説明

Tリンパ球の増殖および/またはケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患、特にアトピー性皮膚炎および乾癬を処置するための、ピルリンドールの使用

本発明は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患、特に乾癬および神経皮膚炎の処置のための医薬品を製造するための、必要であれば適切な補助剤および添加物を伴う、ピルリンドールの使用、ならびにピルリンドールを含む組成物およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tリンパ球の増殖および/またはケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患、特に乾癬およびアトピー性皮膚炎の処置のための医薬品を製造するための、必要であれば適切な添加物および補助物質を伴う、ピルリンドールの使用、ならびにピルリンドールを含む組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
以下の式で示されるピルリンドール(2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−8−メチル−1H−ピラジノ[3,2,1−jk]カルバゾール):
【化1】

は、抗うつ薬として特徴付けられている四環系化合物である(Tanghe A, Geerts S, Van Dorpe J et al., Acta Psychiatr Scand 96/2: 134-141, 1997; Bruhwyler J, J liegeois JF, Gerardy J & al, Behav Pharmacol 9: 731-737, 1998; Ginsberg F, Joos E, Greczy J & al, J Neuroskelet Pain 6/2:5-17, 1998)。分子レベルでは、その作用機序は完全には解明されていない。提案されている作用機序はモノアミンオキシダーゼAの選択的かつ可逆的阻害からなる(De Wilde J, Mertens C, Van Dorpe J et al., Hum Psychopharmacol: 12/1: 41-46, 1997; Medvedev AE, Shvedov VI, Chulkova TM et al., Neurochem Res 21/12: 1521-1526, 1996.)。二次的に、それはノルアドレナリンおよび5−ヒドロキシトリプタミンの再摂取に対する阻害効果を発揮する。それはドーパミン作動性およびコリン作動性の系に対しては効果を有さない。それはチラミンおよびノルアドレナリン抑制効果の増幅に関して低い潜在能力しか有さない。
【0003】
ピルリンドールは、広範囲にわたる初回通過効果に起因して、20〜30%の範囲の絶対的生物学的利用能を有する。急性および慢性の中毒学的研究では、常用量の該薬物についての潜在的に危険な効果は示されていない。それは、測定可能な、変異原性、染色体異常誘発性または発癌性の特性を示さない。(Bruhwyler J, Liegeois JF, Geczy J, Pharmacol Res. 1997 Jul;36(1):23-33.)。
【非特許文献1】Tanghe A, Geerts S, Van Dorpe J et al., Acta Psychiatr Scand 96/2: 134-141, 1997
【非特許文献2】Bruhwyler J, J liegeois JF, Gerardy J & al, Behav Pharmacol 9: 731-737, 1998
【非特許文献3】Ginsberg F, Joos E, Greczy J & al, J Neuroskelet Pain 6/2:5-17, 1998
【非特許文献4】De Wilde J, Mertens C, Van Dorpe J et al., Hum Psychopharmacol: 12/1: 41-46, 1997
【非特許文献5】Medvedev AE, Shvedov VI, Chulkova TM et al., Neurochem Res 21/12: 1521-1526, 1996
【非特許文献6】Bruhwyler J, Liegeois JF, Geczy J, Pharmacol Res. 1997 Jul;36(1):23-33
【非特許文献7】Wetzel et al. Arch. Dermatol. Res., April 2003
【非特許文献8】Baulieu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:4279-4284
【非特許文献9】El-Domyati et al., Exp. Dermatol., 2002; 11:398-405
【非特許文献10】Schopf et al. J. Am. Acad. Dermatol. 2002; 46:886-91
【非特許文献11】Baughman et al. 1995, Mol. Cell. Biol., 15: 4395-4402
【非特許文献12】Liu et al. 1991, Cell, 66: 807-815
【非特許文献13】Manalan and Klee 1983, PNAS, 87: 4291-4295
【特許文献1】WO 95/040461号公報
【特許文献2】WO 90/14826号公報
【特許文献3】EP 0 378 321
【特許文献4】WO 95/09857号公報
【特許文献5】WO 96/35299号公報
【特許文献6】EP 0 626 385
【特許文献7】GB 1491509
【特許文献8】DE 294 10 80
【非特許文献14】Gazengel, Jean Marie; Lancelot, Jean Charles; Rault, Sylvain; Robba, Max, Journal of Heterocyclic Chemistry (1990), 27(7), 1947-51
【非特許文献15】Boehncke et al., Arch. Dermatol. Res., 1994, 286:325-330
【非特許文献16】Geba et al., Immunology 104:235-242, 2001
【非特許文献17】Gaspari & Katz, Current Protocols in Immunology. 1991, 4.2.1-4.2.5
【非特許文献18】Wang et al., Clin Exp Allergy 29:271-279, 1999
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明
驚くべきことに、ピルリンドールがケラチノサイトおよび/またはTリンパ球(T細胞)の増殖を首尾良く阻害でき、したがって、驚くべきことに、所望であれば適切な補助剤(adjuvants)および添加物と組み合わせて、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の発症を処置および/または予防するために適していることが見出されている。そのような疾患の例は、乾癬、特に尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬(psoriasis inversa)、アトピー性皮膚炎、光線性角化症、表皮剥離性角質増殖症などの角質増殖、固定性扁豆状角化症ならびに毛孔性角化症、魚鱗癬(ichthyoses)、円形脱毛症、全頭脱毛症、部分脱毛症(alopecia subtotalis)、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症(morphea)、強皮症、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、接触皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕粘膜類天疱瘡(scarring mucous membrane pemphigoid)、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、じんま疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ヴィダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA皮膚疾患、多形日光疹、日光紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚の発疹、薬疹、進行性慢性紫斑病、異汗性湿疹、湿疹、固定薬疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎(periorale dermatitis)、ざ瘡、酒さ、異常瘢痕、ケロイドおよび白斑である。好ましい疾患は、アトピー性皮膚炎および乾癬、特に乾癬である。
【0005】
したがって、本発明は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防のための医薬品を製造するための、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の使用に関する。必要であれば、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を適切な補助剤および添加物と組み合わせることができる。
