説明

W−CDMA信号のSCH解析装置

【課題】W−CDMA信号の各スロットに含まれるSCHのデータを解析する。
【解決手段】W−CDMA信号としての被測定信号aの1スロット分の測定信号20から信号レベルとデータとを有したSCH信号を求める。このSCH信号からP−SCH信号レベルLPとS―SCH信号レベルLSを求める。さらに、理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号を作成する。SCH信号から理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号を減算することにより、目的とする信号レベルとデータとを有したS―SCH信号及びP―SCH信号を独立して求める。
よって、各スロット9に含まれるS―SCH信号のデータ(ビットデータ)、及びP―SCH信号のデータ(ビットデータ)が求まり、表示器45に表示出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された被測定信号であるW−CDMA信号の各スロットに含まれるSCHを解析するW−CDMA信号のSCH解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代の移動通信システムにおける無線通信方式の一つとして、W―CDMA(Wideband Code Division Multiple Access 広帯域符号分割多元接続)が提唱されている。この通信方式を用いる場合、基地局と移動局(携帯端末)との間で送受される信号内には、W―CDMAの通信規格(3GPP)に従って送受信される多数のデータが多重化されて組込まれている。
【0003】
図9に、W―CDMAにおける送信側の各チャネルの送信データD0〜Dnの多重化手法を示す。例えばQPSK(Quadrature phase shift keying 4位相偏移変調)又は16QAM(Quadrature amplitude modulation)で位相変調された各チャネルの送信データD0〜Dnは、コード拡散部1においてそれぞれ異なる拡散コード(直交可変拡散符号)w0〜wnでコード拡散されたのち、加算器2で加算された後、乗算器3にてスクランブルコードが乗算さる。さらに、SCH付加部4内の加算器5でP−SCHが加算され、加算器6でS−SCHが加算される。なお、S−SCHはS−SCH更新部7でそのデータがスロット毎に毎回更新される。P−SCH及びS−SCHが加算された各送信データは、高周波回路8で高周波信号のW―CDMA信号に変換されて電波出力される。
【0004】
基地局から各携帯端末に送信される下りのW―CDMA信号(被測定信号a)は、図10に示す伝送フォーマットを有する。例えば10msの時間幅を有する1フレームは15個のスロット9で構成されている。各スロット9内には、このスロット9の長さ一杯に、コード拡散化されかつスクランブル化された送信(チャネル)データ13と、スロット9の先頭位置に送信(チャネル)データ13に加算されたP−SCH11とS―SCH10とからなるSCH12とが設けられている。
【0005】
ここで、SCH(Synchronization Channel)12はセルサーチ(時間検索)に利用される物理下りチャネルであり、このSCH12は、P−SCH(Primary SCH)11と、S−SCH(Secondary SCH)10との二つのサブチャネルから構成されている。
【0006】
P−SCH11は、全部のスロット9に対して同一値(ビットデータ)に設定されており、スロット9の同期に用いられる。一方、S−SCH10は、全部のスロット9に対してそれぞれ異なる値(ビットデータ)に設定されており、各スロット9の特定に用いられる。さらに、このS−SCH10はスクランブルコード(Scrambling Code)の同定にも使用される。
【0007】
