SenecaValleyウイルスベースの組成物および疾患の処置方法
【解決課題】 本発明は、Seneca Valleyウイルス(「SVV」)と称される新規RNAピコルナウイルス、及び、単離されたSVV核酸およびこれらの核酸によってエンコードされるタンパク質と該SVVタンパク質に対して産生される抗体を提供する。
【解決手段】SVVはいくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有するため、癌の処置にSVVおよびSVVポリペプチドを使用する方法と、SVVは特定の腫瘍を特異的に標的にするため、癌の検出にSVV核酸およびタンパク質を使用する方法、さらに、SVVの腫瘍特異的機構によって提供される情報に基づいて、新規腫瘍溶解性ウイルス誘導体を作成する方法および腫瘍特異的親和性を有するようにウイルスを改変する方法を提供する。
【解決手段】SVVはいくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有するため、癌の処置にSVVおよびSVVポリペプチドを使用する方法と、SVVは特定の腫瘍を特異的に標的にするため、癌の検出にSVV核酸およびタンパク質を使用する方法、さらに、SVVの腫瘍特異的機構によって提供される情報に基づいて、新規腫瘍溶解性ウイルス誘導体を作成する方法および腫瘍特異的親和性を有するようにウイルスを改変する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有する新規RNAピコルナウイルス(Seneca Valleyウイルス(「SVV」)と称する)の組成物および疾患の処置方法に関わる。
【0002】
本開示内容は、著作権保護の対象である材料を含有する。著作権の所有者は、米国特許商標局の特許ファイルまたは記録に記載されている特許文書または特許開示内容の第三者による複製に異論はないが、それ以外の場合は任意およびすべての著作権を留保する。
【0003】
ここに本明細書中で引用されるすべての特許出願、公開された特許出願、発行および付与された特許、テキスト、および参考文献は、参照によりその開示内容全体が本明細書中に包含される。これらの文献は本発明が属する分野の技術水準をより完全に説明するためのものである。
【0004】
本出願は、2003年9月26日に提出された米国第60/506,182号の優先権を主張する。ここに該文献はその開示内容全体が包含される。
【背景技術】
【0005】
ウイルス療法(Virotherapy)は癌の処置に関して非常に有望である。癌細胞に特異的に結合し、それらを死滅させることを目的とする腫瘍溶解性ウイルスは、ネイティブおよび/または遺伝子操作されたウイルスのいずれであれ、代替の処置、例えば化学療法および放射線照射より効果的かつ低毒性である可能性がある。さらに腫瘍溶解性ウイルス療法は、薬理学的に所望の部位で治療性を増幅することができる既知の唯一の治療法である。
【0006】
癌治療の重要な側面は、正常細胞と比較して高い割合の癌細胞の死滅を達成することである。この目標の達成は多数の理由のために困難であった。該理由には、関与する細胞型が多様であること、転移によって癌細胞が全身に分布すること、および正常細胞および癌細胞間の生物学的差異が小さいことが含まれる。進歩はあったが、現在の癌治療に関しては依然大部分に改善がなされる必要がある。
【0007】
従来、外科医は、実質的に患者を傷つけることなく外科的に腫瘍を除去しようとしてきた。原発腫瘍の除去が完了したとしても、生存は保証されない。その理由は、身体の未知の部位への早期転移が未検出のままであるからである。また、血管形成阻害剤を産生する腫瘍細胞が外科的介入によって除去されると、遠隔転移の成長を増進させるかもしれないことを示唆する研究もある。最終的に、多数の症例において、外科的除去後に腫瘍は元の部位で再び成長する。放射線照射は、最も急速に増殖する細胞を、他を犠牲にして選択的に破壊することを目的とする。しかし腫瘍細胞は、耐性になることによって、あるいは処置期間に非分裂状態であることによって放射線療法から逃避することができる。さらに、多数の正常細胞が活発に分裂しつつあり、該処置によって死滅する(胃腸管系の細胞、毛包、等)点において、放射線照射は常に選択的であるわけではない。
【0008】
放射線照射と同様に、化学療法は完全に選択的なわけではなく、それゆえ多数の正常細胞を破壊し、また、すべての腫瘍細胞を死滅させるわけではない。これは細胞の薬剤耐性および/または分裂状態に基づく。ゆえに、化学療法および放射線療法は正常細胞および癌細胞間に存在するわずかな感受性の差異を利用する。これによりその治療係数は限定される。治療係数が小さいことは、癌を処置する任意の様式の望ましくない特性であることが明らかである。したがって、これらの制限を克服する新規癌治療アプローチが求められる。
【0009】
このような新規アプローチの1つは腫瘍溶解性ウイルス療法である。初期には、癌を処置する試みにおいて細胞障害性導入遺伝子を保持する複製欠損ウイルスが利用された。しかし、それらは腫瘍の形質導入に関して非効率的であり、また、癌に対して十分に選択的ではないことがわかった。該制限を克服するために、腫瘍細胞で選択的に複製するようにウイルスを修飾するか、あるいは天然の腫瘍選択的特性を有するウイルスを発見した。ゆえにこれらの腫瘍溶解性ウイルスは、該ウイルスを局所注射することによって腫瘤を介して、あるいは該ウイルスを全身に送達することによって、複製し、伝播し、そして腫瘍細胞を選択的に死滅させる特性を有するものであった(図1)。
【0010】
この新しく規定されたクラスの抗癌治療法は早期に見込まれていたにもかかわらず、癌治療法としてのその使用を制限するであろういくつかの制限が残されている。したがって、癌治療に利用することができる新規腫瘍溶解性ウイルスに関する必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新規RNAピコルナウイルスが発見された(以後、Seneca Valleyウイルス(「SVV」)と称する)。そのネイティブの特性には、いくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力が含まれる。以下の実施例において実証されるように、SVVは向神経性を有する腫瘍系統を選択的に死滅させる。ほとんどの場合、正常細胞と比較して、腫瘍細胞の50%を死滅させるのに必要なウイルスの量(すなわちEC50値)が10,000倍を超える差異を有する。またこの結果をインビボに移せば、マウスにおいて腫瘍外植片が選択的に排除される。さらにインビボの結果は、免疫欠損または免疫能を有する(immune competent)マウスにおいて、全身投与された1x1014vp/kg(ベクターまたはウイルス粒子/kg)までのSVVが死亡および観察できる臨床症状を全く引き起こさなかった点において、SVVが正常細胞に対して有毒でないことを示す。
【0012】
SVVは1x108vp/kg程の低用量で効果を誘発する;したがって、>100,000の非常に高い治療係数を達成する。効果は非常に強く、マウスにおいてあらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を完全に根絶することができる(実施例11を参照のこと)。この効果は、補助治療を全く行わずに、SVVを全身性に1回注射することによって媒介される可能性がある。さらにまた、SVV注射を受けたマウスは、注射後少なくとも200日間、臨床症状も腫瘍の再発も示さない。また、SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルラインにおいて>200,000ウイルス粒子/細胞で生産することができる。したがってSVVベースのウイルス療法は、選択されたタイプの癌に関して、安全で、効果的で、ならびに新型の処置としてかなりの見込みを示す。さらにSVVは、小さくて容易に操作可能なゲノム、単純かつ高速なライフサイクル、および汎用的な(well-understood)キャプシドを有し、ゆえに修飾しやすい。これらの特性は、少なくとも部分的に、新規の細胞または組織特異的親和性(tropisms)を有する修飾型SVVを作成する方法を許容し、したがって元来のSVV単離体による感染に耐性の新規腫瘍型に対してSVVベースの治療を行うことができる。
【0013】
したがって本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸配列、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10、15または20ヌクレオチド長の連続部分と95%同一の核酸配列を含む単離された核酸を提供する。本発明の単離された核酸はRNAまたはDNAであってよい。
【0014】
他の側面では、本発明は、高、中ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシーの条件下で配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分にハイブリダイズする単離された核酸を提供する。
【0015】
別の側面では、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸配列を含むベクターを提供する。
【0016】
また本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21を含む核酸配列、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸によってエンコードされる単離されたポリペプチドを提供する。
【0017】
一側面では、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10アミノ酸長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0018】
別の側面では、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10アミノ酸長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを特異的に結合する単離された抗体を提供する。該単離された抗体は、配列番号2の任意のタンパク質エピトープまたは抗原に結合するように作成することができる。さらに、該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはキメラ抗体であってよい。
【0019】
一側面では、本発明は、配列番号1と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する単離されたSVVまたはその誘導体または類縁体を提供する。
【0020】
別の側面では、本発明は、American Type Culture Collection(ATCC)特許寄託番号PTA−5343の全識別特性および核酸配列を有する単離されたウイルスを提供する。本発明のいくつかのウイルスは、PTA−5343単離体、PTA−5343単離体の変種(variants)、相同体、類縁体、誘導体および変異体、およびSVV(野生型および変異体の両者)の、その腫瘍溶解特性を担うことが決定されている配列に関して修飾された他のウイルスの変種、相同体、誘導体および変異体に関する。
【0021】
さらに本発明は、以下の特徴を含む単離されたSVVを提供する:〜7.5キロベース(kb)の一本鎖RNAゲノム(プラス(+)センス鎖);直径〜27ナノメートル(nm);約31kDa、36kDaおよび27kDaの概算の分子量を有する少なくとも3種のタンパク質を含むキャプシド;塩化セシウム(CsCl)勾配上の浮遊密度約1.34g/mL;および腫瘍細胞での複製能。本側面では、31kDaキャプシドタンパク質(VP1)は、配列番号8と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよく;36kDaキャプシドタンパク質(VP2)は、配列番号4と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよく;ならびに、27kDaキャプシドタンパク質(VP3)は、配列番号6と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよい。
【0022】
別の側面では、本発明は、以下の特徴を含む単離されたSVV誘導体または類縁体を提供する:腫瘍細胞での複製能、腫瘍細胞親和性、および正常細胞での細胞溶解の欠如。別の側面では、該ウイルスは神経内分泌特性を有する腫瘍細胞型において複製能を有する。
【0023】
他の側面では、本発明は以下を提供する:有効量の本発明のウイルスおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物;本発明のウイルスを含む細胞;本発明のウイルスの抗原を含有するウイルスライセート;および本発明のウイルスから取得される単離および精製済みのウイルス抗原。
【0024】
さらに別の側面では、本発明は、本発明のウイルスの精製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:細胞にウイルスを感染させる段階;細胞ライセートを回収する段階;細胞ライセートを少なくとも1ラウンドの勾配遠心分離に付する段階;および勾配からウイルスを単離する段階。
【0025】
別の側面では、本発明は、癌の処置方法であって、癌を処置するために有効量のウイルスまたはその誘導体を投与することを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または配列番号1の部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0026】
別の側面では、本発明は、癌の処置方法であって、配列番号3、5、7またはその連続部分(contiguous portion)と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むキャプシドエンコード領域を含む有効量のウイルスを投与することを含む方法を提供する。また本発明は、癌の処置方法であって、配列番号4、6、8またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含むキャプシドを含む有効量のウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0027】
一側面では、本発明は、癌の進行を阻害するための方法であって、癌細胞をウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスまたはその誘導体は癌性細胞に特異的に結合し、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0028】
別の側面では、本発明は、癌細胞を死滅させるための方法であって、癌細胞を有効量のウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0029】
これらの癌を対象とする方法では、ウイルスはピコルナウイルスであってよい。ピコルナウイルスは、カルジオウイルス、エルボウイルス(erbovirus)、アフトウイルス、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルス、テシオウイルス、エンテロウイルスまたはライノウイルス属であってよい。カルジオウイルスは以下からなる群から選択されるものであってよい:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSVV。脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択されるものであってよい:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。SVVは、ATCC寄託番号PTA−5343を有するウイルスまたは、配列番号1またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の核酸配列を含むウイルスであってよい。
【0030】
また本発明は、異常に増殖性の細胞を死滅させる方法であって、該細胞を本発明のウイルスと接触させることを含む方法を提供する。一側面では、異常に増殖性の細胞は腫瘍細胞である。本方法の種々の側面では、腫瘍細胞は以下からなる群から選択される:ヒト小細胞肺癌、ヒト網膜芽細胞腫、ヒト神経芽細胞腫、ヒト髄芽腫、マウス神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、およびヒト非小細胞肺癌。
【0031】
また本発明は、対象における新生物症状の処置方法であって、該対象に、該哺乳類に対する本発明のウイルスの有効量を投与することを含む方法を提供する。一側面では、新生物症状は神経内分泌癌である。別の側面では、対象は哺乳類である。別の側面では、哺乳類はヒトである。
【0032】
また本発明は、本発明のウイルスを製造する方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:ウイルスを感染させた細胞を、該ウイルスの複製を許容する条件下で培養する段階および該細胞または上清から該ウイルスを回収する段階。本方法の一側面では、細胞はPER.C6細胞である。本方法の別の側面では、細胞はH446細胞である。本方法の種々の側面では、細胞は、細胞あたり200,000を超えるウイルス粒子を生産してよい。
【0033】
別の側面では、本発明は、本発明のウイルスを検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:本発明のウイルスを含有すると考えられる試験材料からRNAを単離する段階;配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するRNAを標識する段階;標識済みRNAを用いて試験材料を検査(プローブ)する段階;および標識済みRNAと試験材料から単離されたRNAの結合を検出する段階、この場合、結合は該ウイルスの存在を示す。別の側面では、本発明は、配列番号1またはその相補配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列を含む核酸プローブを提供する。
【0034】
また本発明は、腫瘍溶解性カルジオウイルスを作成するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)SVVのゲノム配列を試験ウイルスのゲノム配列と比較する段階;(b)SVVのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドおよび試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチド間の少なくとも第一のアミノ酸の差異を同定する段階;(c)試験ウイルスのゲノム配列を変異させて、試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドが有する、SVVのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドに対するアミノ酸の差異が、少なくとも1つ少ないようにする段階;(d)変異した試験ウイルスのゲノム配列を腫瘍細胞内にトランスフェクトする段階;および(e)該変異した試験ウイルスのゲノム配列が該腫瘍細胞に溶菌的に感染したかどうかを判定する段階。一側面では、試験ウイルス中の変異したアミノ酸(群)は、構造領域、例えばキャプシドエンコード領域中のアミノ酸である。別の側面では、試験ウイルス中の変異したアミノ酸は非構造領域中のアミノ酸である。
【課題を解決するための手段】
【0035】
腫瘍溶解性ウイルスの作成方法の一側面では、ATCC寄託番号PTA−5343を有する単離されたSVVまたは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むウイルスからSVVのゲノム配列を取得する。本方法の別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列を変異させる段階は、該試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAを変異させることを含む。本方法の別の側面では、変異した試験ウイルスのゲノム配列をトランスフェクトする段階は、RNAをトランスフェクトすることを含み、この場合、該RNAは該変異した試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAから作成される。
【0036】
腫瘍溶解性カルジオウイルスの作成方法の別の側面では、試験ウイルスはピコルナウイルスである。試験ピコルナウイルスは、テシオウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、カルジオウイルス、エルボウイルス、アフトウイルス(apthovirus)、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルスまたはテシオウイルス属であってよい。別の側面では、試験ウイルスはカルジオウイルス属である。別の側面では、腫瘍溶解性ウイルスの作成方法において同定されるアミノ酸の差異は、SVVのキャプシドタンパク質および試験ウイルスのキャプシドタンパク質配列間に存在する。腫瘍溶解性ウイルスの作成に関する別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列は以下からなる群から選択される:Vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列は脳心筋炎ウイルスから選択される。脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択されるものであってよい:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。さらに別の側面では、脳心筋炎ウイルスまたは任意の他の試験ウイルスは、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVまたは配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を含む核酸配列を有する単離体から選択されるものであってよい。
【0037】
腫瘍溶解性カルジオウイルスの作成方法の別の側面では、試験ウイルスおよびSVV間のアミノ酸の差異はSVVのキャプシドタンパク質領域内に存在し、この場合、該アミノ酸の差異はSVV配列番号4、6または8内に並ぶ。
【0038】
また本発明は、改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)多数の(複数の(a plurality of))核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。一側面では、本方法は(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階をさらに含む。別の側面では、本方法は段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む。別の側面では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分を含む親配列からウイルス変異体のライブラリーを作成する。
【0039】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の一側面では、マルチウェルハイスループット(高処理)プラットフォームでインキュベーションを行う。この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容細胞型を含む。この側面では、本方法は、プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞を死滅させる変異ウイルスを含有するかを同定することをさらに含むことができる。別の側面では、各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う。
【0040】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の別の側面では、非許容細胞は腫瘍細胞である。
【0041】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階は以下の段階を含む:(i)ウイルスのゲノム配列の部分と同一の配列を有するポリヌクレオチドを提供する段階;(ii)該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異ポリヌクレオチド配列を作成する段階;および(iii)段階(i)のポリヌクレオチドが含有するウイルスのゲノム配列の部分を除くウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。一側面では、ウイルスのゲノム配列はピコルナウイルス由来である。別の側面では、ウイルスのゲノム配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含む。別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階において、ポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって段階(ii)の変異を行う。一側面では、トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う。別の側面では、ポリヌクレオチド内に挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階において、段階(ii)の変異をポリヌクレオチドのキャプシドエンコード領域において行う。
【0042】
また本発明は、改変された細胞型親和性を有する変異カルジオウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階、この場合、該作成段階は以下の段階を含む:カルジオウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および、キャプシドエンコード領域を除く該カルジオウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それにより該カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階;(b)変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異カルジオウイルスを作成する段階。一側面では、本方法は(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階をさらに含む。別の側面では、本方法は段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む。別の側面では、キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって変異を行う。別の側面では、キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にランダムに挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ヌクレオチドのランダムな挿入はTRIMによって行う。別の側面では、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列は108または109を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む。
【0043】
一側面では、改変された細胞型親和性を有する変異SVVの作成方法は以下の段階を含む:(a)SVV変異体のcDNAライブラリーを作成する段階;(b)SVV変異体のcDNAライブラリーからSVVのRNAを作成する段階;(c)SVVのRNAを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異SVVを生産させる段階;(d)多数の変異SVVを単離する段階;(e)単離された多数の変異SVVと非許容腫瘍細胞をインキュベートする段階;および(f)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異SVVを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異SVVを作成する段階。別の側面では、本方法は以下の段階をさらに含む:(g)回収された変異SVVを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(h)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異SVVを回収する段階。別の側面では、本方法は段階(g)および(h)を反復して繰り返すことをさらに含む。一側面では、マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行う。この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容腫瘍細胞型を含む。別の側面では、本方法は、プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞に溶菌的に感染する変異SVVを含有するかを同定することをさらに含む。別の側面では、各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う。一側面では、SVV変異体のcDNAライブラリーは多数の変異SVVキャプシドポリヌクレオチド配列を含む。別の側面では、ヌクレオチドをランダムに挿入することによって多数の変異SVVキャプシドポリヌクレオチド配列を作成する。別の側面では、ランダムに挿入されるヌクレオチドの配列の少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ヌクレオチドのランダムな挿入をTRIMによって行う。別の側面では、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVからSVV変異体のcDNAライブラリーを作成する。別の側面では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%の配列同一性を有する配列を含むSVVからSVV変異体のcDNAライブラリーを作成する。別の側面では、非許容腫瘍細胞は腫瘍セルラインまたは患者から単離された腫瘍細胞型である。
【0044】
また本発明は、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)腫瘍を有する哺乳類に、単離された多数の変異ウイルスを投与する段階、この場合、該哺乳類は該変異ウイルスの未変異型の天然の宿主ではない;および(e)腫瘍中で複製したウイルスを回収し、それにより、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。一側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階は以下の段階を含む:ウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および、キャプシドエンコード領域を除く該ウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。別の側面では、段階(e)で回収されたウイルスは腫瘍の細胞に溶菌的に感染する。インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法に関する別の側面では、腫瘍は異種移植片、同系腫瘍、正所性腫瘍または遺伝子組換え腫瘍である。別の側面では、哺乳類はマウスである。
【0045】
本発明のすべての方法に関して、ウイルスはピコルナウイルスであってよい。ピコルナウイルスは、カルジオウイルス、エルボウイルス、アフトウイルス、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルス、テシオウイルス、エンテロウイルス、またはライノウイルス属であってよい。カルジオウイルスはSVVであってよい。SVVは、ATCC特許寄託番号PTA−5343を有するSVVまたは、配列番号1、3、6、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むSVVであってよい。さらに、カルジオウイルスは以下からなる群から選択されるものであってよい:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。一側面では、脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択される:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。別の側面では、本発明は、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVまたは配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%の配列同一性を有する単離体から選択されるか、あるいは別の様式で配列ホモロジーによってSVVに関連するとみなされる任意のウイルスを包含する。
【0046】
また本発明は、本明細書中で開示される変異ウイルスを作成するためのいずれかの方法によって作成される腫瘍溶解性ウイルスを提供する。一側面では、本発明は、腫瘍溶解性ウイルスを用いて患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)本明細書中で開示される変異ウイルスを作成するためのいずれかの方法によって作成された腫瘍溶解性ウイルスを不活性化し、該腫瘍溶解性ウイルスを非感染性にし、該腫瘍溶解性ウイルスの親和性には影響しないようにする段階;および(b)腫瘍を患う患者に放射線照射済みの腫瘍溶解性ウイルスを投与する段階。別の側面では、患者の処置方法は不活性化型腫瘍溶解性ウイルスに毒素を結合させることをさらに含む。
【0047】
別の側面では、本発明は、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)SVVを不活性化して、該ウイルスを非感染性にし、その親和性には影響しないようにする段階;および(b)腫瘍を患う患者において該不活性化型SVVを投与する段階。別の側面では、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法は、不活性化型SVVに毒素を結合させることをさらに含む。
【0048】
別の側面では、本発明は、不活性化型SVVを含むSVV組成物を提供する。別の側面では、本発明は、キャプシド領域に取り込まれたエピトープタグを含むSVVを提供する。
【0049】
また本発明は、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)キャプシド中においてエンコードされるエピトープタグを含む変異SVVを作成する段階;(b)該エピトープタグに毒素を結合させる段階;および(c)腫瘍を患う患者に該結合毒素を伴う変異SVVを投与する段階。一側面では、上記作成段階は以下の段階を含む:エピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドをSVVのキャプシドエンコード領域ポリヌクレオチド内に挿入する段階。一側面では、変異SVVは改変された細胞型親和性を有さない。別の側面では、本方法は、変異SVVを不活性化して、該変異SVVを非感染性にすることをさらに含む。
【0050】
また本発明は、サンプル中の腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)患者から腫瘍サンプルを単離する段階;(b)該腫瘍サンプルをエピトープタグ付きSVVとインキュベートする段階;および(c)エピトープタグの検出により結合型SVVに関して腫瘍サンプルをスクリーニングする段階。
【0051】
一側面では、本発明は、インビボで腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)不活性化型エピトープタグ付きSVVを患者に投与する段階、この場合、該エピトープタグに標識をコンジュゲートする;および(b)患者において該標識を検出する段階。本発明の腫瘍細胞の検出方法では、SVVは、本明細書中で開示される方法によって作成される変異SVVであってよい。
【0052】
さらに、新生物症状の処置、新生物症状の検出、およびSVVの生産に関する本方法は、野生型SVV、変異(修飾型または変種を含む)SVV、SVVの類縁体、および本発明の他の腫瘍特異的ウイルスに適用される。
【0053】
本発明のウイルスおよびその組成物を使用して、本明細書中で記載される疾患を処置するための薬物を製造することができる。さらに、本発明のウイルスおよびその組成物を使用して、本明細書中で記載される疾患を処置することができる。ゆえに、本発明の一側面では、本発明は、癌の処置に関するか、あるいは癌を処置するための薬物の製造に関するSVV(または変異体、誘導体、類縁体、およびその組成物)の使用を提供する。
寄託情報
【0054】
以下の材料は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)の条項にしたがって、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd., Manassas, Virginia, 20110-2209, U.S.A.に寄託されている。寄託されている材料の入手に関するすべての制限は特許の付与時に除かれる。材料:Seneca Valleyウイルス(SVV)。ATCC特許寄託番号:PTA−5343。寄託日:2003年7月25日。
【0055】
用語「ウイルス」、「ウイルス粒子("viral particle," "virus particle")」、「ベクター粒子」、「ウイルスベクター粒子」、および「ビリオン」は交換可能に使用され、該用語は広く理解されるべきであり、例えば本発明のウイルスベクターを感染性粒子の作成に関して適切な細胞またはセルライン内に形質導入またはトランスフェクトした場合に形成される感染性ウイルス粒子を例えば意味する。
【0056】
用語「誘導体」、「変異体」、「変種」および「修飾型」は交換可能に使用され、概して、誘導体、変異体、変種または修飾型ウイルスは、鋳型ウイルス核酸またはアミノ酸配列に関して核酸またはアミノ酸配列の差異を有し得ることを示す。例えば、SVV誘導体、変異体、変種または修飾型SVVは、ATCC特許寄託番号PTA−5343の野生型SVVの核酸またはアミノ酸配列に関して核酸またはアミノ酸配列の差異を有するSVVを表してよい。
【0057】
本明細書中で使用される用語「癌」、「癌細胞」、「新生物細胞」、「新形成(neoplasia)」、「腫瘍」、および「腫瘍細胞」は交換可能に使用され、該用語は、比較的自律的な成長を示して、細胞増殖のコントロールの有意な喪失を特徴とする異常な成長表現型を示す細胞を表す。新生物細胞は悪性または良性であり得る。本発明では、好ましい1タイプの腫瘍細胞は向神経性を有する腫瘍細胞である。
【0058】
2種またはそれ以上の核酸またはタンパク質配列に関する用語「同一の」または「同一性」パーセントとは、配列比較アルゴリズム、例えばProtein-Protein BLAST(GenBankデータベースのProtein-Protein BLAST(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, D.J. (1990) "Basic local alignment search tool." J. Mol. Biol. 215: 403-410))を使用して、あるいは目視検査によって測定される、最大一致に関して比較およびアライメントされた場合に、同一であるか、あるいは指定のパーセンテージの同一アミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2種またはそれ以上の配列または連続物を表す。BLASTアルゴリズムはAltschul et al., J. Mol. Biol., 215: 403-410(1990)に記載され、National Center for Biotechnology Information(NCBI)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公的に利用可能なBLASTソフトウェアが提供されている。
【0059】
例えば、本明細書中で使用される用語「少なくとも90%同一の」とは、参照ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)に対して90〜100の同一性パーセントを表す。90%またはそれ以上のレベルの同一性は、例証目的で100アミノ酸の試験および参照ポリペプチド長を比較すると仮定すると、試験ポリペプチド中のわずか10%(すなわち100個のうち10個)のアミノ酸が参照ポリペプチドのアミノ酸と異なることを示す。試験および参照ポリヌクレオチド間で同様の比較を行うことができる。このような差異は、アミノ酸配列の全長にわたってランダムに分布する点変異として表すことができ、あるいは該差異は、許容される最大の、例えば100個のうち10個のアミノ酸の差異(90%同一性)までの種々の長さの1個またはそれ以上の位置でクラスター形成することができる。差異は核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失として規定される。約85〜90%を超える同一性のレベルでは、結果はプログラムおよびギャップパラメータセットに無関係であろう;このような高レベルの同一性は容易に評価することができ、ソフトウェアに依存しないことが多い。
【0060】
本発明の関連では、用語「単離された(単離型)」とは、人の手によって、そのネイティブ環境から離れて存在する核酸分子、ポリペプチド、ウイルスまたは細胞を表す。単離された核酸分子またはポリペプチドは、精製型で存在してよく、あるいは非ネイティブ環境、例えば組換え宿主細胞中に存在してよい。単離されたウイルスまたは細胞は、精製型で、例えば細胞培養中に存在してよく、あるいは非ネイティブ環境、例えば組換え型または異種生物中に存在してよい。
用語「天然に存在する」または「野生型」とは、人によって人工的に生産されたものと異なって天然に見出すことができる要素を説明するのに使用される。例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するタンパク質またはヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。
【0061】
「高ストリンジェンシー」、「中(間)ストリンジェンシー」または「低ストリンジェンシー」の概念は、核酸ハイブリダイゼーション条件を表す。高ストリンジェンシー条件とは、標的およびプローブ間でアニーリングまたはハイブリダイゼーションを生じさせるために標的の核酸配列およびプローブの核酸配列間の高い同一性を必要とする条件を表す。低ストリンジェンシー条件とは、標的およびプローブ間でアニーリングまたはハイブリダイゼーションを生じさせるために標的の核酸配列およびプローブの核酸配列間の低い同一性を必要とする条件を表す。ストリンジェンシー条件は、バッファーの塩濃度またはハイブリダイゼーションが行われる温度によってコントロールすることができ、この場合、塩濃度が高いほど低ストリンジェントな条件になり、温度が高いほどよりストリンジェントな条件になる。ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションを受ける配列の長さおよび核酸の内容に応じて変動するが、高、中間および低ストリンジェンシーの代表的な条件は以下の典型例の条件において記載されるものである。一般に使用されるハイブリダイゼーションバッファーは、0.3Mクエン酸三ナトリウムおよび3M NaClに対応する20X保存濃度のSSC(塩化ナトリウムクエン酸ナトリウム)である。高ストリンジェンシー条件では、SSCの作業濃度は0.1X〜0.5X(1.5〜7.5mMクエン酸三ナトリウム、15〜75mM NaCl)であってよく、ハイブリダイゼーション温度は65℃に設定する。中間条件では、55〜62℃の温度で0.5X〜2X SSC濃度(7.5〜30mMクエン酸三ナトリウム、75〜300mM NaCl)を典型的に利用する。低ストリンジェンシー条件下で行われるハイブリダイゼーションでは、50〜55℃の温度で2X〜5X SSC濃度(30〜75mMクエン酸三ナトリウム、300〜750mM NaCl)を使用することができる。留意すべきは、これらの条件は単に典型例であり、限定的とみなされるべきではないことである。
【0062】
Seneca Valleyウイルス(SVV):
SVVは新規の、これまで未発見であったRNAウイルスであり、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ファミリーのカルジオウイルス(Cardiovirus)属由来のメンバーに最も密接に関連付けられる。ゆえに、本発明の目的では、SVVはカルジオウイルス属およびピコルナウイルス科ファミリーのメンバーであるとみなす。カルジオウイルスは、そのゲノム構成の特殊な特徴、共通の病理学的特性、および0.1M NaCl中の5〜7の範囲のpHでそのビリオンが解離性であることによって、他のピコルナウイルスと区別される(Scraba, D. et al.,「カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae))」, Encyclopedia of Virology, 2nd Edition, R.G. Webseter and A. Granoff, Editors, 1999)。SVVおよび他のカルジオウイルス間の配列解析の結果は本明細書中以下で考察する。
【0063】
SVVのゲノムは、約7.5kbの予想サイズを有する1個の一本鎖プラス(+)センス鎖RNA分子からなる(図4Aを参照のこと)。SVVはピコルナウイルスであるため、すべてのピコルナウイルスで保存されているいくつかの特徴を有する:(i)ゲノムRNAは感染性であり、ゆえに細胞内にトランスフェクトして、ウイルスのライフサイクルのウイルス−受容体結合および侵入段階をバイパスすることができる;(ii)ゲノムの5’末端の長い(約600〜1200bp)非翻訳領域(UTR)および短い3’非翻訳領域(約50〜100bp);(iii)5’UTRは、内部リボソーム侵入部位(IRES)として既知のクローバーリーフの二次構造を含有する;(iv)ゲノムの残りは単一ポリタンパク質をエンコードする、ならびに(v)ゲノムの両端は修飾されていて、5’末端は共有結合型の小さい塩基性タンパク質「Vpg」によって修飾され、3’末端はポリアデニル化されている。
【0064】
本発明は、単離されたSVVウイルス(ATCC特許寄託番号PTA−5343)およびそれに由来するSVVの完全ゲノムの内容を提供する。現在、シークエンシングされている最大のSVVゲノム断片は、PTA−5343単離体由来の単離されたSVV核酸であり、これはSVVゲノム配列の大部分を含み、図5A−5Eおよび図6A−6Dにリストされ、本明細書における配列番号1の指定を有する。このヌクレオチド配列の翻訳物は、配列番号1によってエンコードされるSVVの単一ポリタンパク質の大部分を示す。配列番号1のヌクレオチド1〜5673によってエンコードされるアミノ酸配列は図5A−Eにリストされ、図7A−7Bは本明細書における配列番号2の指定を有する。したがって本発明は、配列番号1の単離された部分、例えば配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19および21を提供する。該部分を発現ベクターにサブクローニングすることができ、そして配列番号1のこれらの部分によってエンコードされるポリペプチドを単離することができる。本発明は、高、中または低ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、またはその任意の部分にハイブリダイズすることができる単離された核酸をさらに包含する。
【0065】
また本発明は、図9にリストされる配列番号4のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸2〜143に相当する)を有する単離された部分的SVV VP2(1B)タンパク質を提供する。部分的SVV VP2タンパク質のアミノ酸配列は、図8にリストされる配列番号3の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド4〜429に相当する)によってエンコードされる。
【0066】
また本発明は、図11にリストされる配列番号6のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸144〜382に相当する)を有する単離されたSVV VP3(1C)タンパク質を提供する。SVV VP3タンパク質のアミノ酸配列は、図10にリストされる配列番号5の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド430〜1146に相当する)によってエンコードされる。
【0067】
また本発明は、図13にリストされる配列番号8のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸383〜641に相当する)を有する単離されたSVV VP1(1D)タンパク質を提供する。SVV VP1タンパク質のアミノ酸配列は、図12にリストされる配列番号7の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1147〜1923に相当する)によってエンコードされる。
【0068】
また本発明は、図15にリストされる配列番号10のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸642〜655に相当する)を有する単離されたSVV 2Aタンパク質を提供する。SVV 2Aタンパク質のアミノ酸配列は、図14にリストされる配列番号9の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1924〜1965に相当する)によってエンコードされる。
【0069】
また本発明は、図17にリストされる配列番号12のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸656〜783に相当する)を有する単離されたSVV 2Bタンパク質を提供する。SVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列は、図16にリストされる配列番号11の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1966〜2349に相当する)によってエンコードされる。
【0070】
また本発明は、図19にリストされる配列番号14のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸784〜1105に相当する)を有する単離されたSVV 2Cタンパク質を提供する。SVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列は、図18にリストされる配列番号13の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド2350〜3315に相当する)によってエンコードされる。
【0071】
また本発明は、図21にリストされる配列番号16のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1106〜1195に相当する)を有する単離されたSVV 3Aタンパク質を提供する。SVV 3Aタンパク質のアミノ酸配列は、図20にリストされる配列番号15の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜3585に相当する)によってエンコードされる。
【0072】
また本発明は、図23にリストされる配列番号18のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1196〜1217に相当する)を有する単離されたSVV 3B(VPg)タンパク質を提供する。SVV 3Bタンパク質のアミノ酸配列は、図22にリストされる配列番号17の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3586〜3651に相当する)によってエンコードされる。
【0073】
また本発明は、図25にリストされる配列番号20のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1218〜1428に相当する)を有する単離されたSVV 3C(「pro」または「プロテアーゼ」)タンパク質を提供する。SVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列は、図24にリストされる配列番号19の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3652〜4284に相当する)によってエンコードされる。
【0074】
また本発明は、図27にリストされる配列番号22のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1429〜1890に相当する)を有する単離されたSVV 3D(「pol」または「ポリメラーゼ」)タンパク質を提供する。SVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列は、図24にリストされる配列番号19の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド4285〜5673に相当する)によってエンコードされる(配列番号1のヌクレオチド5671〜5673「tga」は停止コドンをコードし、これはアミノ酸配列表中ではアスタリスク「*」として表される)。
【0075】
本発明の核酸には、RNAおよびDNA型がともに含まれ、また暗黙的に、添付の配列表の相補的配列が含まれる。
【0076】
ゆえに、配列番号1によって表される単離されたSVV核酸は、配列番号2によって表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする5,752ヌクレオチド長を有する。このSVVゲノム配列は単一のポリタンパク質として翻訳され、下流の諸「翻訳産物」に切断される。本発明は、配列番号1のすべての核酸断片および該断片によってエンコードされるすべてのポリペプチドを包含する。
【0077】
完全長SVVポリタンパク質のアミノ酸配列の大部分は配列番号1のヌクレオチド1〜5673によってエンコードされる。このポリタンパク質は切断されて3種の前駆タンパク質、P1、P2およびP3になる(図4Bを参照のこと)。P1、P2およびP3はさらに切断されて、より小さい生成物になる。構造領域P1(1ABCD;すなわちキャプシド領域)の切断産物は、1ABC、VP0、VP4、VP2、VP3およびVP1である。非構造タンパク質P2(2ABC)の切断産物は、2A、2BC、2Bおよび2Cである。非構造領域P3ポリタンパク質(3ABCD)の切断産物は、3AB、3CD、3A、3C、3D、3C’、および3D’である。特定の実施態様では、本発明は、以下を含む単離された核酸を提供する:(i)2ABCの配列(配列番号1のヌクレオチド1924〜3315)およびそのエンコード対象のタンパク質;(ii)2BCの配列(配列番号1のヌクレオチド1966〜3315)およびそのエンコード対象のタンパク質;(iii)3ABCDの配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜5673)およびそのエンコード対象のタンパク質;(iv)3ABの配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜3651)およびそのエンコード対象のタンパク質;および(v)3CDの配列(配列番号1のヌクレオチド3652〜5673)およびそのエンコード対象のタンパク質。
【0078】
ピコルナウイルスの基本キャプシド構造は、60プロトマーが高密度にパッキングされた正二十面体の配置からなり、各プロトマーは4ポリペプチド、VP1、VP2、VP3およびVP4からなり、これらの全ポリペプチドは元のプロトマーであるVP0の切断から生じる。SVVウイルス粒子は直径約27nmであり(図2を参照のこと)、直径約27〜30nmの他のピコルナウイルス粒子のサイズと一致する。
【0079】
ピコルナウイルスの複製についての速度論は高速であり、そのサイクルは約5〜10時間のうちに(典型的に約8時間で)完了する(ピコルナウイルス複製サイクルの概略図に関しては図68を参照のこと)。受容体結合時に、ゲノムRNAは粒子から細胞質内に放出される。そしてゲノムRNAはポリソームによって直接翻訳されるが、感染後約30分のうちに、細胞のタンパク質合成は急激に減衰し、ほぼゼロになる。この現象は「シャットオフ(shutoff)」と称され、細胞変性作用(cpe)の主原因である。シャットオフは、翻訳開始時に、すべての真核生物のmRNAの5’末端におけるm7Gキャップ構造の結合に関与する宿主細胞の220kDaキャップ結合複合体(CBC)の切断に起因すると考えられる。CBCの切断は2Aプロテアーゼに起因すると考えられる。
【0080】
5’UTRはIRESを含有する。通常、真核生物の翻訳は、リボソームが5’メチル化キャップに結合し、そしてmRNAに沿って走査し、最初のAUG開始コドンを発見した時点で開始される。IRESはこの過程を克服し、CBCの分解後にピコルナウイルスRNAが翻訳され続けるようにする。
