X線分析装置
【課題】 Crの特性X線を用いてX線分析を行う際に試料から広角度に発生する回折線を正確に測定する。
【解決手段】 試料Sに照射するCrの特性X線を発生するX線源Fと、試料Sから出る回折線を受光する蓄積性蛍光体プレートと、試料Sと蓄積性蛍光体プレートとの間に配置されたヘリウムパス13とを有するX線分析装置である。ヘリウムパス13の内部にはヘリウムガスが流される。また、ヘリウムパス13は試料Sから出る回折線を通過させる第1窓54aと蓄積性蛍光体プレートの前に位置する第2窓とを有する。蓄積性蛍光体プレートのX線受光面は試料Sを中心として湾曲する。第1窓54aは第2窓よりも小さく形成されており、このため、ヘリウムパス13は空間的に扇形状に広がっている。Crの特性X線、ヘリウムパス及び湾曲する蓄積性蛍光体プレートを用いるので、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて簡単且つ迅速に決定できる。
【解決手段】 試料Sに照射するCrの特性X線を発生するX線源Fと、試料Sから出る回折線を受光する蓄積性蛍光体プレートと、試料Sと蓄積性蛍光体プレートとの間に配置されたヘリウムパス13とを有するX線分析装置である。ヘリウムパス13の内部にはヘリウムガスが流される。また、ヘリウムパス13は試料Sから出る回折線を通過させる第1窓54aと蓄積性蛍光体プレートの前に位置する第2窓とを有する。蓄積性蛍光体プレートのX線受光面は試料Sを中心として湾曲する。第1窓54aは第2窓よりも小さく形成されており、このため、ヘリウムパス13は空間的に扇形状に広がっている。Crの特性X線、ヘリウムパス及び湾曲する蓄積性蛍光体プレートを用いるので、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて簡単且つ迅速に決定できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて試料を分析するX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて迅速に解析したいという要望が高くなっている。この解析は、基本的には、タンパク質等にX線を照射したときにそのタンパク質から発生する散乱線を検出することによって行うことができる。この場合、検出される散乱線の中には、干渉性散乱、非干渉性散乱(いわゆるコンプトン散乱)、光学系に起因する散乱、その他の散乱が含まれる。そして、タンパク質等の構造解析で必要となる散乱は、上記の干渉性散乱である。
【0003】
また、検出された散乱線の中から必要となる干渉性散乱を抽出する際、原子散乱因子「f」の数値が必要となる。この原子散乱因子「f」は、
f=f0+Δf’+iΔf”……(1)
によって表わされる値である。ここで、「f0」は、原子内電子の結合力を無視した場合の原子散乱因子であり、「Δf’」及び「Δf”」は原子による異常分散に対応した補正項である。上式(1)において、異常分散の値「Δf”」はできるだけ大きい方が好ましい。
【0004】
例えば、タンパク質に含まれる重元素である硫黄に関する異常分散を考えると、図13に示すような分布が考えられる。一般に、入射X線の波長を長くすると対象元素、すなわち硫黄の異常分散は大きな値となる。特に、入射X線の波長を硫黄の吸収端の波長よりごくわずかに短く選ぶと、硫黄は大きな異常分散を起こす。
【0005】
タンパク質のような複雑な分子の結晶構造を決定する場合には、異常分散「Δf”」の値はできるだけ大きい方が好ましい。今、現在の一般的なX線分析で用いられているX線源であるCuの特性X線を考えると、CuKαの波長は1.54Åである。また、Cu以外のX線源としてCrの特性X線を考えると、CrKαの波長は2.29Åである。従って、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造を分析するに際して異常分散「Δf”」の値を大きくとりたいと考える場合には、X線源としてCrの特性X線を用いることが良いと考えられる。具体的には、Crの特性X線を用いた場合には、Cuの特性X線を用いた場合に比べて、略2倍の異常分散値を計数できる。
【0006】
以上のように、タンパク質等の分析に関しては、X線としてできるだけ波長の長いX線、例えばCrの特性X線を用いることが望まれる。しかしながら、波長の長いX線は空気に吸収されるので、分析をする上で十分なX線強度を得ることが難しい。このような空気によるX線の吸収、すなわちX線の減衰を抑えるため、従来から、真空パスによってX線通路を覆う技術がある。しかしながら、この方法は、真空パスの断面積が小さい場合には問題がないものの、真空パスの断面積を大きくすると、パスを形成している機械構造が外気圧によって壊れるという問題がある。例えば、X線通過用の窓として薄い膜材を使った場合にはその窓が壊れるおそれがある。
【0007】
この問題を解消するため、X線通路を真空パスではなくてHe(ヘリウム)パスで覆うようにした分析装置が知られている(例えば、非特許文献1)。このHeパスを用いれば、内部に充填されたHeガスの圧力により、パス構造が壊れるという心配がない。また、非特許文献1に開示された分析装置は、X線としてCrの特性X線を用いること、及びX線検出器として2次元X線検出器を用いることが開示されている。ここで、2次元X線検出器とはX線を平面的に受光できるX線検出器である。
【0008】
【非特許文献1】Acta Crystallographica (2003) Section D59, PP.1943-1957, 特にP.1945, "Away from the edge: SAD phasing from the sulfur anomalous signal measured in-house with chromium radiation", Cheng Yang, J.W.Pflugrath, D.A.Couville, C.N. Stence and Joseph D. Ferrara
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に開示されたX線分析装置では、湾曲しない平らな平面を受光面とする2次元X線検出器が用いられている。そのため、次のような問題があった。すなわち、CrKα(波長2.29Å)を用いると、測定試料が同じでもCuKα(波長1.54Å)よりも広角度に回折線が観測される。これを図示すれば、図14に示すように、CuKαでは低角度θ0しか観測できないものが、CrKαでは広角度θ1まで観測できるということである。
【0010】
従って、Crの特性X線を用いて正確な測定を行うためには広角度の回折線を受光できる面積の大きなX線検出器Xを用いる必要がある。しかしながら、このように面積の大きいX線検出器を用いる場合、それが平らな2次元X線検出器100であると、回折角度の大きな所での距離d0が長くなるので、回折線の空気又はHeによる吸収が大きくなり、回折線を正確に測定することが難しかった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、Crの特性X線を用いてX線分析を行う際に広角度に発生する回折線を正確に測定できるX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るX線分析装置は、試料に照射するCrの特性X線を発生するX線源と、前記試料から出る回折線を受光する2次元X線検出手段と、前記試料と前記2次元X線検出手段との間に配置され内部にヘリウムガスが充填され前記Crの特性X線を透過させることができるヘリウムパスとを有する。このX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料へ向けて湾曲する。また、前記ヘリウムパスは、前記試料に対向する第1窓と、前記2次元X線検出手段に対向する第2窓とを有し、前記第1窓は前記第2窓よりも小さく形成される。
【0013】
従来からX線分析装置のX線源としてCuの特性X線が広く用いられている。一般的な物質に関してはこのCuの特性X線によって十分に信頼性の高い分析を行うことができる。今、タンパク質等といった複雑な分子の結晶構造をX線を用いた測定によって決定しようとする場合であって、さらに、原子散乱因子の異常分散項「Δf”」を考慮してその決定を行うときには、X線源としてCuの特性X線を用いると、十分な大きさの原子散乱因子の異常分散項「Δf”」を得ることができず、それ故、実質的に有用な分析を行うことができなかった。
【0014】
Cuの特性X線よりも波長の長いCrの特性X線をX線源として用いれば、原子散乱因子の異常分散項「Δf”」の値を増大できるので、タンパク質等の分析を行うことが可能になるとも考えられる。しかしながら、Crの特性X線を用いると試料から広角領域に回折線が出るので、これを検出するためには2次元X線検出器の受光面の面積を大きくしなければならない。Crの特性X線を用いた従来のX線分析装置では2次元X線検出器としてその受光面が平面であるものを使用していた。従って、広角領域の回折線を検出するために2次元X線検出器の面積を大きくした場合には、その回折線の進行距離が長くなって回折線の減衰が大きくなり、やはり、実質的に有用な分析を行うことができなかった。
【0015】
以上のようなCuの特性X線を用いた場合の問題や、平面状の2次元X線検出器を用いた場合の問題に対し、本発明に係る上記構成のX線分析装置のように、X線源としてCrの特性X線を用いると共に回折線の進行路をヘリウムパスで覆うという構成に加えて、さらに、2次元X線検出器を試料の方向へ湾曲する形状を採用すれば、高角度領域における回折線の進行距離を短くでき、それ故、従来は実質的に不可能であったタンパク質等の分析を初めて高い信頼性をもって行うことができるようになった。
【0016】
本発明に係るX線分析装置において、前記第1窓と前記第2窓との間の前記ヘリウムパスのパス壁は上下方向及び横方向の少なくとも一方向へ扇形状に広がることが望ましい。本発明においては上記の通り、試料側の第1窓が小さく形成され、X線検出器側の第2窓が大きく形成される。これは、試料は小さく、2次元X線手段の受光面は大きいので、そのことに対応させるためである。この場合、第1窓から第2窓へ至るパス壁を第1窓から第2窓へ向けて広がる扇形状に設定すれば、ヘリウムパスの容積及び形状を無駄に大きくすることがなくなる。この結果、ヘリウムの使用量を低減でき、しかも、第1窓から第2窓に至る扇形状の外側領域を有効に利用できる。
【0017】
次に、本発明に係るX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として円筒形状に湾曲することが望ましい。試料から広角度領域に出る回折線がX線検出器に到達するまでの距離を短くするという観点からすれば、X線検出手段は円筒形状等に限らず、どのような形状であっても、試料へ向けて湾曲していれば、初期の目的は達せられる。しかしながら、X線検出手段のX線受光面は望ましくは試料を中心として円筒形状に湾曲させる。こうすれば、試料を中心とする回折角度の全領域にわたって、試料からX線検出手段に至る距離が略同じになり、正確な測定を行うことができる。
【0018】
次に、本発明に係るX線分析装置において、前記第1窓は前記試料に接近して配置されると共に該試料を中心として円筒形状に湾曲することが望ましい。ここで、第1窓とは、試料に対向する領域のヘリウムパスに設けられるX線通過用の窓である。本発明のようにCrの特性X線を用い、さらにヘリウムパスを用いて測定を行う場合には、試料から出た回折線を出来るだけ短い空気パスでヘリウムパス内に導入して空気による減衰をどれだけ避けることができるかが重要である。上記のように第1窓を試料に接近して配置すると共に試料を中心として円筒形状に湾曲させれば、回折線が空気に触れるパスの長さ、従って回折線が空気に触れる時間、を短くでき、それ故、Crの特性X線を使って得られる測定試料からの回折線の検出強度を高めることができる。
【0019】
次に、本発明に係るX線分析装置において、第2窓とは2次元X線検出手段に対向する領域のヘリウムパスに設けられるX線通過用の窓である。2次元X線検出手段のX線受光面を上記のように円筒形状の湾曲面とした場合には、この第2窓も、前記試料を中心として円筒形状に湾曲する形状であることが望ましい。こうすれば、試料を中心とする回折角度の全領域にわたってCrの特性X線の減衰を均一に防止できる。
