説明

Toll受容体2へのヒト化抗体およびその使用

Toll様受容体2に特異的結合を有する完全なヒト化抗体は、完全にヒト由来のアミノ酸配列を含む軽鎖および重鎖を包含する。軽鎖の可変領域は、配列番号:1の配列と実質的に相同性があるアミノ酸配列を含む。一方、重鎖領域の可変領域は、配列番号:4の配列と実質的に相同性があるアミノ酸配列を含む。また、提供するのは、このような抗体をコード化する核酸並びに医療における抗体の使用、特にToll様受容体2の活性およびシグナリングによって介在される炎症および自己免疫疾患の治療を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全なヒト化抗体およびその断片、特にToll様受容体2(TLR2,TLR−2)に特異的な結合がある完全なヒト化抗体に関する。さらに、本発明は、Toll様受容体2活性化およびシグナリングによって介在される炎症および自己免疫疾患の治療並びに予防に関する前記完全なヒト化抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体(TLR)は、固有の免疫反応を調整する重要な役割を有するパターンを認識する受容体の一群を形成して、組織修復、組織完全性および腫瘍形成に関与する。現在まで11種類のToll様受容体が、ヒトで同定された。Toll様受容体の一群のメンバーは、10から15のToll様受容体を有する大半の哺乳類で、高い保存性を有する。個々のToll様受容体は、特異的な病原体関連分子を認識する。Toll様受容体(TLR2,CD282,TLR−2)は、ペプチドグリカン、リポタンパク質、リポテイコ酸および内因性リガンドによって活性化することができる。
【0003】
Toll様受容体2に特異的結合を有する数々のモノクローナル抗体が既知である。国際公開第01/36488号は、European Collection of Cell Culture(ECACC)アクセス番号99102832としてブダペスト条約に基づいて寄託されたハイブリドーマ細胞株由来のTL2.1として指定される抗体を開示する。前記抗体は、ヒト細胞で発現のあるToll様受容体2の活性と拮抗する。
【0004】
国際公開第2005/028509号は、哺乳類TLR2の活性を特異的に阻害するT2.5とされるネズミモロクローナル抗体を開示する。T2.5モノクローナル抗体は、ヒトおよびネズミの両形態のTLR2に交差反応性があることを示す。前記事実は、国際公開01/36488号に開示され、この特許出願に示されているように、ネズミTL2.1抗TLR2モノクローナル抗体が、ヒトおよびネズミの双方の形態のTLR2に交差反応性がない実験データをさらに含む。むしろ、TL2.1抗体は、国際公開2005/028509号にヒトToll様受容体2に結合するのみで、ネズミToll様受容体2に結合しないことを示す。国際公開2005/028509のT2.5モノクローナル抗体は、TLR2の細胞外領域に対して産生され、したがって、Toll様受容体2範囲内のエピトープに特異的に結合する。
【0005】
国際公開2005/019431号は、11G7として指定されるTLR2に特異的に結合する抗体を開示する。このネズミ抗体は、American Type Culture Centre(ATCC)に基づいてPTA−5014指定され、寄託されているハイブリドーマ細胞株11G7由来である。11G7モノクローナル抗体は、TLR2の細胞外領域に選択的に結合し、サイトカインの産生の誘導を、Toll様受容体1(TLR1)およびTLR2の間で形成するヘテロ二量体を活性する拮抗剤で刺激したヒト抹消血単核細胞(PBMC)によって、阻害することができる。11G7抗体は、Toll様受容体6(TLR6)およびTLR2の間で形成するヘテロ二量体を経てシグナリングを誘導する拮抗剤で刺激したPBMCによってサイトカイン産生を阻害しない。
【0006】
齧歯類モノクローナル抗体、例えばネズミモノクローナル抗体の生体内(in−vivo)治療に適用するための使用は、抗体が投与される対象によって望ましくない免疫反応を生じることと関連があることを示した。前記免疫反応は、治療抗体の効果を有意に中和する抗体の産生を結果として生じる。かかる免疫反応は、通常、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を示す。HAMA反応は、その結合標的に達するための治療抗体の性能を弱めて、抗体の治療効果を低下させることを含む、様々な方法で投与した抗体の治療効果を低下させる。
【0007】
数々の方法が、ここに投与された治療抗体に対して産生された望ましくないHAMA反応の課題に対処するため、開発されてきた。一般的に、これらの方法は、ヒト抗体由来のある部位と、マウス抗体のこれに相当する部位の置換を行う技術を伴う。かかる方法は、例えば、ヒト由来の定常領域に結合した、ネズミの可変領域を含むキメラ抗体の産生を生じる。或いは、「CDR移植」として既知の技術を用いることができ、ネズミ抗体からの相補性決定領域(CDR)は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖の可変領域に提供されるフレームワーク内に移植される。これは、ネズミ抗体の結合特異性を保持する抗体の産生を生じるが、非ヒト成分のみが、ネズミCDR領域に移植される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの方法の双方によって生じる、ヒト化抗体の治療効果は弱い可能性がある。例えば、マウスのキメラ抗体の可変領域成分は、依然として、そこに備えられたHAMA反応の基盤を提供する。さらに、CDR移植されたヒト化抗体が産生され、単純なCDR領域の移植は、減少された抗体の結合親和性のため、抗体の治療効果の低下を生じ得ることが観測された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、発明者は、Toll様受容体2に特異的に結合し、TLR2機能に拮抗するが、ヒトにおいて実質的に非免疫原生である、完全なヒト化モノクローナル抗体を生じる必要性を認識した。広範囲に亘る実験の結果、発明者は、ヒトのToll様受容体2に特異的に結合し、Toll様受容体1またはToll様受容体6とToll様受容体2がヘテロ二量体を形成するか否かに関わりなく、TLR2機能を拮抗する完全なヒト化モノクローナル抗体を産生した。TLR2拮抗抗体は、既に知られたキメラまたはCDR移植技術から産生されるものでなく、したがって、あらゆるネズミアミノ酸残基をも含まない。さらに、抗体は、CD32細胞表面抗原に結合する必要なく、TLR2の中和を介在することを示し、これは他の既知のToll様受容体2の拮抗抗体の機能必要条件でもある。さらに、本発明の完全なヒト化抗体は、従来技術において既知となった初めての完全なヒトTLR2中和抗体である。抗体は、いずれのT細胞エピトープをも示さず、したがって、中和抗体は、対象に投与する際、それに対して産生されない。さらに、抗TLR2拮抗抗体は、ヒト、マウス、サル細胞で発現したToll様受容体2に結合することが、驚くべきことに観測された完全なヒト化抗体の結合で、多岐に亘る哺乳類細胞で発現するToll様受容体2への幅広いレベルでの交差反応性を示す。
【0010】
本発明の第1の態様によると、Toll様受容体2(TLR2,CD282,TLR−2)に特異的に結合することができる中和抗体、またはその抗原結合部位を提供し、抗体または抗原結合部位は、軽鎖および重鎖を含むか、それらからなるかまたは実質的にそれからなり、軽鎖の可変領域(VL)は、配列番号:1のアミノ酸配列に同一であるか、実質的に相同性のあるアミノ酸配列を含み、重鎖の可変領域(VH)は、配列番号:4のアミノ酸配列に同一であるか、実質的に相同性のあるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる。
【0011】
ここに規定するように、中和抗体の用語は、Toll様受容体2の生物活性およびシグナリングを中和することができる抗体を記載する。拮抗抗体またはブロッキング抗体としても示される中和抗体は、特に、好ましくは特異的にToll様受容体2に結合し、1以上のToll様受容体2の生物活性を阻害する。例えば、中和抗体は、リガンドまたは基質、例えばToll様受容体2リガンドのToll様受容体2リガンド結合部位への結合を阻害することができる。或いは、一旦、リガンド拮抗剤に結合してから、例えばリガンド拮抗剤結合を弱めることによって、中和抗体は、Toll様受容体2の活性を防止することができる。通常、中和抗体は、Toll様受容体2に特異的に結合し、したがって、生理的または治療条件下で、実質的に他のToll様受容体群のメンバー(例えばToll様受容体4)に結合しない。
【0012】
ある実施形態において、Toll様受容体2の中和抗体は、CD32(Fcγ受容体II(FcγRII,FcgRII))、特にCD32aおよび/またはCD32bに結合するための抗Toll様受容体2抗体またはその結合断片の必要条件から独立してToll様受容体2の機能的活性の拮抗に介在する。したがって、Toll様受容体2の中和は、抗体、特に抗体のFc部位または抗体断片のCD32への結合を必要としない。
【0013】
典型的に、本発明の抗Toll様受容体2抗体は、抗体を対象、特にヒトに投与した場合、免疫反応が介在することができるあらゆる結合エピトープを含むことを特徴とする。免疫反応が生じたとき、抗体の治療効果が非常に弱まっているため、かかる特徴は、本発明の抗体に対する中和抗体の生成を抗体が投与される対象において防止する際に重要となる。
【0014】
通常、中和抗Toll様受容体2抗体は、完全なヒト化抗体である。即ち、抗体を含むアミノ酸残基の全ての組み合わせは、完全にヒト由来であり、したがって、例えば、ヒト領域および非ヒト領域を含まない。特に、本発明の抗体は、ヒトの可変領域配列のみを含む。本発明の抗体は、重鎖および軽鎖の可変領域の相補性決定領域(CDR)が、ネズミ抗体由来のアミノ酸残基を含む部位に、例えばマウスおよびヒトの双方に由来する重鎖および軽鎖の可変領域からなるキメラモノクローナル抗体またはCDR移植した「ヒト化」抗体とは異なり、一方、抗体の関連したフレームワーク領域(FR)および定常領域(CR)は、ヒト抗体由来である。それゆえ、本発明の完全なヒト化抗体は、必ずしも同じ抗体というわけではないが、全てのヒト由来のまたはヒト由来の配列に同一の重鎖および軽鎖双方の可変および定常領域を有する。本発明の完全なヒト化抗体は、「ヒト化」抗体または完全なヒト配列のいずれかに由来する抗体としてさらに示される。
【0015】
本発明の抗体の軽鎖の可変領域(VL)のアミノ酸配列は、以下の配列番号:1に示す:
【0016】
【化1】

【0017】
配列番号:1において、図1に示す下線部位の残基は、相補性決定領域の部位に関するものであり、残基24から34は、CDRに関するものであり、残基50から56は、CDR2に関するものであり、残基89から97は、CDR3に関するものである。図1Bは、軽鎖の可変ヌクレオチド配列および検出したアミノ酸配列を示す。この図において、軽鎖領域の残基は、従来、カバット(Kabat)ナンバリングシステムに基づいて計数する(Kabat EA et al. (1991 ) Sequences of proteins of immunological interest, 5th edition. Bethesda: US Department of Health and Human Services)。
【0018】
これらCDR残基の同定は、カバットナンバリングシステムを用いたCDR領域に指定された残基と一致していて、VLCDR1(即ち、軽鎖の可変領域の相同性決定領域1)は、残基24から34、VLCDR2(即ち、軽鎖の可変領域の相同性決定領域1)は、残基50から56、VLCDR3(即ち、軽鎖の可変領域の相同性決定領域1)は、残基89から97を含む。
【0019】
ここに規定するように、配列番号:1のアミノ酸配列に実質的に相同性のあるアミノ酸配列は、配列番号:1のアミノ酸配列の少なくとも20,50または100アミノ酸の長さに亘るか、または、その完全な配列の長さに亘って、配列番号:1のアミノ酸配列に少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは少なくとも98%アミノ酸相同性を有することを意味する。一般的に、このような相同性を有するアミノ酸配列は、Toll様受容体2に特異的結合があり、Toll様受容体2に結合する場合は、Toll様受容体2の機能活性に拮抗する。
【0020】
通常、軽鎖の可変領域(VL)は、軽鎖を提供するため、ヒトの免疫グロブリンκ定常領域(CL)に結合し、前記軽鎖は、ヒト化抗体の軽鎖である。
【0021】
したがって、ある実施形態において、本発明の抗体または結合メンバーが完全な軽鎖を含む場合、軽鎖は配列番号:2のアミノ酸配列を有する。
【0022】
【化2】

【0023】
さらに、ある実施形態において、本発明は、配列番号:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%相同性があるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または実質的にそれからなる軽鎖を含む抗体または結合メンバーにも及ぶ。通常、配列番号:2と少なくとも80%以上のアミノ酸相同性がある抗体は、Toll様受容体2に特異的に結合し、それに結合する場合、Toll様受容体2の機能活性に拮抗するように働く。
【0024】
ある実施形態において、配列番号:2に規定して、図3に示すような軽鎖のアミノ酸配列は、図4に示すような配列番号:3のヌクレオチド配列からコード化される。図4に示す配列番号:3の配列において、下線部位の核酸は、軽鎖の可変領域のアミノ酸をコード化する。
【0025】
1つの実施形態において、重鎖の可変領域のアミノ酸配列を、以下の配列番号:4に示す:
【0026】
【化3】

【0027】
図2に示すような配列番号:4において、下線部位の残基は、3つの相同性決定領域に関するものであり、残基31から35はCDR1(VHCDR1(重鎖の可変領域の相同性決定領域1))、残基50から65はCDR2(VHCDR2)、残基95から103はCDR3(VHCDR3)に関連している。これらCDR領域の位置は、カバットナンバリングシステムを用いてCDR領域とみなしたものとわずかに異なり、CDR1は残基31から35、CDR2は残基50から66、CDR3は残基95から103の位置に存在する。
【0028】
ここに規定するように、実質的に配列番号:4のアミノ酸配列に相同性のあるアミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸配列のアミノ酸少なくとも20,50または100アミノ酸の長さに亘って、少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは少なくとも98%アミノ酸の相同性を有するアミノ酸配列を有することを意味する。尚、ある実施形態において、本発明は、配列番号:4のアミノ酸配列に少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは98%の配列相同性を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる鎖の可変領域(VH)を含む抗体または結合メンバーにまで及ぶ。
【0029】
通常、重鎖の可変領域(VH)は、さらに少なくとも1の免疫グロブリンの定常領域を含むアミノ酸配列に結合する。ある実施形態において、免疫グロブリンの定常領域は、本発明の完全なヒト化抗体の完全な重鎖を形成するため、サブクラスの抗体由来のものである。したがって、前記定常領域は、CH1およびCH2領域の間に設置されたリンカーに加えてCH1、CH2およびCH3を含む。
【0030】
ある実施形態において、免疫グロブリンの定常領域は、IgGアイソタイプ、通常、免疫グロブリンGアイソタイプ4(IgG4)由来である。IgG4抗体は、他の分子からの重軽鎖の対と重鎖および結合した軽鎖(半分子)を換えることによって、Fabアームを交換するダイナミック分子であり、この交換は、二重特異性抗体の産生を結果として生じる。したがって、ある実施形態において、Fabアーム交換が生じることを防ぐため、少なくとも1つの変異を、IgG4免疫グロブリン少なくとも1の定常領域に構築した。したがって、本発明のある実施形態において、抗体または抗体断片が、IgG4由来の定常領域を含む場合、ヒンジ領域に局在する重鎖のアミノ酸残基241の変異は、セリン残基がプロリン残基に置換されるように(S241P)実施される(Angal S. et al. Molecular Immunology. 1993. Vol. 30. No.1. p105-108に教示する)。
【0031】
したがって、ある実施形態において、重鎖および軽鎖の定常領域残基を提供するために使用したアミノ酸残基は、アイソタイプIgG4の免疫グロブリン由来のものである。さらに、ある実施形態において、免疫グロブリンは、サブクラスIgGの免疫グロブリンおよびアイソタイプIgG1、IgG2またはIgG3の免疫グロブリン由来のものである。さらに、ある実施形態において、重鎖および軽鎖の定常領域残基を提供するために使用されるアミノ酸残基は、サブタイプIgAの免疫グロブリン由来のものである。
【0032】
さらなる様々な実施形態において、1以上の突然変異、置換、欠失、挿入が、抗体の機能特性を改善するため、抗体の定常領域のアミノ酸配列に作ることができる。例えば、抗体の、エフェクター機能、有効性また半減期から選択される(ただし、これらに限定されない)少なくとも1つの特性を改良するため、少なくとも1つのアミノ酸変異、挿入、欠失および/または置換を、定常領域のアミノ酸残基に形成することができる。
【0033】
ある実施形態において、本発明による抗体の重鎖のアミノ酸配列であり、VH−CH1−CH2−CH3領域を含み、さらにヒンジ領域を含むものは、以下の配列番号:5として提供する:
【0034】
【化4】

【0035】
さらに、ある実施形態において、本発明は、配列番号:5のアミノ酸配列と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは98%相同性アミノ酸配列を有する相同性アミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体または結合メンバーにまで及ぶ。
【0036】
ある実施形態において、配列番号:5に規定し、図5に示すように、重鎖のアミノ酸配列は、図6に示すような配列番号:6のヌクレオチド配列からコード化される。図5に示すような配列番号:5の配列において、太字の残基はヒンジ領域、斜体の残基はCH1定常領域の残基、下線部位の残基はCH2定常領域の残基、下線部位の残基の後ろに記載されている残基はCH3定常領域の残基である。ある実施形態において、CH1,CH2および/またはCH3定常領域は、あらゆる適切な免疫グロブリンのサブタイプ、例えばIgG1,IgG2,IgAまたはIgM(ただし、これらに制限されない)に由来するCH1,CH2またはCH3領域と完全にまたは部分的に置換することができる。ある実施形態において、ある定常領域における、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加または置換も提供することができる。通常、前記欠失、付加または置換は、抗体または抗体断片のFc部位の結合特徴、特にFc受容体が結合して、エフェクター機能を介在する抗体のFc領域の性能の調節といった機能的な変化を結果として生じる。
【0037】
また、ある実施形態において、本発明は、配列番号:1の軽鎖の可変領域またはそれに少なくとも90%アミノ酸配列の相同性を有する変異体、および配列番号:4の重鎖可変領域、またはそれに少なくとも90%アミノ酸配列の相同性を有する変異体を含む、単離された抗体にまで及ぶ。
【0038】
さらに、ある実施形態において、配列番号:2のアミノ酸配列またはそれに少なくとも90%の相同性を有する変異体を含む軽鎖、および配列番号:5のアミノ酸配列、またはそれに少なくとも90%の相同性を有する変異体を含む重鎖から形成される抗体が提供されている。
【0039】
本発明の抗体および抗体断片の産生に使用する軽鎖および重鎖双方の可変および定常領域が理解されていて、例えば前記可変および定常領域は、ここに記載するこれら領域の配列と比較して、1以上のアミノ酸の変異体を含むことができる。変異体の定常領域は、ここに記載の定常領域より長いか、短いことが好ましい。ある実施形態において、変異体の可変または定常領域は、野生型抗体の定常領域と、少なくとも90%の相同性を有するか、類似性を有していてもよい。
【0040】
ここに規定する「配列相同性」の用語は、配列相同性または類似配列として示すこともできる。ここに使用する「相同性」または「配列相同性」の用語は、配列アライメントにおける特定の部位を意味し、アミノ酸残基は配列アライメント間で同一である。ここに使用する「類似性」または「類似配列」の用語は、配列アライメントにおける特定の位置を示し、配列間のアミノ酸残基は、互いに類似のものが存在する。例えば、ロイシンは、イソロイシンまたはバリン残基と置換される。これは、保存的置換として示すこともできる。好ましくは、本発明のアミノ酸配列は、そこに含まれるアミノ酸残基のあらゆる保存的置換による変更であり、これらの置換は、修飾されていない抗体と比較して、結合特異性または結果として生じる抗体の機能活性には影響を及ぼさない。
【0041】
本発明の(固有の)ポリペプチドおよびその機能的誘導体に関する配列相同性または配列同一性は、最大の割合の相同性を達成するため、必要に応じて、配列を並べ、ギャップを導入した後、同一の配列の一部としてあらゆる保存的置換を考慮することなく、相当する固有のポリペプチドの残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基の割合として算出される。N−またはC−末端の伸長も、挿入も、配列同一性または配列相同性を減少させるものとはみなされない。2以上のアミノ酸配列を並列化し、それらの配列同一性および配列相同性を決定する方法およびコンピュータープログラムは、当業者に周知である。例えば、2アミノ酸配列と同一または類似の割合は、アルゴリズム、例えばBLAST(Altschul et al. 1990)、FASTA(Pearson & Lipman 1988)またはSmith−Watermanアルゴリズム(Smith & Waterman 1981)を用いて容易に算出することができる。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、ネズミモノクローナル抗体T2.5に認識されるToll様受容体2に存在するエピトープに特異的に結合する完全なヒト化抗体を提供し、前記ヒト抗体は:
−軽鎖可変領域であり、可変領域は配列番号:1のアミノ酸配列を含むか、それからなるかまたは実質的にそれからなる、
−重鎖であり、可変領域は、配列番号:4のアミノ酸配列を含むか、それからなるかまたは実質的にそれからなるもの
を含む。
【0043】
ある実施形態において、抗体は、少なくとも1のエフェクターまたはレポーター分子と結合することができる。
【0044】
あるさらなる態様において、本発明は、OPN−305として指定する、配列番号:1のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号:4のアミノ酸配列を有する可変領域の重鎖を含む、完全なヒト化モノクローナル抗体も包含する。OPN−305抗体は、配列番号:2のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる軽鎖および配列番号:5のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる重鎖としてもさらに規定することができる。
【0045】
ここに使用する「実質的になる(consists essentially ofまたはconsisting essentially of)」の用語は、ポリぺプチドが、本明細書に記載される範囲を超えて付加的な特徴または要素を有するものの、該付加的または要素は、Toll様受容体2に特異的に結合する抗体または抗体断片の性能に実質的に影響しないことを意味する。即ち、ポリペプチドを含む抗体または抗体断片は、付加的な機能または要素を有するが、これらは、抗体または抗体断片が、Toll様受容体2と結合して、Toll様受容体2の、アミノ酸配列に修飾を導入して抗体の免疫性を減少させるような機能活性に拮抗するのを妨げない。例えば、実質的に特定の配列からなるポリペプチドは、いずれかの末端または両方の末端に、抗体または抗体断片のポリペプチドの役割を作用し、阻害し、ブロックしまたは妨害しない1,2,3,4,5残基以上の付加的なアミノ酸を含むことができる。同様に、本発明のToll様受容体2拮抗抗体に寄与するポリペプチド分子は、かかる機能基が抗体または抗体断片のToll様受容体2に結合したり、その機能を拮抗したりといった、抗体または抗体断片の性能と作用することのない条件で、1以上の機能基と化学的に修飾することができる。
【0046】
他の態様において、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または実質的にそれからなる軽鎖の可変領域および/または配列番号:4のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、単離された、完全なヒト化モノクローナル抗体も包含する。
