説明

X線撮影装置

【課題】コストをかけず、エネルギー消費量も増大させることなく長尺撮影に要する時間を従来よりも短縮する。
【解決手段】天板1を挟んで対向配置されたX線管2およびX線検出器3を備える。X線管は、X線管移動機構6によって支持され、長尺撮影の間に首振り運動する。X線検出器3は、X線検出器移動機構7によって支持され、X線管に追従して天板に対して平行移動する。X線管およびX線検出器が、被検者の長尺撮影範囲に対応する移動範囲内で動かされ、その間に移動範囲の両端の撮影位置を含む複数の撮影位置においてX線管から被検者に対してX線が照射され、連続した複数のX線画像が取得され、それらのX線画像から長尺X線画像が生成される。X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアにおいてX線画像が取得され、撮影位置毎に、検出面上のX線画像取得エリアの位置がX線検出器の移動方向に変更され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置、特に、全脊椎撮影や全下肢撮影のような長尺撮影を行うのに適したX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のX線撮影装置は、臥位または立位をとる被検者を挟んで対向配置されたX線管およびX線検出器を備えている。X線管は、X線管移動機構によって支持され、長尺撮影時に被検者の体軸に沿って首振り運動または平行移動し得るようになっており、X線検出器は、X線検出器移動機構によって支持され、X線管の首振り運動または平行移動に追従して被検者の体軸に沿って平行移動し得るようになっている。
【0003】
そして、X線管およびX線検出器が、被検者の体軸に沿って予め決定された長尺撮影範囲に対応する移動範囲の一端から他端に向けて動かされ、その間に、移動範囲の両端の撮影位置を含む複数の撮影位置においてX線管から被検者に対してX線が照射され、その都度、被検者からの透過X線がX線検出器によって検出され、それによって、連続した複数のX線画像が取得される。
【0004】
この場合、通常、X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアは当該検出面よりも小さく、このため、各X線画像の取得時の補正処理を簡単にするべく、各撮影位置において、X線画像取得エリアが常に検出面上の同じ位置にあるようにX線検出器の位置が設定される。
そして、取得された複数のX線画像は互いにつなぎ合わされ、被検者の長尺X線画像が生成される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
こうして、医師は、個々のX線画像の視野よりも広い合計視野を有する結合X線画像に基づいて、関心領域の全体をくまなく観察することができ、よって、長尺撮影は有効なX線撮影法の1つとなっている。
しかしながら、長尺撮影の際には、X線管およびX線検出器を一定の範囲内において移動させながらX線撮影を行うので、X線管およびX線検出器の移動時間に比例して撮影時間が増大する。また、長尺X線画像は、一連のX線画像をつなぎ合わせたものからなり、よって、個々のX線画像の間に不整合が生じると正確な長尺画像を取得することができないので、通常、被検者は、長尺撮影の間にできるだけ体を動かさないように指示され、これは被検者にとって大きな負担となっている。
【0006】
そこで、長尺撮影に要する時間を短縮するため、例えば、X線検出器のサイズを大きくすることが考えられるが、大型のX線検出器は高価であり、しかもそれを動かすのに高出力トルクのモータが必要とされ、コスト高となり、エネルギー消費量も増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−135692号公報
