説明

n型III族窒化物単結晶の製造方法、n型III族窒化物単結晶および結晶基板

【課題】簡単な工程によって、高品質かつ低抵抗であるn型III族窒化物単結晶を製造する。
【解決手段】反応容器内に、少なくともIII族元素を含む物質と、アルカリ金属と、酸化ホウ素と、を投入する材料投入工程と、前記反応容器を前記酸化ホウ素の融点まで加熱することにより、前記酸化ホウ素を融解させる融解工程と、前記反応容器をIII族窒化物の結晶成長温度まで加熱することにより、前記反応容器内に、前記III族元素と、前記アルカリ金属と、前記酸化ホウ素と、を含む混合融液を形成する混合融液形成工程と、前記混合融液に窒素を含む気体を接触させて、前記混合融液中に窒素を溶解させる窒素溶解工程と、前記混合融液中に溶解した前記III族元素と、前記窒素と、前記酸化ホウ素中の酸素とから、前記酸素がドナーとしてドープされたn型のIII族窒化物単結晶を結晶成長させる結晶成長工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n型III族窒化物単結晶の製造方法、n型III族窒化物単結晶および結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、紫色光、青色光、緑色光を発する光源として用いられているInGaAlN系(III族窒化物)デバイスは、サファイア基板或いはシリコンカーバイド(SiC)基板上に、MO−CVD法(有機金属化学気相成長法)、MBE法(分子線結晶成長法)等を用いてIII族窒化物単結晶を結晶成長させる工程を含む製造方法によりその殆どが製造されている。
【0003】
基板としてサファイア基板或いはSiC基板を用いた場合の問題点としては、基板とIII族窒化物とにおける熱膨張係数の差、格子定数の差が大きいことに起因して結晶欠陥が多くなってしまうことが挙げられる。このために例えば発光デバイスであるIII族窒化物デバイスの寿命が短くなるというようにデバイス特性が悪化してしまったり、動作電力が大きくなってしまったりするおそれがある。
【0004】
これらの問題を解決するためには、基板の材料と基板上に成長させる結晶の材料とを同一とし、例えば窒化ガリウム(GaN)基板のようなIII族窒化物単結晶基板を用いてIII族窒化物単結晶基板上に結晶成長を行うことが最も適切である。
【0005】
GaN基板の製造方法としては、従来、サファイア基板、GaAs基板などの異種材料により構成される下地基板上に、ハロゲン化気相エピタキシー(HVPE)法によりGaN厚膜を成長させた後に、下地基板からGaN厚膜を分離することにより、直径(φ)2インチ程度のGaN基板を製造していた。
【0006】
しかしながら、HVPE法では、異種材料により構成される下地基板上にGaN単結晶をヘテロエピタキシャル成長させるため、GaN単結晶と下地基板とにおいて、不可避的に熱膨張係数に差が生じたり、格子不整合が生じたりする場合がある。よって、HVPE法で製造されるGaN基板は、転位密度が10cm−2程度と高くなってしまったり、下地基板との熱膨張係数の差によりGaN基板に反りが生じてしまったりする等の問題がある。従って、GaN基板のさらなる高品質化が可能な製造方法が望まれている。
【0007】
高品質なGaN基板を製造する方法の1つとして、ナトリウム(Na)とガリウム(Ga)との混合融液中に窒素を溶解してGaN単結晶を結晶成長させるフラックス法が研究開発されている。フラックス法によれば、700℃〜900℃と比較的低温でGaN単結晶を結晶成長させることが可能であり、反応容器内の圧力も100kg/cm程度と比較的低く、GaN単結晶の結晶製造方法として実用的である。
【0008】
非特許文献1では、アジ化ナトリウム(NaN)とGaを原料として、ステンレス製の反応容器内に窒素を封入し、その反応容器を600℃〜800℃の温度で24時間〜100時間保持することにより、GaN単結晶を成長させた例が報告されている。また、特許文献1では、フラックス法によってGaNの大型結晶を製造する方法として、窒化アルミニウム(AlN)の針状結晶を種結晶として用いて、GaNの柱状結晶を育成する方法が開示されている。さらに、特許文献2では、種結晶として用いられるAlN針状結晶の作製方法が開示されている。このように、フラックス法による種結晶の結晶成長によってGaNの大型結晶を製造することは既によく知られている技術である。
【0009】
ところで、GaN結晶を光デバイス用の基板として用いる場合、GaN基板にn側のオーミック電極を形成する必要があるため、n型のキャリア濃度が1017cm−3以上であるn型のGaN半導体結晶が必要とされる。そこで、フラックス法によって、GaN結晶中に酸素やゲルマニウム等のドナーを添加(ドープ)して、n型のGaN結晶を成長させることが検討されている。
【0010】
しかしながら、特許文献5、6においては、ゲルマニウムのドープ量を増加した場合に、結晶成長速度が低下したり、可視光の吸収が大きくなってデバイス特性が悪化したりするという課題がある。
【0011】
酸素の添加に関しては、例えば特許文献3において、酸化ナトリウム(NaO)や酸素ガスをドーパントとして、III族窒化物結晶に2×1017cm−3程度の酸素をドープする技術が開示されている。また、特許文献4では、原料仕込み時にグローブボックス内の雰囲気ガス中に酸素と水分とを混入させることにより、1018〜1020cm−3程度の酸素をドープする技術が開示されている。