【0047】
ここに規定する「完全なヒト化」抗体は、フレームワーク領域(FR)、定常領域(CR)および相補性決定領域(CDR)が、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体を示す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、これら定常領域もヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来である。本発明の完全なヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン配列にコード化されないアミノ酸残基、例えばランダムまたは部位特異的なin−vitro突然変異生成による突然変異体を含むことができる。しかしながら、完全なヒト化抗体は、他の哺乳類、例えばマウスの生殖細胞系列が、ヒトのフレームワーク配列に移植されたものに由来するCDR配列の抗体を含むことを意図するものではない。完全なヒト化モノクローナル抗体は、単一の特異的結合を示し、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体である。これは、例えば他の哺乳類、例えばマウスの生殖細胞系列が、ヒトのフレームワーク配列に移植されたものに由来するCDR配列である場合のヒト化モノクローナル抗体とは異なる。
【0048】
重鎖の可変(VH)または軽鎖の可変(VL)配列のアミノ酸配列のみが提供されている場合の実施形態において、本発明は、Toll様受容体2、特に哺乳類Toll様受容体2、特に、ヒトToll様受容体2の細胞外領域に結合する抗体を産生する方法にまでも及び、前記可変領域配列を、Portolano et al. (Portolano et al. The Journal of Immunology (1993). 150:880-887)およびClarkson et al. (Clarkson et al. Nature (1991 ) 352:624-628)の教示による相補可変領域配列のライブラリに対してスクリーニングすることによって、前記抗体は、Toll様受容体2の機能を拮抗するように機能する。
【0049】
他の実施形態において、本発明は、特異的にヒトToll様受容体2に結合する単離された抗体であって、配列番号:4を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる重鎖の可変領域および配列番号:1を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる軽鎖の可変領域を含む前記抗体を提供する。ある実施形態において、単離された抗体は、異なる抗原特異性を有する実質的に他の抗体を含まない、実質的に純粋な、単離された抗体である。あるさらなる実施形態において、抗体は組換え抗体であり、即ち、抗体は組換え法によって産生される。
【0050】
他の態様においては、Toll様受容体2に特異的に結合する抗体を提供し、抗体は配列番号:2のアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号:5のアミノ酸配列を有する重鎖からなるか、実質的にそれからなり、抗体は、ヒト、ネズミおよびサル細胞で発現するToll様受容体2と交差反応を生じる(即ち、それは特異的結合を有する)。一般的に、抗体は、リガンド拮抗結合のToll様受容体のリガンド結合部位への結合によってToll様受容体2の活性を妨げるため、リガンド結合部位でToll様受容体2と結合する。
【0051】
他の様々な態様において、本発明は、本発明の前記態様に規定するような2,3,4以上の抗体を含む多価単一性特異的抗原結合タンパク質またはその断片にまでも及び、前記抗体は、結合構造によってそれぞれ他のものにも結合する。
【0052】
他の多様な態様において、本発明は、前記態様の完全なヒト化抗体由来の結合メンバー、または抗原結合断片にまでも及ぶ。かかる抗原結合断片は、抗原、概してToll様受容体2に特異的に結合することができる性能を保持する抗体の1以上の断片を示す。抗体の抗原結合機能は、抗体全体の断片によって機能することができることを示す。ある実施形態において、結合メンバーまたは抗原結合断片は、単離された結合メンバーであってもよい。本発明の結合メンバーまたは抗原結合断片は、本発明の抗体断片、例えば重鎖または軽鎖のみといった完全なヒト化抗体分子の断片、または、例えば重鎖および/または軽鎖の可変領域を含んでいてもよい。ある実施形態において、結合メンバーは、通常、抗体VHおよび/またはVL領域を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる。結合メンバーのVH領域も、本発明の一部として提供する。個々のVHおよび/VL領域内には、4の関連したフレームワーク領域(「FR」)と3の相補性決定領域(「CDR」)がある。VH領域は、通常、3HCDR(重鎖相補決定領域)を含み、VL領域は、通常、3LCDR(軽鎖相補決定領域)を含む。したがって、結合メンバーは、複数の関連したフレームワーク領域に加えて、順にVH CDR1(またはHCDR1),CDR2(HCDR2)およびCDR3(HCDR3)領域を含むVH領域を含むことができる。結合メンバーは、付加的にまたは選択的に関連したフレームワーク領域と、VL CDR1,CDR2およびCDR3領域を含むVL領域を含む。通常、VHまたはVL領域は、3の相補決定領域に散在する 4フレームワーク領域FR1,FR2,FR3およびFR4を以下の配列:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4で含む。
【0053】
軽鎖の可変領域(VL)は、抗体または結合断片の結合特異性を与える3相補性決定領域(CDR)を含む。相補性決定領域は、超可変領域としても既知である。3の相補性決定領域は、以下の配列番号:7、配列番号:8および配列番号:9としても示し、これらは、VLCDR1,VLCDR2およびVLCDR3に関連する。
【0054】
【化5】

【0055】
図1Aは、配列番号:1に示すような本発明の抗体VL領域のアミノ酸配列を示す。図1Bは、軽鎖の可変ヌクレオチド配列、および推測されるアミノ酸配列を示す。VLCDR1,VLCDR2およびVLCDR3領域の部位は、図1Aに個々の相補性決定領域(CDR)を含む適切なアミノ酸残基に下線で示される。
【0056】
図1Bにおいて、軽鎖の可変領域の残基は、Kabat et al.(Kabat,E.A., Wu1TT., Perry,H., Gottesman,K. and Foeller,C. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91-3242)のナンバリングシステムによって容易に計数可能である。カバットナンバリングシステムは、通常、可変領域の残基を示す場合に使用される(軽鎖の約残基1−107および重鎖の残基1−113)。このナンバリングシステムは、他のシステムが明示されない限り、本明細書おいて使用される。カバット残基表示は、必ずしも、直接、本発明の重鎖および軽鎖の可変領域アミノ酸残基に相当するものでもない。重鎖または軽鎖の基本的な可変領域構造のフレームワーク領域または相補性決定領域(CDR)であるかに関わらず、実際の直鎖アミノ酸配列は、構造成分の減縮またはその中への挿入に相当する厳しいカバットナンバリングより少ないか、付加的なアミノ酸を含むことができる。正しいカバットナンバリング残基は、カバットナンバリングが適用される正常な配列で抗体の配列の残基のアライメントによって、あらゆる所定の抗体に関して決定することができる。
【0057】
VLCDR1(VL−CDR1、軽鎖の可変領域の相補性決定領域1またはCDR−L1としても既知)は、図1Aに示すような、軽鎖可変領域配列の残基24から38に存在する15アミノ酸からなる。これらの残基は、図1Bに残基24から34として示し、十分な説明としては、残基27,27a,27b,27cおよび27dを挙げる。それゆえに、VLCDR1の場合、15残基は、カバットによる規定のCDRL1領域と等しいように選択される。
【0058】
図1Aに示すように、VLCDR2(VL−CRD2、軽鎖の可変領域の相補性決定領域2またはCDR−L2としても既知である)は、7アミノ酸残基からなり、図1Bに示すように、可変領域配列の残基50から56に位置する。これらの残基は、カバットによる規定のCDRL2領域に等しいと理解される。
【0059】
図1Aに示すように、VLCDR3(VL−CRD3、軽鎖の可変領域の相補性決定領域3またはCDR−L3)は、9アミノ酸残基からなり、図1Bに示すように、軽鎖の可変領域配列の場合、残基89から97に位置する。これら残基は、カバットによる規定のCDRL3領域に等しいと理解されるように、完全に残基89から97に相当する。
【0060】
重鎖(VH)の可変領域は、抗体または抗体断片の特異的結合を与える役割を果たす3相補性決定領域(CDR)も含む。3相補性決定領域は、以下の配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12として示し、これらはVHCDR1,VHCDR2およびVHCDR3に関連する。
【0061】
【化6】

【0062】
図2Aは、配列番号:2に示すようなVH領域のアミノ酸配列を示す。図2Bは、重鎖の可変ヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を示す。
【0063】
図2Bにおいて、重鎖可変領域の残基は、カバット(前記参照)の考案した系に従って、従来通りに計数する。VHCDR1,VHCDR2およびVHCDR3領域の位置は、図2Aにおいて、下線を付した位置が適切なアミノ酸残基である。
【0064】
VHCDR1(VH−CDR1、重鎖の可変領域の相補性決定領域1またはCDR−H1としても既知である)は、可変領域配列の残基31から35に存在する5アミノ酸残基からなる。これら残基は、カバットによる規定のCDRH1領域に等しいと理解され、完全に残基31から35に相当する。
【0065】
VHCDR2(VH−CRD2、重鎖の可変領域の相補性決定領域2またはCDRH2)は、17のアミノ酸残基からなり、可変領域配列の残基50から65に位置する。これらの残基は、カバットによる規定のCDRH 2領域に等しいと理解され、完全に残基50から65に相当する。
【0066】
VHCDR3(VH−CRD2、重鎖の可変領域の相補性決定領域3またはCDRH3)は、9のアミノ酸残基からなり、軽鎖の可変領域配列の場合、可変領域配列の残基95から103に位置する。図2Bに図示すように、カバット由来のCDRH3領域のCDRH3領域の残基100にそろえるように考慮された位置100および100aにおける2残基の存在のため、これら9残基は、カバットによる規定のCDRH2領域の8残基に完全に相当する。
【0067】
双方のセットのCDRが存在する場合、軽鎖のCDRは、抗体または抗体結合断片の結合特異性を与える重鎖のCDRと連結する。軽鎖の可変領域の結合エネルギーへの関与は、連結する重鎖の可変領域と比較して小さいことは知られている。したがって、3つの相補性決定領域(VHCDR1,VHCDR2およびVHCDR3)を順に含む単離された重鎖領域は、抗原結合性能を有していることが知られていて、単一領域抗体として一般的に示される。かかる抗体断片は、本発明によって、重鎖の可変領域の条件に基づいて、例えば配列番号:1に規定されるように提供する。
【0068】
他の様々な態様において、本発明は、Toll様受容体2(TLR2,TLR−2,CD282)に特異的な結合を有していて、配列番号:7から配列番号12を含む群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むか、それからなるかまたは実質的にそれからなる完全なヒト化抗体、または関連する結合メンバーにまでも及ぶ。ある実施形態において、結合メンバーは、配列番号:10,11および12のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、順番に、配列番号:10、配列番号:11および配列番号12を含むか、それからなるか、実質的にそれからなる結合メンバーを提供する。ある実施形態において、それぞれ配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12は、順にその間にフレームワーク領域を散在して提供することができる。
【0069】
ある実施形態において、VHまたはVL領域のアミノ酸配列は、少なくとも1の復帰突然変異を有していてもよく、前記復帰突然変異は、配列の特定の位置でのアミノ酸残基の置換であり、ヒト化抗体またはその断片のTLR2への結合特異性を高める、および/またはTLR2拮抗剤としてのヒト化抗体の治療効果を上昇する。通常、かかる修飾は、軽鎖および重鎖の可変領域内のフレームワークに作ることができ、抗体の免疫性を減少させる。ある実施形態において、さらなる工学技術は、本発明の抗体を修飾するために使用することができ、例えば血清の半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存的な細胞障害活性Fc領域の修飾を含む。さらに、ある実施形態において、抗体または抗体断片は、グリコシル化パターンを換えて産生することができる。ある実施形態において、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される範囲を増減するために変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N−結合またはO−結合のいずれかである。N−結合は、アスパラギン残基の側鎖に炭水化物成分が結合したものとして示す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(Xは、プロリン以外のいずれのアミノ酸であってもよい)は、、炭水化物成分のアスパラギン側鎖への酵素結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド内のこれらトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル部位を生じる。O−結合グリコシル化は、1糖鎖のN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの最も一般的なセリンまたはトレオニンであるヒドロキシアミノ酸への結合を示すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンも使用することができる。
【0070】
あるさらなる実施形態において、抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体で抗体を反応させることによりペグ化されていてもよい。ある実施形態において、抗体は、脱フコシル化されており、したがって、フコース残基を欠失している。
【0071】
ある実施形態において、抗体の生物学的特徴における修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格構造、例えばシートまたはヘリカル構造、(b)標的部位での分子の電荷若しくは疎水性、または(c)嵩高側鎖に影響を及ぼす置換基を選択することによって達成することができる。アミノ酸は、それら側鎖の類似する特徴に基づいて分類することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975) ):(1)非極性:Ala(A),Val(V),Leu(L),Ile(I),Pro(P),Phe(F),Trp(W),Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G),Ser(S),Thr(T),Cys(C),Tyr(Y),Asn(N),Gln(Q);(3)酸性:Asp(D),Glu(E);(4)塩基:Lys(K),Arg(R),His(H)。或いは、自然に発生する残基は、一般的な側鎖の特徴に基づいてグループに分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン,Met,Ala,Val,Leu,He;(2)中性親水性:Cys,Ser,Thr,Asn,Gln;(3)酸性:Asp,Glu;(4)塩基:His,Lys,Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly,Pro;(6)芳香族:Trp,Tyr,Phe。非保存的置換は、これらの1クラスを他のクラスのメンバーに交換することを伴う。かかる置換残基は、保存的置換部位または残りの部位(例えば非同類)に導入することができる。
【0072】
あるさらなる態様において、本発明は、ヒト化抗体またはその断片の形成における配列番号:1のVL領域および/または配列番号:4のVH領域の使用を含み、前記抗体または断片は、Toll様受容体2に特異的な結合を有していて、前記抗体または断片は、Toll様受容体2の機能的活性に拮抗するように機能する。
【0073】
あるさらなる実施形態において、本発明は、Toll様受容体2への特異的結合を有していて、TLR2拮抗剤として機能する結合メンバー、配列番号:1もしくは配列番号:4のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも98%の相同性のアミノ酸配列を有する配列を含むか、それからなるか、または、実質的にそれからなる前記結合メンバーにまでも及ぶ。
【0074】
あるさらなる態様において、本発明は、以下の例を特徴とするOPN−305として指定される完全なヒト化モノクローナル抗体にまでも及ぶ。OPN−305の軽鎖の可変領域(VL)のアミノ酸配列は、配列番号:1に示す。一方、OPN−305の重鎖の可変領域(VH)のアミノ酸配列は、配列番号:4に示す。さらに、OPN−305の重鎖アミノ酸配列は、配列番号:5、さらにOPN−305の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号:2に示す。
【0075】
抗体は、組換えを用いた手段、例えば細胞培養によって産生してもよく、或いは、抗体は、単離された抗体であってもよい。ある実施形態において、さらなる修飾が、重鎖のFc部位、特に抗体のCH2およびCH3の定常領域になされる。かかる実施形態において、抗体は、配列番号:2のアミノ酸配列を有する軽鎖および配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域を含む。ある実施形態において、結合断片は、OPN−305の完全なヒト化抗体、例えばFab断片、F’ab断片またはsc−Fvに由来してもよい。
【0076】
さらなる様々な態様において、本発明は、本開示の抗体を含む免疫複合体、またはパートナー分子に結合する、その抗原結合部位も包含する。ある実施形態において、かかる抗体パートナー分子結合は、化学リンカー例えばペプチジルリンカー、ヒドラジンリンカーまたはジスルフィドリンカーによって結合される。ある実施形態において、カップリングパートナーは、エフェクター分子、標識、薬剤またはキャリア分子である。
本発明の抗体をペプチジルおよび非ペプチジルの双方のカップリングパートナーにカップリングする適切な技術が、当業者に既知である。適切な標識の例としては、放射性標識等の検出可能な標識、西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素標識またはビオチン等の化学部分を含む。或いは、標識は機能標識、例えばリシンまたはプロドラッグを活性ドラッグに抗体結合部位で変換することができるプロドラッグであってもよい。
【0077】
さらなる様々な態様において、本発明は、前記抗体またはその抗原結合部位より異なる結合特異性を有する第2機能部分に結合した抗体、またはその抗原結合部位も包含する。
【0078】
あるさらなる態様において、本発明は、モノクローナル抗体OPN−305のように、Toll様受容体2の細胞外領域に存在する同じエピトープに特異的に結合する抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド模倣薬または有機化合物由来のモノクローナル抗体、結合断片も包含する。ここで、モノクローナル抗体はT2.5として市販される抗体ではない。通常、化合物によって特異的に結合するエピトープは、配列番号:13および/または配列番号:14のアミノ酸配列を含む。前記化合物は、ここに開示した抗体と、Toll様受容体2への結合に関して、同じエピトープで交差競合する性能を有する。このような化合物は、本発明の抗体、例えばOPN−305に対して実施することができる交差競合結合研究方法によって同定することができる。
【0079】
さらなる様々な態様において、本発明は、完全なヒト化抗体の使用を包含し、Toll様受容体2の活性および/または細胞内シグナリングが全体的または部分的に介在することによる、疾患または状態の予防および/または治療における、本発明に由来する完全なヒト化モノクローナル抗体または結合メンバーも包含する。
【0080】
ある実施形態において、TLR2介在による疾患または状態は炎症状態である。
【0081】
ある実施形態において、結合メンバーは、Fab断片、Fab’断片、scFv(短鎖可変断片)、ペプチド模倣薬、ジアボディまたは関連する多価誘導体を含む群から選択されるが、制限しない。
【0082】
Fab、Fab’およびF(ab’)2断片は、技術分野における当業者に周知であり、国際公開第92/22324号, Sawai et al., "Direct Production of the Fab Fragment Derived From the Sperm Immobilizing Antibody Using Polymerase Chain Reaction and CDNa Expression Vectors", 1995, AJRI 34:26-34,およびMullinax et al., "Expression of a Heterodimeric Fab Antibody Protein in One Cloning Step", 1992, BioTechniques 12(6):864-869およびBetter et al., "Escherichia coli Secretion of an Active Chimeric Antibody Fragment" 1988, Science 240:1041 -1043に開示したものを含め、その内容を本明細書に参考として組み込む。
【0083】
scFv(短鎖Fv断片)を産生することができる技術例は、Huston et al., "Protein Engineering of Single-Chain Fv Analogs and Fusion Proteins", Methods in Enzymology, vol. 203:46-88 (1991)に開示した内容を参照して組み込む。
【0084】
ある実施形態において、抗体断片は、Morimoto(Morimoto et al., "Single-step purification of F(ab').sub.2 fragments of mouse monoclonal antibodies (immunoglobulins G1 ) by hydrophobic interaction high performance liquid chromatography using TSKgel Phenyl-5PW" Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992))の方法によるタンパク質分解による全長抗体に由来することができる。抗体断片は、すぐに宿主細胞から直接産生することができる (Carter et al., "High level Escherichia coli expression and production of a bivalent humanized antibody fragment" Bio/Technology 10:163-167 (1992)参考)。
【0085】
様々な態様において、本発明は、全体的にまたは部分的にToll様受容体2に介在される炎症状態の治療および/または予防の方法を提供し、前記方法は、
−本発明による治療への有効量のヒト化抗体またはその結合断片を提供する工程および
−そのような治療の必要な対象にそれを投与する工程
を備える。
【0086】
ある実施形態において、方法は、本発明による2,3,4以上の抗体を含む多価単一特異的抗原結合タンパク質の投与を伴う。
【0087】
本発明のさらに他の態様は、少なくとも1の薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と共に本発明によるヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、その抗原結合部位、免疫複合体または二重特異性分子を提供する。
【0088】
ある実施形態において、剤形は液体剤形、凍結乾燥された剤形、液体として再構成された凍結乾燥された剤形またはエアゾール剤形である。ある実施形態において、抗体製剤は、濃度:約0.5mg/mLから約250mg/mL、約0.5mg/mLから約45mg/mL、約0.5mg/mLから約100mg/mL、約100mg/mLから約200mg/mLまたは約50mg/mLから約250mg/mLである。
【0089】
