X線位置決め装置
【課題】X線治療に先立ってX線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定するX線位置決め装置に関し、被検体上に患部の範囲及び位置を視認できるマークを簡便に形成できるようにして作業効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】被検体へX線を照射するX線源21と、前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイア3と、前記X線源21と前記イメージ・インテンシファイア3との間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータ24と、前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、を備える。
【解決手段】被検体へX線を照射するX線源21と、前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイア3と、前記X線源21と前記イメージ・インテンシファイア3との間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータ24と、前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線治療に先立ってX線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定するX線位置決め装置に関し、特に被検体の体表面に患部の位置及び範囲をマーキングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌や腫瘍等の患部にX線を曝射することにより、当該患部の組織細胞を破壊、又は分裂阻止等することで、その治療を目指すX線治療が広く行われるようになっている。このX線治療は、患部周辺の正常組織の障害を最小限度に抑えるため、又患部への効果的なX線照射のため、患部にX線を正確に照射することが重要である。
【0003】
そこで、X線治療に先立って、X線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定する。このシミュレーション及び決定には、X線位置決め装置が利用される。X線位置決め装置は、X線を照射するX線源と、被検体を透過したX線から被検体内の可視光線画像を形成するイメージ・インテンシファイアを備える。可視光線画像は、X線が透過した範囲の構造が投影された透視画像若しくは撮影画像である。このX線位置決め装置は、X線治療装置よりも弱いX線を照射し、透視画像若しくは撮影画像に基づき被検体内を観察して患部を特定し、X線の照射方向や照射野を決定する。決定された照射方向や照射野は、X線治療装置の制御に利用される。
【0004】
また、X線位置決め装置は、X線源と被検体との間に介在するようにワイヤコリメータを備えている。ワイヤコリメータは、井桁状に組まれて配置され、患部を囲うように開度が調整される。X線によりワイヤコリメータの線影は、被検体内の透視画像若しくは撮影画像上に投影される。投影されたワイヤコリメータの線影により、透視画像若しくは撮影画像上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる。
【0005】
さらにワイヤコリメータよりもX線源側には、X線源を模した可視光線を照射する光源が配置されている。この光源から照射される可視光線は、X線源から照射されるX線の放射方向を模している。光源から可視光線を照射することで、被検体の体表面上にワイヤコリメータの線影が投影される。この体表面上のワイヤコリメータの線影により、被検体の体表面上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる(例えば、「特許文献1」参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平07−116153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、光源に照らされて体表面上に形成されたワイヤコリメータの線影は、医師又は技師により、マジック等でなぞられてマーキングされる。このマーキングのために、医師又は技師は、X線位置決め装置が設置されたX線室とX線位置決め装置を操作する操作室を行き来しなくてはならない。このX線室と操作室との行き来は、医師又は技師の作業効率を低下させる一因となっている。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体上に患部の範囲及び位置を視認できるマークを医師又は技師の手に依らず簡便に形成できるようにして医師又は技師の作業効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、被検体へX線を照射するX線源と、前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、前記X線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータと、前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の位置及び形状を算出する演算手段をさらに備え、前記体表マーキング手段は、演算結果に従ってマーキングするようにしてもよい(請求項2記載の発明に相当)。
【0011】
前記体表マーキング手段は、前記体表面位置検出手段を備え、前記体表面位置検出手段は、感圧によって体表面位置を検出する圧迫部材であり、前記体表面マーキング手段の前記体表面への接近移動によって前記体表面と接触するようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0012】
前記演算手段は、前記ワイヤコリメータ位置検出手段と前記体表面位置検出手段とが検出した検出結果に基づき、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係から前記算出を行うようにしてもよい(請求項4記載の発明に相当)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被検体の体表面にワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の形状及び位置を求め、その投影像を体表マーカを制御してマーキングするようにしたので、医師又は技師がマーキングのためにX線室と操作室を行き来する必要がなくなり、医師又は技師の作業効率が向上する。また、被検体の体表面にワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像を精度よくマーキングすることができ、患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係るX線位置決め装置の構成例を示す概要図である。X線位置決め装置1は、X線治療に先立ってX線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定する。
