説明

U字溝切断装置の走行ガイドシステム

【課題】 スプロケットホイールとチェーン方式を採用し、直線部でも、曲線部でも、U字溝切断装置をスムースに走行できる走行ガイドシステムの提供。
【解決手段】 直線部に付設される所定長さの走行ガイドシステムブロック1と、曲線部に付設され前記直線部とは異なる長さの走行ガイドシステムブロック2とからなり、それらの両走行ガイドシステムブロック1、2はいずれもU字溝3の幅の中心線上に固定されており、そして前記両走行ガイドシステムブロック1、2は両側面にガイド部を有する直線型の走行レール4と、その走行レール4の両端を連結するための案内爪21、22と、前記ガイド部で回転し、そして前記切断装置に付設されたガイドローラと、前記走行レール4の両端部の上部に付設されて同軸の上下2個からなる受け側および送り用スプロケットホイール16、17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、U字溝切断装置を走行させるための走行ガイドシステムに関し、特に曲線部で回転半径が多岐に亘って変化する内幅の狭いU字溝の走行ガイドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内幅の狭いU字溝(例えば内幅300〜750mm)の内部に付設する切断装置の走行ガイドシステムは、走行経路には、直線部は勿論、回転半径が多岐に亘る曲線部も多く存在する。また、U字溝の内部は、付設スペースが狭く、冷却水の廃水処理等の環境状態も悪いという問題がある。併し、一般機械に較べて、曲線部での回転半径は比較的に大きく(例えば、5mR以上)、走行速度も比較的に遅い(例えば、0.5m/min)。加えて、一般機械では、通常、恒久的な設備が多いため、或程度の投資が許される場合が多いが、上記のU字溝切断装置の走行ガイドシステムは、切断作業の場所が、恒久的ではなく、逐次、移動するという一時的なものの為に、布設作業の容易性、布設材料の運搬の利便性、投資額の制限等の点から、簡便な走行ガイドシステムが望まれるという問題がある。現在、内幅の狭いU字溝切断装置の走行システムに関する特許文献は見あたらないが、一般機械の走行システムとしては、特許文献1及び特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、それぞれ、果樹園や自動機・各種加工機の固定式の走行ガイドシステムに使用されるもので、何れもピニオンラック方式で、直線部走行は勿論、曲線部の走行も出来る構造となっている。併し、何れも、曲線部では、多くの違った回転半径のレールが必要であり、多岐に亘る曲線部が多く、常に移動して切断作業を進めるU字溝切断装置の様な走行ガイドシステムに適用するには、多く種類のレールを準備する必要があり、運搬も煩雑で、費用の点からも問題がある。
【特許文献1】特開平8−169333公報
【特許文献2】特開平10−324237公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の問題を解決するため、スプロケットホイールとチェーン方式を採用し、直線部でも、多岐に亘る回転半径を持つ曲線部でも、長さのみ異なる2種類の直線型走行ガイドシステムブロックを連結する事によって、簡単で、U字溝切断装置をスムースに走行できる走行ガイドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、U字溝(3)の上部を切断する切断装置(31)を、該U字溝(3)に沿って走行させるためのU字溝用走行ガイドシステムにおいて、直線部に付設される所定長さの走行ガイドシステムブロック(1)と、曲線部に付設され前記直線部とは異なる長さの走行ガイドシステムブロック(2)とからなり、それらの両走行ガイドシステムブロック(1、2)はいずれもU字溝(3)の幅の中心線上に固定されており、そして前記両走行ガイドシステムブロック(1、2)は両側面にガイド部(6)を有する直線型の走行レール(4)と、その走行レール(4)の両端を連結するための案内爪(21、22)と、前記ガイド部(6)で回転し、そして前記切断装置(31)に付設されたガイドローラ(11)と、前記走行レール(4)の両端部の上部に付設されて同軸の上下2個からなる受け側および送り用スプロケットホイール(16、17)とを備え、その