説明

n型ゲルマニウム上への低抵抗コンタクトの作製方法

【課題】n型Ge上に形成されるコンタクトの接触抵抗を低減する。
【解決手段】第1ドーパントレベルのn型ドーパントがドープされたゲルマニウム領域(10)を上部に有する半導体基板を得る工程と、n型ドープされたゲルマニウム領域(10)を覆う界面シリコン層(11)を形成する工程であって、界面シリコン層(11)は第2ドーピングレベルのn型ドーパントでドープされて臨界膜厚より大きな膜厚を有し、これにより界面シリコン層(11)は少なくとも部分的に緩和される工程と、界面シリコン層(11)を覆うように、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層(12、13)を形成する工程とを含む方法。本発明はまた、対応する半導体デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属または金属シリサイドのような、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する導電性材料への、n型ゲルマニウムの電気コンタクトに関する。一の形態では、本発明は、例えば10−5Ωcmより低い、10−4Ωcmより低い接触抵抗(contact resistivity)を有する、n型ゲルマニウムへのコンタクトの作製方法に関する。他の形態では、本発明は、これにより得られたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ノンオーミックまたは10−4Ωcmより高い接触抵抗を有する高抵抗コンタクトは、例えば相補型金属酸化物半導体(CMOS)トランジスタまたはメモリ素子に対する高い将来性にもかかわらず、ゲルマニウム(Ge)の応用に対して妨害となる。
【0003】
Ge上への低抵抗オーミックn型コンタクトは、ゲルマニウムへの強いフェルミレベルのピンニングのために形成が困難である(金属の仕事関数の広い範囲に対して、バリア高さは約0.49から0.64eV)。Geは、約0.05のデピンニング(depinning)ファクタと0.09eVの電荷中立性レベル(charge neutrality level)を示し、これはフェルミレベルのピンニングが価電子帯の上端に近いことを意味する。
【0004】
第2に、低い活性化限界とGe中のn型ドーパントの濃度強化拡散のために、n−Geコンタクトの形成は困難である。薄い酸化物/窒化物の手段によるバリア高さの低下が報告されているが、得られた接触抵抗は約1×10−2Ωcmであった。
【0005】
それ故に、n型Ge上に形成されるコンタクトの接触抵抗の更なる低減が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の具体例の目的は、n型ゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間に電気コンタクトを作製する方法であって、電気コンタクトは、例えば10−5Ωcmより低いような、例えば10−4Ωcmより低いような、低い比接触抵抗(specific contact resistivity)を有する方法を提供することである。本発明の具体例の目的は、n型ゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間に、例えば10−5Ωcmより低い、例えば10−4Ωcmより低い接触抵抗のような、低い比接触抵抗を有する半導体デバイスを提供することである。
【0007】
上述の目的は、本発明にかかる方法およびデバイスにより達成される。
【0008】
第一の形態では、本発明は、n型ゲルマニウムと、例えば金属層または金属シリサイド層のような、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層との間に、電気コンタクトを形成する方法を提供する。この方法は、第1ドーパントレベルのn型ドーパントでドープされたゲルマニウム領域を上部に有する半導体基板を得る工程と、n型ドープされたゲルマニウム領域を覆う界面シリコン層を形成する工程であって、界面シリコン層は第2ドーピングレベルのn型ドーパントでドープされ、ゲルマニウム上のシリコンの臨界膜厚より大きな膜厚を有し、これにより界面層は少なくとも部分的に緩和された工程と、界面シリコン層を覆うように、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層を形成する工程とを含む。本発明の具体例にかかる方法の長所は、n型ゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間に、例えば10−5Ωcmより低い接触抵抗のような、例えば10−4Ωcmより低い接触抵抗のような、低い比接触抵抗を有する電気コンタクトを作製できることである。
【0009】
本発明の具体例の記載を通じて、界面Si層はSiパッシベーション層とも呼ばれる。
【0010】
