説明

X線発生装置

【課題】 蛍光X線の発生効率を向上させることができるX線発生装置を提供する。
【解決手段】 X線発生装置1は、X線を出射するX線管3と、X線の照射によって蛍光X線を放出するターゲットTと、蛍光X線を一端5aから他端5bに伝播するキャピラリー管5を複数含むキャピラリー管集合体4と、を備えている。キャピラリー管集合体4は、キャピラリー管5の一端5aの集合によって形成された一端面4aを有している。ターゲットTは、キャピラリー管集合体4の一端面4aに膜状に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線の照射によってターゲットから放出された蛍光X線を出射するX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線発生装置として、特許文献1には、X線を出射するX線源と、X線の照射によって蛍光X線を放出するターゲットと、蛍光X線を伝播するキャピラリー管集合体と、を備えるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−039772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のX線発生装置にあっては、ターゲットとキャピラリー管集合体とが空間的に離れているため、蛍光X線の発生効率が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、蛍光X線の発生効率を向上させることができるX線発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のX線発生装置は、X線を出射するX線源と、X線の照射によって蛍光X線を放出するターゲットと、蛍光X線を一端から他端に伝播するキャピラリー管を複数含むキャピラリー管集合体と、を備え、キャピラリー管集合体は、キャピラリー管の一端の集合によって形成された一端面を有し、ターゲットは、キャピラリー管集合体の一端面に膜状に配置されていることを特徴とする。
【0007】
このX線発生装置では、キャピラリー管集合体の一端面にターゲットが膜状に配置されている。これにより、X線の照射によってターゲットから放出された蛍光X線が効率良くキャピラリー管集合体に入射することになる。よって、このX線発生装置によれば、蛍光X線の発生効率を向上させることができる。
【0008】
ここで、複数のキャピラリー管は、キャピラリー管のそれぞれの中心線がキャピラリー管の他端よりも下流側の所定の点において交わるように配置されていることが好ましい。この構成によれば、所定の点に収束する蛍光X線を得ることができる。
【0009】
或いは、複数のキャピラリー管は、キャピラリー管のそれぞれの中心線が互いに平行となるように配置されていることが好ましい。この構成によれば、コリメートされた蛍光X線を得ることができる。
【0010】
また、キャピラリー管集合体の一端面には有機膜が配置されており、ターゲットは有機膜の一端面及び他端面の少なくとも一方に形成されていることが好ましい。この構成によれば、キャピラリー管集合体の一端面に膜状のターゲットを確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛍光X線の発生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のX線発生装置の構成図である。
【図2】図1のX線発生装置のキャピラリー管集合体の構成図である。
【図3】図1のX線発生装置のキャピラリー管の構成図である。
【図4】本発明の他の実施形態のX線発生装置の構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のX線発生装置の構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態のキャピラリー管集合体の一端面の拡大図である。
【図7】本発明の他の実施形態のキャピラリー管集合体の斜視大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0014】
図1に示されるように、第1の実施形態のX線発生装置1は、ターゲットTを収容するチャンバ2を備えている。チャンバ2には、出射部3aがチャンバ2内に位置するようにX線管(X線源)3が固定されている。X線管3は、ターゲットTに照射するためのX線を出射部3aからターゲットTに向けて出射する。ターゲットTは、このX線の照射によって励起され、蛍光X線を放出する。なお、チャンバ2内は、所定の真空度に真空引きされたり、ヘリウムや窒素等によってガス置換されたりする。