【0006】
好ましい実施形態では、前記疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、光線性角化症、表皮剥離性角質増殖症などの角質増殖、固定性扁豆状角化症、毛孔性角化症および魚鱗癬から選択される。
【0007】
特に好ましい疾患は、乾癬およびアトピー性皮膚炎、特に乾癬である。
【0008】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患
本発明の意義の範囲内のケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患とは、患者が、局所的に、あるいは全身にわたって、健康な表皮と比べて肥厚した表皮を示す疾患である。肥厚した表皮とは、健康な皮膚と比べて、少なくとも約10%、好ましくは約30%、特に約50%、最も好ましくは約80%肥厚している表皮であるとみなされる。表皮の厚さを測定するための方法は当業者に公知である。Wetzel et al.(Arch. Dermatol. Res., April 2003)には、例えば、光干渉断層法が記載され、Baulieu et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:4279-4284)には、皮膚超音波測定法が記載されていて、両方法は、表皮の厚さを測定するための非観血的方法である。さらにまた、表皮の厚さは、例えばEl-Domyati et al.,(Exp. Dermatol., 2002; 11:398-405)またはSchopf et al.(J. Am. Acad. Dermatol. 2002; 46:886-91)に記載のように、皮膚生検のセクションで組織学的に決定することができる。表皮は皮膚の種々の領域で種々の厚さを示すため、健康な表皮と罹患表皮の厚さを比較するためには、皮膚の同様の領域のそれぞれの表皮の厚さを比較することが必要である。さらにまた、2個体間の皮膚の同一領域内では、表皮の厚さにある程度の差異が存在する。したがって、例えば、皮膚全体が疾患に冒されているわけではないことを前提条件として、罹患個体の左および右脚で表皮の厚さを測定することが好ましい。一般に、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患は皮膚の罹患領域の発赤を伴い、したがって、当業者は、単に発赤に基づいて、患者の皮膚の罹患領域を健康な皮膚の領域と識別することができる。ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患における表皮の肥厚は、例えば、局所的にしか生じえないものであるか、あるいは、乾癬の場合のように、発赤および病変のそれぞれに基づいて、識別可能には罹患していない乾癬患者の皮膚においてすでに検出可能でありうる。しかし、乾癬患者では、皮膚の罹患領域においてさらに進んだ表皮の肥厚(=病変)が検出可能でもある。本発明の意義の範囲内のケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患の例は、乾癬、特に尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬(psoriasis inversa)、アトピー性皮膚炎、光線性角化症、表皮剥離性角質増殖症を伴う角質増殖および固定性扁豆状角化症ならびに毛孔性角化症、ざ瘡、異常瘢痕、ケロイドおよび魚鱗癬である。本発明の意義の範囲内の特に好ましい疾患は、アトピー性皮膚炎および乾癬、特に乾癬である。
【0009】
表皮は主にケラチノサイトから形成され、ケラチノサイトは基底膜から外側へゆっくり移動する。この過程中、それらは増殖状態から分化した状態に変化し、最終的に死滅する。その後、死滅したケラチノサイトは皮膚の表面で角層下(subcorneous)を形成し、皮膚は絶えず死細胞を取り除く。この過程によって、皮膚の常時再生が達成される。ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患では、ケラチノサイトの分化と増殖の間のバランスが増殖側へ傾き、それにより、多数のケラチノサイト、特に増殖性ケラチノサイトを含む表皮が顕著に肥厚する。そのような疾患では、障壁機能のひずみが見出されることもよくあり、それにより、スーパー抗原または病原体が皮膚に非常に容易に浸透することができる。例えばアトピー性皮膚炎および乾癬のように炎症の増大が観察されることもよくあり、その後、それは上記皮膚の発赤を伴う。
【0010】
驚くべきことに、本発明の関連の範囲内で、ピルリンドールがT細胞の過剰増殖に対する阻害効果をも有することが観察されている。この追加の効果は、一方で、疾患パターンがケラチノサイトの過剰増殖およびT細胞の過剰増殖の両者を特徴とする疾患に関するピルリンドールおよびピルリンドールを含む組成物の有効性を増大させ、他方では、主にT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患に関してピルリンドールを使用する可能性を開く。
【0011】
本発明の意義の範囲内のT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患とは、患者が、局所的に、あるいは全身にわたって、主に皮膚において、健康な身体の領域、特に健康な皮膚と比較した場合に、増殖性T細胞の数の増加を示す疾患である。増殖性T細胞の数は、検査対象の身体の領域、特に皮膚の領域が少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、特に約50%、さらに好ましくは100%、最も好ましくは200%またはそれ以上の増殖性T細胞を含む場合に、増加したとみなされる。本明細書中で使用される用語「身体の領域」とは、例えば皮膚、造血系およびリンパ節などの任意の領域および器官をそれぞれ含みうる。用語「皮膚」とは、表皮、真皮および皮下組織を含むが、特に表皮である。増殖性T細胞の数は先行技術において公知の種々の方法によって決定することができる。SまたはG2期のT細胞の数は、例えば皮膚パンチ生検の組織学的染色によって決定することができ、あるいは皮膚パンチ生検から得られた単一細胞懸濁液を、該細胞の細胞周期の相に関するFACS解析によって検査することができる。
【0012】
本発明の意義の範囲内のT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の例は、乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、全頭脱毛症、部分脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、強皮症、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬(psoriasis inversa)、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、接触皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、じんま疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ヴィダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA皮膚疾患、多形日光疹、日光紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚の発疹、薬疹、進行性慢性紫斑病、異汗性湿疹、湿疹、固定薬疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎、酒さ、および白斑である。
【0013】
特に乾癬およびアトピー性皮膚炎は、ケラチノサイトおよびT細胞の過剰増殖の両者を特徴とする疾患であり、ピルリンドールおよびピルリンドールを含む組成物はその治療に特に適している。その理由は、それらが少なくとも2種の異なる様式の作用によって疾患を攻撃するからである。
【0014】
現在、これらの疾患を処置するための不満足な治療しか存在せず、その治療は患者の亜集団でしか有効でないことが多く、アトピー性皮膚炎または乾癬の場合の、コルチコステロイドまたはシクロスポリンの局所または全身投与などの既存の治療は深刻な副作用を伴うことがよくある。したがって、これらの疾患の治療に関する副作用を好ましくは伴わない新規医薬品に関する必要性が存在する。本発明にしたがって使用可能なピルリンドールはそのような医薬品の1つである。さらにピルリンドールはその親油性ゆえに局所適用に適しており、それにより、副作用をさらに減少させることが可能になる。
【0015】
本発明にしたがって使用可能な医薬品は局所病変の処置に使用することができ、さらに該疾患の発症の予防に使用することもできる。ゆえに、病変のない乾癬患者の早期の処置によって、例えば表皮がさらに肥厚することをピルリンドールの投与によって阻害することによって、皮膚科学的徴候を有する疾患の発症を予防することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
薬学的に許容される塩
本発明にしたがって使用可能なピルリンドールは、投与に適切な任意の数の形式で提供することができる。適切な薬学的に許容される形式には、ピルリンドールの塩またはプレフォームもしくはプロフォームが含まれる。
