説明

p38MAPキナーゼ阻害剤及びその使用方法

式(Ia)又は(Ib)の化合物(式中、X及びYが窒素であるか、X及びYの一方が窒素であり、かつ他方がCRであり、A、D、E、G、W、R、R、R、R及びRが本明細書中に規定されるものである)。また、前記対象化合物の製造方法、及びp38MAPキナーゼが介在する疾患の処置のための前記化合物の使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合ピラゾロピリミジン誘導体及び関連化合物、その製造方法、それを含む医薬調製物、及びその使用方法に関する。
【0002】
細胞分裂促進物質活性化プロテインキナーゼ(MAP)は、二重のリン酸化によりそれらの基質を活性化する、プロリン指向性セリン/スレオニンキナーゼの仲間である。キナーゼは、栄養及び浸透圧ストレス、UV光、増殖因子、エンドトキシン及び炎症性サイトカインを含む様々なシグナルにより活性化される。MAPキナーゼの一つのグループは、様々なイソ型(例えば、p38α、p39β、p38γ及びp38δ)を含むp38キナーゼのグループである。p38キナーゼは、転写因子及びその他のキナーゼのリン酸化及び活性化を担っており、物理的及び化学的ストレス、前炎症性サイトカイン並びに及び細菌性リポ多糖により活性化される。
【0003】
より重要なことに、p38によるリン酸化生成物は、TNF及びIL−1を含む炎症性サイトカイン、並びにシクロオキシゲナーゼ−2の産生を仲介することが示されている。これらの各サイトカインは多くの疾患状態及び症状に関係しているとされている。例えば、TNF−αは、活性化単球及びマクロファージによって主として産生されるサイトカインである。その過剰な又は調節されていない産生は、関節リウマチの病因として原因的役割を担うとして関係があるとされている。さらに最近では、TNF産生の阻害が、炎症、炎症性大腸炎、多発性硬化症及び喘息の処置における広範な用途を有することが示されている。
【0004】
TNFは、特に、単純ヘルペスウィルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウィルス2型(HSV−2)、サイトメガロウィルス(CMV)、水痘帯状疱瘡ウィルス(VZV)、エプスタイン・バーウィルス、ヒトヘルペスウィルス−6(HHV−6)、ヒトヘルペスウィルス−7(HHV−7)、ヒトヘルペスウィルス−8(HHV−8)、仮性狂犬病及び鼻気管炎を含む、HIV、インフルエンザウィルス、及びヘルペスウィルス等のウィルス感染にも関係しているとされている。
【0005】
同様に、IL−1は活性化された単球及びマクロファージにより産生され、関節リウマチ、発熱及び骨吸収の減少を含む多くの病態生理学的反応において役割を担っている。
【0006】
さらに、p38の関与は、卒中、アルツハイマー病、変形性関節炎、肺外傷、敗血症性ショック、血管新生、皮膚炎、乾癬及びアトピー性皮膚炎に関係があるとされている。J. Exp. Opin. Ther. Patents, 2000, 10(1)。
【0007】
腫瘍学における治療薬としてのp38MAPキナーゼの役割が概説されている:Podar et al.,Expert Opinion on therapeutic Targets 2005,9,359-381;Schultz,Progress in Drug Research 2003,60,59-92。
【0008】
p38キナーゼの阻害によるこれらのサイトカインの阻害は、多くのこれらの疾患状態を調節、低減及び緩和する場合に有効である。
【0009】
本発明は、式Ia又はIb:
【0010】
【化4】


