説明

TPO模倣薬としてのヒドロキシ−1−アゾ−誘導体の新規な製造方法

TPO模倣薬としてのヒドロキシ−1−アゾ−ベンゼン誘導体の新規な製造方法が発明される。その新規な方法に用いられる新規な中間体も発明される。その新規な方法により製造される化合物を含む医薬組成物も発明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板産生および巨核球形成のプロモータとして有用である、トロンボポエチン(TPO)模倣薬の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
巨核球は、循環血小板の産生に関与する、骨髄誘導の細胞である。巨核球は、大抵の種で、骨髄細胞の<0.25%を占めるが、その体積は典型的な骨髄細胞の>10倍である。Kuterら、Proc. Natl. Acad. USA 91: 11104-11108(1994)を参照のこと。巨核球は核内分裂として知られる工程を経て、それにより核を複製するが、細胞分裂を経ることなく、それによりポリープ状細胞が形成される。血小板の数の減少に応答して、核内分裂速度が速まり、高次倍数性巨核球が形成され、巨核球の数が3倍まで増加するかもしれない。Harker、J. Clin. Invest. 47: 458-465(1968)を参照のこと。反対に、血小板の数の増加に対して、核内分裂速度が遅くなり、低次倍数性巨核球が形成され、巨核球の数が50%まで減少するかもしらない。
【0003】
循環血小板塊が核内分裂速度および骨髄巨核球の数を調節するとする、確かな生理学的フィードバック機構は解っていない。このフィードバックループの媒介に関連する循環血栓形成因子は、現在では、トロンボポエチン(TPO)であると考えられている。さらに詳細には、TPOは血小板減少症の関与する症状の主たる体液性調節剤であることが解っている。例えば、Metcalf、Nature 369: 519-520(1994)を参照のこと。いくつかの研究にて、TPOが血小板の数を増加させ、血小板の大きさを大きくし、そして同位体の受容動物の血小板への導入を促進することが明らかにされた。具体的には、TPOは以下の数通りの経路にて:(1)TPOは巨核球の大きさおよび数の増加をもたらす;(2)TPOは巨核球における倍数性の形態のDNAの含量の増加をもたらす;(3)TPOは巨核球核内分裂を増加させる;(4)TPOは巨核球の成熟の増加をもたらす;および(5)TPOは、骨髄におけるアセチルコリンエステラーゼ陽性の小細胞の形態での、前駆細胞の割合の増加をもたらす;それらの経路にて巨核球形成に影響を及ぼすと考えられる。
【0004】
血小板(トロンボサイト)は血液凝固に不可欠であり、この数がかなり少ないと、患者は壊滅的な出血から死亡する危険があり、TPOは種々の出血性障害、例えば主として血小板異常に起因する疾患の診断および処理の両方に効果的に適用できる可能性がある(Harkerら、Blood 91: 4427-4433(1998)を参照のこと)。TPOを用いる臨床試験を進めるうちに、TPOを患者に安全に投与しうることが解った(Basserら、Blood89: 3118-3128(1997);Fanucchiら、New Engl. J. Med. 336: 404-409(1997)を参照のこと)。加えて、最近の研究で、血小板減少症、特に癌またはリンパ腫の処理としての化学療法、放射線治療または骨髄移植がもたらす血小板減少症の処理にてTPO療法の効能を予測するための基準が提供された。(Harker、Curr. Opin. Hematol. 6: 127-134(1999)を参照のこと)。
【0005】
