説明

TMC278の水性懸濁液

本発明は、水性の製薬学的に許容され得る担体中に懸濁されたNNRTI化合物TMC278のマイクロ−もしくはナノ粒子を含んでなる、筋肉内又は皮下注入を介する投与のための製薬学的組成物ならびにHIV感染の処置及び予防におけるそのような製薬学的組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水性の製薬学的に許容され得る担体中に懸濁されたNNRTI化合物TMC278のマイクロ−もしくはナノ粒子を含んでなる、筋肉内又は皮下注入を介する投与のための製薬学的組成物ならびにHIV感染の処置及び予防におけるそのような製薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因として知られるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の処置は、大きな医学的挑戦であり続けている。HIVは免疫学的圧力を逃れることができ、多様な細胞型及び成長条件に適応することができ、且つ現在利用できる薬剤治療に対する耐性を発現することができる。現在利用できる薬剤治療にはヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)、HIV−プロテアーゼ阻害剤(PIs)及びもっと最近の融合阻害剤が含まれる。
【0003】
これらの薬剤のそれぞれはHIVの抑制に有効であるが、単独で用いられると耐性突然変異体の発現に直面する。これは、通常は異なる活性側面を有するいくつかの抗−HIV薬の組み合わせ治療の導入に導いた。特に「HAART」(高度に活性な抗−レトロウイルス治療)の導入は、抗−HIV治療における顕著な向上を生じ、HIV−関連罹病率及び死亡率の劇的な低下に導いた。抗レトロウイルス治療のための現在の指針は、初期処置のためにさえ、そのような三重組み合わせ治療管理を薦めた。しかしながら、現在利用できる薬剤治療のいずれも、完全にHIVを根絶することはできない。HAARTでさえ、しばしば抗レトロウイルス治療への非−指示順守及び非−持続(non−adherence and non−persistence with antiretroviral therapy)のために、耐性の発現に直面し得る。これらの場合、その成分の1つを他の種類の1つで置き換えることにより、HAARTを再度有効とすることができる。HAART組み合わせを用いる処置は、正しく適用されれば、ウイルスがもうAIDSの発病を引き起こし得ないレベルまで、最高で何十年の多年に及んでウイルスを抑制することができる。
【0004】
HAARTにおいて頻繁に用いられるHIV薬の1つの種類はNNRTIsの種類であり、その複数が現在市販されており、いくつかの他のものが開発の種々の段階にある。現在開発中のNNRTIは、TMC278とも呼ばれる化合物4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]−アミノ]−ベンゾニトリルである。この化合物は野生型HIVに対するのみでなく、突然変異したその変異体の多くに対しても顕著な活性を示す。化合物TMC278、その薬理学的活性ならびにその製造のための複数の方法は、特許文献1に記載されている。錠剤、カプセル、滴剤、座薬、経口用溶液及び注入可能な溶液を含む種々の通常の製薬学的投薬形態物がその中に例示されている。
【0005】
現在用いられている抗−HIV薬は、それらの薬物動態学的性質及び血漿レベルを最低レベルより高く保つ必要性のために、比較的高い投薬量の頻繁な投与を必要とする。投与されるべき投薬形態物の数及び/又は体積は、通常「薬剤負荷量(pill burden)」と呼ばれる。高い薬剤負荷量は、多くの場合に大きな投薬形態物を飲み込まなければならない不便さと一緒になった摂取の頻度ならびに多数又は大きな体積の丸剤を保存し
、且つ運ぶ必要性のような多くの理由のために望ましくない。高い薬剤負荷量は、患者が彼らの投薬量全部を摂取せず、それにより処方される投薬管理に従い損なう危険を増加させる。これは処置の有効性を低下させると共に、ウイルス耐性の発現にも導く。高い薬剤負荷量と関連する問題は、患者が多数の異なる抗−HIV薬を摂取しなければならない抗−HIV治療において顕著である。
【0006】
従って、HIV阻害治療が比較的小さい寸法の投薬形態物の投与を含み、さらに頻繁な投薬を必要としない点で、薬剤負荷量を減少させるHIV阻害治療を提供することが望ましい。1週間か又はそれより長いか、あるいは1ヶ月か又はそれより長くさえあるような長い時間間隔における投薬形態物の投与を含む抗−HIV治療を提供することは、魅力的である。
【0007】
HIVは完全には根絶され得ず、HIVに感染した人は他者を感染させる継続的な危険を呈している。初期感染の後、AIDSの第1の症状の発病までに長期間を要する。人々は感染したまま、ウイルスを他者にさらに移す危険に気付かずに、感染の治療の効果を経験することなく何年も生存し得る。従ってHIV伝染の予防は重要である。現在予防は、特に感染している危険にある集団におけるコンドームの使用により、性的接触による伝染を避けること、HIVの存在に関して血液試料を注意深く監視すること、ならびに感染した可能性のある患者の血液との接触を避けることに焦点を当てている。
【0008】
これらの手段にかかわらず、HIV感染者と接触している者が感染する差し迫った危険が常にある。これは特に感染患者又は感染している危険にある患者に医療を与える者、例えば医師、看護士又は歯科医の場合にそうである。危険にある者の別の群は、特に母乳育児に代わるものがあまり明白でない未開発国における、母親が感染したか又は感染する危険にある母乳で育てられている乳児である。
【0009】
従って、HIVの伝染に対する予防を与えるさらなる手段が必要である。適用が容易である有効な予防手段が特に必要である。そのような予防手段の提供は、本発明の別の目的である。
【特許文献1】国際公開第03/16306号パンフレット
【発明の開示】
【0010】
今回、化合物TMC278をマイクロ−もしくはナノ粒子に調製できること、ならびにそのような調製物を、HIV感染の処置ならびにHIVの伝染に対する予防において用途を見出すことができるデポ剤調製物(depot formulations)として使用できることが見出された。ナノ粒子は先行技術において既知であり、例えば欧州特許出願第0 499 299号明細書(EP−A−0 499 299)に記載されている。そのような粒子はミクロン以下の範囲内の平均粒度を有し、それらの表面上に吸着した表面改質剤を有する結晶性薬剤物質の粒子から成る。ナノ粒子は、水溶性が劣った活性成分の調製に用いられてきた。
【0011】
本発明はさらに、1週間かもしくはそれより長い時間間隔におけるこれらのマイクロ−もしくはナノ粒子調製物の断続的投与に関し、それはHIVの成長の抑制に十分であり得る血漿レベルを生ずる。これは投与の回数を減少させることを可能にし、それにより薬剤負荷量及び患者の薬剤コンプライアンスの点で有益である。従って本発明のTMC278のマイクロ−又はナノ粒子調製物は、HIV感染の長期処置において有用であり得る。
【0012】
1週間かもしくはそれより長い時間間隔におけるTMC278のマイクロ−もしくはナノ粒子調製物の断続的投与は、さらにHIVの伝染に対する予防を与えるのに十分であり
得る血漿レベルを生ずる。この場合も、必要な投与の回数は減少し、それはやはり薬剤負荷量及び感染の危険にある人の薬剤コンプライアンスの点で有利である。
【0013】
発明の概略
本発明は筋肉内又は皮下注入による投与のための製薬学的組成物であって:
(a)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子の形態におけるTMC278、その塩、立体異性体又は立体異性体混合物;及び
(b)中にTMC278活性成分が懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
を含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子の懸濁液の形態におけるTMC278、その塩、立体異性体又は立体異性体混合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物に関する。
【0014】
