説明

X線遮蔽パネル、X線遮蔽壁及びその構築方法

【課題】X線遮蔽のための構造とするのに手間がかからず作業性が良いX線遮蔽パネル、X線遮蔽壁及びその構築方法を提供すること。
【解決手段】化粧鋼鈑12と、沈降性硫酸バリウムが均一に分散含有させられ且つ補強繊維が均一に分散含有させられたセメントを水で混練して硬化させることにより形成され、且つ、前記化粧鋼鈑の表面に層状に添着させられたX線遮蔽コンクリート層13と、を備えるX線遮蔽パネル10。また、隣接するX線遮蔽パネル10の側縁部を支柱のX線遮蔽層に密接固定した後、側縁部間にコーキング材を充填するようにしたX線遮蔽壁およびその構築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線の遮蔽が要求される室の壁等に用いるX線遮蔽パネル、X線遮蔽壁及びその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院のレントゲン室や病室等においてX線の放射を遮断することが要求されている。このようなレントゲン室や病室等においては、エックス線を遮蔽するための材料として、例えば鉛を石膏やベニヤ板で被覆したX線遮蔽パネルが用いられる。しかし、鉛は有害であるために環境汚染等の問題や、人体へ悪影響を及ぼすおそれがあるという問題がある。
【0003】
これを解消するために、例えば硫酸バリウムを石膏と混合してガラス繊維で補強したX線遮蔽用の無鉛ボードが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上述した問題を解消するものとしては、X線遮蔽用の硫酸バリウムがメラミン樹脂と共に含浸されたガラス繊維不織布を複数枚用意して、この複数枚のガラス繊維不織布を積層することによりX線遮蔽用板材料を形成すると共に、このX線遮蔽用板材料の表面にアルミニウム層を形成した構造の化粧板が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−62387号公報
【特許文献2】特開2009−262553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した無鉛ボードではX線遮蔽能力(X線防護能力)が小さいために、この無鉛ボードを用いてレントゲン室や病室等のX線遮蔽壁を形成する際、このX線遮蔽壁を板厚の厚い無鉛ボードにより内壁層と外壁層から構成させていた。このようにX線遮蔽壁を内壁層と外壁層から2枚重ね構造とすることで、X線遮蔽能力を高めるようにしていた。このため、X線遮蔽壁を作るのにかかる時間が長くなり、作業性が悪いものであった。
【0007】
また、上述した化粧板は、X線遮蔽能力や強度を確保するために、硫酸バリウムが含浸された複数枚のガラス繊維不織布を積層した上に、表面にアルミニウム層を形成した構造としているので、構造が複雑になり、製造に手間がかかるものであった。
【0008】
そこで、この発明は、X線遮蔽のための構造とするのに手間がかからず作業性が良いX線遮蔽パネル、X線遮蔽壁及びその構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、この発明のX線遮蔽パネルは、化粧鋼鈑と、沈降性硫酸バリウムが均一に分散含有させられ且つ補強繊維が均一に分散含有させられたセメントを水で混練して硬化させることにより形成され、且つ、前記化粧鋼鈑の表面に層状に添着させられたX線遮蔽コンクリート層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、この発明のX線遮蔽壁は、隣接するX線遮蔽パネルの側縁部が支柱のX線設備室側に形成したX線遮蔽層に密接させられていると共に、この隣接するX線遮蔽パネルの側縁部間にコーキング材が充填されていることを特徴とする。さらに、この発明のX線遮蔽壁の構築方法は、X線設備設置室用空間と前記X線設備設置室用空間の隣接空間との間に少なくとも前記X線設備設置室用空間側の面に支柱用X線遮蔽層が形成された支柱を設けて、側縁が互いに隣接させられた複数枚の前記X線遮蔽パネルの側縁部を前記支柱用X線遮蔽層に密接させて前記支柱に固定した後、隣接する前記X線遮蔽パネルの側縁部間にコーキング材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成及び方法によれば、X線遮蔽のための構造とするのに手間がかからず作業性が良いX線遮蔽パネルを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係るX線遮蔽パネルを備えた建物のX線遮蔽壁の要部断面図である。