【0015】
このX線位置決め装置1は、X線を照射する照射ヘッド2と、この照射ヘッド2と対向して配設されるイメージ・インテンシファイア3と、被検体Pを載置する寝台8と、体表マーカ9を備える。
【0016】
X線位置決め装置1の構造は、固定架台4を装置設置面に固定し、回転架台5を回転架台5を固定架台4に支持させて中空に配置し、アーム6,7を回転架台5に設置した構造を有する。この構造体の各所に照射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3と寝台8と体表マーカ9が配置される。
【0017】
照射ヘッド2は、アーム6の先端に配置され、イメージ・インテンシファイア3は、アーム7の先端に配置されている。寝台8は、照射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3との間に介在して配置されており、被検体Pの体軸方向に移動可能である。体表マーカ9は、アーム6を含むアーム6の取り付け部に配設されている。
【0018】
回転架台5は、固定架台4に回動軸10を介して支持されており、回動軸10の軸回りに回転が可能となっている。回転架台5の回転により、照射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及び体表マーカ9も回動軸10の軸回りに回転し、異なる角度でのX線照射を可能にしている。
【0019】
アーム6,7は、回転架台5に沿って設置されているレールを根元部分で把持して位置を保持しており、回転架台5に沿って摺動可能となっている。各アーム6,7の摺動により、照射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及び体表マーカ9は、寝台8に載置された被検体Pに対して接近又は離反することが可能となっている。
【0020】
図2は、体表マーカ9の拡大図であり、図2の(a)と(b)は、体表マーカ9の移動前後を示す。図2に示すように、体表マーカ9は、アーム6の取り付け部より延びるアーム9aとアーム9aの先端に取り付けられたマーカ部9bで構成される。アーム9aは、複数の関節を有する。この体表マーカ9は、アーム9aの関節により、上下動の動きに加え、アーム9aが起倒し、任意の平面上を移動する。
【0021】
図3は、X線位置決め装置1による透視画像形成の基本構造を示す図である。図3に示すように、照射ヘッド2には、X線管等のX線源21が内設され、このX線源21とイメージ・インテンシファイア3との間に位置するように、X線絞り22、及びワイヤコリメータ機構23が内設されている。
【0022】
X線源21は、電子加速器や対電子線ターゲット等で構成されており、前記電子加速器で電子を加速させ、前記対電子線ターゲットに衝突させることでX線を発生させる。
【0023】
イメージ・インテンシファイア3は、透過したX線を可視光に変換する光学系で構成されている。イメージ・インテンシファイア3には、X線源21で発生したX線が、被検体Pを透過して到達する。イメージ・インテンシファイア3は、被検体Pを透過したX線を可視光線画像に変換して被検体内の透視画像を形成する。尚、イメージ・インテンシファイア3の下方には、CCDイメージセンサが配され、さらに可視光線画像を光電変換することにモニタ等に表示可能な透視画像が作成される。
【0024】
X線絞り22は、X線の放射範囲に介在して照射野を画成する。X線絞り22は、X線を挟んで対向するブロック対を有する。ブロック対は、例えばタングステン等のX線を吸収する材質からなる。このブロック対は、X線源を中心とした同一円弧軌道に沿って、相互に接近又は離反移動可能にされている。X線絞り22は、ブロック対相互の接近又は離反移動を調節することで、ブロック対でX線の一部を遮断し、適切な照射野を規定する。
【0025】
図4は、ワイヤコリメータ機構24の構造を示す斜視図である。ワイヤコリメータ機構24は、患部のおおよその位置及び範囲を透視画像上で視認させる。このワイヤコリメータ機構24は、ワイヤコリメータ25X1,25X2,25Y1,25Y2(以下、任意のワイヤコリメータ又はワイヤコリメータ全体を指し、特に所定のワイヤコリメータを特定しない場合は、単に「ワイヤコリメータ25」という)を井桁状に組んで配設している。患部を囲むようにワイヤコリメータ25の開度を調整し、透視画像若しくは撮影画像上に患部を囲んだワイヤコリメータ25の線影が投影されることで、患部のおおよその位置及び範囲が透視画像若しくは撮影画像上で視認できる。
【0026】
ワイヤコリメータ機構24は、ワイヤコリメータ25の開度調整のため、ベルト26とプーリ27と駆動モータ28からなる駆動機構を有する。ベルト26は、井桁状のワイヤコリメータ25を囲って長方形又は正方形状に延設され、一辺につき各2本が並設される。プーリ27は、計8本のベルト26の両端にそれぞれ配され、各ベルト26を無限軌道状に巻き架けている。駆動モータ28は、各ワイヤコリメータ25に対応して計4機が配置されている。
【0027】
各ワイヤコリメータ25は、配設方向と直交する二辺に延設されたベルト26に架設されている。配設方向を同じくする2本のワイヤコリメータ25X1,25X2、又はワイヤコリメータ25Y1,25Y2は、それぞれ異なるベルト26に架設されている。
【0028】
各駆動モータ28は、各プーリ27を回転させて、対応するワイヤコリメータ25を並行搬送する。各駆動モータ28は、対応するワイヤコリメータ25を架設する2本のベルト26を巻き架けた各プーリ27を同一角度回転させる。プーリ27の回転によりワイヤコリメータ25がベルト27に沿って平行に搬送される。4機の駆動モータは、独立して駆動可能であり、各ワイヤコリメータ25は、それぞれ独立して平行搬送される。
【0029】
駆動モータ28のシャフトには、ギアが圧入固定されており、このギアを介してポテンショメータ29が設置されている。ポテンショメータ29は、内部に可変抵抗を有し、駆動モータ28の回転量の増大に伴って可変する抵抗値から駆動モータ28の回転量を検出している。駆動モータ28の回転量検出により、各ワイヤコリメータ25の変位量が算出可能となる。
【0030】
図5は、X線位置決め装置1の照射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャートである。X線位置決め装置1は、回転架台5を回転させ、寝台8を被検体Pの体軸方向に移動させ、照射ヘッド2及びイメージ・インテンシファイア3を被検体P方向に接近又は離反させて、アイソセンタを被検体Pの患部位置に合わせる(S01)。X線源21にX線を照射させ(S02)、イメージ・インテンシファイア3に被検体Pを透過したX線から透視画像を形成させる(S03)。透視画像から患部が特定されると、患部を囲むように各ワイヤコリメータ25を移動させ(S04)、撮影画像上に患部を囲むワイヤコリメータ25の線影を投影する(S05)。
【0031】
