説明

X線撮影装置

【課題】被写体のX線被曝量を低減しつつ、X線検出面の小型化を実現し得る技術を提供すること。
【解決手段】X線CT撮影を行うX線撮影装置において、X線コーンビームBX1を発生するX線発生器13と、被写体に照射されたX線コーンビームBX1を検出するX線検出器21とを被写体(具体的には、撮影対象物OB)を挟んで対向させた状態で180度旋回させる。さらに、この180度旋回させる間に、X線コーンビームBX1の光軸CB上に設定される旋回基準点CPを所定の楕円形上を1周分描く様に、X線発生器13を移動させる。これにより、X線コーンビームBX1の照射により撮影されるCT撮影領域CAが略三角形状となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
X線を用いたCT撮影を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野等において、X線を用いて被写体に対してX線を照射して投影データを収集し、得られた投影データをコンピュータ上で再構成して、Computerized Tomography画像(CT画像断層面画像、ボリュームレンダリング画像等)を生成するX線CT撮影が行われている。
【0003】
このようなX線撮影では、X線発生器とX線検出器との間に被写体が配置された状態で、X線発生器とX線検出器とが被写体周りに回転しながら、X線発生器からコーン状のX線(X線コーンビーム)が被写体に照射される。そしてX線検出器によるX線の検出結果(投影データ)が収集され、三次元データが再構成される。このようなX線CT撮影を行う装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載のX線撮影装置では、X線コーンビームを照射する位置を被写体中心からずらして常に被写体の一部を照射しながら撮影するオフセットスキャンによって、小さいX線検出面でより広い範囲をCT撮影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3378401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のX線撮影装置では、CT撮影領域が円形(楕円形を含む。)となっているため、オペレーターが撮影したい関心領域が円形でない場合に、関心領域以外にもX線の照射を行うこととなる。このため、X線被曝量が無駄に増大するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、被写体のX線被曝量を低減しつつ、X線検出面の小型化を実現し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、X線CT撮影を行うX線撮影装置において、X線コーンビームを発生するX線発生器と、被写体に照射された前記X線コーンビームを検出するX線検出器と、前記X線発生器と前記X線検出器とを前記被写体を挟んで対向させた状態で支持する支持部と、前記支持部を、前記被写体に対して相対的に旋回させる旋回駆動部と、前記支持部を、前記旋回駆動部の旋回軸に直交する2次元平面内で、前記被写体に対して相対的に移動させる移動機構と、前記支持部を旋回させながら前記X線コーンビームを照射して撮影されるCT撮影領域が、略三角形状を呈するように前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御する駆動制御部とを備える。
【0009】
また、第2の態様は、第1のX線撮影装置において、前記駆動制御部は、前記被写体を挟んで旋回する前記X線発生器と前記X線検出器の旋回移動において、前記X線検出器が撮影対象領域の左右のいずれかの位置にあるときの前記X線検出器と前記撮影対象領域の左右端の前記X線検出器に近い方の端との間の距離が、前記X線検出器が前記撮影対象領域の底辺と対向する頂部を通る対称軸の位置にあるときの前記X線検出器と前記撮影対象領域の前記頂部との間の距離よりも大きくなるように、前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御する。
【0010】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係るX線撮影装置において、前記略三角形状は、二等辺三角形の底辺と対向する頂点の部分を外に凸の弧によって丸みを持たせた形状である。
【0011】
また、第4の態様は、第3の態様に係るX線撮影装置において、前記略三角形状は、前記底辺の両端の部分を外に凸の弧によって丸みを持たせた形状である。
【0012】
また、第5の態様は、第4の態様に係るX線撮影装置において、前記略三角形状は、前記二等辺三角形の3辺のうち、少なくとも前記底辺以外の2辺について中央部分を外に凸の弧で形成した形状である。
【0013】
また、第6の態様は、第1、2、5のいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記略三角形状は、下側の左右に張出部を有しており、前記左右の張出部から頂部に向けて前記左右の張出部と前記頂部とを曲線で繋いだ左右対称の形状である。
【0014】
また、第7の態様は、第2、5、6のいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記駆動制御部は、X線CT撮影中、前記支持部が180度以上360度未満の回転角度分、前記被写体に対して相対的に旋回しつつ、前記X線コーンビームの光軸上に設定される旋回基準点が楕円形状の移動軌跡を描くように前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御する。
【0015】
また、第8の態様は、第7の態様に係るX線撮影装置において、前記旋回駆動部は、所定位置に固定された前記被写体に対して前記支持部を前記旋回軸周りに旋回させるように構成されており、前記旋回軸が前記X線コーンビームの前記旋回基準点となる。
【0016】
また、第9の態様は、第1から第8までのいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記駆動制御部は、CT撮影中、前記支持部が180度に前記X線コーンビームの旋回方向の広がりの角度を加えた回転角度分、相対的に旋回するように前記旋回駆動部を制御する。
【0017】
また、第10の態様は、第1、2、4から9までのいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記CT撮影領域は、標準的な歯牙の並びから設定した標準的歯列弓形状のデータである歯列弓モデルの前歯、左右の両臼歯が完全に収まるように設定されている。
【0018】
また、第11の態様は、第1から第10までのいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記X線CT撮影中、被写体に照射された前記X線コーンビームが前記被写体の頚椎を通過してから顎骨を通過する照射状態となる場合に、前記被写体に照射されるX線量を一時的に増大させるX線照射制御部、をさらに備える。
【0019】
また、第12の態様は、第1から第11までのいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記CT撮影領域が略三角形状を呈するX線CT撮影と、前記X線発生器、前記X線検出器が固定の撮影上の旋回中心の周りを旋回して行うことによって、CT撮影領域が円形状となるX線CT撮影と、のいずれかを選択する。
【0020】
また、第13の態様は、第1から第12までのいずれか1態様に係るX線撮影装置において、前記CT撮影領域が略三角形状を呈するX線CT撮影と、前記X線発生器、前記X線検出器が顎骨の一部の領域に固定の撮影上の旋回中心をおいて旋回することによって、前記略三角形状のCT撮影領域よりも狭い顎骨の一部の領域のみをX線CT撮影する顎骨局所領域のX線CT撮影と、のいずれかを選択する。
【発明の効果】
【0021】
第1から第8までの態様に係るX線撮影装置によれば、CT撮影領域を略三角形状に絞り込むことによって、X線検出器の検出範囲を小さくできるという効果を奏し得る。
【0022】
特に第2の態様に係るX線撮影装置によれば、略三角形状を呈するCT撮影領域を容易に形成することが可能となるという効果を奏し得る。
【0023】
特に第3の態様に係るX線撮影装置によれば、略半円形状(略半楕円形状を含む。)の撮影対象物を含む関心領域をCT撮影領域とする場合においてより被写体のX線被曝量を低減できるという効果を奏し得る。
【0024】
特に第4の態様に係るX線撮影装置によれば、略半円形状(略半楕円形状を含む。)の撮影対象物を含む関心領域をCT撮影領域とする場合において第3の態様よりもさらに被写体のX線被曝量を低減できるという効果を奏し得る。
【0025】
特に第5、第6の態様に係るX線撮影装置によれば、略半円形状(略半楕円形状を含む。)の撮影対象物を含む関心領域をCT撮影領域とする場合において第4の態様よりもさらに撮影対象物の形状に適合したCT撮影領域を設定できるという効果を奏し得る。
【0026】
特に第7の態様に係るX線撮影装置によれば、円形や楕円形状からさらに絞り込まれた範囲をCT撮影領域として、X線CT撮影を行うことが可能となる。これにより、X線CT撮影における被写体のX線被曝量を低減し得る。また、X線コーンビームの照射範囲を狭めることが可能となるため、X線検出器の検出範囲も狭めることが可能となり、装置コストを抑えることができる。
【0027】
特に第8の態様に係るX線撮影装置によれば、旋回軸がX線コーンビームの旋回基準点となることで制御が容易になり、略三角形状を呈するCT撮影領域を容易に形成することが可能となるという効果を奏し得る。
【0028】
特に第9の態様に係るX線撮影装置によれば、CT撮影領域内の全ての点について、180度の範囲の各方向からX線を照射することが可能となる。これにより、CT撮影領域について高精度のCT画像を取得できるという効果を奏し得る。
【0029】
特に第10の態様に係るX線撮影装置によれば、歯列弓モデルを含むようにCT撮影領域が設定されるため、実際の上下の歯牙全体を含む領域を良好に撮影できるという効果を奏し得る。
【0030】
特に第11の態様に係るX線撮影装置によれば、頚椎によって吸収されるX線量を考慮してX線CT撮影を行うことができるため、上下の歯牙を含む領域に対して十分な線量のX線コーンビームを照射できるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係るX線撮影装置100を示す概略斜視図である。
【図2】X線撮影装置100に適用可能なセファロスタット43を示す正面図である。
【図3】旋回アーム30及び上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図4】上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図5】X線発生部10の内部を示す縦断面図である。
【図6】ビーム成形機構16を示す斜視図である。
【図7】旋回アーム30を示す正面図である。
【図8】検出器ホルダ22を示す斜視図である。
【図9】X線撮影装置100の構成を示すブロック図である。
【図10】X線コーンビームBX1を概念的に示した平面図である。
【図11】撮影対象物OBを撮影する様子を概念的に示す平面図である。
【図12】図11に示した旋回基準点CPの移動軌跡と、CT撮影領域CAとを拡大して示す平面図である。
【図13】CT撮影領域CAを円形状とした場合と略三角形状とした場合とを比較して示す平面図である。
【図14】X線コーンビームBX1を180度にファン角θ1を加算した分旋回させるCT撮影を説明するための図である。
【図15】図14(a)に示したCT撮影中、被写体に照射するX線量を調整する様子を説明するための図である。
【図16】その他のCT撮影の概要を示す平面図である。
【図17】その他のCT撮影の概要を説明するための図である。
【図18】その他のCT撮影の概要を示す平面図である。
【図19】その他のCT撮影の概要を説明するための図である。
【図20】歯牙のみを含むようにCT撮影領域CAbを設定した状態を示す図である。
【図21】第2実施形態に係るX線撮影装置100Aの概略を示す図である。
【図22】略三角形状のCT撮影領域の例を説明するための図である。
【図23】変形例に係る移動機構を説明するための図である。
【図24】変形例に係るX線CT撮影を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0033】
<1. 第1実施形態>
<1.1. X線撮影装置の構成および機能>
図1は、第1実施形態に係るX線撮影装置100を示す概略斜視図である。X線撮影装置100は、X線CT撮影を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。
【0034】
本体部1は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線コーンビームBX1を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたX線を検出するX線検出部20と、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持部300(旋回アーム30)と、支持部300(旋回アーム30)を吊り下げ、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、鉛直方向に延びる支柱50と本体制御部60とを備えている。X線コーンビームBX1は、X線規制部によって、後述のように、角錐状や円錐状に形成される。
【0035】
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0036】
