説明

X線質量測定装置

【課題】測定物が連続体であっても、製品になる前の連続体の物理量を算出でき、製品となったときの質量などの物理量の過不足を事前に発見でき、連続体の製造工程にフィードバックでき、作業効率を向上させることができるX線質量測定装置を提供する。
【解決手段】連続体10を延在方向に搬送する搬送部2と、搬送部2により搬送中の連続体10に対しX線を照射するX線発生源3と、連続体10を透過したX線の透過量を検出するX線検出器4と、連続体の一部を単位ブロックとして設定する単位ブロック設定手段と、X線検出器4で検出された透過量に基づいて、連続体10の単位ブロックの領域において吸収されたX線の吸収量を単位X線吸収量として算出するX線吸収量算出手段82aと、連続体10の搬送方向における一定区間の単位X線吸収量の移動平均を算出するX線吸収量移動平均算出手段84aと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の被測定物にX線を照射してそのX線の透過量に基づいて、被測定物の質量を測定するX線質量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線質量測定装置は、食品工場などの生産ラインに組み込まれて、食品などの被測定物の質量を測定するとともに、食品などの被測定物内に混入した異物を検出するようになっている。
【0003】
この種のX線質量測定装置として、被測定物を搬送する搬送路と、搬送路上の被測定物にX線を照射するX線源と、被測定物を透過したX線の透過量を検出するX線検出器と、X線検出器により検出されたX線の透過量に基づいて被測定物の体積を測定する体積測定部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のX線質量測定装置においては、搬送中の被測定物に対してX線源からX線が照射されると、被測定物を透過したX線の透過量がX線検出器により検出され、検出されたX線の透過量に基づいて体積測定部により被検査物の体積が測定され、測定された被測定物の体積に、予め記憶しておいた単位体積あたりの質量を乗算することにより被測定物の質量が測定されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−300887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来のX線質量測定装置においては、被測定物が、例えば帯状のような連続体であり、搬送路の下流側に設置した切断機などにより切断された後に、製品となるようなものの場合には、個々の被測定物毎にX線の透過量を検出して質量を測定するという従来の質量測定方法では、連続体における製品となる一部分の質量を測定することが困難であった。その結果、個々の製品が所定の質量の範囲内にある良品であるか否かの選別は、連続体の段階では行うことができず、製品の段階でX線を照射しそのX線の透過量を検出して質量を測定するか、重量選別機などにより重量を測定してその良否を選別するという方法を採らざるを得なかった。
このような連続体における製品となる一部分の質量に過不足が生じた結果、製品が不良品となるような場合には、被測定物が連続体の状態で良否の選別ができないので、連続体の切断から製品にするまでの作業工数が無駄となり作業効率が低下してしまうという問題があった。例えば、連続体が帯状の食品生地の場合には、食品生地から複数の生地片に切断した後、製品の状態にならなければ、質量の過不足を発見することができないという問題があった。特に生地片をオーブンで焼成した後に製品にする場合には、比較的長時間を要するオーブンでの焼成工数が無駄となってしまい、作業効率が大幅に低下してしまうという問題があった。このように、従来のX線質量測定装置においては、被測定物が連続体である場合に、連続体における製品となる部分の質量や体積などの物理量を測定することができなかったので、連続体の状態での質量や体積などのばらつき傾向や品質の良否の情報が得られず、上流側の生産ラインにフィードバックすることができなかった。その結果、連続体の状態における連続体の欠陥の情報を、連続体の製造工程に反映できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、被測定物が連続体であっても、製品になる前の連続体の物理量を算出でき、製品となったときの質量などの物理量の過不足を事前に発見でき、連続体の製造工程にフィードバックでき、作業効率を向上させることができるX線質量測定装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線質量測定装置においては、上記目的を達成するため、(1)連続体を延在方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送中の前記連続体に対しX線を照射するX線照射手段と、前記連続体を透過した前記X線の透過量を検出するX線透過量検出手段と、前記連続体の一部を単位ブロックとして設定する単位ブロック設定手段と、前記X線透過量検出手段で検出された透過量に基づいて、前記連続体の前記単位ブロックの領域において吸収されたX線の吸収量を単位X線吸収量として算出するX線吸収量算出手段と、前記連続体の前記搬送方向における一定区間の前記単位X線吸収量の移動平均を算出する移動平均算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成により、連続体が搬送手段により搬送されると、搬送中にX線照射手段によりX線が照射される。この連続体を透過したX線は、複数の検出デバイスによりその透過量が検出され、X線透過量検出手段によりX線透過量信号が検出デバイス毎に順次出力される。このX線透過量信号は、X線透過量検出手段により検出された透過量からX線吸収量算出手段により連続体の単位X線吸収量として算出され、さらに移動平均算出手段により、単位X線吸収量の移動平均が算出される。
【0009】
ここで移動平均とは、同一時系列の所定期間のデータにおける一定区間のデータの相加平均を算出し、この一定区間を順次移動させながら一定区間毎に算出した相加平均を意味する。例えば、一定区間内の一番古いデータを1個除外し、新たなデータ1個を追加して一定区間の相加平均を順次算出する。このように一定区間が順次移動するので、例えば、データに特異な変動があるとき、その変動は平滑化されデータの増加、減少傾向が好適に把握される。
【0010】
また、上記(1)に記載のX線質量測定装置は、(2)前記単位ブロック設定手段は、前記連続体の幅方向に並列に複数設定されるよう構成される。