TPOをコードする遺伝子がクローン化され、かつ特徴付けられた。Kuterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11104-11108(1994);Barlyら、Cell 77: 1117-1124(1994);Kaushanskyら、Nature 369: 568-571(1994);Wendlingら、Nature 369: 571-574(1994);およびSauvageら、Nature 369: 533-538(1994)を参照のこと。トロンボポエチンは、見かけの分子量が25kDaと31kDaで、共通のN−末端アミノ酸配列を有する、少なくとも2つの形態の糖タンパクである。Baatout、Haemostasis 27: 1-8(1997);Kaushansky、New Encl. J. Med. 339: 746-754(1998)を参照のこと。トロンボポエチンは潜在的なArg−Arg切断部位により分離される2つの異なる領域を有するようである。アミノ末端領域はヒトおよびマウスにて高度に保存されており、エリスロポエチンならびにインターフェロン−αおよびインターフェロン−βとでいくらか相同性がある。カルボキシ末端領域は大きな種相違性を示す。
【0006】
ヒトTPO受容体(TPO−R;c−mplとしても知られている)についてのDNA配列およびそれによりコードされるペプチド配列が記載されている。(Vigonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5640-5644(1992)を参照のこと)。TPO−Rは、ヘマトポエチン成長因子受容体ファミリーの、N−末端部の保存C残基についてのものを含む、細胞外ドメインの共通の構造デザイン、および膜透過領域の付近にあるWSXWSモチーフにより特徴付けられるファミリーの構成員である。この受容体が造血において機能的役割を果たすとの証拠として、その発現がマウスでの脾臓、骨髄または胎児肝臓に制限され(Souyriら、Cell 63: 1137-1147(1990)を参照のこと)およびヒトでの巨核球、血小板およびCD34細胞に制限される(Methiaら、Blood 82: 1395-1401(1993)を参照のこと)との観察が挙げられる。TPO−Rについての巨核球形成の鍵となるレギュレーターとしてのさらなる証拠として、CD34細胞のTPO−R RNAに対してアンチセンスの合成オリゴヌクレオチドへの曝露が、赤血球または骨髄コロニーの形成に影響を及ぼすことなく、巨核球コロニーの出現を有意に阻害するという事実がある。ある研究員たちは、該受容体がG−CSFおよびエリスロポエチンについての受容体での状況と同様に、ホモ二量体として機能すると主張する。(Alexanderら、EMBO J. 14: 5569-5578(1995)を参照のこと)。
【0007】
血小板減少症を患っている患者における血小板濃度の回復の遅さは深刻な問題であり、血小板新生を促進しうる血液成長因子アゴニストについての調査に緊急性を付与するものである(Kuter、Seminars in Hematology, 37: Supp 4: 41-49(2000)を参照のこと)。
TPO模倣薬として作用することで、血小板減少症を治療しうる化合物を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
WO01/89457A2はTPO模倣薬としての特定のヒドロキシ−1−アゾ−ベンゼン誘導体およびこれら化合物の製造法を記載する。本発明においてはヒドロキシ−1−アゾ−ベンゼン誘導体を製造する新規な方法が開示される。本発明は、複数の問題のある変形が回避されるため、WO01/89457A2に記載の方法よりも優れた利点を示すものである。本発明は、毒性が強くかつ揮発性の副生成物としてのブロモメタンを形成するアニソールのジメチル化を、潜在的に有害なニトロ化を、および困難な塩化アリールの水素化分解を回避するものである。出発物質の2−ニトロフェノールおよび3−シアノボロン酸は容易に入手可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はTPO模倣薬としての有用性を有するヒドロキシ−1−アゾ−ベンゼン誘導体を製造する新規な方法に関する。本発明はまた、該新規な方法にて用いられる新規な中間体に関する。
【0010】
本発明は、式I:
【化1】