本実施形態では、支持部300が旋回軸31回りに旋回する旋回アーム30で構成され、X線発生部10とX線検出部20とが、略直方体状の旋回アーム30両端のそれぞれに取り付けられているが、X線発生部10とX線検出部20とを支持する支持部300の構成は、これに限られるものではない。例えば円環状部分の中心を回転中心として回転する部材に、X線発生部10とX線検出部20とが対向するようにして支持されていてもよい。
【0037】
ここで、以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z軸方向を垂直方向、X軸方向とY軸方向の2次元で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。
【0038】
これに対して、旋回する旋回アーム30上の三次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらxおよびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態およびそれ以降の実施形態においては、上記のZ軸方向はz軸方向と共通する同一の方向となっている。また本実施形態の旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に回転する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
【0039】
なお、図1に示すように、X線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向とし、この(+y)方向に直交する水平な右手方向(図示の旋回アーム30の向きにおいて、図示の被写体M1の正面側)を(+x)方向とし、鉛直方向上向きを(+z)方向とする。
【0040】
昇降部40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。昇降部40は、上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
【0041】
上部フレーム41には、旋回アーム30の上端部分が取り付けられている。このように旋回アーム30は、昇降部40の上部フレーム41に吊り下げされており、昇降部40が支柱50に沿って移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0042】
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは、人体の頭部)を左右から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体固定部421が設けられている。旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40の昇降に従って昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体M1が被写体固定部421に固定される。被写体固定部421は、図1に示した例では被写体M1の体軸が旋回軸31の軸方向と同じ方向またはほぼ同じ方向となるように被写体M1を固定する。
【0043】
図1に示すように、X線検出部20の内部には、本体部1の各構成の動作を制御する本体制御部60が備えられている。また、本体部1の各構成は、防X線室70内に収容されており、この防X線室70の壁の外側には、本体制御部60からの制御に基づいて、各種情報を表示する液晶モニタ等で構成された表示部61と、本体制御部60に対して各種の命令入力を実現するためのボタン等で構成された操作パネル62とが取り付けられている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。また、X線撮影には各種のモードがあるが、操作パネル62の操作によって、モードの選択ができるようにすることも可能である。
【0044】
情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えており、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信することができる。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。
【0045】
情報処理装置8は、本体部1で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。例えば、情報処理装置8は、三次元データ中に特定の面を設定し、その特定の面の断層面画像を再構成することができる。
【0046】
情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81、および、キーボードやマウス等で構成される操作部82が接続されている。オペレーターは、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0047】
図2は、X線撮影装置100に適用可能なセファロスタット43を示す正面図である。図2に示すように、昇降部40に、セファロスタット43が設けられていてもよい。セファロスタット43は、例えば、支柱50の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部を定位置に固定する固定具431やセファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43としては、特開2003−245277号公報に開示されているセファロスタットを含む種々のものを採用することができる。
【0048】
図3は、旋回アーム30及び上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。また図4は、上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。なお図3は、X線撮影装置100を側方から見たときの旋回アーム30、上部フレーム41を示す図であり、図4は、上方から見たときの上部フレーム41を示す図である。
【0049】
上部フレーム41は、旋回アーム30を前後方向(Y軸方向)に移動するYテーブル35Y、及び、Yテーブル35Yに支持されて横方向(X軸方向)に移動するXテーブル35Xで構成されるXYテーブル35を備えている。また、上部フレーム41は、Yテーブル35Yを駆動するY軸モータ60Yと、Yテーブル35Yに対してXテーブル35XをX方向に移動させるX軸モータ60Xと、Xテーブル35Xと旋回アーム30とを連結する旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータ60Rを備えている。なお、本実施形態では、旋回軸31が鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、旋回軸は鉛直方向に対して任意の角度で傾いていてもよい。
【0050】
旋回軸31と旋回アーム30の間にはベアリング37が介在しており、旋回軸31に対する旋回アーム30の回転を容易にしている。旋回用モータ60Rは旋回アーム30の内部に固定されており、ベルト38により旋回軸31に回動力を伝達して、旋回アーム30を旋回させる。
【0051】
旋回軸31、ベアリング37、ベルト38及び旋回用モータ60Rは、旋回アーム30を旋回する旋回機構の1例であり、旋回アーム30の旋回機構はこのようなものに限定されない。例えば、図3に示す旋回機構では、回転しない旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回する構造である。ここで、旋回軸31とXテーブル35Xの間に図示しないベアリングを介在させ、Xテーブル35Xに対して旋回軸31が回動し、旋回軸31に旋回アーム30が固定されている構造としてもよい。そして、Xテーブル35Xに備えた図示しないモータにて旋回軸31を回転させることで、旋回アーム30を旋回させてもよい。
【0052】
X線撮影装置100では、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y及び旋回用モータ60Rの制御モータを、予め決められたプログラムに従って駆動することによって、旋回アーム30を旋回させながら、Xテーブル35Xを左右(X方向)に、Yテーブル35Yを前後(Y方向)に移動される。これにより、旋回軸31を前後左右のX−Y方向に2次元的に移動制御される。
【0053】
{X線発生部10}
図5は、X線発生部10の内部を示す縦断面図である。また、図6は、ビーム成形機構16を示す斜視図である。図5に示すように、X線発生部10は、X線発生部10の備える各構成を収納するためのハウジング11を備えている。ハウジング11は、回転機構12を介して、旋回アーム30に連結されている。
【0054】
なお、旋回アーム30のハウジングとX線発生部10のハウジング11を一体とし、X線発生器13が回転機構12を介して旋回アーム30に連結された構造として、ハウジング11の内部で回転機構12によってX線発生器13が回動するようにしてもよい。
【0055】
回転機構12は、旋回アーム30の内部に固定されている回転モータ121と、旋回アーム30に回動可能に固定された垂直軸122と、回転モータ121と垂直軸122とを連結する歯車機構123と、ハウジング11と垂直軸122に固定された固定部材124とを有する。回転モータ121の駆動は歯車機構123を介して垂直軸122に伝わり、垂直軸が回動する。
【0056】
ハウジング11は、後述の本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する回転モータ121の駆動によって、垂直軸122周りに水平面内で回転可能となるように構成されている。このような回転機構12は、例えばセファロ撮影時に使用される。
【0057】
なお、必ずしも回転モータ121でハウジング11を回動させつつX線ビームを照射させる構造とする必要はなく、例えば、X線発生部10が規定された方向を向いた後は回動を止め、後述するX線発生器13の前面のビーム成形板15を移動させてビーム通過孔152を移動させつつX線ビームで被写体M1を走査するようにしてもよい。すなわち、本願出願人の出願にかかる特開2003−245277に開示する構造のようなものでもよい。
【0058】
また、回転モータ121を駆動するのではなく、旋回用モータ60Rを駆動することによって、旋回アーム30を旋回させつつ、セファロ撮影が行われてもよい。
【0059】
ハウジング11の内部には、X線発生器13が収納されている。X線発生器13は、X線発生源であるX線管9と、X線管9をX線検出部20に対向する部分(図5中、左側)を除いて覆うX線遮断ケース14とによって構成されている。X線遮断ケース14のX線検出部20に対向する領域には、ビーム成形板15が備えられている。このビーム成形板15は、ビーム成形機構16に取り付けられている。
【0060】
図6に示すように、ビーム成形機構16は、複数のガイドローラ161を介して複数の垂直ガイドレール162に沿って昇降自在に支持されたブロック163を有する。ブロック163は、X線管9から出射されたX線をX線検出部20に向けて案内するX線通過孔164(図5参照)を備えている。
【0061】
ブロック163は、ハウジング11に固定された昇降モータ165にネジ機構を介して連結されている。昇降モータ165を駆動することにより、X線発生部10は、X線の照射野をZ軸方向に移動できる。これにより、X線発生部10を上下動させることなく、X線の照射野を上下に移動できる。
【0062】
ブロック163の前方(X線通過孔164の外部)には、X線管9から出射されたX線ビームを成形する複数のX線を通過させる開口が設けられたビーム成形板15が配置されている。このビーム成形板15は、X線の通過を部分的に遮断し、照射範囲を規制するX線規制部となっている。ビーム成形板15は、ブロック163の前面に固定された複数の案内ローラ166によって水平方向に移動可能に支持されている。
【0063】
ビーム成形板15の一端には、連結アーム167が連結されている。連結アーム167には、ナット168が取り付けられている。ブロック163は、ビーム成形板15の長手方向に伸びるネジ軸169を回転自在に支持する。ナット168はネジ軸169に螺合されており、ネジ軸169がブロック163に固定されたモータ170に連結されている。
【0064】
ビーム成形板15は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作するモータ170の駆動によって、ブロック163の前部を水平方向の一方向に、すなわちX線ビームと交差する方向に移動する。
【0065】
本実施形態において、ビーム成形板15には、3種類のX線通過開口(一次スリット、コリメータ)が形成されている。これら3種類のX線通過開口には、X線ビームをコーン状(角錐状の場合も含む。)のX線コーンビームに成形するための長方形又は正方形のX線CT撮影用のビーム通過孔151と、X線ビームを細長い帯状に成形して細隙ビームとするための縦長のパノラマ撮影用のビーム通過孔153と、同じく縦長のセファロ撮影用のビーム通過孔152とが含まれる。
【0066】
例えばX線CT撮影用のビーム通過孔151をX線管9に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線のコーンビームが出射される。なお、X線CT撮影用のビーム通過孔151の縦長と横長が同じとすると、X線コーンビームはX線の進行方向と直交する横断面が略正方形を有することとなる。ビーム通過孔151を円形に形成して、円錐状のX線コーンビームを照射するようにしてもよい。
【0067】
また、パノラマ撮影用のビーム通過孔153又はセファロ撮影用のビーム通過孔152をX線管9に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて、横断面が縦長の略平坦な板状(ただし、厳密には角錐台)のX線コーンビームが出射される。
【0068】
