説明

X線断層撮影装置

【課題】関心領域が含まれる撮影断面のトモシンセシス画像が最初にモニタに表示されるようにし、診断時間を短縮する。
【解決手段】被検体Mを挟んでX線管1とFPD2を対向配置し、X線管およびFPDを互いに反対向きに移動させつつ、X線管から被検体に対してX線を順次照射してその都度透過X線を検出して投影画像を撮影するとともに、断層撮影範囲内におけるFPDの検出面に平行な複数の撮影断面MA、Ma1〜Man、Mb1〜Mbn毎に投影画像を画像再構成処理し、その処理の順序に従って、生成した各撮影断面のトモシンセシス画像をモニタ19に表示する。撮影断面のなかから主撮影断面を決定し、画像再構成処理が、主撮影断面から開始され、その後は、主撮影断面に近い撮影断面から順に実行されるように制御を行う再構成処理制御部16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管およびX線検出器を、被検体を挟んで互いに反対向きに移動させつつ、X線管から被検体に対してX線を順次照射し、その都度、被検体からの透過X線をX線検出器によって検出して投影画像を撮影し、それらの投影画像を画像再構成処理することにより、断層撮影範囲内において、X線検出器の検出面に平行な撮影断面毎にトモシンセシス画像を生成し、それらの画像をモニタ表示するX線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線断層撮影装置の1つとして、被検体のトモシンセシス画像を生成し、モニタに表示するように構成された装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このX線断層撮影装置は、互いに対向配置されたX線管およびX線検出器を備えており、X線管およびX線検出器を、天板上に載置された被検体を挟んで、X線のビームの中心とX線検出器の中心が常に一致するように互いに反対方向に同期移動させながら、順次X線官からX線を照射し、その都度、被検体からの透過X線をX線検出器によって検出する。さらに、X線断層撮影装置は、X線検出器からの出力を信号処理し、X線照射毎に撮影した投影画像を画像再構成処理することにより、予め決定された断層撮影範囲内において、検出面に平行な予め決定された撮影断面毎にトモシンセシス画像を生成し、それらの画像を順次モニタに表示する。
【0003】
この場合、X線撮影に先立って、オペレータ(医師または技師)により、被検体中の断層撮影範囲を指定するデータ(通常は、天板表面からの距離で表される)と、断層撮影範囲内における撮影断面の数、または撮影断面間の間隔を指定するデータがX線断層撮影装置に入力される。これらのデータに基づき、X線断層撮影装置は、断層撮影範囲内における各撮影断面の位置を演算によって求める。
【0004】
そして、X線断層撮影装置は、指定された断層撮影範囲の一方の端から他方の端に向かって順番に各撮影断面の投影画像の画像再構成処理を行い、その処理順に、生成したトモシンセシス画像をモニタに表示するようになっていた。
【0005】
しかしながら、オペレータは、通常、1回のX線撮影で関心領域の断層像を確実に取得したいので、断層撮影範囲を指定する際に、当該関心領域が含まれると予想される撮影断面を中心にして、その上下に一定の距離だけ離れた位置が断層撮影範囲の両端となるようにデータを入力する場合が多く、このため、関心領域を含む撮影断面のトモシンセシス画像がモニタに表示されるまでに時間がかかり、その結果、診断時間が長くなるという問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−52680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、関心領域が含まれる撮影断面のトモシンセシス画像が最初にモニタに表示されるようにし、診断時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によれば、被検体を挟んでX線管とX線検出器を対向配置し、前記X線管および前記X線検出器を同一平面内において互いに反対向きに移動させつつ、前記X線管から前記被検体に対してX線を順次照射し、その都度、前記被検体からの透過X線をX線検出器によって検出して投影画像を撮影するとともに、前記投影画像を画像再構成処理することにより、予め決定された断層撮影範囲内において、前記X線検出器の検出面に平行な予め決定された撮影断面毎にトモシンセシス画像を生成し、前記トモシンセシス画像を順次モニタ表示するX線断層撮影装置において、前記断層撮影範囲内における前記撮影断面のそれぞれの位置を特定する撮影断面位置特定部と、前記撮影断面毎の投影画像の信号を読み取る画像信号読取部と、前記画像信号読取部によって読み取られた投影画像の信号に基づき、前記撮影断面毎に画像再構成処理を行ってトモシンセシス画像を生成する再構成処理部と、前記トモシンセシス画像の画像データが順次格納されるメモリと、前記メモリに格納された画像データを読み出し、前記トモシンセシス画像を再構成処理の順に表示するモニタと、前記撮影断面のなかから主撮影断面を決定し、前記再構成処理部に制御信号を送って、前記画像再構成処理が、前記主撮影断面から開始され、その後は、前記主撮影断面に近い前記撮影断面から順に実行されるように前記再構成処理部を動作させる再構成処理制御部と、を備えたことを特徴とするX線断層撮影装置が構成される。
