説明

X線断層撮像装置およびX線断層撮像方法

【課題】X線等を利用した断層撮像方法によって明瞭で正確な再構成画像を、簡単な構成により得る。
【解決手段】載置部へ、回転軸R1を中心線とする所定の頂角θを持つ仮想の円錐(接円錐)50の母線に板厚方向がほぼ直角に接する状態に被検査体3を載置する。続いて、被検査体3が接する接円錐50の頂点と点対称である第1仮想円錐51と、接円錐50上に載置される被検査体3の、断層画像を得ようとする関心部位の最外部位に外接かつ包含し、接円錐と頂角が同じで同軸上に中心軸を持つ第2仮想外接円錐52の、2つの仮想円錐面で挟まれる空間内へ、X線焦点Fの位置を移動機構により移動させる。そして、X線焦点Fと二次元検出器2との間に被検査体3を載置して配置され、X線源から出射されたX線により形成される円錐状ビームの底面の中心と当該X線焦点Fを結ぶ線分と直交する回転軸R1を中心に回転する回転機構を、設定された角度変位で回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等を用いて被検査体の内部構造データを検査するX線断層撮像装置およびX線断層撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の研究開発分野などでは、微小被検査体内部に存在するひび割れや断線等を検査するため非破壊三次元分析が要求されている。その手法の一つとして、X線によるコンピュータ断層撮像装置(以下、「X線断層撮像装置」と称する。)を用いた検査方法がある。
【0003】
X線断層撮像装置は、例えば、X線源(X線管等から構成されるX線発生装置)と、このX線源よりX線焦点を経て被検査体に円錐状(コーンビーム状)に照射されて透過したX線を検出する二次元検出手段を備える。また、二次元検出手段との間に被検査体を載置するとともにX線焦点からこの検出手段の検出面に降ろした垂線に直交する回転軸を備え、設定に基づく角度変位で回転する回転基台部を有する。
【0004】
このようなX線断層撮像装置において、X線源より被検査体にX線を照射し、被検査体の透過X線投影像を二次元検出手段により撮像しディジタル化された各角度位相毎の複数の画像データとして処理する。そして、これら各画像データより内部構造データを再構成することによって、被検査体内部の検査および観察等を行い易くする。このような断層撮像処理を、シングルスキャンコーンビームCT(computerizing [computed] tomography)法ともいう。
【0005】
図1は、工業用の一般的な被検査体、X線管および二次元検出器の配置を示す側面図である。また図2は、図1のX線断層撮像装置における被検査体、回転基台およびX線管の位置関係を示した概略図であり、Aは斜視図、Bは側面図である。
この例では、回転手段としての回転基台4上に載置された被検査体3が、X線管1のX線焦点Fと二次元検出器2との間に配置されている。被検査体3は回転基台4に固定されている。被検査体3として、ICチップや基板等のような偏平薄型(平板状もしくは薄板状)の形状を想定している(図1の例では薄板円筒状である)。例えば15mm角の厚さ2.5mm程度である。なお、被検査体3の主面(面積の大きい面)の大きさ及び厚さの寸法はこの例に限られない。
【0006】
そして、X線管1のX線焦点Fから二次元検出器2の検出面の中心Oに降ろした垂線に直交する回転軸R1を中心に、回転基台4が設定された角度変位で回転するにことにより、被検査体3が所定の角度変位で回転する構成となっている(例えば特許文献1を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2007−101247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、産業用途のX線断層撮像装置では、通常シングルスキャンコーンビームCT法が適用される。つまり、コーン(円錐)ビーム投影は多数のファンビーム投影から成り立っているという考え方に基づいた、Feldkamp等が提案する近似的な3次元CT画像再構成アルゴリズムが採用されている。このシングルスキャンコーンビームCT法を適用したX線断層撮像方法においては、薄板円筒状の被検査体3は、ミッドプレーンMDと平行な面内に載置され、回転軸R1を中心に所定角度毎に回転(旋回)する。ミッドプレーンMDは、X線焦点Fを含み被検査体3の回転軸R1と直交する平面である。
【0009】
図3は、上記のX線断層撮像方法により得られた撮影データを示し、Aはある角度位相における投影像、Bは再構成画像である。測定に使用した被検査体は、円形の薄い3層の銅箔からなる積層構造であって、銅箔間の間隔が3.2mm、全体の厚さが6.4mmである。図1において被検査体3がミッドプレーンMDから離れるにつれて、得られる被検査体3の投影像(断層画像)は徐々に正確性を欠いていく。すなわち、図1,2の姿勢の層状(多層構造)の被検査体3が、X線焦点Fを通り二次元検出器2への垂線を含む平面(ミッドプレーンMD)より高い位置にあったとき、その断層画像は図3Aのように曖昧になる。
【0010】
この現象は、Pierre Grangeatらが提唱するシャドーゾーン(Mathematical Framework of Cone Beam 3D Reconstruction Via The First Derivative of The Radon Transform)によっても説明されてきた。つまり、図4に示すようなシャドーゾーン6に被検査体4が位置する場合に、この現象が生じるというものである。
【0011】
被検査体3が回転するシングルスキャンコーンビームCT方式では、被検査体3の回転軸R1を中心とした半径dOF/2のミッドプレーンMD上の円軌道を周回する同じく半径dOF/2の球(もしくは円)の集合体によって除外される領域がある。この領域がシャドーゾーン6であり、従来、理論的に被検査体3の厳密な再構成計算が不可能な領域であるとされている。円5A,5Bは、シャドーゾーン6の回転軸R1を通る境界域垂直断面を表している。
【0012】
上記のとおり、これまでの方法では、被検査体がシャドーゾーンに入らないように配置した上で被検査体にX線を照射し、投影像を撮影することもあった。しかしながら、シャドーゾーンに入らないように考慮して被検査体を配置して撮像を行うことは煩わしく、効果は判然としなかった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、X線等を利用したコンピュータ断層撮像方法によって明瞭で正確な再構成画像を、簡単な構成により得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、出願人は、再構成計算方法そのものではなく、撮影データが良好でないために明瞭な再構成画像が得られないと考えた。そして、以下の手段により、被検査体3がシャドーゾーンに配置された場合であっても、明瞭な再構成画像が得られる手段を発明した。
すなわち本発明はまず、載置部へ、回転軸を中心線とする所定角度の頂角θを持つ円錐(接円錐)の母線に板厚方向がほぼ直角に接する状態に被検査体を載置する。次に、前記被検査体が接する接円錐の頂点と点対称である第1仮想円錐と、前記接円錐上に載置される被検査体の、断層画像を得ようとする関心部位の最外部位に外接かつ包含し、前記接円錐と頂角が同じで同軸上に中心軸を持つ第2仮想外接円錐の、2つの仮想円錐面で挟まれる空間内へ、X線源のX線焦点の位置を移動機構により移動させる。
続いて、前記X線源のX線焦点と二次元検出器との間に前記被検査体を載置して配置され、前記X線源から出射されたX線により形成される円錐状ビームの底面の中心と当該X線焦点を結ぶ線分と直交する回転軸を中心に回転する回転機構を、設定された角度変位で回転させる。そして、各角度位相毎に撮像された投影像より前記被検査体の内部構造データを再構成する。