本発明は、さらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は上記又は下記に規定される抗−HIV有効量の製薬学的組成物を筋肉内又は皮下注入により投与することを含んでなる。あるいはまた、本発明はHIV感染の処置用の薬剤の製造のための上記又は下記で規定される製薬学的組成物の使用に関する。1つの態様において、組成物はHIV感染の長期処置用である。
【0015】
他の側面において、HIVに感染した患者の長期処置のための方法を提供し、該方法は筋肉内もしくは皮下注入による投与のための上記又は下記で規定される製薬学的組成物の有効量を投与することを含んでなり;ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されることになる。あるいはまた、本発明はHIVに感染した患者の長期処置のための筋肉内もしくは皮下注入による投与用の薬剤の製造のための上記又は下記で規定される製薬学的組成物の使用に関し、ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されることになる。
【0016】
本発明は、さらに、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防方法に関し、該方法は上記で規定されるか又はさらに下記で規定される製薬学的組成物のHIV感染の予防において有効な量を、該患者に投与することを含んでなる。あるいはまた本発明は、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための、上記で規定されるか又はさらに下記で規定される製薬学的組成物の使用に関する。
【0017】
他の側面において、本発明はHIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の長期予防のための方法に関し、該方法は上記で規定されるか又はさらに下記で規定される製薬学的組成物の有効量を該患者に投与することを含んでなり、ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されることになる。
【0018】
本発明は、さらに、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の長期予防用の薬剤の製造のための上記で規定されるか又は下記でさらに規定される製薬学的組成物の使用に関し、ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されることになる。
【0019】
1つの態様において本発明は、製薬学的組成物が1週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内である時間間隔で投与されるかもしくは投与されることになる、本明細書で規定される使用又は方法に関する。
【0020】
他の態様において本発明は、製薬学的組成物が2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は
3ヵ月毎に1回投与されるかもしくは投与されることになる本明細書で規定される使用又は方法に関する。
【0021】
さらなる製薬学的組成物、処置又は予防方法ならびにこれらの組成物に基づく薬剤の製造のための使用を下記に記載し、それは本発明の一部であるものとする。
【0022】
発明の詳細な記述
本発明で用いられる化合物は、化合物TMC278(R278474又はリルピビリン(rilpivirine)とも呼ばれる)あるいは4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリルである。
【0023】
TMC278を塩基形態で、又は適した製薬学的に許容され得る付加塩の形態、例えば酸付加塩の形態として用いることができる。製薬学的に許容され得る付加塩は、治療的に活性な無−毒性の塩の形態を含むものとする。塩基形態を無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸、臭化水素酸など;硫酸;硝酸;リン酸など;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸などのような適した酸を用いて処理することにより、酸付加塩の形態を得ることができる。1つの態様において、用いられるTMC278活性成分はTMC278の塩基形態である。
【0024】
「付加塩」という用語は、化合物TMC278が形成することができる製薬学的に許容され得る水和物及び溶媒付加形態も含む。そのような形態の例は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0025】
TMC278は立体異性体において、さらに特定的にE−及びZ−異性体として存在する。本発明において両方の異性体を用いることができる。本明細書でTMC278に言及する時は、常に、E−又はZ−形態ならびに両形態の混合物が含まれるものとする。本発明で用いるのに好ましいTMC278の形態はE−異性体、すなわち(E)−4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]−アミノ]−ベンゾニトリルであり、それをE−TMC278と称することがある。TMC278のZ−異性体、すなわち(Z)−4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]−アミノ]−ベンゾニトリルも用いることができ、それをZ−TMC278と称することがある。
【0026】
本明細書でTMC278のE−形態(すなわちE−TMC278)に言及する時は常に、純粋なE−異性体又はE−形態が優勢に存在するE−及びZ−形態の異性体混合物、すなわち50%より多く、又は特に80%より多くのE−形態、あるいは90%よりも多くのE−形態を含有する異性体混合物を含むものとする。特に興味深いのは、実質的にZ−形態を含まないE−形態である。これに関して、実質的に含まないは、全くもしくはほとんどZ−形態を有していないE−Z−混合物、例えば90%、特に95%又は98%もしくは99%もの多くのE−形態を含有する異性体混合物を指す。同様に、本明細書でTMC278のZ−形態(すなわちZ−TMC278)に言及する時は常に、純粋なZ−異性体又はZ−形態が優勢に存在するZ−及びE−形態の異性体混合物、すなわち50%より多く、又は特に80%より多くのZ−形態、あるいは90%よりも多くのZ−形態を含有する異性体混合物を含むものとする。実質的にE−形態を含まないZ−形態を用いることもできる。これに関して、実質的に含まないは、全くもしくはほとんどE−形態を有していないE−Z−混合物、例えば90%、特に95%又は98%もしくは99%もの多くのZ−形態を含有する異性体混合物を指す。1つの態様において、用いられるTMC278活性成分は、TMC278のE−形態、特にTMC278塩基のE−形態である。
【0027】
本発明における使用のために、TMC278の立体異性体の塩、特にZ−TMC278又はE−TMC278の上記で挙げた塩も含まれるものとする。
【0028】
本明細書で用いられる場合は常に、「TMC278」という用語は、塩基形態と同様にその製薬学的に許容され得る酸−付加塩を指し、ならびにまたTMC278の立体異性体ならびに該立体異性体の製薬学的に許容され得る酸−付加塩を指す。特に「TMC278」という用語はTMCのE−異性体ならびにその製薬学的に許容され得る酸−付加塩を指す。「TMC278」という用語は、TMC278のE−異性体の塩基形態も指すことができる。
【0029】
TMC278の物理−化学的性質は、HIV感染の長期処置のためならびにHIV感染の長期予防において用いることができ、この目的のために必要な薬剤投与の回数は限られているという点で独特な薬物動態学的性質を有するマイクロ−もしくはナノ粒子懸濁液の製造を可能にすることが見出された。これは、薬剤負荷量ならびに処方される投薬管理への患者のコンプライアンスの点で有益である。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「HIV感染の処置」という用語は、HIVに感染している患者の処置に関する。「HIV感染の処置」という用語は、HIV感染に関連する疾患、例えばAIDS又は血小板減少症、カポジ肉腫ならびに痴呆、進行性構語障害、運動失調及び見当識障害のような症状を生ずる進行性脱髄を特徴とする中枢神経系の感染を含むHIV感染と関連する他の状態ならびにやはりHIV感染が関連する他の状態、例えば末梢ニューロパシー、進行性全身性リンパ節症(PGL)及びAIDS−関連症候群(ARC)の処置にも関する。
【0031】