【0017】
薬学的に許容される塩の例には、非限定的に、無毒の無機または有機の塩、例えば酢酸由来の酢酸塩、アコニチン酸(aconitic acid)由来のアコニチン酸塩、アスコルビン酸由来のアスコルビン酸塩、安息香酸由来の安息香酸塩、桂皮酸由来の桂皮酸塩、クエン酸由来のクエン酸塩、エンボン酸(embonic acid)由来のエンボン酸塩、ヘプタン酸由来のエナント酸塩(enantate)、ギ酸由来のギ酸塩、フマル酸由来のフマル酸塩、グルタミン酸由来のグルタミン酸塩、グリコール酸由来のグリコール酸塩、塩酸由来のクロライド、臭化水素酸由来のブロミド、乳酸由来の乳酸塩、マレイン酸由来のマレイン酸塩、マロン酸由来のマロン酸塩、マンデル酸由来のマンデル酸塩、メタンスルホン酸由来のメタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸由来のナフタレン−2−スルホン酸塩、硝酸由来の硝酸塩、過塩素酸由来の過塩素酸塩、リン酸由来のリン酸塩、フタル酸由来のフタル酸塩、サリチル酸由来のサリチル酸塩、ソルビン酸由来のソルビン酸塩、ステアリン酸由来のステアリン酸塩、コハク酸由来のコハク酸塩、硫酸由来の硫酸塩、酒石酸由来の酒石酸塩、p−トルエン−スルホン酸由来のトルエン−p−硫酸塩(toluene-p-sulfate)および他の塩が含まれる。そのような塩は、当業者に公知の、先行技術に記載の方法によって製造することができる。
【0018】
薬学的に許容されるとみなされないシュウ酸由来のシュウ酸塩などの他の塩は、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を製造するための中間体として適切でありうる。
【0019】
製剤化
本発明に記載の用語「補助剤(adjuvant)」とは、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩と不都合に反応しない限り、任意の薬学的に許容される固形または液状充填剤、希釈剤またはパッケージング材料を表す。液状の生薬補助剤(galenic adjuvants)は、例えば、滅菌水、生理食塩水、糖液、エタノールおよび/または油である。錠剤およびカプセル剤を製造するための生薬補助剤には、例えば、結合剤および充填剤が含まれうる。
【0020】
ピルリンドールを含む医薬品の製造および本発明に基づく使用時のその適用は、通常、確立されている製薬技術上の方法にしたがって実行される。そのために、ピルリンドールを、適切な薬学的に許容される補助剤および担体とともに加工して医薬製剤にする。その医薬製剤は種々の徴候およびそれぞれの適用領域に適したものである。それによって、所望の放出速度、例えば急速流出(quick flush)および/または遅延および持続効果のそれぞれを示す医薬品を製造することができる。
【0021】
特に好ましい本発明の使用では、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防のために上記医薬品を局所的に供給する。
【0022】
皮膚、創傷、または粘膜への局所適用では、ピルリンドールを含む医薬品を、好ましくは、エマルジョン、ゲル、軟膏、フォーム、バンドエイド、混合相および両親媒性の、それぞれのエマルジョン系(油/水−水/油−混合相)のクリーム、リポソームまたはトランスフェロソーム(transferosome)の剤形で調製する。これらの医薬製剤は先行技術において公知であり、当業者は、過度の負担なく、ピルリンドールを、それらの医薬製剤の1種を有する医薬品として調製することができる。特に好ましい実施形態では、クリーム、特に基礎クリームDAC(Deutsche Arzneimittel Codex)Basiscremeの剤形で前記医薬品を調製する。
【0023】
局所的に適用できる別の製剤は、粉末剤、ペースト剤または溶液剤である。ペースト剤は、基剤成分として、粘中度を提供するための高い固形分を有する親油性および親水性添加物を含むことが多い。粉末剤、特に局所適用される粉末剤には、分散度ならびに流動性およびすべり特性(slideability)を増加させるため、ならびに集塊の予防のために、デンプン、例えばコムギまたはコメデンプン、フレーム分散(flame dispersion)二酸化ケイ素および/またはシリカを含ませることができる。これらの添加物は希釈剤としても機能しうる。
【0024】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に使用されるピルリンドールを含む医薬品は、軟膏、ゲル、バンドエイド、エマルジョン、ローション、フォーム、混合相または両親媒性エマルジョン系(油−水/水−油混合相)のクリーム、リポソーム、トランスフェロソーム、ペースト、または粉末として調製される。
【0025】
本発明の局所適用される医薬品の調製のための特に適切な補助剤および担体のそれぞれは、例えば、適切な基剤を製造するためのゲル形成剤としてのアルギン酸ナトリウムまたはセルロース誘導体、例えばグアールまたはキサンタン(xanthane)ガム、無機ゲル形成剤、例えば水酸化アルミニウムまたはベントナイト(betonite)(いわゆるチキソトロープ(thixotrope)ゲル形成剤)、ポリアクリル酸誘導体、例えばCarbopol(登録商標)、ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロースまたはカルボキシメチルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロース製品IntraSite(Smith & Nephew, London)である。さらにまた、生体適合性ポリオキサマー(polyoxameres)、例えば、熱可逆ゲルを形成するFloGel(登録商標)を使用することができる。さらにまた、リン脂質または両親媒性の低分子量または高分子量化合物を考慮することができる。前記ゲルは、水ベースのヒドロゲルまたは疎水性有機ゲル、例えば、低分子量および高分子量のパラフィンカルボヒドラートおよびワセリンの混合物ベースのゲルであってよい。別の合成バイオマテリアルを、ピルリンドールが、非共有結合または共有結合によって、例えば直接またはリンカーを介して結合することができる担体として使用することができる。
【0026】
当業者に公知の皮膚鎮痛性(soothing)および/または抗炎症性添加物、例えば合成的に製造された物質および/または薬用植物由来の抽出物および/または物質、特にビソボロル(bisobolol)およびパンテノールを前記医薬品に加えてもよい。さらにまた、色の調整のための着色剤、例えば黄色および/または赤色の酸化第一鉄および/または二酸化チタン、および/または香料を前記医薬品に加えることができる。
【0027】
さらに、本発明にしたがって使用可能な医薬品には乳化剤を含ませることができる。適切な乳化剤は、中性、アニオン性またはカチオン性界面活性剤、例えばアルカリセッケン、金属セッケン、アミンセッケン、硫化(sulfurated)およびスルホン化(sulfonated)化合物、逆性セッケン、長鎖脂肪アルコール、ソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタンの部分脂肪酸エステル、例えばラネット(lanette)型、羊毛脂、ラノリンまたは、油/水および/または水/油エマルジョンの製造に適した他の合成製品である。親水性有機ゲルは、例えば高分子量ポリエチレングリコールに基づいて調製することができる。このゲル型製剤は水溶性(washable)である。軟膏、クリームまたはエマルジョンの調製では、脂肪性および/または油性および/またはろう様成分の形式の脂質として、ワセリン、天然および/または合成ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、例えばモノ−、ジ−またはトリグリセリド、パラフィン油または植物油、硬化ヒマシ油またはヤシ油、ラード、合成脂肪、例えばカプリル酸、カプリン酸(caprinic)、ラウリン酸およびステアリン酸ベースの合成脂肪、例えばSoftisan(登録商標)またはトリグリセリドの混合物、例えばMiglyol(登録商標)が使用される。
【0028】
pHの値を調節するために、浸透的に効果を有する酸および塩基、例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、追加のバッファー系、例えばクエン酸塩、リン酸塩、トリスバッファー、またはトリエタノールアミンを使用することが可能である。さらにまた、保存料、例えば安息香酸メチルまたはプロピレン(パラベン)またはソルビン酸を加えることによって安定性を改善することができる。
【0029】
