X線コンピュータ断層撮影装置
【課題】エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置において、カテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況への適用を可能にすること。
【解決手段】X線管101と、2次元X線検出器103と、X線管とX線検出器とを回転可能に支持する回転機構102と、高電圧発生部109と、X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部114と、複数の表示部116、117、118と、記X線管を連続的に回転させ、X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、X線の発生に同期してX線検出器から出力されるデータに基づいて複数箇所にそれぞれ対応付けた複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために回転機構と高電圧発生部と表示部とを制御する透視制御部120とを具備する。
【解決手段】X線管101と、2次元X線検出器103と、X線管とX線検出器とを回転可能に支持する回転機構102と、高電圧発生部109と、X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部114と、複数の表示部116、117、118と、記X線管を連続的に回転させ、X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、X線の発生に同期してX線検出器から出力されるデータに基づいて複数箇所にそれぞれ対応付けた複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために回転機構と高電圧発生部と表示部とを制御する透視制御部120とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,2次元検出器(エリアデテクタ)を装備したX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャンと並行して即時的に断層像を再構成し表示するいわゆるCT透視の可能なX線コンピュータ断層撮影装置が登場している。CT透視をカテーテル術に使用することが試みられている。CT再構成は非常に処理工数が多く、現在のCT透視では例えば3段面、その3段面を合わせた体軸方向の透視範囲はほんの6mmほどにすぎない(図13参照)。各断面のスライス幅を広くして、透視範囲を例えば32mmまで拡大することは可能である。スライス厚の拡大はパーシャルボリューム現象をより顕著にして、針やカテーテルの先端を不明瞭にしてしまう。そのためX線コンピュータ断層撮影装置をカテーテル術等に用いることはできなかった。
【0003】
最近、例えば320列などのエリアデテクタを装備して心臓をカバーできる広い視野を備えたX線コンピュータ断層撮影装置が登場している。しかし依然としてCT透視可能な透視範囲は再構成処理速度の制限を受けていて、CT透視では図14に示すように多くのセグメントを停止している状態である。
【0004】
そのため実際的にX線コンピュータ断層撮影装置をカテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況には適用できないのが現状である。また、再構成技術が発達して数百断面をリアルタイムに再構成する事が可能になったとしても,広範囲を連続曝射する事が必要で被ばくの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−83941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置において、カテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況への適用を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面は、X線管と、2次元X線検出器と、X線管とX線検出器とを回転可能に支持する回転機構と、高電圧発生部と、X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部と、複数の表示部と、記X線管を連続的に回転させ、X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、X線の発生に同期してX線検出器から出力されるデータに基づいて複数箇所にそれぞれ対応付けた複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために回転機構と高電圧発生部と表示部とを制御する透視制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置において、カテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況への適用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【図2】図1のX線コンピュータ断層撮影装置の外観を示す図である。
【図3】本実施形態の動作手順を示す流れ図である。
【図4】図3の工程S12の透視角度設定画面の一例を示す図である。
【図5】図3の工程S12の透視角度設定画面の他の例を示す図である。
【図6】本実施形態においてX線管の回転と透視角度との関係を示す図である。
【図7】本実施形態において透視とスキャンとの関係を示す図である。
【図8】図3の工程S15の透視時の照射範囲を示す図である。
【図9】図3の工程S15の透視位置を示す図である。
【図10】本実施形態において、ステレオ透視における透視角度差αを示す図である。
【図11】本実施形態において、ステレオ透視と直交バイプレーン透視の透視位置の例を示す図である。
【図12】本実施形態において、直交バイプレーン透視の透視位置の例を示す図である。
【図13】従来の3列検出器を用いた場合のCT透視時の視野角を示す図である。
【図14】従来の多列検出器を用いた場合のCT透視時の視野角を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転方式と、リング上に多数のX線検出器が配置され、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転方式と、複数のX線管がリング上に配置され、複数のX線検出器も同様にリング上に配置された固定/固定方式等様々な方式があるが、本発明では回転/回転方式、固定/回転方式への適用により効果的である。また一対のX線管とX線検出器とが回転フレームに搭載された一管球型と、X線管とX線検出器との対が回転フレームに複数搭載されたいわゆる多管球型とがあるが、いずれの型でも本発明を適用可能である。また入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよい。