【特許文献2】特開2007−222500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、コストをかけず、エネルギー消費量も増大させることなく長尺撮影に要する時間を従来よりも短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、X線管およびX線検出器を、被検者を挟んで対向配置し、前記X線管を前記被検者の体軸に沿って首振り運動または平行移動させるとともに、前記X線検出器を前記X線管に追従させて前記被検者の体軸に沿って平行移動させ、前記X線管および前記X線検出器を、所定の長尺撮影範囲に対応する移動範囲の一端から他端に向けて動かし、その間に、前記移動範囲の両端を含む複数の撮影位置において、前記X線管から前記被検者に対してX線を照射し、前記被検者からの透過X線を前記X線検出器によって検出することにより、連続した複数のX線画像を取得し、それらのX線画像をつなぎ合わせることによって前記被検者の長尺X線画像を生成するX線撮影装置において、前記X線管を支持するとともに、前記被検者の体軸に沿って首振り運動または平行移動させるX線管移動機構と、前記X線検出器を支持するとともに、前記被検者の体軸に沿って平行移動させるX線検出器移動機構と、前記X線管、前記X線管移動機構および前記X線検出器移動機構を制御する制御部と、を有し、前記X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアにおいて前記X線画像が取得され、前記制御部は、前記撮影位置毎に、前記検出面上の前記X線画像取得エリアの位置を前記X線検出器の移動方向に変更する制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することを特徴とするX線撮影装置を構成したものである。
【0010】
上記構成において、前記制御部は、前記X線管および前記X線検出器が前記移動範囲の両端の撮影位置をそれぞれとるとき、前記X線検出器の前記検出面における前記移動範囲の端側に位置する端縁を、前記X線画像取得エリアにおける前記移動範囲の端側に位置する端縁に一致させる制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することが好ましい。
さらに、前記X線管および前記X線検出器が、前記移動範囲内において前記両端の撮影位置を含む3つ以上の撮影位置をとる場合、前記制御部は、前記X線管および前記X線検出器が前記両端の撮影位置を除く撮影位置をとるとき、前記X線検出器の前記X線画像取得エリアを前記検出面の中央に位置させる制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長尺撮影装置において、X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアの位置を撮影位置毎に変更することで、長尺撮影の間にX線検出器が移動する距離を従来例よりも短くし、それによって撮影時間を大幅に短縮することができ、長尺撮影時の被検者の負担を軽減することができる。
本発明のこの効果は、特に、長尺撮影の間にX線管を首振り運動させる構成の場合に顕著である。これに対し、長尺撮影の間にX線管がX線検出器とともに被検体の体軸方向に平行移動する構成では、本発明のこの効果は、X線検出器移動機構の駆動モータの出力が、X線管移動機構の駆動モータの出力に比べて小さい場合に有意義なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施例によるX線撮影装置のブロック図である。
【図2】(A)は、X線撮影装置における撮影距離および長尺撮影範囲の決定方法を説明する図であり、(B)は、X線検出器の撮影位置の決定方法を説明する図である。
【図3】X線管の撮影位置の決定方法を説明する図である。
【図4】X線管およびX線検出器の各撮影位置と、各撮影位置におけるX線検出器の検出面上のX線取得エリアの位置との関係を示す図である。
【図5】(A)は、図1のX線撮影装置の長尺撮影時におけるX線管およびX線検出器の移動の様子を説明する側面図であり、(B)は、(A)の各撮影位置におけるX線検出器の検出面上のX線画像取得エリアの位置を示す平面図である。
【図6】(A)は、従来の同種のX線撮影装置の長尺撮影時におけるX線管およびX線検出器の移動の様子を説明する側面図であり、(B)は、(A)の各撮影位置におけるX線検出器の検出面上のX線画像取得エリアの位置を示す平面図である。