【0020】
次に、本発明に係るX線分析装置は、前記ヘリウムパスを支持するパス支持手段と、前記2次元X線検出手段を支持する検出器支持手段と、前記パス支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させるパス移動手段と、前記検出器支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させる検出器移動手段とを有することが望ましい。
【0021】
この構成のX線分析装置によれば、パス支持手段及びパス移動手段の働きにより、ヘリウムパスを測定位置と退避位置との間で移動させることができる。測定位置とは、試料に対してX線測定が行われるときにヘリウムパスが置かれる位置であり、通常は、試料に接近する位置である。また、退避位置とは、ヘリウムパスが試料から遠く離れる位置である。
【0022】
また、この構成のX線分析装置によれば、検出器支持手段及び検出器移動手段の働きにより、2次元X線検出手段を測定位置と退避位置との間で移動させることができる。測定位置とは、試料に対してX線測定が行われるときに2次元X線検出手段が置かれる位置であり、通常は、ヘリウムパスの第2窓に接近する位置である。また、退避位置とは、2次元X線検出手段が試料から遠く離れる位置である。
【0023】
上記構成において、ヘリウムパスに関する測定位置から退避位置への移動方向と、2次元X線検出手段に関する測定位置から退避位置への移動方向は、同じ方向でも良く、違った方向でも良い。例えば、ヘリウムパス及び2次元X線検出手段の両方を同じ水平面内で移動させることができる。また、2次元X線検出手段を水平面内で移動させ、ヘリウムパスを水平面以外の面、例えばそれと直角な垂直面内で移動させることができる。
【0024】
ヘリウムパス及び2次元X線検出手段の両方を同じ水平面内で移動させる場合には、2次元X線検出手段を静止させておいてヘリウムパスだけを移動させようとすると、ヘリウムパスが2次元X線検出手段に衝突してしまう。従って、両者を同じ水平面内で移動させる場合であって、ヘリウムパスを測定位置から退避位置へ移動させるときには、2次元X線検出手段も同時に測定位置から退避位置へ移動させることが必要である。
【0025】
一方、ヘリウムパスと2次元X線検出手段とを異なる方向へ移動させる場合、例えば、2次元X線検出手段を水平面内で移動させ、ヘリウムパスをそれと直角な垂直面内で移動させる場合には、2次元X線検出手段を静止させた上で、ヘリウムパスだけを測定位置から退避位置へ移動させることができる。
【0026】
本発明のX線分析装置を用いた分析においては、測定を行う際、ヘリウムパスの第1窓をできるだけ試料に接近させる。これは、試料から出る回折線をできるだけ空気に触れさせることなく、ヘリウムパスの中に取り込むことを可能にするためである。しかしながら、このように試料とヘリウムパスとが接近していると、1つの試料についての測定が終了して試料を交換するときに、その交換作業が非常に難しくなる。
【0027】
このことに関し、上記のように、ヘリウムパスを試料に対して測定位置から退避位置へ移動させることができるようにしておけば、試料を交換する際にヘリウムパスを退避位置へ移動させることにより、試料の周りに広い空間領域を形成できる。これにより、分析者は試料の交換作業を容易に行うことができるようになる。
【0028】
次に、上記のようにパス移動手段及び検出器移動手段を設けたX線分析装置においては、それらのパス移動手段及び検出器移動手段はそれぞれ独自に前記パス支持手段及び前記検出器支持手段を移動できるように構成できる。また、検出器移動手段をパス移動手段の上に配設することにより、パス移動手段によってヘリウムパスを移動するときに、それと同時に検出器移動手段をも移動させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るX線分析装置によれば、X線源としてCrの特性X線を用いること、及び回折線の進行路をヘリウムパスで覆うことの構成に加えて、さらに、2次元X線検出手段のX線受光面を試料の方向へ湾曲する形状とした。これらの構成要件の組み合わせにより、タンパク質等といった複雑な分子の結晶構造をX線を用いた測定によって決定することに関して、初めて実質的に有用である測定を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係るX線分析装置を実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係るX線分析装置の一実施形態を示している。ここに示すX線分析装置1は、X線源Fと、入射光学系2と、試料支持台3と、測定ユニット4とを有する。試料支持台3及び測定ユニット4はテーブル5の上に設置されている。X線源F及び入射光学系2は、テーブル5に設置しても良いし、他のテーブルに設置しても良い。
【0031】
X線源Fは、図3に示すように、陰極としてのフィラメント6と、対陰極としてのターゲット7とを有する。フィラメント6は通電によって発熱して電子Eを放出する。この電子はターゲット7の表面に衝突してX線焦点Fを形成し、このX線焦点FからX線Rが発生する。本実施形態において、ターゲット7の少なくとも表面はCr(クロム)によって形成されている。従って、ターゲット7から発生するX線はCrに対応した波長のX線である。具体的には、CrKαの波長は2.29Åである。因みに、従来から広く使われているCuKαの波長は1.54Åである。
【0032】
ターゲット7は軸線を中心として矢印Aのように回転する。また、ターゲット7の内部には液体流路(図示せず)が形成され、この液体流路に冷却液、例えば冷却水が通水される。電子Eがターゲット7に衝突するとき、その衝突エネルギの多くは熱に変換される。この熱を放置すると、ターゲット7上のX線焦点Fの部分が非常に高温になり、ターゲット7が損傷して正常なX線の発生ができなくなるおそれがある。ターゲット7を矢印Aのように回転させ、さらにターゲット7の内部に冷却液を流すのはターゲット7が過熱によって損傷するのを防ぐためである。
【0033】
図1に戻って、入射光学系2は分析の目的に応じて必要なX線光学要素を有する。例えば、X線を単色化するモノクロメータ、X線を集束する集束光学系、X線源Fから発散するX線を平行ビームに成形する平行ビーム形成系等が必要に応じて設けられる。モノクロメータとしては、例えば単結晶モノクロメータや、湾曲結晶モノクロメータを用いることができる。また、集束光学系としては、放物線反射鏡や、放物線多層膜集束部材を用いることができる。また、平行ビーム形成系としては、複数のスリットを用いたコリメータや、ピンホールコリメータを用いることができる。
【0034】
試料支持台3はその上にヘッド8を装着できるようになっている。ヘッド8は、例えば3軸ゴニオヘッドによって構成される。ヘッド8はその上に試料Sを支持する。試料Sはヘッド8の先端に、例えば接着される。試料Sは、例えばタンパク質とすることができる。
【0035】
測定ユニット4は、パス支持手段としての外装カバー11を有する。このカバー11の試料Sに対向する部分には開口12が形成されている。そして、この開口12が設けられた部分のカバー11にヘリウムパス13が適宜の結合手段、例えば、ネジ止め、接着等によって装着されている。図2に矢印Bで示すようにヘリウムパス13をカバー11から取り外すと、その奥には、黒紙14が開口12の全面を漏れなく覆うように設けられている。黒紙14は、カバー11の内部に光が入るのを阻止する。
【0036】
図4は、図1のC−C線に従って測定ユニット4の内部の平面的な構造を示している。図4において、テーブル5の上であってカバー11によって囲まれる領域にカバー枠16が矢印D−D’方向、すなわち試料Sに対して進退移動する方向に平行移動できるように設置されている。カバー11は、このカバー枠16に適宜の結合手段、例えばネジ止め、接着等によって固定されている。カバー枠16の後端(図4の上端)の略中央部は、軸受17によって支持された送りネジ軸18に嵌合している。また、この送りネジ軸18は、プーリ19a,19b及びベルト21を介してモータ22、例えばサーボモータに連結している。プーリ19a,19b、ベルト21及びモータ22はテーブル5に固定されている。
【0037】
モータ22が作動してその出力軸が回転すると、送りネジ軸18が回転し、それに応じてカバー枠16が矢印D−D’のように試料Sに対して進退移動する。カバー枠16が矢印D−D’のように進退移動すると、それに固定されたカバー11も一体となって進退移動する。図4に示すカバー11の位置は試料Sに最も近づいた位置である。この位置がカバー11の測定位置である。一方、図7は、カバー11が試料Sから最も離れた位置にある状態を示している。ここに示すカバー11の位置がカバー11の退避位置である。
【0038】
図4において、カバー11の内部であってテーブル5の上に、可動ベース33及び消去装置26が設けられている。そして、可動ベース33の上に検出器支持手段としての検出器支持体23と、読取り装置24とが設けられている。可動ベース33は、図示しないガイド部材によってガイドされながら矢印F−F’で示すようにテーブル5の上においてカバー枠16と同じ方向へ往復平行移動できるようになっている。この平行移動により、可動ベース33は試料Sに対して進退移動する。
【0039】
可動ベース33の側方には平行駆動装置36が設けられている。この平行駆動装置36は、例えばサーボモータによって構成されたモータ37と、軸受38,38によって回転自在に支持されると共にカップリング39によってモータ37の出力軸に連結された送りネジ軸41と、その送りネジ軸41にネジ嵌合すると共に可動ベース33の側面に固定された移動子42とを有する。モータ37が作動して送りネジ軸41が自らの軸線の周りに回転すると、移動子42が送りネジ軸41に沿って図のF−F’方向へ平行移動し、移動子42が固定されている可動ベース33が矢印F−F’方向へ往復平行移動する。
【0040】
図4は、往復平行移動する可動ベース33が試料Sに最も近づく位置にあることを示している。この位置は、検出器支持体23を試料Sに対する所定の測定位置に置くための位置である。これ以降、この位置を測定位置と言うことにする。また、図6は、往復移動する可動ベース33が試料Sから最も離れる位置にあることを示している。可動ベース33がこの位置に置かれると、それに支持された検出器支持体23も試料Sから最も離れる位置に置かれることになる。これ以降、この位置を退避位置と言うことにする。
【0041】
可動ベース33の上に設けられた検出器支持体23は、図8に示すように、軸32を介して可動ベース33に支持されている。また、検出器支持体23は、モータ34によって駆動されて軸32の軸線X0を中心として矢印Gで示すように角度90°で間欠回転し、さらにその回転後の個々の位置に静止状態で保持されるようになっている。モータ34は可動ベース33に支持されている。また、検出器支持体23は、円筒面として形成された一対の検出器取付け面31を表裏対称の位置に有しており、これらの検出器取付け面31に2次元X線検出手段としての円筒形状の蓄積性蛍光体プレート27が1つずつ固着される。
【0042】
蓄積性蛍光体プレート27は、検出器支持体23に固着される面の反対面がX線受光面である。蓄積性蛍光体プレート27は適宜の固着手法、例えば両面接着材等によって固着される。ここで、蓄積性蛍光体とは、X線が当った所にエネルギ潜像を形成でき、そのようにエネルギ潜像が蓄積された所に輝尽励起光、例えばレーザ光が照射されると、蓄積されたエネルギ潜像のエネルギ量に対応した強度の光が外部へ放射されるという特性を有するプレートである。
【0043】
蓄積性蛍光体プレート27は検出器支持体23の検出器取付け面31に取り付けられた状態で、図12に示す形状及び寸法となるようになっている。なお、図12は、図4に示すように可動ベース33が試料Sに最も近づいた測定位置に置かれた状態を示している。図12において、蓄積性蛍光体プレート27は、その受光面が試料Sを中心として半径Dの円筒面を形成するように湾曲している。半径Dは、例えば127〜128mm程度、望ましくは127.4mmに設定される。また、蓄積性蛍光体プレート27の長さLは、試料Sから出る回折線を所望の広角度まで測定できる長さに設定される。例えば、長さLは350mm程度に設定される。