次に体表マーカ9を駆動させ、被検体Pの体表面に位置させる(S06)。
【0032】
ポテンショメータ29の検出結果を解析して、各ワイヤコリメータ25の位置を算出する(S07)。さらにポテンショメータの検出結果の解析、及び照射ヘッド2の摺動量の解析をして、体表面に接触した体表マーカ9とX線焦点位置との位置関係を算出する(S08)。S7及びS8の算出結果、及び予め定まるX線の焦点位置とワイヤコリメータ25設置面の位置関係とから、ワイヤコリメータ25が体表面に投影された場合の投影像形状とその位置を算出する(S09)。
【0033】
算出された投影像の形状及び位置に基づき、体表マーカ9を移動させて被検体の体表面上にワイヤコリメータ25が体表面に投影された場合の投影像をマーキングする(S10)。
【0034】
体表マーカ9及び体表マーカ9に投影像をマーキングさせる制御機構について図6乃至図11に基づき詳細に説明する。X線位置決め装置1は、体表マーカ9に投影像をマーキングさせる制御機構11を備える。また、体表マーカ9には、アーム9aに関節を動かす駆動モータ9cと各関節の移動方向及び移動量を検出するポテンショメータ9dを備え、マーカ部9bに体表との接触を検知する圧迫筒9eを備える。
【0035】
制御機構11は、いわゆるCPUやRAM及びROM等の演算装置12とワイヤコリメータ制御装置13と体表マーカ制御装置14を備える。ROMには、制御プログラムが格納されており、制御プログラムをRAMに展開し、CPUが制御プログラムに従った演算処理及び制御処理を行い、体表マーカ9、照射ヘッド2、及びワイヤコリメータ機構24の位置データを検出して駆動を制御する。
【0036】
演算装置12は、照射野画成時にワイヤコリメータ25の変位指示情報を作成してワイヤコリメータ制御装置13に出力し、マーキング時に体表マーカ9の駆動指示情報を作成して体表マーカ制御装置14へ出力する。
【0037】
ワイヤコリメータ25の変位指示情報は、各ワイヤコリメータ25の変位量を反映する情報である。体表マーカ9の駆動指示情報は、マーカ部の移動方向及びその方向への移動量を反映する情報である。この駆動指示情報は、ワイヤコリメータ25と体表マーカ9とX線焦点との位置関係により作成され、移動方向及び移動量の情報を含む。ワイヤコリメータ25と体表マーカ9とX線焦点との位置関係は、X線焦点又はX線軸上の一点を原点として、ワイヤコリメータ25の位置算出、体表マーカの位置算出、及びこれら算出に基づく体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出により作成される。
【0038】
ワイヤコリメータ制御装置13は、演算装置12から出力された変位指示情報に従って、ワイヤコリメータ機構24が備える駆動モータ28を制御し、各ワイヤコリメータ25をそれぞれ変位させる。体表マーカ制御装置14は、体表マーカ9を駆動する駆動モータ9cを制御して体表マーカ9を体表面へ移動させ、又演算装置12から出力された駆動指示情報に従って、体表マーカ9を駆動する駆動モータ9cを制御して体表面におけるワイヤコリメータ25の投影像をマーキングさせる。
【0039】
ワイヤコリメータ25の位置算出は、ポテンショメータ29によって検出された駆動モータ28の回転量に基づき算出する。ワイヤコリメータ25の位置は、X線焦点とワイヤコリメータ25の設置面との距離、及びX線照射軸とワイヤコリメータ25の距離で表される。
【0040】
演算装置12には、各ワイヤコリメータ25の位置情報を格納する格納エリアが確保されている。この格納エリアには、前回の各ワイヤコリメータ25の位置情報が予め格納されている。また、演算装置12は、駆動モータ28の回転量をワイヤコリメータ25の変位量を示す変位情報に変換する変換手段を有している。X線焦点とワイヤコリメータ25の設置面との距離は、予め定まっている。
【0041】
ワイヤコリメータ25の位置算出処理を図7に示す。まず、駆動モータ28の駆動により、ワイヤコリメータ25の位置を変位させ、ポテンショメータ29から駆動モータ28の回転量を示す電気信号が入力される(S21)。演算装置12は、入力された信号をワイヤコリメータ25の変位情報に変換する(S22)。変換されたワイヤコリメータ25の位置を位置情報として格納エリアに更新して格納する(S23)。この位置算出処理は、ワイヤコリメータ25の変位と同期してリアルタイムに行われ、ポテンショメータ29から信号が出力されるごとにワイヤコリメータ25の位置を算出して更新する処理(S21〜S23)を繰り返す。
【0042】
体表マーカ9の位置算出は、照射ヘッド2の移動量及び体表マーカ9の移動量により算出される。体表マーカ9の位置は、X線焦点と体表面に接触した体表マーカ9との距離で表される。体表面への接触は圧迫筒9eで検出する。演算装置12には、体表マーカ9の位置情報を格納する格納エリアが確保されている。この格納エリアには、前回の体表マーカ9の位置を示す位置情報が予め格納されている。
【0043】
体表マーカ9の位置算出処理を図8に示す。まず、照射ヘッド2が移動すると、照射ヘッド2の移動量を示す情報を、前回の体表マーカ9の位置情報に加算する(S31)。次に、駆動モータが駆動して体表マーカ9の位置が変位させ、ポテンショメータから駆動モータの回転量を示す電気信号が入力される(S32)。演算装置12は、入力された信号を体表マーカ9の変位情報に変換する(S33)。この変位情報を予め格納されている体表マーカ9の位置情報にさらに加算して(S34)、体表マーカ9の位置を算出する。算出された体表マーカ9の位置を位置情報として格納エリアに更新して格納する(S35)。この位置算出処理は、照射ヘッド2及び体表マーカ9の変位と同期してリアルタイムで行われ、ポテンショメータから信号が出力されるごとに新たに位置を算出して更新する処理(S31〜S35)を繰り返す。
【0044】
図9は、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出の算出概念を説明する図である。X線の焦点から体表マーカ9までの距離をHmとし、X線の焦点からワイヤコリメータ25の設置面までの距離をHwとし、X線照射軸からワイヤコリメータ25までの距離をDwとする。体表面上における各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、体表面とX線軸との交点を原点とすると、HmとHwとの比をDwに乗じることで求められる。
【0045】
すなわち、体表面上における各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、Dm=Dw×(Hm/Hw)で算出される。各ワイヤコリメータ25は、ベルト26に沿って平行移動するので、各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像が画成している長方形又は正方形の各辺の中点を示し、各距離Dmによって、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置が算出される。
【0046】