【0015】
上記構成によれば、回転軸に対して被検査体の主面が垂直とならないように所定の傾きをつけて把持するようにしている。このとき、被検査体が接する仮想の接円錐の頂点と点対称である第1仮想円錐と、接円錐上に載置される被検査体の、断層画像を得ようとする関心部位の最外部位に外接かつ包含し、該接円錐と頂角が同じで同軸上に中心軸を持つ第2仮想外接円錐を想定する。これら2つの仮想円錐面で挟まれる空間内へ、X線源のX線焦点の位置を移動させて、設定された角度位相の投影像を撮像している。
【0016】
これにより、被検査体の関心部位に対するX線焦点の幾何学的座標が、被検査体3の関心部位の表裏両面方向を回転に従って交替的に透視観察できる位置関係となる。また、薄型の被検査体を無源の平面の一部としたとき、被検査体が360度旋回中にその平面がX線焦点と1回以上交わる。したがって、再構成データ得るのに好適である、関心部位の良好な投影データを収集することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、X線等を利用したコンピュータ断層撮像方法によって明瞭で正確な再構成画像を、簡単な構成により得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順に行うとする。
1.第1の実施の形態(第1及び第2仮想円錐とX線焦点の位置)
2.第2の実施の形態(載置部:スイベルステージ)
【0019】
<1.第1の実施の形態>
[X線断層撮像装置の構成]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るX線断層撮像装置について説明する。
図5は、X線断層撮像装置の構成を示した概略側面図である。図6は、被検査体、回転基台およびX線管の位置関係を示す模式図である。図7は、シャドーゾーンと被検査体の位置関係を示す模式図である。図5〜図7において、図1〜図4と対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明を割愛する。
【0020】
X線断層撮像装置は、振動除去機能を備えた定盤40に、X線管1、二次元検出器2、該二次元検出器2のZ軸方向(L31)の直動機構31、回転機構32などが載置されている。X線管1と回転機構32は、レール41に沿って定盤40の主面上を移動可能であり、X線管1については直動機構42によってY軸方向にさらに精細な位置決めを可能にしている。また二次元検出器2は、レール43に沿って定盤40の主面上を移動可能になっている。なお、本実施の形態で用いられるX線断層撮像装置は、シングルスキャンコーンビームCTであればよく、この例に限られるものではない。
【0021】
X線管1は、例えば開放型のX線管1を使用しており、図示しないターゲット上のX線焦点Fを頂点とし、その中心軸(X線により形成される円錐の中心軸)が図示しないカソードから放出される電子流と略同軸(光軸主線方向)上にある円錐形状に照射野を形成する。また、X線管1本体は、前部筐体1bと後部筐体1cがヒンジ15により連結された構成とされている。X線焦点F近傍のL字状ブラケット17とX線管1の重量重心1dの直下かつブラケット17水平面上に設けられたVブロック18とによって定盤40上に支持されている。L字状ブラケット17の水平部分とその下側に配置された下部プレート16により二重プレート機構を構成している。
【0022】
また、Vブロック18はブラケット17上の回動支点21を軸に回動可能なVブロック受け台20に弾性体19を介して載置される。このようにブラケット17と重心1dの直下にVブロック18を置くことにより、X線管1のカソード(図示略)の位置出しが容易となる。そればかりでなく、ヒンジ15による連結を解除し真空を解除してカソードを交換する際、X線管1の後部筐体1cを弾性力で支持するので、カソード座標調整などの精密な機械作業が水平置の姿勢でも容易となる。X線管1本体連結部のヒンジ15の回転軸とVブロック受け台20の回動支点21は略同軸上に配置されている。
【0023】
このX線管1から被検査体3全体にX線を照射し、この被検査体3の透過X線を、二次元検出手段として機能する二次元検出器2で検出し投影像を得る。ターゲットおよびカソードについては、一例として本出願人が先に出願した特開2006−258668号公報(図10等)を参照されたい。
【0024】
X線管1から照射されるX線は、例えば焦点サイズ約1μm以下の極小のX線焦点F(マイクロフォーカス)を形成するよう構成されている。X線の焦点サイズは、X線断層撮像装置の分解能を決定する大きな要素であるため、この数値が小さいほど、より被検査体内部の微少サイズの損傷等を観察することができ好ましい。
【0025】
二次元検出器2は、例えばフラットパネルディテクタ(FPD)より構成され、X線管1のX線焦点Fから下ろした線分が二次元検出器2のほぼ中心に照射されるよう、二次元検出器2の直動機構により、左右上下(XYZ方向)の位置を調整できる。
【0026】
FPDについては、一例として特開平6−342098号公報(以下、「文献1」という。)に開示されているようなものがある。このFPDは、被写体を透過したX線を光導電層で吸収してX線強度に応じた電荷を発生させ、その電荷量を画素毎に検知するものである。文献1に開示された方式のFPDでは、X線量を画素毎の電荷量に直接変換するため、FPDでの鮮鋭性の劣化が少なく、鮮鋭性に優れた画像が得られる。その他の方式のFPDの例としては、例えば特開平9−90048号公報に開示されているように、X線を増感紙等の蛍光体層に吸収させて蛍光を発生させ、その蛍光の強度を光電変換素子で検知するものなどがある。蛍光の検知手段としては他に、CCD(Charge Coupled Devices)やC−MOS(Complementary-Metal OXide Semiconductor)センサを用いる方法などもある。本例の二次元検出器2は、被検査体3の透過X線を検出し画素毎に処理して画像信号を得られるものであればよい。
【0027】
回転基台4は、回転機構32の一構成要素であり、被検査体3を載置しながら図示しない回転機構32直下の回転手段の駆動力により被検査体3を回転させる。X線焦点Fから出射された円錐状のビーム10の中心線(光軸主線)は、回転中心を通り二次元検出器2の検出面とほぼ直交する。
【0028】
本実施の形態では、薄板状の被検査体3の回転軸R1(Z軸)と当該被検査体3の主面が垂直にならないようにして、被検査体3を回転基台4の載置部4a上に把持している。すなわち、被検査体3の回転軸R1と中心線を等しくする仮想円錐(後述する図8,図9参照)の円錐面に接するような角度に被検査体3を載置(把持)する。被検査体3は、回転軸R1を中心線として所定頂角を持つ仮想円錐の円錐面を接面とした状態に載置される。仮想円錐の頂点は、主面の接面である円錐面と回転軸R1との交点である。
【0029】
シャドーゾーン6の領域は、図7に示すように、X線焦点Fと交わり被検査体3の回転軸R1と直交するミッドプレーンMD上に中心があり、X線焦点Fと回転軸R1との距離(dOF)と同じ直径で、ミッドプレーンMDと同様にX線焦点Fと交わる円5A,5Bが回転軸R1の周りを旋回して描かれる立体によって除外される領域に相当する。
【0030】
[被検査体の姿勢及び軌跡]
次に、図8及び図9を参照して被検査体3の姿勢及び該姿勢による軌跡を説明する。
図8は、被検査体の姿勢を示し、AはX線管1側から二次元検出器2を見た場合の概略斜視図であり、Bは二次元検出器2側からX線管1を見た場合の概略斜視図である。図9は、図8A,8Bの第1仮想円錐および第2仮想円錐を、回転軸R1を通る面で切断した断面図である。
【0031】