【0044】
さらに、試料Sに入射するX線の光軸X1を中心として蓄積性蛍光体プレート27の左端までの角度をθ5とし、右端までの角度をθ6とするとき、θ5=θ6=78°〜79°内の1点、望ましくはθ5=θ6=78.75°に設定する。また、X線の光軸X1を中心として蓄積性蛍光体プレート27の下端までの角度をθ7とし、上端までの角度をθ8とするとき、θ7=θ8=53°〜547°内の1点、望ましくは53.96°に設定する。
【0045】
図4において、可動ベース33の上に設けられた読取り装置24は光電変換装置28を有する。この光電変換装置28はレーザ発光部及び受光部を有しており、レーザ発光部から蓄積性蛍光体プレート27へ向けてレーザ光を出射できると共に、蓄積性蛍光体プレート27から発生する光を受光してその受光量に応じた信号を出力する。読取り装置24は、図5に示すように、可動ベース33上に設置されて上方へ延びる支持フレーム29に支持されている。この読取り装置24はモータ30によって駆動されて矢印J−J’で示すように鎖線で示す読取り位置と、実線で示す退避位置との間で上下方向へ平行移動する。
【0046】
蓄積性蛍光体プレート27に対して読取り処理を行う場合、読取り装置24は蓄積性蛍光体プレート27に対面する破線で示す読取り位置に置かれる。一方、図8において検出器支持枠23が矢印Gで示すように間欠回転するときには、その回転を邪魔しないように読取り装置24は図5に実線で示す退避位置に置かれる。
【0047】
光電変換装置28は、モータ35によって駆動されて矢印Eで示すように水平面内で回転できる。また、光電変換装置28は鎖線で示す読取り位置に置かれた状態で、モータ30によって駆動されて矢印K−K’で示すように、矢印Eで示す回転方向に対して直角の方向、すなわち上下方向に平行移動する。光電変換装置28は、図4の矢印E方向へ回転することにより蓄積性蛍光体プレート27を主走査し、図5の矢印K−K’方向に平行移動することにより蓄積性蛍光体プレート27を副走査する。この主走査及び副走査により、光電変換装置28は蓄積性蛍光体プレート27のX線受光面の全面を走査する。
【0048】
この走査過程中に、光電変換装置28のレーザ発光部から蓄積性蛍光体プレート27へレーザ光を照射したとき、そのレーザ照射点にある蓄積性蛍光体プレート27の内部にエネルギ潜像が蓄積されていると、そのエネルギ潜像が光となって外部に放出される。そして、その放出された光は、光電変換装置28の受光部に受光され、光電変換装置28内で所定の電子処理を受けることにより電気信号に変換され、そしてその電気信号が光電変換装置28の所定の出力端子に出力される。
【0049】
図4の消去装置26は、複数の線状光源である蛍光灯43を有する。可動ベース33を矢印F’方向へ移動させて検出器支持体23を図6に示す退避位置まで持ち運び、さらに検出器支持体23を角度90°回転させると、検出器支持体23に支持された蓄積性蛍光体プレート27を消去装置26に対面させることができる。この状態で、複数の蛍光灯43を点灯すれば、蓄積性蛍光体プレート27のX線受光面の全面が一様な光量の光で露光され、これにより、蓄積性蛍光体プレート27内のエネルギが消去されて、その蓄積性蛍光体プレート27が再使用可能な状態に設定される。
【0050】
図1において、X線源Fから発生して進行するX線Rの進行方向に関して試料Sの下流側にヘリウムパス13が配置されている。図9はそのヘリウムパス13の外観形状を示している。また、図10は図9のG−G線に従ってヘリウムパス13の平面の断面構造を示している。また、図11は図9のH−H線に従ってヘリウムパス13の側面の断面構造を示している。
【0051】
ヘリウムパス13は樹脂を材料とした成形加工によって形成されており、図9に示すように、試料Sに対向する開口51と、蓄積性蛍光体プレート27に対向する開口52とを有する。開口51及び開口52以外の部分は略一様な厚さ「d」のパス壁によって形状が決められている。開口51及び開口52の両方には膜部材53が接着剤、両面接着部材等によって気密に貼り付けられている。これにより、ヘリウムパス13の内部は外部と気密に隔絶されている。試料S側の開口51に膜部材53を貼り付けることにより第1窓54aが構成される。また、蓄積性蛍光体プレート27側の開口52に膜部材53を貼り付けることにより第2窓54bが構成される。膜部材53は、Crの特性X線を透過でき且つヘリウムの内圧に耐え得る機械的な強度を持った材料、例えばポリイミドフィルムであるカプトン(商品名)によって形成できる。
【0052】
ヘリウムパス13の適所、例えば図9の上端壁の隅にガス導入口56が設けられている。また、ガス導入口56から十分に離れた所、例えば下端壁の隅にガス排出口57が設けられている。ガス導入口56にはヘリウムガスの供給系が接続される。そして、ガス排出口57にはヘリウムガスの回収系が接続される。ヘリウム供給系から供給されるヘリウムは、ガス導入口56を通してヘリウムパス13の内部に導入され、ヘリウムパス13の内部に充満し、そして、ガス排出口57を通して回収される。これにより、ヘリウムガスの供給系、ヘリウムパス13、そしてヘリウムガスの回収系に沿って、常時、ヘリウムガスの流れが形成される。
【0053】
第1窓54aの面積すなわち開口51の面積は、試料Sから出る回折線を所定の広角度領域内で取り込むことができる大きさに設定される。第1窓54aは大きく設定しても構わないが、この第1窓54aはできるだけ試料Sに接近させて配置することが望ましく、本実施形態ではその通りに第1窓54aを試料Sに接近させて配置させるので、第1窓54aは必要以上に大きくする必要がない。従って、第1窓54aは第2窓54bよりも小さく形成される。
【0054】
第1窓54aを第2窓54bよりも小さく形成することにより、ヘリウムパス13は上下方向及び左右方向にわたって、換言すれば3次元空間的に扇形状に広がっている。これにより、試料Sから放射状に進行する回折線を確実に蓄積性蛍光体プレート27へ導くことができる。また、ヘリウムパス13が3次元空間的に扇形状に広がることにより、ヘリウムパス13の上部13a及び下部13bは、蓄積性蛍光体プレート27側から試料S側へ向けてすぼまる漏斗形状に形成されている。
【0055】
ヘリウムパス13の上部13aを漏斗形状にすれば、図1の測定ユニット4の上部から試料Sへ向けて流体、例えば試料Sを冷却するための冷却用媒体を流す場合等においてその漏斗形状を有効に利用できる。また、ヘリウムパス13の下部13bを漏斗形状にすれば、試料支持台3を測定ユニット4に近い位置に無理なく設置できる。
【0056】
図10は、図4に示すようにカバー11が試料2に対して最も近づいた位置、すなわち測定位置にある場合の、ヘリウムパス13と試料Sとの位置関係を示している。ヘリウムパス13がこのように測定位置に置かれるとき、第1窓54aはできるだけ試料Sに接近することが望ましい。これは、試料Sから出る回折線がヘリウムパス13に取り込まれる間に、回折線が空気に触れることをできるだけ回避するためである。こうすることにより、試料Sからの回折線をできるだけ減衰させることなく蓄積性蛍光体プレート27へ導くことが可能となる。
【0057】
また、第1窓54aの膜部材53は試料Sを中心とする半径rの円筒形状とする。こうすれば、試料Sから膜部材53へ至る距離は、回折角度が変わっても全て距離rで一定になる。これにより、回折線の減衰の状態を回折角度の変化に対して一定に設定できるので、測定の結果として得られるデータの信頼性を高めることができる。
【0058】
以下、上記構成より成るX線分析装置についてその動作を説明する。
(試料Sの装着)
まず、図1のX線分析装置1の試料支持台3上に試料Sを取り付けるための動作を説明する。この試料Sは、タンパク質等といった複雑な分子を有する物質であるとする。本実施形態では、X線としてCrの特性X線を用いている。このCrの特性X線はCuの特性X線に比べて波長が長いため空気と接触したときの減衰の程度が非常に大きい。このような空気による減衰を回避するため本実施形態ではヘリウムパス13をできるだけ試料Sに接近させて測定を行う。この接近した位置がヘリウムパス13の測定位置である。ヘリウムパス13をこの測定位置に置いたままでは、ヘリウムパス13と試料支持台3の先端とが近づき過ぎているので、試料支持台3への試料Sへの装着を行うことが極めて難しい。
【0059】
そこで、本実施形態では、試料Sの装着に先立って、図4の平行駆動装置36のモータ37を作動して可動ベース33を矢印F’方向へ平行移動させて図4の測定位置から図6の退避位置へと移動させる。この可動ベース33の移動は、引き続いて行われるカバー11の平行移動の邪魔にならないようにするためである。
【0060】
その後、図6のモータ22を作動してカバー枠16を矢印D’方向へ平行移動させて、そのカバー枠16を図6の測定位置から図7の退避位置へと平行移動させる。カバー枠16のこの平行移動により、カバー枠16に固着されたカバー11及びカバー11に支持されたヘリウムパス13は、図6に示す測定位置から図7に示す退避位置へと矢印I’のように平行移動する。この退避位置において、ヘリウムパス13と試料支持台3との間には広い空間が形成される。このように試料支持台3の周りに広い空間を形成した上で、作業者は試料支持台3に試料Sを装着する。通常は、試料Sが取り付けられたヘッド8を試料支持台3に取り付ける。試料Sの周りに広い空間を形成するので、作業者による試料Sの装着は極めて簡単である。
【0061】
試料支持台3に対する試料Sの装着が終了すると、図7においてモータ22を作動して、カバー枠16を矢印D方向へ復動させる。このカバー枠16の復動により、それに固定されたカバー11及びそれに支持されたヘリウムパス13を矢印I方向へ復動させて、図6に示す測定位置へセットずる。この測定位置において、試料Sとヘリウムパス13とが図9、図10及び図11に示す位置関係、すなわち互いに接近する位置関係になる。
【0062】
その後、図6のモータ37を作動して可動ベース33を図6の退避位置から図4に示す測定位置まで平行移動させる。この平行移動により、蓄積性蛍光体プレート27を図6の退避位置から図4の測定位置へ移動させる。測定位置に置かれた蓄積性蛍光体プレート27は、図9、図10及び図11に示すように、ヘリウムパス13の第2窓54bに接近する位置に配置される。以上により、図1に示すように、試料支持台3の先端に試料Sが取り付けられ、さらに、カバー11に支持されたヘリウムパス13の第1窓54aが試料Sに接近する位置に配置される。
【0063】
(X線を用いた測定)
その後、図3のX線発生装置を作動してX線源FからCrの特性X線を発生させる。このCrの特性X線は、波長の長いX線であって、タンパク質等といった複雑な分子を有する物質の分析に適している。このX線は図1の入射光学系2に受け取られ、その入射光学系2によって必要に応じて単色化、集束化、又は平行ビーム化された後、試料Sに照射される。試料SにCrの特性X線が入射すると、タンパク質内の分子構造に応じて所定の回折角度に散乱線が発生し、この散乱線が図9のヘリウムパス13の第1窓54aからそのヘリウムパス13内へ導入される。このとき、本実施形態では図10に示したように、試料Sと第1窓54aとの間の距離をできるだけ小さくし、さらに、第1窓54aを試料Sを中心とする円筒形状に形成したので、試料Sから出る散乱線の空気による減衰は可能な限り小さく抑えられる。また、第1窓54aを試料Sを中心とする円筒形状に形成したことにより、散乱線の空気による減衰の程度が回折角度の違いによってばらつくのを抑えることができる。
【0064】
図9において、ヘリウムパス13の内部には、ヘリウム供給系から送られてヘリウム回収系に回収されるヘリウムが流れている。従って、ヘリウムパス13の中を通って蓄積性蛍光体プレート27へ向けて進む散乱線の減衰が抑えられ、蓄積性蛍光体プレート27に十分な強度の散乱線が到達する。仮に、散乱線の減衰を抑えるためにヘリウムガスを用いることに代えてヘリウムパス13の内部を真空状態にすることを考えると、ヘリウムパス13の第1窓54a及び第2窓54bに設けた膜部材53が外気圧に押されて破損するおそれがある。これに対し、本実施形態のように、ヘリウムパス13の内部にヘリウムガスを供給する方法を採用すれば、そのヘリウムガスの圧力の働きにより膜部材53の破損を防止できる。