【図1A】図1のX線遮蔽壁との比較例を示す他の建物のX線遮蔽壁の要部断面図である。
【図2】図1のX線遮蔽パネルの拡大説明図である。
【図3】図1のX線遮蔽パネルに用いるビニロン繊維の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1において、1は病院等の建物内に設けられたX線設備設置室、2はX線設備設置室1が設けられている建物の廊下、3はX線設備設置室1と廊下2とを区画する壁(X線遮蔽壁)である。尚、図1では、X線設備設置室1としてX線治療装置等のX線設備が設けられた手術室を例に挙げている。しかし、X線設備設置室1としては、X線設備が設けられた手術室に限定されるものではなく、例えば、レントゲン撮影装置が設けられたレントゲン室や、X線CT診断装置等が設けられたX線撮影室であっても良く、研究所施設等の建物内のX線設備が設けられX線設備室に設けることもできる。
【0015】
壁3は廊下2側の通路壁4とX線設備設置室1側のX線遮蔽壁5を備えている。この通路壁4とX線遮蔽壁5との間には空間6が設けられている。この、空間6の通路壁4側には水平断面がC字状の通路側支柱7が設けられ、空間6のX線設備設置室1側には水平断面が方形状の中空支柱8が設けられている。そして、通路側支柱6には通路壁4が固定されている。また、中空支柱8はX線設備設置室1側に取付板板部8aを有し、この取付板板部8aの室内側の外面には鉛テープ9が接着固定されている。
【0016】
X線遮蔽壁5は複数枚のX線遮蔽パネル10を備えている。この複数枚のX線遮蔽パネル10のうち、隣接するX線遮蔽パネル10,10の対向縁部は鉛テープ9に密接させられていると共に取付板部8aに図示を省略したボルト等の固定手段で固定されている。そして、X線遮蔽パネル10,10の対向縁部間にはコーキング材11が充填されている。
【0017】
このX線遮蔽パネル(放射線遮蔽パネル)10は、化粧鋼鈑12と、化粧鋼鈑12の一面に一体に固着されたX線遮蔽コンクリート層(X線遮蔽無鉛ボード部)13を有する。この化粧鋼鈑12は、図2に示したようにX線遮蔽コンクリート層13の一面に沿う室内側パネル部12aと、X線遮蔽コンクリート層13の側面に沿う側面パネル部12bと、鉛テープ9に沿わせて鉛テープ9に密接させたフランジ部12cを有する。尚、X線遮蔽パネル10は、X線遮蔽コンクリート層13の側縁部が鉛テープ9に密接させられている。
【0018】
X線遮蔽コンクリート層13は、沈降性硫酸バリウムが均一に分散含有させられ且つμ単位の直径で数ミリ〜重数ミリの長さの補強繊維が均一に分散含有させられたセメントを水で混練して、この混練した混合材料(コンクリート材料)を化粧鋼鈑12の表面に層状に塗布して硬化させることにより、化粧鋼鈑12の一面に層状に一体に添着固定(接着固定)されている。
【0019】
ここで、補強繊維には、図3に示したように、表面に縦長の凹凸14aを周方向全体に多数形成したビニロン繊維14がファイバー補強繊維として用い得られている。このため、セメントがビニロン繊維14の表面の凹凸14aに接着固定される。この凹凸14aは、セメント(セメントマトリックス)との物理的結合(アンカー効果)、即ち接着固定効果を高めている。尚、セメントには、普通ポルテランドセメントが用いられている。
【0020】
また、セメントと沈降性硫酸バリウム及びビニロン繊維14との結合力を高めるためにアクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料が用いと良い。この場合、化粧面となる表面が下になるように化粧鋼鈑12を成形型(図示せず)内に配設しておく。一方、アクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料をセメント、前記沈降性硫酸バリウム、補強繊維14と共に水で混練して混合材料(コンクリート材料)を製造する。そして、この混合材料を、化粧鋼鈑12の裏面(成形型内の上表面)に層状に塗布して、硬化させる。この際、アクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料は、X線遮蔽コンクリート層13を化粧鋼鈑12の一面(表面)により強固に接着固定する。この後、X線遮蔽コンクリート層13と化粧鋼鈑12を備えるX線遮蔽パネル10を成形型から抜き取ることにより、X線遮蔽パネル10をX線遮蔽壁に用いることができる。