【0011】
この構成により、連続体の幅方向に並列して複数の単位ブロックが設定される。
【0012】
また、上記(1)または(2)に記載のX線質量測定装置は、(3)前記連続体に吸収された単位X線吸収量から質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶手段と、前記X線吸収量算出手段によって算出された前記単位X線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された前記質量換算係数とに基づいて前記連続体の前記単位ブロックの領域における質量を単位質量として算出する質量算出手段とを備え、前記移動平均算出手段は、さらに前記単位質量の移動平均を算出するよう構成してもよい。
【0013】
この構成により、質量換算係数が使用され単位ブロックの領域における単位質量が算出され、さらに質量移動平均算出手段により、単位質量の移動平均が算出される。
【0014】
また、上記(1)から(3)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(4)前記連続体に吸収された単位X線吸収量から体積に換算するための体積換算係数を予め記憶する体積換算係数記憶手段と、前記X線吸収量算出手段によって算出された前記単位X線吸収量と前記体積換算係数記憶手段に記憶された前記体積換算係数とに基づいて前記連続体の前記単位ブロックの領域における体積を単位体積として算出する体積算出手段とを備え、
前記移動平均算出手段は、さらに前記単位体積の移動平均を算出するよう構成される。
【0015】
この構成により、体積換算係数が使用され単位ブロックの領域における単位体積が算出され、さらに体積移動平均算出手段により、単位体積の移動平均が算出される。
【0016】
また、上記(1)ないし(4)に記載のX線質量測定装置は、(5)前記移動平均算出手段により算出された前記単位X線吸収量の前記移動平均、前記単位質量の前記移動平均および前記単位体積の前記移動平均の少なくともいずれかを出力する移動平均出力手段をさらに備えてもよい。
【0017】
この構成により、移動平均出力手段により、単位X線吸収量の移動平均、単位質量の移動平均および単位体積の移動平均が算出されるので、X線質量測定装置の外部からも各移動平均が把握される。
【0018】
また、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(6)前記移動平均算出手段により算出された時間的に前後する前記移動平均同士を比較して前記単位X線吸収量の前記移動平均、前記単位質量の前記移動平均および前記単位体積の前記移動平均の少なくともいずれかの増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出する移動平均傾向算出手段をさらに備えてもよい。
【0019】
この構成により、移動平均傾向算出手段により、単位ブロック毎に算出された単位X線吸収量、単位質量および単位体積の移動平均の傾向が算出されるので、連続体におけるこれらの物理量の傾向がさらに把握され易くなる。
【0020】
また、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のX線質量測定装置は、(7)前記移動平均傾向算出手段により算出された前記単位X線吸収量の前記移動平均傾向、前記単位質量の前記移動平均傾向および前記単位体積の前記移動平均傾向の少なくともいずれかを出力する移動平均傾向出力手段をさらに備えてもよい。
【0021】
この構成により、単位X線吸収量の移動平均傾向、単位質量の移動平均傾向および単位体積の移動平均傾向の少なくともいずれかが把握されるだけでなく、移動平均傾向出力手段により出力されるので、X線質量測定装置の外部からも各移動平均傾向が把握される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係るX線質量測定装置によれば、単位ブロック設定手段により、連続体の一部が単位ブロックとして設定され、X線吸収量算出手段によりX線透過量検出手段で検出された透過量から、単位ブロックの領域において吸収された単位X線吸収量が算出される。この単位X線吸収量を把握することにより、単位ブロックにおける単位質量、単位体積を算出する基礎データを構築することができる。また、単位X線吸収量の移動平均が移動平均算出手段により算出され、連続体の単位ブロック毎の単位X線吸収量の傾向を把握することが可能となる。すなわち、単位X線吸収量の移動平均が算出されるので、連続体における単位X線吸収量に特異な変動があるときでも、その変動は平滑化され単位X線吸収量が適切に把握されるので、連続体の製品となる部分の単位X線吸収量の傾向を加工されて製品となる前に把握することができる。例えば、単位X線吸収量の移動平均の結果から連続体の単位ブロックの領域内に欠陥があることが発見された場合には、その後に実施される作業工程をストップさせることが可能となり、無駄な作業の発生を未然に防止することができ、作業効率が向上する。さらに、連続体の単位ブロック内に生じた欠陥の情報が、連続体の製造装置にフィードバックされ、連続体の状態で発見された欠陥部分が生じないよう連続体の製造装置のローラ部の調整などに反映される。
【0023】
請求項2に係るX線質量測定装置によれば、さらに製品として加工される前の連続体の幅方向に並列に複数の単位ブロックが設定されるので、連続体の列方向の単位ブロック毎の単位X線吸収量の移動平均の傾向を把握するだけでなく、連続体の幅方向の単位ブロック毎の単位X線吸収量の移動平均の傾向を把握することができる。そのため、連続体の単位X線吸収量の移動平均をよりきめ細かく把握することができる。また、単位ブロックが列方向および幅方向に設定されるので、各単位ブロックの連続体における位置関係を座標として設定すれば、数値的処理手段により、連続体の単位X線吸収量の移動平均と単位ブロックの位置とを対応させ、連続体の単位X線吸収量の傾向およびその単位X線吸収量の傾向に対応した位置を把握することもできる。
【0024】
請求項3に係るX線質量測定装置によれば、さらに質量換算係数とX線吸収量算出手段によって算出された単位X線吸収量とにより、連続体の単位ブロックの領域における単位質量とその移動平均が算出されるので、簡単な処理により単位質量の移動平均を把握することができる。
【0025】
請求項4に係るX線質量測定装置によれば、さらに体積換算係数とX線吸収量算出手段によって算出された単位X線吸収量とにより、連続体の単位ブロックの領域における単位体積とその移動平均が算出されるので、簡単な処理により単位体積の移動平均を把握することができる。