【0011】
図1は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示している。図2はその外観を示している。ガントリ100は、X線管101とX線検出器103とを有する。X線管101の放射窓にはコリメータ113が装備される。コリメータ113は、X線検出器103のZ軸に関する幅に応じたX線の最大コーン角からX線検出器103の1列(1セグメント)分の最小コーン角までの範囲でコーン角を任意に変更する構造を有する。X線検出器103は、例えば320列(320セグメント)を装備したZ軸方向に広範囲の視野を有するエリアデテクタ(2次元アレイ検出器ともいう)である。
【0012】
X線管101とX線検出器103は、回転軸Zまわりに回転可能に支持された円環状のフレーム102に搭載される。X線検出器103は、ガントリ100の中央部に開けられた撮影領域5に寝台137の天板138上に載置された被検体を挟んで、X線管101に対向する。フレーム102は、回転部107の駆動により例えば0.25秒/回転の高速で回転され得る。フレーム102の回転角度は、ロータリーエンコーダにより実現される回転角度検出部111により検出される。高電圧発生装置109からスリップリング108を経由してX線管101に管電圧が印加され、またフィラメント電流が供給される。高電圧発生装置109は蓄電器とともにフレーム102に搭載されてもよい。管電圧の印加及びフィラメント電流の供給によりX線管101からX線が発生される。X線検出器103は、被検体を透過したX線を検出する。
【0013】
ガントリ100は、チルト機構127にチルト可能に支持される。それによりフレーム102の回転軸Z、つまりX線管101とX線検出器103の回転軸Zを水平位置から前後に任意の角度で傾斜させることができる。
【0014】
一般的にDAS(data acquisition system)と呼ばれているデータ収集回路104は、X線検出器103からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は非接触データ伝送装置105を経由してコンソール115内に収容された前処理装置106に送られ、そこで感度補正等の補正処理を受け、再構成処理の直前段階にあるいわゆる投影データとして記憶装置112に記憶される。
【0015】
記憶装置112は、再構成装置114、3次元画像処理部128、モニタ116、ステレオモニタ117、メガネ式ステレオモニタ118、操作部115、フットスイッチ119、投影条件設定支援部121、透視制御部120とともに、データ/制御バスを介してシステムコントローラ110に接続される。再構成装置114は、記憶装置112に記憶された投影データに基づいてコーンビーム画像再構成法のもとでボリュームデータを再構成する。コーンビーム画像再構成法には、フェルドカンプ法(Feldkamp method)が一般的に用いられる。フェルドカンプ法は、ファンビームコンボリューション・バックプロジェクション法をもとにした近似的再構成法であり、コンボリューション処理は、コーン角が比較的小さいことを前提として、データをファン投影データと見なして行われる。しかし、バックプロジェクション処理は、傾斜したコーン角に応じた実際のレイ(ray)に沿って行われる。
【0016】
3次元画像処理部128は、ボリュームレンダリング処理によりボリュームデータから2次元画面に表示できる2次元画像を生成する。ボリュームレンダリング処理は、画素値等に応じて段階的に透過度や色を定義し、目的とする部分を選択的に抽出するものである。実際にはレイ上のポイントの各画素値に所定の係数をかけながら、順次加算して、その加算結果を投影面の画素値とする。その係数は、画素値に対する透過度、視線方向からの距離(投影面からそのポイントまでの距離)、陰影条件等によって決定される。このボリュームレンダリング処理により、例えば内部が透けて見えるような擬似的な3次元画像を作成することができる。
【0017】
上述の通り、本実施形態では表示部としてモニタ116、ステレオモニタ117、メガネ式ステレオモニタ118を装備している。モニタ116とステレオモニタ117とはガントリ100とともに撮影室内に設置される。メガネ式ステレオモニタ118は、例えばカテーテル術を実施している術者に装着される。モニタ116には、3次元画像、投影画像が表示される。ステレオモニタ117とメガネ式ステレオモニタ118とは、それぞれ右目用モニタ部(又は右目用表示エリア)と左目用モニタ部(又は左目用表示エリア)とを有しており、後述するステレオ透視モードのもとで用いられる。ステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の右目用モニタ部と左目用モニタ部とを術者が左右眼でそれぞれ視認することで立体視が実現され、対象の立体的構造を認識することができる。
【0018】
操作部115は、操作者が通常のCTスキャンモードと透視モードとの切り替え操作と、各モードの条件設定操作とを主に実施するために設けられる。通常のCTスキャンモードは一般的なボリュームスキャンを実行するためのモードであり、新規な機能ではないので、詳細な説明は省略する。透視モードは、X線コンピュータ断層撮影装置を使って、X線診断装置を用いたX線透視に近似的な透視機能を実現するモードであり、透視モードについて以下詳細に説明する。
【0019】
透視条件設定支援部121は、操作者による透視条件を分かり易く簡易に設定するための設定画面を提供する。提供される設定画面については後述する。フットスイッチ119は、ガントリ100又は寝台137に近傍する床面上の任意の位置に配置することができる足踏式のスイッチである。透視モードにおいて、フットスイッチ119が踏まれてオン状態が継続されている期間、X線が被検体に照射され、ライブの透視が実行される。つまり、透視モードでは、X線管101が1回転するごとに2乃至3枚、さらにそれ以上の設定された枚数の画像が撮影される。X線管101が連続的に回転すると、X線管101が1回転する時間、例えば0.4秒に等価な周期で各撮影角度の画像が繰り返し発生される。この繰り返し発生される画像を即時的に表示することにより、フレームレートは比較的遅いものの撮影対象の動的な変位を確認できる程度の動画像を提供できる。透視制御部120は、CT透視動作を実行するために各部を制御する。
【0020】