【0012】
ゲルマニウムの添加に関しては、例えば特許文献5において、2×1019cm−3程度のゲルマニウムをIII族窒化物に添加する技術が開示されている。また、特許文献6では、カーボンとゲルマニウムを同時に添加することにより、2×1017cm−3以上、1×1020cm−3以下のゲルマニウムをドープして、電子濃度を5×1019cm−3程度とした、低抵抗GaN結晶を製造する技術が開示されている。
【0013】
しかしながら、特許文献3では、キャリア濃度が十分大きい結晶を得ることができず、低抵抗のオーミック電極を形成することが難しいという問題がある。また、特許文献4では、グローブボックス中で反応容器内に酸素や水分を封入して容器をシールする必要があるなど、製造工程が煩雑であるという課題がある。また、一時的にせよグローブボックスの雰囲気を悪化させるため、酸素や水分の除去を行う触媒の寿命が短くなるという問題があり、結晶を大量製造する際にはコストがかかるという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、従来技術においては、気体や、結晶成長温度より融点の高い酸化物を用いて酸素をドープするので、効率よく酸素を結晶中にドープしてキャリア濃度の大きい結晶を作ることが難しいという課題がある。また、キャリア濃度の大きい結晶を得るためには、装置や製造工程が煩雑になるという課題がある。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な工程によって、高品質かつ低抵抗であるn型III族窒化物単結晶を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるn型III族窒化物単結晶の製造方法は、反応容器内に、少なくともIII族元素を含む物質と、アルカリ金属と、酸化ホウ素と、を投入する材料投入工程と、前記反応容器を前記酸化ホウ素の融点まで加熱することにより、前記酸化ホウ素を融解させる融解工程と、前記反応容器をIII族窒化物の結晶成長温度まで加熱することにより、前記反応容器内に、前記III族元素と、前記アルカリ金属と、前記酸化ホウ素と、を含む混合融液を形成する混合融液形成工程と、前記混合融液に窒素を含む気体を接触させて、前記混合融液中に窒素を溶解させる窒素溶解工程と、前記混合融液中に溶解した前記III族元素と、前記窒素と、前記酸化ホウ素中の酸素とから、前記酸素がドナーとしてドープされたn型のIII族窒化物単結晶を結晶成長させる結晶成長工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のn型III族窒化物単結晶は、上述の製造方法で製造されるn型III族窒化物単結晶である。
【0018】
さらに、本発明のn型III族窒化物の結晶基板は、上述のn型III族窒化物単結晶を加工して製造されるn型III族窒化物の結晶基板である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応容器内に、III族窒化物(例えば、窒化ガリウム)の結晶成長温度よりも融点が低い酸化ホウ素を投入することにより、簡単に結晶中に酸素をドープすることができる。従って、簡単な工程によって、酸素を効率よく結晶中にドープすることができ、キャリア濃度が高く低抵抗であるn型III族窒化物単結晶を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施の形態にかかるn型III族窒化物単結晶を製造する結晶製造装置の構成例を示す概略図である。
【図2】図2は、III族窒化物単結晶のc軸およびc面を説明する模式図である。
【図3】図3は、c面について説明する模式図である。
【図4】図4は、本実施の形態にかかる結晶基板を製造する製造工程を示す工程図である。
【図5】図5は、実施例3にかかる結晶製造装置の構成を示す概略図である。
【図6】図6は、酸化ホウ素の添加量と、GaN単結晶中の酸素、ホウ素の濃度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本実施の形態にかかるn型III族窒化物単結晶の製造方法、n型III族窒化物単結晶および結晶基板について詳細に説明する。尚、以下の説明において、図には発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また、複数の図に示される同様の構成要素については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
【0022】
<結晶製造装置>
図1は、本実施の形態にかかるn型III族窒化物単結晶を製造する結晶製造装置1の構成例を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように、結晶製造装置1は、閉空間を形成できる例えばステンレス製の耐圧容器11を備えている。耐圧容器11はバルブ21部分で結晶製造装置1から取り外すことが可能となっている。また、耐圧容器11内の設置台26には、反応容器12が設置される。尚、反応容器12は、設置台26に対して脱着可能となっている。