【図7】(A)は、本発明の別の実施例によるX線撮影装置の長尺撮影時におけるX線管およびX線検出器の移動の様子を説明する側面図であり、(B)は、従来の同種のX線撮影装置の長尺撮影時におけるX線管およびX線検出器の移動の様子を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、本発明の1実施例によるX線撮影装置のブロック図である。
図1を参照して、X線撮影装置は、X線透過材料から形成され、被検者Mが臥位に支持される天板1と、天板1の上方に配置され、被検者MにX線を照射するX線管2と、天板1の下側に配置され、被検者Mからの透過X線を検出するX線検出器3を備えている。
この実施例では、臥位をとる被検者Mを長尺撮影するので、天板1が備えられるが、立位をとる被検者Mを長尺撮影する場合には、天板1は不要であり、その代わりに被検者Mの後側にX線透過材料から形成された衝立が設けられる。
【0014】
X線管2は、X線の照射範囲を制限する絞り2aを備えている。また、X線検出器3は、フラットパネル型X線検出器(FPD)からなっている。なお、X線検出器として、FPDの代わりに、イメージ増倍管(I.I.)およびTVカメラを用いることもできる。
【0015】
天板1は、天板移動機構4によって、昇降可能に、また、水平面内において長手方向および幅方向に移動可能になっている。天板移動機構4には、天板1の床面からの高さを検出する位置検出器15が備えられる。
X線管2には高圧電源装置5が接続され、また、X線管2は、X線管移動機構6によって支持され、初期位置まで垂直方向および天板1の長手方向に移動可能に、かつ長尺撮影の間に、初期位置においてX線管2の焦点のまわりに被検者Mの体軸に沿って首振り運動可能になっている。X線管移動機構6には、X線管2の床面からの高さ、天板長手方向の位置、および首振りの角度(X線管2から照射されるX線の中心が垂線に対してなす角度)を検出する位置検出器13が備えられる。
【0016】
X線検出器3は、X線検出器移動機構7によって支持され、長尺撮影の間のX線管2の移動に追従して、天板1に対して平行にかつ被検者Mの体軸方向に移動可能になっている。X線検出器移動機構7には、X線検出器3の天板長手方向の位置を検出する位置検出器14が備えられる。
【0017】
天板移動機構4、X線管2、高圧電源装置5、X線管移動機構6およびX線検出器移動機構7は制御部8によって制御される。制御部8は、操作部9から入力される種々の命令やデータに基づいてこれらの装置や機構を制御する。
【0018】
X線撮影装置は、また、X線検出器3の検出信号を読み取り、連続した複数のX線画像を取得し、それらのX線画像をつなぎ合わせることによって被検者の長尺X線画像を生成する画像処理部10と、画像処理部10で生成されたX線画像データを格納する画像メモリ11と、画像メモリ11に接続されたモニタ12を備えている。
【0019】
図2(A)は、X線撮影装置における撮影距離および長尺撮影範囲の決定方法を説明する図であり、図2(B)は、X線検出器の撮影位置の決定方法を説明する図である。また、図3は、X線管の撮影位置の決定方法を説明する図である。なお、図2および図3において、天板の長手方向にx軸を設定した。
図2(A)を参照して、長尺撮影に際し、まず、天板1の位置が設定される。このとき、制御部8は、位置検出器15の検出信号を受け、天板1の床面からの高さを記録する。そして、被検者Mが天板1上に寝かされ、X線管2が操作者の手動によって撮影距離設定位置P(長尺撮影範囲内の任意の点を通る垂線上にある)まで動かされ、X線管2の(図示しない)撮影距離設定ボタンが操作者によって押される。このとき、制御部8は、位置検出器13の検出信号を受け、X線管2の床面からの高さおよび天板長手方向の位置xを記録し、さらに、床面からの高さと、既に記録された天板1の床面からの高さと、予め設定されたX線検出器3から天板1までの距離dとに基づいて撮影距離D(X線管2の焦点および検出器3の検出面間の距離)を算出し、記録する。
【0020】
