説明

iNKT細胞活性化剤

【課題】米糠、米胚芽等の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質の精製画分について、iNKT細胞の新規リガンドを同定すると共に、その作用機序を明らかにし、各種病態(感染症、腫瘍、アレルギー等)への有効性を検討し、医薬品及び診断薬への応用の可能性を提供すること、すなわち、本精製画分を用いたiNKT細胞活性化剤の提供。
【解決手段】米糠、米胚芽及び/又はこれら由来のスフィンゴ糖脂質からなるiNKT細胞活性化剤であり、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒抽出して得たスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により分画したスフィンゴ糖脂質精製画分からなることを特徴とする上記のiNKT細胞活性化剤であり、またiNKT細胞活性化作用に基づく機能性食品、機能性健康飲料、食品添加物、化粧品、医薬部外品、医薬品、診断薬、生化学研究用試薬等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠、米胚芽等の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質からなるiNKT細胞(インバリアントナチュラルキラーT細胞)活性化剤に関し、詳しくは、かかるiNKT細胞活性化剤を含有してなる医薬、特に免疫増強剤、抗癌剤、抗アレルギー剤、感染抵抗性増強剤、更にはiNKT細胞新規リガンド等に関する。
【背景技術】
【0002】
コメは古くから日本人の主食として、我が国において最も広く栽培されてきた穀物資源である。コメは、玄米のまま食用とされることは少なく、精米後白米として食用に供されている。これまで、精米過程で生じる大量の米糠は、一部は飼料・肥料として利用されてきたものであるが、その多くは農業廃棄物として処理されてきた。
【0003】
近年、コメ原油(米糠由来)からコメ油を精製する過程で生じるガム質からレシチン、セラミド等が、また、ワックスから高級脂肪酸等が、ダーク油からγ−オリザノール、フェルラ酸等が、スカム(scum:浮き滓)からトコトリエノール、ビタミンE等多くの有用な生理活性物質が単離・精製されてきており、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品添加物、食品等として広く用いられるようになった。
【0004】
また、コメ油を絞った後に生じる脱脂糠には、GABA、フィチン酸、イノシトール等の生理活性物質が含まれており、有用な天然生理活性物質として利用されている。特に、コメセラミド(コメスフィンゴ糖脂質)は、種々のβ−グルコシルセラミド(β−GluCer)からなり、動物性セラミドと同様に保湿効果並びに血中脂質低下作用等を有することから、化粧品や健康食品等として用いられており、最近では、脂質代謝に関与する可能性のあることが示唆されている(特許文献1)。
【0005】
さらにコメセラミド(コメスフィンゴ糖脂質)に限らず、スフィンゴ糖脂質を含有するNKT細胞活性化用組成物、IL−4産生促進用組成物、IFN−γ産生促進用組成物、樹状細胞活性化用組成物、IL−12産生促進用組成物、IL−10産生促進用組成物、NK細胞活性化用組成物、抗腫瘍作用組成物、抗アレルギー作用組成物、感染抵抗性増強用組成物、抗ウイルス作用組成物、IL−6産生促進用組成物、NO産出促進用組成物等に関する提案もなされている(特許文献2)。
【0006】
また更に、広く植物素材を原料としたスフィンゴ糖脂質含有物の製造方法(特許文献3)、更にはスフィンゴ糖脂質を配合した大腸癌予防剤なども提案されている(特許文献4)。
一方、非食性の海綿由来のスフィンゴ糖脂質(α−ガラクトシルセラミド;α-GalCer)にiNKT細胞活性化作用のあることが知られており、免疫増強剤や抗癌剤としての可能性が指摘されている(特許文献5)。
【0007】
しかしながら、コメセラミド、そのなかでも特にコメスフィンゴ糖脂質のiNKT細胞活性化作用、あるいはiNKT細胞のリガンドについては殆ど明らかにされておらず、また、混合物であるコメスフィンゴ糖脂質のどの成分が活性を示すのかについては全く明らかにされていないのが現状である。
【特許文献1】国際公開特許WO2005/068041号
【特許文献2】特開2005−263797号公報
【特許文献3】特開2005−120321号公報
【特許文献4】特開2005−187391号公報
【特許文献5】特開2006−290856号公報
【非特許文献1】Science, 278: 1626, 1997
【非特許文献2】Annu. Rev. Immunol., 23: 877, 2005
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102: 1351, 2005
【非特許文献4】Nature, 434: 520, 2005
【非特許文献5】Nature, 434: 525, 2005
【非特許文献6】Eur. J. Immunol., 35: 1692, 2005
【非特許文献7】Nat. Immunol., 7: 978, 2006
【非特許文献8】Science, 306: 1786, 2004
【非特許文献9】Nature, 434: 525, 2005
【非特許文献10】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104: 5977, 2007
【0008】
現在のところ、癌(腫瘍)に対する予防策は殆どなく、治療にのみに委ねられている。その治療方法は、各種抗癌(腫瘍)剤、放射線、外科的摘出、若しくは何れかを組み合わせることにより行われているが、抗癌剤の場合には強い副作用があること、放射線療法の場合には多額の費用がかかること、外科的に摘出した場合には患者にかなりの負担がかかること、及びこれらの治療を施したとしても再発の可能性が非常に高いことから、有効な治療方法がないというのが現状である。
このように、癌(腫瘍)に対する既存の予防法・治療法の限界に加えて、食生活や日常生活におけるストレスが急増している昨今、癌疾患への罹患数が世界的に増加していることから、癌(腫瘍)に対する安全、確実かつ簡便に提供できる新規予防薬・治療薬の開発が急務である。
【0009】
また、これまで、種々の感染症に対する予防策としてワクチンが広く用いられてきた。ワクチンは、目的とする病原微生物に対する特異的免疫応答が長期間持続することを利用したものであるが、対象となる病原微生物によって効果の持続期間が大きく異なること、病原体によっては変異を起こすこと、並びに個体差を生じる場合があることから、必ずしも有効な予防策とはいえない。また、生ワクチンでは使用する弱毒株の変異する可能性があり、安全面において問題がある。
【0010】
一般に、感染症に罹患した場合の治療薬として、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤などの抗生物質が使用されている。抗生物質はヒトの細胞を破壊することなく体内の微生物を減少(あるいは死滅)させると共に、生体の免疫応答によって残存する病原微生物を殺傷・排除させるために投与される。
しかし、近年、抗生物質の多用によって多剤耐性菌が出現し、院内感染・日和見感染など、社会的問題となっていることから、緊急な対策が必要とされる。
このように、感染症に対する既存の予防法・治療法の限界に加えて、再興感染症並びに新興感染症への罹患数が世界的に増加していることから、安全、確実かつ簡便に提供できる新規予防薬・治療薬の開発が急務である。
【0011】