【0026】
請求項5に係るX線質量測定装置によれば、さらに移動平均出力手段により、単位X線吸収量の移動平均、単位質量の移動平均および単位体積の移動平均の少なくともいずれかが出力されるので、生産ラインの上流側に設置された出力先の機器などに各移動平均がフィードバックされる。例えば、連続体の体積や質量にばらつきがあったものについて、その状態が出力されると、欠陥のない連続体を製造するよう出力先の連続体の製造工程にそれらの傾向を反映させることができる。また、出力先が表示部である場合には、これらの体積や質量などの傾向を、三次元で表示させることもでき、オペレータなどに視覚を通じて、連続体の傾向を把握させることができる。
【0027】
請求項6に係るX線質量測定装置によれば、さらに移動平均傾向算出手段により、単位X線吸収量の移動平均傾向、単位質量の移動平均傾向および単位体積の移動平均傾向の少なくともいずれかの移動平均傾向が算出されるので、これらの移動平均に加えてその傾向が把握され、連続体の品質の状態をより的確に把握することができる。
【0028】
請求項7に係るX線質量測定装置によれば、さらに移動平均傾向出力手段により、単位X線吸収量の移動平均傾向、単位質量の移動平均傾向および単位体積の移動平均傾向の少なくともいずれかが出力されるので、生産ラインの上流側に設置された出力先の機器などに各移動平均傾向がフィードバックされる。例えば、連続体の体積や質量にばらつきがあったものについて、その移動平均傾向が出力されると、欠陥のない連続体を製造するよう出力先の連続体の製造工程にそれらの傾向を反映させることができる。また、出力先が表示部である場合には、これらの体積や質量などの傾向を、三次元で表示させることもでき、オペレータなどに視覚を通じて、連続体の傾向を把握させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るX線質量測定装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)〜図7は本発明に係るX線質量測定装置の実施の形態を示している。
【0030】
図1(a)および図2に示すように、X線質量測定装置1は、搬送手段としての搬送部2と、X線照射手段としてのX線発生源3と、X線透過量検出手段としてのX線検出器4と、投受光部5と、図5に示す表示・操作部6と、単位ブロック設定手段としての設定部7と、制御部8、出力部9と、により構成される。
【0031】
X線質量測定装置1は、被測定物としての連続体を搬送する搬送ラインの一部に設置され、上流から搬送されてくる連続体の単位X線吸収量と、単位X線吸収量の移動平均と、単位質量と、単位質量の移動平均と、単位体積と、単位体積の移動平均と、単位X線吸収量、単位質量および単位体積の移動平均傾向などの物理量や統計値を算出し、出力部9から必要に応じて算出結果を出力するよう構成されている。
【0032】
本発明に係るX線質量測定装置においては、連続体は、例えば、帯状の食品生地などのX線を透過しその透過量に基づいて質量を測定しうるものであればよい。
【0033】
搬送部2は、4つのローラ2a、2b、2c、2dとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト2eとにより構成される。搬送部2においては、食品の生地からなる各種の帯状の連続体10が搬送されるようになっており、X線発生源3で生成されるX線が搬送中の連続体10に対して略垂直に照射されるようになっている。この搬送部2においては、ローラ2aに接続された図示しない駆動モータの駆動により予め設定された一定の搬送速度で連続体10が搬送されるようになっている。
【0034】
X線発生源3は、搬送部2の上方に所定の高さで離隔し、かつ搬送ベルト2eの下部に設けられているX線検出器4と対向して配置されている。X線発生源3においては、例えば、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管が絶縁油により浸漬されており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成するようになっている。X線管は、その長手方向が連続体10の搬送方向になるよう配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器4に向けて、箱体底面にX線管の長手方向に沿って形成された不図示のスリットにより、搬送方向と直交する幅方向に略三角形状のスクリーン状に照射されるようになっている。
【0035】
X線検出器4は、図1(b)に示すように、連続体10に対して照射され透過したX線の透過量を検出するよう、例えば、フォトダイオードなどからなる検出デバイス4aと、検出デバイス4a上に設けられた図示しないシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサ4bとにより構成されている。
この検出デバイス4aは、連続体10の搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に1ライン上に等間隔で複数個配置されている。具体的には、検出デバイス4aは、1ライン上に所定のピッチで複数個配置されており、シンチレータはX線のエネルギーを吸収し蛍光を発するようになっている。
【0036】
このX線検出器4においては、連続体10に対してX線発生源3からX線が照射され、連続体10を透過したX線をシンチレータで受けて光に変換するようになっている。さらに、シンチレータで変換された光は、その下部に配置される検出デバイス4aによって受光されるようになっている。また、各検出デバイス4aは、受光した光を電気信号に変換し、X線透過量信号として検出デバイス4a毎に順次出力するようになっている。すなわち、複数個の検出デバイス4aにより検出され変換された、複数個のX線透過量信号は、所定のスキャン速度でスキャンされ、図示しないA/D変換部でA/D変換された後、検出データ記憶部81に格納されるようになっている。
【0037】
投受光部5は、一対の投光部5aおよび受光部5bにより構成され、搬送部2の搬入口側に配置されている。投光部5aは搬送ベルト2eの一側面に位置し、受光部5bは搬送ベルト2eの他の側面で投光部5aに対向するように位置し、連続体10が投光部5aおよび受光部5bの間を通過すると連続体10により受光部5bが遮光されるようになっており、連続体10が搬入されたことが検出される。
【0038】