そして、X線管2に内蔵された(図示しない)X線照射範囲確認用の投光器から光ビームgが照射され(光ビームgは、X線管2からの照射X線のビーム中心を通る)、X線管2が操作者の手動によって傾けられ、被検者Mの長尺撮影範囲の一方の端Aが照らされて(図2(A)の破線で示した位置)、X線管2の(図示しない)位置決定ボタンが操作者によって押される。このとき、制御部8は、位置検出器13の検出信号を受け、X線管2の垂線方向に対する首振りの角度θを記録し、また、
=x−(D−d)×tanθ
=x−D×tanθ
に従って、長尺撮影範囲の一方の端Aの位置x、並びに、長尺撮影画像の長手方向の一方の端Eの位置xを算出し、それらを記録する。
【0021】
次に、X線管2が操作者の手動によって前と反対向きに傾けられ、被検者Mの長尺撮影範囲の他方の端が投光器からの光ビームによって照らされ、操作者によって位置決定ボタンが押される。そして、制御部8は、前と同様にして、長尺撮影範囲の他方の端Bの位置x、並びに、長尺撮影画像の長手方向の他方の端Fの位置xを求め、それらを記録する。
【0022】
次に、図2(B)を参照して、X線検出器3の検出面の長さsおよびX線画像をつなぎ合わせるときの重なり部分の長さfは予め設定されており、制御部8は、これらの設定値と長尺撮影画像の長さEF(=x−x)とから、
EF≦N×s−(N−1)×f
を満たすNの最小値を求め、それを撮影枚数Nとし、記録する。なお、図2の実施例では、撮影枚数N=3である。
【0023】
さらに、制御部8は、EFをN分割(この実施例では3等分)することによって、1撮影当たりに取得されるX線画像の長さ、よって、撮影毎のX線検出器3のX線画像取得エリアの長さと、それに対応するX線検出器3の撮影位置を決定する。この場合、EFの分割は等分割である必要はない。
そして、例えば、EFをN等分する場合には、1撮影当たりに取得されるX線画像の長さLは、
L=[EF+(N−1)×f]/N
となる。
【0024】
制御部8は、1撮影当たりに取得されるX線画像の長さに基づき、撮影毎のX線管2のX線照射範囲と対応するX線管2の撮影位置を決定する。
【0025】
例えば、図3を参照して、今、1撮影当たりに取得されるX線画像の一端がE(x)、他端がJ(x)とし、線分EJを当該X線画像の長さLとすれば、
=x+L
であり、そして、X線照射範囲は線分EJとなり、X線の入射線上の位置を点I(x)とすれば、
=x+a
である。また、角の二等分線の性質より、
a:b=√[D+(x−x]:√[D+(x−x
が成立する。さらに、距離の比例等分より、
a=L×a/(a+b)
=L×√[D+(x−x]/[√(D+(x−x)+√(D+(x−x)]
=L×√[D+(x−x]/[√(D+(x−x)+√(D+(x−x−L))]
となるので、
=x+L×√[D+(x−x]/[√(D+(x−x)+√(D+(x−x−L))]
が得られる。したがって、X線照射範囲EJに対応するX線管2の首振り角度α(撮影位置)は、
α=tan−1[(x−x)/D]
となる。
【0026】
図4は、上で決定されたX線管およびX線検出器の各撮影位置と、各撮影位置におけるX線検出器の検出面上のX線取得エリアの位置との関係を示す図である。図4中、X線検出器3の移動方向に沿ってx軸を設定した。また、Lは1撮影当たりに取得されるX線画像の長さを表し、fはX線画像をつなぎ合わせるときの重なり部分の長さの所定値を表し、(I)、(II)および(III)は、それぞれ、X線管およびX線検出器の3つの撮影位置を表している。また、Wは、X線検出器3の中心を表し、VはX線画像取得エリア17の中心を表している。
【0027】
図4を参照して、X線検出器3の検出面16は、2つの端縁16a、16bによってX線検出器3の移動方向に限定されるとともに、検出面13上の(1撮影当たりのX線画像の長さに対応する)X線画像取得エリア17においてX線画像が取得されるようになっている。そして、制御部8は、撮影位置毎に、X線検出器3の検出面13上のX線画像取得エリア17の位置をX線検出器3の移動方向に変更する制御信号をX線検出器移動機構7に対して送信する。
【0028】
この制御部8によるX線検出器3の検出面13上のX線画像取得エリア17の位置変更の方法を詳細に説明する。
再び図4を参照して、制御部8には、X線検出器3の中心Wから検出面16の両端縁16a、16bまでの距離uが予め記録されており、よって、制御部8によってX線検出器13の位置W(x)が決定されると、その位置での検出面16の端縁16a、16bの位置W(x)±uも同時に決定される。