【0065】
以上により、試料Sから所定の回折角度で発生した散乱線は、その回折角度に対応した位置の蓄積性蛍光体プレート27の座標位置を露光し、その座標位置にエネルギ潜像が蓄積される。蓄積されるエネルギの量は散乱線の強度に対応する。試料Sへの所定時間のX線照射が終了することにより、蓄積性蛍光体プレート27の散乱線による露光が終了すると、図4において平行駆動装置36内のモータ37が作動して可動ベース33が図4の測定位置から図6の退避位置へ移動する。これにより、可動ベース33に支持された検出器支持体23が、測定を終えた蓄積性蛍光体プレート27を保持した状態で、図4の測定位置から図6の退避位置へ平行移動する。
【0066】
その後、検出器支持体23は図8に示すように軸線X0の周りに角度90°で間欠的に回転し、エネルギ潜像が蓄積された蓄積性蛍光体プレート27は図6の読取り装置24に対面する位置に運ばれる。このとき、読取り装置24は、図5に実線で示す退避位置に置かれていて、回転する検出器支持体23と読取り装置24とが衝突することはない。次に、図6の平行駆動装置36の働きにより可動ベース33及び検出器支持体23が、再度、図4の測定位置へ運ばれ、さらに、読取り装置24の光電変換装置28が図5の読取り位置(鎖線で示す位置)へセットされる。
【0067】
次に、光電変換装置28が矢印E方向へ主走査回転し、さらに矢印K方向へ副走査移動することにより、蓄積性蛍光体プレート27内の潜像データが読取り装置24の働きによって散乱線データとして読み出される。この散乱線データが、図1における試料Sに対する入射X線Rのある1つの入射角度についての試料Sの散乱線データとして、例えばコンピュータシステム内の記憶媒体内の所定の記憶場所に記憶される。
【0068】
以上のような読取り装置24による読取り処理が行われている間、図4において、読取り処理を受けている蓄積性蛍光体プレート27の裏側で検出器支持体23に保持されたもう一方の蓄積性蛍光体プレート27は試料Sに対面する測定位置に置かれている。この蓄積性蛍光体プレート27を用いて試料Sに対して異なる条件での測定を行うことができる。具体的には、図1において試料Sを例えば角度2°回転させて試料Sに対するX線Rの入射角度を2°変化させる。そして、入射角度をそのように変化させた上で、以上に説明した一連の処理、すなわち、(1)試料SへCrの特性X線を照射してその試料Sから散乱線を発生させる処理、(2)その散乱線によって蓄積性蛍光体プレート27を露光する処理、そして(3)露光処理の終了後の蓄積性蛍光体プレート27を読取り装置24に対面する位置まで運んで読取り処理を行って散乱線データをコンピュータシステム内の所定の記憶場所に記憶する処理、というの一連処理を行う。
【0069】
なお、読取り装置24による読取り処理を受けた蓄積性蛍光体プレート27が、検出器支持体23の間欠回転によって次の測定のために試料Sに対面する位置まで回転搬送されることは既述の通りであるが、この回転搬送の際、検出器支持体23は読取り位置から90°の角度回転して消去装置26に対面したときに、一旦、停止する。そして、消去装置26の蛍光灯43が点灯して蓄積性蛍光体プレート27内に残留する潜像がX線受光面から除去される。これにより、次の測定に対する蓄積性蛍光体プレート27の初期化が完了する。
【0070】
以上のように、図1において、試料Sに対するX線Rの入射角度を2°ずつ変化させながら、個々の入射角度位置において図12の蓄積性蛍光体プレート27に散乱潜像を取得し、その散乱線データを電気信号としてコンピュータシステムの所定記憶場所に記憶する。最終的には、角度2°ずつ異なる180種類程度の入射角度のそれぞれについて散乱線データを取得し、それらの散乱線データに基づいてタンパク質試料Sの分子の結晶構造を決定する。
【0071】
(試料Sの交換)
以上のようにして1つの試料Sについて測定が終了した後、別の試料Sに関して測定を行いたい場合には、図1において、試料支持台3に支持されていた測定済みの試料Sを取り外して、測定を希望する新しい試料Sを試料支持台3に装着する必要がある。
【0072】
この場合、測定位置に置かれたヘリウムパス13の第1窓54aは試料Sに非常に接近しているので、このままでは、試料Sの交換を行うことが非常に難しい。そこで、試料Sの交換に先立って、まず、図4の平行駆動装置36のモータ37を作動して可動ベース33を矢印F’方向へ平行移動させて図4の測定位置から図6の退避位置へと移動させる。この可動ベース33の移動は、引き続いて行われるカバー11の平行移動の邪魔にならないようにするためである。
【0073】
その後、図6のモータ22を作動してカバー枠16を矢印D’方向へ平行移動させて図6の測定位置から図7の退避位置へと平行移動させる。カバー枠16のこの平行移動により、カバー枠16に固着されたカバー11及びカバー11に支持されたヘリウムパス13は、図6に示す測定位置から図7に示す退避位置へと矢印I’のように平行移動する。この退避位置において、ヘリウムパス13と試料支持台3との間には広い空間が形成される。このように試料支持台3の周りに広い空間を形成した上で、作業者は試料支持台3上の測定済みの試料Sを取り外し、さらに、測定を希望する新しい試料Sを試料支持台3に装着する。
【0074】
試料支持台3に対する新しい試料Sの装着が終了すると、図7においてモータ22を作動して、カバー枠16を矢印D方向へ復動させる。このカバー枠16の復動により、それに固定されたカバー11及びそれに支持されたヘリウムパス13を矢印I方向へ復動させて、図6に示す測定位置へセットする。この測定位置において、試料Sとヘリウムパス13とが図9、図10及び図11に示す位置関係、すなわち互いに接近する位置関係になる。
【0075】
その後、図6のモータ37を作動して可動ベース33を図6の退避位置から図4に示す測定位置まで平行移動させる。この平行移動により、蓄積性蛍光体プレート27を図6の退避位置から図4の測定位置へ移動させる。測定位置に置かれた蓄積性蛍光体プレート27は、図9、図10及び図11に示すように、ヘリウムパス13の第2窓54bに接近する位置に配置される。以上により、図1に示すように、試料支持台3の先端に新しい試料Sが取り付けられ、さらに、カバー11に支持されたヘリウムパス13の第1窓54aが試料Sに接近する位置に配置される。これにより、新しい試料Sに関する測定の準備が完了する。
【0076】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0077】
例えば、上記の実施形態では、図4において、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面と、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面とを、テーブル5上の同じ面とした。このため、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際には、ヘリウムパス13が蓄積性蛍光体プレート27等にぶつかることを回避するために、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を図4の測定位置から図6の退避位置へ移動させることにした。
【0078】
この構成とは別の構成として、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面と、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面とを、別々の面とすることができる。例えば、検出器支持体23を図4と同様にテーブル5と平行な平面内で平行移動させるものとし、ヘリウムパス13は例えばそれと直角な垂直方向へ移動させるように構成することができる。こうすれば、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際に、蓄積性蛍光体プレート27等をわざわざ移動させなくても済むようになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るX線分析装置は、タンパク質等のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて迅速に決定しようとする際に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るX線分析装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のX線分析装置の一部を分解した状態を示す図である。
【図3】図1のX線分析装置で用いられるX線発生装置の一例を示す斜視図である。
【図4】図1のC−C線に従った平面断面図である。
【図5】図1のX線分析装置の側面断面図である。
【図6】図4の構造が異なる状態へ動作した場合を示す図である。
【図7】図4の構造がさらに異なる状態へ動作した場合を示す図である。
【図8】図4の要部である蓄積性蛍光体プレートの支持部分を示す斜視図である。
【図9】図4の他の要部であるヘリウムパスの一例を示す斜視図である。
【図10】図9のG−G線に従ってヘリウムパスの平面構造を示す断面図である。
【図11】図9のH−H線に従ってヘリウムパスの側面構造を示す断面図である。
【図12】図1のX線分析装置で用いる蓄積性蛍光体プレートの一例を示す斜視図である。
【図13】X線分析方法の一例を説明するためのグラフを示す図である。
【図14】従来のX線分析方法を説明するため図である。
【符号の説明】
【0081】
1.X線分析装置、 2.入射光学系、 3.試料支持台、 4.測定ユニット、
5.テーブル、 8.ヘッド、 11.外装カバー(パス支持手段)、 12.開口、
13.ヘリウムパス、 14.黒紙、 16.カバー枠、 18.送りネジ軸、
22.モータ、 23.検出器支持体、 24.読取り装置、 26.消去装置、
27.蓄積性蛍光体プレート(2次元X線検出手段)、 28.光電変換装置、
29.支持フレーム、 31.検出器取付け面、 33.可動ベース、
36.平行駆動装置、 37.モータ、 41.送りネジ軸、 43.蛍光灯、
51.開口、 52.開口、 53.膜部材、 54a.第1窓、 54b.第2窓、
56.ガス導入口、 57.ガス排出口、 E.電子、 F.X線焦点(X線源)、
R.X線
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて試料を分析するX線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて迅速に解析したいという要望が高くなっている。この解析は、基本的には、タンパク質等にX線を照射したときにそのタンパク質から発生する散乱線を検出することによって行うことができる。この場合、検出される散乱線の中には、干渉性散乱、非干渉性散乱(いわゆるコンプトン散乱)、光学系に起因する散乱、その他の散乱が含まれる。そして、タンパク質等の構造解析で必要となる散乱は、上記の干渉性散乱である。
【0003】
また、検出された散乱線の中から必要となる干渉性散乱を抽出する際、原子散乱因子「f」の数値が必要となる。この原子散乱因子「f」は、
f=f0+Δf’+iΔf”……(1)
によって表わされる値である。ここで、「f0」は、原子内電子の結合力を無視した場合の原子散乱因子であり、「Δf’」及び「Δf”」は原子による異常分散に対応した補正項である。上式(1)において、異常分散の値「Δf”」はできるだけ大きい方が好ましい。
【0004】
例えば、タンパク質に含まれる重元素である硫黄に関する異常分散を考えると、図13に示すような分布が考えられる。一般に、入射X線の波長を長くすると対象元素、すなわち硫黄の異常分散は大きな値となる。特に、入射X線の波長を硫黄の吸収端の波長よりごくわずかに短く選ぶと、硫黄は大きな異常分散を起こす。
【0005】