既述のとおり、X線断層撮像装置は、X線管1のX線焦点Fと二次元検出器2との間に配置された回転基台4(例えば図6参照)を備える。回転基台4は、被検査体3を載置してX線管1から出射されたX線により形成される円錐の底面の中心とX線焦点Fを結ぶ線分とほぼ直角な回転軸R1を中心に、設定された角度変位で回転する機能を有する。さらに、必要性に応じて収納ケース7に入れた被検査体3を回転軸R1に対し、その回転軸R1を中心線とする所定角度の頂角を持つ円錐(接円錐50)の円錐面に、薄板状の厚さ方向の面(主面3A)がほぼ直角に接する状態に載置する載置部4a(図6参照)を備える。
【0032】
そして図8B,図9に示すような、被検査体3が接する接円錐50の頂点53と点対称である第1仮想円錐51と、接円錐50上に仮想的に載置される被検査体3の、断層画像を得ようとする関心部位(R.O.I:Region of interest)の最外部位(主面3B)に外接かつ包含する第2仮想円錐52を想定する。接円錐50の円錐面は、被検査体3が回転したときの、載置台4aに載置された被検査体3の下側の主面3Aによって生成される軌跡である。
【0033】
第2仮想円錐52は、接円錐50と頂角θが同じで、ほぼ同軸上(回転軸R1)に中心軸を持つ。本願発明は、X線焦点Fの位置を、この第1仮想円錐51と第2仮想円錐52(2つの仮想円錐の円錐面が無限の大きさであると仮定したとき)の両者に挟まれる空間内に限定するようにしたものである。すなわち、2次元表示の図9において、第1仮想円錐51の母線51Aの延長線と第2仮想円錐52の母線52Aの延長線に挟まれた領域(斜線部)が該当する。
【0034】
回転機構32には例えば空気軸受けを搭載し、またX線管1はZ軸方向(L33)とY軸方向(L42)の2方向に移動してX線焦点Fを移動させる直動機構33、42を有する。これら直動機構31、回転機構32および直動機構33、42の移動機構は、周知の技術であるから詳細説明を割愛する。なお、第1仮想円錐51の頂角の角度θは、後に説明するが100°≦θ≦150°であることが好ましい。
【0035】
回転軸R1に対して第1仮想円錐51の円錐面に接するように被検査体3が把持されれば、その関心部位(R.O.I)に対するX線焦点の幾何学的座標が、被検査体3の関心部位の表裏両面方向を回転に従って交替的に透視観察できる位置関係となる。故に、正確な非破壊断層画像を得る為に好適な投影データを収集することが可能となる。また関心部位平面上に凝集する吸収係数の高い特定部位(例えばBGA(Ball Grid Array)のボール状電気的接合部など)を分離的に個々に透視する多くの角度位相の投影データも取得できる。それによって、X線の透過率が低くなることで生じる不正確な投影データを減少させる効果がある。言い換えれば相対的に弱い強度のX線であっても、良好なコントラストの投影データを数多く収集することが可能となる。
【0036】
このように、第1仮想円錐51の円錐面に接するような角度に被検査体3を載置し、かつ、被検査体3とX線焦点Fの位置関係(図9参照)に留意することにより、ミッドプレーンMDを離れた被検査体3の関心部位(R.O.I)の正確な非破壊検査が可能になる。なお、被検査体3は複数であってもよい。
【0037】
[変形例1:被検査体及び二次元検出器の位置]
ここで、図10を参照して、被検査体3とX線焦点Fとの位置関係について説明する。図10は、被検査体3とX線焦点Fとのより好ましい位置関係を説明するための図である。“Φ”はX線焦点Fから二次元検出器2に降ろした垂線Lと、X線焦点Fと二次元検出器2の回転軸R1(Z軸)方向の中心の画素列とを回転軸R1を含む面内で結ぶ線分とのなす角度である。
【0038】
図10において、被検査体3は薄板状であり、その長手方向が接円錐の母線の方向と一致している。ここで、被検査体3を、X線焦点Fから回転軸R1へ降ろした垂線Lを含むミッドプレーンMDと交差する位置(接円錐50−1上)に載置し、X線焦点Fから接円錐50−1の円錐面に引いた直線が接する位置まで旋回して撮像することを想定する。この場合、この高さで被検査体3が円錐面に接している時、被検査体3を後述するような主面3A,3Bが一直線の投影になるように透過する際のX線が被検査体3の図24で示した吸収係数の高い、例えば半田ボール91のような物質を数多く(この例では6個)透過せねばならない短手方向からとなり、X線の減弱が大きすぎて二次元検出器2で取得する投影像に十分なコントラストが得られない場合がある。
【0039】
このような被検査体3に対しては、被検査体3を回転機構32に付随した図示しない直動機構によって接円錐50−2の位置まで上昇させ、移動後の被検査体3の投影像が検出面に入るよう二次元検出器2もP1からP2の位置へ上昇させる。こうすることにより、被検査体3の、後述するような主面3A、或いは主面3Bが一直線の投影になるように透過する際のX線が図24で示した長手方向(3個)であり、被検査体3の投影像を十分なコントラストで得ることができる。
【0040】
上述したように被検査体3を上昇させる場合、その上昇距離には好適な条件がある。X線焦点Fから回転軸R1に降ろした垂線Lとほぼ直交し、その垂線Lを含み回転軸R1と直交する平面(ミッドプレーンMD)と、二次元検出器2の検出面の縦方向画素列の中心を通る横方向画素列が重なる位置(中心O)を検出面の原点とする。被検査体3が図示しない駆動系によりミッドプレーンMDと垂直かつ直線的に移動可能であるとき、X線焦点Fと移動後の検出面の当該横方向画素列を含む平面AとミッドプレーンMDのなす角度Φが、(π−θ)/2近傍となる移動距離を有することが必要である。すなわち、X線焦点Fが図9に示す領域にあるためには、角度Φが接円錐の傾斜角α未満である必要は有るが、段落0038の事由により、被検査体の物質構成などを考慮すると、前記移動距離を有効活用し得る場合がある。δは二次元検出器2の検出面の縦方向の長さの上半分の寸法を表す。
【0041】
なお、二次元検出器2の検出面に被検査体3の透過X線像が投影されればよいので、当該横方向画素列は縦方向画素列の中心でなくてもよい(中心Oが含まれていなくてもよい)。また、角度Φを大きくする補助のために、X線管1をミッドプレーンMDと直角(回転軸R1と並行)な方向に移動させ、図9に示した斜線部の領域でX線焦点Fの座標を微小量変更するようにしてもよい。
【0042】
[測定結果]
次に、本実施の形態に係るX線断層撮像装置で被検査体を撮像したときの測定結果を示す。測定には、図3の測定データを得る際に使用した被検査体と同じ銅箔と樹脂板の積層構造のものを使用し、測定時の撮像緒元は、以下のとおりである。
被検査体:銅箔3層構造 直径8mm
c:660mm
d:44mm
e:11.5mm
Φ=15度
【0043】
図11は、撮像時のX線管1(X線焦点F)、二次元検出器2及び接円錐50(頂点53)の各々の座標空間(立体図)を示している。“β”は被検査体3を回転軸R1(Z軸)中心にXY平面内で旋回して、XYZ座標空間からX´Y´Z座標空間としたときの旋回角度である。“α”は被検査体3をX´軸中心にY´Z平面内で旋回して、X´Y´Z座標空間からX´Y´´Z´座標空間へと移動する際の旋回角度であり、被検査体3の傾斜角である。“d”はX線焦点Fと回転軸R1(Z軸)との距離(dOF)である。また、“e”はX線焦点Fから二次元検出器2に降ろした垂線と接円錐50の頂点53との距離である。
【0044】
図12は、図9及び図10に示した撮像方法に従って実際に撮像した被検査体の投影像であって、接円錐の傾斜角αが15度(頂角θ=150度)のときの各角度位相の投影像を示している。これらの投影像は、図10のように載置した被検査体を360度旋回させて撮像した投影像のうち、旋回角βが0°,6°,12°,18°,45°,90°,180°,240°,315°,346°のものを抜粋している。初期位置(β=0°)は、被検査体3が接円錐と接する母線がYZ平面に概略含まれるときとしている。図13は、図12に示した条件での各角度位相の投影像を再構成して得られる内部構造データ(再構成画像)であり、AはX軸断面、BはY軸断面を示している。なお、Y軸断面も再構成画面を15度傾ければ、X軸断面画像と同様に水平になる。
