X線CT装置
【課題】投影データに被写体のはみ出しがあるときに、いかなる場合であっても、画質劣化の少ない再構成画像等を出力するX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置1は、予め設定された通常のスキャノグラム撮影を行い、通常スキャノグラムを取得する(S101)。X線CT装置1は、通常スキャノグラムに対して、はみ出し検知処理を行い、被写体のはみ出しがないかどうか判定する(S102)。はみ出しがある場合には、X線CT装置1は、はみ出し対応スキャノグラムを生成する(S103)。X線CT装置1は、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う(S107)。
【解決手段】X線CT装置1は、予め設定された通常のスキャノグラム撮影を行い、通常スキャノグラムを取得する(S101)。X線CT装置1は、通常スキャノグラムに対して、はみ出し検知処理を行い、被写体のはみ出しがないかどうか判定する(S102)。はみ出しがある場合には、X線CT装置1は、はみ出し対応スキャノグラムを生成する(S103)。X線CT装置1は、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う(S107)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンビーム(扇形ビーム)もしくはコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)状のX線を被検体に照射し、被検体を透過したX線をX線検出器により計測し、多方向からの計測データを再構成することにより被検体の再構成画像を得るシングルスライスもしくはマルチスライスX線CT装置に関し、特に、被検体が撮影範囲からはみ出した場合にも、アーチファクトの少ない高画質な再構成画像を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置による撮影において、X線検出器のチャネル数やX線源から照射されるX線の照射角度によっては、投影データに被写体の分布が納まらず、はみ出してしまう場合がある。以下、このような場合を「投影データにはみ出しがある」と呼ぶことにする。投影データにはみ出しがある場合、再構成画像にアーチファクトが発生し、画質が劣化する。
ところで、投影データにはみ出しがあるケースは様々である。例えば、図12に示すように、寝台103を初期位置から左右に移動させて撮影するケース、図13に示すように、体格が大きい被検体102を撮影するケースなどは、投影データにはみ出しがある場合がある。投影データのはみ出し部分に相当する被検体102の部分は、図12、図13に示す非照射部105a、105b、105c(斜線部)である(以下、「非照射部105」と総称する。)。はみ出しのある投影データには、非照射部105のデータが反映されていないことになる。
【0003】
図14は、図12の例(片側はみ出し)の投影データを示している。図15は、図13の例(両側はみ出し)の投影データを示している。このような投影データに対して、例えば、図16に示すように、投影データの外側に(最大チャネルを示す位置よりも右側に)、はみ出し補正線111を伸ばし、補正領域112を追加することで、はみ出しによる画質劣化を軽減することができる。このように補正領域111の追加を行う処理は、はみ出し補正処理と呼ばれている。
【0004】
特許文献1に記載のはみ出し補正処理では、はみ出しが生じている投影データを検出し、検出された投影データを表す測定点の列(軌跡)に基づく推定によって、測定点の列に外挿測定点を追加する。そして、外挿測定点によって図16のはみ出し補正線111が決められ、補正領域112が得られる。この方法では、はみ出しが生じている投影データのみから、当該投影データの補正領域112を推定する。そうすると、非照射部105が全く考慮されていないデータから補正領域112を推定していることになるので、はみ出し補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0005】
これに対して、特許文献2では、ビュー毎に投影データの投影値の合計を算出した値(sum値)を利用することが記載されている。特許文献2に記載のはみ出し補正処理では、図17に示すように、実際の投影データのsum値の推移を示す点線121に対して、はみ出しのあるビューに隣接するはみ出しの無いビューのsum値を結んだ直線122上の値を、はみ出しのあるビューのsum値と推定する(線形補間による推定)。そして、得られたsum値(推定sum値)と補正領域112を追加した後のsum値とが等しくなるように、補正領域112を設定する。この方法では、隣接するはみ出しの無いビューの投影データのsum値に基づいて、はみ出しのあるビューに関する投影データの補正領域112を推定する。そうすると、例えば、ノーマルスキャン(寝台103が固定され、X線源であるX線管101が被検体102の周りを円軌道で周回する撮影)であれば、非照射部105が考慮されたデータに基づいて補正領域112を推定していることになるので、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−308637号公報
【特許文献2】特開2005−21702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のはみ出し補正処理であっても不十分な場合がある。例えば、ヘリカルスキャン(寝台103が体軸方向(図12、図13の紙面に垂直な方向)に移動しながら、X線管101が被検体102の周りをらせん軌道で周回する撮影)を行う場合、スキャン位置が少しずつ体軸方向に変化するため、X線が透過する被検体102の体軸方向の位置も変化する。そうすると、はみ出しがあるビューが続く間に、X線が照射される被検体102の体軸方向の位置が大きく変化し、sum値が大きく変動する場合がある(X線が照射される被検体102の体軸方向の位置が変化すれば、X線が吸収される臓器や組織が異なることになり、X線の減弱量の合計も変化する。)。
このような場合、図17に示すように、sum値の真の値の推移を示す曲線123と、線形補間によって推定された直線122との間に、大きなずれが生じてしまう。このように、真の値とのずれが大きくなると、はみ出し補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、投影データに被写体のはみ出しがあるときに、いかなる場合であっても、画質劣化の少ない再構成画像等を出力するX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、X線を照射するX線源と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し被検体の周囲を回転する回転盤と、前記被検体が載置される寝台とを備えるX線CT装置であって、スキャノグラムに基づいて、本スキャンで得られた投影データである本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正するはみ出し補正手段、を具備することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、投影データに被写体のはみ出しがあるときに、いかなる場合であっても、画質劣化の少ない再構成画像等を出力するX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態におけるX線CT装置1の構成を示すブロック図
【図2】第1の実施の形態における処理の詳細を示すフローチャート
【図3】スキャノグラムの1例を示す図
【図4】被検体8の側面から撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図5】寝台9を横方向(X方向)に移動させて2回撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図6】スキャノグラムの合成処理を説明する図
【図7】寝台9をX線管5と離れる方向に移動させて撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図8】はみ出し補正処理の第1の例を説明する図
【図9】はみ出し補正処理の第2の例を説明する図
【図10】第2の実施の形態におけるX線CT装置1aの構成を示すブロック図
【図11】第2の実施の形態における処理の詳細を示すフローチャート
【図12】投影データのはみ出しの第1の例(片側はみ出しの例)を示す図
【図13】投影データのはみ出しの第2の例(両側はみ出しの例)を示す図
【図14】投影データのはみ出しの第1の例に対する投影データを示す図
【図15】投影データのはみ出しの第2の例に対する投影データを示す図
【図16】はみ出し補正処理の概念図
【図17】従来技術によるはみ出し補正処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、X線CT装置が予め設定された通常のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)を行い、得られたスキャノグラムから被写体のはみ出しがあるかを検知し、はみ出しがある場合には寝台の位置とX線の照射方向を制御し、被写体のはみ出しのない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムの撮影(2回目のスキャノグラム撮影)を行う。
以下では、通常のスキャノグラム撮影にて得られたスキャノグラムを「通常スキャノグラム」と呼ぶこととする。また、被写体のはみ出しのない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムを「はみ出し対応スキャノグラム」と呼ぶこととする。
そして、X線CT装置1は、本スキャンで得られた投影データに対し、はみ出し対応スキャノグラム等のsum値を利用してはみ出し補正を行う。本発明では、はみ出し対応スキャノグラム等のsum値を用いるため、より正確なはみ出し補正処理を行うことができ、本スキャンがヘリカルスキャンの場合にも常に、最終的に得られる再構成画像の画質劣化を低減できる。