送り用スプロケットホイール(16)は上下の2個が同時に回転可能であり、受け側スプロケットホイール(17)は上下の2個が別個に回転可能であり、それらの下側の送り用スプロケットホイール(16b)の間を連結した送り用チェーン(18)を備え、前記切断装置(31)の送り用駆動装置(34)の出力軸(35)に連結された上下の2個の駆動用スプロケットホイール(24)が設けられ、その下側のスプロケットホイール(24b)が送り用チェーン(18)と噛合っており、さらに前記送り用の上側のスプロケットホイール(16a)と前記受け側の上側スプロケットホイール(17a)とが渡りチェーン(30)で連結されている。
【発明の効果】
【0006】
したがって本発明によれば、直線部は勿論、多岐に亘る回転半径を持つ曲線部でも、複数の適切な長さの走行ガイドシステムブロックの直線型レールを連結するだけで、スムースに走行できると共に、狭い内幅のスペースで、切削後の廃水処理等の環境の悪いU字溝内で、簡単な構造で、持ち運びが便利で、据付が容易であるという効果がある。
【0007】
また本発明によれば、走行ガイドシステムブロック間で、曲線部の通過時に生ずる駆動用スプロケットホイルの位置の補正を自動的に行うことが出来る補正装置により解消でき、安全で、スムースな走行が実現できるという効果がある。
【0008】
さらに本発明によれば、走行ガイドシステムブロック間を連結する案内爪を設置することで、曲線部の通過時に、継ぎ目でのガイドローラの噛込みを防止し、スムースな走行が出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
U字溝切断装置については、本出願人により、すでに特願2005−5903として提案された。その切断装置31は、大別して、U字溝を切断する切断機本体32と、切込を行うための切込駆動装置33と、該切断装置を走行するための送り駆動装置34より構成される。本発明の走行ガイドシステムは、前記送り駆動装置34の出力側に設置された駆動用スプロケットホイル24の回転によって、前記切断装置31を作動させながら走行させるものである。ここでは、その切断装置31を用いた例につき、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の全体配置を示す平面図である。U字溝切断装置31の走行ガイドシステムは、U字溝の直線部で適用する走行ガイドシステムブロック1と、曲線部で適用する複数の走行ガイドシステムブロック2とより構成されている。走行ガイドシステムブロック1は、輸送が便利な様に適当な長さ(例えば、2m)に分割され、また、走行ガイドシステムブロック2は回転半径を考慮して、適当な長さ(例えば、回転半径5m以下の時、1m)に分割され、複数の走行ガイドシステムブロック2(例えば、回転半径5m、90度の走行範囲の場合9ブロック)より構成される。該走行ガイドシステムブロック1と2は構造は全く同じで、長さのみが異なる。
【0011】
図2は、前記走行ガイドシステムブロックの平面詳細図、図3は、その正面詳細図を示す。上述の如く、前記両走行システムブロック1、2は長さが異なるのみで、両者の構成は全く同じであるため、図2は、代表して走行ガイドシステムブロック1についてのみ構成を述べる。図において、符号3はU字溝、符号4は走行レールを示し、その走行レール4は、角鋼管5と、その角鋼管5の両側面5a、5bに溶接によって接合された一対の等辺山形鋼からなるガイド部6,6とで構成され、そのレール4を構成する角鋼管5の底面は、ジャッキ7の中央固定部8の上面に固着されている。ジャッキ7は、中央固定部8とその中央固定部8から左右両方向に伸縮する伸縮部9、9と、その伸縮部9,9の両端部の押圧部材10、10とで構成され、前記伸縮部9に伸張方向の力を与えることで、左右双方の前記押圧部10、10がU字溝3の内部側面3aの高さ方向の所定の位置を押圧して、両ジャッキ7、7に固着したレール4のU字溝3の内部側面3aの高さ方向における位置が決定されるように構成されている。切断装置31の架台脚の先端に取り付けられた4個のガイドロ−ラ11は前記レール4のガイド部6、6に係合し、そのレール4に沿って走行する。前記レール4の両端部上面の送り側(図の左側)と受け側(図の右側)には、それぞれ、スプロケット座12、13が固着され、該スプロケット座12、13には、それぞれ軸14、15を介して、スプロケットホイール16、17が回転自在に取り付けられている。それらのスプロケットホイール16、17は送り用チェーン18と噛み合い連結され、その送り用チェーン18の両端は、それぞれ、緊縮装置19、20により、伸張して固定されている。また、前記走行レール4の両端は、隣接する走行ガイドシステムブロックを連結するための案内爪21、22が溶接により固着されている。