かかる現状下において、本発明者等は、これまで農業廃棄物として処理されてきた米糠の有効利用を目的に、米糠より得られたスフィンゴ糖脂質を高濃度に含有する精製画分について、iNKT細胞の新規リガンドを単離・同定すると共に、その作用機序を明らかにすることにより、機能性食品、機能性健康飲料、食品添加物、化粧品、医薬部外品、医薬品、診断薬、生化学研究用試薬等としての有用性を明確にするべく検討を加えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち本発明は、米糠、米胚芽等の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質の精製画分について、iNKT細胞の新規リガンドを単離・同定すると共に、その作用機序を明らかにし、各種病態(感染症、腫瘍、アレルギー等)への有効性を検討し、医薬品及び診断薬への応用の可能性を提供すること、すなわち、本精製画分を用いたiNKT細胞活性化剤を提供することを課題とする。
【0013】
かかる課題を解決するべく本発明者等は鋭意検討を行った結果、米糠、米胚芽等の植物素材の有機溶媒抽出画分を分離、精製することにより得られたスフィンゴ糖脂質含有精製画分に強いiNKT細胞活性化作用があること、したがって、かかるiNKT細胞活性化作用を介した免疫増強作用があること、特に癌転移抑制作用、感染抵抗性増強作用等があることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して、上記した課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来のスフィンゴ糖脂質からなるiNKT細胞活性化剤である。
【0015】
具体的には、本発明は、スフィンゴ糖脂質が米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒抽出して得たスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により分画したスフィンゴ糖脂質精製画分からなることを特徴とする上記のiNKT細胞活性化剤である。
【0016】
より具体的には、有機溶媒抽出がアルコール、ケトン、塩化炭化水素及び/又はこれらの混合溶媒、及び/又は水とこれらの混合溶媒抽出である上記のiNKT細胞活性化剤である。
【0017】
さらに具体的には、クロマトグラフィーがカラムクロマトグラフィー、或いは液体クロマトグラフィーである上記のiNKT細胞活性化剤である。
【0018】
また本発明は、再結晶がアルコール、ケトン及びこれらの混合溶媒、及び/又は水とこれらの混合溶媒である上記のiNKT細胞活性化剤である。
【0019】
例えば、本発明は、より具体的には、有機溶媒抽出がエタノール抽出であり、クロマトグラフィーがシリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、さらにカラムクロマトグラフィーの溶出溶媒として、順次クロロホルム/クロロホルム−アセトン混液/メタノールにより溶出して得たスフィンゴ糖脂質精製画分からなるiNKT細胞活性化剤である。
【0020】
このようにして精製された分画のなかで、スフィンゴ糖脂質はメタノール溶出部分に存在し、そのままでも用いることができるが、更に精製工程を加えることができる。
【0021】
すなわち、メタノール溶出画分をメタノールで再結晶して得られた白色結晶性粉末であるスフィンゴ糖脂質は、更に高活性である。
【0022】
あるいは、メタノール溶出画分を分取液体クロマトグラフィーにより更に精製して得られた白色結晶性粉末であるスフィンゴ糖脂質は、更に高活性である。
【0023】
この白色結晶性粉末であるスフィンゴ糖脂質はβ−グルコシルセラミドであった。
【0024】
また本発明は別の態様として、上記したiNKT細胞活性化剤を含有する医薬を提供するものであり、具体的には、免疫増強剤、抗癌剤、癌転移抑制剤、感染抵抗性増強剤、抗アレルギー剤である。
【0025】
具体的には、本発明はiNKT細胞活性化、それに基づく顆粒球(好中球)誘導・活性化、マクロファージ(以下、「MΦ」と記す場合もある)活性化作用を介した抗癌剤、癌転移抑制剤、抗アレルギー剤及び感染抵抗性増強剤である。
【0026】
さらに本発明は別の態様として、上記したiNKT細胞活性化作用によるiNKT細胞活性化診断薬及び/又はiNKT細胞検出試薬であり、また、iNKT細胞活性化剤を含有することを特徴とする機能性飲食物である。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、米糠中に存在する、iNKT細胞の新規リガンドが同定され、本リガンドの各種病態に対する有効性、並びに作用機序を明確にすることによって、我が国の主食である安全性に優れた米を原料とした新たな機能性食品素材、医薬品原料、診断薬及び生化学研究用試薬を提供することができる。
【0028】
これまで、食物素材中にiNKT細胞を選択的に活性化する物質は見つかっていないことから、本発明は米糠中にiNKT細胞の新規リガンドが存在する可能性、並びに本細胞の活性化を介して種々の病態を改善する作用を有することを見出したという点において本発明の効果は格別顕著なものである。
【0029】
特に、本発明が明らかにした米糠抽出成分であるスフィンゴ糖脂質含有抽出物のiNKT細胞を選択的に活性化することによる免疫増強作用は、日本人が主食とする米の重要性を再認識すると共に、その多くが農業用廃棄物として処理されていた米糠の新規利用方法を見出したという点において、その貢献度は多大なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は上記したように、その基本的態様は、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来のiNKT細胞活性化剤であり、より具体的には、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒抽出して得たスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により分画したスフィンゴ糖脂質精製画分からなることを特徴とするiNKT細胞活性化剤である。
かかるスフィンゴ糖脂質精製画分は、具体的には、米糠或いは米胚芽、更にはこれらの素材、例えば、米糠或いは米胚芽を原料とするコメ油の製造過程で得られる残渣を用いても得ることができる。
【0031】
より具体的には、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒、特にアルコール、好ましくはエタノールを用いて抽出してスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を得る。
本発明にあっては、かかるアルコール抽出処理に際し、その前処理として、例えばヘキサンにより混合処理し、脂溶性の不純物を除去しておくのが好ましい。
【0032】
本発明における有機溶媒抽出手段は、一般的な抽出操作方法を適用することができる。また、抽出温度、抽出時間は一概に限定することはできず、室温〜加温下に1〜24時間程度行えばよい。
具体的には、米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を、有機溶媒、特にアルコール、好ましくはエタノールを添加し、攪拌等の処理を適宜加え、溶媒抽出を行う。アルコールの添加量は、原料素材1重量部に対して0.5〜10重量部程度、好ましくは、1〜5重量部である。アルコールの添加量が少なければその抽出操作は容易になるが、要はスフィンゴ糖脂質の抽出量を高める添加量を選択すべきである。
抽出温度は室温〜70℃程度、好ましくは30℃〜60℃の範囲内で行うのがよい。抽出時間は1〜24時間程度、好ましくは2〜5時間程度である。
【0033】
アルコール抽出が終了した時点で、濾過して得たアルコール溶媒を減圧下に留去して残留物を得る。得られた残留物にアセトンを適量加えて加熱溶解し、得られた粗結晶を再度アルコールに溶解する。アルコール可溶化部分を含む溶液をイオン交換樹脂にて処理を行い、溶媒を留去した後、適量のアセトン処理を行い、スフィンゴ糖脂質含有粗抽出物(すなわち、粗製画分)を得る。