透視モードは、ステレオ透視形式と、バイプレーン形式と、これらステレオ透視とバイプレーンとを組み合わせたコンバイン形式とを有する。これら各形式は透視角度が相違する。本実施形態に係る透視モードでは、フレーム102にともなってX線管101及びX線検出器103が被検体の周囲を連続的に回転する。その回転が継続されている期間であってフットスイッチ119がオン状態に移行されている期間中に、X線管101が、X線管101の回転軌道上の少なくとも2箇所(以下、透視位置又は透視角度という)を通過する都度、パルス状のX線が繰り返し発生される。このX線の発生に同期してX線検出器103から出力されるデータに基づいて投影画像が生成され、予め各透視位置に対して割り当てられているモニタ116、117、118に動画として即時的に表示される。ステレオ透視形式が選択されているとき、2つの透視角度は、5−10°の範囲の何れかの角度差に制限される。この角度差は、両眼視差に対応しており、2つの透視画像を左右の目でそれぞれ視覚することにより、立体視が可能になる。バイプレーン形式が選択されているとき、2つの透視角度の差に制限はないが、典型的には90°に初期設定される。コンバイン形式が選択されているとき、透視位置は3箇所に設定される。2箇所の透視位置は5−10°の範囲の何れかの角度差に設定されてステレオ透視形式として機能し、その2箇所の一方の透視位置と残りの1箇所の透視位置とは典型的には90°の角度差に設定され、バイプレーン形式として機能する。
【0021】
図3には、本実施形態による透視制御部120の制御による透視モードの動作手順を示している。まず、通常のCTスキャン、ここではボリュームスキャンが実行される(S11)。ボリュームスキャンにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成される。ボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成される。透視条件設定支援部121により擬似的な3次元画像が表示され、擬似的な3次元画像に対して透視位置(Z位置)が設定される(S12)。その設定位置に架台100が移動される。
【0022】
また擬似的な3次元画像を含む透視条件設定支援画面が構成される。透視条件の主なものは、ステレオ透視形式、バイプレーン形式、コンバイン形式の選択と、透視角度の指定とである。擬似的な3次元画像にX線管101の回転軸Zを表すラインが重ねて表示される。さらにラインを中心としてそれに直交する面内で放射状に透視角度の複数の候補線が重ねられる。候補線は、回転軌道中のX線照射されるビューポイントから検出器中心を結ぶ線分である。複数の候補線から、手術対象の部位が見やすいと判断された候補線が指定されたとき、候補線を中心としたその視野を表す半透明のコーンビームモデルが表示される。コーンビームモデル内に透視対象部位が含まれることを確認して、指定候補線を確定し、透視角度が設定される。ステレオ透視形式が選択されているとき、確定された透視角度との間の角度差が5乃至10°の範囲にある候補線のみ表示される。これは実質的に透視角度の差が制限されることを意味しており、この角度差の範囲は立体視を可能にする両眼視差の可能な範囲に対応している(図10参照)。ステレオ透視形式では、2つの透視角度が設定される。
【0023】
バイプレーン形式でも2つの透視角度が設定されるが、その角度差には制限がなく、2つの任意の透視角度が設定可能である。バイプレーン形式では、1つの透視角度が設定されると、その透視角度との間で90°の角度差を有する前後2つの候補線が初期的に表示される(図12参照)。典型的には、これら90°の角度差を有する2つの透視角度が設定される。コンバイン形式では、上記ステレオ透視形式とバイプレーン形式における透視角度の設定手順が繰り返される。ただし、ステレオ透視形式のもとで設定される2つの透視角度と、バイプレーン形式のもとで設定される2つの透視角度との間で1つの透視角度は共通設定される(図11参照)。
【0024】
図4には、透視条件設定支援部121による他の簡易な透視条件設定支援画面を示している。この場合、ボリュームスキャンは必要とされない。X線管101の回転軌道モデル200に、第1の透視角度を表す透視線201と第2の透視角度を表す透視線202とが重ねられる。透視線は、回転軌道中のX線照射されるビューポイントから検出器中心を結ぶ線分である。透視線201、202をポインタ203でドラッグして任意の角度まで回転させ、所望角度で確定する。同画面には、第1の透視角度の数値表示欄204、第2の透視角度の数値表示欄205、それらの透視角度差の数値表示欄206、透視角度差を回転角速度で除算して得られる時間差表示欄207、立体視のオン/オフ設定欄208が表示される。これら値は透視線201、202の回転操作に関連される。また第1、第2の透視角度を数値入力することで、それら入力された値に透視線201、202の回転が関連される。立体視(ステレオ透視)がオンに設定されているとき、第1、第2の透視角度との間の角度差が5乃至10°の範囲に収まるように、第1の透視角度に対して第2の透視角度の入力範囲が制限される。立体視(ステレオ透視)がオフに設定されているとき、上記バイプレーン形式で説明した通り、第1の透視角度と第2の透視角度との角度差に関する制限は解除される。
【0025】
図5には、透視条件設定支援部121によるさらに他の透視条件設定支援画面を示している。この場合、ボリュームスキャンで収集されたビューアングルの相違する複数の投影画像211の全て又は一部がサムネイルで表示される。複数の投影画像211から、手術対象の部位が見やすいと判断された透視画像211が指定されたとき、X線管101の回転軌道モデル212に、指定された透視画像211に対応するビューポイントマーク213が重ねられる。指定された透視画像211は少し表示拡大され、または高輝度で表示される。このビューポイントマーク213をポインタ203でドラッグして任意の角度まで回転軌道モデル212上を移動させると、ビューポイントマーク213に対応する透視画像211は少し表示拡大され、または高輝度で表示される。投影画像で確認しながら所望の透視角度を確定する。
【0026】
以上の通り透視角度が設定された後、透視位置にガントリ(架台)100又は天板138が移動される(S13)。以上の準備が完了した後に、透視開始が指示される(S14)。回転フレーム102がX線管101及びX線検出器103をともなって連続的に回転される。この回転フレーム102の連続回転は透視終了指示(S19)されるまで、継続される。回転フレーム102の連続回転期間中にフットスイッチ119がオンされたとき、そのオン状態が維持されている期間に、X線管101からパルスX線が1回転につき2又は3回被検体に照射される(S15)。図6、図9に示すように、照射ポイントは、設定された透視角度に応じたビューポイントである。X線は、図8に示すように、X線検出器103の検出素子が配列されている全感度領域に照射されるようX線検出器103の感度領域に応じた最大ファン角及び最大コーン角で照射される。
【0027】
第1の透視角度に対応する投影画像は、例えば右目用画像としてステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の予め割り当てられている画面(右目用画面)に表示される。第2の透視角度に対応する投影画像は、例えば左目用画像としてステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の予め割り当てられている画面(左目用画面)に即時的に表示される。右目用画面と右目用画面それぞれでは、1回転時間の逆数に等価なフレームレートで動画として表示される。
