説明

SiC系物質からの金または白金族元素の回収方法

【課題】今後使用が増えるであろうと予想されるSiCを用いた排ガス浄化用触媒の使用済み材料を処理し、その中に含有される金または白金族等の貴金属を回収する方法の確立が急務となっている。
【解決手段】金または白金族元素等の貴金属を含有するSiC系物質を溶融金属銅と共に第1炉内で酸化処理し上層溶融層としてSi酸化物と銅酸化物を主体とする溶融酸化物層を、下層溶融層として貴金属を含有する溶融残留金属銅層を形成させて分離することによって、溶融残留金属銅層中に貴金属を回収する第1工程、酸化物を第2炉内で還元処理し、下層溶融層として溶融還元金属銅層を、上層溶融層として溶融残留酸化物層を形成させて分離する第2工程、および溶融還元金属銅を第1工程の溶融金属銅として繰返す第3工程からなる方法で貴金属を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒の廃棄物などのSiC系物質からその中に担持などの形態で含有される金または白金族元素を回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、SiCを金または白金族元素の担体(基体)物質として用いた触媒を使用する排ガス浄化システムの実用化が進められている。SiCは耐熱性に優れるため、特にディーゼルエンジンの排ガスのPM燃焼用触媒の担体物質として用いると触媒の性能・耐久性が向上するものと期待されているが、触媒としての使命を終えた使用後の触媒廃棄物からその中に含有される金または白金族元素を回収する方法については下記のように種々提案されてはいるものの、SiCは融点が2700℃以上であること且つ化学的に不活性であることなどの点から、適切な回収方法はまだ開発されるに至っていないのが現状である。
【特許文献1】特開平06−182214号公報
【特許文献2】特開平10−076162号公報
【特許文献3】特開2001−349211号公報
【特許文献4】特開2003−262118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらにSiCは乾式プロセスの溶融スラグ中に溶解させにくいという問題がある。本発明者らの実験によると、SiC系物質を単独で電気炉内の溶融スラグに投入したところ、SiC系物質は固体のまま溶融スラグ表面上に浮遊し、強制的にSiC系物質を溶融スラグ中に没入させる操作を行わない限り、溶融スラグ中に完全に溶解させることは困難である。また溶解したとしても、未反応のSiCがスラグ中に残存することがあり、これでは廃棄物触媒等のSiC系物質を処理し、含有される金または白金族元素を回収することはできない。したがって、今後使用が増えるであろうと予測されるSiCを担体(基体)物質として用いた排ガス浄化用触媒の使用済み材料を処理し含有される金または白金族元素を回収する方法の確立が急務となっている。
本発明は、このような現状に鑑み、SiC系物質に含有される金または白金族元素の回収を行う方法を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
SiC系物質を処理し含有される金または白金族元素を回収するためには、SiCを分解して溶融スラグ成分とし、かつSiC系物質に含有されていた金または白金族元素を金属銅中に移行させることが有効であり、この場合酸化されてスラグ中に移行した銅分の回収を行えばさらに有効である。発明者らはこれらの知見を基に種々検討の結果、以下の発明を見出した。
【0005】
すなわち本発明は第1に、金または白金族元素を含有するSiC系物質から該金または白金族元素を回収する方法において、前記SiC系物質を金属銅と共に第1炉内で酸化処理し、Si酸化物と銅酸化物を含有する溶融酸化物層と前記金または白金族元素を含有する溶融残留金属銅層とに分離する第1工程、該分離された酸化物(溶融酸化物層)を第2炉内で還元処理して新たな溶融金属銅層と溶融残留酸化物層とに分離する第2工程、および該新たな金属銅(新たな溶融金属銅層)を前記第1工程の前記金属銅の一部または全部として繰返す第3工程からなることを特徴とする金または白金族元素の回収方法;第2に、金または白金族元素を含有するSiC系物質から該金または白金族元素を回収する方法において、前記SiC系物質を溶融金属銅と共に第1炉内で酸化処理し、該炉内の上層溶融層としてSi酸化物と銅酸化物を主体