(式中、nは、0〜4であり;
は、場合により置換されているフェニルであり;
は、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−C(=O)−R、−CN、−S(O)、−NRC(=O)−R、−O−C(=O)−R又は−NRSOであり、
ここで、mは0〜2であり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ又はアルコキシであり、及び
は、水素又はアルキルであり;
は、水素又はアルキルであり;
は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、ヘテロアルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;
rは0〜4であり;
それぞれのRは、独立して、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、シアノアルコキシ、アルケニルアルコキシ、アルキニルアルコキシ、ヒドロキシアルキルオキシ、ヒドロキシアルキルアルキニルアルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルであり;及び
sは0〜4であり;
X及びYは窒素であるか、又はX及びYの一方が窒素であり、かつ、他方がCRであり;
ここで、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ハロアルキル、シアノ、ハロ、ヘテロアルキル、C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは水素又はアルキルであり;
D、E及びGのうちの1つ又は2つは窒素であるか、又はD、E及びGは炭素であり;
Wは、結合、O、S(O)、CH又はNRであり;
ここで、tは0〜2であり、及び
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシシクロアルキル、−C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル又はヘテロシクリルであるか;又は
W及びRは一緒にシアノを形成するか;又は
及びRはそれらと結合する原子と一緒に複素環を形成し;
Aは、O、CH、S(O)、C(=O)、NR、又はCH(OR)であり、
ここで、uは0〜2であり、及び
は、水素又はアルキルである)で示される化合物又は薬学的に許容可能なその塩を提供する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、式Ia又はIb
(式中、nは、0〜4であり;
は、場合により置換されているフェニルであり;
は、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−C(=O)−R、−CN、−S(O)、−NRC(=O)−R、−O−C(=O)−R又は−NRSOであり、
ここで、mは0〜2であり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアミノ、ヒドロキシ又はアルコキシであり、及び
は、水素又はアルキルであり;
は、水素又はアルキルであり;
は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、ヘテロアルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;
rは0〜4であり;
それぞれのRは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、シアノアルコキシ、アルキニルアルコキシ、ヒドロキシアルキルアルキニルアルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルであり;及び
sは0〜4であり;
X及びYは窒素であるか、又はX及びYの一方が窒素であり、かつ、他方がCRであり;
ここで、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ハロアルキル、シアノ、ハロ、ヘテロアルキル、C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは水素又はアルキルであり;
D、E及びGのうちの1つ又は2つは窒素であるか、又はD、E及びGは炭素であり;
Wは、結合、O、S(O)、CH又はNRであり;
ここで、tは0〜2であり、及び
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシシクロアルキル、−C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル又はヘテロシクリルであるか;又は
及びRはそれらと結合する原子と一緒に複素環を形成し;
Aは、O、CH、S(O)、C(=O)、NR、又はCH(OR)であり、
この場合、uは0〜2であり、及び
は、水素又はアルキルである)
で示される化合物を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、式Iで示される1つ以上の化合物及びそのための薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【0013】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼの阻害剤であり、in vivoにおいてp38に対する有効な活性を示す。それらは、サイクリン依存性キナーゼ及びチロシンキナーゼと比較して、p38キナーゼに対して選択性を示す。したがって、本発明の化合物は、TNF及びIL−1等の前炎症性サイトカインが介在する疾患の処置のために使用することができる。すなわち、本発明の別の態様は、治療的有効量の1以上の式Iで示される化合物を患者に投与する、p38が介在する疾患又は症状の処置方法を提供する。
【0014】
本開示において引用される全ての刊行物は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0015】
特に指定しないかぎり、明細書及び特許請求の範囲を含む本願において使用される次の語は以下に示される定義を有する。明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、そうではないということを文脈が明確に記載していない場合には、複数の指示対象を含むことを留意しなければならない。
【0016】
「アルキル」とは、1〜6個の炭素原子から成る直鎖状の飽和一価炭化水素部分又は3〜6個の炭素原子から成る分枝鎖状の飽和一価炭化水素部分、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル等を意味する。
【0017】
「アルキレン」とは、1〜6個の炭素原子から成る直鎖状の飽和二価の炭化水素部分又は3〜6個の炭素原子から成る分枝鎖状の飽和二価炭化水素部分、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレン等を意味する。
【0018】
「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合を含む、2〜6個の炭素原子から成る直鎖状の一価炭化水素基又は3〜6個の炭素原子から成る分枝鎖状の一価炭化水素基、例えば、エテニル、プロペニル等を意味する。「アルケニレン」とは二価のアルケニル基を意味する。
【0019】
「アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合を含む、2〜6個の炭素原子から成る直鎖状の一価炭化水素基又は3〜6個の炭素原子から成る分枝鎖状の一価炭化水素基、例えば、エチニル、プロピニル等を意味する。「アルキニレン」とは、二価のアルキニル基を意味する。
【0020】
「アルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキル部分である、式−ORから成る部分を意味する。アルコキシ部分の例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等が挙げられる。
【0021】
「アルコキシアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキルであり、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式R−O−R−から成る部分を意味する。アルコキシアルキル基の例としては、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、1−メチル−2−メトキシエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシ−プロピル、及び1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピルが挙げられる。
【0022】
「アルコキシアルキルオキシ」及び「アルコキシアルコキシ」は、同義的に使用することができ、式中、R’が本明細書において規定されるアルキルであり、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式−O−R−O−R’から成る基を意味する。
【0023】
「アルキルアミノ」とは、式中、Rが本明細書において規定される水素又はアルキルであり、R’が本明細書において規定されるアルキルである、式−NR−R’から成る部分を意味する。
【0024】
「アルコキシアミノ」とは、式中、Rが本明細書において規定される水素又はアルキルであり、R’が本明細書において規定されるアルキルである、式−NR−OR’から成る部分を意味する。
【0025】
「アルキルスルファニル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキルである、式−SRから成る部分を意味する。
【0026】
「アルキルスルホニル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキルである、式−SORから成る部分を意味する。
【0027】
「アルキルスルホニルアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキルであり、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式R−SO−R−から成る部分を意味する。例示的なアルキルスルホニルアルキル基としては、例えば、3−メタンスルホニルプロピル、2−メタンスルホニルエチル、2−メタンスルホニルプロピル等が挙げられる。
【0028】
「アルキニルアルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるアルキニルである、式−O−R−R’から成る基を意味する。
【0029】
「アミノ」とは、式中、R及びR’がそれぞれ独立して水素又はアルキルである、基−NRR’を意味する。本明細書において使用される時、「アミノ」はしたがって、「アルキルアミノ」及び「ジアルキルアミノ」を包含する。
【0030】
「アルキルアミノアルキル」とは、式中、Rがアルキレンであり、R’がアルキルである、基−R−NHR’を意味する。アルキルアミノアルキルとしては、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、エチルアミノエチル等が挙げられる。
【0031】
「ジアルキルアミノアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’及びR''が本明細書において規定されるアルキルである、基−R−NR'
R''を意味する。ジアルキルアミノアルキルとしては、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、N−メチル−N−エチルアミノエチル等が挙げられる。
【0032】
「アミノアルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアミノであり、R’が本明細書において規定されるアルキレンである、基−OR−R’を意味する。
【0033】
「アルキルスルホニルアミド」とは、式中、Rがアルキルであり、R’が水素又はアルキルである、式−NR’SO−Rから成る部分を意味する。
【0034】
「アリール」とは、それぞれが好ましくは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、モノ−及びジアルキルアミノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシル、ヘテロアルキル、場合により置換されているアリール、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されているアラルキル、及び場合により置換されているヘテロアラルキルから成る群より選択される、1つ以上の、好ましくは1つ、2つ又は3つの置換基によって場合により置換されている一価の単環式又は二環式芳香族炭化水素部分を意味する。特に好ましいアリール置換基はハロゲン化物である。より具体的には、用語アリールには、限定するものではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が含まれ、それぞれは置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0035】
「アラルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるアリールである、式−R−R’から成る部分のことをいう。
【0036】
「アラルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるアリールである、基−O−R−R’を意味する。
【0037】
「置換アラルキル」又は「場合により置換されているアラルキル」とは、式中、アリール部分がそれぞれ置換されているか又は場合により置換されているアラルキルのことをいう。
【0038】
「シアノアルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式−O−R−CNから成る基を意味する。
【0039】
「シクロアルキル」とは、3〜7個の環状炭素から成る飽和一価環状炭化水素部分、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4−メチル−シクロヘキシル等のことをいう。シクロアルキルは、1つ以上の置換基、好ましくは、1つ、2つ又は3つの置換基で場合により置換されていてもよい。好ましくは、シクロアルキル置換基は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、ヘテロアルキル、アシル、アリール及びヘテロアリールから成る群より選択される。
【0040】
「シクロアルキルアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるシクロアルキルであり、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式R−R−から成る部分のことをいう。
【0041】
「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハロゲン化物」は、本明細書において同義的に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードのことをいう。好ましいハロゲン化物はフルオロ及びクロロであり、フルオロが特に好ましいハロゲン化物である。
【0042】
「ハロアルキル」とは、1つ以上の同一又は異なるハロゲン原子で置換されているアルキル、例えば、−CHCl、−CF、−CHCF、−CHCCl等を意味する。
【0043】
「ヘテロアルキル」とは、本明細書において規定されるようなアルキル部分を意味し、1つ以上、好ましくは1つ、2つ、又は3つの水素原子が−OR、−NR(ここで、R及びRがいずれも独立してアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルである場合、nは0又は1であり、かつ、そうでない場合、0である)、及び−S(O)(ここで、nは0〜2の整数である)からなる群より独立して選択される置換基により置き換えられており、そのヘテロアルキル部分の結合点が炭素原子を通じているものと理解され、ここで、Rは水素、アシル、アルコキシカルボニル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり;R及びRは、互いに独立して、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノ−又はジ−アルキルアミノスルホニル、アミノアルキル、モノ−又はジ−アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルスルホニル又はアルコキシアルキルスルホニルであり;及びnが0である場合、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、又はアリールであり、及びnが1又は2である場合、Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、アルキルスルホニル、アミノ、又は場合により置換されているフェニルである。代表的な例としては、限定するものではないが、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピル等が挙げられる。したがって、ヒドロキシアルキル及びアルコキシアルキルは、ヘテロアルキルのサブセットである。
【0044】
「ヘテロアリール」とは、N、O、又はS(好ましくはN又はO)から選択される、1つ、2つ又は3つの環状ヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香族環を有する、5〜12個の環状原子から成る一価の単環式又は二環式の部分を意味し、残りの環状原子はCであり、ヘテロアリール部分の結合点は芳香族環であるものとする。ヘテロアリール環は、それぞれが、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、ニトロ及びシアノから成る群より独立して選択される、1つ以上の置換基、好ましくは1つ、2つ又は3つの置換基によって場合により独立して置換されている。より具体的には、用語ヘテロアリールには、限定するものではないが、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル又はベンゾチエニル、イミダゾ[1,2−a]−ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、及びその誘導体が含まれる。
【0045】
「ヘテロアラルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるヘテロアリールである、式−R−R’から成る部分のことをいう。
【0046】
「ヘテロアラルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるヘテロアリールである、基−O−R−R’のことをいう。
【0047】
「ヘテロシクリル」は、3〜8環の原子における飽和又は不飽和の非芳香族環状部分を意味し、N、O、又はS(O)(ここで、nは0〜2の整数である)、好ましくはN又はOから選択される1つ又は2つの環の原子がヘテロ原子であり、残りの環の原子はCであり、1つ又は2つのC原子は場合によりカルボニル基に置き換えられていてもよい。ヘテロシクリル環は、1つ以上の、好ましくは1つ、2つ、又は3つの置換基で場合により独立して置き換えられており、それらの各々が、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ−及びジアルキル−アミノ、アラルキル、−(X)−C(O)R(ここで、XはO又はNRであり、nは0又は1であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ(nが0であるとき)、アルコキシ、アミノ、モノ−及びジアルキルアミノ、または場合により置換したフェニル、及びRはH又はアルキルである)、−アルキレン−C(O)R(ここで、Rはアルキルであり、−OR又はNRであり、Rは水素、アルキル又はハロアルキルであり、R及びRは独立して水素又はアルキルである)、及び−S(O)(ここで、nは0〜2の整数である)から、nが0であるとき、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2であるとき、Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、又はジアルキルアミノであるように、独立して選択される。ヘテロシクリル置換基の特に好ましい基としては、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、アラルキル、及び−S(O)Rkが挙げられる。特に、用語ヘテロシクリルには、限定するものではないが、テトラヒドロフラニル、ピリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、4−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−2H−チオピラニル)、ピロリニル、イミダゾリニル、N−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル、及びその誘導体が含まれ、それぞれは場合により置換されていてもよい。
【0048】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるヘテロシクリルである、式−R−R’から成る部分を意味する。
【0049】
「ヘテロシクリルオキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるヘテロシクリルである、式−ORから成る部分を意味する。
【0050】
「ヘテロシクリルアルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が本明細書において規定されるヘテロシクリルである、式−OR−R’から成る部分を意味する。
【0051】
「ヒドロキシアルコキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるヒドロキシアルキルである、式−ORから成る部分を意味する。
【0052】
「ヒドロキシアルキルアミノ」とは、式中、Rが水素又は本明細書において規定されるアルキルであり、R’が本明細書において規定されるヒドロキシアルキルである、式−NR−R’から成る部分を意味する。
【0053】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンであり、R’が水素又は本明細書において規定されるアルキルであり、R''が本明細書において規定されるヒドロキシアルキルである、式−R−NR’−R''から成る部分を意味する。
【0054】
「ヒドロキシアルキル」とは、ヘテロアルキルのサブセットのことをいい、特に、1つ以上の、好ましくは、1つ、2つ又は3つのヒドロキシ基によって置換されている、本明細書において規定されるアルキル部分のことをいい、但し、同一の炭素原子は1つより多いヒドロキシ基を有さない。代表的な例には、限定するものではないが、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルが含まれる。
【0055】
「ヒドロキシシクロアルキル」とは、本明細書において規定されるシクロアルキル部分のサブセットのことをいい、特に、シクロアルキル部分における1以上の、好ましくは1、2又は3個の水素原子がヒドロキシ置換基によって置き換えられている本明細書において規定されているシクロアルキル部分のことをいう。代表的な例としては、限定するものではないが、2−、3−、又は4−ヒドロキシ−シクロヘキシル等が含まれる。
【0056】
「ヒドロキシアルキルオキシ」とは、式中、Rが本明細書において規定されるアルキレンである、式−O−R−OHから成る基を意味する。
【0057】
「ヒドロキシアルキルアルキニルアルコキシ」とは、式中、R及びR''は本明細書において規定されるアルキレンであり、R’は本明細書において規定されるアルキニレンである、式−O−R−R’−R''−OHから成る基を意味する。
【0058】
「脱離基」は、合成有機化学物質すなわち、求核試薬により置換され得る原子または基に従来関連する意味を有し、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、及びヨード)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば、2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ等が含まれる。
【0059】
「場合により置換されている」とは、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」、「シクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」と共に使用する場合、アリール、フェニル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクリルが、場合により、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキル−アミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここで、Rは水素、アルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、−(CR’R'')−COOR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’及びR''は独立して水素又はアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、又は−(CR’R'')−CONR(ここで、nは0〜5の整数であり、R’及びR''は独立して水素又はアルキルであり、R及びRは互いに独立して水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)から選択される、又は本明細書中の別の部分に記載されるような、1〜4個の置換基、好ましくは1又は2個の置換基により独立して置換されていることを意味する。
【0060】
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、通常、安全で毒性を有さず、また望ましくない生物化学的性質やその他をいずれも有さない、医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、動物ならびにヒトの医薬的用途に対し適合し得る賦形剤を含む。本明細書中および特許請求の範囲中で用いられる「薬学的に許容可能な賦形剤」には、1以上のかかる賦形剤の両方を含む。
【0061】
化合物の「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の所望の医薬的活性を保持する薬学的に許容可能な塩を意味する。かかる塩としては、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸等により形成される;又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロ−ベンゼンスルホン酸、2−ナフタリンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンフルスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプタン酸、3−フェニル−プロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸等により形成される酸付加塩、又は(2)いずれかの親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオン、アルカリ土類イオン又はアルミニウムにより置換されて形成される塩;又は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等の有機塩基等と形成される酸付加塩が挙げられる。
【0062】
「保護基」とは、分子中の反応性基と結合した場合に、その反応性をマスク、低下又は抑制する原子群のことをいう。保護基の例は、Green and Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,(Wiley,第2版. 1991)及びHarrison and Harrison et al.,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1-8(John Wiley及びSons,1971-1996)に見出すことができる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリルエタンスルホニル(SES)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等が挙げられる。代表的なヒドロキシ保護基としては、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化のいずれかがなされるもの、例えば、ベンジル及びトリチルエーテル並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルが挙げられる。
【0063】
疾患を「処置すること」又は「処置」には、以下を含む:(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患におそらく罹患した又は罹患しやすい傾向にあるが、まだその疾患の臨床症状を経験又は呈していない哺乳動物において、その疾患の臨床症状を発症させないようにすること;(2)疾患を抑制すること、すなわち、疾患又はその臨床症状の発症を停止又は減少させること;又は(3)疾患から回復すること、すなわち、疾患又はその臨床症状の退行を生じさせること。
【0064】
「処置的有効量」とは、疾患の処置のために哺乳動物に投与した場合に、疾患のかかる処置を行うために十分である化合物の量のことを意味する。「処置的有効量」は、化合物、疾患並びにその重篤度、処置する哺乳動物の年齢、体重等に応じて変動し得る。
【0065】
本明細書において使用する場合、用語「上記規定のもの」及び「本明細書において規定されたもの」は同義的に使用され、可変物をいう場合、参照により、その可変物の広い定義、並びに、もしあるとすれば、好ましい、より好ましい及び最も好ましい定義を組み入れる。
【0066】
「モジュレーター」とは、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用としては、限定するものではないが、本明細書において規定されるアゴニスト、アンタゴニスト等が挙げられる。
【0067】
「任意な」又は「場合により」とは、次に記載される事象又は状況が必ずしも起こる必要が無く、その記載が、その事象又は状況が起こる場合も、起こらない場合も含むことを意味する。
【0068】
「疾患状態」とは、任意の疾患、症状、症候、又は徴候を意味する。
【0069】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」とは、それとともに関連して記載される反応条件下で不活性である溶媒を意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジン等が含まれる。特に指定しない限り、本発明の反応において使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0070】
「溶媒和物」とは、化学量論的又は非化学量論的いずれかの量の溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。ある化合物は、結晶性の固体状態で一定のモル比の溶媒分子を捕捉し、したがって、溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水の場合には、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールの場合には、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1つ以上の水分子と、その水がHOとしての分子状態を保持する1つの物質との組み合わせによって形成され、かかる組み合わせによって1つ以上の水和物を形成し得る。
【0071】
「対象」とは、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物とは、限定するものではないが、ヒト;チンパンジー及びその他の類人猿及びサル種等の非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタ等の家畜;ウサギ、イヌ、及びネコ等の家庭動物;ラット、マウス、及びハムスター等のげっ歯類を含む実験動物等を含む哺乳動物類の任意の一員を意味する。非哺乳動物の例としては、限定するものではないが、鳥類等が挙げられる。用語「対象」は特定の年齢又は性別を示さない。
【0072】
可変物のことをいう場合、用語「上記規定のもの」及び「本明細書において規定されるもの」は、参照により、その可変物の広い定義、並びに、もしあるとすれば、好ましい、より好ましい及び最も好ましい定義を組み入れる。
【0073】
化学反応のことをいう場合、用語「処理すること」、「接触させること」及び「反応させること」とは、示された及び/又は所望の生成物を生成させるために、適当な条件下で2以上の試薬を添加又は混合することを意味する。示された及び/又は所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された2つの試薬の組合せから直接得られなくてもよく、すなわち、示された及び/又は所望の生成物の形成に最終的につながる、1つ以上の中間体が混合物中に形成され得ることを理解すべきである。
【0074】
一般的に、本願において使用される命名法は、IUPACの体系的名称作成のためのBeilstein Instituteのコンピューターシステム、AUTONOM(商標)v.4.0に基づく。本明細書において示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を用いて準備した。本明細書における構造式中の炭素、酸素又は窒素原子上に示される任意の開放している原子価は、水素の存在を示唆する。キラル中心が構造式中に存在するが、特定の光学異性体が示されていない場合、その構造式にはキラル中心に関連する両方の光学異性体を包含する。
【0075】
多くの実施形態において、本発明の化合物はIaである。
【0076】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは水素である。
【0077】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Dは窒素である。
【0078】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Eは窒素である。
【0079】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Gは窒素である。
【0080】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、D及びGは窒素である。
【0081】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素である。
【0082】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、D及びEは炭素であり、Gは窒素である。
【0083】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、X及びYは窒素である。式Iaのその他の実施形態において、X及びYの一方は窒素であり、他方はCRである。
【0084】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Xは窒素であり、YはCRである。
【0085】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、XはCRであり、Yは窒素である。
【0086】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、AはO、S又はNRである。好ましくは、かかる実施形態において、AはOである。
【0087】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルである。
【0088】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。
【0089】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0090】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキルである。
【0091】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Wは結合であり、Rは水素である。
【0092】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは−S(O)である。
【0093】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは−S(O)であり、mは2である。
【0094】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは−S(O)であり、mは0である。
【0095】
式中、Rがヘテロアルキルである、式Iaの実施形態において、かかるヘテロアルキルは、好ましくは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルホンアミドアルキル又はアルキルアミノスルホンアミドアルキルである。より好ましくは、かかるヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。さらにより好ましくは、かかるヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキルである。
【0096】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、nは1であり、Rはそれが結合するフェニル環の2位にあり、Rはそれが結合するフェニル環の5位の−S(O)−Rにある。
【0097】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、O、N及びSから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環式ヘテロアリールである。
【0098】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリルチアゾリル、イソオキサゾリル又はイソチアゾリルである。
【0099】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルである。
【0100】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、O、N及びSから選択される1個又は2個のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環式ヘテロシクリルである。
【0101】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、テトラヒドロフラニル、モルホリニル又はピロリルである。
【0102】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル又はテトラヒドロピラニルであり、好ましくは、モルホリン−4−イルである。
【0103】
式Iaの特定の実施形態において、Rは−C(=O)−Rである。
【0104】
式Iaの特定の実施形態において、Rは−NRSOである。
【0105】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、Rは−CNである。
【0106】
式Ia又は式Ibの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素である。
【0107】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素である。
【0108】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2である。
【0109】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOである。
【0110】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルである。
【0111】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1である。
【0112】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1であり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシである。
【0113】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1であり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキルである。
【0114】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1であり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキルであり、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。かかる実施形態における好ましいヘテロアルキルとしては、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルホンアミドアルキル及びアルキルアミノスルホンアミドアルキルが挙げられる。より好ましくは、かかるヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0115】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、Rは−S(O)−Rであり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1であり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0116】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは0又は1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルである。
【0117】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するハロであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルである。
【0118】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するハロであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキルであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0119】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するハロであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキルであり、WはO又はNRであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキル、好ましくはヒドロキシアルキルである。
【0120】
式Iaの特定の実施形態において、D及びEは炭素であり、Gは窒素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルである。
【0121】
式Iaの特定の実施形態において、D、E及びGは炭素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するハロであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはメチルである。
【0122】
式Iaの特定の実施形態において、D及びEは炭素であり、Gは窒素であり、Rは水素であり、X及びYは窒素であり、mは2であり、AはOであり、Rは2−ハロフェニル又は2,4−ジハロフェニルであり、nは1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはそれと結合するフェニル環の5位に位置する−S(O)−Rであり、mは2であり、Rはアルキルである。
【0123】
式Iaの特定の実施形態において、対象化合物はより具体的には式II:
【0124】
【化5】