【0081】
ウイルスポリタンパク質は初期に2Aプロテアーゼによって切断され、ポリタンパク質P1、P2およびP3になる(図4Bを参照のこと)。その後、主要ピコルナウイルスプロテアーゼである3Cによってさらに切断イベントが生じる。3Cによって作成される切断産物の1つはウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(3D)であり、これはゲノムRNAをコピーして、マイナス(−)センス鎖を生産する。この(−)センス鎖は、(+)鎖(ゲノム)RNA合成用の鋳型を形成する。いくつかの(+)鎖は翻訳されて追加のウイルスタンパク質を生産し、またいくつかの(+)鎖はキャプシド内にパッケージされて新規ウイルス粒子を形成する。
【0082】
(+)鎖RNAゲノムはあらかじめ形成されたキャプシド内にパッケージされると考えられるが、該ゲノムおよびキャプシド間の分子的相互作用は不明である。空のキャプシドはすべてのピコルナウイルス感染において共通である。キャプシドの集合は、P1ポリタンパク質前駆体が、VP0、VP3、およびVP1からなるプロトマーに切断されることによって生じ、これらはともに結合してゲノムを封入する。ウイルス粒子の成熟および感染力は、VP0が内部で自己触媒的にVP2およびVP4に切断されることに依存する。新しく形成されたウイルス粒子の放出は細胞溶解時に生じる。
【0083】
また本発明は、ATCC特許寄託番号PTA−5343のすべての識別特性および核酸配列を有する単離されたウイルスを提供する。本発明のウイルスは、PTA−5343単離体、PTA−5343単離体の変種、相同体、誘導体および変異体、およびSVV(本明細書中で開示される野生型および変異体の両者)の、その腫瘍溶解性を担うことが決定されている配列に関して修飾された他のピコルナウイルスの変種、相同体、誘導体および変異体を対象にし得る。
【0084】
さらに本発明は、ATTC特許寄託番号PTA−5343を有する単離されたSVV、およびアミノ酸配列配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22を有する単離されたSVVタンパク質由来のエピトープを特異的に標的にする抗体を提供する。また本発明は、配列番号1の断片または部分によってエンコードされるタンパク質由来のエピトープを特異的に標的にする抗体を含む。
【0085】
種々のカルジオウイルス単離体由来のRNA配列の比較解析では、ゲノム間で>45%のヌクレオチド同一性が示された。カルジオウイルスは、EMC様ウイルス(「EMCV」−、例えばMengo、B、R;およびさらにMM、ME、Columbia−SK)、Theiler様ウイルス(「TMEV」−、例えばBeAn、DAおよびGD VII系統)、およびVilyuiskウイルスに亜分類することができる。
【0086】
他のウイルスと比較したSVV配列の解析では、SVVはカルジオウイルスの一種であると考えられる(実施例4および該実施例で参照される図を参照のこと)。EMCVおよびTMEVが標準カルジオウイルスであるとすれば、SVVは明らかに典型的カルジオウイルスではない。しかし、これらの2ウイルスでさえ差異を有し、この差異は5’UTRにおいて著しい(Pevear et al., 1987, J. Virol., 61: 1507-1516)。系統学的にSVVはそのポリタンパク質の大半(P1、2C、3Cproおよび3Dpol領域;図31−37を参照のこと)においてEMCVおよびTMEVとクラスター形成し、この結果はSVVがカルジオウイルスである可能性が非常に高いことを示す。
癌の処置方法:
【0087】
本発明は、SVVの腫瘍溶解性を考慮して修飾されたウイルス、例えばピコルナウイルス、その誘導体、変種、変異体または相同体を使用して癌を治療するための方法を提供する。本発明は、野生型SVV(すなわちATTC特許寄託番号PTA−5343)がいくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有することを示す。例えば、SVVは、向神経性または神経内分泌性を有する腫瘍細胞、例えば小細胞肺癌(SCLC)および神経芽細胞腫を選択的に死滅させることができる。本発明のウイルスによる処置対象として考慮される神経内分泌腫瘍の他の例には、非限定的に以下のものが含まれる:副腎クロム親和細胞腫、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群を発症させる)、グルカゴノーマ、膵島細胞腺腫、髄様癌(例えば髄様甲状腺癌腫)、多発性内分泌腫瘍症候群、膵内分泌腫瘍、傍神経節腫、VIPoma(血管活性腸ポリペプチド腫瘍)、島細胞腫瘍、およびクロム親和細胞腫。
【0088】
また本発明は、4タイプの神経内分泌肺腫瘍を包含する。最も深刻なタイプの小細胞肺癌(SCLC)は、すべての癌のうちで最も高速に増殖し、拡大するものに含まれる。大細胞神経内分泌癌腫はまれな癌であり、癌を形成する細胞のサイズを除き、その予後および患者の処置方法に関してSCLCに非常に類似している。カルチノイドとしても知られるカルチノイド腫瘍は、他の2タイプの肺神経内分泌癌を含む。これらの2タイプは定型カルチノイドおよび異型カルチノイドである。
【0089】
理論に拘束されることなく、腫瘍細胞を特異的に死滅させるSVVの能力には、非限定的に以下に挙げる能力が含まれるであろう:選択的複製、アポトーシス、腫瘍選択的細胞侵入を介する溶解、腫瘍選択的翻訳、腫瘍選択的タンパク質分解、腫瘍選択的RNA複製、およびその組み合わせ。
【0090】
他の腫瘍溶解性ウイルス、例えば修飾型アデノウイルスと比較して、SVVは多数の有益な特徴を有する。その例を以下に挙げる:(i)SVVは神経特性を有する癌、例えばSCLC、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫、および神経芽細胞腫に関して非常に高い選択性を有する−例えば、SVVは神経内分泌腫瘍細胞に対して10,000倍を超える選択性を示す;(ii)SVVは化学療法による処置より1,000倍良好な殺細胞特異性を有することが示されている;(iii)SVVは、1014ウイルス粒子/kg程の高濃度で全身投与を受けたマウスにおいて顕性の毒性を全く示さない;(iv)SVVの効果は非常に強く、マウスにおいてあらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を根絶することができ、腫瘍増殖の再発はない;(v)SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルライン中で200,000粒子/細胞を超える濃度で生産させることができる;(vi)SVVはサイズが小さく(SVVウイルス粒子は直径30nm未満である)、したがって他の腫瘍溶解性ウイルスより良好に腫瘍に浸透および伝播することができる、(vii)SVVは高速に複製する(12時間未満)、ならびに(viii)特異的抗腫瘍物質としての使用に関してSVVの修飾は不要である。
【0091】
さらに、初期研究(実施例6を参照のこと)では、SVVを腫瘍溶解性ウイルス療法に有益なツールにする、以下の追加要因が示される:(i)ヒト血清サンプルはSVVを標的にする中和抗体を含有しない;(ii)SVVは補体によって阻害されない;ならびに(iii)SVVは赤血球凝集によって阻害されない。これらの全要因は、SVVが他の腫瘍溶解性ウイルスより長いインビボでの循環時間を示す(例えば、実施例7を参照のこと)ことに寄与する。
【0092】
本発明は、細胞集団中の新生物細胞を選択的に死滅させるための方法であって、ウイルスが細胞集団中の新生物細胞に形質導入し、複製し、該新生物細胞を死滅させることができる条件下で、有効量のSVVを該細胞集団と接触させることを含む方法を提供する。SVVがインビボで腫瘍細胞を死滅させる方法に加えて、本方法は以下に挙げる実施態様を包含する:(1)SVVによる感染時に腫瘍細胞をインビトロで培養することができ;(2)非腫瘍細胞の存在下で腫瘍細胞を培養することができ;ならびに(3)細胞は哺乳類細胞(腫瘍および非腫瘍細胞の両者)であり、細胞がヒト細胞である場合を含む。細胞のインビトロ培養およびSVVによる感染は種々の適用性を有し得る。例えば、インビトロ感染は、大量のSVVを生産する方法、新生物細胞が細胞集団中に存在するかどうかを判定または検出するための方法、または変異SVVが諸腫瘍細胞または組織型を特異的に標的にし、それらを死滅させることができるかどうかをスクリーニングするための方法として使用される。
【0093】
さらに本発明は、エクスビボでの癌の処置方法であって、ヒト癌患者から細胞を単離し、インビトロで培養し、該癌細胞を選択的に死滅させるSVVを感染させ、そして非腫瘍細胞を該患者に再導入する方法を提供する。あるいは、SVVを患者に投与するための方法として、患者から単離された細胞にSVVを感染させて、すぐに該患者に再導入することができる。一実施態様では、癌細胞は造血性起源である。場合により、患者の腫瘍細胞をインビボで破壊する処置(例えば化学療法または放射線照射)を患者に受けさせた後に、培養細胞を該患者に再導入してよい。一実施態様では、該処置の使用により、患者の骨髄細胞を破壊してよい。
【0094】
SVVは、神経特性を有する腫瘍細胞型に対する強力な抗腫瘍活性を有する。SVVは、正常なヒト、ラット マウス、ウシまたはヒツジのセルラインまたは非神経系の腫瘍セルラインに対する細胞溶解活性を示さない。さらにSVVは初代ヒト肝細胞に対して細胞障害性ではない。以下の表1では、選択された腫瘍細胞型に対するSVVのインビトロ細胞溶解効果を測定するために行われた研究をまとめる。
【0095】
表1:選択された腫瘍細胞型に対するSVVの細胞溶解効果
【表1】
【0096】
マウスでの研究(実施例を参照のこと)では、SVVがインビボで非常に高い効果および特異性で腫瘍を特異的に死滅させることができることが示される。これらのインビボでの研究では、他の腫瘍溶解性ウイルスと比べてSVVが多数の利点を有することが示される。例えば、確立された腫瘍を根絶する腫瘍溶解性腫瘍ウイルスの能力に影響する重要な一要因は、ウイルスの浸透性(penetration)である。アデノウイルスベクターを用いる研究では、Ad5ベースのベクターは胸腺欠損マウスのSCLC腫瘍の発達に対する影響を有さなかった。免疫組織化学の結果によれば、アデノウイルスは確立された腫瘍に浸透しないと考えられた。対照的に、SVVは単一の全身投与にしたがって胸腺欠損ヌードマウスのH446 SCLC腫瘍を排除することができた。SVVはサイズが小さく(直径<30nm)、したがって他のウイルスより良好に腫瘍組織に浸透および伝播することが可能であり、ゆえに、SVVのサイズが小さいことは、確立された腫瘍に首尾良く浸透し、それらを根絶するその能力に寄与するであろう。
【0097】
化学抵抗性(chemoresistance)は、癌治療の一様相である化学療法を受けるすべての患者が直面する主要な問題である。化学抵抗性になる患者は、常にではなくとも、非常に不良な予後を有することが多く、代替療法がない状態になるであろう。化学抵抗性の主要な原因の1つは、多剤耐性タンパク質(MRP)と称されるファミリーのタンパク質の発現、過剰発現、または活性増加であることが周知である。発明者(出願人)らは、SVVに関する特定の腫瘍細胞の感受性も癌細胞の化学抵抗性状態およびMRP発現と相関することを発見した。H69はインビトロでSVVに耐性の化学感受性(アドリアマイシン)セルラインであり、H69ARは、MRPを過剰発現し、SVVに感受性の化学抵抗性セルラインである(表1を参照のこと)。MRP、例えばMDRの過剰発現はSVVの殺細胞性に対する細胞の感受性と相関することを示す証拠である。ゆえに、一実施態様では、本発明はSVVがMRP過剰発現性細胞を死滅させる癌の処置方法を提供する。
【0098】
また本発明は、異常細胞、例えば異常増殖性細胞に起因する疾患の処置方法を提供する。本方法は、異常細胞の部分またはすべての破壊を導く様式で該異常細胞をSVVと接触させることを含む。SVVを使用して、異常細胞に起因する種々の疾患を処置することができる。これらの疾患の例には、非限定的に、腫瘍細胞が神経内分泌性の特徴を示す癌および神経線維腫症が含まれる。
【0099】
神経内分泌腫瘍は種々の方法によって同定することができる。例えば、神経内分泌腫瘍は多数のペプチドホルモンおよびアミンを生産および分泌する。これらの物質のいくつかは以下のような特定の臨床症候群の原因になる:カルチノイド、Zollinger-Ellison、高血糖、グルカゴノーマおよびWDHA症候群。これらの症候群に関する特異的マーカーは、それぞれ、尿5−HIAA、血清または血漿ガストリン、インスリン、グルカゴンおよび血管活性腸ポリペプチドの基底および/または刺激レベルである。いくつかのカルチノイド腫瘍および約1/3の内分泌膵腫瘍は臨床症状を全く示さず、「非機能性」腫瘍と称される。したがって、一般的腫瘍マーカー、例えばクロモグラニンA、膵ポリペプチド、血清ニューロン特異的エノラーゼおよび糖タンパク質ホルモンのサブユニットが、明確な臨床のホルモン関連症状を有さない患者のスクリーニングのために使用されている。これらの一般的腫瘍マーカーのうち、クロモグラニンAは、その正確な機能は未だ確立されていないが、種々のタイプの神経内分泌腫瘍に関する非常に高感度かつ特異的な血清マーカーであることが示されている。これは、既知のホルモンを分泌しない、分化の程度が低い神経内分泌起源の腫瘍の多数の症例においても上昇する可能性があることに基づく。現在、クロモグラニンAは、診断および治療上の評価の両方に関して利用可能な最良の一般的な神経内分泌性の血清または血漿マーカーであると考えられ、種々の神経内分泌腫瘍を有する患者の50〜100%において増加する。クロモグラニンAの血清または血漿レベルは腫瘍負荷(tumor load)を反映し、中腸カルチノイドを有する患者の予後についての非依存的マーカーであろう。
【0100】
また本発明は、SVVおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。製薬的に許容される担体中に有効量のSVVを含ませることができる上記組成物は、単位投与剤形、滅菌非経口溶液または懸濁液、滅菌非腸管外(non-parenteral)溶液または経口(oral)溶液または懸濁液、水中油または油中水エマルジョン、等として個体に局所または全身投与するのに適している。非経口および非腸管外(経口)薬物送達用の製剤は当技術分野において既知である。組成物には、凍結乾燥および/または再組成型のSVVも含まれる。許容される医薬用担体は、例えば生理食塩水溶液、硫酸プロタミン(Elkins-Sinn, Inc., Cherry Hill, NJ)、水、水性バッファー、例えばリン酸バッファーおよびトリスバッファー、またはポリブレン(Sigma Chemical, St. Louis, MO)およびリン酸緩衝生理食塩水およびショ糖である。適切な医薬用担体の選択は本明細書中に含まれる教示内容から当業者に自明であると考えられる。これらの溶液は滅菌性であり、概してSVV以外の粒子状物質を含まない。本組成物は、生理的条件に近づけるために必要な製薬的に許容される補助物質、例えばpH調節および緩衝剤、毒性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、等を含有してよい。SVVによる細胞の感染を増強する賦形剤を含ませてよい。
【0101】
SVVは、腫瘍細胞の増殖を該腫瘍細胞におけるウイルスの複製によって阻害、予防または破壊するのに有効な量で、宿主または対象に投与する。SVVを癌治療に利用する方法には、治療的に有用な腫瘍細胞の破壊を誘発するための、安全で、発展性で(developable)、かつ許容される用量のウイルスを全身、領域または局所送達することが含まれる。全身投与を採用した場合でさえ、SVVに関する治療係数は少なくとも10、好ましくは少なくとも100またはさらに好ましくは少なくとも1000である。一般に、SVVは1x108〜1x1014vp/kgの範囲の量で投与する。正確な投与用量は種々の要因、例えば患者の年齢、体重、および性別、および処置対象の腫瘍のサイズおよび重篤度に依存する。このウイルスは1回またはそれ以上の回数で投与してよく、その回数は宿主の免疫応答能に依存するであろう。担当医によって選択される用量レベルおよびパターンで組成物の単一または複数回投与を行うことができる。必要であれば、種々の免疫抑制剤を使用して免疫応答を低下させてよい。その目的は、本ウイルスに対する免疫応答を減少させることによって反復投与を可能にし、ならびに/あるいは複製を増強することである。本発明の抗新生物性ウイルス療法を他の抗新生物性プロトコルと組み合わせてよい。送達は、リポソーム、直接注射、カテーテル、局所適用、吸入、等を使用して種々の方法で達成することができる。さらに、SVVゲノムRNAのDNAコピーまたはその部分もまた送達の手法であり得る。この場合、DNAはその後に細胞によって転写されて、SVVウイルス粒子または特定のSVVポリペプチドが生産される。
【0102】
治療有効(用)量とは、患者において症状を改善させ、あるいは生存を延長させるウイルスの量を表す。ウイルスの毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における、例えばLD50(動物または細胞の集団の50%に対して致死の用量;ウイルスに関しては、用量はvp/kg単位である)およびED50(動物または細胞の集団の50%において治療上有効な用量−vp/kg−)またはEC50(動物または細胞の集団の50%における有効濃度−vp/細胞(例えば表1を参照のこと)−)の測定に関する標準的手順によって決定することができる。有毒な影響および治療効果の間の用量比は治療係数であり、LD50およびED50またはEC50間の比として表すことができる。高い治療係数を示すウイルスが好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトでの使用に関する一定範囲の用量を製剤化する際に使用することができる。ウイルスの用量は、好ましくは、ED50またはEC50を含む、毒性をほとんど有さないか、あるいは全く有さない一定範囲の循環濃度の範囲内である。上記用量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存して、本範囲内で変動させてよい。
【0103】
さらに別の側面では、新生物症状を有する宿主生物の処置方法であって、治療有効量の本発明のウイルス組成物を該宿主生物に投与することを含む方法を提供する。一実施態様では、新生物組織は異常増殖性であり、また、新生物組織は悪性腫瘍組織であり得る。好ましくは、ウイルスは腫瘍組織において選択的に複製するその能力に起因して組織または腫瘤全体にわたって分配される。潜在的に本発明の方法を用いて処置しやすい新生物症状には、向神経性を有する症状が含まれる。
本発明のウイルスの製造方法:
【0104】
本発明のウイルスを非常に高い力価および収量(率)で製造するための方法は本発明の追加の側面である。前述のように、SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルラインにおいて200,000粒子/細胞を超える量で生産させることができる。大量のウイルスを生産可能な細胞には、非限定的に、PER.C6(Fallaux et al., Human Gene Therapy, 9: 1909-1917, 1998)、H446(ATCC# HTB−171)および表1にリストされる他のセルラインが含まれ、この場合、EC50値は10未満である。
【0105】
例えば、ピコルナウイルスの培養は以下のように行うことができる。目的のウイルスを1回プラーク精製し、十分に単離されたプラークをつつき、許容セルライン、例えばPER.C6中で増幅させる。複数サイクルの凍結および解凍によって感染細胞由来の粗製のウイルスライセート(CVL)を作成することができ、それを使用して多数の許容細胞を感染させる。この許容細胞を種々の組織培養フラスコ、例えば50x150cm2フラスコで培養することができる。培養には、種々の培地、例えば10%ウシ胎児血清(Biowhitaker, Walkersvile, MD)および10mM塩化マグネシウム(Sigma, St Louis, MO)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen, Carlsbad, CA))を使用する。感染24〜48時間後または完全な細胞変性作用(CPE)が認められた時点で感染細胞を回収することができ、4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって収集する。細胞ペレットを細胞培養上清中に再懸濁し、複数サイクルの凍結および解凍に付する。得られたCVLを4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって浄化する。ウイルスを勾配遠心分離によって精製することができる。例えば、SVVの精製には2ラウンドのCsCl勾配で十分であり得る:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルスの濃度を分光光度法で測定する。この場合、1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba D.G., and Palmenberg, A.C. 1999. カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae)). In: Encyclopedia of Virology, Second edition, R.G. Webster and A Granoff Eds)。また精製ウイルスの力価を、PER.C6細胞を使用する標準プラークアッセイによって測定する。PER.C6細胞由来のSVVの収量は200,000粒子/細胞を超え、粒子対PFU比は約100である。他の許容細胞(H446−ATCC# HTB−171)由来のSVVの収量は少なくとも上記と同程度に多く、あるいはより多いであろう。
【0106】
さらに、商業的に魅力的な大規模優良製造工程(Good Manufacturing Processes)(GMP)における複数の段階をSVVの精製に適用可能である。また本発明では、アデノウイルスの精製方法に基づくSVVの精製方法が考慮される。これらの方法には、SVVをその密度に基づいて単離することが含まれる。その理由は、SVVがアデノウイルスと非常に類似した密度を有し、アデノウイルスと同時精製することができるからである。
腫瘍の検出および研究方法:
【0107】
本発明は、本発明のウイルスを使用して患者の腫瘍または新生物細胞を検出するための方法を提供する。患者から細胞サンプルを取得し、該サンプルをエピトープタグ付きSVV(または本発明によって提供される他の腫瘍特異的ウイルス、すなわち腫瘍特異的変異カルジオウイルス)とインキュベートし、次いで該エピトープタグを検出することによって結合型SVVに関して該サンプルをスクリーニングすることによってスクリーニングすることができる。あるいは、SVVがいずれかの細胞溶解を生じさせるかどうかを検出することによってサンプルをスクリーニングすることができる。SVVが実際に細胞溶解を生じさせるか、あるいはSVVがサンプル中の細胞に特異的に結合することができれば、SVVが結合および/または感染可能であることが既知の新生物または腫瘍細胞を該サンプルが含有する可能性を示す。
【0108】
さらに、インビボでの腫瘍細胞の検出方法においてSVVを使用することができる。そのような方法では、エピトープタグ付きSVVを、最初に、SVVが依然として腫瘍細胞に特異的に結合できるが、複製できない様式で不活性化することができる。エピトープタグに関してアッセイすることによって結合型SVVを有する腫瘍細胞を検出することができる。エピトープタグの検出は、該エピトープを特異的に結合する抗体によって達成することができ、この場合、該抗体を(例えば蛍光で)標識するか、あるいは標識された二次抗体によって該抗体を後に検出することができる。
【0109】
本検出方法は、本発明の任意のウイルスの特異的な標的である任意のタイプの腫瘍または新生物細胞を検出することを包含する。特定の腫瘍型には、例えば、神経内分泌型腫瘍、例えば網膜芽細胞腫、SCLC、神経芽細胞腫 グリア芽細胞腫および髄芽腫が含まれる。
【0110】
また本発明は、腫瘍細胞を研究するツールとしてのSVVの使用を提供する。SVVはいくつかの腫瘍細胞型を選択的に破壊し、非腫瘍細胞に対する有毒な影響は、たとえあったにしても、非常に少ない。これらの特徴に基づき、SVVを使用して、腫瘍を研究し、新規腫瘍特異的遺伝子および/または経路を発見することができるであろう。換言すれば、SVVの複製を許容する腫瘍細胞には何らかの特徴が存在し、この場合、正常細胞は該特徴を示さない。新規腫瘍特異的遺伝子および/または経路を同定すると、治療用抗体または小分子を設計し、あるいはスクリーニングして、これらの試薬が抗腫瘍物質であるかどうかを判定することができる。
【0111】
また本発明は、SVVと反応するすべてのタイプの癌を同定するための方法を提供する。一実施態様では、SVV応答細胞の同定方法は、細胞を取得する段階、該細胞をSVVと接触させる段階および細胞の死滅を検出するか、あるいはウイルスの複製を検出する段階を含む。細胞の死滅は、当業者に既知の種々の方法(例えばMTSアッセイ、本明細書中のハイスループットの節を参照のこと)を使用して検出することができる。ウイルスの複製を検出する方法も当業者に既知である(例えばCPEの観察、プラークアッセイ、DNA定量法、FACSによって、腫瘍細胞中のウイルスの量を検出、RT−PCRアッセイによって、ウイルスのRNAを検出、等)。一実施態様では、細胞は癌細胞である。癌細胞の例には、非限定的に、哺乳類から取得される確立された腫瘍セルラインおよび腫瘍細胞が含まれる。一実施態様では、哺乳類はヒトである。別の実施態様では、細胞はヒト癌患者から取得される癌細胞である。
【0112】
SVV応答性癌細胞の同定方法を使用して、SVVの複製を許容する腫瘍セルラインまたは腫瘍組織を発見してよい。また、許容腫瘍細胞の特徴を決定することによって、SVVによって細胞が選択的に死滅する原因である腫瘍細胞の特徴を同定することができるであろう。これらの特徴を発見すれば、制癌剤の新規標的が得られるであろう。また、SVV応答性癌細胞の同定方法を使用して、SVVでの処置から恩恵を受けるであろうヒト癌患者をスクリーニングすることができよう。
【0113】
SVVの天然宿主は未だ決定されていないので、SVVを検出するアッセイに関する必要性が存在する。ゆえに、本発明はSVVの検出方法を提供する。一実施態様では、検出アッセイはSVVポリペプチドエピトープに対して特異的な抗体に基づく。別の実施態様では、検出アッセイは核酸のハイブリダイゼーションに基づく。一実施態様では、SVVからRNAを単離し、標識(例えば放射性、化学発光、蛍光、等)して、プローブを作成する。その後試験材料からRNAを単離し、ニトロセルロース(または同様の基質または機能的に等価の基質)に結合させ、標識型SVV RNAでプローブし、結合型プローブの量を検出する。また、ウイルスのRNAを直接または間接的にシークエンシングしてよく、その配列に基づいてPCRアッセイを開発してよい。一実施態様では、PCRアッセイはリアルタイムPCRアッセイである。
【0114】
改変された親和性を有するウイルスの作成方法:
本発明はSVV変異体(または変種または誘導体)の構築方法を提供し、この場合、これらの変異体は改変された細胞型親和性を有する。具体的には、野生型SVVの結合に耐性であることが既知の腫瘍または新生物細胞に特異的に結合し、ならびに/あるいはそれらを特異的に死滅させる能力に関してSVV変異体を選択する。
【0115】
ネイティブまたは野生型SVVは単純なゲノムおよび構造を有し、それによりネイティブのウイルスを修飾して他の癌の徴候を標的にすることが許容される。これらの新規誘導体は非神経系の癌に対して拡大された親和性を有し、かつネイティブのSVVに認められる高い治療係数を依然として維持する。ターゲティング手段の1候補は、組織特異的ペプチドまたはリガンドをウイルス上に含ませることである。
【0116】
癌ターゲティングウイルス候補を選択するために、本発明は、ネイティブのSVVのキャプシド領域中にランダムなペプチド配列をエンコードする遺伝子挿入を有する腫瘍溶解性ウイルスライブラリーを構築およびスクリーニングする方法を提供する。ランダムなペプチドライブラリーは108の種類で十分であると考えられ、該ウイルスを特異的に腫瘍組織に向けるペプチドが得られるであろう。
【0117】
諸研究により、腫瘍細胞が正常細胞とは異なる以下のような特徴を示すことが示されている:(1)腫瘍細胞はより浸透性の細胞膜を有する;(2)腫瘍は特定の間質細胞型、例えば血管原性内皮細胞を有し、これは細胞型特異的受容体を発現することが以前に示されている;ならびに(3)腫瘍細胞では、特定の受容体、抗原および細胞外基質タンパク質の発現に差異がある(Arap, W. et al., Nat. Med., 2002, 8(2): 121-127; Kolonin, M.et al., Curr. Opin. Chem. Biol., 2001, 5(3): 308-313; St. Croix, B. et al., Science, 2000, 289(5482): 1997-1202)。これらの研究では、腫瘍および正常組織が分子レベルで異なっていて、ターゲティングされた薬物送達および癌の処置が可能であることが実証された。具体的には、マウスモデルにおける血管へのホーミングによって選択された複数のペプチドが、細胞障害性薬物(Arap, W. et al., Science, 1998, 279(5349): 377-380)、プロアポトーシスペプチド(Ellerby, H.M. et al., Nat. Med., 1999, 17(8): 768-774)、メタロプロテアーゼ阻害剤(Koivunen, E. et al., Nat. Biotechnol, 1999, 17(8): 768-774)、サイトカイン(Curnis, F. et al., Nat. Biotechnol., 2000, 18(11): 1185-1190)、フルオロフォア(Hong. F.D. and Clayman, G.L., Cancer Res., 2000, 60(23): 6551-6556)および遺伝子(Trepel, M. et al., Hum. Gene Ther., 2000, 11(14): 1971-1981)のターゲティングされた送達に使用されている。腫瘍ターゲティングペプチドは親薬物の効果を増加させ、その毒性を低下させることが証明されている。
【0118】
SVV誘導体のライブラリーは、ウイルスのキャプシド領域内にランダムなペプチド配列を挿入することによって作成することができる。図57に示されるように、まずSVVキャプシド領域を含有するベクター、すなわち「pSVVキャプシド」を作成する。そして、例えばDNAをランダムな位置で切断する制限酵素、すなわちCviJI(平滑末端化カッター)でベクターを切断することによって、このキャプシドベクターに変異を生じさせることができる。ベクターを多数の位置で切断し、CviJIによって一度だけ切断されたDNAをゲル精製によって単離することができる(図57を参照のこと)。この単離されたDNA集団は、キャプシド領域中の種々の位置で切断された多数の種類を含有する。そしてこの集団をオリゴヌクレオチドおよびリガーゼとインキュベートして、一定の割合のオリゴヌクレオチドを多数の異なる位置でベクターのキャプシド領域内にライゲートする。この様式で、変異SVVキャプシドのライブラリーを作成することができる。
【0119】
キャプシドエンコード領域内に挿入されるオリゴヌクレオチドは、ランダムなオリゴヌクレオチド、非ランダムのオリゴヌクレオチド(すなわち、このオリゴヌクレオチドの配列はあらかじめ決定されている)、または半ランダム(すなわち、このオリゴヌクレオチドのある部分はあらかじめ決定されていて、ある部分はランダムな配列を有する)であってよい。非ランダムの側面で考慮されるオリゴヌクレオチドはエピトープエンコード領域を含み得る。考慮されるエピトープには、非限定的に、c−myc−ヒトプロトオンコジーンmycの10アミノ酸セグメント(EQKLISEEDL(配列番号35);HA−ヒトインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来の(赤)血球凝集素タンパク質(YPYDVPDYA(配列番号36));およびHis6(配列番号116)−6個の連続するヒスチジンをエンコードする配列−が含まれる。
【0120】
そして変異キャプシドポリヌクレオチドのライブラリー(例えば図57の「pSVVキャプシドライブラリー」)を制限酵素で消化して、変異キャプシドエンコード領域のみを切り出すことができる。次いでこの変異キャプシドエンコード領域を、キャプシドエンコード領域を除いた完全長ゲノム配列を含有するベクターにライゲートする(例えば図58を参照のこと)。このライゲーションにより完全長ゲノム配列を有するベクターが生成し、この場合、ベクターの集団(またはライブラリー)は多数の変異キャプシドを含む。図58では、種々のキャプシドを含むこのSVV変異体のライブラリーを「pSVVFLキャプシド」と表す。そしてpSVVFLキャプシドベクターのライブラリーを直線化および逆転写して、変異SVV RNAを作成する(図59を参照のこと)。次いで変異SVV RNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、キャプシド中に脱療育性(dehabilitating)変異を有さないSVV配列が宿主細胞によって翻訳され、多数の変異SVV粒子が生産されるようにする。図59では、多数の変異SVV粒子を「SVVキャプシドライブラリー」と表す。
【0121】
キャプシドエンコード領域内に挿入されるオリゴヌクレオチドによってエンコードされるペプチドは、特異的ウイルス感染に関するターゲティング部分として働くことができる。特定タイプの癌を標的にするウイルスならば、上記ペプチドに対する受容体を有する癌細胞のみに選択的に感染し、その細胞中で複製し、細胞を死滅させ、そして同一タイプの細胞にのみ伝播するであろう。本方法論により、新規腫瘍ターゲティングペプチドおよびリガンド、腫瘍選択的受容体、治療用SVV誘導体および他のウイルス誘導体、例えばピコルナウイルス誘導体の同定が可能になる。
【0122】
SVV変異体ライブラリーのインビトロおよびインビボスクリーニングは、他の技術、例えばペプチドビーズライブラリーおよびファージディスプレイと比べていくつかの利点を有する。これらの他の技術と違って、本件で望ましい候補、すなわち癌細胞に選択的に結合するSVV誘導体はインサイチュで複製する。この複製ベースのライブラリーアプローチは、新規細胞結合部分を発見する従来の方法、例えばファージディスプレイと比べて多数の利点を有する。第一に、SVVライブラリーのスクリーニングは複製に基づく。標的組織、本事例では特定の癌細胞で複製することができるのは、所望のウイルス誘導体だけである。スクリーニング/選択工程によって、ターゲティングペプチド部分を有し、かつ自身が癌治療薬であってよい非常に特異的なウイルス候補が得られる。一方、ファージディスプレイによるスクリーニングは結合イベントのみに帰着し、ターゲティングペプチド候補しか得られない。ゆえに、SVVライブラリーのスクリーニングはずっと高速かつ選択的なアプローチを提供する。第二に、インビトロまたはインビボでのファージディスプレイによるスクリーニング時には、標的細胞から回収されたファージを細菌中で増幅する必要があるが、SVV誘導体は感染細胞から(または溶菌的な感染を受けた細胞の培養上清から)直接回収および精製することができる。第三に、SVVはゲノムのサイズが小さく、したがって操作が容易である;ゆえに、最適な挿入を保証して、キャプシド領域内にランダムに遺伝情報を挿入することが可能である。したがって、SVVライブラリーの構築およびスクリーニングは、非常に有効なウイルス誘導体を生産する高い可能性を有する。これらの誘導体を設計およびスクリーニングして、非神経特性を有する癌に特異的に感染するようにする。
【0123】
キャプシドエンコード領域内にオリゴヌクレオチドを挿入すると、いくつかの欠損変異体が生じる。変異体は、オリゴヌクレオチド配列の挿入によって停止コドンが生じ、したがってウイルスのポリタンパク質が生産されなくなり得るという意味で欠損性であってよい。また変異体は、オリゴヌクレオチド配列の挿入によってキャプシドがもはや会合できなくなるようにキャプシド構造が変化してよいという意味で欠損性であってよい。オリゴヌクレオチド配列の挿入によって停止コドンが生じるか、あるいはキャプシド構造が成り立たなくなる可能性を減らすために、TRIMのような方法を使用して、停止コドンまたは特定のアミノ酸をエンコードしないようにランダムなオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0124】
キャプシド領域中にオリゴヌクレオチド用の最適な挿入ポイントが存在するかどうかを判定するために、RGD−SVVライブラリーを作成することができる(実施例16を参照のこと)。例えばCviJIを用いて、SVVキャプシドをエンコードするポリヌクレオチドをランダムに切断する。そしてランダムに直線化されたキャプシドポリヌクレオチドを、少なくともRGDアミノ酸配列(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)をエンコードするオリゴヌクレオチドにライゲートする。次いでこれらのRGD−キャプシド配列を、キャプシド配列を欠いているSVV完全長配列ベクターにライゲートする。RGD−SVV誘導体ウイルスを製造し、特定のインテグリン発現性セルラインにおいて感染および複製するその能力に関して試験する(RGDペプチドは要素をインテグリン受容体に向けることが示されているため)。そしてインテグリン発現性セルラインへの感染に成功したRGD−SVV誘導体を解析して、RGDオリゴヌクレオチドに関する主要な挿入部位が存在するかどうかを判定する。次いでこの部位を使用して、ランダム、非ランダムまたは半ランダムのオリゴヌクレオチドを部位特異的に挿入することができる。
【0125】
さらに、SVVおよび他のピコルナウイルス間のキャプシドエンコード領域の部分を比較すると(図28を参照のこと)、ウイルス間において種々の非ボックス(non-boxed)領域が存在し、この領域では配列類似性がその最低である。これらの領域はウイルス間で異なる親和性への寄与において重要であるかもしれない。ゆえに、これらの領域は、SVVキャプシドの(および他のウイルスのキャプシドに関する)オリゴヌクレオチド挿入変異誘発に関する候補位置であろう。
【0126】
腫瘍特異的治療薬としての不活性化型SVV:
SVVおよびSVVキャプシド誘導体は特定の腫瘍細胞型および/または組織を標的にすることができるため、SVV粒子そのものを治療薬用の送達ビヒクルとして使用することができる。上記方法では、SVVの腫瘍溶解能に関しての必要性は必須ではなくなる。その理由は、送達される治療薬が標的の腫瘍細胞を死滅させることができるからである。
【0127】
例えば、野生型SVVを不活性化して、ウイルスがもはや感染細胞を溶解しないが、この場合、該ウイルスは依然として標的の腫瘍細胞型に特異的に結合および侵入することが可能であるようにできる。ウイルスの複製機能を不活性化する、当技術分野において既知の多数の標準的方法が存在する。例えば、ホルマリンまたはβ−プロピオラクトンによって全ウイルスワクチンを不活性化して、ウイルスが複製できないようにする。野生型SVVそのものに、細胞のアポトーシスを引き起こすペプチドを含有させてよい。あるいは、SVVに放射線を照射することができる。しかし、放射線を照射されたウイルスは、依然として腫瘍細胞を特異的にターゲティング可能であることを保証するために最初に試験すべきであろう。その理由は、特定の照射条件により、タンパク質、ゆえにキャプシドの変化が生じる可能性があるからである。さらに、パッケージングシグナル配列が欠失した変異SVVを作成することができる。これらのSVV変異体は標的細胞に特異的に結合および侵入することができるが、複製されたSVVゲノムRNAはパッケージされず、キャプシド内に組み立てられない。しかし、本方法は有用であることが判明するであろう。その理由は、これらの変異SVVの初期侵入により宿主タンパク質合成のシャットオフが生じて、依然として腫瘍細胞死が達成されるからである。
【0128】
また、変異キャプシドを有する誘導体SVVを不活性化して、その使用により癌細胞を死滅させることができる。キャプシド領域内に挿入されたエピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドを有する誘導体SVVをビヒクルとして使用し、腫瘍細胞に毒素を送達することができる。本明細書中で記載されるように、誘導体SVVにランダムに変異を生じさせ、腫瘍特異的親和性に関してスクリーニングすることができる。エピトープタグに毒素を結合させて、ウイルスが腫瘍細胞に毒素を送達するようにできる。あるいは、エピトープタグに特異的に結合する治療用抗体を使用して、ウイルスが腫瘍細胞に該治療用抗体を送達するようにできる。
【0129】
ハイスループットスクリーニング:
本発明は、種々のセルラインに特異的に感染する能力を有するウイルスをスクリーニングするためのハイスループット法を包含する。感染の特異性は細胞変性作用に関してアッセイすることによって検出することができる。例えば、ハイスループットスクリーニングに適したマルチウェルプレート、例えば384ウェルプレートの各ウェルで多数の諸腫瘍セルラインを培養することができる。各ウェルにウイルスのサンプルを加えて、ウイルス媒介性の溶解によって細胞が死滅するかどうかを試験する。細胞変性作用を示すウェルから培地を収集し、フラスコまたは大規模な組織培養プレート中で許容セルラインを感染させることによって培地中の任意のウイルスを増幅することができる。ウイルスを培養して、RNAを単離し、配列を解析して、ウイルスへの腫瘍細胞型特異的親和性の提供を担う可能性がある配列変異を決定することができる。
【0130】
種々の比色および蛍光定量法で細胞変性作用を高速にアッセイすることができる。これには蛍光色素ベースのアッセイ、ATPベースのアッセイ、MTSアッセイおよびLDHアッセイが含まれる。蛍光色素ベースのアッセイは、死細胞集団を検出するための核酸染色剤を含み得る。その理由は、細胞不浸透性(cell-impermeant)の核酸染色剤は死細胞集団を特異的に検出することができるからである。生細胞および死細胞集団の両者を同時に検出することが望ましければ、生細胞集団を検出するための細胞内エステラーゼ基質、膜透過性(membrane-permeant)核酸染色剤、膜電位感受性プローブ、細胞小器官プローブまたは他の細胞浸透性(cell-permeant)の指示薬と組み合わせて核酸染色剤を使用することができる。例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)は、損傷した原形質膜を有する細胞にのみ浸透する種々のSYTOXTM核酸染色剤を提供する。また臭化エチジウムおよびヨウ化プロピジウムを使用して、死細胞または瀕死の細胞を検出することができる。これらの染色剤は、任意の吸光度読み取り装置によって検出することができる高親和性の核酸染色剤である。
【0131】
例えば、溶解は、損傷した細胞のサイトゾルから上清に放出される乳酸脱水素酵素(LDH)活性の測定を基準にすることができる。細胞培養上清中のLDHの存在を検出するために、基質混合物を加えて、共役型酵素反応によってLDHがテトラゾリウム塩INTをホルマザンに還元するようにできる。次いでこのホルマザン色素を吸光度読み取り装置によって検出することができる。あるいはまた、フェナジンメトサルフェート(phenzine methosulfate)(PMS)を電子カップリング試薬として使用するMTSアッセイ[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩]を使用して、細胞障害性を検出することができる。Promega(Madison, WI)はCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assayキットを提供する。このキットでは、溶液試薬を培養ウェルに直接加え、1〜4時間インキュベートし、次いで490nmで吸光度を記録する。490nmでの吸光度の量によって測定されるホルマザン生成物の量は培養中の生細胞数に正比例する。
【0132】
吸光度の読み取りに関する多数のハイスループットデバイスが存在する。例えばSpectraMax Plus 384 Absorbance Platereader(Molecular Devices)では、190〜1000nmの波長を1nm刻みで検出することができる。このデバイスの超高速サンプル処理能力では、96ウェルマイクロプレートを5秒で読み取ることができ、384ウェルマイクロプレートを16秒で読み取ることができる。
【0133】
またウイルスの複製は良好な感染の徴候としてアッセイすることができ、そのような検出方法をハイスループット様式で使用することができる。例えば、リアルタイムRT−PCR法を使用して、細胞培養上清中のウイルス転写物の存在を検出することができる。ウイルスのRNAをcDNAに逆転写した後、二本鎖DNA結合色素(例えばSYBR(登録商標)Green、Qiagen GmbH, Germany)を使用するPCRによってcDNAを増幅および検出することができる。そして蛍光定量装置を使用してPCR産物の量を直接測定することができる。
【0134】
細胞変性作用を示すウェル由来のウイルスを成熟させ、さらにインビトロ(腫瘍および正常セルラインの再試験)およびインビボモデル(マウスにおいて外植された腫瘍を該ウイルスが死滅させることができるかどうかを試験)で試験する。
【0135】
抗体:
また本発明は、本発明のウイルス、例えば該ウイルスのタンパク質に特異的に結合する抗体に関する。本発明の抗体には、天然に存在する抗体ならびに非天然に存在する抗体、例えば単鎖抗体、キメラ抗体、二機能性抗体およびヒト化抗体、ならびにその抗原結合フラグメントが含まれる。このような非天然に存在する抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、組換え生産させることができ、あるいは、例えば、可変重鎖および可変軽鎖からなる組み合わせライブラリーのスクリーニングによって取得することができる(Huse et al., Science 246: 1275-1281, 1989)。例えばキメラ、ヒト化、CDR移植型、単鎖、および二機能性抗体のこれらおよび他の作成方法は当業者に周知である(Winter and Harris, Immunol. Today 14: 243-246, 1993; Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989; Harlow and Lane, Antibodies: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach, IRL Press 1992; Borrabeck, Antibody Engineering, 2d ed., Oxford University Press 1995)。本発明の抗体には、無傷の分子ならびにそのフラグメント、例えば本発明のポリペプチド中に存在するエピトープ決定基に結合可能なFab、F(ab’)2、およびFvが含まれる。
【0136】
免疫原として抗体産生に使用される本発明のSVVポリペプチドのペプチド部分(すなわち、配列番号2由来の任意のペプチド断片)または本発明の別のウイルスポリペプチドのペプチド部分が非免疫原性である場合、ハプテンを担体分子、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にカップリングさせることによって、あるいは該ヘプチド部分を融合タンパク質として発現させることによって免疫原性にすることができる。種々の他の担体分子および、ハプテンを担体分子にカップリングさせるための方法は当技術分野において周知である(例えばHarlow and Lane, 上記, 1988)。例えばウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類においてポリクローナル抗体を産生させるための方法は当技術分野において周知である(例えばGreen et al.,「ポリクローナル抗血清の製造(Production of Polyclonal Antisera)」, Immunochemical Protocols, Manson, ed., Humana Press 1992, pages 1-5; Coligan et al.,「ウサギ、ラット、マウスおよびハムスターでのポリクローナル抗血清の製造(Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters)」, Curr. Protocols Immunol. (1992), section 2.4.1を参照のこと)。
【0137】
モノクローナル抗体もまた、当技術分野において周知かつ通常の方法を使用して取得することができる(Kohler and Milstein, Nature 256: 495, 1975; Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.5.1-2.6.7; Harlow and Lane, 上記, 1988)。例えば、ウイルス、ウイルスポリペプチドまたはその断片を用いて免疫化されたマウス由来の脾臓細胞を適切な骨髄腫セルラインに融合させてハイブリドーマ細胞を得ることができる。クローニングされたハイブリドーマセルラインを、例えば標識されたSVVポリペプチドを使用してスクリーニングし、適切な特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するクローンを同定することができ、また、望ましい特異性および親和性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離し、該抗体の継続的供給源として利用することができる。同様に、例えば免疫化動物の血清からポリクローナル抗体を単離することができる。そのような抗体は、本発明の方法の実施に有用であることに加えて、例えば標準化キットの製造にも有用である。例えば単鎖抗体を発現する組換えファージもまた、標準化キットの製造に使用することができる抗体を提供する。例えば、種々の十分に確立された技術、例えばタンパク質Aセファロースゲルを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーによってハイブリドーマ培養からモノクローナル抗体を単離し、精製することができる(Barnes et al., Meth. Mol. Biol. 10: 79-104, Humana Press 1992); Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3を参照のこと)。
【0138】
タンパク質分解によって特定の抗体を加水分解するか、あるいはフラグメントをエンコードするDNAを発現させることによって抗体の抗原結合フラグメントを製造することができる。慣用の方法によって全抗体をペプシンまたはパパイン消化することによって抗体フラグメントを得ることができる。例えば、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを提供することによって抗体フラグメントを製造することができる。チオール還元剤および、適宜、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に関する保護基を使用して、本フラグメントをさらに切断して、3.5S Fab’一価フラグメントを得ることができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断により、2個の一価Fab’フラグメントおよびFcフラグメントを直接製造する(例えばGoldenberg, 米国特許第4,036,945号および第4,331,647号; Nisonhoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89: 230. 1960; Porter, Biochem. J. 73: 119, 1959; Edelman et al., Meth. Enzymol., 1: 422 (Academic Press 1967); Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.8.1-2.8.10 and 2.10.1-2.10.4を参照のこと)。
抗体の抗原結合フラグメントの別の例は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをエンコードするポリヌクレオチドを構築することによって取得することができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞から取得されるRNAによってエンコードされる可変領域を合成することによって製造することができる(例えばLarrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106, 1991)。
【0139】
本発明の抗体は、例えば免疫検定での使用に適している。この場合、本抗体は液相中で、あるいは固相担体に結合させて利用することができる。さらに、これらの免疫検定における抗体は種々の方法で検出可能に標識することができる。本発明の抗体を利用することができる免疫検定のタイプの例は、直接または間接形式の競合的および非競合的免疫検定である。そのような免疫検定の例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチ(免疫測定)アッセイである。本発明の抗体を使用する抗原の検出は、フォワード、リバース、または同時様式で実行される免疫検定、例えば生理学的サンプルに関する免疫組織化学的アッセイを利用して行うことができる。当業者は、過度の実験をすることなく、他の免疫検定形式を認識するか、あるいは容易に判別することができる。
【0140】
通常の当業者に既知の多数の種々の標識および抗体標識法が存在する。本発明で使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位元素、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、リン光化合物、および生物発光化合物が含まれる。通常の当業者は、通常の実験法を使用して、抗体、または別法では抗原への結合に適切な他の標識を認識するか、あるいはそのような標識を見定めることができる。
【0141】
上記方法および組成物には、記載される本発明の範囲および思想から逸脱することなく、種々の変更を施すことができる。したがって、上記説明中に含まれ、添付の図面に示され、あるいは特許請求の範囲で規定されるすべての対象は例示的であるとみなされ、限定の意味では解釈されないものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0142】
以下に記載される実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、本発明を限定する目的で含まれるものではない。
【実施例1】
【0143】
ウイルスの増幅および精製
PER.C6細胞におけるSVVの培養:SVVを1回プラーク精製し、十分に単離されたプラークをつつき、PER.C6細胞中で増幅する(Fallaux et al., 1998)。3サイクルの凍結および解凍によってSVV感染PER.C6細胞由来の粗製のウイルスライセート(CVL)を作成し、PER.C6細胞の感染に使用する。PER.C6細胞を50x150cm2のT.C.フラスコ中で培養する。培養には、10%ウシ胎児血清(Biowhitaker, Walkersvile, MD, USA)および10mM塩化マグネシウム(Sigma, St Louis, MO, USA)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen, Carlsbad, CA, USA))を使用する。感染30時間後に完全なCPEが認められた時点で感染細胞を回収し、4℃で1500rpmで10分間の遠心分離によって収集する。細胞ペレットを細胞培養上清(30ml)中に再懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付する。得られたCVLを4℃で1500rpmで10分間の遠心分離によって浄化する。2ラウンドのCsCl勾配によってウイルスを精製する:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルスの濃度を分光光度法で測定する。この場合、1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba D.G., and Palmenberg, A.C. 1999. カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae)). In: Encyclopedia of Virology, Second edition, R.G. Webster and A Granoff Eds)。また精製ウイルスの力価を、PER.C6細胞を使用する標準プラークアッセイによって測定する。PER.C6細胞由来のSVVの収量は200,000粒子/細胞を超え、粒子対PFU比は約100である。他の許容細胞(H446−ATCC# HTB−171)由来のSVVの収量は少なくとも上記と同程度に多く、あるいはより多いであろう。
【実施例2】
【0144】
電子顕微鏡観察
formvar炭素コーティンググリッド上に直接適用法を使用してSVVをマウントし、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡で検査する。ウイルスの典型的な顕微鏡写真を高倍率で撮影する。透過型電子顕微鏡では、包埋ブロックからSVV感染PER.C6細胞の超薄切片を切り出し、得られた切片を透過型電子顕微鏡で検査する。
