説明

X線検査装置

【課題】遮蔽手段の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができるX線検査装置を提供すること。
【解決手段】検査空間22内の被検査物WにX線を照射するX線発生器9と、被検査物Wを透過するX線を検出して透過量に応じた濃度データを出力するX線検出器10と、X線発生器9が発生するX線が検査空間22の外部に漏えいすることを防止する遮蔽カーテン16と、を備え、X線検出器10から出力される濃度データに基づいて被検査物Wの検査を行うX線検査装置1において、遮蔽カーテン16を通して検査空間22内に侵入した光の照度を測定する照度センサ13と、照度センサ13が、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定したとき、遮蔽カーテン16が異常状態であると判定する判定部17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関し、特に、X線の漏えい防止用の遮蔽手段を備えたX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、搬送される被検査物にX線を照射して、物品への異物の混入等を検査するX線検査装置にあっては、X線を被検査物に照射する検査空間の外部にX線が漏えいすることを防止するための遮蔽部材を有している。遮蔽部材は、鉛入りのゴムシートをのれん状に加工したもの等から構成されており、使用にともなって損傷、破断等が生じるとX線が漏えいしてしまうため、常に正常な状態であることが求められる。
【0003】
従来、この種のX線検査装置としては、遮蔽部材を開口部の天井部から垂下させてX線の漏えいを防止し、遮蔽部材が開口部の天井部に正しく装着されていないことを検知した場合にX線を照射できないようにするインターロック機能を有したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この種のX線検査装置としては、遮蔽部材の内部に導電部材を巡らせ、導電部材の両端の電気抵抗の変化を検出することにより、遮蔽部材の損傷を検知するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、この種のX線検査装置としては、検査空間の2つの開口部の外部にそれぞれ設けたX線漏えい量センサを用いて漏えいしたX線の積算量を演算し、積算量が所定値を超えたときに警告表示を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3838078号公報
【特許文献2】特許第3917038号公報
【特許文献3】特開2002−148211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術では、遮蔽手段が捩れて隙間が生じるような異常状態の場合であっても、遮蔽手段の天井部への装着状態は正常であり、導電部材の電気抵抗も正常であるため、この異常状態を検知することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献3に記載された技術では、高価なX線漏えい量センサを検査空間の2つの開口部の外部にそれぞれ設ける必要があるためX線検査装置が非常に高価なものとなってしまい、また、X線漏えい量センサは校正(動作確認)が必要な複雑なものであるため、普及の妨げになっていたという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、遮蔽手段の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るX線検査装置は、検査空間(22)内の被検査物(W)にX線を照射するX線発生器(9)と、前記被検査物を透過するX線を検出して透過量に応じた濃度データを出力するX線検出器(10)と、前記X線発生器が照射するX線が前記検査空間の外部に漏えいすることを防止する遮蔽手段(16)と、を備え、前記X線検出器から出力される濃度データに基づいて前記被検査物の検査を行うX線検査装置(1)において、前記遮蔽手段を通して前記検査空間内に侵入した光の照度を測定する照度測定手段(13)と、前記照度測定手段が、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定したとき、前記遮蔽手段が異常状態であると判定する判定手段(17)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、判定手段は、X線検出器等と比較して安価な照度測定手段により、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定すると、遮蔽手段が捩れ等が生じた異常状態であると判定することができるので、遮蔽手段の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができる。
【0011】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記X線発生器がX線を照射していることを光により報知する警告ランプ(14)を、前記検査空間の外部であって、前記遮蔽手段に隙間が生じたときに前記検査空間内に前記警告ランプの光が到達し得る位置に備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、判定手段が、照度測定手段が測定する警告ランプの光の照度に基づいて、遮蔽手段が捩れ等が生じた異常状態であるか否かを判定することができるので、X線検査装置が暗い場所に設置されているような状況であっても、遮蔽手段の異常状態を検知することができる。