鼻腔適用では、点鼻薬、鼻内スプレー噴霧器または鼻クリームもしくは軟膏を使用することができる。ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の全身投与には、鼻内スプレーまたは乾燥粉末調製物ならびにエアロゾル剤形が適している。さらにまた、本発明に基づく医薬品は、圧縮およびエアロゾル剤形のそれぞれ、および乾燥粉末製剤によって吸入および吹送することができる。そのような製剤は、肺、気管支および/または喉頭における直接の領域適用(regional application)、および局所適用(local application)のそれぞれに使用することもできる。乾燥粉末製剤は、例えば活性物質のソフトペレットとして、活性物質の粉末混合物として、適切な担体、例えばラクトースおよびグルコースとともに製剤化することができる。吸入または吹送では、当業者に公知の通常使用される装置を使用することができ、その装置は鼻腔、口腔および/または咽頭腔の処置に適したものである。ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩は、超音波蒸発器を用いて投与することもできる。エアロゾル投与製剤の代わりに、噴射剤を含まない手動ポンプ系を使用することも可能である。適切には、噴射剤のエアロゾルには、界面活性補助剤、例えばミリスチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸エステル、レシチンまたはダイズレシチンを含ませるべきであろう。インサイチュの局所適用では、例えば、点滴注入用の溶液剤が適切である。
【0030】
さらにまた、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩は全身投与用の医薬品の形式で使用することができる。これらには非経口剤が含まれ、とりわけ注射剤および注入剤が含まれる。注射剤は、アンプルの形式で、あるいはいわゆるすぐに使用できる(ready-for-use)注射剤、例えばすぐに使用できるシリンジまたは使い捨てシリンジとして、および、それとは別に、複数回の吸引用の穿刺式(puncturable)フラスコ中において製剤化される。注射剤の投与は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)または皮内(i.c.)適用の形式であってよい。特に、それぞれの適切な注射製剤を、結晶の懸濁液、溶液、ナノ粒子(nanoparticular)またはコロイド分散系、例えばヒドロゾルとして製造することが可能である。
【0031】
注射用製剤は、さらに、濃縮物として製造することができ、その濃縮物は、水性等張希釈剤を用いて溶解または分散させることができる。注入剤は、等張液、脂肪性エマルジョン、リポソーム製剤およびマイクロエマルジョンの剤形で調製することもできる。注射剤と同様に、注入製剤を、希釈用の濃縮物の剤形で調製することもできる。注射用製剤は、入院患者および外来治療の両者において、例えばミニポンプによって行う、連続注入形式で適用することもできる。
【0032】
非経口薬物製剤に、例えばアルブミン、血漿、増量剤、界面活性物質、有機希釈剤、pHに影響する物質、錯化物質またはポリマー物質を、特に、タンパク質またはポリマーに対するピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の吸着に影響する物質として加えることが可能であり、あるいは、材料、例えば注射装置またはパッケージング材料、例えばプラスチックまたはガラスに対するピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の吸着を減少させる目的で、それらを加えることもできる。
【0033】
ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩は、非経口剤中のマイクロキャリアまたはナノ粒子、例えばポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)化合物(poly(meth)acrylates)、ポリ乳酸化合物(polylactates)、ポリグリコール酸化合物(polyglycolates)、ポリアミノ酸またはポリエーテルウレタンベースの微細分散粒子に結合させることができる。非経口製剤は、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を、前記医薬品に、微細分散、分散および懸濁のそれぞれの形式で、あるいは結晶の懸濁液として導入する場合、例えば「複数単位原理(multiple unit principle)」に基づいて、あるいは、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を、後に移植される製剤、例えば錠剤またはロッド中に封入する場合、「単一単位原理(single unit principle)」に基づいてデポー調製物として改変することもできる。単一単位および複数単位製剤のこれらの移植物またはデポー医薬品は、いわゆる生分解性ポリマー、例えば乳酸およびグリコール酸のポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)化合物または多糖類から構成されることが多い。
【0034】
非経口剤として製剤化される、本発明にしたがって使用可能な医薬品の製造時に添加される補助剤および担体は、好ましくは、滅菌水、pH値に影響する物質、例えば有機または無機の酸または塩基ならびにその塩、pH値調節用の緩衝物質、等張化のための物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコースおよびフルクトース、界面活性剤(tensides)および界面活性剤(surfactants)のそれぞれ、および乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸の部分エステル(例えばTween(登録商標))または、例えばポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(例えばCremophor(登録商標))、脂肪油、例えばピーナッツ油、ダイズ油またはヒマシ油、脂肪酸の合成エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび中性油(例えばMiglyol(登録商標))ならびにポリマー性補助剤、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドン、有機溶媒の溶解度を増大させる添加物、例えばプロピレングリコール、エタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールまたは錯体形成物質、例えばクエン酸塩および尿素、保存料、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルエステルおよびメチルエステル、ベンジルアルコール、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウムおよび安定剤、例えばEDTAである。
【0035】
本発明にしたがって使用可能な医薬品を懸濁剤として製剤化する場合、好ましい実施形態では、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の沈殿を予防するための増粘剤、沈降物の再懸濁能を保証するための界面活性剤および多価電解質、および/または錯体形成剤、例えばEDTAが添加される。また、活性成分と種々のポリマーの複合体を取得することが可能である。そのようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール、ポリスチロール、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)またはポリエチレングリコールソルビット脂肪酸エステルである。ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩は、封入化合物の形式で、例えばシクロデキストリンとともに、液状製剤に組み入れることもできる。特定の実施形態では、追加の補助剤として分散剤を加えることができる。凍結乾燥物の製造では、足場材料物質、例えばマンニット、デキストラン、ショ糖、ヒトアルブミン、ラクトース、PVPまたは種々のゼラチンを使用することができる。
【0036】
液状薬物製剤中にピルリンドールがその基本形状で含まれていない限りでは、ピルリンドールをその酸付加塩溶媒和物の形式で非経口剤中で使用することができる。
【0037】
別の重要な全身適用製剤は、錠剤、ゼラチン硬または軟カプセル剤、コーティング錠、粉末剤、ペレット剤、マイクロカプセル剤、圧縮長円形剤(oblongs)、顆粒剤、カシェ剤、ロゼンジ剤、チューインガムまたはサシェ剤(sachets)の剤形での経口投与である。これらの固形の経口投与製剤は遅延および持続系のそれぞれの系として製剤化することもできる。その製剤に含まれるのは、一定量の1種以上の微粉末化された活性物質を含み、例えば脂肪、ろう様もしくはポリマー物質またはいわゆる貯留系(reservoir systems)を使用することによって、マトリックスベースの拡散および侵食形式を有する医薬品である。前記医薬品が長期間にわたってピルリンドールを放出するように製剤化される場合、遅延剤および放出制御用の物質のそれぞれ、例えばフィルムまたはマトリックス形成物質、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)誘導体、(例えばEurdragit(登録商標))、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースフタラートを、有機溶液中および水性分散物の形式の両形式で、加えることができる。この関連で、生体粘着性(bioadhesive)調製物にも言及すべきであろう。生体粘着性調製物の場合、身体の粘膜と密接に接触することに起因して、身体中の滞在時間が延長される。生体粘着性ポリマーの一例は、例えばCarbomere(登録商標)の群である。
【0038】
ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を胃腸管の種々のセグメント内で制御放出するために、種々の部位で放出されるペレットの混合物を使用することが可能である。前記医薬製剤は、例えば胃液中で可溶性および胃液に耐性のフィルム、物質、化合物または組成物のそれぞれの混合物を用いてコーティングすることができる。胃腸管の種々のセクションでの放出に影響する同目的は、適切に製造された、コアを有するコーティング錠を用いて達成することもできる。その場合、コーティングは胃液中で活性成分を急速に放出し、コアは小腸の環境中で活性成分を放出する。胃腸管の種々のセクションでの制御放出の目的はマルチコーティング錠によって達成することもできる。差動的に放出可能な活性物質を含むペレットの混合物を例えばゼラチン硬カプセル中に充填することができる。
【0039】
圧縮製剤、例えば錠剤、ゼラチン硬および軟カプセル剤ならびにコーティング錠および顆粒剤の製造に使用される別の補助剤は、例えば、逆接着剤(counter glue agents)、潤滑剤および分離剤、分散剤、例えばフレーム分散二酸化ケイ素、崩壊剤(disintegrants)、例えばさまざまな種類のデンプン、PVP、セルロース、顆粒化または遅延剤としてのエステル、例えばEudragit(登録商標)、セルロースまたはCremophor(登録商標)ベースのろう様および/またはポリマー物質である。
【0040】
さらにまた、経口投与用に製剤化される医薬品には、酸化防止剤、甘味剤、例えばショ糖、キシリットまたはマンニット、食味修正剤、香味物質(flavorants)、保存料、着色剤、緩衝剤、直接圧縮賦形剤、微結晶性セルロース、デンプン、加水分解デンプン(例えばCelutab(登録商標))、ラクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、第二リン酸カルシウム、滑沢剤、充填剤、例えばラクトースまたはデンプン、ラクトースの形式、デンプン、例えばコムギまたはトウモロコシおよびコメデンプンのそれぞれの形式の結合剤、セルロースの誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはシリカ、滑石、ステアリン酸化合物、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、シリコン処理タルク、ステアリン酸、セチルアルコールまたは硬化脂肪などを含ませることができる。経口投与用の製剤化のために医薬品に加えることができる種々の物質は当業者に公知である。
【0041】
別の実施形態では、ピルリンドールまたは治療的に許容されるその塩を、特に浸透原理に基づく経口治療系、例えばGIT(胃腸治療系)またはOROS(経口浸透系)として製剤化することもできる。
【0042】
発泡錠またはタブ(tabs)もまた圧縮製剤に含まれ、それらは、経口投与することができ、ともに水に高速溶解または懸濁可能であり、迅速に飲用できるインスタント薬物製剤である。
【0043】
また経口投与製剤には、溶液剤、例えば点滴剤、液剤および懸濁剤が含まれ、それらは当技術分野において公知の方法にしたがって製造でき、それらには−上記の安定性を増大させるための補助剤および添加物に加えて−保存料および、所望であれば、摂取を容易にするための香味物質および識別を良好にするための着色剤ならびに酸化防止剤および/またはビタミンおよび甘味剤、例えば糖または人工甘味料を含ませることができる。このことは乾燥液剤にもあてはまる。乾燥液剤は使用前に水で調製される。本発明の医薬品の製剤の好ましい実施形態では、経口摂取可能な液状製剤にイオン交換樹脂を含ませることもできる。
【0044】
特殊放出製剤は、例えば、体液と接触後にガスを生成し、したがって胃液の表面に浮遊する錠剤またはペレットベースの、いわゆる浮遊薬物製剤(floating drug formulations)の構築物である。さらにまた、いわゆる電子駆動型(electronically directed)放出系を製剤化することも可能であり、その場合、外部電子刺激によって活性成分の放出を個々の要件にあわせることができる。
【0045】
経直腸で適用可能な医薬品は別の群の薬物製剤であり、それは全身投与することができ、所望であれば、局所的に有効でもありうる。それらに含まれるのは坐剤および浣腸製剤である。浣腸製剤は、この投与物を製造するための水性溶媒とともに錠剤に基づいて、調製することができる。例えばゼラチンまたは当技術分野において公知の他の担体に基づいて経直腸カプセル製剤を提供することも可能である。
【0046】
坐剤の基剤として、ハードファット、例えばWitepsol(登録商標)、Massa Estarium(登録商標)、Novata(登録商標)、ヤシ油、グリセリン/ゼラチン物質、グリセリン/セッケン−ゲルおよびポリエチレングリコールを考慮に入れることができる。
【0047】
数週間までの期間にわたる活性物質の全身放出を用いる長期適用では、圧縮移植物が適切であり、好ましくはそれはいわゆる生分解性ポリマーベースで製剤化される。
【0048】
本発明にしたがって製剤化されるピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を含む医薬品は、経皮系として製剤化することもできる。この製剤は、上述の経直腸剤形と同様に、肝臓循環および肝臓代謝のそれぞれを迂回することを特徴とする。経皮系として特に適切なものは、適切な補助剤および担体の異なる層および/または混合物に基づくバンドエイドであり、それは制御された様式で長期間または短期間にわたって活性成分を放出する能力を有する。そのような経皮系の製造時には、皮膚の浸透を改善および/または促進するために、膜浸透を増大させる物質を加えることができ、場合によっては、それは浸透促進剤、例えばオレイン酸、Azone(登録商標)、アジピン酸誘導体、エタノール、尿素、プロピレングリコールである。適切な補助剤および担体に加え、本発明にしたがって使用可能な医薬品の追加成分として、溶媒、例えばEudragit(登録商標)ベースのポリマー成分を考慮に入れることができる。
【0049】
さらに、ピルリンドールまたは薬学的に許容される塩の局所投与によって治療できる皮膚障害には経皮送達も適していて、それは皮膚以外の他の器官にも有効である。乾癬の場合、疾患は皮膚に影響するだけでなく、炎症が関節にも影響し、乾癬性関節炎が生じることが多い。ゆえに、乾癬を有する患者にピルリンドールまたは薬学的に許容される塩を局所投与すると、皮膚症状および身体の他の部分に影響する炎症の両者の処置をもたらすことができる。
【0050】
ゆえに、ピルリンドールまたは薬学的に許容される塩の局所投与はそのような皮膚障害、特に乾癬に特に適している。
【0051】
さらに、本発明は、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を含む局所用医薬品に関する。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、前記局所用医薬品は、水中油または油中水エマルジョン中で製剤化されたピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩からなることを特徴とする。好ましい局所製剤は、エマルジョン、ゲル、軟膏、フォーム、バンドエイド、混合相および両親媒性のそれぞれのエマルジョン系(油/水−水/油−混合相)のクリーム、リポソームまたはトランスフェロソームである。特に好ましい製剤には基礎クリームDAC(DAC Basiscreme)が含まれる。
【0053】
基礎クリームDAC(DAC Basiscreme)は局所使用のためのクリーム製剤である。100gのクリームは以下の組成を有する:
モノステアリン酸グリセロール60 4.0g
セチルアルコール 6.0g
中鎖トリグリセリド 7.5g
白色ワセリン 25.5g
マクロゴール−20−グリセロールモノステアラート 7.0g
プロピレングリコール 10.0g
精製水 40.0g
【0054】
好ましい実施形態では、前記局所用医薬品は、製剤全体の重量に基づいて0.01%〜10%の範囲のピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくは0.1%〜8%の範囲のピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩、さらにより好ましくは1%〜4%の範囲のピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を含有する。特に好ましいのは、これらの量のピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩が、上で概説される好ましい局所製剤または特に好ましい局所製剤中に含まれることである。
【0055】