【0029】
また、図4において、各撮影位置(I)、(II)、(III)におけるX線画像取得エリア17の中心の位置V(x)は次のように表される。
撮影位置(I):V(x)=x+L/2
撮影位置(II):V(x)=x+L/2+(L−f)
撮影位置(III):V(x)=x+L/2+(L−f)×2
そして、制御部8は、X線検出器3に対して制御信号を送り、X線検出器3が移動範囲の両端の撮影位置(I)および(III)をとるとき、X線検出器3の検出面16における当該移動範囲の端側に位置する端縁が、X線画像取得エリア17における当該移動範囲の端側に位置する端縁に一致するよう、X線検出器3を移動させる。
このため、撮影位置(I)および(III)では、X線画像取得エリア17の中心Vに対しX線検出器3の中心Wをずらす必要がある。この場合、X線検出器3の検出面16のx軸方向の長さとX線画像取得エリア17のx軸方向の長さとの差分は、2×u−Lであるから、その半分の長さをずらせばよい。
したがって、各撮影位置(I)、(II)、(III)におけるX線検出器3の中心の位置W(x)は、次のように決定される。
撮影位置(I):W(x)=V(x)+(2×u−L)/2=x+u
撮影位置(II):W(x)=V(x)=x+L+(L/2−f)
撮影位置(III):W(x)=V(x)−(2×u−L)/2=x+2×(L−f)+(L−u)
そして、X線画像取得エリアの一端17aおよび他端17bの位置は、撮影位置毎に、当該撮影位置におけるX線検出器の中心Wを座標原点とすると、次のように決定される。
撮影位置(I):一端17aの位置=−u、他端17bの位置=L−u
撮影位置(II):一端17aの位置=−L/2、他端17bの位置=L/2
撮影位置(III):一端17aの位置=u−L、他端17bの位置=u
こうして、制御部8は、撮影毎に、X線検出器3の位置およびそれに対応するX線管2の位置を制御し、さらに、X線画像取得エリア17の両端17a、17bの位置を切り替える。
【0030】
上では、長尺撮影の間に全部で3回の撮影を行う場合について説明したが、これを一般化し、長尺撮影の間に全部でN回の撮影を行う場合について説明すると、n番目の撮影位置において、X線画像取得エリア17の中心Vの位置は、
V(x)=x+L/2+(L−f)×(n−1)
となり、また、X線検出器3の中心の位置W(x)は、次のように決定される。
(1)X線検出器3の移動範囲の一方の端の撮影位置(n=1)において、
W(x)=V(x)+(2×u−L)/2
(2)X線検出器3の移動範囲の中間の各撮影位置(n≠1,N)において、
W(x)=V(x)+(2×u−L)/2−(2×u−L)×(n−1)/(N−1)
(3)X線検出器3の移動範囲の他方の端の撮影位置(n=N)において、
W(x)=V(x)−(2×u−L)/2
したがって、X線画像取得エリア17の一端17aおよび他端17bの位置は、撮影位置毎に、当該撮影位置におけるX線検出器の中心Wを座標原点とすると次のように決定される。
(1)X線検出器3の移動範囲の一方の端の撮影位置(n=1)において、
一端17aの位置=−u、他端17bの位置=L−u
(2)X線検出器3の移動範囲の中間の各撮影位置(n≠1,N)において、
一端17aの位置=−u+(2×u−L)×(n−1)/(N−1)、他端17bの位置=L−u+(2×u−L)×(n−1)/(N−1)
(3)X線検出器3の移動範囲の他方の端の撮影位置(n=N)において、
一端17aの位置=u−L、他端17bの位置=u
【0031】
こうして、制御部8は、X線管2の撮影位置毎の撮影範囲(X線照射範囲)に対応するX線検出器3の位置W(x)、よって検出面17上のX線画像取得エリア17の位置を決定し、X線検出器移動機構7に対し制御信号を送信して、X線検出器3の検出面16上のX線画像取得エリア17の位置をX線検出器3の移動方向に変更する。
【0032】
この実施例では、制御部8によるX線検出器3の検出面16上のX線画像取得エリア17の位置変更は、長尺撮影の間にX線検出器3が移動する距離が最小となるように実行される。これは、X線管2およびX線検出器3が移動範囲の両端の撮影位置をそれぞれとるとき、X線検出器3の検出面16における当該移動範囲の端側に位置する端縁を、X線画像取得エリア17における当該移動範囲の端側に位置する端縁に一致させることによって実行される。