【0045】
測定に使用した被検査体は、銅箔間の間隔が3.2mm、全体の厚さが6.4mmの積層構造である(図13A)。本発明によれば、測定に使用する被検査体の内部構造が、吸収係数の差が顕著で単純な積層構造である場合、図13に示す如き明瞭な再構成結果が得られる。被検査体3は360度一回転しても投影像の変化が少ない、図3Bに示した楕円形のような投影像と異なり再構成計算結果にボケが見られない。
【0046】
回転軸R1を中心に旋回する被検査体3の角度位相ごとの抜粋された投影像の中で、
β=12°の投影の銅箔3枚中の真中の銅箔と、β=346°の投影の真中の銅箔がそれぞれ一番細い線で見えている。このことは、これらの細い線状に見える銅箔が無限の大きさの平面の一部であったと仮定したとき、その無限の大きさの平面は、被検査体3が360度旋回する間、X線焦点Fと各々2回(β=12°,346°)、交わることを意味している。被検査体3の主面3Aと主面3Bで挟まれた中央(真中)の面が一直線の投影になるようにX線が透過している状態である。図8に、このとき被検査体3(銅箔)を含む無限の大きさの平面を投影したと想定したときのほぼ直線状の投影像Imと、X軸とその投影像Imとの角度γを示している。
【0047】
さらに、被検査体3の接する接円錐50の傾斜角が他の値である場合についても測定している。
【0048】
図14は、接円錐50の傾斜角αが30度(頂角θ=120度)のときの各角度位相の投影像を示している。これらの投影像は、被検査体を360度旋回させて撮像した投影像のうち、旋回角βが0°,30°,62°,90°,180°,270°,295.5°,315°のものを抜粋している。図15は、図14に示した条件での各角度位相の投影像を再構成して得られる内部構造データ(再構成画像)であり、AはX軸断面、BはY軸断面を示している。なお、Y軸断面も再構成画面を30度傾ければ、X軸断面画像と同様に水平になる。
【0049】
図14,図15に示した例では、回転軸R1を中心に旋回する被検査体3の角度位相ごとの抜粋された投影像の中で、β=62°の投影の銅箔3枚中の真中の銅箔と、β=295.5°の投影の真中の銅箔がそれぞれ一番細い線で見えている。
【0050】
図16は、接円錐50の傾斜角αが40度(頂角θ=100度)のときの各角度位相の投影像を示している。これらの投影像は、被検査体を360度旋回させて撮像した投影像のうち、旋回角βが0°,45°,72°,90°,180°,270°,288°,315°のものを抜粋している。図17は、図16に示した条件での各角度位相の投影像を再構成して得られる内部構造データ(再構成画像)であり、AはX軸断面、BはY軸断面を示している。なお、Y軸断面も再構成画面を40度傾ければ、X軸断面画像と同様に水平になる。
【0051】
図16,図17に示した例では、回転軸R1を中心に旋回する被検査体3の角度位相ごとの抜粋された投影像の中で、β=72°の投影の銅箔3枚中の真中の銅箔と、β=288°の投影の真中の銅箔がそれぞれ一番細い線で見えている。
【0052】
実験では、頂角θが100度より小さく又は150度より大きくなるにつれ、再構成画像の明瞭の度合いが落ちていた。
【0053】
[測定結果の考察]
本発明の撮像方法を適用して薄型の被検査体を撮像した場合は、X線焦点Fと2回交わるが、少なくとも1回交差すれば検査に十分な再構成計算結果を得られる。これに対し、第1仮想円錐51と第2仮想円錐52の2種の仮想円錐で挟まれる空間(図9斜線部)の外にX線焦点Fが存在する場合は、銅箔を含んだ無限大きさの平面は、360度旋回してもX線焦点Fと、交わることがない。
【0054】
Pierre Grangeatらの論文「Mathematical Framework of Cone Beam 3D Reconstruction Via The First Derivative of Radon Transform」では、直交型CT装置と呼ばれる図5に示す様な産業用X線CT装置特有の構造に対して提案されたものではなかった。つまり、医療用X線CT装置の如く、X線焦点と二次元検出器が被検査体の周りを周回する構造を念頭に置き、再構成計算が可能な条件として、X線焦点が描く軌道が被検査体のある断面と交差するのであれば、その断面に沿った再構成計算が可能と論じている。この必要条件を上述した如き、被検査体が旋回する産業用X線CT装置に当てはめると、上記無限の大きさの平面が少なくとも一回X線焦点と交差することと等しい。
【0055】
しかしながら、上記論文では、産業用X線CT装置において、検査対象が被検査体3のような薄板積層構造のとき、どのような幾何学的条件が満たされれば再構成計算が可能な条件が満足されるかまでは議論されていなかった。薄板の積層構造の被検査体の例としては、例えば非破壊検査を必要とするBGA基板や多層基板のようなデバイス、或いは携帯電話端末に内挿されるような基板に特化したものなど、種々の例が挙げられる。
【0056】
図6に示した撮像姿勢で得られた投影像が上述した図12,14,16で示されているわけであるが、被検査体3の姿勢が従来の場合(図4参照)と異なっている。すなわち、従来の被検査体3の姿勢は回転軸R1に垂直であったが、本発明の撮像方法では回転軸R1に対し傾斜している。今回測定した撮像諸元の通りで、かつ薄板状の被検査体3がシャドーゾーン6(図7参照)にあっても、図13,15,17の如く明瞭な再構成結果が得られている。
【0057】
このことは、人体のように球や卵型の検査部位が独立して点在している被検査体と同一基準で、薄板状の被検査体を議論することが不適当であり、実用性に欠けることを示している。そして、必ずしも被検査体3のような吸収係数の差が顕著で単純な積層構造の被検査体ばかりでなく、BGA基板のように球形の吸収係数の高い物質が、多数個整列して一平面を形成しているような検査体にも、本発明の撮像概念は適用可能である。なおBGA基板に撮像を実施した測定結果については後述する。
【0058】
再構成計算は、例えばFeldkamp等の再構成アルゴリズムに従ってフィルター補正逆投影法や、畳み込み逆投影法(コンボリューション&バックプロジェクション法)を適用することで実現できる。概ね全ての産業用デバイスが該当する、被検査体の関心部位についての断面矩形形状の縦横比が1対5より薄型の被検査体へ逆投影法を用いる場合、特開2006−214879号公報(先願1)に記載された技術を用いてもよい。この先願1に記載された技術は、角度位相により角度変位に対する投影像の変化が顕著な被検査体を撮像する場合、角度変位に対する投影像の変化が大きい角度位相でのみ回転手段の角度変位を小さく設定して、投影像を収集するものである。被検査体の内部断層画像を特徴づける角度位相の投影データを取得することは詳細な観察を行う上で重要である。それは本発明の撮像概念の場合、図12に示した被検査体の旋回角が12度近傍と346度近傍の投影データが該当する。これらの投影像から、人間の視覚或いは認識力で、被検査体の内部が3枚の吸収係数が高い平面で構成されていることが容易に理解できる。
【0059】
さらに上記12度近傍と346度近傍の投影像と両者の中間の180度近傍の投影データを比較してみる。そうすると撮像の角度ピッチが等間隔な本発明の撮像方法の、前者(12度近傍と346度近傍)における一ステップあたりの投影像の変化率が、後者(175度近傍)より緩やかなことが確認できる。つまり、本発明の撮像概念を適用すれば、等角度ピッチの撮像でありながら、先願1の概念と同じ効果が得られる。
【0060】
[効果の証明]
図11のX線焦点Fを原点とした直交座標空間XYZを、図10の距離d,e移動させた後、Z軸中心に角度β回転させ次にX´軸中心に角度α回転させた新たな座標空間X´Y´´Z´のX´Y´´平面は接円錐50−2に接する。以上の座標変換は以下の式(1)に表わされる。