【0013】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記照度測定手段が、前記検査空間内の外縁部の底部に複数配置されたことを特徴とする。
【0014】
この構成により、遮蔽手段が異なる方向に複数個設けられている場合であっても、検査空間内に進入した光の照度を複数の照度測定手段により測定できるので、複数の遮蔽手段に対して等しく異常状態を検知することができる。
【0015】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記照度測定手段が、前記検査空間内の中央部の底部に1つ配置されたことを特徴とする。
【0016】
この構成により、遮蔽手段が異なる方向に複数個設けられている場合であっても、検査空間内に進入した光の照度を中央の1つの照度測定手段により測定できるので、複数の遮蔽手段に対して等しく異常状態を検知することができるとともに、より安価な構成とすることができる。
【0017】
また、本発明に係るX線検査装置は、前記遮蔽手段が、金属を含有する樹脂からなることを特徴とする。
【0018】
この構成により、例えば、のれん状に加工されたゴムシートの弾性変形により被検査物Wの検査空間内外への出し入れが可能になるとともに、劣化等により定期的に交換が必要なゴムにより遮蔽手段を構成しても異常状態を検知することができるので、X線の漏えいを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、遮蔽手段の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができるX線検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
まず構成について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の側面および内部構成を示す図である。図3(a)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の遮蔽手段を示す斜視図であり、図3(b)は、遮蔽手段がワカメ状に波打った状態を示す図である。なお、本実施の形態のX線検査装置は、食品や薬剤等の製造ラインまたは検査ラインの一部に設けられ、所定間隔をおいて順次搬送されてくる被検査物Wの品質(異物混入等)の検査を行うものである。
【0023】
図1に示すように、X線検査装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示器5を筐体4の前面上部に備えている。
【0024】
搬送部2は、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものである。この搬送部2は、例えば筐体4に対して水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。搬送部2は、図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(図中搬送方向X)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっている。筐体4内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0025】
検出部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生器9と、搬送部2内にX線発生器9と対向して配置されたX線検出器10を備えている。ここで、検査空間22とは、搬送路21における後述する遮蔽カーテン16により囲まれた内側の空間のことである。
【0026】
X線発生源としてのX線発生器9は、金属製の箱体11内部に設けられた円筒状のX線管12を図示しない絶縁油に浸漬した構成を有しており、X線管12の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管12は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向Xと直交する方向(Y方向)に設けられている。X線管12により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、長手方向に沿った図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって照射されるようになっている。
【0027】
X線検出器10は、搬送される被検査物Wの搬送方向Xの平面上で搬送方向Xと直交するY方向に複数の素子が一直線上に配置されたものであり、ライン状に整列して配設された複数のフォトダイオードと、ライン状のフォトダイオード上に設けられたシンチレータとからなる複数の素子により構成される。X線検出器10は、被検査物Wの搬送方向Xの平面上で直交する方向Yに直線状に配置された複数の素子によって被検査物Wを透過するX線を検出して、この検出結果による濃度データを素子毎に複数の素子数を1ラインとして全素子数まで順次出力するようになっており、被検査物Wの搬送に伴って1ラインからの順次出力を繰り返すようになっている。
【0028】
図2に示すように、搬送路21内の天井部21aには、搬送方向に沿って複数個所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。
【0029】
遮蔽カーテン16は、図3(a)に示すように、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4外部に漏えいすることを防止するものである。