したがって、基地局から携帯端末へ送信される下りのW―CDMA信号に含まれるP−SCH11、S−SCH10は、このW―CDMA信号を受信した各携帯端末にとって、スロット9の同期やスロット9の特定を実施する上で非常に重要な要素である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、W―CDMAの規格を採用した第3世代の移動通信システムやHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の規格を採用した第3.5世代の移動通信システムにおける基地局から各移動局(携帯端末)へ送信される電波の信号が上述したP−SCH11、S−SCH10、SCH12の規格(3GPP TS 25.213)に定められたデータ(ビットデータ)値を有していることを簡単に検証できるW−CDMA信号のSCH解析装置の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、入力された被測定信号であるW−CDMA信号における1スロット分の測定信号からP―SCHとS−SCHとからなるSCHのSCH信号を抽出することにより、このSCH信号から正確なP―SCH信号とS−SCH信号とを独立して求めることができ、スロット毎のP―SCH信号のデータ(ビットデータ)とS−SCH信号のデータ(ビットデータ)を求めて表示でき、W−CDMA信号の信号品質をより精度よく検証できるW−CDMA信号のSCH解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力された被測定信号であるW−CDMA信号の1フレームを構成する各スロットの先頭位置にチャネルデータに加算されたP−SCHとS―SCHとからなるSCHを解析するW−CDMA信号のSCH解析装置である。
【0011】
そして、上記課題を解消するために、本発明のW−CDMA信号のSCH解析装置においては、入力された被測定信号の1スロット分の測定信号を検出する信号検出手段と、この信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号から、SCHに相当する、信号レベルとデータとを有したSCH信号を抽出するSCH信号抽出手段と、このSCH信号抽出手段で抽出されたSCH信号からP−SCHに対応するP−SCH信号レベルとS−SCHに対応するS―SCH信号レベルとを検出する信号レベル検出手段と、S−SCH理想データとS―SCH信号レベルとから理想S―SCH信号を作成する理想S―SCH信号作成手段と、P−SCH理想データとP―SCH信号レベルとから理想P―SCH信号を作成する理想P―SCH信号作成手段と、SCH信号から理想S―SCH信号を減算することにより被測定信号のP―SCH信号を作成するP―SCH信号作成手段と、SCH信号から理想P―SCH信号を減算することにより被測定信号のS―SCH信号を作成するS―SCH信号作成手段と、P―SCH信号とS―SCH信号の各データ及び各信号レベルを解析結果として表示器に表示出力する解析結果出力手段とを備えている。
【0012】
このように構成されたW−CDMA信号のSCH解析装置においては、被測定信号における1スロット分の測定信号から信号レベルとデータとを有したSCH信号が求まる。さらに、このSCH信号からP−SCH信号レベルとS―SCH信号レベルが求まる。
【0013】
さらに、理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号が作成され、SCH信号から理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号を減算することにより、目的とする信号レベルとデータとを有したS―SCH信号及びP―SCH信号が独立して求まるので、各スロットに含まれるS―SCH信号のデータ(ビットデータ)、及びP―SCH信号のデータ(ビットデータ)が求まり解析結果として表示出力される。
【0014】
また、別の発明は、上述した発明におけるW−CDMA信号のSCH解析装置において、P―SCH信号のデータ及びS―SCH信号のデータと、P−SCH理想データ及びS−SCH理想データとそれぞれ比較して、P―SCH信号及びS―SCH信号の各データに含まれる誤り検出する誤り検出手段を有している。さらに、解析結果出力手段は、検出された各データに含まれる誤りを、解析結果の一つとして表示器に表示出力する。
【0015】
このように構成されたW−CDMA信号のSCH解析装置においては、各スロットに含まれるS―SCH信号のデータ(ビットデータ)の誤り、及びP―SCH信号のデータ(ビットデータ)の誤りが求まり表示出力される。したがって、このSCH解析装置の操作者(試験実施者)は、S―SCH信号、P―SCH信号のデータ(ビットデータ)のみならず、データ(ビットデータ)の誤りの有無を表示器の表示画面上で簡単に確認できる。
【0016】