(式中、pは0〜4であり;
それぞれRは、独立して、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ又はシアノであり;及び
n、m、W、R、R及びRは本明細書において規定される通りである)で示される。
【0125】
式IIの特定の実施形態において、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。
【0126】
式IIの特定の実施形態において、Wは結合であり、Rは水素である。
【0127】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロ、好ましくはフルオロである。
【0128】
式IIの特定の実施形態において、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシである。
【0129】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシである。
【0130】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルである。
【0131】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはヘテロアルキル、好ましくはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0132】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2である。
【0133】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはそれと結合するフェニル環の2位に位置するアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、mは2であり、基R−S(O)はそれと結合するフェニル環の5位に位置する。
【0134】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。かかる実施形態における好ましいヘテロアルキルとしては、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルホンアミドアルキル及びアルキルアミノスルホンアミドアルキルが挙げられる。より好ましくは、かかるヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0135】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは0又は1であり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Rはアルキルであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0136】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは1であり、Rはハロであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0137】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは1であり、Rはハロであり、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0138】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは1であり、Rはハロであり、Rはメチルであり、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキル、好ましくはヒドロキシアルキルである。
【0139】
式IIの特定の実施形態において、pは1又は2であり、Rはハロであり、nは1であり、Rはハロであり、Rはメチルであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0140】
式Iaの特定の実施形態において、対象化合物はより具体的には式III:
【0141】
【化6】