ある実施形態において、さらに処方はバッファーを含む。通常、製剤pHは約pH5.5から約pH6.5である。
【0090】
ある実施形態では、バッファーは、約4mMから約60mMのヒスチジンバッファー、約5mMから約25mMのコハク酸バッファー、または約5mMから25mMの酢酸バッファーを包含することができる。ある実施形態において、バッファーは、塩化ナトリウムを濃度約10mMから300mM、特に約125mM、クエン酸ナトリウムを濃度約5mMから50mM、特に25mM含む。ある実施形態において、処方は、界面活性剤を約0%から約0.2%さらに含む。ある実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート−20、ポリソルベート−40、ポリソルベート−60、ポリソルベート−65、ポリソルベート−80、ポリソルベート−85およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるが、これらに制限されるものではない。好ましい実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート−20である。ある実施形態において、処方は、約0.001%から約0.05%のTweenをさらに含み、塩化ナトリウムを濃度約125mM、クエン酸ナトリウムを濃度約25mMでさらに含む。
【0091】
ある実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1の免疫調節性化合物、例えば免疫抑制化合物、二次抗体もしくはその断片または組換えタンパク質をさらに含むか、対象に投与される。
【0092】
本発明の抗体が、Toll様受容体2を発現する細胞を標的として、結合するように使用される場合、本発明の抗体および結合メンバーも診断、例えばin vivo診断およびToll様受容体2を伴う疾患状態のイメージングに使用することもできる。さらに、ある実施形態において、二次分子または化合物は、Toll様受容体2を発現する細胞に二次分子または細胞を標的とするために使用する際、本発明の抗体に結合することができる。
【0093】
尚、ある態様において、本発明は、Toll様受容体2を介在した炎症の状態、もしくは疾患を治療または予防するためのキットを提供する。ある実施形態において、キットは、Toll様受容体2に結合することができ、その機能活性に拮抗することができる本発明による抗体またはその抗原結合断片およびそれを患者に投与するための説明書を含む。
【0094】
さらに他の態様によると、ヒト化中和抗体またはその抗原結合部位が提供され、抗体は、K1×10−8未満で哺乳類Toll様受容体2に特異的に結合するが、CD32(Fcγ受容体II)に結合せず、前記抗体は、T2.5として市販される抗体によって結合するような、Toll様受容体2の細胞外領域に存在する同じエピトープに特異的に結合する。
【0095】
さらに他の態様によると、K1×10−8未満で哺乳類Toll様受容体2のエピトープに結合し、CD32(Fcγ受容体II)に結合しない、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部位が提供され、エピトープは参照抗体に認識され、参照抗体は、配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域、および配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域を含む。
【0096】
さらに他の態様によると、哺乳類Toll様受容体2に特異的に結合し、以下の特徴を示す単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部位が提供される:
−K1×10−8未満で哺乳類Toll様受容体2に結合する、
−CD32(Fcγ受容体II)に結合しない、
−ヒトToll様受容体2、ネズミToll様受容体2およびサルToll様受容体2に交差反応性である。
【0097】
<Fab結合メンバー>
本発明の前記態様のある実施形態において、本発明は、抗体断片または抗体の抗原結合部位を提供する。結合断片の例は、ヘテロ四量体抗体VL,VH,CLおよびCH1領域からなるか、実質的にそれからなる一価断片のFab、Fab’およびF(ab’)2断片を含む。ある実施形態において、VL領域は配列番号:1のアミノ酸配列を有していて、VH領域は配列番号:4のアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、CLおよびCH1領域は、免疫グロブリンのサブクラスIgG、およびアイソタイプIgG4のCL、並びにCH1領域のアミノ酸配列に基づくものであるか、図5の配列番号:5に示すようなCLおよびCH1領域である。ある実施形態において、本発明のこの実施形態のFab断片は、ブドウ膜炎およびAMD(加齢性黄斑変性症)を挙げる乾癬、皮膚炎および眼疾患(ただし、これらに制限されない)の治療または予防に使用することができる。
【0098】
<単一領域結合メンバー>
TLR2に特異的な結合を有し、TLR2機能に拮抗するヒト化モノクローナル抗体を提供するのに加えて、本発明は、さらに配列番号:1に規定するようなVL(軽鎖可変)領域のアミノ酸配列および配列番号:4に規定するようなVH(重鎖可変)領域のアミノ酸配列に基づく結合領域の一組を含む抗体以外の結合メンバーも包含する。特に、本発明は、本発明の抗体のヒト化抗体のVLまたはVH領域のいずれかに基づく単一結合領域にまでも及ぶ。
【0099】
したがって、本発明のさらなる実施形態において、本発明のヒト化抗体由来の単一結合領域を含むか、それからなるか、実質的にそれからなる結合メンバーが提供される。ある実施形態において、単一結合領域は、配列番号:4に規定するようなVH(重鎖の可変領域)のアミノ酸配列由来である。免疫グロブリンVH領域が特定の方法において標的抗原に結合することができることが既知であるように、かかる結合領域は、TLR2への標的剤として使用することができる。
【0100】
<CDR残基の修飾>
従来技術における当業者であれば、相補領域の配列(配列番号:7,8,9,10,11および12)を理解し、並びに、超可変および可変領域の配列は、TLR2特異的に結合する性能を欠失することなく修飾することができるであろう。例えば、本発明のヒト化抗体由来の結合メンバーのCDR領域は、ここに規定した配列番号:7,8,9,10,11および12のアミノ酸配列と相同性があるか、非常に高い相同性を有する(例えば95%以上の同一な配列)。ここに規定する「非常に相同性がある」の用語は、1から5アミノ酸の置換が、CDRの配列にされることを意味する。ある実施形態において、個々のCDR,超可変領域または可変領域およびそれらの非修飾対応物に存在する相同性は、少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは少なくとも95%、および最も好ましくは98%を超える。かかる修飾配列は、本発明の範囲内に分類され、例えば修飾したか、相同する欠乏メンバーは、TLR2に特異的に結合する能力を保持し、その機能活性に拮抗する。
【0101】
<ポリヌクレオチド>
また、様々な態様において、本発明は、本発明のヒト化抗体、抗体断片および結合メンバーをコード化するポリヌクレオチド、特に単離されたポリヌクレオチドも包含する。
【0102】
したがって、本発明のさらなる態様において、配列番号:1および/または配列番号:4のアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチドが提供される。ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0103】
ここに規定する「ポリヌクレオチド」は、一本鎖および二本鎖RNA、並びに一本鎖領域と二本鎖領域が混在したRNAを含むが、制限しない非修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAまたはDNAである、いずれのポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドも包含する。
【0104】
本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号:1または配列番号:4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドは、適度または高度に厳しい条件下、かかるヌクレオチド配列とハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドを含むその対立遺伝子多型および/またはそれらの補足体を含む。
【0105】
さらになる様々な態様において、本発明は、配列番号:1および/または配列番号:4を含むポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターにまでも及ぶ。さらに、本発明は、かかるベクターで形成転換した宿主細胞にまでも及ぶ。
【0106】
<ハイブリドーマ細胞株>
本発明のさらに他の態様は、配列番号:1のアミノ酸配列の重鎖可変領域および配列番号:4の軽鎖の可変アミノ酸配列を有する抗体を発現するハイブリッド細胞株(ハイブリドーマ)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】本発明による抗体の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である、配列番号:1を示す図である。
【図1B】軽鎖の可変ヌクレオチド配列(配列番号:17)を示し、カバットにしたがって計数した、推定されるアミノ酸配列(配列番号:18)を示す図である。
【図2A】本発明による抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列である、配列番号:4を示す図である。
【図2B】重鎖の可変ヌクレオチド配列(配列番号:19)を示し、カバットにしたがって計数した、推定されるアミノ酸配列(配列番号:20)を示す図である。
【図3】本発明による抗体の軽鎖のアミノ酸配列を表す配列番号:2を示す図である。
【図4】配列番号:2のアミノ酸配列をコード化するために翻訳することができる核酸配列を示す配列番号:3を示す図である。
【図5】本発明による抗体の重鎖のアミノ酸配列である配列番号:5を示す図である。
【図6】配列番号:5のアミノ酸配列をコード化するために翻訳することができる核酸配列である配列番号:6を示す図である。
【図7】ヒトToll様受容体2のアミノ酸配列を提供する配列番号:15を示す図である。
【図8】ネズミToll様受容体2のアミノ酸配列を提供する配列番号:16を示す図である。
【図9】OPN−305により媒介されるToll様受容体2拮抗剤は、コントロールヤギ抗体の添加を示す群1、ヤギ抗hCD21ブロッキング抗体の添加を示す群2およびヤギ抗hCD32bブロッキング抗体の添加を示す群3とのCD32抗体結合に依存しないことを示す図である。
【図10A】OPN301モノクローナル抗体によって介在されるToll様受容体2拮抗剤が、CD32への抗体結合に依存することを示す図である。
【図10B】OPN−305によって介在されるToll様受容体2拮抗剤は、CD32への抗体結合に依存しないことを示す図である。
【図11】OPN−305がヒトToll様受容体2に特異的に結合することを示すFACS分析の結果を示す図である(図11A)。一方、IgG4アイソタイプコントロール抗体は、Toll様受容体2に結合するため、OPN−301と競合しない(図11B)。
【図12】OPN−305(OPN−305−21)は、ネズミOPN−301抗体と同じ方法で、ネズミTLR2反応を抑制することを示す図である。
【図13A】顆粒球(図13A)および単球(図13B)で発現するOPN−305が、サルTLR2に結合するが、リンパ球では発現しない(図13C)ことを示す3つのFACSの微量分析を示す図である。
【図13B】顆粒球(図13A)および単球(図13B)で発現するOPN−305が、サルTLR2に結合するが、リンパ球では結合しない(図13C)ことを示す3つのFACSの微量分析を示す図である。
【図13C】顆粒球(図13A)および単球(図13B)で発現するOPN−305が、サルTLR2に結合するが、リンパ球では結合しない(図13C)ことを示す3つのFACSの微量分析を示す図である。
【図14A】抗TLR2ネズミモノクローナル抗体OPN−301とOPN−305が、サルTLR2の結合のために競合することを示す2つのFACSの微量分析を示す図であり、図14(A)は顆粒球および図14(B)は単球に関する結果を示す図である。
【図14B】抗TLR2ネズミモノクローナル抗体OPN−301とOPN−305が、サルTLR2の結合のために競合することを示す2つのFACSの微量分析を示す図であり、図14(A)は顆粒球および図14(B)は単球に関する結果を示す図である。
【図15A】サイズ排除クロマトグラフィを16/60Sephacryl S200カラムで精製された微量の抗体サンプルを示す図である。図15(A)は、抗TLR2キメラ抗体を示し、図15(B)は、OPN305抗体(VK5/VK4)を示す。それぞれの場合、B8からB4にわたる一部分のモノマーピークが採取された。
【図15B】サイズ排除クロマトグラフィを16/60Sephacryl S200カラムで精製された微量の抗体サンプルを示す図である。図15(A)は、抗TLR2キメラ抗体を示し、図15(B)は、OPN305抗体(VK5/VK4)を示す。それぞれの場合、B8からB4にわたる一部分のモノマーピークが得られた。
【図16】細胞毒性に関するテストサンプルのプレスクリーンおよび4つのドナーサンプルにおけるT細胞調節の活性を示す図である。サンプル1(それぞれの群の第1カラム(黒バー))はキメラ抗TLR2抗体、サンプル2(それぞれの群の第2カラム(白バー))はVK5/VH4(OPN305)であり、サンプル3(第3バー(濃いグレー))はKLHと共にVK5/VH5として指定された比較抗体である、一方、サンプル4(それぞれの群の右側の第4バー(薄いグレー))はKLHのみのコントロールである。結果は、7日目の生存細胞の数を示す。KLHの存在下でインキュベートされたサンプルのS.I.は、KLHのみのものと比較された。S.I.は4日間に亘るサンプリング期間で平均された。SI≧2を有する肯定的な反応を決定するためのカットオフ。
【図17A】EpiScreenテストの結果を示す3つのバーチャートを示す図である。キメラ抗TLR2,VK5/VH4およびVK5/VH5抗体は、EpiScreen(商標)の時間経過において、21のドナーからのPBMCを用いたT細胞分析をテストされた。テスト抗体とインキュベートされたPBMCのバルク培養は、5,6,7および8日目にサンプルされ、H−チミジンを適用された。細胞は、収集され、放射能を組み込まれ、シンチレーション計数で測定された。それぞれ3倍のサンプルに関する結果は、平均され、刺激指数(SI)で転換して正常化された。それぞれのドナーでのそれぞれの時点のSIは、(a)キメラ抗体に関して前記に示す。SI≧2を有する肯定的な反応を決定するためのカットオフは、濃い黒い横線でハイライトして、著しい反応(t−検定p<0.05)は、()で示す。
【図17B】EpiScreenテストの結果を示す3つのバーチャートを示す図である。キメラ抗TLR2,VK5/VH4およびVK5/VH5抗体は、EpiScreen(商標)の時間経過において、21のドナーからのPBMCを用いたT細胞分析をテストされた。テスト抗体とインキュベートされたPBMCのバルク培養は、5,6,7および8日目にサンプルされ、H−チミジンを適用された。細胞は、収集され、放射能を組み込まれ、シンチレーション計数で測定された。それぞれ3倍のサンプルに関する結果は、平均され、刺激指数(SI)で転換して正常化された。それぞれのドナーでのそれぞれの時点のSIは、(b)OPN−305抗TLR2抗体(VK5A/H4と指定する)に関して前記に示す。SI≧2を有する肯定的な反応を決定するためのカットオフは、濃い黒い横線でハイライトして、著しい反応(t−検定p<0.05)は、()で示す。
【図17C】EpiScreenテストの結果を示す3つのバーチャートを示す図である。キメラ抗TLR2,VK5/VH4およびVK5/VH5抗体は、EpiScreen(商標)の時間経過において、21のドナーからのPBMCを用いたT細胞分析をテストされた。テスト抗体とインキュベートされたPBMCのバルク培養は、5,6,7および8日目にサンプルされ、H−チミジンを適用された。細胞は、収集され、放射能を組み込まれ、シンチレーション計数で測定された。それぞれ3倍のサンプルに関する結果は、平均され、刺激指数(SI)で転換して正常化された。それぞれのドナーでのそれぞれの時点のSIは、(c)VK5A/H5と指定する比較抗TLR2抗体に関して前記に示す。SI≧2を有する肯定的な反応を決定するためのカットオフは、濃い黒い横線でハイライトして、著しい反応(t−検定p<0.05)は、()で示す。
【図18】EPISCREEN(商標)技術を用いて予測した免疫性および臨床状態で観測される免疫性の比較を示す図である。16の治療的タンパク質は、それら免疫性の相対危険度をEPISCREEN(商標)技術を用いてテストされた。結果は、臨床において使用される際のそれぞれのタンパク質に関して観測された免疫性の頻度(抗治療的抗体の反応)に対してプロットされた(PubMedに基づくデータ)。回帰線および相関係数を示す。
【図19】OPN−305の抗TLR2モノクローナル抗体(配列番号:22)およびT2.5ネズミ抗TLR2モノクローナル抗体(配列番号:21)の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す図であり、測定された配列の同一性は89.2%として示される。
【図20】OPN−305の抗TLR2モノクローナル抗体(配列番号:24)およびT2.5ネズミ抗TLR2モノクローナル抗体(配列番号:25)の重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す図であり、測定された配列の同一背は88.1%として示される。
【図21A】TLR2依存シグナリングの完全阻害は、OPN−305の最大より少ない受容体結合で達成することができることを示す。NF−κB活性の阻害は、Pam3Csk4での処理後に用量依存的な方法で観測される(図21AおよびB)。
【図21B】TLR2依存シグナリングの完全阻害は、OPN−305の最大より少ない受容体結合で達成することができることを示す。NF−κB活性の阻害は、Pam3Csk4での処理後に用量依存的な方法で観測される(図21AおよびB)。
【図21C】OPN305は、濃度2μg/mLでNF−κBをほぼ完全に阻害する(図21C)。
【図22】図22Aは、NF−κB依存性の[Pam3CSK4]に対するSEAP活性を示す、一方、図22Bは、1/Sに対する1/Vのラインウィーバー・バークプロットを示す。
【図23】Toll様受容体を介在したフラジェリン(TLR5,図23C)およびLPS(TLR4,図23B)への反応を示す3つのチャートA,BおよびCは、OPN−305にさらされていないコントロール細胞と比較して、変わらなかった。予想通り、Toll様受容体2を介在したPam3CSKおよびFSL−1への反応は、OPN−305によってブロックされた(図23A)。これは、OPN−305が予期しないTLR4またはTLR5のリガンドへの反応性に増減をもたらさないことを示唆する。
【図24】OPN−305モノクローナル抗体は、Pam3Csk4によって誘発された敗血症を阻害することを示す図である。雌BALB/cマウスの群(n=4)は、100μgのPam3Csk4で処理する30分前、OPN−305で示される服用量で処理された。
【図25】OPN305は、Pam3Csk4によって誘発された敗血症を阻害することを示す図である。この実験において、OPN305は、100μgのPam3Csk4の腹腔内投与30分前に静脈内投与された。4時間後、マウスは、致死麻酔によって屠殺され、血液が採取された。血清は誘導され、サイトカイン濃度はELISAで測定された。血清はKCおよびILに関して1/10、IL−6ELISAに関して1/5希釈された。
【図26】TLR2はラットの肺胞マクロファージ(NR8383)で発現され、OPN305を用いて検出された。(A)非染色細胞、(B)陽性対象;ポリクローナルラビット抗ラットTLR2一次抗体、二次抗体は抗ラビットAlexa−Fluor488であった、(C)ポリクローナルヒトIgG4で処理された細胞、二次抗体はヒト抗IgG4 PEであった、(D)OPN305染色した細胞、二次抗体抗ヒトIgG4PE。
【図27】TLR2は、ブタPBMCで発現され、OPN305で染色された。PBMCはFicollを用いて単離して精製された。A−CはPg 666からのPBMCを示し、D−FはPig 488である。A,Dは非染色;B,EはポリクローナルヒトIgG4で標識され、その後、PE標識された抗ヒトIgG4で二次染色された;C,FはOPN305で標識され、その後、抗ヒトIgG4でPE標識された。
【発明を実施するための形態】
【0108】
本発明は、Toll様受容体2に特異的な結合を有していて、Toll様受容体2に結合したとき、Toll様受容体の機能活性を拮抗する完全なヒトモノクローナル抗体を提供する。また、本発明は、完全なヒト抗体由来の結合断片、さらには配列番号:1の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号:4の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、実質的にそれからなる結合メンバーをも提供する。
【0109】
「Toll様受容体2機能に拮抗する」の用語または「Toll様受容体2の拮抗剤」または「Toll様受容体2の作動剤」等の同様の用語は、抗体、断片または結合メンバーがToll様受容体2に特異的に結合することを意味し、これにより、リガンドの結合もしくはToll様受容体2への結合化合物を阻害またはブロックするか、または、Toll様受容体、例えばToll様受容体2リガンドの活性化を生じる。Toll様受容体2リガンドの結合に次いで、Toll様受容体2によって介在される細胞内シグナリングの阻害または抑制に機能することによって、抗体、断片または結合メンバーは、さらにToll様受容体2の活性化および機能を阻害することができる。「Toll様受容体2の活性化および下流の介在したシグナリング」とは、TLR2の活性化によって誘発されるあらゆる細胞内シグナリング経路を意味する。シグナリング経路は、TLR2特異的な経路であるか、「共有した」シグナリング経路があり得て、例えばシグナリング経路は、他の要因、例えばTLR2以外の受容体の活性であって、免疫反応メディエーター、例えば転写因子NF−κBの活性に寄与することによって活性化することができる。
【0110】
TLR2は、2機能のヘテロ二量体に二量体化することが知られている。特に、TLR2は、Toll様受容体1またはToll様受容体6のいずれかとヘテロ二量体を形成することが既知である。また、ヘテロ二量体は、Toll様受容体4(TLR4,TLR−4)およびToll様受容体10((TLR10,TLR−10)と形成することが可能である。前記二量体化は、異なる微生物由来のリガンドによるTLR2結合に結果である差異と関連している。発明者は、Toll様受容体2がToll様受容体1またはToll様受容体6とヘテロ二量体を形成するかに関わらず、本発明のヒト化抗体は、TLR2機能に拮抗するように機能することが確認された。
【0111】
<抗体結合エピトープ>
本発明のヒト化抗体もしくはその断片またはその結合メンバーは、Toll様受容体2に選択的に結合し、その機能に拮抗する。受容体のリガンド結合部位付近のそのリガンドによる結合によって、モノクローナル抗体は、受容体の活性をブロックすることができ、これは、リガンド結合部位にリガンドを接近させることを排除する立体障害を結果として生じる。
【0112】
理論に抑制されることなく、発明者は、本発明によるヒト化抗体に結合した結合部位を同定した。抗体は、Toll様受容体2(TLR2)の成熟細胞外領域のN末端およびC末端領域の双方に由来する残基を含むエピトープに結合する。ある実施形態において、エピトープは、Toll様受容体2の586アミノ酸配列から決定するToll様受容体2のN末端のアミノ酸残基19から39を含み、前記アミノ酸は、KEESSNQASLSCDRNGICKGS(配列番号:13)である。結合エピトープは、配列番号:1のアミノ酸配列のC末端領域に存在するようなToll様受容体2のアミノ酸残基538から549をさらに含み、前記配列はアミノ酸CSCEFLSFTQEQQ(配列番号:14)を含む。
【0113】
<交差反応>
通常、本発明の抗体、抗体断片または結合メンバーによって拮抗されるTLR2は、哺乳類TLR2(またはその機能的変異体)、例えばヒトTLR2またはネズミTLR2である。ある実施形態にいて、拮抗したTLR2は、図7の配列番号:15に規定するようなアミノ酸配列を有するヒトの形状のTLR2であり、これは、Genbankアクセス番号AAC 34133 (URL www.ncbi.nlm.nih.gov)に規定するような784アミノ酸の全長ヒトToll様受容体配列を含む。
【0114】
あるさらなる実施形態において、Toll様受容体2は、ネズミTLR2であり、これは、図8の配列番号:16に規定するようなGenbankアクセス番号NP_036035(Mus musculus)由来のアミノ酸配列を含む。