精製SVV粒子は球状で、直径約27nmであり、格子上、単独で、あるいは小凝集物中で観察される。SVVの典型的な写真を図2に示す。いくつかの場所では、染色剤の浸透を伴う、壊れたウイルス粒子および空のキャプシドも観察される。感染PER.C6細胞の超微細構造の研究では、細胞質に結晶性封入体が認められた。SVVに感染したPER.C6細胞の典型的な写真を図3に示す。ウイルス感染細胞には数個の大きな小胞体(空の小胞)が認められた。
【実施例3】
【0145】
SVVの核酸単離
RNA単離:チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Trizol)(Invitrogen)を使用するフェノール抽出法を使用してSVVゲノムRNAを抽出した。供給元の推奨にしたがって単離を実施した。簡単には、精製SVV250μlを3容量のトリゾールおよびクロロホルム240μlと混合した。RNAを含有する水相をイソプロパノール600μlで沈殿させた。RNAペレットを70%エタノールで2回洗浄し、乾燥し、DEPC処理水に溶解した。抽出されたRNAの量を260nmでの光学濃度測定によって見積もった。一定量のRNAを1.25%変性アガロースゲル(Cambrex Bio Sciences Rockland Inc., Rockland, ME USA)に通して分離し、臭化エチジウム染色によってバンドを可視化し、写真撮影した(図4)。
cDNA合成:RT−PCRによってSVVゲノムのcDNAを合成した。cDNAの合成は、RNA 1μg、AMV逆転写酵素、およびランダムな14量体オリゴヌクレオチドまたはオリゴdTを使用して標準条件下で実施した。cDNAの断片を増幅し、プラスミドにクローニングし、クローンをシークエンシングする。
【実施例4】
【0146】
SVV配列解析:
SVV配列番号1のヌクレオチド配列を解析して、他のウイルスとの進化的関連性を決定した。このORFの翻訳産物(配列番号2)はピコルナウイルス様であり、VP2の中間から3Dポリメラーゼの末端の終止コドンに達し、1890アミノ酸長であった(図5A−5Eおよび7A−7B)。このORFの後に続く3’非翻訳領域(UTR)であるヌクレオチド5671〜5734は64ヌクレオチド(nt)長であり、終止コドンを含み、18残基が提供されるポリ(A)尾部を含まない(図5E)。
【0147】
SVVの3種の部分的ゲノムセグメントについての予備的比較(示していない)では、SVVがCardiovirus(カルジオウイルス)属(Picornaviridae(ピコルナウイルス科)ファミリー)のメンバーに最も密接に関連することが示されていた。したがって、SVV、脳心筋炎ウイルス(EMCV;Encephalomyocarditis virus種、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV;Theilovirus種)、Vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス(VHEV;Theilovirus種)およびラットTMEV様物質(TLV;Theilovirus種)のポリタンパク質配列のアライメントを構築した(図28)。本アライメントから、SVVポリタンパク質プロセシングを、最も近縁のカルジオウイルス属のメンバーのポリタンパク質プロセシングと比較した。図28では、個々のポリペプチド間の切断部分は「/」文字で区切られる。
【0148】
ピコルナウイルスでは、ほとんどのポリタンパク質切断は、ウイルスによってエンコードされる1種またはそれ以上のプロテアーゼによって行われるが、カルジオ−、アフト−、エルボ−およびテシオウイルスにおいて、P1−2Aおよび2B間の切断は、不十分にしか理解されていないシス作動性機構によって行われ、この機構は2A配列そのものに関連し、また配列「NPG/P」が決定的に関与する。この場合、「/」は2Aおよび2Bポリペプチド間の分解を表す(Donnelly et al., 1997, J. Gen. Virol. 78: 13-21)。パレコウイルスの1種であるLjunganウイルスは、典型的なパレコウイルス2Aの上流に存在するこの配列(NPGP 配列番号111)を有し、これは追加の2Aであるか、あるいはP1キャプシド領域のC末端である。全9種の現在認められているピコルナウイルス属では、3Cproはシス作動性自己切断反応以外のすべてを実行する(すなわちエンテロ−およびライノウイルスでは2AはそのN末端で分解し、アフトウイルスおよびエルボウイルスではLはそのC末端で分解する)。組み立て後のキャプシドポリペプチドVP0からVP4およびVP2への切断は、3Cproによってではなく、ウイルスのRNAが関与するかもしれない未知の機構によって行われる。パレコウイルスおよびコブウイルスではVP0の切断は生じない。正常なカルジオウイルスの3Cpro切断部位は、−1位にグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E)を有し、+1位にグリシン(G)、セリン(S)、アデニン(A)またはアスパラギン(N)を有する(表2)。SVVポリタンパク質の切断は、ヒスチジン(H)/セリン(S)であるVP3/VP1部位を除き、このパターンに一致する(表2);しかし、少なくとも1系統のウマ鼻炎Aウイルス(ERAV;Aphthovirus属)においてH/Sはおそらく3Aおよび3BVPg間の切断部位として存在する(Wutz et al., 1996, J. Gen. Virol. 77: 1719-1730)。
【0149】
表2.SVVおよびカルジオウイルスの切断部位
【表2】
【0150】
SVVの初期切断(P1/P2およびP2/P3):これらの初期切断イベントはカルジオ−、アフト−、エルボ−およびテシオウイルスと同様の様式で生じると予測され、配列NPG/Pが関与する新規機構によってP1−2Aが2Bから分離されること、および3Cproによる2BCおよびP3間の従来の切断イベントが関与する(表2)。
P1切断:SVV P1キャプシドコード領域内の切断は、EMCVおよびTMEVとの配列のアライメントによって比較的容易に予測することができた(表2)。
P2切断:2Cタンパク質はRNA合成に関与する。SVVの2Cポリペプチドは、推定ヘリカーゼおよびすべてのピコルナウイルス2Cに存在するNTP結合モチーフGxxGxGKS/T(ドメインA)およびhyhyhyxxD(この場合、hyは任意の疎水性残基である;ドメインB)を含有する(図29)。
P3切断:P3切断部位の予測もまた比較的簡単であった。3Aポリペプチドの機能についてはほとんど知られていない。しかし、すべてのピコルナウイルス3Aタンパク質は推定の膜貫通アルファ−ヘリックスを含有する。SVVおよびカルジオウイルス間でこのタンパク質の一次配列の同一性は低い(図28の位置1612〜1701間を参照のこと)。
【0151】
3B領域によってエンコードされる、ゲノム結合型ポリペプチドVPgは、他のカルジオウイルスと共通のアミノ酸を少数しか共有しないが、3番目の残基はチロシンであり、これはウイルスゲノムの5’末端へのその結合に適合性である(Rothberg et al., 1978)。図28の位置1703〜1724間を参照のこと。
4種のピコルナウイルスの3Cシステインプロテアーゼの三次元構造が解明され、活性部位残基が同定されている(HAV, Allaire et al., 1994, Nature, 369: 72-76; Bergmann et al., 1997, J. Virol., 71: 2436-2448; PV-1, Mosimann et al., 1997, J. Mol. Biol., 273: 1032-1047; HRV-14, Matthews et al., 1994, Cell, 77: 761-771; and HRV-2, Matthews et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 11000-11007)。図29において太字のシステインは求核基であり、一方、第一の太字のヒスチジンは一般的塩基であり、グルタミン残基の特異性は主に第二の太字のヒスチジンによって規定される;全3残基はSVV配列(図29)およびすべての他の既知のピコルナウイルスで保存されている(図28;3C配列の比較に関しては、位置1726〜1946間を参照のこと)。
【0152】
3DポリペプチドはRNA依存性RNAポリメラーゼの主要コンポーネントであり、SVVはピコルナ様ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼで保存されるモチーフ、すなわちKDEL/IR(配列番号113)、PSG、YGDD(配列番号114)およびFLKR(配列番号115)を含有する(図3;図28の位置1948〜2410間)。
P1のN末端のミリストイル化:ほとんどのピコルナウイルスでは、P1前駆ポリペプチドはそのN末端グリシン残基(N末端メチオニンが除去されている場合に存在)によってアミド結合を介してミリスチン酸の分子に共有結合している(Chow et al., 1987, Nature, 327: 482-486)。結果的に、P1のN末端を含有する切断産物VP0およびVP4もまたミリストイル化される。このミリストイル化は、グリシンで始まる8アミノ酸シグナルを認識するミリストイルトランスフェラーゼによって行われる。ピコルナウイルスでは、5残基の共通配列モチーフG−x−x−x−T/Sが同定されている(Palmenberg, 1989, ピコルナウイルス感染および検出の分子的側面において(In Molecular Aspects of Picornavirus Infection and Detection), pp. 211-241, Ed. Semler & Ehrenfeld, Washington D.C., Amer. Soc. for Micro.)。パレコウイルス(Human parechovirusおよびLjungan virus)ならびにVP0の成熟切断段階を有さないものは明らかにミリストイル化されないが、これらのウイルスではVP0のN末端をブロックする何らかのタイプの分子が存在すると考えられる。
【0153】
個々のSVVポリペプチドと公共の配列データベースの比較
各SVVポリペプチド(配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20および22)を公共のタンパク質配列データベースと比較した。この比較では、European Bioinformatics Institute(EBI;http://www.ebi.ac.uk/)のFASTAオンラインプログラムを使用した。これらの比較の結果(最大一致)を表3に示す。2C、3Cproおよび3Dpolに沿って、全体として見ると、キャプシドポリペプチド(VP2、VP3およびVP1)はカルジオウイルス属のメンバーと最も密接に関連するが、短い予測の2A配列はLjunganウイルス(Parechovirus属)の配列により近い。SVV 2Aヌクレオチド配列と類似の配列のさらに詳細な比較を図28に示す(また、2A様NPG/P(配列番号111)タンパク質の比較に関しては図70を参照のこと)。
【0154】
表3.Seneca Valleyウイルスの個々の予測ポリペプチドのデータベース一致
【表3】
【0155】
SVVの2BとUreaplasma urealyticum(ウレアプラズマ・ウレアリチカム)の複数バンドの抗原または3AとChlorobium tepidumエンドラーゼ2の一致についての重要性は明らかではないが、これらの関連性はさらに研究する価値があるかもしれない。
SVVポリペプチドと他のピコルナウイルスの系統発生的比較
カルジオウイルスとアライメントすることができるSVVポリペプチド(VP2、VP3、VP1、2C、3Cおよび3D)を各ピコルナウイルス種の代表的なメンバーの同一のタンパク質と比較した(表4)。プログラムBioEdit v5.0.9(Hall, 1999, Nucl. Acids. Symp. Ser., 41: 95-98)およびClustal X v1.83(Thompson et al., 1997, Nucl. Acids Res., 25: 4876-4882)を使用してアライメントを作成し、距離マトリックスおよび無根近隣結合ツリーをSaitouおよびNei(Satiou and Nei, 1987, Mol. Biol. Evol., 4: 406-425)のアルゴリズムにしたがって構築した。ブートストラップリサンプリング(1000疑似反復(pseudo-replicates))によって分岐に関する信頼限界に近づけた。TreeView 1.6.6(Page, 1996)を使用してツリーを描いた(図31〜37)。ツリーを構築するために使用された距離マトリックスでは、複数の置換に関して補正された値を使用したが、図38〜44は実際のアミノ酸同一性パーセントを示す。表4は、これらの比較において使用されたPicornaviridaeファミリーの現在の分類および代表的なウイルス配列を示す。
【0156】
表4.SVVとの比較において使用されるピコルナウイルスの分類学的分類
【表4】
【0157】
個々のキャプシドタンパク質についてのツリー(図31〜33)は、すべてのツリーのポリペプチド由来のデータを組み合わせた場合に作成されるツリー(図34)のすべてを表すものではない。おそらくこれは、キャプシドポリペプチドのアライメントが、特にVP2の場合のようにそれらが完全長でない場合には困難であることに起因する(図31)。しかし、P1、2C、3Cproおよび3Dpolのツリーはすべて調和し、SVVがEMCVおよびTMEVとクラスター形成することを示す。
【0158】
カルジオウイルス属のメンバーであるSeneca Valleyウイルス
明らかにSVVの3Dpolはカルジオウイルスに関連し、この関連性はEMCVおよびTMEVが互いに関連するのとほぼ同程度に密接である(図37;図44)。ピコルナウイルスで比較的保存されていると一般に考えられる他のポリペプチド、2Cおよび3Cでは、同様にSVVはカルジオウイルスに最も密接に関連するが、EMCVおよびTMEVが互いに密接に関連するほど、それらに密接に関連するわけではない(それぞれ図42および図43)。外側キャプシドタンパク質では(全体として見ると)、同様にSVVはカルジオウイルスに最も密接に関連し、2種のアフトウイルス種、Foot-and-mouth disease virus(口蹄疫ウイルス)およびEquine rhinitis A virusとほぼ同一の関連性(〜33%)を有する。SVVは、2Bおよび3Aポリペプチドがカルジオウイルスと非常に異なり、任意の既知のピコルナウイルスと検出可能な関連性を有さない。しかし、これは前例がないわけではない;トリ脳脊髄炎ウイルスは2A、2Bおよび3AがA型肝炎ウイルス(HAV)とはかなり異なる(Marvil et al., 1999, J. Gen.Virol., 80: 653-662)が、HAVとともにHepatovirus属内に仮分類される。
【0159】
EMCVおよびTMEVが標準であるとすると、Seneca Valleyウイルスは明らかに典型的なカルジオウイルスではない。しかし、これらの2ウイルスでさえ差異を有し、この差異は5’UTRにおいて著しい (Pevear et al., 1987, J. Gen. Virol., 61: 1507-1516)。しかし、系統学的にSVVはそのポリタンパク質の大半(P1、2C、3Cproおよび3Dpol領域)においてEMCVおよびTMEVとクラスター形成する。最終的に、ピコルナウイルス科内のSVVの分類学的位置は、国際ウイルス分類委員会(International Committee for the Taxonomy of Viruses)(ICTV)の実行委員会(Executive Committee)(EC)によって決定される。この決定は、Picornaviridae研究グループ(Picornaviridae Study Group)の推奨および立証用の公開されている材料にしたがって行われる。2つの選択肢が存在する:i)SVVをカルジオウイルス属の新規種として含む;あるいはii)SVVを新規属に割り当てる。現段階では、ならびに本発明の目的では、SVVはカルジオウイルス属に含まれる。
[実施例4]
【0160】
SVVキャプシドタンパク質のSDS−PAGEおよびN末端配列解析
精製済みSVVを電気泳動に付する。泳動には、NuPAGEプレキャストビス−トリスポリアクリルアミドミニゲル電気泳動システム(Novex, San Diego, Ca, USA)を使用する。ゲルの半分を銀染色によって可視化し、他の半分を使用して、キャプシドタンパク質のN末端のアミノ酸をシークエンシングするためのサンプルを調製する。タンパク質をメンブレンにトランスファーする前に、ゲルを10mM CAPSバッファー、pH11、に1時間浸し、PVDF膜(Amersham)をメタノール中で湿らせる。タンパク質をPVDF膜にトランスファーする。トランスファー後、タンパク質をアミドブラックで約1分間染色することによって可視化し、目的のバンドをメスで切り出し、空気乾燥する。このタンパク質を、エドマン分解に基づく自動化N末端配列決定に付することができる。この配列決定ではパルスフェーズ(pulsed phase)シーケンサーを使用する。
【0161】
精製SVVの3種の主要構造タンパク質を図45に示す(約36kDa、31kDa、および27kDa)。
【実施例5】
【0162】
ヒト血清サンプル中のSVVに対する中和抗体に関するアッセイ
特定のウイルスベクターに対する既存の抗体は、全身送達による適用、例えば転移性癌の処置に関して該ベクターの使用を制限する可能性がある。その理由は、ベクターが標的組織または器官に形質導入する機会を得る前に、既存の抗体が全身送達されたベクターに結合し、それらを中和する可能性があるからである。したがって望ましいのは、全身送達用に選択されるウイルスベクターに対する中和抗体をヒトが保持しないことを保証することである。ヒト血清サンプルがSVV特異的中和抗体を含有するかどうかを判定するために、ランダムに収集されたヒト血清サンプルを使用して中和アッセイを行う。
組織培養感染価50:実験の1日前に、1x104細胞を含有するPER.C6細胞懸濁液180μlを96ウェル組織培養皿にプレートする。SVVの粗製のウイルスライセート(CVL)をDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)中で10-0〜10-11の対数段階で希釈し、PER.C6細胞を含有するFalcon96ウェル組織培養プレートの3ウェルに各希釈物20μlを移す。このプレートを37℃で5%CO2中でインキュベートし、3日目に細胞変性作用(CPE)についての微視的な証拠を読み取り、組織培養感染価50(TCID50)を算出する。
【0163】
中和アッセイ:まず、すべてのウェルに培地40μlを入れ、次いで非働化血清40μlを第一のウェルに加え、ピペッティングによって混合し、スクリーニング目的で使用される1:4希釈物を作成する。次いで40μlを次のウェルに移し、血清サンプルの2倍希釈を実施する。100TCID50を含有するSVVウイルス40μlを、希釈血清サンプルを含有するウェルに加える。プレートを37℃で1時間インキュベートする。混合物40μlを採取し、PER.C6細胞を含有するプレート(1x104細胞/160μl/ウェル)に移す。このプレートを37℃で3日間インキュベートする。この期間の後、CPEに関して培養を顕微鏡で読み取る。
【0164】
上記のように実施される代表的な中和アッセイでは、米国、欧州および日本からランダムに収集された22種のヒト血清サンプルをSVV特異的中和抗体に関して検査した。血清サンプルを連続希釈し、100TCID50を含有する固定量のSVVと混合した。次いで血清−ウイルス混合物を使用してPER.C6細胞を感染させ、24時間インキュベートした。CPE形成をブロックすることができる血清の最大希釈の逆数として中和抗体価を決定した。この実験では、血清の希釈物はいずれもCPE形成をブロックしなかった。これはヒト血清サンプルがSVV中和抗体を含有しなかったことを示す。
さらに、ヒト血液とのインキュベーションによってPER.C6のSVV感染が阻害されなかった(実施例6を参照のこと)。これはSVV感染が補体によって、あるいは赤血球凝集によって阻害されなかったことを示す。結果として、SVVは他の腫瘍溶解性ウイルスより長いインビボの循環期間を示す。この点は腫瘍溶解性アデノウイルスの使用に伴う重大な問題である。
【実施例6】
【0165】
SVVとヒト赤血球の結合および赤血球凝集
種々のウイルス血清型は、種々の動物種の血液から単離された赤血球のインビトロ赤血球凝集を生じさせることが示されている。赤血球凝集または赤血球への結合はインビボで毒性を生じさせる可能性があり、またインビボでのウイルスベクターの体内分布および効果に影響する可能性がある。したがって、転移性癌を処置する全身投与に関して選択されるウイルスベクターの赤血球凝集特性を分析することが望ましい。
赤血球凝集アッセイ:SVVがヒト赤血球の凝集を生じさせるかどうかを判定するために、U底96ウェルプレートで赤血球凝集アッセイを行う。精製SVVをPBS(リン酸緩衝食塩水)25μl中で2通りに連続希釈し、等しい容量の1%赤血球懸濁液を各ウェルに加える。ヘパリンを抗凝固剤として用いて、赤血球の単離に使用される血液サンプルを健康な個体から取得する。冷PBS中で血液を3回洗浄することによって赤血球を調製し、血漿および白血球を除去する。最終洗浄後、赤血球をPBSに懸濁し、1%(V/V)細胞懸濁液を作成する。ウイルスおよび赤血球を穏やかに混合し、プレートを室温で1時間インキュベートし、赤血球凝集パターンに関してモニターする。
全血不活性化アッセイ:血液成分によってSVVが直接不活性化されるのを排除するために、一定量のウイルスをA、B、ABおよびO血液型に属するヘパリン添加ヒト血液またはPBSと室温で30分間または1時間インキュベートした後、血漿を分離し、その後PER.C6細胞を感染させ、力価を算出する。
上記のように実施される代表的なアッセイでは、SVVの任意の試験希釈物で種々の血液型(A、B、ABおよびO)のヒト赤血球の赤血球凝集が全く観察されなかった。SVVを血液ヒトサンプルと混合し、30分間および1時間インキュベートした場合にウイルス力価の軽微な増加が認められる。これはウイルスが血液成分によって不活性化されないが、試験条件下でより感染性になることを示す。
【実施例7】
【0166】
インビボクリアランス
血液循環期間:血液循環期間および腫瘍中のウイルスの量を測定するために、H446腫瘍を保持するヌードマウスをSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射によって行った。注射後0、1、3、6、24、48、72時間および7日(189時間)の時点でマウスから採血し、収集直後に血液から血漿を分離し、感染培地中で希釈し、PER.C6細胞の感染に使用した。注射を受けたマウスを注射後6、24、48、72時間および7日の時点で犠牲にし、腫瘍を収集した。この腫瘍をカットして小切片にし、培地1mlに懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付して、感染細胞からウイルスを放出させた。上清の連続対数希釈物を作成し、PER.C6細胞に対する力価に関してアッセイした。SVV力価をpfu/mlで表した。またこの腫瘍切片をH&E染色および免疫組織化学に付して、腫瘍中のウイルスキャプシドタンパク質を検出した。
マウス体重の7.3%が血液であるという仮定に基づいて血液中のウイルス粒子の循環レベルを測定した。本質的に上記のように実施される代表的なアッセイでは、ウイルス投与後6時間のうちに、SVVの循環レベルはゼロ粒子に減少し、後の時点ではSVVは検出できなかった(図46A)。腫瘍では、SVVは注射後6時間の時点で検出可能であり、その後ウイルスの量は2対数まで安定して増加した(図46B)。このウイルスは、腫瘍中、注射7日後になっても検出可能であった(図46B)。免疫組織化学に付すると、この腫瘍切片では腫瘍細胞中のSVVタンパク質が認められた(図47、上パネル)。H&Eによって染色すると、この腫瘍切片ではいくつかの丸い腫瘍細胞が認められた(図47、下パネル)。
またSVVは、同様の用量の静脈内アデノウイルスと比較して実質的に長期の血液中の存在期間を示す。1回のi.v.投与後、SVVは6時間まで血液中に存在し続ける(図46C;図46Cは図46Dと比較するための図46Aの複製である)が、アデノウイルスは約1時間のうちに血液から排除される(図46D)。
【実施例8】
【0167】
腫瘍細胞選択性
SVVのインビトロ殺細胞活性:ヒト、ウシ、ブタ、およびマウス細胞の感受性を測定するために、種々の供給源から正常および腫瘍細胞を取得し、SVVを感染させた。培地中で、供給元が推奨する条件下で、すべての細胞型を培養した。初代ヒト肝細胞は、In Vitro Technologies(Baltimore, MD)から購入し、Hepatocye Culture Media(HCMTM、BioWhittaker/Clonetics Inc., San Diego, CA)中で培養してよい。
インビトロ細胞変性アッセイ:どの型の細胞がSVV感染に感受性であるかを判定するために、単層の増殖性正常細胞および腫瘍細胞に精製SVVの連続希釈物を感染させた。この細胞をCPEに関してモニターし、非感染細胞と比較した。感染3日後、MTS細胞障害性アッセイを実施し、細胞当たりの粒子中の50%致死量(LD50)値を算出する。以下の表5および6を参照のこと。
【0168】
表5.100未満のEC50値を有するセルライン
【表5】
【0169】
表6.1000を超えるEC50値を有するセルライン
【表6】
【0170】
製造元の指示書にしたがってMTSアッセイを実施した(CellTiter 96(登録商標)AQueous Assay、Promega, Madison, WI)。CellTiter 96(登録商標)AQueous Assayでは、好ましくは、テトラゾリウム化合物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩;MTS)および電子カップリング試薬、フェナジンメトサルフェート(PMS)を使用する。本研究で評価された接触阻害型正常ヒト細胞には、以下に挙げるものが含まれる:HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、HAEC(ヒト大動脈内皮細胞、Clonetics/BioWhittaker #CC−2535)、Wi38(正常ヒト胚肺線維芽細胞、ATCC #CCL−75)、IMR90(ヒト正常肺線維芽細胞、ATCC CCL−186)、MRC−5(ヒト正常肺線維芽細胞、ATCC,#CCL−171)およびHRCE(ヒト腎皮質上皮細胞、Clonetics/BioWhittaker #CC−2554)。
【0171】
SVVは任意の上記接触阻害型正常細胞においてCPEを示さない。以下のヒト腫瘍セルラインにおいてウイルス誘発性CPEは観察されなかった:Hep3B(ATCC #HB−8064)、HepG2(ヒト肝細胞癌、ATCC #HB−8065)、LNCaP(ヒト前立腺癌腫、ATCC #CRL−10995)、PC3M−2AC6、SW620(ヒト結腸直腸腺癌、ATCC #CCL−227)、SW839(ヒト腎臓腺癌、ATCC #HTB−49)、5637(ヒト膀胱癌腫、ATCC #HTB−9)、DMS−114(小細胞肺癌、ATCC #CRL−2066)、DMS153(ヒト小細胞肺癌、ATCC #CRL−2064)、A549(ヒト肺癌腫、ATCC #CCL−185)、HeLa S3(ヒト(子宮)頚部腺癌、ATCC #CCL−2.2)、NCI−H460(ヒト大細胞肺癌、ATCC #HTB−177)、KK(グリア芽細胞腫)、およびU−118MG(ヒトグリア芽細胞腫、ATCC #HTB−15)。注−表6中の1000を超えるEC50値を有するセルラインはSVVの複製および/またはビリオン生産を許容しない可能性が高い;しかし、SVVはこれらの細胞に結合および侵入することができるが、細胞の内部でSVVの複製が生じ得ないためにCPEが観察されないか、あるいは複製は実際に生じるが、なんらかの他の侵入後のブロック段階が存在するためにCPEが観察されない(すなわち、複製されたSVVゲノムがビリオン内にパッケージされない)可能性が残る。しかし、これらのセルラインにおいてCPEが存在しないことを考慮すると、これらのセルラインおよびその潜在的な腫瘍型は、どの細胞および腫瘍型がSVVの複製に許容的または非許容的であるかを試験する良好な候補である。野生型SVVは腫瘍特異的であり、神経内分泌腫瘍、例えば小細胞肺癌および神経芽細胞腫を標的にすることが示されているが、SVVがその神経内分泌腫瘍型において許容的ではないタイプの病因を有する個別の患者が存在する可能性がある。したがって本発明は、腫瘍が野生型SVVに対して非許容的である場合の個別の患者から単離される腫瘍細胞型を死滅させることができるSVV誘導体の作成を実際に考慮し、これらの個体から単離される腫瘍型には、例えば、グリア芽細胞腫、リンパ腫、小細胞肺癌、大細胞肺癌、黒色腫、前立腺癌、肝癌、結腸癌、腎臓癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌および扁平細胞肺癌が含まれ得る。
【0172】
初代ヒト肝細胞(In Vitro Technologies)に対するSVV媒介性の細胞障害性をLDH放出アッセイによって測定した(CytoTox(登録商標)96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay、Promega, # G1780)。コラーゲンでコーティングされた12ウェルプレートにプレートされた初代ヒト肝細胞に、1、10および100および1000粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。3時間の感染後、感染培地を増殖培地2mlに取り替えて、CO2インキュベーターで3日間インキュベートした。細胞結合型の乳酸脱水素酵素(LDH)および培養上清中のLDHを別々に測定した。最大の細胞性LDH+上清LDHに対する上清中のLDH単位の割合として細胞障害性パーセントを決定する。
%細胞障害性=(培養上清中のLDH単位 X 100)/(上清および細胞ライセート中のLDH単位の合計)
図48に示されるデータは、すべての試験感染多重度でSVV媒介性の肝毒性が存在しないことを示す。
【実施例9】
【0173】
ウイルス生産のアッセイ
SVVの複製能を評価するために、複数の選択された接触阻害型正常細胞および活発に分裂する腫瘍細胞に1ウイルス粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。72時間後、細胞および培地を3回の凍結−解凍サイクルに付し、遠心分離して上清を収集した。上清の連続対数希釈物を作成し、PER.C6細胞に対する力価に関してアッセイした。各セルラインに関して、SVVの複製効率をpfu/mlで表した(図49)。
【実施例10】
【0174】
毒性
最大許容投与量(MTD)は、SVVでの処置後に動物(例えばマウス)が用量規定毒性(DLT)を示す用量の直前の用量として規定する。DLTは、研究の全期間中でSVV投与に起因して動物が体重減、症状、および死亡を示す用量として規定する。SVVに対する中和抗体を、ベースライン、15日目、および21日目に評価した。前記のように中和アッセイを行った。
増加用量(1x108〜1x1014vp/kg)のSVVを、Harlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN, USA)から購入した免疫欠損ヌードおよび帝王切開由来1(CD−1)非近交系免疫適格性マウスの両者に静脈内投与し、10マウス/用量レベルでMTDを測定した。このウイルスはすべての試験用量レベルで十分に許容され、臨床症状を全く示さず、体重の喪失はなかった(図50)。15および21日目にマウスから採血し、中和アッセイにおいてSVV特異的中和抗体の存在に関して血清をモニターした。SVVを注射されたCD1マウスは中和抗体を産生し、その力価は1/1024〜1/4096超の範囲である。
免疫適格性マウス系統(A/J)に対して別の毒性研究を行った。SVVはN1E−115細胞において殺細胞活性および複製を示すことが実証されている(表1を参照のこと)。マウスセルラインN1E−115(神経芽細胞腫セルライン、すなわち神経内分泌癌)はA/Jマウス系統に由来する。ゆえに、A/JマウスにN1E−115細胞を皮下移植して腫瘍を形成させた同系マウスモデルを確立し、そしてこのマウスをSVVで処置して、その効果および毒性を研究した。
A/Jの研究では、マウスにSVVをi.v.注射して、A/JマウスがSVVの全身投与を許容できるかどうかを判定した。毒性の徴候を調査するために血液の血液学的結果を取得した。また血清化学的結果を取得することができる。この研究デザインを以下の表7に示す:
【0175】
表7:A/J研究デザイン
【表7】
【0176】
A/Jマウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, Maine)から取得された8〜10週齡のメスであった。単離されたビリオンを使用時まで−80℃で保存することによってSVVを調製した。SVVを氷上で解凍し、HBSS(ハンクス平衡塩類溶液)で希釈することによって新たに調製した。SVVを、群2では107粒子/mL、群3では1010粒子/mL、群4では1013粒子/mLの濃度に希釈した。群1ではビヒクルコントロールとしてHBSSを使用した。すべての投与用溶液を投与時までウェットアイス上で維持した。
SVVを動物に投与した。この投与は、尾静脈を介する静脈内注射により、10mL/体重kgの投与容量で行った。投与日に動物の体重を測定し、体重に基づいて投与容量を調節した(すなわち0.0200kgマウスは投与用溶液0.200mLを受ける)。罹患率および死亡率に関してマウスを1日2回モニターした。毎週2回マウスの体重を測定した。瀕死の動物および任意の(肉体的または行動的に) 異常な症状を示す動物に関する情報を即時に記録する。
死後観察および測定では、標準血液学および血清化学(AST、ALT、BUN、CK、LDH)のために、最終的に犠牲を払ってすべての生存動物から血液を収集することが必要である。犠牲を払って以下に挙げる器官を収集すべきであろう:脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、および生殖腺。各器官サンプルの半分をドライアイス上でスナップフリーズし、他の半分をホルマリン中に入れる。
SVV注射の2週間後に初期の血液の血液学的結果(CBC、ディファレンシャル)を得た。その結果を以下の表8にまとめる。各試験群(表7を参照のこと)から5マウスを試験した:
【0177】
表8:A/J毒性結果−血液の血液学
【表8】
【0178】
これらの結果は、未処理マウスから得られた血液の血液学プロファイルと比べて、低、中および高用量のSVVで処置されたマウスから得られた血液の血液学プロファイルには異常性が存在しないことを示す。本研究から、SVVの全身投与後に毒性の測定可能な徴候は存在しないと結論することができ、これはi.v.注射を受けたA/JマウスによってSVVが許容されることを示す。
【実施例11】
【0179】
効果
Harlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN)から購入した6〜7週齢の胸腺欠損雌性ヌードマウス(nu/nu)を使用して、効果の研究を行った。手動拘束を使用して、マウスの右側腹部内に5x106のH446細胞を皮下注射した。腫瘍サイズを定期的に測定し、式:π/6 x W x L2、式中L=腫瘍の長さおよびW=腫瘍の幅、を使用してその容量を算出した。腫瘍が約100〜150mm3に達した時点で、マウス(n=10)をランダムに群に分けた。マウスに増加用量のSVVを注射した。この注射は尾静脈注射により10ml/kgの投与容量で行った。コントロール群のマウスには等容量のHBSSを注射した。用量増加は1x107から1x1013粒子/体重kgまで進める。SVV投与後に毎週2回腫瘍容量を測定することによって抗腫瘍効果を決定した。完全寛解は異種移植片の完全消失と規定し;部分的寛解は50%に等しいか、あるいはそれ以上の腫瘍容量の退行と規定し;ならびに無応答(無寛解)はコントロール群と同様の腫瘍の継続的増殖と規定した。
【0180】
HBSSで処置されたマウス由来の腫瘍は急速に増殖し、研究20日までに腫瘍容量は2000mm3以上に達した(図51;白ダイアモンド形のラインを参照のこと)。対照的に、SVVの1回の全身性注射を受けたマウスは、すべての試験用量(最低用量を除く)で研究20日までに腫瘍を含有しなくなった。最低用量群では、研究31日までに、8マウスは腫瘍を含有しなくなり、1マウスは非常に大きい腫瘍を有し、他のマウスは小さい触知可能の腫瘍(25mm3)を有した。大きいサイズの腫瘍に対するSVVの抗腫瘍活性を評価するために、研究20日目に、>2000mm3の腫瘍を保持するHBSS群由来の5マウスに1x1011vp/kgの単一用量を全身性注射した。追跡期間(SVV注射後の11日間)中では、腫瘍容量の劇的な退行が認められた(図51)。
図52は、SVVで「未処置」の(すなわちHBSSで処置された)マウスまたはSVVで「処置された」マウスの写真を示す。図に示されるように、未処置マウスは非常に大きい腫瘍を有し、処置マウスは腫瘍の観察可能な徴候を示さなかった。さらに、犠牲にされなかったSVV処置マウスでは、200日間の研究期間中に腫瘍の再増殖は観察されなかった。
【0181】
特定の腫瘍セルラインに関するインビトロでのSVVの効果データを表1および5に示す。このデータは、SVVが特定の腫瘍細胞型に特異的に感染し、正常な成熟細胞に感染しないことを示し、この点は任意の他の既知の腫瘍溶解性ウイルスと比べて重大な利点である。SVVは、化学療法による処置より1,000倍良好な殺細胞特異性を有することが示されている(SVVの殺細胞特異性の値は10,000を超えることが示されているが、化学療法の殺細胞特異性の値は10付近である)。
SVVの特異的細胞障害活性を、H446ヒトSCLC細胞において実証した。増加濃度のSVVと2日間のインキュベーション後、細胞生存度を測定した。この結果を図53に示す。図53は、SVVをH446SCLC腫瘍細胞(上グラフ)または正常ヒトH460細胞(下グラフ)とインキュベートした後の細胞生存性を示す。SVVは約10-3粒子/細胞のEC50で腫瘍細胞を特異的に死滅させた。対照的に、正常なヒト細胞はいずれのSVV濃度でも死滅しなかった。さらに、表1〜3にまとめるように、SVVは多数の他の腫瘍セルライン、例えばSCLC−多剤耐性腫瘍細胞に対しても細胞障害性であった。他の腫瘍セルラインに関するSVVの細胞障害性のEC50値は、10-3〜20,000粒子/細胞を超える範囲であった。種々の他の非神経系の腫瘍および正常なヒト組織に対してSVVは非細胞障害性であった。さらに、1000粒子/細胞までのLDH放出によって測定したところ、SVVは初代ヒト肝細胞に対して細胞障害性ではなかった(図48を参照のこと)。
【実施例12】
【0182】
げっ歯類における体内分布および薬物動態学的研究
正常なマウスおよびH446 SCLC腫瘍を保持する免疫無防備の胸腺欠損ヌードマウスにおいてSVVの薬物動態学的および体内分布研究を実施する。本研究では、正常および免疫無防備の腫瘍保持マウスの両者に単一静脈内投与を行った後のSVVの体内分布、排除および持続性を評価する。各マウス群に、コントロールバッファーまたは3種のうち1種のSVV用量(108、1010、または1012vp/kg)の単一i.v.投与を施し、臨床徴候に関してモニターする。投与後1、6、24および48時間の時点、および投与後1、2、4、および12週間の時点で5マウスの群から血液サンプルを取得する。用量レベルには、既知の低い有効用量および2種のより高い用量レベルが含まれる。これはウイルス排除の線形性を決定するためである。投与後24時間、および2、4および12週間の時点でマウス群を犠牲にする。選択される組織、例えば肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓、リンパ節、骨髄、脳および脊髄組織を無菌的に収集し、有効なRT−PCRアッセイを使用してSVV RNAの存在に関して試験する。
投与後24時間の時点、および2、4および12週間の時点で犠牲を払って尿および糞便のサンプルを取得し、感染性ウイルスの存在に関して検査する。本実施例の実験デザインを以下の表9に示す:
【0183】
表9:CD−1マウスおよびSCLC腫瘍を保持する胸腺欠損ヌードマウスにおけるSVVの体内分布
【表9】
【0184】
また、正常および、H446 SCLC腫瘍を保持する免疫無防備の胸腺欠損ヌードマウスの両者において急性i.v.毒物学的研究を実施した。正常およびSCLC腫瘍保持マウスでの予備的i.v.研究では、1014vp/kgまでの用量でSVVの安全性が示される。有害な臨床徴候は観察されず、1014vp/kgの単一i.v.投与後2週間まで体重の喪失はなかった。
【実施例13】
【0185】
正常な成体および妊娠中のマウスにおけるウイルス伝播(transmission)の研究
本実施例の目的は、非感染の正常マウスと高濃度のSVVを注射したマウスを共存させた後に、SVVが伝播性であるかどうかを決定することである。SVVは正常な非腫瘍保持マウスでは複製しないため、腫瘍保持マウスに高濃度のSVVを注射し、その後正常な健康な動物に曝露して、臨床シナリオをより良好にシミュレートすることもできる。第二の目的は、感染したメスから非感染の妊娠中のDAM、およびさらにその発生中の胎児へのSVVの伝播能力を評価することである。
3群の5未処置雄性および雌性CD−1マウスを、108、1010または1012vp/kgで感染させた同じ性別の単一のマウスに曝露し、血液サンプリングによってSVVの存在に関してモニターする。
同様に、SVVに曝露されたメスをいくつかの時期の妊娠中のメスと混合し、感染したメスから非感染の妊娠中のメス、およびさらにその発生中の胎児にウイルスが伝播する能力を決定する。
【実施例14】
【0186】
非ヒト霊長類での研究
また非ヒト霊長類においてSVVの安全性、毒性およびトキシコキネティクスを決定する。用量範囲−検出相では、個々のサルに108vp/kgでSVVの単一i.v.投与を施し、感染または毒性の臨床徴候に関して詳細にモニターする。この用量が十分に許容されれば、1012vp/kgの用量が達成されるまで追加の動物をより多量のi.v.用量で処置する。その後、主研究は3雄性および雌性サルの群からなり、ビヒクルを単独で、あるいは3種のうち1種の用量のSVVを各サルに毎週1回で6週間投与し、毒性の徴候をモニターする。さらに2サル/性別に、ビヒクルを単独で、ならびに高用量レベルのSVVを6週間投与し、犠牲にする前に追加の4週間の回復期間を提供する。
1週および6週中の投与後に、血液サンプルを取得する。初回投与前および犠牲にする前に、臨床病理学および血液学上の血液サンプルを取得する。SVVの中和抗体の存在を評価するために各投与後には追加の血液サンプルを取得する。
生存するサルを安楽死させ、全肉眼剖検に付し、主研究および回復期間のサルから全組織リストを収集する。コントロールおよび高用量群由来の組織を組織病理学的に評価する。1および6週の時点の投与後に尿および糞便のサンプルを収集し、感染性SVVの存在に関して評価する。本実施例の全体のデザインを以下の表10に示す。
【0187】
表10:霊長類におけるSVVの複数用量の毒性学的研究
【表10】
【実施例15】
【0188】
完全長および機能的ゲノムSVVプラスミドの構築
現在に至るまで、SVVの約1.5〜2Kbの5’ゲノム配列だけが未だ配列決定されていない。これは5’UTR、1A(VP4)および1B(VP2)の部分をカバーするヌクレオチド領域を表す。ATCC寄託番号PTA−5343の単離されたSVVから追加のSVV cDNAを調製する。SVV粒子を許容セルライン、例えばPER.C6内に感染させ、ウイルスを単離する。その後ウイルス粒子からウイルスのRNAを回収して、そのRNAからcDNAコピーを作成する。個々のcDNAクローンをシークエンシングして、選択されたcDNAクローンを、SVV配列の5’末端の上流にT7プロモーターを有するプラスミド中の1完全長クローン内に組み込む。T7ポリメラーゼおよびインビトロ転写系を利用することによってこのプラスミド由来の完全長SVVを逆転写し、完全長RNAを作成する(図55を参照のこと)。そして完全長RNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、完全長クローンの感染力を試験する(図55を参照のこと)。
方法論は以下の通りである。
RNA単離:チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Invitrogen)を使用するフェノール抽出法を使用してSVVゲノムRNAを抽出する。簡単には、精製SVV250μlを3容量のトリゾールおよびクロロホルム240μlと混合する。RNAを含有する水相をイソプロパノール600μlで沈殿させる。RNAペレットを70%エタノールで2回洗浄し、乾燥し、DEPC処理水に溶解する。抽出されたRNAの量を260nmでの光学濃度測定によって見積もる。一定量のRNAを1.25%変性アガロースゲル(Cambrex Bio Sciences Rockland Inc., Rockland, ME USA)に通して分離し、臭化エチジウム染色によってバンドを可視化し、写真撮影する。
【0189】
cDNA合成:RT−PCRによってSVVゲノムのcDNAを合成する。cDNAの合成は、RNA 1μg、AMV逆転写酵素、およびランダムな14量体オリゴヌクレオチドまたはオリゴdTを使用して標準条件下で実施する。cDNAの断片を増幅し、プラスミドにクローニングし、クローンをシークエンシングする。ゲノムの5’最終末端をシークエンシングするためにはより広範囲の測定が必要である可能性がある。
完全長ゲノムのクローニング:配列が既知になれば、通常の分子生物学によってT7ポリメラーゼプロモーターの下流にSVVの完全長クローンを構築することが可能である(例えば、図54を参照のこと)。
【0190】
SVVの回収:SVVの完全長ゲノムを有するプラスミドを標準プロトコルにしたがって逆転写する。ウイルスのRNA(100ng)を、ネイティブのSVVに許容的であることが既知のセルライン、H446細胞のトランスフェクトに使用するが、ウイルスのRNAのトランスフェクションに関して最も効率的なセルラインは、種々のセルラインのうちから実験によって決定することができる。
【実施例16】
【0191】
RGD表示SVVライブラリーの構築
ランダムなペプチド配列をエンコードするオリゴヌクレオチドを用いてランダムに作成されるSVVキャプシド変異体の構築に最適な挿入位置を見出すために、単純なモデル系(RGD)を使用する。RGD(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)は、インテグリンに結合する短いペプチドリガンドである。良好なRGD−SVV誘導体は以下に挙げる特徴を含むべきであろう:(1)遺伝的挿入はSVV特有の望ましい任意の特性を変化させないべきであろう;ならびに(2)良好なRGD誘導体ウイルスはVb5インテグリン含有細胞に対する親和性を有するべきであろう。
連続キャプシド領域のみを含有するSVVプラスミドをランダムな位置で1回切断し、RGDと称される短いモデルペプチド配列を各位置で挿入する。このプラスミドライブラリーから、図56および57に記載される一般的技術を利用してウイルスSVV−RGDライブラリーを構築する。
【0192】
cRGDオリゴヌクレオチドをキャプシド領域内にランダムに挿入する。簡単には、SVVの連続2.1Kbキャプシド領域のみをエンコードするプラスミドを構築する(図56の「pSVVキャプシド」を参照のこと)。以下に記載のようにCviJIまたはエンドヌクレアーゼV法を利用してこのプラスミドを部分的に消化することによって、pSVVキャプシドに単一のランダムな切断を施す(図57を参照のこと)。単一切断プラスミドを単離した後、RGDオリゴヌクレオチドを挿入してpSVVキャプシド−RGDライブラリーを作成する。
制限酵素CviJIは他のランダムな切断方法、例えば超音波処理または剪断と比べていくつかの利点を有する。第一に、CviJIは平滑末端化カッターであるため、修復は必要ない。第二に、CviJIはランダムな位置で切断し、したがってホットスポットが生じないことが実証されている。この手順は単純かつ高速でもある。簡単には、切断されたDNAの大多数が直線化されたプラスミド、すなわち単一切断物であるようになるまで、CviJIの濃度および/または消化時間を次第に低下させる。これは図57に表されるように標準アガロースゲル電気泳動によって観察することができる。そしてバンドを単離し、精製し、RGDオリゴとライゲートする。
【0193】
DNAのランダムな切断に利用してよい別の方法はエンドヌクレアーゼV法である(Kiyazaki, K., Nucleic Acids Res., 2002, 30(24): e139)。エンドヌクレアーゼVは、ウラシル含有DNAにウラシル部位の3’側の2番目または3番目のリン酸ジエステル結合でニックを入れる。またこの方法はDNAをランダムに切断すると予測され、その頻度は、ポリメラーゼ連鎖反応中のdUTPの濃度を調節することよって単純に決定される。その切断部位は常に(ウラシルによって置換される)チミジン部位の下流の2または3塩基であるが、この方法では、他の方法論よりずっと少ないホットおよびコールドスポットしか生じないと予測される。
ランダムに直線化されたプラスミドをcRGDオリゴヌクレオチドとライゲートする。そして得られたpSVVキャプシドライブラリーを増幅して、ランダムに挿入されたcRGD領域を有するキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチド集団を精製することができる(図57および58を参照のこと)。次いでこのキャプシドポリヌクレオチド集団を、キャプシド領域を除く完全長SVV配列を含有するベクターにサブクローニングして、完全長SVV配列のライブラリーを作成する(この場合、cRGD配列はランダムに挿入されるため、このライブラリーはキャプシド領域中に配列の多様性を顕在化する)。次いでこのライブラリーをRNAに逆転写し、このRNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、種々のキャプシドを有するSVV粒子集団を作成する(図59を参照のこと)。このRGD−SVV集団のウイルス粒子を回収した後(「RGD−SVVライブラリー」)、RGD配列の挿入および挿入部位の多様性を確認するためのシークエンシング用にいくつかのウイルス(すなわち10またはそれ以上)をランダムに選ぶ。
RGD表示SVVライブラリーのインビトロ選択。SVV−RGDライブラリーをスクリーニングして、どの挿入部位がSVVの拡大された親和性を可能にしたかを決定する。RGD−SVVライブラリーをαVβ5インテグリン発現性NSCLC系統(非小細胞肺癌セルライン、すなわちαVβ5発現性A549)に感染させる。機能的かつ適正に表示されたRGDモチーフを含有するSVV誘導体のみがこれらの細胞に感染し、複製することができる。
【0194】
液状物の取扱い、20セルラインの同時インキュベーションおよび384ウェルプレート中での測定が可能なハイスループット自動化システム(TECAN)によってインビトロスクリーニングを行う(図62および図63を参照のこと)。感染30時間後に完全なCPEが認められた時点で細胞を回収し、次いで細胞を4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって収集する。そしてこの細胞ペレットを細胞培養上清中に再懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付する。得られた懸濁物を4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって浄化する。2ラウンドのCsCl勾配によってウイルスを精製する:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルス濃度を分光光度法によって測定する。この場合1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba, D.G. and Palmenberg, A.C., 1999)。αVβ5細胞から十分な量のウイルスが回収されるまで、この工程を複数回繰り返してよい。
回収されたRGD−SVV誘導体の分析。個々のRGD表示SVV誘導体の小プール(約10〜50の種々の誘導体)を分析する。このウイルス混合物を希釈し、単一ウイルス粒子を分析用にエクスパンドする。各誘導体を試験して、αVβ5発現性細胞に効率的かつ特異的に感染する能力を取得しているかどうかを判定する。そしてこの特性を有する各誘導体のキャプシド領域をシークエンシングして、RGD挿入の部位を決定する。回収されたcRGD表示SVV誘導体は以下に挙げる特性を有するべきであろう:(1)ウイルスの元の特性が無傷のままである;ならびに(2)誘導体が、RGDに結合する高レベルのインテグリンを発現する細胞に感染する能力を取得している。このアプローチは、RGD挿入を用いて親和性の拡大を可能にする1個またはそれ以上の部位を同定し、これらの部位内にランダムなオリゴヌクレオチドを挿入して、改変された親和性を有するSVV誘導体を作成することができるようにすることを目的にする。
【0195】
配列決定されたcRGD−SVV誘導体に番号を付し、インテグリンに対するその結合能力によって分類する。結合活性を試験するために、組換え型β2インテグリンをPBS中で96ウェルマイクロタイタープレート上に固定し、PBSで2回洗浄し、PBS中の3%BSAでブロックした後、唯一のRGD表示ウイルスとインキュベートする。ペプチド挿入を伴わないネイティブのウイルスをネガティブコントロールとして使用する。1〜5時間のインキュベーション後、ウェルをPBSで少なくとも3回洗浄する。次いで、プレートに結合しているウイルスを抗SVV抗体によって検出する。RGDペプチドまたは、インテグリンを標的にする抗体は、RGD−SVV誘導体とインテグリン結合型プレートの結合と競合することができるであろう。
インテグリンに対して最強の結合を有するcRGD−SVV誘導体(20)を分析して、cRGDオリゴヌクレオチド挿入の「成功している」位置(群)を決定する。この挿入部位によって、SVVの親和性に関する洞察が提供される。この挿入部位および他の既知の構造の分析に基づくと、ランダムなペプチドライブラリーを配置する理想的な位置を決定することができる(この方法は、SVV誘導体の作成に関する代替法であり、この場合、オリゴヌクレオチド(既知の配列またはランダムな配列)をキャプシド中のランダムな位置に挿入する)。ランダムな配列オリゴヌクレオチドを用いて作成されるSVV誘導体は、2つの追加および新規の方法論を除き、RGD−SVVライブラリーに関して上に記載される様式と本質的に同一の様式で構築する。所望のコード領域内の不必要な停止コドンおよび有害なアミノ酸挿入(例えばシステインまたはプロリン)を回避するために、Morphosys(Munich, Germany)によって開発されたTRIM(トリヌクレオチド変異誘発)技術を使用して、キャプシド挿入用のランダムなオリゴヌクレオチドを作成することができる。TRIMでは、アミノ酸を所望の位置でコードするトリ−ヌクレオチドしか利用しない(Virnekas, B. et al., Nucleic Acids Res, 1994, 22(25): 5600-5607)。ランダムペプチド表示SVVは108の種類で十分であると考えられ、ウイルスを特異的に標的腫瘍組織に向けるペプチドが得られると予測される。ランダムペプチド表示SVVを、上記のようにインビトロで、あるいは腫瘍保持マウスを使用してインビボで試験する。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1は、腫瘍溶解性ウイルスを使用するウイルス療法の概略図を示す。腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスを局所注射することによって腫瘤を介して、あるいはウイルスを全身に送達することによって、選択的に複製し、腫瘍細胞に伝播し、腫瘍細胞を死滅させる特性を有する。
【図2】図2は、酢酸ウラニルで染色され、透過型電子顕微鏡で検査された精製済みSVVを示す。球状ウイルス粒子は直径約27nmである。
【図3】図3は、大きな結晶性封入体および大きな小胞体(vesicular bodies)を有するSVV感染性PER.C6細胞の電子顕微鏡写真である。
【図4A】図4AはSVV RNAの解析を示す。チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を使用するフェノール抽出法を使用して、SVVのゲノムRNAを抽出する。1.25%変性アガロースゲルを通してRNAを分離する。臭化エチジウム(EtBr)染色によってバンドを可視化し、写真撮影する。レーン2では、SVVのゲノムRNAの主要バンドが観察され、この結果は完全長SVVゲノムのサイズが約7.5キロベースであることを示す[確認]。
【図4B】図4Bは、SVVを含むピコルナウイルスに関するポリタンパク質プロセシングから得られるゲノム構造およびタンパク質産物を示す概略図である。
【図5】図5A−5Eは、SVVのヌクレオチド配列(配列番号1)およびエンコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。停止コドンは5671〜3位の「*」によって記載する。一般注記として、正確なヌクレオチドが確認中である位置を含む配列の開示では、これらの位置を「n」によって表す。したがって、「n」を有するコドンでは、対応アミノ酸を「x」によって記載する。
【図6】図6A−6Dは、SVVの完全長ゲノムの大部分についてのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。該ヌクレオチド配列はATCC特許寄託番号:PTA−5343(寄託日:2003年7月25日)を有するSVV単離体に由来する。