(I)
[式中、Zは−COOHまたはテトラゾール−イルを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩の製法であって、
(1)式II:
【化2】

II
[式中、XはCl、Br、Iまたはボロン酸とのカップリングに適する基であり、YはNOまたはNHであり、Rはアルキルまたは置換されているアルキルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化3】

III
[式中、YはNHまたはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、所望によりその医薬上許容される塩を形成する工程を含む、方法に関する。
【0011】
本発明はまた、式I:
【化4】

(I)
[式中、Zはテトラゾール−イルを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩の製法であって、
(1)式II:
【化5】

II
[式中、XはBrであり、YはNOであり、Rはアルキルまたは置換されているアルキルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化6】

III
[式中、YはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、所望によりその医薬上許容される塩を形成する工程を含む、方法に関する。
【0012】
本発明はまた、式I:
【化7】

(I)
[式中、Zはテトラゾール−イルを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、その水和物、溶媒和物またはプロドラッグの製法であって、
(1)式II:
【化8】

II
[式中、XはBrであり、YはNOであり、Rはt−ブチルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化9】

III
[式中、YはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、所望によりその医薬上許容される塩を形成する工程を含む、方法に関する。
【0013】
本発明はまた、式I:
【化10】

(I)
[式中、Zは−COOHを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩の製法であって、
(1)式II:
【化11】

II
[式中、XはBrであり、YはNOであり、Rはアルキルまたは置換されているアルキルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化12】

III
[式中、YはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、所望によりその医薬上許容される塩を形成する工程を含む、方法に関する。
【0014】
本発明はまた、式I:
【化13】

(I)
[式中、Zは−COOHを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、その水和物、溶媒和物またはプロドラッグの製法であって、
(1)式II:
【化14】

II
[式中、XはBrであり、YはNOであり、Rはt−ブチルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化15】

III
[式中、YはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、所望によりその医薬上許容される塩を形成する工程を含む、方法に関する。
【0015】
本発明はまた、大規模の新規な方法により調製される式Iの化合物に関する。大きな工業的規模にて調製される化合物は実質的に純粋な出発物質を必要とし、独特な不純物特性をもたらすことが多い。
【0016】
本明細書にて用いる「ボロン酸とのカップリングに適する基」なる語は、一の分子に取り付けられると、該分子がボロン酸との触媒反応を受け、結合を形成する官能基を意味する。
【0017】
本明細書にて用いる「大規模」なる語は、50グラムより多くの生成物、好ましくは10キログラムより多くの生成物を生成する一連の反応の規模を意味する。本明細書にて用いる「溶媒」なる語は、有機溶媒、無機溶媒または適当な割合の有機溶媒と無機溶媒の混合液を意味する。
【0018】
本明細書にて用いる「置換されている」なる語は、特記しない限り、特定の化学的部分が、水素、ハロゲン、C1−C6アルキル、アミノ、トリフルオロメチル、−(CHCOOH(ここで、nは0ないし6である)、C3−C7シクロアルキル、アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、アリールアミノ、ニトロ、オキシ、−CO50、および−CONR5560(ここで、R50、R55およびR60は、各々独立して、水素およびアルキルより選択される)からなる群より選択される、1個または複数の置換基、適当には1ないし5個の置換基、適当には1ないし3個の置換基を有することを意味する。
【0019】
本明細書にて用いる「ボロン酸」なる語は、以下の式:
【化16】

[式中、芳香族環は所望により置換されていてもよい]
で示される化合物を意味する。
【0020】
Zが−COOHである場合、適当には、塩はビス−モノエタノールアミンである。Zがテトラゾール−イルである場合、適当には塩はコリンである。
【0021】
反応式
【化17】

【0022】
実施例
2−ブロモ−6−ニトロフェノールt−ブチルアミン塩
【化18】

NBS(2.56g、14.4ミリモル)のクロロホルム(70ml)中懸濁液に、t−ブチルアミン(1.50ml、14.4ミリモル)を添加した。得られた溶液を0−5℃に冷却し、ついで2−ニトロフェノール(4.00g、28.8ミリモル)/クロロホルム(35ml)を10分間にわたって添加した。得られたスラリーを1時間攪拌し、ついで生成物を濾過し、クロロホルム(20ml)で洗浄した。生成物を明橙色固体として得た。収量=3.03g、73%;δ(400MHz、DMSO)1.25(9H,s)、5.85(1H,t)、7.45(1H,d)、7.65(1H,d)および7.9(3H,brs)。
【0023】
【化19】