とする溶融酸化物層を、該炉内の下層溶融層として前記金または白金族元素を含有する溶融残留金属銅層を形成させて分離することによって、該溶融残留金属銅層中に該金または白金族元素を回収する第1工程、該分離された酸化物(溶融酸化物層)を第2炉内で還元処理し、該炉内の下層溶融層として新たな溶融金属銅層を、該炉内の上層溶融層として溶融残留酸化物層を形成させて分離する第2工程、および該新たな溶融金属銅(層)を前記第1工程の前記溶融金属銅の一部または全部として繰返す第3工程からなることを特徴とする金または白金族元素の回収方法;第3に、前記溶融酸化物層が未反応の前記SiC系物質を含有する前記第1または2記載の回収方法;第4に、前記第1炉内に装入する前記SiC系物質/前記金属銅の質量比が0.65以下である前記第1〜3のいずれかに記載の回収方法;第5に、前記酸化処理は酸素ガスまたは酸素含有ガスを前記第1炉内に導入して行う前記第1〜4のいずれかに記載の回収方法;第6に、前記酸化処理は前記第1炉内の温度を1100〜1600℃に維持して行う前記第1〜5のいずれかに記載の回収方法;第7に、前記第1炉内に装入する前記SiC系物質は5mm目の篩を通過する粒度である前記第1〜6のいずれかに記載の回収方法;第8に、前記SiC系物質は金または白金族元素を担持したSiCを主体とする排ガス浄化用触媒廃棄物である前記第1〜7のいずれかに記載の回収方法;第9に、前記第1工程の前記溶融酸化物層を前記第1炉内から排出した後に水と接触させることによって粉粒体とし、得られた酸化物粉粒体を前記第2工程の前記酸化物とする前記第1〜8のいずれかに記載の回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1炉内において被処理原料の主成分であるSiCの酸化分解に伴う発熱および当初の溶融金属銅の酸化熱などによって熱エネルギーコストが節減され、且つ、SiCのC分は燃焼して排ガスとなって系外へ排出され、またSiCのSi分が酸化されて生じるSi酸化物(SiO2)はフラックス成分であるために新たなフラックスは不要であって溶融酸化物層(スラグともいう。)の発生量が少なくなり、操業面で有利となる。その上で、SiC系物質中に含有される金または白金族元素を溶融残留金属銅層の中に高い回収率で効率的に回収することができる。
さらに、第2炉内においては、第1炉内において酸化されてスラグ(溶融酸化物層)中に移行した銅分を還元によって新たな金属銅として回収して第1工程へ繰返すことによって当初の金属銅をロス無く繰返し使用することができ、また、第1炉内において酸化されずにスラグに混入した未反応のSiCは第2工程の第2炉内において還元剤として作用して酸化分解されるとともにこの未反応のSiC中に含有されていた金または白金族元素をこの新たな溶融金属銅中に移行させて、引き続き第1工程に繰返して使用してこの金または白金族元素を回収することによってSiCの処理量を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における白金族元素は元素の周期表第VIII族に属するルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、オスミウムOs、イリジウムIr、白金Ptの6元素を示す。本明細書中で金とこの白金族元素を総称して貴金属ということがある。
【0008】
本発明において「(金または白金族元素を含有する)SiC系物質」とは、(金または白金族元素を担持等の種々の形態で含有する)SiCを主体とする物質の総称であって、好ましくはSiCを50質量%を超えて含有するSiC主体の材料であり、他の添加物質やPM(ディーゼルエンジンからの排ガス中の粒子状物質)などが含有される場合がある。このSiC系物質としては、例えば、上記のディーゼルエンジンの排ガス浄化用触媒の廃棄物、さらに電子部品廃棄物等が挙げられる。
【0009】
本発明において第1工程で当初用いられる(溶融)金属銅は純度に制限はなく、勿論、金または白金族元素が含有されていても、さらには、鉄、クロム等の不純物元素が含有されていても不都合なく使用することができる(後述の実施例1、2ではいずれも実質的に純度100質量%の金属銅を使用した)。
【0010】