図10は、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出動作を示すフローチャートである。まず、演算装置12は、位置情報を格納する格納エリアから、X線の焦点から体表マーカ9までの距離Hmを読み出し(S41)、X線の焦点からワイヤコリメータ25の設置面までの距離Hwを読み出し(S42)、X線照射軸から各ワイヤコリメータ25までの距離Dwを読み出す(S43)。
【0047】
次に、各ワイヤコリメータ25について、Dw×(Hm/Hw)を演算して(S44)、得られた値をそれぞれ格納エリアに格納する(S45)。
【0048】
図11は、算出された体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置に基づく体表マーカ9の動作制御を示すフローチャート図である。各ワイヤコリメータ25X1、25Y1、25X2、25Y2の位置、すなわちX線軸と体表面との交点を原点とした場合の当該原点からの距離をそれぞれDmX1、DmY1、DmX2、DmY2とする。
【0049】
まず、駆動モータを駆動させてマーカ部が原点位置に位置するように体表マーカ9の位置を移動させる(S01)。次に、マーカ部を、ワイヤコリメータ25X1の方向へ当該ワイヤコリメータの距離DmX1分移動させる(S52)。移動が終了すると、マーカ部を体表面に当接させる(S53)。
【0050】
マーカ部を体表面に当接させた状態で、ワイヤコリメータ25Y1の方向へ当該ワイヤコリメータの距離DmY1分移動させる(S54)。
【0051】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25X2の方向へワイヤコリメータ25X1の距離DmX1とワイヤコリメータ25X2の距離DmX2分移動させる(S55)。
【0052】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25Y2の方向へワイヤコリメータ25Y1の距離DmY1とワイヤコリメータ25Y2の距離DmY2分移動させる(S56)。
【0053】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25X1の方向へワイヤコリメータ25X2の距離DmX2とワイヤコリメータ25X1の距離DmX1分移動させる(S57)。
【0054】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25Y1の方向へワイヤコリメータ25Y2の距離DmY2分移動させる(S58)。
【0055】
この体表マーカ9の駆動により、体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像がマーキングされる。
【0056】
このように、本実施形態のX線位置決め装置1は、体表面にマーキングを行う体表マーカ9を備えるようにし、体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像の形状及び位置を算出して、算出結果に基づいてマーキングさせるようにした。
【0057】
従って、マーキングするためにX線室と操作室を行き来する必要がなくなり、医師又は技師の作業効率が向上する。また、被検体の体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像を精度よくマーキングすることができ、患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係るX線位置決め装置の構成例を示す概要図である
【図2】本実施形態に係るX線位置決め装置が備える体表マーカの設置部分付近の拡大斜視図である。
【図3】本実施形態に係るX線位置決め装置のX線照射軸線上の基本構造を示す図である。
【図4】本実施形態に係るX線位置決め装置が備えるワイヤコリメータ機構の構造を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るX線位置決め装置の照射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャート図である。
【図6】本実施形態に係るX線位置決め装置の制御機構を示すブロック図である。
【図7】本実施形態に係るX線位置決め装置のワイヤコリメータ位置算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】本実施形態に係るX線位置決め装置の体表マーカ位置算出処理を示すフローチャート図である。
【図9】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表面上におけるワイヤコリメータ投影像の形状及び位置算出の算出概念を説明する図である。
【図10】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表面上におけるワイヤコリメータ投影像の形状及び位置算出動作を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表マーカの制御動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0059】
1 X線位置決め装置
2 照射ヘッド
21 X線源
22 X線絞り
24 ワイヤコリメータ機構
25,25X1,25X2,25Y1,25Y2 ワイヤコリメータ
26 ベルト
27 プーリ
28 駆動モータ
29 ポテンショメータ
3 イメージ・インテンシファイア
4 固定架台
5 回転架台
6 アーム
7 アーム
8 寝台
9 体表マーカ
9a アーム
9b マーカ部
9c 駆動モータ
9d ポテンショメータ
9e 圧迫筒
10 回動軸
11 制御機構
12 演算装置
13 ワイヤコリメータ制御装置
14 体表マーカ制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線治療に先立ってX線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定するX線位置決め装置に関し、特に被検体の体表面に患部の位置及び範囲をマーキングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌や腫瘍等の患部にX線を曝射することにより、当該患部の組織細胞を破壊、又は分裂阻止等することで、その治療を目指すX線治療が広く行われるようになっている。このX線治療は、患部周辺の正常組織の障害を最小限度に抑えるため、又患部への効果的なX線照射のため、患部にX線を正確に照射することが重要である。
【0003】
そこで、X線治療に先立って、X線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定する。このシミュレーション及び決定には、X線位置決め装置が利用される。X線位置決め装置は、X線を照射するX線源と、被検体を透過したX線から被検体内の可視光線画像を形成するイメージ・インテンシファイアを備える。可視光線画像は、X線が透過した範囲の構造が投影された透視画像若しくは撮影画像である。このX線位置決め装置は、X線治療装置よりも弱いX線を照射し、透視画像若しくは撮影画像に基づき被検体内を観察して患部を特定し、X線の照射方向や照射野を決定する。決定された照射方向や照射野は、X線治療装置の制御に利用される。