2’−ヒドロキシ−3’−ニトロ−3−ビフェニルカルボニトリル
2−ブロモ−6−ニトロフェノールt−ブチルアミン塩(1.50g、5.20ミリモル)および炭酸ナトリウム(0.66g、6.2ミリモル)のメタノール(12ml)および水(0.48ml)中混合物に、トリスジベンジリジンアセトンジパラジウム(0)(94mg、0.103ミリモル)およびトリt−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(52mg、0.179ミリモル)をアルゴン下にて添加した。該混合物を還流温度(60℃)で30分間加熱し、その後で3−シアノボロン酸(0.83g、5.68ミリモル)/メタノール(12ml)および水(0.48ml)をアルゴン下にて1時間にわたって添加した。該反応物を還流温度で4時間維持した。この時間の後で、酢酸(15ml)を添加し、溶媒(17ml)を留去させた。ついで、水(15ml)を50−70℃にて5分間にわたって加えた。得られたスラリーを室温に冷却し、生成物を濾過し、水(20ml)で洗浄し、吸引して乾燥させた。生成物を褐色固体(0.98g、79%)として得た;;δ(400MHz、DMSO)7.58(1H,t)、7.58(1H,t)、7.75(1H,dd)、7.90(2H,m)、8.01(1H,s)、8.07(1H,dd)および10.7(3H,brs)。
【0024】
【化20】

3−ニトロ−3’−(1H−テトラゾール−5−イル)−2−ビフェニロール
SB−817250(1.00g、4.17ミリモル)のトルエン(10ml)中懸濁液に、ジブチルチンオキシド(104mg、0.42ミリモル)を加え、つづいてトリメチルシリルアジド(1.20ml、9.14ミリモル)を添加した。反応混合物を還流温度で20時間加熱した。この時間の経過後、トルエン(10ml)およびメタノール(167μl)を50−60℃で添加した。ついで、該反応混合物を室温に冷却した。暗色の微細な懸濁液を1時間攪拌し、ついで濾過した。生成物をトルエン(4ml)で洗浄し、ついで吸引して乾燥させ、暗褐色固体として得た(0.75g、64%);δ(400MHz、DMSO)7.05(1H,s)、7.60−7.72(3H,m)、8.02(2H,d)および8.17(1H,s)。
【0025】
【化21】

(4Z)−1−(3,4−ジメチルフェニル)−3−メチル−1H−ピラゾール−4,5−ジオン4−{[2−ヒドロキシ−3’−(1H−テトラゾール−5−イル)−3−ビフェニルイル]ヒドラゾン}
ついで、3−ニトロ−3’−(1H−テトラゾール−5−イル)−2−ビフェニロールを、WO01/89457A2に記載の経路Aを用いて、(4Z)−1−(3,4−ジメチルフェニル)−3−メチル−1H−ピラゾール−4,5−ジオン4−{[2−ヒドロキシ−3’−(1H−テトラゾール−5−イル)−3−ビフェニルイル]ヒドラゾン}に変換した。
【0026】
本発明の好ましい実施形態を上記にて説明するが、本発明は本明細書に開示されている指示それ自体に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲内にあるすべての修飾する権利も留保されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、Zは−COOHまたはテトラゾールを意味する]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩の製法であって、
(1)式II:
【化2】

II
[式中、XはCl、BrまたはIであり、YはNOまたはNHであり、Rはアルキルまたは置換されているアルキルを意味する]
で示される化合物を、溶媒中にてボロン酸と反応させ、式III:
【化3】

III
[式中、YはNHまたはNOであり、Gは置換されているアリールを意味する]
で示される化合物を形成する工程;
(2)式IIIの化合物を式Iの化合物に変換する工程;および、その後、その医薬上許容される塩を形成してもよい工程を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法に従って大規模で製造される、式Iの化合物。
【請求項3】
XがBrであり、YがNOであり、Rがt−ブチルであり、Zがテトラゾールである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
XがBrであり、YがNOであり、Rがt−ブチルであり、ZがCOOHである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
YがNOまたはNHであり、Gが、
【化4】


である、請求項1の方法に従って大規模で調製される際の式IIIの化合物。

【公表番号】特表2010−525072(P2010−525072A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506445(P2010−506445)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/061225
【国際公開番号】WO2008/134338
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】