【0034】
かくして調製されたスフィンゴ糖脂質含有粗抽出物におけるスフィンゴ糖脂質の純度は、製造ロットにより異なるが、約60〜80%程度である。本粗抽出物もiNKT細胞活性作用や顆粒球(好中球)誘導・活性化、MΦ活性化作用を示す。
本発明が提供するスフィンゴ糖脂質精製画分は、かかるスフィンゴ糖脂質含有粗抽出物をさらに分画して得た精製画分であるが、その分画は例えば、カラムクロマトグラフィー等の処理で行うことができる。
【0035】
具体的には、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーが好ましく、カラム溶出溶媒としてはクロロホルム、アセトン、アルコール、好ましくはメタノールを挙げることができる。
本発明者等の検討によれば、特に、順次クロロホルム/クロロホルム−アセトン混液/メタノールで溶出するのがよく、この溶出により、メタノール溶出画分に、iNKT細胞活性化作用を示すスフィンゴ糖脂質が比較的高純度に含有されていることが判明した。
得られたスフィンゴ糖脂質は、β−グルコシルセラミドを主成分とし、グルコース、スフィンゴイド塩基部位、脂肪酸残基からなるものであった。
【0036】
さらに、高純度に精製するには、メタノール溶出画分をメタノールで再結晶することにより、iNKT細胞活性化作用を示すスフィンゴ糖脂質を高純度に濃縮するのがよい。
【0037】
あるいは、iNKT細胞活性化作用を示すスフィンゴ糖脂質を単一の物質として単離・精製するには、逆相系のカラムを用いた分取液体クロマトグラフィーに付すことにより行うことができる。
【0038】
以上のようにして調製された本発明のスフィンゴ糖脂質精製画分について、その作用を検討した結果、得られたスフィンゴ糖脂質含有精製画分には強いiNKT細胞活性化作用が認められ、かかるiNKT細胞活性化作用を介した免疫増強作用があること、特に癌転移抑制作用、感染抵抗性増強作用があることが確認された(後記試験例を参照)。
したがって本発明は、得られたスフィンゴ糖脂質含有精製画分をもとに、iNKT細胞の新規リガンドを単離・同定し、本リガンドの各種病態に対する有効性、並びに作用機序を明確にすることができた。
【0039】
その点からみれば、本発明は、我が国の主食である安全性に優れた米を原料とした新たな機能性食品素材、生化学研究用試薬及び医薬品原料を提供するものであり、得られたスフィンゴ糖脂質精製画分について、幅広い用途が期待できる。
【0040】
現在、国民の多くが健康志向にあり、それに伴って健康食品ブームが過熱化していること、アンチエイジング(抗加齢・抗老化)に対する国民の関心がこれまで以上に高まっていること、並びに最近の研究により、免疫系の異常が加齢と深く関わっていることが明らかにされている。したがって、安全性の高い健康食品、健康飲料、化粧品、そのなかでも特に免疫能を高めるような食品、飲料、化粧品の開発が社会的に強く要求されている。
【0041】
また、これまでの疾病に加えて新たな疾病が出現すると共に、癌や新興感染症、再興感染症、花粉症に代表されるアレルギーなどが増大し、これら疾病に対する早急な対策が社会的に必要とされている。本発明は、上述した課題克服に貢献する可能性が極めて高いものといえる。
【0042】
これまで、食物にiNKT細胞を選択的に活性化する物質は見つかっていないことから、本発明は米糠中にiNKT細胞の新規リガンドが存在する可能性、並びに本細胞の活性化を介して種々の病態を改善する作用を有することを見出したという点においては、極めて特異的なものである。
今回明らかになった米糠より抽出・分画したスフィンゴ糖脂質画分(新規iNKT細胞リガンド)による免疫増強作用は、日本人が主食とする米の重要性を再認識すると共に、多くが農業用廃棄物として処理されていた米糠の新規利用方法を見出したという点において、その貢献度は多大なものである。
【0043】
近年、化学的に合成された(もともとは海綿中に発見された)α-GalCer がiNKT細胞のリガンドであり、iNKT細胞依存性に強い抗腫瘍効果や感染制御作用を示すことが明らかになったことから(非特許文献1及び2)、抗癌剤・抗感染症薬・抗アレルギー薬としての期待が高まっている。しかし、ヒトを含めた哺乳類が海綿と遭遇する可能性は極めて低いことから、その後多くの研究者によってナチュラルリガンドの探索が始まった。その結果、Sphingomonas・Ehrlichia の細胞壁に存在するα−グルクロノシルセラミド(非特許文献3〜6)、Borreliaに存在するα−ガラクトシルジアシルグリセロール(非特許文献7)等が本細胞のナチュラルリガンドであることが明らかとなった(リソソームに存在するイソグロボトリヘキソシルセラミドも本細胞のナチュラルリガンドであると報告されたが(非特許文献8及び9)、現在は否定的である(非特許文献10))。
【0044】
現在、化学的に合成したスフィンゴ糖脂質を用いてiNKT細胞のリガンドを探索している研究者は多いが、何れもα−GalCer のような強い活性は認められておらず、本当の意味でのナチュラルリガンドが存在しているか否かについては今日まで不明であることから、今回明らかになった米糠由来精製スフィンゴ糖脂質中に見出された新規iNKT細胞ナチュラルリガンドは、免疫に関する生化学研究及び医療の分野において多大なる貢献を示すものといえる。
【0045】
本スフィンゴ糖脂質精製画分から成るiNKT細胞活性化剤、並びに該活性化剤を含有する抗癌(癌転移抑制)剤、感染抵抗性増強剤、抗アレルギー剤、顆粒球(好中球)誘導・活性化剤、マクロファージ活性化剤、研究用試薬は、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている公知の手段に従って、本画分を、そのまま、あるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤として安全に投与することができる。
【0046】
具体的には、本スフィンゴ糖脂質精製画分の含有量は、製剤全体の1〜100重量%であればよいが、10〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。
本スフィンゴ糖脂質精製画分の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法等により異なるため、特に制限されないが、一般的に、患者(体重60kgとして)に対して、1日につき0.1〜100mg、好ましくは1.0〜50mg、より好ましくは1.0〜20mg程度である。
本スフィンゴ糖脂質精製画分の投与方法は、特に制限されず、適宜選択することができる。なかでも、好ましくは静脈注射である。但し、固形腫瘍においては局所に投与してもよいことはいうまでもない。
【0047】
薬理学的に許容される担体としては、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。さらに必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0048】
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
懸濁化剤としては、例えば、ポリソルベート、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0050】
等張化剤としては、例えばブドウ糖、 D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
【0051】
本法により得られたスフィンゴ糖脂質は、化学的に合成したものであってもよいが、安全面から米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材から得たものが好ましい。