また、ビーム成形板15の前面には、水平方向に移動して、ビーム通過孔151の開口を部分的に遮断する遮蔽板171が設けられている。遮蔽板171は、図示しないアクチュエータからなる水平移動機構に接続されており、ビーム成形板15に対して水平方向に移動可能に構成されている。ビーム成形板15の前面の、遮蔽板171の前には、垂直方向に移動して、ビーム通過孔151の開口を部分的に遮断する遮蔽板172が設けられている。遮蔽板172は、図示しないアクチュエータからなる垂直移動機構に接続されており、ビーム成形板15に対して垂直方向に移動可能に構成されている。ビーム成形機構16は、本体制御部60による制御信号に基づいて、遮蔽板171を水平方向に移動させることにより、ビーム通過孔151を通過するX線を部分的に遮断する。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がり(幅)が規制される。なお、このX線の透過を規制する機能は、X線CT撮影であって、比較的小さい範囲を撮影するモードを実行する際に使用される。
【0069】
X線コーンビームの水平方向の広がりの量はビーム通過孔151に対する遮蔽板171による移動量で調整でき、X線コーンビームの水平方向に関する照射方向はモータ170によるビーム成形板15の駆動量で調整できる。
【0070】
また、ビーム成形機構16は、本体制御部60による制御信号に基づいて、遮蔽板172を垂直方向に移動させることにより、ビーム通過孔151を通過するX線を部分的に遮断する。これにより、X線コーンビームの垂直方向の広がり(幅)が規制される。なお、このX線の透過を規制する機能は、X線CT撮影であって、上顎のみの範囲、下顎のみの範囲を撮影するモードを実行する際に使用される。
【0071】
遮蔽板172が退避してビーム透過孔151を遮蔽しない状態では、上顎下顎の双方をX線コーンビームが照射するモードでのX線CT撮影が行われる。
【0072】
X線コーンビームの垂直方向の広がりの量はビーム通過孔151に対する遮蔽板172による移動量で調整できる。また、X線コーンビームの垂直方向に関する照射方向はモータ165によるブロック163、ひいてはビーム成形板15の駆動量で調整できる。
【0073】
なお、図6においては、遮蔽板171は、遮蔽板171のみがビーム成形板15の前面に設けられているように簡略的に図示している。しかしながら、この図はX線遮蔽の機械的構成を理解しやすくしたものであり、実際は前述したように図示しないモータ等からなるアクチュエータによって駆動されるようになっている。また、遮蔽板171の構成はこれに限定されるものではない。すなわち、X線コーンビームの水平方向の広がり(幅)を規制できるのであれば、どのような構成が採用されてもよい。したがって、ビーム通過孔151の前面でX線コーンビームを部分的に遮蔽するように可動に構成された図示しない遮蔽部材が、ビーム成形板15から独立して設けられていてもよい。
【0074】
このような遮蔽部材の具体的構造としては、例えば遮蔽部材が案内部材で水平方向(左右)にガイドされるようになっており、この遮蔽部材にネジが穿孔されていて、この遮蔽部材に穿孔したネジと螺合するネジ軸をモータで回動することによって遮蔽部材が水平方向に駆動されるような構造のものが考えられる。
【0075】
また、遮蔽部材とその駆動機構が複数の組から構成されていてもよい。例えば、独立に動く2つの遮蔽部材によって、X線コーンビームの水平方向の広がりの一端と他端(左端と右端)を任意の遮蔽量で遮蔽するようにして、X線コーンビームの水平方向の広がり(幅)について、任意の幅で任意の位置へのX線コーンビームの照射をするようにしてもよい。
【0076】
また、図6においては、遮蔽部材171と同様に、遮蔽板172のみがビーム成形板15の前面に設けられているように簡略的に図示している。しかしながら、この図はX線遮蔽の機械的構成を理解しやすくしたものであり、実際は前述したように図示しないモータ等からなるアクチュエータによって駆動されるようになっている。また、遮蔽板172の構成はこれに限定されるものではない。すなわち、X線コーンビームの垂直方向の広がり(幅)を規制できるのであれば、どのような構成が採用されてもよい。したがって、ビーム通過孔151の前面でX線コーンビームを部分的に遮蔽するように可動に構成された図示しない遮蔽部材が、ビーム成形板15から独立して設けられていてもよい。
【0077】
このような遮蔽部材の具体的構造としては、例えば遮蔽部材が案内部材で垂直方向(上下)にガイドされるようになっており、この遮蔽部材にネジ孔が穿孔されていて、この遮蔽部材に穿孔したネジ孔と螺合するネジ軸をモータで回動することによって遮蔽部材が垂直方向に駆動されるような構造のものが考えられる。
【0078】
また、遮蔽部材とその駆動機構が複数の組から構成されていてもよい。例えば、独立に動く2つの遮蔽部材によって、X線コーンビームの垂直方向の広がりの一端と他端(上端と下端)を任意の遮蔽量で遮蔽するようにして、X線コーンビームの垂直方向の広がり(幅)について、任意の幅で任意の位置へのX線コーンビームの照射をするようにしてもよい。
【0079】
以下の説明では、上述のX線コーンビームの水平方向の広がりを規制する機構を水平方向ビーム成形機構とも称し、X線コーンビームの垂直方向の広がりを規制する機構を垂直方向ビーム成形機構とも称する。
【0080】
なお、前述のブロック163のX線通過孔164の水平方向の幅を、ビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅とし、モータ170の駆動によるビーム成形板15の移動によりコーンビームの水平方向の広がりの開度を調整してもよい。
【0081】
この場合、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅で照射させるためには、ビーム成形板15のビーム通過孔151が、X線通過孔164と重なることで、X線通過孔164を通過するX線を全く妨げない位置にくるように、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させればよい。
【0082】
また、ビーム成形板15のビーム通過孔151がX線通過孔164を通過するX線を規制する位置に配置されるように、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させることにより、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅より限定した幅で照射できる。このように、X線コーンビームの水平方向の広がりはビーム成形板15の位置によって制御される。
【0083】
また、図示しないが、ビーム成形板15の前後のいずれかに別のビーム成形板を設けてもよい。具体的には、本願出願人の出願にかかる実公平7−15524号公報の図4に開示のある複数のマスク板4,5の重ね合わせでX線の規制を行うX線絞り装置のような構造のものを用いることができる。
【0084】
詳細には、もう一つのビーム成形板に所定形状のビーム通過孔を設け、ビーム成形板のビーム通過孔の水平方向の幅を、ビーム成形板15のビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅またはそれ以上の幅とし、ビーム成形板15に対して、別のビーム成形板を相対的に変位可能に構成する。ビーム通過孔151と他のビーム形成板のビーム通過孔との位置関係を制御することによって、X線ビームの水平方向の広がりが制御される。
【0085】
{X線検出部20}
図7は、旋回アーム30を示す正面図である。図7では、X線検出部20の内部も一部図示している。X線検出部20は、X線検出部20の各構成を収納するためのハウジング200を備えている。
【0086】
ハウジング200には、X線を検出するためのX線検出器21と、X線検出器21を内部に保持する検出器ホルダ22と、検出器ホルダ22を水平方向にスライド移動可能に支持するガイドレール23と、ハウジング200に取り付けられた移動モータ24とを備えている。
【0087】
X線検出器21は、X線を検出する検出素子である半導体撮像素子を縦方向及び横方向に2次元に平面状に配列することによって構成された検出面を構成するX線センサを備えている。なお、X線センサとしては、例えばMOSセンサやCCDセンサのようなものが考えられるが、これらに限られるものではなく、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子等、様々なものを採用することができる。
【0088】
検出器ホルダ22は、移動モータ24の回転軸に取り付けたローラに当接している。検出器ホルダ22は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する移動モータ24により駆動されて、ガイドレール23に沿って水平方向に移動する。
【0089】
図8は、検出器ホルダ22を示す斜視図である。検出器ホルダ22は、X線発生部10に対向する側に、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を有する。ビーム通過孔221,222は、上述のビーム通過孔151,152のそれぞれの形状に対応しており、例えば、ビーム通過孔151を通過するX線コーンビームは、ビーム通過孔221でより高い精度で成形されてX線検出器21に投射される。
【0090】
なお、ビーム通過孔221,222を設けた部材は、省略することも可能である。
【0091】
X線検出器21は、略矩形のビーム通過孔151に対応するように矩形状に撮像素子が配列されて構成された検出素子群211と、縦長のビーム通過孔152に対応するように縦長に撮像素子が配列されて構成された検出素子群212とを備えている。X線検出器21は、検出器ホルダ22が形成するスロット224の内部に挿入される。
【0092】
スロット224にX線検出器21がセットされると、略矩形のビーム通過孔221の背後位置に、略正方形の検出素子群211が配置される。また、ビーム通過孔222の背後位置に検出素子群212が配置される。
【0093】
X線CT撮影時には、検出素子群211がビーム通過孔151を通過したX線が入射してくる位置に、パノラマ撮影時には、検出素子群212がビーム通過孔153を通過したX線に照射される位置に配置されるように、検出器ホルダ22の移動が制御される。
【0094】
なお、本実施形態ではX線検出器21に検出素子群211,212を設けているが、検出素子群211のみを設けて、X線CT撮影においてもパノラマ撮影においてもビーム通過孔151とビーム通過孔153の選択のみを行って同じ検出素子群211でX線を検出するようにしてもよい。その際、X線で照射される範囲のみの素子を読み出すように制御すると、画像信号送信の効率がよい。
【0095】
図9は、X線撮影装置100の構成を示すブロック図である。図9に示すように、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yは、所定位置の被写体M1に対して旋回アーム30を相対的に移動させる駆動部65を構成している。そして駆動部65及び被写体固定部421は、X線管9を含むX線発生部10及びX線検出器21を含むX線検出部20を、被写体M1に対して相対的に移動させる移動機構として機能する。駆動部65、被写体固定部421は、旋回用モータ60Rを主要な要素として、旋回アーム30を旋回駆動する点で旋回駆動部の一例であり、旋回アーム30を、旋回軸31に直交する2次元平面内で、被写体M1に対して相対的に移動させる。この点で、駆動部65、被写体固定部421は、支持部を旋回軸31に直交する2次元平面内で被写体M1に対して相対的に移動させる移動機構の一例である。
【0096】
本実施形態では、XYテーブル35で構成される水平移動機構に旋回軸31を取り付けることによって、旋回アーム30を被写体M1に対して水平方向に移動させているが、例えば、被写体固定部421を椅子等で構成し、これを水平移動機構に接続することによって、旋回アーム30に対して被写体M1を相対的に移動させてもよい。また、旋回軸31及び被写体固定部421のそれぞれに、水平移動機構を設けて、それぞれを水平方向に移動可能に構成してもよい。また、XテーブルとYテーブルの一方を被写体固定部421側に、他方を旋回アーム30側に設けるようにしてもよい。
【0097】
本体制御部60は、駆動部65を制御するプログラムPG1を含む各種制御プログラムを実行するCPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0098】
CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a及びX線検出部20を制御するX線検出部制御部601bとして機能する。X線発生部制御部601aは、X線の照射X線量の制御も可能であり、X線照射制御部の機能も有する。また、CPU601は、駆動部65を駆動制御する駆動制御部601cとして機能し、例えばX線発生部10、X線検出部20が各種撮影に応じた軌道で移動するように駆動制御する。
【0099】
なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、総合的に制御系を構成している。
【0100】
本体制御部60に接続された操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等を採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段の一例である。したがって、操作手段としては、操作者の操作を受け付けることができるのであればどのようなものでも構わない。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0101】
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報が文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0102】
本体部1は、操作パネル62、あるいは情報処理装置8からの指令に従って、被写体M1の関心領域(生体器官、歯牙を含む骨、関節等)を局所的に撮影する。また、本体部1は、各種指令や座標データ等を情報処理装置8から受信する一方、撮影して取得したX線の投影データを情報処理装置8に送信する。
