説明

Zステージ装置及び荷電粒子線装置

【課題】搬送ロボットによってウェハの出し入れを行う際の駆動範囲が制限される。
【解決手段】Zステージ装置に以下の構造を設ける。(1) 試料を保持する保持面を有するZテーブル、(2) ZテーブルをZ方向に可動可能に収容する空洞部と、当該空洞部と外側面の一つとを連結する開口部とを有するZフレーム、(3) 空洞部へ水平に延出し、Zテーブルが退避位置まで降下した際に、試料を一時的に下方から保持する一時保持部材、(4) Zテーブルの上面には、一時保持部材を収容可能な凹部が形成され、Zテーブルが可動範囲の最高位置に位置するとき、当該上面が一時保持部材の上面より高い位置に位置決め可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置及び当該装置に搭載し得るZステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が進んでいる。これに伴い、製造装置のみならず、検査装置や評価装置においても、更なる高精度化が求められている。通常、半導体ウェハ上に形成されたパターン形状の寸法評価やウェハ欠陥の検査には、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」という。)が用いられる。
【0003】
SEMによるウェハ検査では、ウェハへの電子線の照射により得られる二次電子信号を画像処理し、その明暗変化からパターンのエッジを判別することにより寸法を導き出す又は欠陥を観察する。
【0004】
ところで、半導体素子の更なる微細化に対応するためには、高い観察倍率において、よりノイズの少ない二次電子像を得ることが重要となる。二次電子像にノイズが現れる要因には、ウェハを保持するステージの振動、電子線のゆがみ、フォーカスずれ等がある。SEMは、対物レンズ等を用い、電子線の焦点位置をウェハ上に合わせるように調整している。焦点位置がずれるとフォーカスずれが発生し、二次電子像がぼやけて検査精度が劣化する。
【0005】
一方で、検査対象であるウェハには幾つかの種類があり、その中には厚さの異なるウェハも存在する。厚さの異なるウェハに対する焦点位置の調整を対物レンズのみで行う場合、調整に要する時間が増大し、スループットが低下する。加えて、焦点位置を調整しきれない場合、画像にぼやけやひずみが発生し、検査精度が劣化する。
【0006】
従って、ウェハ面に対して垂直方向(すなわち、Z方向)に昇降可能なZステージを用いる方法が、焦点位置の調整には有効である。Zステージの昇降に必要なストロークは、ウェハの厚さの違いを吸収できれば良い。通常、1mm程度で良い。
【0007】
一方、Zステージに対するウェハの受け渡しは、通常、搬送ロボットにより行う。ウェハ保持部材から搬送ロボットへのウェハの受け渡しは、通常、以下の工程を通じて実行される。
(1) ピンによってウェハを押し上げてウェハ保持部材とウェハの間に隙間を作る工程
(2) この隙間に搬送ロボットを入れる工程
(3) 搬送ロボットがウェハを持ち上げる又はピンを下げ、ウェハを搬送ロボットに転載する工程
【0008】
ピンを用いてウェハを押し上げ、搬送ロボットが入る隙間をウェハ保持部材の上方に確保するためには、ウェハを概ね20〜30mm程度持ち上げる必要がある。ところが、対物レンズ等の電子光学系のカラムが存在する位置においては、この隙間を確保することができない。従って、ウェハ保持部材から搬送ロボットにウェハを受け渡すには、カラムと干渉しない位置までXYテーブルを移動し、その後、ウェハを持ち上げる工程が必要になる。しかし、この手法は、XYテーブルのストロークが余計に必要になる。このため、Zステージのコストの増加や質量の増加を避けることができない。
【0009】
このような要求に対し、チャックトップの昇降動作により、リフトピンをチャックトップから相対的に突出させる技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−4695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の検査ステージは、搬送ロボットによるウェハの出し入れ時、チャックトップを貫通するようにZ方向に突き出したリフトピンが搬送ロボットの駆動範囲を制限してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、荷電粒子線装置に適したZステージ装置であって、以下の構造的特徴を有する。
(1) 試料を保持する保持面を有するZテーブル
(2) ZテーブルをZ方向に可動可能に収容する空洞部と、当該空洞部と外側面の一つとを連結する開口部とを有するZフレーム
(3) 空洞部へ水平に延出し、Zテーブルが退避位置まで降下した際に、試料を一時的に下方から保持する一時保持部材
(4) Zテーブルの上面には、一時保持部材を収容可能な凹部が形成され、Zテーブルが可動範囲の最高位置に位置するとき、当該上面が一時保持部材の上面より高い位置に位置決め可能である。