【0052】
なお、本発明のスフィンゴ糖脂質精製画分からなるiNKT細胞活性化剤、並びに該活性化剤を含有する抗癌(癌転移抑制)剤、感染抵抗性増強剤、抗アレルギー剤、顆粒球(好中球)誘導・活性化剤、マクロファージ活性化剤、更に研究用試薬は、本スフィンゴ糖脂質精製画分に治療又は予防効果があることに基づいて上述した疾病の予防や治療に用いられる薬剤を意味し、他の有効成分と共に本スフィンゴ糖脂質精製画分を単にアジュバントなどとして含む薬剤は意味しない。
【実施例】
【0053】
以下に本発明を、具体的な米糠スフィンゴ糖脂質の単離の実際、並びに得られたスフィンゴ糖脂質精製画分の作用を記載することにより、詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0054】
試験例1:米糠スフィンゴ糖脂質の単離
米原油に水を加えて得られる水和ガムを、脱脂、中和後、不溶物を除去し、スフィンゴ糖脂質1%程度を含む原料を得た。
この原料500gを適量のヘキサンに加熱溶解し、脂溶性の不純物を除去した。溶媒を留去して得た残留物にエタノール750mLを加えて攪拌し、溶媒を除去した。得られた残留物にアセトンを適量加えて加熱溶解し、再結晶した。得られた粗結晶をエタノールに再溶解して配糖体を除去した後、エタノール可溶画分を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−900:オルガノ社製)、及び陽イオン交換樹脂(アンバーライト200−C:オルガノ社製)処理を行った。樹脂処理物の溶媒を除去して、残留物を適量のアセトンで再結晶して、米糠スフィンゴ糖脂質1.0g(収率0.5%)を単離した。このようにして得られたスフィンゴ糖脂質の純度は、ELSD−HPLC(光散乱検出機付き液体クロマトグラフィー)で定量した結果、ロットにより異なるが、約60〜80%程度であった。
同様の方法により、トウモロコシ、蒟蒻、小麦及びブタ脳などからスフィンゴ糖脂質を得ることができた。
【0055】
試験例2:米糠スフィンゴ糖脂質の分離
上記試験例1で得られた米糠スフィンゴ糖脂質8gをクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(フラッシュクロマトグラフィー用シリカゲル40gをクロロホルムに懸濁:球状、関東化学社製)で分画した。
分画は、クロロホルム:アセトン=10:0→9:1→8:2→7:3→6:4→5:5→4:6の各600mL、及びメタノール600mLで溶出し、溶媒を除去した。
このようにして得られた各画分の回収例は、下記表1に示すとおりであった。
【0056】
【表1】

【0057】
各画分のガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC:シリカゲル、クロロホルム:メタノール=10:1、濃硫酸で呈色)及び液体クロマトグラフィーの結果より、フラクション5及び6(Fr.5及びFr.6)は配糖体を、フラクション7及び8(Fr.7及びFr.8)はスフィンゴ糖脂質を主成分とするスフィンゴ糖脂質精製画分であった。
【0058】
上記したフラクション8(Fr.8)は少なくとも5つのピーク(Peak 1〜5)から構成されており、これを更にメタノールで再結晶した結果、Peak 5が濃縮されていることが明らかとなった。
このHPLC上におけるピーク状態を図1に示した。
【0059】
また、別の抽出・分離・精製方法を用いて精製したスフィンゴ糖脂質画分をHPLCにより解析したところ、上記したPeak 5のみが欠失しているフラクションの精製にも成功した。
【0060】
同様の方法により、トウモロコシ、蒟蒻、小麦、並びにブタの脳から抽出・分離したスフィンゴ糖脂質精製画分を解析したところ、上記したPeak 5は認められなかった。
【0061】
以上のようにして得られたスフィンゴ糖脂質精製画分について、その薬理作用を検討した。
なお、生体に対する安全性(細胞増殖能および細胞生存率)については、安全性試験において確認済みである。
【0062】
薬理試験例:
[使用マウス]
C57BL/6マウス並びに各種iNKT細胞欠損マウス(何れも雌マウス8〜12週齢)を実験に供した。
【0063】
[使用腫瘍株]
メラノーマ細胞株(B16)並びにT lymphoma(EL4)を実験に供した。
【0064】
[使用菌株]
Listeria monocytogenes(EGD株)(リステリア)並びにSalmonella enterica Serovar Typhimurium(LT-2株)を実験に供した。
【0065】
[投与]
C57BL/6マウス並びに各種iNKT細胞欠損マウスの腹腔内に各画分を150μg投与した。
なお、以下の実験では、各群間での体重差が1g未満のマウスを用いた。
【0066】
[抗体]
Fcγreceptor (R)(2.4G2)並びにLy6G(Gr-1:RB6-8C5)に対するモノクローナル抗体(monoclonal antibody: mAb)は、ハイブリドーマ培養上清より精製したものを、また fluorescein isothiocyanate (FITC) 標識抗CD3ε mAb(145-2C11)、FITC標識抗TCR-β mAb(H57-597)、Phycoerythrin(PE)標識抗CD11b mAb(Mac-1: M1/70)、FITC標識抗Ly6G mAb(Gr-1: REB-8C5)、並びにビオチン標識抗NK1.1 mAb(PK136)は、BD PharMingen(Hamburg, Germany)より購入したものを実験に供した。
【0067】
[試薬]
牛胎児血清(Fetal calf serum: FCS)は Trace Biosciences(Castle Hill, HSW, Australia)、パーコール(比重:1.124 g/mL)は Biochrom(Berlin, Germany)、RPMI 1640は日水製薬株式会社(Tokyo, Japan)、HEPESは同仁化学研究所(Kumamoto, Japan)、L−グルタミン及びペニシリン / ストレプトマイシンはInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)、2−メルカプトエタノール、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)及びアジ化ナトリウムは和光純薬工業株式会社(Osaka, Japan)、ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin: BSA)はThermo(Hamilton, New Zealand)、ストレプトアビジン(streptavidin: SA)標識 Cy5 はBD PharMingen(Hamburg, Germany)、パラホルムアルデヒドはMerck(Darmstadt, Germany)より購入したものを実験に供した。
【0068】
[α−GalCer/CD1d tetramer の作製]