【0004】
また、X線位置決め装置は、X線源と被検体との間に介在するようにワイヤコリメータを備えている。ワイヤコリメータは、井桁状に組まれて配置され、患部を囲うように開度が調整される。X線によりワイヤコリメータの線影は、被検体内の透視画像若しくは撮影画像上に投影される。投影されたワイヤコリメータの線影により、透視画像若しくは撮影画像上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる。
【0005】
さらにワイヤコリメータよりもX線源側には、X線源を模した可視光線を照射する光源が配置されている。この光源から照射される可視光線は、X線源から照射されるX線の放射方向を模している。光源から可視光線を照射することで、被検体の体表面上にワイヤコリメータの線影が投影される。この体表面上のワイヤコリメータの線影により、被検体の体表面上で患部のおおよその位置や範囲を視認することができる(例えば、「特許文献1」参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平07−116153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、光源に照らされて体表面上に形成されたワイヤコリメータの線影は、医師又は技師により、マジック等でなぞられてマーキングされる。このマーキングのために、医師又は技師は、X線位置決め装置が設置されたX線室とX線位置決め装置を操作する操作室を行き来しなくてはならない。このX線室と操作室との行き来は、医師又は技師の作業効率を低下させる一因となっている。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検体上に患部の範囲及び位置を視認できるマークを医師又は技師の手に依らず簡便に形成できるようにして医師又は技師の作業効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明は、被検体へX線を照射するX線源と、前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、前記X線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータと、前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の位置及び形状を算出する演算手段をさらに備え、前記体表マーキング手段は、演算結果に従ってマーキングするようにしてもよい(請求項2記載の発明に相当)。
【0011】
前記体表マーキング手段は、前記体表面位置検出手段を備え、前記体表面位置検出手段は、感圧によって体表面位置を検出する圧迫部材であり、前記体表面マーキング手段の前記体表面への接近移動によって前記体表面と接触するようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0012】
前記演算手段は、前記ワイヤコリメータ位置検出手段と前記体表面位置検出手段とが検出した検出結果に基づき、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係から前記算出を行うようにしてもよい(請求項4記載の発明に相当)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被検体の体表面にワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の形状及び位置を求め、その投影像を体表マーカを制御してマーキングするようにしたので、医師又は技師がマーキングのためにX線室と操作室を行き来する必要がなくなり、医師又は技師の作業効率が向上する。また、被検体の体表面にワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像を精度よくマーキングすることができ、患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係るX線位置決め装置の構成例を示す概要図である。X線位置決め装置1は、X線治療に先立ってX線の照射方向や照射野をシミュレーションして決定する。
【0015】
このX線位置決め装置1は、X線を照射する照射ヘッド2と、この照射ヘッド2と対向して配設されるイメージ・インテンシファイア3と、被検体Pを載置する寝台8と、体表マーカ9を備える。
【0016】
X線位置決め装置1の構造は、固定架台4を装置設置面に固定し、回転架台5を回転架台5を固定架台4に支持させて中空に配置し、アーム6,7を回転架台5に設置した構造を有する。この構造体の各所に照射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3と寝台8と体表マーカ9が配置される。
【0017】
照射ヘッド2は、アーム6の先端に配置され、イメージ・インテンシファイア3は、アーム7の先端に配置されている。寝台8は、照射ヘッド2とイメージ・インテンシファイア3との間に介在して配置されており、被検体Pの体軸方向に移動可能である。体表マーカ9は、アーム6を含むアーム6の取り付け部に配設されている。
【0018】
回転架台5は、固定架台4に回動軸10を介して支持されており、回動軸10の軸回りに回転が可能となっている。回転架台5の回転により、照射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及び体表マーカ9も回動軸10の軸回りに回転し、異なる角度でのX線照射を可能にしている。
【0019】
アーム6,7は、回転架台5に沿って設置されているレールを根元部分で把持して位置を保持しており、回転架台5に沿って摺動可能となっている。各アーム6,7の摺動により、照射ヘッド2、イメージ・インテンシファイア3、及び体表マーカ9は、寝台8に載置された被検体Pに対して接近又は離反することが可能となっている。
【0020】
図2は、体表マーカ9の拡大図であり、図2の(a)と(b)は、体表マーカ9の移動前後を示す。図2に示すように、体表マーカ9は、アーム6の取り付け部より延びるアーム9aとアーム9aの先端に取り付けられたマーカ部9bで構成される。アーム9aは、複数の関節を有する。この体表マーカ9は、アーム9aの関節により、上下動の動きに加え、アーム9aが起倒し、任意の平面上を移動する。
【0021】
図3は、X線位置決め装置1による透視画像形成の基本構造を示す図である。図3に示すように、照射ヘッド2には、X線管等のX線源21が内設され、このX線源21とイメージ・インテンシファイア3との間に位置するように、X線絞り22、及びワイヤコリメータ機構23が内設されている。
【0022】