界面Si層は、n型ドープされたGeを完全に覆っても良い。界面Si層は、例えば化学気相堆積(CVD)、低圧化学気相堆積(LPCVD)、物理気相堆積(PVD)、分子線エピタキシ(MBE)、または多結晶または単結晶シリコン層を形成するのに適した他の堆積/成長技術から選択されるいずれかの堆積技術により形成できる。
【0011】
本発明の具体例にかかる方法では、界面シリコン層を形成する工程は、例えば5または10モノレイアのような数モノレイアと50nmとの間の膜厚を有するシリコン層を形成する工程を含む。それらの具体例では、界面シリコン層は、例えば30nmより小さい、例えば20nmより小さいような、50nmより小さい膜厚を有する。
【0012】
本発明の具体例では、界面Si層は、ゲルマニウム上のシリコンの臨界膜厚より大きな膜厚を有する。臨界膜厚は、成長/堆積される材料と、(成長される材料の下方にある)基板の材料との間の格子不整合に依存する。一般には、所定の量の弾性歪が、転位または欠陥を形成することなくいずれかの材料により収容されるため、臨界膜厚より小さい膜厚を有する層は歪む。本発明の具体例では、臨界膜厚より大きな膜厚を有する場合、界面Si層は完全には歪まず、層中に存在する欠陥により少なくとも部分的に緩和される。特徴的には、少なくとも部分的な緩和は、n型ドープされたGeとSi界面層との間の界面における、より低い電子バリアに関連する。
【0013】
界面Si層は、例えばP、AsまたはSbまたはそれらのいずれかの組み合わせのようなn型ドーパントでドープされる。本発明の特別の具体例では、界面Si層のドーピングレベルは、下層のn型ドープされたGeのドーピングレベルより高い。特別な具体例では、界面シリコン層の第2ドーピングレベルは、少なくとも1×1019cm−3である。
【0014】
本発明の具体例にかかる方法では、第2ドーピングレベルのn型ドーパントでドープされた界面シリコン層を形成する工程は、形成中、例えばその成長または堆積中に、好適な前駆体を用いたその場ドーピング技術により、界面シリコン層中にn型ドーパントを導入する工程を含む。
【0015】
本発明の具体例では、界面シリコン層を形成する工程は、単結晶シリコン層を形成する工程を含む。代わりの具体例では、界面シリコン層を形成する工程は、多結晶シリコン層を形成する工程を含む。単結晶シリコン層は多結晶シリコン層より好ましい。なぜならば、多結晶シリコン層は幾分粗く、閉じた層(closed layer)を形成するためにより厚くする必要があるからである。しかしながら、多結晶シリコンは、ノンエピツール(non-epi tool)中で堆積でき、作製上の利点を有する。臨界膜厚より大きな膜厚の単結晶層の場合、この層は欠陥を含んで少なくとも部分的に緩和され、このことは本発明の方法について有益な効果を有する。
【0016】
nドープされた下層のゲルマニウム層/領域は、単結晶または多結晶であり、シリコンウエハのような半導体基板の上に形成されても良い。本発明の異なる具体例では、n型ドープされたゲルマニウム層/領域はデバイスの一部である。
【0017】
nドープゲルマニウム領域は、選択的または非選択的のいずれでも良い。特に、界面Si層は、コンタクトされるnドープゲルマニウムの上のみに選択的にエピ成長させても良い。
【0018】
n型ゲルマニウムは、リン、砒素、またはアンチモンまたはそれらの組み合わせのようなn型種でドープされる。
【0019】
本発明の具体例では、シリコン界面層を覆う層は、金属や金属シリサイドのような高導電性材料(即ち、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料)から形成される。1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層は、そのような高導電性の材料からなる複数の層を含んでも良い。特別な具体例では、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層は、Ti/TiNのスタックである。
【0020】
特別の具体例では、界面Si層は、コンタクト金属としてシリサイドを形成するために部分的に消費されても良い。
【0021】
第2の形態では、本発明は、第1ドーパントレベルのn型ドーパントでドープされたゲルマニウム領域と、ゲルマニウム領域上の、第2ドーパントレベルのn型ドーパントでドープされた界面シリコン層であって、臨界膜厚より大きな膜厚を有して少なくとも部分的に緩和された界面シリコン層と、界面シリコン層を覆い、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層と、を含む半導体デバイスを提供する。
【0022】
界面シリコン層は、数モノレイア、例えば5または10モノレイアと、50nmとの間の膜厚を有する。
【0023】
界面シリコン層は、ゲルマニウム領域の第1ドーピングレベルより高い第2ドーピングレベルを有する。本発明の第2の形態の特別な具体例では、界面シリコン層の第2ドーピングレベルは、少なくとも1×1019cm−3である。
