説明

TCP構造体

【課題】大型化や配線可能な数の減少を伴うこと無く半導体素子が発する熱を効率良く放熱させることが可能なTCP構造体を提供する。
【解決手段】半導体素子2を実装するための領域にデバイスホール1が開口するフィルム基材9と、フィルム基材9の一部をなしてデバイスホール1を横断するフィルム基材架橋部12と、少なくともフィルム基材架橋部12の第一主面側に形成し、デバイスホール1を横断して架橋配置する架橋導体パターン10を備え、フィルム基材9の第二主面側から実装する半導体素子2がフィルム基材架橋部12を介して架橋導体パターン10に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTCP(Tape Carrier Package)構造体に関し、より特定的には半導体素子の動作時に発する熱を効果的に放熱するための放熱体を伴う構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のTCP(Tape Carrier Package)(以下、TCPと称する場合がある。)としては、半導体素子に対する信号の入出力に実質的に関与しない放熱用パターンを半導体素子の近傍に配置し、この放熱用パターンで半導体素子が発する熱の放熱効率を向上させたものがあり、例えば、特許文献1に記載したものがある。
【0003】
図4は、特許文献1に記載した従来のTCP構造体を示すものであり、101はデバイスホール、102は半導体素子、103は出力アウターリード、104は入力アウターリード、105は引き回し導体パターン、106はソルダーレジスト、107はTCP構造体の全体、108はインナーリード、109はフィルム基材、121は放熱用パターンを各々示している。
【0004】
図4に示す従来の構造のTCP構造体107において、インナーリード108は半導体素子102との接続端子であり、出力アウターリード103は表示パネルとの接続端子であり、入力アウターリード104は外部回路基板との接続端子であり、引き回し配線105は出力アウターリード103と入力アウターリード104をインナーリード108へ導く配線である。
【0005】
TCP構造体107は、半導体素子102を搭載するフィルム基材109上に引き回し配線105とは別に、放熱用パターン121を半導体素子102の近傍に設けており、引き回し配線105が半導体素子102と導通して半導体素子102に対する信号の入出力に関与するものであるのに対して、放熱用パターン121は半導体素子102に対する信号の入出力に実質的に関与せず、半導体素子102における信号入出力用の電極に実質的に接続していない。
【0006】
この構成によれば、半導体素子102への通電時に半導体素子102から発せられる熱をフィルム基材109上に設けられた放熱用パターン121により効率的に放熱可能である。
【特許文献1】特開平10−32229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、フィルム基材109上において、半導体素子102へ通電するための配線である出力アウターリード103と、入力アウターリード104と引き回し導体パターン105とに加えて新たに放熱用パターン121が占有する領域を確保する必要がある。
【0008】
このため、放熱用パターン121が引き回し配線105の経路を阻害して出力アウターリード103及び入力アウターリード104の多ピン化が困難となることやTCP構造体107全体として小型化の妨げとなるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小型化や多ピン化の妨げを伴うこと無く、半導体素子の放熱性を向上可能なTCP構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した従来の課題を解決するために、本発明のTCP構造体は、半導体素子を実装するための領域にデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の一部をなして前記デバイスホールを横断するフィルム基材架橋部と、少なくとも前記フィルム基材架橋部の第一主面側に形成し、前記デバイスホールを横断して架橋配置する架橋導体パターンを備え、前記フィルム基材の第二主面側から実装する前記半導体素子が前記フィルム基材架橋部を介して前記架橋導体パターンに当接することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のTCP構造体は、前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホール内へ突出する先端が相対向する複数のインナーリードを有し、前記インナーリードの先端同士が対向する間に前記フィルム基材架橋部および前記架橋導体パターンを配置したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のTCP構造体は、半導体素子を実装するための領域にデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホールを横断して架橋配置する架橋導体パターンを備え、前記フィルム基材の第二主面側から実装する前記半導体素子が前記架橋導体パターンに当接することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のTCP構造体は、前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホール内へ突出して先端が相対向する複数のインナーリードを有し、前記インナーリードの先端同士が対向する間に前記架橋導体パターンを配置したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のTCP構造体は、前記フィルム基材の第一主面側に形成する出力アウターリードと入力アウターリードを有し、前記出力アウターリードと前記入力アウターリードのそれぞれを前記デバイスホールを隔てた前記第一主面の両端に設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のTCP構造体は、前記架橋導体パターンを前記フィルム基材の第一主面上で拡張させたことを特徴とする。