【0009】
本発明の好ましい実施例によれば、前記撮影断面位置特定部は、前記断層撮影範囲を指定するデータの入力を受ける第1のデータ入力部と、前記断層撮影範囲内における前記撮影断面の数、または前記撮影断面間の間隔を指定するデータの入力を受ける第2のデータ入力部と、を有し、前記撮影断面位置特定部は、前記第1のデータ入力部および前記第2のデータ入力部に入力されたデータに基づき、前記撮影断面のそれぞれの前記断層撮影範囲内における位置を特定する。
【0010】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記断層撮影範囲内における関心領域の位置を特定する関心領域特定部をさらに備え、前記再構成処理制御部は、前記関心領域特定部によって特定された前記関心領域の位置のデータと、前記撮影断面位置特定部によって決定されたそれぞれの前記撮影断面の位置のデータとを比較することによって、前記関心領域を含む前記撮影断面を前記主撮影断面に決定する。
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記再構成処理制御部は、前記撮影断面位置特定部によって特定されたそれぞれの前記撮影断面の前記位置のデータに基づいて、前記断層撮影範囲の中央に位置する、または該中央に最も近い前記撮影断面を選び出し、その撮影断面を前記主撮影断面に決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、断層撮影範囲内の撮影断面のうち、関心領域を含む主撮影断面の投影画像の再構成処理を最初に実行し、その後、主撮影断面に近い撮影断面から順に投影画像の再構成処理を実行するようにして、関心領域を含む撮影断面およびその近傍の撮影断面のトモシンセシス画像が優先的にモニタに表示されるようにしたので、診断時間が大幅に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施例によるX線断層撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のX線断層撮影装置による画像再構成処理の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例によるX線断層撮影装置の構成を示すブロック図である。図1を参照して、本発明によれば、被検体Mが載置される天板3と、天板3の上の被検体MにX線を照射するX線管1と、被検体Mからの透過X線を検出するフラットパネル型X線検出器(FPD)2が備えられる。X線管1は、X線管制御部6によって制御され、管電圧および管電流を供給される。そして、X線管1およびFPD2は、同期移動機構4によって、X線管1の光軸とFPD2の中心が常に一致するようにして被検体Mを挟んで同一平面内において互いに反対方向に同期移動せしめられ得る。そして、この同期移動の間に、X線管1から被検体Mに対してX線が順次照射され、その都度被検体Mからの透過X線がFPD2によって検出され、投影画像が撮影される。
【0014】
同期移動機構4は、同期移動制御部5からの制御信号に従って、直線軌道L1に沿ってX線管1を直線運動させると同時に、直線軌道L2に沿ってFPD2をX線管1と反対向きに直線運動させる。この場合、同期移動機構4は、X線管1の首振り角度を調整してX線照射角度を変化させつつX線管1を位置F1→位置F2→位置F3と移動させるとともに、FPD2を位置f1→位置f2→位置f3と移動させる。また、X線管1およびFPD2の一方または両方が、X線照射方向に手動または電動によって移動し、X線管1およびFPD2の間隔が調節可能になっている。
天板3は、天板移動機構7によって、上下方向および水平面内縦横方向に移動せしめられ得る。天板移動機構7は、天板制御部8からの制御信号に従って動作する。
X線管制御部6、同期移動制御部5および天板制御部8は、主制御部10に接続されており、主制御部10は、操作部20から入力される種々の命令およびデータに基づき、各制御部5、6、8に制御信号を送る。
【0015】