X線源21は、電子加速器や対電子線ターゲット等で構成されており、前記電子加速器で電子を加速させ、前記対電子線ターゲットに衝突させることでX線を発生させる。
【0023】
イメージ・インテンシファイア3は、透過したX線を可視光に変換する光学系で構成されている。イメージ・インテンシファイア3には、X線源21で発生したX線が、被検体Pを透過して到達する。イメージ・インテンシファイア3は、被検体Pを透過したX線を可視光線画像に変換して被検体内の透視画像を形成する。尚、イメージ・インテンシファイア3の下方には、CCDイメージセンサが配され、さらに可視光線画像を光電変換することにモニタ等に表示可能な透視画像が作成される。
【0024】
X線絞り22は、X線の放射範囲に介在して照射野を画成する。X線絞り22は、X線を挟んで対向するブロック対を有する。ブロック対は、例えばタングステン等のX線を吸収する材質からなる。このブロック対は、X線源を中心とした同一円弧軌道に沿って、相互に接近又は離反移動可能にされている。X線絞り22は、ブロック対相互の接近又は離反移動を調節することで、ブロック対でX線の一部を遮断し、適切な照射野を規定する。
【0025】
図4は、ワイヤコリメータ機構24の構造を示す斜視図である。ワイヤコリメータ機構24は、患部のおおよその位置及び範囲を透視画像上で視認させる。このワイヤコリメータ機構24は、ワイヤコリメータ25X1,25X2,25Y1,25Y2(以下、任意のワイヤコリメータ又はワイヤコリメータ全体を指し、特に所定のワイヤコリメータを特定しない場合は、単に「ワイヤコリメータ25」という)を井桁状に組んで配設している。患部を囲むようにワイヤコリメータ25の開度を調整し、透視画像若しくは撮影画像上に患部を囲んだワイヤコリメータ25の線影が投影されることで、患部のおおよその位置及び範囲が透視画像若しくは撮影画像上で視認できる。
【0026】
ワイヤコリメータ機構24は、ワイヤコリメータ25の開度調整のため、ベルト26とプーリ27と駆動モータ28からなる駆動機構を有する。ベルト26は、井桁状のワイヤコリメータ25を囲って長方形又は正方形状に延設され、一辺につき各2本が並設される。プーリ27は、計8本のベルト26の両端にそれぞれ配され、各ベルト26を無限軌道状に巻き架けている。駆動モータ28は、各ワイヤコリメータ25に対応して計4機が配置されている。
【0027】
各ワイヤコリメータ25は、配設方向と直交する二辺に延設されたベルト26に架設されている。配設方向を同じくする2本のワイヤコリメータ25X1,25X2、又はワイヤコリメータ25Y1,25Y2は、それぞれ異なるベルト26に架設されている。
【0028】
各駆動モータ28は、各プーリ27を回転させて、対応するワイヤコリメータ25を並行搬送する。各駆動モータ28は、対応するワイヤコリメータ25を架設する2本のベルト26を巻き架けた各プーリ27を同一角度回転させる。プーリ27の回転によりワイヤコリメータ25がベルト27に沿って平行に搬送される。4機の駆動モータは、独立して駆動可能であり、各ワイヤコリメータ25は、それぞれ独立して平行搬送される。
【0029】
駆動モータ28のシャフトには、ギアが圧入固定されており、このギアを介してポテンショメータ29が設置されている。ポテンショメータ29は、内部に可変抵抗を有し、駆動モータ28の回転量の増大に伴って可変する抵抗値から駆動モータ28の回転量を検出している。駆動モータ28の回転量検出により、各ワイヤコリメータ25の変位量が算出可能となる。
【0030】
図5は、X線位置決め装置1の照射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャートである。X線位置決め装置1は、回転架台5を回転させ、寝台8を被検体Pの体軸方向に移動させ、照射ヘッド2及びイメージ・インテンシファイア3を被検体P方向に接近又は離反させて、アイソセンタを被検体Pの患部位置に合わせる(S01)。X線源21にX線を照射させ(S02)、イメージ・インテンシファイア3に被検体Pを透過したX線から透視画像を形成させる(S03)。透視画像から患部が特定されると、患部を囲むように各ワイヤコリメータ25を移動させ(S04)、撮影画像上に患部を囲むワイヤコリメータ25の線影を投影する(S05)。
【0031】
次に体表マーカ9を駆動させ、被検体Pの体表面に位置させる(S06)。
【0032】
ポテンショメータ29の検出結果を解析して、各ワイヤコリメータ25の位置を算出する(S07)。さらにポテンショメータの検出結果の解析、及び照射ヘッド2の摺動量の解析をして、体表面に接触した体表マーカ9とX線焦点位置との位置関係を算出する(S08)。S7及びS8の算出結果、及び予め定まるX線の焦点位置とワイヤコリメータ25設置面の位置関係とから、ワイヤコリメータ25が体表面に投影された場合の投影像形状とその位置を算出する(S09)。
【0033】
算出された投影像の形状及び位置に基づき、体表マーカ9を移動させて被検体の体表面上にワイヤコリメータ25が体表面に投影された場合の投影像をマーキングする(S10)。
【0034】
体表マーカ9及び体表マーカ9に投影像をマーキングさせる制御機構について図6乃至図11に基づき詳細に説明する。X線位置決め装置1は、体表マーカ9に投影像をマーキングさせる制御機構11を備える。また、体表マーカ9には、アーム9aに関節を動かす駆動モータ9cと各関節の移動方向及び移動量を検出するポテンショメータ9dを備え、マーカ部9bに体表との接触を検知する圧迫筒9eを備える。
【0035】
制御機構11は、いわゆるCPUやRAM及びROM等の演算装置12とワイヤコリメータ制御装置13と体表マーカ制御装置14を備える。ROMには、制御プログラムが格納されており、制御プログラムをRAMに展開し、CPUが制御プログラムに従った演算処理及び制御処理を行い、体表マーカ9、照射ヘッド2、及びワイヤコリメータ機構24の位置データを検出して駆動を制御する。
【0036】
演算装置12は、照射野画成時にワイヤコリメータ25の変位指示情報を作成してワイヤコリメータ制御装置13に出力し、マーキング時に体表マーカ9の駆動指示情報を作成して体表マーカ制御装置14へ出力する。
【0037】
ワイヤコリメータ25の変位指示情報は、各ワイヤコリメータ25の変位量を反映する情報である。体表マーカ9の駆動指示情報は、マーカ部の移動方向及びその方向への移動量を反映する情報である。この駆動指示情報は、ワイヤコリメータ25と体表マーカ9とX線焦点との位置関係により作成され、移動方向及び移動量の情報を含む。ワイヤコリメータ25と体表マーカ9とX線焦点との位置関係は、X線焦点又はX線軸上の一点を原点として、ワイヤコリメータ25の位置算出、体表マーカの位置算出、及びこれら算出に基づく体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出により作成される。
【0038】
