説明

SiH官能性分岐ポリシロキサンの調製方法ならびにSiCおよびSiOC結合を有する有機変性分岐ポリシロキサンを調製するためのその使用

【課題】SiH官能性分岐シロキサンを調製する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、1種またはそれ以上の低分子量SiH官能性シロキサン、1種またはそれ以上の、SiH基を含まない低分子量シロキサン、および1種またはそれ以上のトリアルコキシシランの混合物を、少なくとも1種のブレンステッド酸触媒の存在下に水を加えて転化させることによる、SiH官能性分岐シロキサンの調製方法であって、この反応が、1回の処理工程で実施されることを特徴とする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンの調製方法であって、末端SiH基および/またはペンダントSiH基を有する分岐ポリシロキサンが1回のみの処理工程で調製され、さらに有機化合物で官能化される方法ならびにこの方法により調製される有機変性分岐ポリシロキサンおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術
先行技術によれば、ポリオルガノシロキサンは、混合置換されたメチルクロロヒドロシランから出発する加水分解および縮合によって調製される。水素含有シラン、例えば、ジメチルモノクロロシランまたはメチルジクロロシランを直接加水分解縮合することが、例えば、米国特許第2,758,124号に記載されている。この方法においては、加水分解の過程で分離するシロキサン相が塩酸を含む水相から取り除かれる。この方法はヒドロシロキサンがゲル化する傾向にあることから、独国特許第1125180号においては有機補助相を利用する改良方法が記載されており、ここでは、形成されたヒドロシロキサンは分離相として有機溶媒中に溶解して存在し、これを酸性の水相から分離して溶媒を蒸留によって除去するとゲル化が起こりにくくなる。溶媒の使用量を最小限にすることに関し改良されたさらなる方法が欧州特許第0967236号に記載されており、その教示においては、オルガノクロロシランを加水分解縮合する際はまず最初にごく少量の水を使用し、そうすることにより第1工程において塩化水素を気体形態で排出して、さらなる最終用途にそのまま有用な材料として供給できるようにすべきであると述べられている。
【0003】
有機変性分岐ポリシロキサンは様々な構造で表すことができる。一般には、有機置換基を介して導入される分岐または架橋とシリコーン鎖中の分岐または架橋とを区別する必要がある。SiH基を有するシロキサン骨格を形成するための有機架橋剤は、例えば、米国特許第6,730,749号または欧州特許第0381318号に記載されている、例えば、α,ω−不飽和ジオレフィン、ジビニル化合物、またはジアリル化合物である。この平衡の下流側で起こる白金触媒下のヒドロシリル化架橋は、分子内結合および分子間結合の両方が形成されるさらなる処理工程が起こり得ることを意味している。さらに生成物の性状は、過酸化物を形成する傾向がある低分子量有機二官能性化合物の異なる反応性に大きく影響される。
【0004】
有機変性ポリシロキサンのシリコーンブロックを、有機ブロック共重合体を用いて様々な方法で多重架橋することができる。欧州特許第0675151号には、不足量のヒドロキシ官能性アリルポリエーテルをヒドロシロキサンでヒドロシリル化することによるポリエーテルシロキサンの調製が記載されており、未反応のSiH基はナトリウムメトキシドを添加することによってポリエーテル置換基のヒドロキシル基にSiOC結合を介して結合する。モル質量が増大すると、生成物の性状、例えば粘度が広範囲に分散する。分岐系を形成するための類似の手法が米国特許第4,631,208号に記載されており、ここでは、ヒドロキシ官能性ポリエーテルシロキサンがトリアルコキシシランを用いることによって架橋されている。この2つの方法を実施した場合、いずれもモル質量の増加を制御することが困難なポリエーテルシロキサンの分子間架橋が起こり、それに伴い予測できない粘度上昇が起こる。上述の方法を実施すると、一定のモル質量でシロキサン部分内に分岐を得るよりも寧ろ架橋が起こって巨大分子であるマルチブロック共重合体が形成される。
【0005】
したがって、シロキサン鎖内の分岐は、上述した架橋による不利益を回避するために、早ければヒドロシロキサン調製時に実施する必要がある。シロキサン鎖内で分岐させるためには、三官能性シラン、例えば、トリクロロシランまたはトリアルコキシシランを合成的に組み込むことが必要である。
【0006】
当業者に周知のように、オルガノクロロシランの加水分解速度は以下の順に高くなる(C.Eaborn, Organosilicon Compounds, Butterworths Scientific Publications, London, 1960, p.179)
SiCl>RSiCl>>RSiCl>RSiCl
【0007】
したがって、トリクロロシランの加水分解および縮合反応は、加水分解および縮合反応がより遅い二官能性および単官能性オルガノクロロシランよりも架橋度の高いゲルが形成されやすい傾向にある。したがって、ジクロロ−およびモノクロロシランを加水分解および縮合するために確立された方法をすぐにトリクロロシランに適用することはできず、その替わりに、多段処理工程を経る代替経路を取る必要がある。
【0008】
この知見に基づき、シロキサン鎖当たり1個以下の三官能性モノマーを組み込むことによるモノ分岐ヒドロシロキサンの調製も、先行技術によると2段階で実施しなければならない。第1工程においては、例えば、独国特許第3716372号に教示されているように、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンおよびメチルトリエトキシシランから加水分解および縮合を行うことにより三官能性低分子量ヒドロシロキサンが調製される。独国特許出願公開第DE102005004676号に述べられているように、より高分子量にするために環状シロキサンと平衡化させることは、第2工程においてのみ可能となる。さらなる反応において(したがって、第3工程になって初めて)、こうして調製されたモノ分岐ヒドロシロキサンに、SiH基を有するシロキサン化合物の官能化に関しそれ自体周知の方法を用いることによって有機置換基を付与することが可能になる。
【0009】
多分岐ヒドロシロキサン(シロキサン鎖当たり1個を超える三官能性モノマーを有するものと定義される)を合成するための2段階合成も先行技術に見ることができる。原則として、ヒドロシロキサンから出発すること、ならびにSiH基を水および貴金属触媒を添加することにより脱水素化してシラノールに変換し、そして今度はヒドロシロキサンと縮合させること、が可能である。この手順は、米国特許第6,790,451号および欧州特許第1717260号に記載されている。貴金属触媒の費用は別としても、シラノールは貯蔵安定性に劣り、自発的に縮合する傾向があるので、再現性のある制御された処理工程の妨げになる。
【0010】
さらに、米国特許第6,790,451号に記載されているように、トリクロロメチルシランまたはトリアルコキシメチルシランとヘキサメチルジシロキサンまたはトリメチルクロロシランとの共重合体(当該明細書においてはMTポリマーとも称される)を調製し、第2工程において、ポリジメチル(メチルヒドロ)シロキサン共重合体と一緒に平衡化させることも可能である。この種のMTポリマーの調製には、強塩基または強酸を、場合によっては高い反応温度と組み合わせて使用することが必要であり、中和がかなり阻害されるような高粘度のプレポリマーが生じ、したがって、一定の組成および品質を有する最終生成物を得るためのさらなる処理が大幅に制限される。