タンパク質のような複雑な分子の結晶構造を決定する場合には、異常分散「Δf”」の値はできるだけ大きい方が好ましい。今、現在の一般的なX線分析で用いられているX線源であるCuの特性X線を考えると、CuKαの波長は1.54Åである。また、Cu以外のX線源としてCrの特性X線を考えると、CrKαの波長は2.29Åである。従って、タンパク質のような複雑な分子の結晶構造を分析するに際して異常分散「Δf”」の値を大きくとりたいと考える場合には、X線源としてCrの特性X線を用いることが良いと考えられる。具体的には、Crの特性X線を用いた場合には、Cuの特性X線を用いた場合に比べて、略2倍の異常分散値を計数できる。
【0006】
以上のように、タンパク質等の分析に関しては、X線としてできるだけ波長の長いX線、例えばCrの特性X線を用いることが望まれる。しかしながら、波長の長いX線は空気に吸収されるので、分析をする上で十分なX線強度を得ることが難しい。このような空気によるX線の吸収、すなわちX線の減衰を抑えるため、従来から、真空パスによってX線通路を覆う技術がある。しかしながら、この方法は、真空パスの断面積が小さい場合には問題がないものの、真空パスの断面積を大きくすると、パスを形成している機械構造が外気圧によって壊れるという問題がある。例えば、X線通過用の窓として薄い膜材を使った場合にはその窓が壊れるおそれがある。
【0007】
この問題を解消するため、X線通路を真空パスではなくてHe(ヘリウム)パスで覆うようにした分析装置が知られている(例えば、非特許文献1)。このHeパスを用いれば、内部に充填されたHeガスの圧力により、パス構造が壊れるという心配がない。また、非特許文献1に開示された分析装置は、X線としてCrの特性X線を用いること、及びX線検出器として2次元X線検出器を用いることが開示されている。ここで、2次元X線検出器とはX線を平面的に受光できるX線検出器である。
【0008】
【非特許文献1】Acta Crystallographica (2003) Section D59, PP.1943-1957, 特にP.1945, "Away from the edge: SAD phasing from the sulfur anomalous signal measured in-house with chromium radiation", Cheng Yang, J.W.Pflugrath, D.A.Couville, C.N. Stence and Joseph D. Ferrara
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に開示されたX線分析装置では、湾曲しない平らな平面を受光面とする2次元X線検出器が用いられている。そのため、次のような問題があった。すなわち、CrKα(波長2.29Å)を用いると、測定試料が同じでもCuKα(波長1.54Å)よりも広角度に回折線が観測される。これを図示すれば、図14に示すように、CuKαでは低角度θ0しか観測できないものが、CrKαでは広角度θ1まで観測できるということである。
【0010】
従って、Crの特性X線を用いて正確な測定を行うためには広角度の回折線を受光できる面積の大きなX線検出器Xを用いる必要がある。しかしながら、このように面積の大きいX線検出器を用いる場合、それが平らな2次元X線検出器100であると、回折角度の大きな所での距離d0が長くなるので、回折線の空気又はHeによる吸収が大きくなり、回折線を正確に測定することが難しかった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、Crの特性X線を用いてX線分析を行う際に広角度に発生する回折線を正確に測定できるX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るX線分析装置は、試料に照射するCrの特性X線を発生するX線源と、前記試料から出る回折線を受光する2次元X線検出手段と、前記試料と前記2次元X線検出手段との間に配置され内部にヘリウムガスが充填され前記Crの特性X線を透過させることができるヘリウムパスとを有する。このX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料へ向けて湾曲する。また、前記ヘリウムパスは、前記試料に対向する第1窓と、前記2次元X線検出手段に対向する第2窓とを有し、前記第1窓は前記第2窓よりも小さく形成される。
【0013】
従来からX線分析装置のX線源としてCuの特性X線が広く用いられている。一般的な物質に関してはこのCuの特性X線によって十分に信頼性の高い分析を行うことができる。今、タンパク質等といった複雑な分子の結晶構造をX線を用いた測定によって決定しようとする場合であって、さらに、原子散乱因子の異常分散項「Δf”」を考慮してその決定を行うときには、X線源としてCuの特性X線を用いると、十分な大きさの原子散乱因子の異常分散項「Δf”」を得ることができず、それ故、実質的に有用な分析を行うことができなかった。
【0014】
Cuの特性X線よりも波長の長いCrの特性X線をX線源として用いれば、原子散乱因子の異常分散項「Δf”」の値を増大できるので、タンパク質等の分析を行うことが可能になるとも考えられる。しかしながら、Crの特性X線を用いると試料から広角領域に回折線が出るので、これを検出するためには2次元X線検出器の受光面の面積を大きくしなければならない。Crの特性X線を用いた従来のX線分析装置では2次元X線検出器としてその受光面が平面であるものを使用していた。従って、広角領域の回折線を検出するために2次元X線検出器の面積を大きくした場合には、その回折線の進行距離が長くなって回折線の減衰が大きくなり、やはり、実質的に有用な分析を行うことができなかった。
【0015】
以上のようなCuの特性X線を用いた場合の問題や、平面状の2次元X線検出器を用いた場合の問題に対し、本発明に係る上記構成のX線分析装置のように、X線源としてCrの特性X線を用いると共に回折線の進行路をヘリウムパスで覆うという構成に加えて、さらに、2次元X線検出器を試料の方向へ湾曲する形状を採用すれば、高角度領域における回折線の進行距離を短くでき、それ故、従来は実質的に不可能であったタンパク質等の分析を初めて高い信頼性をもって行うことができるようになった。
【0016】
本発明に係るX線分析装置において、前記第1窓と前記第2窓との間の前記ヘリウムパスのパス壁は上下方向及び横方向の少なくとも一方向へ扇形状に広がることが望ましい。本発明においては上記の通り、試料側の第1窓が小さく形成され、X線検出器側の第2窓が大きく形成される。これは、試料は小さく、2次元X線手段の受光面は大きいので、そのことに対応させるためである。この場合、第1窓から第2窓へ至るパス壁を第1窓から第2窓へ向けて広がる扇形状に設定すれば、ヘリウムパスの容積及び形状を無駄に大きくすることがなくなる。この結果、ヘリウムの使用量を低減でき、しかも、第1窓から第2窓に至る扇形状の外側領域を有効に利用できる。
【0017】
次に、本発明に係るX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として円筒形状に湾曲することが望ましい。試料から広角度領域に出る回折線がX線検出器に到達するまでの距離を短くするという観点からすれば、X線検出手段は円筒形状等に限らず、どのような形状であっても、試料へ向けて湾曲していれば、初期の目的は達せられる。しかしながら、X線検出手段のX線受光面は望ましくは試料を中心として円筒形状に湾曲させる。こうすれば、試料を中心とする回折角度の全領域にわたって、試料からX線検出手段に至る距離が略同じになり、正確な測定を行うことができる。
【0018】
次に、本発明に係るX線分析装置において、前記第1窓は前記試料に接近して配置されると共に該試料を中心として円筒形状に湾曲することが望ましい。ここで、第1窓とは、試料に対向する領域のヘリウムパスに設けられるX線通過用の窓である。本発明のようにCrの特性X線を用い、さらにヘリウムパスを用いて測定を行う場合には、試料から出た回折線を出来るだけ短い空気パスでヘリウムパス内に導入して空気による減衰をどれだけ避けることができるかが重要である。上記のように第1窓を試料に接近して配置すると共に試料を中心として円筒形状に湾曲させれば、回折線が空気に触れるパスの長さ、従って回折線が空気に触れる時間、を短くでき、それ故、Crの特性X線を使って得られる測定試料からの回折線の検出強度を高めることができる。
【0019】
次に、本発明に係るX線分析装置において、第2窓とは2次元X線検出手段に対向する領域のヘリウムパスに設けられるX線通過用の窓である。2次元X線検出手段のX線受光面を上記のように円筒形状の湾曲面とした場合には、この第2窓も、前記試料を中心として円筒形状に湾曲する形状であることが望ましい。こうすれば、試料を中心とする回折角度の全領域にわたってCrの特性X線の減衰を均一に防止できる。
【0020】
次に、本発明に係るX線分析装置は、前記ヘリウムパスを支持するパス支持手段と、前記2次元X線検出手段を支持する検出器支持手段と、前記パス支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させるパス移動手段と、前記検出器支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させる検出器移動手段とを有することが望ましい。
【0021】
この構成のX線分析装置によれば、パス支持手段及びパス移動手段の働きにより、ヘリウムパスを測定位置と退避位置との間で移動させることができる。測定位置とは、試料に対してX線測定が行われるときにヘリウムパスが置かれる位置であり、通常は、試料に接近する位置である。また、退避位置とは、ヘリウムパスが試料から遠く離れる位置である。
【0022】
また、この構成のX線分析装置によれば、検出器支持手段及び検出器移動手段の働きにより、2次元X線検出手段を測定位置と退避位置との間で移動させることができる。測定位置とは、試料に対してX線測定が行われるときに2次元X線検出手段が置かれる位置であり、通常は、ヘリウムパスの第2窓に接近する位置である。また、退避位置とは、2次元X線検出手段が試料から遠く離れる位置である。
【0023】
上記構成において、ヘリウムパスに関する測定位置から退避位置への移動方向と、2次元X線検出手段に関する測定位置から退避位置への移動方向は、同じ方向でも良く、違った方向でも良い。例えば、ヘリウムパス及び2次元X線検出手段の両方を同じ水平面内で移動させることができる。また、2次元X線検出手段を水平面内で移動させ、ヘリウムパスを水平面以外の面、例えばそれと直角な垂直面内で移動させることができる。
【0024】
ヘリウムパス及び2次元X線検出手段の両方を同じ水平面内で移動させる場合には、2次元X線検出手段を静止させておいてヘリウムパスだけを移動させようとすると、ヘリウムパスが2次元X線検出手段に衝突してしまう。従って、両者を同じ水平面内で移動させる場合であって、ヘリウムパスを測定位置から退避位置へ移動させるときには、2次元X線検出手段も同時に測定位置から退避位置へ移動させることが必要である。
【0025】
一方、ヘリウムパスと2次元X線検出手段とを異なる方向へ移動させる場合、例えば、2次元X線検出手段を水平面内で移動させ、ヘリウムパスをそれと直角な垂直面内で移動させる場合には、2次元X線検出手段を静止させた上で、ヘリウムパスだけを測定位置から退避位置へ移動させることができる。
【0026】
本発明のX線分析装置を用いた分析においては、測定を行う際、ヘリウムパスの第1窓をできるだけ試料に接近させる。これは、試料から出る回折線をできるだけ空気に触れさせることなく、ヘリウムパスの中に取り込むことを可能にするためである。しかしながら、このように試料とヘリウムパスとが接近していると、1つの試料についての測定が終了して試料を交換するときに、その交換作業が非常に難しくなる。
【0027】
このことに関し、上記のように、ヘリウムパスを試料に対して測定位置から退避位置へ移動させることができるようにしておけば、試料を交換する際にヘリウムパスを退避位置へ移動させることにより、試料の周りに広い空間領域を形成できる。これにより、分析者は試料の交換作業を容易に行うことができるようになる。
【0028】