ワイヤコリメータ制御装置13は、演算装置12から出力された変位指示情報に従って、ワイヤコリメータ機構24が備える駆動モータ28を制御し、各ワイヤコリメータ25をそれぞれ変位させる。体表マーカ制御装置14は、体表マーカ9を駆動する駆動モータ9cを制御して体表マーカ9を体表面へ移動させ、又演算装置12から出力された駆動指示情報に従って、体表マーカ9を駆動する駆動モータ9cを制御して体表面におけるワイヤコリメータ25の投影像をマーキングさせる。
【0039】
ワイヤコリメータ25の位置算出は、ポテンショメータ29によって検出された駆動モータ28の回転量に基づき算出する。ワイヤコリメータ25の位置は、X線焦点とワイヤコリメータ25の設置面との距離、及びX線照射軸とワイヤコリメータ25の距離で表される。
【0040】
演算装置12には、各ワイヤコリメータ25の位置情報を格納する格納エリアが確保されている。この格納エリアには、前回の各ワイヤコリメータ25の位置情報が予め格納されている。また、演算装置12は、駆動モータ28の回転量をワイヤコリメータ25の変位量を示す変位情報に変換する変換手段を有している。X線焦点とワイヤコリメータ25の設置面との距離は、予め定まっている。
【0041】
ワイヤコリメータ25の位置算出処理を図7に示す。まず、駆動モータ28の駆動により、ワイヤコリメータ25の位置を変位させ、ポテンショメータ29から駆動モータ28の回転量を示す電気信号が入力される(S21)。演算装置12は、入力された信号をワイヤコリメータ25の変位情報に変換する(S22)。変換されたワイヤコリメータ25の位置を位置情報として格納エリアに更新して格納する(S23)。この位置算出処理は、ワイヤコリメータ25の変位と同期してリアルタイムに行われ、ポテンショメータ29から信号が出力されるごとにワイヤコリメータ25の位置を算出して更新する処理(S21〜S23)を繰り返す。
【0042】
体表マーカ9の位置算出は、照射ヘッド2の移動量及び体表マーカ9の移動量により算出される。体表マーカ9の位置は、X線焦点と体表面に接触した体表マーカ9との距離で表される。体表面への接触は圧迫筒9eで検出する。演算装置12には、体表マーカ9の位置情報を格納する格納エリアが確保されている。この格納エリアには、前回の体表マーカ9の位置を示す位置情報が予め格納されている。
【0043】
体表マーカ9の位置算出処理を図8に示す。まず、照射ヘッド2が移動すると、照射ヘッド2の移動量を示す情報を、前回の体表マーカ9の位置情報に加算する(S31)。次に、駆動モータが駆動して体表マーカ9の位置が変位させ、ポテンショメータから駆動モータの回転量を示す電気信号が入力される(S32)。演算装置12は、入力された信号を体表マーカ9の変位情報に変換する(S33)。この変位情報を予め格納されている体表マーカ9の位置情報にさらに加算して(S34)、体表マーカ9の位置を算出する。算出された体表マーカ9の位置を位置情報として格納エリアに更新して格納する(S35)。この位置算出処理は、照射ヘッド2及び体表マーカ9の変位と同期してリアルタイムで行われ、ポテンショメータから信号が出力されるごとに新たに位置を算出して更新する処理(S31〜S35)を繰り返す。
【0044】
図9は、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出の算出概念を説明する図である。X線の焦点から体表マーカ9までの距離をHmとし、X線の焦点からワイヤコリメータ25の設置面までの距離をHwとし、X線照射軸からワイヤコリメータ25までの距離をDwとする。体表面上における各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、体表面とX線軸との交点を原点とすると、HmとHwとの比をDwに乗じることで求められる。
【0045】
すなわち、体表面上における各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、Dm=Dw×(Hm/Hw)で算出される。各ワイヤコリメータ25は、ベルト26に沿って平行移動するので、各ワイヤコリメータ25の投影像の距離Dmは、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像が画成している長方形又は正方形の各辺の中点を示し、各距離Dmによって、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置が算出される。
【0046】
図10は、体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置算出動作を示すフローチャートである。まず、演算装置12は、位置情報を格納する格納エリアから、X線の焦点から体表マーカ9までの距離Hmを読み出し(S41)、X線の焦点からワイヤコリメータ25の設置面までの距離Hwを読み出し(S42)、X線照射軸から各ワイヤコリメータ25までの距離Dwを読み出す(S43)。
【0047】
次に、各ワイヤコリメータ25について、Dw×(Hm/Hw)を演算して(S44)、得られた値をそれぞれ格納エリアに格納する(S45)。
【0048】
図11は、算出された体表面上におけるワイヤコリメータ25の投影像の形状及び位置に基づく体表マーカ9の動作制御を示すフローチャート図である。各ワイヤコリメータ25X1、25Y1、25X2、25Y2の位置、すなわちX線軸と体表面との交点を原点とした場合の当該原点からの距離をそれぞれDmX1、DmY1、DmX2、DmY2とする。
【0049】
まず、駆動モータを駆動させてマーカ部が原点位置に位置するように体表マーカ9の位置を移動させる(S01)。次に、マーカ部を、ワイヤコリメータ25X1の方向へ当該ワイヤコリメータの距離DmX1分移動させる(S52)。移動が終了すると、マーカ部を体表面に当接させる(S53)。
【0050】
マーカ部を体表面に当接させた状態で、ワイヤコリメータ25Y1の方向へ当該ワイヤコリメータの距離DmY1分移動させる(S54)。
【0051】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25X2の方向へワイヤコリメータ25X1の距離DmX1とワイヤコリメータ25X2の距離DmX2分移動させる(S55)。
【0052】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25Y2の方向へワイヤコリメータ25Y1の距離DmY1とワイヤコリメータ25Y2の距離DmY2分移動させる(S56)。
【0053】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25X1の方向へワイヤコリメータ25X2の距離DmX2とワイヤコリメータ25X1の距離DmX1分移動させる(S57)。
【0054】
移動が終了すると、マーカ部をワイヤコリメータ25Y1の方向へワイヤコリメータ25Y2の距離DmY2分移動させる(S58)。
【0055】
この体表マーカ9の駆動により、体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像がマーキングされる。
【0056】