【0033】
すなわち、この実施例では、図5(A)を参照して、長尺撮影の間に、X線管2およびX線検出器3は、破線で示した頭側の端(I)と、一点鎖線で示した足側の端(III)との間において移動(首振り運動)し、頭側の端の第1撮影位置(I)と、中央の第2撮影位置(II)と、足側の端の第3撮影位置(III)の3つの撮影位置においてX線画像が取得される。
【0034】
そして、図5(B)に示すように、X線管2およびX線検出器3が第1撮影位置(I)をとるとき、制御部8は、X線検出器3の検出面16の頭側の端縁16aが、X線画像取得エリア17の頭側の端縁に一致するようにX線検出器3の位置を制御し(図5(B)(I))、X線管2およびX線検出器3が第3撮影位置(III)をとるとき、制御部8は、X線検出器3の検出面16の足側の端縁16bが、X線画像取得エリア17の足側の端縁に一致するようにX線検出器3の位置を制御する(図5(B)(III))。また、X線管2およびX線検出器3が第2撮影位置(II)をとるとき、制御部8は、X線画像取得エリア14がX線検出器3の検出面13の中央に位置するようにX線検出器3の位置を制御する(図5(B)(II))。
【0035】
こうして、図5(A)、(B)に示すように、X線管2およびX線検出器3が、長尺撮影範囲に対応する移動範囲の一端から他端に向けて動かされ、その間に、移動範囲の両端の撮影位置を含む複数の撮影位置においてX線管2から被検者MにX線が照射され、その都度、被検者Mからの透過X線がX線検出器3によって検出される。そして、X線検出器3の検出信号は画像処理部10によって読み取られ、画像処理部10は、検出信号に基づいて連続した複数のX線画像を取得し、それらのX線画像を順次つなぎ合わせることによって被検者Mの長尺X線画像を生成する。生成された長尺X線画像のデータは画像メモリ11に格納され、また、モニタ12によって画像メモリ11から長尺X線画像のデータが読み出され、被検者Mの長尺X線画像がモニタ11に表示される。
【0036】
図6(A)は、従来のこの種のX線撮影装置の長尺画像撮影時のX線管およびX線検出器の移動の様子を説明する側面図であり、図6(B)は、図6(A)の各撮影位置におけるX線検出器の検出面上のX線画像取得エリアの位置を示す平面図である。図6の従来例においては、被検者Mの長尺撮影範囲およびX線管2の移動距離はいずれも図5の実施例と同じであり、撮影位置もまた図5の実施例と同じである。しかしながら、従来例では、図6から明らかなように、3つの撮影位置のいずれにおいても、X線検出器3のX線画像取得エリア17の位置が検出面13上の同じ位置(この例では中央)にあるようにX線検出器3の位置が制御される。
【0037】
この構成の相違に基づき、図6(A)と図5(A)との比較から明らかなように、本発明のX線撮影装置においては、長尺撮影の間にX線検出器が移動する距離が、従来例と比べると移動方向においてX線検出器3の検出面16の幅とX線画像取得エリア17の幅との差分だけ短くなる。その結果、長尺撮影の間のX線管およびX線検出器からなる撮影系全体の移動時間が大幅に短縮され、よって、撮影時間が大幅に短縮され、被検者の負担が大幅に軽減される。
こうして、本発明によれば、大型のX線検出器および高出力トルクのモータを使用することなく、よって、余計なコストをかけず、またエネルギー消費量も増大させることなく、長尺撮影に要する時間を短縮できる。また、本発明によれば、X線検出器の移動距離が従来よりも短くてすむので、X線撮影装置のサイズを小さくすることができ、同時に、装置の作動時に生じる騒音も低減することができる。
【0038】
また、長尺撮影範囲における両端の撮影位置以外の中間の撮影位置のそれぞれにおける撮影の際に、X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアの位置を、撮影毎の移動距離が等しくなるように変更すれば、操作者にとって、撮影のタイミングおよび全撮影が完了するタイミングを想定し易くなり、装置の操作性が向上する。
【0039】