(式中、W、R、R及びRは本明細書において規定される通りである)で示される。
【0142】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルである。
【0143】
式IIIの特定の実施形態において、Rはヘテロアルキルであり、好ましくはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、さらにより好ましくはヒドロキシアルキルである。
【0144】
式IIIの特定の実施形態において、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。かかる実施形態における好ましいヘテロアルキルとしては、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルホンアミドアルキル及びアルキルアミノスルホンアミドアルキルが挙げられる。より好ましくは、かかるヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0145】
式IIIの特定の実施形態において、Wは結合であり、Rは水素である。
【0146】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシである。
【0147】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキルであり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシである。
【0148】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、WはNR又はOであり、Rはヘテロアルキルである。
【0149】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキル又はヒドロキシアルキルであり、Rは、アルキル、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0150】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキルであり、Rはハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0151】
式IIIの特定の実施形態において、Rはアルキルであり、Rはハロ、アルコキシアルコキシ又はベンジルオキシであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0152】
式IIIの特定の実施形態において、Rはメチルであり、Rはハロであり、WはNR又はOであり、Rはヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0153】
式IIIの特定の実施形態において、Rはメチルであり、Rはハロであり、Wは結合であり、Rは水素である。
【0154】
本発明の実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R又はRは、はアルキルであるか、又はアルキル部分を含み、かかるアルキルは、好ましくは低級アルキル、すなわち、C−Cアルキル、より好ましくはC−Cアルキルである。
【0155】
式Iで示される化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の無機酸由来の塩、並びに、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸由来の塩が挙げられる。かかる塩としては、したがって、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。アルギン酸塩等のアミノ酸の塩及びグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩も意図される(例えば、Berge et al.,J. of Pharmaceutical Science,1977,66,1-19参照)。
【0156】
塩基性化合物の酸付加塩は、通常の様式で塩を生成させるために遊離塩形態を十分量の所望の酸と接触させることにより調製することができる。遊離塩基形態は、塩形態を塩基と接触させて、通常の様式で遊離塩基を単離することにより再生させることができる。遊離塩基形態は、極性溶媒中での溶解性等の特定の物理的特性においては、それらの各塩形態とは少し異なるが、その他は、本発明の目的に対して、塩はそれらの各遊離塩基と同等である。
【0157】
本発明にしたがう代表的化合物は以下の表1に示される。
【0158】
【表1】





【0159】
本発明の化合物は、以下に示され、記載される説明のための合成反応スキームに描かれている様々な方法によって製造することができる。
【0160】
これらの化合物を調製する場合に使用される出発物質及び試薬は、通常、Aldrich Chemical Co.等の供給業者から入手し得るか、又は、Fieser及びFieser's Reagents for Organic Synthesis;Wiley & Sons:New York,1991,Volumes 1-15;Rodd's Chemistry of Carbon Compounds,Elsevier Science Publishers,1989,Volumes 1-5 and Supplementals;及びOrganic Reactions,Wiley & Sons:New York,1991,Volumes 1-40等の参考文献に示される手順にしたがい当業者により調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成し得るいくつかの方法を例示するにすぎず、これらの合成反応スキームに対する様々な改変を行うことができ、本願に含まれる開示を参照することによりに当業者にかかる改変が示唆され得る。
【0161】
本合成反応スキームの出発物質及び中間体は、所望であれば、限定されるものではないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等の従来の手法を用いて単離され、精製することができる。かかる材料は、物理的な定数及びスペクトルデータを含む従来の手段により特徴づけることができる。
【0162】
別の記載がされない限り、本明細書中に記載の反応は、好ましくは、不活性雰囲気下、大気圧で約−78℃〜約15O℃、より好ましくは約0℃〜約125℃の範囲、最も好ましく、かつ簡便には室温付近(又は外気温)(RT)、例えば約20℃の反応温度で行われる。
【0163】
本発明のピラゾロピリミジン化合物を調製するための具体的方法のひとつを以下のスキームAに示し、ここで、Rは、アルキルであり、p、n、D、E、G、W、X、Y、R、R、R及びRは本明細書において規定される通りである。
【0164】
【化7】