【0024】
反応容器12は、種結晶であるIII族窒化物の針状結晶25と、原料や添加物を含む混合融液24とを保持して針状結晶25の結晶成長を行うための容器であり、坩堝などが用いられる。反応容器12の材質は特に限定されるものではなく、BN焼結体、Pyrolytic−BN(P−BN)等の窒化物、アルミナ、サファイア、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用することができる。好適な実施形態としては、BN焼結体の坩堝を用いることが好ましい。
【0025】
また、図1に示すように、耐圧容器11の外周近傍にはヒーター13が配置されており、耐圧容器11および反応容器12を加熱して、混合融液24の温度を調整することができる。ヒーター13としては、耐圧容器11を加熱できるものであればよく、例えば、2面加熱方式のマッフル炉などを用いることができる。
【0026】
また、耐圧容器11には、耐圧容器11の内部空間23に、III族窒化物結晶の原料である窒素(N2)ガスおよび希釈ガスを供給するガス供給管14が接続されている。ガス供給管14は、窒素供給管17と希釈ガス供給管20に分岐しており、それぞれバルブ15、18で分離することができる。
【0027】
窒素ガスは、窒素ガスのガスボンベ等と接続された窒素供給管17から供給されて、圧力制御装置16で圧力を調整された後、バルブ15を介してガス供給管14に供給される。他方で、希釈ガス(例えば、アルゴンガス)は、希釈ガスのガスボンベ等と接続された希釈ガス供給管20から供給されて、圧力制御装置19で圧力を調整された後、バルブ18を介してガス供給管14に供給される。このようにして圧力を調整された窒素ガスと希釈ガスとは、ガス供給管14にそれぞれ供給されて混合される。
【0028】
そして、窒素および希釈ガスの混合ガスは、ガス供給管14からバルブ21を経て耐圧容器11内に供給される。また、ガス供給管14には、圧力計22が設けられており、圧力計22によって耐圧容器11内の全圧をモニターしながら耐圧容器11内の圧力を調整できるようになっている。
【0029】
本実施の形態では、このように窒素ガスおよび希釈ガスの圧力をバルブ15、18と圧力制御装置16、19とによって調整することにより、窒素分圧を調整することができる。また、耐圧容器11の全圧を調整できるので、耐圧容器11内の全圧を高くして、反応容器12内のアルカリ金属(例えばナトリウム)の蒸発を抑制することができる。
【0030】
尚、希釈ガスとしては、アルゴン(Ar)ガスを用いることが望ましいが、これに限定されず、その他の不活性ガスを用いてもよい。
【0031】
<結晶製造方法>
(1)原料等の調製
本実施の形態にかかるn型III族窒化物単結晶の結晶製造方法では、III族窒化物の針状結晶を種結晶として用いて、当該針状結晶をフラックス法によりさらに成長させることにより、窒化物結晶基板を製造するための単結晶インゴットを製造する。
【0032】
反応容器12に原料や添加物を投入する作業は、耐圧容器11をバルブ21から切り離し、切り離した耐圧容器11を、アルゴンガス等の不活性ガスを充填したグローブボックスに入れて行う。
【0033】
反応容器12には、混合融液24の構成材料として、少なくともIII族元素を含む物質(例えば、ガリウム)と、フラックスとして用いられるアルカリ金属(例えば、ナトリウム)と、酸化ホウ素(例えば、三酸化ホウ素(B))とを投入する(材料投入工程)。
【0034】
酸化ホウ素の融点は、III族窒化物の結晶成長温度(例えば、窒化ガリウムの結晶成長温度は700〜900℃程度である。)よりも低い。一例として、三酸化ホウ素(B)の融点は480℃である。従って、結晶成長温度において酸化ホウ素は融解し、反応容器12内に形成される混合融液24に酸素およびホウ素が添加される。これにより、フラックス法によってIII族窒化物単結晶が結晶成長する場合に、n型ドーパントである酸素と、ホウ素とがIII族窒化物単結晶中に固溶して、n型III族窒化物単結晶27を成長させることができる。
【0035】
本実施の形態では、酸素のドーパント原料物質として、結晶成長温度において液体である酸化ホウ素を用いるため、酸素のドーパント原料物質として気体(例えば、酸素ガス)や融点の高い酸化物(例えば、酸化ナトリウム(NaO))を用いる場合に比べて、混合融液24中に酸素を容易に溶解させることができる。これにより、酸素を効率よく結晶中にドープすることが可能となり、結晶中の酸素濃度を効率よく増加させて、キャリア濃度が高く抵抗が小さいn型III族窒化物単結晶27を製造することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本実施の形態では、III族元素であるホウ素の化合物である酸化ホウ素を添加物の原料として用いるため、n型キャリア濃度を減少させることなくキャリアドープすることができる。
【0037】
すなわち、結晶中に価数の異なる元素が固溶する場合には、結晶中の電荷バランス(電荷的中性)が崩れるため、電荷バランスを保つために酸素(酸化物イオン)の価電子が消費されてしまう。つまり、酸素の価電子が消費されるためキャリア濃度が減少してしまい、n型III族窒化物単結晶の抵抗は増加することとなる。