【0011】
欧州特許第0675151号によれば、SiHを含まない分岐シリコーンポリマーの加水分解および縮合がまずキシレン中で実施され、第2工程において、メチルヒドロポリシロキサンと平衡化させることにより分岐ヒドロシロキサンが得られる。ここでも2つの処理工程は不可欠であり、この場合は、SiH基が第2工程まで導入されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、出発物質によって導入されたSiH基を副反応によって分解させることなく、かつさらなる補助相を形成するための脂肪族および/または芳香族溶媒を使用する必要のない、分岐ヒドロシロキサンを調製するための簡便な1段階法を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、SiH官能性シロキサンとトリアルコキシシランとの縮合および平衡化を、酸性の加水分解条件下に、1回のみの工程で、導入されたSiH基をかなり実質的に保持しながら行うことが可能であることがここに見出された。上述した三官能性シランがゲル化する傾向も、酸によって誘発されるSiHが脱水素により分解する副反応も(C. Eaborn, Organosilicon Compounds, Butterworths Scientific Publications, London 1960, p. 200)目立った問題を起こさないので、この結果は当業者にとってまったくの驚きである。
【0014】
したがって本発明は、
a)1種またはそれ以上のSiH官能性シロキサン、
b)1種またはそれ以上のSiH基を含まないシロキサン、および
c)1種またはそれ以上のトリアルコキシシラン
を含む混合物を少なくとも1種のブレンステッド酸触媒の存在下に水を加えて転化させることによってSiH官能性分岐シロキサンを調製するための請求項1による方法であって、この反応が1回の処理工程で実施されることを特徴とする方法に加えて、こうして調製されたヒドロシロキサンも提供する。
【0015】
同じく本発明は、こうして調製されたヒドロシロキサンの、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンを調製するための使用、こうして調製されたシロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサン、およびこれらの界面活性なシリコーン界面活性剤としての使用も提供する。
【0016】
本発明のさらなる主題は、以下の記載および請求項/下位請求項の内容により特徴づけられる。
【0017】
本発明による方法の利点は、SiH官能性分岐シロキサンが1回のみの処理工程で調製できることにある。この方法には、転化の過程で失われるSiH基、特に末端SiH基が、もしあるとしてもごく少量であるという利点もある。特に、当業者が予想するような末端SiH基(ジメチルヒドロシロキシ単位)の分解が起こらないことは驚くべきことである。
【0018】
本発明による方法の他の利点は、まず、水性補助相を廃液として廃棄しなければならず、次に、使用した無極性溶媒、例えば、トルエンまたはキシレンを留去することにより生成物を精製しなければならない場合に、相分離を必要としないことにある。本発明による方法に必要なのは、基本的に低沸点反応生成物、特に、加水分解および縮合により生じるアルコールを単に穏やかに留去することである。
【0019】
本発明による方法の最終生成物の品質および貯蔵安定性に関する利点は、本発明に従い調製される分岐ヒドロシロキサンおよびそれから製造される転化生成物にゲル化の傾向がなく、したがって、生成物の粘度が著しく変化することなくより長期間貯蔵できることにある。
【0020】
SiH官能性分岐シロキサンを調製するための本発明による方法およびシロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンを調製するためのその使用およびその使用を実施例を用いて以下に説明するが、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。範囲、一般式、または化合物の分類を以下に具体的に述べる場合、これらは明示された対応する範囲または化合物群のみならず、個々の値(範囲)または化合物を選択することにより得ることができるあらゆる部分範囲および化合物の部分群も包含することを意図している。本明細書の範囲内に文書が引用されている場合は、これらの内容全体を本発明の開示内容に組み込むことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
式中に特定された化合物の異なるモノマー単位(シロキサン鎖またはポリオキシアルキレン鎖)は、相互ブロック構造を有していてもよいし、ランダムな分布で存在していてもよい。式中に使用される添字、特に添字k、m、m、n、およびnは統計的平均値と見なされたい。通常の定義に従い、分岐度kは、3個の酸素原子に結合したケイ素原子の数で与えられる。
【0022】
a)1種またはそれ以上のSiH官能性シロキサン、
b)1種またはそれ以上のSiH基を含まないシロキサン、および
c)1種またはそれ以上のトリアルコキシシラン
を含む混合物を少なくとも1種のブレンステッド酸触媒の存在下に水を加えて転化させることによってSiH官能性分岐シロキサンを調製するための本発明による方法は、反応が1回の処理工程で実施されることを特徴とする。好ましくは、本発明による方法により、一般式(I)
【化1】

(式中、
nおよびnは、各々独立に、0〜500、好ましくは10〜200、優先的には15〜100であり、かつ(n+n)は、<500、好ましくは<200、優先的には<100であり、
mおよびmは、各々独立に、0〜60、好ましくは0〜30、優先的には0.1〜25であり、かつ(m+m)は、<60、好ましくは<30、優先的には<25であり、
kは、1〜10、好ましくは1〜5であり、
Rは、1〜20個までの炭素原子を有する直鎖、環状、または分岐の脂肪族または芳香族の飽和または不飽和炭化水素基の群からの少なくとも1種の基であるが、好ましくはメチル基であり、
は、独立に、水素またはRであり、
は、独立に、水素、R、またはヘテロ原子で置換された基、官能基、飽和基もしくは不飽和基(好ましくは、アルキル、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル(しばしばメタクリロキシアルキルとも称される)、メタクリロイルオキシプロピル(しばしばメタクリロキシプロピルまたはプロピルメタクリレートとも称される)、またはビニル基の群から選択され、より好ましくは、メチル、クロロプロピル、ビニル、またはメタクリロイルオキシプロピル基である)であり、
は、独立に、水素またはRであり、
ただし、R、R、およびR基の少なくとも1種は水素である)の、シロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサンが調製される。好ましくは、すべてのR基およびR基であるすべてのR〜R基がメチル基である。
【0023】
結果として得られるSiH官能性分岐シロキサン、好ましくは式(I)のSiH官能性分岐シロキサンは、SiH基がシロキサンの末端位置のみにあるもの、ペンダント位置のみにあるもの、または末端およびペンダント位置に混在するものであってもよい。
【0024】
