説明

siRNAの頭蓋内送達を通した神経変性疾患の治療

【課題】神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、2型、3型、及び/又は歯状核赤核を治療するための、有益な小干渉RNAベクター、及び方法の提供。
【解決手段】脳内の予め決定された注入部分に隣接してカテーテルの放出部分が位置するようにカテーテルを外科手術により植え付ける工程、及び少なくとも一つの神経変性疾患蛋白質の生産を阻害することができる少なくとも一つの物質を予め決定された投薬量、カテーテルの放出部分を通して放出させる工程を含む、神経変性疾患を治療するための装置。該装置により、小干渉RNAをコードするDNAの形態の小干渉RNAを脳の標的細胞へウイルスベクターを用いて直接送達する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
この発明は、小干渉RNA又は小干渉RNAをコードするDNAを含むベクターの脳内融合により神経変性疾患を治療するための、装置、システム及び方法に関する。
発明の背景
この発明は、神経変性疾患の発症及び進行を阻害するか又は阻止するために、脳内の標的化部位に小干渉RNAを送達するための、装置、システム及び方法を提供する。いくつかの神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、2型、及び3型、及び歯状核赤核(DRPLA)に関して、疾患の全体的な病理性進行に関与する蛋白質が同定された。これらの神経変性疾患に関する治療法は、現在ない。これらの疾患は、進行に伴い衰弱させて、ほとんどが結局は不治である。
【0002】
これらの神経変性疾患(特にアルツハイマー病及びパーキンソン病)の別の問題は、それらの罹患率が増加し続けることであり、即ち、重大な公衆衛生の問題を引き起こす。最近の研究は、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)、ベータ−アミロイド−分割酵素1(BACE1型(その変種、例えば変種A,B,C及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、及びアタキシン1(脊髄小脳失調症1型)をこれらの疾患各々のそれぞれ病因における主要な因子として示した。
【0003】
パーキンソン病及びアルツハイマー病における神経変性のプロセスは、シナプスの損傷及びアストログリオーシスを伴う選択された神経細胞集団の広範囲な損失により特徴付けされる。アルツハイマー病の病理学上の顕著な特徴は、アミロイドプラークの形成、神経繊維のもつれ、及びニューロピルの糸屑の形成を含み;パーキンソン病の病理学上の顕著な特徴は、レビー小体と呼ばれるニューロン内包含物の形成及び黒質中のドーパミン作動性ニューロンの損失を含む。細胞機能不全及び細胞死を導く機構は明らかになっていないが、有力な考察は、特定の神経細胞蛋白質、例えばアルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)及びアミロイド前駆体蛋白質(APP)(アルツハイマー病−BACE1(その変種、例えば変種A,B,C及びDを含む)によりベータ−アミロイドに加工される)の蓄積に続いて、毒性作用により神経分解がもたらされることである。
【0004】
アルファ−シヌクレインがパーキンソン病において影響を与えるのは、レビー小体の中にそれが豊富に見いだされるから、トランスジェニックマウスにおけるその過剰発現がパーキンソン病のような病理を導くから、そしてこの分子内での変異が家族性パーキンソン病に関連するからである。アルファ−シヌクレインは、β及びγ−シヌクレインを含む分子の大きなファミリーに属し、アミロイドプラーク中に見いだされる35アミノ酸の非アミロイド成分蛋白質の前駆体である140アミノ酸の非アミロイドのシナプス蛋白質である。
【0005】
アルツハイマー病は、知力の劣化(mental deterioration)、記憶喪失、錯乱、及び失見当により特徴付けされる脳の進行性変性疾患である。この病理に寄与する細胞機構のうちには、2種類の脳内繊維状蛋白質の堆積がある:重合されたtau蛋白質から構成される細胞内原繊維のもつれ(tangles)、及びβ−アミロイドを主として含む豊富な細胞外
繊維である。Aβとしても知られるβアミロイドは、β−及びγ−セクレターゼの分割部位におけるアミロイド前駆体蛋白質(APP)の蛋白質分解性プロセシングから生じ、Aβの主要な2つの形態(Aβ40及びAβ42)の細胞毒性及びアミロイド形成能力を生じさせる。即ち、アミロイドのプラーク生成形態へのAPPプロセシングを阻害することにより、上記の疾患の形成及び進行に決定的に影響して、BACE1(その変種、例えば
変種A,B,C及びDを含む)を、この疾患を阻害するか又は阻止するための臨床上の標的にするかもしれない。類似の報告は、プレセニリンが異常なプロセシングに向け直すための候補の標的であることを示唆する。
【0006】
ハンチントン病は、不随意の「弾道性(ballistic)」動作、機能低下、及び痴呆によ