ここで、本発明におけるsum値とは、被検体の体軸方向の位置ごとに投影データの投影値の合計を算出した値である。本スキャンで得られた投影データに対しては、sum値はビューごとに投影値の合計を算出した値に相当する。
【0013】
まず、図1を参照しながら、第1の実施の形態におけるX線CT装置1の構成について説明する。尚、図1では、X線管5が1つの場合を図示しているが、本発明は多線源型のX線CT装置でも適用可能である。
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャナ2とコンピュータ3から構成される。スキャナ2は、X線管装置4から放射されるX線10を被検体8に照射し、被検体8を透過したX線10の投影データを収集する。コンピュータ3は、スキャナ2のスキャン制御、スキャナ2で収集された投影データを用いたデータ処理(スキャノグラムの取得、画像再構成など)などを行う。
【0014】
スキャナ2は、X線管装置4、寝台9、X線検出器11、データ収集装置12、高電圧発生装置13、X線管回転制御装置14、寝台移動制御装置15等から構成される。
X線管装置4は、X線管5、X線フィルタ6、補償フィルタ7から構成される。ここでX線フィルタ6および補償フィルタ7は、被検体8への被ばく量低減と被検体8透過後のX線強度一定化のために設けられている。
X線源であるX線管5は、高電圧発生装置13から供給される電力を用いて、被検体8に対してX線を照射し、データ収集装置12で被検体8の投影データを収集する。
X線検出器11は、X線管5に対向配置され、被検体8を透過したX線10を検出する。X線検出器11には、複数のX線検出素子がX線管5の周回方向に約1000チャネル、被検体8の体軸方向(図1の紙面の垂直方向)に1〜500チャネル配列して構成されている。そして、検出されたX線10の強度に応じた電気信号がデータ収集装置12に送信される。データ収集装置12によって受信された計測データは、コンピュータ3に伝送される。
高電圧発生装置13は、X線管5に供給する電力を調整することにより、照射されるX線量の調整などの制御を行う。なお、高電圧発生装置13は、高電圧変圧器、フィラメント電流発生器および整流器を備え、さらに、管電圧およびフィラメント電流を任意に、または段階的に調整するための管電圧切換器およびフィラメント電流切換器を備える。
【0015】
X線検出器11は、X線管装置4から照射され、被検体8を透過したX線10を検出する。ここで、スキャナ2内の円環状の回転架台(回転円盤)には、X線管装置4と、X線検出器11およびデータ収集装置12とが、対向する位置に搭載されている。回転架台は、X線管回転制御装置14により駆動され回転する。これにより、X線管装置4とX線検出器11およびデータ収集装置12とは、互いに対向しながら、被検体8の周りを回転する。
寝台9は、被検体8を載せるベッドであり、寝台移動制御装置15により駆動され、X線10の照射に同期してスキャナ2の開口部に挿入される。
【0016】
コンピュータ3は、演算装置21、記憶装置22、表示装置23、入力装置24等を備え、これらはバス25を介して互いに接続されている。
演算装置21は、スキャナ2から送信されたデータを受信して、スキャナ2から送信されたデータの処理、スキャノグラムの取得、断層画像等の再構成、スキャナ2を含む各装置の制御、データ通信の制御などを行う。後述する複数のスキャノグラムを合成する処理や、投影データのはみ出し補正処理も、演算装置21が行う。
記憶装置22は、スキャノグラム、断層画像、撮影に用いる設定値など、スキャン処理に関するデータを保持するためのものである。
表示装置23は、スキャノグラム、断層画像、撮影に用いる設定値などを表示するためのものである。
入力装置24は、X線CT装置1の操作者がスキャノグラム撮影や本スキャンの撮影条件などを入力するためのものである。
【0017】
次に、図2を参照しながら、第1の実施の形態における処理の流れを説明する。
ステップS101では、スキャナ2は、予め設定された通常のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)を行い、通常スキャノグラムを取得する。通常スキャノグラムは、本スキャン撮影の位置決めなどに用いられる。
スキャノグラム撮影では、X線管装置4、X線検出器11、データ収集装置12等を搭載する回転円盤を回転させず、寝台9を被検体8の体軸方向(図1の紙面の垂直方向)に移動させて撮影を行う。以下、後述するS103における2回目のスキャノグラム撮影においても、回転円盤を回転させず、寝台9を被検体8の体軸方向に移動させて撮影を行う点については同様である。
1回目のスキャノグラム撮影では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の正面(図1の紙面の上方向)からX線10が照射される。
【0018】
ステップS102では、コンピュータ3の演算装置21は、通常スキャノグラムに対して、はみ出し検知処理を行い、被写体のはみ出しがないかどうか判定する。はみ出し検知処理の詳細については後述する。
X線CT装置1は、はみ出しが無い場合にはS104へ進む。一方、はみ出しがある場合には、X線CT装置1は、ステップS103において、はみ出し対応スキャノグラムを生成する。前述の通り、はみ出し対応スキャノグラムは、被写体のはみ出しがない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムである。はみ出し対応スキャノグラム生成処理の詳細については後述する。
【0019】
ステップS104では、操作者が、入力装置24を介して、X線CT装置1に対して本スキャンを行うための各種設定を行う。コンピュータ3は、入力された設定値を記憶装置22に保持する。
ステップS105では、スキャナ2は、記憶装置22に保持される設定値に基づき本スキャンを行う。
【0020】
ステップS106では、コンピュータ3の演算装置21は、S105で得られたファンビーム投影データをパラレルビーム投影データに変換する(ファンパラ変換処理)。ファンパラ変換処理は、後続の画像再構成処理における計算を容易にするという利点がある。尚、X線管装置4から放射されるX線10が、ファンビームであっても、コーンビームであっても、演算装置21は、ファンパラ変換処理を行う。
【0021】
ステップS107では、コンピュータ3の演算装置21は、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。はみ出し補正処理の詳細については後述する。
尚、演算装置21は、例えば、S106において生成されるパラレルビーム投影データの両端(0チャネルおよび最大チャネル)の値と、予め定められた閾値とを比較し、両端の値の少なくとも一方が閾値よりも大きい場合、はみ出しがあると判定する。
【0022】
S106およびS107は、S105の本スキャンによって取得された投影データ(あるいは、後述するS108における画像再構成処理に必要な投影データ)の数だけ処理が繰り返される。
一方、S108における画像再構成処理では、はみ出しがない投影データに対しては、S106において生成されたパラレルビーム投影データを用いることができる。従って、はみ出しがない投影データに対しては、はみ出し補正処理を行う必要がない。そこで、S107では、はみ出しがない投影データに対しては、はみ出し補正処理を行わないものとする。
【0023】
ステップS108では、コンピュータ3の演算装置21は、S106において生成されたパラレルビーム投影データ、S107のはみ出し補正処理によって補正されたパラレルビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う。画像再構成処理の方法には様々な方法があるが、演算装置21は、例えばフィルタ補正逆投影法を用いる。
【0024】
前述の説明では、S105のファンパラ変換処理の後、S106のはみ出し補正処理を行うものとしたが、はみ出し補正処理の後、ファンパラ変換処理を行っても良い。この場合、コンピュータ3の演算装置21は、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、S105で得られたファンビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。そして、演算装置21は、はみ出し補正処理によって補正されたファンビーム投影データをパラレルビーム投影データに変換する。
【0025】
尚、ファンビーム投影データと比較して、パラレルビーム投影データでは被写体がはみ出し難い。従って、図2に示すフローチャートのように、ファンパラ変換処理の後、はみ出し補正処理を行う場合、はみ出し補正処理の回数が少なくなると考えられる。そして、当然ながら、はみ出し補正処理の回数が少なくなれば、全体の計算時間が短縮される。
【0026】
また、前述の説明では、ファンパラ変換処理を行うとしたが、ファンパラ変換処理を行わなくても良い。ファンパラ変換処理を行わない場合、コンピュータ3の演算装置21は、ファンビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う。
但し、ファンビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う場合、ファン状に逆投影が行われるため、被検者105とX線管装置4との距離に応じて被検者105を透過するX線10の分解能が異なり、同一画像内で不均一な分解能を持つ画像が生成されると考えられる。
【0027】
次に、図3を参照しながら、S102のはみ出し検知処理の詳細について説明する。はみ出し検知処理では、前述の通り、コンピュータ3の演算装置21が、通常スキャノグラムにおいて、被写体がはみ出していないかを判定する。
【0028】
コンピュータ3は、被検体8あるいは寝台9の投影値を「判定値」として記憶部22に予め記憶しておく。判定値は、図2の処理を行う前に、事前に設定されても良いし、通常スキャノグラムに基づいて設定されても良い。また、判定値は、ある程度幅があっても良い。
