説明

X線CT装置及びその制御方法

【課題】X線CT装置において、被検体のセッティングの際に、医療従事者がX線照射範囲を正確に認識しながら効率よく被検体のセッティングを行うことであり、また、被検体の被爆量を低減させること。
【解決手段】X線CT装置は、X線を照射するX線源のX線焦点の回転半径と同一半径であって被検体の体軸方向に垂直な円周上に光源を有し、X線の照射範囲を模擬した照射範囲を有するレーザ光を照射可能である複数の投光器と、複数の投光器を一体として3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける操作受付部51と、その指示に基づいて投光器33A,33B,33Cをスライド移動させることで、複数の投光器の位置を設定する本スキャン条件設定部52と、設定された複数の投光器の円周の中心と、X線源のX線焦点の回転中心の位置との差の分だけ天板を3次元的にスライド移動させる天板移動制御部53と、スライド後の天板21をスキャン位置としてスキャンを実行する本スキャン実行部54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態としての本実施形態は、X線を照射し、被検体を透過したX線を検出して画像化するX線CT(computed tomography)装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線CT装置では、実際にダイナミックスキャン等の本スキャンでデータ収集を開始する前に、事前にスキャン計画を立案する必要がある。スキャン計画では、本スキャンで採用すべきX線管電圧、X線管電流、スライス厚、コーン角、ファン角、ガントリ傾斜角(チルト角)、再構成マトリクス、本スキャン位置、及びスキャン開始位置からスキャン終了位置までの本スキャン範囲が設定される。スキャン計画で本スキャンの本スキャン位置及び本スキャン範囲等の本スキャン条件を設定するために、X線管と検出器の回転を停止した状態で、患者が載置された天板を患者の体軸方向に移動させながらスキャノグラムスキャン(プレスキャン)が行なわれる。スキャノグラムスキャンでスキャノグラムが収集されると、このスキャノグラムを用いて本スキャン位置及び本スキャン範囲等の本スキャン条件が指定される。そのため、スキャン計画の段階で患者にX線を照射する必要があり、患者の被曝量が大きくなってしまうという欠点がある。
【0003】
そこで、スキャン計画の段階での患者の不要被爆を抑えると同時に、簡便に操作をすることができるX線CT装置が提案されている(特許文献1参照)。このX線CT装置は、寝台機構、X線源、検出器、ガントリ、位置設定手段、位置関係検出手段、及びスキャノグラムスキャン制御手段を有する。寝台機構は、患者を載置して患者の体軸方向に移動可能な天板を有する。X線源は、患者にX線を照射するためのものである。検出器は、患者を透過したX線を検出するためのものである。ガントリは、X線源及び検出器が、患者を挟んで相互に対向して回動するように配置される。位置設定手段は、患者の複数の領域を指定するための患者又は天板の任意の位置を設定する。位置関係検出手段は、設定された位置に基づいて、複数の領域とガントリとの位置関係を検出する。スキャノグラムスキャン制御手段は、検出された位置関係に基づいてX線源からのX線の照射と停止を切り替えながら天板を移動させながらスキャンすることにより、複数の領域毎のスキャノグラムを連続して取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−122479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X線CT装置における患者セッティングの際に、投光器を用いて本スキャンのX線照射範囲の中心線に相当する部分にレーザ光を照射することで位置合わせを行う場合がある。その場合、投光器は本スキャン位置におけるX線照射範囲の中心線のみを表しているため、例えば他列検出器を用いて本スキャンを行なう場合などには、医療従事者は、X線照射範囲を正確に認識することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のX線CT装置は、上述した課題を解決するために、X線を照射するX線照射手段と、前記照射されたX線を検出するX線検出手段と、被検体を載置可能な載置手段と、前記X線照射手段及び前記X線検出手段を一体として前記被検体の周囲に回転させる回転制御手段と、前記X線照射手段のX線焦点の回転半径と同一半径である円周上に光源を有し、前記X線の照射範囲を模擬した照射範囲を有するレーザ光を照射可能な複数の投光手段と、前記複数の投光手段を一体として3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける受付手段と、前記指示に基づいて、前記複数の投光手段をスライド移動させることで、前記複数の投光手段の位置を設定する設定手段と、前記載置手段を支持し、前記設定された複数の投光手段の前記円周の中心の位置と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心の位置との差の分だけ前記載置手段を3次元的にスライド移動させる支持手段と、前記スライド後の載置手段をスキャン位置としてスキャンを実行するスキャン実行手段と、を有する。