「HIV感染の予防」という用語は、患者がHIVに感染するのを予防するか又は避けることに関する。感染の源はHIVを含有する種々の材料、特にHIVを含有する体液、例えば血液又は精液あるいはHIVに感染している他の患者であり得る。HIV感染の予防は、HIVを含有する材料から又はHIV感染患者から未感染の人へのウイルスの伝染の予防に関するか、あるいはウイルスが未感染の人から体内に入るのを妨げることに関する。HIVウイルスの伝染は、性的伝染によるか又は感染患者の血液との接触、例えば感染患者に医療を与える医療スタッフによるようなHIV転移のいずれの既知の原因によることもできる。HIVの転移は、例えば血液試料を取り扱う時のHIV感染血液との接触によるか又は輸血とともにも起こり得る。それは例えばHIV感染細胞を用いる実験室実験を行なう場合の感染細胞との接触によることもあり得る。
【0032】
「HIV感染の処置」、「抗−HIV治療」という用語ならびに類似の用語は、HIVのウイルス負荷(特定の体積の血清中のウイルスRNAのコピーの数として表される)を減少させる処置を指す。処置が有効であるほど、ウイルス負荷は低い。好ましくは、ウイルス負荷は可能な限り低いレベルまで、例えばml当たり約200コピーより低い、特にml当たり約100コピーより低い、さらに特定的にml当たり50コピーより低い、可能ならウイルスの検出限界より低いレベルまで下げられるべきである。1、2又は3桁ものウイルス負荷の低下(例えば約10〜約10又はそれより大きい、例えば約10のオーダー(order)における低下)は、処置の有効性の指標である。抗−HIV処置の有効性を測定するための他のパラメーターはCD4カウントであり、それは正常の成人においてμl当たり500〜1500個の細胞の範囲である。低くなったCD4カウントはHIV感染の指標であり、μl当たり約200個の細胞より低くなるとAIDSが発症
し得る。例えばμl当たり約50、100、200個か又はそれより多くの細胞でのCD4カウントの増加も、抗−HIV処置の有効性の指標である。CD4カウントは特にμl当たり約200個の細胞より高いか又はμl当たり約350個の細胞より高いレベルまで増加するべきである。ウイルス負荷又はCD4カウントあるいは両方を用いてHIV感染の程度を診断することができる。
【0033】
「HIVの有効な処置」という用語及び類似の用語は、上記の通りウイルス負荷を低下させるか、CD4カウントを増加させるか、又は両方である処置を指す。「HIVの有効な予防」という用語及び類似の用語は、HIVを含有する材料又はHIV感染患者のようなHIV感染の源と接触している集団において、新しく感染する患者の相対的数が減少する状況を指す。例えばHIV感染者及び非−感染者の混合集団において、本発明の製薬学的組成物を用いて処置された非−感染者と未処置の非−感染者を比較する時に、新しく感染した者の相対的数が減少しているかどうかを測定することにより、有効予防を測定することができる。この減少は、与えられる集団における時間を経ての感染及び非−感染者の数の統計的分析により測定することができる。
【0034】
「治療的に有効な量」、「HIV感染の予防において有効な量」という用語及び類似の用語は、有効な血漿レベルを生ずる活性成分TMC278の量を指す。「有効な血漿レベル」を用いて、HIV感染の有効な処置又は有効な予防を与えるHIV阻害剤TMC278の血漿レベルを意味する。
【0035】
「患者」という用語は、特に人間に関する。
【0036】
「マイクロ−もしくはナノ粒子」という用語は、マイクロメーター又はナノメーター範囲内の粒子を指す。粒子の寸法は、それを超えると皮下もしくは筋肉内注入による投与が損なわれるか又はもはや不可能となる最大寸法より小さくなければならない。該最大寸法は、例えば針の直径により、又は大粒子への体の不利な反応により、あるいは両方により課せられる制限に依存する。1つの態様において、本発明の製薬学的組成物はナノ粒子形態におけるTMC278を含む。
【0037】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度は約50μmより小さいか、又は約20μmより小さいか、又は約10μmより小さいか、又は約1000nmより小さいか、又は約500nmより小さいか、又は約400nmより小さいか、又は約300nmより小さいか、又は約200nmより小さいことができる。平均有効粒度の下限は低いことができ、例えば約100nmのように低いか又は約50nmのように低いことができる。1つの態様において、平均有効粒度は約50nm〜約50μm、又は約50nm〜約20μm、又は約50nm〜約10μm、又は約50nm〜約1000nm、約50nm〜約500nm又は約50nm〜約400nm、又は約50nm〜約300nm、又は約50nm〜約250nm、又は約100nm〜約250nm、又は約150nm〜約220nm、又は100〜200nm、又は約150nm〜約200nmの範囲内、例えば約130nm又は約150nmである。
【0038】
本明細書で用いられる場合、平均有効粒度という用語は、当該技術分野における熟練者に既知のその通常の意味を有し、当該技術分野において既知の粒度測定法、例えば沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析(photon correlation spectroscopy)、レーザー回折又はディスク遠心分離(disk centrifugation)により測定され得る。本明細書で言及される平均有効粒度を、粒子の体積分布と関連付けることができる。その場合、「約50μmより小さい有効平均粒度」により、粒子の体積の少なくとも50%が50μmの有効平均より小さい粒度を有することを意味し、言及される他の有効粒度に同じことが当てはまる。同様のやり方で、平均有効粒度を粒子の重量分布と関連付けることができるが、通常これは平均有効粒度に関する値と同じか又は大体同じ値を生ずるであろう。
【0039】
本発明の製薬学的組成物は長時間に及ぶ活性成分TMC278の放出を与え、従ってそれらを持続もしくは遅延放出組成物とも呼ぶことができる。投与の後、本発明の組成物は体内に留まり且つ一定してTMC278を放出し、長時間患者の系内でこの活性成分のそのようなレベルを保ち、それにより該期間、抗−HIV治療又はHIV感染の予防を与える。本発明の製薬学的組成物が体内に留まり且つ一定してTMC278を放出するということのために、それらをデポ剤調製物として適した製薬学的組成物と呼ぶことができる。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「長時間」という用語を用い、1週間〜1年もしくは2年の範囲内であることができる期間(又は時間)、あるいは1〜2週間又は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内の期間、あるいは1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月又は3〜6ヶ月又は6ヶ月〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内の期間、あるいは数日、例えば7、10又は12日あるいは数週間、例えば2、3又は4週間、あるいは1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5又は6ヶ月あるいはもっと長く、例えば7、8、9又は12ヶ月の範囲内である期間を意味する。
【0041】
本発明の製薬学的組成物をHIV感染の長期処置又は長期予防において適用することができるか、あるいは言い換えると、それらを長時間の間、HIV感染の処置において、又はHIV感染の予防において用いることができる。本発明の組成物は長時間、例えば少なくとも約1週間かもしくはそれより長く、又は約1ヶ月かもしくはそれより長く、抗−HIV治療において、又はHIV感染の予防において有効である。「少なくとも約1週間かもしくはそれより長く有効」という表現により、活性成分、TMC278の血漿レベルが閾値より高くなければならないことを意味する。治療的適用の場合、該閾値は、TMC278がHIV感染の有効な処置を与える最低の血漿レベルである。HIV感染の予防における適用の場合、該閾値は、HIV感染の伝染の予防においてTMC278が有効である最低の血漿レベルである。
【0042】