【0012】
図4は、走行ガイドシステムブロック間の継ぎ部近傍の平面詳細図で、(a)及び(b)図は、それぞれ、直線部と曲線部での状態を示す。図5は、図5−(a)のA−A断面矢視図を示す。これらの図において、直線部の走行ガイドシステムブロック1と、曲線部の走行ガイドシステムブロック2の連結構造が示されている。前記の送り側のスプロケットホイール16は、上側と下側の2個のスプロケットホイール16a、16bよりなり、別個に回転可能な構造となっている。
また、前記の受け側のスプロケットホイール17は、上側と下側の2個のスプロケットホイール17a、17bよりなり、同時に回転可能な構造となっている。走行ガイドシステムブロック1、2とも、送り用チェーン18は、上記の受け側と送り側のスプロケットホーイル16、17の下側のスプロケットホイール16bと17bの間に噛み合わされて、送り用チェーン18の両端の前記緊縮装置19、20で緊張して固定され、切断装置31の送り駆動装置34の出力側に取り付けられ、上下2個より構成される駆動用スプロケットホイル24の中、下側のスプロケットホイール24aと噛み合い、切断装置31を走行させることになる。送り側の上側スプロケットホイール16aと受け側の上側のスプロケットホイール17aは、据付時に、渡りチェーン30と噛み合わされ、緊縮装置23により、緊張して連結される。また、曲線部での該渡りチェーン30の緩みを避けるため、チェーンガイド25、25が、前記レール4、4上に溶接され、曲線部での送り用チェーン18の緩みを修正できる様になっている。
【0013】
次に、継ぎ部の前記案内爪21、22の構造と連結状況について説明する。図6は案内爪19、20のイラスト図、図7は、継ぎ部の案内爪の連結状態を示す平面図、図8は、図7の断面矢視図を示す。2つの走行ガイドシステムブロック1と2は、それぞれの案内爪21,22をピン26によって連結されている。図7は、曲線部での接続を示すが、何れの場合でも、前記ガイド部6、6の表面は、連続した面で連結されるので、スムースな走行が出来ることになる。
【0014】
次に、曲線部における駆動用スプロケットホイール24の位置補正について説明する。
図9は直線部、図10は曲線部での切断装置31の位置と駆動用スプロケットホイールの位置との関係を示す。今、直線部における切断装置の中心線と駆動用スプロケットホイールの24の中心との距離をQとすると、曲線部ではPとなり、その差P−Q=Eだけ外れる事になり、Eの値は、図9から図10の間で変化するので、駆動用スプロケットホイール24の位置は、自動的に、Eだけ移動しなければ、切断装置の中心から外れて走行できなくなる。
【0015】
上述の理由によって、図9及び図10によって生ずるスプロケット位置の自動補正を行うため、切断装置31の送り駆動装置34の出力軸35に取り付けられたスプロケット位置補正装置の正面図とそのA−A矢視図はそれぞれ図11と図12に示す。図において、前記送り駆動装置34の出力軸35の先端に取付けられた歯車26は、次の歯車27と噛み合い、駆動用スプロケットホイール24を駆動する様になっている。前記出力軸35には、前記歯車26の上部にアーム28が取り付けられ、該アーム28は、前記出力軸35を中心として回転可能に構成され、該アーム28の先端はバネ29にて緊縮自在に出来る構造となっている。従って、曲線部の通過の際には、前記アーム28の回転により、駆動用スプロケットホイール24の中心は自動的に補正されて移動し、前記切断装置31の中心と常に一致するようになり、切断装置31は、前記走行ガイドシステムの前記レール4の上を、スムースに走行できるようになる。
【0016】