このように、本実施形態のX線位置決め装置1は、体表面にマーキングを行う体表マーカ9を備えるようにし、体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像の形状及び位置を算出して、算出結果に基づいてマーキングさせるようにした。
【0057】
従って、マーキングするためにX線室と操作室を行き来する必要がなくなり、医師又は技師の作業効率が向上する。また、被検体の体表面にワイヤコリメータ25の線影が投影された場合の投影像を精度よくマーキングすることができ、患部の形状及び位置を示すマークに信用性を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係るX線位置決め装置の構成例を示す概要図である
【図2】本実施形態に係るX線位置決め装置が備える体表マーカの設置部分付近の拡大斜視図である。
【図3】本実施形態に係るX線位置決め装置のX線照射軸線上の基本構造を示す図である。
【図4】本実施形態に係るX線位置決め装置が備えるワイヤコリメータ機構の構造を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るX線位置決め装置の照射方向や照射野を決定する概略動作を示すフローチャート図である。
【図6】本実施形態に係るX線位置決め装置の制御機構を示すブロック図である。
【図7】本実施形態に係るX線位置決め装置のワイヤコリメータ位置算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】本実施形態に係るX線位置決め装置の体表マーカ位置算出処理を示すフローチャート図である。
【図9】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表面上におけるワイヤコリメータ投影像の形状及び位置算出の算出概念を説明する図である。
【図10】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表面上におけるワイヤコリメータ投影像の形状及び位置算出動作を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態に係るX線位置決め装置による体表マーカの制御動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0059】
1 X線位置決め装置
2 照射ヘッド
21 X線源
22 X線絞り
24 ワイヤコリメータ機構
25,25X1,25X2,25Y1,25Y2 ワイヤコリメータ
26 ベルト
27 プーリ
28 駆動モータ
29 ポテンショメータ
3 イメージ・インテンシファイア
4 固定架台
5 回転架台
6 アーム
7 アーム
8 寝台
9 体表マーカ
9a アーム
9b マーカ部
9c 駆動モータ
9d ポテンショメータ
9e 圧迫筒
10 回動軸
11 制御機構
12 演算装置
13 ワイヤコリメータ制御装置
14 体表マーカ制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体へX線を照射するX線源と、
前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、
前記X線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータと、
前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、
被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、
X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、
を備えること、
を特徴とするX線位置決め装置。
【請求項2】
前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の位置及び形状を算出する演算手段をさらに備え、
前記体表マーキング手段は、演算結果に従ってマーキングすること、
を特徴とする請求項1記載のX線位置決め装置。
【請求項3】
前記体表マーキング手段は、前記体表面位置検出手段を備え、
前記体表面位置検出手段は、感圧によって体表面位置を検出する圧迫部材であり、前記体表面マーキング手段の前記体表面への接近移動によって前記体表面と接触すること、
を特徴とする請求項1記載のX線位置決め装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記ワイヤコリメータ位置検出手段と前記体表面位置検出手段とが検出した検出結果に基づき、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係から前記算出を行うこと、
を特徴とする請求項2記載のX線位置決め装置。
【請求項1】
被検体へX線を照射するX線源と、
前記被検体を透過したX線から被検体内画像を形成するイメージ・インテンシファイアと、
前記X線源と前記イメージ・インテンシファイアとの間に介在して前記被検体内画像に線影を投影するワイヤコリメータと、
前記ワイヤコリメータの位置を検出するワイヤコリメータ位置検出手段と、
被検体の体表面位置を検出する体表面位置検出手段と、
X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係に基づき、前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像をマーキングする体表マーキング手段と、
を備えること、
を特徴とするX線位置決め装置。
【請求項2】
前記被検体の体表面に前記ワイヤコリメータの線影が投影された場合の投影像の位置及び形状を算出する演算手段をさらに備え、
前記体表マーキング手段は、演算結果に従ってマーキングすること、
を特徴とする請求項1記載のX線位置決め装置。
【請求項3】
前記体表マーキング手段は、前記体表面位置検出手段を備え、
前記体表面位置検出手段は、感圧によって体表面位置を検出する圧迫部材であり、前記体表面マーキング手段の前記体表面への接近移動によって前記体表面と接触すること、
を特徴とする請求項1記載のX線位置決め装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記ワイヤコリメータ位置検出手段と前記体表面位置検出手段とが検出した検出結果に基づき、X線の焦点と前記ワイヤコリメータと前記被検体の体表面との位置関係から前記算出を行うこと、
を特徴とする請求項2記載のX線位置決め装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−202827(P2007−202827A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25706(P2006−25706)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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