本発明によれば、また、断層撮影範囲内における撮影断面のそれぞれの位置を特定する撮影断面位置特定部17が備えられる。撮影断面位置特定部17は、断層撮影範囲を指定するデータの入力を受ける第1のデータ入力部13と、断層撮影範囲内における撮影断面Ma1〜Man、MA、Mb1〜Mbnの数、または撮影断面Ma1〜Man、MA、Mb1〜Mbn間の間隔を指定するデータの入力を受ける第2のデータ入力部14を有している。この場合、断層撮影範囲を指定するデータは天板3の表面からの距離で表され、また、撮影断面はいずれもFPD2の検出面に平行にとられる。撮影断面位置特定部17は、第1のデータ入力部13および第2のデータ入力部14に入力されたデータに基づき、撮影断面Ma1〜Man、MA、Mb1〜Mbnのそれぞれの断層撮影範囲内における位置を特定する。なお、撮影断面位置特定部17が、第1および第2のデータ入力部13、14に入力されたデータによらずに、直接、各撮影断面の断層撮影範囲内における位置を特定する構成とすることもでき、この場合には、撮影断面位置特定部17は、第1および第2のデータ入力部13、14を有していない。
【0016】
また、本発明によれば、断層撮影範囲内における関心領域の位置を特定する関心領域特定部15が備えられる。この関心領域の位置の特定は、オペレータ(医師または技師)によって、天板3の表面から当該関心領域までの距離が関心領域特定部15に手動入力されることによってなされる。
【0017】
FPD2の後段には、FPD2からの検出信号(投影画像の信号)をデジタル化して取り出すA/D変換器9と、A/D変換器9の出力から、撮影断面毎の投影画像の信号を読み取る画像信号読取部11が備えられる。画像信号読取部11は、主制御部10によって制御される。
【0018】
さらに、画像信号読取部11の後段には、画像信号読取部11によって読み取られた投影画像の信号に基づき、撮影断面毎に画像再構成処理を行って被検体Mのトモシンセシス画像を生成する再構成処理部12が接続される。再構成処理部12は主制御部10によって制御される。
【0019】
図2は、再構成処理部12による画像再構成処理の原理を説明する図である。図2を参照して、例えば、撮影断面MAについて考えると、X線管1およびFPD2の対は、撮影断面MA上の点G、Hが、常に、FPD2の検出面2Aの同一の点g、hに投影されるように、移動せしめられる。それによって、撮影断面MA上にない点Iは、X線照射角度が変化すると、検出面2A上への投影位置が変化する。すなわち、点Iは、X線管1が位置K1にあるとき、位置k1にある検出面2A上の点i1に投影されるが、X線管1が位置K2に移動したとき、位置k2にある検出面2A上の点i2に投影される。
【0020】
そして、FPD2の各位置で取得された投影画像が画像積分処理され、撮影断面MAのトモシンセシス画像が生成される。このとき、点G、Hの信号は集積されるので、トモシンセシス画像において点G、Hは鮮明となる一方、点Iの信号は分散されるので、トモシンセシス画像において点Iはぼける。この場合、点Iの撮影断面MAからの距離が大きくなるほど、ぼける度合も大きくなる。こうして、撮影断面MAだけが鮮明に撮影されたトモシンセシス画像が生成される。撮影断面MA以外の各撮影断面Ma1〜Man、Mb1〜Mbnのトモシンセシス画像も、原理的には撮影断面MAの場合と同様にして生成される。
【0021】
再構成処理部12によって生成されたトモシンセシス画像の画像データは、メモリ18に順次格納され、メモリ18に格納された画像データは、モニタ19によって読み出され、トモシンセシス画像が再構成処理の順にモニタ19に表示される。
【0022】
本発明によれば、さらに、撮影断面のなかから主撮影断面を決定し、再構成処理部12に制御信号を送って、画像再構成処理が、主撮影断面から開始され、その後は、主撮影断面に近い撮影断面から順に実行されるように再構成処理部を動作させる再構成処理制御部16が備えられる。再構成処理制御部16は、この実施例では、関心領域特定部15によって特定された関心領域の位置のデータと、撮影断面位置特定部17によって決定されたそれぞれの撮影断面の位置のデータとを比較することによって、関心領域を含む撮影断面を主撮影断面に決定する。
【0023】
こうして、本発明によるX線断層撮影装置によれば、断層撮影範囲内の撮影断面のうち、関心領域を含む主撮影断面の投影画像の再構成処理が最初に実行され、その後は、主撮影断面に近い撮影断面から順に投影画像の再構成処理が実行され、各撮影断面のトモシンセシス画像が、これらの再構成処理の順番に従ってモニタ19に表示される。それによって、関心領域を含む撮影断面およびその近傍の撮影断面のトモシンセシス画像が優先的にモニタに表示され、診断時間が大幅に短縮される。
【0024】
再構成処理制御部16による主撮影断面の決定法は上記実施例に限定されない。
別の好ましい実施例によれば、再構成処理制御部16は、撮影断面位置特定部17によって特定されたそれぞれの撮影断面の位置のデータに基づいて、断層撮影範囲の中央に位置する、または該中央に最も近い撮影断面を選び出し、その撮影断面を主撮影断面に決定する。この実施例の場合には、関心領域特定部15は不要である。