【図7】図7A−7Bは、配列番号1によってエンコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図8】図8は、SVVの部分的1BまたはVP2エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド4〜429と同一である。
【図9】図9は、配列番号3によってエンコードされる部分的SVV VP2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。配列番号4にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸2〜143と同一である。
【図10】図10は、SVVの1CまたはVP3エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド430〜1146と同一である。
【図11】図11は、配列番号5によってエンコードされるSVV VP3タンパク質のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。配列番号6にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸144〜382と同一である。
【図12】図12は、SVVの1DまたはVP1エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号7)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1147〜1923と同一である。
【図13】図13は、配列番号7によってエンコードされるSVV VP1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。配列番号8にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸383〜641と同一である。
【図14】図14は、SVVの2Aエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号9)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1924〜1965と同一である。
【図15】図15は、配列番号9によってエンコードされるSVV 2Aタンパク質のアミノ酸配列(配列番号10)を示す。配列番号10にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸642〜655と同一である。
【図16】図16は、SVVの2Bエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1966〜2349と同一である。
【図17】図17は、配列番号11によってエンコードされるSVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。配列番号12にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸656〜783と同一である。
【図18】図18は、SVVの2Cエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド2350〜3315と同一である。
【図19】図19は、配列番号13によってエンコードされるSVV 2Cタンパク質のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。配列番号14にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸784〜1105と同一である。
【図20】図20は、SVVの3Aエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号15)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3316〜3585と同一である。
【図21】図21は、配列番号15によってエンコードされるSVV 3Aタンパク質のアミノ酸配列(配列番号16)を示す。配列番号16にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1106〜1195と同一である。
【図22】図22は、SVVの3Bエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3586〜3651と同一である。
【図23】図23は、配列番号17によってエンコードされるSVV 3Bタンパク質のアミノ酸配列(配列番号18)を示す。配列番号18にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1196〜1217と同一である。
【図24】図24は、SVVの3Cエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3652〜4284と同一である。
【図25】図25は、配列番号19によってエンコードされるSVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。配列番号20にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1218〜1428と同一である。
【図26】図26は、SVVの3Dエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド4285〜5673と同一である。
【図27】図27は、配列番号21によってエンコードされるSVV 3Dタンパク質のアミノ酸配列(配列番号22)を示す。配列番号22にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1429〜1890と同一である。
【図28】図28A−28Hは、SVV配列番号2およびカルジオウイルス属の諸メンバー、例えば脳心筋炎ウイルス(EMCV;Encephalomyocarditis virus種)、Theilerのマウス脳心筋炎ウイルス(TMEV;Theilovirus種)、ラットTMEV様物質(TLV;Theilovirus種)、およびVilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス(VHEV;Theilovirus種)間のアミノ酸配列アライメントを示す。以下の配列において諸カルジオウイルスの特定配列を示す:配列番号:23(EMCV−R)、24(EMCV−PV21)、25(EMCV−B)、26(EMCV−Da)、27(EMCV−Db)、28(EMCV−PV2)、29(EMCV−Mengo)、30(TMEV/DA)、31(TMEV/GDVII)、32(TMEV/BeAn8386)、33(TLV−NGS910)および34(VHEV/Siberia−55)。 図28中の番号位置は配列表の番号付けに対応しない。記号「/」は、ポリタンパク質が切断されてその最終機能性生成物になる切断部位を示す。例えば、位置1および157間のアライメントは1A(VP4)領域中に存在する。位置:159および428間のアライメントは1B(VP2)領域中に存在し;430および668は1C(VP3)領域中に存在し;670および967は1D(VP1)領域中に存在し;969および1111は2A領域中に存在し;1112および1276は2B領域中に存在し;1278および1609は2C領域中に存在し;1611および1700は3A領域中に存在し;1702および1723は3B領域中に存在し;1725および1946は3C領域中に存在し;1948および2410は3D領域中に存在する。またこのアライメントは、標準的配列解析プログラムによって決定することができるウイルス配列間の保存または類似領域の候補を示す。このアライメントはBioEdit 5.0.9およびClustal W 1.81を使用して作成した。
【図29】図29は、SVVの最終ポリペプチド産物をリストする(登場順にそれぞれ配列番号35〜44)。いくつかの保存されているモチーフは太字にし、下線を引く:2A/2B「切断」(NPGP 配列番号111);2C ATP結合(GxxGxGKS/T 配列番号112およびhyhyhyxxD);3B(VPg)/RNA結合残基(Y);3C(pro)活性部位残基(H、C、H);3D(pol)モチーフ(KDEL/IR 配列番号113、PSG、YGDD 配列番号114、FLKR 配列番号115)。
【図30】図30は、SVVおよびこれらのピコルナウイルス間の系統発生上の関連性を決定する配列解析において使用されたピコルナウイルス種をリストする(実施例4を参照のこと)。
【図31】図31は、VP2配列解析を考慮して、SVV(配列番号4)および他のピコルナウイルス間の系統発生上の関連性を示す。この図はブートストラップ近隣結合ツリー(bootstrapped neighbor-joining tree)を示す(実施例4を参照のこと)。
【図32】図32は、SVV(配列番号6)および他のピコルナウイルス間のVP3に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図33】図33は、SVV(配列番号8)および他のピコルナウイルス間のVP1に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図34】図34は、SVV(すなわち部分的P1−配列番号2のアミノ酸2〜641)および他のピコルナウイルス間のP1(すわわち1A、1B、1Cおよび1D)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図35】図35は、SVV(配列番号14)および他のピコルナウイルス間の2Cに関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図36】図36は、SVV(配列番号20)および他のピコルナウイルス間の3C(pro)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図37】図37は、SVV(配列番号22)および他のピコルナウイルス間の3D(pol)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図38】図38は、SVV(配列番号4)および他のピコルナウイルス間のVP2の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図39】図39は、SVV(配列番号6)および他のピコルナウイルス間のVP3の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図40】図40は、SVV(配列番号8)および他のピコルナウイルス間のVP1の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図41】図41は、SVV(部分的キャプシドまたはP1−配列番号2のアミノ酸2〜641)および他のピコルナウイルス間のP1の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図42】図42は、SVV(配列番号14)および他のピコルナウイルス間の2Cの実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図43】図43は、SVV(配列番号20)および他のピコルナウイルス間の3C(pro)の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図44】図44は、SVV(配列番号22)および他のピコルナウイルス間の3D(pol)の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図45】図45は、SDS−PAGEによって分析されたSVVのVP2(〜36kDa)、VP1(〜31kDa)およびVP3(〜27kDa)タンパク質を示す。精製済みSVVをSDS−PAGEに付し、銀染色によってタンパク質を可視化した。レーン「MWt」は分子量マーカーであり;レーン「SVV」はSVVの構造タンパク質を含有する。さらに、3種の分子量マーカーのサイズおよびウイルスタンパク質の名称を挙げる。
【図46】図46A−46Bは、全身投与後の血液および腫瘍中のSVVの量を示す(実施例7)。H446腫瘍を保持するヌードマウスをSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射により行った。注射後0、1、3、6、24、48、72時間および7日の時点でマウスから採血し、収集直後に血液から血漿を分離し、感染培地中で希釈し、PER.C6細胞の感染に使用した。注射後6、24、48、72時間および7日の時点で腫瘍を回収した。この腫瘍を小切片にカットし、培地1mL中に懸濁し、CVLを作成した。 図46C−46Dは、インビボでのSVVクリアランスに関するデータを示す。この図は、同様の用量の静脈内(i.v.)アデノウイルスと比較して、SVVが実質的に長期の血液中の存在期間を示すことを示し(実施例7)、したがってSVVはアデノウイルスより緩徐なインビボのクリアランス速度を有する。1回の静脈内(i.v.)投与後、SVVは6時間まで血液中に存在し続ける(図46C;図46Cは図46Dと比較するための図46Aの複製である)が、アデノウイルスは約1時間のうちに血液から排除され、あるいは枯渇する(図46D)。
【図47】図47は、H446異種移植切片の免疫組織化学およびヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を示す(実施例7)。H446腫瘍を保持するヌードマウスをハンクス平衡塩類溶液(HBSS)またはSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射により行った。注射後3日目にマウスを犠牲にし、腫瘍を収集した。SVV特異的マウス抗体を使用する免疫組織化学によって腫瘍細胞中のウイルスタンパク質を可視化する(上部パネル)。HBSSまたはSVV処置マウスから収集されたH446腫瘍細胞の全体的形態をH&E染色によって染色した(下部パネル)。
【図48】図48は、初代ヒト肝細胞におけるSVV媒介性の細胞障害性を示す(実施例9)。コラーゲンでコーティングされた12ウェルプレートにプレートされた初代ヒト肝細胞に、1、10および100および1000粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。感染3日後、細胞に結合した乳酸脱水素酵素(LDH)および培養上清中のLDHを別々に測定した。最大の細胞性LDH+上清LDHに対する上清中のLDH単位の割合として細胞障害性パーセントを決定した。
【図49】図49は、選択されたセルラインでのSVVによるウイルス生産を示す。SVVの複製能を評価するために、選択された正常細胞および腫瘍細胞に1ウイルス粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた(実施例9)。72時間後、細胞を回収し、PER.C6細胞上の力価に関してCVLをアッセイした。各セルラインに関して、SVV複製の効率をプラーク形成単位/ミリリットル(pfu/ml)として表した。
【図50】図50は、体重に基づく、ヌードおよびCD1マウスにおける毒性を示す(実施例10)。ウイルス投与後、種々の日数において、各処置群のマウスの平均体重を測定した。マウスには、1日目に単一用量のSVVまたはPBSを尾静脈注射した。
【図51】図51は、H446異種移植モデルにおける効果を示す。ヌードマウスにおいてH446腫瘍を確立させ、該マウスを群(n=10)に分類し、HBSSまたは6種の諸用量のSVVを尾静脈注射することによって処置する(実施例11)。研究20日目に、大きな腫瘍(平均腫瘍容量=2000mm3)を保持するHBSS群由来の5マウスに1x1011vp/kgを注射した(矢印で示す)。データは平均腫瘍容量+標準偏差(SD)として表す。
【図52】図52は、未処置またはSVVで処置されたH446異種移植ヌードマウスの写真を示す(実施例11)。SVVの効果は非常に強く、あらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を完全に根絶した。SVV処置マウスは、注射後少なくとも200日間、臨床症状も腫瘍の再発も示さない。
【図53】図53は、インビトロでのSVV腫瘍特異性および効果に関するデータを示す(実施例11)。このグラフは、H446ヒト小細胞肺癌腫(SCLC)腫瘍細胞(上のグラフ)または正常なヒトH460細胞(下のグラフ)のインキュベーション後の細胞生存率を示す。SVVは約10-3粒子/細胞のEC50で腫瘍細胞を特異的に死滅させた。対照的に、正常なヒト細胞はいずれのSVV濃度でも死滅しなかった。
【図54】図54は、SVVの完全ゲノムを含有する代表的なプラスミドを表す(実施例15)。ベクター上のSVV配列の上流にT7プロモーターが存在することにより、SVV配列のインビトロ転写が可能であり、したがってSVV RNA分子を作成することができる。
【図55】図55は、完全長および機能性ゲノムSVVプラスミドの構築およびその後のSVVウイルス生産に関する概略図を表す(実施例16)。機能性ゲノムSVVクローンを取得するために、T7プロモーターを有するベクターにSVVの完全ゲノムをクローニングすることができる。この操作は、ウイルスのcDNAクローンを作成し、それらをシークエンシングし、そして連続片を1プラスミドにクローニングすることによって達成することができ、「pSVV」と表されるプラスミドを得る。次いでSVVの完全ゲノムを有するプラスミドを逆転写して、SVV RNAを作成することができる。そしてこのSVV RNAを許容哺乳類細胞内にトランスフェクトした後、SVVウイルス粒子を回収し、精製することができる。
【図56】図56は、SVVのキャプシドに関するコード配列(すなわち1A−1Dに関するコード領域)を含有するベクター(「pSVVキャプシド」)の構築に関する概略図を表す(実施例16)。そしてpSVVキャプシドを使用して、SVVキャプシド変異体のライブラリーを作成することができる。
【図57】図57は、SVVキャプシド変異体のライブラリーを作成するためにSVVキャプシドを変異させる1方法を示す(実施例16)。この図は、プラスミドのランダムな部位でオリゴヌクレオチド配列を挿入することを説明する。該オリゴヌクレオチドは、ランダムなオリゴヌクレオチド、既知の配列を有するオリゴヌクレオチド、またはエピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドであってよい。図中、制限酵素CviJIによってpSVVキャプシドDNAをランダムに切断する。単一部位で切断された直線状pSVVキャプシドDNAを単離し、ゲルから精製し、オリゴヌクレオチドとライゲートする。
【図58】図58は、キャプシドエンコード領域中に配列変異を含む完全長SVV変異体のライブラリーを作成するスキームを示す(実施例16)。例えば、(例えば、図57に記載されるスキームにしたがって作成された)pSVVキャプシド変異体ライブラリー由来のキャプシドエンコード領域を制限消化およびゲル精製によって単離する。また、完全長SVV配列を含有するベクターを消化して、キャプシドエンコード領域を切除する。そしてpSVVキャプシド変異体ライブラリー由来のキャプシドエンコード領域を、その野生型キャプシド配列を欠いているpSVVベクターにライゲートし、それにより、キャプシドエンコード領域中に多数の変異を有する完全長SVV変異体のライブラリー(「pSVVFL」ベクター)を作成する。
【図59】図59は、キャプシド変異のライブラリーを含むSVVウイルス粒子を生産するための一般的方法を示す(実施例16)。pSVVFLベクターを逆転写して、SVV RNAを作成する。このSVV RNAを許容細胞内にトランスフェクトすると、細胞においてSVV変異ウイルス粒子が生産される。このウイルス粒子は細胞を溶解し、多数のキャプシド変種を含むSVVウイルス粒子の集団、「SVVキャプシドライブラリー」が単離される。
【図60】図60は、腫瘍細胞に特異的に感染することができるが、非腫瘍細胞には感染することができないSVVキャプシド変異体をスクリーニングするための一般的方法を示す。SVVキャプシドライブラリーを目的の腫瘍セルラインまたは組織とインキュベートする。初期インキュベーション期間後、細胞を洗浄し、細胞内に侵入することができなかったSVVウイルス粒子を排除する。次いでウイルスによる溶解が観察されるまで細胞を培養中で維持する。次いで培養上清を収集し、腫瘍細胞に溶菌的に感染することができたSVVキャプシド変異体を単離する。次いでカウンタースクリーニング(counter-screen)前にこれらのウイルスを既知の許容セルラインに感染させることによって成熟させることができる。腫瘍細胞に感染することができたSVVキャプシド変異ウイルスを正常細胞とインキュベートすることによってカウンタースクリーニングを実施する。上清中の未結合のままであるウイルスのみを収集し、それにより、腫瘍特異性を有する変異SVVウイルスを単離する。この工程を繰り返して、SVV腫瘍特異的ウイルスの単離をさらに精密化することができる。
【図61】図61は、ウイルス変異体がセルラインに結合および/または感染することができるかどうかを試験するための従来の方法を示す。従来の方法は、セルラインを培養するための非効率的であることが多い方法、すなわちフラスコ培養を必要とし、したがって多数の諸セルラインに関してウイルス変異体のライブラリーをマススクリーニングすることは負担になる。
【図62】図62は、諸セルラインに特異的に感染する能力を有するウイルス変異体をスクリーニングするための本発明のハイスループット法を示す(実施例16)。この図では、多数の諸腫瘍セルラインを384ウェルプレートで培養する。各ウェルにウイルスのサンプルを加える(例えば、SVVキャプシドライブラリーのサンプル)。細胞変性作用を示すウェルから培地を収集し、フラスコまたは大規模な組織培養プレート中で許容セルライン(例えば、SVVに関しては、H446またはPER.C6)を感染させることによって培地中の任意のウイルスを増幅することができる。このウイルスを培養し、そしてRNAを単離し、その配列を解析して、キャプシドのオリゴヌクレオチド挿入変異誘発によって挿入されたエンコード対象のペプチド配列を決定することができる。次いでペプチドそのものを試験して、腫瘍細胞型に特異的に結合することができるかどうかを判定することができる。
【図63】図63は、別のハイスループットスクリーニングの概略図を示す(実施例16)。腫瘍および正常セルラインをマルチウェルプレートで培養する。各ウェルにウイルスを加え、ウイルス媒介性の溶解によって細胞が死滅するかどうかを試験する。細胞変性作用は、各ウェルの吸光度を読み取ることによって高速にアッセイすることができる。細胞変性作用を示すウェル由来のウイルスを成熟させ、さらにインビトロ(腫瘍および正常セルラインの再試験)およびインビボモデル(マウスにおいて外植された腫瘍を該ウイルスが死滅させることができるかどうかを試験)で試験する。
【図64】図64は、新規腫瘍特異的親和性を有するSVVキャプシド変異体(登場順にそれぞれ配列番号45〜48)を解析して、腫瘍選択的ペプチドを作成することができることを示す。腫瘍セルラインの特異的感染を可能にするSVVキャプシド変異体をシークエンシングして、オリゴヌクレオチド挿入によってエンコードされるペプチドを決定する。それにより、好結果のキャプシド変異体からアミノ酸共通配列を決定することができる。次いで該共通配列を有するペプチドを試験して、問題の腫瘍細胞型に特異的に結合することができるかどうかを判定することができる。そして腫瘍選択的ペプチドを腫瘍特異的ターゲティングビヒクルとして利用するために、毒素または薬物に結合させることができる。
【図65】図65は、SVVキャプシドライブラリーを最初にインビボで試験することができることを図解する。マウス(正常、胸腺欠損、ヌード、CD−1トランスジェニック、等を含む)に特定の腫瘍を外植することができる。そしてこれらのマウスにSVV誘導体ライブラリー、例えばSVVキャプシドライブラリーを注射する。一定時点で、マウスから腫瘍細胞を回収して、腫瘍の排除を示すマウスにおいて初期腫瘍サンプルからウイルスを単離し、許容セルライン中で成熟させる。
【図66】図66は、本発明のSVV誘導体に関する臨床試験計画を示す。
【図67】図67は、キャプシド中にエピトープタグをエンコードする(新規腫瘍親和性を有する)SVV誘導体を種々の目的で使用することができることを図解する。スクリーニング試薬としてのその使用により、該エピトープの存在をアッセイすることによって組織サンプル中に特定の腫瘍細胞が存在するかどうかを検出することができる。あるいは、毒素または他の治療薬を該エピトープタグに結合させることができ、そして該ウイルスを患者に投与することができる。さらに、野生型または誘導体SVVに放射線を照射し、あるいは不活性化して、該ウイルス粒子そのものを治療用デバイスとして使用することができる。該ウイルス粒子は、アポトーシス誘発ペプチドの存在に基づいて細胞のアポトーシスを誘発し、あるいは該粒子に毒素または何らかの他の治療薬を結合させて、該ウイルスを特異的ターゲティング送達デバイスとして使用することができる。
【図68】図68はピコルナウイルスの基本的ライフサイクルを示す。
【図69】図69は、他のピコルナウイルスと比べたSVVのポリペプチド長の比較を示す。
【図70】図70は、ピコルナウイルス2A様NPG/Pタンパク質のアミノ酸比較をリストする(登場順にそれぞれ配列番号49〜110)。このSVVに関する配列は配列番号2の残基635〜656にリストされる。
【図71】図71は、EMCV−Rに関するアミノ酸配列(配列番号23)をリストする。
【図72】図72は、EMCV−PV21(アクセッションCAA52361)に関するアミノ酸配列(配列番号24)をリストする。
【図73】図73は、EMCV−B(アクセッションP17593)に関するアミノ酸配列(配列番号25)をリストする。
【図74】図74は、EMCV−Da(アクセッションP17594)に関するアミノ酸配列(配列番号26)をリストする。
【図75】図75は、EMCV−Dbに関するアミノ酸配列(配列番号27)をリストする。
【図76】図76は、EMCV−PV2(アクセッションCAA60776)に関するアミノ酸配列(配列番号28)をリストする。
【図77】図77は、EMCV−mengo(アクセッションAAA46547)に関するアミノ酸配列(配列番号29)をリストする。
【図78】図78は、TMEV/DA(アクセッションAAA47928)に関するアミノ酸配列(配列番号30)をリストする。
【図79】図79は、TMEV/GDVII(アクセッションAAA47929)に関するアミノ酸配列(配列番号31)をリストする。
【図80】図80は、TMEV/BeAn8386(アクセッションAAA47930)に関するアミノ酸配列(配列番号32)をリストする。
【図81】図81は、TLV−NGS910(アクセッションBAC58035)に関するアミノ酸配列(配列番号33)をリストする。
【図82】図82は、VHEV/Siberia−55(アクセッションAAA47931)に関するアミノ酸配列(配列番号34)をリストする。
【技術分野】
【0001】
いくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有する新規RNAピコルナウイルス(Seneca Valleyウイルス(「SVV」)と称する)の組成物および疾患の処置方法に関わる。
【0002】
本開示内容は、著作権保護の対象である材料を含有する。著作権の所有者は、米国特許商標局の特許ファイルまたは記録に記載されている特許文書または特許開示内容の第三者による複製に異論はないが、それ以外の場合は任意およびすべての著作権を留保する。
【0003】
ここに本明細書中で引用されるすべての特許出願、公開された特許出願、発行および付与された特許、テキスト、および参考文献は、参照によりその開示内容全体が本明細書中に包含される。これらの文献は本発明が属する分野の技術水準をより完全に説明するためのものである。
【0004】
本出願は、2003年9月26日に提出された米国第60/506,182号の優先権を主張する。ここに該文献はその開示内容全体が包含される。
【背景技術】
【0005】
ウイルス療法(Virotherapy)は癌の処置に関して非常に有望である。癌細胞に特異的に結合し、それらを死滅させることを目的とする腫瘍溶解性ウイルスは、ネイティブおよび/または遺伝子操作されたウイルスのいずれであれ、代替の処置、例えば化学療法および放射線照射より効果的かつ低毒性である可能性がある。さらに腫瘍溶解性ウイルス療法は、薬理学的に所望の部位で治療性を増幅することができる既知の唯一の治療法である。
【0006】
癌治療の重要な側面は、正常細胞と比較して高い割合の癌細胞の死滅を達成することである。この目標の達成は多数の理由のために困難であった。該理由には、関与する細胞型が多様であること、転移によって癌細胞が全身に分布すること、および正常細胞および癌細胞間の生物学的差異が小さいことが含まれる。進歩はあったが、現在の癌治療に関しては依然大部分に改善がなされる必要がある。
【0007】
従来、外科医は、実質的に患者を傷つけることなく外科的に腫瘍を除去しようとしてきた。原発腫瘍の除去が完了したとしても、生存は保証されない。その理由は、身体の未知の部位への早期転移が未検出のままであるからである。また、血管形成阻害剤を産生する腫瘍細胞が外科的介入によって除去されると、遠隔転移の成長を増進させるかもしれないことを示唆する研究もある。最終的に、多数の症例において、外科的除去後に腫瘍は元の部位で再び成長する。放射線照射は、最も急速に増殖する細胞を、他を犠牲にして選択的に破壊することを目的とする。しかし腫瘍細胞は、耐性になることによって、あるいは処置期間に非分裂状態であることによって放射線療法から逃避することができる。さらに、多数の正常細胞が活発に分裂しつつあり、該処置によって死滅する(胃腸管系の細胞、毛包、等)点において、放射線照射は常に選択的であるわけではない。
【0008】
放射線照射と同様に、化学療法は完全に選択的なわけではなく、それゆえ多数の正常細胞を破壊し、また、すべての腫瘍細胞を死滅させるわけではない。これは細胞の薬剤耐性および/または分裂状態に基づく。ゆえに、化学療法および放射線療法は正常細胞および癌細胞間に存在するわずかな感受性の差異を利用する。これによりその治療係数は限定される。治療係数が小さいことは、癌を処置する任意の様式の望ましくない特性であることが明らかである。したがって、これらの制限を克服する新規癌治療アプローチが求められる。
【0009】
このような新規アプローチの1つは腫瘍溶解性ウイルス療法である。初期には、癌を処置する試みにおいて細胞障害性導入遺伝子を保持する複製欠損ウイルスが利用された。しかし、それらは腫瘍の形質導入に関して非効率的であり、また、癌に対して十分に選択的ではないことがわかった。該制限を克服するために、腫瘍細胞で選択的に複製するようにウイルスを修飾するか、あるいは天然の腫瘍選択的特性を有するウイルスを発見した。ゆえにこれらの腫瘍溶解性ウイルスは、該ウイルスを局所注射することによって腫瘤を介して、あるいは該ウイルスを全身に送達することによって、複製し、伝播し、そして腫瘍細胞を選択的に死滅させる特性を有するものであった(図1)。
【0010】
この新しく規定されたクラスの抗癌治療法は早期に見込まれていたにもかかわらず、癌治療法としてのその使用を制限するであろういくつかの制限が残されている。したがって、癌治療に利用することができる新規腫瘍溶解性ウイルスに関する必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新規RNAピコルナウイルスが発見された(以後、Seneca Valleyウイルス(「SVV」)と称する)。そのネイティブの特性には、いくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力が含まれる。以下の実施例において実証されるように、SVVは向神経性を有する腫瘍系統を選択的に死滅させる。ほとんどの場合、正常細胞と比較して、腫瘍細胞の50%を死滅させるのに必要なウイルスの量(すなわちEC50値)が10,000倍を超える差異を有する。またこの結果をインビボに移せば、マウスにおいて腫瘍外植片が選択的に排除される。さらにインビボの結果は、免疫欠損または免疫能を有する(immune competent)マウスにおいて、全身投与された1x1014vp/kg(ベクターまたはウイルス粒子/kg)までのSVVが死亡および観察できる臨床症状を全く引き起こさなかった点において、SVVが正常細胞に対して有毒でないことを示す。
【0012】
SVVは1x108vp/kg程の低用量で効果を誘発する;したがって、>100,000の非常に高い治療係数を達成する。効果は非常に強く、マウスにおいてあらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を完全に根絶することができる(実施例11を参照のこと)。この効果は、補助治療を全く行わずに、SVVを全身性に1回注射することによって媒介される可能性がある。さらにまた、SVV注射を受けたマウスは、注射後少なくとも200日間、臨床症状も腫瘍の再発も示さない。また、SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルラインにおいて>200,000ウイルス粒子/細胞で生産することができる。したがってSVVベースのウイルス療法は、選択されたタイプの癌に関して、安全で、効果的で、ならびに新型の処置としてかなりの見込みを示す。さらにSVVは、小さくて容易に操作可能なゲノム、単純かつ高速なライフサイクル、および汎用的な(well-understood)キャプシドを有し、ゆえに修飾しやすい。これらの特性は、少なくとも部分的に、新規の細胞または組織特異的親和性(tropisms)を有する修飾型SVVを作成する方法を許容し、したがって元来のSVV単離体による感染に耐性の新規腫瘍型に対してSVVベースの治療を行うことができる。
【0013】
したがって本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸配列、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10、15または20ヌクレオチド長の連続部分と95%同一の核酸配列を含む単離された核酸を提供する。本発明の単離された核酸はRNAまたはDNAであってよい。
【0014】
他の側面では、本発明は、高、中ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシーの条件下で配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分にハイブリダイズする単離された核酸を提供する。
【0015】
別の側面では、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸配列を含むベクターを提供する。
【0016】
また本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21を含む核酸配列、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも50ヌクレオチド長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有する核酸によってエンコードされる単離されたポリペプチドを提供する。
【0017】
一側面では、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10アミノ酸長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0018】
別の側面では、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、またはいずれか1つの前記配列の少なくとも10アミノ酸長の連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを特異的に結合する単離された抗体を提供する。該単離された抗体は、配列番号2の任意のタンパク質エピトープまたは抗原に結合するように作成することができる。さらに、該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはキメラ抗体であってよい。
【0019】
一側面では、本発明は、配列番号1と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する単離されたSVVまたはその誘導体または類縁体を提供する。
【0020】
別の側面では、本発明は、American Type Culture Collection(ATCC)特許寄託番号PTA−5343の全識別特性および核酸配列を有する単離されたウイルスを提供する。本発明のいくつかのウイルスは、PTA−5343単離体、PTA−5343単離体の変種(variants)、相同体、類縁体、誘導体および変異体、およびSVV(野生型および変異体の両者)の、その腫瘍溶解特性を担うことが決定されている配列に関して修飾された他のウイルスの変種、相同体、誘導体および変異体に関する。
【0021】
さらに本発明は、以下の特徴を含む単離されたSVVを提供する:〜7.5キロベース(kb)の一本鎖RNAゲノム(プラス(+)センス鎖);直径〜27ナノメートル(nm);約31kDa、36kDaおよび27kDaの概算の分子量を有する少なくとも3種のタンパク質を含むキャプシド;塩化セシウム(CsCl)勾配上の浮遊密度約1.34g/mL;および腫瘍細胞での複製能。本側面では、31kDaキャプシドタンパク質(VP1)は、配列番号8と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよく;36kDaキャプシドタンパク質(VP2)は、配列番号4と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよく;ならびに、27kDaキャプシドタンパク質(VP3)は、配列番号6と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含んでよい。
【0022】
別の側面では、本発明は、以下の特徴を含む単離されたSVV誘導体または類縁体を提供する:腫瘍細胞での複製能、腫瘍細胞親和性、および正常細胞での細胞溶解の欠如。別の側面では、該ウイルスは神経内分泌特性を有する腫瘍細胞型において複製能を有する。
【0023】
他の側面では、本発明は以下を提供する:有効量の本発明のウイルスおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物;本発明のウイルスを含む細胞;本発明のウイルスの抗原を含有するウイルスライセート;および本発明のウイルスから取得される単離および精製済みのウイルス抗原。
【0024】
さらに別の側面では、本発明は、本発明のウイルスの精製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:細胞にウイルスを感染させる段階;細胞ライセートを回収する段階;細胞ライセートを少なくとも1ラウンドの勾配遠心分離に付する段階;および勾配からウイルスを単離する段階。
【0025】
別の側面では、本発明は、癌の処置方法であって、癌を処置するために有効量のウイルスまたはその誘導体を投与することを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21または配列番号1の部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0026】
別の側面では、本発明は、癌の処置方法であって、配列番号3、5、7またはその連続部分(contiguous portion)と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むキャプシドエンコード領域を含む有効量のウイルスを投与することを含む方法を提供する。また本発明は、癌の処置方法であって、配列番号4、6、8またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を含むキャプシドを含む有効量のウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0027】
一側面では、本発明は、癌の進行を阻害するための方法であって、癌細胞をウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスまたはその誘導体は癌性細胞に特異的に結合し、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0028】
別の側面では、本発明は、癌細胞を死滅させるための方法であって、癌細胞を有効量のウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法を提供する。
【0029】
これらの癌を対象とする方法では、ウイルスはピコルナウイルスであってよい。ピコルナウイルスは、カルジオウイルス、エルボウイルス(erbovirus)、アフトウイルス、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルス、テシオウイルス、エンテロウイルスまたはライノウイルス属であってよい。カルジオウイルスは以下からなる群から選択されるものであってよい:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSVV。脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択されるものであってよい:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。SVVは、ATCC寄託番号PTA−5343を有するウイルスまたは、配列番号1またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の核酸配列を含むウイルスであってよい。
【0030】
また本発明は、異常に増殖性の細胞を死滅させる方法であって、該細胞を本発明のウイルスと接触させることを含む方法を提供する。一側面では、異常に増殖性の細胞は腫瘍細胞である。本方法の種々の側面では、腫瘍細胞は以下からなる群から選択される:ヒト小細胞肺癌、ヒト網膜芽細胞腫、ヒト神経芽細胞腫、ヒト髄芽腫、マウス神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、およびヒト非小細胞肺癌。
【0031】
また本発明は、対象における新生物症状の処置方法であって、該対象に、該哺乳類に対する本発明のウイルスの有効量を投与することを含む方法を提供する。一側面では、新生物症状は神経内分泌癌である。別の側面では、対象は哺乳類である。別の側面では、哺乳類はヒトである。
【0032】
また本発明は、本発明のウイルスを製造する方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:ウイルスを感染させた細胞を、該ウイルスの複製を許容する条件下で培養する段階および該細胞または上清から該ウイルスを回収する段階。本方法の一側面では、細胞はPER.C6細胞である。本方法の別の側面では、細胞はH446細胞である。本方法の種々の側面では、細胞は、細胞あたり200,000を超えるウイルス粒子を生産してよい。
【0033】
別の側面では、本発明は、本発明のウイルスを検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:本発明のウイルスを含有すると考えられる試験材料からRNAを単離する段階;配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するRNAを標識する段階;標識済みRNAを用いて試験材料を検査(プローブ)する段階;および標識済みRNAと試験材料から単離されたRNAの結合を検出する段階、この場合、結合は該ウイルスの存在を示す。別の側面では、本発明は、配列番号1またはその相補配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列を含む核酸プローブを提供する。
【0034】
また本発明は、腫瘍溶解性カルジオウイルスを作成するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)SVVのゲノム配列を試験ウイルスのゲノム配列と比較する段階;(b)SVVのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドおよび試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチド間の少なくとも第一のアミノ酸の差異を同定する段階;(c)試験ウイルスのゲノム配列を変異させて、試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドが有する、SVVのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドに対するアミノ酸の差異が、少なくとも1つ少ないようにする段階;(d)変異した試験ウイルスのゲノム配列を腫瘍細胞内にトランスフェクトする段階;および(e)該変異した試験ウイルスのゲノム配列が該腫瘍細胞に溶菌的に感染したかどうかを判定する段階。一側面では、試験ウイルス中の変異したアミノ酸(群)は、構造領域、例えばキャプシドエンコード領域中のアミノ酸である。別の側面では、試験ウイルス中の変異したアミノ酸は非構造領域中のアミノ酸である。
【課題を解決するための手段】
【0035】
腫瘍溶解性ウイルスの作成方法の一側面では、ATCC寄託番号PTA−5343を有する単離されたSVVまたは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むウイルスからSVVのゲノム配列を取得する。本方法の別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列を変異させる段階は、該試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAを変異させることを含む。本方法の別の側面では、変異した試験ウイルスのゲノム配列をトランスフェクトする段階は、RNAをトランスフェクトすることを含み、この場合、該RNAは該変異した試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAから作成される。
【0036】
腫瘍溶解性カルジオウイルスの作成方法の別の側面では、試験ウイルスはピコルナウイルスである。試験ピコルナウイルスは、テシオウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、カルジオウイルス、エルボウイルス、アフトウイルス(apthovirus)、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルスまたはテシオウイルス属であってよい。別の側面では、試験ウイルスはカルジオウイルス属である。別の側面では、腫瘍溶解性ウイルスの作成方法において同定されるアミノ酸の差異は、SVVのキャプシドタンパク質および試験ウイルスのキャプシドタンパク質配列間に存在する。腫瘍溶解性ウイルスの作成に関する別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列は以下からなる群から選択される:Vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。別の側面では、試験ウイルスのゲノム配列は脳心筋炎ウイルスから選択される。脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択されるものであってよい:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。さらに別の側面では、脳心筋炎ウイルスまたは任意の他の試験ウイルスは、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVまたは配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の配列同一性を含む核酸配列を有する単離体から選択されるものであってよい。
【0037】
腫瘍溶解性カルジオウイルスの作成方法の別の側面では、試験ウイルスおよびSVV間のアミノ酸の差異はSVVのキャプシドタンパク質領域内に存在し、この場合、該アミノ酸の差異はSVV配列番号4、6または8内に並ぶ。
【0038】
また本発明は、改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)多数の(複数の(a plurality of))核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。一側面では、本方法は(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階をさらに含む。別の側面では、本方法は段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む。別の側面では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分を含む親配列からウイルス変異体のライブラリーを作成する。
【0039】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の一側面では、マルチウェルハイスループット(高処理)プラットフォームでインキュベーションを行う。この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容細胞型を含む。この側面では、本方法は、プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞を死滅させる変異ウイルスを含有するかを同定することをさらに含むことができる。別の側面では、各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う。
【0040】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の別の側面では、非許容細胞は腫瘍細胞である。
【0041】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法の別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階は以下の段階を含む:(i)ウイルスのゲノム配列の部分と同一の配列を有するポリヌクレオチドを提供する段階;(ii)該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異ポリヌクレオチド配列を作成する段階;および(iii)段階(i)のポリヌクレオチドが含有するウイルスのゲノム配列の部分を除くウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。一側面では、ウイルスのゲノム配列はピコルナウイルス由来である。別の側面では、ウイルスのゲノム配列は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含む。別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階において、ポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって段階(ii)の変異を行う。一側面では、トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う。別の側面では、ポリヌクレオチド内に挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階において、段階(ii)の変異をポリヌクレオチドのキャプシドエンコード領域において行う。
【0042】
また本発明は、改変された細胞型親和性を有する変異カルジオウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階、この場合、該作成段階は以下の段階を含む:カルジオウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および、キャプシドエンコード領域を除く該カルジオウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それにより該カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階;(b)変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異カルジオウイルスを作成する段階。一側面では、本方法は(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階をさらに含む。別の側面では、本方法は段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む。別の側面では、キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって変異を行う。別の側面では、キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にランダムに挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ヌクレオチドのランダムな挿入はTRIMによって行う。別の側面では、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列は108または109を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む。
【0043】
一側面では、改変された細胞型親和性を有する変異SVVの作成方法は以下の段階を含む:(a)SVV変異体のcDNAライブラリーを作成する段階;(b)SVV変異体のcDNAライブラリーからSVVのRNAを作成する段階;(c)SVVのRNAを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異SVVを生産させる段階;(d)多数の変異SVVを単離する段階;(e)単離された多数の変異SVVと非許容腫瘍細胞をインキュベートする段階;および(f)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異SVVを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異SVVを作成する段階。別の側面では、本方法は以下の段階をさらに含む:(g)回収された変異SVVを非許容細胞においてインキュベートする段階;および(h)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異SVVを回収する段階。別の側面では、本方法は段階(g)および(h)を反復して繰り返すことをさらに含む。一側面では、マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行う。この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容腫瘍細胞型を含む。別の側面では、本方法は、プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞に溶菌的に感染する変異SVVを含有するかを同定することをさらに含む。別の側面では、各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う。一側面では、SVV変異体のcDNAライブラリーは多数の変異SVVキャプシドポリヌクレオチド配列を含む。別の側面では、ヌクレオチドをランダムに挿入することによって多数の変異SVVキャプシドポリヌクレオチド配列を作成する。別の側面では、ランダムに挿入されるヌクレオチドの配列の少なくとも部分はエピトープタグをエンコードする。別の側面では、ヌクレオチドのランダムな挿入をTRIMによって行う。別の側面では、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVからSVV変異体のcDNAライブラリーを作成する。別の側面では、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%の配列同一性を有する配列を含むSVVからSVV変異体のcDNAライブラリーを作成する。別の側面では、非許容腫瘍細胞は腫瘍セルラインまたは患者から単離された腫瘍細胞型である。
【0044】
また本発明は、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;(d)腫瘍を有する哺乳類に、単離された多数の変異ウイルスを投与する段階、この場合、該哺乳類は該変異ウイルスの未変異型の天然の宿主ではない;および(e)腫瘍中で複製したウイルスを回収し、それにより、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。一側面では、ウイルス変異体のライブラリーを作成する段階は以下の段階を含む:ウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および、キャプシドエンコード領域を除く該ウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。別の側面では、段階(e)で回収されたウイルスは腫瘍の細胞に溶菌的に感染する。インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法に関する別の側面では、腫瘍は異種移植片、同系腫瘍、正所性腫瘍または遺伝子組換え腫瘍である。別の側面では、哺乳類はマウスである。
【0045】