【数1】

【0061】
式(1)の計算結果の4行目を無視した第一列と二列に座標変換後のX´軸、Y´´軸に対応した単位ベクトルが示されている。数値解析すべき事柄はX´Y´´平面と図11より限定されるので、式(1)を駆使して移動距離(位置)を考慮した式(2)、角度のみを考慮して数値解析する式(4)を導くことができる。
【0062】
新たな座標空間のX´Y´´平面が原座標空間の原点(X線焦点F)を通る平面である条件、すなわちX´Y´´平面が再構成計算可能な条件は、以下の式(2)でx=y=z=0としたとき角度βの解が得られる範囲であると言い換えられる。
【数2】

【0063】
式(2)は媒介変数t、sにどのような数値を入れても座標変換後の原座標空間から見たX´Y´´平面上の点になる。そして、式(2)の媒介変数tとsによって表わされるX´Y´´平面がX線焦点Fを通過するときの旋回角度βは、式(2)の左辺にx=y=z=0を代入しtとsを消去して
【数3】

で表される。
式(3)の{ }内が1以下ならβの解が存在する。
【0064】
また以下の式(4)より、tとsを消去し式(5)を得る。すなわち、上記同様に、角度だけを議論する式(4)では、二次元検出器2の検出面と平行な原座標空間のXZ平面とX´Y´´平面がなす角度を吟味する必要が有る。そこで式(1)が4行4列の計算ではなく移動を含まない3行3列の計算だったとし、さらにXZ平面上の直線の方程式を導くため、式(4)において左辺のyのみゼロとして媒介変数tとsを消去した結果、xとzの関係式すなわち角度γを計算する式(5)式が導かれる。
【0065】
そして式(5)に式(3)で得られた角度βを代入することにより、X線焦点Fを通過する瞬間に二次元検出器2(原座標空間XZ平面と平行な平面)へ直線状に投影されるX´Y´´平面(投影像Im)の角度γが計算される。
【数4】

【数5】

【0066】
式(5)に例えば図12の測定データを得たときの撮像諸元を代入すると、旋回角度βが12度近傍及び346近傍で角度γの変化する瞬間的変化率は、角度βが180度近傍の変化率の20%程であって、十分緩やかなことが証明される。
【0067】
[変形例2:被検査体が大きい場合]
次に、被検査体3が大きく、接円錐50の中心軸R1と交差して載置された場合の本発明の撮像概念について説明する。
【0068】
図18は、被検査体が大きい場合における撮像概念を説明するための模式図である。第2仮想円錐52は、被検査体3が各円錐の中心軸(回転軸R1)を含む面で切断され、接円錐50と接しない部分が存在しないものと仮定し、図18側面図のように示される。またその側面図に被検査体3の部分断面を示しているが、この部分断面は非破壊検査の分野でいう関心部位である。
【0069】
この図18は、大きな被検査体3を接円錐50の中心軸と交差するように載置したときの状態を示している。被検査体3が接している接円錐50の母線と中心軸の両方を含む面と直交し、且つ中心軸を含む面で切断された、第1仮想円錐51側に含まれる部分を削除した残りの関心部位を包含し、かつ外接する第2仮想円錐52と第1仮想円錐51の両方の円錐面によって挟まれる空間に、X線焦点Fが配置されている。
【0070】
図18では、被検査体3の関心部位の矩形の奥行(図10の短手方向の長さt)がほとんど無いものとして、第2仮想円錐52を作図してある。再構成計算が可能な空間である円筒形再構成計算領域61を薄板状の被検査体3が専有する割合がもっとも高く、スペース効率の良い載置形式は、当該円筒形再構成計算領域61の中心軸を含む矩形断面(側面図)の対角線にほぼ沿う形で載置することである。このようにすることで、二次元検出器2によって取得した投影像のミッドプレーンMDより±5度以上離れたデータも含め、ほぼ100%を再構成計算に有効活用することに繋がる。
【0071】
再構成計算中心を算出する手段は周知のサイノグラムによる方法などでは、精度不足であり、二次元検出器2の画素サイズの10%未満の誤差範囲が好ましいので、特開2005−37193号公報(先願2)に記載の概念を利用するとよい。先願2に記載した技術では、まず角度変位毎に撮像された被検査体の投影像のある1ライン分の画素データから、回転中心軸ずれ量を再構成計算時のパラメータとして変化させながら再構成計算を行って断面画像を算出する。そして、断面画像の鮮鋭度が最大となるときの回転中心軸ずれ量を最適回転中心軸ずれ量と特定し、この最適回転中心軸ずれ量の値に基づき補正を行い、鮮明な被検査体の内部構造データの再構成計算を可能としている。
【0072】
図12等の撮像では、画素サイズ50μmのCMOSタイプの二次元検出器を使用しており、投影像の拡大率が約15倍である。故に、画素サイズの10%未満の中心軸算出精度を求める場合、少なくとも被検査体の回転精度が0.3μm未満であるべきで、図5の回転機構32には空気軸受け等の高精度なものが不可欠となる。
【0073】
三角法で描かれた図18の二次元検出器2は、検出面の横が長さ“a”、縦が長さ“b”であり、縦方向の端面がミッドプレーンMDと接する形で描いたが、以下に述べる式(6)は、二次元検出器2とミッドプレーンMDが接する範囲まで成立する。
【0074】
X線焦点Fと二次元検出器2までの距離を“c”とすると、円筒形再構成計算領域61で表される空間が、投影像を撮像後に再構成計算が可能な領域である。被検査体3がその周りを旋回する回転軸R1を中心とした円筒形再構成計算領域61の半径を“r”、高さを“h”とすると、対角線の角度は式(6)で表される。
【数6】

【0075】
上記式(6)の[ ]の中は
【数7】

で表される関数と考えられる。この場合、x>0ではf(x)の最大値が1であり、a/(2*c)が大きくなるにつれ、限りなくゼロに近づく関数と考えることができる。
【0076】
仮に式(6)へ、二次元検出器2の検出面が120mm×120mmの正方形であって、長さcが400mmと産業用X線CT装置の一般的な数値を入力してみると、
h/2r=0.872773891
となる。
【0077】
【数8】

【0078】
そして式(8)から、被検査体3を載置する接円錐50の頂角θは約100度という結果が得られる。特開2005−37158号公報(先願3)に表された横長の仮想検出器が得られる場合は、頂角θは、より大きくなる方向へ向かい高さhは減少する。薄いとはいえ、被検査体3にも厚さはあるから、極端に高さhが減少すると円筒形再構成計算領域61自体が減少するので、先願3に記載の手段を用いることは好ましいが限界がある。接円錐50の頂角θが150度を超える領域では、図24の半田ボール(BGA)などが分離的に投影されず、不要なアーチファクトを増大させる懸念がある。接円錐50の頂角θが100°より小さい領域では、図16の72°や288°の投影に相当する旋回角近傍での角度ピッチ毎の変化率が高く、本発明の撮像概念の効果は半減する。
【0079】
また図18では、二次元検出器2の端面がミッドプレーンMDに接するとした。この場合、端面がミッドプレーンMDより離れて、図10の二次元検出器2の位置へ向かう場合は、図18の円筒形再構成領域61の高さhが、徐々に減じられる方向にあって、その場合も上記接円錐50の頂角は大きくなる傾向へ向かう。
【0080】
図10のように、二次元検出器2の端面がミッドプレーンMDからZ軸方向へ距離δだけ離れた場合は、以下の式(9)により頂角θを算出する。
【数9】

【0081】
式(6)及び式(9)はいずれも、X線焦点Fから回転軸R1までの距離dとは無関係である。ここで被検査体3の接円錐の頂角が0度であったとき、すなわち被検査体3の長手方向が垂直な姿勢で載置された場合を想定する。この場合、図16の72°や288°の投影に相当する旋回角近傍で、図24に示した被検査体3の短手方向に沿ってX線を透過させることになる。その結果、投影データのコントラストが極端に暗い部分と、極端に明るい部分の二極化を招く。しかも先願1に記載した概念を用いない限り、重要な角度位相の情報を粗い角度ピッチで撮像しなければならない。