また、別の発明は、上述した発明におけるW−CDMA信号のSCH解析装置における解析結果出力手段は、P−SCH信号の各ビットデータ及びS−SCH信号の各ビットデータが、P−SCH理想データの各ビットデータ及びS−SCH理想データの各ビットデータと不一致の場合、この不一致のビットデータを一致のビットデータに対して異なる表示色で表示する。
【0017】
このように構成されたW−CDMA信号のSCH解析装置においては、不一致のビットデータが一致のビットデータに対して異なる表示色で表示されるので、SCH解析装置の操作者(試験実施者)は、P−SCH信号及びS−SCH信号における各ビットデータのうち、どのビットデータが誤ったのかを一瞥して把握できる。
【0018】
また、別の発明は、上述した発明におけるW−CDMA信号のSCH解析装置において、SCH信号抽出手段で抽出されたSCH信号の信号レベルが予め設定されたしきい値に達しなかった場合、当初から当該スロットにSCHが設定されていないと判定する信号有無判定手段を設けている。
【0019】
このように構成されたW−CDMA信号のSCH解析装置においては、当初からSCHが設定されていないスロットも簡単に把握できる。
【0020】
また、別の発明は、上述した発明におけるW−CDMA信号のSCH解析装置におけるSCH信号抽出手段は、信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号をスクランブル解除するデータ解析部と、スクランブル解除された測定信号を逆拡散し各チャネルの送信データを復号する逆拡散部と、復号した送信データを再び拡散する拡散部と、拡散された送信データを再スクランブルするスクランブル部と、測定信号から再スクランブルされた送信データを減算してSCH信号を検出するSCH信号検出部とで構成している。
【0021】
また、別の発明は、上述した発明におけるW−CDMA信号のSCH解析装置において、理想S−SCH信号と理想P−SCH信号から理想SCH信号を作成する理想SCH信号作成部と、記信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号から理想SCH信号を減算しSCH信号抽出手段へ送出する減算部とを備えている。
【0022】
このように、一旦、作成された理想P―SCH信号と理想S―SCH信号とを加算して理想SCH信号を作成して、この理想SCH信号を用いて、P−SCH信号レベルとS―SCH信号レベルとを求めているので、最終的なP―SCH信号とS―SCH信号の解析精度が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、被測定信号における1スロット分の測定信号からP―SCHとS−SCHとからなるSCHのSCH信号を抽出し、このSCH信号から理想S―SCH信号及び理想P−SCH信号を減算することにより、正確なP―SCH信号とS−SCH信号とを独立して求めている。
【0024】
したがって、スロット毎のP―SCH信号のデータ(ビットデータ)とS−SCH信号のデータ(ビットデータ)を区別して求めて表示でき、W−CDMA信号の信号品質をより精度よく検証できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0026】
図1、図2は本発明の一実施形態に係るW−CDMA信号のSCH解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【0027】
この実施形態のW−CDMA信号のSCH解析装置には、基地局から出力されたW−CDMA信号からなる被測定信号aが入力される。この被測定信号aは、図9、図10で説明したように、QPSK又は16QAMの変調方式で変調された各チャネルの送信データD0〜Dnがコード拡散部1においてコード拡散されて、加算器2で加算され、スクランブルコードで再度拡散され、さらにSCH付加部4で、P−SCH11とS−SCH10とからなるSCH12が加算され、最後に高周波回路8で、高周波周波数に周波数変換されて、基地局から出力された図10に示す伝送フォーマットを有する一つの信号である。
【0028】
なお、基地局から出力されたW−CDMA信号からなる被測定信号aのなかには、図4(a)(b)に示すように、SCH12が当初から設定されていないスロット9も存在する。
【0029】
このSCH解析装置に入力されたW−CDMA信号からなる被測定信号aは、周波数変換部14で中間周波数に周波数変換された後、A/D変換部15でA/D変換される。A/D変換されたデジタルの被測定信号aはデータメモリ16へ書込まれる。
【0030】