【0165】
スキームAのステップ1で、ビスフェノキシ化合物aはグリニャール試薬bにより処理され、次いでベンズアルデヒド(ここで、D、E及びGは炭素である)化合物cにより処理されて、アルコール化合物dを生じる。アルコールdは次いで相当するケト化合物eへと還元される。化合物e及びヒドラジンとの反応は環の接近に影響を及ぼし、ピラゾロピリミジン化合物fが得られる。化合物fは次いでピラノイド等の穏やかな酸化剤により処理されて、本発明の式Iaの化合物であるアルキルスルホニル化合物gが得られる。
【0166】
本発明の特定の実施形態において、ベンズアルデヒドcは相当する塩化ベンゼン酸により置換されて、直接的にケトン化合物eを生じ、すなわち、ステップ2の酸化は不要となる。
【0167】
スキームAの別のバリエーションにおいて、Rはベンジル等の脱離基であり、ステップ4の硫黄の酸化に代えて、化合物fは酸化条件下でN−クロロスクシナミドを用いて処理されて、塩化ベンゼンスルホニルを生じる。塩化ベンゼンスルホニルは次いでアンモニア、アルキルアミン又はジアルキルアミンと反応して、Rがアミノである化合物を与えてもよい。
【0168】
当業者であれば、上記のスキームに対する特定の改変は、本発明を意図し、その範囲に含まれるものであることを理解するであろう。例えば、Rが保護を必要とするヘテロアルキル(例えば、アミノアルキル)である場合、特定のステップには、特定の反応条件には適合しない官能基に対する保護基の使用を含むであろう。
【0169】
本発明の化合物を製造するためのさらに具体的な詳細については以下の実施例の項に記載する。
【0170】
本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物、又は個々の異性体、ラセミ体又は異性体の非ラセミ混合物又はその薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物を、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体と、場合によりその他の治療用及び/又は予防用成分とを共に含む医薬組成物を含む。
【0171】
概して、本発明の化合物は、同様の有用性を示すために薬剤として許容される任意の投与様式により治療的有効量で投与される。好適な投与範囲は、通常、処置される疾患の重篤度、対象の年齢及び相対的健康度、使用する化合物の効力、投与経路及び形態、投与が指示される適応症、並びに関係する医師の好み及び経験等の多数の因子に応じて、1日あたり1〜500mg、好ましくは1日あたり1〜100mg、及び最も好ましくは1日あたり1〜30mgである。かかる疾患を処置する技術分野における当業者であれば、過度な実験を行うことなく、個人の知識と本願の開示に基づき、所定の疾患に対する本発明の化合物の治療的な有効量を確定し得るであろう。
【0172】
概して、本発明の化合物は、経口(バッカル及び舌下を含む)、経直腸、経鼻、局所、経肺、経膣、非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下及び静脈内)投与にとって好適なもの、又は吸入若しくは吸気により投与されるために好適な形態を含む医薬製剤として投与されるであろう。好ましい様式による投与は、通常、簡便な毎日の投与計画を用いる経口投与であり、苦痛の程度に応じて調製することが可能である。
【0173】
化合物又は本発明の化合物は、1以上の従来のアジュバント、担体、又は希釈剤と共に、医薬組成物及び単位投与量の形態へと成型されてもよい。医薬組成物及び単位投与量形態は、付加的な活性化合物又は原理を伴って、又は伴わずに、従来の成分の従来の配合からなることができ、単位投与量形態は、使用される、意図される1日あたり投与範囲に相当した任意の好適な効果的な量の活性成分を含み得る。医薬組成物は錠剤、または充填されたカプセル等の固体、半固体、粉末、除放製剤、又は、溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル製剤、又は充填された経口用カプセル等の液体であり;又は直腸内又は経膣投与のための坐剤の形態であり;又は非経口的使用のための滅菌された注射液の形態として利用することができる。従って、錠剤1個あたり約1ミリグラムの活性成分、または、より広い範囲では、約0.01〜約100ミリグラムの活性成分を含有する製剤が、好適な代表的な単位投与量形態である。
【0174】
本発明の化合物は、広範な経口投与形態に製剤化することができる。医薬組成物及び投与形態は、活性成分として、本発明の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を含み得る。薬学的に許容可能な担体は、固体又は液体のいずれでもよい。固体形態の調製物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒を含む。固体担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又はカプセル化素材等としても作用する1以上の物質であってよい。粉末の場合、担体は通常、微粒子化された活性成分を伴う混合物である微粒子化固体へと微細化される。錠剤の場合、活性成分は通常、必要な結合能力を有する担体と、好適な比率で混合され、所望の形状及び大きさへと圧縮される。粉末及び錠剤は、好ましくは約1〜約70%の活性化合物を含む。好適な担体は、限定するものではないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等を含む。用語「調製物」は、担体としてカプセル化素材を伴う活性化合物の製剤を含むことが意図され、カプセル中では活性成分が、担体を伴って又は伴わずに、伴う場合には活性成分が担体に取り巻かれた形で存在する。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が意図される。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与のために好適な固体形態であり得る。
【0175】
経口投与のために好適なその他の形態には、エマルジョン、シロップ、エリキシル、水性溶液、水性懸濁液を含む液状形態の、又は、使用直前に液状形態調製品へと変換することを意図した固体形態の調製物調製物を含む。エマルジョンは、溶液、例えば、水性のプロピレングリコール溶液中で調製され、又は、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、又はアカシア等のエマルジョン化剤を含み得る。水性溶液は、活性成分を水に溶解し、好適な色素、香料、安定剤及び増粘剤を加えることにより調製することができる。水性の懸濁液は、微粒子化した活性成分を、天然又は合成のガム、レジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその他のよく知られた懸濁剤等の粘性物質と共に水中に分散させることにより調製することができる。固体形態の調製物は、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含み、活性成分に加えて、色素、香料、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含み得る。
【0176】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、ボーラス注射又は持続注入による)注射のために処方され得、アンプル、予め充填された注射器、小容量注入又は保存剤を添加した複数投与用容器の形態の単位投与形態で示すことができる。組成物は、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液等の、油系又は水系ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンとしての形態を取り得る。油性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射可能な有機エステル(例えば、エチルオレエート)を挙げることができ、保存剤、湿潤剤、エマルジョン化剤又は懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の製剤化剤を含み得る。別の方法では、活性成分は、滅菌固体の無菌的分離により、又は、例えば、滅菌され発熱物質を含まない水等の好適なビヒクルと共に使用する前の構成物のために、溶液から凍結乾燥することにより得られる粉末形態であり得る。
【0177】
本発明の化合物は、軟膏、クリーム又はローション、または経皮パッチとして上皮に対し局所的に投与するために製剤化することができる。軟膏及びクリームは、例えば、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤の添加により、水性又は油性の基材によって製剤化される。ローションは、水性又は油性の基材によって製剤化され、通常はまた、1以上のエマルジョン化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は色素剤を含み得る。口内への局所的投与にとって好適な製剤は、活性剤を着香された基材を含むドロップ剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基材中に活性成分を含んでなるトローチ剤;及び好適な液状担体中に活性成分を含んでなる洗口液、を含む。
【0178】
本発明の化合物は、座薬として投与するために製剤化され得る。脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物等の低融点ワックスを最初に融解し、活性成分を、例えば撹拌により、均一に分散させる。融解された均質な混合物を次いで簡便な大きさの型に流し込み、冷却して固化させる。
【0179】
本発明の化合物は、経膣投与のために製剤化してもよい。活性成分に加えてかかる担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーが当技術分野で知られている。
【0180】
本発明の化合物は、経鼻投与のために製剤化され得る。溶液又は懸濁液は、従来の手段、例えば、スポイト、ピペット、又はスプレーを用いて、直接的に鼻腔へと適用される。製剤は、単回投与又は複数回投与の形態で提供され得る。スポイト、ピペットによる後者の場合、これは患者が適当な所定の量の溶液又は懸濁液を投与することにより達成され得る。スプレーの場合、これは例えば、噴霧量を計測するポンプを用いて達成可能である。
【0181】
本発明の化合物は、エアロゾル投与、特に、鼻腔内投与を含む気道への投与のために製剤化することができる。化合物は通常、例えば5ミクロン以下の小粒子を有する。このような粒子サイズは公知の技術、例えば微粉化により得ることができる。活性成分は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、又は二酸化炭素又はその他の好適なガス等の好適な高圧ガスにより加圧容器中で提供される。エアロゾルは、簡便のために、レシチンなどの界面活性剤を含んでもよい。薬物の投与量は、計量されたバルブにより調節することができる。あるいは、活性成分は乾燥粉末、例えばラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリジン(PVP)等のデンプン誘導体等の好適な粉末基材中に化合物が混合された粉末の形態で提供され得る。この粉末担体は鼻腔内においてゲルを形成することになる。粉末組成物は、例えば、ゼラチンカプセル又はカートリッジ又は吸入器を用いた手段で投与されるための粉末からブリスター包装等の単位投与量形態で存在し得る。
【0182】
所望される場合、製剤は、活性成分の持続的な又は制御された放出投与を行うために適合された腸溶コーティングにより調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮的な又は皮下への薬物送達媒体へと製剤化され得る。これらの送達システムは、化合物の持続的放出が必要である場合、及び、患者が投与計画を遵守することが非常に重要である場合に、都合がよい。経皮的な送達システムにおける化合物は、しばしば、肌に接着する固体支持体へと結合される。対象化合物はまた、浸透促進剤、例えば、アゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放性の送達システムは、外科的手法又は注射により、皮下層へと挿入される。皮下層への埋め込みは、化合物を脂溶性膜、例えば、シリコンラバー、又は、例えばポリ乳酸等の生分解性ポリマー中に化合物をカプセル化する。
【0183】
医薬調製物は、好ましくは単位投与量の形態である。かかる形態において、調製物は、適当な量の活性成分を含有する単位投与量へとさらに分けられる。単位投与量形態は、包装された調製物であり、その包装には、小分け包装された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末等の異なる量の調製物を含有する。また、単位投与量の形態は、そのカプセル、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤であり、あるいは好適な数量の、これらの任意の包装形態であり得る。
【0184】
その他の適当な医薬担体及びそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995,E.W.Martin編,Mack Publishing Company, 第19版, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含む代表的医薬製剤を以下の実施例に記載する。
【0185】
本発明の化合物は、限定するものではないが、ヒト又はその他の哺乳動物における任意の疾患又は疾患状態の処置に対して有用であり、それは、かかる哺乳動物によるTNF又はp38キナーゼの産生を過剰にするか又は上方調節することにより悪化するか又は引き起こされる。したがって、本発明は、その必要を有する対象又は患者に対し、効果的な量の本発明の化合物又は薬学的に許容可能な塩、溶媒和物又はそのプロドラッグの投与を含む、p38に介在される疾患の処置方法を提供する。
【0186】
本発明の化合物は、限定するものではないが、対象における炎症の処置、及び発熱の処置における解熱剤としての用途に関して好適である。本発明の化合物は、限定されるものではないが、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、骨関節炎、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、骨関節炎、痛風性及びその他の症状を含む関節炎の処置に対して有用であろう。かかる化合物は、成人呼吸窮迫症候群、肺サルコイドーシス、喘息、珪肺症及び慢性肺炎症性疾患を含む肺疾患又は肺の炎症の処置に有用であろう。この化合物はまた、敗血症、敗血症ショック、グラム陰性敗血症、マラリア、髄膜炎、感染又は悪性腫瘍に対する2次的な悪液質、後天性免疫不全症候(AIDS)、AIDS、ARC(AIDS関連複合体)に対する2次的な悪液質、肺炎、及びヘルペスウィルスの処置を含むウィルス及びバクテリア感染の処置に関して有用である。この化合物はまた、骨粗しょう症、エンドトキシンショック、毒素性ショック症候群、再かん流傷害、宿主に対する移植片の反応等の自己免疫疾患及び同種移植の拒絶反応を含む骨吸収疾患、アテローム性動脈硬化症、血栓症、うっ血性心不全及び及び心臓再かん流傷害を含む循環器疾患、腎臓再かん流傷害、肝臓疾患及び腎炎、及び感染による筋肉痛の処置に関して有用である。
【0187】
この化合物は、アルツハイマー病、インフルエンザ、多発性硬化症、癌、糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚関連症状(例えば、乾癬、湿疹、やけど、皮膚炎、ケロイド形成、及び瘢痕組織形成)の処置に対しても有用である。さらに、本発明の化合物は、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候及び潰瘍性大腸炎等の消化管症状を処置するのに有用である。この化合物はまた、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、羞明等の眼科疾患、及び眼組織への急性損傷の処置においても有用である。この化合物はまた、新生組織形成を含む血管新生;転移;角膜移植拒絶、眼の新血管形成、外傷又は感染に続く新血管形成、糖尿病性網膜症、水晶体後線維増殖症及び血管新生緑内障を含む網膜新血管形成等の眼科疾患;胃潰瘍等の潰瘍性疾患;乳児性血管腫、鼻咽頭における血管線維腫及び骨の阻血性壊死を含む血管腫等の、悪性ではないが病的な状態;糖尿病性腎症、及び心筋症;並びに、子宮内膜症等の女性の生殖系の異常を処置する場合に使用することができる。この化合物はさらに、シクロオキシゲナーゼ−2の産生を抑制するために使用することができ、鎮痛作用を有する。したがって、式Iの化合物は痛みの処置に対して有用である。
【0188】
式Iの化合物のその他の用途としては、HCV、重篤な喘息、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、多発性骨髄腫、及び抗TNF化合物によって処置し得るその他の疾患の処置が挙げられる。
【0189】
ヒトの処置において有用であることに加えて、これらの化合物は、哺乳動物、げっ歯類等を含むペット、外来の動物及び家畜の獣医学的処置に対しても有用である。より好ましい動物としては、ウマ、イヌ及びネコが挙げられる。
【0190】
本化合物はまた、併用治療や、部分的に又は完全に、ステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、NSAID、DMARDS、免疫抑制剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、LTBアンタゴニスト及びLTA加水分解酵素阻害剤を伴って等、別の従来の抗炎症薬の代わりとして、使用され得る。
【0191】
本明細書中に使用する場合、用語「TNF介在性疾患」は、TNFそれ自体を調節することにより、又はTNFが、限定されるものではないがIL−I、IL−6又はIL−8等の放出される別の因子を引き起こすことのいずれかによってTNFが役割を果たす、任意の及び全ての疾病及び疾患状態をいう。その場合の疾患状態は、例えば、IL−1が主たる要素であり、その産生および作用がTNFに対する応答の中で増強され又は分泌されるものが、それゆえにTNFにより介在される疾患と考えられるだろう。
【0192】
本明細書中で使用する場合、用語「p38により介在される疾患」とは、p38それ自体を調節することにより、又はp38が、限定されるものではないがIL−1、IL−6又はIL−8等の放出される別の因子を誘導することのいずれかによってp38が役割を果たす、任意の及び全ての疾病及び疾患状態のことをいう。その場合の疾患状態は、例えば、IL−1が主たる要素であり、その産生および作用がp38に対する応答の中で増強され又は分泌されるものが、それゆえにp38により介在される疾患と考えられるだろう。
【0193】
TNF−βがTNF−α(カケクチンとしても知られる)との構造的類似性を有するため、各々は類似の生物学的応答を引き起こし、かつ同様の細胞受容体へと結合するため、TNF−α及びTNF−βのいずれの合成も本発明の化合物によって阻害され、従って、本明細書中では別途具体的に記載されない限り、集合的に「TNF」と称する。
【0194】
実施例
本発明を当業者がより明確に理解でき、実践できるように、以下の調製物及び実施例を示す。これらは説明およびそれらの例を示すにすぎず、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではない。
【0195】
特に指定しない限り、融点(すなわち、MP)を含む全ての温度は摂氏(℃)で示す。示された、及び/又は所望される生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された2つの試薬の組み合わせによって直接的に生じるとは限らないこと、すなわち、示された、及び/又は所望される生成物の配合物を最終的にもたらす混合物中には、製造される1以上の中間体が存在し得ることが理解される必要がある。
【0196】
実施例中では以下の略号を用いる場合がある:DCM:ジクロロメタン;DMF:N,N−ジメチルホルムアミド;DMAP:4−ジメチルアミノピリジン;EtOAc:酢酸エチル;EtOH:エタノール;gc:ガスクロマトグラフィー;HMPA:ヘキサメチルホスホラミド;hplc:高性能液体クロマトグラフィー;mCPBA:m−クロロ過安息香酸;MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;TEA:トリエチルアミン;THF:テトラヒドロフラン;LDA:リチウムジイソプロピルアミン;TLC:薄層クロマトグラフィー;min:分
【0197】
実施例1:3−(2−クロロ−5−メタンスルホニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
実施例1の合成手順をスキームBに概説する。
【0198】
【化8】