【0115】
あるさらなる実施形態において、本発明の抗体、抗体断片または結合メンバーは、サル細胞で発現するToll様受容体2の機能活性、またはシグナリングに拮抗するような役割を果たす。
【0116】
あるさらなる実施形態において、抗体は、(i)10−7Mから10−11Mの解離定数、(ii)10−8Mから10−9Mの解離定数、(iii)10−9Mから10−10Mの解離定数、(iv)10−11Mから10−12Mの解離定数からなる群から選択される解離定数(Kd)を有する。ある実施形態において、本発明の抗体またはその断片は、Kd3×10−8以下もしくは4×10−8以下でヒトまたはネズミToll様受容体2と結合することができる。
【0117】
本発明の抗体のToll様受容体2への結合は、したがって、TLR2およびそのリガンドのリガンド/受容体の相互作用と関連のある細胞内シグナリングのブロッキングを生じる。
【0118】
<抗体構造>
本発明の抗体および抗体断片は、完全なヒトのものである。即ち、抗体を含むアミノ酸残基は、例えばマウスと対象的なヒト由来のものである。したがって、本発明の抗体は、ネズミ抗体またはキメラ抗体、例えばマウス/ヒト抗体より低い免疫性がある。
【0119】
ネズミまたはキメラ抗体の投与から結果として生じた免疫性は、モノクローナル抗体の治療への使用に最も著しいバリアであることが分かった。したがって、完全なヒト抗体の供給は、1度を超える投与を対象にした場合、免疫性反応、例えば抗体に対するHAMA反応を生じる、ネズミまたはヒト/マウスの供給と関連のある課題を解決する。前記反応は、対象の血清からネズミまたはキメラ抗体を除去することによって、それらの標的に達する抗体を防ぎ、それらの意図する治療効果を生じさせる。したがって、本発明の完全なヒト抗体は、このようなネズミおよびキメラ抗体に対して、顕著な効果を奏する。
【0120】
抗体に対する免疫性の1の内因性原因は、抗体に存在するCD4+T細胞エピトープである。したがって、本発明の抗体および結合断片は、抗体または抗体断片に存在するあらゆるCD4+T細胞エピトープを同定して、調節するために分析された。この過程は、本発明の抗体および抗体断片の免疫性をさらに減少する。
【0121】
さらに、本発明の抗体または抗体断片は、対象に投与したとき、さらに免疫反応が抗体に備わっていないことを確実にする、1以上の技術分野の対象とすることができる。このような技術分野の例は、当業者に既知であり、脱免疫化、遺伝子シャッフリングおよびペグ化を含むが、これらに制限されるものではない。
【0122】
さらに、本発明の抗体または抗体断片の生物学的機能または治療活性を上昇するため、さらなる技術の最適化が用いられる。このような技術は、抗体の以下の寄与を調節することを含む、ただし、これらに制限されるものではない:効力、親和性、結合特異性、Kオン(会合速度定数)、Kオフ(解離速度定数)、熱力学的安定性、可溶性、血清の半減期、発現、折りたたみ速度、プロテアーゼの感受性、Fc領域エフェクター機能および薬物リサイクル。調節することができる生物学的機能または治療活性は:有効性の強化、改良した薬物動態額的プロフィール、患者への良い都合、減少した商品コスト、改良された安全性プロフィール、減少した免疫性およびより長い貯蔵時間を含むが、これらの制限されるものではない。
【0123】
<TLR2を介在した疾患の治療>
本発明のヒト化抗体、断片および結合メンバーは、免疫抑制(免疫反応、最も特に、炎症性免疫反応)、特にToll様受容体2を介在した活性およびシグナリングを抑制することによって誘発することができる。Toll様受容体2のこの抑制は、疾患状態の治療または予防に有用性を有するとして、Toll様受容体2の活性化およびシグナリングが、疾患の発症または進行の原因となることが、発明者に同定された。
【0124】
本発明の抗体は、例えば実験室内(in vitro)、(生体外)ex vivoおよび生体内の(in vivo)治療法に使用することができる。
【0125】
あるさらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、抗体断片または結合メンバーのToll様受容体2の活性およびシグナリングに介在する疾患状態の治療への使用にまでも及ぶ。
【0126】
<虚血の治療>
したがって、さらなる態様において、本発明は、虚血再かん流傷害、それによって生じる状態またはそれに関連のある治療および/または予防の方法を提供し、
−ここに規定するようなヒト化抗体またはその結合断片の治療への有効量を提供する工程および
−前記化合物をその治療の必要のある対象に投与する工程
を備える方法である。
【0127】
本発明のさらに他の態様は、本発明による完全なヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーを、Toll様受容体2リガンドによる完全なまたは部分的なToll様受容体2活性に介在する虚血再かん流傷害、または心臓の炎症状態の治療への使用を提供する。
【0128】
さらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによる完全な、または部分的なToll様受容体2活性に介在する虚血再かん流傷害、または心臓の炎症の状態の治療または予防のための薬剤の調製において、本発明によるヒト化抗体、その断片またはそれに由来する結合メンバーの使用を提供する。
【0129】
ある実施形態において、心臓の炎症状態は、虚血再かん流傷害の発生から生じて、心筋虚血、虚血性心疾患、高血圧心筋虚血、うっ血心不全、組織虚血、器官虚血、急性冠症候群、肥大、脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、虚血再かん流傷害(I/R傷害)を含む群から選択することができるが、これらに制限されるものではない。
【0130】
虚血は、臓器または体の一部が十分な血液供給を得られないときに生じる。十分な血液供給が与えられない臓器は、低酸素であると考えられている。再かん流は、血流が一時的に奪われた後、臓器まで再開したときに生じる。再かん流傷害は、虚血段階の後、血液供給が組織に戻ることによって組織または臓器に生じる傷害に関する。虚血段階における酸素および栄養の欠如により、循環が戻る時の炎症及び酸化損傷の段階が生じる。虚血再かん流傷害の例としては、低酸素、脳梗塞、心臓発作、慢性腎不全または臓器移植が挙げられる。
【0131】
ある実施形態において、本発明のこの態様の方法は、対象における臓器移植から生じ得る虚血再かん流傷害の治療または予防にも使用することができる。ある実施形態において、本発明の抗体は、固形臓器移植から生じ得る虚血の治療および/または予防に使用することができる。
【0132】
本発明のさらに他の態様は、対象において固形臓器移植と関連する虚血再かん流傷害に関係するTLR2発現細胞または組織において、1以上のToll様受容体2(TLR2)の生物活性を減少する方法を提供し、
−細胞または組織において1以上のTLR2の生物活性を減少するのに十分な量の本発明によるToll様受容体2拮抗抗体と細胞または組織を接触する工程
を備える。
【0133】
ある実施形態において、TLR2発現細胞または組織は、心筋細胞または組織である。ある実施形態において、TLR2発現細胞または組織は、心筋虚血、虚血性心疾患、高血圧心筋虚血、うっ血心不全、組織虚血、器官虚血、急性冠症候群、肥大、脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、虚血再かん流傷害(I/R傷害)を含む群から選択される、再かん流によって誘発される心臓の炎症状態であるが、これらに制限されるものではない。
【0134】
ある実施形態において、方法は、虚血再かん流傷害を有するか、その危険にあるヒトの対象に実施される。
【0135】
本発明のさらに他の態様は、本発明による抗体またはその結合断片の固体臓器移植と関連のある虚血および再かん流への治療または予防のための使用にまでも及ぶ。
【0136】
<自己免疫疾患の治療>
さらに他の態様において、本発明は、自己免疫疾患もしくはそれに関連のある状態の治療および/または予防方法を提供し、
−治療への有効量のヒト化抗体またはここに規定するようなその結合断片を提供する工程および
−前記化合物をその治療を必要とする対象に投与する工程
を備える方法である。
【0137】
本発明のさらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによるTol様受容体2活性によって、完全にまたは部分的に介在される自己免疫疾患を治療する使用のための本発明によるヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーを提供する。
【0138】
さらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2の活性によって完全にまたは部分的に介在される、免疫疾患の治療または予防のための薬剤の調製における、本発明によるヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーの使用を提供する。
【0139】
ある実施形態において、免疫疾患は、自己免疫性関節炎、特に慢性関節リウマチである。ある実施形態において、免疫疾患は、乾癬、皮膚炎を含む群から選択される。さらに、ある実施形態において、自己免疫疾患は、糖尿病である。通常、糖尿病は、真性糖尿病である。ある実施形態において、糖尿病は、1型真性糖尿病である。さらに、ある実施形態において、糖尿病は2型真性糖尿病である。
【0140】
ある実施形態において、糖尿病を有する対象から結果として生じる状態は、糖尿病合併症と呼ばれている。このような糖尿病合併症は、急性合併症、慢性合併症またはそれら双方の組み合わせがあり得る。
【0141】
糖尿病合併症が急性合併症である場合、合併症は、網膜症、神経障害, 末梢循環障害、皮膚潰瘍形成、多尿症、多渇症、多食症、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)および高浸透圧性非ケトン性状態を含むが、選択されない群から選択される。あるさらなる実施形態において、状態は、以下いずれか1の急性または慢性状態から結果として生じ、失明、タンパク尿、痛み、無感覚、寒冷感、間欠性跛行および壊疽を含むが、これらに制限されるものではない。
【0142】
あるさらなる実施形態において、糖尿病合併症は、例えば血糖値の慢性的な上昇から生じる血管疾患であり、血管の傷害(血管障害)を引き起こすような慢性合併症である。このような実施形態において、血管疾患が、微小血管に生じる場合、これは、1以上の糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および糖尿病性ネフロパシーを引き起こし得る微小血管障害を生じさせることがある。
【0143】
本発明のさらに他の態様によると、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2の活性によって完全にまたは部分的に介在される対象において、肥満に関連のある疾患を治療または予防するための方法を提供し、前記方法は、対象に治療への有効量の本発明の前記態様のいずれかによる抗体またはそれに由来する結合を投与する工程または工程を備える。
【0144】
本発明のさらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2の活性によって、完全にまたは部分的に介在される肥満を治療および/または予防するために使用する、本発明によるヒト化抗体、またはそれに由来する結合メンバーを提供する。
【0145】
さらに他の態様は、肥満と関連のある疾患状態の治療または予防のための薬剤の調製において、状態は、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2活性によって完全にまたは部分的に生じる、本発明によるヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーの使用を提供する。
【0146】
ある実施形態において、肥満と関連のある疾患は、糖尿病、特に2型真性糖尿病、インスリン耐性、高インスリン血、減少したグルコースクリアランス、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝、高血圧、炎症、肝腫脹、肝臓脂肪症、心筋梗塞症、喘息または脳卒中を含む群(だだし、これらに制限されない)から選択される少なくとも1の状態である。
【0147】
本発明のさらに他の態様は、対象におけるインスリン耐性の治療方法を提供し、前記方法は、対象に治療への有効量の本発明の抗体、または本発明に提供される結合メンバーを投与する工程を備える。
【0148】
本発明のさらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2活性によって、全体的または部分的に介在される対象におけるインスリン耐性の治療に使用するためのヒト化抗体、その断片、またはそれに由来する結合メンバーを提供する。
【0149】
さらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドによるToll様受容体2の活性によって、完全にまたは部分的に介在される対象における、インスリン耐性の治療または予防のための薬剤の調製において、本発明によるヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーの使用を提供する。
【0150】
<眼疾患の治療>
さらにある態様において、本発明は、眼疾患の治療および/または予防方法を包含し、前記方法は、
−本発明に提供される治療への有効量のヒト化抗体、結合断片または結合メンバーを提供する工程および
−前記化合物をその治療の必要のある対象に投与する工程
を備える。
【0151】
本発明のさらに他の態様は、本発明による抗体またはそれに由来する結合メンバーの眼疾患を治療または予防するための使用を提供する。
【0152】
ある実施形態において、眼疾患は、ブドウ膜炎または加齢性黄斑変性症(AMD)である。
【0153】
<腎炎の治療>
本発明のさらに他の態様は、腎炎およびその疾患またはそれによって生じるか、それに関連する状態の治療および/または予防方法を提供し、
前記方法は、
−本発明に提供されるヒト化抗体、結合断片または結合メンバーの治療への有効量を提供する工程および
−前記化合物をその治療の必要のある対処に投与する工程
を備える。
【0154】
本発明のさらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドの活性によるToll様受容体2に、完全にまたは部分的に介在される腎炎、または腎疾患の治療に使用するための、本発明によるヒト化抗体、またはそれに由来する結合メンバーを提供する。
【0155】
さらに他の態様は、Toll様受容体2リガンドの活性によるToll様受容体2に、完全にまたは部分的に介在される腎炎または腎疾患の治療、または予防の薬剤の調製において、本発明によるヒト化抗体またはそれに由来する結合メンバーの使用を提供する。
【0156】
ここに規定する「腎炎」および「腎疾患」の用語は、実質的に腎臓内または腎臓細胞内の炎症が生じることを特徴とするか、腎臓炎の発症が腎臓以外の他の体の部位に主に影響する疾患または炎症によって結果として生じる状態を包含する。特に、炎症は、糸球体、ボーマン嚢またはボーマン嚢腔を含むが、限定しない部位で生じ得る。一般的に、炎症は、少なくとも部分的な腎機能傷害および/または腎不全を生じる。
【0157】
ある実施形態において、腎炎および腎疾患は、「腎臓疾患」を含み、腎臓疾患の用語は、一般的に、少なくとも1のヒトにおける腎臓疾患を示し、疾患は、腎臓機能を障害するか弱め、これは生理的に、例えば尿へのタンパク質の漏れまたは窒素性老廃物の排出を特徴とする。腎臓疾患は、腎臓の主な病状、例えば糸球体または小管または他の臓器、例えば膵臓への損傷であって、腎臓性能の生物学的機能、例えばタンパク質の保持に悪影響を及ぼすことも結果として生じる。したがって、ヒトにおける腎臓疾患は、他の臓器にも影響を及ぼすことができる疾患状態の直接的または間接的な影響があり得る。腎臓に影響を及ぼすが、特異的に腎臓を標的としない疾患の例は、糖尿病および全身性ループスである。人疾患および腎臓疾患の用語は、ここで「腎臓疾患」の語句と置き換えて同じ様に使用される。腎臓疾患は、例えば腎臓皮質または腎臓髄質のいずれかにおける糸球体、小管または間質組織へのあらゆる変化、損傷または外傷から結果として生じるか、その結果である。
【0158】
ある実施形態において、腎臓疾患は、新構成腎臓疾患もあり得る。ここに使用するような「新構成腎臓疾患」の用語は、長期に亘って(例えば日、週、月、年)腎臓機能を消失するように導くあらゆる腎臓疾患を示す。ここに規定するように、「腎臓機能」の用語は、一般的に腎臓の生理的特徴、例えばタンパク質を保持することができる性能によって、タンパク尿を予防すること(例えばタンパク尿症)を指す。腎臓機能は、例えば糸球体濾過率(例えばクレアチンクリアランス)、尿中のタンパク質の排出、例えばタンパク尿症、血中尿素窒素、血清もしくは血漿クレアチンまたはそれらいずれかの組み合わせによって評価することができる。
【0159】
「腎炎および腎疾患」の用語の意味に分類される特定の状態の例は:慢性腎不全、急性腎不全、異種腎毒性腎炎、糸球体腎炎、糸球体硬化症、全身性エリテマトーデス腎炎(SLE)、糖尿病性ネフロパシー腎症、糖尿病性ネフロパシー腎症を含む腎疾患(ただし、これらに限定されない)、前記糖尿病性ネフロパシー腎症は、腎臓硬化症および糸球体腎炎を伴い、前記糸球体腎炎は、腎臓硬化症を伴う。
【0160】
あるさらなる実施形態において、腎炎および腎疾患は、腎臓細胞および/または腎臓機能に影響する免疫介在疾患に関する。
かかる状態は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)(例えばウェゲナー肉芽腫症)、ループス腎炎クリオグロブリン血関連の糸球体腎炎、細菌性心内膜炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、感染後糸球体腎炎、C型肝炎、糖尿病性ネフロパシー、ミロイド症、高血圧性腎硬化、多発性骨髄腫からの軽鎖疾患、二次巣状糸球体硬化症および高血圧性腎硬化と関連する疾患を含み、免疫グロブリンA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、 非増殖性糸球体炎、膜性糸球体腎炎、微小変化型疾患、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、線維性糸球体硬化、イムノタクトイド腎症、増殖性糸球体腎炎、進行性糸球体腎炎、抗GBM疾患、腎阻血、腎血管炎を含むが、これらに制限されるものではない。
【0161】
「腎炎および腎疾患」の用語は、急性腎不全も包含する。急性腎不全(「ARF」)は、乏尿(<500mL/日)の症状がすぐに現れ、着実に増加していく抗窒素血漿と関連のある臨床症状を示す。ARFの原因は、3診断分類に分類することができる:腎前性(不十分な腎かん流);腎後性(閉塞症);および腎臓性。ARFの病態生理学は、複雑で、多因子性である。従来の概念は、ARFが直接的な尿細管障害、腎虚血または管障害から結果として生じることを示唆する。臨床的に、ARFは、減少した糸球体濾過および減少した代謝老廃物、水および電解質を結果として生じる。体液過剰、電解質平衡異常および尿毒症性症候群は、臓器機能不全を結果として生じる。臓器機能不全は、最終的な結果として死をもたらす。
【0162】
さらに様々な態様において、本発明は、TLR2反応細胞および/または組織(例えば虚血を経た、虚血を経る可能性のある、または再かん流を経る可能性のある組織、膵臓のランゲルハウス島のβ細胞、またはTLR2を発現し、TLR2を介在した疾患状態に関係するあらゆる他の細胞種またはその発達)において、機能(例えば1以上のTLR2の生物活性を変える)を調節する方法を包含する。方法は、TLR2反応細胞若しくは組織の機能、または細胞若しくは組織におけるTLR2の生物活性に拮抗するのに十分な量で、本発明に提供するヒト化抗体またはその結合断片と、TLR2反応細胞および/またはTLR2反応組織を接触する工程を備える。1実施形態において、接触工程は、実験室内で(in vitro)、例えば細胞溶解物または再構成系で生じることができる。或いは、対象方法は、培養細胞、例えば実験室内(in−vitro)または生体外(ex−vivo)で実施することができる。例えば、精製または組換え細胞等の細胞は、実験室内(in−vitro)で培養することができ、接触工程は、TLR2モジュレーターを培養培地に添加することによって生じることができる。一般的に、TLR2反応細胞は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞である。いくつかの実施形態において、TLR2反応組織は、虚血を経て、再かん流を経る可能性があるか、それと関連のある細胞集団の組織である。他の実施形態において、方法は、対象に存在する細胞、例えば生体内(in−vivo)プロトコルの一部としてまたは動物対象(例えばヒトの対象または生体(in−vivo)動物モデル)に実施することができる。生体内(in−vivo)プロトコルは、治療的または予防的とすることができ、炎症モデルは、例えば遺伝子学的に調節されたモデル、例えば過剰発現したTLR2を有する動物モデルまたはTLR受容体の突然変異もしくは欠如があり得る。生体内の(in−vivo)方法のため、ヒト化抗体またはその断片は、例えば二次治療、例えば抗炎症薬または薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤もしくは希釈剤といった他の薬剤単独で、または組み合わせて提供することができる。通常、抗体は、TLR2介在状態、例えば慢性関節リウマチ、虚血再かん流傷害、糖尿病または腎炎を患ったか、そのおそれのある対象に、1以上のTLR2の介在による活性または機能に十分に拮抗する量で、対象に投与される。ある実施形態において、本発明のヒト化抗TLR2抗体の量または投薬量は、投与前に実験室内(in−vitro)または生体外(ex−vivo)試験によって、1以上のTLR2の機能活性を減少または阻害等の変化に必要とされる抗体の量であって、前記機能活性は、通常、1以上のここに記載のTLR2生物活性である。
【0163】
前記いずれかの治療方法は、本発明の抗TLR2抗体または抗体結合断片の代わりに、または、それに加えて免疫複合体を用いて実施することができる。
【0164】
あるさらなる態様において、本発明は、本発明に係る抗体の、診断に応用するための使用をも包含する。このように、本発明のさらなる態様は、Toll様受容体2の発現上昇と関連のある疾患を診断するための方法を提供する。ある実施形態において、方法は、本発明の抗TLR2抗体とテスト細胞を接触する工程;抗TLR2抗体のTLR2への結合を検出することによってテスト細胞によるTLR2の発現レベルを測定する工程(定量的または質的のいずれかで);およびコントロール細胞によるTLR2発現レベルと(例えば正常細胞に相当するレベルでTLR2を発現するテスト細胞または細胞と同じ組織由来の正常細胞)、テスト細胞によるTLR2の発現レベルを比較する工程を備え、コントロール細胞と比較して、テスト細胞によるTLR2のより高いレベルの発現は、TLR2の高い発現と関連した疾患の存在を示す。ある実施形態において、テスト細胞は、高いTLR2の発現と関連のある疾患を有すると疑われている各々のものから得られる。ある実施形態において、疾患は、ここに記載するような、炎症性疾患または免疫介在疾患である。
【0165】
<治療効果>
発明者は、ここに提供するヒト化抗TLR2抗体が、技術分野に既知の抗TLR2ネズミモノクローナル抗体より、治療的に好ましいことを確認した。
【0166】
本発明のヒト化抗体および従来技術のネズミ抗TLR2抗体の、軽鎖および重鎖の可変領域に存在する構造的差異に加えて、発明者は、驚くべきことに、本発明のヒト化抗体によって与えられる数々の機能的利点であり、かかる抗体をより好ましくは臨床状態で使用する点も同定した。
【0167】
限定することなく、発明者は、11G7抗TLR2ネズミモノクローナル抗体と比較したとき、TLR2がTLR1またはTLR6のいずれとヘテロ二量体を形成するかに関わらず、抗体がTLR2機能に拮抗するため、本発明による完全なヒト化抗体は、優れた機能および臨床への使用を示すことを確認した。
【0168】
ネズミTL2.1抗体に関して、発明者は、ネズミTL2.1抗体がヒトTLR2への特異的結合のみを示すのに対し、本発明のヒト化抗体が異なる哺乳類細胞の形状のTLR2、例えばヒト、ネズミ、ラット、ブタおよびサルと交差反応することを確認した。さらに、本発明のヒト化抗体は、ネズミアミノ酸残基を含まず、したがって、対象に投与したときのそれらに対して生成された抗体を中和する可能性は、ネズミ由来のTL2.1抗体と比較したとき、最小限である。
【0169】