【発明の効果】
【0013】
試料表面の高さをZ方向について調整する場合、Zテーブルの上面を一時保持部材の上面より高い位置まで持ち上げて調整する。一方、試料を搬送ロボットとの間で受け渡す場合、搬送ロボットを開口側から出し入れ可能な高さまでZテーブルの上面を降下する。この際、一時保持部材は、Zフレームの空洞部へ水平方向に延出しているため、搬送ロボットの駆動範囲を制限することがない。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Zステージ装置の構成図。
【図2】Zステージ装置の断面を表す模式図。
【図3】Zステージ装置の裏面図。
【図4】ロック機構の一例を示す模式図。
【図5】Zステージ装置を用いた半導体検査装置の全体模式図(搬送位置)。
【図6】Zステージ装置を用いた半導体検査装置の全体模式図(検査位置)。
【図7】Zステージ装置を用いた高さ調整手順を説明するフローチャート。
【図8】Zステージ装置の他の断面図。
【図9】Zステージ装置の他の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0016】
<形態例1>
図1に、形態例に係るZステージ装置の構成例を示す。Zステージ装置は、Zテーブル101と、Zフレーム103と、3つのリフトピック104〜106を主要な構成とする。
【0017】
Zフレーム103は、不図示のXYステージにより図中に示すXY平面内で駆動可能である。Zフレーム103は、XY平面の形状が略正方形の平板部材である。Zフレーム103は、略円筒形状のZテーブル101をZ方向に可動可能に収容する略円筒形状の空洞部112を中心部に有している。空洞部112はZフレーム103の上面から下面まで貫通している。また、Zフレーム103は、側面の1辺に空洞部112と外側面を連結する開口部113を有している。図1の場合、開口部113は、図中Y軸の負方向に形成されている。
【0018】
Zテーブル101の表面には、ウェハを吸着保持するウェハチャック102が取り付けられている。
【0019】
Zフレーム103のX方向及びY方向の端面には、Xバーミラー107及びYバーミラー108が互いに直交するように取り付けられる。これら各バーミラーとの正対位置には不図示のレーザ干渉計が配置されており、当該レーザ干渉計によりZフレーム103のX座標及びY座標が測定される。
【0020】
Zフレーム103の内側面には、Zテーブル101の円周を概ね3等分する位置に3個のリニアガイド109〜111が取り付けられている。リニアガイド109〜111は、Z軸方向に延伸するように取り付けられた凸状の部材である。Zテーブル101の側壁のうちリニアガイド109〜111と対向する面には、リニアガイド109〜111と対をなす不図示の凹ガイドが形成され、当該凹ガイドにリニアガイド109〜111が収容される。この凹ガイドとリニアガイド109〜111の組合せにより、Zテーブル101は、Z方向に自由に昇降移動される。
【0021】
Zフレーム103の空洞部112の上端付近には、その内壁側からウェハチャック102の中心方向に延伸するように、3つのリフトピック104〜106が取り付けられている。リフトピック104〜106は、Zテーブル101の円周を概ね3等分する位置に取り付けられている。Zテーブル101及びウェハチャック102の表面には、リフトピック104〜106との干渉を避ける目的で凹ガイド114が形成されている。ここで、凹ガイド114は、リフトピック104〜106を収容可能な形状及び深さを有している。この凹ガイド114の深さにより、Zテーブル101をZ軸方向に上昇させた際にウェハチャック102の上面が到達し得る最高点が制限される。
【0022】
以上の構造を有するZステージ装置において、Zテーブル101を昇降することにより、ウェハの厚みの違いを調整することができる。なお、空洞部112は、Zテーブル101の上面から下面まで貫通しているので、Zテーブル101をZ軸方向で降下させることにより、搬送ロボットを出し入れするために必要な駆動スペースを確保できる。なお、搬送ロボットの出し入れは、開口部113が形成された図1の符号aの方向から行われる。
【0023】
以下、図2を用いて、ウェハ高さの調整からウェハの受け渡しまでの動作を説明する。なお、図2は、形態例に係るZステージ装置の断面構造を示す図である。ただし、図2においては、説明を簡単にするためにウェハ115、ウェハチャック102、Zテーブル101及びリフトピック104のみを記載し、それ以外の構成部品は省略して示している。
【0024】
図2の(a)はZテーブル101が最も上昇している状態、(b)は(a)の状態からウェハチャック102の上面がリフトピック104の上面と一致する位置までZテーブル101が下降された状態、(c)はZテーブル101を更に下降させ、最下点に達した状態を示している。
【0025】