【0007】
本実施形態のX線CT装置の制御方法は、上述した課題を解決するために、X線CT装置の制御方法は、X線を照射するX線照射手段のX線焦点の回転半径と同一半径である円周上に光源を有し、前記X線の照射範囲を模擬した照射範囲を有するレーザ光を照射可能な複数の投光手段を一体として3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける第1ステップと、前記指示に基づいて、前記複数の投光手段をスライド移動させることで、前記複数の投光手段の位置を設定する第2ステップと、前記設定された複数の投光手段の前記円周の中心と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心の位置との差の分だけ前記被検体を載置する載置手段を3次元的にスライド移動させる第3ステップと、前記スライド後の載置手段をスキャン位置としてスキャンを実行する第4ステップと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のX線CT装置の概要を示す構成図。
【図2】本実施形態のX線CT装置の構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態のX線CT装置における投光器ユニットの配置例を示す図。
【図4】本実施形態のX線CT装置における投光器ユニットの1つの投光器の光源から照射されるレーザ光の形状を示す図。
【図5】本実施形態のX線CT装置の機能を示すブロック図。
【図6】本実施形態のX線CT装置における投光器ユニットのスライド移動を説明するための図。
【図7】本実施形態のX線CT装置における投光器ユニットのチルト動作を説明するための図。
【図8】本実施形態のX線CT装置で被検体の本スキャン範囲の設定方法を説明するための図。
【図9】本実施形態のX線CT装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態のX線CT装置及びその制御方法について添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のX線CT装置の概要を示す構成図である。図2は、X線CT装置1の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、X線CT装置1は、主に、患者(被検体H)が載置される寝台機構2と、撮影の際に被検体Hに対してX線を照射するガントリ3と、寝台機構2及びガントリ3の動作を制御すると共に、ガントリ3で取得されたデータを基に画像データを生成する操作コンソール4とを備えている。
【0012】
寝台機構2は、天板21及び天板コントローラ22を備える。
【0013】
天板21は、その上部に被検体Hを載置可能である。
【0014】
天板コントローラ22は、天板21に被検体Hを載置した状態で、被検体Hの左右方向(x軸方向)、体軸方向(z軸方向)、及び上下方向(y軸方向)に天板21をスライド移動させる。天板コントローラ22は、操作コンソール4の制御インターフェース14(後述する)を介して、操作コンソール4と寝台機構2との制御情報の送受信を行う。これにより、医療従事者が操作コンソール4を用いて寝台機構2を遠隔操作することが可能となる。
【0015】
ガントリ3は、内部に貫通する円筒状の空洞部(ドーム)を有していて、被検体Hが載置された天板21がこの空洞部の内外に出入り可能な出入り口5を備えている。この出入り口5の開口部は、例えばテーパ状に拡げられていると良い。被検体Hを載置した天板21は、出入り口5を介してz軸方向にスライド移動してガントリ3の内外に出入りすることにより、ガントリ3の内部に被検体Hの搬入及び搬出を行う。
【0016】
ガントリ3は、図1に示すように、X線源31、検出部32、及び投光器ユニット33を備える。ガントリ3の中央部には、X線源31のX線焦点の回転中心OXが形成される。
【0017】
X線源31は、供給された管電圧に応じて金属製のターゲットに電子線を衝突させることでX線を発生させ、検出部32に向かって照射する。X線源31から出力されたX線は、ガントリ3の空洞部を横切って検出部32にて検出される。
【0018】
検出部32は、チャンネル方向に複数、及び列(スライス)方向に単一の検出素子を有する1次元アレイ型の検出器(シングルスライス型検出器ともいう。)である。又は、検出部32は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数チャンネル、スライス方向に複数列のX線検出素子を有する2次元アレイ型の検出器(マルチスライス型検出器ともいう。)である。検出部32のX線検出素子は、X線源31から照射されたX線を検出する。以下、検出部32がマルチスライス型検出器である場合について説明する。検出部32によって検出されたデータは、図2に示すデータ収集部(DAS)34から操作コンソール4の収集バッファ45(後述する)に送信される。
【0019】