この実施例では、例えば、断層撮影範囲が10〜20cmで、撮影断面の数が6枚に設定された場合、10〜20cmの中心(15cm)に近い位置にある14cmの撮影断面が主撮影断面に決定され、主撮影断面の投影画像の画像再構成処理が最初に行われ、その後、16cmの撮影断面、12cmの撮影断面、18cmの撮影断面、10cmの撮影断面、20cmの撮影断面の順に画像再構成処理が行われる。
【0025】
この実施例は、オペレータは、通常、断層撮影範囲を指定する際、関心領域が含まれると予想される撮影断面を中心にして、その上下に一定の距離だけ離れた位置が断層撮影範囲の両端となるようにデータを入力する場合が多いという事実を前提としたものである。
【符号の説明】
【0026】
1 X線管
2 FPD
3 天板
4 同期移動機構
5 同期移動制御部
6 X線管制御部
7 天板移動機構
8 天板制御部
9 A/D変換器
10 主制御部
11 画像信号読取部
12 再構成処理部
13 第1のデータ入力部
14 第2のデータ入力部
15 関心領域特定部
16 再構成処理制御部
17 撮影断面位置特定部
18 メモリ
19 モニタ
20 操作部
L1、L2 直線軌道
M 被検体
MA 撮影断面
Ma1〜Man 撮影断面
Mb1〜Mbn 撮影断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を挟んでX線管とX線検出器を対向配置し、前記X線管および前記X線検出器を同一平面内において互いに反対向きに移動させつつ、前記X線管から前記被検体に対してX線を順次照射し、その都度、前記被検体からの透過X線をX線検出器によって検出して投影画像を撮影するとともに、前記投影画像を画像再構成処理することにより、予め決定された断層撮影範囲内において、前記X線検出器の検出面に平行な予め決定された撮影断面毎にトモシンセシス画像を生成し、前記トモシンセシス画像を順次モニタ表示するX線断層撮影装置において、
前記断層撮影範囲内における前記撮影断面のそれぞれの位置を特定する撮影断面位置特定部と、
前記撮影断面毎の投影画像の信号を読み取る画像信号読取部と、
前記画像信号読取部によって読み取られた投影画像の信号に基づき、前記撮影断面毎に画像再構成処理を行ってトモシンセシス画像を生成する再構成処理部と、
前記トモシンセシス画像の画像データが順次格納されるメモリと、
前記メモリに格納された画像データを読み出し、前記トモシンセシス画像を再構成処理の順に表示するモニタと、
前記撮影断面のなかから主撮影断面を決定し、前記再構成処理部に制御信号を送って、前記画像再構成処理が、前記主撮影断面から開始され、その後は、前記主撮影断面に近い前記撮影断面から順に実行されるように前記再構成処理部を動作させる再構成処理制御部と、を備えたことを特徴とするX線断層撮影装置。
【請求項2】
前記撮影断面位置特定部は、前記断層撮影範囲を指定するデータの入力を受ける第1のデータ入力部と、前記断層撮影範囲内における前記撮影断面の数、または前記撮影断面間の間隔を指定するデータの入力を受ける第2のデータ入力部と、を有し、前記撮影断面位置特定部は、前記第1のデータ入力部および前記第2のデータ入力部に入力されたデータに基づき、前記撮影断面のそれぞれの前記断層撮影範囲内における位置を特定することを特徴とする請求項1に記載のX線断層撮影装置。
【請求項3】
前記断層撮影範囲内における関心領域の位置を特定する関心領域特定部をさらに備え、前記再構成処理制御部は、前記関心領域特定部によって特定された前記関心領域の位置のデータと、前記撮影断面位置特定部によって決定されたそれぞれの前記撮影断面の位置のデータとを比較することによって、前記関心領域を含む前記撮影断面を前記主撮影断面に決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線断層撮影装置。
【請求項4】
前記再構成処理制御部は、前記撮影断面位置特定部によって特定されたそれぞれの前記撮影断面の位置のデータに基づいて、前記断層撮影範囲の中央に位置する、または該中央に最も近い前記撮影断面を選び出し、その撮影断面を前記主撮影断面に決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線断層撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−233762(P2010−233762A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84018(P2009−84018)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】