【0082】
なお、開放型X線管1の先端が十分細く被検査体3の旋回に支障がないのであれば、X線焦点Fの位置は、被検査体3により近いX線焦点F´の位置であってもよく、被検査体3の投影の拡大率を向上させることが可能である。
【0083】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、被検査体の把持手段である載置部にスイベルステージを利用した構成としたものである。
図19は、被検査体を載置する機構の一例として、回転機構32(図5参照)の回転軸部74先端に直結される樹脂製のスイベルステージ70を示している。スイベルステージ(ゴニオステージとも呼ばれる。)は、仮想の回転中心があり、そこを中心に円弧を描いて動く機構である。この例では、スイベルステージ70の回転中心は回転軸R1上にある。角度θは接円錐の頂角の角度である。
【0084】
本例のスイベルステージ70は、例えば回転軸部74と直結して固定された第1ステージ71と、第1ステージ71上面に形成された円弧(凹部)と同様の円弧(凸部)が形成され第1ステージ71上を自由に旋回できる第2ステージ72と、被検査体3を把持する把持部73よりなる。なお、回転軸部74も樹脂製とすることが望ましい。
【0085】
図19において、第1仮想円錐の母線75は、薄板状の被検査体3の下面(主面3A)と接する接円錐(接円錐50に相当)の頂点と対称な仮想円錐(第1仮想円錐51に相当)の母線である。第2仮想円錐の母線76は、接円錐と頂角および中心軸が同じで、円錐面が被検査体3の上面のもっとも高い部分(最外部位)と外接かつ包含する仮想円錐(第2仮想円錐に相当)の母線である。第3仮想円錐の母線77は、被検査体3の回転軸R1を含む断面の回転軌跡と外接する仮想円錐の母線である。また、Mは被検査体3の短手方向の長さ、mは被検査体3の短手方向において接円錐50に接した母線から突出している長さである。また、Nは被検査体3の長手方向の長さ、nは被検査体3の長手方向において接円錐50に接した母線に沿って頂点から突出している長さである。
【0086】
被検査体3の把持手段としてスイベルステージ70を使用することにより、図示しないつまみ部を回して上記仮想の回転中心を回転軸として微細な角度調整が可能である。また、スイベルステージを樹脂材料で形成することにより、X線の透過量が増え、二次元検出器2において良好な投影像を得ることができる。このスイベルステージ70によって把持された被検査体3は、接円錐の頂角θが約100度〜150度の仮想円錐(接円錐50)に接しながら被検査体3の回転軸R1を中心に所定角度毎に回転(旋回)する。
【0087】
図19に示すような被検査体3が回転軸R1と交差する大きさである場合、被検査体3の下面と接する接円錐と第2仮想円錐の中心軸方向のギャップεは、式(10)により計算することができる。但し、被検査体3の傾斜角α=(π−θ)/2である。
【数10】

【0088】
被検査体3を載置したら、予め計測した図19の各撮像諸元よりギャップεを算出し、X線焦点Fの座標を決定することでもよい。被検査体3の平面度が十分高ければ、第2仮想円錐の円錐面と、被検査体3の端面(側面部)が旋回と共に描く台形軌跡TLと、第3仮想円錐の円錐面(母線77)とで挟まれる斜線で示された空間も、再構成計算が可能なX線焦点の領域として利用できる。
【0089】
[X線断層撮像装置のブロック構成]
図20は、本発明のX線断層撮像装置のブロック構成の一例を示すものである。
X線管1は、上述したように回転基台4上に載置された被検査体3に対してX線を照射するものである。このとき照射されるX線の強度、線質等は、X線制御手段であるX線制御部94を通じて制御部95により制御される。また制御部95の制御の下、機構駆動部91から供給される駆動信号に基づいて直動機構33、42が駆動することによりX線管1の位置が決定される。
【0090】
上記被検査体3を載置する回転基台4の位置(高さ方向含む)、回転角度変位、初期角度位相等は、回転基台4の位置及び動きを制御する機構制御手段として機能する機構駆動部92を通じて、制御部95により制御される。被検査体3は、制御部95からの制御信号により回転基台4の回転に伴い指定された角度変位で回転され、その投影像は二次元検出器2により撮像される。
【0091】
二次元検出器2は、制御部95の制御の下、機構駆動部93から供給される駆動信号に基づいて直動機構31が駆動することにより、XYZ軸方向への移動が制御される。また二次元検出器2に回転機構を設け、Z軸方向に平行な回転軸を中心に回転(傾斜)させるようにしてもよい。
【0092】
制御部95は、制御手段の一例であり、例えば、キーボード等の入力手段及びGUI(Graphical User Interface)の画面や被写体像の再構成結果等を表示する表示手段が接続されたコンピュータが適用される。コンピュータに搭載されたプロセッサ(演算処理装置)が、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ(図示略)に格納されたプログラムに従い、後述するX線断層撮像処理の演算・制御等を行う。また、コンピュータは、X線管1より出射されるX線のX線強度等の情報を表示手段に表示させたり、入力手段を介して入力された操作信号に基づいてX線制御部94に対して制御指令を出力したりする。二次元検出器2の直動機構31、X線管1の直動機構33、42に対して被検査体3を再構成するための適切な位置出しの指令を出力するなどする。
【0093】
被検査体3を透過したX線は、二次元検出器2で捕獲され検出される。二次元検出器2は、検出したX線の情報である投影像を投影像記憶手段としての投影像記憶部96に供給する。この投影像は、制御部95からの指示により、ディジタル化された投影データとして撮像時の緒言及び角度位相と対応づけて投影像記憶部96に保存される。投影像記憶部96は、投影データを記録できる容量を有するものであればよく、大容量の磁気記録装置等、光記録媒体や半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体などを含め、さまざまなものを適用することができる。また、二次元検出器2から供給された投影データを、撮像時の角度位相や角度変位、初期角度位相、X線強度等の情報と対応づけて投影像記憶部96に保存してもよい。
【0094】
そして、投影像記憶部96に記憶された投影データは、これと接続された再構成手段として機能する再構成計算部97に供給される。再構成計算部97は再構成計算を実行するためのコンピュータであり、入力された投影データより被検査体3の内部構造データを再構成計算する。再構成された内部構造データ(再構成データ)は、投影像記憶部96あるいは他の記録媒体に記憶されるとともに、図示しない表示メモリを介して表示手段である表示装置98に入力され。画面に表示される。
【0095】
なお、再構成計算部97は、入力される投影データを収集して内部構造データを再構成できる演算処理能力があればよく、制御部95で示した制御手段と共用でもよい。また、表示装置98は制御部95と接続された表示手段と共用であってもよい。
【0096】
以上のような構成により、被検査体3の内部構造データが表示装置98に得られ、被検査体3の内部構造が表示される。オペレータ(作業者)は、表示装置98に表示された内部構造により、多層膜板や微小な電子部品素子等の被検査体内部のひび割れや断線など、欠陥の有無及びその状態を視覚的に確認することができる。
【0097】
[撮像処理フロー]
次に、図21のフローチャートを参照して上述したX線断層撮像装置による撮像処理について説明する。