【0199】
ステップ1 5−ブロモ−2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン
水素化ナトリウム(35.0g、875mmol)を400mLの乾燥THFに対して加え、この混合物をアイスバス中で、攪拌しながら30分間冷却した。2,4−ジフルオロフェノール(84.0mL、879mmol)をこの攪拌中の混合物に75分間かけて滴下した。アイスバスを取り外し、5−ブロモ−2,4−ジクロロピリミジン(50.23g、220mL)を添加した。反応混合物を、攪拌しながら65℃まで3.5時間加熱し、室温へと冷却した。反応混合物を750mLのEtOAc及び400mLの水の間で分液した。有機溶媒相をMgSOにて乾燥させ、ろ過して減圧下で濃縮した。残渣を100mLの加熱EtOAc中に溶解し、300mLのヘキサンを添加した。混合物を室温に冷却し、次いで5℃で18時間冷蔵した。得られた結晶性の沈殿をろ過により回収し、冷ヘキサン/EtOAc(3:1)にて洗浄後、乾燥させて63.66g(70%)の5−ブロモ−2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジンを得た。MS(M+H)=416。
【0200】
ステップ2. [2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノン
乾燥THF中の5−ブロモ−2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン(3.83g、9.23mmol)に対し、0℃にて、イソプロピルマグネシウムクロリド(6.93mLの2.0MTHF溶液、13.85mmol)を添加した。得られた混合物を0℃にて20分間攪拌した。2−クロロ−5−メチルスルファニル−ベンゾイルクロリド(4.27g、19.33mmol)の20mL 乾燥THF溶液を、0℃にて、攪拌しながら、1時間かけて滴下した。反応混合物を水及び酢酸エチル中で分液し、有機溶媒相を分離して、飽和食塩水で洗浄し、MgSO4にて乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル(EtOAc/ヘキサン 5〜25%)を通過させてクロマトグラフィー分離し、3.015gの[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−エタノンを得た。MS(M+H)=521。
【0201】
ステップ3. 3−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノン(3.0g、5.76mmol)の10mLのジオキサン/EtOH(10:1)溶液に対し、ヒドラジン(0.19mL、5.76mmol)を添加した。得られた混合物を24時間還流加熱し、室温へと冷却した。混合物を水及び酢酸エチルの間で分液し、有機溶媒相を分離し、1NのHCl水溶液で2回洗浄し、飽和食塩水で1回洗浄してMgSOにて乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル(EtOAc/ヘキサン5−20%)を通してクロマトグラフィーに供して、180mgの3−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンを得た。MS(M+H)=405。
【0202】
ステップ4. 3−(2−クロロ−5−メタンスルホニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
3−(2−クロロ−5−メチルスルファニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(158mg、0.39mmol)の30mL THF及び10mL MeOH溶液に対して、mCPBA(219mgの77%固体)を添加した。反応混合物を室温にて16時間撹拌し、次いで水及び酢酸エチルの間で分液した。有機溶媒相を分離し、飽和NaHCO水溶液にて3回洗浄し、飽和食塩水で1回洗浄してMgSOにて乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル(EtOAc/ヘキサン20−50%)を通してクロマトグラフィーに供して、50.9mgの3−(2−クロロ−5−メタンスルホニル−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンを得た。mp.=251.6−252.20℃、MS(M+H)=437。
【0203】
上述の手順により製造されるさらなる化合物を表1中に示す。
【0204】
実施例2: 6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(5−メタンスルホニル−2−メチル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
実施例2の合成手順をスキームCに概説する。
【0205】
【化9】

