説明

UVナノインプリント成型体及びその製造方法

【課題】UVナノインプリント法で成型され、生産性が良く、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のUVナノインプリント成型体は、樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有する光酸発生剤と、カチオン反応系モノマーと、を含むカチオン系UV硬化樹脂を所定形状のキャビティを有する型に流入し、前記カチオン系UV硬化樹脂にUV光を照射することにより、前記カチオン系UV硬化樹脂を硬化させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品などに用いられるUVナノインプリント成型体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術は、射出成型では不可能なナノメータサイズからマイクロメータサイズの部品を、金型を使いて基材に転写する方法であり、UV(Ultra-Violet)ナノインプリント法と熱ナノインプリント法の2種類がある。UVナノインプリント法は、金型に流入したUV硬化樹脂にUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させて成型する方法であり、熱ナノインプリント法は、金型に流入した熱可塑性樹脂に熱及び圧力を加えて成型する方法である。UVナノインプリント法では、硬化時間が数秒程度で短いが、UV硬化樹脂材料の種類が少ない。一方、熱ナノインプリント法では、加熱冷却工程があるため、成形時間が比較的長いが、熱可塑性材料の種類が多い。このように、両ナノインプリント法にはそれぞれ長所・短所があるが、生産性を考慮すると、UVナノインプリント法が望ましい方法である。
【0003】
UVナノインプリント法に使用されるUV硬化樹脂としては、ラジカル反応によるアクリル系のUV硬化樹脂や、カチオン系UV硬化樹脂がある。カチオン系UV硬化樹脂は、ラジカル系UV硬化樹脂と比べて、耐熱性、密着性、酸素阻害(大気中で表面が硬化しない)が無いなどの優れた点がある(特許文献1)。
【0004】
カチオン系UV硬化樹脂の硬化反応を決定する要因は、光酸発生剤とモノマーの種類である。光酸発生剤は、UV光照射で酸を発生させるものであり、その酸の強度と反応速度は比例しており、酸の強度が強ければ、反応速度が速くなる。市販されている光酸発生剤の強度は、アニオンの種類で、例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート>ヘキサフルオロアンチモン>ヘキサフルオロホスフェートの順である。
【特許文献1】国際公開第2005/019299号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
UVナノインプリント法においては、硬化時間が短いことが要求され、さらに得られたナノインプリント成型体を光学部品に適用する場合は、併せて硬化後に変色が小さいことも要求される。カチオン系UV硬化樹脂に、硬化速度が速いテトラキスペンタフルオロボレートを適正量使用して硬化させると、硬化時に変色が発生することがある。あるいは、硬化時に変色しない場合でも、その後の加熱工程(加熱温度約150℃以上で数分)で変色が発生することがある。これは、高速硬化の光酸発生剤にUV光が照射されると強力な酸が発生して、この酸が硬化後のポリマーも酸分解するからであると考えられる。また、この変色については、ナノインプリント成型体の膜厚やUV光の照射強度に起因する。
【0006】
ヘキサフルオロアンチモンは、テトラキスペンタフルオロボレートよりは、酸分解による変色は少なく、硬化速度もテトラキスペンタフルオロボレートと大きな差はないが、アンチモンの毒性のために、その使用を規制することが想定される。その点ヘキサフルオロホスフェートは、酸分解に起因する変色がなく毒性も低いが、硬化速度がテトラキスペンタフルオロボレートと比べて数倍遅いので、スループットに直接影響を考慮すると使用することは難しい。このように、UVナノインプリント法で成型され、耐熱性、密着性、酸素阻害に優れると共に、生産性が良く、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体が望まれていた。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、UVナノインプリント法で成型され、生産性が良く、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のUVナノインプリント成型体は、カチオン系UV硬化樹脂を用いてナノインプリント技術により得られたUVナノインプリント成型体であって、前記カチオン系UV硬化樹脂は、カチオン反応系モノマーと、光酸発生剤とを含み、前記光酸発生剤は、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、テトラキスペンタフルオロボレートとヘキサフルオロホスフェートとを適正量含むカチオン系UV硬化樹脂を用いているので、UV光が照射された際に発生する酸によりポリマーが酸分解することなく、変色を防止できると共に、硬化速度を高めることが可能となり、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体を実現することができる。
【0010】
本発明のUVナノインプリント成型体においては、前記光酸発生剤は、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.1重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して2重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含むことが好ましい。
【0011】
本発明のUVナノインプリント成型体においては、前記UVナノインプリント成型体は、光学部品であることが好ましい。
【0012】