次に、切断装置31の走行時の動作について説明する。最初、走行ガイドシステムブロック1上にある時は、送り駆動装置34の出力側の駆動用スプロケットホイール24の下側の24bは、送り用チェーン4と噛み合っており、該駆動用スプロケットホイール24の回転により、切断装置31は、次の走行ガイドシステムブロック2の方向に走行する。該走行ガイドシステムブロックの渡り部では、前記駆動スプロケットホイール24の上側の24aと渡りチェーン30とが噛み合い、切断装置は走行を続ける。曲線部では、上述の様に、適宜、自動補正装置が作動し、スムースに走行が出来る。次の走行ガイドシステムブロック2に入ると、再び前記送り用チェーン18は前記駆動用スプロケットホイール24の下側24bと噛み合い、切断装置31は、走行ガイドシステムによって走行する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の全体配置を示す平面図。
【図2】走行ガイドシステムブロックの平面詳細図。
【図3】図2の正面図。
【図4】継ぎ部近傍の平面詳細図。
【図5】図4−a図の断面矢視図。
【図6】継ぎ部の爪のイラスト図。
【図7】継ぎ部の爪の連結状態を示す平面図。
【図8】図7の断面矢視図。
【図9】切断装置が、直線部を通過する時の説明図。
【図10】切断装置が、曲線部を通過する時の説明図。
【図11】駆動用スプロケットの位置補正装置正面図。
【図12】図11のA−A矢視図。
【符号の説明】
【0018】
1・・・直線部走行ガイドシステムブロック
2・・・曲線部走行ガイドシステムブロック
3・・・U字溝
4・・・走行レール
5・・・角鋼管
6・・・山形鋼
7・・・ジャッキ
8・・・ジャッキの中央固定部
9・・・伸縮部
10・・・押圧部材
11・・・ガイドローラ
12・・・スプロケット座
13・・・スプロケット座
14・・・軸
15・・・軸
16・・・スプロケットホイール
17・・・スプロケットホイール
18・・・送り用チェーン
19・・・緊縮装置
20・・・緊縮装置
21・・・案内爪
22・・・案内爪
23・・・緊縮装置
24・・・駆動用スプロケットホイル
25・・・チェーンガイド
26・・・歯車
27・・・歯車
28・・・アーム
29・・・バネ
30・・・渡りチェーン
31・・・切断装置
32・・・切断機本体
33・・・切込駆動装置
34・・・送り駆動装置
35・・・出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字溝の上部を切断する切断装置を、該U字溝に沿って走行させるためのU字溝用走行ガイドシステムにおいて、直線部に付設される所定長さの走行ガイドシステムブロックと、曲線部に付設され前記直線部とは異なる長さの走行ガイドシステムブロックとからなり、それらの両走行ガイドシステムブロックはいずれもU字溝の幅の中心線上に固定されており、そして前記両走行ガイドシステムブロックは両側面にガイド部を有する直線型の走行レールと、その走行レールの両端を連結するための案内爪と、前記ガイド部で回転し、そして前記切断装置に付設されたガイドローラと、前記走行レールの両端部の上部に付設されて同軸の上下2個からなる受け側および送り用スプロケットホイールとを備え、その送り用スプロケットホイールは上下の2個が同時に回転可能であり、受け側スプロケットホイールは上下の2個が別個に回転可能であり、それらの下側の送り用スプロケットホイールの間を連結した送り用チェーンを備え、前記切断装置の送り用駆動装置の出力軸に連結された上下の2個の駆動用スプロケットホイールが設けられ、その下側のスプロケットホイールが送り用チェーンと噛合っており、さらに前記送り用の上側のスプロケットホイールと前記受け側の上側スプロケットホイールとが渡りチェーンで連結されていることを特徴とするU字溝用走行ガイドシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−205958(P2006−205958A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22668(P2005−22668)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000107251)ジェーピーイー株式会社 (18)
【出願人】(502220403)株式会社スカイ・アーク (6)
【出願人】(000230836)日本興業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】