このデータメモリ16は、図4(a)(b)に示す伝送フォーマットを有する被測定信号aの数フレーム分のデータを記憶することが可能である。このデータメモリ16に記憶された被測定信号aは相関部17へ入力される。この相関部17には、スロット9の先頭に設定されているP−SCH11及びS−SCH10の理想データ18(設定されている正しいデータ)が入力される。
【0031】
相関部17は、被測定信号aのデータとP−SCH11及びS−SCH10の理想データ18との相関を算出する。スロット位置検出部19は、相関結果を用いて、被測定信号aにおける各スロット9の先頭位置を求めて、被測定信号aにおける1スロット分の図3に示す測定信号20をデータメモリ16から読出して、1スロットメモリ21に書込む。より具体的には、被測定信号aの1フレームを構成する0番のスロット9から14番のスロット9を順番に読出して1スロットメモリ21に順番に書込む。
【0032】
図3に示す1スロット分の測定信号20において、SCH12の存在時間(区間)をTAとし、SCH(SCH信号)12の存在しない通信データ(チャネルデータ)13のみの時間(区間)をTBとし、SCH12の存在時間(区間)TAにおける通信データ(チャネルデータ)13の信号レベルをLDとし、SCH12の存在しない時間(区間)TBの信号レベルをLBとし、SCH(SCH信号)12のみの信号レベルをLCとする。さらに、P−SCH(P−SCH信号)11の信号レベルをLPとし、S−SCH(P−SCH信号)10の信号レベルをLSとする。
【0033】
1スロットメモリ21に書込まれた測定信号20は、減算部100において、理想SCH信号が減算されたのち、SCH信号抽出部25へ入力される。なお、最初は、理想SCH信号が減算部100に入力されないので、測定信号20は減算されずにそのままSCH信号抽出部25へ入力される。
【0034】
SCH信号抽出部25は、1スロット分の測定信号20から、SCH(SCH信号)12に相当する信号レベルLCとデータとを有したSCH信号を抽出する。次に、このSHC信号抽出部25の具体的動作を順番に説明していく。
【0035】
データ解除部としての逆スクランブル部26は、1スロットメモリ21に記憶された1スロット分の測定信号20におけるSCH12の存在時間(区間)TAをスクランブルコード101でスクランブル解除する。逆拡散部28は、スクランブル解除された測定信号20を拡散コード27を用いて逆拡散し元の各チャネルの送信データD0、…、Dnを復号する。チャネル判定部102は、復号された各チャネルの送信データD0、…、Dnのレベルがしきい値に達しているか判断する。
【0036】
拡散部103は、しきい値以上の各チャネルの送信データD0、…、Dnを拡散コード27を用いて再び拡散する。さらに、スクランブル部104は、この再拡散された送信データをスクランブルコード101を用いて再スクランブルし、SCH12の存在期間TAにおける信号レベルLDとデータの両方を有した通信データ(チャネルデータ)13を得て、SCH信号検出部105へ送出する。
【0037】
SCH信号検出部105は、1スロット分の測定信号20におけるSCH12の存在時間(区間)TAの測定信号20から、スクランブル部104から得た送信データ13を減算して、SCH信号を得る。その結果、SCH信号抽出部25は、信号レベルLCとデータ(ビットデータ)を有したSCH信号を得て出力する。
【0038】
相関部29は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号とS−SCH理想データ30との相関値を算出して、S−SCH信号レベル検出部31へ送出する。S−SCH信号レベル検出部31は、相関値から信号レベルLCを有するSCH信号に含まれるS−SCH信号の割合を求め、この割合からS−SCH信号の信号レベル(S−SCH信号レベル)LSを算出する。S−SCH信号レベル検出部31は算出したS−SCH信号レベルLSを図2の理想S−SCH信号作成部35へ送出する。
【0039】
同様に、相関部32は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号とP−SCH理想データ33との相関値を算出して、P−SCH信号レベル検出部34へ送出する。P−SCH信号レベル検出部34は、相関値から信号レベルLCを有するSCH信号に含まれるP−SCH信号の割合を求め、この割合からP−SCH信号の信号レベル(P−SCH信号レベル)LPを算出する。P−SCH信号レベル検出部34は算出したP−SCH信号レベルLPを図2の理想P−SCH信号作成部36へ送出する。