まず、撮像処理の開始にあたり、被検査体3を所定頂角の接円錐の円錐面に載置する。具体的には図6に示すように、所定の傾斜を持つ載置台4aへ載置する(ステップS1)。このとき、制御部95へ操作信号を送り、駆動機構部91〜93を制御してX線管1、回転基台4及び二次元検出器2の位置を調整する。
【0098】
続いて、被検査体3とX線焦点Fとの位置関係(図10参照)から、被検査体3の関心部位への良好なX線透過が困難か否かを判定する(ステップS2)。判定の結果、良好なX線透過が困難であればステップS3へ進み、良好なX線透過が可能であればステップS4へ進む。
【0099】
ステップS2の判定処理で良好なX線透過が困難であると判定した場合、制御部95から駆動機構部92,93等を制御して、回転基台4を移動させ被検査体3の回転軸を上昇させるとともに二次元検出器2の高さを調整する(ステップS3)。なお、この処理は実施することが好ましいが必ず実施するということではなく、スキップしてもよい。
【0100】
一方、ステップS2の判定処理でX線透過が良好であると判定された場合、制御部95は、第1仮想円錐51と第2仮想円錐52に挟まれた空間(図9の斜線部)を演算で求める。あるいは、図19に示したスイベルステージを利用しているのであれば、式(10)のギャップεを計算し、第2仮想円錐、第3仮想円錐及び台形軌跡TLに挟まれた空間を演算で求める(ステップS4)。
【0101】
制御部95は、ステップS4の演算結果に基づき、機構駆動部93へ制御信号を送り、X線焦点Fの位置を上記2種の仮想円錐面に挟まれた空間へ移動させる(ステップS5)。
【0102】
制御部95は、被検査体3における吸収係数の高い平面群が当該被検査体3の旋回とともに投影上で被検査体3が表裏より観察可能であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0103】
薄板の被検査体3を表裏両面より透過観察可能ならば、旋回の角度ピッチが十分細かいという前提で、例えば360度旋回する間に2回(少なくとも1回)は、被検査体3を構成する平面群が個々に、線状に観察可能だった証明になる。ここで、表裏からの観察が不可能と判定された場合、ステップS5の処理に戻り、X線焦点Fを、図9又は図19に斜線で示した領域へ移動させる。
【0104】
X線焦点Fを適切な位置に移動させた後、制御部95は機構制御部92を制御して、被検査体3を旋廻させ所定角度ピッチ毎に、二次元検出器2で被検査体3の投影データを撮像し、投影像記憶部96へ保存する(ステップS7)。
【0105】
制御部95は、得られた投影データを投影像記憶部96から再構成計算部97へ転送する(ステップS8)。
【0106】
ここで、再構成計算部97は、上述した先願2に開示した方法で中心軸を計算する(ステップS9)。ただし、先願2に開示した方法を利用することは、詳細な観察が可能な再構成データを得るためには好ましいが、本願発明の本質的な部分を構成するものではない。
【0107】
再構成計算部97は、求めた一つの中心軸で全投影データを再構成計算する(ステップS10)。ステップS10の処理が終了した後、一連の撮像処理を終了する。
【0108】
これらのステップS1〜ステップS10の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は勿論、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいはこれとは異なる順序で実行されてもよい。
【0109】
[従来例及び本発明による再構成画像の比較]
図22は、一般的なX線断層撮像方法により撮影されたBGAの断層画像を示す図である。一方、図23は、本発明のX線断層撮像方法により撮影されたBGAの断層画像を示す図である。
【0110】
図22に示す従来例の断層画像81は、BGAのボール状の電気的接合部(バンプ)がアーチファクト(画像に現れる目的情報以外の二次元的障害陰影、装置のガタなどによって発生する擬似画像)の影響が大きい。そのため、BGAの上下部分81A,81Bがぼけてしまい、基板とバンプの詳細が観察不可能である。既に説明したように図3A,Bに示す薄板の被検査体の投影像及び再構成画像についても同様に観察不可能である。
【0111】
一方、図23に示す本発明による断層画像82は、図22と同一部位のBGA断層画像であるが、アーチファクトに影響されることなく、電気的接合部(バンプ)の右上82Aと左下82Bに亀裂があることが詳細に認識できる。このように、産業用の直交型X線CT装置であって、Feldkamp等の再構成アルゴリズムに従ってフィルター補正逆投影法や重乗積分法(畳み込み逆投影法)を適用する場合に、本発明のように薄型被検査体の載置姿勢とX線焦点位置に制約条件を設けるのみでよいことが示されている。この制約条件を設けるだけで、被検査体の関心部位に関して明瞭な非破壊断層画像を得ることができる。
【0112】
また、図18に示したように、二次元検出器の検出面サイズとX線焦点位置などから決まる、再構成計算領域(Region of Image Support)の円筒の中心軸を通る矩形断面の対角にほぼ沿わせる形で、被検査体を載置する接円錐の頂角を選定すると好適である。これにより、薄型被検査体の関心部位が再構成計算可能領域を効率よく占有し、二次元検出器によって得られた投影データをほぼ100%、一つの再構成計算中心による再構成計算に有効活用することが可能となる。
【0113】
さらに本発明の撮像方法によれば、薄型被検査体の関心部位を特徴付ける、重要な角度位相の投影近傍に関しては、等角度ピッチの撮像でありながら、きめの細かい変化率で投影データを収集することが可能である。さらに、図10に示した二次元検出器や被検査体の位置関係より、X線透過率に関して有利な方向から被検査体の投影データを取得できる。図13等に示した被検査体の銅箔の層間距離が極端に小さければ、先願1に開示された方法を併用して、撮像時間を短縮しながら、十分な分解能を得ることも可能である。
【0114】
産業用の直交型X線CT装置は、コーン状X線ビームの照射角度が大きい場合、ミッドプレーンより±5度以上離れた投影は切り捨てられることがある。しかし、本発明の撮像方法では、直交型(シングルスキャンコーンビーム)CTにおける従来の理論と異なり、ミッドプレーンから二次元検出器の検出面が逸脱してもよい(図10参照)。ミッドプレーンから二次元検出器の検出面が逸脱した方が、X線が透過し難い物質であっても、扁平な被検査体の投影データが変化に富み、且つ円筒状の治具等にくるみコントラストの変化を和らげなくとも、理想的なコントラストで撮像できる効果がある。
【0115】
以上に述べた実施の形態は、本発明を実施するための好適な形態の具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。ただし、本発明は、以上の実施の形態の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限られるものではない。例えば、以上の説明で挙げた使用材料とその使用量、処理時間、処理順序および各パラメータの数値的条件等は好適例に過ぎず、また、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係等も実施の形態の一例を示す概略的なものである。したがって、本発明は、上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】一般的な被検査体、X線管および二次元検出器の配置を示す側面図である。
【図2】一般的な被検査体、回転基台およびX線管の位置関係を示すものであり、Aは斜視図、Bは側面図である。
【図3】図1及び図2に示した位置関係においてX線断層撮像方法による撮影結果の例を示す図であり、Aは投影像、Bは再構成結果を示す。