表示・操作部6は、図5に示すように、タッチパネルなどで構成されており、表示機能を有するディスプレイモニタ6aおよび操作機能を有するマトリクス・スイッチ6bからなる。ディスプレイモニタ6aとマトリクス・スイッチ6bは必要に応じて切り替えられるようになっている。ディスプレイモニタ6aおよびマトリクス・スイッチ6bは表示の一例であり、全画面をディスプレイモニタ6aまたはマトリクス・スイッチ6bに切り替えることもでき、画面の一部分のみを、をディスプレイモニタ6aまたはマトリクス・スイッチ6bに切り替えることもできる。適宜必要に応じて、画面が切り替えられるようになっている。
【0039】
ディスプレイモニタ6aは、例えば、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを有し、数字表示部分6c、連続体10における単位体積や単位質量の移動平均傾向の三次元グラフ6d、X線質量測定装置1のモードの1つであり、測定条件などの設定を行うモードである条件設定モード6eや各種算出処理が実行されるモードである算出実行モード6f、エンターキー6gと、ストップスイッチ6hと、スタートスイッチ6iと、テンキー6jと、画面切替スイッチ6kなどが表示されるようになっている。
【0040】
マトリクス・スイッチ6bは、ディスプレイモニタ6aと同様に、条件設定モード6e、算出実行モード6f、エンターキー6gと、ストップスイッチ6hと、スタートスイッチ6iと、テンキー6jと、画面切替スイッチ6kなどが表示されるとともに、タッチスイッチとしても機能し、それらの表示部分をタッチすることにより表示された機能が実行されるよう構成されている。
【0041】
例えば、テンキー6jは、各種設定における数値を入力でき、入力された数字が数字表示部6cに表示されるようになっている。条件設定モード6eにおいて、設定部7で設定した設定データを入力することができる。
【0042】
本実施の形態のX線質量測定装置1における表示・操作部6は、表示機能および操作機能を兼ね備えたタッチパネルで構成した場合について説明したが、本発明に係るX線質量測定装置における表示・操作部は、表示部と操作部を別々の機器で構成してもよい。
また、操作部に、メモリカードなどの記録媒体から設定情報などを入力する機能を付加してもよい。例えば、USBフラッシュメモリ、CFカード、SDメモリカードなどの記憶媒体に記憶されている設定情報を読み取る情報読取り機能を付加してもよい。
【0043】
設定部7は、連続体10の一部を単位ブロックとして設定するよう構成されている。
具体的には、図3に示すように、単位ブロックは、連続体10の長さ方向においてはブロック数または時間により設定され、幅方向においては、割数が指定され、等分に分割するか、または分割幅が指定され、中心から両端に向けて分割幅間隔で領域が設定される。
設定された単位ブロックは、後述する記憶手段83に記憶されるとともに、後述する測定部82で利用される。また、単位ブロックの設定操作を、例1ないし例4に示すように、表示・操作部6に表示された設定画面に空欄に表示・操作部6のテンキー6jから入力するようにしてもよい。例1は、ブロック長(mm)、ブロック幅(mm)およびブロック数を新たに設定して入力する例であり、例2は、例1のブロック幅(mm)に代えて列数を新たに設定して入力する例である。また、例3は、集計長(mm)およびブロック幅(mm)のみを新たに設定して入力するもので、例4は、集計時間(ms)、列数のみを新たに設定して入力する例である。例3および例4は、予めX線質量測定装置1の内部で搬送方向のブロック長(例えば、10素子分相当または最小単位の素子分)を基準値として持っている場合の例であり、この場合にはX線質量測定装置1のオペレータは、連続体10の幅方向の分割と移動平均化の長さを設定するので、単位ブロックのブロック長などを意識しないで済むので、簡単に設定することができる。
【0044】
制御部8は、ハードディスクなどの記録媒体、集積回路などの電子回路からなり、図2に示すように、検出データ記憶部81と、測定部82と、記憶手段83と、移動平均算出部84と、移動平均傾向算出部85と、X線発生源3を駆動させるX線発生源駆動回路と、X線検出器4を駆動させるX線検出器駆動回路と、モータを駆動させるモータ駆動回路とを含んで構成されている。この制御部8は、別個に設けたパーソナルコンピュータ(PC)などのコンピュータにより構成してもよい。
【0045】
検出データ記憶部81は、例えば、RAMなどのリード/ライト可能な半導体メモリからなる。検出データ記憶部81には、1ライン(Y軸方向)あたり複数個のX線透過量信号が、少なくとも搬送される連続体10の品種の特性などに対応した所定ライン数が格納されるようになっている。
【0046】
測定部82は、X線吸収量算出手段82aと、質量算出手段82bと、体積算出手段82cとを含んで構成されている。
【0047】
X線吸収量算出手段82aは、各透過領域におけるX線の透過量から透過領域のX線吸収量を算出し合算することで所望の領域において吸収されたX線の吸収量を単位X線吸収量として算出するようになっている。すなわち、透過領域の面積は、図3に示すように、連続体10の最小単位である単位ブロックの面積を示しており、単位ブロックはブロック幅およびブロック長により画成されている。連続体10の各透過領域の単位X線吸収量を算出することにより、各透過領域における質量および体積を、質量換算係数および体積換算係数により算出することができる。
【0048】
ここで、X線の吸収量と質量の関係について説明する。
X線の照射量をI、X線の透過量をI、連続体10の最小単位の吸収率をμ、連続体10の透過領域における厚みをxとすると、X線の吸収量Tは、次式(1)が成り立つ。
T=logI−logI=μx (1)
式(1)は、X線吸収量がゼロの照射量IとX線の透過量をIとの差分であることを示し、X線の照射量をIはX線吸収量がゼロであるときのX線の透過量である。
すなわち、搬送ベルト2e上に搬送物である連続体10が無い状態で検出したX線の透過量がX線の照射量Iとなる。
【0049】
また、X線の吸収率μは、λをX線波長、ρを搬送物である連続体10の密度、Zを原子番号、Cを定数とすると、次式(2)の関係を有している。
μ=λρZC (2)
【0050】
一方、透過領域における搬送物である連続体10の質量Mは、透過領域における厚みxに透過領域の面積を乗じた体積Vに対し、密度ρを乗じた値であるから、質量とX線吸収量の関係は次式(3)のようになる。
T=λρZC・M/S (3)
式(3)は、X線吸収量とその面積の積が、質量に比例することを示している。
