタンパク質をコードする第2の遺伝子
の通りに配置される)を含む、請求項25記載の発現ベクター。
【請求項27】
少なくとも2つのSMタンパク質がXBP−1と組み合わせて、好ましくはMunc−18c(配列番号39)及びSly−1(配列番号41)がXBP−1(配列番号43)と組み合わせて使用される、請求項20〜26記載の発現ベクター。
【請求項28】
少なくとも2つの異種遺伝子:
a)SMタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子及び
b)目的のタンパク質をコードする別の遺伝子
を発現する細胞。
【請求項29】
目的のタンパク質が、治療用タンパク質、好ましくは抗体又は抗体フラグメントである、請求項28記載の細胞。
【請求項30】
SMタンパク質の発現レベルが、内因性レベルを有意に、好ましくは10%上回る、請求項28又は29記載の細胞。
【請求項31】
請求項20〜27記載の発現ベクターのいずれかを含む、請求項28〜30のいずれか一項記載の細胞。
【請求項32】
細胞が、真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、最も好ましくは哺乳動物細胞である、請求項28〜31のいずれか一項記載の細胞。
【請求項33】
細胞が、CHO細胞、好ましくはCHO DG44細胞である、請求項32記載の細胞。
【請求項34】
目的のタンパク質、好ましくは、請求項1〜19記載の方法のいずれかにより産生される抗体。
【請求項35】
1つ又はいくつかのSMタンパク質の活性又は発現をブロック又は低下させるために有用な化合物及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項36】
化合物が、ポリヌクレオチド配列である、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
ポリヌクレオチド配列が、shRNA、RNAi、siRNA又はアンチセンスRNA、好ましくはshRNAである、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
SMタンパク質が、Munc−18c(配列番号39)もしくはSly−1(配列番号41)又は2つの組み合わせである、請求項35〜37記載の医薬組成物。
【請求項39】
a)少なくとも1つのSMタンパク質、好ましくはMunc−18cを提供すること、
b)工程a)のSMタンパク質をテスト薬剤と接触させること、
c)タンパク質分泌又は細胞表面タンパク質の発現の増加又は減少に関連する効果を判断すること
を含む、SMタンパク質機能のモジュレーターを同定するための方法。
【請求項40】
癌、自己免疫疾患及び炎症の処置のための方法であって、それを必要とする患者に治療的有効量の請求項35〜38記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項41】
細胞を請求項35〜38記載の医薬組成物と接触させることを含む、細胞の増殖又は移動を阻害又は低下させる方法。
【請求項42】
目的のタンパク質の分泌及び/又は産生を増加させるための、SMタンパク質又はSMタンパク質をコードするポリヌクレオチドのインビトロ細胞又は組織培養システムでの使用。
【請求項43】
請求項1〜42記載の方法、発現ベクター、細胞又は医薬組成物のいずれかの診断的使用。

【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2c】
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【図3b】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図7a】
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【図7d】
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【図7e】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図10B】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2b】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3c】
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【図4d】
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【図5】
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【図7b】
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【図7c】
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【図9】
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【図10A】
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【公表番号】特表2011−505850(P2011−505850A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538474(P2010−538474)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010882
【国際公開番号】WO2009/080299
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】