【0028】
バイプレーン形式が選択されているとき、第1の透視角度に対応する投影画像は、ステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の一方の画面に表示され、第2の透視角度に対応する投影画像は他方の画面又はモニタ116に表示される。コンバイン形式が選択されているとき、左右目用の投影画像はステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118のそれぞれの画面に表示され、90°の角度左を有する透視角度の投影画像はモニタ116に表示される。
【0029】
透視期間中、ガントリチルト指示が入力されたとき、図6に示すように、透視動作は継続された状態でガントリ100が指示方向に傾斜される。また、透視期間中、ボリュームスキャン指示が入力されたとき、図7に示すように、ボリュームスキャン開始から1回転又は指定回転する間だけ連続X線が最大ファン角及び最大コーン角のままで照射される。ボリュームスキャンにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成され、このボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成され、モニタ116に表示される。それとともに、その間の第1、第2透視角度に対応するビューポイントの投影データを投影画像として表示され、透視動作は継続される。実際には、ボリュームデータの再構成処理及び3次元画像処理には投影画像表示(透視)より処理時間を長く要することから、即時的ではない。
【0030】
透視期間中、工程S12と同様に透視位置の変更(再設定)が指示されたとき(S17)、工程S13に戻り、その位置に架台100が移動される。
【0031】
以上の透視動作は目的達成されるまで、つまりカテーテル術が終了するまで繰り返され(S18)、その後、透視動作は終了する(S19)最終的に、ボリュームスキャンが実行され、それにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成され、このボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成され、モニタ116に表示される。それによりカテーテル術の結果を確認する(S20)。
【0032】
具体的な処置を想定した動作は次の通りである。
(肝臓癌TAE(塞栓術)
(1) 単純CTを撮影して広視野エリアデテクタを装備したADCT Volume Scan(16cm)で透視する範囲を決定する。
(2)平面透視機能を用いて、カテーテルをSMA(上腸間脈動脈)に持って行き、Volume Scanで,CTAP(門脈造影)を撮影する。
(3)平面透視にて、カテーテルを総肝動脈に持って行き,Volume ScanでCTAを撮影する。
(4)CTAより血管の3次元画像を作成し、腫瘍への栄養血管を同定する。
(5)3次元画像を確認しながらマイクロカテーテルを操作し腫瘍の栄養血管に持って行く。
(6)CTAにて腫瘍の染まりを確認する。
(7)平面透視にて確認しながら腫瘍へ塞栓物を投入する。
(8)CTAにて腫瘍に塞栓物が行き渡ったことを確認する。
【0033】
上記手順(5)において、作成した3次元画像から血管の分岐部が分かる位置を表示する。その位置に架台回転位置とチルトを行い(自動でもいける)平面透視にて確認する。架台を回転させながらステレオで撮影→立体視し、実際のマイクロカテーテルの状態とCTAの3次元画像で血管走行状態を確認しながら、カテーテル操作を行い適切な血管へ誘導する。通常の3断面透視は範囲不足で使用しても効果が得られない。
【0034】
本実施形態では、1回転中に2回しか曝射せず立体視可能な事により、操作もスムーズかつ被ばくも少なくて済む効果がある。必要に応じて,表示位置を変更されて操作を繰り返す(この時,CTAの3次元表示も連動する)。
【0035】
(針生検(肺野))
(1)単純CTを撮影してADCT Volume Scan(16cm)で透視する範囲を決定する。
(2)3次元画像を作成し、腫瘍に到達するまでに気管支や血管を傷つけない針のガイドを検討する。
(3)ガイドに沿って,主要な血管や気管支が分かりやすい表示角度を算出する。
(4)その角度になるように架台の回転位置やチルトを行い、平面透視にて確認する。
(5)架台を回転させながらステレオ撮影し、立体視し、生検用の針を周りの血管や気管支の位置を確認しながらターゲットの腫瘍まで進める。
(6)必要に応じて,表示位置を変更させてこの操作を繰り返す。
【0036】
以上の通り本実施形態により、ADCTの利点を活かした広範囲での3次元CT透視像を最小の被ばく量で得ることができ、かつ穿刺やカテーテル操作を3次元Volume画像とFusionさせながら行うことで、精度向上や手術時間の短縮が期待できる。さらに数百枚をリアルタイムに再構成しMPRしたりする必要もなく、低コストにて実現可能である。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0039】
101…X線管、102…回転フレーム、103…2次元X線検出器、109…高電圧発生部、114…再構成処理部、116、117、118…モニタ、120…透視制御部、121…透視条件設定支援部。
【技術分野】
【0001】
本発明は,2次元検出器(エリアデテクタ)を装備したX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャンと並行して即時的に断層像を再構成し表示するいわゆるCT透視の可能なX線コンピュータ断層撮影装置が登場している。CT透視をカテーテル術に使用することが試みられている。CT再構成は非常に処理工数が多く、現在のCT透視では例えば3段面、その3段面を合わせた体軸方向の透視範囲はほんの6mmほどにすぎない(図13参照)。各断面のスライス幅を広くして、透視範囲を例えば32mmまで拡大することは可能である。スライス厚の拡大はパーシャルボリューム現象をより顕著にして、針やカテーテルの先端を不明瞭にしてしまう。そのためX線コンピュータ断層撮影装置をカテーテル術等に用いることはできなかった。
【0003】
最近、例えば320列などのエリアデテクタを装備して心臓をカバーできる広い視野を備えたX線コンピュータ断層撮影装置が登場している。しかし依然としてCT透視可能な透視範囲は再構成処理速度の制限を受けていて、CT透視では図14に示すように多くのセグメントを停止している状態である。
【0004】