【0021】
また、化粧鋼鈑12やビニロン繊維14等の補強繊維は、X線遮蔽パネル10の強度を高めていると共に、衝撃加重等による剥離防止をしている。また、化粧鋼鈑12は、化粧性と清潔性および洗浄性を向上させていると共に、放射線遮蔽の効果を高めている。
【0022】
ところで、手術室と通路壁を区画する通常の壁をX線遮蔽壁にした場合と上述した本実施例の図1の壁3(X線遮蔽壁)とを比較してみる。この図1Aは通常の壁を用いてX線遮蔽壁を形成した例を示したものである。この図1Aにおいては、病院の手術室をX線設備設置室1とし、この手術室と廊下2とを3重構造の壁15で区画した例を示したものである。
【0023】
この図1Aにおいて壁15は、通路2側に一般の壁材料からなる通路壁4を有すると共に、X線設備設置室1側にX線遮蔽能力がない化粧壁16を有している。この化粧壁16は、X線遮蔽能力がない板材18に化粧パネル19を積層しものである。このため図1Aの壁15では、X線設備設置室1から廊下2へのX線を遮蔽するために、通路壁4と化粧壁16との間にX線遮蔽ボード17を設けている。このように、図1Aの壁15は通路壁4,化粧壁16及びX線遮蔽ボード17から3重構造の壁としている。
【0024】
尚、X線遮蔽ボード17は、通路壁4と化粧壁16との間の空間20内に通路壁4及び化粧壁16と間隔をおいて平行に且つ空間20の略中央に配設されていると共に、通路側支柱7に図示しないボルト等の固定手段で固定されている。更に、化粧パネル19は、X線設備設置室1側の支柱21に固定されている。
【0025】
このような図1Aの壁15と図1の本実施例の壁3とを比較すると、図1Aの壁15は通路壁4,化粧壁16及びX線遮蔽ボード17から3重構造の壁としているのに対して、図1に示した本実施例の壁3は通路壁4とX線遮蔽パネル10から2重構造としている点で、図1の本実施例の壁3は図1Aの壁15よりも1層少ない構造となっている。このように図1の本実施例の壁3は、「図1Aの板材18の代わりにX線遮蔽材(X線遮蔽コンクリート層13)を一体化した構成とすると共に、X線遮蔽ボード17を省略した構造」に対応した構成となっている。しかも、その一体化されたX線遮蔽材の材料としてバリウムとセメントを混合させた無鉛コンクリート材を使用して、X線遮蔽コンクリート層13を形成している。このX線遮蔽コンクリート層13は性能が2.1pb(厚さ21mmの場合)を有しており、このX線遮蔽コンクリート層13だけを見ても、このX線遮蔽コンクリート層13は従来の無鉛ボードの0.75pb(厚さ12.5mmの場合)よりも優れている。
【0026】
このような図1の本実施例にかかる壁3は、図1Aの3重構造の壁15から1層減らした2重構造の壁としたことにより、図1Aの3重構造の壁15に比べてコスト・施工性ともに軽減することができる。
【0027】
また、化粧鋼鈑12は、手術室側に臨んでいるので、表面の汚れ等の清掃を容易に行うことができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
表1は、X線遮蔽パネル(放射線遮蔽パネル)10に用いるX線遮蔽コンクリート層13の原材料の配合割合を示したものである。
【0029】
【表1】

(X線遮蔽コンクリート層)
原材料の配合割合を表1に示したようにすると共に厚みを21mmに形成したX線遮蔽コンクリート層13のサンプルを作成して、このサンプルでX線遮蔽の試験を行った。このサンプルでは、鉛当量2.1pb相当量の遮蔽性能が得られた。尚、この際、化粧鋼鈑の仕様は、
・化粧鋼鈑 鉄板SPCC1.0 化粧仕上げ
・サイズ W910×H2000mm t=22mm
とした。
(実施例2)
この実施例2では、X線遮蔽パネル10に用いるX線遮蔽コンクリート層13の使用材料(原材料)に以下の[A]に示したものを用い、その配合量(配合割合)を以下の[B]に示したようにしたものについて、試験を行った。
[A].X線遮蔽コンクリート層13の使用材料
(1).セメント
普通ポルトランドセメント(JIS R5210)
(太平洋セメント株式会社製)
【0030】
【表2】

(2).硫酸バリウム
沈降性硫酸バリウム30
(日本化学工業株式会社)
【0031】
【表3】

(3).補強繊維(ファイバー補強繊維)
パワロン(登録商標)、(RSC 15×8)
(株式会社クラレ製のビニロン繊維)