【0024】
界面シリコン層は、単結晶層または多結晶層でも良い。
【0025】
nドープの下層ゲルマニウム領域は、単結晶または多結晶のいずれでも良い。ゲルマニウム領域はゲルマニウム基板(の一部)でも良く、またはシリコンウエハのような半導体基板の上に形成されても良い。本発明の異なる具体例では、n型ドープされたゲルマニウム領域は、半導体デバイスの一部である。
【0026】
本発明の特別で好適な形態は、添付の独立請求項及び従属請求項に詳しく述べられる。従属請求項の特徴は、請求項に明確に述べられたままではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴を加えても良く、他の従属請求項の特徴を加えても良い。
【0027】
本発明および従来技術を超えて達成される長所を要約する目的で、本発明の所定の目的や長所がここで述べられた。もちろん、本発明のいずれかの特別の具体例について、そのような目的または長所の全てが達成される必要は無いことは理解すべきである。このように、例えば、ここで教示される1つの長所や長所のグループを達成または最適化する方法で、ここで教示または示唆される他の目的や長所を達成する必要無しに、本発明を具体化または実施できることを当業者は認識できる。
【0028】
本発明の、上述のおよび他の形態は、以降に記載された具体例から明確になり、およびこれらの具体例から解明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、添付された図面を参照しながら、例示の方法により更に説明される。
【0030】
【図1】10nmのドープされたSi層をその上に備えたn型Ge(1×1019cm−3)と、その上のTi/TiN金属スタックとを含むスタックの電子透過顕微鏡(TEM)写真を示す。HAADF−STEM(高角度散乱暗視野−走査透過電子顕微鏡)像は、Ti、Si、およびGe層を示す。エネルギー分散分光法(EDS)プロファイルは、スタック中の層の構成を確認する。
【図2】Ti/TiN金属層と、その下の約16nmのドープされたSiと、その下のその場ドープされたGeを含むスタックの二次イオン質量分析法(SIMS)プロファイルを示す。リンのプロファイル(右軸)は、Si層およびGe層中の関連する相対感度係数(relative sensitivity factor)を用いて定量化され、それらの間に挿入される(点線)。
【図3】参考文献3(Lee et al., Applied Physics Letters 96, 052514 (2010))及び参考文献2(Kobayashi et al., Proceedings of the Symposium on VLSI Tech. 2008)からの、従来技術のTi/TiNメタライゼーションを備えたその場ドープされたGe、従来技術のその場ドープされたGeであって、それに続くAs注入と5分間アニールおよびTi/TiNメタライゼーションを備えたGe、および従来技術のその場ドープされたGe/Al、および本発明の具体例にかかるSiパッシベートサンプル(GeとTiとの間の、10nmおよび16nmのドープされたSi)について、導き出された比接触抵抗を示す。測定された値(白いひし形)は、接触抵抗ρの物理モデルを用いて計算された値(黒い三角)と良く一致する。
【図4】(a)従来技術のn−Ge/Tiコンタクト、(b)本発明の具体例にかかるn−Ge基板とTi層との間にドープされたエピSi層が挿入されたn−Ge/Tiコンタクト、のバンドダイアグラムを示す。(c)従来技術のその場ドープされたGe/Tiスタック、および本発明の具体例にかかる16nmのその場ドープされたシリコンを参照した、CTLM(circular transmission line method)構造(r=30μm、r−r=5μmの特定の具体例)のI−Vを示す。(d)様々な半径(r)およびスリット幅(r−r)を有する、その場ドープされたGe/10nmのドープされたSi/Tiサンプルの、−0.5VでのCTLM抵抗にフィットするモデルを示す。
【0031】
図面は単に概略であり、限定するものではない。図面において、いくつかの要素や層の大きさは、図示目的で、誇張されて縮尺通りではない。寸法および相対寸法は、本発明を行うための実際の縮小に対応する必要はない。
【0032】
請求項中の参照符号は、範囲を限定するものと解釈すべきでない。異なる図面において、同一参照符号は、同一または類似の要素を示す。
【具体例の詳細な説明】
【0033】
本発明は、特定の具体例と所定の図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。
【0034】
説明や請求の範囲中の、第1、第2等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、一時的、空間的な順序を、順番やその他の方法で表す必要はない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても操作できることを理解すべきである。