T2.5抗体に関して、発明者は、驚くべきことにT2.5抗体(ハイブリドーマクローンT2.5由来のマウスToll様受容体2(TLR2)抗体、HyCult Biotechnology b.v., Cell Sciences, Canton,米国:カタログ番号1054)が、CD32依存的な方法で生じるTLR2活性化およびシグナリングの拮抗を介在することを同定した。発明者は、TLR2シグナリングの抑制、即ち、CD32への結合を介在するため、例えば抗体のFab部位に結合したとき、TLR2受容体の拮抗を介在するため、抗体のFc領域は存在する必要がなく、本発明の完全なヒト化抗体がCD32を必要としないことを同定した。したがって、本発明のOPN−305の完全なヒト化モノクローナル抗体によって介在されるToll様受容体2機能の拮抗は、CD32に独立した方法で介在される。これは、CD32aおよびCD32bの双方への結合を含む。本発明の完全なヒト化抗体は、患者のアクセスが実質的により高いため、発明者に達成されたこの驚くべき観測は、臨床的に重要である。
【0170】
さらに、本発明の完全なヒト化抗体は、TLR2アミノ酸配列のNおよびC末端の双方に存在する残基に規定されるエピトープに結合することが予測される。これは、T2.5モノクローナル抗体によって結合するエピトープが、TLR2配列のN末端(のみ)に局在することが記載された国際公開第2005/028509号と対照的である。
【0171】
さらに、ここに提供する比較例で例示するように、本発明者は、本発明の完全なヒト化抗体が減少した免疫性プロフィールを示したこと、即ち、T細胞エピトープの欠失によって抗体が減少した免疫性を有することを確認した。したがって、本発明による抗体は、ヒトの対象に投与したとき、それらに対して産生した中性抗体反応を有する可能性が非常に低い。この機能的特徴は、本発明の完全なヒト化抗体が、ネズミ抗体TL2.1,T2.5および従来技術に既知の11G7よりまたは従来のCDR移植技術に基づいて開発することができるキメラ抗体もしくはヒト化抗体より臨床状態における使用により好ましいことを意味する。
【0172】
<抗体>
「抗体」は、天然または部分的もしくは完全に合成して産生した免疫グロブリンである。この用語は、結合領域を有するあらゆるポリペプチド、タンパク質またはペプチドの範囲を包含し、即ち本発明のヒト化抗体の結合領域に相合性がある。
【0173】
通常、免疫グロブリンは、2の相同性のある重鎖および2の相同性のある軽鎖がジスルフィド結合によって共に結合しているものを含む、ヘテロ四量体構造を有する。それぞれ重鎖および軽鎖は、抗原の特異的結合に対応する可変領域を有し、これらの領域は、VH及びVL領域として知られる。それぞれの鎖は、少なくとも1つの定常領域を有し、CL領域として指定される少なくとも1つの定常領域を有する軽鎖を有し、一方で、重鎖領域は3の定常領域であるCH1,CH2およびCH3を含む。さらに、いくつかの抗体アイソタイプは、さらにCH4領域として示す定常領域を含む。ヒトにおいて、5つの異なる抗体のクラスが存在し、これらは;IgG,IgA,IgD,IgEおよびIgMである。
【0174】
抗体のFc領域は、通常、少なくとも2つの重鎖定常領域をそれぞれの鎖に含む。これらは、ADCCおよび補体結合等の抗体のエフェクター機能を介在するための役割を果たすFc領域を形成するため、二量体化する。抗体のFc領域は、抗体の循環半減期においても役割を果たす。変異は、抗原機能を調節するためのFc領域にもされる。
【0175】
抗体は、数々の方法で調節できるため、「抗体」の用語は、本発明のヒト化抗体として同じ結合特異性を有するあらゆる特定の結合メンバーにまで及ぶように構成する必要がある。したがって、「抗体」の用語は、抗体断片および相同物並びにToll様受容体2に特異的に結合し、TLR2機能に拮抗するように働く免疫グロブリン結合ドメインを含むあらゆるポリペプチドにまで及ぶ。
【0176】
さらに、全抗体の断片が結合抗原の機能を実施することができることが既知である。かかる結合断片の例は、(i)ヘテロ四量体抗体のVL,VH,CLおよびCH1領域を含むFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)Fab’断片、ヒンジ領域部位を有するFab断片、(iv)ヘテロ四量体抗体のVHおよびCH1領域からなるFd断片、(v)ヘテロ四量体抗体のVHおよびVL領域からなるFv断片、(vi)scFv(短鎖Fv分子)であり、VH領域およびVL領域は、ペプチドリンカーによって結合されている、(vii)VHCDR3等の単離されたCDRおよび(viii)ポリペプチドの多量体であり、遺伝子融合技術によって産生される多価または多特異的断片がありえるジアボディを含むが、これらに制限されるものではない。
【0177】
あるさらなる態様において、本発明は、二重特異性抗体にまでも及ぶ。これらは、化学結合方法によって調製することができる、従来の二重特異性抗体またはハイブリッドハイブリドーマ細胞株を含むことができる。或いは、二重特異性抗体は、二重特異性抗体断片、例えばscFv二量体、またはジアボディに由来することができる。ある実施形態において、全抗体よりscFv二量体が使用できる。前記ジアボディは、可変領域のみを用いて構成することができ、したがって、Fc領域、例えばHAMAまたは抗イディオタイプ免疫反応を生じる可能性を減少する構造を提供する。
【0178】
抗体領域内のアミノ酸残基は、カバットらによる既知の系にしたがって計数した(URL - www.kabatdatabase.com)。前記数は、他に示されていない限り、本明細書に使用されている。
【0179】
<ペプチド模倣薬>
本発明は、さらに本発明の抗体またはその結合断片に基づくペプチド模倣薬をも包含する。ここに使用する「ペプチド模倣薬」または「ペプチド模倣剤」の用語は、ポリペプチドでないが、それらの構造的態様を模倣し、本発明の拮抗するToll様受容体2の機能活性を生じる方法で、Toll様受容体に特異的に結合する分子を示す。それゆえに、本発明は、Toll様受容体2拮抗剤として働く本発明の抗体に基づくペプチド模倣薬をも包含する。
【0180】
ペプチド模倣拮抗剤は、従来の化学的方法によって調製することができる(例えばDamewood J. R. "Peptide Mimetic Design with the Aid of Computational Chemistry" in Reviews in Computational Biology, 2007, Vol. 9, pp.1 -80, John Wiley and Sons, Inc., New York, 1996; Kazmierski W.K., "Methods of Molecular Medicine: Peptidomimetic Protocols," Humana Press, New Jersey, 1999を参考)。ペプチド模倣薬拮抗剤は、Toll様受容体2の拮抗剤から調製することができ、前記ペプチド模倣薬は、本発明の抗体に基づくものであり、特に重鎖および軽鎖可変領域に基づくものである。例えば、多糖類は、ペプチドと同じ機能基を有するように調製することができる。ペプチド模倣薬は、Toll様受容体2の拮抗剤として調製することができ、前記ペプチド模倣薬は、本発明の抗体に基づくものであり、特に重鎖および軽鎖の可変領域に基づくものである。例えば、多糖類は、ペプチドと同じ機能基を有するように調製することができる。ペプチド模倣薬は、結合の存在下または標的分子への結合の条件で、例えばペプチド剤の三次元構造を確立することによって設計することができる。ペプチド模倣薬は、結合部分および骨格または支持構造の少なくとも2成分を含む。
【0181】
結合部分は、標的分子、例えばリガンド結合部位またはその付近のアミノ酸、例えば配列番号:3または配列番号:4のアミノ酸配列を含むToll様受容体2エピトープと反応し、複合体を(例えば疎水性またはイオン相互作用を経て)形成する化学原子または化学基である。例えば、ペプチド模倣薬の結合部分は、ペプチドまたはタンパク質拮抗剤のものと同じである。結合部分は、本発明の抗体と同じまたは同様の方法でToll様受容体2と反応する、Toll様受容体2原子または化学基であってもよい。ペプチド内の塩基アミノ酸のペプチド模倣薬の設計に使用するために適切な結合部分の例としては、窒素含有基、例えばアミン、アンモニウム、グアニジンおよびアミドまたはホスホニウムが挙げられる。酸性のペプチド模倣薬を設計するため使用する際、適切な結合部分の例としては、例えばカルボキシル、低級アルキルカルボン酸エステル、スルホン酸、低級アルキルスルホン酸エステルもしくは亜リン酸またはそのエステルが挙げられる。
【0182】
支持構造は、結合部分に結合したとき、ペプチド模倣薬の三次元構造を与える化学的構成要素である。支持構造は有機または無機である。有機支持構造の例としては、有機合成ポリマーの多糖類、ポリマーまたはオリゴマー(例えばポリビニルアルコールまたはポリラクチド)が挙げられる。支持構造は、ペプチド骨格または支持構造と実質的に同じ大きさおよび寸法を有することが好ましい。これは、ペプチドおよびペプチド模倣薬の原子並びに結合の大きさを算出し、測定することによって決定することができる。一実施形態において、ペプチド結合の窒素は、酸素または硫黄と置換することができ、例えばポリエステル骨格を形成する。他の実施形態において、カルボニルは、スルホニル基またはスルフィニル基に置換することができ、それによってポリアミド(例えばポリスルホンアミド)を形成する。ペプチドの逆アミドを生成することができる(例えば1以上の−COHN基を−NHCO基に置換する)。さらに他の実施形態において、ペプチド骨格はポリシラン骨格と置換することができる。
【0183】
これらの化合物は、既知の方法で生成することができる。例えば、ポリエステルペプチド模倣薬は、ヒドロキシ基を相応するアミノ酸のα−アミノ基に置換し、ヒドロキシ酸を調製し、次に、副反応を制限するため、ヒドロキシ酸をエステル化し、任意に塩基および酸の側鎖をブロッキングすることによって調製することができる。適切な化学合成経路を決定することは、一般的に、化学的構造を決定することによって、容易に同定することができる。
【0184】
ペプチド模倣薬は、少数から多くの別々の分子種を含むライブラリを合成し、構成することができる。このようなライブラリは、周知のコンビナトリアルケミストリーの方法を使用して調製することができ、ライブラリが望ましい活性を有する1以上のペプチド模倣薬を含む場合、測定のためにスクリーンすることができる。該ペプチド模倣拮抗剤は、その後、適切な方法で単離することができる。
【0185】
したがって、本発明のあるさらなる態様は、本発明のToll様受容体2に結合する抗体のパラトープに基づいて設計されたペプチド模倣薬にまで及ぶ。特に、このようなペプチド模倣薬は、ここに開示した抗体のCDR領域の構造に基づく。前記ペプチド模倣薬の産生技術は、当業者に周知であり、Dougall et al.の方法("Design of pharmacologic agents based on antibody structure", Trends in Biotechnology. 1994. 12. p372-379)を含む。さらに、Saragovi et al. (Saragovi, et al., "Design and Synthesis of a Mimetic from an Antibody Complementarity-Determining Region", Science 253:792-795 (1991) and Saragovi et al., "Loops and Secondary Structure Mimetics: Development and Applications in Basic Science and Rational Drug Design", Biotechnology 10: 773-778 (1992))の技術が既知である。該ペプチド模倣薬は、特に重鎖のCDR3に基づくものである。Williams, et al. (Williams et al., "Design of Bioactive Peptides Based on Antibody Hypervahable Region Structures", J.Biol. Chem. 266: 5182-5160 (1991))には、抗体の軽鎖の相補性決定領域由来の立体配座的に制限されたペプチドについて記載されている。その構造に影響する、中位から長いループを有することができるように生じ、様々なパターンの相互作用を有する複雑な遺伝子機構の結果として、このCDRは、抗体の結合特異性に特に重要である。ペプチドループまたは逆のターンの構造的特徴は、ポリペプチドの生物活性における重要な媒介物として考えられる。ターンは、生物活性に重要な結合基の適切な配向性を折りたたみ構造を小分子内で安定化することによって提供し、結合および認識部位の双方に伴うことができる。
【0186】
さらに、本発明は、本発明のToll様受容体2抗体に基づく抗体模倣薬、例えばアフィボディ、ドメイン抗体、ナノボディ、ユニボディ、ダルピン、アンチカリン、アビマー、バーサボディ、デュオカリンをも包含する。多岐に亘る抗体模倣薬の技術分野が、当業者に既知である。例えば、いわゆるドメイン抗体(Domantis, UK)は、ヒト抗体の軽鎖または重鎖のいずれかの可変領域に相当する抗体の小さい機能結合単位である。かかるドメイン抗体の産生法は、米国特許第6,291,158号、第6,582,915号および第6,593,081号明細書に見られる。ナノボディは、ラクダ科の動物に見られる自然に生じる重鎖抗体の独特の構造、および機能特徴を含む抗体由来の治療タンパク質である。ユニボディは、IgG4抗体のヒンジ領域を取り除くことに基づくさらなる抗体断片化技術である。ヒンジ領域の欠失は、従来のIgG4抗体の約半分の大きさであり、単価結合領域の分子を生じる。ユニボディは、不活性なIgG4抗体の特徴を保持し、したがって免疫反応は含まない。それゆえに、IgG4抗体等に基づく治療、例えば本明細書に記載の本発明の抗体の実施形態において、ユニボディは細胞の特定機能に拮抗するために使用することができるが、細胞死は、通常、IgG4抗体等のユニボディに生じず、それが結合する標的に対する免疫反応を介在しない。ユニボディは、IgG4と同じ割合で体内から取り除かれ、それら標的拮抗剤と同様の結合親和性を有する。
【0187】
さらに結合分子は:アフィボディ分子(米国特許第5,831,012号)、ダルピン(設計されたアンキリン反復タンパク質)(国際出願02/20565号)およびアンチカリン(米国特許第7,250,297号および国際出願99/16873号)を含む。バーサボディは、さらなる抗体模倣薬技術である。バーサボディ(Amunix、米国特許出願第2007/0191272号明細書)は、3−5kDaの15%システイン残基を有するマイクロタンパク質として示される小タンパク質であり、タンパク質が、通常、示す疎水性コアを置換する高いジスルフィド結合密度スカフォールドを形成する。
【0188】
アビマーは、他の種類の抗体模倣剤である。アビマーは、ヒト血清タンパク質族の組換えのいずれかに由来するものである。それらは、モジュール結合ドメイン単一のタンパク鎖であり、それぞれ特定の標的部位に結合するように設計されている。アビマーは、単一のタンパク質標的および/または複数のタンパク質標的部位に同時に結合することができる。多点結合または結合活性として知られているこの結合機構は、細胞および分子が体内で作用する方法を模倣し、拮抗物および拮抗剤の生成を支持し、複数の機能および強い活性を有する薬物を結果として生じる。アビマーライブラリは、本明細書に参考として、ここに参考として組み込む国際公開第2004/044011号、99頁の実施例6、および例えば米国特許出願第2005/0053973号、第2005/0089932号、第2005/0164301号明細書に記載の方法によって産生することができる。アビマーライブラリは、Avidia Inc, Mountain View, California, USAからも入手可能である。
【0189】
<抗体産生>
本発明の抗体および結合メンバーは、完全にまたは部分的に化学合成によって生成することができる。例えば、本発明の抗体および結合メンバーは、当業者に周知の技術、例えば標準の液体ペプチド合成または固相ペプチド合成法によって調製することができる。或いは、抗体および結合メンバーは、溶液中に液相ペプチド合成技術または具体的には固相、液相および溶液化学の組み合わせを用いて調製することができる。
【0190】
本発明は、望ましいペプチドまたはポリペプチドがコード化されるような適切な発現系に、本発明の抗体を含む少なくとも1アミノ酸をコード化する核酸の発現による本発明の抗体または結合メンバーの産生にまで及ぶ。
【0191】
例えば、アミノ酸の軽鎖をコード化する核酸およびアミノ酸の重鎖をコード化する第2の核酸は、本発明の抗体を提供するために発現することができる。
【0192】
したがって、本発明のさらなるある実施形態において、本発明の抗体または結合メンバーを形成するアミノ酸配列をコード化する核酸を提供する。
【0193】
通常、本発明の抗体または結合メンバーを形成するアミノ酸配列をコード化する核酸は、単離されるか、精製された状態で提供されるか、1以上の制御配列を除いては、物質を含まなくて、実質的に自然にそれと関連しているものを含まないものを提供する。本発明の抗体または結合メンバーを発現する核酸は、完全にまたは部分的に合成することができ、DNA,cDNAおよびRNAを含むが、これらに制限されるものではない。
【0194】
本発明の抗体または結合メンバーをコード化する核酸配列は、例えばSambrook et al. "Molecular Cloning", A laboratory manual, cold Spring Harbor Laboratory Press, Volumes 1 -3, 2001 (ISBN-0879695773)およびAusubel et al. Short Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, 4th Edition, 1999 (ISBN - 0471250929)に記載された技術を用いて当業者は容易に調製することができる。前記技術は、(i)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の核酸サンプルを増幅するための使用、(ii)化学合成、または(iii)cDNA配列の調製を含む。本発明のDNAをコード化する抗体または結合メンバーは、コード化DNAを得て、発現部位のいずれかの側面を適切な制限酵素組換え部位を同定し、DNAから前記部位を切断する工程を備える、当業者に既知のあらゆる適切な方法で生成され、使用される。切断部位は、その後、適切なプロモーターに作動可能となるように連結され、適切な発現系、例えば市販の発現系にて発現することができる。或いは、DNAの関連部位は、適切なPCRプライマーを用いて増幅することができる。DNA配列への修飾は、部位特異的突然変異誘発法を用いて産生することができる。
【0195】
本発明の抗体または結合メンバーをコード化する核酸配列は、少なくとも1の前記核酸を含むプラズミド、ベクター、転写または発現カセットの形状のコンストラクトを提供することができる。コンストラクトは、1以上の前記コンストラクトを含む組換え宿主細胞内に含むことができる。発現は、適切な核酸配列を含む組換え宿主細胞を適切な条件で培養することによって、好適に達成することができる。発現後、抗体または抗体断片は、あらゆる適切な技術を用いて、単離および/または精製することができ、その後、適切に使用される。
【0196】
様々な異なる宿主細胞内でのポリペプチドのクローニング、および発現の系が知られる。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳類細胞、酵母、昆虫およびバキュロウイルス系を挙げる。異種ポリペプチドの発現に関する従来技術に利用できる哺乳類細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞およびNSOマウス骨髄腫細胞が挙げられる。一般的な、好ましい細菌宿主は、E. coliである。抗体および抗体断片の、原核細胞、例えばE. coliにおける発現は、従来技術として確立されている。真核細胞の培養物における発現は、結合メンバーの産生の選択肢として当業者が利用することもある。
【0197】
抗体の生成に関する一般的な技術は、例えばKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497; US Patent No. 4,376,110; Harlow and Lane, Antibodies: a Laboratory Manual, (1988) Cold Spring Harborに記載された方法として、その分野の当業者に周知である。組換え抗体分子の調製に関する技術は、前記参考文献および例えば欧州特許第0,368,684号明細書にも記載されている。
【0198】
本発明のある実施形態において、抗体または結合メンバーの重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域をコード化する挿入断片を含む組換え核酸が用いられる。定義によると、前記核酸は、前記コード化核酸およびその相補性核酸またはこれら相補性(一本鎖)核酸、またはそれらの相補性核酸(一本鎖)からなるコード化一本鎖核酸、二本鎖核酸を含む。
【0199】
さらに、抗体の重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域をコード化する核酸は、自然に生じる重鎖の可変領域および/もしくは軽鎖の可変領域またはその突然変異体をコード化する確立された配列を有する核酸を酵素または化学合成することができる。
【0200】
本発明の抗体は、組換え法によって、直接的ではないが、異種ポリペプチドを有する融合ポリペプチドであって、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端の特定の切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドとして好ましく産生することができる。好ましく選択される異種シグナル配列は、宿主細胞に認識され、処理される(即ち、シグナルペプチダーゼによって切断した)。自然抗体シグナル配列を認識も処理もしない原核宿主細胞に関して、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーから選択される原核シグナル配列に置換される。
【0201】
<単離抗体>
本発明の完全なヒト化抗体、それに由来する結合メンバーまたはそれをコード化するポリペプチドに関するものである場合、「単離された」の用語は、前記抗体、結合メンバーまたは核酸(ポリヌクレオチド)が単離されたおよび/または精製された形状にあることを示し、即ち、それらが自然環境で別々にされ、単離されまたは精製され、実質的に精製されたか、異種形状であるかまたは核酸の場合、必要とされる機能を有するポリペプチドをコード化する配列以外の原点となる核酸もしくは遺伝子を含まないか、実質的にそれを含まない。したがって、このように単離した抗体、結合メンバーおよび単離した核酸は、前記調製が実験室内(in vitro)または生体内(in vivo)で実施したDNA技術によって調製された場合、それらが自然に関連する物質、例えばそれらの自然環境またはそれらが調製される環境で(例えば細胞培養)みられる他のポリペプチドまたは核酸を含まないか、実質的にそれを含まない。
【0202】
抗体、結合メンバーおよび核酸は、希釈剤またはアジュバントと処方することができ、依然として、実際に単離された形状で提供されていると考えられる。例えば、免疫分析に使用するため、マイクロタイタープレートをコーティングするたまに使用する場合、抗体および結合メンバーは、ゼラチンまたは他のキャリアと混合してもよく、また、診断または治療に使用する場合、薬物学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と混合してもよい。抗体または結合メンバーは、自然にまたは異種真核性細胞(例えばCHOまたはNSO細胞)のいずれかによってグリコシル化できるか、または、それらは(例えば原核細胞の発現によって産生される)非グリコシル化があり得る。
【0203】
抗TLR2ヒト化抗体分子を含む異種調製は、本発明の一部としても形成される。例えば、前記調製は、全長の重鎖およびC末端リジンを欠如した重鎖と、異なる程度でのグリコシル化とおよび/または誘導体化されたアミノ酸、例えばピログルタミン酸残基を形成するN末端のグルタミンサンの環化と抗体の混合があり得る。
【0204】
<投与>
本発明のモノクローナル抗体または結合メンバーは、単独で投与することができるが、好ましくは、意図する経路による投与に依存して選択される、適切な薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアを一般的に含む医薬組成物として投与される。適切な薬学的なキャリアの例としては:水、グリセロール、エタノール等を含む。
【0205】
本発明のモノクローナル抗体または結合メンバーは、その治療の必要のある患者にあらゆる経路で投与することができる。通常、組成物は、注射または注入によって非経口投与することができる。非経口投与の好ましい経路の例は、静脈、心臓内、動脈内、腹膜内、筋肉内、腔内、皮下、経粘膜、吸入または経皮性を含むが、これらに制限されるものではない。投与経路は、局所または腸内、例えば粘膜(肺を含む)、経口、経鼻、直腸をさらに含むことができる。
【0206】
組成物が注入可能な組成物、例えば静脈、皮内または皮下への適用として導入される実施形態において、活性成分は、発熱物質を含まない適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口製剤として許容可能な水溶液の形状とすることができる。従来技術としては、例えば塩化ナトリウム注入液、リンゲル注入液または乳酸加リンガー注入液等の等張性賦形剤を使用した適切な溶液を調製するのに適している。防腐剤、安定剤、バッファー、抗酸化物質および/または他の添加剤を、必要であれば含有させてもよい。