天板21上の被検体Hがガントリ3内に設置されると、X線源31及び検出部32がz軸周りに回転することによって、被検体Hのスキャン部位がスキャンされる。また、ガントリ3がレール機構(図示しない)によってz軸方向に移動することで、ガントリ3の内部に設置された被検体Hのスキャン部位が断続的にスキャンされる。
【0020】
投光器ユニット33は、ガントリ3に内蔵される。しかし、投光器ユニット33は、ガントリ3の外部に備えられるものであってもよい。投光器ユニット33は、複数の投光器、例えば3つの投光器33A乃至33Cを備える。投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cの各光源は、x−y平面(z軸に垂直な平面)上の円周R(図2に図示)上に配置される。投光器33A乃至33Cの各光源が配置される円周Rの半径は、X線源31のX線焦点の回転半径と同一となるように設計される。ここで、投光器33A乃至33Cの各光源が配置される円周Rの中心を投光中心OLと定義する。なお、投光器ユニット33は、X線源31より寝台機構2側に設けられることが望ましい。
【0021】
投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cは、レーザ光をそれぞれ出力可能である。レーザ光の照射範囲は、X線の照射範囲を模擬している。医療従事者は、レーザ光の照射範囲をX線の照射範囲と擬制することができる。なお、投光器ユニット33の配置、レーザ光の照射範囲については、図3を用いて後述する。
【0022】
操作コンソール4は、コンピュータをベースとして構成されており、入力装置42、中央処理装置43、制御インターフェース44、収集バッファ45、モニタ46、及び記憶装置47を備える。
【0023】
入力装置42は、医療従事者からの指示や情報等を入力する。入力装置42は、寝台機構2及びガントリ3の周囲に備えられてもよいし、遠方に備えられてもよい。
【0024】
中央処理装置43は、画像再構成処理や撮影シーケンス等を実行する。
【0025】
制御インターフェース44は、中央処理装置43に基づいて制御信号等を寝台機構2及びガントリ3に出力する。
【0026】
収集バッファ45は、ガントリ3のデータ収集部34で取得したデータを収集する。
【0027】
モニタ46は、中央処理装置43の制御に基づいて画像等を表示する。
【0028】
記憶装置47は、各種のデータやプログラムを記憶する。
【0029】
また、図2に示すように、ガントリ3は、操作コンソール4とX線のスキャンのための制御情報を送受信するX線系コントローラ35を有する。X線系コントローラ35により、医療従事者が操作コンソール4を用いてガントリ3の遠隔操作を可能としている。さらに、ガントリ3は、投光器33A乃至33Cの制御信号を送受信する投光器コントローラ36を有する。投光器コントローラ36により、医療従事者が操作コンソール4を用いて投光器33A乃至33Cを遠隔操作することを可能としている。
【0030】
図3は、本実施形態のX線CT装置1における投光器ユニット33の配置例を示す図である。
【0031】
図3は、投光器ユニット33を寝台機構2の側から見た図(x−y平面図)である。投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cは、X線の照射範囲を模擬したレーザ光を照射する。
【0032】
第1に、X線の照射範囲を模擬したレーザ光を形成するための投光器33A乃至33Cの配置を説明する。例えば、投光器33Aは、図3に示すように、X線源31のビュー角が0度(上端位置)に対応する円周R上の上端位置に配置される。また、例えば、投光器33B,33Cは、図3に示すように、X線源31のビュー角が90度及び270度(左右端位置、被検体Hの真横)に対応する円周R上の左右端位置にそれぞれ配置される。
【0033】
第2に、X線の照射範囲を模擬したレーザ光を形成するためのレーザ光の向きを説明する。投光器33Aは、図3に示すように、X線源31のビュー角が0度の場合と同様に、投光中心OLが照射中心となるように、ガントリ3の上部からレーザ光を照射する。投光器33B,33Cは、図3に示すように、X線源31のビュー角が90度及び270度の場合と同様に、投光中心OLが照射中心となるように、ガントリ3の側部からレーザ光を照射する。
【0034】
第3に、X線の照射範囲を模擬したレーザ光を形成するためのレーザ光の形状を説明する。投光器33Aからのレーザ光は、X線源31のビュー角が0度の場合と同様に、投光器33Aの光源を頂点とする四角錐を形成する。そして、投光器33Aからのレーザ光が形成する四角錐の底面の2辺は、x軸及びz軸にそれぞれ平行である。投光器33B,33Cからのレーザ光は、X線源31のビュー角が90度及び270度の場合と同様に、投光器33B,33Cの光源を頂点とする四角錐をそれぞれ形成する。そして、投光器33B(投光器33C)からのレーザ光が形成する四角錐の底面の2辺は、x軸及びy軸にそれぞれ平行である。
【0035】
図4は、本実施形態のX線CT装置1における投光器ユニット33の1つの投光器33Aの光源から照射されるレーザ光の形状を示す図である。
【0036】