【0015】
さらに、チャンバ2には、一端面4aがチャンバ2内に位置しかつ他端面4bがチャンバ2外に臨むようにキャピラリー管集合体4が固定されている。キャピラリー管集合体4は、複数本のキャピラリー管5が束ねられて一体化されたものであり、円柱状を成している(直径10mm程度、長さ20mm程度)。キャピラリー管集合体4の一端面4aは、キャピラリー管5の一端5aの集合(二次元配列)によって形成されており、キャピラリー管集合体4の他端面4bは、キャピラリー管5の他端5bの集合(二次元配列)によって形成されている。キャピラリー管5は、ガラスからなる中空細管(内径5μm〜20μm程度)であり、X線の照射によってターゲットTから放出された蛍光X線を一端5aから他端5bに伝播する。
【0016】
図2に示されるように、各キャピラリー管5は、他端5bに近付くに従って徐々に径が小さくなるように形成されている。束ねられた複数本のキャピラリー管5は、各キャピラリー管5の中心線がキャピラリー管5の他端5bよりも下流側(蛍光X線の進行方向における下流側)の所定の点Pにおいて交わるように配置されている。これらにより、キャピラリー管集合体4は、所定の点P側に先細りとなる円錐台状を成している。なお、キャピラリー管集合体4の一端面4aは、X線管3の出射部3aに対向するように傾斜している。
【0017】
ターゲットTは、例えばチタンやタングステン等によって膜状(厚さ数μm程度)に形成されている。膜状に形成されたターゲットTは、キャピラリー管集合体4の一端面4aに直接配置されている。なお、ターゲットTの材料としては、X線発生装置1に出射させるべき所定の波長範囲の蛍光X線を放出する材料が選ばれる。
【0018】
以上のように構成されたX線発生装置1では、図1に示されるように、X線管3からX線が出射されて当該X線がターゲットTに照射されると、ターゲットTが励起されて、ターゲットTから所定の波長範囲の蛍光X線が放出される。この所定の波長範囲の蛍光X線は、キャピラリー管集合体4の一端面4aからキャピラリー管集合体4に入射した後、キャピラリー管集合体4の他端面4bから出射される。
【0019】
このとき、図3に示されるように、キャピラリー管5の一端5aからキャピラリー管5内に入射した蛍光X線のうち、キャピラリー管5の内面に当たらない角度で入射したものは、直接、キャピラリー管5の他端5bから外部に出射する。キャピラリー管5の内面に当たる角度で入射した蛍光X線のうち、キャピラリー管5の内面に対して臨界角以内の角度で入射したものは、キャピラリー管5の内面で全反射されつつ、キャピラリー管5の他端5bから外部に出射する。従って、図2に示されるように、キャピラリー管集合体4の他端面4bから出射された蛍光X線は、所定の点Pに所定のスポット径で収束することになる。
【0020】
以上説明したように、第1の実施形態のX線発生装置1においては、キャピラリー管集合体4の一端面4aにターゲットTが膜状に配置されている。これにより、X線の照射によってターゲットTから放出された蛍光X線が効率良くキャピラリー管集合体4に入射することになる。よって、第1の実施形態のX線発生装置1によれば、蛍光X線の発生効率を向上させることができる。
【0021】
また、束ねられた複数本のキャピラリー管5は、各キャピラリー管5の中心線がキャピラリー管5の他端5bよりも下流側の所定の点Pにおいて交わるように配置されている。これにより、所定の点Pに収束する蛍光X線を得ることができる。
【0022】
なお、キャピラリー管集合体4の一端面4aに対する励起用X線(X線管3から出射されたX線)の入射角は、励起用X線の少なくとも一部がターゲットTを透過して外部に出射しない角度であれば、励起用X線の利用効率を高める観点から、できる限り小さいことが好ましい。X線発生装置1では、各キャピラリー管5の中心線方向がキャピラリー管集合体4の長手方向となるようにキャピラリー管集合体4が形成されていることで、キャピラリー管集合体4の一端面4aに対する励起用X線の入射角をより小さくすることが可能となっている。
【0023】
また、上述したX線発生装置1では、X線管3の光軸とキャピラリー管集合体4の光軸とが垂直となるようにX線管3及びキャピラリー管集合体4が配置されていたが、これに限定されない。例えば、図4に示されるように、キャピラリー管集合体4の一端面4aと他端面4bとが平行な場合等には、X線管3の出射部3aがキャピラリー管集合体4の一端面4aに対向するように、X線管3が傾斜していてもよい。この場合にも、キャピラリー管集合体4の一端面4aに対する励起用X線の入射角は、励起用X線の少なくとも一部がターゲットTを透過して外部に出射しない角度であれば、できる限り小さいことが好ましい。