【0040】
図2において、S−SCH理想ビットデータ37は、前述したHSDPAの規格(3GPP TS 25.213)に定められたスクランブルコードに基づいて作成され、図10のSCH付加部4にて被測定信号aのS−SCH10に組込まれている理想のビットデータである。理想S−SCH信号作成部35は、入力されたS−SCH信号レベルの信号レベルLSと、入力されたS−SCH理想ビットデータ37のビットデータを有した理想S−SCH信号とを作成して、減算部38へ送出する。
【0041】
P―SCH信号作成手段としての減算部38は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号から理想S−SCH信号を減算することによって、目的とする被測定信号aにおける1スロット分の測定信号20に含まれるP―SCH11に対応するP―SCH信号を得て、比較部39及び解析結果出力手段としての表示制御部40へ送出する。
【0042】
一方、P−SCH理想ビットデータ41は、図10のSCH付加部4にて被測定信号aのP−SCH11に組込まれている理想のビットデータである。理想P−SCH信号作成部36は、入力されたP−SCH信号レベルの信号レベルLPと、入力されたP−SCH理想ビットデータ41のビットデータを有した理想P−SCH信号を作成して、減算部42へ送出する。
【0043】
S―SCH信号作成手段としての減算部42は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号から理想P−SCH信号を減算することによって、目的とする被測定信号aにおける1スロット分の測定信号20に含まれるS―SCH10に対応するS―SCH信号を得て、比較部39及び表示制御部40へ送出する。
【0044】
誤り検出手段としての比較部39は、P―SCH信号の各ビットデータとP−SCH理想ビットデータ41の各ビットデータと比較して、P―SCH信号の各ビットデータがP−SCH理想ビットデータ41の各ビットデータに一致している場合を該当ビットデータは正常と判定し、不一致のビットデータを異常と判定し、判定結果を表示制御部40へ送出する。
【0045】
同様に、誤り検出手段としての比較部42は、S―SCH信号の各ビットデータとS−SCH理想ビットデータ37の各ビットデータと比較して、S―SCH信号の各ビットデータがS−SCH理想ビットデータ37の各ビットデータに一致している場合を該当ビットデータは正常と判定し、不一致のビットデータを異常と判定し、判定結果を表示制御部40へ送出する。
【0046】
信号有無判定部44は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号の信号レベルLCが予め設定されたしきい値に達しているか否かを判定して、しきい値に達していいないと、当初から当該スロットにSCH12が設定されていないと判定する。信号有無判定部44は、この判定結果を表示制御部40へ送出する。
【0047】
表示制御部40は、SCH信号抽出部25から出力されたSCH信号の信号レベルLC、信号有無判定結果、S―SCH信号及びP―SCH信号の各ビットデータ、各ビットデータの一致、不一致の結果を、表示器45に各スロット9単位で表示出力する。
【0048】
なお、理想S−SCH信号作成部35から出力された理想S−SCH信号、及び理想P−SCH信号作成部36から出力された理想P−SCH信号は、理想SCH信号作成部106へ入力される。理想SCH信号作成部106は、理想S−SCH信号と理想P−SCH信号とを加算して、信号レベル(LS+LP)と理想ビットデータを有した理想SCH信号を作成して、減算部100へ送出する。減算部100は、1スロットメモリ21に書込まれた測定信号20から、理想SCH信号を減算した後、SCH信号抽出部25へ送出する。
【0049】
図5は、このW−CDMA信号のSCH解析装置の全体動作を示す流れ図である。
最初に、スロット位置検出部19にて、被測定信号aのスロット9を検出して、1スロット分の測定信号20を得る(ステップS1)。SCH信号抽出部25における逆スクランブル部26、逆拡散部28、チャネル判定部102、拡散部103、スクランブル部104で、被測定信号aのSCH存在区間TAにおける信号レベルLDとデータの両方を有した通信データ(チャネルデータ)13を得る(S2)。次に、SCH信号検出部105においてデータ及び信号レベルLCを有したSCH信号を求める(S3)。