使用されるSiH官能性シロキサンは、SiH基がシロキサン中の末端位置にのみ存在するもの、ペンダント位置にのみ存在するもの、または末端およびペンダント位置に混在するものであってもよい。使用されるSiH官能性シロキサンは、例えば、直鎖ポリメチルヒドロシロキサン、例えば、Gelest Inc.からのHMS−993、直鎖ポリジメチルメチルヒドロシロキサン、例えば、Gelest Inc.からのHMS−031および/またはHMS−071、直鎖α,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンおよび/もしくは1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、比較的高分子量のオリゴマー、例えば、Gelest Inc.からのDMS−H03および/もしくはDMS−H11、環状ポリメチルヒドロシロキサン、例えば、テトラメチルシクロテトラシロキサンもしくはペンタメチルシクロペンタシロキサン、ならびに環状ポリジメチルメチルヒドロシロキサン、例えば、ヘプタメチルシクロテトラシロキサンおよび/もしくはノナメチルシクロペンタシロキサン、またはこれらの混合物であってもよい。より好ましく使用されるSiH官能性シロキサンは、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、DMS−H03、HMS−993(各々Gelest Inc.から)、およびペンタメチルシクロペンタシロキサンである。
【0025】
使用されるSiH基を含まないシロキサンは、例えば、直鎖ポリジメチルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンまたは環状ポリジメチルシロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/もしくはデカメチルシクロペンタシロキサンであってもよい。好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンが使用される。
【0026】
使用されるトリアルコキシシランは、原則としてすべてトリアルコキシシラン(all trialkoxysilane)であってもよい。使用されるトリアルコキシシランは、アルコキシ基がすべて同一であるもの、すべて異なるもの、または一部が同一であるものであってもよい。使用されるトリアルコキシシランは、特に、トリエトキシシラン、好ましくは、メチルトリエトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、例えば、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、ハロゲン含有または擬ハロゲン含有アルキルトリアルコキシシラン、特に、アルキルトリエトキシシラン、例えば、クロロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、トリアルコキシシラン、特に、官能基を有するトリエトキシシラン、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、またはジヒドロ−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]フラン−2,5−ジオンであってもよい。分岐単位として有機官能化トリアルコキシシランを使用(平衡化により導入される)すると有利であろう。
【0027】
末端封鎖トリアルキルシロキシ単位、特に、トリメチルシロキシ単位(M単位)および/またはジアルキルヒドロシロキシ単位、特に、ジメチルヒドロシロキシ単位(M単位)の比率、鎖延長ジアルキルシロキシ単位、特に、ジメチルシロキシ単位(D単位)および/またはアルキルヒドロシロキシ単位、特に、メチルヒドロシロキシ単位(D単位)の比率、ならびに鎖分岐アルキルシロキシ単位、特に、メチルシロキシ単位(T単位)および/または官能基で置換されたT単位の比率は、幅広い範囲内で変化してもよい。M単位およびM単位全体の合計対T単位のモル比は、好ましくは3:1〜1:1である。T単位のモル量がM単位のそれを超える場合は、望ましくない高度に架橋した巨大分子の樹脂に近いゲルが得られる。
【0028】
反応混合物は、成分を任意の方法で混合することにより得てもよい。好ましくは、まず最初にSiH官能性シロキサン、SiH基を含まないシロキサン、および場合により置換されたトリアルコキシシランを混合する。
【0029】
好ましくは、出発物質すなわちSiH官能性シロキサン、SiH基を含まないシロキサン、およびトリアルコキシシランを混合した後に、加水分解および縮合を触媒する少なくとも1種のブレンステッド酸触媒を加える。触媒は、反応混合物に全部もしくは一部をそのまま添加してもよいし、または反応中に任意の順序で計量添加してもよい。
【0030】
好ましくは、まず最初に出発物質を混合し、次いで触媒を加え、次いで水を加える。
【0031】
使用されるブレンステッド酸触媒は、シロキサン用として先行技術より周知の酸(平衡化酸(equilibration acid))すなわち、鉱酸、例えば、硫酸であってもよいが、スルホン酸、酸性アルミナ、または酸性イオン交換樹脂、例えば、Amberlite(登録商標)、Amberlyst(登録商標)、またはDowex(登録商標)、およびLewatit(登録商標)の商標名で周知の製品であってもよい。
【0032】
本発明による方法においては、天然のイオン交換体、例えば、ゼオライト、モンモリロナイト、アタパルガイト、ベントナイトおよび他のケイ酸アルミニウムに加えて、合成イオン交換体も使用することができる。後者は、好ましくは、酸性度の異なる多数の「固定基(anchor group)」が組み込まれたフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体をベースとする水不溶性3次元高分子量マトリックスを有する固体(通常は粒子形態)である。
【0033】
本発明による方法に使用されるブレンステッド酸触媒は、好ましくは、欧州特許第1439200号に記載されているものである。この文書および当該明細書に引用されている先行技術の文書を本明細書に参考として組み込み、本発明の開示内容の一部を構成するものと見なす。
【0034】
本発明による方法に使用される触媒が少なくとも1種の酸(触媒1)および少なくとも1種の酸性イオン交換樹脂(触媒2)である場合は有利であろう。使用される酸は、鉱酸、好ましくは硫酸および/または好ましくは有機スルホン酸、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸であってもよい。この混合物は、好ましくは、反応混合物にそのまま添加される。使用される触媒は、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホン酸イオン交換樹脂、好ましくはLewatit(登録商標)K2621(Bayer Material Science)の混合物である。
【0035】
使用される触媒が2種の触媒1および2を含む場合、出発物質の混合物に触媒1をまず最初に、好ましくは全部を加え、次いで水を加え、そして触媒2を、好ましくは水の添加が完了した後になって添加すると有利であろう。しかしながら、水を加える前に触媒1および2を両方とも出発物質に加えてもよい。
【0036】
本発明による方法において、反応混合物に添加される酸性触媒の好ましい量は、使用される出発物質の質量の合計(すなわち、SiH官能性シロキサン、SiH基を含まないシロキサン、およびトリアルコキシシランの合計)を基準として、0.01〜10重量%である。使用される触媒の種類および濃度に応じて、この範囲の特定の部分範囲が好ましい場合もある。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸は、0.05重量%〜0.5重量%の量で使用することが特に好ましい。使用される触媒がイオン交換樹脂単独の場合は、使用される触媒の質量は、好ましくは3〜10重量%である。使用される触媒が鉱酸および/または有機スルホン酸とイオン交換樹脂との組合せである場合は、使用されるイオン交換樹脂の質量は、好ましくは3〜6重量%である。