【0103】
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0104】
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、操作部82で指定した領域の座標を算出して、CT撮影領域CAを特定する撮影領域設定部801aと、投影データから三次元データを再構成する等の演算処理を行う演算処理部801bとして機能する。
【0105】
なお、プログラムPG1,PG2は、所定のネットワーク回線等を介して本体制御部60または情報処理本体部80が取得するようにしてもよいし、あるいは可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得する様に構成してもよい。
【0106】
本実施形態では、オペレーターにより、操作パネル62または操作部82を介して、CT撮影領域CAが指定される。具体的には、生体の一部又は全体を表示する画面(イラストやパノラマ画像等)が表示部61または表示部81に表示され、オペレーターが撮影したい領域を操作パネル62または操作部82を介して指定することで、CT撮影領域CAが指定される。なお、画面上に領域特定用の画面を表示することなく、操作パネル62もしくは操作部82から部位の名称の入力やコード入力等で直接部位の指定を行うようにしてもよい。
【0107】
なお、操作パネル62にも制御部を設けて、本体制御部60の制御の一部を分担させてもよいし、操作パネル62に全面的に本体制御部60を設けるようにしてもよい。
【0108】
<1.2. CT撮影の概要>
次に、上述の構成を備えるX線撮影装置100によって実施されるCT撮影について説明する。なお、以下に説明するCT撮影におけるX線撮影装置100の動作は、特に断らない限りにおいて、本体制御部60による制御に基づいて実現されるものとする。
【0109】
図10は、X線コーンビームBX1を概念的に示した平面図である。X線コーンビームBX1は、X線発生器13から出射されたX線ビームがビーム成形板15により角錐状(ここでは、四角錐状)に成形された後、X線検出器21に入射する。CT撮影においては、X線発生部10とX線検出部20との間に被写体が配置され、X線発生部10およびX線検出部20が被写体に対して旋回する。X線コーンビームBX1の光軸CB上には、旋回基準点CPが設定されている。この旋回基準点CPについては後述する。光軸CBは、X線コーンビームBXのセンタービームであり、X線コーンビームBXのx方向の拡がりの対称軸である。
【0110】
図11は、撮影対象物OBを撮影する様子を概念的に示す平面図である。また図12は、図11に示した旋回基準点CPの移動軌跡と、CT撮影領域CAとを拡大して示す平面図である。図11に示したCT撮影では、全歯牙を含む上下の顎骨を撮影対象物OBとしている。顎骨は、歯列弓の形状に対応して、弓状に湾曲した輪郭を有している。図11では、X線発生器13が、位置L01にあるときから、旋回アーム30を旋回軸31周りに180度回転させて位置L13に移動するまでを図示している。
【0111】
また図11では、位置L01から旋回アーム30を15度ずつ回転させたときの、X線発生器13の各位置L01〜L13のそれぞれから出射されるX線コーンビームBX1を図示している。なお、位置L01〜L13は、厳密にはX線管9のX線が発生する原点、すなわちX線焦点の位置に相当する。位置L01は、CT撮影におけるX線発生器13の移動開始位置であり、位置L13は移動終了位置である。
【0112】
位置L01から出射されるX線コーンビームBX1の中心である光軸CBの進行方向DR01,DR13は、撮影対象物OB(ここでは顎骨)の対称軸AQに垂直に交わる。すなわち、位置L01,L13は、撮影対象物OBの真横の位置となっている。すなわち、図11に示すCT撮影では、X線発生器13は、被写体である頭部の右真横から後を通過して左真横まで移動している。また、旋回アームの旋回によりX線コーンビームが90度回転して位置L07に到達したとき、X線発生器13から出射されるX線コーンビームBX1の光軸CBの進行方向DR07は、対称軸AQと平行になる。この対称軸AQは、図示の例では、顎骨の前後を通る正中線であり、略三角形状のCT撮影領域CAの左右の対称軸でもある。対称軸AQは、略三角形状のCT撮影領域CAの底辺と対向する図示のP1で示される点にあるCT撮影領域CAの頂部を通る。
【0113】
X線発生器13が位置L01〜L13を移動するとき、X線コーンビームBX1の光軸CB上に設定された特定点である旋回基準点CPは、図12に示す位置L01C〜位置L13Cを移動する。この位置L01C〜L13Cのそれぞれは、X線発生器13が位置L01〜L13にあるときにそれぞれ対応している。また、位置L01Cと位置L13Cは、一致しており、位置L01または位置L13から出射されたX線コーンビームBX1の光軸CBと、対称軸AQの交点となっている。
【0114】
なお、X線撮影装置100は、旋回軸31を回転させることでX線コーンビームBX1を旋回させている間、あらかじめ定められた回数分、X線検出部20にて投影データを収集する。具体的には、本体制御部60が旋回用モータ60Rを監視して、支持部300(すなわち、旋回軸31周りに旋回する旋回アーム30)が所定の角度分回転する毎に、X線検出器21でのX線の検出データを投影データとして収集する。支持部300が旋回する間、X線コーンビームBX1を被写体に対して常時照射するように構成されていてもよいし、X線検出部20が間欠的にX線を検出するタイミングに合わせて、X線コーンビームBX1が照射されるようにしてもよい。後者の場合、被写体M1に対して、X線が間欠的に照射されることとなるため、被写体のX線被曝量を低減することができる。
【0115】
収集された投影データは、逐次情報処理装置8に転送され、例えば記憶部802に記憶される。そして収集された投影データは、演算処理部801bにおいて加工され、三次元データに再構成される。演算処理部801bにおける再構成の演算処理は、所定の前処理、フィルタ処理、逆投影処理等で構成される。これらの演算処理については、周知技術を含む各種演算処理技術を適用することが可能である。
【0116】
図11に示したCT撮影では、X線発生部10およびX線検出部20を支持する支持部300を旋回させながらX線コーンビームBX1を照射して関心領域であるCT撮影領域CAを撮影するが、このCT撮影領域CAが略三角形状を呈するように旋回軸31の旋回モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yが連動制御される。この略三角形状の中には、三角形の形状も含まれる。
【0117】
CT撮影領域は、CT撮影におけるX線の照射対象となる領域であり、このCT撮影領域のX線透過データないし投影データよりCT撮影領域内にある物を3次元データで再構成したときに問題なく再構成できるために充分なX線が照射される領域である。その意味では、CT撮影領域は再構成対象領域である。再構成は例えば逆投影によって行う。通常は、制御の都合上、支持部300が旋回してCT撮影領域のCT撮影を行う間、連続的にX線照射とX線透過データの取得が行われる。望ましくは、CT撮影領域内の全ての地点において、180度分以上の投影データを得るようにする。
【0118】
ここで、CT撮影領域CAを略三角形状とするため、被写体に対するX線コーンビームBX1の移動制御について説明する。図11に示すように、CT撮影中、X線発生器13が位置L01から位置L13まで移動する場合、旋回軸31周りに旋回する旋回アーム30が180度回転することによって、X線コーンビームBX1の光軸CBの進行方向が180度回転する。例えば、図11に示す例であれば、光軸CBの進行方向が方向DR01から方向DR13へ180度回転する。この旋回アーム30の回転と同時に、図12に示すように、旋回基準点CPが楕円形状の軌跡を描いて移動するように、X線コーンビームBX1が移動される。
【0119】
より詳細には、旋回軸31が180度回転する間に、旋回基準点CPは、位置L01Cからスタートして、位置L02C,L03C,L04C・・・と順次移動し、再び元の位置L01Cへ戻る。すなわち、旋回アーム30が180度回転する間に、旋回基準点CPが楕円の周上を一周する。この旋回基準点CPの移動は、X軸モータ60X、Y軸モータ60Yの駆動制御による旋回軸31の移動によって実現される。
【0120】
X線検出器21に着目すると、図11に示すように、X線検出器21は、CT撮影中、撮影対象領域(撮影対象物OBを含む関心領域)の少なくとも左右の一方から他方に移動する略半円の円弧状の軌跡を形成する。図示の例では、被写体M1である人体頭部の正中に対して右から左に移動する軌跡、すなわち対称軸AQを挟んで対向する右から左に移動する軌跡を形成している。
【0121】
この略半円の円弧状の軌跡において、X線検出器21が左右のいずれかの位置にあるとき(すなわち、X線発生器13が位置L01,L13のいずれかにあるとき)と、X線検出器21が左右の中間の位置にあるとき(すなわち、X線発生器13、X線検出器21が正中の位置である対称軸AQ上の位置L07にあるとき)とのそれぞれの位置関係に着目する。すると、X線検出器21が左右のいずれかの位置にあるときのX線検出器21と撮影対象領域との間の距離l1、l3は、X線検出器21が中間の位置にあるときのX線検出器21と撮影対象領域との間の距離l2よりも大きくなっている。
【0122】
ここで「撮影対象領域とX線検出器21の間の距離」とは、撮影対象領域となる関心領域の中のある一点と、X線検出器の検出面の中央部分との間の距離である。例えば、関心領域である顎骨(もしくは歯列弓)の中央の一点とX線検出器21の検出面の中央部分との間の距離等が相当する。
【0123】
関心領域である顎骨(もしくは歯列弓)についての、中央の一点の具体例としては、対称軸AQとX線発生器13が位置L01にある状態の方向DR01に向かう光軸CBとの交点ISに相当する箇所が挙げられる。交点ISは、対称軸AQとX線発生器13が位置L13にある状態の方向DR13に向かう光軸CBとの交点に相当する箇所でもある。
【0124】
また、撮影対象領域とX線検出器21の間の距離を、X線検出器21と撮影対象領域である関心領域の辺縁との間の距離で考えてもよい。X線検出器21が左右のいずれかの位置にあるときのX線検出器21と撮影対象領域との間の距離l4、l6は、X線検出器21が中間の位置にあるときのX線検出器21と撮影対象領域との間の距離l5よりも大きくなっている。ここで、撮影対象領域の辺縁の位置は、光軸CB上の辺縁の位置で考えてもよい。
【0125】
厳密には、距離l4、l6は、X線検出器21が左右のいずれかの位置にあるときのX線検出器21の検出面と撮影対象領域の左右端のうち、X線検出器21に近い方の端との間の距離である。また、距離l5は、X線検出器21が中間の位置にあるときのX線検出器21の検出面と撮影対象領域の底辺との間の距離である。
【0126】
また、本実施形態で設定されるCT撮影領域CAは、図12に示すように、図の上下左右に従って、左右に外側に張り出した張出部CA1,CA1と、左右の張出部CA1,CA1から頂部CA2に向けて上側へ突出するように張出部CA1,CA1と頂部CA2とを曲線で繋いだ左右対称の形状となっている。換言すると、CT撮影領域CAは、張出部CA1,CA1と頂部CA2の3点を頂点とする仮想的な三角形を想定したとき、この三角形の三辺のそれぞれを外側へ膨らませた形状を呈している。
【0127】
このように、本実施形態では、CT撮影領域CAを略三角形状に形成することによって、厳密には、旋回軸31の軸方向と平行な方向から見た(平面視した)CT撮影領域CAの形状を略三角形状に形成することによって、顎骨のように弓状を有する略半円形状(略半楕円形状を含む。)の撮影対象物OBを含む関心領域をCT撮影の対象とする場合に、被写体に対するX線被曝量を低減することができる。
【0128】
なお、旋回基準点CPは、旋回軸31の位置に設定される場合もあるが、旋回基準点CPが旋回軸31以外の位置に設定される場合もあり得る。また、CT撮影領域CAの形状や大きさは、X線コーンビームBX1の光軸CB上における旋回基準点CPの設定位置や、旋回基準点CPの移動軌跡の形状に応じて変化するため、これらのパラメーターは、撮影対象物OBの形状や大きさ等によって適宜変更される。また、本実施形態では、軸AQの延びる方向が軌跡MTの長軸方向となっているが、軸AQと直交する方向が軌跡MTの長軸方向となる場合も想定し得る。
【0129】
本実施例のX線撮影装置は、上記のようにCT撮影領域CAを略三角形状に形成するCT撮影もできるが、X線CT撮影中に旋回軸31の位置を固定し、X線発生器13、X線検出器21が固定の旋回中心の周りを旋回してCT撮影する通常のX線CT撮影も行うことができる。
【0130】
また、本出願人の出願にかかる特開2007−29168号公報のように関心領域の中心を回転中心として旋回軸31を回転させつつ旋回アーム30を旋回させ、撮影上の旋回中心を固定させて通常のX線CT撮影を行うこともできる。各撮影はモード切換で行うことができる。(略三角形状CT撮影領域のCT撮影モード、旋回軸固定のCT撮影モード、撮影上の旋回中心固定のCT撮影モード。)この点については後に詳述する。
【0131】
上述の略三角形状のCT撮影領域CAは、上顎のみの範囲に限定されてもよいし、下顎のみの範囲に限定されてもよい。無論、CT撮影領域CAは、上顎下顎の双方を含んだ領域に限定されてもよい。上顎のみの範囲に限定される場合、X線コーンビームが、X線CT撮影中、上顎部分のみに照射される。また、下顎のみの範囲に限定される場合、X線コーンビームが、X線CT撮影中、下顎部分のみに照射される。さらに、上顎下顎の双方を含んだ領域に限定される場合、X線コーンビームが、X線CT撮影中、上顎下顎の双方を含んだ範囲に照射される。この調整は、前述の垂直方向ビーム成形機構によって行われる。
【0132】