例えば「HIV感染の長期予防」又は「HIV感染の長期処置」あるいは類似の用語と関連して用いられる「長期」を用い、1週間〜1年もしくは2年の範囲内又はそれより長く、例えば5もしくは10年であることができる期間を意味する。特にHIV感染の処置の場合、そのような期間は1〜数年のオーダーで(in the order of)長いであろう。特に予防の場合、そのような期間は比較的短いこともできる。比較的短い期間は数日、例えば7、10又は12日あるいは数週間、例えば2、3又は4週間、あるいは1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5又は6ヶ月あるいはもっと長く、例えば7、8、9又は12ヶ月の期間である。1つの態様において、本発明に従う方法及び使用は、1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5もしくは6ヶ月あるいはもっと長く、例えば7、8、9又は12ヶ月の間のHIV感染の予防のためである。
【0043】
本発明の製薬学的組成物を種々の時間間隔で投与することができる。HIV感染の予防において用いる場合、本発明の製薬学的組成物を1回又は限られた回数のみ、例えば2、3、4、5もしくは6回又はそれより多数回投与することができる。感染の危険がある期間のような限られた時間の間、予防が必要である場合に、これを薦めることができる。
【0044】
本発明の製薬学的組成物を上記の時間間隔で、例えば1週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内である時間間隔で投与することができる。1つの態様において、製薬学的組成物を2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は3ヵ月毎に1回投与することができる。他の態様において、時間間隔は1〜2週間又は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内であるか、あるいは時間間隔は1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月又は3〜6ヶ月又は6ヶ月〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内である。時間間隔は少なくとも1週間であることができるが、数週間、例えば2、3、4、5又は6週間、あるいは1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5又は6ヶ月又はそれより長く、例えば7、8、9もしくは12ヶ月の時間間隔であることもできる。1つの態様において、本発明の製薬学的組成物は1、2又は3ヶ月の時間間隔で投与される。本発明の製薬学的組成物の各投与の間のこれらの比較的長い期間は、薬剤負荷量及びコンプライアンスの点でさらなる向上を与える。さらにコンプライアンスを向上させるために、週に1回のスケジュールで組成物が投与される場合には、週のある決められた曜日に、あるいは1ヶ月に1回のスケジュールの場合には月のある決められた日に彼らの薬剤を摂取するように、患者を指導することができる。
【0045】
本発明の組成物の各投与の間の時間間隔の長さは、多様であることができる。例えば該時間間隔を血漿レベルの関数として選ぶことができる。TMC278の血漿レベルが低すぎるとみなされる場合、例えばこれらが下記で規定される最低血漿レベルに近い場合、間隔はより短いことができる。TMC278の血漿レベルが高すぎるとみなされる場合、間隔はより長いことができる。1つの態様において、本発明の組成物は等しい時間間隔で投与される。組成物を、中間の追加の投与なしで投与することができるか、又は言い換えると、多様なもしくは等しい長さの時間で、例えば少なくとも1週間の時間又は本明細書で規定される他の時間で互いに隔てられた特定の時点に組成物を投与することができ、その間、さらなるTMC278は投与されない。同じ長さの時間間隔を有することは、投与スケジュールが単純である、例えば投与が週の同じ曜日に、又は月の同じ日に行なわれるという利点を有する。従って、そのような投与スケジュールは限られた「薬剤負荷量」を含み、それにより処方される投薬管理への患者のコンプライアンスに有益に寄与する。
【0046】
TMC278で処置される患者血漿中のTMC278の濃度(又は「C」)は、一般に単位体積当たりの質量、典型的にはミリリットル当たりのナノグラム(ng/ml)として表される。簡単のために、この濃度を本明細書で「血漿薬剤濃度」又は「血漿濃度」と呼ぶことができる。
【0047】
投与されるTMC278の投薬量(又は量)は、本発明の製薬学的組成物中のTMC278の量あるいは投与される与えられる組成物の量に依存する。より高い血漿レベルが望まれる場合、より高いTMC278濃度の組成物又は与えられる組成物のより多くのいずれかあるいは両方を投与することができる。より低い血漿レベルが望まれる場合には、これが逆に適用される。多様な時間間隔及び多様な投薬の組み合わせを選んで、ある所望の血漿レベルに達することもできる。
【0048】
投与されるTMC278の投薬量(又は量)は、投与の頻度(すなわち各投与の間の時間間隔)にも依存する。通常、投与があまり頻繁でない場合、投薬量はより高いであろう。すべてのこれらのパラメーターを用い、血漿レベルを所望の値に向けることができる。
【0049】
投薬管理は、HIV感染の予防が意図されているか又はその処置が意図されているかにも依存する。治療の場合、投与されるTMC278の投薬量又は投薬の頻度あるいは両方は、TMC278の血漿濃度が最低血漿レベルより高く保たれるように選ばれる。このような関係において、「最低血漿レベル」(又はCmin)という用語は、HIVの有効な処置を与えるTMC278の血漿レベルを指す。特に、TMC278の血漿レベルは、約10ng/mlの最低血漿レベルより高いか、又は約15ng/mlより高いか、又は約20ng/mlより高いか、又は約40ng/mlより高いレベルに保たれる。TMC278の血漿レベルを、より高い最低血漿レベルより高く、例えば約50ng/mlより高くか、又は約90ng/mlより高くか、又は約270ng/mlより高くか、又は約540ng/mlより高く保つことができる。1つの態様において、TMC278の血漿レベルは約13.5ng/mlのレベルより高く保たれるか、あるいは約20ng/mlのレベルより高く保たれる。あるいはTMC278の血漿レベルをある範囲内に、特に上記のレベルから選ばれる最低血漿レベルから始まって上記のレベルから選ばれる、ならびに500ng/ml及び1000ng/mlから選ばれるもっと高い血漿レベルで終わる範囲内(例えば約10ng/ml〜約15ng/ml、約10ng/ml〜約20ng/ml、約10ng/ml〜約40ng/mlなど、あるいは約15ng/ml〜約20ng/ml又は約15ng/ml〜約40ng/ml又は約15ng/ml〜約90ng/mlなど、あるいは約20ng/ml〜約40ng/ml、約20ng/ml〜約90ng/ml又は約20ng/ml〜約270ng/mlなど、あるいは約40ng/ml〜約90ng/ml、約40ng/ml〜約270ng/ml又は約40ng/ml〜約540ng/mlなど)に保つことができる。1つの態様において、該範囲は約10ng/ml〜約20ng/ml、約20ng/ml〜約90ng/ml、約90ng/ml〜約270ng/ml、約270ng/ml〜約540ng/ml、約540ng/ml〜約1000ng/mlである。
【0050】
TMC278の血漿レベルは、上記の最低血漿レベルより高く保たれるべきであり、それは、それより低いレベルにおいてはウイルスをもはや十分に抑制することができず、それが増殖して突然変異の発現の危険を追加するからである。
【0051】
HIV予防の場合、「最低血漿レベル」(又はCmin)という用語は、HIV感染の有効な予防を与えるTMC278の最低血漿レベルを指す。HIVを含有する材料から又はHIVに感染した患者からのHIVに感染していない人へのHIVの伝染の場合、これは該伝染を妨げるのに有効である最低血漿レベルである。
【0052】
特に、HIV予防の場合、TMC278の血漿レベルを治療に関して上記であげた最低血漿レベルより高いレベルに保つことができる。しかしながら予防において、TMC278の血漿レベルをもっと低いレベルに、例えば約4ng/ml、又は約5ng/ml、又は約8ng/mlより高いレベルに保つことができる。TMC278の血漿レベルは、好ましくはこれらの最低血漿レベルより高く保たれるべきであり、それは、もっと低いレベルにおいては、薬剤がもはや有効であり得ず、それによりHIV化感染の伝染の危険を増すからである。TMC278の血漿レベルを、安全性の余裕を持つためにいくらかより高いレベルに保つことができる。そのようなより高いレベルは約50ng/mlかもしくはそれより高くから始まる。TMC278の血漿レベルを、治療に関して上記で上げた範囲内であるレベルに保つことができるが、ここで下限は約4ng/ml、又は約5ng/ml、又は約8ng/mlの血漿レベルを含む。