また本発明は、以下からなる群から選択される疾患の処置方法であって、本発明に基づく局所用医薬品を皮膚へ適用することによって投与する方法に関する:乾癬、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、全頭脱毛症、部分脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、斑状強皮症、強皮症、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触湿疹、刺激性接触湿疹、接触湿疹、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕粘膜類天疱瘡、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、じんま疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ヴィダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA皮膚疾患、多形日光疹、日光紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚の発疹、薬疹、進行性慢性紫斑病、異汗性湿疹、湿疹、固定薬疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎、ざ瘡、酒さ、異常瘢痕、ケロイドおよび白斑。
【0056】
特に好ましい実施形態では、疾患は乾癬およびアトピー性皮膚炎から選択され、特に乾癬である。
【0057】
当業者は、製剤化の指示書および一般に公知の製薬−物理的概念に基づく操作の様式にしたがって、それぞれの投与様式に適した薬物製剤を製造することができる。
【0058】
追加の物質の組み合わせ
本発明の別の実施形態では、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を他の治療活性成分と組み合わせることができ、該活性成分は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の処置および/または予防に適したものである。
【0059】
ゆえに、本発明は、別の態様では、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩および、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に使用可能であることが公知の1種以上の更なる活性成分を含む組成物に関する。ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩と組み合わせることができる特に適切な活性成分は、ビタミンD受容体のアゴニストであるビタミンD誘導体、特にカルシポトリオール(Calcipotriol)、レチノイド受容体(RAR)のアゴニストであるレチノイド、例えばタザロテン、糖質コルチコイドのアゴニストであるコルチコステロイド誘導体、例えばベタメタゾンおよびコルチゾン、フマル酸、皮膚菲薄化剤、例えばクロベタゾール、TNFアルファのアンタゴニスト、ジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼのアンタゴニスト、例えばメトトレキセートおよび免疫抑制物質、例えばアンホテリシン、ブスルファン(busulphane)、コトリモキサゾール、クロランブシル、コロニー刺激因子、シクロホスファミド、フルコナゾール、ガンシクロビル、抗リンパ球免疫グロブリン、メチルプレドニゾロン、オクトレオチド、オクスペンチフィリン(oxpentifylline)、サリドマイド、ゾリモマブアリトックス(zolimomab aritox)、クロトリマゾールである。
【0060】
別の特に好ましい実施形態は、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩およびカルシニューリンアンタゴニストを含む組成物に関する。本発明の意義の範囲内の用語「カルシニューリンアンタゴニスト」とは、カルシニューリンホスファターゼ活性に関するアンタゴニストとして作用する物質に関すると理解される必要がある。物質がカルシニューリンホスファターゼ活性に関して拮抗的に作用するかどうかは、先行技術に記載のカルシニューリンホスファターゼ活性を決定するためのアッセイによって決定することができる。例えば、Baughman et al.(1995, Mol. Cell. Biol., 15: 4395-4402)に記載されるようにアッセイを実行することができる。アッセイにおける反応物は、100μmol/lのCaCl、100μgのウシ血清アルブミン(フラクションV)/ml、40mmol/lのトリス−HCl(pH8.0)、100mmol/lのNaCl、6mmol/lの酢酸マグネシウム、500μmol/lのジチオスレイトール、40μmol/lの[33P]RII−ペプチド(600cpm/pmol)、190nmol/lのウシカルモジュリン、3nmol/lのウシカルシニューリン、50μmol/lの、カルシニューリン阻害に関する試験対象物質(「試験物質」)および1種のイムノフィリン、例えばFKBP12およびサイクロフィリンを含む。RII−ペプチドは配列DLDVPIPGRFDRRVSVAAEを有する。Liu et al.(1991, Cell, 66: 807-815)およびManalan and Klee(1983, PNAS, 87: 4291-4295)に記載されるように、セリン残基におけるリン酸化を実行する。前記反応物をペプチドの不存在下で30℃で30分間インキュベートする。ペプチドを加えることによって脱リン酸化反応を開始させ、次いで30℃で10分間インキュベートする。Liu et al.およびManalan and Klee(上記)に記載されるように、反応の終結ならびにリン酸化ペプチドからの遊離リン酸の分離を実行する。試験物質の不存在下で測定される脱リン酸化の程度を100%カルシニューリン活性と定義し、試験物質およびカルシニューリンの不存在下で測定される脱リン酸化の程度を0%カルシニューリン活性と定義する。次いで各カルシニューリンアンタゴニストの活性を、各アンタゴニストの存在下におけるカルシニューリン活性の減少のパーセンテージで表すことができる。本発明の組成物中で使用されるカルシニューリンアンタゴニストは、カルシニューリン活性を、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約90%減少させる。本発明に準じるカルシニューリンアンタゴニストは、例えばWO 95/040461、WO 90/14826、EP 0 378 321、WO 95/09857、WO 96/35299、EP 0 626 385、GB 1491509およびDE 294 10 80から公知である。
【0061】
好ましくは、本発明に基づく組成物には、シクロスポリンA、シクロスポリンG、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、ジヒドロ−シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンH、シクロスポリンI、ASM−240、ピメクロリムス(pimecrolimus)、タクロリムス、タクロリムスの13−デスメチル誘導体(L-685487)、L-683519および/またはタクロリムスの17−エチル誘導体から選択される1種以上のカルシニューリンアンタゴニストが含まれる。特に好ましいのは、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩に加えて、ピメクロリムス、タクロリムスおよびシクロスポリンAを含む組成物である。別の好ましい実施形態では、前記組成物には、1種以上の上述の活性成分および、それに関連して、特に1種以上の特に適切な活性成分を含ませることができる。
【0062】
当業者は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を減少させるか、あるいは阻害する1種以上の追加の活性成分および/または1種以上のカルシニューリンアンタゴニストを含む、本発明に基づく組成物を、ピルリンドールに関して上に開示される製剤の1つとして製造することができ、それぞれの指定の補助剤および添加物と混合することができる。
【0063】
したがって、本発明の別の態様は、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患、特にアトピー性皮膚炎および乾癬の治療または予防用の医薬品を製造するための、上述の組成物の1種の使用である。本発明に基づく組成物を本発明にしたがって使用する際に、ピルリンドールに関して上に記載される形式と同一の適用形式が適切であり、特に皮膚の患部への局所適用が適切である。
【0064】
別の態様では、本発明は、空間的および/または時間的に分離された、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を減少させる各活性成分、すなわちピルリンドール、カルシニューリンアンタゴニストおよびまたは活性成分の投与にも関する。
【0065】
用量
適用される用量は各疾患および各疾患の重症度に依存し、主治医の裁量の範囲内である。本発明にしたがって使用可能な医薬品は、好ましくは約0.01〜約500mgの範囲の活性成分/用量、好ましくは約1〜約100mgの範囲の活性成分/用量を含む。前記活性成分は、1日あたり1回または複数回の服用で投与することができ;あるいは活性成分は長い時間間隔で投与することができる。
【0066】
インビトロ測定の場合(実施例2、3)、増殖に関するピルリンドールの阻害効果を10μmol/lのピルリンドールの濃度であらかじめ測定した。皮膚の浸透性、疾患の型および重症度に依存し、かつ、製剤の種類および適用の頻度に依存して、局所適用によって治療効果を誘発するのに十分な医薬品中の活性成分の濃度は変動しうるものであり、好ましくは、本発明にしたがって使用可能な医薬品中のピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の濃度は1μmol/l〜100mmol/lの範囲である。