【0051】
また、式(3)の透過領域の面積Sは、連続体10の最小単位面積を示しているから、所望の大きさの領域における質量mとX線吸収量の関係は、1/λρZCをαに置き換えて表すと式(3)から次式(4)のようになる。
m=α・ΣT (4)
つまり、X線照射条件と物性が同じならばαは一定値となり、所望の領域における質量は、所望の領域内の各透過領域毎に算出されるX線吸収量を合算して求められる所望の領域内のX線吸収量にα(質量換算係数)を乗算して求めることができる。
【0052】
X線吸収量算出手段82aは、X線質量測定装置1の動作モードが分割領域質量測定モードの場合には、検出データ記憶部81に書き込まれた透過データのうち分割領域を構成する各透過領域に対応した透過データを読み出し、上記した式(1)から分割領域内の各透過領域のX線吸収量を算出し、合算することにより分割領域内のX線吸収量を算出するようにしている。
【0053】
一方、質量測定装置1の動作モードが単位質量測定モードの場合には、マスターワーク全体の各透過領域に対応した透過データを読み出し、上記した式(1)からX線吸収量を算出し、合算することによりマスターワーク全体のX線吸収量を算出するようにしている。
【0054】
質量算出手段82bは、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と予め質量換算係数記憶部83aに記憶されている質量換算係数αを乗算することにより、単位ブロック内の質量を測定するようになっている。
具体的には、質量換算係数αは、図外の秤により測定されたマスターワークの質量が、単位質量測定モードの状態で算出されたマスターワーク全体のX線吸収量により除算されることにより算出されるようになっている。算出された質量換算係数αは、質量換算係数記憶部83aに記憶されている。
【0055】
体積算出手段82cは、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と予め体積換算係数記憶部83bに記憶されている体積換算係数βを乗算することにより、単位ブロック内の体積を測定するようになっている。
【0056】
具体的には、体積換算係数βは、図外の秤により測定されたマスターワークの質量に既知である密度を乗じた体積が、単位質量測定モードの状態で算出されたマスターワーク全体のX線吸収量により除算されることにより算出されるようになっている。算出された体積換算係数βは、体積換算係数記憶部83bに記憶される。または、単位質量測定モードの状態で算出されたマスターワーク全体のX線吸収量を算出した後、図外の容積測定装置によりマスターワークの容積を算出したマスターワーク全体の容積を測定し、測定されたマスターワークの容積を算出したマスターワーク全体のX線吸収量で除算するようにしてもよい。
【0057】
記憶手段83は、質量換算係数記憶部83aと、体積換算係数記憶部83bとを含んで構成されており、質量換算係数記憶部83aには質量換算係数αが記憶され、体積換算係数記憶部83bには体積換算係数βが記憶されるようになっている。
【0058】
移動平均算出部84は、X線吸収量移動平均算出手段84aと、質量移動平均算出手段84bと、体積移動平均算出手段84cとを含んで構成されている。
【0059】
X線吸収量移動平均算出手段84aは、連続体10の搬送方向における一定区間の単位X線吸収量の移動平均を算出するよう構成されており、一定区間は、図3に示すように、長さ方向においてはブロック数または時間により設定され、幅方向においては、割数を指定し、等分に分割するか、または分割幅を指定し、中心から両端に向けて分割幅間隔で領域を設定される。質量移動平均算出手段84bは、連続体10の単位質量の移動平均を算出するよう構成されており、一定区間の単位質量の移動平均が算出されるようになっている。体積移動平均算出手段84cは、連続体10の単位体積の移動平均を算出するよう構成されており、一定区間の単位体積の移動平均が算出されるようになっている。
【0060】
移動平均傾向算出部85は、X線吸収量移動平均傾向算出手段85aと、質量移動平均傾向算出手段85bと、体積移動平均傾向算出手段85cとを含んで構成されている。
X線吸収量移動平均傾向算出手段85aにおいては、X線吸収量移動平均算出手段84aにより算出されたX線吸収量の移動平均の増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出するようになっている。質量移動平均傾向算出手段85bにおいては、質量移動平均算出手段84bにより算出された質量の移動平均の増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出するようになっている。体積移動平均傾向算出手段85cにおいては、体積移動平均算出手段84cにより算出された体量の移動平均の増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出するようになっている。
各移動平均は、図3に示す列数毎に実施し、例えば、列1の測定値を算出し、順次列n−1、列nのようにn列の各移動平均を算出するようになっている。
【0061】
出力部9は、A/D変換器やバッファなどを含む入力インターフェース回路、および、駆動回路などを含む出力インターフェース回路などからなり、移動平均出力手段9aと、移動平均傾向出力手段9bとを含んで構成されている。
移動平均出力手段9aは、X線吸収量移動平均算出手段84aにより算出されたX線吸収量の移動平均、質量移動平均算出手段84bにより算出された質量の移動平均、および体積移動平均算出手段84cにより算出された体量の移動平均を出力するようになっている。
【0062】
移動平均傾向出力手段9bは、X線吸収量移動平均傾向算出手段85aにより算出されたX線吸収量の移動平均傾向、質量移動平均傾向算出手段85bにより算出された質量の移動平均傾向、および体積移動平均傾向算出手段85cにより算出された体量の移動平均傾向を出力するようになっている。
【0063】
算出されたこれらの移動平均、移動平均傾向の出力先は、目的に応じて適宜選択され、例えば、生産ラインの上流側に設置された生産機器や表示機器、または表示・操作部6に出力するようにしてもよい。表示・操作部6に出力する場合には、出力部9において算出結果をディスプレイモニタ6aに表示するための表示処理を行った後、表示データとして出力するようにしてもよい。
【0064】
次に、本発明に係るX線質量測定装置1における連続体10の物理量の測定処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