【0207】
組成物は、微小球体、リポソーム、他の微小粒子の送達系または血液を含むある組織に配置された徐放製剤によって投与することもできる。
【0208】
前記技術およびプロトコル並びに本発明よって使用することができる他の技術およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Gennaro, A.R., Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition ISBN 0-912734-04-3 and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems; Ansel, H.C. et al. 7th Edition ISBN 0-683305-72-7に見られ、ここに参照として組み込んだものを完全に開示する。
【0209】
通常、本発明の組成物は、「治療への有効量」で対象に投与され、これは組成物が投与される対象に利点を十分に示す量である。実際に投与された服用量並びに投与速度および経時変化は、治療条件の性質および厳しさ、並びに、治療される対象の年齢、性別および体重等の要因並びに投与経路に依存し、正当な参照文献と決定することができる。さらなる正当な検討は、組成物の特徴、例えばその結合活性および生体内(in−vivo)プラズマ寿命、処方の抗体または結合メンバーの濃度並びに送達の経路、部位および速度についてなされるべきである。
【0210】
投与単位は、組成物の単一投与または組成物の複数の投与服用を含むことができる。さらに、組成物は、治療のため投与される本発明の抗体または結合メンバーを、投与する状態への治療に使用される他の治療および薬物で、順にまたは別途投与することができる。
【0211】
対象に投与することができる投薬単位の例は、1μg/kg/日から20mg/kg/日、1μg/kg/日から10mg/kg/日、10μg/kg/日から1mg/kg/日から選択し得るが、これらの制限されるものではない。ある実施形態において、投薬量は、抗体の血漿濃度1μg/mLから100μg/mLが得られる条件である。しかしながら、実際投与した投与組成物並びに投与の速度および経過変化は、治療条件の性質および苛酷性に依存する。
【0212】
<定義>
他に定められない限り、ここに使用される用語の全ての技術および科学用語は、本発明の分野の当業者に一般的に理解できる意味を有する。
【0213】
文脈が他に必要としない限り、本明細書によると、「含む(“comprise”または“include”)」の用語またはその活用、例えば「含む、備える、包含する(“comprises”または“comprising”、“includes”または“including”)」は、定められた整数または整数の群を包含し、あらゆる他の整数または整数の群を除くと解釈される。
【0214】
本明細書に使用するように、「冠詞(“a”,“an”および“the”)」等の用語は、文脈に他に明らかに指示しない限り、単数および複数の指示対象を含む。したがって、例えば「活性剤(an active agent)」または「薬学的活性剤(a pharmacologically active agent)」の示すものとしては、単一の活性剤並びに2以上の異なる活性剤の組み合わせを含む、一方、「キャリア(a career)」の参照するものとしては、2以上のキャリアの混合物並びに単一のキャリア等を含む。
【0215】
「特異的な結合」、「選択的な結合」または「結合特異性」の用語は、本発明の完全なヒト化抗体または結合化合物の非標的エピトープの結合によって生じた、より高い親和性でToll様受容体に存在する標的エピトープに結合する性能を示す。ある実施形態において、特異的な結合は、非標的エピトープより少なくとも10,50,100,250,500または1000倍より高い親和性で標的に結合することを示す。ある実施形態において、前記親和性は、親和性ELISA分析によって測定される。ある実施形態において、親和性は、BIAcore分析によって測定することができる。ある実施形態において、親和性は、速度論的方法によって測定することができる。ある実施形態において、親和性は、平衡/溶液法によって測定することができる。
【0216】
ここに使用する「有効量」または「治療への有効量」の用語は、腎臓におけるTLR2の介在による炎症の抑制に必要とされるか、TLR2介在による腎臓病もしくは少なくとも1のその症状またはそれに関連のある状態の重症度を軽減するおよび/またはそれを改善する本発明の薬剤、結合化合物、小分子、融合タンパク質またはペプチド模倣薬の量を意味する。
【0217】
ここに使用する「予防への有効量」の用語は、本発明の化合物を対象に投与した後、TLR2介在による疾患の初期発生、進行もしくは再発、炎症状態または少なくともその1の症状を予防するために必要とされる組成物の量に関する。
【0218】
ここに使用する「治療(treatment)」および関連のある用語、例えば「治療する(“treat”および“treating”)」の用語は、TLR2介在による状態または少なくとも1のその症状の進行、重症度および/もしくは期間を軽減することを意味し、前記軽減または改善は、本発明のTLR2結合エピトープに特異性を有する結合化合物を投与することを結果として生じる。したがって、「治療」の用語は、対象に対して効果を奏する、あらゆる計画を示す。治療は、現状に関するものであるか、予防(予防的治療)に関するものがあり得る。治療としては、治癒するか、軽減するか、予防効果を挙げることができる。ここに参照する「治療的」および「予防的」な治療は、それらのより広い範囲の文脈として考えられる。「治療」の用語は、必ずしも、対象が完全に回復するまでの治療を意味するものでない。同様に、「予防」は、必ずしも、対象が疾患状態を最終的に減少することを意味しない。
【0219】
本明細書に使用するように、「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、特にヒトを示す。特定の実施形態において、対象は哺乳類、特にヒトである。用語「対象」は、本明細書で使用される「患者」という用語と置き換えて同じ様に使用される。
【0220】
本発明は、説明の目的で提供するものであり、本発明に制限することとして解釈することを目的としない以下の例を参考として記載する。
【実施例】
【0221】
〔実施例1−完全なヒト化モノクローナル抗体の産生〕
本発明のTLR2拮抗抗体は、通常、完全なヒト化抗体である。即ち、抗体は、完全にヒト起源のものであるため、非ヒト類、例えばマウス由来の領域またはアミノ酸の組み合わせを含まない。
【0222】
本発明の完全なヒト化抗体を産生する1の方法は、国際公開第2006/082406号に記載されたヒト抗体技術(Antitope、英国)を使用して実施される。該抗体は、ヒト抗体由来のアミノ酸配列の2以上の断片を含む複合タンパク質である。断片は、最終的な抗体におけるT細胞エピトープの存在が回避できるように選択することができ、例えば残基をスクリーニングし、特に軽鎖および重鎖の可変領域がMCHクラスII結合モチーフを含まないこと、または、それらがMHCクラスIIへのペプチド結合をしっかりと固定する残基を含まないことを確実にする。さらに、本発明の完全なヒト化抗体の可変領域を分析するin−silico法が、T細胞エピトープの不存在を確実化させるために使用される。
【0223】
合成ヒト抗体技術を用いた完全なヒト化抗体の産生の際、最終抗体は、数々の配列断片の組成物であって、全てヒト起源であって、全て異なるヒト由来抗体を含むように産生する。簡潔に、技術としては、開始するモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域、
例えば相補性決定領域(CDR)を同定するため、Toll様受容体2に特異的な結合を有するネズミまたはキメラ抗体の分析工程を備える。その後、抗体の可変領域のタンパク質モデルは、Swiss PDBを用いた鋳型として既存の抗体構造を用いて生成する。抗体の結合特性に重要である可能性のある本来の抗体の可変領域部位内の重要な「抑制」アミノ酸を同定するため、その後、これらの構造モデルを分析する。フレームワーク残基の数と共にCDR領域内に含まれる残基(カバットおよびコチア(Chothia)の定義の双方を用いて規定した)は、通常、重要である。タンパク質モデルからの構造情報は、抗体の確認および既存の抗体構造および配列のデータベースと構造的に同一の結合に重要な残基を同定し、比較するために使用される。その後、これらアミノ酸は、1以上の最終的なヒト化配列の変異体を包含する候補とすることができる。本発明の抗体の調製において、本発明の完全なヒト化抗体に基づくネズミ抗TLR2抗体(ハイブリドーマクローンT2.5由来のマウスToll様受容体2(TLR2)抗体HyCult Biotechnology b.v., Cell Sciences, Canton,米国:カタログ番号1054)のVHおよびVK配列の双方は、典型的なフレームワーク残基、特に抗体が非常に一般的な配列構成を重要な位置、例えばカバット残基45−49(LEWIG)および92−94(CAR)で有するVHにおいて含むことを観測した。
【0224】
最終的なヒト化配列を含む可能性のある、潜在的な重鎖および軽鎖のヒト配列を同定するため、モノクローナル重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列の起源となる配列を、その後、相応するヒト化変領域の配列の断片と比較した。最後に、ヒト化重鎖および軽鎖を、その後、完全にヒトの可変領域配列の断片から設計する。
【0225】
全長の合成V領域を得るため、アニールされ、ライゲーションされ、PCR増幅された重なり合うオリゴヌクレオチドの一群を用いて、最初に、VHおよびVK領域の遺伝子を合成して、完全なヒト化抗体を設計し、産生した。その後、ポリヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター、例えばIgG等の抗体をコード化する発現ベクター系等の、当業者に周知のもので直接クローン化した。本発明のOPN−305抗体の産生に使用した発現ベクターの場合、発現ベクター系は、修飾されたヒンジ領域(S241P置換)並びに重鎖およびκ軽鎖を含むIgG4由来配列に関する。重鎖および軽鎖は、その後、エレクトロポーレーションおよび選択した200nMメトトレキサート(Sigma,カタログ番号M8407)を用いて、NSO細胞内に安定的に形質転換された。メトトレキサート耐性群を、IgG発現レベルに関して試験した。
【0226】
本実施例ではNS0細胞を使用したが、当業者に既知のあらゆる適切な細胞株を使用することができる。特に、哺乳類細胞培養物中の哺乳類細胞の使用は、本発明の抗体および結合断片の産生のための基盤として好ましい。特に、哺乳類細胞の使用が、タンパク質に適用されるN−グリコシル化特性またはグリコシル化特性は、ヒトタンパク質に見られるものと同様のため、好適である。哺乳類細胞培養に一般的に用いられる細胞株としては、CHO,NS0ハイブリドーマ細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびPER.C6(商標)ヒト細胞が挙げられる。生産規模の体積で、哺乳類細胞培養に使用するため、最も一般的に用いられる哺乳類細胞株は、CHOおよびNS0細胞株である。これら細胞種は、遺伝子組換えが比較的容易であり、幅広い特徴を有していて、大規模に成長することが比較的容易であり、溶液中に組換えタンパク質の高い滴定量を分泌することができる。CHOおよびNS0細胞株の双方は、高いタンパク質の発現レベルで産生することができる。
【0227】
哺乳類細胞に基づくタンパク質発現基板に加えて、植物に基づく発現系または遺伝子導入動物系の使用は、本発明のタンパク質の生成の使用の際にも用いることができる。
【0228】
その後、プロテインAセファロースカラム(GE Healthcareカタログ番号110034-93)を通して、OD280nmで定量化して、Ec(0.1%)=1.43の場合に算出された減滅係数を用いることによって、複合抗体を、細胞培養上清から精製した。その後、競合ELISA分析において、Toll様受容体2の結合を確認するため、精製された抗体を試験した。前記結合は、参照抗体、例えばToll様受容体2の結合抗体のビオチン化形状の完全なヒト抗体に基づく設計の結合と比較することができる。特に、ELISA競合分析からの吸収率は、サンプル濃度に対して、完全なヒトおよび最初のビオチン化抗体に関係のあるそれぞれのデータセットを通るように合わせた直線をプロットすることができる。線の公式は、ビオチン化参照抗体のTLR2への結合を50%阻害するために必要とされる濃度を算出するために使用した。IC50値は、結合効率の倍率差を算出するために使用することができる。測定された結合効率は、産生された完全なヒト化抗体の特異性の重要な測定である。さらなる比較、例えば完全なヒト化抗体を同じ抗原に特異的な結合を有する。キメラまたはネズミ抗体と比較することも実施することができる。
【0229】
〔実施例2−OPN−305モノクローナル抗体の結合特徴の決定〕
驚くべきことに、本発明者は、完全にToll様受容体2機能を拮抗するため、T2.5 TLR2拮抗ネズミモノクローナル抗体がCD32への結合に必要であることを同定した。したがって、T2.5抗体の使用と関連のあるこの機能制限が、そのToll様受容体2の生物活性の中和効果を拮抗するためのOPN−305モノクローナル抗体の使用とも関連することを確認するため、実験を実施した。
【0230】
<材料および方法>
THP−1細胞は、ヒト末消血単球細胞である。Toll様受容体リガンドに応じて、転写制御因子NF−κBおよび他の転写制御因子は、THP1細胞内で活性化されている。THP−1青色細胞株を、いくつかの転写制御因子、例えばNF−κBおよびAP−1による誘導性プロモーターの調節下、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)遺伝子をコード化することが報告されているプラズミドを安定的に形質転換した。THP−1 CD14青色細胞株の変異体は、高い感度で細胞表面タンパク質を過剰発現する。結果として生じるTHP−1 CD14青色細胞は、選択的なマーカーであるゼオシンおよびブラストサイジンに抵抗性である。TLR刺激に応じて、THP−1青色細胞は、転写制御因子、その後、QUANTI−Blueレポーター系を用いて検出されるSEAP分泌を活性化する。QUANTI−Blueは、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)活性を、細胞培養物の上清中で測定するために開発された比色分析の酵素分析である。SEAPの存在下におけるQUANTI−Blue培地は、紫青色への変化を肉眼で簡便に定性的に検出するか、625−655nmでの吸光度(OD)を計測することによって定量化することができる。
【0231】
THP CD14青色細胞を、5μg/mL−0.18μg/mLの範囲の抗CD32a抗体(RnD #AF1875)もしくは抗CD32b抗体(RnD #AF1330)またはヤギIgGと既に混合されたOPN−305抗TLR2モノクローナル抗体(1μg/mL)と、20ng/mLのTLR1/TLR2拮抗剤Pam3CSK4で刺激する前、5分間、37℃でインキュベートした。OPN−305モノクローナル抗体は、配列番号:2としてここに規定される軽鎖および配列番号:5としてここに規定される重鎖を有する完全なヒト化抗体である。
【0232】
その後、細胞を、一晩、37℃でインキュベートした。その後、上清を取り除き、QUANTI−Blue(Invivogen,サンディエゴ、米国)の添加前に熱不活性化した。NF−κBの活性を示す吸光度を、吸光光度計を用いて650nmで測定した。
【0233】
図9に示すように、これらの結果は、Toll様受容体2の拮抗剤としてのOPN−305の機能的活性は、抗CD32a/b抗体によってブロックされないことを示す。したがって、これは、OPN−305によって介在されるToll様受容体2の中和活性が、CD32aまたはCD32bへの結合に依存しないことを示す。
【0234】
〔実施例3−Toll様受容体2の拮抗作用におけるCD32の役割〕
実施例2の結果は、本発明のOPN−305の完全なヒト化抗体によるToll様受容体2の拮抗剤が、CD32(CD32aまたはCD32bのいずれか)への抗体結合に依存しないことを示唆する。
【0235】
これを確認し、この分野において既知の他のTLR2拮抗抗体、例えばT2.5ネズミTLRモノクローナル抗体(OPN−301)との比較を提供するため、さらなる実験を実施した。
【0236】
<材料および方法>
THP−1 CD14青色細胞(Invivogen,サンディエゴ、米国)を、CD32aまたはCD32bをブロックする抗体の量で、前もってインキュベートした。
【0237】
前もってインキュベートしたTHP−1 CD14青色細胞は、多量の(i)抗ヒトFcγRIIa(CD32a)抗体(前記実施例に使用したようなR&D Systems,カタログ番号AF1875)、(ii)抗ヒトFcγRII(CD32)抗体(R&D Systems,カタログ番号AF1330)または(iii)アイソタイプコントロール抗体(ヤギIgG(R&D systems,カタログ番号AB-108-C))とインキュベートした。その後、細胞は、200ng/mLのネズミ抗TLR2抗体T2.5(OPN−301)または完全なヒト化OPN−305抗体のいずれかを添加された。細胞を、その後、一晩、TLR2作用薬Pam3CSK4(Invivogen)100ng/mLで刺激した。
【0238】
<結果>
NF−κBに依存するSEAP生成は、細胞上清で測定された。図10Aは、OPN−301(T2.5ネズミ抗TLR2抗体)にさらされた細胞の結果を示す。図10Bは、OPN−305の完全なヒト化TLR2拮抗抗体にさらされた細胞に関する結果を示す。図10Aにおいて、カラムAは、Pam3CSK4のみで刺激された細胞に関する。カラムBは、OPN−301抗体にさらされた細胞に関する。カラムCは、0.4μg/mLの抗CD32a/bまたはコントロールヤギIgG抗体を加えられたOPN301抗体に関する。カラムDは、2μg/mL抗CD32a/b抗体またはコントロールヤギIgG抗体を加えられたOPN301抗体に関する。カラムEは、OPN301抗体と10μg/mL抗CD32a/b抗体またはコントロールヤギIgG抗体に関する。
【0239】
図10Bにおいて、カラムAは、Pam3CSK4のみで刺激された細胞に関する。カラムBは、OPN−305抗体にさらされた細胞に関する。カラムCは、0.4μg/mL抗CD32a/bまたはコントロールヤギIgG抗体を加えられたOPN305抗体に関する。カラムDは、2μg/mL抗CD32a/b抗体またはコントロールヤギIgG抗体を加えられたOPN305抗体に関する。カラムEは、OPN305抗体と10μg/mL抗CD32a/b抗体またはコントロールヤギIgG抗体に関する。
【0240】
2つの図に示されるデータの比較は、CD32aまたはCD32特異的な抗体でのCD32のブロッキングが、OPN305のTLR2中和性能に効果を奏しないため、OPN−305によって介在されているTLR2拮抗作用は、CD32と相互作用する抗体に依存しないことを明らかに示す。対照的に、ネズミT2.5抗体(OPN−301)は、Toll様受容体2機能活性を完全に中和するため、CD32結合に依存性を示す。理論に抑制されることなく、発明者は、したがって、TLR2拮抗作用の介在において、OPN−301抗体が、TLR2、さらにはCD32にも結合し、このCD32との相互作用が、Toll様受容体2の拮抗作用を介在するのに必要であることを予測した。したがって、Toll様受容体2の機能活性に拮抗する関係にあるOPN−305抗体およびOPN−301抗体に用いられる作用機序に機能的な差が存在する。それゆえに、OPN−301のTLR2に拮抗的な活性は、CD32への結合をブロックすることによって阻害することができる。しかしながら、OPN−305のCD32、CD32aまたはCD32bへ結合する性能をブロックすることは、Toll様受容体2の機能的活性を拮抗するその性能に影響を及ぼさない。
【0241】
〔実施例4−OPN−305のToll様受容体2への結合特異性の確認〕
本発明のOPN−305モノクローナル抗体が、Toll様受容体2、特にヒトToll様受容体2に特異的な結合を示すことを確認するため、実験を設計した。
【0242】
<材料および方法>
TLR1/TLR2へテロ二量体の形成を可能とするため、Toll様受容体1およびToll様受容体2と安定的に形質転換したHEK 293(ヒト胎児由来腎臓293)細胞は、ビオチン化形状のネズミ抗TLR2抗体OPN−301(T2.5)1.0μg/mL単独で、または、完全なヒト化抗TLR2抗体OPN−305またはOPN−305 IgG4アイソタイプコントロール抗体1.0μgまたは10μg/mLの存在下のいずれかで30分間、氷の上でインキュベートした。
【0243】
OPN−301モノクローナル抗体は、ネズミIgG1抗TLR2抗体(マウスToll様受容体2(TLR2)抗体、クローンT2.5、HyCuIt Biotechnology b.v., Cell Sciences, Canton,米国:カタログ番号1054)である。
【0244】
OPN−305モノクローナル抗体は、本明細書に配列番号:2として規定される軽鎖および本明細書に配列番号:5として規定される重鎖を有する完全なヒト化抗体である。
【0245】
その後、細胞を、洗浄し、PECy7に結合されたストレプトアビジンとさらに30分間インキュベートした。FACScalibur(Becton Dickinson)を用いて結合を測定した。結果は図11に示す。
【0246】
図11Aは、OPN−305結合に関する(変異体21として標識する)。左から右に移動して、最初のピークの最も濃い線は、赤線に関するものである。最初のピークのより薄い線は、緑線に関するものである。右に移動して、第3、第4および第5のピークは、それぞれ紫、青および黒ピークである。OPN−305がHEK細胞におけるヒトTLR2への結合に関してOPN−301と競合するOPN−301のみ(黒棒グラフ)と比較して、OPN−305の結合を、青または紫の棒グラフ(OPN−301およびOPN−305を示す)の左への移動によって示す。結論として、図11Aは、ピークの用量依存を示し、これは、ヒトToll様受容体2へのOPN−301およびOPN−305の間の競合を示す。
【0247】
図11Bは、IgG4アイソタイプコントロールとの結合の結果を示す。IgG4アイソタイプコントロール抗体が、TLR2への結合特異性を有さないため、それは結合に競合的でない。したがって、図11Bの右側に示すように、集められて、第2ピークとして示す黒、紫または青のピークが存在する。左側のピークは、赤ピーク(より濃い線)および緑ピーク(より薄い線)に関するものである。したがって、これらの結果は、OPN−305がヒトToll様受容体2に特異的に結合することを確実にする。
【0248】
〔実施例5−OPN−305のネズミToll様受容体2への交差反応〕
実施例4において、OPN−305がヒトToll様受容体2に特異的結合を示すことを測定した後、この実験は、OPN−305モノクローナル抗体が、Toll様受容体2種内交差反応であり、OPN−305が哺乳類Toll様受容体2の他の形状、例えばネズミToll様受容体2に結合することを可能とすることを示すかを評価した。
【0249】
<材料および方法>
J774マウスマクロファージを、1×10/mLで、5μg/mLのOPN−305(OPN-305-21として示す)、OPN−301(T2.5)または関連のあるアイソタイプコントロール抗体(OPN−301へのネズミIgG1およびOPN−305へのヒトIgG4)の存在下、6時間、37℃で培養した。細胞を、TLR2拮抗剤HKLM(Invivogen,サンディエゴ、米国,カタログ番号tlr−kit2)にさらした。HKLMは、凍結乾燥され、熱殺菌されたグラム陽性通性細胞内細菌であるリステリア菌である。その後、上清を取り除き、ネズミTNF−αレベルを、RnD systems (R&D Systems)からの特定のELISAデュオセットによって測定した。
【0250】
<結果>
結果は図12のグラフに示す。これは、OPN−301の阻害と類似する方法において、OPN−305がネズミTLR2反応を抑制することを示す。したがって、それが表面またはネズミ細胞で発現するToll様受容体2に結合するため、OPN−305は、交差反応性がある。
【0251】
結論として、OPN−305は、TLR2拮抗剤で刺激された、ネズミJ774マクロファージからのTNF−α分泌を抑制することを示した。
【0252】
〔実施例6−OPN−305のサルToll様受容体2への交差反応性〕
さらなる実験は、OPN−305のサル細胞で発現されているToll様受容体の特異的結合を測定するため、実施された。これは、OPN−305抗体が、ヒトおよびネズミの形状のみより、種々の哺乳類形状のToll様受容体2に交差反応性であるかを同定した。
【0253】
OPN−305のサルToll様受容体2への結合を、直接的な抗体および競合結合分析の双方によって測定した。
【0254】
(i)直接的な結合