図2の(a)の場合、ウェハ115は、ウェハチャック102によってのみ支持されている。この場合、Zテーブル101のZ方向変位は、そのままウェハ115のZ方向変位となる。なお、リフトピック104の底面は、Zテーブル101の表面に形成された凹部114の底面に当たっている。図から分かるように、リフトピック104の先端に形成された小突起の表面もウェハチャック102の表面より下に位置している。
【0026】
ここで、Zテーブル101を降下すると、ウェハ115の底面とリフトピック104の表面(小突起の表面)との関係は、(b)の状態に変化する。この状態になると、ウェハ115は、ウェハチャック102だけでなく、リフトピック104によっても底面側から支えられるようになる。従って、ウェハ115は、この高さ位置以上には降下しない。
【0027】
すなわち、(a)の状態はウェハ115のZ方向高さの最高点を与え、(b)の状態はウェハ115のZ方向高さの最低点を与える。従って、この2つの高さの差分に相当するZテーブル101の変位L1が、ウェハ115の厚みを調整可能なストローク量となる。ここで、変位L1は、略1〜2mm程度で設計されるのが望ましい。
【0028】
その後、図2の(b)の状態から(c)の状態までZテーブル101を降下すると、ウェハ115の下面とウェハチャック102の上面との間に距離L2だけ隙間ができる。この隙間L2を利用することにより、搬送ロボットによるウェハ115の受け渡しが可能となる。ここで、L2は搬送ロボットが移動できる間隔であるので略20〜30mm程度に設計されることが望ましい。
【0029】
更に、リフトピック104の取り付けはXY平面と平行であり、かつ、Zフレーム103の側面には開口部113が形成されているため、搬送ロボットを障害無く出し入れすることができる。
【0030】
<形態例2>
図3に、形態例に係るZステージ装置の裏面図を示す。なお、表面側の構成は、形態例1に係るZステージ装置と同じである。図3に示すように、リニアガイド109〜111は、Zテーブル101の円周に対して概ね3等分された位置に配置されている。図に示すように、各リニアガイド109〜111は、凹ガイド116〜118に嵌め込まれている。
【0031】
また、Zフレーム103の内側面には、Zテーブル101の高さ位置を固定するロック機構121〜123が取り付けられている。これらロック機構121〜123も、Zテーブル101の円周を概ね3等分する位置に取り付けられている。ロック機構121〜123の詳細構成については後述する。因みに、ロック機構121〜123は、ロック時にはZテーブル101の中心方向に押付力を発生し、非ロック時には押付力を解除できる内部機構を有している。
【0032】
なお、接触面を最大化するため、非押付面となるZテーブル101の側面部と、押付面となるロック機構121〜123の押圧面とは形状が一致している。従って、Zテーブル101の非押付面が円弧であれば、ロック機構121〜123の押付面も同じ曲率の円弧に形成される。また、Zテーブル101の非押付面が平面に加工されていれば、ロック機構121〜123の押付面も平面に形成される。
【0033】
リニアガイド109〜111及びロック機構121〜123は、XY平面内で互いに干渉しないように取り付けられると共に、図中aで示される方向(図1における方向aと同じ)の開口部113を避けて設計される。
【0034】
図4に、形態例に係るロック機構121〜123の一例を示す。図4の(a)はロック状態にあるロック機構121〜123の断面構造を示し、(b)は非ロック状態(解放状態)にあるロック機構121〜123の断面構造を示している。押し当て部材201の背面には押し当てばね202の一端が取り付けられており、当該押し当てばね202の他端はZフレーム103の内側面に固定されている。押し当てばね202は、押しばねである。従って、押し当てばね202は、常に、押し当て部材201をZテーブル101に押し付ける方向に力を発生させている。
【0035】
ロック状態と非ロック状態(解放状態)は、支点205によって回転支持されたリンク204を時計周りに回転させるか、反時計周りに回転させるかにより切り換えられる。リンク204の回転は、圧電素子203に対する通電の切り換えにより実現される。因みに、圧電素子203の一端はZフレーム103に固定され、他端はリンク204に当たっている。なお、リンク204の他端は、押し当て部材201に当たっている。
【0036】
圧電素子203が非通電時、押し当て部材201は押し当てばね202によってZテーブル101の側面に押し付けられている。この押し当ての予圧を十分に高く設計すればロック時のZテーブル101の剛性を高くすることができる。
【0037】
さらに、押し当て部材201と接触するZテーブル101の側面高さは、Z方向に関する押し当て部材201の高さ(接触幅)より大きくなるように設計する。これにより、ウェハの厚さの違いを調整するためにZテーブル101の位置が1mm程度上下しても、押し当て部材201の押圧面の全体をZテーブル101に押し当てることができる。このため、Zテーブル101をロックした際の再現性が高くなる。