【0037】
本発明による方法においては、使用されるトリアルコキシシラン1モル当たり好ましくは0.5〜30molの水が使用される。加水分解および縮合の場合は、三官能性トリアルコキシシラン1モル当たり好ましくは1〜5molの水が使用される。水は、1段階で添加してもよいし、または好ましくはより長時間かけて計量添加してもよい。この量の水を選択することにより、通常は相分離は起こらない。適切であれば、より良好に均質化させるために、水を、シロキサンの総重量を基準として少量の短鎖アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)と混合してもよい。少量とは、水を完全にまたは部分的に反応混合物中に均質化させるのに十分であり、かつ分離相を形成させない量と定義される。
【0038】
本発明による方法において実施される反応は、好ましくは、0℃〜100℃の温度で実施される。好ましくは、20〜60℃の温度で反応(加水分解、縮合、および平衡化反応を同時に実施)を実施する。
【0039】
反応完結後、縮合による揮発性副生成物を、例えば、温和な減圧蒸留によって除去してもよい。必要または所望により、中和を、例えば、塩基性塩、好ましくは、炭酸水素ナトリウムを用いて実施してもよい。
【0040】
こうして得られた本発明の鎖分岐ヒドロシロキサンは、好ましくは、揮発性低分子量化合物をまったくまたはごく少量しか含まない、好ましくは、無色透明の安定な液体である。反応体混合物中に計量された、すなわち反応前に測定されたSiH当量と、本発明による方法によって調製されたヒドロシロキサン中で測定されたSiH当量(すなわち反応後)とは、分析精度の範囲内で一致し、これは、使用したSiH基がかなり実質的に保持されていることを示している。
【0041】
本発明による方法により、シロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサン、特に、式(I)のものを調製することが可能になる。シロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサンは、好ましくは、Haake RV12ブランドの回転粘度計を用いて25℃で測定された粘度が10〜2000mPa・s、好ましくは15〜600mPa・sである。シロキサン鎖に分岐を有する本発明のヒドロシロキサンの平均分岐度は、好ましくは1〜10、優先的には1〜5である。本発明のシロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサンは、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンの調製に使用することができる。
【0042】
本発明による方法の好ましい実施形態においては、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンは、本発明に従い調製されるシロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサン、好ましくは、式(I)のヒドロシロキサンの全部または一部を、1分子当たり少なくとも1個、好ましくは正確に1個の二重結合を有する化合物と、貴金属触媒、特に、白金触媒下のヒドロシリル化により反応させることによって調製される。この反応により、好ましくは、一般式(II)
【化2】

(式中、
nおよびnは、各々独立に、0〜500、好ましくは10〜200、特に15〜100であり、かつ(n+n)は、<500、好ましくは<200、特に<100であり、
mおよびmは、各々独立に、0〜60、好ましくは0〜30、特に0.1〜25であり、かつ(m+m)は、<60、好ましくは<30、特に<25であり、
kは、1〜10、好ましくは1〜5であり、
Rは、直鎖、環状、または分岐の、脂肪族または芳香族の、飽和または不飽和の、1〜20個までの炭素原子を有する炭化水素基の群からの少なくとも1種の基であり、好ましくはメチル基であり、より好ましくは、すべてのR基がメチル基であり、
は、Rおよび/または
CH−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−(SO)−R’’
CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’
CH−RIV
CH−CH−(O)x’−RIV
CH−CH−CH−O−CH−CH(OH)−CHOH
【化3】

CH−CH−CH−O−CH−C(CHOH)−CH−CH
(式中、
xは、0〜100、好ましくは0〜50であり、
x’は、0または1であり、
yは、0〜100、好ましくは0〜50であり、
zは、0〜100、好ましくは0〜10であり、
R’は、場合により置換された(例えば、アルキル基、アリール基、またはハロアルキルもしくはハロアリール基で置換された)1〜12個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基であり、
R’’は、水素基または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、−C(O)−R’’’基(式中、R’’’はアルキル基である)、−CH−O−R’基、アルキルアリール基(例えばベンジル基)、−C(O)NH−R’基であり、
IVは、場合により置換された、例えば、ハロゲンで置換された、1〜50個、好ましくは9〜45個、優先的には13〜37個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
SOは、スチレンオキシド基−CH(C)−CH−O−である)であり、
は、Rおよび/またはRであってもよく、
は、R、R、および/またはアルキル、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピル、もしくはビニル基の群から選択される、ヘテロ原子で置換された飽和もしくは不飽和の官能性有機基であってもよく、
ただし、R、R、およびRの少なくとも1種の置換基はRではない)の共重合体が得られる。シロキサン鎖の異なるモノマー単位もポリオキシアルキレン鎖の異なるモノマー単位も、交互ブロック構造を有していてもよいし、またはランダムに分布していてもよい。
【0043】
本発明の分岐ヒドロシロキサンの貴金属触媒下におけるヒドロシリル化は、例えば、先行技術において、例えば、欧州特許第1520870号に記載されているように実施してもよい。欧州特許第1520870号の文書を本明細書において参考として組み込み、本発明の開示内容の一部を構成するものと見なす。
【0044】