また、本発明のTCP構造体は、前記架橋導体パターンを電源ラインとして利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のTCP構造体によれば、架橋導体パターンの利用スペースとして半導体素子を固定するためのスペースであるデバイスホール部を領域としているので、小型化の妨げとなることなく、引き回し配線の引き回しの妨げともならず半導体素子の放熱性の向上が可能と成り、大型化を伴うこと無く放熱性を向上できる。また、放熱性を同等とした場合は、さらに小型化が可能なものと出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1および2は、本発明の実施の形態1におけるTCP構造体を示すもので、図1は全体を示す上面図、図2は図1の要部拡大図である。
【0018】
図1と2において、1はデバイスホール、2は半導体素子、3は出力アウターリード、4は入力アウターリード、5は引き回し配線、6はソルダーレジスト、7はTCP構造体の全体、8はインナーリード、9はフィルム基材、10は架橋導体パターン、10aは分岐、11は電源ラインおよびアースライン、12はフィルム基材架橋部を各々示している。
【0019】
本発明のTCP構造体7は、ポリイミド材料などからなり可撓性で絶縁性を有するフィルム基材9に半導体素子2を固定するための領域をなすデバイスホール1が開口しており、フィルム基材9の第一主面においてデバイスホール1を隔てた両端に、液晶パネルや制御基板と接続される出力アウターリード3もしくは入力アウターリード4を設けている。
【0020】
また、フィルム基材9の第一主面には複数のインナーリード8が整列して形成してあり、インナーリード8はデバイスホール1の開口縁から内側へ突出して先端が相対向している。フィルム基材9の第一主面にはインナーリード8と、出力アウターリード3および入力アウターリード4との間に引き回し導体パターン5が形成してあり、引き回し導体パターン5がインナーリード8と、出力アウターリード3および入力アウターリード4とを導通している。
【0021】
デバイスホール1を横断するフィルム基材架橋部12はフィルム基材9の一部をなしており、フィルム基材架橋部12の第一主面側にはデバイスホール1を横断して架橋配置する架橋導体パターン10が形成してあり、架橋導体パターン10はインナーリード8の先端同士が対向する間に配置してある。
【0022】
半導体素子2は、バンプなどを介してフィルム基材9の第二主面側からインナーリード8に実装され、半導体素子2の第一主面側と架橋導体パターン10とがフィルム基材9を介して当接している。
【0023】
また、フィルム基材9の第一主面の内で、出力アウターリード3と入力アウターリード4とインナーリード8の半導体素子2に対する接続面とを除いて、少なくとも引き回し導体パターン5の上はソルダーレジスト6が覆っている。
【0024】
以上の構成によれば、架橋導体パターン10を配置する領域として半導体素子2を実装するための領域をなすデバイスホール1を利用しているので、小型化の妨げとなることがなく、引き回し導体パターン5の引き回しの妨げともならずに半導体素子2の放熱性を向上させることが可能である。
【0025】
即ち、サイズを同等とすれば、より放熱性を向上出来、放熱性を同等とすれば、より小型化が可能と成る。フィルム基材9の第一主面の空きスペースを利用して架橋導体パターン10の面積を拡張すれば、更に放熱性の向上が可能である。
【0026】
好ましい一例としては、図2に示す様に架橋導体パターン10の一部を分岐10aさせて半導体素子2の電源電極もしくはアース電極(図示せず)に接続し、架橋導体パターン10の分岐10aを入力アウターリード4の先端の並びにまで延伸させて電源ラインおよびアースライン11としても良い。
【0027】
この好ましい一例によれば、従来のように、入力アウターリード4の何れかを用いて電源ラインおよびアースライン(図示せず)とし、引き回し導体パターン5とインナーリード8とを介して半導体素子2の電源電極もしくはアース電極(図示せず)に接続していた構成を排除することができ、架橋導体パターン10が電源ラインおよびアースライン11を兼ねることでスペース効率を向上させて小型化が可能である。
【0028】
一般に、半導体素子2の第二主面側は放熱体(図示せず)を付加することで容易に放熱性を確保することが可能である。しかしながら、半導体素子2の第一主面側は絶縁性と機械強度確保のために半導体素子2からフィルム基材9の周辺にかけて保護樹脂(図示せず)で覆う形態とする場合が多く、その場合は半導体素子2の第一主面側からの放熱性は第二主面側に比して劣るものとなる。しかし、本発明によれば架橋導体パターン10が半導体素子2の第一主面側からの放熱性を補うことが可能である。
【0029】
なお、架橋導体パターン10を電源ラインおよびアースライン11の一部として用いる場合、半導体素子2に形成される電源電極もしくはアース電極(図示せず)の正負の極性に合わせて両極間の絶縁をとる必要がある場合は、両極間で架橋導体パターン10を分離すれば良い。また、架橋導体パターン10を電源ラインおよびアースライン11の一部として用いず、信号ラインなど他のラインに用いることを制限するものではない。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2におけるTCP構造体7の要部拡大図である。図3において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0030】