本発明のUVナノインプリント成型体の製造方法は、樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有する光酸発生剤と、カチオン反応系モノマーと、を含むカチオン系UV硬化樹脂を所定形状のキャビティを有する型に流入する工程と、前記カチオン系UV硬化樹脂にUV光を照射することにより、前記カチオン系UV硬化樹脂を硬化させて前記所定形状のナノインプリント成型体を得る工程と、を具備することを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、テトラキスペンタフルオロボレートとヘキサフルオロホスフェートとを適正量含むカチオン系UV硬化樹脂を用いているので、UV光が照射された際に発生する酸によりポリマーが酸分解することなく、変色を防止できると共に、硬化速度を高めることが可能となる。これにより、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のUVナノインプリント成型体は、カチオン反応系モノマーと、光酸発生剤とを含み、前記光酸発生剤は、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有するカチオン系UV硬化樹脂を用いるので、生産性が良く、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係るUVナノインプリント成型体は、カチオン系UV硬化樹脂を用いてナノインプリント技術により得られたものであり、カチオン系UV硬化樹脂が、カチオン反応系モノマーと、光酸発生剤とを含み、その光酸発生剤が、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有することを特徴とする。
【0016】
カチオン系UV硬化樹脂に含まれるカチオン反応系モノマーとしては、ビスフェノールA(又はビスフェノールF)グリシジルエーテル、脂環型エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル、フルオレンエポキシ、ナフタレンエポキシなどが挙げられる。
【0017】
カチオン系UV硬化樹脂に含まれる光酸発生剤は、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有する。テトラキスペンタフルオロボレートとヘキサフルオロホスフェートとを適正量含むことにより、UV光が照射された際に発生する酸によりポリマーが酸分解することなく、変色を防止できると共に、硬化速度を高めることが可能となる。これにより、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するUVナノインプリント成型体を得ることができる。特に、光酸発生剤は、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.1重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、カチオン系UV硬化樹脂全体に対して2重量%のヘキサフルオロホスフェートとを含むことが好ましい。
【0018】
カチオン系UV硬化樹脂は、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内で他の成分を含有しても良い。例えば、カチオン系UV硬化樹脂は、UVナノインプリント成型体を光学部品に適用する場合などには、高屈折率成分を含有させても良く、UV光の吸収率を高めるために、増感剤などを含有させても良い。
【0019】
上記カチオン系UV硬化樹脂を用いて成型されたUVナノインプリント成型体は、光導波路型照光フィルム、光導波路、レンズなどの光学部品に適用することができる。
【0020】
このように、本発明に係るUVナノインプリント成型体は、テトラキスペンタフルオロボレートとヘキサフルオロホスフェートとを適正量含むカチオン系UV硬化樹脂を用いているので、生産性が良く、光学部品として適用できるために十分な透明性を有するものである。また、このUVナノインプリント成型体は、カチオン系UV硬化樹脂を用いているので、耐熱性、密着性、酸素阻害のない優れた特性を持つ。
【0021】
次に、本発明のUVナノインプリント成型体の製造方法について説明する。本発明のUVナノインプリント成型体の製造方法においては、樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有する光酸発生剤と、カチオン反応系モノマーと、を含むカチオン系UV硬化樹脂を所定形状のキャビティを有する型に流入し、前記カチオン系UV硬化樹脂にUV光を照射することにより、前記カチオン系UV硬化樹脂を硬化させて前記所定形状のナノインプリント成型体を得る。
【0022】
UVナノインプリント成型体は、例えば、図1に示すようにして製造することができる。まず、図1(a)に示すように、所定形状のキャビティ(ここでは凹部)1aを有する金型1のキャビティ1a内にUV硬化樹脂2を流入する。次いで、図1(b)に示すように、金型1を真空下において(少なくともキャビティ1a領域を枠材3などで覆って真空下において)、真空脱泡を行うことにより、UV硬化樹脂2に含まれるエア2aを除去する。次いで、図1(c)に示すように、UV硬化樹脂2上に透明基材4を置く。次いで、図1(d)に示すように、ローラ5を押圧しながら透明基材4上を移動させてローラ5の押圧力によりUV硬化樹脂2の厚さを均一にする。その後、図1(e)に示すように、UV硬化樹脂2に対して光源6からUV光を照射してUV硬化樹脂2を硬化させる。そして、図1(f)に示すように、UV硬化後に、金型1から透明基材4を外すことにより、透明基材4と共にUVナノインプリント成型体2’が得られる。
【0023】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、UVナノインプリント成型体が光学部品に適用される場合について説明する。
(実施例1)