【0035】
また、説明や請求の範囲中の、上、上に、等の用語は、説明目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明は、ここで説明や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0036】
また、請求の範囲で使用される「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される手段に限定して解釈すべきではなく、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0037】
この明細書を通じて参照される「一の具体例(one embodiment)」または「ある具体例(an embodiment)」は、この具体例に関係して記載された特定の長所、構造、または特徴は、本発明の少なくとも1つの具体例に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して多くの場所の「一の具体例(one embodiment)」または「具体例(an embodiment)」の語句の表現は、同じ具体例を表す必要はなく、表しても構わない。更に、特定の長所、構造、または特徴は、この記載から当業者に明らかなように、1またはそれ以上の具体例中で適当な方法で組み合わせることができる。
【0038】
同様に、本発明の例示の記載中において、能率的に開示し、多くの発明の形態の1またはそれ以上の理解を助ける目的で、本発明の多くの長所は、時には1つの具体例、図面、またはその記載中にまとめられることを評価すべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明がそれぞれの請求項に記載されたものより多くの特徴を必要とすることを意図して表されていると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が表すように、発明の態様は、1つの記載された具体例の全ての長所より少なくなる。このように詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に含まれ、それぞれの請求項は、この発明の別々の具体例としてそれ自身で成立する。
【0039】
更に、ここで記載された幾つかの具体例は幾つかの特徴で、他の具体例に含まれる以外のいくつかの特徴を含み、異なった具体例の長所の組み合わせは、本発明の範囲に入ることを意味し、当業者に理解されるように異なった具体例を形成する。例えば、以下の請求の範囲では、請求された具体例のいくつかは、他の組み合わせにおいても使用することができる。
【0040】
本発明の所定の特徴や形態を記載する場合の特定の用語の使用は、この用語が関連する本発明の特徴または形態の特定の特徴を含むように限定されるように、その用語がここで再定義されることを暗示するものと取るべきではない。
【0041】
ここで与えられる説明において、多くの特別な細部が示される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特別な細部無しに実施できることを理解すべきである。他の例では、公知の方法、構造、および技術は、この説明の理解を分かりにくくしないために、詳細には示されていない。
【0042】
本発明の文脈では、接触抵抗(contact resistivity)は、2つの異なるタイプの材料、特にn型ゲルマニウムと、例えば金属や金属シリサイドのような1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との接触から生じる材料の全抵抗への寄与をいい、それぞれの材料の固有の性質である本質的な抵抗と対立する。接触抵抗は、導電性材料−半導体の界面のレベルでの抵抗である。
【0043】
本発明の文脈では、半導体層の臨界膜厚は、この層が格子不整合な層の上に形成された場合に、それより小さい膜厚では転位が発生せず、それより大きな膜厚では転位が発生する膜厚である。膜厚が臨界膜厚より小さい場合、所定の量の弾性歪は、転移や欠陥を生じることなく、材料により収容される。格子不整合材料の層を収容することはエネルギーを必要とする。エネルギーは、膜厚および格子不整合の大きさに依存する。格子不整合歪を緩和する転位の形成もエネルギーを必要とする。弾性歪エネルギーを転位形成のエネルギーより小さく(臨界膜厚より小さく)維持するのに十分に小さいエネルギーに、半導体層の膜厚が維持された場合、歪層構造が形成される。半導体層の膜厚は歪膜厚より大きい場合、この層は部分的に緩和される。
【0044】