次に、上記のようにパス移動手段及び検出器移動手段を設けたX線分析装置においては、それらのパス移動手段及び検出器移動手段はそれぞれ独自に前記パス支持手段及び前記検出器支持手段を移動できるように構成できる。また、検出器移動手段をパス移動手段の上に配設することにより、パス移動手段によってヘリウムパスを移動するときに、それと同時に検出器移動手段をも移動させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るX線分析装置によれば、X線源としてCrの特性X線を用いること、及び回折線の進行路をヘリウムパスで覆うことの構成に加えて、さらに、2次元X線検出手段のX線受光面を試料の方向へ湾曲する形状とした。これらの構成要件の組み合わせにより、タンパク質等といった複雑な分子の結晶構造をX線を用いた測定によって決定することに関して、初めて実質的に有用である測定を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係るX線分析装置を実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係るX線分析装置の一実施形態を示している。ここに示すX線分析装置1は、X線源Fと、入射光学系2と、試料支持台3と、測定ユニット4とを有する。試料支持台3及び測定ユニット4はテーブル5の上に設置されている。X線源F及び入射光学系2は、テーブル5に設置しても良いし、他のテーブルに設置しても良い。
【0031】
X線源Fは、図3に示すように、陰極としてのフィラメント6と、対陰極としてのターゲット7とを有する。フィラメント6は通電によって発熱して電子Eを放出する。この電子はターゲット7の表面に衝突してX線焦点Fを形成し、このX線焦点FからX線Rが発生する。本実施形態において、ターゲット7の少なくとも表面はCr(クロム)によって形成されている。従って、ターゲット7から発生するX線はCrに対応した波長のX線である。具体的には、CrKαの波長は2.29Åである。因みに、従来から広く使われているCuKαの波長は1.54Åである。
【0032】
ターゲット7は軸線を中心として矢印Aのように回転する。また、ターゲット7の内部には液体流路(図示せず)が形成され、この液体流路に冷却液、例えば冷却水が通水される。電子Eがターゲット7に衝突するとき、その衝突エネルギの多くは熱に変換される。この熱を放置すると、ターゲット7上のX線焦点Fの部分が非常に高温になり、ターゲット7が損傷して正常なX線の発生ができなくなるおそれがある。ターゲット7を矢印Aのように回転させ、さらにターゲット7の内部に冷却液を流すのはターゲット7が過熱によって損傷するのを防ぐためである。
【0033】
図1に戻って、入射光学系2は分析の目的に応じて必要なX線光学要素を有する。例えば、X線を単色化するモノクロメータ、X線を集束する集束光学系、X線源Fから発散するX線を平行ビームに成形する平行ビーム形成系等が必要に応じて設けられる。モノクロメータとしては、例えば単結晶モノクロメータや、湾曲結晶モノクロメータを用いることができる。また、集束光学系としては、放物線反射鏡や、放物線多層膜集束部材を用いることができる。また、平行ビーム形成系としては、複数のスリットを用いたコリメータや、ピンホールコリメータを用いることができる。
【0034】
試料支持台3はその上にヘッド8を装着できるようになっている。ヘッド8は、例えば3軸ゴニオヘッドによって構成される。ヘッド8はその上に試料Sを支持する。試料Sはヘッド8の先端に、例えば接着される。試料Sは、例えばタンパク質とすることができる。
【0035】
測定ユニット4は、パス支持手段としての外装カバー11を有する。このカバー11の試料Sに対向する部分には開口12が形成されている。そして、この開口12が設けられた部分のカバー11にヘリウムパス13が適宜の結合手段、例えば、ネジ止め、接着等によって装着されている。図2に矢印Bで示すようにヘリウムパス13をカバー11から取り外すと、その奥には、黒紙14が開口12の全面を漏れなく覆うように設けられている。黒紙14は、カバー11の内部に光が入るのを阻止する。
【0036】
図4は、図1のC−C線に従って測定ユニット4の内部の平面的な構造を示している。図4において、テーブル5の上であってカバー11によって囲まれる領域にカバー枠16が矢印D−D’方向、すなわち試料Sに対して進退移動する方向に平行移動できるように設置されている。カバー11は、このカバー枠16に適宜の結合手段、例えばネジ止め、接着等によって固定されている。カバー枠16の後端(図4の上端)の略中央部は、軸受17によって支持された送りネジ軸18に嵌合している。また、この送りネジ軸18は、プーリ19a,19b及びベルト21を介してモータ22、例えばサーボモータに連結している。プーリ19a,19b、ベルト21及びモータ22はテーブル5に固定されている。
【0037】
モータ22が作動してその出力軸が回転すると、送りネジ軸18が回転し、それに応じてカバー枠16が矢印D−D’のように試料Sに対して進退移動する。カバー枠16が矢印D−D’のように進退移動すると、それに固定されたカバー11も一体となって進退移動する。図4に示すカバー11の位置は試料Sに最も近づいた位置である。この位置がカバー11の測定位置である。一方、図7は、カバー11が試料Sから最も離れた位置にある状態を示している。ここに示すカバー11の位置がカバー11の退避位置である。
【0038】
図4において、カバー11の内部であってテーブル5の上に、可動ベース33及び消去装置26が設けられている。そして、可動ベース33の上に検出器支持手段としての検出器支持体23と、読取り装置24とが設けられている。可動ベース33は、図示しないガイド部材によってガイドされながら矢印F−F’で示すようにテーブル5の上においてカバー枠16と同じ方向へ往復平行移動できるようになっている。この平行移動により、可動ベース33は試料Sに対して進退移動する。
【0039】
可動ベース33の側方には平行駆動装置36が設けられている。この平行駆動装置36は、例えばサーボモータによって構成されたモータ37と、軸受38,38によって回転自在に支持されると共にカップリング39によってモータ37の出力軸に連結された送りネジ軸41と、その送りネジ軸41にネジ嵌合すると共に可動ベース33の側面に固定された移動子42とを有する。モータ37が作動して送りネジ軸41が自らの軸線の周りに回転すると、移動子42が送りネジ軸41に沿って図のF−F’方向へ平行移動し、移動子42が固定されている可動ベース33が矢印F−F’方向へ往復平行移動する。
【0040】
図4は、往復平行移動する可動ベース33が試料Sに最も近づく位置にあることを示している。この位置は、検出器支持体23を試料Sに対する所定の測定位置に置くための位置である。これ以降、この位置を測定位置と言うことにする。また、図6は、往復移動する可動ベース33が試料Sから最も離れる位置にあることを示している。可動ベース33がこの位置に置かれると、それに支持された検出器支持体23も試料Sから最も離れる位置に置かれることになる。これ以降、この位置を退避位置と言うことにする。
【0041】
可動ベース33の上に設けられた検出器支持体23は、図8に示すように、軸32を介して可動ベース33に支持されている。また、検出器支持体23は、モータ34によって駆動されて軸32の軸線X0を中心として矢印Gで示すように角度90°で間欠回転し、さらにその回転後の個々の位置に静止状態で保持されるようになっている。モータ34は可動ベース33に支持されている。また、検出器支持体23は、円筒面として形成された一対の検出器取付け面31を表裏対称の位置に有しており、これらの検出器取付け面31に2次元X線検出手段としての円筒形状の蓄積性蛍光体プレート27が1つずつ固着される。
【0042】
蓄積性蛍光体プレート27は、検出器支持体23に固着される面の反対面がX線受光面である。蓄積性蛍光体プレート27は適宜の固着手法、例えば両面接着材等によって固着される。ここで、蓄積性蛍光体とは、X線が当った所にエネルギ潜像を形成でき、そのようにエネルギ潜像が蓄積された所に輝尽励起光、例えばレーザ光が照射されると、蓄積されたエネルギ潜像のエネルギ量に対応した強度の光が外部へ放射されるという特性を有するプレートである。
【0043】
蓄積性蛍光体プレート27は検出器支持体23の検出器取付け面31に取り付けられた状態で、図12に示す形状及び寸法となるようになっている。なお、図12は、図4に示すように可動ベース33が試料Sに最も近づいた測定位置に置かれた状態を示している。図12において、蓄積性蛍光体プレート27は、その受光面が試料Sを中心として半径Dの円筒面を形成するように湾曲している。半径Dは、例えば127〜128mm程度、望ましくは127.4mmに設定される。また、蓄積性蛍光体プレート27の長さLは、試料Sから出る回折線を所望の広角度まで測定できる長さに設定される。例えば、長さLは350mm程度に設定される。
【0044】
さらに、試料Sに入射するX線の光軸X1を中心として蓄積性蛍光体プレート27の左端までの角度をθ5とし、右端までの角度をθ6とするとき、θ5=θ6=78°〜79°内の1点、望ましくはθ5=θ6=78.75°に設定する。また、X線の光軸X1を中心として蓄積性蛍光体プレート27の下端までの角度をθ7とし、上端までの角度をθ8とするとき、θ7=θ8=53°〜547°内の1点、望ましくは53.96°に設定する。
【0045】
図4において、可動ベース33の上に設けられた読取り装置24は光電変換装置28を有する。この光電変換装置28はレーザ発光部及び受光部を有しており、レーザ発光部から蓄積性蛍光体プレート27へ向けてレーザ光を出射できると共に、蓄積性蛍光体プレート27から発生する光を受光してその受光量に応じた信号を出力する。読取り装置24は、図5に示すように、可動ベース33上に設置されて上方へ延びる支持フレーム29に支持されている。この読取り装置24はモータ30によって駆動されて矢印J−J’で示すように鎖線で示す読取り位置と、実線で示す退避位置との間で上下方向へ平行移動する。
【0046】
蓄積性蛍光体プレート27に対して読取り処理を行う場合、読取り装置24は蓄積性蛍光体プレート27に対面する破線で示す読取り位置に置かれる。一方、図8において検出器支持枠23が矢印Gで示すように間欠回転するときには、その回転を邪魔しないように読取り装置24は図5に実線で示す退避位置に置かれる。
【0047】
光電変換装置28は、モータ35によって駆動されて矢印Eで示すように水平面内で回転できる。また、光電変換装置28は鎖線で示す読取り位置に置かれた状態で、モータ30によって駆動されて矢印K−K’で示すように、矢印Eで示す回転方向に対して直角の方向、すなわち上下方向に平行移動する。光電変換装置28は、図4の矢印E方向へ回転することにより蓄積性蛍光体プレート27を主走査し、図5の矢印K−K’方向に平行移動することにより蓄積性蛍光体プレート27を副走査する。この主走査及び副走査により、光電変換装置28は蓄積性蛍光体プレート27のX線受光面の全面を走査する。
【0048】
この走査過程中に、光電変換装置28のレーザ発光部から蓄積性蛍光体プレート27へレーザ光を照射したとき、そのレーザ照射点にある蓄積性蛍光体プレート27の内部にエネルギ潜像が蓄積されていると、そのエネルギ潜像が光となって外部に放出される。そして、その放出された光は、光電変換装置28の受光部に受光され、光電変換装置28内で所定の電子処理を受けることにより電気信号に変換され、そしてその電気信号が光電変換装置28の所定の出力端子に出力される。
【0049】
図4の消去装置26は、複数の線状光源である蛍光灯43を有する。可動ベース33を矢印F’方向へ移動させて検出器支持体23を図6に示す退避位置まで持ち運び、さらに検出器支持体23を角度90°回転させると、検出器支持体23に支持された蓄積性蛍光体プレート27を消去装置26に対面させることができる。この状態で、複数の蛍光灯43を点灯すれば、蓄積性蛍光体プレート27のX線受光面の全面が一様な光量の光で露光され、これにより、蓄積性蛍光体プレート27内のエネルギが消去されて、その蓄積性蛍光体プレート27が再使用可能な状態に設定される。
【0050】
図1において、X線源Fから発生して進行するX線Rの進行方向に関して試料Sの下流側にヘリウムパス13が配置されている。図9はそのヘリウムパス13の外観形状を示している。また、図10は図9のG−G線に従ってヘリウムパス13の平面の断面構造を示している。また、図11は図9のH−H線に従ってヘリウムパス13の側面の断面構造を示している。