【0038】
これに対して、本実施の形態で添加されるホウ素は、原料のIII族元素(例えばガリウム)と同属であり価数が等しい。従って、ホウ素がIII族窒化物結晶中に固溶した場合には、結晶中の電荷バランスは崩れない。従って、酸素の価電子は電荷を補償するために消費されることがなく、結晶中のキャリア濃度を高濃度に保つことができる。このようにして、本実施の形態では、キャリア濃度が高く抵抗が低いn型III族窒化物単結晶を製造することができる。
【0039】
好適な実施形態としては、酸化ホウ素(B)の量はIII族元素に対して0.001mol%以上とすることが好ましい。より好適な実施形態としては、酸化ホウ素(B)の量をIII族元素の量に対して0.01mol%以上0.22mol%未満とすることが好ましい。さらに好適な実施形態としては、酸化ホウ素(B)の量をIII族元素に対して0.01〜0.1mol%程度とすることが好ましい(実施例参照)。
【0040】
上述の好適な実施形態によれば、n型III族窒化物単結晶27の結晶中において、n型のドーパントである酸素の濃度を1017cm−3から1020cm−3程度とすることができ、キャリア濃度が1017cm−3以上と高く抵抗が低いn型III族窒化物単結晶27を製造することができる。
【0041】
原料である少なくともIII族元素を含む物質としては、例えばIII族元素のガリウム(Ga)が用いられるが、その他の例として、アルミニウム、インジウム等のその他のIII族元素や、これらの混合物を用いるとしてもよい。
【0042】
フラックスとして用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム(Na)、あるいはナトリウム化合物(例えば、アジ化ナトリウム)が用いられるが、その他の例として、リチウムや、カリウム等のその他のアルカリ金属や、当該アルカリ金属の化合物を用いてもよい。尚、複数種類のアルカリ金属を用いてもよい。
【0043】
III族元素を含む物質とアルカリ金属とのモル比は、特に限定されるものではないが、III族元素とアルカリ金属との総モル数に対するアルカリ金属のモル比を、40〜95%とすることが好ましい。さらに好適な実施形態としては、III族元素(例えば、Ga)とアルカリ金属(例えば、Na)とのモル比を0.4:0.6とすることが好ましい。
【0044】
好適な実施形態としては、III族元素とアルカリ金属のモル比を0.4:0.6とし、酸化ホウ素(B)をIII族元素に対して0.04mol%〜0.1mol%とすることが好ましい(実施例参照)。
【0045】
さらに、反応容器12には、III族窒化物の針状結晶25を種結晶として設置する。好適な実施の形態としては、フラックス法により得られた窒化ガリウムの針状結晶を種結晶として用いることが好ましい。フラックス法で製造される針状結晶25は転位密度が低く高品質であるため、この種結晶を用いてn型III族窒化物単結晶27を結晶成長させた場合には、種結晶からの転位の伝播が少ないため、高品質な結晶を成長させることができる。尚、フラックス法による針状結晶の製造方法については、従来技術と同様の方法を用いることができる。
【0046】
図2は、本実施の形態において種結晶として用いられるIII族窒化物の針状結晶25を示す概略図である。本実施の形態では、図2に示すように、c軸の方向に長尺であるIII族窒化物の針状結晶25を種結晶として、n型III族窒化物単結晶27の結晶成長を行う。本実施の形態において、III族窒化物の針状結晶25およびn型III族窒化物単結晶27は六方晶の結晶構造を有する。尚、c面は{0001}面と同義であり、m面(図3参照)は{10−10}面と同義である。
【0047】
図2に示すc軸と直交するc面について、断面をとった図を図3に示す。図3に示すように、c面の最大径を結晶径dと称することとする。即ち結晶径dは、c面を構成する六角形の最も長い対角線の長さである。本実施の形態では、このIII族窒化物の針状結晶25を種結晶として用い、この針状結晶25をc軸と直交する方向の径方向に成長させて結晶径dを増加させ、c面の面積を大面積化させる。
【0048】
本実施の形態では、針状結晶25を製造した方法と同一であるフラックス法によってn型III族窒化物単結晶27を製造する。従って、針状結晶25とは異なる方法で成長させる場合に比べて、針状結晶25とn型III族窒化物単結晶27との間で、格子定数および熱膨張係数の整合性を向上させることができる。また、針状結晶25からn型III族窒化物単結晶27を成長させる場合に発生する転位を抑制することができる。
【0049】
上述のように原料等を投入した後に、反応容器12を耐圧容器11に設置する。なお、原料を調製する作業は不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で行われるため、耐圧容器11に不活性ガスが充填されている。そして、バルブ21を操作することにより、耐圧容器11を結晶製造装置1に接続する。
【0050】
(2)III族窒化物単結晶の結晶成長