本発明の異なる具体例は、n型ゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間の電気コンタクトであって、例えば10−5Ωcmより低い接触抵抗のような、例えば10−4Ωcmより低い比接触抵抗のような、低い比接触抵抗を有する電気コンタクトを作製する方法を記載する。好適には、低い比接触抵抗を有する電気抵抗は、2×10−6Ωcmより小さい比接触抵抗ρを有するオーミックコンタクトである。
【0045】
一般に、オーミックコンタクトは、デバイスの電流−電圧(I−V)カーブが直線で対称になるように準備された半導体デバイス上の領域である。I−V特性が非線形で非対称の場合、コンタクトはオーミックではなく、ショットキコンタクトである。低抵抗で安定したコンタクトは、集積回路の性能と信頼性にとって重要であり、それらの準備や特徴付けは、回路形成中の主な努力である。
【0046】
n型ゲルマニウム(単結晶または多結晶)と1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間の電気コンタクトは、フェルミレベルのピンニングとゲルマニウム中のドナーの低活性化により、一般には(10−4Ωcmより高い)高接触抵抗を有する。
【0047】
n型ゲルマニウムと金属との間の高い接触抵抗を下げるための知られた方法は、例えばレーザーアニールを用いた、ゲルマニウム中での活性化されたドーピング密度の増加である。レーザーアニールは、一般には、先端デバイスの低温プロセスと互換性の無い高い温度(約700℃)を必要とする。
【0048】
本発明は、n型ゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する高導電性材料との間の電気コンタクトであって、10−4Ωcmより低い比接触抵抗を有する電気コンタクトを作製する方法を記載し、かかる方法は、
第1ドーピングレベルのn型ドーパントを有するn型ドープされたゲルマニウム領域を上部に有する半導体基板を得る工程と、
n型ドープされたゲルマニウム領域を覆う界面シリコン層を形成する工程であって、シリコンパッシベーション層とも呼ばれる界面シリコン層は、第2ドーピングレベルのn型ドーパントでドープされて臨界膜厚より大きな膜厚を有し、界面シリコン層は少なくとも部分的に緩和される工程と、
界面シリコン層を覆う、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する層を形成する工程と、を含む。
【0049】
特別な具体例では、ゲルマニウム領域はゲルマニウム基板でも良く、この場合、「n型ドープされたゲルマニウム領域を上部に有する半導体基板」は、その全体がゲルマニウム基板から形成される。代わりに、ゲルマニウム領域は、例えばシリコン基板やシリコンゲルマニウム基板のような半導体基板のような、他の好適な基板の上に形成された、パターニングされたまたはパターニングされていないゲルマニウム層でも良い。本発明は、しかしながら、それらの基板のタイプに限定されず、基板は、その上にゲルマニウム領域が形成される、他の好適な材料や材料(の層の)組み合わせから形成されても良い。
【0050】
本発明の一の具体例では、薄いその場ドープされたエピタキシャルSiパッシベーション層が、n型ドープされたGe基板上に選択的に成長される。Si層のドーパントは、この具体例では例えばリンのようなn型ドーパントであり、1×1020cm−3のドーパントレベルで提供される。記載された例でのn型ドープされたGe基板上へのSiの選択成長に続いて、Ti/TiN金属スタックの堆積が行われる。薄いSiパッシベーション層の挿入は、ピンニングと活性化限界を低減し、約1×10−6Ωcmの接触抵抗値を達成する。
【0051】
比接触抵抗の物理的なモデリングが行われた。理論に縛れることを望むのではないが、接触抵抗の低下は、SiとGeの伝導帯の良好なアライメントと、Si中で達成される高いドーピング濃度によることが表される。
【0052】
例では、サンプルの作製は、450℃で、(図1には図示されない)3×1014cm−3のp−Si基板上に、1×1019cm−3のドーピングレベルを有する1μmのその場ドープされたn型(P)ドープされたGe10を成長させることにより開始された。
【0053】
ポストエピタキシャルアニールが、欠陥を減らすために、n型Geの成長後に行われた。例えば、As注入(5×1015cm−2、9keV)と、それに続く、600℃で約5分間の熱処理(アニール)のような、知られた方法で参照サンプルが準備された。この「浸漬(soak)」アニールは、1×1019cm−3より低い活性化レベルとなる。
【0054】
Si界面層11が、コンタクト領域のn型ドープのゲルマニウム10の上のみに選択的に成長された。エピリアクタ中にサンプルを導入する前に、この例ではHF系洗浄工程として描かれる洗浄工程が、Ge基板上で行われた。エピタキシャルリアクタにサンプルを導入する場合、熱処理(ベーク)がHの存在下で650℃で行われた。その後に、Si界面層11が、ジクロロシランを前駆体に用いて約550℃で、それぞれ12分間と15分間、エピタキシャル成長された。層11は、PHでその場ドープされて約1×1020cm−3のドーピング密度となる。結果の膜厚は、透過電子顕微鏡(TEM)で規定すればそれぞれ約10nmと16nmである。