そして、コンピュータ3の演算装置21は、図3に示されるスキャノグラム中の両端のチャネル(0チャネルおよび最大チャネル)の投影値をZ方向(被検体8の体軸方向)に全て探索し、判定値に該当する投影値が少なくとも一つある場合には「はみ出しあり」と判定し、一つもない場合には「はみ出し無し」と判定する。
尚、本発明におけるはみ出し検知処理は、特に限定されるものではなく、被写体のはみ出しが判定できれば、他の方法を用いても良い。
【0029】
次に、図4から図7を参照しながら、S103のはみ出し対応スキャノグラム生成処理の詳細について説明する。はみ出し対応スキャノグラム生成処理では、スキャナ2およびコンピュータ3が、はみ出し対応スキャノグラムを取得する。はみ出し対応スキャノグラム生成処理では、寝台9の位置および/またはX線管5から照射されるX線10の方向を制御して、スキャノグラムが撮影される。
以下では、(A)被検体8の側面から撮影する方法、(B)寝台9を横方向(被検体8の体幅方向)に移動させて撮影する方法、(C)寝台9の位置とX線管5の位置とが離れるように、寝台9および/またはX線管5を移動させて撮影する方法、の3つの方法について説明する。
尚、寝台9を移動させた場合、S105の本スキャン時には、寝台9の位置を、元の位置(S101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置)に戻して撮影する。同様に、X線管5を移動させた場合、S105の本スキャン時には、X線管5の位置を、元の位置に戻して撮影する。
【0030】
方法(A)では、図4に示すように、X線10の照射範囲に被検体8が最も多く含まれる方向、すなわち被検体8の側面から2回目のスキャノグラム撮影を行う。ほとんどの被検体8は、体幅(図4の紙面において被検体8の左右方向の最大長)よりも体厚(図4の紙面において被検体8の上下方向の最大長)の方が短い。その為、図4に示すように、被検体8の側面(図4では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の右側面)からスキャノグラム撮影を行う。コンピュータ3は、このように取得されたスキャノグラムをはみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
【0031】
方法(B)では、寝台9の位置がS101における1回目のスキャノグラム撮影と異なる位置になるように、寝台9を横方向(被検体8の体幅方向)に移動させて2回目のスキャノグラム撮影を行う。方法(B)では、スキャノグラムを1枚あるいは複数枚撮影する。そして、コンピュータ3の演算装置21は、取得されたスキャノグラム(必要であれば、通常スキャノグラムも含む。)の中で何枚かを合成し、はみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
例えば、図12に示すように、片側はみ出しの場合、寝台9をはみ出しが無い方向(図12の例であれば左方向)に移動させて、1枚のスキャノグラムを撮影する。
また、例えば、図13に示すように、両側はみ出しの場合、寝台9を左と右の両方向に移動させて、2枚のスキャノグラムを撮影する。
【0032】
図5では、両側はみ出しの場合の例を示している。図5(a)では、寝台9をS101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置よりも左に移動させて、被検体8の右端がX線10の照射範囲に含まれるようにしてスキャノグラムを撮影することを示している。また、図5(b)では、寝台9をS101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置よりも右に移動させて、被検体8の左端がX線10の照射範囲に含まれるようにしてスキャノグラムを撮影することを示している。
図6では、取得された2枚のスキャノグラムを合成し、1枚のはみ出し対応スキャノグラムを作成することを示している。図6(a)が、図5(a)の位置において撮影されたスキャノグラムを示している。図6(b)が、図5(b)の位置において撮影されたスキャノグラムを示している。そして、図6(c)は、コンピュータ3の演算装置21によって2枚のスキャノグラムが合成されたスキャノグラムを示している。図6(c)に示すスキャノグラムが、はみ出し対応スキャノグラムである。
【0033】
方法(C)では、寝台9とX線管5との距離が、S101における1回目のスキャノグラム撮影時よりも大きくなるように、寝台9を移動させて2回目のスキャノグラム撮影を行う。
例えば、図7に示すように、X線管5から寝台9が最も遠くに移動できる方向が鉛直下向き(図7の紙面の下方向)であった場合、寝台9を移動できる範囲において、寝台9を最も下に移動してスキャノグラム撮影を行う。また、X線管5が移動可能な場合、X線管5を回転円板の最上部に配置してスキャノグラム撮影を行う。
コンピュータ3は、このように取得されたスキャノグラムをはみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
【0034】
次に、図8、図9を参照しながら、S107のはみ出し補正処理の詳細について説明する。はみ出し補正処理では、前述の通り、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。
ここで、S102のはみ出し検知処理において、はみ出しがあると判定された場合には、コンピュータ3の演算装置21は、S103において生成されたはみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、はみ出し補正処理を行う。一方、S102のはみ出し検知処理において、はみ出しがないと判定された場合には、コンピュータ3の演算装置21は、S101において取得された通常スキャノグラムのsum値を用いて、はみ出し補正処理を行う。
尚、通常スキャノグラムの投影データにはみ出しがないと判定され、かつS105において取得された投影データにはみ出しがあると判定される例としては、S101のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)の後、再構成位置を調整するために、寝台9を横方向に移動させてS105の本スキャンを行う場合などがある。
【0035】
前述の通り、sum値は被検体8の体軸方向(図3のz方向)の位置ごとに投影データの投影値の合計を算出した値である。従って、スキャノグラム撮影によって取得された投影データであっても、本スキャンによって取得された投影データであっても(更に言えば、どの撮影方向であっても)、はみ出しがない限り、X線10が照射される被検体8の体軸方向(図3のZ方向)の位置が同じ投影データのsum値は、同じ値になるはずである。本発明では、この知見に基づき、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いてはみ出し補正処理を行う。
【0036】
以下では、S106において生成されたパラレルビーム投影データの中で、N番目のビューをVnとし、ビューVnの投影データのはみ出し補正を行うものとする。また、はみ出し補正前におけるビューVnの投影データのsum値をSn、はみ出し補正後におけるビューVnの投影データのsum値をSfとする。また、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのビューであって、ビューVnとZ方向(体軸方向)の位置が同一のビューをVm、ビューVmの投影データのsum値をSmとする。そして、コンピュータ3の演算装置21は、SfとSmとが同じ値となるように、補正領域を追加する。
以下、(a)直線によって補正する方法、(b)曲線によって補正する方法、の2つの方法について説明する。
【0037】
図8では、x軸をチャネル、y軸を投影値とし、ビューVnの投影データの一部を示している。尚、原点は、はみ出し位置とする。
方法(a)では、次に示す式(1)を満たすpを算出し、点(0、b)から点(p、0)を結ぶ直線を補正直線31とする。そして、x軸、y軸および補正直線31によって囲まれる領域(斜線部)を補正領域32とする。
【0038】
【数1】
【0039】
式(1)では、Sm、Sn、bが既知である。左辺は、補正処理によるsum値の増加量を示している。右辺の第1項は、補正領域32に相当する三角形の面積を示している。右辺の第2項は、はみ出し位置における投影値を示している。
図8では、便宜上、投影データを示す曲線が連続関数のように示されているが、実際には、投影データはとびとびの値(チャネルごとの値)である。そのため、式(1)の右辺では、補正領域32に相当する三角形の面積から、はみ出し位置における投影値を引いている。
このように求められた補正直線31に基づいて補正領域32を追加することで、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【0040】
図9では、x軸をチャネル、y軸を投影値とし、ビューVnの投影データの一部を示している。尚、原点は、はみ出し位置とする。
方法(b)では、最初に、ビューVnの投影データのはみ出し位置付近の投影値に基づいて、補正曲線33を算出する。補正曲線33の算出方法は、特に限定されず、既知の推定手法(例えば、既知の外挿法、特許文献2におけるフィッティング手法など)を用いれば良い。
但し、補正曲線33は、はみ出し部分に相当する被検体9の部分(非照射部)が全く考慮されていないデータから算出されることになる。従って、補正曲線33から補正領域を算出すると、従来技術と同様、補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0041】
本発明では、更に、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、補正曲線33を拡張し、図9に示すように、拡張後の曲線34を算出する。そして、x軸、y軸および拡張後の曲線34によって囲まれる領域(斜線部)を補正領域35とする。
【0042】