【0051】
ヘリウムパス13は樹脂を材料とした成形加工によって形成されており、図9に示すように、試料Sに対向する開口51と、蓄積性蛍光体プレート27に対向する開口52とを有する。開口51及び開口52以外の部分は略一様な厚さ「d」のパス壁によって形状が決められている。開口51及び開口52の両方には膜部材53が接着剤、両面接着部材等によって気密に貼り付けられている。これにより、ヘリウムパス13の内部は外部と気密に隔絶されている。試料S側の開口51に膜部材53を貼り付けることにより第1窓54aが構成される。また、蓄積性蛍光体プレート27側の開口52に膜部材53を貼り付けることにより第2窓54bが構成される。膜部材53は、Crの特性X線を透過でき且つヘリウムの内圧に耐え得る機械的な強度を持った材料、例えばポリイミドフィルムであるカプトン(商品名)によって形成できる。
【0052】
ヘリウムパス13の適所、例えば図9の上端壁の隅にガス導入口56が設けられている。また、ガス導入口56から十分に離れた所、例えば下端壁の隅にガス排出口57が設けられている。ガス導入口56にはヘリウムガスの供給系が接続される。そして、ガス排出口57にはヘリウムガスの回収系が接続される。ヘリウム供給系から供給されるヘリウムは、ガス導入口56を通してヘリウムパス13の内部に導入され、ヘリウムパス13の内部に充満し、そして、ガス排出口57を通して回収される。これにより、ヘリウムガスの供給系、ヘリウムパス13、そしてヘリウムガスの回収系に沿って、常時、ヘリウムガスの流れが形成される。
【0053】
第1窓54aの面積すなわち開口51の面積は、試料Sから出る回折線を所定の広角度領域内で取り込むことができる大きさに設定される。第1窓54aは大きく設定しても構わないが、この第1窓54aはできるだけ試料Sに接近させて配置することが望ましく、本実施形態ではその通りに第1窓54aを試料Sに接近させて配置させるので、第1窓54aは必要以上に大きくする必要がない。従って、第1窓54aは第2窓54bよりも小さく形成される。
【0054】
第1窓54aを第2窓54bよりも小さく形成することにより、ヘリウムパス13は上下方向及び左右方向にわたって、換言すれば3次元空間的に扇形状に広がっている。これにより、試料Sから放射状に進行する回折線を確実に蓄積性蛍光体プレート27へ導くことができる。また、ヘリウムパス13が3次元空間的に扇形状に広がることにより、ヘリウムパス13の上部13a及び下部13bは、蓄積性蛍光体プレート27側から試料S側へ向けてすぼまる漏斗形状に形成されている。
【0055】
ヘリウムパス13の上部13aを漏斗形状にすれば、図1の測定ユニット4の上部から試料Sへ向けて流体、例えば試料Sを冷却するための冷却用媒体を流す場合等においてその漏斗形状を有効に利用できる。また、ヘリウムパス13の下部13bを漏斗形状にすれば、試料支持台3を測定ユニット4に近い位置に無理なく設置できる。
【0056】
図10は、図4に示すようにカバー11が試料2に対して最も近づいた位置、すなわち測定位置にある場合の、ヘリウムパス13と試料Sとの位置関係を示している。ヘリウムパス13がこのように測定位置に置かれるとき、第1窓54aはできるだけ試料Sに接近することが望ましい。これは、試料Sから出る回折線がヘリウムパス13に取り込まれる間に、回折線が空気に触れることをできるだけ回避するためである。こうすることにより、試料Sからの回折線をできるだけ減衰させることなく蓄積性蛍光体プレート27へ導くことが可能となる。
【0057】
また、第1窓54aの膜部材53は試料Sを中心とする半径rの円筒形状とする。こうすれば、試料Sから膜部材53へ至る距離は、回折角度が変わっても全て距離rで一定になる。これにより、回折線の減衰の状態を回折角度の変化に対して一定に設定できるので、測定の結果として得られるデータの信頼性を高めることができる。
【0058】
以下、上記構成より成るX線分析装置についてその動作を説明する。
(試料Sの装着)
まず、図1のX線分析装置1の試料支持台3上に試料Sを取り付けるための動作を説明する。この試料Sは、タンパク質等といった複雑な分子を有する物質であるとする。本実施形態では、X線としてCrの特性X線を用いている。このCrの特性X線はCuの特性X線に比べて波長が長いため空気と接触したときの減衰の程度が非常に大きい。このような空気による減衰を回避するため本実施形態ではヘリウムパス13をできるだけ試料Sに接近させて測定を行う。この接近した位置がヘリウムパス13の測定位置である。ヘリウムパス13をこの測定位置に置いたままでは、ヘリウムパス13と試料支持台3の先端とが近づき過ぎているので、試料支持台3への試料Sへの装着を行うことが極めて難しい。
【0059】
そこで、本実施形態では、試料Sの装着に先立って、図4の平行駆動装置36のモータ37を作動して可動ベース33を矢印F’方向へ平行移動させて図4の測定位置から図6の退避位置へと移動させる。この可動ベース33の移動は、引き続いて行われるカバー11の平行移動の邪魔にならないようにするためである。
【0060】
その後、図6のモータ22を作動してカバー枠16を矢印D’方向へ平行移動させて、そのカバー枠16を図6の測定位置から図7の退避位置へと平行移動させる。カバー枠16のこの平行移動により、カバー枠16に固着されたカバー11及びカバー11に支持されたヘリウムパス13は、図6に示す測定位置から図7に示す退避位置へと矢印I’のように平行移動する。この退避位置において、ヘリウムパス13と試料支持台3との間には広い空間が形成される。このように試料支持台3の周りに広い空間を形成した上で、作業者は試料支持台3に試料Sを装着する。通常は、試料Sが取り付けられたヘッド8を試料支持台3に取り付ける。試料Sの周りに広い空間を形成するので、作業者による試料Sの装着は極めて簡単である。
【0061】
試料支持台3に対する試料Sの装着が終了すると、図7においてモータ22を作動して、カバー枠16を矢印D方向へ復動させる。このカバー枠16の復動により、それに固定されたカバー11及びそれに支持されたヘリウムパス13を矢印I方向へ復動させて、図6に示す測定位置へセットずる。この測定位置において、試料Sとヘリウムパス13とが図9、図10及び図11に示す位置関係、すなわち互いに接近する位置関係になる。
【0062】
その後、図6のモータ37を作動して可動ベース33を図6の退避位置から図4に示す測定位置まで平行移動させる。この平行移動により、蓄積性蛍光体プレート27を図6の退避位置から図4の測定位置へ移動させる。測定位置に置かれた蓄積性蛍光体プレート27は、図9、図10及び図11に示すように、ヘリウムパス13の第2窓54bに接近する位置に配置される。以上により、図1に示すように、試料支持台3の先端に試料Sが取り付けられ、さらに、カバー11に支持されたヘリウムパス13の第1窓54aが試料Sに接近する位置に配置される。
【0063】
(X線を用いた測定)
その後、図3のX線発生装置を作動してX線源FからCrの特性X線を発生させる。このCrの特性X線は、波長の長いX線であって、タンパク質等といった複雑な分子を有する物質の分析に適している。このX線は図1の入射光学系2に受け取られ、その入射光学系2によって必要に応じて単色化、集束化、又は平行ビーム化された後、試料Sに照射される。試料SにCrの特性X線が入射すると、タンパク質内の分子構造に応じて所定の回折角度に散乱線が発生し、この散乱線が図9のヘリウムパス13の第1窓54aからそのヘリウムパス13内へ導入される。このとき、本実施形態では図10に示したように、試料Sと第1窓54aとの間の距離をできるだけ小さくし、さらに、第1窓54aを試料Sを中心とする円筒形状に形成したので、試料Sから出る散乱線の空気による減衰は可能な限り小さく抑えられる。また、第1窓54aを試料Sを中心とする円筒形状に形成したことにより、散乱線の空気による減衰の程度が回折角度の違いによってばらつくのを抑えることができる。
【0064】
図9において、ヘリウムパス13の内部には、ヘリウム供給系から送られてヘリウム回収系に回収されるヘリウムが流れている。従って、ヘリウムパス13の中を通って蓄積性蛍光体プレート27へ向けて進む散乱線の減衰が抑えられ、蓄積性蛍光体プレート27に十分な強度の散乱線が到達する。仮に、散乱線の減衰を抑えるためにヘリウムガスを用いることに代えてヘリウムパス13の内部を真空状態にすることを考えると、ヘリウムパス13の第1窓54a及び第2窓54bに設けた膜部材53が外気圧に押されて破損するおそれがある。これに対し、本実施形態のように、ヘリウムパス13の内部にヘリウムガスを供給する方法を採用すれば、そのヘリウムガスの圧力の働きにより膜部材53の破損を防止できる。
【0065】
以上により、試料Sから所定の回折角度で発生した散乱線は、その回折角度に対応した位置の蓄積性蛍光体プレート27の座標位置を露光し、その座標位置にエネルギ潜像が蓄積される。蓄積されるエネルギの量は散乱線の強度に対応する。試料Sへの所定時間のX線照射が終了することにより、蓄積性蛍光体プレート27の散乱線による露光が終了すると、図4において平行駆動装置36内のモータ37が作動して可動ベース33が図4の測定位置から図6の退避位置へ移動する。これにより、可動ベース33に支持された検出器支持体23が、測定を終えた蓄積性蛍光体プレート27を保持した状態で、図4の測定位置から図6の退避位置へ平行移動する。
【0066】
その後、検出器支持体23は図8に示すように軸線X0の周りに角度90°で間欠的に回転し、エネルギ潜像が蓄積された蓄積性蛍光体プレート27は図6の読取り装置24に対面する位置に運ばれる。このとき、読取り装置24は、図5に実線で示す退避位置に置かれていて、回転する検出器支持体23と読取り装置24とが衝突することはない。次に、図6の平行駆動装置36の働きにより可動ベース33及び検出器支持体23が、再度、図4の測定位置へ運ばれ、さらに、読取り装置24の光電変換装置28が図5の読取り位置(鎖線で示す位置)へセットされる。
【0067】
次に、光電変換装置28が矢印E方向へ主走査回転し、さらに矢印K方向へ副走査移動することにより、蓄積性蛍光体プレート27内の潜像データが読取り装置24の働きによって散乱線データとして読み出される。この散乱線データが、図1における試料Sに対する入射X線Rのある1つの入射角度についての試料Sの散乱線データとして、例えばコンピュータシステム内の記憶媒体内の所定の記憶場所に記憶される。
【0068】
以上のような読取り装置24による読取り処理が行われている間、図4において、読取り処理を受けている蓄積性蛍光体プレート27の裏側で検出器支持体23に保持されたもう一方の蓄積性蛍光体プレート27は試料Sに対面する測定位置に置かれている。この蓄積性蛍光体プレート27を用いて試料Sに対して異なる条件での測定を行うことができる。具体的には、図1において試料Sを例えば角度2°回転させて試料Sに対するX線Rの入射角度を2°変化させる。そして、入射角度をそのように変化させた上で、以上に説明した一連の処理、すなわち、(1)試料SへCrの特性X線を照射してその試料Sから散乱線を発生させる処理、(2)その散乱線によって蓄積性蛍光体プレート27を露光する処理、そして(3)露光処理の終了後の蓄積性蛍光体プレート27を読取り装置24に対面する位置まで運んで読取り処理を行って散乱線データをコンピュータシステム内の所定の記憶場所に記憶する処理、というの一連処理を行う。
【0069】
なお、読取り装置24による読取り処理を受けた蓄積性蛍光体プレート27が、検出器支持体23の間欠回転によって次の測定のために試料Sに対面する位置まで回転搬送されることは既述の通りであるが、この回転搬送の際、検出器支持体23は読取り位置から90°の角度回転して消去装置26に対面したときに、一旦、停止する。そして、消去装置26の蛍光灯43が点灯して蓄積性蛍光体プレート27内に残留する潜像がX線受光面から除去される。これにより、次の測定に対する蓄積性蛍光体プレート27の初期化が完了する。
【0070】