【0032】
【表4】

(4).水性塗料
レジカラー(商品名)
(信越産業株式会社製の水性塗料)
【0033】
【表5】

[B].X線遮蔽コンクリート層13の使用材料配合量
【表6】

・X線遮蔽コンクリート層13のサンプルのサイズ
100mm×100mm×21mm
[C].試験結果
[A]の使用材料(原材料)を[B]の材料を混練して型枠内に充填し常温で硬化させて、X線遮蔽コンクリート層13のサンプルを製造した。尚、このX線遮蔽コンクリート層13のサンプルとしては、以下のS1〜S6の仕様のものを製造した。

c% :沈降性硫酸バリウム配合量
tmm:X線遮蔽コンクリート層13の厚さ
そして、(a)の測定器を用いて(b)の測定条件で、JIS Z4501 「X線防護用晶の鉛当量試験方法」 に準じてS1〜S6の仕様のX線遮蔽コンクリート層13のサンプルの透過X線量を測定して鉛当量を求めた。
(a).測定器
電離箱照射線量率計 東洋メディック社 RAMTEC-1000D型 A-4プローブ使用
X線量測定単位 空気衝突カーマ
X線ビーム 狭いビーム
(b). 測定条件
X線装置 フィリップス社MG-161型(平滑回路,焦点寸法3.0mm,Be窓)
X線管電圧及び管電流 MG161型l00kV,12.5mA 付加ろ過板 0.25mmCu
X線管焦点−試料間距離 1500 mm
試料−測定器間距離 100mm
この試験により、表7に示したような測定結果が得られた。
【0034】
【表7】

このような本実施例のX線遮蔽パネル10と従来例で述べたような既存無鉛ボードのX線遮蔽性能を比較した。
【0035】
この既存の無鉛ボードを用いて鉛当量1.5pb相当量のX線遮蔽性能を有するX線遮蔽壁を構築するには、厚みが12.5mmの無鉛ボードを2重貼りをして(2枚積層して)、厚み25mmの積層無鉛ボードを形成する必要があった。
【0036】
ところで通常、X線防護には1.5pb相当量が必要である。従って、従来の無鉛ボードでは0.75pb相当量のため2枚貼り合わせて1.5pb相当量としている。本実施例のX線遮蔽パネル10では21mmで2.1pb相当量があるので、1.5pb、2.0pb相当量のいずれのケースでも対応できる利点がある。このように本実施例のX線遮蔽パネル10では21mmを2重,3重に積層せず1枚のみでX線遮蔽性能を十分に確保できる。
【0037】
また、従来は、鉛当量2.0pb相当量のX線遮蔽性能を確保するために、厚みが12.5mmの無鉛ボードを3重貼りをして(3枚積層して)厚み37.5mmの積層無鉛ボードを形成するか、厚みが12.5mmの2枚の無鉛ボード間に0.8mmのボンデ鋼鈑を挟み込むことにより厚さが25.8mmのX線遮蔽壁としていた。このため、従来の無鉛ボードを用いてX線遮蔽壁を構築する施工方法では、施工性が良くなかった。
【0038】
これに対して、本実施例のX線遮蔽パネル10は21mmの厚みで2.0pb相当量の性能を有しているため、この9mmのX線遮蔽パネル10を用いて鉛当量が2.0pb相当量以上のX線遮蔽性能を有するX線遮蔽壁を構築する場合、X線遮蔽パネル10を2重,3重に積層せず1枚のみでX線遮蔽性能を十分に確保できる。
【0039】
しかも、本実施例のX線遮蔽パネル10によるX線遮蔽壁は、従来の無鉛ボードを用いたX線遮蔽壁の厚よりも薄くできるので、従来の無鉛ボードを用いたX線遮蔽壁よりも軽量化を図ることができる。
【0040】
このように本実施例のX線遮蔽パネル10によりX線遮蔽壁を構築する場合、従来の無鉛ボードのように2重貼り、3重貼り(積層)を行わずに1枚のX線遮蔽パネル10を設けるだけでX線遮蔽性能を十分に確保できるため、X線遮蔽壁ををコスト面で安価に施工できると共に、施工性でも優れている。
【0041】
以上説明したように、この発明の実施の形態のX線遮蔽パネル10は、化粧鋼鈑12と、沈降性硫酸バリウムが均一に分散含有させられ且つ補強繊維が均一に分散含有させられたセメントを水で混練して硬化させることにより形成され、且つ、前記化粧鋼鈑の表面に層状に添着させられたX線遮蔽コンクリート層13と、を備えている。
【0042】
この構成によれば、化粧鋼鈑12に添着固定したX線遮蔽コンクリート層13に補強繊維を混連して、化粧鋼鈑12をX線遮蔽コンクリート層13で補強するようにしているので、化粧鋼鈑12を支持するボード等をX線遮蔽部材とは別に設ける必要がない。しかも、X線遮蔽コンクリート層13は単一層であるので、X線遮蔽用のバリウムが含浸された補強繊維を複数枚積層してX線遮蔽ボードを形成する場合に比べて、X線遮蔽コンクリート層13の製造を簡易且つ迅速に行うことができる。これらの結果、X線遮蔽壁に用いるボードやパネル等を少なくできるので、X線遮蔽のための構造とするのに手間がかからず作業性が良いX線遮蔽パネルを製造できる。