【0050】
そして、S−SCH信号レベル検出部31及びP−SCH信号レベル検出部34は、このSCH信号からS−SCH信号及びP−SCH信号の各信号レベルLS、LPを求め、理想S−SCH信号作成部35及び理想P−SCH信号作成部36は、この求めたS−SCH信号及びP−SCH信号の各信号レベルLS、LPを有した理想S−SCH信号及び理想P−SCH信号を作成する(S4)。
【0051】
そして、操作者の操作にて、理想P−SCH信号及び理想S−SCH信号の再計算の指示が入力されると(S5)、理想SCH信号作成部106は、今回求めた理想S−SCH信号と理想P−SCH信号とを加算して、信号レベル(LS+LP)と理想ビットデータを有した理想SCH信号を作成する(S6)。
【0052】
そして、減算部100は、1スロットメモリ21に書込まれた測定信号20から、理想SCH信号を減算した後(S7)、S2へ戻り、減算後の測定信号20を用いて、通信データ(チャネルデータ)13の算出を開始する。
【0053】
そして、操作者が理想P−SCH信号及び理想S−SCH信号の再計算の指示を入力しないと(S5)、減算部38、42は、先のSCH信号から理想S−SCH信号及び理想P−SCH信号を減算することにより、データ及び信号レベルを有したP−SCH信号及びS−SCH信号を得る(S8)。
【0054】
そして、比較部39、43にて、P−SCH信号及びS−SCH信号の各ビットデータと、P−SCH理想ビットデータ37及びS−SCH理想ビットデータ41の各ビットデータとを比較する(S9)。SCH信号の信号レベル、P−SCH信号及びS−SCH信号の各ビットデータ、各ビットデータの比較結果を表示器45に表示出力する(S10)。
【0055】
以上で、1つのスロット9に対する測定(解析)処理が終了したので、被測定信号aに未測定(解析)のスロット9が存在すれば(S11)、S1へ戻り、被測定信号aの次のスロット9に対する測定(解析)を開始する。被測定信号aに未測定(解析)のスロット9が存在しないと(S11)、被測定信号aの1フレームを構成する合計15個のスロット9におけるSCH12に対する測定(解析)処理を終了する。
【0056】
図6、図7は、表示器45における被測定信号aの解析結果の表示内容を示す図である。図6において、表示器45には、被測定信号aの1フレームを構成する合計15個のスロット9におけるSCH信号の信号レベルLCが0番のスロット9から14番のスロット9までグラフ46で表示される。さらに、グラフ46中においてマーカで指定されたスロット9番号におけるSCH12(SCH信号)のSCH詳細情報47が表示される。
【0057】
このSCH詳細情報47内には、該当スロット9におけるSCH信号の有無(Active on off)、該当スロット9におけるS―SCHのコード(SSC)番号、SCH信号レベル(Total)LC、P―SCH信号レベルLP、S―SCH信号レベルLSが含まれる。
【0058】
さらに、図6の表示器45には、グラフ46中においてマーカで指定されたスロット9番号のスロット9におけるP−SCH11のデータ一覧48、S−SCH10のデータ一覧49が表示される。各データ一覧48、49には、P−SCH11、S−SCH10を構成するビットデータ(列)が、16進表示されている。さらに、任意の16進表示を枠50で指定することにより、該当16進表示を2進表示データ51で表示可能である。
【0059】
さらに、図8に示すように、各データ一覧48、49の16進表示又は2進表示のびデータに、P−SCH理想ビットデータ41のビットデータ及びS−SCH理想ビットデータ37のビットデータに対して不一致のビットデータ52が存在すれば、該当ビットデータ52を、一致のビットデータに対して異なる表示色で表示される。
【0060】
図7において、表示器45には、被測定信号aの1フレームを構成する0番のスロット9から14番のスロット9までの各スロット9におけるSCH信号の信号レベルLC、各スロット9におけるP―SCH信号の信号レベルLP、各スロット9におけるS―SCH信号の信号レベルLS、各スロット9におけるSCH信号の信号有無のデータ一覧53が表示される。
【0061】
さらに、15個のスロット9におけるSCH信号の信号レベルLCの平均値、P―SCH信号の信号レベルLPの平均値、S―SCH信号の信号レベルLSの平均値のデータ一覧54が表示される。
【0062】