【0067】
したがって、本発明の別の実施形態では、本発明にしたがって特に局所適用に使用可能な医薬品は、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩を、1μmol/l〜100mmol/lの範囲、好ましくは0.01%〜10%の範囲のピルリンドール、好ましくは0.1%〜8%の範囲のピルリンドール、さらにより好ましくは1%〜4%の範囲のピルリンドール(重量/重量で表記)の濃度で含むことを特徴とする。
【0068】
以下の実施例および図面は、本発明の好ましい実施形態を実証するために包含される。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能する、発明者らによって開示される技術を代表するものであり、ゆえにその実施に関する好ましい様式とみなしうることが当業者には理解されるべきであろう。しかし、当業者は、本開示内容に照らして、開示される具体的実施形態において、特許請求の範囲に記載される発明の思想および範囲から逸脱することなく、多数の変更を施しうることを理解すべきであろう。すべての引用文献は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0069】
実施例
ピルリンドールの製造
ピルリンドールの製造は先行技術に記載されている。例えば、Gazengel, Jean Marie; Lancelot, Jean Charles; Rault, Sylvain; Robba, Max, Journal of Heterocyclic Chemistry (1990), 27(7), 1947-51に記載されるようにピルリンドールを製造することができる。
【実施例1】
【0070】
実施例1:ケラチノサイトの増殖に関するピルリンドールの影響
ケラチノサイトの増殖に関するピルリンドールの影響をHaCaT細胞に基づいて検査した。そのために、5x10のHaCaTケラチノサイトを各200μlのKBM/10%FCS中で96ウェルプレートの60ウェル中に播種し、37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、HaCaT細胞を含む6ウェルのそれぞれおよび細胞を含まない1ウェルをネガティブコントロール(KBM/1%DMSO)、ポジティブコントロール(KBM/FCS/1%DMSO)またはKBM/FCS中の0.3〜300μmol/lピルリンドール(ピルリンドールの原液:DMSO中の100mmol/l)で48時間処理し、37℃で48時間インキュベートした。すべての試験ピルリンドール濃度でDMSOの濃度を1%で一定に保った。第二のインキュベーション期間の終了時点で、培地を取り出し、BrDUの取り込み(Roche, #1 669 915)に基づいて細胞増殖を決定した。その決定は製造元の指示書にしたがって行った。ピルリンドールのIC50を決定するために、100%増殖に相当するFCS刺激細胞の相対化学発光値を定めた。すべての他の値を100%値で割り、増殖の相対パーセンテージを得た。パーセンテージの値を使用して、ピルリンドールに関する理想曲線を決定し、その曲線から、IC50を得た(4パラメータロジスティック曲線、シグマプロット)。少なくとも4回の独立の実験を実施した。代表的な1実験の結果を図1に示す。ピルリンドールの平均IC50は47μmol/lである。ケラチノサイトの増殖に関するピルリンドールの効果によって、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防、特に乾癬の治療にピルリンドールが特に好適であることが示される。
【実施例2】
【0071】
実施例2:T細胞の増殖に関するピルリンドールの影響
フィコール勾配遠心分離によって末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。1x10のPBMC/mlを、96ウェルプレートにおいてRPMI/10%ウシ胎児血清(FCS)中に2x10細胞/ウェルの濃度で再懸濁した。細胞を1nmol/l、10nmol/l、100nmol/l、1μmol/l、10μmol/lおよび100μmol/lのピルリンドールとインキュベートし、10μg/mlの可溶性抗CD3抗体で刺激した。ポジティブおよびネガティブコントロールPBMCとして、それぞれ、抗CD3抗体で刺激されたPBMCおよび無刺激PBMCを使用した。溶媒DMSOの最終濃度はすべての検査ウェル中で0.1%であった。さらに2日間のインキュベーション後、細胞を1μCi/ウェルの[H]−チミジンと18時間インキュベートした。次いでMicro 96 Harvester(Skatron Instruments, Lier, Norway)を使用して、グラスファイバーフィルター上で細胞を回収した。Packard Matrix 9600 Counter(Canberra Packard, Schwadorf, Austria)を用いて、取り込まれた放射能を分析した。異なる3ドナーの血液を用いて実験を実行した。ピルリンドールのIC50を決定するために、100%増殖に相当する抗CD3刺激細胞+0.1%DMSOの値を定めた。すべての他の値を100%値で割り、増殖の相対パーセンテージを得た。得られたパーセンテージの値を使用して、ピルリンドールに関する理想曲線を決定し、その曲線から、IC50を得た(4パラメータロジスティック曲線;シグマプロット)。ピルリンドールの平均IC50は16μmol/lである。代表的な1実験の結果を図2に示す。ピルリンドールが活性化T細胞の増殖を阻害するという観察は、T細胞増殖の増大を特徴とする炎症性疾患の処置に関するピルリンドールの効力を実証する。乾癬性および皮膚炎病変はTリンパ球の強い浸潤を特徴とし、かつ、乾癬およびアトピー性皮膚炎においてT細胞活性化のブロックは確立された治療原理であるため、ピルリンドールは乾癬およびアトピー性皮膚炎の処置に特に有用であると考えられる。
【実施例3】
【0072】
実施例3:LPS刺激THP−1細胞のTNFαの分泌に関するピルリンドールの影響:
THP−1細胞(2.5x10/ウェル)を24ウェルプレート(ウェルあたり500μlのRPMI/10%FCS)に播種し、次いでピルリンドールで処理した(300μmol/l、100μmol/l、30μmol/l、10μmol/l、3μmol/l、1μmol/l、0.3μmol/l)。2時間後、50ng/mlのLPSで細胞を刺激した。LPSを加えた6時間後、培養上清を回収した。酵素結合免疫吸着測定法(R&D systems, #DTA00C,)を製造元のプロトコルにしたがって使用してTNFα濃度を測定した。LPS刺激後に追加の処理を行わずに達成されたTNFα濃度を100%として定めた。ピルリンドール処理後に決定されたTNFα値を100%値と比較して算定した。10μmol/l以上の濃度では、TNFαの放出が明らかに阻害された。TNFαは乾癬の処置に関する有効な標的である。その根拠は、TNFα経路を標的にする2、3の薬物療法が開発中および市場において効力を示したことである。ピルリンドールがTHP−1細胞のTNFα分泌を減少させる能力を有することは、抗乾癬処置としてピルリンドールの使用が好適であることを強く支持する。
【実施例4】
【0073】
実施例4:乾癬動物モデルにおける乾癬性表現型に関するピルリンドールの影響
乾癬性皮膚の表現型に関するピルリンドールの効果をヒト移植SCIDマウス動物モデルにおいて決定した。(Boehncke et al., Arch. Dermatol. Res., 1994, 286:325-330)。紡錘形の皮膚生検を1乾癬患者の病変から採取し、直径0.8cmの移植片をSCIDマウスの背部の同様のサイズの創傷上に移植した。移植の2週間後に処置を開始した。ピルリンドールを4.6%マンニトール/HO、pH6.5中に溶解した。治療では、毎日300μlの5mg/ml溶液を腹腔内注射した(=50mg/kg)。対照群には、300μlのビヒクルを同様に注射した。4週間後に、動物を犠牲にした。生検を取り出し、組織学的に染色し(マッソントリクローム)、表皮領域の変化に関して検査した。処置動物の移植片の表皮領域はコントロール動物と比較して明らかに減少した。このことは、過剰増殖性皮膚疾患、例えば乾癬の処置にピルリンドールが好適であることを証明する。
【実施例5】
【0074】
実施例5:DTH動物モデルにおける炎症性表現型に関するピルリンドールの影響
ピルリンドールの抗炎症性効力を試験するために、Geba et al., Immunology 104:235-242, 2001; Gaspari & Katz, Current Protocols in Immunology. 1991, 4.2.1-4.2.5に記載されるように、ハプテン(オキサゾロン(「OXA」))の局所適用によってマウス耳で遅延型過敏(「DTH」)反応を誘発する。誘発後のハプテンでの上皮感作(epicutaneous sensibilisation)は主にTh1型免疫反応を生じさせる(Wang et al., Clin Exp Allergy 29:271-279, 1999)。局所耳膨潤を定量することによって皮膚と接触アレルゲンの前記反応を測定する。本実験設定では、種々の濃度(4%、1%、0.1%および0.01%)のピルリンドールを分析する。アセトン/オリーブ油の混合物(4:1 vol/vol)をビヒクルとして使用する。