マウスCD1d/β2-ミクログロブリン(β2-microglobulin: β2m)tetramerはBirA biotinylation siteとCD1dを用いたバキュロウイルス発現系を用いて調製した。すなわち、Sf9 昆虫細胞株(BD Bioscience, Heidelberg, Germany)にマウスCD1d/β2mを発現したウイルスを感染させ、Sf-900 無血清培地中で培養した。感染後3又は4日目の培養上清を回収し、hollow fiber tangential flow module(MiniKros 1100 cm2, Spectrum, MembraPure, Boddenheim, Germany)により濃縮した。CD1d 分子は、コバルト塩化物イオン荷電したNTA-セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)を用いた金属キレートクロマトグラフィー(Chelating sepharose Fast flow, Amersham Pharmacia Biotech)で精製した。タンパクは200 mMイミダゾールで溶出し、ultrafiltration(Ultrafree Units, Millipore, Bedford, MA)により0.5 mL まで濃縮し、その精度とタンパク量はそれぞれ SDS-PAGE 並びに Bradford reagent(BioRad, Munich, Germany)にて確認した。精製したCD1dタンパクはBirA 酵素でビオチンと結合させ、ゲル濾過(Superdex 200 HR10/30, Amersham Pharmacia Biotech)により精製した。モル濃度が 3:1(脂質:タンパク)になるように 0.5% Tween 20 添加リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline: PBS)に溶解したα-GalCer(Kirin Pharma, Co., LTD., Tokyo, Japan)とCD1d/β2mタンパクを混合し、室温にて一晩反応させた。α-GalCer/CD1d/β2m monomer に SA-PEをモル濃度で1:4(monomer:SA-PE)の割合となるように加え、4量体を生成し、ゲル濾過(Superdex 200 HR10/30, Amersham Pharmacia Biotech)によりα-GalCerと結合したPE 標識α-GalCer/CD1d/β2m tetramer を精製した。
【0069】
[肝内白血球の調製]
C57BL/6マウスを頸椎脱臼若しくはジエチルエーテルにより安楽死させ、complete medium(CM: 20 mM HEPES / 10%重炭酸ナトリウム/L−グルタミン(293μg/mL)/ ペニシリン(100 U/mL)/ ストレプトマイシン(100μg/mL)/ 10% FCS / 2−メルカプトエタノール(10 M)含有 RPMI 1640 培地)にて灌流後、肝臓を摘出した。肝臓は金属メッシュで潰し、細胞浮遊液を500 rpmで20秒間遠心した。上清を1,500 rpmで5分間遠心後、沈渣に40% パーコール(CMで希釈)を加え、70% パーコール(CMで希釈)に重層した。1,800 rpmで23分間遠心した後、40% 並びに70% パーコールの中間層を回収した。溶血用緩衝液(蒸留水に塩化アンモニウム8.3 mgを溶解し、0.17 M Tris緩衝液(pH 7.6) 111 mLを加えたもの)により溶血後、CMにて洗浄し、1×10/mLとなるように細胞をCMに浮遊させた。
【0070】
[肝内顆粒球(好中球)の調製]
C57BL/6マウスを頸椎脱臼により安楽死させた後、肝臓をCM にて灌流し、肝臓を摘出した。金属メッシュで潰した後、比重 1.095 g/mL のパーコール 溶液の上に1.085 g/mL、 1.070 g/mLのパーコール 溶液を重層した最上部に細胞浮遊液を重層した。 500gで4℃、30分間遠心した後、 1.085 g/mL と1.095 g/mL パーコール 溶液の中間層を回収し、洗浄後、 phenol red 不含 HEPES・10% FCS 含有MEM 培地に浮遊した。本法により95%以上の顆粒球(好中球)が得られ、抗 Ly6G mAb による染色により、本画分中に94〜96%の顆粒球(好中球)の存在していることが確認された。
【0071】
[腹腔内細胞並びに腹腔MΦの調製]
C57BL/6マウスをジエチルエーテルにより安楽死させた後、CM 5 mL を腹腔内に投与し、腹腔内細胞を回収した。洗浄後、6-well tissue culture plate (Corning Inc., Canton, NY) 中で37℃、2時間培養し、付着性細胞と非付着性細胞を別々に回収した。なお、本法により得られた付着性細胞の95%以上がMΦであることは、フローサイトメトリー並びに免疫組織染色により確認した。
【0072】
[フローサイトメトリー]
抗体の非特的結合を防ぐため、細胞を抗FcγR mAbと4℃、15分間反応させた後、FITC、PE、ビオチン 標識 mAb と4℃、15分間反応させた。ビオチン標識抗体はSA-標識 5(BD ParMingen)にて視覚化した。染色後、細胞を1% paraformaldehyde(PFA)含有PBS(-)で固定後、フローサイトメーター(FACSCalibur(BD Biosciences))により取り込み、CellQuest software(BD Biosciences)により解析した。α-CalCer/CD1d tetramerによる染色は、blocking 後、PE標識 α-CalCer/CD1d tetramerと室温で15分間反応させた。
【0073】
[iNKT細胞の動態解析]
予め米糠由来スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicle を腹腔内投与したC57BL/6マウスの肝臓より上述したごとく白血球を調製した後、iNKT細胞の動態をフローサイトメトリー(mAb・α-GalCer/CD1d tetramerの両者)により解析した。
【0074】
[顆粒球(好中球)の動態解析]
予め米糠由来スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicle を腹腔内投与したC57BL/6マウスの肝臓より上述したごとく白血球を調製し、顆粒球(好中球)の動態をフローサイトメトリーにより解析した。
【0075】
[腫瘍転移抑制実験]
予め米糠由来スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicleを腹腔内投与したC57BL/6マウスに、メラノーマ細胞(B16)或いはT Lymphoma(EL4)を接種し、接種後の生存率、並びにB16接種マウスにあっては、接種後40日目の肺における転移の程度を肉眼的に観察した。
また、マウスにB16を接種後25日目に米糠由来スフィンゴ糖脂質精製画分を投与し、投与後60日目の肺における転移の程度を肉眼的に観察した。
【0076】
[感染実験]
予め米糠由来スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicleを腹腔内投与したC57BL/6マウスに、リステリアを感染し、感染4日目のマウスの脾臓を肉眼的に観察すると共に、肝臓、並びに脾臓における生菌数を測定した。
【0077】
[顆粒球(好中球)消失実験]
マウスの腹腔内に150μg の 抗 Ly6G mAbをリステリア感染1日前に投与した。95%以上のLy6G+ 細胞 が消失していることを蛍光標識した抗-Ly6G mAbを用いてフローサイトメトリー並びに免疫組織化学染色により確認した。抗Ly6G mAbを投与した群においては、蛍光標識したラットIgG2b(抗-Ly6G mAbに対する2次抗体)により Ly6G+ 細胞が検出できない(抗体が細胞に結合しているのではなく、細胞が完全に消失している)ことを確認した。
【0078】
[顆粒球(好中球)のrespiratory burstの測定]
上述したごとく肝臓より顆粒球(好中球)を純化し、respiratory burst をluminol 依存性 chemiluminescence(CL)により測定した 。 すなわち、200μL の顆粒球(好中球)浮遊液(5×105 cells/mL)を 50μL の luminol 溶液(1.0×10-6 M; Laboscience Co., Tokyo, Japan)と緩やかに攪拌しながら37℃で5分間反応させた。200μL のオプソニン化したリステリア(107 CFU/mL)あるいは 10-6 M のN-formyl-methionyl-leucyl-phenylalanin(FMLP; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加後、37℃に維持しながら luminometer(Lumiphotometer TD-4000, Laboscience)により15分間測定した。