以上のように、図1において、試料Sに対するX線Rの入射角度を2°ずつ変化させながら、個々の入射角度位置において図12の蓄積性蛍光体プレート27に散乱潜像を取得し、その散乱線データを電気信号としてコンピュータシステムの所定記憶場所に記憶する。最終的には、角度2°ずつ異なる180種類程度の入射角度のそれぞれについて散乱線データを取得し、それらの散乱線データに基づいてタンパク質試料Sの分子の結晶構造を決定する。
【0071】
(試料Sの交換)
以上のようにして1つの試料Sについて測定が終了した後、別の試料Sに関して測定を行いたい場合には、図1において、試料支持台3に支持されていた測定済みの試料Sを取り外して、測定を希望する新しい試料Sを試料支持台3に装着する必要がある。
【0072】
この場合、測定位置に置かれたヘリウムパス13の第1窓54aは試料Sに非常に接近しているので、このままでは、試料Sの交換を行うことが非常に難しい。そこで、試料Sの交換に先立って、まず、図4の平行駆動装置36のモータ37を作動して可動ベース33を矢印F’方向へ平行移動させて図4の測定位置から図6の退避位置へと移動させる。この可動ベース33の移動は、引き続いて行われるカバー11の平行移動の邪魔にならないようにするためである。
【0073】
その後、図6のモータ22を作動してカバー枠16を矢印D’方向へ平行移動させて図6の測定位置から図7の退避位置へと平行移動させる。カバー枠16のこの平行移動により、カバー枠16に固着されたカバー11及びカバー11に支持されたヘリウムパス13は、図6に示す測定位置から図7に示す退避位置へと矢印I’のように平行移動する。この退避位置において、ヘリウムパス13と試料支持台3との間には広い空間が形成される。このように試料支持台3の周りに広い空間を形成した上で、作業者は試料支持台3上の測定済みの試料Sを取り外し、さらに、測定を希望する新しい試料Sを試料支持台3に装着する。
【0074】
試料支持台3に対する新しい試料Sの装着が終了すると、図7においてモータ22を作動して、カバー枠16を矢印D方向へ復動させる。このカバー枠16の復動により、それに固定されたカバー11及びそれに支持されたヘリウムパス13を矢印I方向へ復動させて、図6に示す測定位置へセットする。この測定位置において、試料Sとヘリウムパス13とが図9、図10及び図11に示す位置関係、すなわち互いに接近する位置関係になる。
【0075】
その後、図6のモータ37を作動して可動ベース33を図6の退避位置から図4に示す測定位置まで平行移動させる。この平行移動により、蓄積性蛍光体プレート27を図6の退避位置から図4の測定位置へ移動させる。測定位置に置かれた蓄積性蛍光体プレート27は、図9、図10及び図11に示すように、ヘリウムパス13の第2窓54bに接近する位置に配置される。以上により、図1に示すように、試料支持台3の先端に新しい試料Sが取り付けられ、さらに、カバー11に支持されたヘリウムパス13の第1窓54aが試料Sに接近する位置に配置される。これにより、新しい試料Sに関する測定の準備が完了する。
【0076】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0077】
例えば、上記の実施形態では、図4において、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面と、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面とを、テーブル5上の同じ面とした。このため、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際には、ヘリウムパス13が蓄積性蛍光体プレート27等にぶつかることを回避するために、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を図4の測定位置から図6の退避位置へ移動させることにした。
【0078】
この構成とは別の構成として、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面と、蓄積性蛍光体プレート27を支持する検出器支持体23を測定位置から退避位置へ移動させる際の移動面とを、別々の面とすることができる。例えば、検出器支持体23を図4と同様にテーブル5と平行な平面内で平行移動させるものとし、ヘリウムパス13は例えばそれと直角な垂直方向へ移動させるように構成することができる。こうすれば、ヘリウムパス13を測定位置から退避位置へ移動させる際に、蓄積性蛍光体プレート27等をわざわざ移動させなくても済むようになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るX線分析装置は、タンパク質等のような複雑な分子の結晶構造をX線を用いて迅速に決定しようとする際に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るX線分析装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のX線分析装置の一部を分解した状態を示す図である。
【図3】図1のX線分析装置で用いられるX線発生装置の一例を示す斜視図である。
【図4】図1のC−C線に従った平面断面図である。
【図5】図1のX線分析装置の側面断面図である。
【図6】図4の構造が異なる状態へ動作した場合を示す図である。
【図7】図4の構造がさらに異なる状態へ動作した場合を示す図である。
【図8】図4の要部である蓄積性蛍光体プレートの支持部分を示す斜視図である。
【図9】図4の他の要部であるヘリウムパスの一例を示す斜視図である。
【図10】図9のG−G線に従ってヘリウムパスの平面構造を示す断面図である。
【図11】図9のH−H線に従ってヘリウムパスの側面構造を示す断面図である。
【図12】図1のX線分析装置で用いる蓄積性蛍光体プレートの一例を示す斜視図である。
【図13】X線分析方法の一例を説明するためのグラフを示す図である。
【図14】従来のX線分析方法を説明するため図である。
【符号の説明】
【0081】
1.X線分析装置、 2.入射光学系、 3.試料支持台、 4.測定ユニット、
5.テーブル、 8.ヘッド、 11.外装カバー(パス支持手段)、 12.開口、
13.ヘリウムパス、 14.黒紙、 16.カバー枠、 18.送りネジ軸、
22.モータ、 23.検出器支持体、 24.読取り装置、 26.消去装置、
27.蓄積性蛍光体プレート(2次元X線検出手段)、 28.光電変換装置、
29.支持フレーム、 31.検出器取付け面、 33.可動ベース、
36.平行駆動装置、 37.モータ、 41.送りネジ軸、 43.蛍光灯、
51.開口、 52.開口、 53.膜部材、 54a.第1窓、 54b.第2窓、
56.ガス導入口、 57.ガス排出口、 E.電子、 F.X線焦点(X線源)、
R.X線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に照射するCrの特性X線を発生するX線源と、
前記試料から出る回折線を受光する2次元X線検出手段と、
前記試料と前記2次元X線検出手段との間に配置され、内部にヘリウムガスが充填され、前記Crの特性X線を透過させることができるヘリウムパスと、
を有し、
前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として湾曲し、
前記ヘリウムパスは、前記試料に対向する第1窓と、前記2次元X線検出手段に対向する第2窓とを有し、
前記第1窓は前記第2窓よりも小さく形成される
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線分析装置において、前記第1窓と前記第2窓との間の前記ヘリウムパスのパス壁は上下方向及び横方向の少なくとも一方向へ扇形状に広がることを特徴とするX線分析装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として円筒形状に湾曲することを特徴とするX線分析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のX線分析装置において、
前記第1窓は前記試料に接近して配置されると共に該試料を中心として円筒形状に湾曲する
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第2窓は、前記試料を中心として円筒形状に湾曲することを特徴とするX線分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5いずれか1つに記載のX線分析装置において、
前記ヘリウムパスを支持するパス支持手段と、
前記2次元X線検出手段を支持する検出器支持手段と、
前記パス支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させるパス移動手段と、
前記検出器支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させる検出器移動手段と
を有することを特徴とするX線分析装置。
【請求項7】
請求項6記載のX線分析装置において、
前記パス移動手段及び前記検出器移動手段はそれぞれ独自に前記パス支持手段及び前記検出器支持手段を移動できる
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項1】
試料に照射するCrの特性X線を発生するX線源と、
前記試料から出る回折線を受光する2次元X線検出手段と、
前記試料と前記2次元X線検出手段との間に配置され、内部にヘリウムガスが充填され、前記Crの特性X線を透過させることができるヘリウムパスと、
を有し、
前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として湾曲し、
前記ヘリウムパスは、前記試料に対向する第1窓と、前記2次元X線検出手段に対向する第2窓とを有し、
前記第1窓は前記第2窓よりも小さく形成される
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線分析装置において、前記第1窓と前記第2窓との間の前記ヘリウムパスのパス壁は上下方向及び横方向の少なくとも一方向へ扇形状に広がることを特徴とするX線分析装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のX線分析装置において、前記2次元X線検出手段のX線受光面は前記試料を中心として円筒形状に湾曲することを特徴とするX線分析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のX線分析装置において、
前記第1窓は前記試料に接近して配置されると共に該試料を中心として円筒形状に湾曲する
ことを特徴とするX線分析装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第2窓は、前記試料を中心として円筒形状に湾曲することを特徴とするX線分析装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5いずれか1つに記載のX線分析装置において、
前記ヘリウムパスを支持するパス支持手段と、
前記2次元X線検出手段を支持する検出器支持手段と、
前記パス支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させるパス移動手段と、
前記検出器支持手段を測定位置と退避位置との間で移動させる検出器移動手段と
を有することを特徴とするX線分析装置。
【請求項7】
請求項6記載のX線分析装置において、
前記パス移動手段及び前記検出器移動手段はそれぞれ独自に前記パス支持手段及び前記検出器支持手段を移動できる
ことを特徴とするX線分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−29926(P2006−29926A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207884(P2004−207884)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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