上述のように原料等を耐圧容器11内にセッティングした後、ヒーター13に通電して、耐圧容器11およびその内部の反応容器12を加熱する。上述のように酸化ホウ素の融点は本実施形態の結晶成長温度よりも低温であるため、反応容器12を結晶成長温度まで加熱する過程において、反応容器12の温度は酸化ホウ素の融点に達し、これにより、酸化ホウ素は融解して液化する(融解工程)。
【0051】
さらに、反応容器12を結晶成長温度まで加熱することにより、反応容器12内に投入した少なくともIII族元素を含む物質と、アルカリ金属と、酸化物とが溶解して、反応容器12内に、III族元素と、アルカリ金属と、酸化ホウ素と、を含む混合融液24が形成される(混合融液形成工程)。
【0052】
混合融液形成工程における混合融液24の温度は特に限定されるものではないが、好適な実施の形態としては、少なくとも700℃以上とすることが好ましい。さらに好適な実施の形態としては、860℃から900℃程度とすることが好ましい(実施例参照)。
【0053】
また、バルブ15、18と圧力制御装置16、19とを調節して、窒素ガスおよび希釈ガスを所定のガス分圧に調整するとともに、バルブ21を開けて耐圧容器11に当該混合ガスを導入する。これにより、耐圧容器11内の混合融液24に接触する気体中の窒素が、混合融液24中に溶解する(窒素溶解工程)。気体中の窒素ガス分圧は、特に限定されるものではないが、少なくとも0.1MPa以上とすることが好ましい。さらに好適な実施の形態としては、窒素分圧を6MPa程度とし、耐圧容器11内の内部空間23の全圧を8MPa程度とすることが好ましい(実施例参照)。
【0054】
より好適な実施形態としては、原料に関しては、III族元素とアルカリ金属のモル比を0.4:0.6とし、酸化ホウ素(B)をIII族元素に対して0.04mol%〜0.1mol%とし、結晶成長雰囲気に関しては、混合融液24の結晶成長温度を900℃程度とし、窒素分圧を6MPa程度とし、耐圧容器11内の内部空間23の全圧を8MPa程度とすることが好ましい(実施例参照)。
【0055】
上述のような結晶成長条件とすることにより、混合融液24中に溶解したIII族元素と、窒素と、酸素と、ホウ素とが固溶したn型III族窒化物単結晶27が、種結晶である針状結晶25を結晶成長の起点として結晶成長する(結晶成長工程)。
【0056】
より詳細には、酸素およびホウ素は、酸化ホウ素が混合融液24中またはn型III族窒化物単結晶27の結晶成長面(表面)近傍で分解されて、酸化物イオン、ホウ素イオンとなり、結晶中に固溶(ドープ)される。また、結晶中には2価の負電荷を有する酸素(酸化物イオン)がドープされるため、結晶成長したIII族窒化物はn型半導体結晶となる。
【0057】
尚、上述では、ノンドープのIII族窒化物の針状結晶25を種結晶としてn型III族窒化物単結晶27を成長させたが、結晶製造方法はこれに限定されるものではない。その他の例として、反応容器12に種結晶を設置せずに、混合融液24から結晶核を生成させて、この結晶核をさらに結晶成長させることにより、n型III族窒化物単結晶を製造するとしてもよい。また、これを種結晶として上述と同様の結晶成長工程を行うことにより、結晶全体がn型半導体であるn型III族窒化物単結晶を製造するとしてもよい。
【0058】
以上のように、本実施の形態によれば、反応容器12内に、III族窒化物(例えば、窒化ガリウム)の結晶成長温度よりも融点が低い酸化ホウ素を投入することにより、簡単に結晶中に酸素をドープすることができる。従って、簡単な工程によって、酸素を効率よく結晶中にドープすることができ、キャリア濃度が高く低抵抗であるn型III族窒化物単結晶を製造することができるという効果を奏する。
【0059】
<結晶基板の製造工程>
上述のようにして得られたn型III族窒化物単結晶27を成形加工することによって、本実施の形態にかかるn型III族窒化物の結晶基板を製造する。図4は、本実施の形態にかかる結晶基板28m、28c(以降、特に限定しない場合には結晶基板28と称する。)を製造する製造工程を示す工程図である。
【0060】
図4に示すように、n型III族窒化物単結晶27を結晶の径方向とは垂直方向に、即ちc面とは垂直方向にスライスして、成形した後に表面を研磨すると、無極性面であるm面({10−10}面)を主面とする大面積の結晶基板28mが得られる。
【0061】
一方、n型III族窒化物単結晶27を結晶の径方向と平行に、即ちc面と平行にスライスして、成形した後に表面を研磨すると、極性面であるc面({0001}面)を主面とする大面積の結晶基板28cが得られる。
【0062】
このように、本実施の形態の製造工程によれば、光デバイスやその他の半導体デバイスに用いることができる実用的なサイズの大面積の結晶基板28(28m、28c)を製造することができる。また、m面およびc面のいずれの結晶面についても結晶基板28を製造することができる。
【0063】
さらに、切り出した結晶基板28mや結晶基板28cを種結晶として、上述と同様にn型III族窒化物単結晶の結晶成長を行えば、m面およびc面の各結晶面について、高品質かつ大面積の単結晶ウェハを大量生産することが可能となる。
【0064】