本発明の実施の形態2におけるTCP構造体は、実施の形態1の構成においてデバイスホール1を横断して形成したフィルム基材架橋部12が存在せず、デバイスホール1を横断して架橋配置する架橋導体パターン10のみが形成してある。
【0031】
このように、フィルム基材9を介すること無く、半導体素子2と架橋導体パターン10とが直接に当接されるので、実施の形態1よりも更に半導体素子2から架橋導体パターン10への熱伝導が向上して放熱性も向上させることが出来る。
【0032】
この様なTCP構造体の製造方法は以下の工程を含むものである。
パンチング工程
パンチング工程ではポリイミド等から成る可撓性の絶縁性フィルム基材に金型でパンチングを施して、デバイスホールを開けると共に該フィルム基材の外形を形成する。
ラミネート工程
パンチング工程の次に施されるラミネート工程では、銅等の金属箔をフィルム基材の一方の面のデバイスホールを含む全面にラミネートする。
レジストコート工程
ラミネート工程の次に施されるレジストコート工程では、金属箔の上全面に感光レジストを塗布してコートする。
露光/現像工程
レジストコート工程の次に施される露光/現像工程では、インナーリードと引き回し配線とアウターリードと架橋導体パターンから成る配線および架橋導体パターンのパターンに対応するパターンに感光レジストに対してUV光を当てて露光/現像する。
裏止め工程
露光/現像工程の次に施される裏止め工程では、フィルム基材の他方の面からデバイスホールを塞いで該デバイスホールに露出する金属箔を覆う耐エッチング性の裏止め樹脂を設ける。
エッチング剥離工程
裏止め工程の次に施されるエッチング剥離工程では、金属箔をパターン化させるエッチングの後に、残存する感光レジストと裏止め樹脂とを剥離する。
ソルダーレジスト印刷工程
エッチング剥離工程の次に施されるソルダーレジスト印刷工程では、フィルム基材の一方の面および配線パターンを選択的に覆うソルダーレジストを印刷する。
実装工程
ソルダーレジスト印刷工程の次に施される実装工程では、フィルム基材の他方の面から半導体素子をインナーリードへ実装してデバイスホールに配置する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、TCP構造体として有用であり、特に半導体素子の動作に伴う熱の放熱性と小型化とを必要とするものに適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1におけるTCP構造体の上面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるTCP構造体の要部拡大図
【図3】本発明の実施の形態2におけるTCP構造体の要部拡大図
【図4】従来のTCP構造体の上面図
【符号の説明】
【0035】
1、101 デバイスホール
2、102 半導体素子
3、103 出力アウターリード
4、104 入力アウターリード
5、105 引き回し導体パターン
6、106 ソルダーレジスト
7、107 TCP構造体
8、108 インナーリード
9、109 フィルム基材
10 架橋導体パターン
10a 分岐
11 電源ライン
12 フィルム基材架橋部
121 放熱用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を実装するための領域にデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の一部をなして前記デバイスホールを横断するフィルム基材架橋部と、少なくとも前記フィルム基材架橋部の第一主面側に形成し、前記デバイスホールを横断して架橋配置する架橋導体パターンを備え、前記フィルム基材の第二主面側から実装する前記半導体素子が前記フィルム基材架橋部を介して前記架橋導体パターンに当接することを特徴とするTCP構造体。
【請求項2】
前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホール内へ突出する先端が相対向する複数のインナーリードを有し、前記インナーリードの先端同士が対向する間に前記フィルム基材架橋部および前記架橋導体パターンを配置したことを特徴とする請求項1に記載のTCP構造体。
【請求項3】
半導体素子を実装するための領域にデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホールを横断して架橋配置する架橋導体パターンを備え、前記フィルム基材の第二主面側から実装する前記半導体素子が前記架橋導体パターンに当接することを特徴とするTCP構造体。
【請求項4】
前記フィルム基材の第一主面側に形成し、前記デバイスホール内へ突出して先端が相対向する複数のインナーリードを有し、前記インナーリードの先端同士が対向する間に前記架橋導体パターンを配置したことを特徴とする請求項3に記載のTCP構造体。
【請求項5】
前記フィルム基材の第一主面側に形成する出力アウターリードと入力アウターリードを有し、前記出力アウターリードと前記入力アウターリードのそれぞれを前記デバイスホールを隔てた前記第一主面の両端に設けたことを特徴とする請求項1または3に記載のTCP構造体。
【請求項6】
前記架橋導体パターンを前記フィルム基材の第一主面上で拡張させたことを特徴とする請求項1または3に記載のTCP構造体。
【請求項7】
前記架橋導体パターンを電源ラインとして利用することを特徴とする請求項1または3に記載のTCP構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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