【0075】
処置の開始前(0日目)、誘発前(6日目)、および誘発の24時間後(d7、耳膨潤応答)に耳の厚さを測定する(器具使用、例えばMitutoyo-Messgeraete GmbH)。さらに、実験の終了時点で、個々の各動物の両耳から採取された8mmパンチ生検の重量を量ることによって耳の重量を決定する。
【0076】
ピルリンドールは、プラセボコントロールと比較して、炎症重症度の1種以上のパラメータ(耳の重量、耳の厚さ)の改善を導くことが予測される。このことは、炎症性皮膚疾患、例えばアトピー性皮膚炎および乾癬の処置にピルリンドールが好適であることを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1:ケラチノサイトの増殖に関するピルリンドールの効果。HaCaTケラチノサイトを種々のピルリンドール濃度で処理した(0.3μmol/l、1μmol/l、3μmol/l、10μmol/l、30μmol/l、100μmol/l、300μmol/l)。ピルリンドールは、47μmol/lの濃度で、ポジティブコントロール(KBM+10%FCS)と比較して増殖の50%阻害を生じさせた。ネガティブコントロールとして、細胞をKBMとインキュベートした。図1は代表的な実験の1つを示す。
【図2】図2:T細胞の増殖に関するピルリンドールの効果。末梢血単核細胞を種々のピルリンドール濃度で処理した(1nmol/l、10nmol/l、100nmol/l、1μmol/l、10μmol/l、100μmol/l)。16μmol/lの濃度で、α−CD3で刺激された末梢血単核細胞の増殖が、ポジティブコントロール(RPMI+10%FCS+αCD3抗体)の増殖と比較して50%阻害された。図2は代表的な実験の1つを示す。
【図3】図3:TNFαの放出に関するピルリンドールの効果。単球セルラインTHP−1を種々の濃度のピルリンドールとインキュベートした(300μmol/l、100μmol/l、30μmol/l、10μmol/l、3μmol/l、1μmol/l、0.3μmol/l)。50ng/mlのLPSで刺激した後、TNFαの放出を測定した。図3は3回の独立する測定の平均を示す。
【図4】図4:移植されたヒト乾癬性皮膚生検に関するピルリンドールの効果。SCIDマウスにヒト乾癬性皮膚生検を移植した。外科手術の2週間後に治療を開始した。毎日のピルリンドール(50mg/kg)またはビヒクルのみの腹腔内注射でマウスを処置した。治療の4週間後にマウスを犠牲にし、生検を採取した。生検の4μmのスライスをマッソントリクロームで染色した。表皮面積を算定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を治療または予防するための医薬品の製造に関する、所望であれば適切な補助剤および添加物を伴う、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項2】
疾患が、乾癬、アトピー性皮膚炎、光線性角化症、表皮剥離性角質増殖症などの角質増殖、固定性扁豆状角化症、毛孔性角化症および魚鱗癬から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
疾患が以下の疾患からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用:円形脱毛症、全頭脱毛症、部分脱毛症、汎発性脱毛症、びまん性脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚筋炎、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎 斑状強皮症(morphea)、強皮症、尋常性乾癬、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬(psoriasis inversa)、蛇行型円形脱毛症、男性型脱毛症、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、接触皮膚炎、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕粘膜類天疱瘡(scarring mucous membrane pemphigoid)、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹状皮膚炎、じんま疹、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ヴィダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA皮膚疾患、多形日光疹、日光紅斑、硬化性萎縮性苔癬、皮膚の発疹、薬疹、進行性慢性紫斑病、異汗性湿疹(dihidrotic eczema)、湿疹、固定薬疹、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬口囲皮膚炎(lichen simplex periorale dermatitis)、移植片対宿主病、ざ瘡、異常瘢痕ケロイドおよび白斑。
【請求項4】
医薬品を局所的に投与することを特徴とする、請求項1〜3の一項に記載の使用。
【請求項5】
医薬品が、軟膏、ゲル、バンドエイド、エマルジョン、ローション、フォーム、混合相または両親媒性エマルジョン系(油/水−水/油−混合相)のクリーム、リポソーム、トランスフェロソーム、ペーストまたは粉末の剤形で製剤化されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
クリームがクリーム基礎DAC(Deutscher Arzneimittel Codex, DAC Basiscreme)であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩が、製剤全体の重量に基づいて、0.01%〜10%の範囲のピルリンドール、好ましくは0.1%〜8%の範囲のピルリンドール、さらにより好ましくは1%〜4%の範囲のピルリンドールの濃度で医薬品中に含まれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩が、1μmol/l〜100mmol/lの範囲の濃度で医薬品中に含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を減少させるか、あるいは阻害する、ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩および1以上の活性成分を含む組成物。
【請求項10】
活性成分が以下の物質からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物:ビタミンD受容体のアゴニストであるビタミンD誘導体、特にカルシポトリオール、レチノイド受容体(RAR)のアゴニストであるレチノイド誘導体、特にタザロテン、糖質コルチコイド受容体のコルチコステロイド誘導体、特にベタメタゾンおよびコルチゾン、フマル酸、皮膚菲薄化剤、特にクロベタゾール、TNFアルファのアンタゴニスト、ジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼのアンタゴニスト、特にメトトレキセートおよび免疫抑制物質、例えばアンホテリシン、ブスルファン、コトリモキサゾール、クロランブシル、コロニー刺激因子、シクロホスファミド、フルコナゾール、ガンシクロビル、抗リンパ球免疫グロブリン、通常の免疫グロブリン、メチルプレドニゾロン、オクトレオチド、オクスペンチフィリン(oxpentifylline)、サリドマイド、ゾリモマブアリトックス(zolimomab aritox)およびクロトリマゾール。
【請求項11】
ピルリンドールまたは薬学的に許容されるその塩および1以上のカルシニューリンアンタゴニストを含む組成物。
【請求項12】
カルシニューリンアンタゴニストが以下の物質から選択される、請求項11に記載の組成物:シクロスポリンA、シクロスポリンG、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、ジヒドロ−シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンH、シクロスポリンI、ASM−240、ピメクロリムス、タクロリムス、タクロリムスの13−デスメチル誘導体および/またはタクロリムスの17−エチル誘導体。
【請求項13】
ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖を特徴とする疾患を治療または予防するための医薬品の製造に関する、必要であれば適切な補助剤および添加物を伴う、請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−518891(P2008−518891A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538355(P2007−538355)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011697
【国際公開番号】WO2006/048242
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507143543)スイッチ バイオテック アーゲー (1)
【Fターム(参考)】