【0206】
ステップ1. [2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノン
5−ブロモ−2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン(2.73g、6.587mmol)を20mLの乾燥THF中に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。イソプロピルマグネシウムクロリド(3.62mLの2.0M THF溶液)を滴下添加し、この溶液を0℃で30分間攪拌し、次いで−78℃に冷却した。3−メタンスルファニル−6−メチル−ベンズアルデヒド(1.1g、6.587mmol)の10mL 乾燥THF溶液を滴下添加し、反応混合物を1時間攪拌し、その間にこの反応混合物を室温へと加温させた。反応は1NのHClを添加することにより停止し、得られた溶液を水および酢酸エチルとの間で分液し、有機溶媒相を分離し、MgSOにより乾燥して、濾過し、減圧下で濃縮して2.15gの粗[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノールを得、さらなる精製を行うことなく、次のステップに用いた。
【0207】
ステップ2. [2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノン
[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノール(2.15g、4.281mmol)を、40mLの塩化メチレン中に、10.0gのMnOと共に溶解し、この反応混合物を16時間還流加熱した。反応混合物を冷却し、セライトを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を塩化メチレン/ヘキサンから結晶化して、1.816gの[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノンを得た。MS(M+H)=501。
【0208】
ステップ3. 6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−1H−ピラゾロ−[3,4−d]ピリミジン
実施例1のステップ2の手順を用い、[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−メタノン(1.816g、3.67mmol)を6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]−ピリミジン(0.59g、1.532mmol)へと変換した。MS(M+H)=385。
【0209】
ステップ4. 6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(5−メタンスルホニル−2−メチル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
実施例1のステップ3の手順を用い、6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(2−メチル−5−メチルスルファニル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(0.59g、1.532mmol)を350mgの6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−3−(5−メタンスルホニル−2−メチル−フェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンへと変換した。MP=133−135℃、MS(M+H)=417。
【0210】
上述の手順により製造されるさらなる化合物を表1中に示す。
【0211】
実施例3: 4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド
合成手順をスキームDに概説する。
【0212】
【化10】