カニクイザルからの全血を、1.0μg/mLのOPN−305またはIgG4アイソタイプコントロール抗体で、30分間、室温でインキュベートして、その後、赤血球を溶解するため、PharmLyse(BD Biosciences)とインキュベートして、それからFITC標識された抗ヒトIgG4と検出した。
【0255】
結果を図13A,BおよびCに示す。異なる細胞種を、それらの前および側面の散乱特性にしたがってゲート(gated)した。図13Aは、顆粒白血球に関する。図13Bは、単球に関する。図13Cは、リンパ球に関する。結合は、アイソタイプコントロール抗体(緑棒グラフ−これは、左から右に移動させた第2ピークであり、このピークは薄い色である)とインキュベートした細胞と比較して、OPN−305(青棒グラフ−これは、右側の群のピークのピークである)とインキュベートした細胞の右への棒グラフの移動によって示される。図13Aおよび13Bの結果は、緑ピークと比較して青ピークがさらに右に移動したことを示す。これは、OPN−305が顆粒白血球および単球で発現しているサルTLR2に結合することを示す。したがって、OPN−305は、異なる細胞種で発現しているToll様受容体2に幅広い交差反応を示す。
【0256】
(ii)競合分析
カニクイザルからの全血は、1.0μg/mLのビオチン化OPN−301単独で、または、OPN−305もしくはIgG4アイソタイプコントロール抗体(OPN305)1.0μgもしくは10μg/mLの存在下のいずれかで30分間、室温でインキュベートされた。細胞は、その後、洗浄され、PECy7に結合されたストレプトアビジンとさらに30分間インキュベートされた。
【0257】
OPN−301モノクローナル抗体は、ネズミIgG1抗TLR2抗体(マウスToll様受容体2(TLR2)抗体、クローンT2.5、HyCuIt Biotechnology b.v., Cell Sciences, Canton,米国:カタログ番号1054)である。
【0258】
OPN−305モノクローナル抗体は、本明細書に配列番号:2として規定される軽鎖および本明細書に配列番号:5として規定される重鎖を有する完全なヒト抗体である。
【0259】
結合は、Becton DickinsonからのFACScaliburを用いて測定した。結果を図14A,BおよびCに示す。図14Aは、顆粒球に関する。図14Bは、単球に関する。図14Cは、リンパ球に関する。OPN−305の結合は、OPN−305がOPN−301とサルTLR2への結合に関して競合する結合に関して、OPN−301単独と比較して、緑棒グラフの左への移動によって示された。したがって、OPN305は、サルToll様受容体2結合に関して競合していることが、再度、観測できる。これは、OPN−305がヒト、マウスまたはサル細胞で発現のあるToll様受容体2に交差反応があることをさらに確認することができる。
【0260】
〔実施例7−OPN−305モノクローナル抗体の免疫性〕
OPN−305抗体の分析は、免疫反応、例えばHAMA反応に結果として生じることがあり得る、抗体が投与される対象によって産生された抗体を免疫性エピトープの存在を見出すため、実施された。前記のように、T細胞エピトープの存在は、抗体に対する中和抗体反応の産生が、治療目的のために患者に投与するのにもはや適していない結果を生じるため、非常に望ましくない。したがって、T細胞エピトープが明らかに存在していないことを確認するため、OPN−305抗体をスクリーンした。
【0261】
<材料および方法>
<ドナーPBMCの調製および選択>
末梢血単核球細胞(PBMC)をNational Blood Transfusion Service (Addenbrooke's Hospital,ケンブリッジ、英国)から健康な群のドナー軟膜(24時間以内に献血した)から単離した。PBMCは、軟膜からLYMPHOPREP(商標)(Axis-Shield,ダンディ、英国)密度遠心によって単離され、CD8+ROSETTESEP(商標)(StemCell Technologies Inc., ロンドン、英国)を用いて、CD8+T細胞は減少された。ドナーは、組織型判定キット(Biotest, Landsteinerstrasse,デンマーク)に基づくBiotest SSP−PCRを用いてHLA−DRハプロタイプを同定し、並びに、コントロール抗原であるスカシ貝ヘモシアニン(KLH)(Pierce,ロックフォード、米国)へのT細胞の反応を測定することによって特徴付けられた。PBMCは、その後凍結され、必要とされるまで液体窒素に保管された。
【0262】
世界人口のHLA−DRアロタイプを発現する数および頻度を最も示す21ドナーの一団を選択した。世界人口において発現されるものに対する一団において発現したアロタイプの分析は、>80%の範囲を達成し、全ての主要なHLA−DR対立遺伝子(頻度>5%で世界人口に発現した個々のアロタイプ)をはっきり示していることを明らかにした。
【0263】
EpiScreen経時変化のT細胞増殖分析
国際公開第2007/099341号に教示するように、T細胞エピトープの存在を決定するため、抗体を分析の対象とした。個々のドナーからのPBMCを解凍し、計数して生存率を評価した。細胞は、室温AIMV培養培地中(インビトロゲン、ペイズリー、英国)で回復され、AIMVで4.6×10PBMC/mLまで再懸濁された。計1mL増殖細胞ストックを24ウェルプレートに添加し、それぞれのドナーに対してバルク培養を確立した。サンプルあたり最終濃度50μg/mLが得られるように計1mLのそれぞれ希釈したテストサンプルをPBMCに添加した。それぞれのドナーに対して、陽性対象(100μg/mLのKLHでインキュベートした細胞)および陰性対象(培養培地のみでインキュベートした細胞)も含有した。最初の4ドナーに関して、付加的なコントロールは、T細胞反応の調節をテストサンプルでテストするために含まれ、テストサンプルおよびKLHの双方ともPBMCに添加した。KLH単独でのこれらサンプルの比較は、増殖へのテストサンプルの効果を評価するために使用することができる。培養物は、計8日間、37℃、5%COでインキュベートされた。5,6,7および8日目、それぞれのウェル内の細胞を徐々に再懸濁し、丸底96ウェルプレートのそれぞれのウェルに3×100μLアリコートで移した。培養物は、100μLのAIMV培養培地中1μCi[3H]−チミジン(Perkin Elmer(商標), Waltham,マサチューセツ州、米国)を適用し、さらにTomTec Mach III細胞ハーベスターを用いてフィルターマット(Perkin Elmer(商標), Waltham,マサチューセツ州、米国)上に収穫の18時間前インキュベートした。各々のウェルにつき1分あたりのカウント(cpm)を、MELTILEX(商標)(Perkin Elmer(商標), Waltham,マサチューセツ州、米国)シンチレーションカウントによってパララックス(paralux)のマイクロプレートβカウンターの低いバックグラウンドカウントモードで測定した。テストサンプルの潜在的毒性を評価するため、細胞生存率カウント(VICELL(商標)カウンターおよびトリパンブルー染色による除外を用いた)は、テスト培養物のサンプル、培地およびKLHコントロールに最初の10ドナー
に対して7日間インキュベートした後、実施された。
【0264】
<EpiScreenデータ分析>
増殖分析に関して、2以上の刺激指数(SI)の実験的閾値(SI≧2)を、以前確立し、それによって前記増殖反応を誘発するサンプルは、陽性と考えられる(境界線上のSI>1.95をハイライトしたものを含む)。広範囲に亘る分析開発および以前の研究は、大きい数の偽陽性反応を検出することなく、これが最高感度を可能とする最小限のシグナルとノイズの閾値であることを示す。増殖データセット(n=3)について、陽性反応を統計学および実験による閾値によって規定した:
【0265】
テストウェルのcpmを培地コントロールウェルに対して2サンプルの対応のないスチューデントt-検定を用いて比較することによる反応の有意性(p<0.05)。
【0266】
2を超える刺激指数(SI≧2)、SI=テストウェルの平均(cpm)/平均培地コントロールウェル(cpm)
【0267】
さらに、アッセイ内の変化は、複製培養物からの生データの分散係数および標準偏差(SD)を算出することによって評価した。
【0268】
<結果>
抗TLR2抗体OPN−305(VK5/VH4)を、均一になるまでプロテインA親和性クロマトグラフィで精製し、次いでサイズ排除クロマトグラフィによって精製した。
【0269】
変異体の名称VK5A/H4は、本明細書に開示したOPN−305完全ヒト化モノクローナル抗体である。OPN−305モノクローナル抗体は、本明細書の配列番号:2に規定した軽鎖アミノ酸配列、および本明細書の配列番号:5に規定した重鎖アミノ酸配列を有する、完全なヒト化抗体である。
【0270】
全ての調製は、モノマー、非凝集抗体(図15AおよびB)を示す単一のピークに由来し、<5EU/mgでエンドトキシンを含むことが分かった。
【0271】
免疫性の相対危険度を測定するため、3つのテストサンプルを、21の健康なドナーの一団に対してEpiScreen(商標)(Antitope、英国)経時変化T細胞分析で試験した。飽和濃度を提供したこの量は、検出可能なタンパク質特異的なT細胞反応を十分に刺激するため、サンプルを最終濃度50μg/mLで試験した。
【0272】
T細胞調節および細胞毒性の研究の結果を分析した。7日後の培養物の細胞生存率は、65から95%であり、全てのテストサンプル、培地コントロールおよびKLHコントロール間で同様である。したがって、テストサンプルは、分析に使用した細胞に毒性作用はないと考察した。さらに、図16は、KLH単独で、または、テストサンプルの存在下のいずれかに誘発されるSI間で、有意差が存在しないこと(スチューデントt-検定 p<0.05)を示す。これは、テストサンプルが、KLHに応じてCD4+T細胞活性を直接調節しないことを示唆する(コントロール抗原)。図16は、細胞障害およびT細胞調節活性に関するテストサンプルのプレスクリーンの結果を示す。サンプル1は、キメラ抗TLR2(ヒトIgG4のFc領域に結合したT2.5ネズミ抗体に由来するF’ab断片)、サンプル2は、抗TLR2抗体OPN−305(VK5A/H4,OPN305)、サンプル3は、VK5A/H5と指定する変異体抗TLR2抗体である。
【0273】
OPN−305(VK5/VH4、OPN−305)およびVK5/VH5の比較抗Toll様受容体2抗体、並びに抗TLR2キメラ抗体で実施されたEpiScreen(商標)による経時変化の増殖分析からの結果を分析した(図17A,BおよびC)。21人のドナーのうち、4人のキメラ抗TLR2抗体による刺激反応であって(研究一段18%)、SI≧2および有意性は、スチューデントt-検定で達成された(p<0.05)。ドナー20は、テスト期間を通して高いSIで特に活発な反応を示し、ドナー3についても、6日目に強い反応(SI=6.99)が観測された。対照的に、研究集団におけるドナーは、OPN−305に陽性的に反応しなかった。OPN−305(VK5A/H4)抗体は、したがって、キメラ抗体に陽性反応を示したドナーにおいて、あらゆる優位なT細胞反応を産生しなかった。
【0274】
<結論>
EpiScreen(商標)で、経時変化によるキメラ抗体に対するT細胞分析を観測した陽性CD4+T細胞増殖反応は、15−40%の期待範囲にあった。重大なことは、期待通りに分析が機能したことを示すコントロール抗原KLHに対して、頻繁、且つ強力なT細胞反応を観測した。結果は、完全なヒト化抗体OPN−305(VK5A/H4)が、いずれのドナーにおいて、あらゆる陽性反応を示すことができなかったことを示し、この抗体は、したがって、臨床における免疫性のリスクが低いことが考察された。
【0275】
図18は、EpiScreen(商標)分析を用いて観測した免疫性のレベル、および実際に臨床で観測した大きな集団に対する治療的なタンパク質の免疫性のレベル(抗タンパク質治療抗体反応)の間における、明らかな相関関係を示す(Baker and Jones, 2007)。高いレベルの免疫性が、臨床データおよびEpiScreen(商標)分析の双方において、InfliximabおよびCampath等のタンパク質について観測され、比較的低いレベルの免疫性が、Xolair,HerceptinおよびAvastin等のタンパク質について観測された。免疫性危険性の低い生物学的治療と関連づけられた上記の実験結果に基づいて、OPN−305抗体が、研究集団の<10%において反応を誘発することが重要である。
【0276】
〔実施例8−OPN−305モノクローナル抗体の結合親和性の測定および比較〕
抗原および抗体の複合体の結合および親和性を同時に測定する免疫学的バイオセンサー、例えばBIACORE(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)装置は、結合反応速度の解析を可能とする。化合物の分離速度およびその後の最適化は、生物薬剤抗体の開発に特に重要である。BIACOREは、表面結合分子「リガンド」および溶液「電解質」中の、その結合パートナーの間の相互作用を同時に観測するため、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用する。SPRは、総内部反射率の条件下、光が層で反射したとき、金属層の表面で生じる電子電荷密度波現象である。発生する表面プラズモンは、反射光から金属層の反対側の媒体の屈折率におけるあらゆる変化に感受性を有する。表面で生じるタンパク質間相互作用は、媒体の屈折率に影響し、したがって、検出可能である。リガンド修飾したセンサー表面への分子結合は、検出した結合した分解質の量における小さな変化を可能とする結合した塊に比例する反応を生じる(低いピコグラムレベルまで)。技術は、10−5から10−12Mの範囲に亘る親和定数(KD)、103から107M−1s−1の間の親和性速度定数(ka)および10−1から10−6−1の間の分離速度定数(kd)を測定するために使用することができる(1−3)。
【0277】
本研究の目的は、2つの関連した受容体、および3つのmAbの間の相互作用の高解像度の動力学的特性に関するBIACORE T100表面プラズモン(Biacore, Inc.)共鳴装置を使用したことである。研究中の2つの受容体は、組換えrhTLR−2(組換えヒトTLR−2)およびrmTLR2/Fc(組換えネズミTLR−2)であった。
【0278】
<材料および方法>
<装置の準備>
あらゆるサンプルを実施する前、システムチェック(Biacore Preventative Maintenance Kit 2)を実施した。全てのシステム(試薬パンプ、屈折計、注射、ノイズ、混合およびバッファーセレクター)の試験に合格したことで、装置が製造者が設定した基準に従って作動することが示された。システムチェック後、脱着/消毒(Biacore Preventative Maintenance Kit 2)プログラムを、装置を清浄にするために実施した。
【0279】
<分析開発>
<システム調製>
CM5チップの挿入に応じて、システムは、BIAnormalizing solution(Biacore Preventative Maintenance Kit 2)で満たされ、正常化された。特に記載のない限り、全サンプルについて、25℃で試験した(サンプルラックを25℃でインキュベートした)。チップは、HBS−EP(ランニングバッファーとして使用)とともにシステムに投入した。チップ表面は、事前に30秒の50mM NaOHで2回処理し、安定した基準線が全てのフローセル(Fcs)内で得られるようにした。
【0280】
<サンプル調製>
T2.5ネズミ抗Toll様受容体2抗体(ハイブリドーマクローンT2.5 に由来するHyCult Biotechnology b.v., Cell Sciences, Canton,米国:カタログ番号1054)および本明細書に記載したOPN−305抗Toll様受容体2抗体の2つの抗体について分析を行った。双方のモノクローナル抗体は、補給品として保存され、全固定を実施するため、1μg.mL−1まで希釈された。受容体rhTLR−2およびrmTLR2/Fcを、乾燥粉末からHBS−EPを用いて最終濃度1000nMまで再構成し、4℃で保存した。キャリアタンパク質は、この溶液に添加しなかった。
【0281】
<固定条件および活性>
前記試験の結果に基づいて、最適な条件であることが示された条件に従って、この試験についての直接的な分析手段を選択した。速度実験に関して、固定したリガンドの量は、チップ表面での物質移動効果を防ぐために制限する必要がある。
【0282】
グリコシル化ヒト受容体分解質(rhTLR−2)については、平均分子量77.5kDa、リガンド(mAb)については150kDaおよび化学両論(Sm)を2として使用し、固定するのに理想的なリガンドの標的量は、145RUである。それが98kDaの分子量を有していても、この量での固定がネズミ受容体に適切である。
【0283】
標準のアミンカップリング剤を用いて、全ての抗体を固定した。固定は、10mM酢酸バッファーpH5.5中タンパク質濃度約1μg.mL−1で、標的反応レベル150RUまで3のCM5 Series Sセンサーチップにおいて実施された。速度データはあらゆる潜在的物質移動効果を最小にするため、流出速度40μL・mL−1で得られた。表面および2つの受容体の双方の安定性を動態解析について確認するため、ブランク(受容体なし)および単一の分解質濃度(100nM)を動力学的実施の開始で繰り返した。動態解析の繰り返しが実施され、結果を比較した。
【0284】
十分なシグナルの減少(3−10%)を動態周期の分離段階中に観測するため、分離を2000秒間測定した。
【0285】
<結果>
結果は図1に示す。会合速度(Kon)および分離速度(Koff)は、二価結合モデルを用いて算出された(BIAcore Evaluation Software version 3.2)。平衡解離定数(Ko)は、kn/konの比として算出された。
【0286】
【表1】

【0287】
結果は、OPN−305が、T2.5モノクローナル抗体より高い結合親和性でヒトToll様受容体2およびネズミToll様受容体2の双方に結合することを示す。図19は、OPN−305の完全なヒト化抗TLR2抗体およびT2.5ネズミ抗TLR2抗体のアミノ酸配列間の配列同一性を示すアライメントを示す。10%を超える配列同一性の相違が観測できる。さらに、図20は、OPN−305の完全なヒト化抗体の抗TLR2抗体およびT.5ネズミ抗TLR2抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。また、10%を超える配列同一性の相違が存在する。理論に抑制されることなく、発明者は、OPN−305抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列の変異は、T2.5ネズミ抗体に亘って、OPN−305抗体へのToll様受容体2の改良された結合特異性および親和性を与えることを予測する。
【0288】
〔実施例9−TLR2受容体占有調査〕
この実験は、TLR2に結合したとき、OPN−305モノクローナル抗体の生物活性を阻害するために必要とされる、最小の占有レベルを同定するために設計した。THP−1受容体細胞株を用いて結合に対する機能を観測した。特に、OPN−305の生物活性は、Pam3CSK4を誘発したTHP1−CD14細胞で評価した。
【0289】
<材料および方法>
THP1−CD14細胞を、ウェルあたり1×10細胞の濃度で12ウェルディッシュに播種した。Pam3Csk4(200ng/mL)の添加前、OPN−305は、ウェルに様々な濃度(0.000488μg/mLから2μg/mLの範囲)で添加した。細胞は、一晩、38℃でインキュベートした。NF−κBによって促進されるSEAP活性は、160μL Quantiblue(Invivogen)試薬と熱不活性条件の培地を90分間、37℃でインキュベートし、650nmの吸光度により測定された。
【0290】
OPN305のTHP1−CD14細胞における受容体の占有率を測定するため、THP1−CD14青色細胞は、FACSチューブ(1×10/チューブ)に配置し、FcRは、抗CD32ブロッキング試薬(Mitenyl Biotec)で15分間ブロックした。細胞は、様々な濃度(0.000488μg/mLから2μg/mL)のOPN−305で15分間、室温にて標識された。洗浄後、細胞は、RPE結合した抗ヒトIgG4で15分間、室温でインキュベートされた。最後の洗浄工程後、細胞は、1%BSA/PBS中の2%ホルモル生理食塩水(formol saline)で、採取前に固定した。特異的結合の割合は、一般式を用いて算出された:
【0291】
【数1】

【0292】
<結果>
結果は、図21A,BおよびCに示す。これらの結果は、Pam3Csk4で処理した後、NF−κB活性の阻害が用量依存的な方法で、観測されたことを示す(図21AおよびB)。OPN−305は、ほぼ完全にNF−κB活性を濃度2μg/mLで阻害する(図21C)。THP1−CD14細胞におけるOPN−305の特異的結合の割合は、前記一般式を用いて算出された。
【0293】
THP−1細胞での飽和性結合実験は、同じ細胞集団における生物活性の阻害に関連する。TLR2依存的なシグナリングの完全な阻害は、最大より少ない受容体結合で達成できる。これは複合系であり、TLR2レベルが、優位にヘテロ二量体パートナーTLR1およびTLR6より高いと考えられる。受容体の占有は、TLR2の飽和性結合をモノマーまたはヘテロ二量体として調査した。遊離TLR2がパートナーを見出す確率を減少させて、機能的シグナリング複合体が形成されるため、TLR2の十分な中和は、受容体の100%未満の占有で、明らかな生物活性の欠如の原理となり得ると考えられる。
【0294】
〔実施例10−OPN−305抗体がTLR2依存シグナリングの競合的または非競合の阻害剤として働くかを決定する〕
<材料および方法>
THP1 CD14青色細胞を、ウェルあたり100,000細胞で96ウェルプレートに播種した。細胞は、0,1,10および100ng/mLのOPN−305で、一時的に様々な投与量のPam3Csk4で一晩、37℃で刺激する前に前もってインキュベートした。上清40μLを取り除き、65℃で10分間、熱不活性化した。NF−κBによって促進されるSEAP活性は、160μLQuantiblue(Invivogen)試薬と熱不活性条件の培地を90分間、37℃でインキュベートした後、650nmの吸光度より測定された。細胞に基づく分析における受容体は酵素と同様に反応することを仮定し、V(NF−κB活性)に対するS[Pam3CSK4]並びに二重逆数のラインウィーバー・バークプロット(1/v対1/s)をプロットした。
【0295】
<結果>
結果は図22に示し、図22Aは、NF−κBに依存するSEAP活性に対する[Pam3CSK4]を示す。一方、図22Bは、1/Vに対する1/Sのラインウィーバー・バークプロットを示す。
【0296】
これらの結果は、リガンド濃度が上昇し、用量反応曲線の典型的な右側への移動が観測されたことを示す(図22A)。ラインウィーバー・バークプロット(図22B)の分析は、低いリガンド濃度で競合機構を示す、リガンドがある閾値を越えた場合、動態が変化することを示唆する。出力が生物活性であり、これは、TLR2/リガンドの相互作用のみでなく、有力な二量体シグナリング複合体を生じるTLR1またはTLR6の形成に依存するため、阻害効果の性質を確定することが、細胞における課題である。一般的に公開されているデータベースを使用する発現プロフィール分析は、TLR2がTLR1またはTLR6と著しく過剰に存在することを示唆し、これはパートナー分子の滴定効果の二相反応としての可能性を説明することができる。
【0297】
〔実施例11−OPN−305のTLR2へのライゲーションが他のTLR2リガンドへの反応を変えるかの測定〕
この実験は、OPN−305によるTLR2の阻害が、他のTLRの相当するそれらリガンドに影響するかを考慮した。
【0298】
<材料および方法>
THP1 CD14青色細胞を、ウェルあたり25,000細胞で384ウェルプレートに播種した。様々な投与量の異なるToll様受容体リガンド拮抗剤で刺激する前、細胞は、120分間、0,1,10および100ng/mLのOPN−305またはヒトIgG4アイソタイプコントロール抗体で前もってインキュベートした。一晩、HEK青色検出用培地を用いて検出した後、NF−κBによって促進されるSEAP活性は、調整済みの培地中で直接測定した。
【0299】
フラジェリンは、TLR5リガンドとして、ウルトラピュアLPSは、TLR4リガンドとして、Pam3CSKおよびFSL−1は、TLR2リガンドとして使用した。
【0300】
<結果>
結果は、図23A,BおよびCに示す。OPN−305にさらされていないコントロール細胞と比較した場合、フラジェリン(図23C)およびLPS(図23B)への反応は、不変であった。予期したように、Pam3CSKおよびFSL−1の介在によるTLR2活性反応は、OPN−305によってブロックされた(図23A)。OPN−305にさらされていないコントロール細胞と比較した場合、フラジェリンおよびLPSへの反応は、不変であった。予期したように、Pam3CSKおよびFSL−1の反応は、OPN−305によってブロックされた。これは、OPN−305が、あらゆる予期しないTLR4またはTLR5のリガンドへの反応性の増減をもたらさないことを示唆する。
【0301】
〔実施例12−敗血症治療におけるOPN−305の使用〕
<材料および方法>