【0053】
TMC278の利点は、有意な副作用なしで比較的高い血漿レベルまでそれを用いることができることである。TMC278の血漿濃度は比較的高いレベルに達することができるが、いずれの薬剤の場合とも同様に、TMC278が有意な副作用を引き起こす血漿レベルである最高血漿レベル(又はCmax)を超えてはならない。本明細書で用いられる場合、「有意な副作用」という用語は、関連する患者集団において、副作用が患者の正常な機能に影響与える程度まで副作用が存在することを意味する。TMC278に関するCmaxは、細胞アッセイにおける試験データの外挿から、あるいは臨床試験の評価から決定され得、好ましくは約500ng/ml又は1000ng/mlの値を超えてはならない。1つの態様において、投与されるべきTMC278の量及び投与の頻度は、血漿濃度が長期間、最高血漿レベル(又は上記で規定したCmax)と最低血漿レベル(上記で規定したCmin)の間に含まれるレベルに保たれるように選ばれる。
【0054】
ある場合には、TMC278の血漿レベルを比較的低いレベルに、例えば本明細書で規
定される最低血漿レベルに可能な限り近いレベルに保つことが望ましいかも知れない。これは、投与の頻度及び/又は各投与で投与されるTMC278の量を減少させることを可能にするであろう。それは望ましくない副作用を避けることも可能にし、それは感染する危険にある健康な人々であり、従って副作用を耐える傾向が比較的低い、標的とされる集団群のほとんどにおける投薬形態物の受容性に寄与するであろう。予防の場合には、TMC278の血漿レベルを比較的低いレベルに保つことができる。1つの態様は、TMC278の最低血漿レベルが本明細書で規定される通りであり、最高血漿レベルが、やはり本明細書で規定されるRT阻害剤を治療的に作用させる最低血漿レベルに大体等しい、上記又は下記で規定されるHIV感染の予防のための使用又は方法に関する。
【0055】
他の態様において、TMC278の血漿レベルは約10ng/ml、さらに特定的に約15ng/ml、さらにもっと特定的に約20ng/ml、さらにずっと特定的に約40ng/mlの比較的低い最高血漿レベルより低いレベルに保たれる。特定の態様において、TMC278の血漿レベルは約13.5ng/mlのレベルより低く保たれる。1つの態様において、TMC278の血漿レベルは、上記で規定した比較的低い最高血液レベル及び予防に関して言及した最低血漿レベルの間隔内に保たれる。例えばTMC278の血漿レベルは、約10ng/mlより低く且つ約4ng/mlの最低レベルより高く保たれる。
【0056】
別の場合、例えば高い感染の危険があり、且つ比較的頻繁な及び/又はより高い投薬量が問題でない場合、TMC278の血漿レベルを比較的高いレベルに保つのが望ましいかも知れない。これらの場合、最低血漿レベルは、本明細書に挙げられる特定のレベルのような、HIVの有効な処置を与えるTMC278の最低血漿レベルに等しいことができる。
【0057】
予防の場合、投与されるべき投薬量は、約0.2mg/日〜約50mg/日又は0.5mg/日〜約50mg/日又は約1mg/日〜約10mg/日又は約2mg/日〜約5mg/日、例えば約3mg/日に基づいて計算されねばならない。これは、約1.5mg〜約350mg、特に約3.5mg〜約350mg、特に約7mg〜約70mg又は約14mg〜約35mg、例えば35mgの1週間の投薬量あるいは6mg〜約3000mg、特に約15mg〜約1,500mg、さらに特定的に約30mg〜約300mg又は約60mg〜約150mg、例えば約150mgの1ヶ月の投薬量に相当する。1日の投薬量に各投与の間の日数を乗じることにより、他の投薬管理のための投薬量を容易に計算することができる。
【0058】
治療の場合、投与されるべき投薬量はいくらかより高くなければならず、約1mg/日〜約150mg/日又は約2mg/日〜約100mg/日又は約5mg/日〜約50mg/日又は約10mg/日〜約25mg/日、例えば約15mg/日に基づいて計算されるべきである。対応する1週間又は1ヶ月の投薬量は、上記に示した通りに計算することができる。予防における適用のために、投薬量はもっと低いことができるが、治療的適用の場合と同じ投薬量を用いることができる。
【0059】
投与されると、TMC278の血漿レベルは大体(more or less)安定である、すなわちそれらは限られた余裕内で変動することが見出された。血漿レベルは、長時間の間に、大体定常状態モードに達するか、あるいは大体ゼロ次放出速度に近づくことが見出された。「定常状態」により、患者の血漿中に存在する薬剤の量が長時間に及んで大体同じレベルに留まる状態を意味する。TMC278の血漿レベルは一般に、薬剤が有効である最低血漿レベルより下への下降を示さない。「大体同じレベルに留まる」という用語は、許容され得る範囲内の血漿濃度の小さい変動、例えば約+/−30%又は約+/−20%又は約+/−10%又は約+/−10%の範囲内の変動があり得ることを排除し
ない。
【0060】
いくつかの場合、投与の後に初期血漿濃度ピークがあり得、その後血漿レベルは下記に言及する「定常−状態」に達する。
【0061】
本発明の組成物は、優れた局所的耐性(local tolerance)及び投与の容易さを示す。優れた局所的耐性は、注入の部位における最小の刺激及び炎症に関し;投与の容易さは、特定の薬剤調製物のある投薬量の投与のために必要な針の寸法及び時間の長さを指す。さらに、本発明の組成物は優れた安定性を示し、許容され得る保存寿命を有する。
【0062】
本発明のマイクロ−又はナノ粒子は、その表面上に吸着した表面改質剤を有する。表面改質剤の機能は、湿潤剤ならびにコロイド懸濁液の安定剤として働くことである。
【0063】
1つの態様において、本発明の組成物中のマイクロ−又はナノ粒子は、主に結晶性TMC278又はその塩;ならびに表面改質剤を含み、それらの合わされた量は、マイクロ−又はナノ粒子の少なくとも約50%又は少なくとも約80%又は少なくとも約90%又は少なくとも約95%又は少なくとも約99%を構成することができる。
【0064】
さらに別の側面において、本発明は、筋肉内又は皮下注入による投与のための製薬学的組成物であって、本質的に:
(1)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子の形態におけるTMC278又はその立体異性体もしくは立体異性体混合物;及び
(2)中に活性成分が懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
より成る粒子の懸濁液の形態におけるTMC278又はその立体異性体もしくは立体異性体混合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物に関する。
【0065】
適した表面改質剤は、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然産物及び界面活性剤を含む既知の有機及び無機製薬学的賦形剤から選ばれることができる。特定の表面改質剤には非イオン性及びアニオン性界面活性剤が含まれる。