り特徴付けされる、致命的な、遺伝性の神経変性疾患である。原因は、DNA中の過剰に長い一連のC,A,G,C,A,G,...C,A,Gヌクレオチドからなる単一遺伝子中の変異であることが立証された。CAGリピートは、遺伝子が生産する蛋白質をコードする遺伝子中の領域内である。即ち、結果のハンチンチン蛋白質も「伸び(expanded)」、「CAG」がコードするアミノ酸であるグルタミン酸から作られた過剰に長い領域を含む。この変異がハンチントン病の原因として位置付けされた直後に、他の遺伝子内での類似のCAGリピートの伸長が探索され、そして多数の他の致命的な遺伝性の神経変性疾患の原因であることがわかった。これらのいわゆる「ポリグルタミン」疾患のリストは、今、脊髄小脳失調症1型、2型、及び3型、球脊髄性筋委縮症(SBMA又はケネディー病)及び歯状核赤核(DRPLA)を含む、少なくとも11より多くを含む。伸長されたCAGリピートを含む特定の遺伝子は各疾患により異なるが、それは、各自を引き起こす脳内の伸長されたポリグルタミン蛋白質の生産である。兆候は、一般に、早くてミドルエイジの成人に出現し、結果として10から15年後に死ぬ。これらの致命的な疾患の有効な治療法は、現在存在しない。
【0007】
ニューロン中の異常な蛋白質の生産を遮断することがポリグルタミン疾患における治療になることを示唆するかなりの量の証拠がある。これらの疾患の原因は、変異蛋白質による新たな機能の獲得であって、蛋白質の本来の機能の損失ではないことが知られている。脊髄小脳失調症1型(SCA1)に関するヒトの伸長されたトランス遺伝子を有するマウスは、若い成体の間に重度の失調症になる(Clark,H.,et al.,Journal of Neuroscience 17:7385−7395(1997))が、相当するマウスの遺伝子をノックアウトしたマウスは失調症にならないか、又は他の主要な異常性を呈さない(Matilla,A.,et al.,Journal of Neuroscience 18:5508−5516(1998))。異常なアタキシン1蛋白質を生産するが、細胞核へ侵入することができないように遺伝子上操作されたSCA1に関するトランスジェニックマウスは、失調症を発症しない(Klement,I.,et al.,Cell 95:41−53(1998))。最後に、テトラサイクリンを投与することにより人工的に「ターンオフ」できるように、変異ヒトトランス遺伝子を操作した、ハンチントン病のトランスジェニックマウスモデルを作成した(通常、マウス及びヒトにおいては、この抗生物質の投与は疾患に効果がないはずであった)。これらのマウスが兆候を発症し始めた後に、テトラサイクリンの常習的な投与による異常な蛋白質の生産を遮断することで、それらの挙動における改善を導く(Yamamoto,A.,et al.,Cell 101:57−66(2000))。これは、ヒトにおける異常なハンチンチン蛋白質の発現を低下させることが、新たに診断された患者におけるハンチントン病の進行を妨害するかもしれないばかりか、その兆候を既に罹患している患者の生活の質を改善するかもしれないことを示唆する。
【0008】
様々なグループがsiRNAの効果を最近研究している。Caplenら(Human
Molecular Genetics,11(2):175−184(2002))は、異なるCAGリピートを含む様々な異なる二重鎖RNAを評価した。彼らの仕事は、CAGリピートの周囲の配列が二重鎖RNA中に存在した場合にのみ遺伝子特異的阻害が起こったことを発見した。彼らは、構築された二重鎖RNAが誘導されたカスパーゼ3の活性化を救済できたことも示した。Xia,Haibinら(Nature Biotechnology,20:1006−1010(2002))は、緑色蛍光蛋白質をコードするmRNAを標的化するsiRNAを発現する、構築された組換えアデノウイルスを
用いて、融合されたポリグルタミン−蛍光蛋白質を発現する、操作された神経のPC12クローン細胞系のポリグルタミン(CAG)発現の阻害を試験した。
【0009】
特定の蛋白質を生産するmRNA標的物に相補な小干渉RNAのデザインと使用は、特定のmRNAの翻訳を阻害するために分子生物学者により使用される最近の道具である。分子生物学者により使用される他の道具は、翻訳を干渉し、アルツハイマー病(WO01/16312A2を参照)及びパーキンソン病(WO99/50300A1及びWO01/60794A2を参照)の治療上の標的物に対してリボザイムを用いたmRNA配列の分割を含む。しかしながら、上記特許は何れも、神経変性疾患の局所治療が可能な様式にて脳の標的化細胞への小干渉RNAベクターの特別に局在化された送達のための方法を開示していない。上記の特許は、小干渉RNAベクター脳の脳への送達又は注入の送達装置の使用又は如何なる方法も開示していない。例えば、上記特許は、頭蓋内送達装置による脳への小干渉RNAベクターの送達又は注入の方法を開示も示唆もしていない。
【0010】
さらに、前記先行技術は、小干渉RNAベクターへの注入のための如何なる技術も開示していなければ、脳への注入に際して小干渉RNAベクターがニューロンに侵入して、神経変性疾患の病理に関与する少なくとも一つの蛋白質をの生産をあとで低下させることができる所望の小干渉RNAを生産できるのか否かについても先行技術は開示していない。