図4に示すように、投光器ユニット33の投光器33Aの光源から照射されるレーザ光は、光源を頂点とする四角錐を形成する。投光器33Aは、投光器コントローラ36による制御によって照射角度(コーン角)を変更すると四角錐の底面のz軸方向の長さが変更され、照射角度(ファン角)を変更すると四角錐の底面のx軸方向の長さが変更される。なお、投光器33A乃至33Cのコーン角は常に等しいものとし、投光器33A乃至33Cのファン角は常に等しいものとする。
【0037】
図5は、本実施形態のX線CT装置1の機能を示すブロック図である。
【0038】
図2に示す中央処理装置43のCPU(central processing unit)がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、図5に示すように、操作受付部51、本スキャン条件設定部52、天板移動制御部53、及び本スキャン実行部54として機能する。なお、X線CT装置1の構成要素51乃至54の全部又は一部は、X線CT装置1にハードウェアとして備えられるものであってもよい。
【0039】
操作受付部51は、入力装置42から、投光器ユニット33を3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける機能を有する。操作受付部51は、入力装置42から、レーザ光のコーン角を変更させるための指示を受け付ける機能を有する。操作受付部51は、入力装置42から、レーザ光のファン角を変更させるための指示を受け付ける機能を有する。操作受付部51は、入力装置42から、投光器ユニット33のチルト角を変更させるための指示を受け付ける機能を有する。
【0040】
本スキャン条件設定部52は、操作受付部51によって受け付けられた指示に基づいて、本スキャンで採用すべき本スキャン条件を設定する機能を有する。本スキャン条件としては、X線管電圧、X線管電流、スライス厚、コーン角、ファン角、ガントリ傾斜角(チルト角)、再構成マトリクス、本スキャン位置、及びスキャン開始位置からスキャン終了位置までの本スキャン範囲等が挙げられる。
【0041】
本スキャン条件設定部52は、操作受付部51によって受け付けられた指示に基づいて、投光器コントローラ36を介して投光器ユニット33をスライド移動させることで、投光器ユニット33の位置を設定する。すなわち、本スキャン条件設定部52は、投光器33A乃至33Cを一体として3次元的にスライド移動させる。ここで、本スキャン条件設定部52は、2個の投光器ユニット33の位置を設定してもよい。
【0042】
図6は、本実施形態のX線CT装置1における投光器ユニット33のスライド移動を説明するための図である。
【0043】
図6の左側は、投光器ユニット33のスライド移動を示すx−y平面図である。図6の右側は、投光器ユニット33のスライド移動を示すy−z平面図である。
【0044】
図6に示すように、投光器ユニット33は、駆動機構(図示しない)によって、3次元的にスライド移動可能である。すなわち、投光器33A乃至33Cは、一体として3次元的にスライド移動可能である。
【0045】
また、図5に示す本スキャン条件設定部52は、操作受付部51によって受け付けられた指示に基づいて、投光器コントローラ36を介してレーザ光のコーン角を変更させることで、レーザ光のコーン角を設定する。本スキャン条件設定部52は、操作受付部51によって受け付けられた指示に基づいて、投光器コントローラ36を介してレーザ光のファン角を変更させることで、レーザ光のファン角を設定する。本スキャン条件設定部52は、操作受付部51によって受け付けられた指示に基づいて、投光器コントローラ36を介して投光器ユニット33のチルト角を変更させることで、投光器ユニット33のチルト角を設定する。
【0046】
図7は、本実施形態のX線CT装置1における投光器ユニット33のチルト動作を説明するための図である。
【0047】
図7に示すように、投光器ユニット33は、駆動機構(図示しない)によって、投光中心OLを通るx軸方向を軸中心としてチルト動作可能である。すなわち、投光器33A乃至33Cは、一体として投光中心OLを通るx軸方向を軸中心としてチルト動作可能である。
【0048】
図8は、本実施形態のX線CT装置1で被検体Hの本スキャン範囲の設定方法を説明するための図である。
【0049】
図8に示すように、医療従事者は、投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cからのレーザ光を見ながら入力装置42を介して、被検体Hの本スキャン部位である頭部がレーザ光によって照射されるように投光器ユニット33をx軸方向、y軸方向、及びz軸方向にスライド移動させる。又は、医療従事者は、投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cからのレーザ光を見ながら、被検体Hの本スキャン部位である頭部がレーザ光によって照射されるように天板21上の被検体Hをx軸方向及びz軸方向に移動させる。そして、本スキャン条件設定部52は、投光器ユニット33の位置を設定する。
【0050】