x軸、y軸および補正曲線33によって囲まれる面積をSbとする。最初に、次に示す式(2)によって、X方向(体幅方向)への拡張の割合Rを算出する。
【0043】
【数2】
【0044】
式(2)では、Sm、Sn、Sbが既知である。
また、図9に示すように、Y軸上の点(0、y)(但し、0≦y<b)から補正曲線33までのx軸方向の距離をDs、点(0、y)から拡張後の曲線34までのx軸方向の距離をDvとする。
そして、次に示す式(3)に、式(2)によって算出されたRを代入し、式(3)を満たす点(拡張後の曲線34上の点)を算出する。
【0045】
【数3】
【0046】
このように、0≦y<bを満たす全てのyに対して、式(3)を満たす点を算出することで、拡張後の曲線34が求まる。
そして、このように求められた拡張後の曲線34に基づいて補正領域35を追加することで、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【0047】
尚、本発明は、方法(a)、(b)に限定されるものではなく、他の方法であっても、SfとSmとが同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。すなわち、補正領域および補正前のsum値の和が、体軸方向の位置が同一の通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値と同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。
【0048】
また、図8、図9に示す例は、片側はみ出しの場合であったが、本発明は当然ながら、両側はみ出しの場合にも適用できる。
以下、一例として、直線によって補正する方法(方法(a))について説明する。
両側はみ出しの場合、投影データの左側に追加される補正領域の面積をSl、右側に追加される補正領域の面積をSr、投影データの左端の投影値をbl、右側の投影値をbr、左側の補正直線をAl、補正直線Alとx軸との交点を(pl、0)、右側の補正特線をAr、補正直線Arとx軸との交点を(pr、0)とする。
そして、次に示す式(4)〜(7)を満たすpl、prを算出することで、補正直線Al、Arを定めることができる。
【0049】
【数4】
【0050】
式(4)〜(7)では、Sm、Sn、bl、brが既知である。例えば、式(5)、(6)を式(4)、(7)に代入することで、pl、prの連立方程式の問題となる。
尚、本発明は、この方法に限定されるものではなく、他の方法であっても、Sl、SrおよびSnの合計値が、Smと同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。すなわち、補正領域および補正前のsum値の和が、体軸方向の位置が同一の通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値と同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。
【0051】
<第2の実施の形態>
次に、図10を参照しながら、第2の実施の形態におけるX線CT装置1aの構成について説明する。尚、第1の実施の形態と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
第1の実施の形態と第2の実施の形態との違いは、本スキャン前にはみ出しがあるかどうかを判定する仕組みの違いである。
第1の実施の形態では、通常スキャノグラムを取得し、通常スキャノグラムに基づいてはみ出しがあるかどうかを検知する。一方、第2の実施の形態では、光学的センサを用いて、通常スキャノグラムを取得する前に、はみ出しがあるかどうかを検知する。
【0052】
図10に示すように、X線CT装置1aは、スキャナ2aとコンピュータ3から構成される。スキャナ2aは、X線管装置4、寝台9、X線検出器11、データ収集装置12、高電圧発生装置13、X線管回転制御装置14、寝台移動制御装置15、被写体位置センサ18等から構成される。
【0053】
被写体位置センサ18は、光学的センサであり、被写体の2次元情報(画像)が取得される。被写体位置センサ18によって取得された2次元情報は、コンピュータ3の演算装置21に送信される。演算装置21は、被写体の位置の検出を行い、被写体が通常スキャノグラムを取得する撮影において、はみ出しが発生するかどうかの判定を行う。また、演算装置21は、被写体がスキャノグラム撮影においてはみ出す量の算出を行う。
【0054】
次に、図11を参照しながら、第2の実施の形態における処理の流れを説明する。尚、図11に示すステップS101、S103〜S108において行う処理の内容は、処理順序を除き、第1の実施の形態と同様である。
ステップS201では、コンピュータ3の演算装置21は、光学的センサ18によって取得された2次元情報に基づいて、被写体の位置を検出する。そして、演算装置21は、検出された被写体の位置に基づいて、通常スキャノグラムを取得する撮影において、はみ出しが発生するかどうかの判定を行う。
ここで、光学的センサ18が2次元情報を取得するときは、被検体8が仰向けに寝台9に載置された状態である。また、通常スキャノグラムを取得する撮影では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の正面(図10の紙面の上方向)からX線10が照射されるものとする。
【0055】
演算装置21が、はみ出しが発生しないと判断した場合、X線CT装置1aは、第1の実施の形態と同様、通常スキャノグラムを取得する撮影を行う(ステップS101)。
演算装置21が、はみ出しが発生すると判断した場合、X線CT装置1aは、第1の実施の形態と同様、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う(ステップS103)。
以降は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
更に、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、スキャノグラム撮影の回数を削減できる。すなわち、第1の実施の形態では、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う場合、1回目のスキャノグラム撮影および2回目のスキャノグラム撮影として、2回に分けて行っていた。一方、第2の実施の形態では、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う場合であっても、スキャノグラム撮影を2回に分けて行うことがない。従って、第2の実施の形態では、被検者の被曝量を削減できる場合がある。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1、1a………X線CT装置
2、2a………スキャナ
3………コンピュータ
4………X線管装置
5………X線管
8………被検体
9………寝台
10………X線
11………X線検出装置
15………寝台移動制御装置
18………被写体位置センサ
21………演算装置
22………記憶装置
31………補正直線
32、35………補正領域
33………補正曲線
34………拡張後の曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンビーム(扇形ビーム)もしくはコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)状のX線を被検体に照射し、被検体を透過したX線をX線検出器により計測し、多方向からの計測データを再構成することにより被検体の再構成画像を得るシングルスライスもしくはマルチスライスX線CT装置に関し、特に、被検体が撮影範囲からはみ出した場合にも、アーチファクトの少ない高画質な再構成画像を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置による撮影において、X線検出器のチャネル数やX線源から照射されるX線の照射角度によっては、投影データに被写体の分布が納まらず、はみ出してしまう場合がある。以下、このような場合を「投影データにはみ出しがある」と呼ぶことにする。投影データにはみ出しがある場合、再構成画像にアーチファクトが発生し、画質が劣化する。
ところで、投影データにはみ出しがあるケースは様々である。例えば、図12に示すように、寝台103を初期位置から左右に移動させて撮影するケース、図13に示すように、体格が大きい被検体102を撮影するケースなどは、投影データにはみ出しがある場合がある。投影データのはみ出し部分に相当する被検体102の部分は、図12、図13に示す非照射部105a、105b、105c(斜線部)である(以下、「非照射部105」と総称する。)。はみ出しのある投影データには、非照射部105のデータが反映されていないことになる。
【0003】
図14は、図12の例(片側はみ出し)の投影データを示している。図15は、図13の例(両側はみ出し)の投影データを示している。このような投影データに対して、例えば、図16に示すように、投影データの外側に(最大チャネルを示す位置よりも右側に)、はみ出し補正線111を伸ばし、補正領域112を追加することで、はみ出しによる画質劣化を軽減することができる。このように補正領域111の追加を行う処理は、はみ出し補正処理と呼ばれている。
【0004】
特許文献1に記載のはみ出し補正処理では、はみ出しが生じている投影データを検出し、検出された投影データを表す測定点の列(軌跡)に基づく推定によって、測定点の列に外挿測定点を追加する。そして、外挿測定点によって図16のはみ出し補正線111が決められ、補正領域112が得られる。この方法では、はみ出しが生じている投影データのみから、当該投影データの補正領域112を推定する。そうすると、非照射部105が全く考慮されていないデータから補正領域112を推定していることになるので、はみ出し補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0005】