【0030】
遮蔽カーテン16は、本実施の形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられている。
【0031】
このため、被検査物Wが搬入口7から検査空間22に搬送されるときに、搬入口7と検査空間22との間の2つの遮蔽カーテン16のうち一方が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、2つの遮蔽カーテン16のうち他方がX線を遮蔽するので漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。同様に、被検査物Wが検査空間22から搬出口8に搬送されるときに、検査空間22と搬出口8の間の2つの遮蔽カーテン16のうち一方が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、2つの遮蔽カーテン16のうち他方がX線を遮蔽するので漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。
【0032】
また、検査空間22内部には、検査空間22内の照度を測定する照度センサ13が設けられている。
【0033】
照度センサ13は、検査空間22の外部から内部に入射する外光に応じた信号を出力するものであり、図2において、被検査物Wの搬送を妨げないよう、検査空間22内の搬出口8側の外縁部(遮蔽カーテン16の近傍)の底部であって幅方向一端部(図2の手前側端部または奥側端部)に設けられている。照度センサ13を底部に配置するのは、遮蔽カーテン16の下部に捩れ等の異常が生じやすいので、異常を検知しやすくするためである。なお、遮蔽カーテン16の異常状態とは、図3(a)に示す正常な状態以外の状態を意味し、単純な捩れが生じた状態やワカメのように複雑に波打った状態(図3(b))、部分的に欠けた状態(不図示)等を含むものであり、遮蔽機能が損なわれた状態のことである。
【0034】
照度センサ13の測定値は判定部17に入力されるようになっており、判定部17は、照度センサ13が、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定したとき、遮蔽カーテン16が定常的に隙間が生じた異常状態であり、X線が筐体4外部に漏えいする恐れがあると判定し、X線発生器9からのX線の照射を停止するようになっている。
【0035】
判定部17がX線の照射を停止するか否かの判定に用いる閾値としての照度の値および連続時間は、設定部18から入力および変更ができるようになっている。したがって、X線検査装置1の周辺の照明の明るさ等に応じて、適切な照度の閾値を設定することができ、照度センサ13の感度特性を視覚に相当する波長帯域(可視光帯域)に選択することができる。
【0036】
また、判定部17は、X線の漏えいの恐れがあると判定したとき、報知部19を介して警告表示または警告音声により視覚的または聴覚的に、X線の漏えいの恐れがある旨を報知するようになっている。なお、報知部19は、例えば、警告ライトや警告ブザー等から構成することができる。
【0037】
また、搬入口7と搬出口8の上部には、それぞれ警告ランプとしての照射中ランプ14が設けられている。
【0038】
照射中ランプ14は、X線の照射中に発光することによりX線の照射中である旨を作業者が認識できるように設けられており、従来のX線検査装置も一般的に備えているものである。本実施の形態では、照射中ランプ14を搬入口7と搬出口8の上部に配置することにより、発光した光がX線検査装置1の作業者から視認できるとともに検査空間22内に到達し得るようになっている。
【0039】
このため、X線検査装置1が暗い場所に設置されているような状況であっても、判定部17が、照度センサ13が測定する照射中ランプ14の光の照度に基づいて、遮蔽カーテン16が捩れ等が生じた異常状態であるか否かを判定し、遮蔽カーテン16の異常状態を検知することができる。判定部17がX線の照射を停止するか否かの判定に用いる閾値としての照度の値は、X線検査装置1の設置場所の照明と照射中ランプ14の双方の明るさや、そのバランスを考慮したものとすることが好ましく、照度センサ13の感度特性を照射中ランプ14の発光波長特性(例えば赤色光)に合わせるとよい。
【0040】
また、照度センサ13の配置箇所および配置数は、前述した以外の形態とすることもできる。
【0041】
図4(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の照度センサの配置例を示す断面図である。
【0042】
図4(a)に示すように、照度センサ13を、検査空間22内の搬入口7側の外縁部と搬出口8側の外縁部の2か所に配置してもよい。この場合、搬入口7側の2つの遮蔽カーテン16の異常状態により検査空間22から搬入口7側にX線が漏えいする場合と、搬出口8側の2つの遮蔽カーテン16の異常状態により検査空間22から搬出口8側にX線が漏えいする場合とを偏りなく等しく検知することができる。
【0043】
また、図4(b)に示すように、照度センサ13を、検査空間22内の中央部に1つ配置してもよい。この場合でも、搬入口7側の2つの遮蔽カーテン16の異常状態により検査空間22から搬入口7側にX線が漏えいする場合と、搬出口8側の2つの遮蔽カーテン16の異常状態により検査空間22から搬出口8側にX線が漏えいする場合とを等しい条件で検知することができるとともに、X線漏えいの恐れがあることを1つの照度センサ13により検知することができるので、より安価な構成とすることができる。