ここで、旋回基準点CPについて述べる。本件構成にかかる略三角形状のCT撮影領域のCT撮影を実現するには、要はX線発生器13、X線検出器21が図11に示すような軌道をたどるように移動制御すればよい。そこで、その実現のために、本実施形態では、下記に述べる機械的移動制御が実施される。この機械的移動制御は、座標演算に基づく制御が便宜である。図示の旋回基準点CPは、その座標演算の基準点として設定される。
【0133】
上述したように、位置L01から位置L13まで、旋回軸31が180度回転する間に、旋回基準点CPを、楕円状の軌跡MTを1周分移動するように設定されている。さらに、図12に示すX線CT撮影では、軌跡MTの軸AQに沿う長さ(ここでは、楕円である軌跡MTの長軸EL)を直径とする仮想円IC1を想定すると、X線発生器13が位置L01にある状態から、旋回軸31がn度回転したとき、位置L01Cから2n度分進んだ仮想円IC1上の点IC1Pから、軸AQに直交するように延ばした直線が、楕円の軌跡MTと交差する場所(図示の例では、位置L03C)に旋回基準点CPが移動されるように制御される。すなわち、図11、図12に示す例では、旋回基準点CPの軸AQへの正射影が単振動するように、旋回基準点CPを移動させている。ただし、旋回基準点CPの運動速度は、このように変化させるものに限られるものではなく、少なくとも、X線発生器13が位置L01から位置L07に到達する間に、旋回基準点CPが位置L01Cから位置L07Cに移動し、また、X線発生器13が位置L07から位置L13に移動するまでの間に、旋回基準点CPが位置L07Cから位置L13Cまで移動すればよい。
【0134】
図12を用いて説明する。図11で示すX線発生器13が位置L01にある状態では、光軸CBは関心領域の中央を通過している。従来のCT撮影では、関心領域の中心、例えば、X線発生器13が位置L01にある状態の光軸CBと対象軸AQの交点ISにX線発生器13とX線検出器21の旋回中心を固定してCT撮影が行われている。この従来のCT撮影によるCT撮影領域は、交点ISを円の中心とする円形状のCT撮影領域CAcであった。
【0135】
前歯を必ずCT撮影領域に含めるとすると、なるべく多くの歯牙がCT撮影できるようにして、適宜な価格で提供できるX線撮影装置にするためには、ある程度限定された広さの検出面のX線検出器を用いる必要があり、図示のCT撮影領域CAcの範囲のX線撮影ができる程度の検出面の広さを持つX線検出器を用いる必要があったためである。
【0136】
本件構成の座標演算を行うにあたって、この光軸CB上の交点ISと重なる位置BIに着目し、この位置が旋回基準点CPとして設定される。従来のCT撮影であれば、この位置BIと重なる交点ISを中心にX線発生器13とX線検出器21を旋回させていた。この意味では位置BIはX線コーンビームの旋回中心である。本件構成の場合は、旋回アーム30の旋回角度に応じて旋回基準点CPの位置を移動させていく。その軌跡が図12に位置L01C〜L12Cで示される軌跡である。
【0137】
旋回アーム30の旋回角度ごとに旋回基準点CPの位置は、座標演算により定められる。この座標演算に基づいて、旋回アーム30の機械的移動制御がなされる。座標演算を行うにあたって、着目する基準点を定める際、上記のような位置BIに着目する方法があり、このような位置BIを旋回基準点CPとして設定する方法があるということである。
【0138】
位置BIは、X線コーンビームBX1中の1地点と考えることもできるが、X線コーンビームBX1が旋回アーム30の中で占める位置は決まっているのであるから、旋回アーム30中の1地点と考えることもできる。
【0139】
旋回基準点CPの移動軌跡MTを定めるのにあたって、最も重要な点は、X線発生器13が位置L07にあるときにX線検出器21が交点ISの地点に近づくように設定することである。
【0140】
顎骨においては、後側の左右の顎関節の部分で、外側に広がっている。後頭部から前頭部に向けてX線コーンビームBX1を照射するときに、広がりの幅の限られたX線コーンビームBX1で左右の顎関節の双方を照射範囲内に収める場合、X線検出器21が撮影対象領域に近づくことが有利である。そのために、図12の位置L07Cは、X線検出器21が交点ISに近づく位置に設定されている。
【0141】
本件構成を実現するのに、座標演算上、上述のような旋回基準点CPを定めて、駆動部65に移動制御情報を与えるのが便宜であるから旋回基準点CPを設定しているのであるが、機械的構成で本件構成を実現しても構わない。例えば、周知の楕円定規のような構造の旋回軸31の移動機構を用いて、機械的に旋回軸31の移動で本件構成を実現しても構わない。
【0142】
図13は、CT撮影領域CAを円形状とした場合と略三角形状とした場合とを比較して示す平面図である。ここで、図11におけるX線発生器13が、位置L07にある場合の状態を想定する。X線発生器13とX線検出器21の旋回中心を固定する従来のCT撮影の方法では、撮影対象物OBの全域をCT撮影領域に設定するべく、図13に示すように、CT撮影領域CAJが撮影対象物OBを含む関心領域の全てを含む円形状とした場合、X線コーンビームBX1Jが本実施形態のX線コーンビームBX1よりも広い範囲にX線を照射することとなる。
【0143】
したがって、本実施形態のように略三角形状のCT撮影領域CAを設定した場合、円形状のCT撮影領域CAJを設定した場合に比べて、図示のようにX線検出器21におけるX線の検出範囲が小さくなる。したがって、本実施形態によれば、X線検出器21の検出面の大きさを小さくすることができるため、装置コストを低く抑えることが可能となる。
【0144】
また、頚椎BBは図示のように顎骨の後方に位置しており、CT撮影領域が略三角形状であるために略三角形の底辺の部分が円形状のCT撮影領域CAJよりも内側にあることから、頚椎BBの領域に対するX線被曝量を低減できることが分かる。
【0145】
また、X線コーンビームBX1,BX1Jを比較することで明らかなように、本実施形態のようにCT撮影領域CAを略三角形状に形成することによって、CT撮影領域CAを円形状とした場合に比べてX線を照射する範囲を狭めることができる。
【0146】
このように、撮影対象物OBである歯列弓を含んだ顎骨については、CT撮影領域CAを略三角形状に形成することによって、左右の張出部CA1,CA1の近傍に左右の顎関節が、頂部CA2の近傍に前歯が収まり、左右の張出部CA1,CA1から頂部CA2に向けて上側へ突出するように繋いだ曲線に、湾曲する顎骨が収まる。これに対し、円形状のCT撮影領域CAJを設定した場合は、CT撮影領域CAを略三角形状に形成した場合に比べ、顎骨の部分からはみ出す領域が相対的に大きくなる。したがって、撮影対象物OB以外の部分に対するX線照射を抑えることができるため、被写体に対するX線被曝量を低減することができる。
【0147】
<1.2.1. 180度分の投影データの取得>
例えば図11に示したように、X線コーンビームBX1を180度ちょうど旋回させるのみでも、診断には支障が無い程度の画質のCT画像を取得することはできる。しかしながら、図11に示したように、位置L01から出射されたX線コーンビームBX1の右外縁と位置L13から出射されたX線コーンビームBX1の左外縁の交点P1(CT撮影領域CAの頂部CA2に相当する点)では、180度よりも狭い範囲(具体的には、180度からX線コーンビームのファン角θ1を減算した角度の範囲)からしかX線の照射を受けていないことになる。このように、CT撮影領域CAのうち、位置L01と位置L13とを結ぶ直線よりも交点P1側に、180度未満の範囲でしかX線照射を受けない点が存在する。このような点については、180度分の投影データを得ることができない。高精度なCT画像を生成するためには、CT撮影領域CAの全てについて180度分の投影データを得ることが望ましく、180度分の投影データが得られれば、より高精細なCT画像の生成が可能となる。そこで、CT撮影領域CAの全てについて180度分の投影データを得る構成例について、図14を参照しつつ説明する。
【0148】
図14は、X線コーンビームBX1を180度にファン角θ1を加算した分旋回させるCT撮影を説明するための図である。なお、図14(a)は、CT撮影の様子を示した平面図であり、図14(b)は、位置L01,L07,L13,LEのそれぞれから出射されるX線コーンビームBX1の光軸CBの進行方向を図示したものである。なお、ファン角とは、図14(a)に示すように、旋回方向に平行な方向(ここでは、水平方向)におけるX線コーンビームBX1の広がりの角度θ1である。
【0149】
図14(a)に示したCT撮影では、X線撮影装置100は、X線発生器13を位置L01から位置L13まで旋回移動させた後、さらに、X線コーンビームBX1の旋回基準点CPを位置L13Cに留めたまま、旋回軸31をファン角θ1分回転させるように、X軸モータ60X,Y軸モータ60Y,旋回用モータ60Rを連動制御する。これにより、X線発生器13は、位置L13から位置LEまで楕円の円弧状に回転移動する。なお、X線発生器13を位置L01から位置L13まで旋回移動させた後、さらに、X線コーンビームBX1の旋回基準点CPが引き続き楕円軌道上を図示の矢印の方向に進むようにしてもよい。
【0150】
図14(b)に示すように、方向DR01と方向DR13の成す角度は180度であり、方向DR13と方向DREの成す角度はθ1(=ファン角)となっている。すなわち、X線コーンビームBX1の光軸CBの進行方向は方向DR1から方向DREまで、(180度にファン角θ1を加算した分、位置L01C(=位置L13C)を中心に回転する。
【0151】
このように、X線コーンビームBX1を(180度+ファン角θ1)分回転させることによって、CT撮影領域の全ての点について、180度の範囲の各方向からX線を照射した投影データを取得できる。特に、図14(a)に示すように、位置L01から出射されるX線コーンビームBX1の右外縁と位置LEから出射されるX線コーンビームの左外縁とが平行に重なるため、交点P1について、180度の範囲の各方向からX線照射をした投影データを取得できることが明らかである。
【0152】
もちろん、X線コーンビームBX1の旋回範囲については、180度以上360度未満で任意に設定できる。X線コーンビームBX1の旋回範囲は、225度、270度、315度等、45度の整数倍で設定してもよいし、180度、240度、300度等、60度の整数倍に設定してもよいし、200度、250度、300度、350度等、50度の整数倍等、きりの良い角度に設定してもよい。X線コーンビームBX1の旋回範囲については、X線撮影装置の構造、制御方法、演算上の便宜、生成されるCT画像の鮮明度合等より適宜に設定できる。
【0153】
なお、撮影対象領域であるCT撮影領域CAは、CT撮影において常にX線が照射される領域とは限らない。例えば図14(a)に示すCT撮影領域CAでは、位置L01から出射されるX線コーンビームBX1では照射されない非照射領域NR1が存在する。また、位置LEから出射されるX線コーンビームBX1によっても、照射されない非照射領域NR2が存在する。しかしながら、これらの領域は、X線発生器13が位置L01から位置LEまで移動する間のCT撮影において、180度の範囲の各方向からX線を照射される。すなわち、非照射領域NR1,NR2等はCT撮影中において、常にX線照射を受ける領域ではないものの、180度分の投影データを取得できる領域であるため、CT画像を良好に生成し得る領域となっている。
【0154】
また、図14(a)で図示したCT撮影領域CAには、180度を超える方向からX線照射を受ける部分が存在する。例えば、位置L01Cは、方向DR01のX線を基準にして、180度反対側から方向DR13のX線を受け、さらにDR13からファン角θ1回転させた方向DREのX線を受ける。すなわち、位置L01Cについては、180度の範囲を超えてファン角θ1分余分にX線が照射されていることとなる(図14(b)参照)。そこで、180度を越えるX線照射が行われるような領域ついては、X線の照射開始から照射終了までの間に、X線コーンビームBX1のファン角を変動的に調整することで、180度分のみのX線照射のみが行われるように制御してもよい。これによれば、必要充分のX線量で被写体を撮影することとなるため、被写体のX線被曝量を低減することができる。
【0155】
また、図14(a)に示したCT撮影では、X線発生器13が位置L01から位置L13まで移動する180度分のX線コーンビームBX1の旋回撮影(180度旋回撮影)を実施した後、さらにファン角θ1分の旋回撮影(ファン角旋回撮影)を行っている。180度旋回撮影は、旋回基準点CPの楕円状の移動を伴うものである。この180度旋回撮影とファン角旋回撮影の実行順序は、これに限られるものではなく、180度旋回撮影を行う前に、ファン角旋回撮影を行うようにしてもよい。この場合、位置L01よりも手前側からX線発生器13が旋回を開始し、位置L01に到達するまでのファン角旋回撮影が行われる。そしてX線発生器13が位置L01から位置L13まで移動して、CT撮影が完了することとなる。
【0156】
<1.2.2. X線量の調整>
図15は、図14(a)に示したCT撮影中、被写体に照射するX線量を調整する様子を説明するための図である。なお、図15(a)〜(c)は、位置L04,L07,L11から出射されるX線コーンビームBX1と、被写体の体内にある頚椎BBの位置関係を示す平面図である。また図(d)は、X線出力の強度をプロットしたものであり、縦軸がX線出力強度、横軸が旋回角度を示す。また図(e)は、X線コーンビームBX1の旋回速度をプロットしたものであり、縦軸が旋回速度、横軸が旋回角度を示す。図15では、X線発生器13が位置L01にあるときの旋回軸31の回転角度を0度として、旋回軸31の回転した角度を旋回角度として図示している。また、実際の人体における歯列弓と頚椎の間の距離は、図15に示すほど離れてはいないが、理解を容易にするために誇張して図示している。
【0157】
撮影対象物OBを、歯列弓を含む顎骨とした場合、被写体内部の顎骨の背後にはX線吸収部位である頚椎BBが存在する。CT撮影において、X線がこのようなX線吸収部位を通過して撮影対象物OBに到達する状態と、X線吸収部位を通過せずにそのまま撮影対象物OBに到達する状態が混在する場合、X線量を制御することが好ましい。