【0038】
また、ロック機構121〜123は、その押し付け力の作用線がZテーブル101の中心を通るように設計することが望ましい。このように設計すれば、例えば3個のロック機構を用いてZテーブル101をロックした場合でも、Zテーブル101をZ軸の周りに回転させるモーメントを発生させずに済む。結果的に、Zテーブル101の再現性を向上できる。
【0039】
なお、特許文献1に示す検査ステージの場合には、Zステージの位置保持機構がリニアガイドと昇降機構に限られるため、本形態例のようなZテーブル101の剛性や再現性の確保が困難になる。
【0040】
図4の(a)において、圧電素子203に電圧を印加すると、圧電素子203が伸長する。このとき、圧電素子203の先端は、リンク204の下端側をZテーブル101の中心方向に押す。結果的に、リンク204は時計回りに回転させる力が作用する。この力が押し当てばね202の押し付け力よりも大きい場合、押し当て部材201はZテーブル101の側面から離れ、図4の(b)の状態となる。すなわち、Zテーブル101が解放され、Z方向に自由に動けるようになる。
【0041】
なお、本形態例の場合、圧電素子203に電圧を印加しないときにZテーブル101がロックされ、電圧を印加したときにロックが解除されるようにロック機構121〜123を構成したが、反対に電圧印加時にロックがかかる構成とすることも可能である。
【0042】
また、図4の場合には、押し当てばね202が巻き線状のばね構造であったが、よりZ方向の剛性を高めるためには、Z方向の変位に対して剛性が高い板ばね構造を採用しても良い。
【0043】
また、本形態例では、ロック機構121〜123を駆動するアクチュエータとして圧電素子203を用いたが、その他の方法でロック機構121〜123を駆動することも可能である。例えば回転式、超音波式などのモータや電磁石を駆動機構して用いても良い。
【0044】
<形態例3>
図5に、本形態例に係るZステージ装置を用いた半導体検査装置の全体模式図を示す。以下では、Zテーブル101の駆動方法について説明する。
【0045】
まず、Zテーブル101を含むZステージ装置(図1)は、XYステージ303に搭載されており、ウェハの交換を行う際には、予め定められたXY座標位置(以下「搬送位置」という。)へ移動される。図5のZステージ装置は、搬送位置に位置決めされている。
【0046】
半導体検査装置において、Zステージ装置を駆動する必要があるのは、ウェハの出し入れを行う際のみである。従って、Zステージ装置の駆動機構(Zテーブル101を昇降する機構)は、搬送位置でのみ作用すれば良い。
【0047】
図5に示す半導体検査装置の場合には、搬送位置に、Zテーブル101を上下に駆動するために使用する押し上げバー119を備えている。なお、XYテーブル303には、押し上げバー119の上下動作が可能なように貫通穴等が設けられている。
【0048】
押し上げバー119の下端付近には、水平方向に延出する連結子307が固定されている。当該連結子307の他端側は、ボールねじ305のねじ山と一対のねじ溝が加工された貫通孔を通じ、ボールねじ305に連結されている。従って、回転モータ306によりボールねじ305が回転駆動されると、その回転向きに応じて連結子307が上下に駆動される。
【0049】
前述したように、連結子307の一端は押し上げバー119に接続されているため、連結子307の上下動に伴って、押し上げバー119も真空チャンバ302の底面付近から垂直方向に上下する。押し上げバー119の上端面の可動範囲の最下点は、ウェハ115の受け渡し後のXYステージ303の水平移動と干渉しないように、XYテーブル303の下面より下に配置されている。以下、可動範囲の最下点を、押し上げバー119の待機位置という。
【0050】
従って、Zテーブル101を駆動しない場合、押し上げバー119は待機位置に移動される。待機位置の押し上げバー119は、真空チャンバ302の下面に形成されたケース308内に収容される。
【0051】
このように、搬送位置においてのみ、押し上げバー119を用いてZテーブル101を駆動する機構を採用する。図6に、検査時における押し上げバー119とウェハ115の位置関係を示す。図6に示すように、Zテーブル101はZフレーム103に固定された状態で水平方向に駆動される。
【0052】
回転モータ306は、カラム301から照射される電子線の焦点位置に対してオフセットした位置に配置される。しかも、回転モータ306とウェハ115の距離を非常に長くできる。すなわち、この形態例に係る半導体検査装置の場合には、磁性体を電子線から遠ざけることができる。また、磁力が電子線に与える影響が小さいため、複雑な配線が不要になる。また、Zステージ装置の内部には、圧電素子を除き駆動機構が存在しない。このため、Zステージ装置の小型、軽量化が可能となり、XYテーブル303の負荷を低減することができる。