表面改質剤の代表的な例にはゼラチン、カゼイン、レシチン、負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態(例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノサイト、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸(phosphatic acid)及びそれらの塩、例えばアルカリ金属塩、例えばそれらのナトリウム塩、例えば卵ホスファチジルグリセロールナトリウム、例えばLipoidTM EPGの商品名の下に入手可能な製品)、アラビアゴム、ステアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばマクロゴルエーテル、例えばセトマクロゴル 1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁塩、例えばタウロコール酸ナトリウム、デソキシタウロコール酸ナトリウム、デソキシコール酸ナトリウム;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マグネシウムアルミネートシリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるポロキサマー、例えばPluronicTM F68、F108及びF127;チロキサポル(tyloxapol);ビタミンE−TGPS(α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、特にα−トコフェリルポリエチレングリコール 1000 スクシネート);ポロキサミン、例えばエチレンジアミンへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドの逐次付加(sequential addition)から誘導される四官能基性ブロックコポリマーであるTetronicTM 908(T908);デキストラン;レシチン;ナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステル、例えばAerosol OTTM(AOT)の商品名の下に販売されている製品;ラウリル硫酸ナトリウム(DuponolTM P);TritonTM X−200の商品名の下に入手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホネート;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TweenTM 20、40、60及び80);脂肪酸のソルビタンエステル(SpanTM 20、40、60及び80又はArlacelTM 20、40、60及び80);ポリエチレングリコール(例えばCarbowaxTM 3550及び934の商品名の下に販売されているもの);スクロースステアレート及びスクロースジステアレート混合物、例えばCrodestaTM F110又はCrodestaTM SL−40の商品名の下に入手可能な製品;ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC);ポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。望ましければ、2種もしくはそれより多い表面改質剤を組み合わせて用いることができる。
【0066】
特定的な表面改質剤は、ポロキサマー、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態から選ばれる。さらに特定的に、表面改質剤はPluronicTM F108、ビタミンE TGPS、TweenTM 80及びLipoidTM EPGから選ばれる。これらの表面改質剤の1種もしくはそれより多くを用いることができる。PluronicTM F108はポロキサマー338に相当し、それはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、それは一般に、式HO−[CHCHO]−[CH(CH)CHO]−[CHCHO]−Hに従い、ここでx、y及びzの平均値はそれぞれ128、54及び128である。ポロキサマー338の他の商品名はHodag NonionicTM 1108−F及びSynperonicTM PE/F108である。1つの態様において、表面改質剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びホスファチジルグリセロール塩(特に卵ホスファチジルグリセロールナトリウム)の組み合わせを含んでなる。
【0067】
表面改質剤に対するTMC278の最適な相対的量は、選ばれる表面改質剤、平均有効粒度とTMC278濃度により決定されるTMC278懸濁液の比表面積、表面改質剤がミセルを形成する場合には表面改質剤の臨界ミセル濃度などに依存する。TMC278対表面改質剤の相対的な量(w/w)は、好ましくは1:2〜約20:1の範囲内、特に1:1〜約10:1の範囲内、例えば約4:1である。
【0068】
本発明の粒子は、機械的手段による超微粉砕/粒度減少/ナノ化により、及び過飽和溶液からの制御された沈降により、あるいはGAS法(「ガスアンチ−ソルベント(gas
anti−solvent)」)におけるような超臨界流体の使用により、あるいはそのような方法の組み合わせにより調製することができる。1つの態様において、TMC278を液体分散媒中に分散させ、磨砕媒体の存在下で機械的手段を適用し、TMC278の粒度を約50μmより小さい、特に約1,000nmより小さい平均有効粒度まで減じる段階を含んでなる方法を用いる。表面改質剤の存在下で粒子の寸法を減じることができる。
【0069】
本発明の粒子の調製のための一般的な方法は、
(a)超微粉砕された形態でTMC278を得;
(b)超微粉砕されたTMC278を液体媒体に加えて予備混合物/予備分散系を形成
し;そして
(c)予備混合物を磨砕媒体の存在下で機械的手段に供して、平均有効粒度を減じる
ことを含んでなる。
【0070】
超微粉砕された形態のTMC278は、当該技術分野において既知の方法を用いて調製される。予備分散系中のTMC278活性薬剤の平均有効粒度は、篩別試験(sieve
analysis)により決定される約100μmより小さいのが好ましい。超微粉砕されたTMC278の平均有効粒度が約100μmより大きい場合、TMC278化合物の粒子の寸法を100μmより小さく減じるのが好ましい。
【0071】
次いで超微粉砕されたTMC278を、本質的にTMC278が不溶性である液体媒体に加え、予備分散系を形成することができる。液体媒体中のTMC278の濃度(重量パーセンテージ)は広く変ることができ、選ばれる表面改質剤及び他の因子に依存する。組成物中のTMC278の適した濃度は、約0.1%〜約60%又は約1%〜約60%又は約10%〜約50%又は約10%〜約30%、例えば約10%、20%又は30%で変る(この節におけるそれぞれの%はw/vに関する)。
【0072】
予備混合物を機械的手段に供して分散系における有効平均有効粒度を2,000nmより小さく減じることにより、予備混合物を直接用いることができる。磨砕のためにボールミルが用いられる場合、予備混合物を直接用いるのが好ましい。あるいはまた、TMC278及び場合により表面改質剤を、適した攪拌、例えばローラーミルを用い、均一な分散系が得られるまで液体媒体中に分散させることができる。
【0073】
TMC278の有効平均有効粒度を減じるために適用される機械的手段は、簡便に分散ミルの形態をとることができる。適した分散ミルにはボールミル、磨砕機/磨砕ミル、振動ミル、遊星型ミル、媒体ミル(media mills)、例えばサンドミル及びビーズミルが含まれる。媒体ミルは、粒度における所望の減少を与えるのに必要な比較的より短い磨砕時間の故に、好ましい。ビーズは、好ましくはZrOビーズである。
【0074】
粒度減少段階のための磨砕媒体は、好ましくは3mmより小さい、そしてより好ましくは1mmより小さい(200μmのように小さいビーズ)平均寸法を有する球形又は粒子形の硬質の媒体から選ばれることができる。そのような媒体は、望ましくはより短い加工時間で本発明の粒子を与えることができ、且つ磨砕装置に与える磨耗がより少ない。磨砕媒体の例はZrO、例えばマグネシアで安定化されたか又はイットリウムで安定化された95%ZrO、ケイ酸ジルコニウム、ガラス磨砕媒体、ポリマービーズ、ステンレススチール、チタニア、アルミナなどである。好ましい磨砕媒体は、2.5g/cmより高い密度を有し、マグネシアで安定化された95%ZrO及びポリマービーズを含む。
【0075】
磨砕時間は広く変り得、主に選ばれる特定の機械的手段及び加工条件に依存する。ロールミルの場合、最高で2日かもしくはそれより長い加工時間が必要であり得る。
【0076】
TMC278化合物を有意に分解しない温度で、粒子の寸法を減じなければならない。30℃未満〜40℃の加工温度が通常好ましい。望ましければ、通常の冷却装置を用いて加工装置を冷却することができる。方法は周囲温度の条件下で、且つ安全で磨砕法のために有効な加工圧において簡便に行なわれる。
【0077】