本発明のすべての方法に関して、ウイルスはピコルナウイルスであってよい。ピコルナウイルスは、カルジオウイルス、エルボウイルス、アフトウイルス、コブウイルス、ヘパトウイルス、パレコウイルス、テシオウイルス、エンテロウイルス、またはライノウイルス属であってよい。カルジオウイルスはSVVであってよい。SVVは、ATCC特許寄託番号PTA−5343を有するSVVまたは、配列番号1、3、6、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一の配列を含むSVVであってよい。さらに、カルジオウイルスは以下からなる群から選択されるものであってよい:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。一側面では、脳心筋炎ウイルスは以下からなる単離体の群から選択される:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。別の側面では、本発明は、ATCC寄託番号PTA−5343のSVVまたは配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21またはその連続部分と少なくとも99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%の配列同一性を有する単離体から選択されるか、あるいは別の様式で配列ホモロジーによってSVVに関連するとみなされる任意のウイルスを包含する。
【0046】
また本発明は、本明細書中で開示される変異ウイルスを作成するためのいずれかの方法によって作成される腫瘍溶解性ウイルスを提供する。一側面では、本発明は、腫瘍溶解性ウイルスを用いて患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)本明細書中で開示される変異ウイルスを作成するためのいずれかの方法によって作成された腫瘍溶解性ウイルスを不活性化し、該腫瘍溶解性ウイルスを非感染性にし、該腫瘍溶解性ウイルスの親和性には影響しないようにする段階;および(b)腫瘍を患う患者に放射線照射済みの腫瘍溶解性ウイルスを投与する段階。別の側面では、患者の処置方法は不活性化型腫瘍溶解性ウイルスに毒素を結合させることをさらに含む。
【0047】
別の側面では、本発明は、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)SVVを不活性化して、該ウイルスを非感染性にし、その親和性には影響しないようにする段階;および(b)腫瘍を患う患者において該不活性化型SVVを投与する段階。別の側面では、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法は、不活性化型SVVに毒素を結合させることをさらに含む。
【0048】
別の側面では、本発明は、不活性化型SVVを含むSVV組成物を提供する。別の側面では、本発明は、キャプシド領域に取り込まれたエピトープタグを含むSVVを提供する。
【0049】
また本発明は、SVVを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)キャプシド中においてエンコードされるエピトープタグを含む変異SVVを作成する段階;(b)該エピトープタグに毒素を結合させる段階;および(c)腫瘍を患う患者に該結合毒素を伴う変異SVVを投与する段階。一側面では、上記作成段階は以下の段階を含む:エピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドをSVVのキャプシドエンコード領域ポリヌクレオチド内に挿入する段階。一側面では、変異SVVは改変された細胞型親和性を有さない。別の側面では、本方法は、変異SVVを不活性化して、該変異SVVを非感染性にすることをさらに含む。
【0050】
また本発明は、サンプル中の腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)患者から腫瘍サンプルを単離する段階;(b)該腫瘍サンプルをエピトープタグ付きSVVとインキュベートする段階;および(c)エピトープタグの検出により結合型SVVに関して腫瘍サンプルをスクリーニングする段階。
【0051】
一側面では、本発明は、インビボで腫瘍細胞を検出するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)不活性化型エピトープタグ付きSVVを患者に投与する段階、この場合、該エピトープタグに標識をコンジュゲートする;および(b)患者において該標識を検出する段階。本発明の腫瘍細胞の検出方法では、SVVは、本明細書中で開示される方法によって作成される変異SVVであってよい。
【0052】
さらに、新生物症状の処置、新生物症状の検出、およびSVVの生産に関する本方法は、野生型SVV、変異(修飾型または変種を含む)SVV、SVVの類縁体、および本発明の他の腫瘍特異的ウイルスに適用される。
【0053】
本発明のウイルスおよびその組成物を使用して、本明細書中で記載される疾患を処置するための薬物を製造することができる。さらに、本発明のウイルスおよびその組成物を使用して、本明細書中で記載される疾患を処置することができる。ゆえに、本発明の一側面では、本発明は、癌の処置に関するか、あるいは癌を処置するための薬物の製造に関するSVV(または変異体、誘導体、類縁体、およびその組成物)の使用を提供する。
寄託情報
【0054】
以下の材料は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)の条項にしたがって、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd., Manassas, Virginia, 20110-2209, U.S.A.に寄託されている。寄託されている材料の入手に関するすべての制限は特許の付与時に除かれる。材料:Seneca Valleyウイルス(SVV)。ATCC特許寄託番号:PTA−5343。寄託日:2003年7月25日。
【0055】
用語「ウイルス」、「ウイルス粒子("viral particle," "virus particle")」、「ベクター粒子」、「ウイルスベクター粒子」、および「ビリオン」は交換可能に使用され、該用語は広く理解されるべきであり、例えば本発明のウイルスベクターを感染性粒子の作成に関して適切な細胞またはセルライン内に形質導入またはトランスフェクトした場合に形成される感染性ウイルス粒子を例えば意味する。
【0056】
用語「誘導体」、「変異体」、「変種」および「修飾型」は交換可能に使用され、概して、誘導体、変異体、変種または修飾型ウイルスは、鋳型ウイルス核酸またはアミノ酸配列に関して核酸またはアミノ酸配列の差異を有し得ることを示す。例えば、SVV誘導体、変異体、変種または修飾型SVVは、ATCC特許寄託番号PTA−5343の野生型SVVの核酸またはアミノ酸配列に関して核酸またはアミノ酸配列の差異を有するSVVを表してよい。
【0057】
本明細書中で使用される用語「癌」、「癌細胞」、「新生物細胞」、「新形成(neoplasia)」、「腫瘍」、および「腫瘍細胞」は交換可能に使用され、該用語は、比較的自律的な成長を示して、細胞増殖のコントロールの有意な喪失を特徴とする異常な成長表現型を示す細胞を表す。新生物細胞は悪性または良性であり得る。本発明では、好ましい1タイプの腫瘍細胞は向神経性を有する腫瘍細胞である。
【0058】
2種またはそれ以上の核酸またはタンパク質配列に関する用語「同一の」または「同一性」パーセントとは、配列比較アルゴリズム、例えばProtein-Protein BLAST(GenBankデータベースのProtein-Protein BLAST(Altschul, S.F., Gish, W., Miller, W., Myers, E.W. & Lipman, D.J. (1990) "Basic local alignment search tool." J. Mol. Biol. 215: 403-410))を使用して、あるいは目視検査によって測定される、最大一致に関して比較およびアライメントされた場合に、同一であるか、あるいは指定のパーセンテージの同一アミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2種またはそれ以上の配列または連続物を表す。BLASTアルゴリズムはAltschul et al., J. Mol. Biol., 215: 403-410(1990)に記載され、National Center for Biotechnology Information(NCBI)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公的に利用可能なBLASTソフトウェアが提供されている。
【0059】
例えば、本明細書中で使用される用語「少なくとも90%同一の」とは、参照ポリペプチド(またはポリヌクレオチド)に対して90〜100の同一性パーセントを表す。90%またはそれ以上のレベルの同一性は、例証目的で100アミノ酸の試験および参照ポリペプチド長を比較すると仮定すると、試験ポリペプチド中のわずか10%(すなわち100個のうち10個)のアミノ酸が参照ポリペプチドのアミノ酸と異なることを示す。試験および参照ポリヌクレオチド間で同様の比較を行うことができる。このような差異は、アミノ酸配列の全長にわたってランダムに分布する点変異として表すことができ、あるいは該差異は、許容される最大の、例えば100個のうち10個のアミノ酸の差異(90%同一性)までの種々の長さの1個またはそれ以上の位置でクラスター形成することができる。差異は核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失として規定される。約85〜90%を超える同一性のレベルでは、結果はプログラムおよびギャップパラメータセットに無関係であろう;このような高レベルの同一性は容易に評価することができ、ソフトウェアに依存しないことが多い。
【0060】
本発明の関連では、用語「単離された(単離型)」とは、人の手によって、そのネイティブ環境から離れて存在する核酸分子、ポリペプチド、ウイルスまたは細胞を表す。単離された核酸分子またはポリペプチドは、精製型で存在してよく、あるいは非ネイティブ環境、例えば組換え宿主細胞中に存在してよい。単離されたウイルスまたは細胞は、精製型で、例えば細胞培養中に存在してよく、あるいは非ネイティブ環境、例えば組換え型または異種生物中に存在してよい。
用語「天然に存在する」または「野生型」とは、人によって人工的に生産されたものと異なって天然に見出すことができる要素を説明するのに使用される。例えば、天然の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に修飾されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するタンパク質またはヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。
【0061】
「高ストリンジェンシー」、「中(間)ストリンジェンシー」または「低ストリンジェンシー」の概念は、核酸ハイブリダイゼーション条件を表す。高ストリンジェンシー条件とは、標的およびプローブ間でアニーリングまたはハイブリダイゼーションを生じさせるために標的の核酸配列およびプローブの核酸配列間の高い同一性を必要とする条件を表す。低ストリンジェンシー条件とは、標的およびプローブ間でアニーリングまたはハイブリダイゼーションを生じさせるために標的の核酸配列およびプローブの核酸配列間の低い同一性を必要とする条件を表す。ストリンジェンシー条件は、バッファーの塩濃度またはハイブリダイゼーションが行われる温度によってコントロールすることができ、この場合、塩濃度が高いほど低ストリンジェントな条件になり、温度が高いほどよりストリンジェントな条件になる。ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションを受ける配列の長さおよび核酸の内容に応じて変動するが、高、中間および低ストリンジェンシーの代表的な条件は以下の典型例の条件において記載されるものである。一般に使用されるハイブリダイゼーションバッファーは、0.3Mクエン酸三ナトリウムおよび3M NaClに対応する20X保存濃度のSSC(塩化ナトリウムクエン酸ナトリウム)である。高ストリンジェンシー条件では、SSCの作業濃度は0.1X〜0.5X(1.5〜7.5mMクエン酸三ナトリウム、15〜75mM NaCl)であってよく、ハイブリダイゼーション温度は65℃に設定する。中間条件では、55〜62℃の温度で0.5X〜2X SSC濃度(7.5〜30mMクエン酸三ナトリウム、75〜300mM NaCl)を典型的に利用する。低ストリンジェンシー条件下で行われるハイブリダイゼーションでは、50〜55℃の温度で2X〜5X SSC濃度(30〜75mMクエン酸三ナトリウム、300〜750mM NaCl)を使用することができる。留意すべきは、これらの条件は単に典型例であり、限定的とみなされるべきではないことである。
【0062】
Seneca Valleyウイルス(SVV):
SVVは新規の、これまで未発見であったRNAウイルスであり、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ファミリーのカルジオウイルス(Cardiovirus)属由来のメンバーに最も密接に関連付けられる。ゆえに、本発明の目的では、SVVはカルジオウイルス属およびピコルナウイルス科ファミリーのメンバーであるとみなす。カルジオウイルスは、そのゲノム構成の特殊な特徴、共通の病理学的特性、および0.1M NaCl中の5〜7の範囲のpHでそのビリオンが解離性であることによって、他のピコルナウイルスと区別される(Scraba, D. et al.,「カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae))」, Encyclopedia of Virology, 2nd Edition, R.G. Webseter and A. Granoff, Editors, 1999)。SVVおよび他のカルジオウイルス間の配列解析の結果は本明細書中以下で考察する。
【0063】
SVVのゲノムは、約7.5kbの予想サイズを有する1個の一本鎖プラス(+)センス鎖RNA分子からなる(図4Aを参照のこと)。SVVはピコルナウイルスであるため、すべてのピコルナウイルスで保存されているいくつかの特徴を有する:(i)ゲノムRNAは感染性であり、ゆえに細胞内にトランスフェクトして、ウイルスのライフサイクルのウイルス−受容体結合および侵入段階をバイパスすることができる;(ii)ゲノムの5’末端の長い(約600〜1200bp)非翻訳領域(UTR)および短い3’非翻訳領域(約50〜100bp);(iii)5’UTRは、内部リボソーム侵入部位(IRES)として既知のクローバーリーフの二次構造を含有する;(iv)ゲノムの残りは単一ポリタンパク質をエンコードする、ならびに(v)ゲノムの両端は修飾されていて、5’末端は共有結合型の小さい塩基性タンパク質「Vpg」によって修飾され、3’末端はポリアデニル化されている。
【0064】
本発明は、単離されたSVVウイルス(ATCC特許寄託番号PTA−5343)およびそれに由来するSVVの完全ゲノムの内容を提供する。現在、シークエンシングされている最大のSVVゲノム断片は、PTA−5343単離体由来の単離されたSVV核酸であり、これはSVVゲノム配列の大部分を含み、図5A−5Eおよび図6A−6Dにリストされ、本明細書における配列番号1の指定を有する。このヌクレオチド配列の翻訳物は、配列番号1によってエンコードされるSVVの単一ポリタンパク質の大部分を示す。配列番号1のヌクレオチド1〜5673によってエンコードされるアミノ酸配列は図5A−Eにリストされ、図7A−7Bは本明細書における配列番号2の指定を有する。したがって本発明は、配列番号1の単離された部分、例えば配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19および21を提供する。該部分を発現ベクターにサブクローニングすることができ、そして配列番号1のこれらの部分によってエンコードされるポリペプチドを単離することができる。本発明は、高、中または低ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、またはその任意の部分にハイブリダイズすることができる単離された核酸をさらに包含する。
【0065】
また本発明は、図9にリストされる配列番号4のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸2〜143に相当する)を有する単離された部分的SVV VP2(1B)タンパク質を提供する。部分的SVV VP2タンパク質のアミノ酸配列は、図8にリストされる配列番号3の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド4〜429に相当する)によってエンコードされる。
【0066】
また本発明は、図11にリストされる配列番号6のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸144〜382に相当する)を有する単離されたSVV VP3(1C)タンパク質を提供する。SVV VP3タンパク質のアミノ酸配列は、図10にリストされる配列番号5の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド430〜1146に相当する)によってエンコードされる。
【0067】
また本発明は、図13にリストされる配列番号8のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸383〜641に相当する)を有する単離されたSVV VP1(1D)タンパク質を提供する。SVV VP1タンパク質のアミノ酸配列は、図12にリストされる配列番号7の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1147〜1923に相当する)によってエンコードされる。
【0068】
また本発明は、図15にリストされる配列番号10のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸642〜655に相当する)を有する単離されたSVV 2Aタンパク質を提供する。SVV 2Aタンパク質のアミノ酸配列は、図14にリストされる配列番号9の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1924〜1965に相当する)によってエンコードされる。
【0069】
また本発明は、図17にリストされる配列番号12のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸656〜783に相当する)を有する単離されたSVV 2Bタンパク質を提供する。SVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列は、図16にリストされる配列番号11の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド1966〜2349に相当する)によってエンコードされる。
【0070】
また本発明は、図19にリストされる配列番号14のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸784〜1105に相当する)を有する単離されたSVV 2Cタンパク質を提供する。SVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列は、図18にリストされる配列番号13の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド2350〜3315に相当する)によってエンコードされる。
【0071】
また本発明は、図21にリストされる配列番号16のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1106〜1195に相当する)を有する単離されたSVV 3Aタンパク質を提供する。SVV 3Aタンパク質のアミノ酸配列は、図20にリストされる配列番号15の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜3585に相当する)によってエンコードされる。
【0072】
また本発明は、図23にリストされる配列番号18のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1196〜1217に相当する)を有する単離されたSVV 3B(VPg)タンパク質を提供する。SVV 3Bタンパク質のアミノ酸配列は、図22にリストされる配列番号17の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3586〜3651に相当する)によってエンコードされる。
【0073】
また本発明は、図25にリストされる配列番号20のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1218〜1428に相当する)を有する単離されたSVV 3C(「pro」または「プロテアーゼ」)タンパク質を提供する。SVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列は、図24にリストされる配列番号19の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド3652〜4284に相当する)によってエンコードされる。
【0074】
また本発明は、図27にリストされる配列番号22のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸1429〜1890に相当する)を有する単離されたSVV 3D(「pol」または「ポリメラーゼ」)タンパク質を提供する。SVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列は、図24にリストされる配列番号19の核酸配列(配列番号1のヌクレオチド4285〜5673に相当する)によってエンコードされる(配列番号1のヌクレオチド5671〜5673「tga」は停止コドンをコードし、これはアミノ酸配列表中ではアスタリスク「*」として表される)。
【0075】
本発明の核酸には、RNAおよびDNA型がともに含まれ、また暗黙的に、添付の配列表の相補的配列が含まれる。
【0076】
ゆえに、配列番号1によって表される単離されたSVV核酸は、配列番号2によって表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする5,752ヌクレオチド長を有する。このSVVゲノム配列は単一のポリタンパク質として翻訳され、下流の諸「翻訳産物」に切断される。本発明は、配列番号1のすべての核酸断片および該断片によってエンコードされるすべてのポリペプチドを包含する。
【0077】
完全長SVVポリタンパク質のアミノ酸配列の大部分は配列番号1のヌクレオチド1〜5673によってエンコードされる。このポリタンパク質は切断されて3種の前駆タンパク質、P1、P2およびP3になる(図4Bを参照のこと)。P1、P2およびP3はさらに切断されて、より小さい生成物になる。構造領域P1(1ABCD;すなわちキャプシド領域)の切断産物は、1ABC、VP0、VP4、VP2、VP3およびVP1である。非構造タンパク質P2(2ABC)の切断産物は、2A、2BC、2Bおよび2Cである。非構造領域P3ポリタンパク質(3ABCD)の切断産物は、3AB、3CD、3A、3C、3D、3C’、および3D’である。特定の実施態様では、本発明は、以下を含む単離された核酸を提供する:(i)2ABCの配列(配列番号1のヌクレオチド1924〜3315)およびそのエンコード対象のタンパク質;(ii)2BCの配列(配列番号1のヌクレオチド1966〜3315)およびそのエンコード対象のタンパク質;(iii)3ABCDの配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜5673)およびそのエンコード対象のタンパク質;(iv)3ABの配列(配列番号1のヌクレオチド3316〜3651)およびそのエンコード対象のタンパク質;および(v)3CDの配列(配列番号1のヌクレオチド3652〜5673)およびそのエンコード対象のタンパク質。
【0078】
ピコルナウイルスの基本キャプシド構造は、60プロトマーが高密度にパッキングされた正二十面体の配置からなり、各プロトマーは4ポリペプチド、VP1、VP2、VP3およびVP4からなり、これらの全ポリペプチドは元のプロトマーであるVP0の切断から生じる。SVVウイルス粒子は直径約27nmであり(図2を参照のこと)、直径約27〜30nmの他のピコルナウイルス粒子のサイズと一致する。
【0079】
ピコルナウイルスの複製についての速度論は高速であり、そのサイクルは約5〜10時間のうちに(典型的に約8時間で)完了する(ピコルナウイルス複製サイクルの概略図に関しては図68を参照のこと)。受容体結合時に、ゲノムRNAは粒子から細胞質内に放出される。そしてゲノムRNAはポリソームによって直接翻訳されるが、感染後約30分のうちに、細胞のタンパク質合成は急激に減衰し、ほぼゼロになる。この現象は「シャットオフ(shutoff)」と称され、細胞変性作用(cpe)の主原因である。シャットオフは、翻訳開始時に、すべての真核生物のmRNAの5’末端におけるm7Gキャップ構造の結合に関与する宿主細胞の220kDaキャップ結合複合体(CBC)の切断に起因すると考えられる。CBCの切断は2Aプロテアーゼに起因すると考えられる。
【0080】
5’UTRはIRESを含有する。通常、真核生物の翻訳は、リボソームが5’メチル化キャップに結合し、そしてmRNAに沿って走査し、最初のAUG開始コドンを発見した時点で開始される。IRESはこの過程を克服し、CBCの分解後にピコルナウイルスRNAが翻訳され続けるようにする。
【0081】
ウイルスポリタンパク質は初期に2Aプロテアーゼによって切断され、ポリタンパク質P1、P2およびP3になる(図4Bを参照のこと)。その後、主要ピコルナウイルスプロテアーゼである3Cによってさらに切断イベントが生じる。3Cによって作成される切断産物の1つはウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(3D)であり、これはゲノムRNAをコピーして、マイナス(−)センス鎖を生産する。この(−)センス鎖は、(+)鎖(ゲノム)RNA合成用の鋳型を形成する。いくつかの(+)鎖は翻訳されて追加のウイルスタンパク質を生産し、またいくつかの(+)鎖はキャプシド内にパッケージされて新規ウイルス粒子を形成する。
【0082】
(+)鎖RNAゲノムはあらかじめ形成されたキャプシド内にパッケージされると考えられるが、該ゲノムおよびキャプシド間の分子的相互作用は不明である。空のキャプシドはすべてのピコルナウイルス感染において共通である。キャプシドの集合は、P1ポリタンパク質前駆体が、VP0、VP3、およびVP1からなるプロトマーに切断されることによって生じ、これらはともに結合してゲノムを封入する。ウイルス粒子の成熟および感染力は、VP0が内部で自己触媒的にVP2およびVP4に切断されることに依存する。新しく形成されたウイルス粒子の放出は細胞溶解時に生じる。
【0083】
また本発明は、ATCC特許寄託番号PTA−5343のすべての識別特性および核酸配列を有する単離されたウイルスを提供する。本発明のウイルスは、PTA−5343単離体、PTA−5343単離体の変種、相同体、誘導体および変異体、およびSVV(本明細書中で開示される野生型および変異体の両者)の、その腫瘍溶解性を担うことが決定されている配列に関して修飾された他のピコルナウイルスの変種、相同体、誘導体および変異体を対象にし得る。
【0084】
さらに本発明は、ATTC特許寄託番号PTA−5343を有する単離されたSVV、およびアミノ酸配列配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22を有する単離されたSVVタンパク質由来のエピトープを特異的に標的にする抗体を提供する。また本発明は、配列番号1の断片または部分によってエンコードされるタンパク質由来のエピトープを特異的に標的にする抗体を含む。
【0085】
種々のカルジオウイルス単離体由来のRNA配列の比較解析では、ゲノム間で>45%のヌクレオチド同一性が示された。カルジオウイルスは、EMC様ウイルス(「EMCV」−、例えばMengo、B、R;およびさらにMM、ME、Columbia−SK)、Theiler様ウイルス(「TMEV」−、例えばBeAn、DAおよびGD VII系統)、およびVilyuiskウイルスに亜分類することができる。
【0086】
他のウイルスと比較したSVV配列の解析では、SVVはカルジオウイルスの一種であると考えられる(実施例4および該実施例で参照される図を参照のこと)。EMCVおよびTMEVが標準カルジオウイルスであるとすれば、SVVは明らかに典型的カルジオウイルスではない。しかし、これらの2ウイルスでさえ差異を有し、この差異は5’UTRにおいて著しい(Pevear et al., 1987, J. Virol., 61: 1507-1516)。系統学的にSVVはそのポリタンパク質の大半(P1、2C、3Cproおよび3Dpol領域;図31−37を参照のこと)においてEMCVおよびTMEVとクラスター形成し、この結果はSVVがカルジオウイルスである可能性が非常に高いことを示す。
癌の処置方法:
【0087】
本発明は、SVVの腫瘍溶解性を考慮して修飾されたウイルス、例えばピコルナウイルス、その誘導体、変種、変異体または相同体を使用して癌を治療するための方法を提供する。本発明は、野生型SVV(すなわちATTC特許寄託番号PTA−5343)がいくつかのタイプの腫瘍を選択的に死滅させる能力を有することを示す。例えば、SVVは、向神経性または神経内分泌性を有する腫瘍細胞、例えば小細胞肺癌(SCLC)および神経芽細胞腫を選択的に死滅させることができる。本発明のウイルスによる処置対象として考慮される神経内分泌腫瘍の他の例には、非限定的に以下のものが含まれる:副腎クロム親和細胞腫、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群を発症させる)、グルカゴノーマ、膵島細胞腺腫、髄様癌(例えば髄様甲状腺癌腫)、多発性内分泌腫瘍症候群、膵内分泌腫瘍、傍神経節腫、VIPoma(血管活性腸ポリペプチド腫瘍)、島細胞腫瘍、およびクロム親和細胞腫。
【0088】
また本発明は、4タイプの神経内分泌肺腫瘍を包含する。最も深刻なタイプの小細胞肺癌(SCLC)は、すべての癌のうちで最も高速に増殖し、拡大するものに含まれる。大細胞神経内分泌癌腫はまれな癌であり、癌を形成する細胞のサイズを除き、その予後および患者の処置方法に関してSCLCに非常に類似している。カルチノイドとしても知られるカルチノイド腫瘍は、他の2タイプの肺神経内分泌癌を含む。これらの2タイプは定型カルチノイドおよび異型カルチノイドである。
【0089】
理論に拘束されることなく、腫瘍細胞を特異的に死滅させるSVVの能力には、非限定的に以下に挙げる能力が含まれるであろう:選択的複製、アポトーシス、腫瘍選択的細胞侵入を介する溶解、腫瘍選択的翻訳、腫瘍選択的タンパク質分解、腫瘍選択的RNA複製、およびその組み合わせ。
【0090】
他の腫瘍溶解性ウイルス、例えば修飾型アデノウイルスと比較して、SVVは多数の有益な特徴を有する。その例を以下に挙げる:(i)SVVは神経特性を有する癌、例えばSCLC、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫、および神経芽細胞腫に関して非常に高い選択性を有する−例えば、SVVは神経内分泌腫瘍細胞に対して10,000倍を超える選択性を示す;(ii)SVVは化学療法による処置より1,000倍良好な殺細胞特異性を有することが示されている;(iii)SVVは、1014ウイルス粒子/kg程の高濃度で全身投与を受けたマウスにおいて顕性の毒性を全く示さない;(iv)SVVの効果は非常に強く、マウスにおいてあらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を根絶することができ、腫瘍増殖の再発はない;(v)SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルライン中で200,000粒子/細胞を超える濃度で生産させることができる;(vi)SVVはサイズが小さく(SVVウイルス粒子は直径30nm未満である)、したがって他の腫瘍溶解性ウイルスより良好に腫瘍に浸透および伝播することができる、(vii)SVVは高速に複製する(12時間未満)、ならびに(viii)特異的抗腫瘍物質としての使用に関してSVVの修飾は不要である。
【0091】
さらに、初期研究(実施例6を参照のこと)では、SVVを腫瘍溶解性ウイルス療法に有益なツールにする、以下の追加要因が示される:(i)ヒト血清サンプルはSVVを標的にする中和抗体を含有しない;(ii)SVVは補体によって阻害されない;ならびに(iii)SVVは赤血球凝集によって阻害されない。これらの全要因は、SVVが他の腫瘍溶解性ウイルスより長いインビボでの循環時間を示す(例えば、実施例7を参照のこと)ことに寄与する。
【0092】
本発明は、細胞集団中の新生物細胞を選択的に死滅させるための方法であって、ウイルスが細胞集団中の新生物細胞に形質導入し、複製し、該新生物細胞を死滅させることができる条件下で、有効量のSVVを該細胞集団と接触させることを含む方法を提供する。SVVがインビボで腫瘍細胞を死滅させる方法に加えて、本方法は以下に挙げる実施態様を包含する:(1)SVVによる感染時に腫瘍細胞をインビトロで培養することができ;(2)非腫瘍細胞の存在下で腫瘍細胞を培養することができ;ならびに(3)細胞は哺乳類細胞(腫瘍および非腫瘍細胞の両者)であり、細胞がヒト細胞である場合を含む。細胞のインビトロ培養およびSVVによる感染は種々の適用性を有し得る。例えば、インビトロ感染は、大量のSVVを生産する方法、新生物細胞が細胞集団中に存在するかどうかを判定または検出するための方法、または変異SVVが諸腫瘍細胞または組織型を特異的に標的にし、それらを死滅させることができるかどうかをスクリーニングするための方法として使用される。
【0093】
さらに本発明は、エクスビボでの癌の処置方法であって、ヒト癌患者から細胞を単離し、インビトロで培養し、該癌細胞を選択的に死滅させるSVVを感染させ、そして非腫瘍細胞を該患者に再導入する方法を提供する。あるいは、SVVを患者に投与するための方法として、患者から単離された細胞にSVVを感染させて、すぐに該患者に再導入することができる。一実施態様では、癌細胞は造血性起源である。場合により、患者の腫瘍細胞をインビボで破壊する処置(例えば化学療法または放射線照射)を患者に受けさせた後に、培養細胞を該患者に再導入してよい。一実施態様では、該処置の使用により、患者の骨髄細胞を破壊してよい。
【0094】
SVVは、神経特性を有する腫瘍細胞型に対する強力な抗腫瘍活性を有する。SVVは、正常なヒト、ラット マウス、ウシまたはヒツジのセルラインまたは非神経系の腫瘍セルラインに対する細胞溶解活性を示さない。さらにSVVは初代ヒト肝細胞に対して細胞障害性ではない。以下の表1では、選択された腫瘍細胞型に対するSVVのインビトロ細胞溶解効果を測定するために行われた研究をまとめる。
【0095】
表1:選択された腫瘍細胞型に対するSVVの細胞溶解効果
【表1】
【0096】
マウスでの研究(実施例を参照のこと)では、SVVがインビボで非常に高い効果および特異性で腫瘍を特異的に死滅させることができることが示される。これらのインビボでの研究では、他の腫瘍溶解性ウイルスと比べてSVVが多数の利点を有することが示される。例えば、確立された腫瘍を根絶する腫瘍溶解性腫瘍ウイルスの能力に影響する重要な一要因は、ウイルスの浸透性(penetration)である。アデノウイルスベクターを用いる研究では、Ad5ベースのベクターは胸腺欠損マウスのSCLC腫瘍の発達に対する影響を有さなかった。免疫組織化学の結果によれば、アデノウイルスは確立された腫瘍に浸透しないと考えられた。対照的に、SVVは単一の全身投与にしたがって胸腺欠損ヌードマウスのH446 SCLC腫瘍を排除することができた。SVVはサイズが小さく(直径<30nm)、したがって他のウイルスより良好に腫瘍組織に浸透および伝播することが可能であり、ゆえに、SVVのサイズが小さいことは、確立された腫瘍に首尾良く浸透し、それらを根絶するその能力に寄与するであろう。
【0097】
化学抵抗性(chemoresistance)は、癌治療の一様相である化学療法を受けるすべての患者が直面する主要な問題である。化学抵抗性になる患者は、常にではなくとも、非常に不良な予後を有することが多く、代替療法がない状態になるであろう。化学抵抗性の主要な原因の1つは、多剤耐性タンパク質(MRP)と称されるファミリーのタンパク質の発現、過剰発現、または活性増加であることが周知である。発明者(出願人)らは、SVVに関する特定の腫瘍細胞の感受性も癌細胞の化学抵抗性状態およびMRP発現と相関することを発見した。H69はインビトロでSVVに耐性の化学感受性(アドリアマイシン)セルラインであり、H69ARは、MRPを過剰発現し、SVVに感受性の化学抵抗性セルラインである(表1を参照のこと)。MRP、例えばMDRの過剰発現はSVVの殺細胞性に対する細胞の感受性と相関することを示す証拠である。ゆえに、一実施態様では、本発明はSVVがMRP過剰発現性細胞を死滅させる癌の処置方法を提供する。
【0098】
また本発明は、異常細胞、例えば異常増殖性細胞に起因する疾患の処置方法を提供する。本方法は、異常細胞の部分またはすべての破壊を導く様式で該異常細胞をSVVと接触させることを含む。SVVを使用して、異常細胞に起因する種々の疾患を処置することができる。これらの疾患の例には、非限定的に、腫瘍細胞が神経内分泌性の特徴を示す癌および神経線維腫症が含まれる。
【0099】
神経内分泌腫瘍は種々の方法によって同定することができる。例えば、神経内分泌腫瘍は多数のペプチドホルモンおよびアミンを生産および分泌する。これらの物質のいくつかは以下のような特定の臨床症候群の原因になる:カルチノイド、Zollinger-Ellison、高血糖、グルカゴノーマおよびWDHA症候群。これらの症候群に関する特異的マーカーは、それぞれ、尿5−HIAA、血清または血漿ガストリン、インスリン、グルカゴンおよび血管活性腸ポリペプチドの基底および/または刺激レベルである。いくつかのカルチノイド腫瘍および約1/3の内分泌膵腫瘍は臨床症状を全く示さず、「非機能性」腫瘍と称される。したがって、一般的腫瘍マーカー、例えばクロモグラニンA、膵ポリペプチド、血清ニューロン特異的エノラーゼおよび糖タンパク質ホルモンのサブユニットが、明確な臨床のホルモン関連症状を有さない患者のスクリーニングのために使用されている。これらの一般的腫瘍マーカーのうち、クロモグラニンAは、その正確な機能は未だ確立されていないが、種々のタイプの神経内分泌腫瘍に関する非常に高感度かつ特異的な血清マーカーであることが示されている。これは、既知のホルモンを分泌しない、分化の程度が低い神経内分泌起源の腫瘍の多数の症例においても上昇する可能性があることに基づく。現在、クロモグラニンAは、診断および治療上の評価の両方に関して利用可能な最良の一般的な神経内分泌性の血清または血漿マーカーであると考えられ、種々の神経内分泌腫瘍を有する患者の50〜100%において増加する。クロモグラニンAの血清または血漿レベルは腫瘍負荷(tumor load)を反映し、中腸カルチノイドを有する患者の予後についての非依存的マーカーであろう。
【0100】
また本発明は、SVVおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。製薬的に許容される担体中に有効量のSVVを含ませることができる上記組成物は、単位投与剤形、滅菌非経口溶液または懸濁液、滅菌非腸管外(non-parenteral)溶液または経口(oral)溶液または懸濁液、水中油または油中水エマルジョン、等として個体に局所または全身投与するのに適している。非経口および非腸管外(経口)薬物送達用の製剤は当技術分野において既知である。組成物には、凍結乾燥および/または再組成型のSVVも含まれる。許容される医薬用担体は、例えば生理食塩水溶液、硫酸プロタミン(Elkins-Sinn, Inc., Cherry Hill, NJ)、水、水性バッファー、例えばリン酸バッファーおよびトリスバッファー、またはポリブレン(Sigma Chemical, St. Louis, MO)およびリン酸緩衝生理食塩水およびショ糖である。適切な医薬用担体の選択は本明細書中に含まれる教示内容から当業者に自明であると考えられる。これらの溶液は滅菌性であり、概してSVV以外の粒子状物質を含まない。本組成物は、生理的条件に近づけるために必要な製薬的に許容される補助物質、例えばpH調節および緩衝剤、毒性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、等を含有してよい。SVVによる細胞の感染を増強する賦形剤を含ませてよい。
【0101】
SVVは、腫瘍細胞の増殖を該腫瘍細胞におけるウイルスの複製によって阻害、予防または破壊するのに有効な量で、宿主または対象に投与する。SVVを癌治療に利用する方法には、治療的に有用な腫瘍細胞の破壊を誘発するための、安全で、発展性で(developable)、かつ許容される用量のウイルスを全身、領域または局所送達することが含まれる。全身投与を採用した場合でさえ、SVVに関する治療係数は少なくとも10、好ましくは少なくとも100またはさらに好ましくは少なくとも1000である。一般に、SVVは1x108〜1x1014vp/kgの範囲の量で投与する。正確な投与用量は種々の要因、例えば患者の年齢、体重、および性別、および処置対象の腫瘍のサイズおよび重篤度に依存する。このウイルスは1回またはそれ以上の回数で投与してよく、その回数は宿主の免疫応答能に依存するであろう。担当医によって選択される用量レベルおよびパターンで組成物の単一または複数回投与を行うことができる。必要であれば、種々の免疫抑制剤を使用して免疫応答を低下させてよい。その目的は、本ウイルスに対する免疫応答を減少させることによって反復投与を可能にし、ならびに/あるいは複製を増強することである。本発明の抗新生物性ウイルス療法を他の抗新生物性プロトコルと組み合わせてよい。送達は、リポソーム、直接注射、カテーテル、局所適用、吸入、等を使用して種々の方法で達成することができる。さらに、SVVゲノムRNAのDNAコピーまたはその部分もまた送達の手法であり得る。この場合、DNAはその後に細胞によって転写されて、SVVウイルス粒子または特定のSVVポリペプチドが生産される。
【0102】
治療有効(用)量とは、患者において症状を改善させ、あるいは生存を延長させるウイルスの量を表す。ウイルスの毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における、例えばLD50(動物または細胞の集団の50%に対して致死の用量;ウイルスに関しては、用量はvp/kg単位である)およびED50(動物または細胞の集団の50%において治療上有効な用量−vp/kg−)またはEC50(動物または細胞の集団の50%における有効濃度−vp/細胞(例えば表1を参照のこと)−)の測定に関する標準的手順によって決定することができる。有毒な影響および治療効果の間の用量比は治療係数であり、LD50およびED50またはEC50間の比として表すことができる。高い治療係数を示すウイルスが好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトでの使用に関する一定範囲の用量を製剤化する際に使用することができる。ウイルスの用量は、好ましくは、ED50またはEC50を含む、毒性をほとんど有さないか、あるいは全く有さない一定範囲の循環濃度の範囲内である。上記用量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存して、本範囲内で変動させてよい。
【0103】
さらに別の側面では、新生物症状を有する宿主生物の処置方法であって、治療有効量の本発明のウイルス組成物を該宿主生物に投与することを含む方法を提供する。一実施態様では、新生物組織は異常増殖性であり、また、新生物組織は悪性腫瘍組織であり得る。好ましくは、ウイルスは腫瘍組織において選択的に複製するその能力に起因して組織または腫瘤全体にわたって分配される。潜在的に本発明の方法を用いて処置しやすい新生物症状には、向神経性を有する症状が含まれる。
本発明のウイルスの製造方法:
【0104】
本発明のウイルスを非常に高い力価および収量(率)で製造するための方法は本発明の追加の側面である。前述のように、SVVを精製して高力価にすることができ、許容セルラインにおいて200,000粒子/細胞を超える量で生産させることができる。大量のウイルスを生産可能な細胞には、非限定的に、PER.C6(Fallaux et al., Human Gene Therapy, 9: 1909-1917, 1998)、H446(ATCC# HTB−171)および表1にリストされる他のセルラインが含まれ、この場合、EC50値は10未満である。
【0105】
例えば、ピコルナウイルスの培養は以下のように行うことができる。目的のウイルスを1回プラーク精製し、十分に単離されたプラークをつつき、許容セルライン、例えばPER.C6中で増幅させる。複数サイクルの凍結および解凍によって感染細胞由来の粗製のウイルスライセート(CVL)を作成することができ、それを使用して多数の許容細胞を感染させる。この許容細胞を種々の組織培養フラスコ、例えば50x150cm2フラスコで培養することができる。培養には、種々の培地、例えば10%ウシ胎児血清(Biowhitaker, Walkersvile, MD)および10mM塩化マグネシウム(Sigma, St Louis, MO)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen, Carlsbad, CA))を使用する。感染24〜48時間後または完全な細胞変性作用(CPE)が認められた時点で感染細胞を回収することができ、4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって収集する。細胞ペレットを細胞培養上清中に再懸濁し、複数サイクルの凍結および解凍に付する。得られたCVLを4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって浄化する。ウイルスを勾配遠心分離によって精製することができる。例えば、SVVの精製には2ラウンドのCsCl勾配で十分であり得る:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルスの濃度を分光光度法で測定する。この場合、1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba D.G., and Palmenberg, A.C. 1999. カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae)). In: Encyclopedia of Virology, Second edition, R.G. Webster and A Granoff Eds)。また精製ウイルスの力価を、PER.C6細胞を使用する標準プラークアッセイによって測定する。PER.C6細胞由来のSVVの収量は200,000粒子/細胞を超え、粒子対PFU比は約100である。他の許容細胞(H446−ATCC# HTB−171)由来のSVVの収量は少なくとも上記と同程度に多く、あるいはより多いであろう。
【0106】
さらに、商業的に魅力的な大規模優良製造工程(Good Manufacturing Processes)(GMP)における複数の段階をSVVの精製に適用可能である。また本発明では、アデノウイルスの精製方法に基づくSVVの精製方法が考慮される。これらの方法には、SVVをその密度に基づいて単離することが含まれる。その理由は、SVVがアデノウイルスと非常に類似した密度を有し、アデノウイルスと同時精製することができるからである。
腫瘍の検出および研究方法:
【0107】
本発明は、本発明のウイルスを使用して患者の腫瘍または新生物細胞を検出するための方法を提供する。患者から細胞サンプルを取得し、該サンプルをエピトープタグ付きSVV(または本発明によって提供される他の腫瘍特異的ウイルス、すなわち腫瘍特異的変異カルジオウイルス)とインキュベートし、次いで該エピトープタグを検出することによって結合型SVVに関して該サンプルをスクリーニングすることによってスクリーニングすることができる。あるいは、SVVがいずれかの細胞溶解を生じさせるかどうかを検出することによってサンプルをスクリーニングすることができる。SVVが実際に細胞溶解を生じさせるか、あるいはSVVがサンプル中の細胞に特異的に結合することができれば、SVVが結合および/または感染可能であることが既知の新生物または腫瘍細胞を該サンプルが含有する可能性を示す。
【0108】
さらに、インビボでの腫瘍細胞の検出方法においてSVVを使用することができる。そのような方法では、エピトープタグ付きSVVを、最初に、SVVが依然として腫瘍細胞に特異的に結合できるが、複製できない様式で不活性化することができる。エピトープタグに関してアッセイすることによって結合型SVVを有する腫瘍細胞を検出することができる。エピトープタグの検出は、該エピトープを特異的に結合する抗体によって達成することができ、この場合、該抗体を(例えば蛍光で)標識するか、あるいは標識された二次抗体によって該抗体を後に検出することができる。
【0109】
本検出方法は、本発明の任意のウイルスの特異的な標的である任意のタイプの腫瘍または新生物細胞を検出することを包含する。特定の腫瘍型には、例えば、神経内分泌型腫瘍、例えば網膜芽細胞腫、SCLC、神経芽細胞腫 グリア芽細胞腫および髄芽腫が含まれる。
【0110】
また本発明は、腫瘍細胞を研究するツールとしてのSVVの使用を提供する。SVVはいくつかの腫瘍細胞型を選択的に破壊し、非腫瘍細胞に対する有毒な影響は、たとえあったにしても、非常に少ない。これらの特徴に基づき、SVVを使用して、腫瘍を研究し、新規腫瘍特異的遺伝子および/または経路を発見することができるであろう。換言すれば、SVVの複製を許容する腫瘍細胞には何らかの特徴が存在し、この場合、正常細胞は該特徴を示さない。新規腫瘍特異的遺伝子および/または経路を同定すると、治療用抗体または小分子を設計し、あるいはスクリーニングして、これらの試薬が抗腫瘍物質であるかどうかを判定することができる。
【0111】
また本発明は、SVVと反応するすべてのタイプの癌を同定するための方法を提供する。一実施態様では、SVV応答細胞の同定方法は、細胞を取得する段階、該細胞をSVVと接触させる段階および細胞の死滅を検出するか、あるいはウイルスの複製を検出する段階を含む。細胞の死滅は、当業者に既知の種々の方法(例えばMTSアッセイ、本明細書中のハイスループットの節を参照のこと)を使用して検出することができる。ウイルスの複製を検出する方法も当業者に既知である(例えばCPEの観察、プラークアッセイ、DNA定量法、FACSによって、腫瘍細胞中のウイルスの量を検出、RT−PCRアッセイによって、ウイルスのRNAを検出、等)。一実施態様では、細胞は癌細胞である。癌細胞の例には、非限定的に、哺乳類から取得される確立された腫瘍セルラインおよび腫瘍細胞が含まれる。一実施態様では、哺乳類はヒトである。別の実施態様では、細胞はヒト癌患者から取得される癌細胞である。
【0112】
SVV応答性癌細胞の同定方法を使用して、SVVの複製を許容する腫瘍セルラインまたは腫瘍組織を発見してよい。また、許容腫瘍細胞の特徴を決定することによって、SVVによって細胞が選択的に死滅する原因である腫瘍細胞の特徴を同定することができるであろう。これらの特徴を発見すれば、制癌剤の新規標的が得られるであろう。また、SVV応答性癌細胞の同定方法を使用して、SVVでの処置から恩恵を受けるであろうヒト癌患者をスクリーニングすることができよう。
【0113】
SVVの天然宿主は未だ決定されていないので、SVVを検出するアッセイに関する必要性が存在する。ゆえに、本発明はSVVの検出方法を提供する。一実施態様では、検出アッセイはSVVポリペプチドエピトープに対して特異的な抗体に基づく。別の実施態様では、検出アッセイは核酸のハイブリダイゼーションに基づく。一実施態様では、SVVからRNAを単離し、標識(例えば放射性、化学発光、蛍光、等)して、プローブを作成する。その後試験材料からRNAを単離し、ニトロセルロース(または同様の基質または機能的に等価の基質)に結合させ、標識型SVV RNAでプローブし、結合型プローブの量を検出する。また、ウイルスのRNAを直接または間接的にシークエンシングしてよく、その配列に基づいてPCRアッセイを開発してよい。一実施態様では、PCRアッセイはリアルタイムPCRアッセイである。
【0114】
改変された親和性を有するウイルスの作成方法:
本発明はSVV変異体(または変種または誘導体)の構築方法を提供し、この場合、これらの変異体は改変された細胞型親和性を有する。具体的には、野生型SVVの結合に耐性であることが既知の腫瘍または新生物細胞に特異的に結合し、ならびに/あるいはそれらを特異的に死滅させる能力に関してSVV変異体を選択する。
【0115】
ネイティブまたは野生型SVVは単純なゲノムおよび構造を有し、それによりネイティブのウイルスを修飾して他の癌の徴候を標的にすることが許容される。これらの新規誘導体は非神経系の癌に対して拡大された親和性を有し、かつネイティブのSVVに認められる高い治療係数を依然として維持する。ターゲティング手段の1候補は、組織特異的ペプチドまたはリガンドをウイルス上に含ませることである。
【0116】
癌ターゲティングウイルス候補を選択するために、本発明は、ネイティブのSVVのキャプシド領域中にランダムなペプチド配列をエンコードする遺伝子挿入を有する腫瘍溶解性ウイルスライブラリーを構築およびスクリーニングする方法を提供する。ランダムなペプチドライブラリーは108の種類で十分であると考えられ、該ウイルスを特異的に腫瘍組織に向けるペプチドが得られるであろう。
【0117】
諸研究により、腫瘍細胞が正常細胞とは異なる以下のような特徴を示すことが示されている:(1)腫瘍細胞はより浸透性の細胞膜を有する;(2)腫瘍は特定の間質細胞型、例えば血管原性内皮細胞を有し、これは細胞型特異的受容体を発現することが以前に示されている;ならびに(3)腫瘍細胞では、特定の受容体、抗原および細胞外基質タンパク質の発現に差異がある(Arap, W. et al., Nat. Med., 2002, 8(2): 121-127; Kolonin, M.et al., Curr. Opin. Chem. Biol., 2001, 5(3): 308-313; St. Croix, B. et al., Science, 2000, 289(5482): 1997-1202)。これらの研究では、腫瘍および正常組織が分子レベルで異なっていて、ターゲティングされた薬物送達および癌の処置が可能であることが実証された。具体的には、マウスモデルにおける血管へのホーミングによって選択された複数のペプチドが、細胞障害性薬物(Arap, W. et al., Science, 1998, 279(5349): 377-380)、プロアポトーシスペプチド(Ellerby, H.M. et al., Nat. Med., 1999, 17(8): 768-774)、メタロプロテアーゼ阻害剤(Koivunen, E. et al., Nat. Biotechnol, 1999, 17(8): 768-774)、サイトカイン(Curnis, F. et al., Nat. Biotechnol., 2000, 18(11): 1185-1190)、フルオロフォア(Hong. F.D. and Clayman, G.L., Cancer Res., 2000, 60(23): 6551-6556)および遺伝子(Trepel, M. et al., Hum. Gene Ther., 2000, 11(14): 1971-1981)のターゲティングされた送達に使用されている。腫瘍ターゲティングペプチドは親薬物の効果を増加させ、その毒性を低下させることが証明されている。
【0118】
SVV誘導体のライブラリーは、ウイルスのキャプシド領域内にランダムなペプチド配列を挿入することによって作成することができる。図57に示されるように、まずSVVキャプシド領域を含有するベクター、すなわち「pSVVキャプシド」を作成する。そして、例えばDNAをランダムな位置で切断する制限酵素、すなわちCviJI(平滑末端化カッター)でベクターを切断することによって、このキャプシドベクターに変異を生じさせることができる。ベクターを多数の位置で切断し、CviJIによって一度だけ切断されたDNAをゲル精製によって単離することができる(図57を参照のこと)。この単離されたDNA集団は、キャプシド領域中の種々の位置で切断された多数の種類を含有する。そしてこの集団をオリゴヌクレオチドおよびリガーゼとインキュベートして、一定の割合のオリゴヌクレオチドを多数の異なる位置でベクターのキャプシド領域内にライゲートする。この様式で、変異SVVキャプシドのライブラリーを作成することができる。
【0119】
キャプシドエンコード領域内に挿入されるオリゴヌクレオチドは、ランダムなオリゴヌクレオチド、非ランダムのオリゴヌクレオチド(すなわち、このオリゴヌクレオチドの配列はあらかじめ決定されている)、または半ランダム(すなわち、このオリゴヌクレオチドのある部分はあらかじめ決定されていて、ある部分はランダムな配列を有する)であってよい。非ランダムの側面で考慮されるオリゴヌクレオチドはエピトープエンコード領域を含み得る。考慮されるエピトープには、非限定的に、c−myc−ヒトプロトオンコジーンmycの10アミノ酸セグメント(EQKLISEEDL(配列番号35);HA−ヒトインフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来の(赤)血球凝集素タンパク質(YPYDVPDYA(配列番号36));およびHis6(配列番号116)−6個の連続するヒスチジンをエンコードする配列−が含まれる。
【0120】