【0053】
これに対し、引用文献1に示す検査ステージは、Z軸モータをXYテーブル上に配置する。このため、Z軸モータの磁場が電子線に影響する可能性が無視できない。具体的には、電子線に曲がりが生じ、測定精度を低下させてしまう。また、Z軸モータの搭載によりXYテーブルの可動質量が増大するため、XYステージの駆動に大きな推力が必要となる。さらに、XYテーブルの可動部に配置されるZ軸モータは、複雑な配線を必要とする。
【0054】
なお、本形態例の場合には、押し上げバー119を上下に駆動する機構として回転モータ306を採用したが、リニアモータ等を利用しても良い。
【0055】
図7に、本形態例に係る半導体検査装置に搭載されるZステージ装置の駆動手順を示す。図7には、ウェハ115をZステージ装置に搭載する際の手順のみを示す。なお、当該手順は、ウェハ115をZステージ装置から取り出す際の手順とほぼ同様である。このため、以下の説明では、ウェハ115をZステージ装置から取り出す際の説明を省略し、ウェハ115をZステージ装置に搭載する場合の動作についてのみ説明する。
【0056】
処理501において、半導体検査装置に搭載された不図示の制御回路が、Zステージ装置に対する高さ調整処理を開始する。ここで、制御回路は、XYテーブル303が予め定められた所定の位置(搬送位置)に位置決めされていることを確認する。
【0057】
処理502及び503において、制御回路は、待機位置にある押し上げバー119をZテーブル101の下面に接触する位置まで上昇させる。
【0058】
処理504において、制御回路は、圧電素子203へ電圧を印加し、Zテーブル101のロック状態を解除する。
【0059】
処理505及び506においては、搬送ロボットの駆動スペースを確保できる位置まで押し上げバー119を下降させる。このとき、ロック状態から解放されたZテーブル101は、自重によって押し上げバー119と共に下降する。
【0060】
処理507において、制御回路は、ウェハ115を載せた搬送ロボットをリフトピック104〜106の上方位置まで移動する。
【0061】
処理508において、制御回路は、搬送ロボットをZ方向に下降させることにより、ウェハをリフトピック104〜106に転載する。
【0062】
処理509において、制御回路は、搬送ロボットを退避させ、Zテーブル101の可動領域を確保する。
【0063】
処理510及び511において、制御回路は、押し上げバー119をZ方向に上昇させ、ウェハ115をリフトピック104〜106からウェハチャックに転載した後、ウェハ上面が所定の高さになるまで押し上げバー119を上昇させて停止する。
【0064】
処理512において、制御回路は、圧電素子203に対する電圧の印加を停止し、Zテーブル101をロック状態に制御する。ロック後は、ばね力だけが作用する。
【0065】
処理513及び514において、制御回路は、押し上げバー119を待機位置まで下降させる。このとき、Zテーブル101はロックされている。このため、押し上げバー119だけが下降する。押し上げバー119が待機位置まで下降すると、制御回路は処理を終了する(処理515)。
【0066】
本形態例の場合、Zテーブル101の位置検出機構には、Zフレーム103とZテーブル101の相対位置(Zフレーム103に対するZテーブル101の相対高さ)を計測するリニアスケール(図示せず)を使用する。ただし、押し上げバー119の位置を計測するリニアスケール等を使用しても良い。また、回転モータ306としてパルスモータを採用することにより、Zテーブル101の位置検出機構を不要することができる。パルスモータを用いる場合、予め設定されたウェハ115の厚さの情報を用いることで、ウェハ上面を任意の位置に位置決めすることができる。すなわち、SEMの電子光学系のフォーカス合わせに最適な高さにウェハ上面を位置決めすることができる。また、予め設定されたウェハの厚さの情報を用いるのではなく、ウェハの高さを測定するZセンサによる情報を用いてZテーブルの高さを調整することも有効である。
【0067】
<形態例4>
前述の形態例においては、ロック機構121〜123をZフレーム103の側に取り付ける場合について説明した。以下では、ロック機構121〜123をZテーブル101に取り付ける例について説明する。
【0068】
図8は、本形態例に係るZステージ装置の断面図である。図8に示すZステージ装置のうち、図8は、図1〜7と共通する部材等に同一の符号を付して示している。従って、同一の機能を有する部材等に関する説明は省略する。
【0069】
図8に示すZステージ装置の場合、ロック機構121(122及び123は図示せず)は、円筒形状であるZテーブル101の側面に取り付けられている。図3の場合と同様、ロック機構121〜123は、Zテーブル101の円周を概ね3等分する位置に取り付けられる。図8のロック機構121は、概ね図4に示した構造と同じである。