これに対して、特許文献2では、ビュー毎に投影データの投影値の合計を算出した値(sum値)を利用することが記載されている。特許文献2に記載のはみ出し補正処理では、図17に示すように、実際の投影データのsum値の推移を示す点線121に対して、はみ出しのあるビューに隣接するはみ出しの無いビューのsum値を結んだ直線122上の値を、はみ出しのあるビューのsum値と推定する(線形補間による推定)。そして、得られたsum値(推定sum値)と補正領域112を追加した後のsum値とが等しくなるように、補正領域112を設定する。この方法では、隣接するはみ出しの無いビューの投影データのsum値に基づいて、はみ出しのあるビューに関する投影データの補正領域112を推定する。そうすると、例えば、ノーマルスキャン(寝台103が固定され、X線源であるX線管101が被検体102の周りを円軌道で周回する撮影)であれば、非照射部105が考慮されたデータに基づいて補正領域112を推定していることになるので、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−308637号公報
【特許文献2】特開2005−21702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のはみ出し補正処理であっても不十分な場合がある。例えば、ヘリカルスキャン(寝台103が体軸方向(図12、図13の紙面に垂直な方向)に移動しながら、X線管101が被検体102の周りをらせん軌道で周回する撮影)を行う場合、スキャン位置が少しずつ体軸方向に変化するため、X線が透過する被検体102の体軸方向の位置も変化する。そうすると、はみ出しがあるビューが続く間に、X線が照射される被検体102の体軸方向の位置が大きく変化し、sum値が大きく変動する場合がある(X線が照射される被検体102の体軸方向の位置が変化すれば、X線が吸収される臓器や組織が異なることになり、X線の減弱量の合計も変化する。)。
このような場合、図17に示すように、sum値の真の値の推移を示す曲線123と、線形補間によって推定された直線122との間に、大きなずれが生じてしまう。このように、真の値とのずれが大きくなると、はみ出し補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、投影データに被写体のはみ出しがあるときに、いかなる場合であっても、画質劣化の少ない再構成画像等を出力するX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、X線を照射するX線源と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し被検体の周囲を回転する回転盤と、前記被検体が載置される寝台とを備えるX線CT装置であって、スキャノグラムに基づいて、本スキャンで得られた投影データである本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正するはみ出し補正手段、を具備することを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、投影データに被写体のはみ出しがあるときに、いかなる場合であっても、画質劣化の少ない再構成画像等を出力するX線CT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態におけるX線CT装置1の構成を示すブロック図
【図2】第1の実施の形態における処理の詳細を示すフローチャート
【図3】スキャノグラムの1例を示す図
【図4】被検体8の側面から撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図5】寝台9を横方向(X方向)に移動させて2回撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図6】スキャノグラムの合成処理を説明する図
【図7】寝台9をX線管5と離れる方向に移動させて撮影するスキャノグラム撮影を示す図
【図8】はみ出し補正処理の第1の例を説明する図
【図9】はみ出し補正処理の第2の例を説明する図
【図10】第2の実施の形態におけるX線CT装置1aの構成を示すブロック図
【図11】第2の実施の形態における処理の詳細を示すフローチャート
【図12】投影データのはみ出しの第1の例(片側はみ出しの例)を示す図
【図13】投影データのはみ出しの第2の例(両側はみ出しの例)を示す図
【図14】投影データのはみ出しの第1の例に対する投影データを示す図
【図15】投影データのはみ出しの第2の例に対する投影データを示す図
【図16】はみ出し補正処理の概念図
【図17】従来技術によるはみ出し補正処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、X線CT装置が予め設定された通常のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)を行い、得られたスキャノグラムから被写体のはみ出しがあるかを検知し、はみ出しがある場合には寝台の位置とX線の照射方向を制御し、被写体のはみ出しのない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムの撮影(2回目のスキャノグラム撮影)を行う。
以下では、通常のスキャノグラム撮影にて得られたスキャノグラムを「通常スキャノグラム」と呼ぶこととする。また、被写体のはみ出しのない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムを「はみ出し対応スキャノグラム」と呼ぶこととする。
そして、X線CT装置1は、本スキャンで得られた投影データに対し、はみ出し対応スキャノグラム等のsum値を利用してはみ出し補正を行う。本発明では、はみ出し対応スキャノグラム等のsum値を用いるため、より正確なはみ出し補正処理を行うことができ、本スキャンがヘリカルスキャンの場合にも常に、最終的に得られる再構成画像の画質劣化を低減できる。
ここで、本発明におけるsum値とは、被検体の体軸方向の位置ごとに投影データの投影値の合計を算出した値である。本スキャンで得られた投影データに対しては、sum値はビューごとに投影値の合計を算出した値に相当する。
【0013】
まず、図1を参照しながら、第1の実施の形態におけるX線CT装置1の構成について説明する。尚、図1では、X線管5が1つの場合を図示しているが、本発明は多線源型のX線CT装置でも適用可能である。
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャナ2とコンピュータ3から構成される。スキャナ2は、X線管装置4から放射されるX線10を被検体8に照射し、被検体8を透過したX線10の投影データを収集する。コンピュータ3は、スキャナ2のスキャン制御、スキャナ2で収集された投影データを用いたデータ処理(スキャノグラムの取得、画像再構成など)などを行う。
【0014】
スキャナ2は、X線管装置4、寝台9、X線検出器11、データ収集装置12、高電圧発生装置13、X線管回転制御装置14、寝台移動制御装置15等から構成される。
X線管装置4は、X線管5、X線フィルタ6、補償フィルタ7から構成される。ここでX線フィルタ6および補償フィルタ7は、被検体8への被ばく量低減と被検体8透過後のX線強度一定化のために設けられている。
X線源であるX線管5は、高電圧発生装置13から供給される電力を用いて、被検体8に対してX線を照射し、データ収集装置12で被検体8の投影データを収集する。
X線検出器11は、X線管5に対向配置され、被検体8を透過したX線10を検出する。X線検出器11には、複数のX線検出素子がX線管5の周回方向に約1000チャネル、被検体8の体軸方向(図1の紙面の垂直方向)に1〜500チャネル配列して構成されている。そして、検出されたX線10の強度に応じた電気信号がデータ収集装置12に送信される。データ収集装置12によって受信された計測データは、コンピュータ3に伝送される。
高電圧発生装置13は、X線管5に供給する電力を調整することにより、照射されるX線量の調整などの制御を行う。なお、高電圧発生装置13は、高電圧変圧器、フィラメント電流発生器および整流器を備え、さらに、管電圧およびフィラメント電流を任意に、または段階的に調整するための管電圧切換器およびフィラメント電流切換器を備える。
【0015】
X線検出器11は、X線管装置4から照射され、被検体8を透過したX線10を検出する。ここで、スキャナ2内の円環状の回転架台(回転円盤)には、X線管装置4と、X線検出器11およびデータ収集装置12とが、対向する位置に搭載されている。回転架台は、X線管回転制御装置14により駆動され回転する。これにより、X線管装置4とX線検出器11およびデータ収集装置12とは、互いに対向しながら、被検体8の周りを回転する。
寝台9は、被検体8を載せるベッドであり、寝台移動制御装置15により駆動され、X線10の照射に同期してスキャナ2の開口部に挿入される。
【0016】
コンピュータ3は、演算装置21、記憶装置22、表示装置23、入力装置24等を備え、これらはバス25を介して互いに接続されている。
演算装置21は、スキャナ2から送信されたデータを受信して、スキャナ2から送信されたデータの処理、スキャノグラムの取得、断層画像等の再構成、スキャナ2を含む各装置の制御、データ通信の制御などを行う。後述する複数のスキャノグラムを合成する処理や、投影データのはみ出し補正処理も、演算装置21が行う。
記憶装置22は、スキャノグラム、断層画像、撮影に用いる設定値など、スキャン処理に関するデータを保持するためのものである。
表示装置23は、スキャノグラム、断層画像、撮影に用いる設定値などを表示するためのものである。
入力装置24は、X線CT装置1の操作者がスキャノグラム撮影や本スキャンの撮影条件などを入力するためのものである。
【0017】
次に、図2を参照しながら、第1の実施の形態における処理の流れを説明する。
ステップS101では、スキャナ2は、予め設定された通常のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)を行い、通常スキャノグラムを取得する。通常スキャノグラムは、本スキャン撮影の位置決めなどに用いられる。