また、上述の結晶製造方法によって製造されたn型III族窒化物単結晶27は転位密度が低く、かつ低抵抗であるから、このn型III族窒化物単結晶27を加工して得られる結晶基板28もまた転位密度が低く、かつ低抵抗となる。従って、本実施の形態によれば、簡単な工程により、高品質かつ低抵抗であるn型III族窒化物の結晶基板28を製造することができ、この結晶基板28を用いて、高品質かつ低抵抗な光デバイスのオーミック電極を形成することができる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
本実施例では、GaNの針状結晶25を種結晶として用いて、酸素がドープされたn型GaN単結晶27を結晶成長させた。尚、符号は図1を参照して説明した結晶製造装置1の構成に対応している。
【0067】
まず、耐圧容器11をバルブ21部分で結晶製造装置1から分離して、Ar雰囲気のグローブボックスに入れた。
【0068】
そして、BN焼結体から成る内径55mmの反応容器12に、ガリウム(Ga)とナトリウム(Na)と酸化ホウ素(B)を入れた。本実施例では、ガリウムとナトリウムのモル比を0.4:0.6とした。酸化ホウ素(B)の添加量は、ガリウムの量に対し、0.1mol%とした。
【0069】
また、反応容器12内に種結晶を設置した。種結晶としては、c軸方向に長尺であり、側面が{10−10}面(m面)である六角柱状の針状結晶25を用いた。この針状結晶25のc軸の長さ(針状結晶25の高さ)は20mm、c軸に垂直な断面の径は500μmである。
【0070】
次に、耐圧容器11を密閉し、バルブ21を閉じ、反応容器12の内部を外部雰囲気と遮断した。一連の作業は高純度のArガス雰囲気のグローブボックス内で行うので、耐圧容器11内部はArガスが充填されている。そして、耐圧容器11をグローブボックスから出し、結晶製造装置1に組み込んだ。すなわち、耐圧容器11をヒーター13の加熱領域内にある所定の位置に設置し、バルブ21部分で窒素とアルゴンのガス供給管14に接続した。
【0071】
次に、バルブ21とバルブ18を開け、希釈ガス供給管20からArガスを入れ、圧力制御装置19で圧力を調整して耐圧容器11内の全圧を0.75MPaにしてバルブ18を閉じた。また、窒素供給管17から窒素ガスを入れ、圧力制御装置16で圧力を調整した後にバルブ15を開け、耐圧容器11内の全圧を3MPaにした。すなわち、耐圧容器11の内部空間23の窒素の分圧は2.25MPaとなる。その後、バルブ15を閉じ、圧力制御装置16を8MPaに設定した。
【0072】
次に、ヒーター13に通電し、反応容器12を結晶成長温度である900℃まで昇温した。結晶成長温度では反応容器12内のガリウムとナトリウムは融解し、混合融液24を形成する。なお、混合融液24の温度は反応容器12の温度と同温になる。また、この900℃まで昇温すると本実施例の結晶製造装置1において、温度の上昇に伴って耐圧容器11の内部空間23の気体の圧力が上昇するため、全圧は8MPaとなる。すなわち、窒素分圧は6MPaとなる。
【0073】
次に、バルブ15を開けて、窒素ガス圧力を8MPaとする。これは、窒素が窒化ガリウムの結晶成長で消費された場合にも、外部から窒素を供給して耐圧容器11内の窒素分圧を6MPaに維持するためである。この状態で1000時間保持し、窒素を継続して混合融液24中に溶解させて、n型GaN単結晶27の結晶成長を行った。
【0074】
1000時間後、反応容器12を室温まで降温した。耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後に耐圧容器11を開けると、反応容器12内には、GaNの針状結晶25を種結晶としてn型GaN単結晶27が結晶成長していた。
【0075】
得られたn型GaN単結晶27は無色透明で、外径は20mmであり、c軸の長さ(n型GaN単結晶27の高さ)は47mmであった。n型GaN単結晶27の結晶形状は、結晶上部が{10−11}面で構成された六角錘状であり、結晶下部は、側面がm面({10−10}面)で構成された六角柱状であった。
【0076】
続いて、n型GaN単結晶27の六角柱状の部分からm面({10−10}面)を主面とする板状結晶と、c面({0001}面)を主面とする板状結晶とを切り出して成形加工し、その後表面研磨加工を行ってGaNの結晶基板28m、28cを作製した。
【0077】
これにより、m面を主面とする結晶基板28mについては、縦横サイズが10×20mmで、厚さ0.4mmの基板を10枚作製し、c面を主面とする結晶基板28cについては、外径φ16mm、厚さ0.4mmの基板を5枚作製した。
【0078】
また、結晶基板28cを、酸性溶液でエッチングし、エッチピットを観察したところ、エッチピットの密度は10cm−2以下であり、転位密度が低く高品質な基板であることが分かった。
【0079】
さらに、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer、二次イオン質量分析)により結晶基板28の元素分析を行ったところ、酸素(O)とホウ素(B)が検出された。結晶基板28中の酸素濃度は3×1019cm−3〜1×1020cm−3であり、平均値は、8×1019cm−3であった。ホウ素濃度は3×1017cm−3〜3×1018cm−3であり、平均値は、1×1018cm−3であった。
【0080】