使用される1分子当たり少なくとも1個の二重結合を有する化合物は、例えば、α−オレフィン、ビニルポリオキシアルキレン、および/またはアリルポリオキシアルキレンであってもよい。好ましくは、ビニルポリオキシアルキレンおよび/またはアリルポリオキシアルキレンが使用される。特に好ましいビニルポリオキシアルキレンは、例えば、モル質量が100g/mol〜5000g/molの範囲にあるビニルポリオキシアルキレンであり、これは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはスチレンオキシドモノマーからブロック状またはランダムな分布で形成されるものであってもよく、ヒドロキシ基を有するかまたはメチルエーテル基もしくはアセトキシ基で末端封鎖されているかのいずれかであってもよい。特に好ましいアリルポリオキシアルキレンは、例えば、モル質量が100g/mol〜5000g/molの範囲にあるアリルポリオキシアルキレンであり、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはスチレンオキシドモノマーからブロック状またはランダム分布で形成されたものであってもよく、ヒドロキシ基を有するかまたはメチルエーテル基もしくはアセトキシ基で末端封鎖されているかのいずれかであってもよい。1分子当たり少なくとも1個の二重結合を有する化合物としては、実施例に具体的に述べるα−オレフィン、ビニルポリオキシアルキレン、および/またはアリルポリオキシアルキレンを使用することが特に好ましい。
【0045】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態においては、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンは、本発明に従い調製されるシロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサン、好ましくは式(I)のヒドロシロキサンの全部または一部を、1分子当たり1個のヒドロキシル基を有する化合物と、ルイス酸触媒下の脱水素結合により反応させることによって調製される。ヒドロキシ官能性化合物と本発明により調製された分岐ヒドロシロキサン、特に、式(I)のものとのルイス酸触媒下における脱水素結合は、先行技術に記載されたように実施してもよい。好ましくは、脱水素結合は、独国特許出願公開第102005004676号に記載されたように実施され、これを本明細書に参考として組み込み、本発明の開示内容の一部を構成するものと見なす。
【0046】
この脱水素結合により、好ましくは、一般式(III)
【化4】

(式中、
nおよびnは、各々独立に、0〜500、好ましくは10〜200、優先的には15〜100であり、かつ(n+n)は、<500、好ましくは<200、優先的には<100であり、
mおよびmは、各々独立に、0〜60、好ましくは0〜30、優先的には0.1〜25であり、かつ(m+m)は、<60、好ましくは<30、優先的には<25であり、
kは、1〜10、好ましくは1〜5であり、
Rは、1〜20個までの炭素原子を有する直鎖、環状、または分岐の脂肪族または芳香族の飽和または不飽和炭化水素基の群からの少なくとも1種の置換基、好ましくはメチル基であり、より好ましくは、すべてのR基がメチル基であり、
は、Rおよび/または
O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−(SO)−R
(式中、x、y、z、R’、およびSOは、それぞれ式(II)について定義された通りであり、
は、場合によりヘテロ原子で置換された、直鎖、環状、または分岐の飽和または不飽和アルキル基である)であり、
は、Rおよび/またはRであってもよく、
は、R、R、および/またはアルキル、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピル、もしくはビニル基から選択される、ヘテロ原子で置換された飽和もしくは不飽和の官能性有機基であってもよく、
ただし、R、R、およびR基の少なくとも1種はRではない)の共重合体が得られる。
【0047】
使用されるヒドロキシ官能性化合物は、好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリオキシアルキレンである。特に好ましい化合物は、例えば、モル質量が100g/mol〜5000g/molの範囲にあるメチルポリオキシアルケノールまたはブチルポリオキシアルケノールであり、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはスチレンオキシドモノマーをブロック状またはランダムに分布させて形成されるものであってもよい。ヒドロキシ官能性化合物としては、実施例に具体的に述べるヒドロキシ官能性ポリオキシアルキレンを使用することが特に好ましい。
【0048】
シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンの調製に、本発明のシロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサンを使用することにより、シロキサン鎖に分岐を有する対応する有機変性ポリシロキサン、特に、式(II)または(III)のものを得ることが可能になる。これらの本発明のシロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンまたは本発明に従い調製されたものを、例えば、界面活性なシリコーン界面活性剤として使用してもよい。
【0049】
本発明に従い特許請求される有機変性、特に、ポリエーテル変性された分岐シロキサン(k≧1)は、単独でも他の非分岐有機変性シロキサン(k<1)とのブレンド物であっても、界面活性成分としての工業用途が見いだせるであろう。より詳細には、本明細書に記載されるブレンド物は、ポリウレタンフォームの製造において、例えば、整泡剤として使用されるこの種の界面活性剤の作用範囲を広く定めることを可能にする。
【0050】
本発明に従い特許請求される有機変性、特にポリエーテル変性された分岐シロキサン(k≧1)を非分岐シロキサンとブレンドすることにより有益な界面活性成分である混合物を得ることができるが、混合比に応じて、1分子当たりの平均分岐度が1を超えてもよいことは明白である。本発明に従い特許請求される有機変性、特に、ポリエーテル変性された分岐シロキサン(k≧1)と、ケイ素を含まない化合物、例えば、溶媒、特に、グリコールまたはポリエーテルとを幅広い範囲内で混合できることも明白である。このような混合物は有益な界面活性組成物にもなり得る。この場合、29Si NMRにより測定される1分子当たりの平均分岐度は、その性質上、変化することはない。
【0051】
以下に提示する実施例において本発明の一例を説明するが、本実施例に具体的に述べる実施形態に本発明を限定する意図はなく、その適用範囲は本文全体および特許請求の範囲から明白である。
【実施例】
【0052】
実施例に具体的に述べる粘度は、Haake RV12ブランドの回転粘度計を用いて25℃で測定されたものである。平均分岐度は、分子内のケイ素原子上の分岐の数(T単位の数)の全分子の平均値を示す。
【0053】
実施例1(本発明による):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.2g(0.248mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン138.3g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.1gを、精密ガラス撹拌器(precision glass stirrer)、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ッ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸(Sigma Aldrichより入手可能)0.16mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水13.4gおよびメタノール20mlを撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約50mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。その後、混合物の反応を40℃でさらに4時間継続させ、炭酸水素ナトリウム5.7gを撹拌しながら加えて、混合物を濾過した。水素含有量が1.62eqSiH/kg(理論値=1.64eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。結果として得られた生成物の29Si NMRスペクトルを記録するためにBruker DPX 400 NMRシステムを使用し、内蔵ソフトウェアで評価を実施した。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は2.0であった。