カチオン反応系モノマーとして、オキセタン(OXT101:東亜合成社製、商品名)を28重量%、オキセタン(OXT211:東亜合成社製、商品名)を7重量%含み、脂環式エポキシとして、CEL2021P(ダイセル工業社製、商品名)を20重量%含み、光酸発生剤として、テトラキスヘキサフルオロボレートPI2074(ローディア社製、商品名)を0.13重量%、ペンタフルオロホスフェート イルガキュアIRGA250(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を1.3重量%含み、高屈折率エポキシとして、ナフタレンHP4032(大日本インキ社製、商品名)を22重量%含み、フルオレン オグソールEG01(大阪ガス社製、商品名)を22重量%含み、増感剤として、イルガキュアIRGA184(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を0.4重量%含むカチオン系UV硬化樹脂を準備した。これらの組成比については、下記表1に示す。
【0024】
上記カチオン系UV硬化樹脂を用いて、図1に示すようにして、UVナノインプリント成型体を成型した。このとき、UV光の照射エネルギーを0mJ/cm、50mJ/cm、100mJ/cm、200mJ/cm、500mJ/cm、1000mJ/cmと変えてその硬化速度を調べた。その結果を図2に示す。なお、硬化速度(反応性の評価)においては、エポキシ系の場合、反応(重合)が進むとエーテル構造が増え、それに起因する1069cm−1の赤外線吸収が増加するので、赤外線分光計を用いて1069cm−1の吸収と、他の赤外線吸収(1222cm−1)とを調べ、1069cm−1の吸収を1222cm−1の吸収で規格化し、その結果を重合の度合として、硬化速度として評価した(図3参照)。すなわち、一定のUV光の強度でその吸収の増加量が時間当たり大きいほど硬化速度が速いことになる。
【0025】
また、上記のカチオン系UV硬化樹脂を用いて、UV光の照射強度を200mJ/cmでUV硬化してなるUVナノインプリント成型体を、温度260℃、2分間の鉛フリー半田のリフロー工程に供し、その際の変色を調べた。その結果を下記表1に併記した。変色の評価としては、目視で明らかな褐変が認められない場合を○とし、認められた場合を×とした。
【0026】
(実施例2)
カチオン反応系モノマーとして、オキセタン(OXT101:東亜合成社製、商品名)を27重量%、オキセタン(OXT211:東亜合成社製、商品名)を7重量%含み、脂環式エポキシとして、CEL2021P(ダイセル工業社製、商品名)を20重量%含み、光酸発生剤として、テトラキスヘキサフルオロボレートPI2074(ローディア社製、商品名)を0.14重量%、ペンタフルオロホスフェート イルガキュアIRGA250(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を2.7重量%含み、高屈折率エポキシとして、ナフタレンHP4032(大日本インキ社製、商品名)を21重量%含み、フルオレン オグソールEG01(大阪ガス社製、商品名)を21重量%含み、増感剤として、イルガキュアIRGA184(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を0.4重量%含むカチオン系UV硬化樹脂を準備した。
【0027】
実施例1と同様にして、得られたカチオン系UV硬化樹脂について、UV光の照射エネルギーを変えてUV硬化を行ってUVナノインプリント成型体を作製し、それらの硬化速度を調べた。その結果を図2に示す。また、実施例1と同様にして、カチオン系UV硬化樹脂を用いて得られたUVナノインプリント成型体の変色を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0028】
(比較例1)
カチオン反応系モノマーとして、オキセタン(OXT101:東亜合成社製、商品名)を28重量%、オキセタン(OXT211:東亜合成社製、商品名)を7重量%含み、脂環式エポキシとして、CEL2021P(ダイセル工業社製、商品名)を21重量%含み、光酸発生剤として、テトラキスヘキサフルオロボレートPI2074(ローディア社製、商品名)を0.14重量%含み、高屈折率エポキシとして、ナフタレンHP4032(大日本インキ社製、商品名)を21重量%含み、フルオレン オグソールEG01(大阪ガス社製、商品名)を21重量%含み、増感剤として、イルガキュアIRGA184(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を0.4重量%含むカチオン系UV硬化樹脂を準備した。
【0029】
実施例1と同様にして、得られたカチオン系UV硬化樹脂について、UV光の照射エネルギーを変えてUV硬化を行ってUVナノインプリント成型体を作製し、それらの硬化速度を調べた。その結果を図2に示す。また、実施例1と同様にして、カチオン系UV硬化樹脂を用いて得られたUVナノインプリント成型体の変色を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0030】
(比較例2)
カチオン反応系モノマーとして、オキセタン(OXT101:東亜合成社製、商品名)を28重量%、オキセタン(OXT211:東亜合成社製、商品名)を7重量%含み、脂環式エポキシとして、CEL2021P(ダイセル工業社製、商品名)を23重量%含み、光酸発生剤として、テトラキスヘキサフルオロボレートPI2074(ローディア社製、商品名)を0.54重量%含み、高屈折率エポキシとして、ナフタレンHP4032(大日本インキ社製、商品名)を21重量%含み、フルオレン オグソールEG01(大阪ガス社製、商品名)を21重量%含み、増感剤として、イルガキュアIRGA184(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を0.4重量%含むカチオン系UV硬化樹脂を準備した。
【0031】
実施例1と同様にして、得られたカチオン系UV硬化樹脂について、UV光の照射エネルギーを変えてUV硬化を行ってUVナノインプリント成型体を作製し、それらの硬化速度を調べた。その結果を図2に示す。また、実施例1と同様にして、カチオン系UV硬化樹脂を用いて得られたUVナノインプリント成型体の変色を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0032】
(比較例3)