【0158】
例えば、図15(a),(c)に示すように、X線発生器13が位置L04,L10にある状態では、X線コーンビームBX1が、X線を吸収し易い頚椎BBに重ならない。そのため、比較的低いX線量であっても、CT撮影領域CAについて良好な投影データを取得できる。しかしながら、図15(b)に示すように、X線発生器13が位置L07(被写体の背後の位置)状態では、X線コーンビームBX1が頚椎BBの全てに重なるため、この頚椎BBを通過したX線がCT撮影領域CAに届くこととなる。したがって、CT撮影領域CAについて良好な投影データを取得するために、好ましくはこの状態で比較的大きいX線量の照射が行われる。
【0159】
このように、X線コーンビームBX1と頚椎BBのようなX線吸収部位との位置関係に応じて、すなわち旋回アーム31の旋回角度に応じてX線量を変更するため、本実施形態では、好ましくは、図15(d)、または、図15(e)に示すようにX線出力、または、旋回速度の少なくともどちらか一方が調整される。
【0160】
例えばX線出力を調整する場合、図15(d)に示すように、(a),(c)の状態よりも(b)の状態のときに、X線発生器13から出力されるX線量が大きくなるように制御される。また、旋回速度を調整する場合には、図15(e)に示すように、(a),(c)の状態よりも(b)の状態のときに旋回速度(旋回アーム30の旋回速度)を遅くすることによって、相対的に、CT撮影領域CAに対するX線量が大きくなるように制御される。
【0161】
このような制御を行うことによって、比較的X線吸収性の高い部位が存在したとしても、その影響を緩和したCT撮影を行うことができるため、良好なCT画像を取得することができる。なお、図15に示したX線量の調整に関しては、特開2010−75682号公報に開示された技術を含む種々の技術を利用できる。
【0162】
<1.3. その他のCT撮影1>
図14(a)に示したCT撮影では、X線発生器が位置L13から位置LEまで移動するファン角旋回撮影の間、旋回基準点CPが位置L13Cに留めている。しかしながら、上述したように、180度分の投影データを取得できれば、CT撮影領域CAについて良好なCT画像を生成し得る。したがって、これを実現できるのであれば、ファン角旋回撮影の間、任意の位置に移動させてもよい。
【0163】
図16は、その他のCT撮影の概要を示す平面図である。図16に示したCT撮影では、ファン角旋回撮影の間、X線コーンビームBX1が略三角形状のCT撮影領域CAの全てを照射するように、旋回基準点CPを移動させている。したがって、X線発生器13がCT撮影領域CAから離れて位置LEsに向かう(換言すれば、X線検出器21がCT撮影領域CAに接近する)ように、移動することとなる。このようなCT撮影においては、CT撮影領域CAの全てにX線が照射された投影データを取得できるため、三次元データの再構成において有効である。ただし、上述したように、非照射領域NR2などについては、180度旋回撮影において、180度分の投影データを取得できているため、旋回基準点CPを移動させなくても、充分に高精度なCT画像は取得することは可能である。
【0164】
<1.4. その他のCT撮影2>
図14(a)に示したCT撮影では、180度旋回撮影が完了した後に、ファン角旋回撮影を行っているが、ファン角旋回撮影を180度旋回撮影の前後に分けて行うことも可能である。
【0165】
図17は、その他のCT撮影の概要を説明するための図である。なお図17(a)は、CT撮影領域CAが撮影される様子を示した平面図であり、図17(b)は、(a)に示した旋回基準点CPの移動軌跡を拡大して示す図である。
【0166】
図17(a)に示すCT撮影では、X線撮影装置100は、X線発生器13を、位置L01よりも手前の位置LSからCT撮影を開始し、位置L01,L02,・・・,L12,L13へ順次移動させた後、さらに位置LEaまで移動させてCT撮影を終了する。位置LS,LEaの位置座標は、位置LSから出射されるX線コーンビームBX1の右外縁が位置LEaから出射されるX線コーンビームBX1の左外縁と平行に重なるように、それぞれ設定される。
【0167】
特に図17に示したCT撮影では、X線発生器13が位置LSから位置L01まで、および、位置L13から位置LEaに到達する間に、ファン角θ1の半分((θ1)/2)の角度分、旋回軸31が旋回する。すなわち、図14(a)に示したCT撮影のファン角旋回撮影に相当する撮影が、180度旋回撮影の前後に均等に分けて行われていると捉えることができる。
【0168】
また、図17に示したCT撮影では、X線撮影装置100は、ファン角旋回撮影に相当する撮影中、X線コーンビームBX1がCT撮影領域CA全体を照射するようにX線発生器13を移動させる。このため、X線発生器13は、位置LSから位置L01までは、CT撮影領域CAに接近するように移動する。このとき、旋回基準点CPは、図17(b)に示すように、位置LSCから位置L01Cまで移動する。またX線発生器13は、位置L13から位置LEaまでは、CT撮影領域CAから遠ざかるように移動する。このとき、旋回基準点CPは、図17(b)に示すように、位置L13Cから位置LEaCまで移動する。
【0169】
例えば体の内部の各器官(ただし、心臓や肺などの特定の器官は除く。)は、略左右対称に配置されている場合が多く、例えば頭部などは、略左右対称となっている。このように撮影対象が左右対称のものである場合、体内のX線吸収部位の位置も、略左右対称となっていると考えられる。そこで、この対称軸を境にして、左右をほぼ同条件でCT撮影を対称的に実施することによって、CT撮影領域に対するX線の入射角度やX線量等を左右の領域間で略一致させることができる。
【0170】
特に図17に示したCT撮影では、撮影対象物OBの対称軸AQ(人体の対称軸に略一致する。)を軸にして、X線発生器13の移動軌跡が左右対称であるため、移動軌跡上の各地点におけるX線の照射方向(X線コーンビームBX1の光軸CBの進行方向)も対称的に変化することとなる。このため、CT撮影領域CAについて、対称軸AQの左右対称的な三次元データを取得することができ、CT画像において左右の画質にバラツキが生じ難くなるため、画像診断の上で有利である。
【0171】
なお、図17(a)に示したCT撮影では、X線発生器13が位置LSから位置L01まで、および、位置L13から位置LEaまで移動する間に、旋回基準点CPを、位置L01CからL13Cの間で描かれる旋回基準点CPの楕円軌道から外れた位置で移動させているが、いずれの移動においても、旋回基準点CPを位置L01C(=位置L13C)に留めてもおいてもよい。この場合、CT撮影領域CAにX線が照射されない非照射領域が生じ得るが、それらの領域についても、残りの撮影によって180度分の投影データを取得することができるため、CT画像の生成上、ほとんど問題は生じないと考えられる。
【0172】
図17(b)における旋回基準点CPの軌道は、位置L01Cから位置L13Cまでの間の楕円の軌道部分と、位置LSC,位置L01C間と位置L13C,LEaCの間で直線移動する部分からなっている。
【0173】
旋回基準点CPの軌道は、位置LSCから位置L01Cの間で、楕円の長軸ELLと楕円弧との交点にあたる位置L01Cから長軸ELLに図に向かって右側すなわちX線検出器21がCT撮影領域CAに接近する方向に垂直方向に伸びた線分となり、この線分の端部にあたる位置LSCから位置L01Cに向けて進む軌道である。
【0174】
また、旋回基準点CPの軌道は、位置L13Cから位置LEaCの間で、楕円の長軸ELLと楕円弧との交点にあたる位置L01Cから長軸ELLに図に向かって左側すなわちX線検出器21がCT撮影領域CAに接近する方向に垂直方向に伸びた線分となり、この線分の端部にあたる位置L13Cから位置LEaCに向けて進む軌道である。
【0175】
ただし、位置LSCから位置L01Cに向けて進む軌道と、位置L13Cから位置LEaCに向けて進む軌道とは、必ずしも直線でなくとも、要はCT撮影領域CAの全域が、CT撮影中、常にX線コーンビームBX1の照射領域に収まるように設定されればよい。
【0176】
図17において、旋回基準点CPの移動軌跡が楕円のみを描くようにする例は他にも考えられる。例えば、旋回基準点CPの軌跡を、図示の図17(b)に示す位置LSCaから出発して位置LECaまで楕円軌道上のみ移動するように設定してもよい。位置LSCaは図12に示される位置L12Cの位置またはその近傍に、位置LECaは図12に示される位置L02Cの位置またはその近傍に設定される。
【0177】
先に説明した例では、旋回基準点CPの軌跡は図17(b)の位置LSCから位置L01Cの間と位置L13CとLEaCの間で直線移動しているが、この間の軌道が変更される。すなわち、旋回基準点CPは、位置LSCにおいて図示のLSCaの位置から出発し、位置L01CからL13Cの間で描かれる旋回基準点CPの楕円軌道上を位置L01Cまで移動して、位置L01CからL13Cの間で先の例と同様に移動する。そして旋回基準点CPは、位置L13Cに到達した後は、同様に楕円軌道上を位置LECaまで移動する。このように旋回基準点CPを移動させるCT撮影が実施されてもよい。
【0178】
<1.5. その他のCT撮影3>
図18は、その他のCT撮影の概要を示す平面図である。なお、図18は、一連のCT撮影を、前半のCT撮影(同図(a))と後半のCT撮影(同図(b))とに分けて図示している。本CT撮影では、まず図18(a)に示すように、X線撮影装置100は、図14に示したCT撮影と同様に、X線発生器13を位置L01から位置LEまで移動させる。なお、このときのX線発生器13から出射されるX線コーンビームBX2の形状は、X線コーンビームBX1を、光軸CBに沿って、左側半分を規制した形状となっている。すなわち、X線コーンビームBX2は、元のX線コーンビームBX1の右半分だけとなっており、光軸CBがX線コーンビームBX2の左外縁上に存在することとなる。X線撮影装置100は、このX線コーンビームBX2をX線検出器21aにより検出する。
【0179】
次に、X線撮影装置100は、図18(b)に示すように、X線発生器13を位置LEから位置L01まで前半のCT撮影と同じ移動経路上を逆行移動させる。このときに出射されるX線コーンビームBX3は、図14に示したX線コーンビームBX1を、光軸CBに沿って、右側半分を規制した形状となっている。すなわち、X線コーンビームBX3は、X線コーンビームBX1の左半分だけとなっており、光軸CBがX線コーンビームBX3の右外縁上に存在することとなる。そしてX線撮影装置100は、このX線コーンビームBX3を、左側(図18(b)において、矢印で示す方向)へ平行移動させたX線検出器21aによって検出する。
【0180】
本CT撮影においても、図14(a)に示したCT撮影と同様に、回転角度が180度以上360度未満である旋回で、略三角形状のCT撮影領域CAについて、投影データを収集することができる。特に、本CT撮影によれば、X線検出器21aの大きさを、図14(a)に示すX線検出器21に比べて略半分程度の大きさにまで縮小化可能なため、装置コストを抑えられるという点で有利である。
【0181】
<1.6. その他のCT撮影4>
図14(a)に示したCT撮影では、CT撮影中、移動軌跡MTが楕円形状となるように旋回基準点CPを移動させていたが、旋回基準点CPの移動軌跡はこのようなものに限定されない。
【0182】
図19は、その他のCT撮影の概要を説明するための図である。なお、図19(a)は、CT撮影の概要を図示しており、図19(b)は、(a)に示したCT撮影中において、旋回基準点CPの移動軌跡MT2を図示している。
【0183】
本CT撮影では、図19(a)に示すように、X線発生器13は、位置L01からX線照射を開始して、旋回アーム30が180度回転することによって、位置L02a,L03a,・・・,L06a,L07,L08a,・・・L12a,L13まで移動する。このとき、旋回基準点CPは、図19(b)に示すように、位置L01Cから位置L07Cまでを直線状に往復移動して、再び位置L01C(=位置L13C)に戻るように移動させている。この移動軌跡は、撮影対象領域の対称軸AQと平行な直線となっている。なお、旋回基準点CPの位置L02Ca〜L12Caのそれぞれは、X線発生器13が位置L02a〜L12aにあるときにそれぞれ対応する。
【0184】
このように旋回基準点CPを移動させた場合においても、図19(b)に示すように、左右に外側に張り出した張出部CA1a,CA1aと、該張出部CA1a,CA1aから頂部CA2aに向けて上側へ突出するように張出部CA1a,CA1aを繋いだ略三角形状のCT撮影領域CAaを設定することができる。特に、図12に示すCT撮影領域CAに比べて、本CT撮影におけるCT撮影領域CAaは定幅図形の一つであるルーローの三角形に似た形状を呈している。
【0185】
このように、旋回基準点の移動制御にしたがって、本願の略三角形状のCT撮影領域は様々に設定され得る。次に、CT撮影領域について、図22を参照しつつ説明する。
【0186】
図22は、略三角形状のCT撮影領域の例を説明するための図である。図22(a)〜(g)は全て本願の実施例である。
【0187】
図22(a)は、頂点A、B、C、辺AB、AC、BCからなる三角形ABCの形状のCT撮影領域CAである。ここで、図22(a)の実施例をさらに詳述するために図22(f)を参照する。図22(a)の実施例のCT撮影領域CAは、図22(f)における、頂点A、B、C、辺AB、AC、BCからなる三角形ABCの形状を備えた領域である。図示の例では辺BCが底辺である。辺AB、ACが互いに接してできる頂点Aが底辺BCと対向する。この三角形ABCは、望ましくは二等辺三角形である。無論、三角形ABCは正三角形であってもよい。図12の張出部CA1、CA1と同様に頂点B、頂点Cの近傍に張出部CA1x、CA1xがある。
【0188】
図22(b)は、別の実施例のCT撮影領域CAの形状を示す。本実施例のCT撮影領域CAは図22(a)のCT撮影領域CAと一部異なる形状となっている。図22(a)の三角形ABCの頂点Aの部分に丸みを持たせてある点で、相違している。すなわち、図22(b)に示すCT撮影領域CAでは、辺AB、辺ACは、頂点Aでつながらずに、外に凸の曲線でつながっている。