また、医療従事者は、投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cからのレーザ光を見ながら入力装置42を介して、被検体Hの本スキャン部位である頭部全体がレーザ光によって照射されるように投光器33A乃至33Cのコーン角及びファン角を変更する。そして、本スキャン条件設定部52は、投光器ユニット33のコーン角及びファン角を設定する。
【0051】
図8に示す例では、投光器ユニット33がx軸方向、y軸方向、z軸方向に移動され、かつ、レーザ光が頭部全体を覆うように投光器ユニット33のコーン角が拡げられている。
【0052】
図8を用いて説明したように、医療従事者は、被検体Hの本スキャン部位に対する、投光器ユニット33からのレーザ光の照射を基に、被検体Hの本スキャン部位の位置合わせを行なう。
【0053】
図5に示す天板移動制御部53は、天板コントローラ22を介して、本スキャン条件設定部52によって位置設定された投光器ユニット33の投光中心OLの位置と、X線源31のX線焦点の回転中心OXの位置との差の分だけ天板21を3次元的にスライド移動させる機能を有する。図8を用いて説明したように、レーザ光の照射に基づく被検体Hの本スキャン部位の位置合わせが完了した時点で、医療従事者が入力装置42を用いて所定操作をする(例えば所定スイッチを押下する)。そして、投光中心OLの位置とX線源21のX線焦点の回転中心OXの位置との差の分だけ、天板21がx軸方向、y軸方向、及びz軸方向にスライド移動される。
【0054】
本スキャン条件設定部52によって2個の投光器ユニット33の位置が設定される場合、天板移動制御部53は、設定された2個の位置のうち1つの位置における投光器ユニット33の投光中心OLと、X線源31のX線焦点の回転中心OXとの差の分だけ天板21をスライド移動させる。
【0055】
本スキャン実行部54は、本スキャン条件設定部52によって設定された本スキャン条件に基づいて、X線系コントローラ35を介して本スキャンを実行する機能を有する。
【0056】
本スキャン条件設定部52によって2個の投光器ユニット33の位置が設定される場合、本スキャン実行部54は、天板移動制御部53によってスライド移動後の天板21をスキャンの開始位置とする。一方、本スキャン実行部54は、設定された2個の位置のうち他の位置をスキャンの終了位置とする。すなわち、本スキャン条件設定部52によって2個の投光器ユニット33の位置が設定される場合、本スキャン実行部54は、スキャン開始位置からスキャン終了位置までの本スキャン範囲をスキャンする。
【0057】
上述したように、X線CT装置1は、本スキャン前に投光器ユニット33を用いてX線の照射範囲を模擬したレーザ光を被検体Hに照射させて、被検体Hの位置決めを行う。よって、X線CT装置1によると、本スキャン前のスキャノグラムスキャン無しで本スキャンの最適位置、コーン角、ファン角、及びチルト角を設定することができる。これにより、スキャノグラムスキャンで与えていた被検体Hへの不要被曝をカットすることができる。
【0058】
従来のX線CT装置では、まず医療従事者は、任意の数のスキャノグラムスキャン範囲を設定し、装置に順次記憶させる。次に、医療従事者は、記憶されたスキャノグラムスキャン範囲に従いスキャノグラムを取得する。設定されたスキャノグラムスキャン範囲が複数である場合には、それらに対応するスキャノググラムが連続的に取得される。これによって医療従事者は、被検体Hの断層像を得ようとする近傍の領域のみのスキャノグラムを得る。医療従事者は、得られたスキャノグラムを参照して本スキャン条件を設定し、この設定された本スキャン条件に基づいて本スキャンを行う。このようにして得られた断層撮影像を用いて診断が行われることとなる。このときに、スキャン計画の段階での患者の被曝量が大きくなってしまうという欠点があった。
【0059】
続いて、本実施形態のX線CT装置1の動作について、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
まず、医療従事者は、本スキャンを行なうべき被検体Hを天板21上に載置させる。X線CT装置1は、入力装置42を介して医療従事者が入力する入力信号を基に、被検体Hの本スキャン部位が投光器ユニット33によるレーザ光の照射領域付近となるように、被検体Hが載置された天板21を移動させる。
【0061】
X線CT装置1は、投光器ユニット33の投光器33A乃至33Cからのレーザ光を被検体Hの本スキャン部位付近に照射する(ステップS1)。また、X線CT装置1は、医療従事者からの指示に基づいて、投光器コントローラ36を介して投光器ユニット33をスライド移動させる(ステップS2)。
【0062】
また、X線CT装置1は、医療従事者からの指示に基づいて、投光器コントローラ36を介してレーザ光のコーン角及びファン角を変更させる(ステップS3)。さらに、X線CT装置1は、医療従事者からの指示に基づいて、投光器コントローラ36を介して投光器ユニット33のチルト角を変更させる(ステップS4)。なお、ステップS2乃至S4は、どの順番で行われてもよいし、一部又は全部が同時に行われてもよい。
【0063】