まず、連続体10の単位体積、単位質量などの物理量を測定しようとするオペレータにより、表示・操作部6の表示が画面切替スイッチ6kにより切り替え、マトリクス・スイッチ6bの状態にされる。続いて、オペレータにより、質量換算係数α、体積換算係数β、連続体10の単位ブロックの質量を表す単位質量や、連続体10の品種その他の測定条件などの設定データが予め設定入力される(ステップS11)。
予め記憶手段83にこれらの設定データが書き込まれている場合には、例えば、連続体10の品種のみ設定入力され入力作業が軽減される。
【0066】
次いで、生産ラインの上流側の機器で連続体10の搬送が開始されると、投受光部5により連続体10の搬入が検出される(ステップS12)。
【0067】
次いで、X線がX線発生源3からX線検出器4に向けて略三角形状のスクリーン状に照射される(ステップS13)。連続体10が、照射されているX線スクリーン内を通過すると、X線は連続体10内を透過する。
【0068】
X線が照射されると同時にX線検出器4は、ON状態となり、連続体10を透過した透過X線がX線検出器4に設けられたシンチレータに入力される。X線がシンチレータに入力され光に変換されると、X線検出器4に設けられた検出デバイス4aにより光が受光されて電気信号に変換され、検出デバイス4a毎に順次X線透過量信号として出力され、検出データ記憶部81に格納される(ステップS14)。
【0069】
次いで、X線吸収量算出手段82aにより、検出データ記憶部81に書き込まれた透過データのうち分割領域を構成する各透過領域に対応した透過データが読み出され、分割領域内の各透過領域のX線吸収量が算出され、これらが合算されて分割領域内のX線吸収量が算出される(ステップS15)。
【0070】
次いで、体積算出手段82cにより、予め体積換算係数記憶部83bに記憶されている体積換算係数βが読みだされ、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と、体積換算係数βとが乗算されて単位ブロック内の体積が算出される(ステップS16)。
【0071】
次いで、体積移動平均算出手段84cが実施され、体積算出手段82cにより算出された単位体積の移動平均が算出されるとともに、算出結果が移動平均出力手段9aにより出力される(ステップS17)。
【0072】
次いで、体積移動平均傾向算出手段85cが実施され、体積移動平均算出手段84cにより算出された連続体10の一定区間の単位体積の移動平均の増加傾向、減少傾向が算出されるとともに、算出結果が移動平均傾向出力手段9bにより出力される(ステップS18)。
【0073】
次いで、算出された単位体積の移動平均の増加傾向、減少傾向は、出力部9により外部機器、例えば生産ラインの上流側に設置された連続体10の製造機器などに出力されるとともに、図4および図5に示すように、三次元の立体画像として表示されるよう、出力部9により表示処理がなされ表示・操作部6のディスプレイモニタ6aに出力される(ステップS18)。なお、単位体積の移動平均の増加傾向、減少傾向だけでなく、体積算出手段12aにより算出された各透過領域の単位体積、体積移動平均算出手段12bにより算出された単位体積の移動平均も、生産ラインの上流側に設置された連続体10の製造機器などに出力してもよい。また、図4および図5に示すように、三次元の立体画像として表示されるよう、出力部9により表示処理を実行し、表示・操作部6のディスプレイモニタ6aに出力するようにしてもよい。
【0074】
このように、連続体10における各透過領域のX線吸収量、単位体積、単位体積の移動平均、単位体積の移動平均の増加傾向、減少傾向などの連続体10の品質に関する物理量の情報が生産ラインの上流側に設置された連続体10の製造機器に出力されると、これらの情報は、連続体10の製造機器の調整に利用される。例えば、X線吸収量は式(1)からわかるように被測定物の吸収率μが一定であれば、厚みxに比例しており、単位体積をその単位ブロックの面積で除算すれば厚みxが得られるので、X線吸収量および単位体積の変動は厚みxの変動に容易に換算することができ、連続体10の厚みxの単位ブロック毎の状態を把握することができる。
【0075】
したがって、図6(a)に示すように、連続体10が食品生地の場合、例えば、食品生地製造装置が、ローラ部21を含んで構成されており、ローラ部21が上側ローラ21aと下側ローラ21aとからなり、食品生地の原材料を上側ローラ21aと下側ローラ21bとの間を通過させて所定の厚みを有する食品生地に成形するものの場合に好適に出力された情報を利用することができる。具体的には、X線質量測定装置1から出力されフィードバックされた食品生地の厚みなどの物理量に基づいて、食品生地製造装置側で以下のような調整などを実施することができる。
【0076】
すなわち、図6(b)に示すように、連続体10の厚みxに欠陥があるときは、ローラ間隔Lを調整することができ、適正な厚みの食品生地にすることができる。また、図6(c)に示すように、連続体10の厚みxが傾斜しているなどの厚みxが均一でないという欠陥があるときは、ローラの平行度を調整することができ、適正な厚みの食品生地にすることができる。また、図6(d)に示すように、連続体10の厚みxに部分的な凹みがあるという欠陥があるときは、ローラにゴミなどの異物が付着しているので、異物除去を行うことができ、適正な厚みの食品生地にすることができる。また、図6(e)に示すように、連続体10の厚みxが均一でないという欠陥があるときは、ローラが偏心している場合があるので、偏心を無くすことができ、適正な厚みの食品生地にすることができる。また、図6(f)に示すように、連続体10の厚みxが均一でなく、細かな凹凸が生じているという欠陥があるときは、ローラを交換するなどしてローラの平面度の高いものにすることができ、適正な厚みの食品生地にすることができる。
【0077】
次いで、単位質量を算出するか否かが判断され(ステップS19)、算出を必要としない場合には、ステップS23に進み、測定処理を続行するか否かが判断され、続行する場合には、ステップS14に進み、搬送方向の次の単位ブロックについて測定処理が行われ、続行しない場合には測定処理は終了する。
【0078】
ステップS19において、単位質量を算出すると判断されたときは、質量算出手段82bが実施され、予め質量換算係数記憶部83aに記憶されている質量換算係数αが読みだされるとともに、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と、質量換算係数αとが乗算されて単位ブロック内の質量が算出される(ステップS20)。