【0079】
[MΦの殺菌能の測定]
マウスの腹腔内より純化した付着性細胞(MΦ)(1×10-6 /well)を24-well tissue culture plates(Corning)にて2時間培養後、リステリア(1×10 /well)(MOI : 10)を感染した。60分間反応させた後、細胞を予め温めておいた10% FCS 並びにゲンタマイシン(Sigma-Aldrich, Tokyo, Japan)(5μg/mL) 含有 RPMI 1640で、MΦに取り込まれなかった菌体を除去した(P60)。細胞を更に10% FCS 並びに ゲンタマイシン(5μg/mL)含有RPMI 1640 で30分間培養した(B30)。細胞を0.5% サポニン (Sigma-Aldrich)で処理し、超音波処理後、 Tryptic soy agar plates に撒き、生菌数(Colony-forming unit: CFU)を48時間後に測定した。 殺菌能は以下の計算式により求めた。
100−{(B30 / P60)×100} (%)
データは以下の計算式により算出し、Bactericidal indexとして表した。
処理群 {100−((B30 / P60)×100)} / 未処理群 {100−((B30 / P60)×100)}
【0080】
[IFN−γ並びにIL-4の測定]
IFN-γ並びにIL-4の産生はQuantikine(登録商標/ R & D Systems Inc., Minneapolis, MN)を用いて測定した。検出限界は2pg/mL であった。
【0081】
[Nitric oxide(NO)の測定]
NOは Griess Reagent System(登録商標/ Promega Co., WI)により測定した。検出限界は2.5μMであった。
【0082】
[MΦのRespiratory burstの測定]
腹腔MΦのrespiratory burst はCLにより測定した。すなわち、400μL の腹腔 MΦ浮遊液(1.2〜1.5x106 細胞)に30μL のluminol 溶液(1.0×10−6 M)を添加し、緩やかに攪拌しながら37℃、5分間反応させた。その後、オプソニン化したリステリア(108 CFU / 150μL)を添加し、Light release を Lumiphotometer TD-4000(Laboscience)で15分間反応させ、ピークを測定した。
【0083】
[結果と考察]
1.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の肝内白血球に及ぼす影響
マウスに米糠スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicleを投与し、24時間後に肝臓内に存在する白血球をフローサイトメトリーにより解析した。
Vehicle 投与群では各細胞集団に殆ど変化は認められなかった。米糠スフィンゴ糖脂質粗製物を分画して得た各画分を投与した場合、Fr.8以外の画分を投与した場合には、大きな変化は認められなかったが、Fr.8投与群では、NK(CD3-NK1.1+)細胞、並びにB(CD3-NK1.1-)細胞はほとんど影響を受けなかったものの、NKT (CD3NK1.1+)細胞が選択的に著減し、それに伴ってT細胞の増加が認められた(図2にその結果を示した)。実施例1で得られた未精製のスフィンゴ糖脂質のうち、Peak 5を含むロットでは、程度の違いはあるものの、同様の現象が認められた。
NKT細胞は幾つかの亜集団から構成されているが、その中でもT細胞受容体(TCR)としてVα14/Jα18を発現するiNKT細胞だけが選択的に検出できなくなることをα-GalCer/CD1d tetramerを用いて確認した(図3にその結果を示した)。
【0084】
トウモロコシ、蒟蒻、小麦、並びにブタの脳から同様に抽出したスフィンゴ糖脂質の活性の有無・強度を上記した方法により検討したところ、iNKT細胞の消失は全く認められなかった。
すなわち、検出された活性が米糠に特有のものであることが検証された(図4にその結果を示した)。
【0085】
上記したごとく、Fr.8は少なくとも5つのピーク(Peak1〜5)から構成されているが、Peak5のみが欠失しているフラクションの活性を上記した方法により検討したところ、本フラクション、すなわちPeak1〜4にはiNKT細胞活性化作用(iNKT細胞の消失)が全く認められなかった(図5にその結果を示した)。また、このことに一致して、以下に記した側方散乱法(Side scatter: SSC)において高値を示す細胞(顆粒球(好中球))の増加は全く認められなかった(図6の上段にその結果を示した)。
また、再結晶を繰り返すことによりPeak 5を豊富に含むフラクションのiNKT細胞への影響を検討したところ、本画分、すなわち再結晶分画に強いiNKT細胞活性化作用(iNKT細胞の消失)が認められた(図6の下段にその結果を示した)。
このことより、iNKT細胞のリガンドがFr.8中のPeak 5を含む画分に存在するものと決定付けた。
【0086】
2.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の腫瘍転移に及ぼす影響
予め米糠スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicleを投与したマウスにメラノーマ細胞(B16)を静脈より接種し、経日的に生存率、並びに肺の状態を観察した。
未処理群並びにVehicle処理群では、B16の肺への転移(肺の黒変)が観察され、早期より死亡が認められたが、Fr.8投与群では、肺への転移が全く認められず、マウスは半年経過した時点でも全例生存していた(図7にその結果を示した。図中、*はp<0.01である)。
iNKT細胞欠損マウスにおいては、米糠スフィンゴ糖脂質精製画分を投与しておいても、ほとんど効果が認められなかった。なお、同様な現象はEL4を用いた場合にも認められた。
また、マウスにB16を接種し、B16が肺へ転移したマウスにFr.8を投与すると、B16が肺から完全に排除された。すなわち、マウスにB16を接種すると、接種後25日目において既に肺への転移が認められたが、その時点でFr.8を投与すると、肺に転移したB16(肺の黒変)は完全に消失していた(図8にその結果を示した)。
【0087】
3.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の感染防御に及ぼす影響
予め米糠スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicleを投与したマウスにリステリアを静脈より感染させ、感染後の脾臓を肉眼的に観察すると共に、生存率並びに感染4日目の肝臓、脾臓内の生菌数を測定した。
未処理群、Vehicle処理群共、感染後の脾臓に強い炎症が認められた(サラミ状になった)が、米糠スフィンゴ糖脂質粗製物を分画して得た各画分を投与した場合、Fr.8以外の画分を投与した場合には、大きな変化は認められなかった。他方、Fr.8処理群の脾臓には全く炎症像が認められず、感染前と殆ど同じ状態であった。
Vehicle処理群に比べ、Fr.8処理群では、肝臓並びに脾臓内の生菌数が有意に抑制された(図9に肝内生菌数の結果を示した。図中、*は、p<0.05:Fr.8 vs. Vehicleである)。
【0088】
4.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の好中球誘導に及ぼす影響