次いで、X線CT装置1は、医療従事者からの指示に基づいて、ステップS2乃至S4によって本スキャン条件を確定するか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5の判断によってYES、すなわち、本スキャン条件を確定すると判断する場合、X線CT装置1は、天板コントローラ22を介して、ステップS2によって設定された投光器ユニット33の投光中心OLの位置と、X線源31のX線焦点の回転中心OXの位置との差の分だけ天板21を3次元的にスライド移動させる(ステップS6)。
【0064】
そして、X線CT装置1は、ステップS3及びS4を基にステップS5によって確定された本スキャン条件に基づいて、X線系コントローラ35を介して本スキャンを実行する(ステップS7)。
【0065】
一方、ステップS5の判断によってNO、すなわち、本スキャン条件を確定しないと判断する場合、X線CT装置1は、本スキャン条件を変更する(ステップS2、S3、及びS4)。
【0066】
このようにしてX線CT装置1は、ボリュームスキャンで頭部などをスキャンする場合に、1回のスキャンで頭部全体をカバーできる場合には、投光器33A乃至33Cによりレーザ光の照射領域を参考にして本スキャン領域を設定することにより、被検体Hに不快感を与えることなく効率よく被検体Hの位置を設定することができる。また、スキャノグラムスキャンを実行することなく、投光器33A乃至33Cによりレーザ光の照射領域に基づいて、医療従事者が本スキャン時のコーン角、ファン角、及びチルト角を決定できる。これにより、スキャノグラムスキャンで与えられる被検体Hの被爆量をカットできる。
【0067】
本実施形態のX線CT装置1によると、被検体Hのセッティングの際に、本スキャンのX線照射範囲を投光器33A乃至33Cで照らすことにより、医療従事者がX線照射範囲を正確に認識しながら効率よく被検体Hのセッティングを行うことができる。
【0068】
また、本実施形態のX線CT装置1によると、スキャノグラムスキャンを実行する必要がないので、スキャノグラムスキャンで与えられる被検体Hの被爆量をカットすることができる。
【0069】
なお、本実施形態のX線CT装置1は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、本実施形態のX線CT装置1に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0070】
1 X線CT装置
2 寝台機構
3 ガントリ
4 操作コンソール
21 天板
22 天板コントローラ
31 X線源
32 検出部
33 投光器ユニット
33A,33B,33C 投光器
34 データ収集部
35 X線系コントローラ
36 投光器コントローラ
42 入力装置
43 中央処理装置
44 制御インターフェース
45 収集バッファ
46 モニタ
47 記憶装置
51 操作受付部
52 本スキャン条件設定部
53 天板移動制御部
54 本スキャン実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線照射手段と、
前記照射されたX線を検出するX線検出手段と、
被検体を載置可能な載置手段と、
前記X線照射手段及び前記X線検出手段を一体として前記被検体の周囲に回転させる回転制御手段と、
前記X線照射手段のX線焦点の回転半径と同一半径である円周上に光源を有し、前記X線の照射範囲を模擬した照射範囲を有するレーザ光を照射可能な複数の投光手段と、
前記複数の投光手段を一体として3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける受付手段と、
前記指示に基づいて、前記複数の投光手段をスライド移動させることで、前記複数の投光手段の位置を設定する設定手段と、
前記載置手段を支持し、前記設定された複数の投光手段の前記円周の中心の位置と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心の位置との差の分だけ前記載置手段を3次元的にスライド移動させる支持手段と、
前記スライド後の載置手段をスキャン位置としてスキャンを実行するスキャン実行手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記受付手段は、前記レーザ光のコーン角を変更させるための指示を受け付け、
前記設定手段は、前記レーザ光のコーン角を変更させることで、前記レーザ光のコーン角を設定し、
前記スキャン実行手段は、前記設定されたコーン角を前記X線のコーン角として設定して前記スキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記受付手段は、前記複数の投光手段のチルト角を変更させるための指示を受け付け、
前記設定手段は、前記複数の投光手段のチルト角を変更させることで、前記複数の投光手段のチルト角を設定し、
前記スキャン実行手段は、前記設定されたチルト角に従って前記スキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記受付手段は、前記レーザ光のファン角を変更させるための指示を受け付け、