そのため実際的にX線コンピュータ断層撮影装置をカテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況には適用できないのが現状である。また、再構成技術が発達して数百断面をリアルタイムに再構成する事が可能になったとしても,広範囲を連続曝射する事が必要で被ばくの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−83941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置において、カテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況への適用を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面は、X線管と、2次元X線検出器と、X線管とX線検出器とを回転可能に支持する回転機構と、高電圧発生部と、X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部と、複数の表示部と、記X線管を連続的に回転させ、X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、X線の発生に同期してX線検出器から出力されるデータに基づいて複数箇所にそれぞれ対応付けた複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために回転機構と高電圧発生部と表示部とを制御する透視制御部とを具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置において、カテーテル術等の即時性と広視野が要求される状況への適用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【図2】図1のX線コンピュータ断層撮影装置の外観を示す図である。
【図3】本実施形態の動作手順を示す流れ図である。
【図4】図3の工程S12の透視角度設定画面の一例を示す図である。
【図5】図3の工程S12の透視角度設定画面の他の例を示す図である。
【図6】本実施形態においてX線管の回転と透視角度との関係を示す図である。
【図7】本実施形態において透視とスキャンとの関係を示す図である。
【図8】図3の工程S15の透視時の照射範囲を示す図である。
【図9】図3の工程S15の透視位置を示す図である。
【図10】本実施形態において、ステレオ透視における透視角度差αを示す図である。
【図11】本実施形態において、ステレオ透視と直交バイプレーン透視の透視位置の例を示す図である。
【図12】本実施形態において、直交バイプレーン透視の透視位置の例を示す図である。
【図13】従来の3列検出器を用いた場合のCT透視時の視野角を示す図である。
【図14】従来の多列検出器を用いた場合のCT透視時の視野角を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転方式と、リング上に多数のX線検出器が配置され、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転方式と、複数のX線管がリング上に配置され、複数のX線検出器も同様にリング上に配置された固定/固定方式等様々な方式があるが、本発明では回転/回転方式、固定/回転方式への適用により効果的である。また一対のX線管とX線検出器とが回転フレームに搭載された一管球型と、X線管とX線検出器との対が回転フレームに複数搭載されたいわゆる多管球型とがあるが、いずれの型でも本発明を適用可能である。また入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよい。
【0011】
図1は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示している。図2はその外観を示している。ガントリ100は、X線管101とX線検出器103とを有する。X線管101の放射窓にはコリメータ113が装備される。コリメータ113は、X線検出器103のZ軸に関する幅に応じたX線の最大コーン角からX線検出器103の1列(1セグメント)分の最小コーン角までの範囲でコーン角を任意に変更する構造を有する。X線検出器103は、例えば320列(320セグメント)を装備したZ軸方向に広範囲の視野を有するエリアデテクタ(2次元アレイ検出器ともいう)である。
【0012】
X線管101とX線検出器103は、回転軸Zまわりに回転可能に支持された円環状のフレーム102に搭載される。X線検出器103は、ガントリ100の中央部に開けられた撮影領域5に寝台137の天板138上に載置された被検体を挟んで、X線管101に対向する。フレーム102は、回転部107の駆動により例えば0.25秒/回転の高速で回転され得る。フレーム102の回転角度は、ロータリーエンコーダにより実現される回転角度検出部111により検出される。高電圧発生装置109からスリップリング108を経由してX線管101に管電圧が印加され、またフィラメント電流が供給される。高電圧発生装置109は蓄電器とともにフレーム102に搭載されてもよい。管電圧の印加及びフィラメント電流の供給によりX線管101からX線が発生される。X線検出器103は、被検体を透過したX線を検出する。
【0013】
ガントリ100は、チルト機構127にチルト可能に支持される。それによりフレーム102の回転軸Z、つまりX線管101とX線検出器103の回転軸Zを水平位置から前後に任意の角度で傾斜させることができる。
【0014】
一般的にDAS(data acquisition system)と呼ばれているデータ収集回路104は、X線検出器103からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は非接触データ伝送装置105を経由してコンソール115内に収容された前処理装置106に送られ、そこで感度補正等の補正処理を受け、再構成処理の直前段階にあるいわゆる投影データとして記憶装置112に記憶される。
【0015】
記憶装置112は、再構成装置114、3次元画像処理部128、モニタ116、ステレオモニタ117、メガネ式ステレオモニタ118、操作部115、フットスイッチ119、投影条件設定支援部121、透視制御部120とともに、データ/制御バスを介してシステムコントローラ110に接続される。再構成装置114は、記憶装置112に記憶された投影データに基づいてコーンビーム画像再構成法のもとでボリュームデータを再構成する。コーンビーム画像再構成法には、フェルドカンプ法(Feldkamp method)が一般的に用いられる。フェルドカンプ法は、ファンビームコンボリューション・バックプロジェクション法をもとにした近似的再構成法であり、コンボリューション処理は、コーン角が比較的小さいことを前提として、データをファン投影データと見なして行われる。しかし、バックプロジェクション処理は、傾斜したコーン角に応じた実際のレイ(ray)に沿って行われる。
【0016】
3次元画像処理部128は、ボリュームレンダリング処理によりボリュームデータから2次元画面に表示できる2次元画像を生成する。ボリュームレンダリング処理は、画素値等に応じて段階的に透過度や色を定義し、目的とする部分を選択的に抽出するものである。実際にはレイ上のポイントの各画素値に所定の係数をかけながら、順次加算して、その加算結果を投影面の画素値とする。その係数は、画素値に対する透過度、視線方向からの距離(投影面からそのポイントまでの距離)、陰影条件等によって決定される。このボリュームレンダリング処理により、例えば内部が透けて見えるような擬似的な3次元画像を作成することができる。