このように構成されたW−CDMA信号のSCH解析装置においては、このW−CDMA信号のSCH解析装置に入力されたW−CDMA信号からなる被測定信号aにおける1スロット分の測定信号20から信号レベルLCとデータとを有したSCH信号が求まる。さらに、このSCH信号からP−SCH信号レベルLPとS―SCH信号レベルLSが求まる。
【0063】
さらに、理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号が作成され、SCH信号から理想P―SCH信号及び理想S―SCH信号を減算することにより、目的とする信号レベルとデータとを有したS―SCH信号及びP―SCH信号が独立して求まる。その結果、図6に示すように、表示器45に、P−SCH11のデータ一覧48、S−SCH10のデータ一覧49が表示される。
【0064】
この場合、各スロット9に含まれる各スロットに含まれるS―SCH信号のデータ(ビットデータ)の誤り、及びP―SCH信号のデータ(ビットデータ)の誤りが求まり、図8に示すように、誤りビットデータ52が、正しいビットデータに対して異なる表示色で表示される。
【0065】
したがって、このSCH解析装置の操作者(試験実施者)は、S―SCH信号、P―SCH信号のデータ(ビットデータ)のみならず、データ(ビットデータ)の誤りの有無を表示器44の表示画面上で簡単に確認できる。
【0066】
さらに、このW−CDMA信号のSCH解析装置においては、図5の流れ図に示すように、理想S−SCH信号作成部35と理想P−SCH信号作成部36とで作成された理想S−SCH信号及び理想P−SCH信号を加算して、信号レベル(LS+LP)と理想ビットデータを有した理想SCH信号を作成して、1スロットメモリ21に書込まれた測定信号20から、理想SCH信号を減算した後、SCH信号抽出部25へ送出している。
【0067】
このように、一旦、作成された理想P―SCH信号と理想S―SCH信号とを加算して理想SCH信号を作成して、この理想SCH信号を用いて、P−SCH信号レベルとS―SCH信号レベルとを求めているので、最終的なP―SCH信号とS―SCH信号の解析精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置の概略構成を示すブロック図
【図2】同じく同実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置の概略構成を示すブロック図
【図3】被測定信号における1スロット分の測定信号の構成図
【図4】被測定信号のフレーム構成図
【図5】同実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置の全体動作を示す流れ図
【図6】同実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置に組込まれた表示器の表示内容を示す図
【図7】同じく同実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置に組込まれた表示器の表示内容を示す図
【図8】同じく同実施形態に係わるW−CDMA信号のSCH解析装置に組込まれた表示器の表示内容を示す図
【図9】一般的なW−CDMAにおける送信側の各送信データの多重化手法を示す図
【図10】一般的なW−CDMA信号のフレーム構成図
【符号の説明】
【0069】
1…コード拡散部、3…乗算器、4…SCH付加部、8…高周波回路、9…スロット、10…S―SCH、11…P―SCH、12…SCH、14…周波数変換部、16…データメモリ、17,29,32…相関部、19…スロット位置検出部、20…測定信号、21…1スロットメモリ、25…SCH信号抽出部、26…逆スクランブル部、27…拡散コード、28…逆拡散部、30…S−SCH理想データ、31…S−SCH信号レベル検出部、33…P−SCH理想データ、34…P−SCH信号レベル検出部、35…理想S−SCH信号作成部、36…理想P−SCH信号作成部、37…S−SCH理想ビットデータ、38,42,100…減算部、39,43…比較部、40…表示制御部、41…P−SCH理想ビットデータ、44…信号有無判定部、45…表示器、46…グラフ、47…SCH詳細情報、48,49,53…データ一覧、101…スクランブルコード、102…チャネル判定部、103…拡散部、104…スクランブル部、105…SCH信号抽出部、106…理想SCH信号作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された被測定信号であるW−CDMA信号の1フレームを構成する各スロットの先頭位置にチャネルデータに加算されたP−SCHとS―SCHとからなるSCHを解析するW−CDMA信号のSCH解析装置において、