【0079】
次いで、質量移動平均算出手段84bが実施され、質量算出手段82bにより算出された単位質量の移動平均が算出されるとともに、算出結果が移動平均出力手段9aにより出力される(ステップS21)。
【0080】
次いで、質量移動平均傾向算出手段85bが実施され、質量移動平均算出手段84bにより算出された連続体10の一定区間の単位体積の移動平均の増加傾向、減少傾向が算出されるとともに、算出結果が移動平均傾向出力手段9bにより出力される(ステップS22)。
【0081】
このように、連続体10における単位質量、単位質量の移動平均、単位質量の移動平均の増加傾向、減少傾向などの連続体10の品質に関する物理量の情報が生産ラインの上流側に設置された連続体10の製造機器に出力されると、これらの情報は、図6(a)〜(f)に示す、単位体積などによるフィードバックと同様に連続体10の製造機器の調整に利用される。また、図示しないが、連続体10の質量にばらつきがあるという欠陥があるときは、ローラ部21の成形の前工程である、原材料の混合状態や原材料の成分の比率などに問題があるので、原材料の混合生成工程を調整し適正な質量にすることができる。
【0082】
次いで、測定処理を続行するか否かが判断され(ステップS23)、続行する場合には、ステップS14に進み、搬送方向の次の単位ブロックについて測定処理が行われ、続行しない場合には測定処理は終了する。
【0083】
このように、本実施の形態に係るX線質量測定装置1においては、連続体10を延在方向に搬送する搬送部2と、搬送部2により搬送中の連続体10に対しX線を照射するX線発生源3と、連続体10を透過したX線の透過量を検出するX線検出器4と、連続体10の一部を単位ブロックとして、連続体の幅方向に並列に複数設定する設定部7と、X線検出器4で検出された透過量に基づいて、連続体10の単位ブロックの領域において吸収されたX線の吸収量を単位X線吸収量として算出するX線吸収量算出手段82aと、連続体10の搬送方向における一定区間の単位X線吸収量の移動平均を算出するX線吸収量移動平均算出手段84aとを備えたことを特徴としている。
【0084】
この場合、設定部7により、連続体10の一部が単位ブロックとして設定され、単位ブロックの領域において吸収されたX線の吸収量が、X線吸収量算出手段82aにより、単位X線吸収量として算出される。この単位X線吸収量は、単位ブロックの体積および質量を算出する際の基本的データとなっている。連続体10の一部が単位ブロックとして設定されるので、連続体10であってもその一部の物理量を測定することが可能となる。
また、一定区間の単位X線吸収量の移動平均がX線吸収量移動平均算出手段84aにより算出されるので、単位X線吸収量の連続体10における傾向を把握することができる。
【0085】
また、本実施の形態に係るX線質量測定装置1では、連続体10に吸収された単位X線吸収量から質量に換算するための質量換算係数αを予め記憶する質量換算係数記憶部83aと、X線吸収量算出手段82aによって算出された単位X線吸収量と質量換算係数記憶部83aに記憶された質量換算係数αとに基づいて連続体10の単位ブロックの領域における質量を単位質量として算出する質量算出手段82bとを備え、移動平均算出部84は、さらに単位質量の移動平均を算出することを特徴としている。
【0086】
この場合、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と予め質量換算係数記憶部83aに記憶されている質量換算係数αとを乗算することにより、単位ブロック内の単位質量およびその移動平均を算出することができるので、簡単な処理で連続体10の単位質量の傾向を把握することができる。
【0087】
また、本実施の形態に係るX線質量測定装置1では、連続体10に吸収された単位X線吸収量から体積に換算するための体積換算係数βを予め記憶する体積換算係数記憶部83bと、X線吸収量算出手段82aによって算出された単位X線吸収量と体積換算係数記憶部83bに記憶された体積換算係数βとに基づいて連続体10の単位ブロックの領域における体積を単位体積として算出する体積算出手段82cとを備え、体積移動平均算出手段84cにより単位体積の移動平均を算出することを特徴としている。
【0088】
この場合、X線吸収量算出手段82aにより算出された連続体10の単位ブロック内のX線吸収量と予め体積換算係数記憶部83bに記憶されている質量換算係数βとを乗算することにより、単位ブロック内の単位体積およびその移動平均を算出することができるので、簡単な処理で連続体10の単位体積の傾向を把握することができる。
【0089】
また、本実施の形態に係るX線質量測定装置1では、X線吸収量移動平均算出手段84aにより算出された単位X線吸収量の移動平均、質量移動平均算出手段84bにより算出された単位質量の移動平均および体積移動平均算出手段84cにより算出された単位体積の移動平均の少なくともいずれかを出力する移動平均出力手段9aをさらに備えている。また、移動平均算出部84により算出された時間的に前後する移動平均同士を比較して単位X線吸収量の移動平均を算出するX線吸収量移動平均傾向算出手段85a、単位質量の移動平均を算出する質量移動平均傾向算出手段85bおよび単位体積の移動平均を算出する体積移動平均傾向算出手段85cの少なくともいずれかの増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出する移動平均傾向算出部85をさらに備えたことを特徴としている。また、移動平均傾向算出部85により算出された単位X線吸収量の移動平均傾向、単位質量の移動平均傾向および単位体積の移動平均傾向の少なくともいずれかを出力する移動平均傾向出力手段9bをさらに備えたことを特徴としている。
【0090】