【0213】
ステップ1 (5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノール
実施例2のステップ1の手順を用い、ただし3−メタンスルファニル−6−メチル−ベンズアルデヒドを3−ベンジルスルファニル−6−メチル−ベンズアルデヒドに置き換えて行い、5−ブロモ−2,4−ビス−(2,4−ジ−フルオロ−フェノキシ)−ピリミジン(2.0g、4.96mmol)を1.93gの(5−ベンジル−スルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノールへと変換した。
【0214】
ステップ2 (5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノン
実施例2のステップ2の手順を用い、(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノール(1.93g、3.22mmol)を、2.27gの(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノンへと変換した。MS(M+H)=598。
【0215】
ステップ3 3−(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン
実施例1のステップ2の手順を用い、(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−[2,4−ビス−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−ピリミジン−5−イル]−メタノン(2.27g、3.976mmol)を、0.47gの3−(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ−[3,4−d]ピリミジンへと変換した。MS(M+H)=482。
【0216】
ステップ4 4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼン−スルホニルクロリド
3−(5−ベンジルスルファニル−2−クロロ−フェニル)−6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]−ピリミジン(30mg、0.98mmol)、N−クロロスクシンイミド(38mg)、NaCl(57mg)、ギ酸(1mL)、水(1mL)を、塩化メチレン(2mL)へと添加し、得られた混合物を室温にて4時間攪拌した。反応を1NのNaHCOの添加により停止し、得られる混合物を水および酢酸エチルの間で分液した。有機相を分離し、飽和食塩水で1回洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過して減圧下で濃縮した。残渣を分取TLC(30%のEtOAc、ヘキサン溶液)により精製し、34mgの4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ−[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼンスルホニルクロリドを得た。
【0217】
ステップ5 4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド
4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼンスルホニルクロリド(34mg,0.735mmol)を、2M NHを含むMeOH(1mL)の溶液に添加し、反応混合物を20分間攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を分取TLC(40%EtOAc、ヘキサン中)によって精製することにより15mgの4−クロロ−3−[6−(2,4−ジフルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル]−ベンゼンスルホンアミドを得た。MS(M+H)=418.
【0218】
上述の手順により製造されるさらなる化合物を表1中に示す。
【0219】
実施例4:in vitroにおけるp38(MAP)キナーゼ
in vitroにおける本発明の化合物のp38MAPキナーゼ阻害活性を、Ahn,et al,J. Biol. Chem.266: 4220-4227(1991)に記載されている方法の小改変を用いて、p−38キナーゼによるγ−ホスフェートのγ−33P−ATPからミエリン塩基性タンパク質(MBP)への移送を測定することにより調べた。
リン酸化された形態の組み換えp38MAPキナーゼを、E.coli中でSEK−1及びMEKKと一緒に共発現させ(Khokhlatchev et al,J. Biol. Chem.272:11057-11062(1997)参照)、次に、ニッケルカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
リン酸化されたp38MAPキナーゼを、キナーゼバッファー(20mM 3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、pH7.2、25mM β−リン酸グリセロール、5mM エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸、1mM オルトバナジウム酸ナトリウム、1mM ジチオスレイトール、40mM 塩化マグネシウム)中で希釈した。DMSO中に溶解させた試験化合物又はDMSO単独(対照)を添加し、サンプルを10分間、30℃にてインキュベートした。MBP及びγ−33P−ATPを含む基質カクテルの添加によりキナーゼ反応を開始させた。さらに20分間、30℃にてインキュベートした後、0.75%のリン酸を添加することにより反応を停止させた。次に、リン酸化されたMBPを、ホスホセルロース膜(Millipore, Bedfrod, MA)を用いて残っているγ−33P−ATPから分離し、シンチレーションカウンター(Packard, Meriden, CT)を用いて定量した。
【0220】
上記手順を用いて、本発明の化合物がp38MAPキナーゼの阻害剤であることを見出した。例えば、2−[3−(2−クロロ−5−メタンスルホニル−フェニル)−6−(2,4−ジ−フルオロ−フェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−1,3−ジオールは、約0.002のp38 IC50(μM)を示した。
【0221】
実施例5:製剤
様々な経路により送達するための医薬調製物が、以下の表に示されるようにして製剤化される。表中で用いられている「活性成分」又は「活性化合物」とは、1つ以上の式Iで示される化合物を意味する。
【0222】
【表2】

【0223】
成分を混合し、各約100mgを含有するカプセル中へと調剤する;1カプセルが1日あたりの総投与量に近似するようにする。
【0224】
【表3】

【0225】
成分を合わせて、メタノール等の溶媒を用いて顆粒化する。この製剤を、次いで乾燥し、好適な打錠機を用いて錠剤(約20mgの活性化合物を含有)へと成型する。
【0226】
【表4】

【0227】
成分を混合し、経口投与のための懸濁液を調製する。
【0228】
【表5】

【0229】
活性成分を注射用水の一部に溶解する。次いで、十分な量の塩化ナトリウムを攪拌しながら添加し、溶液を等張にする。この溶液を、重量を合わせるために残りの注射用水と合わせ、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0230】
【表6】

【0231】
成分を共に溶解し、スチームバス上で混合し、総重量2.5gの型へと流し込む。
【0232】
【表7】

【0233】
水以外の全ての成分を混合し、撹拌しながら約60℃まで加熱する。次に、約60℃の十分量の水を力強く撹拌しながら添加して、成分をエマルジョン化し、次いで適量の約100gの水を添加する。
【0234】
鼻腔用スプレー製剤
約0.025〜0.5%の活性化合物を含有する複数の水性懸濁液を、鼻腔用スプレー製剤として調製する。この製剤は、場合により、例えば、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース等の不活性成分を含む。pHを調整するために塩酸を使用してもよい。鼻腔用スプレー製剤は、典型的には1駆動あたり約50〜100マイクロリットルの製剤を送達する鼻腔用スプレー定量ポンプを介して送達される。通常の投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回の噴霧である。
【0235】
本発明を具体的なその実施形態に関して記述してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することのない各種の変更がなされ、均等物が置換され得ることは当業者によって理解されるべきである。さらに、本発明の客観的な精神および範囲に対し、特定の条件、素材、配合、処理工程またはステップを適合させるための多くの改変がなされ得る。そのような全ての改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia又はIbで示される化合物又は薬学的に許容可能なその塩:
【化1】


(式中、nは、0〜4であり;
は、場合により置換されているフェニルであり;
は、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、−C(=O)−R、−CN、−S(O)、−NRC(=O)−R、−O−C(=O)−R又は−NRSOであり、
ここで、mは0〜2であり、
は、アルキル、ヘテロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ又はアルコキシであり、及び
は、水素又はアルキルであり;
は、水素又はアルキルであり;
は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、ヘテロアルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;
rは0〜4であり;
それぞれRは、独立して、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、シアノアルコキシ、アルケニルアルコキシ、アルキニルアルコキシ、ヒドロキシアルキルオキシ、ヒドロキシアルキルアルキニルアルコキシ、−(CHR−C(=O)−R、−(CHR−O−C(=O)−R、−(CHR−NH−C(=O)−R又は−SO−Rであり、
ここで、Rは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり;
は、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;及び
sは0〜4であり;
X及びYは窒素であるか、又はX及びYの一方が窒素であり、かつ、他方がCRであり;
ここで、Rは、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ハロアルキル、シアノ、ハロ、ヘテロアルキル、C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは水素又はアルキルであり;
D、E及びGのうちの1つ又は2つは窒素であるか、又はD、E及びGは炭素であり;
Wは、結合、O、S(O)、CH又はNRであり;
ここで、tは0〜2であり、及び
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシシクロアルキル、−C(=O)−R又は−SO−Rであって、ここで、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル又はヘテロシクリルであるか;又は
W及びRは一緒にシアノを形成するか;又は
及びRはそれらと結合する原子と一緒に複素環を形成し;
Aは、O、CH、S(O)、C(=O)、NR、又はCH(OR)であり、
ここで、uは0〜2であり、及び
は、水素又はアルキルである)。
【請求項2】
式IIで示される、請求項1記載の化合物:
【化2】


(式中、pは0〜4であり;
それぞれのRは、独立して、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ又はシアノであり;及び
m、n、W、R、R及びRは請求項2記載の通りである)。
【請求項3】
式IIIで示される、請求項2記載の化合物:
【化3】


(式中、W、R、R及びRが請求項2に規定される通りである)。
【請求項4】
薬学的に許容可能な賦形剤及び請求項1記載の化合物を含む組成物。
【請求項5】
患者に治療的有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、関節炎、クローン病、過敏性腸症候群、成人呼吸窮迫症候群、及び慢性閉塞性肺疾患から選択される、p38が介在する疾患を処置するための方法。
【請求項6】
ヒト又は動物の身体の処置において使用するための、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
特に、関節炎、クローン病、過敏性腸症候群、成人呼吸窮迫症候群及び慢性閉塞性肺疾患から選択される、p38が介在する疾患を処置するための医薬を製造するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1〜7に記載される発明。

【公表番号】特表2009−506007(P2009−506007A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527438(P2008−527438)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065330
【国際公開番号】WO2007/023111
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】