【0054】
実施例2(本発明による):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.2g(0.248mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン138.3g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.1gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ッ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂(Lewatit(登録商標)K 2621、水分含有率10重量%(カール・フィッシャー(Karl-Fischer)法に基づき測定))17.1gを加えて、混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水6.7gおよびメタノール10mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約50mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。その後、混合物の反応を40℃でさらに4時間継続させ、濾過した。水素含有量が1.60eqSiH/kg(理論値=1.64eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は1.8であった。
【0055】
実施例3(本発明による):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.2g(0.248mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン138.3g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.1gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.16mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水13.4gおよびメタノール20mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約50mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.7gで中和した後、濾過し、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K 2621を17.1gを加え、混合物を40℃で4時間撹拌し、濾過した。粘度が35mPa・sであり水素含有量が1.60eqSiH/kg(理論値=1.64eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は2.7であった。
【0056】
実施例4(本発明によらない):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.2g(0.248mol)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.1gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.08mlを加えて混合物を50℃で6時間撹拌した。30分以内に、脱イオン水6.7gおよびメタノール10mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約50mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。固体である透明なゲルケーキを得た。
【0057】
実施例5(本発明によらない):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.2g(0.248mol)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.1gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.08mlを加えて混合物を50℃で6時間予備平衡化(preequilibrated)させた。水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン138.3gを室温で加え、30分間撹拌した後、脱イオン水6.7gおよびメタノール10mlの混合物を15分以内に滴下した。30分間撹拌した後、混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約50mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.7gを撹拌しながら加え、濾過した。水素含有量が、標的の計算値である1.65eqSiH/kgに対しわずか0.92eqSiH/kgである無色透明な液体を得た。
【0058】
実施例6(本発明による):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)44.6g(0.25mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン139.4g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)95.8gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.15mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水6.75gおよびエタノール6.75gを撹拌しながら滴下した後、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K 2621(水分含有率は実施例2と同じ)15gを加えた。40℃で1時間撹拌した後、5mbarで過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。イオン交換樹脂を濾去し、炭酸水素ナトリウム5.6gを撹拌しながら30分間で加え、混合物を濾過した。粘度が23.3mPa・sであり、水素含有量が1.61eqSiH/kg(理論値=1.65eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は3.7であった。
【0059】
実施例7(本発明による):