本発明における第1工程の第1炉(酸化炉ということがある。)として転炉または回転炉を用いると、必要に応じて傾動または回転させることによってSiC系物質と溶融金属銅の接触・混合を促進させることができ、かつ、酸素ガスまたは酸素含有ガスをランスによって表面上から吹き付けて酸化処理することができ、さらには、酸化処理後に傾動させることによって最初に溶融酸化物層を抜き出し、その後溶融残留金属銅層を抜き出すことができるので、両層を容易に分離することができる。
また、炉内の溶体中に酸素ガスまたは酸素含有ガスを直接に吹き込むことによって、溶体の撹拌を促し、SiCの酸化速度を速めることもできる。
なお、酸化処理後の溶融酸化物は溶融残留金属銅より比重が小さいので、酸化処理後の溶融酸化物と溶融残留金属銅との混合溶融体(液相)を炉内で静置することにより、溶融酸化物は上層、溶融残留金属銅は下層となって容易に相互に分離される。
【0011】
また、SiC系物質を第1工程において酸化処理するためには、当初装入される金属銅の量に応じたSiC系物質の配合比とするコントロールも重要である。炉内に装入されるSiC系物質/金属銅の質量比が0.45以下の場合には、装入されたSiC系物質が第1工程においてすべて酸化処理されるが、上記質量比が0.45を超える場合には装入されたSiC系物質が第1工程においてすべて酸化処理されきれずに未反応のSiC系物質が残留して溶融酸化物層に混在して第2工程へ持ち込まれる。ここでこの持ち込まれた未反応のSiC系物質は第2工程において酸化物に対する還元剤として作用して酸化分解されるが、全量が酸化分解されるためには前記質量比が0.65以下であることが必要である。したがって、第1工程において第1炉内に装入されるSiC系物質/金属銅の質量比は0.45を超えて0.65以下であることが好ましい。
なお、第1工程の酸化処理の操業は、金または白金族元素を溶融(残留)金属銅層に移行させるため、当初の溶融金属銅の一部を酸化させずに残して終了することが必要であり、残留する溶融金属銅量は当初の溶融金属銅量の20質量%以上、さらに好ましくは30〜50質量%が好ましい。
【0012】
第1工程の酸化処理時の第1炉内温度は1100〜1600℃が好ましい。1100℃未満では酸化速度が低く、且つ溶融相の上層、下層への分離が困難となる。一方、1600℃を超えると、炉内耐火物の損傷を招くようになるので好ましくない。上記炉内温度は1300〜1500℃がさらに好ましい。
【0013】
第1工程の酸化処理反応を促進させるためには、炉内に装入されるSiC系物質は5mm目の篩を通過する粒度であることが好ましく、5mm目を超える粒度では酸化速度が低下する。
また、上記SiC系物質は炉内への装入前に破砕されて微粒が発生する場合があり、この場合には酸素含有ガスの炉内への吹き込み(酸化処理)によってその微粒が炉外へ飛散する可能性があるが、上記SiC系物質(またはその微粒)を、5mm目の篩を通過する粒度の範囲内で、造粒することによって飛散を防止することができる。
【0014】
また、第1工程の酸素含有ガスは酸素濃度において特に制限はないが、酸化処理速度向上の点から酸素濃度40%以上の酸素含有ガスが好ましい。
【0015】
本発明の第1工程で生成した溶融酸化物(スラグ)層はSiC系物質の酸化により生じたSi酸化物と金属銅の一部の酸化により生じた銅酸化物によって形成されるが、必要に応じて珪石等のSi酸化物、石灰等のCa酸化物、蛍石等のF化合物、Al酸化物、Fe酸化物、Na酸化物などのフラックスを少量添加して、スラグ流動性を向上させ、または操業スラグ温度を低下させて、より良好なスラグを形成することもできる。
【0016】
本発明の第1工程によって得られた前記の金または白金族元素を含有する溶融残留金属銅層からは種々の溶融法または電解法などの公知の方法によって金または白金族元素をさらに分別回収することができる。金または白金族元素を分別回収した後の金属銅は第1工程の(当初の)金属銅として使用することができる。また、金または白金族元素を分別回収した後の銅分が銅酸化物の形態の場合には第2工程の酸化物として第2炉内で還元処理して新たな金属銅として回収し、第1工程の金属銅として使用することができる。
【0017】