【0189】
辺AB、辺ACをつなぐ線は、必ずしも曲線のみに限定されるものではなく、直線にしてもよいし(CT撮影領域CAが台形の形状となる。)、部分的に直線にしてもよい。この場合、直線は単数で構成しても複数で構成してもよい。
【0190】
ここで、図22(b)の実施例をさらに詳述するために図22(f)を参照する。図22(b)の実施例のCT撮影領域CAは、図22(f)における、底辺BC、線ABb、線AB1、線AR、線AC1、線ACbで囲まれた形状を備えた領域である。辺ABは頂点Aに近い領域の線ABa、頂点Bに近い領域の線ABb、頂点A、Bから離れた領域の線AB1からなる。辺ACは頂点Aに近い領域の線ACa、頂点Cに近い領域の線ACb、頂点A、Cから離れた領域の線AC1からなる。線AB1と線AC1を、望ましくは頂点Aよりも三角形ABCの内側にある線ARでつなぐ。図示の例では、線AB1と線AC1を弧ARでつなぐ。弧ARには凸の側と凹の側があるが、ここで弧ARは凸の側が三角形ABCの外に向いている。すなわち弧ARは外に凸である。
【0191】
図22(c)は、別の実施例のCT撮影領域CAの形状を示す。本実施例のCT撮影領域CAは図22(b)のCT撮影領域CAと一部異なる形状となっており、図22(a)の三角形ABCの頂点B、Cの部分、つまり底辺である辺BCの左右の部分に丸みが持たせてある点が相違する。すなわち、辺AB、辺BCは、頂点Bでつながらずに、外に凸の曲線でつながっている。また、辺AC、辺BCは、頂点Cでつながらずに、外に凸の曲線でつながって直線部分AB1、AC1を残している。
【0192】
辺AB、辺BCをつなぐ線、辺AC、辺BCをつなぐ線は、必ずしも曲線のみに限定されるものではなく、直線にしてもよいし、部分的に直線にしてもよい。この場合、直線は単数で構成しても複数で構成してもよい。
【0193】
ここで、図22(c)の実施例をさらに詳述するために図22(f)を参照する。図22(c)の実施例のCT撮影領域CAは、図22(f)における、線BC1、線BR、線AB1、線AR、線AC1、線CRで囲まれた形状を備えた領域である。辺BCは頂点Bに近い領域の線BCa、頂点Cに近い領域の線BCb、頂点B、Cから離れた領域の線BC1からなる。辺ACは頂点Aに近い領域の線ACa、頂点Cに近い領域の線ACb、頂点A、Cから離れた領域の線AC1からなる。線AB、ACについては図22(b)の例と同様なので詳述は略す。
【0194】
線AB1と線BC1を、望ましくは頂点Bよりも三角形ABCの内側にある線BRでつなぐ。また、線AC1と線BC1を、望ましくは頂点Cよりも三角形ABCの内側にある線CRでつなぐ。図示の例では、線AB1と線BC1を弧BRでつなぎ、線AC1と線BC1を弧CRでつなぐ。弧BR、CRには凸の側と凹の側があるが、ここで弧BR、CRは凸の側が三角形ABCの外に向いている。すなわち弧BR、CRは外に凸である。
【0195】
図22(d)は、別の実施例のCT撮影領域CAの形状を示す。本実施例のCT撮影領域CAは図22(c)のCT撮影領域CAと一部異なる形状となっており、直線部分AB1、AC1が変形して外に凸の曲線になっている点が相違する。
【0196】
辺AB、ACが変形した線は必ずしも曲線のみに限定されるものではなく、部分的に直線にしてもよい。この場合、直線は単数で構成しても複数で構成してもよい。
【0197】
ここで、図22(d)の実施例をさらに詳述するために図22(f)を参照する。図22(d)の実施例のCT撮影領域CAは、図22(f)における、線BC1、線BR、線ABR、線AR、線ACR、線CRで囲まれた形状を備えた領域である。線AB1、AC1が線ABR、ACRになっている点以外は図22(c)の例と同様なので詳述は略す。
【0198】
図22(c)の例の線AB1、AC1が三角形ABCの外側を通る線ABR、ACRに代わっている。図示の例では、線ABR、ACRは弧ABR、ACRとなっている。弧ABR、ACRには凸の側と凹の側があるが、ここで弧ABR、ACRは凸の側が三角形ABCの外側遠方に向いている。すなわち弧ABR、ACRは外に凸である。弧ABR、ACRを変形して、複数の直線から構成した外に凸の線にしてもよい。
【0199】
撮影対象物OBが効率的に収まる限り、弧BR、弧ABR、弧AR、弧ACR、弧CRの曲率を同じまたはほぼ同じものにして、半円を含む略半円を形成するように設定してもよい。ここでいう略半円は真円の半円に限定されず、弧の曲率が部分的に異なるものや馬蹄形状のものを含む。
【0200】
好適には弧BR、弧ABR、弧AR、弧ACR、弧CRが変曲点を作ることなく滑らかにつながるようにする。この場合、CT撮影領域CAは図22(g)に示すように、略半月型の形状となる。
【0201】
図22(e)は、別の実施例のCT撮影領域CAの形状を示す。本実施例のCT撮影領域CAは図22(d)のCT撮影領域CAと一部異なる形状となっており、辺BCが変形して外に凸の曲線になっている点が相違する。辺BCが変形した線は、必ずしも曲線のみに限定されるものではなく、部分的に直線にしてもよい。この場合、直線は単数で構成しても複数で構成してもよい。
【0202】
ここで、図22(e)の実施例をさらに詳述するために図22(f)を参照する。図22(d)の実施例のCT撮影領域CAは、図22(f)における、線BCR、線BR、線ABR、線AR、線ACR、線CRで囲まれた形状を備えた領域である。線BC1が線BCRになっている点以外は図22(d)の例と同様なので詳述は略す。
【0203】
図22(d)の例の線BC1が三角形ABCの外側を通る線BCRに代わっていて、線BCRが略三角形の底辺となっている。図示の例では、線BCRは弧BCRとなっている。弧BCRには凸の側と凹の側があるが、ここで弧BCRは凸の側が三角形ABCの外側遠方に向いている。すなわち弧BCRは外に凸である。弧BCRを変形して、複数の直線から構成した外に凸の線にしてもよい。
【0204】
撮影対象物OBが効率的に収まる限り、弧BR、弧ABR、弧AR、弧ACR、弧CRの曲率を同じまたはほぼ同じものにして、半円を含む略半円を形成するように設定してもよい。ここでいう略半円は真円の半円に限定されず、弧の曲率が部分的に異なるものや馬蹄形状のものを含む。
【0205】
好適には弧BR、弧ABR、弧AR、弧ACR、弧CRが変曲点を作ることなく滑らかにつながるようにする。この場合、CT撮影領域CAは略半月型(厳密には略十三夜の月型)の形状となる。
【0206】
以上、図22(a)〜(g)いずれにおいてもCT撮影領域CAに図12の張出部CA1、CA1と同様に張出部CA1x、CA1xがある。図22(d)、(e)におけるCT撮影領域CAは、下側つまり底辺である辺BCまたは線BCRの側の左右に張出部CA1x、CA1xを有しており、略三角形状が、左右の張出部CA1x、CA1xから頂部である頂点Aの付近に向けて左右の張出部CA1x、CA1xと頂部とを曲線ABR、ACRで繋いだ左右対称の形状である。
【0207】
無論、撮影対象物OBが無駄なく適宜にCT撮影領域CAに収まればよく、その目的に向けて支障がない範囲で多少の変形があってもよい。例えば、上記の弧AR、BR、CR、ABR、ACR、BCRの曲率は、様々に設定し得る。弧AR、BR、CRの曲率を、ABR、ACR、BCRの曲率よりも小さく設定してもよい。
【0208】
<1.7. その他のCT撮影>
図14等に示したCT撮影では、歯牙を含む顎骨全体を撮影対象物OBとしてCT撮影領域CAに設定しているが、もちろん、歯牙のみを撮影対象物としてもよい。
【0209】
図20は、歯牙のみを含むようにCT撮影領域CAbを設定した状態を示す図である。
本CT撮影では、標準的な歯牙の並びから設定した標準的歯列弓形状のデータである歯列弓モデル(仮想的な撮影対象物OBa)が予め用意される。このような歯列弓モデルは、記憶部802等に記憶されている。そして、オペレーターが撮影領域を設定する際に、CT撮影領域CAbの前方側の境界(頂部CA2b付近)よりも内側に歯列弓モデルの前歯T1が配置され、また、CT撮影領域CAbの左後方側および右後方側の境界(張出部CA1b,CA1b付近)よりも内側に歯列弓モデルの左側臼歯T2および右側臼歯T3が配置されるように、CT撮影領域CAbが設定される。このようにして歯列弓モデルOBaの前歯T1、両臼歯T2、T3がCT撮影領域CAbに完全に収まる。
【0210】
このように略三角形状のCT撮影領域CAbを設定することによって、歯牙全体を撮影対象とするCT撮影を容易に実施することができる。特に、一般的な歯牙は、歯列弓を形成する(すなわち弓状を呈する)ため、CT撮影において、略三角形状のCT撮影領域CAbを設定することは有効である。このように設定されたCT撮影領域CAbについてのCT撮影は、図14(a)に示したCT撮影と同様の制御により実施可能である。
【0211】
<2. 第2実施形態>
図21は、第2実施形態に係るX線撮影装置100Aの概略を示す図である。なお、図21(a)は、X線撮影装置100Aの正面図であり、図21(b)は、X線撮影装置100Aの側面図である。以下の説明において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0212】
図21に示すように、本実施形態のX線撮影装置100Aは、二つの支柱50Aによって両側端部が支えられた上部フレーム41Aの中央の位置に、旋回アーム30が吊り下げ保持された構造を有している。したがって、本実施形態では、第1実施形態の支柱50のような機械的要素に旋回アーム30が干渉するおそれがなく、旋回アーム30を360度の範囲で旋回させることが可能に構成されている。
【0213】
上部フレーム41Aの両側端部は、支柱50Aの内部のプーリーに架け渡されたベルト51に接続されており、図示しないモータを駆動してベルト51を回すことによって、上部フレーム41Aを鉛直方向に沿って上下に移動させることができる。
【0214】
また、X線撮影装置100Aは、被写体M1である人体の頭部を固定するヘッドレスト等を備え、シートとして構成された被写体固定部421Aが設けられている。被写体固定部421Aは、被写体M1を坐位の姿勢で固定する。被写体固定部421Aは、鉛直方向に昇降する昇降部63によって下方側から支持されている。
【0215】
旋回アーム30は、上部フレーム41Aに内蔵されたXYテーブル35(Xテーブル35XおよびYテーブル35Yで構成される。)に旋回軸31によって接続されており、上部フレーム41Aに対して水平方向に移動することができる。また、被写体固定部421Aは、XYテーブル35と同様の機能を有するXYテーブル64に接続されており、上部フレーム41に対して水平方向に移動可能に構成されている。
【0216】
このような構成のX線撮影装置100Aにおいては、シートとして構成された被写体固定部421Aを水平面内で移動させることによって、支持部である旋回アーム30を被写体に対して相対的に移動させることができる。このような構成のX線撮影装置においても、本願発明を実施することは有効である。
【0217】
<3.変形例>
以上、本願の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0218】
例えば上記実施形態では、X線CT撮影において、矩形状に開口したビーム通過孔151を透過させることによって、角錐状のX線ビームを撮影対象領域に照射しているが、ビーム通過孔151を円形に形成することによって、円錐状のX線ビームを照射するように構成してもよい。
【0219】
また、上記実施形態に示した機能ブロックは、ソフトウェアにより実現されると説明したが、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路によりハードウェアとして実現してもよい。
【0220】
また、上記実施形態のX線撮影装置100は、床に垂直に立設する構造を有しているが、被写体M1である被検者が仰臥姿勢等にある状態でCT撮影が行われる構造のものに適用可能であることは言うまでもない。例えば、旋回軸31の延びる方向を水平に設定し、被写体固定部421を、患者を水平に載置する寝台等に変形することも可能である。
【0221】
また、本発明は、略三角形状のCT撮影領域が設定されることから、撮影対象を略三角形状である顎骨、歯牙等とする場合に好適である。しかしながら、その他の器官を撮影対象としてもよいことはいうまでもない。また、人以外にも、その他の動物を被写体とする場合にも応用できる。
【0222】
また、上記実施形態では、図9に示したように、XYテーブル35を駆動する移動機構を説明したが、移動機構はこのようなものに限られるものではない。
【0223】
図23は、変形例に係る移動機構を説明するための図である。図23(a)は、移動機構を模式的に示している。図23の移動機構は、極座標に基づいて制御されるものであり、2つのアームAM1とAM2を駆動することによって、旋回アームが移動される。また、図23(b)では、X線発生器13,旋回軸31の位置(同図中、(+)で示す。)およびX線検出器21の位置について、旋回アームを旋回角度90度分ずつ旋回させた3つの位相に相当する状態を図示している。
【0224】
図示を省略する本体1に対し、固定の回動基準点PT1があり、第1のアームAM1の一端は回動基準点PT1を支点に、回動可能に軸支されている。さらに、アームAM1の他端に、アームAM2の一端が回動自在に軸支されており、第2のアームAM2の他端に、同図中(+)で位置を示す旋回アームの旋回軸31が回動可能に軸支されている。旋回アームは、図示しない駆動モータ等により旋回軸31の軸周りに旋回駆動される。第2のアームAM2の他端に旋回軸31を回動しないように固定し、旋回軸31周りに旋回アームが旋回するようにしてもよい。
【0225】