スキャノグラム撮影では、X線管装置4、X線検出器11、データ収集装置12等を搭載する回転円盤を回転させず、寝台9を被検体8の体軸方向(図1の紙面の垂直方向)に移動させて撮影を行う。以下、後述するS103における2回目のスキャノグラム撮影においても、回転円盤を回転させず、寝台9を被検体8の体軸方向に移動させて撮影を行う点については同様である。
1回目のスキャノグラム撮影では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の正面(図1の紙面の上方向)からX線10が照射される。
【0018】
ステップS102では、コンピュータ3の演算装置21は、通常スキャノグラムに対して、はみ出し検知処理を行い、被写体のはみ出しがないかどうか判定する。はみ出し検知処理の詳細については後述する。
X線CT装置1は、はみ出しが無い場合にはS104へ進む。一方、はみ出しがある場合には、X線CT装置1は、ステップS103において、はみ出し対応スキャノグラムを生成する。前述の通り、はみ出し対応スキャノグラムは、被写体のはみ出しがない、或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムである。はみ出し対応スキャノグラム生成処理の詳細については後述する。
【0019】
ステップS104では、操作者が、入力装置24を介して、X線CT装置1に対して本スキャンを行うための各種設定を行う。コンピュータ3は、入力された設定値を記憶装置22に保持する。
ステップS105では、スキャナ2は、記憶装置22に保持される設定値に基づき本スキャンを行う。
【0020】
ステップS106では、コンピュータ3の演算装置21は、S105で得られたファンビーム投影データをパラレルビーム投影データに変換する(ファンパラ変換処理)。ファンパラ変換処理は、後続の画像再構成処理における計算を容易にするという利点がある。尚、X線管装置4から放射されるX線10が、ファンビームであっても、コーンビームであっても、演算装置21は、ファンパラ変換処理を行う。
【0021】
ステップS107では、コンピュータ3の演算装置21は、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。はみ出し補正処理の詳細については後述する。
尚、演算装置21は、例えば、S106において生成されるパラレルビーム投影データの両端(0チャネルおよび最大チャネル)の値と、予め定められた閾値とを比較し、両端の値の少なくとも一方が閾値よりも大きい場合、はみ出しがあると判定する。
【0022】
S106およびS107は、S105の本スキャンによって取得された投影データ(あるいは、後述するS108における画像再構成処理に必要な投影データ)の数だけ処理が繰り返される。
一方、S108における画像再構成処理では、はみ出しがない投影データに対しては、S106において生成されたパラレルビーム投影データを用いることができる。従って、はみ出しがない投影データに対しては、はみ出し補正処理を行う必要がない。そこで、S107では、はみ出しがない投影データに対しては、はみ出し補正処理を行わないものとする。
【0023】
ステップS108では、コンピュータ3の演算装置21は、S106において生成されたパラレルビーム投影データ、S107のはみ出し補正処理によって補正されたパラレルビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う。画像再構成処理の方法には様々な方法があるが、演算装置21は、例えばフィルタ補正逆投影法を用いる。
【0024】
前述の説明では、S105のファンパラ変換処理の後、S106のはみ出し補正処理を行うものとしたが、はみ出し補正処理の後、ファンパラ変換処理を行っても良い。この場合、コンピュータ3の演算装置21は、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、S105で得られたファンビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。そして、演算装置21は、はみ出し補正処理によって補正されたファンビーム投影データをパラレルビーム投影データに変換する。
【0025】
尚、ファンビーム投影データと比較して、パラレルビーム投影データでは被写体がはみ出し難い。従って、図2に示すフローチャートのように、ファンパラ変換処理の後、はみ出し補正処理を行う場合、はみ出し補正処理の回数が少なくなると考えられる。そして、当然ながら、はみ出し補正処理の回数が少なくなれば、全体の計算時間が短縮される。
【0026】
また、前述の説明では、ファンパラ変換処理を行うとしたが、ファンパラ変換処理を行わなくても良い。ファンパラ変換処理を行わない場合、コンピュータ3の演算装置21は、ファンビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う。
但し、ファンビーム投影データを用いて画像再構成処理を行う場合、ファン状に逆投影が行われるため、被検者105とX線管装置4との距離に応じて被検者105を透過するX線10の分解能が異なり、同一画像内で不均一な分解能を持つ画像が生成されると考えられる。
【0027】
次に、図3を参照しながら、S102のはみ出し検知処理の詳細について説明する。はみ出し検知処理では、前述の通り、コンピュータ3の演算装置21が、通常スキャノグラムにおいて、被写体がはみ出していないかを判定する。
【0028】
コンピュータ3は、被検体8あるいは寝台9の投影値を「判定値」として記憶部22に予め記憶しておく。判定値は、図2の処理を行う前に、事前に設定されても良いし、通常スキャノグラムに基づいて設定されても良い。また、判定値は、ある程度幅があっても良い。
そして、コンピュータ3の演算装置21は、図3に示されるスキャノグラム中の両端のチャネル(0チャネルおよび最大チャネル)の投影値をZ方向(被検体8の体軸方向)に全て探索し、判定値に該当する投影値が少なくとも一つある場合には「はみ出しあり」と判定し、一つもない場合には「はみ出し無し」と判定する。
尚、本発明におけるはみ出し検知処理は、特に限定されるものではなく、被写体のはみ出しが判定できれば、他の方法を用いても良い。
【0029】
次に、図4から図7を参照しながら、S103のはみ出し対応スキャノグラム生成処理の詳細について説明する。はみ出し対応スキャノグラム生成処理では、スキャナ2およびコンピュータ3が、はみ出し対応スキャノグラムを取得する。はみ出し対応スキャノグラム生成処理では、寝台9の位置および/またはX線管5から照射されるX線10の方向を制御して、スキャノグラムが撮影される。
以下では、(A)被検体8の側面から撮影する方法、(B)寝台9を横方向(被検体8の体幅方向)に移動させて撮影する方法、(C)寝台9の位置とX線管5の位置とが離れるように、寝台9および/またはX線管5を移動させて撮影する方法、の3つの方法について説明する。
尚、寝台9を移動させた場合、S105の本スキャン時には、寝台9の位置を、元の位置(S101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置)に戻して撮影する。同様に、X線管5を移動させた場合、S105の本スキャン時には、X線管5の位置を、元の位置に戻して撮影する。
【0030】
方法(A)では、図4に示すように、X線10の照射範囲に被検体8が最も多く含まれる方向、すなわち被検体8の側面から2回目のスキャノグラム撮影を行う。ほとんどの被検体8は、体幅(図4の紙面において被検体8の左右方向の最大長)よりも体厚(図4の紙面において被検体8の上下方向の最大長)の方が短い。その為、図4に示すように、被検体8の側面(図4では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の右側面)からスキャノグラム撮影を行う。コンピュータ3は、このように取得されたスキャノグラムをはみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
【0031】
方法(B)では、寝台9の位置がS101における1回目のスキャノグラム撮影と異なる位置になるように、寝台9を横方向(被検体8の体幅方向)に移動させて2回目のスキャノグラム撮影を行う。方法(B)では、スキャノグラムを1枚あるいは複数枚撮影する。そして、コンピュータ3の演算装置21は、取得されたスキャノグラム(必要であれば、通常スキャノグラムも含む。)の中で何枚かを合成し、はみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
例えば、図12に示すように、片側はみ出しの場合、寝台9をはみ出しが無い方向(図12の例であれば左方向)に移動させて、1枚のスキャノグラムを撮影する。
また、例えば、図13に示すように、両側はみ出しの場合、寝台9を左と右の両方向に移動させて、2枚のスキャノグラムを撮影する。
【0032】
図5では、両側はみ出しの場合の例を示している。図5(a)では、寝台9をS101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置よりも左に移動させて、被検体8の右端がX線10の照射範囲に含まれるようにしてスキャノグラムを撮影することを示している。また、図5(b)では、寝台9をS101における1回目のスキャノグラム撮影時の位置よりも右に移動させて、被検体8の左端がX線10の照射範囲に含まれるようにしてスキャノグラムを撮影することを示している。
図6では、取得された2枚のスキャノグラムを合成し、1枚のはみ出し対応スキャノグラムを作成することを示している。図6(a)が、図5(a)の位置において撮影されたスキャノグラムを示している。図6(b)が、図5(b)の位置において撮影されたスキャノグラムを示している。そして、図6(c)は、コンピュータ3の演算装置21によって2枚のスキャノグラムが合成されたスキャノグラムを示している。図6(c)に示すスキャノグラムが、はみ出し対応スキャノグラムである。