カチオン反応系モノマーとして、オキセタン(OXT101:東亜合成社製、商品名)を28重量%、オキセタン(OXT211:東亜合成社製、商品名)を7重量%含み、脂環式エポキシとして、CEL2021P(ダイセル工業社製、商品名)を22重量%含み、光酸発生剤として、ペンタフルオロホスフェート イルガキュアIRGA250(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を2.6重量%含み、高屈折率エポキシとして、ナフタレンHP4032(大日本インキ社製、商品名)を21重量%含み、フルオレン オグソールEG01(大阪ガス社製、商品名)を21重量%含み、増感剤として、イルガキュアIRGA184(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名)を0.4重量%含むカチオン系UV硬化樹脂を準備した。
【0033】
実施例1と同様にして、得られたカチオン系UV硬化樹脂について、UV光の照射エネルギーを変えてUV硬化を行ってUVナノインプリント成型体を作製し、それらの硬化速度を調べた。その結果を図2に示す。また、実施例1と同様にして、カチオン系UV硬化樹脂を用いて得られたUVナノインプリント成型体の変色を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【表1】

【0034】
図2及び表1から分かるように、本発明に係るUVナノインプリント成型体(実施例1及び実施例2)は、テトラキスペンタフルオロボレートとヘキサフルオロホスフェートとが適正量で含まれているので、低い照射エネルギーで硬化が進んでおり、硬化速度が速くまた最終的な重合の度合いが高かった。また、本発明に係るUVナノインプリント成型体(実施例1及び実施例2)は、変色が非常に小さいものであった。一方、比較例1のUVナノインプリント成型体は、変色は小さいものの光酸発生剤としての効果が少なすぎ、硬化速度が遅く、また十分に照射エネルギーを与えても重合の度合いが高くならなかった。また、比較例2のUVナノインプリント成型体は、光酸発生剤としてテトラキスペンタフルオロボレートのみを用いているので、硬化速度が速いが、変色が発生した。また、比較例3のUVナノインプリント成型体は、光酸発生剤としてヘキサフルオロホスフェートのみを用いているので、変色は抑えられているが、硬化速度が遅く、重合の度合いも高くならなかった。また、実施例2と比較例3とを比較すると、実施例2の方が、光酸発生剤が半分程度と少なく光学特性に優れるにもかかわらず硬化速度も最終的な重合の度合いも高かった。
【0035】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。本発明は、図1に示すUVナノインプリント成型体の製造方法に限定されず、適宜変更して実施することができる。また、上記実施の形態においては、UVナノインプリント成型体が光学部品に適用される場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、UVナノインプリント成型体が他の用途に用いられる場合にも同様に適用することができる。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のUVナノインプリント成型体は、光導波路型照光フィルム、光導波路、レンズなどの光学部品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の実施の形態に係るUVナノインプリント成型体の製造方法を説明するための図である。
【図2】赤外線吸収を規格化した結果とUV照射エネルギーとの間の関係を示す図である。
【図3】赤外線吸収と波数との関係を示すIRチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 金型
2 UV硬化樹脂
2’ UVナノインプリント成型体
3 枠体
4 透明基材
5 ローラ
6 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン系UV硬化樹脂を用いてナノインプリント技術により得られたUVナノインプリント成型体であって、前記カチオン系UV硬化樹脂は、カチオン反応系モノマーと、光酸発生剤とを含み、前記光酸発生剤は、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有することを特徴とするUVナノインプリント成型体。
【請求項2】
前記光酸発生剤は、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して0.1重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記カチオン系UV硬化樹脂全体に対して2重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含むことを特徴とする請求項1記載のUVナノインプリント成型体。
【請求項3】
前記UVナノインプリント成型体は、光学部品であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のUVナノインプリント成型体。
【請求項4】
樹脂全体に対して0.01重量%〜0.2重量%のテトラキスペンタフルオロボレートと、前記樹脂全体に対して1重量%〜5重量%のヘキサフルオロホスフェートと、を含有する光酸発生剤と、カチオン反応系モノマーと、を含むカチオン系UV硬化樹脂を所定形状のキャビティを有する型に流入する工程と、前記カチオン系UV硬化樹脂にUV光を照射することにより、前記カチオン系UV硬化樹脂を硬化させて前記所定形状のナノインプリント成型体を得る工程と、を具備することを特徴とするUVナノインプリント成型体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−1419(P2010−1419A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162942(P2008−162942)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】