そして変異キャプシドポリヌクレオチドのライブラリー(例えば図57の「pSVVキャプシドライブラリー」)を制限酵素で消化して、変異キャプシドエンコード領域のみを切り出すことができる。次いでこの変異キャプシドエンコード領域を、キャプシドエンコード領域を除いた完全長ゲノム配列を含有するベクターにライゲートする(例えば図58を参照のこと)。このライゲーションにより完全長ゲノム配列を有するベクターが生成し、この場合、ベクターの集団(またはライブラリー)は多数の変異キャプシドを含む。図58では、種々のキャプシドを含むこのSVV変異体のライブラリーを「pSVVFLキャプシド」と表す。そしてpSVVFLキャプシドベクターのライブラリーを直線化および逆転写して、変異SVV RNAを作成する(図59を参照のこと)。次いで変異SVV RNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、キャプシド中に脱療育性(dehabilitating)変異を有さないSVV配列が宿主細胞によって翻訳され、多数の変異SVV粒子が生産されるようにする。図59では、多数の変異SVV粒子を「SVVキャプシドライブラリー」と表す。
【0121】
キャプシドエンコード領域内に挿入されるオリゴヌクレオチドによってエンコードされるペプチドは、特異的ウイルス感染に関するターゲティング部分として働くことができる。特定タイプの癌を標的にするウイルスならば、上記ペプチドに対する受容体を有する癌細胞のみに選択的に感染し、その細胞中で複製し、細胞を死滅させ、そして同一タイプの細胞にのみ伝播するであろう。本方法論により、新規腫瘍ターゲティングペプチドおよびリガンド、腫瘍選択的受容体、治療用SVV誘導体および他のウイルス誘導体、例えばピコルナウイルス誘導体の同定が可能になる。
【0122】
SVV変異体ライブラリーのインビトロおよびインビボスクリーニングは、他の技術、例えばペプチドビーズライブラリーおよびファージディスプレイと比べていくつかの利点を有する。これらの他の技術と違って、本件で望ましい候補、すなわち癌細胞に選択的に結合するSVV誘導体はインサイチュで複製する。この複製ベースのライブラリーアプローチは、新規細胞結合部分を発見する従来の方法、例えばファージディスプレイと比べて多数の利点を有する。第一に、SVVライブラリーのスクリーニングは複製に基づく。標的組織、本事例では特定の癌細胞で複製することができるのは、所望のウイルス誘導体だけである。スクリーニング/選択工程によって、ターゲティングペプチド部分を有し、かつ自身が癌治療薬であってよい非常に特異的なウイルス候補が得られる。一方、ファージディスプレイによるスクリーニングは結合イベントのみに帰着し、ターゲティングペプチド候補しか得られない。ゆえに、SVVライブラリーのスクリーニングはずっと高速かつ選択的なアプローチを提供する。第二に、インビトロまたはインビボでのファージディスプレイによるスクリーニング時には、標的細胞から回収されたファージを細菌中で増幅する必要があるが、SVV誘導体は感染細胞から(または溶菌的な感染を受けた細胞の培養上清から)直接回収および精製することができる。第三に、SVVはゲノムのサイズが小さく、したがって操作が容易である;ゆえに、最適な挿入を保証して、キャプシド領域内にランダムに遺伝情報を挿入することが可能である。したがって、SVVライブラリーの構築およびスクリーニングは、非常に有効なウイルス誘導体を生産する高い可能性を有する。これらの誘導体を設計およびスクリーニングして、非神経特性を有する癌に特異的に感染するようにする。
【0123】
キャプシドエンコード領域内にオリゴヌクレオチドを挿入すると、いくつかの欠損変異体が生じる。変異体は、オリゴヌクレオチド配列の挿入によって停止コドンが生じ、したがってウイルスのポリタンパク質が生産されなくなり得るという意味で欠損性であってよい。また変異体は、オリゴヌクレオチド配列の挿入によってキャプシドがもはや会合できなくなるようにキャプシド構造が変化してよいという意味で欠損性であってよい。オリゴヌクレオチド配列の挿入によって停止コドンが生じるか、あるいはキャプシド構造が成り立たなくなる可能性を減らすために、TRIMのような方法を使用して、停止コドンまたは特定のアミノ酸をエンコードしないようにランダムなオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0124】
キャプシド領域中にオリゴヌクレオチド用の最適な挿入ポイントが存在するかどうかを判定するために、RGD−SVVライブラリーを作成することができる(実施例16を参照のこと)。例えばCviJIを用いて、SVVキャプシドをエンコードするポリヌクレオチドをランダムに切断する。そしてランダムに直線化されたキャプシドポリヌクレオチドを、少なくともRGDアミノ酸配列(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)をエンコードするオリゴヌクレオチドにライゲートする。次いでこれらのRGD−キャプシド配列を、キャプシド配列を欠いているSVV完全長配列ベクターにライゲートする。RGD−SVV誘導体ウイルスを製造し、特定のインテグリン発現性セルラインにおいて感染および複製するその能力に関して試験する(RGDペプチドは要素をインテグリン受容体に向けることが示されているため)。そしてインテグリン発現性セルラインへの感染に成功したRGD−SVV誘導体を解析して、RGDオリゴヌクレオチドに関する主要な挿入部位が存在するかどうかを判定する。次いでこの部位を使用して、ランダム、非ランダムまたは半ランダムのオリゴヌクレオチドを部位特異的に挿入することができる。
【0125】
さらに、SVVおよび他のピコルナウイルス間のキャプシドエンコード領域の部分を比較すると(図28を参照のこと)、ウイルス間において種々の非ボックス(non-boxed)領域が存在し、この領域では配列類似性がその最低である。これらの領域はウイルス間で異なる親和性への寄与において重要であるかもしれない。ゆえに、これらの領域は、SVVキャプシドの(および他のウイルスのキャプシドに関する)オリゴヌクレオチド挿入変異誘発に関する候補位置であろう。
【0126】
腫瘍特異的治療薬としての不活性化型SVV:
SVVおよびSVVキャプシド誘導体は特定の腫瘍細胞型および/または組織を標的にすることができるため、SVV粒子そのものを治療薬用の送達ビヒクルとして使用することができる。上記方法では、SVVの腫瘍溶解能に関しての必要性は必須ではなくなる。その理由は、送達される治療薬が標的の腫瘍細胞を死滅させることができるからである。
【0127】
例えば、野生型SVVを不活性化して、ウイルスがもはや感染細胞を溶解しないが、この場合、該ウイルスは依然として標的の腫瘍細胞型に特異的に結合および侵入することが可能であるようにできる。ウイルスの複製機能を不活性化する、当技術分野において既知の多数の標準的方法が存在する。例えば、ホルマリンまたはβ−プロピオラクトンによって全ウイルスワクチンを不活性化して、ウイルスが複製できないようにする。野生型SVVそのものに、細胞のアポトーシスを引き起こすペプチドを含有させてよい。あるいは、SVVに放射線を照射することができる。しかし、放射線を照射されたウイルスは、依然として腫瘍細胞を特異的にターゲティング可能であることを保証するために最初に試験すべきであろう。その理由は、特定の照射条件により、タンパク質、ゆえにキャプシドの変化が生じる可能性があるからである。さらに、パッケージングシグナル配列が欠失した変異SVVを作成することができる。これらのSVV変異体は標的細胞に特異的に結合および侵入することができるが、複製されたSVVゲノムRNAはパッケージされず、キャプシド内に組み立てられない。しかし、本方法は有用であることが判明するであろう。その理由は、これらの変異SVVの初期侵入により宿主タンパク質合成のシャットオフが生じて、依然として腫瘍細胞死が達成されるからである。
【0128】
また、変異キャプシドを有する誘導体SVVを不活性化して、その使用により癌細胞を死滅させることができる。キャプシド領域内に挿入されたエピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドを有する誘導体SVVをビヒクルとして使用し、腫瘍細胞に毒素を送達することができる。本明細書中で記載されるように、誘導体SVVにランダムに変異を生じさせ、腫瘍特異的親和性に関してスクリーニングすることができる。エピトープタグに毒素を結合させて、ウイルスが腫瘍細胞に毒素を送達するようにできる。あるいは、エピトープタグに特異的に結合する治療用抗体を使用して、ウイルスが腫瘍細胞に該治療用抗体を送達するようにできる。
【0129】
ハイスループットスクリーニング:
本発明は、種々のセルラインに特異的に感染する能力を有するウイルスをスクリーニングするためのハイスループット法を包含する。感染の特異性は細胞変性作用に関してアッセイすることによって検出することができる。例えば、ハイスループットスクリーニングに適したマルチウェルプレート、例えば384ウェルプレートの各ウェルで多数の諸腫瘍セルラインを培養することができる。各ウェルにウイルスのサンプルを加えて、ウイルス媒介性の溶解によって細胞が死滅するかどうかを試験する。細胞変性作用を示すウェルから培地を収集し、フラスコまたは大規模な組織培養プレート中で許容セルラインを感染させることによって培地中の任意のウイルスを増幅することができる。ウイルスを培養して、RNAを単離し、配列を解析して、ウイルスへの腫瘍細胞型特異的親和性の提供を担う可能性がある配列変異を決定することができる。
【0130】
種々の比色および蛍光定量法で細胞変性作用を高速にアッセイすることができる。これには蛍光色素ベースのアッセイ、ATPベースのアッセイ、MTSアッセイおよびLDHアッセイが含まれる。蛍光色素ベースのアッセイは、死細胞集団を検出するための核酸染色剤を含み得る。その理由は、細胞不浸透性(cell-impermeant)の核酸染色剤は死細胞集団を特異的に検出することができるからである。生細胞および死細胞集団の両者を同時に検出することが望ましければ、生細胞集団を検出するための細胞内エステラーゼ基質、膜透過性(membrane-permeant)核酸染色剤、膜電位感受性プローブ、細胞小器官プローブまたは他の細胞浸透性(cell-permeant)の指示薬と組み合わせて核酸染色剤を使用することができる。例えば、Invitrogen(Carlsbad, CA)は、損傷した原形質膜を有する細胞にのみ浸透する種々のSYTOXTM核酸染色剤を提供する。また臭化エチジウムおよびヨウ化プロピジウムを使用して、死細胞または瀕死の細胞を検出することができる。これらの染色剤は、任意の吸光度読み取り装置によって検出することができる高親和性の核酸染色剤である。
【0131】
例えば、溶解は、損傷した細胞のサイトゾルから上清に放出される乳酸脱水素酵素(LDH)活性の測定を基準にすることができる。細胞培養上清中のLDHの存在を検出するために、基質混合物を加えて、共役型酵素反応によってLDHがテトラゾリウム塩INTをホルマザンに還元するようにできる。次いでこのホルマザン色素を吸光度読み取り装置によって検出することができる。あるいはまた、フェナジンメトサルフェート(phenzine methosulfate)(PMS)を電子カップリング試薬として使用するMTSアッセイ[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩]を使用して、細胞障害性を検出することができる。Promega(Madison, WI)はCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assayキットを提供する。このキットでは、溶液試薬を培養ウェルに直接加え、1〜4時間インキュベートし、次いで490nmで吸光度を記録する。490nmでの吸光度の量によって測定されるホルマザン生成物の量は培養中の生細胞数に正比例する。
【0132】
吸光度の読み取りに関する多数のハイスループットデバイスが存在する。例えばSpectraMax Plus 384 Absorbance Platereader(Molecular Devices)では、190〜1000nmの波長を1nm刻みで検出することができる。このデバイスの超高速サンプル処理能力では、96ウェルマイクロプレートを5秒で読み取ることができ、384ウェルマイクロプレートを16秒で読み取ることができる。
【0133】
またウイルスの複製は良好な感染の徴候としてアッセイすることができ、そのような検出方法をハイスループット様式で使用することができる。例えば、リアルタイムRT−PCR法を使用して、細胞培養上清中のウイルス転写物の存在を検出することができる。ウイルスのRNAをcDNAに逆転写した後、二本鎖DNA結合色素(例えばSYBR(登録商標)Green、Qiagen GmbH, Germany)を使用するPCRによってcDNAを増幅および検出することができる。そして蛍光定量装置を使用してPCR産物の量を直接測定することができる。
【0134】
細胞変性作用を示すウェル由来のウイルスを成熟させ、さらにインビトロ(腫瘍および正常セルラインの再試験)およびインビボモデル(マウスにおいて外植された腫瘍を該ウイルスが死滅させることができるかどうかを試験)で試験する。
【0135】
抗体:
また本発明は、本発明のウイルス、例えば該ウイルスのタンパク質に特異的に結合する抗体に関する。本発明の抗体には、天然に存在する抗体ならびに非天然に存在する抗体、例えば単鎖抗体、キメラ抗体、二機能性抗体およびヒト化抗体、ならびにその抗原結合フラグメントが含まれる。このような非天然に存在する抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、組換え生産させることができ、あるいは、例えば、可変重鎖および可変軽鎖からなる組み合わせライブラリーのスクリーニングによって取得することができる(Huse et al., Science 246: 1275-1281, 1989)。例えばキメラ、ヒト化、CDR移植型、単鎖、および二機能性抗体のこれらおよび他の作成方法は当業者に周知である(Winter and Harris, Immunol. Today 14: 243-246, 1993; Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989; Harlow and Lane, Antibodies: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988); Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach, IRL Press 1992; Borrabeck, Antibody Engineering, 2d ed., Oxford University Press 1995)。本発明の抗体には、無傷の分子ならびにそのフラグメント、例えば本発明のポリペプチド中に存在するエピトープ決定基に結合可能なFab、F(ab’)2、およびFvが含まれる。
【0136】
免疫原として抗体産生に使用される本発明のSVVポリペプチドのペプチド部分(すなわち、配列番号2由来の任意のペプチド断片)または本発明の別のウイルスポリペプチドのペプチド部分が非免疫原性である場合、ハプテンを担体分子、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にカップリングさせることによって、あるいは該ヘプチド部分を融合タンパク質として発現させることによって免疫原性にすることができる。種々の他の担体分子および、ハプテンを担体分子にカップリングさせるための方法は当技術分野において周知である(例えばHarlow and Lane, 上記, 1988)。例えばウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類においてポリクローナル抗体を産生させるための方法は当技術分野において周知である(例えばGreen et al.,「ポリクローナル抗血清の製造(Production of Polyclonal Antisera)」, Immunochemical Protocols, Manson, ed., Humana Press 1992, pages 1-5; Coligan et al.,「ウサギ、ラット、マウスおよびハムスターでのポリクローナル抗血清の製造(Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats, Mice and Hamsters)」, Curr. Protocols Immunol. (1992), section 2.4.1を参照のこと)。
【0137】
モノクローナル抗体もまた、当技術分野において周知かつ通常の方法を使用して取得することができる(Kohler and Milstein, Nature 256: 495, 1975; Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.5.1-2.6.7; Harlow and Lane, 上記, 1988)。例えば、ウイルス、ウイルスポリペプチドまたはその断片を用いて免疫化されたマウス由来の脾臓細胞を適切な骨髄腫セルラインに融合させてハイブリドーマ細胞を得ることができる。クローニングされたハイブリドーマセルラインを、例えば標識されたSVVポリペプチドを使用してスクリーニングし、適切な特異性を有するモノクローナル抗体を分泌するクローンを同定することができ、また、望ましい特異性および親和性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離し、該抗体の継続的供給源として利用することができる。同様に、例えば免疫化動物の血清からポリクローナル抗体を単離することができる。そのような抗体は、本発明の方法の実施に有用であることに加えて、例えば標準化キットの製造にも有用である。例えば単鎖抗体を発現する組換えファージもまた、標準化キットの製造に使用することができる抗体を提供する。例えば、種々の十分に確立された技術、例えばタンパク質Aセファロースゲルを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーによってハイブリドーマ培養からモノクローナル抗体を単離し、精製することができる(Barnes et al., Meth. Mol. Biol. 10: 79-104, Humana Press 1992); Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3を参照のこと)。
【0138】
タンパク質分解によって特定の抗体を加水分解するか、あるいはフラグメントをエンコードするDNAを発現させることによって抗体の抗原結合フラグメントを製造することができる。慣用の方法によって全抗体をペプシンまたはパパイン消化することによって抗体フラグメントを得ることができる。例えば、抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを提供することによって抗体フラグメントを製造することができる。チオール還元剤および、適宜、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に関する保護基を使用して、本フラグメントをさらに切断して、3.5S Fab’一価フラグメントを得ることができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断により、2個の一価Fab’フラグメントおよびFcフラグメントを直接製造する(例えばGoldenberg, 米国特許第4,036,945号および第4,331,647号; Nisonhoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89: 230. 1960; Porter, Biochem. J. 73: 119, 1959; Edelman et al., Meth. Enzymol., 1: 422 (Academic Press 1967); Coligan et al., 上記, 1992, sections 2.8.1-2.8.10 and 2.10.1-2.10.4を参照のこと)。
抗体の抗原結合フラグメントの別の例は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをエンコードするポリヌクレオチドを構築することによって取得することができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞から取得されるRNAによってエンコードされる可変領域を合成することによって製造することができる(例えばLarrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106, 1991)。
【0139】
本発明の抗体は、例えば免疫検定での使用に適している。この場合、本抗体は液相中で、あるいは固相担体に結合させて利用することができる。さらに、これらの免疫検定における抗体は種々の方法で検出可能に標識することができる。本発明の抗体を利用することができる免疫検定のタイプの例は、直接または間接形式の競合的および非競合的免疫検定である。そのような免疫検定の例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチ(免疫測定)アッセイである。本発明の抗体を使用する抗原の検出は、フォワード、リバース、または同時様式で実行される免疫検定、例えば生理学的サンプルに関する免疫組織化学的アッセイを利用して行うことができる。当業者は、過度の実験をすることなく、他の免疫検定形式を認識するか、あるいは容易に判別することができる。
【0140】
通常の当業者に既知の多数の種々の標識および抗体標識法が存在する。本発明で使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位元素、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物、リン光化合物、および生物発光化合物が含まれる。通常の当業者は、通常の実験法を使用して、抗体、または別法では抗原への結合に適切な他の標識を認識するか、あるいはそのような標識を見定めることができる。
【0141】
上記方法および組成物には、記載される本発明の範囲および思想から逸脱することなく、種々の変更を施すことができる。したがって、上記説明中に含まれ、添付の図面に示され、あるいは特許請求の範囲で規定されるすべての対象は例示的であるとみなされ、限定の意味では解釈されないものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0142】
以下に記載される実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、本発明を限定する目的で含まれるものではない。
【実施例1】
【0143】
ウイルスの増幅および精製
PER.C6細胞におけるSVVの培養:SVVを1回プラーク精製し、十分に単離されたプラークをつつき、PER.C6細胞中で増幅する(Fallaux et al., 1998)。3サイクルの凍結および解凍によってSVV感染PER.C6細胞由来の粗製のウイルスライセート(CVL)を作成し、PER.C6細胞の感染に使用する。PER.C6細胞を50x150cm2のT.C.フラスコ中で培養する。培養には、10%ウシ胎児血清(Biowhitaker, Walkersvile, MD, USA)および10mM塩化マグネシウム(Sigma, St Louis, MO, USA)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen, Carlsbad, CA, USA))を使用する。感染30時間後に完全なCPEが認められた時点で感染細胞を回収し、4℃で1500rpmで10分間の遠心分離によって収集する。細胞ペレットを細胞培養上清(30ml)中に再懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付する。得られたCVLを4℃で1500rpmで10分間の遠心分離によって浄化する。2ラウンドのCsCl勾配によってウイルスを精製する:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルスの濃度を分光光度法で測定する。この場合、1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba D.G., and Palmenberg, A.C. 1999. カルジオウイルス(ピコルナウイルス科)(Cardioviruses(Picornaviridae)). In: Encyclopedia of Virology, Second edition, R.G. Webster and A Granoff Eds)。また精製ウイルスの力価を、PER.C6細胞を使用する標準プラークアッセイによって測定する。PER.C6細胞由来のSVVの収量は200,000粒子/細胞を超え、粒子対PFU比は約100である。他の許容細胞(H446−ATCC# HTB−171)由来のSVVの収量は少なくとも上記と同程度に多く、あるいはより多いであろう。
【実施例2】
【0144】
電子顕微鏡観察
formvar炭素コーティンググリッド上に直接適用法を使用してSVVをマウントし、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡で検査する。ウイルスの典型的な顕微鏡写真を高倍率で撮影する。透過型電子顕微鏡では、包埋ブロックからSVV感染PER.C6細胞の超薄切片を切り出し、得られた切片を透過型電子顕微鏡で検査する。
精製SVV粒子は球状で、直径約27nmであり、格子上、単独で、あるいは小凝集物中で観察される。SVVの典型的な写真を図2に示す。いくつかの場所では、染色剤の浸透を伴う、壊れたウイルス粒子および空のキャプシドも観察される。感染PER.C6細胞の超微細構造の研究では、細胞質に結晶性封入体が認められた。SVVに感染したPER.C6細胞の典型的な写真を図3に示す。ウイルス感染細胞には数個の大きな小胞体(空の小胞)が認められた。
【実施例3】
【0145】
SVVの核酸単離
RNA単離:チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Trizol)(Invitrogen)を使用するフェノール抽出法を使用してSVVゲノムRNAを抽出した。供給元の推奨にしたがって単離を実施した。簡単には、精製SVV250μlを3容量のトリゾールおよびクロロホルム240μlと混合した。RNAを含有する水相をイソプロパノール600μlで沈殿させた。RNAペレットを70%エタノールで2回洗浄し、乾燥し、DEPC処理水に溶解した。抽出されたRNAの量を260nmでの光学濃度測定によって見積もった。一定量のRNAを1.25%変性アガロースゲル(Cambrex Bio Sciences Rockland Inc., Rockland, ME USA)に通して分離し、臭化エチジウム染色によってバンドを可視化し、写真撮影した(図4)。
cDNA合成:RT−PCRによってSVVゲノムのcDNAを合成した。cDNAの合成は、RNA 1μg、AMV逆転写酵素、およびランダムな14量体オリゴヌクレオチドまたはオリゴdTを使用して標準条件下で実施した。cDNAの断片を増幅し、プラスミドにクローニングし、クローンをシークエンシングする。
【実施例4】
【0146】
SVV配列解析:
SVV配列番号1のヌクレオチド配列を解析して、他のウイルスとの進化的関連性を決定した。このORFの翻訳産物(配列番号2)はピコルナウイルス様であり、VP2の中間から3Dポリメラーゼの末端の終止コドンに達し、1890アミノ酸長であった(図5A−5Eおよび7A−7B)。このORFの後に続く3’非翻訳領域(UTR)であるヌクレオチド5671〜5734は64ヌクレオチド(nt)長であり、終止コドンを含み、18残基が提供されるポリ(A)尾部を含まない(図5E)。
【0147】
SVVの3種の部分的ゲノムセグメントについての予備的比較(示していない)では、SVVがCardiovirus(カルジオウイルス)属(Picornaviridae(ピコルナウイルス科)ファミリー)のメンバーに最も密接に関連することが示されていた。したがって、SVV、脳心筋炎ウイルス(EMCV;Encephalomyocarditis virus種、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV;Theilovirus種)、Vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス(VHEV;Theilovirus種)およびラットTMEV様物質(TLV;Theilovirus種)のポリタンパク質配列のアライメントを構築した(図28)。本アライメントから、SVVポリタンパク質プロセシングを、最も近縁のカルジオウイルス属のメンバーのポリタンパク質プロセシングと比較した。図28では、個々のポリペプチド間の切断部分は「/」文字で区切られる。
【0148】
ピコルナウイルスでは、ほとんどのポリタンパク質切断は、ウイルスによってエンコードされる1種またはそれ以上のプロテアーゼによって行われるが、カルジオ−、アフト−、エルボ−およびテシオウイルスにおいて、P1−2Aおよび2B間の切断は、不十分にしか理解されていないシス作動性機構によって行われ、この機構は2A配列そのものに関連し、また配列「NPG/P」が決定的に関与する。この場合、「/」は2Aおよび2Bポリペプチド間の分解を表す(Donnelly et al., 1997, J. Gen. Virol. 78: 13-21)。パレコウイルスの1種であるLjunganウイルスは、典型的なパレコウイルス2Aの上流に存在するこの配列(NPGP 配列番号111)を有し、これは追加の2Aであるか、あるいはP1キャプシド領域のC末端である。全9種の現在認められているピコルナウイルス属では、3Cproはシス作動性自己切断反応以外のすべてを実行する(すなわちエンテロ−およびライノウイルスでは2AはそのN末端で分解し、アフトウイルスおよびエルボウイルスではLはそのC末端で分解する)。組み立て後のキャプシドポリペプチドVP0からVP4およびVP2への切断は、3Cproによってではなく、ウイルスのRNAが関与するかもしれない未知の機構によって行われる。パレコウイルスおよびコブウイルスではVP0の切断は生じない。正常なカルジオウイルスの3Cpro切断部位は、−1位にグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E)を有し、+1位にグリシン(G)、セリン(S)、アデニン(A)またはアスパラギン(N)を有する(表2)。SVVポリタンパク質の切断は、ヒスチジン(H)/セリン(S)であるVP3/VP1部位を除き、このパターンに一致する(表2);しかし、少なくとも1系統のウマ鼻炎Aウイルス(ERAV;Aphthovirus属)においてH/Sはおそらく3Aおよび3BVPg間の切断部位として存在する(Wutz et al., 1996, J. Gen. Virol. 77: 1719-1730)。
【0149】
表2.SVVおよびカルジオウイルスの切断部位
【表2】
【0150】
SVVの初期切断(P1/P2およびP2/P3):これらの初期切断イベントはカルジオ−、アフト−、エルボ−およびテシオウイルスと同様の様式で生じると予測され、配列NPG/Pが関与する新規機構によってP1−2Aが2Bから分離されること、および3Cproによる2BCおよびP3間の従来の切断イベントが関与する(表2)。
P1切断:SVV P1キャプシドコード領域内の切断は、EMCVおよびTMEVとの配列のアライメントによって比較的容易に予測することができた(表2)。
P2切断:2Cタンパク質はRNA合成に関与する。SVVの2Cポリペプチドは、推定ヘリカーゼおよびすべてのピコルナウイルス2Cに存在するNTP結合モチーフGxxGxGKS/T(ドメインA)およびhyhyhyxxD(この場合、hyは任意の疎水性残基である;ドメインB)を含有する(図29)。
P3切断:P3切断部位の予測もまた比較的簡単であった。3Aポリペプチドの機能についてはほとんど知られていない。しかし、すべてのピコルナウイルス3Aタンパク質は推定の膜貫通アルファ−ヘリックスを含有する。SVVおよびカルジオウイルス間でこのタンパク質の一次配列の同一性は低い(図28の位置1612〜1701間を参照のこと)。
【0151】
3B領域によってエンコードされる、ゲノム結合型ポリペプチドVPgは、他のカルジオウイルスと共通のアミノ酸を少数しか共有しないが、3番目の残基はチロシンであり、これはウイルスゲノムの5’末端へのその結合に適合性である(Rothberg et al., 1978)。図28の位置1703〜1724間を参照のこと。
4種のピコルナウイルスの3Cシステインプロテアーゼの三次元構造が解明され、活性部位残基が同定されている(HAV, Allaire et al., 1994, Nature, 369: 72-76; Bergmann et al., 1997, J. Virol., 71: 2436-2448; PV-1, Mosimann et al., 1997, J. Mol. Biol., 273: 1032-1047; HRV-14, Matthews et al., 1994, Cell, 77: 761-771; and HRV-2, Matthews et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96: 11000-11007)。図29において太字のシステインは求核基であり、一方、第一の太字のヒスチジンは一般的塩基であり、グルタミン残基の特異性は主に第二の太字のヒスチジンによって規定される;全3残基はSVV配列(図29)およびすべての他の既知のピコルナウイルスで保存されている(図28;3C配列の比較に関しては、位置1726〜1946間を参照のこと)。
【0152】
3DポリペプチドはRNA依存性RNAポリメラーゼの主要コンポーネントであり、SVVはピコルナ様ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼで保存されるモチーフ、すなわちKDEL/IR(配列番号113)、PSG、YGDD(配列番号114)およびFLKR(配列番号115)を含有する(図3;図28の位置1948〜2410間)。
P1のN末端のミリストイル化:ほとんどのピコルナウイルスでは、P1前駆ポリペプチドはそのN末端グリシン残基(N末端メチオニンが除去されている場合に存在)によってアミド結合を介してミリスチン酸の分子に共有結合している(Chow et al., 1987, Nature, 327: 482-486)。結果的に、P1のN末端を含有する切断産物VP0およびVP4もまたミリストイル化される。このミリストイル化は、グリシンで始まる8アミノ酸シグナルを認識するミリストイルトランスフェラーゼによって行われる。ピコルナウイルスでは、5残基の共通配列モチーフG−x−x−x−T/Sが同定されている(Palmenberg, 1989, ピコルナウイルス感染および検出の分子的側面において(In Molecular Aspects of Picornavirus Infection and Detection), pp. 211-241, Ed. Semler & Ehrenfeld, Washington D.C., Amer. Soc. for Micro.)。パレコウイルス(Human parechovirusおよびLjungan virus)ならびにVP0の成熟切断段階を有さないものは明らかにミリストイル化されないが、これらのウイルスではVP0のN末端をブロックする何らかのタイプの分子が存在すると考えられる。
【0153】
個々のSVVポリペプチドと公共の配列データベースの比較
各SVVポリペプチド(配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20および22)を公共のタンパク質配列データベースと比較した。この比較では、European Bioinformatics Institute(EBI;http://www.ebi.ac.uk/)のFASTAオンラインプログラムを使用した。これらの比較の結果(最大一致)を表3に示す。2C、3Cproおよび3Dpolに沿って、全体として見ると、キャプシドポリペプチド(VP2、VP3およびVP1)はカルジオウイルス属のメンバーと最も密接に関連するが、短い予測の2A配列はLjunganウイルス(Parechovirus属)の配列により近い。SVV 2Aヌクレオチド配列と類似の配列のさらに詳細な比較を図28に示す(また、2A様NPG/P(配列番号111)タンパク質の比較に関しては図70を参照のこと)。
【0154】
表3.Seneca Valleyウイルスの個々の予測ポリペプチドのデータベース一致
【表3】
【0155】
SVVの2BとUreaplasma urealyticum(ウレアプラズマ・ウレアリチカム)の複数バンドの抗原または3AとChlorobium tepidumエンドラーゼ2の一致についての重要性は明らかではないが、これらの関連性はさらに研究する価値があるかもしれない。
SVVポリペプチドと他のピコルナウイルスの系統発生的比較
カルジオウイルスとアライメントすることができるSVVポリペプチド(VP2、VP3、VP1、2C、3Cおよび3D)を各ピコルナウイルス種の代表的なメンバーの同一のタンパク質と比較した(表4)。プログラムBioEdit v5.0.9(Hall, 1999, Nucl. Acids. Symp. Ser., 41: 95-98)およびClustal X v1.83(Thompson et al., 1997, Nucl. Acids Res., 25: 4876-4882)を使用してアライメントを作成し、距離マトリックスおよび無根近隣結合ツリーをSaitouおよびNei(Satiou and Nei, 1987, Mol. Biol. Evol., 4: 406-425)のアルゴリズムにしたがって構築した。ブートストラップリサンプリング(1000疑似反復(pseudo-replicates))によって分岐に関する信頼限界に近づけた。TreeView 1.6.6(Page, 1996)を使用してツリーを描いた(図31〜37)。ツリーを構築するために使用された距離マトリックスでは、複数の置換に関して補正された値を使用したが、図38〜44は実際のアミノ酸同一性パーセントを示す。表4は、これらの比較において使用されたPicornaviridaeファミリーの現在の分類および代表的なウイルス配列を示す。
【0156】
表4.SVVとの比較において使用されるピコルナウイルスの分類学的分類
【表4】
【0157】
個々のキャプシドタンパク質についてのツリー(図31〜33)は、すべてのツリーのポリペプチド由来のデータを組み合わせた場合に作成されるツリー(図34)のすべてを表すものではない。おそらくこれは、キャプシドポリペプチドのアライメントが、特にVP2の場合のようにそれらが完全長でない場合には困難であることに起因する(図31)。しかし、P1、2C、3Cproおよび3Dpolのツリーはすべて調和し、SVVがEMCVおよびTMEVとクラスター形成することを示す。
【0158】
カルジオウイルス属のメンバーであるSeneca Valleyウイルス
明らかにSVVの3Dpolはカルジオウイルスに関連し、この関連性はEMCVおよびTMEVが互いに関連するのとほぼ同程度に密接である(図37;図44)。ピコルナウイルスで比較的保存されていると一般に考えられる他のポリペプチド、2Cおよび3Cでは、同様にSVVはカルジオウイルスに最も密接に関連するが、EMCVおよびTMEVが互いに密接に関連するほど、それらに密接に関連するわけではない(それぞれ図42および図43)。外側キャプシドタンパク質では(全体として見ると)、同様にSVVはカルジオウイルスに最も密接に関連し、2種のアフトウイルス種、Foot-and-mouth disease virus(口蹄疫ウイルス)およびEquine rhinitis A virusとほぼ同一の関連性(〜33%)を有する。SVVは、2Bおよび3Aポリペプチドがカルジオウイルスと非常に異なり、任意の既知のピコルナウイルスと検出可能な関連性を有さない。しかし、これは前例がないわけではない;トリ脳脊髄炎ウイルスは2A、2Bおよび3AがA型肝炎ウイルス(HAV)とはかなり異なる(Marvil et al., 1999, J. Gen.Virol., 80: 653-662)が、HAVとともにHepatovirus属内に仮分類される。
【0159】
EMCVおよびTMEVが標準であるとすると、Seneca Valleyウイルスは明らかに典型的なカルジオウイルスではない。しかし、これらの2ウイルスでさえ差異を有し、この差異は5’UTRにおいて著しい (Pevear et al., 1987, J. Gen. Virol., 61: 1507-1516)。しかし、系統学的にSVVはそのポリタンパク質の大半(P1、2C、3Cproおよび3Dpol領域)においてEMCVおよびTMEVとクラスター形成する。最終的に、ピコルナウイルス科内のSVVの分類学的位置は、国際ウイルス分類委員会(International Committee for the Taxonomy of Viruses)(ICTV)の実行委員会(Executive Committee)(EC)によって決定される。この決定は、Picornaviridae研究グループ(Picornaviridae Study Group)の推奨および立証用の公開されている材料にしたがって行われる。2つの選択肢が存在する:i)SVVをカルジオウイルス属の新規種として含む;あるいはii)SVVを新規属に割り当てる。現段階では、ならびに本発明の目的では、SVVはカルジオウイルス属に含まれる。
[実施例4]
【0160】
SVVキャプシドタンパク質のSDS−PAGEおよびN末端配列解析
精製済みSVVを電気泳動に付する。泳動には、NuPAGEプレキャストビス−トリスポリアクリルアミドミニゲル電気泳動システム(Novex, San Diego, Ca, USA)を使用する。ゲルの半分を銀染色によって可視化し、他の半分を使用して、キャプシドタンパク質のN末端のアミノ酸をシークエンシングするためのサンプルを調製する。タンパク質をメンブレンにトランスファーする前に、ゲルを10mM CAPSバッファー、pH11、に1時間浸し、PVDF膜(Amersham)をメタノール中で湿らせる。タンパク質をPVDF膜にトランスファーする。トランスファー後、タンパク質をアミドブラックで約1分間染色することによって可視化し、目的のバンドをメスで切り出し、空気乾燥する。このタンパク質を、エドマン分解に基づく自動化N末端配列決定に付することができる。この配列決定ではパルスフェーズ(pulsed phase)シーケンサーを使用する。
【0161】
精製SVVの3種の主要構造タンパク質を図45に示す(約36kDa、31kDa、および27kDa)。
【実施例5】
【0162】
ヒト血清サンプル中のSVVに対する中和抗体に関するアッセイ
特定のウイルスベクターに対する既存の抗体は、全身送達による適用、例えば転移性癌の処置に関して該ベクターの使用を制限する可能性がある。その理由は、ベクターが標的組織または器官に形質導入する機会を得る前に、既存の抗体が全身送達されたベクターに結合し、それらを中和する可能性があるからである。したがって望ましいのは、全身送達用に選択されるウイルスベクターに対する中和抗体をヒトが保持しないことを保証することである。ヒト血清サンプルがSVV特異的中和抗体を含有するかどうかを判定するために、ランダムに収集されたヒト血清サンプルを使用して中和アッセイを行う。
組織培養感染価50:実験の1日前に、1x104細胞を含有するPER.C6細胞懸濁液180μlを96ウェル組織培養皿にプレートする。SVVの粗製のウイルスライセート(CVL)をDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)中で10-0〜10-11の対数段階で希釈し、PER.C6細胞を含有するFalcon96ウェル組織培養プレートの3ウェルに各希釈物20μlを移す。このプレートを37℃で5%CO2中でインキュベートし、3日目に細胞変性作用(CPE)についての微視的な証拠を読み取り、組織培養感染価50(TCID50)を算出する。
【0163】
中和アッセイ:まず、すべてのウェルに培地40μlを入れ、次いで非働化血清40μlを第一のウェルに加え、ピペッティングによって混合し、スクリーニング目的で使用される1:4希釈物を作成する。次いで40μlを次のウェルに移し、血清サンプルの2倍希釈を実施する。100TCID50を含有するSVVウイルス40μlを、希釈血清サンプルを含有するウェルに加える。プレートを37℃で1時間インキュベートする。混合物40μlを採取し、PER.C6細胞を含有するプレート(1x104細胞/160μl/ウェル)に移す。このプレートを37℃で3日間インキュベートする。この期間の後、CPEに関して培養を顕微鏡で読み取る。
【0164】
上記のように実施される代表的な中和アッセイでは、米国、欧州および日本からランダムに収集された22種のヒト血清サンプルをSVV特異的中和抗体に関して検査した。血清サンプルを連続希釈し、100TCID50を含有する固定量のSVVと混合した。次いで血清−ウイルス混合物を使用してPER.C6細胞を感染させ、24時間インキュベートした。CPE形成をブロックすることができる血清の最大希釈の逆数として中和抗体価を決定した。この実験では、血清の希釈物はいずれもCPE形成をブロックしなかった。これはヒト血清サンプルがSVV中和抗体を含有しなかったことを示す。
さらに、ヒト血液とのインキュベーションによってPER.C6のSVV感染が阻害されなかった(実施例6を参照のこと)。これはSVV感染が補体によって、あるいは赤血球凝集によって阻害されなかったことを示す。結果として、SVVは他の腫瘍溶解性ウイルスより長いインビボの循環期間を示す。この点は腫瘍溶解性アデノウイルスの使用に伴う重大な問題である。
【実施例6】
【0165】
SVVとヒト赤血球の結合および赤血球凝集
種々のウイルス血清型は、種々の動物種の血液から単離された赤血球のインビトロ赤血球凝集を生じさせることが示されている。赤血球凝集または赤血球への結合はインビボで毒性を生じさせる可能性があり、またインビボでのウイルスベクターの体内分布および効果に影響する可能性がある。したがって、転移性癌を処置する全身投与に関して選択されるウイルスベクターの赤血球凝集特性を分析することが望ましい。
赤血球凝集アッセイ:SVVがヒト赤血球の凝集を生じさせるかどうかを判定するために、U底96ウェルプレートで赤血球凝集アッセイを行う。精製SVVをPBS(リン酸緩衝食塩水)25μl中で2通りに連続希釈し、等しい容量の1%赤血球懸濁液を各ウェルに加える。ヘパリンを抗凝固剤として用いて、赤血球の単離に使用される血液サンプルを健康な個体から取得する。冷PBS中で血液を3回洗浄することによって赤血球を調製し、血漿および白血球を除去する。最終洗浄後、赤血球をPBSに懸濁し、1%(V/V)細胞懸濁液を作成する。ウイルスおよび赤血球を穏やかに混合し、プレートを室温で1時間インキュベートし、赤血球凝集パターンに関してモニターする。
全血不活性化アッセイ:血液成分によってSVVが直接不活性化されるのを排除するために、一定量のウイルスをA、B、ABおよびO血液型に属するヘパリン添加ヒト血液またはPBSと室温で30分間または1時間インキュベートした後、血漿を分離し、その後PER.C6細胞を感染させ、力価を算出する。
上記のように実施される代表的なアッセイでは、SVVの任意の試験希釈物で種々の血液型(A、B、ABおよびO)のヒト赤血球の赤血球凝集が全く観察されなかった。SVVを血液ヒトサンプルと混合し、30分間および1時間インキュベートした場合にウイルス力価の軽微な増加が認められる。これはウイルスが血液成分によって不活性化されないが、試験条件下でより感染性になることを示す。
【実施例7】
【0166】
インビボクリアランス
血液循環期間:血液循環期間および腫瘍中のウイルスの量を測定するために、H446腫瘍を保持するヌードマウスをSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射によって行った。注射後0、1、3、6、24、48、72時間および7日(189時間)の時点でマウスから採血し、収集直後に血液から血漿を分離し、感染培地中で希釈し、PER.C6細胞の感染に使用した。注射を受けたマウスを注射後6、24、48、72時間および7日の時点で犠牲にし、腫瘍を収集した。この腫瘍をカットして小切片にし、培地1mlに懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付して、感染細胞からウイルスを放出させた。上清の連続対数希釈物を作成し、PER.C6細胞に対する力価に関してアッセイした。SVV力価をpfu/mlで表した。またこの腫瘍切片をH&E染色および免疫組織化学に付して、腫瘍中のウイルスキャプシドタンパク質を検出した。
マウス体重の7.3%が血液であるという仮定に基づいて血液中のウイルス粒子の循環レベルを測定した。本質的に上記のように実施される代表的なアッセイでは、ウイルス投与後6時間のうちに、SVVの循環レベルはゼロ粒子に減少し、後の時点ではSVVは検出できなかった(図46A)。腫瘍では、SVVは注射後6時間の時点で検出可能であり、その後ウイルスの量は2対数まで安定して増加した(図46B)。このウイルスは、腫瘍中、注射7日後になっても検出可能であった(図46B)。免疫組織化学に付すると、この腫瘍切片では腫瘍細胞中のSVVタンパク質が認められた(図47、上パネル)。H&Eによって染色すると、この腫瘍切片ではいくつかの丸い腫瘍細胞が認められた(図47、下パネル)。
またSVVは、同様の用量の静脈内アデノウイルスと比較して実質的に長期の血液中の存在期間を示す。1回のi.v.投与後、SVVは6時間まで血液中に存在し続ける(図46C;図46Cは図46Dと比較するための図46Aの複製である)が、アデノウイルスは約1時間のうちに血液から排除される(図46D)。
【実施例8】
【0167】
腫瘍細胞選択性
SVVのインビトロ殺細胞活性:ヒト、ウシ、ブタ、およびマウス細胞の感受性を測定するために、種々の供給源から正常および腫瘍細胞を取得し、SVVを感染させた。培地中で、供給元が推奨する条件下で、すべての細胞型を培養した。初代ヒト肝細胞は、In Vitro Technologies(Baltimore, MD)から購入し、Hepatocye Culture Media(HCMTM、BioWhittaker/Clonetics Inc., San Diego, CA)中で培養してよい。
インビトロ細胞変性アッセイ:どの型の細胞がSVV感染に感受性であるかを判定するために、単層の増殖性正常細胞および腫瘍細胞に精製SVVの連続希釈物を感染させた。この細胞をCPEに関してモニターし、非感染細胞と比較した。感染3日後、MTS細胞障害性アッセイを実施し、細胞当たりの粒子中の50%致死量(LD50)値を算出する。以下の表5および6を参照のこと。
【0168】
表5.100未満のEC50値を有するセルライン
【表5】
【0169】
表6.1000を超えるEC50値を有するセルライン
【表6】
【0170】
製造元の指示書にしたがってMTSアッセイを実施した(CellTiter 96(登録商標)AQueous Assay、Promega, Madison, WI)。CellTiter 96(登録商標)AQueous Assayでは、好ましくは、テトラゾリウム化合物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩;MTS)および電子カップリング試薬、フェナジンメトサルフェート(PMS)を使用する。本研究で評価された接触阻害型正常ヒト細胞には、以下に挙げるものが含まれる:HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、HAEC(ヒト大動脈内皮細胞、Clonetics/BioWhittaker #CC−2535)、Wi38(正常ヒト胚肺線維芽細胞、ATCC #CCL−75)、IMR90(ヒト正常肺線維芽細胞、ATCC CCL−186)、MRC−5(ヒト正常肺線維芽細胞、ATCC,#CCL−171)およびHRCE(ヒト腎皮質上皮細胞、Clonetics/BioWhittaker #CC−2554)。
【0171】
SVVは任意の上記接触阻害型正常細胞においてCPEを示さない。以下のヒト腫瘍セルラインにおいてウイルス誘発性CPEは観察されなかった:Hep3B(ATCC #HB−8064)、HepG2(ヒト肝細胞癌、ATCC #HB−8065)、LNCaP(ヒト前立腺癌腫、ATCC #CRL−10995)、PC3M−2AC6、SW620(ヒト結腸直腸腺癌、ATCC #CCL−227)、SW839(ヒト腎臓腺癌、ATCC #HTB−49)、5637(ヒト膀胱癌腫、ATCC #HTB−9)、DMS−114(小細胞肺癌、ATCC #CRL−2066)、DMS153(ヒト小細胞肺癌、ATCC #CRL−2064)、A549(ヒト肺癌腫、ATCC #CCL−185)、HeLa S3(ヒト(子宮)頚部腺癌、ATCC #CCL−2.2)、NCI−H460(ヒト大細胞肺癌、ATCC #HTB−177)、KK(グリア芽細胞腫)、およびU−118MG(ヒトグリア芽細胞腫、ATCC #HTB−15)。注−表6中の1000を超えるEC50値を有するセルラインはSVVの複製および/またはビリオン生産を許容しない可能性が高い;しかし、SVVはこれらの細胞に結合および侵入することができるが、細胞の内部でSVVの複製が生じ得ないためにCPEが観察されないか、あるいは複製は実際に生じるが、なんらかの他の侵入後のブロック段階が存在するためにCPEが観察されない(すなわち、複製されたSVVゲノムがビリオン内にパッケージされない)可能性が残る。しかし、これらのセルラインにおいてCPEが存在しないことを考慮すると、これらのセルラインおよびその潜在的な腫瘍型は、どの細胞および腫瘍型がSVVの複製に許容的または非許容的であるかを試験する良好な候補である。野生型SVVは腫瘍特異的であり、神経内分泌腫瘍、例えば小細胞肺癌および神経芽細胞腫を標的にすることが示されているが、SVVがその神経内分泌腫瘍型において許容的ではないタイプの病因を有する個別の患者が存在する可能性がある。したがって本発明は、腫瘍が野生型SVVに対して非許容的である場合の個別の患者から単離される腫瘍細胞型を死滅させることができるSVV誘導体の作成を実際に考慮し、これらの個体から単離される腫瘍型には、例えば、グリア芽細胞腫、リンパ腫、小細胞肺癌、大細胞肺癌、黒色腫、前立腺癌、肝癌、結腸癌、腎臓癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌および扁平細胞肺癌が含まれ得る。
【0172】
初代ヒト肝細胞(In Vitro Technologies)に対するSVV媒介性の細胞障害性をLDH放出アッセイによって測定した(CytoTox(登録商標)96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assay、Promega, # G1780)。コラーゲンでコーティングされた12ウェルプレートにプレートされた初代ヒト肝細胞に、1、10および100および1000粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。3時間の感染後、感染培地を増殖培地2mlに取り替えて、CO2インキュベーターで3日間インキュベートした。細胞結合型の乳酸脱水素酵素(LDH)および培養上清中のLDHを別々に測定した。最大の細胞性LDH+上清LDHに対する上清中のLDH単位の割合として細胞障害性パーセントを決定する。
%細胞障害性=(培養上清中のLDH単位 X 100)/(上清および細胞ライセート中のLDH単位の合計)
図48に示されるデータは、すべての試験感染多重度でSVV媒介性の肝毒性が存在しないことを示す。
【実施例9】
【0173】
ウイルス生産のアッセイ
SVVの複製能を評価するために、複数の選択された接触阻害型正常細胞および活発に分裂する腫瘍細胞に1ウイルス粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。72時間後、細胞および培地を3回の凍結−解凍サイクルに付し、遠心分離して上清を収集した。上清の連続対数希釈物を作成し、PER.C6細胞に対する力価に関してアッセイした。各セルラインに関して、SVVの複製効率をpfu/mlで表した(図49)。
【実施例10】
【0174】
毒性
最大許容投与量(MTD)は、SVVでの処置後に動物(例えばマウス)が用量規定毒性(DLT)を示す用量の直前の用量として規定する。DLTは、研究の全期間中でSVV投与に起因して動物が体重減、症状、および死亡を示す用量として規定する。SVVに対する中和抗体を、ベースライン、15日目、および21日目に評価した。前記のように中和アッセイを行った。
増加用量(1x108〜1x1014vp/kg)のSVVを、Harlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN, USA)から購入した免疫欠損ヌードおよび帝王切開由来1(CD−1)非近交系免疫適格性マウスの両者に静脈内投与し、10マウス/用量レベルでMTDを測定した。このウイルスはすべての試験用量レベルで十分に許容され、臨床症状を全く示さず、体重の喪失はなかった(図50)。15および21日目にマウスから採血し、中和アッセイにおいてSVV特異的中和抗体の存在に関して血清をモニターした。SVVを注射されたCD1マウスは中和抗体を産生し、その力価は1/1024〜1/4096超の範囲である。
免疫適格性マウス系統(A/J)に対して別の毒性研究を行った。SVVはN1E−115細胞において殺細胞活性および複製を示すことが実証されている(表1を参照のこと)。マウスセルラインN1E−115(神経芽細胞腫セルライン、すなわち神経内分泌癌)はA/Jマウス系統に由来する。ゆえに、A/JマウスにN1E−115細胞を皮下移植して腫瘍を形成させた同系マウスモデルを確立し、そしてこのマウスをSVVで処置して、その効果および毒性を研究した。