【0055】
(Si層の無い)参照サンプルと、Siパッシベートされたサンプルは、その上に20nmの物理気相堆積(PVD)Ti層12が形成され、その後に10nmのPVD−TiN13またはPVD−Alが形成された。更に、蒸着されたAlが、Ti/TiNスタックの上に加えられ、金属シート抵抗を無視できるようにした。
【0056】
図1(下図)はTEM像の断面を表し、10nmのドープされたエピタキシャル結晶Si界面層11を有するサンプルの完全さを示す。Si層11とGe層10との間の界面に近い暗い領域と、Si層11中の均一でないコントラストは、歪と欠陥による。図1の上右のHAADF−STEM(高角度散乱暗視野−走査透過電子顕微鏡)像は、Si/Ge界面の平坦性と、Si/Ti界面の粗い性質を示す。(酸化物やシリサイドのような)期待しない相の界面層は、STEM、エネルギー分散分光法(EDS)、および電子エネルギー損失分光法(EELS、図示せず)では観察されない。
【0057】
図2において、n型ドープされたGe10/n型ドープされたSi11/Ti12のサンプルの、二次イオン質量分析法(SIMS)深さプロファイルが示される。リン(P)濃度は、成長したSi11中で約1×1020cm−3、バルクGe10中で約1×1019cm−3である。界面において定量化されたSIMSの不確実性の中で、図2の結果は、PはSi層11中に閉じ込められて残り、下層のGe10と殆ど相互拡散せずにSi/Ge界面で約3×1018cm−3に達する。Si/Ge界面近傍で減少したPの濃度は、Ge基板のGeエピタキシャル成長後の、ポストアニール工程中の外方拡散による。物理的な特徴付け技術は、コンタクトスタックの完全さと、期待しない相が無いことを示す。
【0058】
接触抵抗を決定するために、(図3に模式的に示すように)CTLM(circular transmission line method)測定が使用される。構造の抵抗は、半径(r)とスリット幅(r−r)に依存する。広範囲の比接触抵抗ρに適したCLTM抵抗モデルは、内部コンタクト(図3の円の模式図参照)の接触抵抗Rc1(式1)、外部コンタクトのRc2(式2)、Geの構造シート抵抗(Rss)(式3)、および配線やプローブコンタクトによる一定の寄生抵抗Rpara(図3では図示せず)からなる。
【0059】
【数1】

【0060】
(式4)は移動距離で、I、I、K、Kはベッセル関数である。このモデルは、異なるジオメトリの測定された構造の抵抗にフィットされて、比接触抵抗ρとGeシート抵抗(R)とを決定する。
【0061】
図4は、(a)従来技術のn型Ge/Tiコンタクト、(b)本発明の具体例にかかるn型Ge/n型エピSi層/Tiコンタクト、のバンドダイアグラムを示す。図4は、更に、(c)従来技術にかかる参照のその場ドープされたGe/Tiスタックと、本発明の具体例にかかるそれぞれ10nmと16nmのその場ドープされたシリコン層の、CTLM構造(r=30μm、r−r=5μm)のI−Vグラフと、(d)様々な半径(r)とスリット幅(r−r)の本発明の具体例にかかるその場ドープされたGe/10nmのドープされたSi/Tiのサンプルの、−0.5VにおけるCTLM抵抗にフィットさせたモデルを示す。
【0062】
測定されたCTLMのI−Vグラフが図4(c)に示される。参照その場ドープされたGe/Ti/TiNのショットキダイオード特性が明確にわかる(白い丸)。ずっと低い抵抗とオーミック特性が、本発明の具体例にかかる、その場ドープされたGe/10nmのドープされたSi/Ti/TiNサンプル(白い四角)とその場ドープされたGe/16nmのドープされたSi/Ti/TiNサンプル(白い三角形)で観察される。
【0063】
本発明の具体例にかかるSiパッシベートされたサンプル(その場ドープされたGe/10nmSi/Ti/TiN)のデータにフィットさせたCTLM抵抗モデルが、図4(d)に示される。
【0064】
比接触抵抗が図3に示される。参照サンプルnドープ(1×1019cm−3)されたGe/Tiは、低いρ=4.4×10−2Ωcmをもたらす。As注入と5分間アニールの追加は、ρ=1.0×10−3Ωcmをもたらし、これは活性ドーパント濃度の増加から期待される改良である。
【0065】
理論に縛られたいわけではないが、接触抵抗ρの物理モデルが展開された。n型Ge接触抵抗ρの物理モデルは、鏡像力バリア(image-force barrier)の低下の影響を含む電界放出(field emission)および熱イオン放出(thermoionic field emission)を考慮する。0.57eVのバリア高さを用いたGe/Ti接触抵抗ρの計算値は、3×1018cm−3のドーピング密度に対してρ=1.5×10−1Ωcmであり、1×1019cm−3のドーピング密度に対してρ=8×10−5Ωcmである。
【0066】