【0070】
この形態例の場合、押し当てばね202、押し当て部材201及び圧電素子203は、全て、Zテーブル101の側面に取り付けられており、押し当て部材201をZフレーム103の内壁面に押し当てる構造を採用する。
【0071】
この形態例の場合、ロック機構121の圧電素子203に電圧を印加するためのケーブル120は、Zテーブル101と押し上げバー119を通じて配線されている。ここで、Zテーブル101の下面と押し上げバー119との上面には、接触時のみ通電可能なコネクタが配置されている。この種の配線構造を採用すれば、ロック機構121〜123を駆動する3つの圧電素子203を駆動するための配線を、XYテーブル303を介して接続する必要がない。このため、配線が非常に容易になる。
【0072】
さらに、押し上げバー119がZテーブル101と接触していな時は、圧電素子に電圧を印加することができないため、ばね力によるロックが掛った状態となる。すなわち、押し上げバー119が何らかの理由により正常に動作しなかった場合にも、ロック状態が維持される。このため、ロック解除によるZテーブル101の落下を防止することができる。
【0073】
なお、本形態例においては、Zテーブル101と押し上げバー119との間の電気的な接続を接触式のコネクタを用いて実現しているが、接続部分にマグネット等を配置し、Zテーブル101と押し上げバー119をより確実に接続する方法を採用しても良い。
【0074】
<形態例5>
本形態例においては、前述したZステージ装置に対する変形例を説明する。具体的には、ZテーブルおよびZフレームの形状が、前述した形態例とは異なる他の形態例について説明する。
【0075】
図9は、本形態例に係るZステージ装置の斜視図である。図9は、図1〜図8との対応部分に同一符号を付して示している。前述した形態例と同一の機能を有する部分については説明を省略する。
【0076】
図9に示すZテーブル124は、XY平面において六角形の形状を有している。一方、Zフレーム125には、Zテーブル124より一回り大きい同相の空洞部112、すなわち六角形に切り抜いた構造を有している。このような多角形状の採用する場合、リニアガイド109〜111やロック機構121〜123の取り付け面を平面にすることができる。この構造の採用により、加工や組み立てが容易になる。
【0077】
なお、Zテーブル101の形状は、形態例1で示した円筒形状や本形態例で示した六角柱形状のみならず、任意の多角形柱を含む様々な形状でも良い。
【0078】
また、本形態例の場合にも、ロック機構はその力の作用線がZテーブル124の中心を通るように設計することが望ましい。このことから、例えば3個のロック機構を用いる構成とする場合は、三角形、六角形、九角形など、ロック機構の数の整数倍の多角形が好適な形状となる。
【0079】
<他の形態例>
なお、前述の形態例においては、リフトピック104〜106が細長い平板形状を有し、かつ、その先端位置に小突起を有する場合について説明したが、Y字形状のように先端付近が複数に枝分かれした構造を採用しても良い。この場合、リフトピックとウェハとの接触面が増えるため、リフトピックの数を少なくできる。
【0080】
また、前述の形態例の場合には、試料がウェハである場合を説明したが、試料はウェハに限らない。また、前述の形態例の場合には、SEMを用いた検査装置について説明したが、本発明は、側長装置のZステージ装置に応用しても良い。また、本発明は、FIB(Focused Ion Beam)加工装置のZステージ装置にも応用することができる。
【0081】
また、本発明は上述した形態例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある形態例の一部を他の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の形態例の構成を加えることも可能である。また、各形態例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
【0082】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0083】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0084】
101 Zテーブル
102 ウェハチャック
103 Zフレーム
104〜106 リフトピック
107 Xバーミラー
108 Yバーミラー
109〜111 リニアガイド
112 空洞部
113 開口部
114 凹部
115 ウェハ
116〜118 凹ガイド
119 押し上げバー
120 ケーブル
121〜123 ロック機構
124 Zテーブル
125 Zフレーム
301 カラム
302 真空チャンバ
303 XYステージ
304 レーザ干渉計
305 ボールねじ
306 回転モータ
307 連結子