【0044】
なお、図4(a)または図4(b)のいずれの場合でも、照度センサ13は、遮蔽カーテン16の異常状態が検知しやすく、且つ、被検査物Wの搬送を妨げないよう、検査空間22内の外縁部の底部であって幅方向一端部(図4(a)および図4(b)の手前側端部または奥側端部)に設けられている。
【0045】
図5(a)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の遮光カーテン正常時の照度センサの出力を示すグラフであり、図5(b)、(c)は、遮光カーテン異常時の照度センサの出力を示すグラフである。
【0046】
図5(a)に示すように、遮蔽カーテン16が正常状態のときは、時刻T1〜T4において被検査物Wが4つの遮蔽カーテン16を通過する毎に照度センサ13が出力する照度が変動するが、予め定めた照度の閾値L以上になることはなく、また、被検査物Wが遮蔽カーテン16を通過していないときには、照度センサ13が出力する照度が最低照度Smin.となる。ここで、最低照度Smin.は、極めて僅かに遮蔽カーテン16から侵入する外光や照度センサ13のノイズにより生じるものである。
【0047】
図5(b)示すように、遮蔽カーテン16が捩れ等により定常的な隙間が空いた異常状態のときには、被検査物Wが遮蔽カーテン16を通過しているか否かに関わらず、判定部17は、照度センサ13により予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定することとなり、遮蔽カーテン16が定常的に隙間が生じた異常状態であると判定するようになっている。図5(b)において、照度センサ13が出力する最低照度Smin.は常に閾値L以上となっている。
【0048】
図5(c)示すように、時刻T3において、遮蔽カーテン16の変形や被検査物Wの滞留により、遮蔽カーテン16に大きな隙間が一定時間以上空いた異常状態となったときには、判定部17は、照度センサ13により予め定めた値(閾値L)以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定(時間Txが予め定めた時間以上とする)することとなり、遮蔽カーテン16が大きな隙間が一定時間以上隙間が生じた異常状態であると判定するようになっている。
【0049】
なお、判定部17は、照度センサ13により予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定した場合に加えて、または、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定した場合に代えて、最低照度Smin.が予め定めた時間以上連続して予め定めた値以上の照度となった場合に、遮蔽カーテン16が異常状態であると判定するようにしてもよい。
【0050】
次に動作を説明する。
【0051】
以上のように構成されたX線検査装置1においては、予め設定部18を操作して閾値としての照度の値および連続時間を設定しておく。
【0052】
被検査物Wが搬送されていないときは、遮蔽カーテン16が正常状態であれば、外光がほぼ完全に遮断されるので、判定部17は、照度センサ13により予め定めた値未満の照度を常に測定することとなり、遮蔽カーテン16が正常状態でありX線漏えいの恐れがないと判定する。一方、遮蔽カーテン16が捩れ等により異常状態であれば、外光が常に検査空間内に入り込むので、判定部17は、照度センサ13により予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定することとなり、遮蔽カーテン16が捩れ等が生じた異常状態でありX線漏えいの恐れがあると判定する。そして、X線検査装置1が運転状態の場合にはX線発生器9を停止するとともに、報知部19によって警告表示または警告音声により報知を行い、X線検査装置1が運転への移行状態の場合には運転状態に移行せず(X線発生器9を動作させず)、報知部19によって警告表示または警告音声により報知を行う。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係るX線検査装置1は、検査空間22内の被検査物WにX線を照射するX線発生器9と、被検査物Wを透過するX線を検出して透過量に応じた濃度データを出力するX線検出器10と、X線発生器9が照射するX線が検査空間22の外部に漏えいすることを防止する遮蔽カーテン16と、を備え、X線検出器10から出力される濃度データに基づいて被検査物Wの検査を行うX線検査装置1において、遮蔽カーテン16を通して検査空間22内に侵入した光の照度を測定する照度センサ13と、照度センサ13が、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定したとき、遮蔽カーテン16が異常状態であると判定する判定部17とを備えたことを特徴とする。
【0054】
このため、判定部17は、X線検出器10等と比較して安価な照度センサ13により、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定すると、遮蔽カーテン16が捩れ等が生じた異常状態であると判定することができるので、遮蔽カーテン16の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができる。
【0055】
また、本発明に係るX線検査装置1は、X線発生器9がX線を照射していることを光により報知する照射中ランプ14を、検査空間22の外部であって、遮蔽カーテン16に隙間が生じたときに検査空間22内に照射中ランプ14の光が到達し得る位置に備えたことを特徴とする。
【0056】