それらの結果は、表面におけるGeドーピングが約3×1018cm−3であり、通常のアニールを行ったAs注入のための最大活性化濃度は約1×1019cm−3であることを考慮した測定値に近づく(図3参照)。
【0067】
また、文献からのいくつかの参照値が図3に加えられる。参照された仕事(以下参照)では、ドープされたゲルマニウムと1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する電極材料との間に挿入された絶縁体が用いられた。ドーピング密度(1×1019cm−3)は、本発明の具体例のGeドーピング密度と同じオーダーである。
【0068】
図3は、文献3(Lee et al., Applied Physics Letters 96, 052514 (2010))および文献2(Kobayashi et al., Proceedings of the Symposium on VLSI Tech (2008))のサンプル、および本発明の具体例にかかるSiパッシベートされたサンプルの、その場ドープされたGe/Ti/TiN、その後にAs注入と5分間アニールを行ったその場ドープされたGe/Ti/TiN、およびその場ドープされたGe/Alの比接触抵抗を示す。測定値(白いひし形)は、ρの物理モデルを用いた計算値(黒い三角形)と良く一致する。
【0069】
更に、図3では、本発明の具体例にかかる、ドープされたSiパッシベーション層を有するサンプルについて、導かれた比接触抵抗が示される。10nmサンプルに対してρ=1.4×10−6Ωcm、16nmサンプルに対してρ=1.7×10−6Ωcmの、驚くべき改良が見られた。
【0070】
本発明の具体例にかかるn−Geと、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間のコンタクトの非接触抵抗は、従来技術の非接触抵抗より小さいことが、図3から見られる。これは、n−Ge層10と、例えば金属層12のような1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料との間にドープされたシリコン層11を挿入することで、n−Ge上のρを1×10−4Ωcmより低い値、例えば1×10−6Ωcmのオーダーまで低減し、本発明の具体例の方法を用いて、n型ドープされたGeにおいて、ドーパント活性化限界とフェルミレベルのピンニングが克服できることを示す。
【0071】
1×1020cm−3にドープされたバルクn−Siと、Si/Tiスタックで0.5−0.6eVのバリア高さを有するTiで、比接触抵抗ρは1〜2×10−7Ωcmであり、これは、本発明の具体例にかかるSiパッシベートされたゲルマニウムで観察された値に匹敵し、さらには幾分か低い。
【0072】
接触抵抗ρの特性は、図4(a)、(b)のバンドダイアグラムで説明できる。n−Geコンタクトでは、熱イオン放出が、高いショットキバリア高さと限られた活性化ドーピングレベルによる導電性を支配する(図4(a))。界面Si層の無いn−Geコンタクトは、一般にはショットキダイオードのI−V特性を示す。
【0073】
本発明の具体例にかかる挿入された界面Si層を有するn−Geコンタクトの期待される性質が、図4(b)に示される。バルクSi/Tiのバリア高さは0.5eV〜0.6eVであり、これはGe/Tiの0.57eVと比較して小さいか同等である。Siが、約0.27のデピンニング要素を示したとしても、その違いは大きくない。エピタキシャルSiにおいて、活性化されたドーピングは、n−Geサンプルのいずれかに比較して大きく、トンネルを引き起こして支配し、「1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料」とSiのコンタクトをオーミックおよび低抵抗に変える。
【0074】
全体に歪んだSiパッシベーション層の場合、Si−Ge界面の電気バリアは約0.55eVである。臨界膜厚を超えるSi膜厚の場合、Siは(部分的に)緩和されることが期待される。有利には、Ge上の緩和されたSiは、電子親和性において小さく異なり(50meV)、小さな電子バリアを示す。
【0075】
本発明の具体例の方法で得られた比接触抵抗ρの低い値は、界面が(部分的に)緩和された場合と対応するという事実と相関がある。モデルリングは、3×1018cm−3のGeドーピングレベルとすることで、Si−Geバリアは、1×10−6Ωcmより小さいρを得るために0.23eVより小さくならなければならないことを示す。図3に示された、Ti/バルクSiコンタクトについての計算値に比較して、本発明の具体例にかかる方法で得られたわずかに高い比接触抵抗ρは、Ge/Si界面または界面近傍の格子不整合により形成された歪による欠陥および/またはわずかなバンドのミスアラインメントによる。
【0076】
本発明の具体例の方法で得られた、nドープGe(ρ<1×10−6Ωcm)との低い比接触抵抗ρは、n−Geコンタクトでのフェルミレベルのピンニングと活性化限界の排除の可能性を示す。先に報告された技術により達成された約10−4Ωcmの一般的なベスト値と比較して大きな改良であり、先端CMOSおよびメモリ応用でGeを用いる機会を開く。