以上、本発明の1実施例を説明したが、本発明の構成はこの実施例に限定されない。例えば、上述の実施例では、長尺撮影の間にX線管が首振り運動する構成としたが、図7(A)に示すようにX線管を被検者Mの体軸方向に平行移動させることによって撮影位置を切り替え、長尺撮影をする構成としてもよい。この実施例においては、図7(B)に示した従来の同種のX線撮影装置と比べて、長尺撮影の間に、X線検出器の移動距離が従来例よりも短くなる一方、X線管は天板に対して従来例と同じ距離だけ平行移動するので、X線管およびX線検出器からなる撮影系全体の移動時間が短縮される割合は、X線管が首振り運動する構成とした場合よりも小さくなる。しかし、この実施例によれば、X線検出器の移動に従来ものより小型のモータを用いて、従来例と同程度の撮影時間を実現することができるという付加的な効果が得られる。
また、上述の実施例では、天板によって臥位に支持された被検者を長尺撮影する構成としたが、立位をとる被検者を長尺撮影する構成とすることもできる。被検者が立位をとる構成の場合には、天板は不要であり、その代わりに、被検者の後側にX線透過材料から形成された衝立を設ける。
【符号の説明】
【0040】
1 天板
2 X線管
2a 絞り
3 X線検出器
4 天板移動機構
5 高圧電源装置
6 X線管移動機構
7 X線検出器移動機構
8 制御部
9 操作部
10 画像処理部
11 画像メモリ
12 モニタ
13〜15 位置検出器
16 検出面
16a、16b 端縁
17 X線画像取得エリア
17a、17b 端縁
M 被検者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管およびX線検出器を、被検者を挟んで対向配置し、前記X線管を前記被検者の体軸に沿って首振り運動または平行移動させるとともに、前記X線検出器を前記X線管に追従させて前記被検者の体軸に沿って平行移動させ、前記X線管および前記X線検出器を、所定の長尺撮影範囲に対応する移動範囲の一端から他端に向けて動かし、その間に、前記移動範囲の両端を含む複数の撮影位置において、前記X線管から前記被検者に対してX線を照射し、前記被検者からの透過X線を前記X線検出器によって検出することにより、連続した複数のX線画像を取得し、それらのX線画像をつなぎ合わせることによって前記被検者の長尺X線画像を生成するX線撮影装置において、
前記X線管を支持するとともに、前記被検者の体軸に沿って首振り運動または平行移動させるX線管移動機構と、
前記X線検出器を支持するとともに、前記被検者の体軸に沿って平行移動させるX線検出器移動機構と、
前記X線管、前記X線管移動機構および前記X線検出器移動機構を制御する制御部と、を有し、
前記X線検出器の検出面上のX線画像取得エリアにおいて前記X線画像が取得され、前記制御部は、前記撮影位置毎に、前記検出面上の前記X線画像取得エリアの位置を前記X線検出器の移動方向に変更する制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記X線管および前記X線検出器が前記移動範囲の両端の撮影位置をそれぞれとるとき、前記X線検出器の前記検出面における前記移動範囲の端側に位置する端縁を、前記X線画像取得エリアにおける前記移動範囲の端側に位置する端縁に一致させる制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記X線管および前記X線検出器が、前記移動範囲内において前記両端の撮影位置を含む3つ以上の撮影位置をとる場合、前記制御部は、前記X線管および前記X線検出器が前記両端の撮影位置を除く撮影位置をとるとき、前記X線検出器の前記X線画像取得エリアを前記検出面の中央に位置させる制御信号を前記X線検出器移動機構に送信することを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227372(P2010−227372A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79550(P2009−79550)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】