A/Jの研究では、マウスにSVVをi.v.注射して、A/JマウスがSVVの全身投与を許容できるかどうかを判定した。毒性の徴候を調査するために血液の血液学的結果を取得した。また血清化学的結果を取得することができる。この研究デザインを以下の表7に示す:
【0175】
表7:A/J研究デザイン
【表7】
【0176】
A/Jマウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbor, Maine)から取得された8〜10週齡のメスであった。単離されたビリオンを使用時まで−80℃で保存することによってSVVを調製した。SVVを氷上で解凍し、HBSS(ハンクス平衡塩類溶液)で希釈することによって新たに調製した。SVVを、群2では107粒子/mL、群3では1010粒子/mL、群4では1013粒子/mLの濃度に希釈した。群1ではビヒクルコントロールとしてHBSSを使用した。すべての投与用溶液を投与時までウェットアイス上で維持した。
SVVを動物に投与した。この投与は、尾静脈を介する静脈内注射により、10mL/体重kgの投与容量で行った。投与日に動物の体重を測定し、体重に基づいて投与容量を調節した(すなわち0.0200kgマウスは投与用溶液0.200mLを受ける)。罹患率および死亡率に関してマウスを1日2回モニターした。毎週2回マウスの体重を測定した。瀕死の動物および任意の(肉体的または行動的に) 異常な症状を示す動物に関する情報を即時に記録する。
死後観察および測定では、標準血液学および血清化学(AST、ALT、BUN、CK、LDH)のために、最終的に犠牲を払ってすべての生存動物から血液を収集することが必要である。犠牲を払って以下に挙げる器官を収集すべきであろう:脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、および生殖腺。各器官サンプルの半分をドライアイス上でスナップフリーズし、他の半分をホルマリン中に入れる。
SVV注射の2週間後に初期の血液の血液学的結果(CBC、ディファレンシャル)を得た。その結果を以下の表8にまとめる。各試験群(表7を参照のこと)から5マウスを試験した:
【0177】
表8:A/J毒性結果−血液の血液学
【表8】
【0178】
これらの結果は、未処理マウスから得られた血液の血液学プロファイルと比べて、低、中および高用量のSVVで処置されたマウスから得られた血液の血液学プロファイルには異常性が存在しないことを示す。本研究から、SVVの全身投与後に毒性の測定可能な徴候は存在しないと結論することができ、これはi.v.注射を受けたA/JマウスによってSVVが許容されることを示す。
【実施例11】
【0179】
効果
Harlan Sprague Dawley(Indianapolis, IN)から購入した6〜7週齢の胸腺欠損雌性ヌードマウス(nu/nu)を使用して、効果の研究を行った。手動拘束を使用して、マウスの右側腹部内に5x106のH446細胞を皮下注射した。腫瘍サイズを定期的に測定し、式:π/6 x W x L2、式中L=腫瘍の長さおよびW=腫瘍の幅、を使用してその容量を算出した。腫瘍が約100〜150mm3に達した時点で、マウス(n=10)をランダムに群に分けた。マウスに増加用量のSVVを注射した。この注射は尾静脈注射により10ml/kgの投与容量で行った。コントロール群のマウスには等容量のHBSSを注射した。用量増加は1x107から1x1013粒子/体重kgまで進める。SVV投与後に毎週2回腫瘍容量を測定することによって抗腫瘍効果を決定した。完全寛解は異種移植片の完全消失と規定し;部分的寛解は50%に等しいか、あるいはそれ以上の腫瘍容量の退行と規定し;ならびに無応答(無寛解)はコントロール群と同様の腫瘍の継続的増殖と規定した。
【0180】
HBSSで処置されたマウス由来の腫瘍は急速に増殖し、研究20日までに腫瘍容量は2000mm3以上に達した(図51;白ダイアモンド形のラインを参照のこと)。対照的に、SVVの1回の全身性注射を受けたマウスは、すべての試験用量(最低用量を除く)で研究20日までに腫瘍を含有しなくなった。最低用量群では、研究31日までに、8マウスは腫瘍を含有しなくなり、1マウスは非常に大きい腫瘍を有し、他のマウスは小さい触知可能の腫瘍(25mm3)を有した。大きいサイズの腫瘍に対するSVVの抗腫瘍活性を評価するために、研究20日目に、>2000mm3の腫瘍を保持するHBSS群由来の5マウスに1x1011vp/kgの単一用量を全身性注射した。追跡期間(SVV注射後の11日間)中では、腫瘍容量の劇的な退行が認められた(図51)。
図52は、SVVで「未処置」の(すなわちHBSSで処置された)マウスまたはSVVで「処置された」マウスの写真を示す。図に示されるように、未処置マウスは非常に大きい腫瘍を有し、処置マウスは腫瘍の観察可能な徴候を示さなかった。さらに、犠牲にされなかったSVV処置マウスでは、200日間の研究期間中に腫瘍の再増殖は観察されなかった。
【0181】
特定の腫瘍セルラインに関するインビトロでのSVVの効果データを表1および5に示す。このデータは、SVVが特定の腫瘍細胞型に特異的に感染し、正常な成熟細胞に感染しないことを示し、この点は任意の他の既知の腫瘍溶解性ウイルスと比べて重大な利点である。SVVは、化学療法による処置より1,000倍良好な殺細胞特異性を有することが示されている(SVVの殺細胞特異性の値は10,000を超えることが示されているが、化学療法の殺細胞特異性の値は10付近である)。
SVVの特異的細胞障害活性を、H446ヒトSCLC細胞において実証した。増加濃度のSVVと2日間のインキュベーション後、細胞生存度を測定した。この結果を図53に示す。図53は、SVVをH446SCLC腫瘍細胞(上グラフ)または正常ヒトH460細胞(下グラフ)とインキュベートした後の細胞生存性を示す。SVVは約10-3粒子/細胞のEC50で腫瘍細胞を特異的に死滅させた。対照的に、正常なヒト細胞はいずれのSVV濃度でも死滅しなかった。さらに、表1〜3にまとめるように、SVVは多数の他の腫瘍セルライン、例えばSCLC−多剤耐性腫瘍細胞に対しても細胞障害性であった。他の腫瘍セルラインに関するSVVの細胞障害性のEC50値は、10-3〜20,000粒子/細胞を超える範囲であった。種々の他の非神経系の腫瘍および正常なヒト組織に対してSVVは非細胞障害性であった。さらに、1000粒子/細胞までのLDH放出によって測定したところ、SVVは初代ヒト肝細胞に対して細胞障害性ではなかった(図48を参照のこと)。
【実施例12】
【0182】
げっ歯類における体内分布および薬物動態学的研究
正常なマウスおよびH446 SCLC腫瘍を保持する免疫無防備の胸腺欠損ヌードマウスにおいてSVVの薬物動態学的および体内分布研究を実施する。本研究では、正常および免疫無防備の腫瘍保持マウスの両者に単一静脈内投与を行った後のSVVの体内分布、排除および持続性を評価する。各マウス群に、コントロールバッファーまたは3種のうち1種のSVV用量(108、1010、または1012vp/kg)の単一i.v.投与を施し、臨床徴候に関してモニターする。投与後1、6、24および48時間の時点、および投与後1、2、4、および12週間の時点で5マウスの群から血液サンプルを取得する。用量レベルには、既知の低い有効用量および2種のより高い用量レベルが含まれる。これはウイルス排除の線形性を決定するためである。投与後24時間、および2、4および12週間の時点でマウス群を犠牲にする。選択される組織、例えば肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓、リンパ節、骨髄、脳および脊髄組織を無菌的に収集し、有効なRT−PCRアッセイを使用してSVV RNAの存在に関して試験する。
投与後24時間の時点、および2、4および12週間の時点で犠牲を払って尿および糞便のサンプルを取得し、感染性ウイルスの存在に関して検査する。本実施例の実験デザインを以下の表9に示す:
【0183】
表9:CD−1マウスおよびSCLC腫瘍を保持する胸腺欠損ヌードマウスにおけるSVVの体内分布
【表9】
【0184】
また、正常および、H446 SCLC腫瘍を保持する免疫無防備の胸腺欠損ヌードマウスの両者において急性i.v.毒物学的研究を実施した。正常およびSCLC腫瘍保持マウスでの予備的i.v.研究では、1014vp/kgまでの用量でSVVの安全性が示される。有害な臨床徴候は観察されず、1014vp/kgの単一i.v.投与後2週間まで体重の喪失はなかった。
【実施例13】
【0185】
正常な成体および妊娠中のマウスにおけるウイルス伝播(transmission)の研究
本実施例の目的は、非感染の正常マウスと高濃度のSVVを注射したマウスを共存させた後に、SVVが伝播性であるかどうかを決定することである。SVVは正常な非腫瘍保持マウスでは複製しないため、腫瘍保持マウスに高濃度のSVVを注射し、その後正常な健康な動物に曝露して、臨床シナリオをより良好にシミュレートすることもできる。第二の目的は、感染したメスから非感染の妊娠中のDAM、およびさらにその発生中の胎児へのSVVの伝播能力を評価することである。
3群の5未処置雄性および雌性CD−1マウスを、108、1010または1012vp/kgで感染させた同じ性別の単一のマウスに曝露し、血液サンプリングによってSVVの存在に関してモニターする。
同様に、SVVに曝露されたメスをいくつかの時期の妊娠中のメスと混合し、感染したメスから非感染の妊娠中のメス、およびさらにその発生中の胎児にウイルスが伝播する能力を決定する。
【実施例14】
【0186】
非ヒト霊長類での研究
また非ヒト霊長類においてSVVの安全性、毒性およびトキシコキネティクスを決定する。用量範囲−検出相では、個々のサルに108vp/kgでSVVの単一i.v.投与を施し、感染または毒性の臨床徴候に関して詳細にモニターする。この用量が十分に許容されれば、1012vp/kgの用量が達成されるまで追加の動物をより多量のi.v.用量で処置する。その後、主研究は3雄性および雌性サルの群からなり、ビヒクルを単独で、あるいは3種のうち1種の用量のSVVを各サルに毎週1回で6週間投与し、毒性の徴候をモニターする。さらに2サル/性別に、ビヒクルを単独で、ならびに高用量レベルのSVVを6週間投与し、犠牲にする前に追加の4週間の回復期間を提供する。
1週および6週中の投与後に、血液サンプルを取得する。初回投与前および犠牲にする前に、臨床病理学および血液学上の血液サンプルを取得する。SVVの中和抗体の存在を評価するために各投与後には追加の血液サンプルを取得する。
生存するサルを安楽死させ、全肉眼剖検に付し、主研究および回復期間のサルから全組織リストを収集する。コントロールおよび高用量群由来の組織を組織病理学的に評価する。1および6週の時点の投与後に尿および糞便のサンプルを収集し、感染性SVVの存在に関して評価する。本実施例の全体のデザインを以下の表10に示す。
【0187】
表10:霊長類におけるSVVの複数用量の毒性学的研究
【表10】
【実施例15】
【0188】
完全長および機能的ゲノムSVVプラスミドの構築
現在に至るまで、SVVの約1.5〜2Kbの5’ゲノム配列だけが未だ配列決定されていない。これは5’UTR、1A(VP4)および1B(VP2)の部分をカバーするヌクレオチド領域を表す。ATCC寄託番号PTA−5343の単離されたSVVから追加のSVV cDNAを調製する。SVV粒子を許容セルライン、例えばPER.C6内に感染させ、ウイルスを単離する。その後ウイルス粒子からウイルスのRNAを回収して、そのRNAからcDNAコピーを作成する。個々のcDNAクローンをシークエンシングして、選択されたcDNAクローンを、SVV配列の5’末端の上流にT7プロモーターを有するプラスミド中の1完全長クローン内に組み込む。T7ポリメラーゼおよびインビトロ転写系を利用することによってこのプラスミド由来の完全長SVVを逆転写し、完全長RNAを作成する(図55を参照のこと)。そして完全長RNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、完全長クローンの感染力を試験する(図55を参照のこと)。
方法論は以下の通りである。
RNA単離:チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Invitrogen)を使用するフェノール抽出法を使用してSVVゲノムRNAを抽出する。簡単には、精製SVV250μlを3容量のトリゾールおよびクロロホルム240μlと混合する。RNAを含有する水相をイソプロパノール600μlで沈殿させる。RNAペレットを70%エタノールで2回洗浄し、乾燥し、DEPC処理水に溶解する。抽出されたRNAの量を260nmでの光学濃度測定によって見積もる。一定量のRNAを1.25%変性アガロースゲル(Cambrex Bio Sciences Rockland Inc., Rockland, ME USA)に通して分離し、臭化エチジウム染色によってバンドを可視化し、写真撮影する。
【0189】
cDNA合成:RT−PCRによってSVVゲノムのcDNAを合成する。cDNAの合成は、RNA 1μg、AMV逆転写酵素、およびランダムな14量体オリゴヌクレオチドまたはオリゴdTを使用して標準条件下で実施する。cDNAの断片を増幅し、プラスミドにクローニングし、クローンをシークエンシングする。ゲノムの5’最終末端をシークエンシングするためにはより広範囲の測定が必要である可能性がある。
完全長ゲノムのクローニング:配列が既知になれば、通常の分子生物学によってT7ポリメラーゼプロモーターの下流にSVVの完全長クローンを構築することが可能である(例えば、図54を参照のこと)。
【0190】
SVVの回収:SVVの完全長ゲノムを有するプラスミドを標準プロトコルにしたがって逆転写する。ウイルスのRNA(100ng)を、ネイティブのSVVに許容的であることが既知のセルライン、H446細胞のトランスフェクトに使用するが、ウイルスのRNAのトランスフェクションに関して最も効率的なセルラインは、種々のセルラインのうちから実験によって決定することができる。
【実施例16】
【0191】
RGD表示SVVライブラリーの構築
ランダムなペプチド配列をエンコードするオリゴヌクレオチドを用いてランダムに作成されるSVVキャプシド変異体の構築に最適な挿入位置を見出すために、単純なモデル系(RGD)を使用する。RGD(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)は、インテグリンに結合する短いペプチドリガンドである。良好なRGD−SVV誘導体は以下に挙げる特徴を含むべきであろう:(1)遺伝的挿入はSVV特有の望ましい任意の特性を変化させないべきであろう;ならびに(2)良好なRGD誘導体ウイルスはVb5インテグリン含有細胞に対する親和性を有するべきであろう。
連続キャプシド領域のみを含有するSVVプラスミドをランダムな位置で1回切断し、RGDと称される短いモデルペプチド配列を各位置で挿入する。このプラスミドライブラリーから、図56および57に記載される一般的技術を利用してウイルスSVV−RGDライブラリーを構築する。
【0192】
cRGDオリゴヌクレオチドをキャプシド領域内にランダムに挿入する。簡単には、SVVの連続2.1Kbキャプシド領域のみをエンコードするプラスミドを構築する(図56の「pSVVキャプシド」を参照のこと)。以下に記載のようにCviJIまたはエンドヌクレアーゼV法を利用してこのプラスミドを部分的に消化することによって、pSVVキャプシドに単一のランダムな切断を施す(図57を参照のこと)。単一切断プラスミドを単離した後、RGDオリゴヌクレオチドを挿入してpSVVキャプシド−RGDライブラリーを作成する。
制限酵素CviJIは他のランダムな切断方法、例えば超音波処理または剪断と比べていくつかの利点を有する。第一に、CviJIは平滑末端化カッターであるため、修復は必要ない。第二に、CviJIはランダムな位置で切断し、したがってホットスポットが生じないことが実証されている。この手順は単純かつ高速でもある。簡単には、切断されたDNAの大多数が直線化されたプラスミド、すなわち単一切断物であるようになるまで、CviJIの濃度および/または消化時間を次第に低下させる。これは図57に表されるように標準アガロースゲル電気泳動によって観察することができる。そしてバンドを単離し、精製し、RGDオリゴとライゲートする。
【0193】
DNAのランダムな切断に利用してよい別の方法はエンドヌクレアーゼV法である(Kiyazaki, K., Nucleic Acids Res., 2002, 30(24): e139)。エンドヌクレアーゼVは、ウラシル含有DNAにウラシル部位の3’側の2番目または3番目のリン酸ジエステル結合でニックを入れる。またこの方法はDNAをランダムに切断すると予測され、その頻度は、ポリメラーゼ連鎖反応中のdUTPの濃度を調節することよって単純に決定される。その切断部位は常に(ウラシルによって置換される)チミジン部位の下流の2または3塩基であるが、この方法では、他の方法論よりずっと少ないホットおよびコールドスポットしか生じないと予測される。
ランダムに直線化されたプラスミドをcRGDオリゴヌクレオチドとライゲートする。そして得られたpSVVキャプシドライブラリーを増幅して、ランダムに挿入されたcRGD領域を有するキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチド集団を精製することができる(図57および58を参照のこと)。次いでこのキャプシドポリヌクレオチド集団を、キャプシド領域を除く完全長SVV配列を含有するベクターにサブクローニングして、完全長SVV配列のライブラリーを作成する(この場合、cRGD配列はランダムに挿入されるため、このライブラリーはキャプシド領域中に配列の多様性を顕在化する)。次いでこのライブラリーをRNAに逆転写し、このRNAを許容セルライン内にトランスフェクトして、種々のキャプシドを有するSVV粒子集団を作成する(図59を参照のこと)。このRGD−SVV集団のウイルス粒子を回収した後(「RGD−SVVライブラリー」)、RGD配列の挿入および挿入部位の多様性を確認するためのシークエンシング用にいくつかのウイルス(すなわち10またはそれ以上)をランダムに選ぶ。
RGD表示SVVライブラリーのインビトロ選択。SVV−RGDライブラリーをスクリーニングして、どの挿入部位がSVVの拡大された親和性を可能にしたかを決定する。RGD−SVVライブラリーをαVβ5インテグリン発現性NSCLC系統(非小細胞肺癌セルライン、すなわちαVβ5発現性A549)に感染させる。機能的かつ適正に表示されたRGDモチーフを含有するSVV誘導体のみがこれらの細胞に感染し、複製することができる。
【0194】
液状物の取扱い、20セルラインの同時インキュベーションおよび384ウェルプレート中での測定が可能なハイスループット自動化システム(TECAN)によってインビトロスクリーニングを行う(図62および図63を参照のこと)。感染30時間後に完全なCPEが認められた時点で細胞を回収し、次いで細胞を4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって収集する。そしてこの細胞ペレットを細胞培養上清中に再懸濁し、3サイクルの凍結および解凍に付する。得られた懸濁物を4℃で1500rpmで10分間遠心分離することによって浄化する。2ラウンドのCsCl勾配によってウイルスを精製する:1段階勾配(CsCl密度1.24g/mlおよび1.4g/ml)、その後の1連続勾配遠心分離(CsCl密度1.33g/ml)。精製ウイルス濃度を分光光度法によって測定する。この場合1A260=9.5x1012粒子を仮定する(Scraba, D.G. and Palmenberg, A.C., 1999)。αVβ5細胞から十分な量のウイルスが回収されるまで、この工程を複数回繰り返してよい。
回収されたRGD−SVV誘導体の分析。個々のRGD表示SVV誘導体の小プール(約10〜50の種々の誘導体)を分析する。このウイルス混合物を希釈し、単一ウイルス粒子を分析用にエクスパンドする。各誘導体を試験して、αVβ5発現性細胞に効率的かつ特異的に感染する能力を取得しているかどうかを判定する。そしてこの特性を有する各誘導体のキャプシド領域をシークエンシングして、RGD挿入の部位を決定する。回収されたcRGD表示SVV誘導体は以下に挙げる特性を有するべきであろう:(1)ウイルスの元の特性が無傷のままである;ならびに(2)誘導体が、RGDに結合する高レベルのインテグリンを発現する細胞に感染する能力を取得している。このアプローチは、RGD挿入を用いて親和性の拡大を可能にする1個またはそれ以上の部位を同定し、これらの部位内にランダムなオリゴヌクレオチドを挿入して、改変された親和性を有するSVV誘導体を作成することができるようにすることを目的にする。
【0195】
配列決定されたcRGD−SVV誘導体に番号を付し、インテグリンに対するその結合能力によって分類する。結合活性を試験するために、組換え型β2インテグリンをPBS中で96ウェルマイクロタイタープレート上に固定し、PBSで2回洗浄し、PBS中の3%BSAでブロックした後、唯一のRGD表示ウイルスとインキュベートする。ペプチド挿入を伴わないネイティブのウイルスをネガティブコントロールとして使用する。1〜5時間のインキュベーション後、ウェルをPBSで少なくとも3回洗浄する。次いで、プレートに結合しているウイルスを抗SVV抗体によって検出する。RGDペプチドまたは、インテグリンを標的にする抗体は、RGD−SVV誘導体とインテグリン結合型プレートの結合と競合することができるであろう。
インテグリンに対して最強の結合を有するcRGD−SVV誘導体(20)を分析して、cRGDオリゴヌクレオチド挿入の「成功している」位置(群)を決定する。この挿入部位によって、SVVの親和性に関する洞察が提供される。この挿入部位および他の既知の構造の分析に基づくと、ランダムなペプチドライブラリーを配置する理想的な位置を決定することができる(この方法は、SVV誘導体の作成に関する代替法であり、この場合、オリゴヌクレオチド(既知の配列またはランダムな配列)をキャプシド中のランダムな位置に挿入する)。ランダムな配列オリゴヌクレオチドを用いて作成されるSVV誘導体は、2つの追加および新規の方法論を除き、RGD−SVVライブラリーに関して上に記載される様式と本質的に同一の様式で構築する。所望のコード領域内の不必要な停止コドンおよび有害なアミノ酸挿入(例えばシステインまたはプロリン)を回避するために、Morphosys(Munich, Germany)によって開発されたTRIM(トリヌクレオチド変異誘発)技術を使用して、キャプシド挿入用のランダムなオリゴヌクレオチドを作成することができる。TRIMでは、アミノ酸を所望の位置でコードするトリ−ヌクレオチドしか利用しない(Virnekas, B. et al., Nucleic Acids Res, 1994, 22(25): 5600-5607)。ランダムペプチド表示SVVは108の種類で十分であると考えられ、ウイルスを特異的に標的腫瘍組織に向けるペプチドが得られると予測される。ランダムペプチド表示SVVを、上記のようにインビトロで、あるいは腫瘍保持マウスを使用してインビボで試験する。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】図1は、腫瘍溶解性ウイルスを使用するウイルス療法の概略図を示す。腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスを局所注射することによって腫瘤を介して、あるいはウイルスを全身に送達することによって、選択的に複製し、腫瘍細胞に伝播し、腫瘍細胞を死滅させる特性を有する。
【図2】図2は、酢酸ウラニルで染色され、透過型電子顕微鏡で検査された精製済みSVVを示す。球状ウイルス粒子は直径約27nmである。
【図3】図3は、大きな結晶性封入体および大きな小胞体(vesicular bodies)を有するSVV感染性PER.C6細胞の電子顕微鏡写真である。
【図4A】図4AはSVV RNAの解析を示す。チオシアン酸グアニジウムおよび、トリゾール(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を使用するフェノール抽出法を使用して、SVVのゲノムRNAを抽出する。1.25%変性アガロースゲルを通してRNAを分離する。臭化エチジウム(EtBr)染色によってバンドを可視化し、写真撮影する。レーン2では、SVVのゲノムRNAの主要バンドが観察され、この結果は完全長SVVゲノムのサイズが約7.5キロベースであることを示す[確認]。
【図4B】図4Bは、SVVを含むピコルナウイルスに関するポリタンパク質プロセシングから得られるゲノム構造およびタンパク質産物を示す概略図である。
【図5】図5A−5Eは、SVVのヌクレオチド配列(配列番号1)およびエンコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。停止コドンは5671〜3位の「*」によって記載する。一般注記として、正確なヌクレオチドが確認中である位置を含む配列の開示では、これらの位置を「n」によって表す。したがって、「n」を有するコドンでは、対応アミノ酸を「x」によって記載する。
【図6】図6A−6Dは、SVVの完全長ゲノムの大部分についてのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。該ヌクレオチド配列はATCC特許寄託番号:PTA−5343(寄託日:2003年7月25日)を有するSVV単離体に由来する。
【図7】図7A−7Bは、配列番号1によってエンコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図8】図8は、SVVの部分的1BまたはVP2エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド4〜429と同一である。
【図9】図9は、配列番号3によってエンコードされる部分的SVV VP2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。配列番号4にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸2〜143と同一である。
【図10】図10は、SVVの1CまたはVP3エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド430〜1146と同一である。
【図11】図11は、配列番号5によってエンコードされるSVV VP3タンパク質のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。配列番号6にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸144〜382と同一である。
【図12】図12は、SVVの1DまたはVP1エンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号7)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1147〜1923と同一である。
【図13】図13は、配列番号7によってエンコードされるSVV VP1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。配列番号8にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸383〜641と同一である。
【図14】図14は、SVVの2Aエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号9)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1924〜1965と同一である。
【図15】図15は、配列番号9によってエンコードされるSVV 2Aタンパク質のアミノ酸配列(配列番号10)を示す。配列番号10にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸642〜655と同一である。
【図16】図16は、SVVの2Bエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド1966〜2349と同一である。
【図17】図17は、配列番号11によってエンコードされるSVV 2Bタンパク質のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。配列番号12にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸656〜783と同一である。
【図18】図18は、SVVの2Cエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド2350〜3315と同一である。
【図19】図19は、配列番号13によってエンコードされるSVV 2Cタンパク質のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。配列番号14にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸784〜1105と同一である。
【図20】図20は、SVVの3Aエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号15)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3316〜3585と同一である。
【図21】図21は、配列番号15によってエンコードされるSVV 3Aタンパク質のアミノ酸配列(配列番号16)を示す。配列番号16にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1106〜1195と同一である。
【図22】図22は、SVVの3Bエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3586〜3651と同一である。
【図23】図23は、配列番号17によってエンコードされるSVV 3Bタンパク質のアミノ酸配列(配列番号18)を示す。配列番号18にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1196〜1217と同一である。
【図24】図24は、SVVの3Cエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド3652〜4284と同一である。
【図25】図25は、配列番号19によってエンコードされるSVV 3Cタンパク質のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。配列番号20にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1218〜1428と同一である。
【図26】図26は、SVVの3Dエンコード領域のヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。この配列は配列番号1のヌクレオチド4285〜5673と同一である。
【図27】図27は、配列番号21によってエンコードされるSVV 3Dタンパク質のアミノ酸配列(配列番号22)を示す。配列番号22にリストされる配列は配列番号2のアミノ酸1429〜1890と同一である。
【図28】図28A−28Hは、SVV配列番号2およびカルジオウイルス属の諸メンバー、例えば脳心筋炎ウイルス(EMCV;Encephalomyocarditis virus種)、Theilerのマウス脳心筋炎ウイルス(TMEV;Theilovirus種)、ラットTMEV様物質(TLV;Theilovirus種)、およびVilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス(VHEV;Theilovirus種)間のアミノ酸配列アライメントを示す。以下の配列において諸カルジオウイルスの特定配列を示す:配列番号:23(EMCV−R)、24(EMCV−PV21)、25(EMCV−B)、26(EMCV−Da)、27(EMCV−Db)、28(EMCV−PV2)、29(EMCV−Mengo)、30(TMEV/DA)、31(TMEV/GDVII)、32(TMEV/BeAn8386)、33(TLV−NGS910)および34(VHEV/Siberia−55)。 図28中の番号位置は配列表の番号付けに対応しない。記号「/」は、ポリタンパク質が切断されてその最終機能性生成物になる切断部位を示す。例えば、位置1および157間のアライメントは1A(VP4)領域中に存在する。位置:159および428間のアライメントは1B(VP2)領域中に存在し;430および668は1C(VP3)領域中に存在し;670および967は1D(VP1)領域中に存在し;969および1111は2A領域中に存在し;1112および1276は2B領域中に存在し;1278および1609は2C領域中に存在し;1611および1700は3A領域中に存在し;1702および1723は3B領域中に存在し;1725および1946は3C領域中に存在し;1948および2410は3D領域中に存在する。またこのアライメントは、標準的配列解析プログラムによって決定することができるウイルス配列間の保存または類似領域の候補を示す。このアライメントはBioEdit 5.0.9およびClustal W 1.81を使用して作成した。
【図29】図29は、SVVの最終ポリペプチド産物をリストする(登場順にそれぞれ配列番号35〜44)。いくつかの保存されているモチーフは太字にし、下線を引く:2A/2B「切断」(NPGP 配列番号111);2C ATP結合(GxxGxGKS/T 配列番号112およびhyhyhyxxD);3B(VPg)/RNA結合残基(Y);3C(pro)活性部位残基(H、C、H);3D(pol)モチーフ(KDEL/IR 配列番号113、PSG、YGDD 配列番号114、FLKR 配列番号115)。
【図30】図30は、SVVおよびこれらのピコルナウイルス間の系統発生上の関連性を決定する配列解析において使用されたピコルナウイルス種をリストする(実施例4を参照のこと)。
【図31】図31は、VP2配列解析を考慮して、SVV(配列番号4)および他のピコルナウイルス間の系統発生上の関連性を示す。この図はブートストラップ近隣結合ツリー(bootstrapped neighbor-joining tree)を示す(実施例4を参照のこと)。
【図32】図32は、SVV(配列番号6)および他のピコルナウイルス間のVP3に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図33】図33は、SVV(配列番号8)および他のピコルナウイルス間のVP1に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図34】図34は、SVV(すなわち部分的P1−配列番号2のアミノ酸2〜641)および他のピコルナウイルス間のP1(すわわち1A、1B、1Cおよび1D)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図35】図35は、SVV(配列番号14)および他のピコルナウイルス間の2Cに関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図36】図36は、SVV(配列番号20)および他のピコルナウイルス間の3C(pro)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図37】図37は、SVV(配列番号22)および他のピコルナウイルス間の3D(pol)に関するブートストラップ近隣結合ツリーを示す(実施例4を参照のこと)。
【図38】図38は、SVV(配列番号4)および他のピコルナウイルス間のVP2の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図39】図39は、SVV(配列番号6)および他のピコルナウイルス間のVP3の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図40】図40は、SVV(配列番号8)および他のピコルナウイルス間のVP1の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図41】図41は、SVV(部分的キャプシドまたはP1−配列番号2のアミノ酸2〜641)および他のピコルナウイルス間のP1の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図42】図42は、SVV(配列番号14)および他のピコルナウイルス間の2Cの実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図43】図43は、SVV(配列番号20)および他のピコルナウイルス間の3C(pro)の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図44】図44は、SVV(配列番号22)および他のピコルナウイルス間の3D(pol)の実際のアミノ酸の同一性パーセントを示す(実施例4を参照のこと)。
【図45】図45は、SDS−PAGEによって分析されたSVVのVP2(〜36kDa)、VP1(〜31kDa)およびVP3(〜27kDa)タンパク質を示す。精製済みSVVをSDS−PAGEに付し、銀染色によってタンパク質を可視化した。レーン「MWt」は分子量マーカーであり;レーン「SVV」はSVVの構造タンパク質を含有する。さらに、3種の分子量マーカーのサイズおよびウイルスタンパク質の名称を挙げる。
【図46】図46A−46Bは、全身投与後の血液および腫瘍中のSVVの量を示す(実施例7)。H446腫瘍を保持するヌードマウスをSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射により行った。注射後0、1、3、6、24、48、72時間および7日の時点でマウスから採血し、収集直後に血液から血漿を分離し、感染培地中で希釈し、PER.C6細胞の感染に使用した。注射後6、24、48、72時間および7日の時点で腫瘍を回収した。この腫瘍を小切片にカットし、培地1mL中に懸濁し、CVLを作成した。 図46C−46Dは、インビボでのSVVクリアランスに関するデータを示す。この図は、同様の用量の静脈内(i.v.)アデノウイルスと比較して、SVVが実質的に長期の血液中の存在期間を示すことを示し(実施例7)、したがってSVVはアデノウイルスより緩徐なインビボのクリアランス速度を有する。1回の静脈内(i.v.)投与後、SVVは6時間まで血液中に存在し続ける(図46C;図46Cは図46Dと比較するための図46Aの複製である)が、アデノウイルスは約1時間のうちに血液から排除され、あるいは枯渇する(図46D)。
【図47】図47は、H446異種移植切片の免疫組織化学およびヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を示す(実施例7)。H446腫瘍を保持するヌードマウスをハンクス平衡塩類溶液(HBSS)またはSVVで処置した。この処置は、1x1012vp/kgの用量で尾静脈注射により行った。注射後3日目にマウスを犠牲にし、腫瘍を収集した。SVV特異的マウス抗体を使用する免疫組織化学によって腫瘍細胞中のウイルスタンパク質を可視化する(上部パネル)。HBSSまたはSVV処置マウスから収集されたH446腫瘍細胞の全体的形態をH&E染色によって染色した(下部パネル)。
【図48】図48は、初代ヒト肝細胞におけるSVV媒介性の細胞障害性を示す(実施例9)。コラーゲンでコーティングされた12ウェルプレートにプレートされた初代ヒト肝細胞に、1、10および100および1000粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた。感染3日後、細胞に結合した乳酸脱水素酵素(LDH)および培養上清中のLDHを別々に測定した。最大の細胞性LDH+上清LDHに対する上清中のLDH単位の割合として細胞障害性パーセントを決定した。
【図49】図49は、選択されたセルラインでのSVVによるウイルス生産を示す。SVVの複製能を評価するために、選択された正常細胞および腫瘍細胞に1ウイルス粒子/細胞(ppc)でSVVを感染させた(実施例9)。72時間後、細胞を回収し、PER.C6細胞上の力価に関してCVLをアッセイした。各セルラインに関して、SVV複製の効率をプラーク形成単位/ミリリットル(pfu/ml)として表した。
【図50】図50は、体重に基づく、ヌードおよびCD1マウスにおける毒性を示す(実施例10)。ウイルス投与後、種々の日数において、各処置群のマウスの平均体重を測定した。マウスには、1日目に単一用量のSVVまたはPBSを尾静脈注射した。
【図51】図51は、H446異種移植モデルにおける効果を示す。ヌードマウスにおいてH446腫瘍を確立させ、該マウスを群(n=10)に分類し、HBSSまたは6種の諸用量のSVVを尾静脈注射することによって処置する(実施例11)。研究20日目に、大きな腫瘍(平均腫瘍容量=2000mm3)を保持するHBSS群由来の5マウスに1x1011vp/kgを注射した(矢印で示す)。データは平均腫瘍容量+標準偏差(SD)として表す。
【図52】図52は、未処置またはSVVで処置されたH446異種移植ヌードマウスの写真を示す(実施例11)。SVVの効果は非常に強く、あらかじめ大きく確立された腫瘍の100%を完全に根絶した。SVV処置マウスは、注射後少なくとも200日間、臨床症状も腫瘍の再発も示さない。
【図53】図53は、インビトロでのSVV腫瘍特異性および効果に関するデータを示す(実施例11)。このグラフは、H446ヒト小細胞肺癌腫(SCLC)腫瘍細胞(上のグラフ)または正常なヒトH460細胞(下のグラフ)のインキュベーション後の細胞生存率を示す。SVVは約10-3粒子/細胞のEC50で腫瘍細胞を特異的に死滅させた。対照的に、正常なヒト細胞はいずれのSVV濃度でも死滅しなかった。
【図54】図54は、SVVの完全ゲノムを含有する代表的なプラスミドを表す(実施例15)。ベクター上のSVV配列の上流にT7プロモーターが存在することにより、SVV配列のインビトロ転写が可能であり、したがってSVV RNA分子を作成することができる。
【図55】図55は、完全長および機能性ゲノムSVVプラスミドの構築およびその後のSVVウイルス生産に関する概略図を表す(実施例16)。機能性ゲノムSVVクローンを取得するために、T7プロモーターを有するベクターにSVVの完全ゲノムをクローニングすることができる。この操作は、ウイルスのcDNAクローンを作成し、それらをシークエンシングし、そして連続片を1プラスミドにクローニングすることによって達成することができ、「pSVV」と表されるプラスミドを得る。次いでSVVの完全ゲノムを有するプラスミドを逆転写して、SVV RNAを作成することができる。そしてこのSVV RNAを許容哺乳類細胞内にトランスフェクトした後、SVVウイルス粒子を回収し、精製することができる。
【図56】図56は、SVVのキャプシドに関するコード配列(すなわち1A−1Dに関するコード領域)を含有するベクター(「pSVVキャプシド」)の構築に関する概略図を表す(実施例16)。そしてpSVVキャプシドを使用して、SVVキャプシド変異体のライブラリーを作成することができる。
【図57】図57は、SVVキャプシド変異体のライブラリーを作成するためにSVVキャプシドを変異させる1方法を示す(実施例16)。この図は、プラスミドのランダムな部位でオリゴヌクレオチド配列を挿入することを説明する。該オリゴヌクレオチドは、ランダムなオリゴヌクレオチド、既知の配列を有するオリゴヌクレオチド、またはエピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドであってよい。図中、制限酵素CviJIによってpSVVキャプシドDNAをランダムに切断する。単一部位で切断された直線状pSVVキャプシドDNAを単離し、ゲルから精製し、オリゴヌクレオチドとライゲートする。
【図58】図58は、キャプシドエンコード領域中に配列変異を含む完全長SVV変異体のライブラリーを作成するスキームを示す(実施例16)。例えば、(例えば、図57に記載されるスキームにしたがって作成された)pSVVキャプシド変異体ライブラリー由来のキャプシドエンコード領域を制限消化およびゲル精製によって単離する。また、完全長SVV配列を含有するベクターを消化して、キャプシドエンコード領域を切除する。そしてpSVVキャプシド変異体ライブラリー由来のキャプシドエンコード領域を、その野生型キャプシド配列を欠いているpSVVベクターにライゲートし、それにより、キャプシドエンコード領域中に多数の変異を有する完全長SVV変異体のライブラリー(「pSVVFL」ベクター)を作成する。
【図59】図59は、キャプシド変異のライブラリーを含むSVVウイルス粒子を生産するための一般的方法を示す(実施例16)。pSVVFLベクターを逆転写して、SVV RNAを作成する。このSVV RNAを許容細胞内にトランスフェクトすると、細胞においてSVV変異ウイルス粒子が生産される。このウイルス粒子は細胞を溶解し、多数のキャプシド変種を含むSVVウイルス粒子の集団、「SVVキャプシドライブラリー」が単離される。
【図60】図60は、腫瘍細胞に特異的に感染することができるが、非腫瘍細胞には感染することができないSVVキャプシド変異体をスクリーニングするための一般的方法を示す。SVVキャプシドライブラリーを目的の腫瘍セルラインまたは組織とインキュベートする。初期インキュベーション期間後、細胞を洗浄し、細胞内に侵入することができなかったSVVウイルス粒子を排除する。次いでウイルスによる溶解が観察されるまで細胞を培養中で維持する。次いで培養上清を収集し、腫瘍細胞に溶菌的に感染することができたSVVキャプシド変異体を単離する。次いでカウンタースクリーニング(counter-screen)前にこれらのウイルスを既知の許容セルラインに感染させることによって成熟させることができる。腫瘍細胞に感染することができたSVVキャプシド変異ウイルスを正常細胞とインキュベートすることによってカウンタースクリーニングを実施する。上清中の未結合のままであるウイルスのみを収集し、それにより、腫瘍特異性を有する変異SVVウイルスを単離する。この工程を繰り返して、SVV腫瘍特異的ウイルスの単離をさらに精密化することができる。
【図61】図61は、ウイルス変異体がセルラインに結合および/または感染することができるかどうかを試験するための従来の方法を示す。従来の方法は、セルラインを培養するための非効率的であることが多い方法、すなわちフラスコ培養を必要とし、したがって多数の諸セルラインに関してウイルス変異体のライブラリーをマススクリーニングすることは負担になる。
【図62】図62は、諸セルラインに特異的に感染する能力を有するウイルス変異体をスクリーニングするための本発明のハイスループット法を示す(実施例16)。この図では、多数の諸腫瘍セルラインを384ウェルプレートで培養する。各ウェルにウイルスのサンプルを加える(例えば、SVVキャプシドライブラリーのサンプル)。細胞変性作用を示すウェルから培地を収集し、フラスコまたは大規模な組織培養プレート中で許容セルライン(例えば、SVVに関しては、H446またはPER.C6)を感染させることによって培地中の任意のウイルスを増幅することができる。このウイルスを培養し、そしてRNAを単離し、その配列を解析して、キャプシドのオリゴヌクレオチド挿入変異誘発によって挿入されたエンコード対象のペプチド配列を決定することができる。次いでペプチドそのものを試験して、腫瘍細胞型に特異的に結合することができるかどうかを判定することができる。
【図63】図63は、別のハイスループットスクリーニングの概略図を示す(実施例16)。腫瘍および正常セルラインをマルチウェルプレートで培養する。各ウェルにウイルスを加え、ウイルス媒介性の溶解によって細胞が死滅するかどうかを試験する。細胞変性作用は、各ウェルの吸光度を読み取ることによって高速にアッセイすることができる。細胞変性作用を示すウェル由来のウイルスを成熟させ、さらにインビトロ(腫瘍および正常セルラインの再試験)およびインビボモデル(マウスにおいて外植された腫瘍を該ウイルスが死滅させることができるかどうかを試験)で試験する。
【図64】図64は、新規腫瘍特異的親和性を有するSVVキャプシド変異体(登場順にそれぞれ配列番号45〜48)を解析して、腫瘍選択的ペプチドを作成することができることを示す。腫瘍セルラインの特異的感染を可能にするSVVキャプシド変異体をシークエンシングして、オリゴヌクレオチド挿入によってエンコードされるペプチドを決定する。それにより、好結果のキャプシド変異体からアミノ酸共通配列を決定することができる。次いで該共通配列を有するペプチドを試験して、問題の腫瘍細胞型に特異的に結合することができるかどうかを判定することができる。そして腫瘍選択的ペプチドを腫瘍特異的ターゲティングビヒクルとして利用するために、毒素または薬物に結合させることができる。
【図65】図65は、SVVキャプシドライブラリーを最初にインビボで試験することができることを図解する。マウス(正常、胸腺欠損、ヌード、CD−1トランスジェニック、等を含む)に特定の腫瘍を外植することができる。そしてこれらのマウスにSVV誘導体ライブラリー、例えばSVVキャプシドライブラリーを注射する。一定時点で、マウスから腫瘍細胞を回収して、腫瘍の排除を示すマウスにおいて初期腫瘍サンプルからウイルスを単離し、許容セルライン中で成熟させる。
【図66】図66は、本発明のSVV誘導体に関する臨床試験計画を示す。
【図67】図67は、キャプシド中にエピトープタグをエンコードする(新規腫瘍親和性を有する)SVV誘導体を種々の目的で使用することができることを図解する。スクリーニング試薬としてのその使用により、該エピトープの存在をアッセイすることによって組織サンプル中に特定の腫瘍細胞が存在するかどうかを検出することができる。あるいは、毒素または他の治療薬を該エピトープタグに結合させることができ、そして該ウイルスを患者に投与することができる。さらに、野生型または誘導体SVVに放射線を照射し、あるいは不活性化して、該ウイルス粒子そのものを治療用デバイスとして使用することができる。該ウイルス粒子は、アポトーシス誘発ペプチドの存在に基づいて細胞のアポトーシスを誘発し、あるいは該粒子に毒素または何らかの他の治療薬を結合させて、該ウイルスを特異的ターゲティング送達デバイスとして使用することができる。
【図68】図68はピコルナウイルスの基本的ライフサイクルを示す。
【図69】図69は、他のピコルナウイルスと比べたSVVのポリペプチド長の比較を示す。
【図70】図70は、ピコルナウイルス2A様NPG/Pタンパク質のアミノ酸比較をリストする(登場順にそれぞれ配列番号49〜110)。このSVVに関する配列は配列番号2の残基635〜656にリストされる。
【図71】図71は、EMCV−Rに関するアミノ酸配列(配列番号23)をリストする。
【図72】図72は、EMCV−PV21(アクセッションCAA52361)に関するアミノ酸配列(配列番号24)をリストする。
【図73】図73は、EMCV−B(アクセッションP17593)に関するアミノ酸配列(配列番号25)をリストする。
【図74】図74は、EMCV−Da(アクセッションP17594)に関するアミノ酸配列(配列番号26)をリストする。
【図75】図75は、EMCV−Dbに関するアミノ酸配列(配列番号27)をリストする。
【図76】図76は、EMCV−PV2(アクセッションCAA60776)に関するアミノ酸配列(配列番号28)をリストする。
【図77】図77は、EMCV−mengo(アクセッションAAA46547)に関するアミノ酸配列(配列番号29)をリストする。
【図78】図78は、TMEV/DA(アクセッションAAA47928)に関するアミノ酸配列(配列番号30)をリストする。
【図79】図79は、TMEV/GDVII(アクセッションAAA47929)に関するアミノ酸配列(配列番号31)をリストする。
【図80】図80は、TMEV/BeAn8386(アクセッションAAA47930)に関するアミノ酸配列(配列番号32)をリストする。
【図81】図81は、TLV−NGS910(アクセッションBAC58035)に関するアミノ酸配列(配列番号33)をリストする。
【図82】図82は、VHEV/Siberia−55(アクセッションAAA47931)に関するアミノ酸配列(配列番号34)をリストする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも20ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項2】
高ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項3】
中ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項4】
低ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項5】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも20ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクター。
【請求項6】
核酸がRNAまたはDNAである、請求項1の単離された核酸。
【請求項7】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも10ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分を含む核酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってエンコードされる単離されたポリペプチド。
【請求項8】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、または少なくとも10アミノ酸長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項9】
請求項8のポリペプチドまたは請求項11の単離されたウイルスに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項10】
抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはキメラ抗体である、請求項9の抗体。
【請求項11】
ATCC特許寄託番号PTA−5343の識別特性を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体。
【請求項12】
配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%同一の配列を含むゲノムを有する、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体。
【請求項13】
以下の特徴を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体:約7.5kbの一本鎖RNAゲノム;直径〜27nm;約31kDa、約36kDa、および約27kDaの概算の分子量を有する少なくとも3種のタンパク質を含むキャプシド;CsCl勾配上の浮遊密度約1.34g/ml;および腫瘍細胞での複製能。
【請求項14】
以下の特徴を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体:腫瘍細胞での複製能、腫瘍細胞親和性、および正常細胞での細胞溶解の欠如。
【請求項15】
ウイルスが、神経内分泌特性を有する腫瘍細胞型において複製能を有する、請求項12または13のウイルス。
【請求項16】
31kDaタンパク質が、配列番号8と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項17】
36kDaタンパク質が、配列番号4と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項18】
27kDaタンパク質が、配列番号6と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項の有効量のウイルスおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを含む細胞。
【請求項21】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスの抗原を含有するウイルスライセート。
【請求項22】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスから取得される単離されたウイルス抗原。
【請求項23】
癌の処置方法であって、該癌を処置するために有効量のウイルスまたはその誘導体を投与することを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法。
【請求項24】
癌の処置方法であって、配列番号3、5または7と少なくとも95%同一の配列を含むキャプシドエンコード領域を有するウイルスの有効量を投与することを含む方法。
【請求項25】
癌の進行を阻害するための方法であって、癌細胞をウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノムを有する、方法。
【請求項26】
癌細胞を死滅させるための方法であって、癌細胞を有効量のウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノムを有する、方法。
【請求項27】
ウイルスがピコルナウイルスである、請求項23、24、25または26の方法。
【請求項28】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項27の方法。
【請求項29】
カルジオウイルスが以下からなる群から選択される、請求項28の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSeneca Valleyウイルス。
【請求項30】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項29の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項31】