【0077】
本発明は、図面と先の説明に図解され記載されるが、そのような図解や記載は考えられる実例や例示であり、限定するものではない。先の説明は、本発明の所定の具体例を詳述する。しかしながら、テキスト中の先の記載がいかに詳しくても、本発明は多くの方法で実施できることを評価すべきである。本発明は記載された具体例に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型ゲルマニウム(10)と1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層(12、13)との間に電気コンタクトを作製する方法であって、この電気コンタクトは10−4Ωcmより低い比接触抵抗を有し、この方法は、
第1ドーパントレベルのn型ドーパントがドープされたゲルマニウム領域(10)を上部に有する半導体基板を得る工程と、
n型ドープされたゲルマニウム領域(10)を覆う界面シリコン層(11)を形成する工程であって、界面シリコン層(11)は第2ドーピングレベルのn型ドーパントでドープされて臨界膜厚より大きな膜厚を有し、これにより界面シリコン層(11)は少なくとも部分的に緩和される工程と、
界面シリコン層(11)を覆うように、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層(12、13)を形成する工程と、を含む方法。
【請求項2】
界面シリコン層(11)を形成する工程は、数モノレイアと50nmとの間の膜厚を有するシリコン層(11)を形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2ドーピングレベルのn型ドーパントがドープされた界面シリコン層(11)を形成する工程は、第1ドーピングレベルより高い第2ドーピングレベルの界面シリコン層(11)を形成する工程を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
界面シリコン層(11)の第2ドーピングレベルは、少なくとも1×1019cm−3である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2ドーピングレベルのn型ドーパントがドープされた界面シリコン層(11)を形成する工程は、界面シリコン層(11)の中に、その形成中にn型ドーパントを導入する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
界面シリコン層(11)を形成する工程は、単結晶シリコン層を形成する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
界面シリコン層(11)を形成する工程は、多結晶シリコン層を形成する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1ドーパントレベルのn型ドーパントでドープされたゲルマニウム領域(10)と、
ゲルマニウム領域(10)上の、第2ドーパントレベルのn型ドーパントでドープされた界面シリコン層(11)であって、臨界膜厚より大きな膜厚を有し、少なくとも部分的に緩和された界面シリコン層(11)と、
界面シリコン層(11)を覆い、1×10−2Ωcmより小さい電気抵抗率を有する材料の層(12、13)と、を含む半導体デバイス。
【請求項9】
界面シリコン層(11)は、数モノレイアと50nmとの間の膜厚を有する請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
界面シリコン層(11)は、ゲルマニウム領域(10)の第1ドーピングレベルより高い第2ドーピングレベルを有する請求項8または9に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
界面シリコン層(11)の第2ドーピングレベルは、少なくとも1×1019cm−3である請求項8〜10のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項12】
界面シリコン層(11)は、単結晶シリコン層である請求項8〜11のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項13】
界面シリコン層(11)は、多結晶シリコン層である請求項8〜11のいずれかに記載の半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−124483(P2012−124483A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−265947(P2011−265947)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】