C57BL/6 マウスに米糠スフィンゴ糖脂質精製画分、或いはVehicle を投与し、24時間後に肝臓内に存在あるいは集積する顆粒球(好中球)をフローサイトメトリーにより解析した。未処理あるいはVehicle 処理群ではSSCにおいて高値を示す細胞(顆粒球(好中球))が殆ど検出されなかった。米糠スフィンゴ糖脂質粗製物を分画して得た各画分を投与した場合、Fr.8以外の画分を投与した場合には大きな変化は認められなかったが、Fr.8を投与した群ではSSCにおいて高値を示す細胞(顆粒球(好中球))が多数検出された。
通常、顆粒球はLy6G 並びにCD11bを高頻度に発現することから、それらの細胞を蛍光標識した抗Ly6G mAb 並びに抗CD11b mAbを用いて解析したところ、その殆どがLy6G+CD11b+(顆粒球(好中球))であった(図10にその結果を示した。図中、*及び**はp<0.01:Fr.8 vs. Vehicleである)。
また、顆粒球(好中球)の動態を更に詳細に検討したところ、米糠スフィンゴ糖脂質粗製物を分画して得た各画分のうちFr.8を投与すると、既に90分後に顆粒球(好中球)顕著な増加が認められ、肝内白血球の50%近くを占めること、並びにその効果はα-GalCerよりも遙かに強いことが明らかとなった(図11にその結果を示した)。
【0089】
5.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の投与により増加の認められた好中球のリステリア排除に及ぼす影響
顆粒球(好中球)を生体内から消失させるため、C57BL/6 マウスに予め 抗Ly6G mAb を投与し、リステリア感染に対する抵抗性がどのように変化するかを、感染4日目の肝臓における CFU を測定することにより解析した。
PBS処理群の肝臓におけるCFUは、顆粒球(好中球)を消失させることにより増加したが、その増加の程度はFr.8投与群のほうが有意に高値を示した(図12にその結果を示した。図中、*はp<0.05:抗Ly6G mAb vs. PBS;**はp<0.05:Fr.8 vs. PBS;***はp<0.01:Fr.8 vs. Fr.8+抗Ly6G mAbである)。
【0090】
6.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分の好中球活性化に及ぼす影響
リステリアは細胞内寄生細菌であるため、貪食細胞の中で生存・増殖することは可能であるが、その多くは顆粒球(好中球)によって殺菌・処理される。顆粒球(好中球)内での殺菌は主にRespiratory(Oxidative)burst によることから、肝臓内に存在あるいは集積した顆粒球(好中球)をFMLP あるいはオプソニン化したリステリアで刺激した際のCL 応答を、Vehicle処理群並びにFr.8処理群間で比較検討した。FMLP 並びにオプソニン化したリステリアで刺激した場合、Fr.8を投与した群において、CLの応答性が増加した(下記表2)。
【0091】
【表2】

【0092】
a: p<0.05:Fr.8 vs. Vehicle
b: p<0.01:オプソニン化したリステリア、FMLP vs. PBS
c: p<0.005:オプソニン化したリステリア、FMLP vs. PBS
d: p<0.05:オプソニン化したリステリア vs. FMLP
【0093】
表中に示したように、Vehicle 処理群においても、FMLP 並びにオプソニン化したリステリアで刺激した場合、CLの応答性が増加したが、増加の程度はFr.8を投与しておいた群に比べて有意に低値を示した。また、Fr.8を投与した場合、可溶性の刺激物よりも、病原体に対するほうが顆粒球のRespiratory (Oxydative) burstが高値を示した。他方、iNKT細胞を欠損したマウスでは、Fr.8を投与してもRespiratory (Oxydative) burstの上昇は認められなかった。
【0094】
7.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分のMΦの殺菌能に及ぼす影響
顆粒球(好中球)に加えて、MΦもリステリアを排除するためには必須であることから、MΦの殺菌能に及ぼすFr.8の影響を検討した。Fr.8あるいはVehicleを投与したC57BL/6マウスの腹腔内より調製したMΦにin vitroでリステリアを感染し、一定時間にどの程度殺菌したのかを測定した。すなわち、MΦにリステリアを60分間貪食させた後、貪食されなかった細菌を洗浄により除去し、その後30分間にどの程度の菌が殺菌されるかを解析した。Fr.8を投与したマウスより回収したMΦの殺菌能のほうが、未処理あるいはVehicle 処理したマウスより回収したMΦよりも高い殺菌能を示した(図13にその結果を示した。図中、*はp<0.05:Fr.8 vs. Vehicle、Nilである)。
Vehicle 処理によっても若干殺菌能は増加したが、その程度はFr.8を投与したマウスから回収したMΦの殺菌能に比べて明らかに低値を示した。
他方、iNKT細胞を欠損したマウスでは、Fr.8を投与しても殺菌能の増加は認められなかった。
【0095】
8.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分のMΦの貪食能に及ぼす影響
Fr.8あるいはVehicle 投与マウスの腹腔から純化したMΦにリステリアを感染し、MΦ内に貪食されたリステリアの数を、蛍光標識した抗リステリアAbを用いて免疫組織化学的手法により比較検討した。MΦ内に貪食されたリステリアの数はFr.8処理群のほうが、Vehicle あるいは未処理群に比べて顕著に高かった。
他方、iNKT細胞を欠損したマウスでは、Fr.8を投与しても貪食能の増加は認められなかった。
【0096】
9.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分のMΦ活性化に及ぼす影響
Fr.8によるMΦの活性化に、iNKT細胞から産生される液性因子が関与しているか否かを明らかにするため、C57BL/6マウスの腹腔内から純化したMΦを、予めFr.8あるいはVehicle 処理したマウスの腹腔内から調製した腹腔内液の存在・非存在下において培養し、上述したと同様の方法により比較検討した。未処理あるいはVehicle 処理群の腹腔内より調製した腹腔内液を処理した場合には、MΦのリステリアに対する殺菌能の増加は全く観察されなかったが、Fr.8処理群の腹腔内より調製した腹腔内液を処理した場合には、MΦのリステリアに対する殺菌能が有意に亢進した(図14にその結果を示した。図中、*はp<0.05:Fr.8 vs. Vehicle、Nilである)。
他方、Fr.8を投与したiNKT細胞を欠損したマウスから調製した腹腔内液とMΦを共培養しても殺菌能の亢進は認められなかった。
【0097】
10.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分のIFN-γ産生への影響
IFN-γはMΦを強く活性化すること、並びにリステリア感染に対する防御に必須であることから、Fr.8のIFN-γ産生誘導能を検討した。
未処理群の腹腔内液中には全くIFN-γは検出されなかったが、Fr.8を処理した群の腹腔内液中には多量のIFN-γが検出された(図15にその結果を示した。図中、*はp<0.05:Vehicle vs. Nil;**はp<0.01:Fr.8 vs. Vehicle;+はp<0.005:Fr.8 vs. Nilである)。
Vehicle 処理群の腹腔内液中にも若干IFN-γの産生は確認されたが、米糠スフィンゴ糖脂質精製画分を処理した群に比べて明らかに低値を示した。
【0098】
11.米糠スフィンゴ糖脂質精製画分のNO産生への影響
NOはリステリア感染後MΦから産生されるだけでなく、リステリアの殺菌に重要な役割を演じていること、並びにNOの産生はIFN-γによって誘導されることから、MΦのNO産生に及ぼすFr.8の影響を解析した。