この構成により、判定部17が、照度センサ13が測定する照射中ランプ14の光の照度に基づいて、遮蔽カーテン16が捩れ等が生じた異常状態であるか否かを判定することができるので、X線検査装置1が暗い場所に設置されているような状況であっても、遮蔽カーテン16の異常状態を検知することができる。
【0057】
また、本発明に係るX線検査装置1は、照度センサ13が、検査空間22内の外縁部の底部に複数配置されたことを特徴とする。
【0058】
この構成により、遮蔽カーテン16が異なる方向に複数個設けられている場合であっても、検査空間22内に進入した光の照度を複数の照度センサ13により測定できるので、複数の遮蔽カーテン16に対して等しく異常状態を検知することができる。
【0059】
また、本発明に係るX線検査装置は、照度センサ13が、検査空間22内の中央部の底部に1つ配置されたことを特徴とする。
【0060】
この構成により、遮蔽カーテン16が異なる方向に複数個設けられている場合であっても、検査空間22内に進入した光の照度を中央の1つの照度センサ13により測定できるので、複数の遮蔽カーテン16に対して等しく異常状態を検知することができるとともに、より安価な構成とすることができる。
【0061】
また、本発明に係るX線検査装置は、遮蔽カーテン16が、鉛やタングステンといったX線遮蔽性能をもつ金属入りの樹脂(ゴム)をのれん状に加工したものから構成されることを特徴とする。
【0062】
この構成により、のれん状に加工されたゴムシートにより被検査物Wの検査空間22内外への出し入れが可能になるとともに、劣化等により定期的に交換が必要なゴムにより遮蔽カーテン16を構成しても異常状態を検知することができるので、X線の漏えいを確実に防止することができる。
【0063】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係るX線検査装置は、遮蔽手段の異常状態を安価な構成で且つ確実に検知することができるX線検査装置を提供するという効果を有し、X線の漏えい防止用の遮蔽手段を備えたX線検査装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線検査装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るX線検査装置の側面および内部構成を示す図である。
【図3】(a)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の遮蔽手段を示す斜視図であり、(b)は、遮蔽手段がワカメ状に波打った状態を示す図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の照度センサの配置例を示す断面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置の遮光カーテン正常時の照度センサの出力を示すグラフであり、(b)、(c)は、遮光カーテン異常時の照度センサの出力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 X線検査装置
2 搬送部
2a ベルト面
3 検出部
4 筐体
5 表示器
6 駆動モータ
7 搬入口
8 搬出口
9 X線発生器
10 X線検出器
11 箱体
12 X線管
13 照度センサ(照度測定手段)
14 照射中ランプ(警告ランプ)
16 遮蔽カーテン(遮蔽手段)
17 判定部(判定手段)
18 設定部
19 報知部
21 搬送路
21a 天井部
22 検査空間
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査空間(22)内の被検査物(W)にX線を照射するX線発生器(9)と、
前記被検査物を透過するX線を検出して透過量に応じた濃度データを出力するX線検出器(10)と、
前記X線発生器が照射するX線が前記検査空間の外部に漏えいすることを防止する遮蔽手段(16)と、を備え、
前記X線検出器から出力される濃度データに基づいて前記被検査物の検査を行うX線検査装置(1)において、
前記遮蔽手段を通して前記検査空間内に侵入した光の照度を測定する照度測定手段(13)と、
前記照度測定手段が、予め定めた値以上の照度を予め定めた時間以上連続して測定したとき、前記遮蔽手段が異常状態であると判定する判定手段(17)とを備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記X線発生器がX線を照射していることを光により報知する警告ランプ(14)を、前記検査空間の外部であって、前記遮蔽手段に隙間が生じたときに前記検査空間内に前記警告ランプの光が到達し得る位置に備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記照度測定手段が、前記検査空間内の外縁部の底部に複数配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記照度測定手段が、前記検査空間内の中央部の底部に1つ配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記遮蔽手段が、金属を含有する樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85224(P2010−85224A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253974(P2008−253974)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】