図示の例では旋回軸31を旋回基準点CPとする。図23(a)では、旋回アーム、X線コーンビームは図示を省略しており、光軸CBのみを図示している。アームAM1、AM2は、それぞれに対して回動角度を制御可能に結合されたアーム駆動用の結合された駆動モータ(図示しない)により制御され回動される。アームAM1のX線撮影装置の本体1に対する回動角度θ2とアームAM2のアームAM1に対する相対的回動角度θ3とを制御することにより、旋回軸31の位置(+)が、旋回軸31に垂直な2次元平面内で制御できる。図23に示した移動機構も、旋回軸31に直交する2次元平面内で、旋回アーム(すなわち支持部)を被写体M1に対して相対的に移動させる。
【0226】
また、本願のX線撮影装置において、略三角形状のCT撮影領域のX線CT撮影のみならず、他の形状のCT撮影領域のX線CT撮影が可能なようにしてもよい。例えば、略三角形状のCT撮影領域のX線CT撮影のほか、従来より周知の円形状のCT撮影領域のX線CT撮影が可能なようにすることもできる。この点について、図12を参照しつつ説明する。
【0227】
図12には、略三角形状のCT撮影領域CAが示されている。既に説明したように、このような略三角形状のCT撮影領域CAに撮影対象物OBである顎骨が収まるX線CT撮影を行うことができる。一方、図12には交点ISを円の中心とする円形状のCT撮影領域CAcが示されている。X線撮影装置において、略三角形状のCT撮影領域CAのX線CT撮影の他に、このような円形状のCT撮影領域CAcのX線CT撮影を行えるようにしてもよい。
【0228】
CT撮影領域CAcのX線CT撮影は、X線発生器13とX線検出器21が撮影上の固定の旋回中心を交点ISに置いて旋回して行われる。CT撮影領域CAcの広さは、略三角形状のCT撮影領域CAとほぼ同じである。CT撮影領域CAcのX線CT撮影の場合、旋回基準点を移動させずにX線CT撮影を行う分、両顎関節の一部の領域がCT撮影領域外に出ているが、全歯牙領域がCT撮影領域内に含まれる。したがって、全ての歯牙を含むCT画像については、CT撮影領域CAcのX線CT撮影において取得することができる。
【0229】
CT撮影領域CAcのX線CT撮影の場合、図12に示すようにX線発生器13とX線検出器21が撮影上の固定の旋回中心を交点ISに置いて旋回してX線CT撮影を行う場合は、旋回が単純である分、機械的精度を上げやすいという利点がある。
【0230】
以上のように、本変形例によれば、略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードと、撮影上の旋回中心固定のCT撮影モードのいずれも選択可能である。
【0231】
さらに、顎骨の全域をCT撮影領域内に含む略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードと、この略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードにおける旋回基準点を移動させずにX線発生器13とX線検出器21の撮影上の旋回中心を固定して行うCT撮影モードのいずれも選択可能としてよい。
【0232】
CT撮影領域の水平方向の断面形状から見ると、略三角形状のCT撮影領域のCT撮影モードと、円形状のCT撮影領域のCT撮影モードのいずれも選択可能である。円形状のCT撮影領域が真円のCT撮影領域である場合は、円形状のCT撮影領域のCT撮影モードは真円のCT撮影領域のCT撮影モードである。
【0233】
これにより、例えば、左右の両顎関節を含んだ顎骨全体を対象とするX線CT撮影を行う場合は、略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードが実行され、左右の両顎関節の全体は含まれないが、全ての歯牙を含むCT画像があれば足りるという場合は、撮影上の旋回中心固定のCT撮影モードが実行される。このように、目的に応じてX線撮影装置を使い分けることができる。なお、X線発生器13とX線検出器21の旋回中心は、前述の移動機構を用いて所望の位置に設定できる。したがって、X線発生器13とX線検出器21の撮影上の固定の旋回中心を交点ISより前歯よりの位置に置いて、X線CT撮影することもできる。
【0234】
また、略三角形状のCT撮影領域のX線CT撮影のほかに、略三角形状のCT撮影領域よりもCT撮影領域が狭い、顎骨の一部の領域のみをX線CT撮影することができるようにしてもよい。ここでは、略三角形状のCT撮影領域よりもCT撮影領域が狭い顎骨の一部の領域のみのX線CT撮影を、顎骨局所CT撮影と呼ぶこととする。
【0235】
略三角形状のCT撮影領域が顎骨全体を含む場合の顎骨局所CT撮影の対象領域としては、顎骨のうち歯牙部分のみでかつ歯牙全体の領域、全歯牙の一部のみの歯牙領域、左右いずれかの顎関節のみの領域、左右にいずれかの顎関節および該顎関節に連なる一部の歯牙からなる領域などが考えられる。この点について、図24を参照しつつ説明する。
【0236】
図24は、変形例に係るX線CT撮影を説明するための図である。図24においては、全歯牙のうち、右側の一部の歯牙の領域がCT撮影領域(顎骨局所領域)CAPとなっている。
【0237】
X線ビームはCT撮影領域CAPのみがX線CT撮影中、常にX線照射されるように規制され、X線コーンビームBXPとなって照射される。X線ビームの水平方向の広がりの調整は、前述の水平方向ビーム成形機構で行われる。そして、X線発生器13とX線検出器21がCT撮影領域CAPの中心を固定の旋回中心として旋回することによって、X線CT撮影が行われる。ここでは、このX線CT撮影のモードを顎骨局所領域のCT撮影モードと呼ぶこととする。
【0238】
顎骨局所領域のCT撮影モードが選択されることにより、顎骨の一部の領域のCT画像のみが必要な場合に、必要最小限の領域のみにX線照射するX線CT撮影を実行することができる。X線発生器13とX線検出器21の旋回中心は、前述の移動機構を用いて所望の位置に設定できる。図示においてはX線発生器13とX線検出器21は固定の旋回中心をCT撮影領域CAPの中心に置いて旋回し、CT撮影領域CAPのX線CT撮影を行っている。
【0239】
以上のように、本変形例によれば、略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードと、顎骨局所領域のCT撮影モードのいずれも選択可能となる。なお、前述の略三角形状CT撮影領域のCT撮影モードと、撮影上の旋回中心固定のCT撮影モードのいずれも選択可能である構成において、さらに顎骨局所領域のCT撮影モードが選択できるように、X線撮影装置が構成されていてもよい。
【0240】
また、別の変形例として、X線撮影装置は、略三角形状CT撮影領域の大きさを変更できるようにしてもよい。具体的には、X線撮影装置が、図20に示した歯牙のみを含むCT撮影領域CAbのX線CT撮影、または、図12に示した顎骨全体を含むCT撮影領域CAのX線CT撮影を選択的に実行するように構成することも可能である。このとき、X線ビームの水平方向の広がりの調整は、前述の水平方向ビーム成形機構で行えばよい。また、X線発生器13とX線検出器21の旋回軌道は前述の移動機構を用いて設定することができる。
【0241】
なお、上記各実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0242】
100,100A X線撮影装置
10 X線発生部
12 回転機構
121 回転モータ
13 X線発生器
15 ビーム成形板
16 ビーム成形機構
20 X線検出部
21,21a X線検出器
30 旋回アーム
300 支持部
31 旋回軸
35 XYテーブル
35X Xテーブル
35Y Yテーブル
421,421A 被写体固定部
60 本体制御部
601a X線発生部制御部
601b X線検出部制御部
601c 駆動部制御部
60R 旋回用モータ
60X X軸モータ
60Y Y軸モータ
61 表示部
64 XYテーブル
65 駆動部
8 情報処理装置
80 情報処理本体部
AQ 対称軸
Aa 撮影対象物
B1 X線コーンビーム
BB 頚椎
BX1,BX1J,BX2,BX3 X線コーンビーム
CA,CAJ,CAa,CAb,CAa CT撮影領域
CAP CT撮影領域(顎骨局所領域)
CA1,CA1a,CA1b 張出部
CA2,CA2a,CA2b 頂部
CB 光軸
CP 旋回基準点
l1、l2,l3,l4,l5,l6 距離
MT,MT2 移動軌跡
M1 被写体
OB 撮影対象物
PG1,PG2 プログラム
T1 前歯
T2 左側臼歯
T3 右側臼歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT撮影を行うX線撮影装置において、
X線コーンビームを発生するX線発生器と、
被写体に照射された前記X線コーンビームを検出するX線検出器と、
前記X線発生器と前記X線検出器とを前記被写体を挟んで対向させた状態で支持する支持部と、
前記支持部を、前記被写体に対して相対的に旋回させる旋回駆動部と、
前記支持部を、前記旋回駆動部の旋回軸に直交する2次元平面内で、前記被写体に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記支持部を旋回させながら前記X線コーンビームを照射して撮影されるCT撮影領域が、略三角形状を呈するように前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御する駆動制御部と、
を備えるX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1のX線撮影装置において、
前記駆動制御部は、
前記被写体を挟んで旋回する前記X線発生器と前記X線検出器の旋回移動において、前記X線検出器が撮影対象領域の左右のいずれかの位置にあるときの前記X線検出器と前記撮影対象領域の左右端の前記X線検出器に近い方の端との間の距離が、前記X線検出器が前記撮影対象領域の底辺と対向する頂部を通る対称軸の位置にあるときの前記X線検出器と前記撮影対象領域の前記頂部との間の距離よりも大きくなるように、前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御するX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線撮影装置において、
前記略三角形状は、二等辺三角形の底辺と対向する頂点の部分を外に凸の弧によって丸みを持たせた形状であるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線撮影装置において、
前記略三角形状は、前記底辺の両端の部分を外に凸の弧によって丸みを持たせた形状であるX線撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線撮影装置において、
前記略三角形状は、前記二等辺三角形の3辺のうち、少なくとも前記底辺以外の2辺について中央部分を外に凸の弧で形成した形状であるX線撮影装置。
【請求項6】
請求項1、2、5のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記略三角形状は、下側の左右に張出部を有しており、前記左右の張出部から頂部に向けて前記左右の張出部と前記頂部とを曲線で繋いだ左右対称の形状であるX線撮影装置。
【請求項7】
請求項2、5、6のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記駆動制御部は、
X線CT撮影中、前記支持部が180度以上360度未満の回転角度分、前記被写体に対して相対的に旋回しつつ、前記X線コーンビームの光軸上に設定される旋回基準点が楕円形状の移動軌跡を描くように前記旋回駆動部と前記移動機構とを連動制御するX線撮影装置。
【請求項8】
請求項7に記載のX線撮影装置において、
前記旋回駆動部は、所定位置に固定された前記被写体に対して前記支持部を前記旋回軸周りに旋回させるように構成されており、
前記旋回軸が前記X線コーンビームの前記旋回基準点となるX線撮影装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のX線撮影装置において、
前記駆動制御部は、CT撮影中、前記支持部が180度に前記X線コーンビームの旋回方向の広がりの角度を加えた回転角度分、相対的に旋回するように前記旋回駆動部を制御するX線撮影装置。
【請求項10】
請求項1、2、4から9までのいずれか1項に記載のX線撮影装置において、
前記CT撮影領域は、標準的な歯牙の並びから設定した標準的歯列弓形状のデータである歯列弓モデルの前歯、左右の両臼歯が完全に収まるように設定されているX線撮影装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載のX線撮影装置において、
前記X線CT撮影中、被写体に照射された前記X線コーンビームが前記被写体の頚椎を通過してから顎骨を通過する照射状態となる場合に、前記被写体に照射されるX線量を一時的に増大させるX線照射制御部、
をさらに備えるX線撮影装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のX線撮影装置において、
前記CT撮影領域が略三角形状を呈するX線CT撮影と、前記X線発生器、前記X線検出器が固定の撮影上の旋回中心の周りを旋回して行うことによって、CT撮影領域が円形状となるX線CT撮影と、のいずれかを選択するX線撮影装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載のX線撮影装置において、
前記CT撮影領域が略三角形状を呈するX線CT撮影と、前記X線発生器、前記X線検出器が顎骨の一部の領域に固定の撮影上の旋回中心をおいて旋回することによって、前記略三角形状のCT撮影領域よりも狭い顎骨の一部の領域のみをX線CT撮影する顎骨局所領域のX線CT撮影と、のいずれかを選択するX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−55683(P2012−55683A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160809(P2011−160809)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】