【0033】
方法(C)では、寝台9とX線管5との距離が、S101における1回目のスキャノグラム撮影時よりも大きくなるように、寝台9を移動させて2回目のスキャノグラム撮影を行う。
例えば、図7に示すように、X線管5から寝台9が最も遠くに移動できる方向が鉛直下向き(図7の紙面の下方向)であった場合、寝台9を移動できる範囲において、寝台9を最も下に移動してスキャノグラム撮影を行う。また、X線管5が移動可能な場合、X線管5を回転円板の最上部に配置してスキャノグラム撮影を行う。
コンピュータ3は、このように取得されたスキャノグラムをはみ出し対応スキャノグラムとして記憶部22に記憶する。
【0034】
次に、図8、図9を参照しながら、S107のはみ出し補正処理の詳細について説明する。はみ出し補正処理では、前述の通り、S106において生成されるパラレルビーム投影データにはみ出しがある場合、パラレルビーム投影データのはみ出し補正処理を行う。
ここで、S102のはみ出し検知処理において、はみ出しがあると判定された場合には、コンピュータ3の演算装置21は、S103において生成されたはみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、はみ出し補正処理を行う。一方、S102のはみ出し検知処理において、はみ出しがないと判定された場合には、コンピュータ3の演算装置21は、S101において取得された通常スキャノグラムのsum値を用いて、はみ出し補正処理を行う。
尚、通常スキャノグラムの投影データにはみ出しがないと判定され、かつS105において取得された投影データにはみ出しがあると判定される例としては、S101のスキャノグラム撮影(1回目のスキャノグラム撮影)の後、再構成位置を調整するために、寝台9を横方向に移動させてS105の本スキャンを行う場合などがある。
【0035】
前述の通り、sum値は被検体8の体軸方向(図3のz方向)の位置ごとに投影データの投影値の合計を算出した値である。従って、スキャノグラム撮影によって取得された投影データであっても、本スキャンによって取得された投影データであっても(更に言えば、どの撮影方向であっても)、はみ出しがない限り、X線10が照射される被検体8の体軸方向(図3のZ方向)の位置が同じ投影データのsum値は、同じ値になるはずである。本発明では、この知見に基づき、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いてはみ出し補正処理を行う。
【0036】
以下では、S106において生成されたパラレルビーム投影データの中で、N番目のビューをVnとし、ビューVnの投影データのはみ出し補正を行うものとする。また、はみ出し補正前におけるビューVnの投影データのsum値をSn、はみ出し補正後におけるビューVnの投影データのsum値をSfとする。また、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのビューであって、ビューVnとZ方向(体軸方向)の位置が同一のビューをVm、ビューVmの投影データのsum値をSmとする。そして、コンピュータ3の演算装置21は、SfとSmとが同じ値となるように、補正領域を追加する。
以下、(a)直線によって補正する方法、(b)曲線によって補正する方法、の2つの方法について説明する。
【0037】
図8では、x軸をチャネル、y軸を投影値とし、ビューVnの投影データの一部を示している。尚、原点は、はみ出し位置とする。
方法(a)では、次に示す式(1)を満たすpを算出し、点(0、b)から点(p、0)を結ぶ直線を補正直線31とする。そして、x軸、y軸および補正直線31によって囲まれる領域(斜線部)を補正領域32とする。
【0038】
【数1】
【0039】
式(1)では、Sm、Sn、bが既知である。左辺は、補正処理によるsum値の増加量を示している。右辺の第1項は、補正領域32に相当する三角形の面積を示している。右辺の第2項は、はみ出し位置における投影値を示している。
図8では、便宜上、投影データを示す曲線が連続関数のように示されているが、実際には、投影データはとびとびの値(チャネルごとの値)である。そのため、式(1)の右辺では、補正領域32に相当する三角形の面積から、はみ出し位置における投影値を引いている。
このように求められた補正直線31に基づいて補正領域32を追加することで、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【0040】
図9では、x軸をチャネル、y軸を投影値とし、ビューVnの投影データの一部を示している。尚、原点は、はみ出し位置とする。
方法(b)では、最初に、ビューVnの投影データのはみ出し位置付近の投影値に基づいて、補正曲線33を算出する。補正曲線33の算出方法は、特に限定されず、既知の推定手法(例えば、既知の外挿法、特許文献2におけるフィッティング手法など)を用いれば良い。
但し、補正曲線33は、はみ出し部分に相当する被検体9の部分(非照射部)が全く考慮されていないデータから算出されることになる。従って、補正曲線33から補正領域を算出すると、従来技術と同様、補正が不十分となり、再構成画像の画質が劣化してしまう。
【0041】
本発明では、更に、通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値を用いて、補正曲線33を拡張し、図9に示すように、拡張後の曲線34を算出する。そして、x軸、y軸および拡張後の曲線34によって囲まれる領域(斜線部)を補正領域35とする。
【0042】
x軸、y軸および補正曲線33によって囲まれる面積をSbとする。最初に、次に示す式(2)によって、X方向(体幅方向)への拡張の割合Rを算出する。
【0043】
【数2】
【0044】
式(2)では、Sm、Sn、Sbが既知である。
また、図9に示すように、Y軸上の点(0、y)(但し、0≦y<b)から補正曲線33までのx軸方向の距離をDs、点(0、y)から拡張後の曲線34までのx軸方向の距離をDvとする。
そして、次に示す式(3)に、式(2)によって算出されたRを代入し、式(3)を満たす点(拡張後の曲線34上の点)を算出する。
【0045】
【数3】
【0046】
このように、0≦y<bを満たす全てのyに対して、式(3)を満たす点を算出することで、拡張後の曲線34が求まる。
そして、このように求められた拡張後の曲線34に基づいて補正領域35を追加することで、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
【0047】
尚、本発明は、方法(a)、(b)に限定されるものではなく、他の方法であっても、SfとSmとが同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。すなわち、補正領域および補正前のsum値の和が、体軸方向の位置が同一の通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値と同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。
【0048】
また、図8、図9に示す例は、片側はみ出しの場合であったが、本発明は当然ながら、両側はみ出しの場合にも適用できる。
以下、一例として、直線によって補正する方法(方法(a))について説明する。
両側はみ出しの場合、投影データの左側に追加される補正領域の面積をSl、右側に追加される補正領域の面積をSr、投影データの左端の投影値をbl、右側の投影値をbr、左側の補正直線をAl、補正直線Alとx軸との交点を(pl、0)、右側の補正特線をAr、補正直線Arとx軸との交点を(pr、0)とする。
そして、次に示す式(4)〜(7)を満たすpl、prを算出することで、補正直線Al、Arを定めることができる。
【0049】
【数4】
【0050】
式(4)〜(7)では、Sm、Sn、bl、brが既知である。例えば、式(5)、(6)を式(4)、(7)に代入することで、pl、prの連立方程式の問題となる。
尚、本発明は、この方法に限定されるものではなく、他の方法であっても、Sl、SrおよびSnの合計値が、Smと同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。すなわち、補正領域および補正前のsum値の和が、体軸方向の位置が同一の通常スキャノグラム、或いは、はみ出し対応スキャノグラムのsum値と同じ値となるように補正領域を追加すれば良い。
【0051】
<第2の実施の形態>
次に、図10を参照しながら、第2の実施の形態におけるX線CT装置1aの構成について説明する。尚、第1の実施の形態と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
第1の実施の形態と第2の実施の形態との違いは、本スキャン前にはみ出しがあるかどうかを判定する仕組みの違いである。
第1の実施の形態では、通常スキャノグラムを取得し、通常スキャノグラムに基づいてはみ出しがあるかどうかを検知する。一方、第2の実施の形態では、光学的センサを用いて、通常スキャノグラムを取得する前に、はみ出しがあるかどうかを検知する。
【0052】
図10に示すように、X線CT装置1aは、スキャナ2aとコンピュータ3から構成される。スキャナ2aは、X線管装置4、寝台9、X線検出器11、データ収集装置12、高電圧発生装置13、X線管回転制御装置14、寝台移動制御装置15、被写体位置センサ18等から構成される。
【0053】
被写体位置センサ18は、光学的センサであり、被写体の2次元情報(画像)が取得される。被写体位置センサ18によって取得された2次元情報は、コンピュータ3の演算装置21に送信される。演算装置21は、被写体の位置の検出を行い、被写体が通常スキャノグラムを取得する撮影において、はみ出しが発生するかどうかの判定を行う。また、演算装置21は、被写体がスキャノグラム撮影においてはみ出す量の算出を行う。
【0054】
次に、図11を参照しながら、第2の実施の形態における処理の流れを説明する。尚、図11に示すステップS101、S103〜S108において行う処理の内容は、処理順序を除き、第1の実施の形態と同様である。