雌BALB/cマウスの群(n=4)は、100μgPam3Csk4処理30分前、OPN−305モノクローナル抗体で10mg/kg,2mg/kg、および0.4mg/kg、30分間処理した。全ての治療は、腹腔内投与によって実施された。4時間後、マウスを致死麻酔で屠殺し、血液を抽出した。血清を取り出し、サイトカイン濃度を、ELISAによって測定した。血清は、KC,IL−12p40については1/10、IL−6 ELISAについては1/5希釈して使用した。
【0302】
<結果>
結果を図24A,BおよびCに示す。OPN305は、Pam3Csk4によって誘発した敗血症を阻害することを示す。低い投与量(0.4mg/kg)の抗TLR2 OPN305は、Pam3Csk4によって誘発されたサイトカインをマウスで著しく阻害することができる。
【0303】
陽性効果が同じコンパートメントに導入した抗体、および拮抗剤の結果でないことを確実にするため、OPN305抗体の静脈内投与のみを用いて、その後、TLR2拮抗剤Pam3CSKの腹膜内注射によって、この実験をOPN−305でも繰り返した。
【0304】
実験の結果を図25AおよびBに示す。結果は、OPN−305モノクローナル抗体が、Pam3Csk4によって誘発された敗血症を阻害することを示す。この結果は、前記実験と同様であり、これは、全身に導入したOPN−305が、Pam3CSKの腹膜内投与に対する反応に応じて、血清サイトカインの産生を阻害することができることを示す。
【0305】
〔実施例13−OPN−305モノクローナル抗体のラット細胞で発現したTLR2への結合〕
<材料および方法>
NR8333細胞は、ATCCから購入され、ATCCの指示に従ってFK12培地で培養した。細胞は、ラット特異的抗CD32(マウスIgG1)で10分間、室温でブロックした。細胞は、OPN305(またはアイソタイプ)で15分間処理し、洗浄し、RPE抗ヒトIgG4で検出し、採取前2%ホルモル生理食塩水で固定した。NR8383細胞は、ポリクローナルラビット抗ラットTLR2抗体でも染色し、Alexa−Fluor 488抗ラビットIgGで検出した。
【0306】
<結果>
結果は、TLR2がラット肺胞マクロファージ(NR8383)で発現されていて、OPN305を用いて検出されたことを図26に示す。(A)無染色細胞、(B)陽性対象;ポリクローナルラビット抗ラットTLR2一次抗体、二次抗対は抗ラビットAlexa−Fluor 488;(C)ポリクローナルヒトIgG4で処理した細胞、二次抗体は、ヒト抗IgG4 PEであった;(D)OPN305染色した細胞、二次抗体抗ヒトIgG4 PE。
【0307】
〔実施例14−OPN−305モノクローナル抗体のブタ細胞で発現するTLR2への結合〕
<材料および方法>
フィコールを用いて、ブタPBMCを血液から精製した。細胞数を計数し、チューブあたり1×10細胞で配置した。ブタ用の特定のCD32ブロッキング剤の不存在下において、細胞は、PBS中50% FCS/BSAマトリックスのヒト抗CD32を用いて、10分間、ブロックした。細胞は、OPN305(またはアイソタイプコントロール)で15分間、室温でインキュベートした。1H11(マウス抗ブタTLR2、Javier Dominguezからの寄贈)は、陽性対象として使用された。洗浄後、細胞はRPE結合した抗ヒトIgG4で、15分間、室温でインキュベートした。最終洗浄工程後、細胞を固定し、採取し、分析した。
【0308】
<結果>
結果を図27に示す。TLR2は、ブタPBMCで発現があり、OPN305で染色された。PBMCは、フィコールを用いた分離によって精製した。A−Cは、Pig 666からのPBMC、D−Fは、Pig 488からのものを示す。A,Dは無線色;B,Eは、コントロールポリクローナルヒトIgG4抗対で標識し、その後、PE標識した抗ヒトIgG4で二次染色した;C,Fは、OPN305、その後PE標識した抗ヒトIgG4で染色した。
【0309】
本明細書に記載の全ての文書は、ここに参照として取り入れる。本発明の記載した実施形態への様々な修正変更が、発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者に明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載したものであるが、主張するような本発明は、このような特定の実施形態に過度に制限すべきでないことを理解すべきである。実際、当業者に明白な記載の本発明の実施形態の様々な変更が当業者に明らかであり、本発明の対象とすることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1のアミノ酸配列を有する軽鎖の可変領域および/または配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域を含み、
Toll様受容体2に特異的に結合する、Toll様受容体2の中和抗体またはその抗原結合部位。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合部位は、CD32(Fcγ受容体II)に結合しない、請求項1に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合部位は、CD32a(Fcγ受容体IIa)に結合しない、請求項1に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項4】
軽鎖の可変領域は、免疫グロブリンGのサブクラスのアイソタイプ4(IgG4)の抗体由来の定常領域に結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項5】
重鎖の可変領域は、免疫グロブリンGのサブクラスのアイソタイプ4(IgG4)の抗体由来の少なくとも1つの定常領域に結合する、請求項1から4のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項6】
重鎖のヒンジ領域のアミノ酸残基241は、セリン残基からプロリン残基(S241P)に置換される、請求項1から5のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項7】
軽鎖は、配列番号:2のアミノ酸を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項8】
抗体は、配列番号:5のアミノ酸配列を有する重鎖を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項9】
抗体は、完全なヒト化抗体である、請求項1から8のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項10】
抗体は、単離された抗体である、請求項1から9のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項11】
抗体は、免疫抱合体、脱フコシル化抗体および二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項12】
抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgAから選択されるアイソタイプの全長抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項13】
哺乳類Toll様受容体2と1×10−8以下のKで結合する、請求項1から12のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項14】
哺乳類Toll様受容体2は、ヒトToll様受容体2である、請求項13に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項15】
抗体は、1×10−8以下のKでヒトToll様受容体2と結合する、請求項14に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項16】
抗体は、抗体模倣剤である、請求項1から15のいずれか一項に記載のToll様受容体2の中和抗体。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体由来であり、
Fab断片またはscFvである、Toll様受容体2の中和抗原結合断片。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位、並びにパートナー分子を含み、
前記パートナー分子は少なくとも1つの治療薬である、抗体−パートナー分子複合体。
【請求項19】
Toll様受容体2に特異的に結合してToll様受容体2の機能に拮抗し、
前記拮抗は、抗体のCD32(Fcγ受容体II)への結合とは独立して介在され、
Toll様受容体2の細胞外領域に結合し、
配列番号:1の配列または配列番号:1のアミノ酸配列の少なくとも20アミノ酸に亘って少なくとも90%アミノ酸配列の同一性を有する配列の軽鎖の可変アミノ酸配列と、配列番号:4の配列または配列番号:4のアミノ酸配列の少なくとも20アミノ酸に亘って少なくとも90%アミノ酸配列の同一性を有する配列の重鎖の可変アミノ酸配列と、を含む、
単離された抗体またはそれに由来する抗原結合断片。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位をコード化する、単離された核酸分子。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項22】
請求項21に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項23】
抗体を請求項22の宿主細胞で発現する工程および
宿主細胞から抗体を単離する工程を備える、
請求項1から19のいずれか一項に記載のToll様受容体2抗体を調製する方法。
【請求項24】
少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアと組み合わせた、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を含む、医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を、治療有効な量で、その治療の必要のある対象に生体内で(in vivo)または生体外で(ex−vivo)投与する工程を備える、Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患を治療または予防する方法。
【請求項26】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、眼疾患、ブドウ膜炎または加齢性黄斑変性症、腎臓炎症、糖尿病からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Toll様受容体2活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患の治療用薬剤の調製への、請求項1から19に記載の抗体またはその抗原結合部位の使用。
【請求項28】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、ブドウ膜炎または加齢性黄斑変性症等の眼疾患、腎臓炎症、糖尿病からなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
Toll様受容体2活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患の治療または予防に使用される、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位。
【請求項30】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、眼疾患、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性症、腎臓炎症および糖尿病からなる群から選択される、請求項29に記載の抗体またはその抗原結合部位の使用。
【請求項31】
対象の固形臓器移植と関連のある虚血再かん流障害に関与するToll様受容体2(TLR2)発現細胞または組織内のTLR2の活性を減少させる方法であって、
前記細胞または組織を、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位の治療有効量に十分に接触させ、
前記細胞または組織内のTLR2の1つ以上の生物活性を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項32】
Toll様受容体2(TLR2)に介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患に関与するTLR2発現細胞または組織内のTLR2の活性を減少させる方法であって、
前記細胞または組織を、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位の治療有効量に十分に接触させ、
前記細胞または組織内のTLR2の1つ以上の生物活性を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項33】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体、その抗原結合断片、または前記抗体の軽鎖もしくは重鎖を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項34】
モノクローナル抗体OPN−305によって結合する、Toll様受容体2の細胞外領域に存在する同じエピトープに特異的に結合する、T2.5として市販される抗体ではない、モノクローナル抗体、抗体由来の結合断片、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド模倣剤または有機化合物。
【請求項35】
化合物に特異的に結合するエピトープは、配列番号:13および/または配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項34に記載のモノクローナル抗体、抗体由来の結合断片、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド模倣剤または有機化合物。
【請求項36】
請求項1から19のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を、同等品の使用指示とともに含む、キット。
【請求項37】
配列番号:1のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる軽鎖の可変領域および配列番号:2のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる重鎖の可変領域を含み、
哺乳類Toll様受容体2に特異的に結合し、少なくとも1のToll様受容体2の機能活性に拮抗し、
CD32に結合しない、完全なヒト化モノクローナル抗体。
【請求項38】
前記抗体は、配列番号:4のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる軽鎖および配列番号:5のアミノ酸配列からなるか、実質的にそれからなる重鎖を含む、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
抗体は、ヒトToll様受容体2、マウスToll様受容体2およびサルToll様受容体2に特異的な結合を有する、請求項37または38に記載の完全なヒト化抗体。
【請求項40】
請求項37から39のいずれか一項に記載の抗体由来の抗原結合断片。
【請求項41】
前記断片は、Fab断片またはscFvである、請求項40に記載の抗原結合断片。
【請求項42】
請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位をコード化する、単離された核酸分子。
【請求項43】
請求項42に記載された核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項44】
請求項43に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項45】
請求項44に記載の宿主細胞中の完全なヒト化抗体を発現させる工程、および宿主細胞から抗体を単離する工程を備える、請求項37から40のいずれか一項に記載の抗Toll様受容体2の調製方法。
【請求項46】
請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位を、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアと組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項47】
請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位を、治療への有効量、治療の必要のある対象に生体内に(in vivo)または生体外に(ex−vivo)投与する工程を備える、Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫状態または疾患を治療または予防する方法。
【請求項48】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、ブドウ膜炎または加齢性黄斑変性症等の眼疾患、腎臓炎症、糖尿病からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患を治療するための薬剤の調製における、請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位の使用。
【請求項50】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、眼疾患、ブドウ膜炎加齢性黄斑変性症、腎臓炎症または糖尿病からなる群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患の治療または予防に使用される、請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位。
【請求項52】
前記炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患は、慢性関節リウマチ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー反応、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化および虚血再かん流傷害、臓器移植から生じる虚血再かん流、眼疾患、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性症、腎臓炎症または糖尿病からなる群から選択される、請求項51に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位の使用。
【請求項53】
対象の固形臓器移植と関連のある虚血再かん流障害に関与するToll様受容体2(TLR2)発現細胞または組織内のTLR2の活性を減少させる方法であって、
前記細胞または組織を、請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位の治療有効量に十分に接触させ、
前記細胞または組織内のTLR2の1つ以上の生物活性を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項54】
Toll様受容体2(TLR2)に介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患に関与するTLR2発現細胞または組織内のTLR2の活性を減少させる方法であって、
前記細胞または組織を、請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位の治療有効量に十分に接触させ、
前記細胞または組織内のTLR2の1つ以上の生物活性を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項55】
請求項37から40のいずれか一項に記載の完全なヒト化抗体またはその抗原結合部位を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項56】
抗体は、1×10−8以下のKで哺乳類Toll様受容体2と特異的に結合するが、CD32(Fcγ受容体II)に結合せず、
抗体は、T2.5として市販される抗体によって、Toll様受容体2の細胞外領域に存在する同じエピトープに特異的に結合する、
ヒト化中和抗体またはその抗原結合部位。
【請求項57】
哺乳類Toll様受容体2と1×10−8以下のKで結合し、CD32(Fcγ受容体II)と結合せず、
エピトープは、参照抗体に認識され、
前記参照抗体は、配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域および配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域を含む、
単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部位。
【請求項58】
哺乳類Toll様受容体2に特異的に結合し、下記の特徴を示す、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部位:
−1×10−8以下のKで哺乳類Toll様受容体2と結合し、
−CD32(Fcγ受容体II)と結合せず、
−ヒトToll様受容体2、ネズミToll様受容体2およびサルToll様受容体2と交差反応する。
【請求項59】
抗体は、免疫抱合体、脱フコシル化抗体および二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項55から57のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項60】
抗体は、IgG1,IgG2,IgG3,IgG4またはIgAから選択されるアイソタイプの長鎖抗体である、請求項55から59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
請求項55から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位をコード化する単離された核酸分子。
【請求項62】
請求項61に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項63】
請求項62に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項64】
請求項63に記載の宿主細胞に抗体を発現させる工程、および宿主細胞から抗体を単離する工程を備える、請求項55から60のいずれか一項に記載の抗Toll様受容体2抗体の調製方法。
【請求項65】
薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアと組み合わされた、請求項55から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を包含する医薬組成物。
【請求項66】
請求項55から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を、治療への有効量、その治療の必要のある対象に生体内で(in vivo)または生体外で(ex−vivo)投与する工程を備える、Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患を治療または予防する方法。
【請求項67】
Toll様受容体2の活性によって介在される炎症、呼吸もしくは自己免疫の状態または疾患の治療または予防に使用される、請求項55から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位。
【請求項68】
請求項55から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部位を産生する、ハイブリドーマ細胞株。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15(A)】
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【図15(B)】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2012−531922(P2012−531922A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518974(P2012−518974)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059677
【国際公開番号】WO2011/003925
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510001962)オプソナ セラピューティクス リミテッド (5)
【Fターム(参考)】