本発明に従う製薬学的組成物は、好ましくは製薬学的に許容され得る水性担体を含有する。該水性担体は、場合により他の製薬学的に許容され得る成分と混合されていることができる無菌水を含む。他の製薬学的に許容され得る成分は、注入可能な調製物中で使用するためのいずれの成分をも含む。これらの成分は、懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、等張化剤などの成分の1つもしくはそれより多くから選ばれることができる。1つの態様において、該成分は懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤ならびに場合により防腐剤及び等張化剤の1つもしくはそれより多くから選ばれる。特別な成分は、これらの薬剤の2つもしくはそれより多くとして同時に機能することができ、例えば防腐剤及び緩衝剤のように挙動するか、又は緩衝剤及び等張化剤のように挙動する。
【0078】
適した緩衝剤及びpH調整剤は、分散系を中性から非常にわずかに塩基性(pH8.5まで)、好ましくは7〜7.5のpH範囲内とするのに十分な量で用いられなければならない。特定的な緩衝剤は弱酸の塩である。加えることができる緩衝剤及びpH調整剤は、これらの混合物を含んで酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム/乳酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、重炭酸ナトリウム/炭酸、コハク酸ナトリウム/コハク酸、安息香酸ナトリウム/安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、ベンゾエートナトリウム/酸(benzoate sodium/acid)、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、塩酸、臭化水素、リシン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、トロメタミン、グルコン酸、グリセリン酸、グルタル酸(gluratic)、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミンから選ばれることができる。
【0079】
防腐剤は抗微生物剤及び酸化防止剤を含んでなり、それらは安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトル、ガレート、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、ベンズエトニウムクロリド、ミリスチル−γ−ピコリニウムクロリド、フェニル水銀アセテート及びチメロサルより成る群から選ばれることができる。ラジカル掃去剤にはBHA、BHT、ビタミンE及びパルミチン酸アスコルビルならびにそれらの混合物が含まれる。酸素掃去剤にはアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−システイン、アセチルシステイン、メチオニン、チオグリセロール、アセトンナトリウムビサルファイト、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが含まれる。キレート化剤にはクエン酸ナトリウム、ナトリウムEDTA及びリンゴ酸が含まれる。
【0080】
等張化剤又は等張剤(isotonifier)は、本発明の製薬学的組成物の等張性を保証するために存在することができ、糖類、例えばグルコース、デスキトロース、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラクトース;多価糖アルコール、好ましくは三価もしくはそれより高い糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。あるいはまた、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム又は他の適した無機塩を用いて溶液を等張にすることができる。これらの等張剤を単独で又は組み合わせて用いることができる。懸濁液は、簡便には0〜10%(w/v)、特に0〜6%の等張化剤を含む。興味深いのは非イオン性等張剤、例えばグルコースであり、それは、電解質がコロイドの安定性に影響し得るからである。
【0081】
本発明の製薬学的組成物に関する望ましい特徴は、投与の容易さに関連する。本発明の製薬学的組成物の粘度は、注入による投与を可能にするのに十分に低くなければならない。特にそれらは、それらを容易にシリンジ中に採取し(例えばバイアルから)、長すぎない時間内に微細な針(例えば20G 1 1/2、21G 1 1/2、22G 2又は22G 1 1/4針)を介して注入できるように設計されねばならない。1つの態様において、本発明の組成物の粘度は約75mPa・sより低いか又は60mPa・sより低い。そのような粘度かもしくはもっと低い粘度の水性懸濁液は、通常上記の基準を満たす。
【0082】
理想的には、本発明に従う水性懸濁液は、注入される体積を最小に保つために、許容され得る限り多くのTMC278、特に3〜40%(w/v)又は3〜30%(w/v)又は3〜20%(w/v)又は10〜30%(w/v)のTMC278を含むであろう。1つの態様において、本発明の水性懸濁液は約10%(w/v)のTMC278又は約10%(w/v)のTMC278又は約30%(w/v)のTMC278を含有する。
【0083】
1つの態様において、水性懸濁液は組成物の合計体積に基づく重量により:
(a)3%〜50%(w/v)又は10%〜40%(w/v)又は10%〜30%(w/
v)のTMC278;
(b)0.5%〜10%又は0.5%〜2%(w/v)の湿潤剤;
(c)0%〜10%又は0%〜5%又は0%〜2%又は0%〜1%の1種もしくはそれよ
り多い緩衝剤;
(d)0%〜10%又は0%〜6%(w/v)の等張化剤、
(e)0%〜2%(w/v)の防腐剤;及び
(f)100%とするのに十分な注入用水
を含んでなることができる。
【0084】
場合により懸濁液に、pHを約pH7の値にする量の酸又は塩基を加えることができる。適した酸又は塩基は、生理学的に許容され得るもの、例えばHCl、HBr、硫酸、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHのいずれかである。
【0085】
本発明におけるようなTMC278の投与は、HIV感染の処置に十分であり得るが、複数の場合に、他のHIV阻害剤を共−投与するのが良いかも知れない。他のHIV阻害剤には、好ましくは他の種類のHIV阻害剤、特にNRTIs、PIs及び融合阻害剤から選ばれるものが含まれる。1つの態様において、共−投与される他のHIV阻害剤はPI阻害剤である。好適に共−投与することができるHIV阻害剤は、NNRTIを含んでなるHAART組み合わせにおいて用いられるものである。例えば2つのさらに別のNRTIs又は1つのNRTI及びPIを共−投与することができる。そのような共−投与は経口的投与によるか又は非経口的であることができる。
【0086】
ある場合には、HIV感染の処置は、本発明に従うTMC278の組成物のみ、すなわちさらに別のHIV阻害剤の共−投与なしのモノテラピー(monotherapy)としての投与に限られ得る。例えばウイルス負荷が比較的低い場合、例えばウイルス負荷(特定の体積の血清中のウイルスRNAのコピーの数として示される)が約200コピー/mlより低い、特に約100コピー/mlより低い、さらに特定的に50コピー/mlより低い、特別にウイルスの検出限界より低い場合に、この選択肢を薦めることができる。1つの態様において、この型のモノテラピーは、血漿中のウイルス負荷が前記で挙げた低いウイルスレベルに達するまでのある期間の間のHIV薬の組み合わせを用いる、特にHAART組み合わせのいずれかを用いる初期処置の後に適用される。
【0087】
さらに別の側面において、本発明は、HIVに感染している患者の維持療法用の薬剤の製造のための、本発明に従うTMC278又はその製薬学的に許容され得る酸−付加塩の抗−ウイルス的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物の使用に関し、ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されることになる。
【0088】
かくしてさらに別の側面において、本発明はHIVに感染している患者の長期処置のための方法を提供し、該方法は
(i) HIV阻害剤の組み合わせを用いる該患者の処置;及び続く
(ii)本発明に従うTMC278又はその製薬学的に許容され得る酸−付加塩の抗−ウ
イルス的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物の断続的投与
を含んでなり、ここで組成物は少なくとも1週間の時間間隔で投与される。