Seneca ValleyウイルスがATCC寄託番号PTA−5343を有する、請求項29の方法。
【請求項32】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを精製する方法であって、以下の段階を含む方法:
a.請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを細胞に感染させる段階;
b.細胞ライセートを回収する段階;
c.細胞ライセートを少なくとも1ラウンドの勾配遠心分離に付する段階;および
d.勾配から該ウイルスを単離する段階。
【請求項33】
異常増殖性細胞を死滅させる方法であって、該細胞を請求項11〜18のいずれか一項のウイルスと接触させることを含む方法。
【請求項34】
異常増殖性細胞が腫瘍細胞である、請求項33の方法。
【請求項35】
腫瘍細胞が以下からなる群から選択される、請求項34の方法:ヒト小細胞肺癌、ヒト網膜芽細胞腫、ヒト神経芽細胞腫、ヒト髄芽腫、マウス神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、およびヒト非小細胞肺癌。
【請求項36】
対象における新生物症状を処置する方法であって、該対象に請求項11〜18のいずれか一項のウイルスの有効量を投与することを含む方法。
【請求項37】
新生物症状が神経内分泌癌である、請求項36の方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項36の方法。
【請求項39】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを製造する方法であって、以下の段階を含む方法:請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを感染させた細胞を、該ウイルスの複製を許容する条件下で培養する段階および該細胞または上清から該ウイルスを回収する段階。
【請求項40】
細胞がPER.C6細胞である、請求項39の方法。
【請求項41】
細胞がH446細胞である、請求項39の方法。
【請求項42】
細胞が200,000を超えるウイルス粒子/細胞を生産する、請求項39の方法。
【請求項43】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを検出する方法であって、以下の段階を含む方法:請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを含有すると考えられる試験材料からRNAを単離する段階;配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するRNAを標識する段階;標識済みRNAを用いて試験材料を検査(プローブ)する段階;および標識済みRNAと試験材料から単離されたRNAの結合を検出する段階、この場合、結合は該ウイルスの存在を示す。
【請求項44】
配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列を含む核酸プローブ。
【請求項45】
腫瘍溶解性ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルスのゲノム配列を試験ウイルスのゲノム配列と比較する段階;
(b)Seneca Valleyウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドおよび試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチド間の少なくとも第一のアミノ酸の差異を同定する段階;
(c)試験ウイルスのゲノム配列を変異させて、試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドが有する、Seneca Valleyウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドに対するアミノ酸の差異が、少なくとも1つ少ないようにする段階;
(d)変異した試験ウイルスのゲノム配列を腫瘍細胞内にトランスフェクトする段階;および
(e)該変異した試験ウイルスのゲノム配列が該腫瘍細胞に溶菌的に感染したかどうかを判定する段階。
【請求項46】
Seneca Valleyウイルスのゲノムが配列番号1と少なくとも95%同一の配列を含む、請求項45の方法。
【請求項47】
試験ウイルスがピコルナウイルスである、請求項45の方法。
【請求項48】
試験ウイルスがカルジオウイルスである、請求項45の方法。
【請求項49】
アミノ酸の差異がSeneca Valleyウイルスのキャプシドタンパク質および試験ウイルスのキャプシドタンパク質間に存在する、請求項45の方法。
【請求項50】
試験ウイルスのゲノム配列を変異させる段階が、試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAを変異させることを含む、請求項45の方法。
【請求項51】
変異した試験ウイルスのゲノム配列をトランスフェクトする段階がRNAをトランスフェクトすることを含み、この場合、該RNAは該変異した試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAから作成される、請求項51の方法。
【請求項52】
カルジオウイルスのゲノム配列が以下からなる群から選択される、請求項48の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。
【請求項53】
カルジオウイルスのゲノム配列が脳心筋炎ウイルスから選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項53の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項55】
カルジオウイルスが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含むゲノムを有する単離体から選択される、請求項52の方法。
【請求項56】
アミノ酸の差異が、配列番号4、6、8、または少なくとも10アミノ酸長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含むポリペプチド内に存在する、請求項45の方法。
【請求項57】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;
(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および
(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。
【請求項58】
ウイルス変異体のライブラリーが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含む親配列から作成される、請求項57の方法。
【請求項59】
さらに以下の段階を含む、請求項57の方法:
(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階。
【請求項60】
段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項59の方法。
【請求項61】
マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行い、この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容細胞型を含む、請求項57または59の方法。
【請求項62】
プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞を死滅させる変異ウイルスを含有するかを同定することをさらに含む、請求項61の方法。
【請求項63】
各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う、請求項62の方法。
【請求項64】
非許容細胞が腫瘍細胞である、請求項57の方法。
【請求項65】
ウイルス変異体のライブラリーの作成段階が以下の段階を含む、請求項57の方法:
(i)ウイルスのゲノム配列の部分と同一の配列を有するポリヌクレオチドを提供する段階;
(ii)該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異ポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
(iii)段階(i)のポリヌクレオチドが含有するウイルスのゲノム配列の部分を除くウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。
【請求項66】
ウイルスのゲノム配列がピコルナウイルス由来である、請求項65の方法。
【請求項67】
ウイルスのゲノム配列が、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含む、請求項65の方法。
【請求項68】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項66の方法。
【請求項69】
カルジオウイルスが以下からなる群から選択される、請求項68の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSVV。
【請求項70】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項69の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項71】
ポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって段階(ii)の変異を行う、請求項57の方法。
【請求項72】
ポリヌクレオチドのキャプシドエンコード領域において段階(ii)の変異を行う、請求項57の方法。
【請求項73】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項71の方法。
【請求項74】
ポリヌクレオチド内に挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項71の方法。
【請求項75】
改変された細胞型親和性を有する変異カルジオウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階、この場合、該作成段階は以下の段階を含む:
−カルジオウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;
−該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
−キャプシドエンコード領域を除く該カルジオウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それにより該カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階;
(b)変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および
(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異カルジオウイルスを作成する段階。
【請求項76】
さらに以下の段階を含む、請求項75の方法:
(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階。
【請求項77】
段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項76の方法。
【請求項78】
カルジオウイルスが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%同一の配列を含むゲノムを有する、請求項75の方法。
【請求項79】
キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって変異を行う、請求項75の方法。
【請求項80】
キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にランダムに挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項80の方法。
【請求項81】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項80の方法。
【請求項82】
多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列が108を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む、請求項75の方法。
【請求項83】
多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列が109を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む、請求項75の方法。
【請求項84】
改変された細胞型親和性を有する変異Seneca Valleyウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーを作成する段階;
(b)Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーからSeneca ValleyウイルスのRNAを作成する段階;
(c)Seneca ValleyウイルスのRNAを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異Seneca Valleyウイルスを生産させる段階;
(d)多数の変異Seneca Valleyウイルスを単離する段階;
(e)単離された多数の変異Seneca Valleyウイルスと非許容腫瘍細胞をインキュベートする段階;および
(f)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異Seneca Valleyウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異Seneca Valleyウイルスを作成する段階。
【請求項85】
以下の段階をさらに含む、請求項84の方法:
(g)回収された変異Seneca Valleyウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(h)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異Seneca Valleyウイルスを回収する段階。
【請求項86】
段階(g)および(h)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項85の方法。
【請求項87】
マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行い、この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容腫瘍細胞型を含む、請求項85の方法。
【請求項88】
プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞に溶菌的を感染する変異Seneca Valleyウイルスを含有するかを同定することをさらに含む、請求項87の方法。
【請求項89】
各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う、請求項88の方法。
【請求項90】
Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーが多数の変異Seneca Valleyウイルスキャプシドポリヌクレオチド配列を含む、請求項84の方法。
【請求項91】
配列番号3、5または7と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%の配列同一性を有する配列を含むキャプシドエンコード領域内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって多数の変異Seneca Valleyウイルスキャプシドポリヌクレオチド配列を作成する、請求項90の方法。
【請求項92】
ランダムに挿入されるヌクレオチドの配列の少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項91の方法。
【請求項93】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項91の方法。
【請求項94】
ATCC寄託番号PTA−5343のSeneca Valleyウイルスまたは、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%の配列同一性を有する配列を含むゲノムを有するウイルスからSeneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーを作成する、請求項84の方法。
【請求項95】
非許容腫瘍細胞が腫瘍セルラインまたは患者から単離された腫瘍細胞型である、請求項84の方法。
【請求項96】
非許容腫瘍セルラインが以下からなる群から選択される、請求項95の方法:M059K、KK、U118MG、DMS79、H69、DMS114、DMS53、H460、A375−S2、SK−MEL−28、PC3、PC3M2AC6、LNCaP、DU145、Hep3B、Hep2G、SW620、SW839、5637、HeLaS3、S8、HUVEC、HAEC、W138、MRC−5、IMR90、HMVEC、HCN−1A、HRCE、CMT−64、LLC−1、RM−1、RM−2、RM−9、MLTC−1、KLN−205、CMT−93、B16F0、Neuro−2A、C8D30、PK15、FBRC、MDBK、CSL503、およびOFRC。
【請求項97】
患者から単離された非許容腫瘍細胞型が以下からなる癌の群から選択される、請求項95の方法:グリア芽細胞腫、リンパ腫、小細胞肺癌、大細胞肺癌、黒色腫、前立腺癌、肝癌、結腸癌、腎臓癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌および扁平細胞肺癌。
【請求項98】
インビボにおいて腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;
(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)腫瘍を有する哺乳類に、単離された多数の変異ウイルスを投与する段階、この場合、該哺乳類は該変異ウイルスの未変異型の天然の宿主ではない;および
(e)腫瘍中で複製したウイルスを回収し、それにより、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。
【請求項99】
ウイルス変異体のライブラリーの作成段階が以下の段階を含む、請求項98の方法:
−ウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;
−該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
−キャプシドエンコード領域を除く該ウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。
【請求項100】
段階(e)で回収されたウイルスが腫瘍の細胞に溶菌的に感染する、請求項98の方法。
【請求項101】
腫瘍が異種移植片、同系腫瘍、正所性腫瘍または遺伝子組換え腫瘍である、請求項98の方法。
【請求項102】
哺乳類がマウスである、請求項98の方法。
【請求項103】
ウイルス変異体がピコルナウイルスである、請求項98の方法。
【請求項104】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項98の方法。
【請求項105】
ピコルナウイルスがSeneca Valleyウイルスまたはその類縁体または誘導体である、請求項104の方法。
【請求項106】
Seneca ValleyウイルスがATCC寄託番号PTA−5343を有するSeneca Valleyウイルスであるか、あるいは配列番号1と少なくとも95%同一の配列を含むゲノム配列を有する、請求項109の方法。
【請求項107】
請求項45、57、75、84または98に記載の方法によって作成される腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項108】
腫瘍溶解性ウイルスを用いて患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)請求項107の腫瘍溶解性ウイルスを、該腫瘍溶解性ウイルスが非感染性になり、該腫瘍溶解性ウイルスの親和性は影響を受けないように不活性化する段階;および
(b)腫瘍を患う患者に該不活性化された腫瘍溶解性ウイルスを投与する段階。
【請求項109】
不活性化された腫瘍溶解性ウイルスに毒素を結合させることをさらに含む、請求項108の方法。
【請求項110】
Seneca Valleyウイルスを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルスを、該ウイルスが非感染性になり、該ウイルスの親和性は影響を受けないように不活性化する段階;および
(b)腫瘍を患う患者に該不活性化されたSeneca Valleyウイルスを投与する段階。
【請求項111】
不活性化されたSeneca Valleyウイルスに毒素を結合させることをさらに含む、請求項110の方法。
【請求項112】
不活性化されたSeneca Valleyウイルスを含むSeneca Valleyウイルス組成物。
【請求項113】
キャプシド領域に組み込まれたエピトープタグを含むSeneca Valleyウイルス。
【請求項114】
Seneca Valleyウイルスを用いて腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)キャプシド中においてエンコードされるエピトープタグを含む変異Seneca Valleyウイルスを作成する段階;
(b)該エピトープタグに毒素を結合させる段階;および
(c)腫瘍を患う対象に該結合毒素を伴う変異Seneca Valleyウイルスを投与する段階。
【請求項115】
作成段階が以下の段階を含む、請求項114の方法:
−エピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドをSeneca Valleyウイルスのキャプシドエンコード領域ポリヌクレオチド内に挿入する段階。
【請求項116】
変異Seneca Valleyウイルスが、ATCC寄託番号PTA−5343のSeneca Valleyウイルスと比べて改変された細胞型親和性を有さない、請求項115の方法。
【請求項117】
変異Seneca Valleyウイルスを、該変異Seneca Valleyウイルスが感染性ではなくなるように不活性化することをさらに含む、請求項116の方法。
【請求項118】
サンプル中の腫瘍細胞の検出方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)患者から腫瘍サンプルを単離する段階;
(b)該腫瘍サンプルをエピトープタグ付きSeneca Valleyウイルスとインキュベートする段階;および
(c)エピトープタグの検出により結合型Seneca Valleyウイルスに関して腫瘍サンプルをスクリーニングする段階。
【請求項119】
インビボでの腫瘍細胞の検出方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)放射線照射されたエピトープタグ付きSeneca Valleyウイルスを患者に投与する段階、この場合、該エピトープタグに標識をコンジュゲートする;および
(b)患者において該標識を検出する段階。
【請求項120】
Seneca Valleyウイルスが変異体、誘導体または類縁体である、請求項118または119の方法。
【請求項121】
SVVを用いる癌の処置方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)欠失したパッケージングシグナル配列を含むSVV変異体を作成する段階;および
(b)該SVV変異体を腫瘍細胞に感染させ、それにより、SVV媒介性の宿主細胞のシャットオフによって該腫瘍細胞の死滅を引き起こす段階。
【請求項1】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも20ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項2】
高ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項3】
中ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項4】
低ストリンジェンシーの条件下で請求項1の核酸にハイブリダイズする単離された核酸。
【請求項5】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも20ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むベクター。
【請求項6】
核酸がRNAまたはDNAである、請求項1の単離された核酸。
【請求項7】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、または少なくとも10ヌクレオチド長のいずれか1つの前記配列の連続部分を含む核酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸によってエンコードされる単離されたポリペプチド。
【請求項8】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、または少なくとも10アミノ酸長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項9】
請求項8のポリペプチドまたは請求項11の単離されたウイルスに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項10】
抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはキメラ抗体である、請求項9の抗体。
【請求項11】
ATCC特許寄託番号PTA−5343の識別特性を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体。
【請求項12】
配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%同一の配列を含むゲノムを有する、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体。
【請求項13】
以下の特徴を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体:約7.5kbの一本鎖RNAゲノム;直径〜27nm;約31kDa、約36kDa、および約27kDaの概算の分子量を有する少なくとも3種のタンパク質を含むキャプシド;CsCl勾配上の浮遊密度約1.34g/ml;および腫瘍細胞での複製能。
【請求項14】
以下の特徴を含む、単離されたSeneca Valleyウイルスまたはその誘導体または類縁体:腫瘍細胞での複製能、腫瘍細胞親和性、および正常細胞での細胞溶解の欠如。
【請求項15】
ウイルスが、神経内分泌特性を有する腫瘍細胞型において複製能を有する、請求項12または13のウイルス。
【請求項16】
31kDaタンパク質が、配列番号8と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項17】
36kDaタンパク質が、配列番号4と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項18】
27kDaタンパク質が、配列番号6と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一のアミノ酸配列を含む、請求項12のウイルス。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項の有効量のウイルスおよび製薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを含む細胞。
【請求項21】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスの抗原を含有するウイルスライセート。
【請求項22】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスから取得される単離されたウイルス抗原。
【請求項23】
癌の処置方法であって、該癌を処置するために有効量のウイルスまたはその誘導体を投与することを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノム配列を有する、方法。
【請求項24】
癌の処置方法であって、配列番号3、5または7と少なくとも95%同一の配列を含むキャプシドエンコード領域を有するウイルスの有効量を投与することを含む方法。
【請求項25】
癌の進行を阻害するための方法であって、癌細胞をウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノムを有する、方法。
【請求項26】
癌細胞を死滅させるための方法であって、癌細胞を有効量のウイルスまたはその誘導体と接触させることを含み、この場合、該ウイルスは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21と少なくとも95%同一の配列を含むゲノムを有する、方法。
【請求項27】
ウイルスがピコルナウイルスである、請求項23、24、25または26の方法。
【請求項28】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項27の方法。
【請求項29】
カルジオウイルスが以下からなる群から選択される、請求項28の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSeneca Valleyウイルス。
【請求項30】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項29の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項31】
Seneca ValleyウイルスがATCC寄託番号PTA−5343を有する、請求項29の方法。
【請求項32】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを精製する方法であって、以下の段階を含む方法:
a.請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを細胞に感染させる段階;
b.細胞ライセートを回収する段階;
c.細胞ライセートを少なくとも1ラウンドの勾配遠心分離に付する段階;および
d.勾配から該ウイルスを単離する段階。
【請求項33】
異常増殖性細胞を死滅させる方法であって、該細胞を請求項11〜18のいずれか一項のウイルスと接触させることを含む方法。
【請求項34】
異常増殖性細胞が腫瘍細胞である、請求項33の方法。
【請求項35】
腫瘍細胞が以下からなる群から選択される、請求項34の方法:ヒト小細胞肺癌、ヒト網膜芽細胞腫、ヒト神経芽細胞腫、ヒト髄芽腫、マウス神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、およびヒト非小細胞肺癌。
【請求項36】
対象における新生物症状を処置する方法であって、該対象に請求項11〜18のいずれか一項のウイルスの有効量を投与することを含む方法。
【請求項37】
新生物症状が神経内分泌癌である、請求項36の方法。
【請求項38】
対象がヒトである、請求項36の方法。
【請求項39】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを製造する方法であって、以下の段階を含む方法:請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを感染させた細胞を、該ウイルスの複製を許容する条件下で培養する段階および該細胞または上清から該ウイルスを回収する段階。
【請求項40】
細胞がPER.C6細胞である、請求項39の方法。
【請求項41】
細胞がH446細胞である、請求項39の方法。
【請求項42】
細胞が200,000を超えるウイルス粒子/細胞を生産する、請求項39の方法。
【請求項43】
請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを検出する方法であって、以下の段階を含む方法:請求項11〜18のいずれか一項のウイルスを含有すると考えられる試験材料からRNAを単離する段階;配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するRNAを標識する段階;標識済みRNAを用いて試験材料を検査(プローブ)する段階;および標識済みRNAと試験材料から単離されたRNAの結合を検出する段階、この場合、結合は該ウイルスの存在を示す。
【請求項44】
配列番号1の少なくとも15連続ヌクレオチドに対応するヌクレオチド配列を含む核酸プローブ。
【請求項45】
腫瘍溶解性ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルスのゲノム配列を試験ウイルスのゲノム配列と比較する段階;
(b)Seneca Valleyウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドおよび試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチド間の少なくとも第一のアミノ酸の差異を同定する段階;
(c)試験ウイルスのゲノム配列を変異させて、試験ウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドが有する、Seneca Valleyウイルスのゲノム配列によってエンコードされるポリペプチドに対するアミノ酸の差異が、少なくとも1つ少ないようにする段階;
(d)変異した試験ウイルスのゲノム配列を腫瘍細胞内にトランスフェクトする段階;および
(e)該変異した試験ウイルスのゲノム配列が該腫瘍細胞に溶菌的に感染したかどうかを判定する段階。
【請求項46】
Seneca Valleyウイルスのゲノムが配列番号1と少なくとも95%同一の配列を含む、請求項45の方法。
【請求項47】
試験ウイルスがピコルナウイルスである、請求項45の方法。
【請求項48】
試験ウイルスがカルジオウイルスである、請求項45の方法。
【請求項49】
アミノ酸の差異がSeneca Valleyウイルスのキャプシドタンパク質および試験ウイルスのキャプシドタンパク質間に存在する、請求項45の方法。
【請求項50】
試験ウイルスのゲノム配列を変異させる段階が、試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAを変異させることを含む、請求項45の方法。
【請求項51】
変異した試験ウイルスのゲノム配列をトランスフェクトする段階がRNAをトランスフェクトすることを含み、この場合、該RNAは該変異した試験ウイルスのゲノム配列を有するcDNAから作成される、請求項51の方法。
【請求項52】
カルジオウイルスのゲノム配列が以下からなる群から選択される、請求項48の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、および脳心筋炎ウイルス。
【請求項53】
カルジオウイルスのゲノム配列が脳心筋炎ウイルスから選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項53の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項55】
カルジオウイルスが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含むゲノムを有する単離体から選択される、請求項52の方法。
【請求項56】
アミノ酸の差異が、配列番号4、6、8、または少なくとも10アミノ酸長のいずれか1つの前記配列の連続部分と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含むポリペプチド内に存在する、請求項45の方法。
【請求項57】
改変された細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;
(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および
(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。
【請求項58】
ウイルス変異体のライブラリーが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含む親配列から作成される、請求項57の方法。
【請求項59】
さらに以下の段階を含む、請求項57の方法:
(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階。
【請求項60】
段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項59の方法。
【請求項61】
マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行い、この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容細胞型を含む、請求項57または59の方法。
【請求項62】
プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞を死滅させる変異ウイルスを含有するかを同定することをさらに含む、請求項61の方法。
【請求項63】
各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う、請求項62の方法。
【請求項64】
非許容細胞が腫瘍細胞である、請求項57の方法。
【請求項65】
ウイルス変異体のライブラリーの作成段階が以下の段階を含む、請求項57の方法:
(i)ウイルスのゲノム配列の部分と同一の配列を有するポリヌクレオチドを提供する段階;
(ii)該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異ポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
(iii)段階(i)のポリヌクレオチドが含有するウイルスのゲノム配列の部分を除くウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。
【請求項66】
ウイルスのゲノム配列がピコルナウイルス由来である、請求項65の方法。
【請求項67】
ウイルスのゲノム配列が、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%、または65%同一の配列を含む、請求項65の方法。
【請求項68】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項66の方法。
【請求項69】
カルジオウイルスが以下からなる群から選択される、請求項68の方法:vilyuiskヒト脳脊髄炎ウイルス、Theilerのマウス脳脊髄炎ウイルス、脳心筋炎ウイルスおよびSVV。
【請求項70】
脳心筋炎ウイルスが以下からなる単離体の群から選択される、請求項69の方法:CA−131395、LA−97−1278、IL−92−48963、IA−89−47752、NJ−90−10324、MN−88−36695、およびNC−88−23626。
【請求項71】
ポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって段階(ii)の変異を行う、請求項57の方法。
【請求項72】
ポリヌクレオチドのキャプシドエンコード領域において段階(ii)の変異を行う、請求項57の方法。
【請求項73】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項71の方法。
【請求項74】
ポリヌクレオチド内に挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項71の方法。
【請求項75】
改変された細胞型親和性を有する変異カルジオウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階、この場合、該作成段階は以下の段階を含む:
−カルジオウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;
−該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
−キャプシドエンコード領域を除く該カルジオウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それにより該カルジオウイルスの変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを作成する段階;
(b)変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)単離された多数の変異ウイルスと非許容細胞をインキュベートする段階;および
(e)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異カルジオウイルスを作成する段階。
【請求項76】
さらに以下の段階を含む、請求項75の方法:
(f)回収された変異ウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(g)非許容細胞で生産された変異ウイルスを回収する段階。
【請求項77】
段階(f)および(g)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項76の方法。
【請求項78】
カルジオウイルスが、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%同一の配列を含むゲノムを有する、請求項75の方法。
【請求項79】
キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって変異を行う、請求項75の方法。
【請求項80】
キャプシドエンコードポリヌクレオチド内にランダムに挿入されるヌクレオチドの少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項80の方法。
【請求項81】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項80の方法。
【請求項82】
多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列が108を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む、請求項75の方法。
【請求項83】
多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列が109を超える種々のキャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を含む、請求項75の方法。
【請求項84】
改変された細胞型親和性を有する変異Seneca Valleyウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーを作成する段階;
(b)Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーからSeneca ValleyウイルスのRNAを作成する段階;
(c)Seneca ValleyウイルスのRNAを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異Seneca Valleyウイルスを生産させる段階;
(d)多数の変異Seneca Valleyウイルスを単離する段階;
(e)単離された多数の変異Seneca Valleyウイルスと非許容腫瘍細胞をインキュベートする段階;および
(f)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異Seneca Valleyウイルスを回収し、それにより、改変された親和性を有する変異Seneca Valleyウイルスを作成する段階。
【請求項85】
以下の段階をさらに含む、請求項84の方法:
(g)回収された変異Seneca Valleyウイルスを非許容細胞においてインキュベートする段階;および
(h)非許容腫瘍細胞に溶菌的に感染する変異Seneca Valleyウイルスを回収する段階。
【請求項86】
段階(g)および(h)を反復して繰り返すことをさらに含む、請求項85の方法。
【請求項87】
マルチウェルハイスループットプラットフォームにおいてインキュベーションを行い、この場合、該プラットフォームは各ウェルに異なる非許容腫瘍細胞型を含む、請求項85の方法。
【請求項88】
プラットフォームをスクリーニングして、どのウェルが細胞に溶菌的を感染する変異Seneca Valleyウイルスを含有するかを同定することをさらに含む、請求項87の方法。
【請求項89】
各ウェルの吸光度を分析することによってスクリーニングを行う、請求項88の方法。
【請求項90】
Seneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーが多数の変異Seneca Valleyウイルスキャプシドポリヌクレオチド配列を含む、請求項84の方法。
【請求項91】
配列番号3、5または7と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%の配列同一性を有する配列を含むキャプシドエンコード領域内にヌクレオチドをランダムに挿入することによって多数の変異Seneca Valleyウイルスキャプシドポリヌクレオチド配列を作成する、請求項90の方法。
【請求項92】
ランダムに挿入されるヌクレオチドの配列の少なくとも部分がエピトープタグをエンコードする、請求項91の方法。
【請求項93】
トリヌクレオチド変異誘発(TRIM)によってヌクレオチドのランダムな挿入を行う、請求項91の方法。
【請求項94】
ATCC寄託番号PTA−5343のSeneca Valleyウイルスまたは、配列番号1と少なくとも95%、90%、85%、80%、75%、70%または65%の配列同一性を有する配列を含むゲノムを有するウイルスからSeneca Valleyウイルス変異体のcDNAライブラリーを作成する、請求項84の方法。
【請求項95】
非許容腫瘍細胞が腫瘍セルラインまたは患者から単離された腫瘍細胞型である、請求項84の方法。
【請求項96】
非許容腫瘍セルラインが以下からなる群から選択される、請求項95の方法:M059K、KK、U118MG、DMS79、H69、DMS114、DMS53、H460、A375−S2、SK−MEL−28、PC3、PC3M2AC6、LNCaP、DU145、Hep3B、Hep2G、SW620、SW839、5637、HeLaS3、S8、HUVEC、HAEC、W138、MRC−5、IMR90、HMVEC、HCN−1A、HRCE、CMT−64、LLC−1、RM−1、RM−2、RM−9、MLTC−1、KLN−205、CMT−93、B16F0、Neuro−2A、C8D30、PK15、FBRC、MDBK、CSL503、およびOFRC。
【請求項97】
患者から単離された非許容腫瘍細胞型が以下からなる癌の群から選択される、請求項95の方法:グリア芽細胞腫、リンパ腫、小細胞肺癌、大細胞肺癌、黒色腫、前立腺癌、肝癌、結腸癌、腎臓癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌および扁平細胞肺癌。
【請求項98】
インビボにおいて腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスの作成方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)多数の核酸配列を含むウイルス変異体のライブラリーを作成する段階;
(b)ウイルス変異体のライブラリーを許容細胞内にトランスフェクトし、多数の変異ウイルスを生産させる段階;
(c)多数の変異ウイルスを単離する段階;
(d)腫瘍を有する哺乳類に、単離された多数の変異ウイルスを投与する段階、この場合、該哺乳類は該変異ウイルスの未変異型の天然の宿主ではない;および
(e)腫瘍中で複製したウイルスを回収し、それにより、インビボで腫瘍細胞型親和性を有する変異ウイルスを作成する段階。
【請求項99】
ウイルス変異体のライブラリーの作成段階が以下の段階を含む、請求項98の方法:
−ウイルスのキャプシド領域をエンコードするポリヌクレオチドを提供する段階;
−該ポリヌクレオチドを変異させて、多数の種々の変異キャプシドエンコードポリヌクレオチド配列を作成する段階;および
−キャプシドエンコード領域を除く該ウイルスのゲノム配列を有するベクターに、多数の変異したキャプシドエンコードポリヌクレオチドをライゲートし、それによりウイルス変異体のライブラリーを作成する段階。
【請求項100】
段階(e)で回収されたウイルスが腫瘍の細胞に溶菌的に感染する、請求項98の方法。
【請求項101】
腫瘍が異種移植片、同系腫瘍、正所性腫瘍または遺伝子組換え腫瘍である、請求項98の方法。
【請求項102】
哺乳類がマウスである、請求項98の方法。
【請求項103】
ウイルス変異体がピコルナウイルスである、請求項98の方法。
【請求項104】
ピコルナウイルスがカルジオウイルスである、請求項98の方法。
【請求項105】
ピコルナウイルスがSeneca Valleyウイルスまたはその類縁体または誘導体である、請求項104の方法。
【請求項106】
Seneca ValleyウイルスがATCC寄託番号PTA−5343を有するSeneca Valleyウイルスであるか、あるいは配列番号1と少なくとも95%同一の配列を含むゲノム配列を有する、請求項109の方法。
【請求項107】
請求項45、57、75、84または98に記載の方法によって作成される腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項108】
腫瘍溶解性ウイルスを用いて患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)請求項107の腫瘍溶解性ウイルスを、該腫瘍溶解性ウイルスが非感染性になり、該腫瘍溶解性ウイルスの親和性は影響を受けないように不活性化する段階;および
(b)腫瘍を患う患者に該不活性化された腫瘍溶解性ウイルスを投与する段階。
【請求項109】
不活性化された腫瘍溶解性ウイルスに毒素を結合させることをさらに含む、請求項108の方法。
【請求項110】
Seneca Valleyウイルスを用いて腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)Seneca Valleyウイルスを、該ウイルスが非感染性になり、該ウイルスの親和性は影響を受けないように不活性化する段階;および
(b)腫瘍を患う患者に該不活性化されたSeneca Valleyウイルスを投与する段階。
【請求項111】
不活性化されたSeneca Valleyウイルスに毒素を結合させることをさらに含む、請求項110の方法。
【請求項112】
不活性化されたSeneca Valleyウイルスを含むSeneca Valleyウイルス組成物。
【請求項113】
キャプシド領域に組み込まれたエピトープタグを含むSeneca Valleyウイルス。
【請求項114】
Seneca Valleyウイルスを用いて腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)キャプシド中においてエンコードされるエピトープタグを含む変異Seneca Valleyウイルスを作成する段階;
(b)該エピトープタグに毒素を結合させる段階;および
(c)腫瘍を患う対象に該結合毒素を伴う変異Seneca Valleyウイルスを投与する段階。
【請求項115】
作成段階が以下の段階を含む、請求項114の方法:
−エピトープタグをエンコードするオリゴヌクレオチドをSeneca Valleyウイルスのキャプシドエンコード領域ポリヌクレオチド内に挿入する段階。
【請求項116】
変異Seneca Valleyウイルスが、ATCC寄託番号PTA−5343のSeneca Valleyウイルスと比べて改変された細胞型親和性を有さない、請求項115の方法。
【請求項117】
変異Seneca Valleyウイルスを、該変異Seneca Valleyウイルスが感染性ではなくなるように不活性化することをさらに含む、請求項116の方法。
【請求項118】
サンプル中の腫瘍細胞の検出方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)患者から腫瘍サンプルを単離する段階;
(b)該腫瘍サンプルをエピトープタグ付きSeneca Valleyウイルスとインキュベートする段階;および
(c)エピトープタグの検出により結合型Seneca Valleyウイルスに関して腫瘍サンプルをスクリーニングする段階。
【請求項119】
インビボでの腫瘍細胞の検出方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)放射線照射されたエピトープタグ付きSeneca Valleyウイルスを患者に投与する段階、この場合、該エピトープタグに標識をコンジュゲートする;および
(b)患者において該標識を検出する段階。
【請求項120】
Seneca Valleyウイルスが変異体、誘導体または類縁体である、請求項118または119の方法。
【請求項121】
SVVを用いる癌の処置方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)欠失したパッケージングシグナル配列を含むSVV変異体を作成する段階;および
(b)該SVV変異体を腫瘍細胞に感染させ、それにより、SVV媒介性の宿主細胞のシャットオフによって該腫瘍細胞の死滅を引き起こす段階。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図28F】
【図28G】
【図28H】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
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【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
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【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
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【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71A】
【図71B】
【図72A】
【図72B】
【図73A】
【図73B】
【図74A】
【図74B】
【図75A】
【図75B】
【図76A】
【図76B】
【図77A】
【図77B】
【図78A】
【図78B】
【図79A】
【図79B】
【図80A】
【図80B】
【図81A】
【図81B】
【図82】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
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【図28G】
【図28H】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46A】
【図46B】
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【図46D】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71A】
【図71B】
【図72A】
【図72B】
【図73A】
【図73B】
【図74A】
【図74B】
【図75A】
【図75B】
【図76A】
【図76B】
【図77A】
【図77B】
【図78A】
【図78B】
【図79A】
【図79B】
【図80A】
【図80B】
【図81A】
【図81B】
【図82】
【公表番号】特表2007−506434(P2007−506434A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528260(P2006−528260)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031504
【国際公開番号】WO2005/030139
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031504
【国際公開番号】WO2005/030139
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
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