予めFr.8あるいはVehicle を投与したC57BL/6 マウスの腹腔内より調製したMΦをin vitroで培養し、培養上清中のNOの量を比較検討した。
未処理群には全くNOは検出されなかったが、Fr.8処理群には多量のNOが検出された(図16にその結果を示した。図中、*はp<0.05:Vehicle vs. Nil;**はp<0.01:Fr.8 vs. Vehicle;+はp<0.005:Fr.8 vs. Nilである)。
Vehicle処理群にも若干NOの産生は確認されたが、米糠スフィンゴ糖脂質精製画分を処理した群に比べて明らかに低値を示した。
【0099】
以上記載のように、本発明が提供するiNKT細胞活性化剤は、米糠、米胚芽糖の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質の精製画分から成るものであり、安全性が高い上に、免疫増強作用を有するものであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明により、米糠中にiNKT細胞の新規リガンドが単離・同定され、本リガンドの各種病態に対する有効性、並びに作用機序を明確にすることによって、我が国の主食である安全性に優れた米を原料とした新たな機能性食品素材、及び医薬品原料を提供することができる。
本発明が提供する米糠抽出成分であるスフィンゴ糖脂質精製画分の有するiNKT細胞活性化作用を介する免疫増強作用は、日本人が主食とする米の重要性を再認識すると共に、その多くが農業用廃棄物として処理されていた米糠の新規利用方法を見出したという点において、その貢献度は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明のFr.8のメタノール再結晶画分のHPLCによるPeak 1〜5のチャートを示した図である。
【図2】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のNKT細胞に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図3】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のα-CalCer/CD1d tetramer反応性T細胞(iNKT細胞)に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図4】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のNKT細胞に及ぼす影響について、iNKT細胞活性化作用は米糠に特有のものであることを示した図である。
【図5】スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のうち、Peak 5のみを除去した画分のNKT細胞に及ぼす影響の結果を示した図である。
【0102】
【図6】iNKT細胞のリガンドがFr.8中のPeak 5を含む分画に存在することを示した図である。
【図7】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8の腫瘍転移に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図8】メラノーマ細胞転移マウスへ米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8を投与し、腫瘍細胞の消失の結果を示した写真である。
【図9】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のリステリア感染に対する影響の結果を示した図である。
【図10】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8投与後の好中球数並びにその活性化マーカーの発現を示した図である。
【0103】
【図11】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8投与後90分後肝内白血球中の顆粒球(好中球)数の結果を示した図である。
【図12】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8投与により増加の認められた好中球のリステリア排除に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図13】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のMΦの殺菌能に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図14】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のMΦ活性化に及ぼす影響の結果を示した図である。
【図15】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のIFN-γ産生への影響の結果を示した図である。
【図16】米糠スフィンゴ糖脂質精製画分Fr.8のNO産生への影響の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠、米胚芽及び/又はこれら由来のスフィンゴ糖脂質からなるiNKT細胞(インバリアントナチュラルキラーT細胞)活性化剤。
【請求項2】
スフィンゴ糖脂質が米糠、米胚芽及び/又はこれら由来の素材を有機溶媒抽出して得たスフィンゴ糖脂質含有粗製画分を、クロマトグラフィー及び/又は再結晶により分画したスフィンゴ糖脂質精製画分からなることを特徴とする請求項1に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項3】
有機溶媒抽出がアルコール、ケトン、塩化炭化水素及び/又はこれらの混合溶媒、及び/又は水とこれらの混合溶媒抽出である請求項2に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項4】
クロマトグラフィーがカラムクロマトグラフィーである請求項2に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項5】
クロマトグラフィーが液体クロマトグラフィーである請求項2に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項6】
再結晶がアルコール、ケトン及びこれらの混合溶媒、及び/又は水とこれらの混合溶媒である請求項2に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項7】
スフィンゴ糖脂質がβ−グルコシルセラミドである請求項1に記載のiNKT細胞活性化剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のiNKT細胞活性化剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のiNKT細胞活性化剤を含有することを特徴とする診断薬。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のiNKT細胞活性化剤を含有することを特徴とする機能性飲食物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−229080(P2010−229080A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78353(P2009−78353)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(594081375)株式会社岡安商店 (4)
【出願人】(509088734)
【Fターム(参考)】