【0011】
この先行技術は、リボザイムの全身送達を記載する。神経変性疾患の治療のためのこのアプローチは、不可能であるか又は望まれていないらしい。第1に、RNAを干渉することは、リボザイムとは明らかに異なる。第2に、小RNA分子を全身に送達するのは、所望の標的に到達するのに十分にインビボにおいて長く生き残らないか、又はそれらが血液−脳のバリヤーを横切ることもないらしい。さらに、先行技術により採られたアプローチは、脳の中で有効な質を達成するためにこの方法により投与されなければならないかもしれない大量の小干渉RNAのため、実行不可能かもしれない。血液−脳バリヤーは特定の時期に開くときでさえ、血流により送達される大多数のオリゴヌクレオチドは、体内の他の器官系、特に肝臓へ失われるかもしれない。
【0012】
米国特許第5,735,814号及び第6,042,579号は、ハンチントン病の治療のための薬剤注入の使用を開示するが、これらの特許において特別に正体を明らかにされた薬剤は、ニューロンの切り出しのレベルを変更し得ることが可能な薬剤に属し、そして細胞に侵入して細胞内で蛋白質の生産を変更するように意図された薬剤を特別に同定はしない。
【0013】
本発明は、小干渉RNAをコードするDNAの形態の小干渉RNAを脳の標的細胞へウイルスベクターを用いて直接送達することによる核酸の全身送達に関する技術分野に存在する以前の問題を解決する。小干渉RNAベクターの、脳注入の影響される領域への直接送達は、送達に関連する以前の障害を克服する。さらに、ウイルスベクターの使用は、標的化された細胞への有効な侵入及び小干渉RNA薬剤の有効な短期間及び長期間の生産を、小干渉RNA自身の生産に細胞機構を向けさせることにより、可能にする。最後に、本発明は、活性な小干渉RNA薬剤を、攻撃性(offending)蛋白質のmRNAコーディン
グ配列内の特定の部位へ仕立てられることにより、唯一の標的化及び選択性のプロフィールを提供する。
発明の概要
本発明は、神経変性疾患の治療のために小干渉RNAを送達するための装置、システム及び方法を提供する。
【0014】
記載された治療法の第1の目的は、パーキンソン病の治療のための治療剤として特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。パーキンソン病のために特別に仕立て
られた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されたアルファ−シヌクレイン蛋白質の量を減少させるために、アルファ−シヌクレイン蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗アルファ−シヌクレインの小干渉RNAの送達のために黒質に特異的にアクセスする装置を提供する。
【0015】
記載された治療法の第2の目的は、アルツハイマー病の治療のための治療剤として特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。アルツハイマー病のために特別に仕立てられた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されたBACE1(その変種、例えば変種A,B,C及びDを含む)蛋白質の量を減少させて、それによりベータ−アミロイドの生産を干渉するために、BACE1(その変種、例えば変種A,B,C及びDを含む)蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗BACE1(その変種、例えば変種A,B,C及びDを含む)の小干渉RNAの送達のためにマイネルト基底核及び大脳皮質に特異的にアクセスする装置を提供する。
【0016】
記載された治療法の第3の目的は、ハンチントン病の治療のための治療剤として、特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。ハンチントン病のための特別に仕立てられた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されるハンチンチン蛋白質の量を低下させるために、ハンチンチン蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗ハンチンチン小干渉RNAの送達のための有尾の核及び果核(線条体として集合的には知られる)に特異的に接近する装置を提供する。
【0017】
記載された治療法の第4の目的は、脊髄小脳失調症1型(SCA1)の治療のための治療剤として、特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。脊髄小脳失調症1型(SCA1)のための特別に仕立てられた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されるアタキシン1蛋白質の量を低下させるために、アタキシン1蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗アタキシン1小干渉RNAの送達のための、小脳の歯状核、栓状核(eboliform nucleus)、球状核(globus nucleus)、及び室頂核(fastigial nucleus)(深部小脳核として集合的には知られる)に特異的に接近する装置を提供する。