精密ガラス撹拌器、環流冷却器、および内部温度計を取り付けた500mlの四ツ口フラスコ内で、実施例3に従い調製された、水素含有量が1.60eqSiH/kgである分岐ヒドロシロキサン100gおよび平均分子量が1502g/mol(ヨウ素価により決定)、プロピレンオキシド含有量が58重量%、エチレンオキシド含有量が42重量%であるメチル末端封鎖アリルポリオキシアルキレン328.5gを撹拌しながら70℃に加熱した。欧州特許第1520870号に従い改質された白金(0)触媒の形態にある白金5ppmをシリンジで加えた。ガス容量測定手段により測定された転化率は2.5時間後に定量的になった。SiC結合を有する黄色透明な生成物の粘度は318mPa・sであった。
【0060】
実施例8(本発明による):
まず最初に、精密ガラス撹拌器、環流冷却器、滴下漏斗、および内部温度計を取り付けた500mlの四ツ口フラスコ内で、トルエン100g中に、平均分子量が1439g/mol(OH価により決定)、プロピレンオキシド含有量が58%、エチレンオキシド含有量が42%であるヒドロキシ官能性ブチルポリオキシアルキレン190gを100℃で装入し、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン0.25gを加えた。実施例3に記載された分岐ヒドロシロキサン60gを45分間かけて滴下した。著しい気体発生が認められた。100℃で2時間反応させた後、ガス容量測定手段により測定された転化率が定量的になった。反応混合物をひだ付き濾紙で濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターを用いて70℃、10mbarで留去した。わずかに濁った生成物の粘度は219mPa・sであった。
【0061】
実施例9(本発明による):
まず最初に、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)42.1g(0.24mol)、水素含有量が15.71eqSiH/kgであるポリメチルヒドロシロキサン25.1g、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン126.4g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)82.6gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.167mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水6.4gおよびエタノール8.1mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約10mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で2時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.5gで中和して濾過した後、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K2621を16.6gを加え、混合物を40℃で4時間撹拌して、濾過した。粘度が20.8mPa・sであり、水素含有量が3.01eqSiH/kg(理論値=3.08eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は3.05であった。
【0062】
実施例10(本発明による):
精密ガラス撹拌器、環流冷却器、および内部温度計を取り付けた500mlの四ツ口フラスコ内で、実施例9に従い調製された水素含有量が3.01eqSiH/kgである分岐ヒドロシロキサン60gおよび平均分子量が848g/mol(ヨウ素価により決定)、プロピレンオキシド含有量が26重量%、エチレンオキシド含有量が74重量%であるヒドロキシ官能性アリルポリオキシアルキレン204.8gを撹拌しながら70℃に加熱した。欧州特許第1520870号に従い改質された白金(0)触媒の形態にある白金5ppmをシリンジで加えた。ガス容量測定手段により測定された転化率が3時間後に定量的になった。SiC結合を有する黄色透明な生成物の粘度は219.0mPa・sであった。
【0063】
実施例11(本発明による):
まず最初に、ビニルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)VTEO)46.7g(0.245mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン137.7g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)92.9gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.167mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水6.6gおよびエタノール8.3mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約10mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で2時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.5gで中和して濾過した後、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K2621を16.6gを添加し、混合物を40℃で4時間撹拌し、濾過した。粘度が18.2mPa・sであり、水素含有量が1.58eqSiH/kg(理論値=1.635eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は2.4であった。
【0064】
実施例12(本発明による):
まず最初に、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(DegussaからのDynasylan(登録商標)MEMO)57.6g(0.231mol)、水素含有量が3.09eqSiH/kgであるα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン130.2g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)87.9gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.165mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水6.3gおよびエタノール8.0mlの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約10mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で2時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.5gで中和して濾過した後、予め乾燥させたスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K2621を16.5gを加え、混合物を40℃で4時間撹拌して濾過した。粘度が23.6mPa・sであり、水素含有量が1.59eqSiH/kg(理論値=1.55eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルより求めた平均分岐度は2.2であった。
【0065】
実施例13(本発明による):