【0017】
上述の通り、本実施形態では表示部としてモニタ116、ステレオモニタ117、メガネ式ステレオモニタ118を装備している。モニタ116とステレオモニタ117とはガントリ100とともに撮影室内に設置される。メガネ式ステレオモニタ118は、例えばカテーテル術を実施している術者に装着される。モニタ116には、3次元画像、投影画像が表示される。ステレオモニタ117とメガネ式ステレオモニタ118とは、それぞれ右目用モニタ部(又は右目用表示エリア)と左目用モニタ部(又は左目用表示エリア)とを有しており、後述するステレオ透視モードのもとで用いられる。ステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の右目用モニタ部と左目用モニタ部とを術者が左右眼でそれぞれ視認することで立体視が実現され、対象の立体的構造を認識することができる。
【0018】
操作部115は、操作者が通常のCTスキャンモードと透視モードとの切り替え操作と、各モードの条件設定操作とを主に実施するために設けられる。通常のCTスキャンモードは一般的なボリュームスキャンを実行するためのモードであり、新規な機能ではないので、詳細な説明は省略する。透視モードは、X線コンピュータ断層撮影装置を使って、X線診断装置を用いたX線透視に近似的な透視機能を実現するモードであり、透視モードについて以下詳細に説明する。
【0019】
透視条件設定支援部121は、操作者による透視条件を分かり易く簡易に設定するための設定画面を提供する。提供される設定画面については後述する。フットスイッチ119は、ガントリ100又は寝台137に近傍する床面上の任意の位置に配置することができる足踏式のスイッチである。透視モードにおいて、フットスイッチ119が踏まれてオン状態が継続されている期間、X線が被検体に照射され、ライブの透視が実行される。つまり、透視モードでは、X線管101が1回転するごとに2乃至3枚、さらにそれ以上の設定された枚数の画像が撮影される。X線管101が連続的に回転すると、X線管101が1回転する時間、例えば0.4秒に等価な周期で各撮影角度の画像が繰り返し発生される。この繰り返し発生される画像を即時的に表示することにより、フレームレートは比較的遅いものの撮影対象の動的な変位を確認できる程度の動画像を提供できる。透視制御部120は、CT透視動作を実行するために各部を制御する。
【0020】
透視モードは、ステレオ透視形式と、バイプレーン形式と、これらステレオ透視とバイプレーンとを組み合わせたコンバイン形式とを有する。これら各形式は透視角度が相違する。本実施形態に係る透視モードでは、フレーム102にともなってX線管101及びX線検出器103が被検体の周囲を連続的に回転する。その回転が継続されている期間であってフットスイッチ119がオン状態に移行されている期間中に、X線管101が、X線管101の回転軌道上の少なくとも2箇所(以下、透視位置又は透視角度という)を通過する都度、パルス状のX線が繰り返し発生される。このX線の発生に同期してX線検出器103から出力されるデータに基づいて投影画像が生成され、予め各透視位置に対して割り当てられているモニタ116、117、118に動画として即時的に表示される。ステレオ透視形式が選択されているとき、2つの透視角度は、5−10°の範囲の何れかの角度差に制限される。この角度差は、両眼視差に対応しており、2つの透視画像を左右の目でそれぞれ視覚することにより、立体視が可能になる。バイプレーン形式が選択されているとき、2つの透視角度の差に制限はないが、典型的には90°に初期設定される。コンバイン形式が選択されているとき、透視位置は3箇所に設定される。2箇所の透視位置は5−10°の範囲の何れかの角度差に設定されてステレオ透視形式として機能し、その2箇所の一方の透視位置と残りの1箇所の透視位置とは典型的には90°の角度差に設定され、バイプレーン形式として機能する。
【0021】
図3には、本実施形態による透視制御部120の制御による透視モードの動作手順を示している。まず、通常のCTスキャン、ここではボリュームスキャンが実行される(S11)。ボリュームスキャンにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成される。ボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成される。透視条件設定支援部121により擬似的な3次元画像が表示され、擬似的な3次元画像に対して透視位置(Z位置)が設定される(S12)。その設定位置に架台100が移動される。
【0022】
また擬似的な3次元画像を含む透視条件設定支援画面が構成される。透視条件の主なものは、ステレオ透視形式、バイプレーン形式、コンバイン形式の選択と、透視角度の指定とである。擬似的な3次元画像にX線管101の回転軸Zを表すラインが重ねて表示される。さらにラインを中心としてそれに直交する面内で放射状に透視角度の複数の候補線が重ねられる。候補線は、回転軌道中のX線照射されるビューポイントから検出器中心を結ぶ線分である。複数の候補線から、手術対象の部位が見やすいと判断された候補線が指定されたとき、候補線を中心としたその視野を表す半透明のコーンビームモデルが表示される。コーンビームモデル内に透視対象部位が含まれることを確認して、指定候補線を確定し、透視角度が設定される。ステレオ透視形式が選択されているとき、確定された透視角度との間の角度差が5乃至10°の範囲にある候補線のみ表示される。これは実質的に透視角度の差が制限されることを意味しており、この角度差の範囲は立体視を可能にする両眼視差の可能な範囲に対応している(図10参照)。ステレオ透視形式では、2つの透視角度が設定される。
【0023】
バイプレーン形式でも2つの透視角度が設定されるが、その角度差には制限がなく、2つの任意の透視角度が設定可能である。バイプレーン形式では、1つの透視角度が設定されると、その透視角度との間で90°の角度差を有する前後2つの候補線が初期的に表示される(図12参照)。典型的には、これら90°の角度差を有する2つの透視角度が設定される。コンバイン形式では、上記ステレオ透視形式とバイプレーン形式における透視角度の設定手順が繰り返される。ただし、ステレオ透視形式のもとで設定される2つの透視角度と、バイプレーン形式のもとで設定される2つの透視角度との間で1つの透視角度は共通設定される(図11参照)。
【0024】