第2工程の第2炉としては電気炉を用いることができる(第2炉を電気炉ということがある)。第1炉から排出された溶融酸化物をいったん冷却して固形物としてストックしたものを集積して、電気炉に装入し、還元剤と必要に応じてフラックスを加えて溶融還元する。第1工程からの溶融酸化物に混在して持ち込まれた未反応のSiC系物質は第2工程で還元剤として作用し酸化分解されるので、第2炉においては必要に応じて不足量の還元剤を添加すればよい。なお、第2工程においても、第1工程の場合と同様に、必要に応じて珪石等のSi酸化物、石灰等のCa酸化物、蛍石等のF化合物、Al酸化物、Fe酸化物、Na酸化物などのフラックスを少量添加して、スラグ流動性を向上させ、または操業スラグ温度を低下させて、より良好なスラグを形成することもできる。
【0018】
なお、第1炉から排出された溶融酸化物を多量の水と接触させることによって粉粒体とする(つまり水砕を行う)と、溶融酸化物中に混在して持ち込まれた未反応のSiC系物質が粉粒体の微細粒子表面に露出するので、第2炉において還元剤としての反応性が著しく促進する。
【0019】
第2工程においては電気炉における溶融還元により酸化物中の酸化銅は金属銅に還元されて炉の底部に溶銅として溜まり、酸化物中に一部残留していた金または白金族元素、および未反応のSiC系物質が酸化分解して遊離した金または白金族元素は、いずれもこの溶銅湯溜まり中に移行する。
この電気炉での溶融還元によって酸化物中の殆どの酸化銅を金属銅として回収することができ、これを第1工程に繰返して先の第1炉での金属銅として再利用することができる。この場合、電気炉で得られた(新たな)溶融金属銅をそのまま第1炉に装入すれば大幅な熱エネルギーの節減となる。他方、電気炉から排出されたスラグ(残留酸化物)は、もはや実質的に金または白金族元素を含有せず、また銅などの他の有用成分も殆ど含有しないので経済的価値は低いものとなり、廃棄処分に回すことができる。
【0020】
一方、第1炉で得られたメタル溶湯(溶融残留金属銅)から金または白金族元素をさらに濃縮する方法として、再び溶融酸化処理を採用するのが好都合である。この場合、同じ第1炉を使用することもできるが、別の酸化炉を使用してもよい。これにより、その炉内では金または白金族元素等の貴金属をさらに濃縮した金属銅と、これらの貴金属を殆ど含有しない酸化銅が溶融状態で相分離した状態で得られるので、これを出湯して分離することにより、金または白金族元素等の貴金属をさらに濃縮した金属銅を得ることができる。また、ここで生成した酸化銅は前記の電気炉(第2炉)への装入原料に使用することにより、金属銅に還元し、第1工程へ繰返すことができる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明の技術的範囲はこの記載に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0022】
[実施例1] ハニカム形状のSiC製の基体にPt、Pd、Auの3種の貴金属を担持しSiCを95質量%含有するSiC系物質を使用した。このSiC系物質中の各貴金属含有率(質量%)を下記の表1に示す。先ず表2に示すように、酸化炉としての転炉内に溶融した金属銅501kgと破砕後に造粒して得た5mm目の篩を通過する上記SiC系物質198kgを装入した。装入後、転炉内においてランスにより酸素含有ガスとして酸素含有率40%の酸素富化空気を装入物の表面上から吹きつけ、装入物温度を1400〜1450℃に維持し、金属銅が半分程度にまで減少した時点で吹き込み(酸化処理)を終了し、その後静置させて上方が溶融酸化物層、下方が溶融メタル(残留金属銅)層の2層に分離した。転炉を傾動させて上層の溶融酸化物層を大量の水の流れる水槽内に投入して粉粒状化(つまり水砕)した後、乾燥した。炉内には溶融メタル(残留金属銅)分を残した。酸化処理前後のそれぞれの重量、貴金属含有率、含有量、分布率等を表3に示す。水砕し、乾燥した酸化物全量をフラックスの石灰と還元剤のコークスとともに電気炉で1400℃で還元溶融して(新たな)金属銅250kgを得た。還元処理前後のそれぞれの重量、貴金属含有率、含有量、分布率等を表3に併せて示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