まず最初に、水素含有量が15.71eqSiH/kgであるポリメチルヒドロシロキサン54.6g、メチルトリエトキシシラン(Evonik Degussa GmbHからのDynasylan(登録商標)MTES)3.5g(0.02mol)、ヘキサメチルジシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)1.3g、およびデカメチルシクロペンタシロキサン(Gelest Inc.より入手可能)191.9gを、精密ガラス撹拌器、内部温度計、滴下漏斗、および蒸留装置を備えた四ツ口フラスコに室温で撹拌しながら装入し、トリフルオロメタンスルホン酸0.15mlを加えて混合物を30分間撹拌した。さらに30分以内に、脱イオン水0.54gおよびエタノール0.54gの混合物を撹拌しながら滴下し、混合物をさらに30分間撹拌した。反応混合物を40℃で1時間加熱した後、水流ポンプで約10mbarに減圧しながら過剰の水およびアルコールを40℃で1時間留去した。炭酸水素ナトリウム5.0gで中和して濾過した後、予め乾燥したスルホン酸陽イオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K2621(水分含有率は実施例2と同じ)15.0gを加え、混合物を70℃で4時間撹拌して、濾過した。粘度が595.2mPa・sであり、水素含有量が3.50eqSiH/kg(理論値=3.53eqSiH/kg)である無色透明な液体を得た。29Si NMRスペクトルから求めた平均分岐度は3.52であった。
【0066】
実施例14(本発明による):
精密ガラス撹拌器、環流冷却器、および内部温度計を取り付けた500mlの四ツ口フラスコ内で、実施例13に従い調製された水素含有量が3.50eqSiH/kgである分岐ヒドロシロキサン81gを撹拌しながら70℃に加熱し、欧州特許第1520870号に従い改質された白金(0)触媒の形態にある白金5ppmをシリンジで加えた。ヘキサデセン(Sigma Aldrichより入手可能)57.8gおよび平均モル質量が409g/mol(ヨウ素価により決定)であるヒドロキシ官能性アリルポリオキシエチレン18.4gを滴下漏斗を用いて段階的に計量添加した。ガス容量測定手段により測定された転化率は3時間後に99%となった。わずかに濁った生成物の粘度は19640mPa・sであった。
【0067】
本発明の実施例は、本発明による方法を用いることにより、理論的に予想されるSiH基の比率を比較例のように著しく低下させることなく、SiH官能性分岐シロキサンを調製できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種またはそれ以上のSiH官能性シロキサン、
b)1種またはそれ以上のSiH基を含まないシロキサン、および
c)1種またはそれ以上のトリアルコキシシラン
を含む混合物を、少なくとも1種のブレンステッド酸触媒の存在下に水を加えて転化させることによってSiH官能性分岐シロキサンを調製する方法であって、前記反応が1回の処理工程で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
一般式(I)
【化1】

(式中、
nおよびnは、各々独立に、0〜500であり、かつ(n+n)は、<500であり、
mおよびmは、各々独立に、0〜60であり、かつ(m+m)は、<60であり、
kは、1〜10であり、
Rは、1〜20個までの炭素原子を有する直鎖、環状、または分岐の脂肪族または芳香族の飽和または不飽和炭化水素基の群からの少なくとも1種の基であり、
は、独立に、水素またはRであり、
は、独立に、水素、R、またはアルキル、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピル、もしくはビニル基の群から選択される、ヘテロ原子で置換された基、官能基、有機基、飽和基もしくは不飽和基であり、
は、独立に、水素またはRであり、
ただし、R、R、およびR基の少なくとも1種は水素である)の、シロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサンが調製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応が、0℃〜100℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
トリアルコキシシラン1モル当たり0.5〜30molの水が使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、使用される出発物質の質量の合計を基準として0.01〜10重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
使用される前記触媒が、少なくとも1種の酸および少なくとも1種の酸性イオン交換体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記触媒が、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホン酸イオン交換体の混合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
調製される前記SiH官能性分岐シロキサンが、SiH基が前記シロキサンの末端位置のみにあるもの、ペンダント位置のみにあるもの、または末端位置およびペンダント位置に混在するものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
平衡化において分岐単位として有機官能化トリアルコキシシランが含まれることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により調製される、シロキサン鎖に分岐を有するヒドロシロキサン。
【請求項11】
粘度が10〜2000mPa・sであることを特徴とする、請求項10に記載のヒドロシロキサン。
【請求項12】
シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサンを調製するための、請求項10または11に記載のヒドロシロキサンの使用。
【請求項13】
請求項10または11に記載のヒドロシロキサンが、白金触媒下のヒドロシリル化によって、1分子当たり1個の二重結合を有する化合物と完全にまたは部分的に反応することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記反応が、ビニルポリオキシアルキレンおよび/またはアリルポリオキシアルキレンを用いて実施されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項10または11に記載のヒドロシロキサンが、ルイス酸触媒下の脱水素結合により、1分子当たり1個のヒドロキシル基を有する化合物と完全にまたは部分的に反応することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項に従い調製される、シロキサン鎖に分岐を有する有機変性ポリシロキサン。
【請求項17】
請求項16に記載のポリシロキサンの、界面活性なシリコーン界面活性剤としての使用。

【公表番号】特表2011−504195(P2011−504195A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534426(P2010−534426)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062662
【国際公開番号】WO2009/065644
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】