また、結晶基板28について電気伝導度の測定を行ったところ、n型の電気伝導性を示し、低抵抗であることが分かった。
【0081】
(実施例2)
本実施例では、酸化ホウ素(B)の添加量はガリウムの量に対し0.04mol%とし、その他の実験条件は実施例1と同様としてn型GaN単結晶を結晶成長させた。
【0082】
得られたGaN単結晶を実施例1と同様に処理してGaN結晶基板を製造した。このGaN結晶基板においてエッチピットを観察したところ、エッチピットの密度は10cm−2以下であり、転位密度が低く高品質な基板であることが分かった。また、SIMS分析の結果、GaN結晶基板中の酸素濃度の平均値は2×1019cm−3であり、ホウ素濃度の平均値は1×1018cm−3であった。さらに、GaN結晶基板の電気伝導度を測定した結果、n型の電気伝導性を示し、低抵抗であることが分かった。
【0083】
(実施例3)
図5は、実施例3にかかる結晶製造装置2の構成を示す概略図である。本実施例では、耐圧容器11内に内径17mmの反応容器12(12a〜12e)を5個設置し、各々の反応容器12a〜12e内にGaNの針状結晶25(25a〜25e)を設置して、各針状結晶25a〜25eを結晶成長させた。
【0084】
尚、図5においては、反応容器12a、12bを2個のみ図示しているが、実際には図示されていない反応容器12c、12d、12eを耐圧容器11内に設置した。また、針状結晶25a〜25eは、実施例1で用いた針状結晶25と同様の結晶性、サイズのGaN単結晶をそれぞれ用いた。
【0085】
また、本実施例では、各反応容器12a〜12eに投入する酸化ホウ素(B)の量を異ならせて結晶成長を行った。即ち、反応容器12の1つには酸化ホウ素を投入せず、残り4個の反応容器12には、ガリウムに対する酸化ホウ素(B)の量をそれぞれ、0.01mol%、0.04mol%、0.10mol%、0.22mol%として酸化ホウ素を投入した。
【0086】
そして、他の実験条件は実施例1と同様とし、反応容器12a〜12eを結晶成長温度である900℃で80時間保持し、各反応容器12a〜12eにおいてGaN単結晶27(27a〜27e)の結晶成長を行った。
【0087】
得られたGaN単結晶27a〜27eの結晶形状はそれぞれ、実施例1と同様に結晶上部が{10−11}面で構成された六角錘状であり、結晶下部は、側面がm面({10−10}面)で構成された六角柱状であった。
【0088】
また、種結晶25a〜25eの表面にはそれぞれ厚さ数百μm程度のGaN結晶が成長しており、酸化ホウ素(B)の添加量が多いほどGaN結晶は種結晶25上に厚く成長していた。
【0089】
また、酸化ホウ素(B)を0.01mol%、0.04mol%、0.10mol%添加して成長させたGaN単結晶27と、酸化ホウ素(B)を添加せずに成長させたGaN単結晶27とはそれぞれ透明であった。一方、酸化ホウ素(B)を0.22mol%添加して成長させたGaN単結晶27は黒色に着色されていた。
【0090】
さらに、GaN単結晶27a〜27eの結晶中の酸素濃度およびホウ素濃度をSIMSによって測定した。尚、GaN単結晶27a〜27eの側面であるm面({10−10}面)を検査面として分析した。尚、同一のGaN単結晶27において検査箇所を変えて複数回、濃度測定した場合もある。
【0091】
図6は、酸化ホウ素(B)の添加量と、GaN単結晶27a〜27e中の酸素(O)、ホウ素(B)の濃度との関係を示したグラフである。グラフ横軸は、酸化ホウ素(B)の添加量を、ガリウムに対する酸化ホウ素(B)のモル分率で示している。
【0092】
(1)結晶中の酸素濃度
図6に示すように、酸化ホウ素(B)を添加せずに結晶成長させたGaN単結晶27中の酸素濃度は、本測定時における酸素のバックグラウンド値である8×1016cm−3以下であった。また、酸化ホウ素(B)を0.01mol%添加した場合には、GaN単結晶27中の酸素濃度は1017cm−3程度であり、酸化ホウ素(B)を0.22mol%添加した場合には、GaN単結晶27中の酸素濃度は4×1020cm−3であった。従って、酸化ホウ素(B)を0.01mol%ないし0.22mol%添加して結晶成長させることによって、GaN単結晶27中に酸素を1017cm−3ないし4×1020cm−3程度までドープできることが分かった。
【0093】
また、図6に示されるように、酸化ホウ素(B)を0.01mol%より少ない量添加した場合には、GaN単結晶27中に酸素を1017cm−3程度よりも少ない量ドープできることが分かる。さらに、図6に示す酸化ホウ素(B)の添加量とGaN単結晶27中の酸素濃度の関係、および、上記酸素のバックグラウンド値に基づけば、例えば、酸化ホウ素(B)を0.01mol%より一桁少ない0.001mol%程度添加した場合には、GaN単結晶27中に酸素を1016cm−3程度ドープ可能であることが推測される。
【0094】
(2)結晶中のホウ素濃度
図6に示すように、酸化ホウ素(B)を0.01mol%添加した場合には、GaN単結晶27中のホウ素濃度は1017cm−3程度であり、酸化ホウ素(B)を0.1mol%添加した場合には、GaN単結晶27中のホウ素濃度は3×1018cm−3程度であった。従って、酸化ホウ素(B)を0.01mol%ないし0.22mol%添加して結晶成長させることによって、GaN単結晶27中にホウ素を1017cm−3ないし3×1018cm−3程度までドープできることが分かった。