[実施例2] 実施例1と同様に表1に示したSiC系物質を使用した。表2、4に示すように、酸化炉としての転炉内に溶融した金属銅502kgと破砕後に造粒して得た5mm目の篩を通過する上記SiC系物質302kgを装入した。装入後、転炉内においてランスにより酸素含有ガスとして酸素含有率40%の酸素富化空気を装入物の表面上から吹きつけ、装入物温度を1400〜1450℃に維持し、金属銅が半分程度にまで減少した時点で吹き込み(酸化処理)を終了し、その後静置させて上方が溶融酸化物層、下方が溶融メタル(残留金属銅)層の2層に分離したが、溶融酸化物層には未反応のSiC系物質が含有されており、実施例1に比べて上層中への貴金属含有率が多くなっていた。これは酸化炉(第1炉)への装入時のSiC系物質/金属銅の質量比を0.6としたため、未反応のSiC系物質が残留したものである。この溶融酸化物層を実施例1と同様に水砕し、乾燥して全量をフラックスとともに電気炉に装入して還元溶融して(新たな)金属銅270kgを得た。前記の未反応の残留したSiC系物質は還元剤として作用して消費され、含有されていた貴金属は前記の(新たな)金属銅中に回収された。以上のそれぞれの重量、貴金属含有率、含有量、分布率等を表4に示した。
【0027】
【表4】

【0028】
上記のとおり、SiC系物質中の白金族元素(Pt、Pd)および金を実施例1ではそれぞれ99.87%、99.69%、99.27%、実施例2ではそれぞれ99.25%、98.81%、98.47%という高収率且つ高濃度で溶融金属銅中に移行させて回収することができ、さらに酸化炉(第1炉)の酸化反応で発生した酸化銅は、電気炉(還元炉、第2炉)においてほぼ全量が還元され(新たな)金属銅に再生されて第1炉で繰り返し使用できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金または白金族元素を含有するSiC系物質から該金または白金族元素を回収する方法において、前記SiC系物質を金属銅と共に第1炉内で酸化処理し、Si酸化物と銅酸化物を含有する溶融酸化物層と前記金または白金族元素を含有する溶融残留金属銅層とに分離する第1工程、該分離された酸化物を第2炉内で還元処理して新たな溶融金属銅層と溶融残留酸化物層とに分離する第2工程、および該新たな金属銅を前記第1工程の前記金属銅の一部または全部として繰返す第3工程からなることを特徴とする金または白金族元素の回収方法。
【請求項2】
金または白金族元素を含有するSiC系物質から該金または白金族元素を回収する方法において、前記SiC系物質を溶融金属銅と共に第1炉内で酸化処理し、該炉内の上層溶融層としてSi酸化物と銅酸化物を主体とする溶融酸化物層を、該炉内の下層溶融層として前記金または白金族元素を含有する溶融残留金属銅層を形成させて分離することによって、該溶融残留金属銅層中に該金または白金族元素を回収する第1工程、該分離された酸化物を第2炉内で還元処理し、該炉内の下層溶融層として新たな溶融金属銅層を、該炉内の上層溶融層として溶融残留酸化物層を形成させて分離する第2工程、および該新たな溶融金属銅を前記第1工程の前記溶融金属銅の一部または全部として繰返す第3工程からなることを特徴とする金または白金族元素の回収方法。
【請求項3】
前記溶融酸化物層が未反応の前記SiC系物質を含有する、請求項1または2記載の回収方法。
【請求項4】
前記第1炉内に装入する前記SiC系物質/前記金属銅の質量比が0.65以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の回収方法。
【請求項5】
前記酸化処理は酸素ガスまたは酸素含有ガスを前記第1炉内に導入して行う、請求項1〜4のいずれかに記載の回収方法。
【請求項6】
前記酸化処理は前記第1炉内の温度を1100〜1600℃に維持して行う、請求項1〜5のいずれかに記載の回収方法。
【請求項7】
前記第1炉内に装入する前記SiC系物質は5mm目の篩を通過する粒度である、請求項1〜6のいずれかに記載の回収方法。
【請求項8】
前記SiC系物質は金または白金族元素を担持したSiCを主体とする排ガス浄化用触媒廃棄物である、請求項1〜7のいずれかに記載の回収方法。
【請求項9】
前記第1工程の前記溶融酸化物層を前記第1炉内から排出した後に水と接触させることによって粉粒体とし、得られた酸化物粉粒体を前記第2工程の前記酸化物とする、請求項1〜8のいずれかに記載の回収方法。

【公開番号】特開2008−88452(P2008−88452A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267145(P2006−267145)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(599027242)株式会社日本ピージーエム (6)
【Fターム(参考)】