【0043】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽パネルにおいて、前記補強繊維を表面に凹凸14aが形成されたビニロン繊維14とすることにより、前記セメントが前記ビニロン繊維14の表面の凹凸14aに接着固定されている。
【0044】
この構成によれば、ビニロン繊維14の表面の凹凸14aがセメントの接着固定力を高めることになり、X線遮蔽コンクリート層13の割れや剥離を防止できる。
【0045】
更に、この発明の実施の形態のX線遮蔽パネルにおいて、アクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料を前記セメント、前記沈降性硫酸バリウム、前記補強繊維と共に水で混練して硬化させることにより、前記セメントの粒子および前記沈降性硫酸バリウムの粒子を接着固定すると共に、前記X線遮蔽コンクリート層13を前記水性塗料により前記化粧鋼鈑12に接着固定している。
【0046】
この構成によれば水性塗料は、X線遮蔽コンクリート層13が硬化する際に、セメントの粒子および沈降性硫酸バリウムの粒子を強固に接着固定すると共に、X線遮蔽コンクリート層13を化粧鋼鈑12に強固に接着固定することになる。この結果、X線遮蔽コンクリートボードを化粧鋼鈑12とは別途形成した後、このX線遮蔽コンクリートボードを化粧鋼鈑12に接着剤等で固定して、X線遮蔽パネルを形成する場合に比べて、X線遮蔽パネルの製造を簡易且つ迅速に行うことができる。
【0047】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5は、X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)と前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)の隣接空間(廊下2)との間に植立固定された支柱(中空支柱8)と、前記支柱(中空支柱8)の少なくとも前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側の面に設けられた支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)と、側縁部が前記支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)に密接させられた状態で前記支柱(中空支柱8)に固定され且つ側縁が互いに隣接させられた複数枚の前記X線遮蔽パネル10と、隣接する前記X線遮蔽パネル10の側縁部間にコーキング材が充填されている。
【0048】
この構成によれば、隣接させられた複数枚のX線遮蔽パネル10,10との間のX線遮蔽を支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)により行うことができるので、複数枚のX線遮蔽パネル10,10を用いてもX線遮蔽壁5を簡易且つ迅速に構築することができる。
【0049】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5において、前記X線遮蔽パネル10を構成する前記X線遮蔽コンクリート層13の側縁部が前記支柱(中空支柱8)用X線遮蔽層に密接させられていると共に、前記X線遮蔽パネル10の化粧鋼鈑12が前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側に臨ませられている。
【0050】
この構成によれば、X線遮蔽パネル10を構成するX線遮蔽コンクリート層13の側縁部が支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)密着させられているので、複数枚のX線遮蔽パネル10,10間のX線遮蔽を確実に行うことができる。しかも、化粧鋼鈑12をX線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側に臨ませられているので、X線遮蔽壁5の汚れ等を容易に拭き取ることができる。