【0018】
記載された治療法の第5の目的は、脊髄小脳失調症3型(SCA3)の治療のための治療剤として、特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。脊髄小脳失調症3型(SCA3)のための特別に仕立てられた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されるアタキシン1蛋白質の量を低下させるために、アタキシン3蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗アタキシン3小干渉RNAの送達のための、小脳の歯状核、栓状核、球状核、及び室頂核(深部小脳核として集合的には知られる)、視床下部領域及び黒質に特異的に接近する装置を提供する。
【0019】
記載された治療法の第6の目的は、歯状核赤核(DRPLA)の治療のための治療剤として、特別に仕立てられた小干渉RNAを送達することである。歯状核赤核(DRPLA)のための特別に仕立てられた小干渉RNAは、神経細胞内で生産されるアトロフィン1蛋白質の量を低下させるために、アトロフィン1蛋白質のmRNAを標的とする。関連する態様において、本発明は、抗DRPLA小干渉RNAの送達のための、小脳の歯状核、栓状核、球状核、及び室頂核(深部小脳核として集合的には知られる)、淡蒼球、及び赤核に特異的に接近する装置を提供する。
【0020】
本発明は、小干渉RNA又は小干渉RNAをコードするDNAを含むベクター(小干渉RNAベクター)の脳内の標的化部位への短期間又は長期間の患者の世話のための標的化送達を許容する、神経変性疾患の小干渉RNAベクター治療のための送達システムを提供する。
【0021】
本発明の主要な態様において、小干渉RNAベクターは脳の標的化部位へ注入されるが、その際、小干渉RNAベクターはニューロンにより受け取られて、標的化された細胞の核へ輸送される。小干渉RNAベクターは、次に、宿主細胞機構によりmRNAに転写されて、標的の神経変性蛋白質の生産を予防する小干渉RNAを生成する。
【0022】
本発明は、治療用の小干渉RNAベクターを脳の選択された領域に送達するための神経外科装置の使用法も提供する。特に、本発明は、小干渉RNAベクターの一回の送達、反復の送達、又は全身性送達のための外科的に植え付けられるカテーテルの使用方法を提供する。罹患した細胞へ導入された小干渉RNAベクターは、必要な干渉RNAの細胞による転写のため必要なDNA配列を有し、プロモーター配列、小干渉RNA配列、及び任意に、治療用小干渉RNAの規定された末端が生成されることを可能にするフランキング領域、及び任意に、ポリアデニル化シグナル配列を含む。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、当業界の2つの問題点:(1)病理的特性を有する蛋白質のニューロン内の生産により引き起こされる神経変性疾患を如何にして処置するかという問題点及び(2)治療用の小干渉RNAの、罹患したニューロンへの送達の問題点を同時に解決する。
用語
「アルファ−シヌクレイン、BACE1(様々な変種、例えば、変種A,B,C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロフィン−1蛋白質」は、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)、及びベータ−サイトAPP−分割酵素(BACE1(様々な変種、例えば、変種A,B,C及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、及びアタキシン−1(脊髄小脳失調症1型)、アタキシン−3(脊髄小脳失調症3型又はマシャード−ヨーゼフ病(Machado-Joseph's Disease))、及び/又は歯状核赤核(DRPLA)遺伝子及び/又はヒトゲノミックDNAの各々により発現され、及び/又はコードされるアミノ酸配列を含む、蛋白質又はその変異蛋白質を意味する。
【0023】
本明細書にて使用される「細胞」は、その有用な生物学のセンスにおいて使用され、全多細胞生物を意味しない。細胞は生物内に存在してよく、ヒトであってよいが、好ましくは哺乳類、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、無尾のサル(apes)、有尾のサル(monkeys)、
ブタ、イヌ、ネコ等を起源とする。しかしながら、小干渉RNAを生産するいくつかの工程は、原核細胞(例えば、細菌細胞)又は真核細胞(例えば、哺乳類細胞)の使用を必要としてよく、そしてそれにより用語「細胞」の中にも含まれる。
【0024】
「相補」は、一つ又は複数の核酸(DNA又はRNA)から構成される分子が、伝統のワトソン−クリック対合又は他の非伝統タイプの何れかにより、一つ又は複数の核酸から構成される別の分子と水素結合を形成できることを意味する。