図4には、透視条件設定支援部121による他の簡易な透視条件設定支援画面を示している。この場合、ボリュームスキャンは必要とされない。X線管101の回転軌道モデル200に、第1の透視角度を表す透視線201と第2の透視角度を表す透視線202とが重ねられる。透視線は、回転軌道中のX線照射されるビューポイントから検出器中心を結ぶ線分である。透視線201、202をポインタ203でドラッグして任意の角度まで回転させ、所望角度で確定する。同画面には、第1の透視角度の数値表示欄204、第2の透視角度の数値表示欄205、それらの透視角度差の数値表示欄206、透視角度差を回転角速度で除算して得られる時間差表示欄207、立体視のオン/オフ設定欄208が表示される。これら値は透視線201、202の回転操作に関連される。また第1、第2の透視角度を数値入力することで、それら入力された値に透視線201、202の回転が関連される。立体視(ステレオ透視)がオンに設定されているとき、第1、第2の透視角度との間の角度差が5乃至10°の範囲に収まるように、第1の透視角度に対して第2の透視角度の入力範囲が制限される。立体視(ステレオ透視)がオフに設定されているとき、上記バイプレーン形式で説明した通り、第1の透視角度と第2の透視角度との角度差に関する制限は解除される。
【0025】
図5には、透視条件設定支援部121によるさらに他の透視条件設定支援画面を示している。この場合、ボリュームスキャンで収集されたビューアングルの相違する複数の投影画像211の全て又は一部がサムネイルで表示される。複数の投影画像211から、手術対象の部位が見やすいと判断された透視画像211が指定されたとき、X線管101の回転軌道モデル212に、指定された透視画像211に対応するビューポイントマーク213が重ねられる。指定された透視画像211は少し表示拡大され、または高輝度で表示される。このビューポイントマーク213をポインタ203でドラッグして任意の角度まで回転軌道モデル212上を移動させると、ビューポイントマーク213に対応する透視画像211は少し表示拡大され、または高輝度で表示される。投影画像で確認しながら所望の透視角度を確定する。
【0026】
以上の通り透視角度が設定された後、透視位置にガントリ(架台)100又は天板138が移動される(S13)。以上の準備が完了した後に、透視開始が指示される(S14)。回転フレーム102がX線管101及びX線検出器103をともなって連続的に回転される。この回転フレーム102の連続回転は透視終了指示(S19)されるまで、継続される。回転フレーム102の連続回転期間中にフットスイッチ119がオンされたとき、そのオン状態が維持されている期間に、X線管101からパルスX線が1回転につき2又は3回被検体に照射される(S15)。図6、図9に示すように、照射ポイントは、設定された透視角度に応じたビューポイントである。X線は、図8に示すように、X線検出器103の検出素子が配列されている全感度領域に照射されるようX線検出器103の感度領域に応じた最大ファン角及び最大コーン角で照射される。
【0027】
第1の透視角度に対応する投影画像は、例えば右目用画像としてステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の予め割り当てられている画面(右目用画面)に表示される。第2の透視角度に対応する投影画像は、例えば左目用画像としてステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の予め割り当てられている画面(左目用画面)に即時的に表示される。右目用画面と右目用画面それぞれでは、1回転時間の逆数に等価なフレームレートで動画として表示される。
【0028】
バイプレーン形式が選択されているとき、第1の透視角度に対応する投影画像は、ステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118の一方の画面に表示され、第2の透視角度に対応する投影画像は他方の画面又はモニタ116に表示される。コンバイン形式が選択されているとき、左右目用の投影画像はステレオモニタ117又はメガネ式ステレオモニタ118のそれぞれの画面に表示され、90°の角度左を有する透視角度の投影画像はモニタ116に表示される。
【0029】
透視期間中、ガントリチルト指示が入力されたとき、図6に示すように、透視動作は継続された状態でガントリ100が指示方向に傾斜される。また、透視期間中、ボリュームスキャン指示が入力されたとき、図7に示すように、ボリュームスキャン開始から1回転又は指定回転する間だけ連続X線が最大ファン角及び最大コーン角のままで照射される。ボリュームスキャンにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成され、このボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成され、モニタ116に表示される。それとともに、その間の第1、第2透視角度に対応するビューポイントの投影データを投影画像として表示され、透視動作は継続される。実際には、ボリュームデータの再構成処理及び3次元画像処理には投影画像表示(透視)より処理時間を長く要することから、即時的ではない。
【0030】
透視期間中、工程S12と同様に透視位置の変更(再設定)が指示されたとき(S17)、工程S13に戻り、その位置に架台100が移動される。
【0031】
以上の透視動作は目的達成されるまで、つまりカテーテル術が終了するまで繰り返され(S18)、その後、透視動作は終了する(S19)最終的に、ボリュームスキャンが実行され、それにより収集された投影データに基づいて再構成装置114によりボリュームデータが再構成され、このボリュームデータから3次元画像処理部128により擬似的な3次元画像が生成され、モニタ116に表示される。それによりカテーテル術の結果を確認する(S20)。
【0032】
具体的な処置を想定した動作は次の通りである。
(肝臓癌TAE(塞栓術)
(1) 単純CTを撮影して広視野エリアデテクタを装備したADCT Volume Scan(16cm)で透視する範囲を決定する。
(2)平面透視機能を用いて、カテーテルをSMA(上腸間脈動脈)に持って行き、Volume Scanで,CTAP(門脈造影)を撮影する。
(3)平面透視にて、カテーテルを総肝動脈に持って行き,Volume ScanでCTAを撮影する。
(4)CTAより血管の3次元画像を作成し、腫瘍への栄養血管を同定する。
(5)3次元画像を確認しながらマイクロカテーテルを操作し腫瘍の栄養血管に持って行く。
(6)CTAにて腫瘍の染まりを確認する。
(7)平面透視にて確認しながら腫瘍へ塞栓物を投入する。
(8)CTAにて腫瘍に塞栓物が行き渡ったことを確認する。
【0033】
上記手順(5)において、作成した3次元画像から血管の分岐部が分かる位置を表示する。その位置に架台回転位置とチルトを行い(自動でもいける)平面透視にて確認する。架台を回転させながらステレオで撮影→立体視し、実際のマイクロカテーテルの状態とCTAの3次元画像で血管走行状態を確認しながら、カテーテル操作を行い適切な血管へ誘導する。通常の3断面透視は範囲不足で使用しても効果が得られない。
【0034】
本実施形態では、1回転中に2回しか曝射せず立体視可能な事により、操作もスムーズかつ被ばくも少なくて済む効果がある。必要に応じて,表示位置を変更されて操作を繰り返す(この時,CTAの3次元表示も連動する)。