【0051】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5において、前記支柱用X線遮蔽層は前記支柱(中空支柱8)の前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側の面に添着されたX線遮蔽材料(鉛テープ9)である。
【0052】
この構成によれば、支柱用X線遮蔽層はX線遮蔽壁5を構築する現場において支柱(中空支柱8)にX線遮蔽材料(鉛テープ9)を添着することにより容易に形成できるので、支柱用X線遮蔽層の形成を迅速に行うことができると共に、支柱用X線遮蔽層を支柱(中空支柱8)のX線遮蔽に必要な部分にのみ形成できるので、材料の無駄をなくすことができる。
【0053】
尚、上述した実施例においてX線遮蔽材料としては、X線を遮蔽可能な材料から形成されたX線遮蔽テープすなわち鉛テープ9を用いているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、X線遮蔽テープとしてはX線を遮蔽可能な材料の微粒子が混入された樹脂テープであってもよい。また、X線遮蔽材料としてはX線遮蔽板出会っても良い。このX線遮蔽板としては、例えばX線を遮蔽可能な鉛板であっても良いし、X線を遮蔽可能な材料の微粒子が混入された樹脂板であっても良い。要は、X線を遮蔽可能な材料からテープ状または板状に形成されていれば、鉛テープ9でなくても他の材料であっても良い。
【0054】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5の構築方法では、X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)と前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)の隣接空間(廊下2)との間に少なくとも前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側の面に支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)が形成された支柱(中空支柱8)を設けて、側縁が互いに隣接させられた複数枚の前記X線遮蔽パネル10の側縁部を前記支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)に密接させて前記支柱(中空支柱8)に固定した後、隣接する前記X線遮蔽パネル10の側縁部間にコーキング材を充填するようにしている。
【0055】
この方法によれば、隣接させられた複数枚のX線遮蔽パネル10,10との間のX線遮蔽を支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)により行うことができるので、複数枚のX線遮蔽パネル10,10を用いてもX線遮蔽壁5を簡易且つ迅速に構築することができる。
【0056】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5の構築方法では、前記X線遮蔽パネル10を構成する前記X線遮蔽コンクリート層13の側縁部を前記支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)に密接させて前記支柱(中空支柱8)に固定することにより、前記X線遮蔽パネル10の化粧鋼鈑12を前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側に臨ませるようにしている。
【0057】
この方法によれば、X線遮蔽パネル10を構成するX線遮蔽コンクリート層13の側縁部を支柱用X線遮蔽層(鉛テープ9)密着させることにより、複数枚のX線遮蔽パネル10,10間のX線遮蔽を確実に行うことができる。しかも、化粧鋼鈑12をX線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側に臨ませられているので、X線遮蔽壁5の汚れ等を容易に拭き取ることができる。
【0058】
また、この発明の実施の形態のX線遮蔽壁5の構築方法では、前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)と前記隣接空間(廊下2)との間に前記支柱(中空支柱8)を植立固定した後、前記支柱(中空支柱8)の前記X線設備設置室用空間(X線設備設置室1)側の面にX線遮蔽材料(鉛テープ9)を添着して、前記X線遮蔽材料(鉛テープ9)により前記支柱用X線遮蔽層を形成するようにしている。