ステップS201では、コンピュータ3の演算装置21は、光学的センサ18によって取得された2次元情報に基づいて、被写体の位置を検出する。そして、演算装置21は、検出された被写体の位置に基づいて、通常スキャノグラムを取得する撮影において、はみ出しが発生するかどうかの判定を行う。
ここで、光学的センサ18が2次元情報を取得するときは、被検体8が仰向けに寝台9に載置された状態である。また、通常スキャノグラムを取得する撮影では、仰向けに寝台9に載置された状態の被検体8の正面(図10の紙面の上方向)からX線10が照射されるものとする。
【0055】
演算装置21が、はみ出しが発生しないと判断した場合、X線CT装置1aは、第1の実施の形態と同様、通常スキャノグラムを取得する撮影を行う(ステップS101)。
演算装置21が、はみ出しが発生すると判断した場合、X線CT装置1aは、第1の実施の形態と同様、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う(ステップS103)。
以降は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、ヘリカルスキャンによる撮影であっても常に、はみ出しによる再構成画像の画質劣化の影響を軽減することができる。
更に、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、スキャノグラム撮影の回数を削減できる。すなわち、第1の実施の形態では、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う場合、1回目のスキャノグラム撮影および2回目のスキャノグラム撮影として、2回に分けて行っていた。一方、第2の実施の形態では、はみ出し対応スキャノグラム生成処理を行う場合であっても、スキャノグラム撮影を2回に分けて行うことがない。従って、第2の実施の形態では、被検者の被曝量を削減できる場合がある。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1、1a………X線CT装置
2、2a………スキャナ
3………コンピュータ
4………X線管装置
5………X線管
8………被検体
9………寝台
10………X線
11………X線検出装置
15………寝台移動制御装置
18………被写体位置センサ
21………演算装置
22………記憶装置
31………補正直線
32、35………補正領域
33………補正曲線
34………拡張後の曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し被検体の周囲を回転する回転盤と、前記被検体が載置される寝台とを備えるX線CT装置であって、
スキャノグラムに基づいて、本スキャンで得られた投影データである本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正するはみ出し補正手段、
を具備することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記はみ出し補正手段は、スキャノグラムに含まれる投影データであるスキャノグラム投影データに対して、前記被検体の体軸方向の位置ごとに前記スキャノグラム投影データの投影値の合計を算出した値であるスキャノグラムsum値を算出し、前記スキャノグラムsum値に基づいて、前記本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記はみ出し補正手段は、前記スキャノグラムsum値の中から、補正対象の前記本スキャン投影データと体軸方向の位置が同一のものに基づいて、当該本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項2記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記寝台の位置および/または前記X線源から照射されるX線の方向を制御して撮影されたスキャノグラムを利用して、被写体のはみ出しがない或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムであるはみ出し対応スキャノグラムを生成するはみ出し対応スキャノグラム生成手段、
を更に具備し、
前記はみ出し補正手段は、前記はみ出し対応スキャノグラムに基づいて、前記本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
スキャノグラムに含まれる投影データにおける被写体のはみ出しを検知するはみ出し検知手段、を更に具備し、
前記はみ出し検知手段によってはみ出し有りと判定されると、前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段によって前記はみ出し対応スキャノグラムが取得されることを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
光学的センサを用いて被写体の位置を検知する被写体位置検知手段、
を更に具備し、
前記被写体位置検知手段によって検知された被写体の位置に基づいて被写体のはみ出しが検知されると、前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段によって前記はみ出し対応スキャノグラムが取得されることを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段は、前記被検体の側面からスキャノグラムを撮影するか、前記寝台の位置が異なる複数のスキャノグラムを撮影し、得られた複数のスキャノグラムを合成するか、或いは前記X線源の位置と前記寝台の位置とが離れるように、前記X線源および/または前記寝台を移動させてスキャノグラムを撮影するかのいずれかによって、前記はみ出し対応スキャノグラムを生成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項1】
X線を照射するX線源と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し被検体の周囲を回転する回転盤と、前記被検体が載置される寝台とを備えるX線CT装置であって、
スキャノグラムに基づいて、本スキャンで得られた投影データである本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正するはみ出し補正手段、
を具備することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記はみ出し補正手段は、スキャノグラムに含まれる投影データであるスキャノグラム投影データに対して、前記被検体の体軸方向の位置ごとに前記スキャノグラム投影データの投影値の合計を算出した値であるスキャノグラムsum値を算出し、前記スキャノグラムsum値に基づいて、前記本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記はみ出し補正手段は、前記スキャノグラムsum値の中から、補正対象の前記本スキャン投影データと体軸方向の位置が同一のものに基づいて、当該本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項2記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記寝台の位置および/または前記X線源から照射されるX線の方向を制御して撮影されたスキャノグラムを利用して、被写体のはみ出しがない或いは被写体のはみ出しが少ないスキャノグラムであるはみ出し対応スキャノグラムを生成するはみ出し対応スキャノグラム生成手段、
を更に具備し、
前記はみ出し補正手段は、前記はみ出し対応スキャノグラムに基づいて、前記本スキャン投影データにおける被写体のはみ出しを補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
スキャノグラムに含まれる投影データにおける被写体のはみ出しを検知するはみ出し検知手段、を更に具備し、
前記はみ出し検知手段によってはみ出し有りと判定されると、前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段によって前記はみ出し対応スキャノグラムが取得されることを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
光学的センサを用いて被写体の位置を検知する被写体位置検知手段、
を更に具備し、
前記被写体位置検知手段によって検知された被写体の位置に基づいて被写体のはみ出しが検知されると、前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段によって前記はみ出し対応スキャノグラムが取得されることを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記はみ出し対応スキャノグラム生成手段は、前記被検体の側面からスキャノグラムを撮影するか、前記寝台の位置が異なる複数のスキャノグラムを撮影し、得られた複数のスキャノグラムを合成するか、或いは前記X線源の位置と前記寝台の位置とが離れるように、前記X線源および/または前記寝台を移動させてスキャノグラムを撮影するかのいずれかによって、前記はみ出し対応スキャノグラムを生成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線CT装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−55606(P2012−55606A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204026(P2010−204026)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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