【0035】
(針生検(肺野))
(1)単純CTを撮影してADCT Volume Scan(16cm)で透視する範囲を決定する。
(2)3次元画像を作成し、腫瘍に到達するまでに気管支や血管を傷つけない針のガイドを検討する。
(3)ガイドに沿って,主要な血管や気管支が分かりやすい表示角度を算出する。
(4)その角度になるように架台の回転位置やチルトを行い、平面透視にて確認する。
(5)架台を回転させながらステレオ撮影し、立体視し、生検用の針を周りの血管や気管支の位置を確認しながらターゲットの腫瘍まで進める。
(6)必要に応じて,表示位置を変更させてこの操作を繰り返す。
【0036】
以上の通り本実施形態により、ADCTの利点を活かした広範囲での3次元CT透視像を最小の被ばく量で得ることができ、かつ穿刺やカテーテル操作を3次元Volume画像とFusionさせながら行うことで、精度向上や手術時間の短縮が期待できる。さらに数百枚をリアルタイムに再構成しMPRしたりする必要もなく、低コストにて実現可能である。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、エリアデテクタを装備したX線コンピュータ断層撮影装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0039】
101…X線管、102…回転フレーム、103…2次元X線検出器、109…高電圧発生部、114…再構成処理部、116、117、118…モニタ、120…透視制御部、121…透視条件設定支援部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、
2次元状に配列された複数のX線検出素子を有するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを回転可能に支持する回転機構と、
前記X線管からX線を発生させるために前記X線管に印加される高電圧を発生する高電圧発生部と、
前記X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部と、
複数の表示部と、
前記X線管と前記X線検出器とを連続的に回転させ、前記X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、前記X線の発生に同期して前記X線検出器から出力されるデータに基づいて前記複数箇所にそれぞれ対応付けた前記複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために、前記回転機構と前記高電圧発生部と前記表示部とを制御する透視制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記複数箇所は5−10°の範囲の何れかの角度差を有することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記投影画像はステレオ視可能に前記表示部に表示されることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記X線管と前記X線検出器との回転軸を傾斜させるチルト機構をさらに備え、
前記透視制御部は、前記連続的な回転、前記X線の発生及び前記投影画像の表示と並行して操作者指示に従って前記回転軸を傾斜させるために前記チルト機構を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記透視制御部は、前記連続的な回転、前記X線の発生及び前記投影画像の表示と並行して操作者指示に従って前記X線管の回転軌道上の複数箇所を変位させるために前記高電圧発生部を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記再構成されたマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータから前記複数箇所それぞれを視点とした複数の2次元画像を生成する3次元画像処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項1】
X線管と、
2次元状に配列された複数のX線検出素子を有するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを回転可能に支持する回転機構と、
前記X線管からX線を発生させるために前記X線管に印加される高電圧を発生する高電圧発生部と、
前記X線検出器の出力に基づいてマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータを再構成する再構成処理部と、
複数の表示部と、
前記X線管と前記X線検出器とを連続的に回転させ、前記X線管の回転軌道上の複数箇所においてパルス状のX線を繰り返し発生させ、前記X線の発生に同期して前記X線検出器から出力されるデータに基づいて前記複数箇所にそれぞれ対応付けた前記複数の表示部に投影画像を動画として即時的に表示させるために、前記回転機構と前記高電圧発生部と前記表示部とを制御する透視制御部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記複数箇所は5−10°の範囲の何れかの角度差を有することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記投影画像はステレオ視可能に前記表示部に表示されることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記X線管と前記X線検出器との回転軸を傾斜させるチルト機構をさらに備え、
前記透視制御部は、前記連続的な回転、前記X線の発生及び前記投影画像の表示と並行して操作者指示に従って前記回転軸を傾斜させるために前記チルト機構を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記透視制御部は、前記連続的な回転、前記X線の発生及び前記投影画像の表示と並行して操作者指示に従って前記X線管の回転軌道上の複数箇所を変位させるために前記高電圧発生部を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記再構成されたマルチスライスの断層像データ又はボリュームデータから前記複数箇所それぞれを視点とした複数の2次元画像を生成する3次元画像処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−130922(P2011−130922A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293358(P2009−293358)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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