【0095】
また、ホウ素は、酸化ホウ素を添加せずに結晶成長させたGaN単結晶27においても、6×1015cm−3程度検出された。これは、反応容器12の材質が窒化ホウ素(BN)であるため、反応容器12から溶出したホウ素(B)が結晶成長時にGaN単結晶27中に取り込まれたものと考えられる。
【0096】
従って、酸化ホウ素(B)を0.01mol%より少ない量添加した場合には、GaN単結晶27中にホウ素を1017cm−3程度よりも少ない量ドープできることが分かる。さらに、図6に示す酸化ホウ素(B)の添加量とGaN単結晶27中のホウ素濃度の関係から、例えば、酸化ホウ素(B)を0.01mol%より一桁少ない0.001mol%程度添加した場合には、GaN単結晶27中にホウ素を1016cm−3程度ドープ可能であることが推測される。
【0097】
(3)電気伝導度
さらに、GaN単結晶27(27a〜27e)について電気伝導度の測定を行った。その結果、GaN単結晶27はn型の電気伝導性を示し、酸化ホウ素(B)の添加量が増えるにつれて電気伝導度が増加し、低抵抗となることが分かった。これは、GaN単結晶27中にドープされた酸素がドナーとして寄与していることに起因していると考えられる。
【0098】
尚、本実施例においては、酸化ホウ素(B)の添加量が0.01mol%となるまでは、酸化ホウ素(B)の添加量の増加に伴ってGaN単結晶27の抵抗は明らかに減少する傾向を示した。一方、酸化ホウ素(B)の添加量が0.01mol%より大きくなると、抵抗が減少する傾向(変化率)は緩やかになった。すなわち、酸化ホウ素(B)を0.22mol%添加して得られたGaN単結晶27の抵抗は、酸化ホウ素(B)を0.01mol%添加して得られたGaN単結晶27の抵抗より微小に減少はしたが、ほぼ同程度ともいえる減少幅であった。
【0099】
このように、本実施例では、簡単な工程により、高品質かつ低抵抗であるn型III族窒化物単結晶を製造することができた。
【符号の説明】
【0100】
1、2 結晶製造装置
11 耐圧容器
12、12a、12b、12c、12d、12e 反応容器
13 ヒーター
14 ガス供給管
15、18、21 バルブ
16、19 圧力制御装置
17 窒素供給管
20 希釈ガス供給管
22 圧力計
23 内部空間
24 混合融液
25、25a 針状結晶(種結晶)
26 設置台
27、27a n型III族窒化物単結晶(n型GaN単結晶)
28、28m、28c 結晶基板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2008−94704号公報
【特許文献2】特開2006−045047号公報
【特許文献3】特開2005−154254号公報
【特許文献4】特開2007−246303号公報
【特許文献5】特許第4223540号公報
【特許文献6】特開2010−1209号公報
【非特許文献】
【0102】
【非特許文献1】Chemistry of Materials、Vol.9(1997)413-416

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に、少なくともIII族元素を含む物質と、アルカリ金属と、酸化ホウ素と、を投入する材料投入工程と、
前記反応容器を前記酸化ホウ素の融点まで加熱することにより、前記酸化ホウ素を融解させる融解工程と、
前記反応容器をIII族窒化物の結晶成長温度まで加熱することにより、前記反応容器内に、前記III族元素と、前記アルカリ金属と、前記酸化ホウ素と、を含む混合融液を形成する混合融液形成工程と、
前記混合融液に窒素を含む気体を接触させて、前記混合融液中に窒素を溶解させる窒素溶解工程と、
前記混合融液中に溶解した前記III族元素と、前記窒素と、前記酸化ホウ素中の酸素とから、前記酸素がドナーとしてドープされたn型のIII族窒化物単結晶を結晶成長させる結晶成長工程と、
を含むことを特徴とするn型III族窒化物単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記結晶成長工程において、前記酸化ホウ素中のホウ素を前記n型III族窒化物単結晶にドープすること、を特徴とする請求項1記載のn型III族窒化物単結晶の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されるn型III族窒化物単結晶。
【請求項4】
結晶中の酸素濃度が1017〜1020cm−3であることを特徴とする、請求項3記載のn型III族窒化物単結晶。
【請求項5】
請求項3または4に記載のn型III族窒化物単結晶を加工して製造されるn型III族窒化物の結晶基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−72047(P2012−72047A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151093(P2011−151093)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】