【0089】
本発明は、HIV感染の処置又は予防における薬剤として用いるための、前記に記載された製薬学的組成物にも関する。
【0090】
さらに本発明は、HIV感染の予防又は処置用の薬剤の製造のための、本明細書に記載される製薬学的組成物の使用に関する。
【0091】
本発明はさらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は本明細書に記載される製薬学的組成物の治療的に有効な量を投与することを含んでなる。
【0092】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないことができる。必要な場合には、本発明の定義から「実質的に」という用語を省略することができる。数値と結びついた「約」という用語は、数値と関連する通常のその意味を有するものとする。必要なら、「約」という用語を数値±10%又は±5%又は±2%又は±1%で置き換えることができる。本明細書で引用されるすべての文書は、引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0093】
以下の実施例は本発明を例示することを目的とし、本発明をそれに制限するとみなされるべきではない。
【実施例1】
【0094】
実施例1:ナノ懸濁液の調製
250mlのガラスビン及び磨砕媒体として用いられるZrOビーズをオートクレーブ中で滅菌した。5グラムの薬剤物質を、60mlの注射用水中の1.25gのPluronic F108の溶液と一緒に250mlのガラスビン中に入れた。500μmの平均粒度を有する300グラムのZrO−ビーズを加えた。ビンをローラーミル上に置いた。懸濁液を100rpmで72時間超微粉砕した。磨砕プロセスの最後に、濃厚ナノ懸濁液をシリンジで取り出し、バイアル中に充填した。得られる調製物は、以下の表中の調製物1である。HPLC/UVにより、濃度の決定を行った。25mg/mlのTMC278の最終的濃度まで希釈を行なった。得られる懸濁液を光から保護した。
【0095】
類似の方法を用い、調製物2、3及び4を調製した。これらを、水酸化ナトリウム1N溶液を用いて約7のpHに滴定した。調製物2、3及び4においては、LipoidTM
EPGをTweenTM 80中で可溶化した。
【0096】
【表1】

【実施例2】
【0097】
実施例2:速度論的研究
本研究は、ナノ化されたTMC278又はそのHCl−塩の注入可能な調製物が長時間の間、安定な血漿レベルを生ずることを示す。この研究は、雄のビーグル犬において、ナ
ノ懸濁液(前実施例の調製物1)を5mg/kgで1回、筋肉内(IM)又は皮下注入した後のTMC278塩基及び塩酸塩の血漿速度論を比較する。
【0098】
研究の開始時に8〜16kgの範囲の体重を有する6匹の健康な雄のビーグル犬を用いた。各犬を耳の刺青の数字により同定した。2匹の犬に、左及び右大腿二頭筋(m.biceps femoris)において筋肉内に(IM)投薬した(処置群A)。2匹の犬に、TMC278.HClをIMに投薬した(処置群B)。2匹の犬に、左及び右胸郭領域において皮下的に(SC)投薬した。注入体積は、すべての処置群において2x0.1ml/kgであった。20G針を用いた。
【0099】
0日に投薬−後0時間(投薬前)、20分、1時間、3時間、8時間及び24時間ならびにさらに2、3、6、8、10、13、16、20、23、27、29、36、43、50、57、64、71、78、85及び92日に大体午前8時に、すべての犬から3mlの血液試料を左頸静脈から採取した。血液試料をEDTA(EDTA Vacuette Greiner,Cat.No.454086,Greiner Labortechnik N.V.)上に置いた。血液試料採取から2時間以内に、試料を室温で約1900xgにおいて10分間遠心し、血漿を分離した。すぐに血漿を第2の管に移し、遠心の開始から2時間後以内にフリーザー中に保存した。有効とされている(validated)LC−MS/MS−法により、血漿試料をTMC278に関して個別に分析した。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉内又は皮下注入による投与のための製薬学的組成物であって:
(a)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子の形態におけるT
MC278、その塩、立体異性体又は立体異性体混合物;及び
(b)中にTMC278活性成分が懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
を含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子の懸濁液の形態におけるTMC278、その塩、立体異性体又は立体異性体混合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項2】
TMC278が塩形態のE−異性体として存在する請求項1に従う組成物。
【請求項3】
表面改質剤がポロキサマー、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び負に帯電したリン脂質の塩の群から選ばれる請求項1又は2に従う組成物。
【請求項4】
表面改質剤がPluronicTM F108、ビタミンE TGPS、TweenTM 80及びLipoidTM EPGから選ばれる請求項1又は2に従う組成物。
【請求項5】
TMC278マイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度が約50μmより小さい、特に約200nmより小さい請求項1〜4のいずれかに従う組成物。
【請求項6】
TMC278マイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度が約130nmである請求項1〜4のいずれかに従う組成物。
【請求項7】
組成物の合計体積に基づく重量により:
(a)3%〜50%(w/v)又は10%〜40%(w/v)又は10%〜30%(w/
v)のTMC278;
(b)0.5%〜10%又は0.5%〜2%(w/v)の湿潤剤;
(c)0%〜10%又は0%〜5%又は0%〜2%又は0%〜1%の1種もしくはそれよ
り多い緩衝剤;
(d)0%〜10%又は0%〜6%(w/v)の等張化剤、
(e)0%〜2%(w/v)の防腐剤;及び
(f)100%とするのに十分な注入用水
を含んでなる請求項1又は2に従う組成物。
【請求項8】
HIV感染の処置用又はHIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための請求項1〜7のいずれかに定義される製薬学的組成物の使用。
【請求項9】
薬剤がHIV感染の長期処置用又はHIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の長期予防用である請求項8の使用。
【請求項10】
薬剤が筋肉内又は皮下注入による投与用であり;ここで組成物を1週間〜2年の時間間隔で断続的に投与する請求項8に従う使用。
【請求項11】
製薬学的組成物を少なくとも1ヶ月〜1年の間隔で投与する請求項8に従う使用。
【請求項12】
製薬学的組成物を1週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内である時間間隔で投与する請求項8に従う使用。
【請求項13】
製薬学的組成物を2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は3ヵ月毎に1回投与する請求項8に従う使用。
【請求項14】
(a)超微粉砕された形態でTMC278を得;
(b)超微粉砕されたTMC278を液体媒体に加えて予備混合物/予備分散系を形成せ
しめ;そして
(c)予備混合物を磨砕媒体の存在下で機械的手段に供して、平均有効粒度を減じる
ことを含んでなる請求項1〜7のいずれかで定義された製薬学的組成物の調製方法。

【公表番号】特表2009−541271(P2009−541271A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515890(P2009−515890)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056230
【国際公開番号】WO2007/147882
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】