前記設定手段は、前記レーザ光のファン角を変更させることで、前記レーザ光のファン角を設定し、
前記スキャン実行手段は、前記設定されたファン角を前記X線のファン角として設定して前記スキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線照射手段より前記支持手段側に前記複数の投光手段を設けることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記設定手段は、2個の前記複数の投光手段の位置を設定し、
前記支持手段は、前記設定された2個の位置のうち1つの位置における前記投光手段の前記円周の中心と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心との差の分だけ前記載置手段をスライド移動させ、
前記スキャン実行手段は、前記スライド移動後の載置手段を前記スキャンの開始位置とする一方、前記設定された2個の位置のうち他の位置を前記スキャンの終了位置とすることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記複数の投光手段は、前記円周上の鉛直方向の上端位置と、前記円周中心と同一高さの位置とにそれぞれ前記光源を有する3つの投光手段であることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項8】
X線を照射するX線照射手段のX線焦点の回転半径と同一半径である円周上に光源を有し、前記X線の照射範囲を模擬した照射範囲を有するレーザ光を照射可能な複数の投光手段を一体として3次元的にスライド移動させるための指示を受け付ける第1ステップと、
前記指示に基づいて、前記複数の投光手段をスライド移動させることで、前記複数の投光手段の位置を設定する第2ステップと、
前記設定された複数の投光手段の前記円周の中心と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心の位置との差の分だけ前記被検体を載置する載置手段を3次元的にスライド移動させる第3ステップと、
前記スライド後の載置手段をスキャン位置としてスキャンを実行する第4ステップと、
を有することを特徴とするX線CT装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1ステップは、前記レーザ光のコーン角を変更させるための指示を受け付け、
前記第2ステップは、前記レーザ光のコーン角を変更させることで、前記レーザ光のコーン角を設定し、
前記第4ステップは、前記設定されたコーン角を前記X線のコーン角として設定して前記スキャンを実行することを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。
【請求項10】
前記第1ステップは、前記複数の投光手段のチルト角を変更させるための指示を受け付け、
前記第2ステップは、前記複数の投光手段のチルト角を変更させることで、前記複数の投光手段のチルト角を設定し、
前記第4ステップは、前記設定されたチルト角に従って前記スキャンを実行することを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。
【請求項11】
前記第1ステップは、前記レーザ光のファン角を変更させるための指示を受け付け、
前記第2ステップは、前記レーザ光のファン角を変更させることで、前記レーザ光のファン角を設定し、
前記第4ステップは、前記設定されたファン角を前記X線のファン角として設定して前記スキャンを実行することを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。
【請求項12】
前記X線照射手段より前記支持手段側に前記複数の投光手段を設けることを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。
【請求項13】
前記第2ステップは、2個の前記複数の投光手段の位置を設定し、
前記第3ステップは、前記設定された2個の位置のうち1つの位置における前記投光手段の前記円周の中心と、前記X線照射手段のX線焦点の回転中心との差の分だけ前記載置手段をスライド移動させ、
前記第4ステップは、前記スライド移動後の載置手段を前記スキャンの開始位置とする一方、前記設定された2個の位置のうち他の位置を前記スキャンの終了位置とすることを特徴とする請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。
【請求項14】
前記第1ステップは、前記複数の投光手段によって、前記円周上の鉛直方向の上端位置と、前記円周中心と同一高さの位置からそれぞれ前記レーザ光を照射する請求項8に記載のX線CT装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143239(P2011−143239A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261972(P2010−261972)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】