【0059】
この方法によれば、支柱用X線遮蔽層はX線遮蔽壁5を構築する現場において支柱(中空支柱8)にX線遮蔽材料(鉛テープ9)を添着することにより容易に形成できるので、支柱用X線遮蔽層の形成を迅速に行うことができると共に、支柱用X線遮蔽層を支柱(中空支柱8)のX線遮蔽に必要な部分にのみ形成できるので、材料の無駄をなくすことができる。
【符号の説明】
【0060】
10・・・X線遮蔽パネル10
12・・・化粧鋼鈑
13・・・X線遮蔽コンクリート層
14・・・ビニロン繊維(補強繊維)
14a・・・凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧鋼鈑と、
沈降性硫酸バリウムが均一に分散含有させられ且つ補強繊維が均一に分散含有させられたセメントを水で混練して硬化させることにより形成され、且つ、前記化粧鋼鈑の表面に層状に添着させられたX線遮蔽コンクリート層と、を備えることを特徴とするX線遮蔽パネル。
【請求項2】
請求項1に記載のX線遮蔽パネルにおいて、前記補強繊維を表面に凹凸が形成されたビニロン繊維とすることにより、前記セメントが前記ビニロン繊維の表面の凹凸に接着固定されていることを特徴とするX線遮蔽パネル。
【請求項3】
請求項1に記載のX線遮蔽パネルにおいて、アクリル樹脂エマルジョン系の水性塗料を前記セメント、前記沈降性硫酸バリウム、前記補強繊維と共に水で混練して硬化させることにより、前記セメントの粒子および前記沈降性硫酸バリウムの粒子を接着固定すると共に、前記X線遮蔽コンクリート層を前記水性塗料により前記化粧鋼鈑に接着固定したことを特徴とするX線遮蔽パネル。
【請求項4】
X線設備設置室用空間と前記X線設備設置室用空間の隣接空間との間に植立固定された支柱と、前記支柱の少なくとも前記X線設備設置室用空間側の面に設けられた支柱用X線遮蔽層と、側縁部が前記支柱用X線遮蔽層に密接させられた状態で前記支柱に固定され且つ側縁が互いに隣接させられた複数枚の前記X線遮蔽パネルと、隣接する前記X線遮蔽パネルの側縁部間にコーキング材が充填されていることを特徴とするX線遮蔽壁。
【請求項5】
請求項4に記載のX線遮蔽壁において、前記X線遮蔽パネルを構成する前記X線遮蔽コンクリート層の側縁部が前記支柱用X線遮蔽層に密接させられていると共に、前記X線遮蔽パネルの化粧鋼鈑が前記X線設備設置室用空間側に臨ませられていることを特徴とするX線遮蔽壁。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のX線遮蔽壁において、前記支柱用X線遮蔽層は前記支柱の前記X線設備設置室用空間側の面に添着されたX線遮蔽材料であることを特徴とするX線遮蔽壁。
【請求項7】
X線設備設置室用空間と前記X線設備設置室用空間の隣接空間との間に少なくとも前記X線設備設置室用空間側の面に支柱用X線遮蔽層が形成された支柱を設けて、側縁が互いに隣接させられた複数枚の前記X線遮蔽パネルの側縁部を前記支柱用X線遮蔽層に密接させて前記支柱に固定した後、隣接する前記X線遮蔽パネルの側縁部間にコーキング材を充填することを特徴とするX線遮蔽壁の構築方法。
【請求項8】
請求項7に記載のX線遮蔽壁の構築方法において、前記X線遮蔽パネルを構成する前記X線遮蔽コンクリート層の側縁部を前記支柱用X線遮蔽層に密接させて前記支柱に固定することにより、前記X線遮蔽パネルの化粧鋼鈑を前記X線設備設置室用空間側に臨ませたことを特徴とするX線遮蔽壁。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のX線遮蔽壁の構築方法において、前記X線設備設置室用空間と前記隣接空間との間に前記支柱を植立固定した後、前記支柱の前記X線設備設置室用空間側の面にX線遮蔽材料を添着して、前記X線遮蔽材料により前記支柱用X線遮蔽層を形成するとを特徴とするX線遮蔽壁の構築方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−247856(P2011−247856A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124376(P2010−124376)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(508123641)Sメディカルシールド株式会社 (2)
【Fターム(参考)】