この場合、製品として加工される前の連続体10における、X線吸収量の移動平均およびその移動平均傾向、単位質量の移動平均およびその移動平均傾向、単位体積の移動平均およびその移動平均傾向が把握されるので、連続体10の製品となる部分の単位質量、単位体積の過不足を事前に発見することができる。例えば、連続体10の単位体積に欠陥があった場合には、その後に実施されるオーブンによる焼成工程などをストップさせることが可能となり、無駄な作業の発生を未然に防止することができ、作業効率を向上させることができる。また、連続体10の品質に関する物理量の情報が生産ラインの上流側に設置された連続体10の製造機器に出力されると、これらの情報は、連続体10の製造機器の調整に利用される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明に係るX線質量測定装置は、被測定物が連続体であっても、製品になる前の連続体の物理量を算出することができ、製品となったときの質量などの物理量の過不足を事前に発見することができ、作業効率を向上させることができるという効果を有し、被検査物の体積や質量を測定するX線質量測定装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置を示す斜視図であり、(b)は、X線検出器の上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置における連続体の単位ブロックの領域と食品生地の移動平均を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置における単位体積の移動平均を表す立体的表示の例である。
【図5】本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置における表示・操作部の正面図である。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置の上流側に設置された食品生地製造装置のローラ部を示す斜視図であり、(b)は、ローラの間隔が不適切な状態を示し、(c)は、ローラの平行度が不適切な状態を示し、(d)は、ローラにゴミが付着した状態を示し、(e)は、ローラが偏心している状態を示し、(f)は、ローラの表面に凹凸がある状態を示している。
【図7】本発明の実施の形態に係るX線質量測定装置における食品生地の物理量測定処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 X線質量測定装置
2 搬送部(搬送手段)
3 X線発生源(X線照射手段)
4 X線検出器(X線透過量検出手段)
4a 検出デバイス
5 投受光部
6 表示・操作部
7 設定部(単位ブロック設定手段)
8 制御部
9 出力部
9a 移動平均出力手段
9b 移動平均傾向出力手段
10 連続体
21 食品生地製造装置のローラ部
81 検出データ記憶部
82 測定部
82a X線吸収量算出手段
82b 質量算出手段
82c 体積算出手段
83 記憶手段
83a 質量換算係数記憶部
83b 体積換算係数記憶部
84 移動平均算出部(移動平均算出手段)
84a X線吸収量移動平均算出手段
84b 質量移動平均算出手段
84c 体積移動平均算出手段
85 移動平均傾向算出部(移動平均傾向算出手段)
85a X線吸収量移動平均傾向算出手段
85b 質量移動平均傾向算出手段
85c 体積移動平均傾向算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続体(10)を延在方向に搬送する搬送手段(2)と、
前記搬送手段により搬送中の前記連続体に対しX線を照射するX線照射手段(3)と、
前記連続体を透過した前記X線の透過量を検出するX線透過量検出手段(4)と、
前記連続体の一部を単位ブロックとして設定する単位ブロック設定手段(7)と、
前記X線透過量検出手段で検出された透過量に基づいて、前記連続体の前記単位ブロックの領域において吸収されたX線の吸収量を単位X線吸収量として算出するX線吸収量算出手段(82a)と、
前記連続体の前記搬送方向における一定区間の前記単位X線吸収量の移動平均を算出する移動平均算出手段(84)と、
を備えたことを特徴とするX線質量測定装置。
【請求項2】
前記単位ブロック設定手段は、前記連続体の幅方向に並列に複数設定されることを特徴とする請求項1に記載のX線質量測定装置。
【請求項3】
前記連続体に吸収された単位X線吸収量から質量に換算するための質量換算係数を予め記憶する質量換算係数記憶手段(83a)と、
前記X線吸収量算出手段によって算出された前記単位X線吸収量と前記質量換算係数記憶手段に記憶された前記質量換算係数とに基づいて前記連続体の前記単位ブロックの領域における質量を単位質量として算出する質量算出手段(82b)とを備え、
前記移動平均算出手段は、さらに前記単位質量の移動平均を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のX線質量測定装置。
【請求項4】
前記連続体に吸収された単位X線吸収量から体積に換算するための体積換算係数を予め記憶する体積換算係数記憶手段(83b)と、
前記X線吸収量算出手段によって算出された前記単位X線吸収量と前記体積換算係数記憶手段に記憶された前記体積換算係数とに基づいて前記連続体の前記単位ブロックの領域における体積を単位体積として算出する体積算出手段(82c)とを備え、
前記移動平均算出手段は、さらに前記単位体積の移動平均を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のX線質量測定装置。
【請求項5】
前記移動平均算出手段により算出された前記単位X線吸収量の前記移動平均、前記単位質量の前記移動平均および前記単位体積の前記移動平均の少なくともいずれかを出力する移動平均出力手段(9a)をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のX線質量測定装置。
【請求項6】
前記移動平均算出手段により算出された時間的に前後する前記移動平均同士を比較して前記単位X線吸収量の前記移動平均、前記単位質量の前記移動平均および前記単位体積の前記移動平均の少なくともいずれかの増加傾向または減少傾向からなる移動平均傾向を算出する移動平均傾向算出手段(85)をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のX線質量測定装置。
【請求項7】
前記移動平均傾向算出手段により算出された前記単位X線吸収量の前記移動平均傾向、前記単位質量の前記移動平均傾向および前記単位体積の前記移動平均傾向の少なくともいずれかを出力する移動平均傾向出力手段(9b)をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のX線質量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−139330(P2009−139330A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318674(P2007−318674)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】