前記入力された被測定信号の1スロット分の測定信号を検出する信号検出手段(19)と、
この信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号から、前記SCHに相当する、信号レベルとデータとを有したSCH信号を抽出するSCH信号抽出手段(25)と、
このSCH信号抽出手段で抽出されたSCH信号から前記P−SCHに対応するP−SCH信号レベルと前記S−SCHに対応するS―SCH信号レベルとを検出する信号レベル検出手段(31,34)と、
S−SCH理想データと前記S―SCH信号レベルとから理想S―SCH信号を作成する理想S―SCH信号作成手段(35)と、
P−SCH理想データと前記P―SCH信号レベルとから理想P―SCH信号を作成する理想P―SCH信号作成手段(36)と、
前記SCH信号から前記理想S―SCH信号を減算することにより被測定信号のP―SCH信号を作成するP―SCH信号作成手段(38)と、
前記SCH信号から前記理想P―SCH信号を減算することにより被測定信号のS―SCH信号を作成するS―SCH信号作成手段(42)と、
前記P―SCH信号と前記S―SCH信号の各データ及び各信号レベルを解析結果として表示器に表示出力する解析結果出力手段(40)と
を備えたことを特徴とするW−CDMA信号のSCH解析装置。
【請求項2】
前記P―SCH信号のデータ及びS―SCH信号のデータと、前記P−SCH理想データ及び前記S−SCH理想データとそれぞれ比較して、前記P―SCH信号及びS―SCH信号の各データに含まれる誤り検出する誤り検出手段(39,43)を有し、
前記解析結果出力手段は、前記検出された各データに含まれる誤りを、前記解析結果の一つとして表示器に表示出力する
ことを特徴とする請求項1記載のW−CDMA信号のSCH解析装置。
【請求項3】
前記解析結果出力手段は、前記P−SCH信号の各ビットデータ及び前記S−SCH信号の各ビットデータが、前記P−SCH理想データの各ビットデータ及び前記S−SCH理想データの各ビットデータと不一致の場合、この不一致のビットデータを一致のビットデータに対して異なる表示色で表示することを特徴とする請求項2記載のW−CDMA信号のSCH解析装置。
【請求項4】
前記SCH信号抽出手段で抽出されたSCH信号の信号レベルが予め設定されたしきい値に達しなかった場合、当初から当該スロットにSCHが設定されていないと判定する信号有無判定手段(44)を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のW−CDMA信号のSCH解析装置。
【請求項5】
前記SCH信号抽出手段(25)は、
前記信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号をスクランブル解除するデータ解析部(26)と、
スクランブル解除された測定信号を逆拡散し各チャネルの送信データを復号する逆拡散部(28)と、
復号した送信データを再び拡散する拡散部(103)と、
拡散された送信データを再スクランブルするスクランブル部(104)と、
前記測定信号から再スクランブルされた送信データを減算してSCH信号を検出するSCH信号検出部(105)と
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のW−CDMA信号のSCH解析装置。
【請求項6】
前記理想S−SCH信号と前記理想P−SCH信号から理想SCH信号を作成する理想SCH信号作成部(106)と、
前記信号検出手段で検出された1スロット分の測定信号から前記理想SCH信号を減算し前記SCH信号抽出手段へ送出する減算部(100)と
を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のW−CDMA信号のSCH解析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−60478(P2006−60478A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239535(P2004−239535)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】