[第2の実施形態]
【0024】
第2の実施形態のX線発生装置1は、キャピラリー管集合体4の形状及び機能において、第1の実施形態のX線発生装置1と主に相違している。以下、第1の実施形態のX線発生装置1との相違点を中心に、第2の実施形態のX線発生装置1について説明する。
【0025】
図5に示されるように、各キャピラリー管5は、全長に渡って径が一定となるように形成されている。束ねられた複数本のキャピラリー管5は、各キャピラリー管5の中心線が互いに平行となるように配置されている。これらにより、キャピラリー管集合体4は、円柱状を成している。なお、キャピラリー管集合体4の一端面4aは、X線管3の出射部3aに対向するように傾斜している。
【0026】
第2の実施形態のX線発生装置1においても、第1の実施形態のX線発生装置1と同様に、キャピラリー管集合体4の一端面4aにターゲットTが膜状に配置されている。これにより、X線の照射によってターゲットTから放出された蛍光X線が効率良くキャピラリー管集合体4に入射することになる。従って、第2の実施形態のX線発生装置1よっても、蛍光X線の発生効率を向上させることができる。
【0027】
また、束ねられた複数本のキャピラリー管5は、各キャピラリー管5の中心線が互いに平行となるように配置されている。これにより、コリメートされた蛍光X線を得ることができる。
【0028】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、図6に示されるように、キャピラリー管集合体4の一端面4aに有機膜Fを配置し、有機膜Fの一端面及び他端面の少なくとも一方にターゲットTを形成してもよい。より具体的には、図6(a)に示されるように、有機膜Fの一端面にターゲットTを形成したり、図6(b)に示されるように、有機膜Fの一端面及び他端面にターゲットTを形成したりしてもよい。これにより、キャピラリー管集合体4の一端面4aに膜状のターゲットTを確実に形成することが可能となる。そして、この場合にも、上記実施形態と同様に、キャピラリー管集合体4の一端面4aにターゲットTが膜状に配置されることになるので、X線の照射によってターゲットTから放出された蛍光X線を効率良くキャピラリー管集合体4に入射させることができる。なお、この場合、有機膜Fの一端面及び他端面の少なくとも一方にターゲットTを蒸着によって形成し、その後に、キャピラリー管集合体4の一端面4aに、ターゲットTが形成された有機膜Fを配置すればよい。
【0030】
また、キャピラリー管集合体4に形状は、円錐台状や円柱状に限定されない。一例として、図7に示されるように、蛍光X線を所定の線L上に収束させる場合には、キャピラリー管集合体4の光軸に垂直かつ所定の線Lに垂直な方向においてのみ所定の線L側に先細りとなるようにキャピラリー管集合体4を形成すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1…X線発生装置、3…X線管(X線源)、4…キャピラリー管集合体、4a…一端面、4b…他端面、5…キャピラリー管、5a…一端、5b…他端、T…ターゲット、F…有機膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出射するX線源と、
前記X線の照射によって蛍光X線を放出するターゲットと、
前記蛍光X線を一端から他端に伝播するキャピラリー管を複数含むキャピラリー管集合体と、を備え、
前記キャピラリー管集合体は、前記キャピラリー管の前記一端の集合によって形成された一端面を有し、前記ターゲットは、前記キャピラリー管集合体の前記一端面に膜状に配置されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
複数の前記キャピラリー管は、前記キャピラリー管のそれぞれの中心線が前記キャピラリー管の前記他端よりも下流側の所定の点において交わるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
複数の前記キャピラリー管は、前記キャピラリー管のそれぞれの中心線が互いに平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記キャピラリー管集合体の前記一端面には有機膜が配置されており、前記ターゲットは前記有機膜の一端面及び他端面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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