【図4】シャドーゾーンを示した説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るX線断層撮像装置の概略側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る被検査体、回転基台およびX線管の位置関係を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るシャドーゾーンと被検査体の位置関係を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る被検査体の姿勢を示し、AはX線管側から二次元検出器側を見た場合の概略斜視図であり、Bは二次元検出器側からX線管側を見た場合の概略斜視図である。
【図9】図8A,8Bの第1仮想円錐と第2仮想円錐に挟まれた空間の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る被検査体3とX線焦点Fとの好ましい位置関係を示す図である。
【図11】図8及び図9に示したX線管(X線焦点)、二次元検出器及び接円錐(頂点)の各々の座標空間を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る傾斜角15度(頂角150度)の場合の各角度位相における投影像を示す図である。
【図13】図12に示した条件の投影像を再構成して得られる内部構造データであり、AはX軸断面、BはY軸断面を示す。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る傾斜角30度(頂角120度)の場合の各角度位相における投影像を示す図である。
【図15】図14に示した条件の投影像を再構成して得られる内部構造データであり、AはX軸断面、BはY軸断面を示す。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る傾斜角40度(頂角100度)の場合の各角度位相における投影像を示す図である。
【図17】図16に示した条件の投影像を再構成して得られる内部構造データであり、AはX軸断面、BはY軸断面を示す。
【図18】本発明の第1の実施の形態において被検査体が大きい場合の例を説明するための図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係るスイベルステージを用いた載置部を示した模式図である。
【図20】図5に示したX線断層撮像装置の機能ブロック図である。
【図21】本発明の各実施の形態に係るX線断層撮像装置による処理を示すフローチャートである。
【図22】一般的なX線断層撮像方法により撮影されたBGAの断層画像を示す図である。
【図23】本発明のX線断層撮像方法により撮影されたBGAの断層画像を示す図である。
【図24】本発明を適用可能な被検査体3の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1…X線管、F…X線焦点、2…二次元検出器、3…被検査体、3A,3B…主面、4…回転基台、4a…載置部、6…シャドーゾーン、7…収納ケース、31…直動機構、32…回転機構、33…直動機構、40…定盤、41…レール、42…直動機構、43…レール、50,50−1,50−2…接円錐、50A,51A,52A…母線、51…第1仮想円錐、52…第2仮想円錐、53…頂点、61…円筒形再構成計算領域、70…スイベルステージ、71…第1ステージ、72…第2ステージ、73…把持部、74…回転軸部、75…第1仮想円錐の母線、76…第2仮想円錐の母線、77…第3仮想円錐の母線、81…再構成画像、82…再構成画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被検査体の投影データより前記被検査体の内部構造データを再構成するX線断層撮像装置であって、
X線源と、
被検査体の透過X線を撮像する二次元検出器と、
前記X線源のX線焦点と前記二次元検出器との間に前記被検査体を載置して配置され、前記X線源から出射されたX線により形成される円錐状ビームの底面の中心と当該X線焦点を結ぶ線分と直交する回転軸を中心に、設定された角度変位で回転する回転機構と、
前記被検査体を、前記回転軸を中心線とする所定角度の頂角θを持つ仮想の円錐(接円錐)の母線に板厚方向がほぼ直角に接する状態に載置する載置部と、
前記被検査体が接する接円錐の頂点と点対称である第1仮想円錐と、前記接円錐上に載置される被検査体の、断層画像を得ようとする関心部位の最外部位に外接かつ包含し、前記接円錐と頂角が同じで同軸上に中心軸を持つ第2仮想外接円錐の、2つの仮想円錐面で挟まれる空間内へ前記X線焦点の位置を移動させる移動機構、を備える
X線断層撮像装置。
【請求項2】
前記接円錐の頂角の角度θは、100°≦θ≦150°である
請求項1に記載のX線断層撮像装置。
【請求項3】
前記二次元検出器の検出面は前記X線焦点から前記回転軸に降ろした垂線とほぼ直交し、前記検出面が、
前記垂線を含み前記回転軸と直交する平面(ミッドプレーン)と当該検出面の前記回転軸方向の中心の画素列とが重なる位置を原点として、前記回転軸に沿って前記ミッドプレーンと直角かつ直線的に移動可能であって、前記X線焦点と前記中心を通る前記画素列を結ぶ平面と、前記ミッドプレーンがなす角が、(π−θ)/2以上となる位置に配置される移動距離を有する
請求項2に記載のX線断層撮像装置。
【請求項4】
前記接円錐の中心軸と交差するように前記被検査体を載置し、前記被検査体が接している前記接円錐の母線と中心軸の両方を含む面と直交し、且つ中心軸を含む面で切断された、前記第1仮想円錐側に含まれる部分を削除した残りの関心部位を包含し、かつ外接する前記第2仮想円錐と前記第1仮想円錐の両方の円錐面によって挟まれる空間に、前記X線焦点を位置した場合、
前記二次元検出器の検出面が矩形状で、前記検出面について前記回転軸と直角方向の長さをa、平行方向の長さをbとし、前記X線焦点から前記検出面までの距離をcとしたとき、
前記ミッドプレーンと前記検出面が交わる場合、前記接円錐の頂角は以下の式によって表され、
tan{(π―θ)/2}=b/a*[√{1−(a/(2*c))}−a/(2*c)]
前記ミッドプレーンから前記検出面の端面が離れている場合、その距離をδとして以下の式によって表される
tan{(π―θ)/2}=b/a*[√{1−(a/(2*c))}−a/(2*c)]-δ/c
請求項3に記載にX線断層撮像装置。
【請求項5】
載置部へ、回転軸を中心線とする所定角度の頂角θを持つ仮想の円錐(接円錐)の母線に板厚方向がほぼ直角に接する状態に被検査体を載置する第1ステップと、
前記被検査体が接する接円錐の頂点と点対称である第1仮想円錐と、前記接円錐上に載置される被検査体の、断層画像を得ようとする関心部位の最外部位に外接かつ包含し、前記接円錐と頂角が同じで同軸上に中心軸を持つ第2仮想外接円錐の、2つの仮想円錐面で挟まれる空間内へ、X線源のX線焦点の位置を移動機構により移動させる第2ステップと、
前記X線源のX線焦点と二次元検出器との間に前記被検査体を載置して配置され、前記X線源から出射されたX線により形成される円錐状ビームの底面の中心と当該X線焦点を結ぶ線分と直交する回転軸を中心に回転する回転機構を、設定された角度変位で回転させる第3ステップと、
各角度位相毎に撮像された投影像より前記被検査体の内部構造データを再構成する第4ステップと、を含む
X線断層撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−156607(P2010−156607A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334937(P2008−334937)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】