308 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zステージ装置において、
試料を保持する保持面を有するZテーブルと、
前記ZテーブルをZ方向に可動可能に収容する空洞部と、当該空洞部と外側面の一つとを連結する開口部とを有するZフレームと、
前記空洞部へ水平に延出し、前記Zテーブルが退避位置まで降下した際に、前記試料を一時的に下方から保持する一時保持部材とを有し、
前記Zテーブルの上面には、前記一時保持部材を収容可能な凹部が形成され、前記Zテーブルが可動範囲の最高位置に位置するとき、当該上面が前記一時保持部材の上面より高い位置に位置決めされる
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のZステージ装置において、
前記一時保持部材は、前記Zテーブルの外周を3等分する位置に配置される
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のZステージ装置において、
前記一時保持部材は、前記Zテーブルの中心方向に向けて延出する
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のZステージ装置は、
前記Zテーブルと前記Zフレームを固定状態又は解放状態に切り替え可能なロック機構を有する
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のZステージ装置において、
前記ロック機構は、前記Zテーブルの側面に配置される
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のZステージ装置において、
前記ロック機構は、前記Zフレームの内壁面に配置される
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項7】
請求項4に記載のZステージ装置において、
前記ロック機構は、前記Zテーブルの外周を少なくとも3等分する位置に配置される
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のZステージ装置において、
前記ロック機構は、前記Zテーブルの中心を通る直線上に力を作用させるように配置される
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項9】
請求項4に記載のZステージ装置において、
前記ロック機構は、圧電素子を用いて固定状態と解放状態を切り替える
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のZステージ装置において、
前記Zフレームは、XY平面内で互いに直交する2個のバーミラーを有する
ことを特徴とするZステージ装置。
【請求項11】
検査対象に荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置において、
XYステージ装置と、
試料を保持する保持面を有するZテーブルと、前記ZテーブルをZ方向に可動可能に収容する空洞部と、当該空洞部と外側面の一つとを連結する開口部とを有するZフレームと、前記空洞部へ水平に延出し、前記Zテーブルが退避位置まで降下した際に、前記試料を一時的に下方から保持する一時保持部材とを有し、前記Zテーブルの上面には、前記一時保持部材を収容可能な凹部が形成され、前記Zテーブルが可動範囲の最高位置に位置するとき、当該上面が前記一時保持部材の上面より高い位置に位置決めされる、Zステージ装置と、
試料の搬送位置において、前記XYステージ装置に形成された貫通孔を通じて前記Zテーブルを下面側からZ方向に駆動する駆動機構と
を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項11に記載の荷電粒子線装置において、
前記駆動機構は、前記Zテーブルの押し上げに使用されるZ方向に延伸する棒状部材と、前記棒状部材をZ方向に駆動する駆動部とを有し、前記XYステージ装置の駆動時、前記棒状部材は前記Zテーブルと干渉しない退避位置に位置する
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項12に記載の荷電粒子線装置において、
前記Zテーブルは、前記Zフレームとの間の固定状態又は解放状態を切り替えるロック機構を有し、当該ロック機構に対する駆動電力は、前記棒状部材及び前記Zテーブルの接触面を通じて供給される
ことを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51058(P2013−51058A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187216(P2011−187216)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】