【0025】
アルファ−シヌクレイン、BACE1(様々な変種、例えば、変種A,B,C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロフィン−1に対して「均等」なDNAは、アルファ−シヌクレイン、BACE1(様々な変種、例えば、変種A,B,C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロフィン−1蛋白質をコードするか又はヒト、齧歯類、霊長類、ウサギ、ブタ及び微生物を含む様々な生物においてアルファ−シヌクレイン、BACE1(様々な変種、例えば、変種A,B,C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロフィン−1と類似の機能を有する蛋白質をコードするDNAに相同性(部分的又は完全)を有する天然に生じるDNA分子を含むことを意味する。均等なDNA配列は、5’−の非翻訳領域、3’−非翻訳領域、イントロン、イントロン−エクソン接合部、小干渉RNA標的化部位等のような領域も含み、そして任意に感染性ウ
イルス、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)に取り込まれる。
【0026】
用語「機能上均等物」は、レファレンス配列又は蛋白質に機能上類似のあらゆる誘導体を意味する。特に、用語「機能上均等物」は、生物学上の機能に対して顕著な有害作用なしに、ヌクレオチド塩基が付加されるか、欠失するか、又は置換された誘導体を含む。
【0027】
「遺伝子」は、RNAの生産を制御するDNAの領域を意味する。機能的な小干渉RNAを生産するコンテクストにおいて、この定義は、小干渉RNA、非コード制御配列及びあらゆる含まれるイントロンをコードするDNA配列を包含する必要なDNA配列情報を含む。本定義は、蛋白質をコードする追加の遺伝子が小干渉RNAと対合するか又は直列になって機能するかもしれない可能性を排除しない。
【0028】
用語「ベクター」は、当業界において普通に知られており、プラスミドDNA、ファージDNA、ウイルスDNA等を規定し、本発明のDNAが挿入され得て、RNAが転写され得るDNA輸送手段として作用することができる。用語「ベクター」は、所望の核酸を送達するために使用されるこれらの核酸及び/又はウイルスに基づく技術の何れをも意味する。多数の種類のベクターが存在し、当業界で知られている。
【0029】
用語「発現」は、遺伝子がRNAに転写されるプロセスを意味する(転写);当該RNAはさらに成熟した小干渉RNAに加工されてよい。
用語「発現ベクター」は、上記のベクター又は輸送媒体を規定しするが、宿主においての形質転換の後の挿入配列の発現を可能にするようにデザインされる。クローン化された遺伝子(挿入配列)は、通常、プロモーター配列のような制御要素の制御下に配置される。そのような制御配列下でのクローン化遺伝子の配置は、しばしば、制御要素又は制御配列に作動可能に連結されると呼ばれる。
【0030】
「プロモーター」は、細胞内でRNAポリメラーゼに直接又は間接に結合して、下流の(3’方向)のコーディング配列の転写を開始することができるDNA制御領域を意味する。本発明の目的のためには、プロモーターが転写開始部位によりその3’末端にて結合し、そして上流(5’方向)を伸長することにより、バックグラウンドを超える検出可能なレベルにおいて転写を開始するのに必要な最少数の塩基又は要素を含む。プロモーター内には、転写開始部位(S1ヌクレアーゼによりマッピングすることにより便利に規定される)並びにRNAポリメラーゼの結合に必須の蛋白質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見いだされることになる。真核プロモーターは、常にではないが、しばしば、「TATA」ボックス及び「CCAT」ボックスを含む。原核プロモーターは−10及び−35コンセンサス配列を含み、転写を開始するのに作用する。
【0031】
「相同性」は、2つ又は複数の核酸分子のヌクレオチド配列が一部又は完全に同一であることを意味する。
「高度に保存された配列領域」は、標的遺伝子内の一つ又は複数の領域のヌクレオチド配列が、一つの世代から他方の世代へ、又は一つの生物系から他方の生物系へ、顕著に変化しないことを意味する。
【0032】
用語「阻害する」又は「阻害」は、標的遺伝子の活性又は標的遺伝子をコードするmRNA又は均等なRNAのレベルが、提供された小干渉RNAの不在下で観察されるのよりも下回って低下することを意味する。好ましくは、阻害が小干渉RNAの不在下におけるよりも、少なくとも10%低いか、25%低いか、50%低いか、又は75%低いか、85%低いか、又は95%低い。
【0033】
「阻害された発現」は、アルファ−シヌクレイン、BACE1(様々な変種、例えば、
変種A,B,C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/又はアトロフィン−1のmRNAのレベルの低下、即ち各々の蛋白質のレベルの疾患の兆候又は症状のある低度の緩和への低下を意味する。
【0034】
「RNA」は、リボ核酸、リン酸−リボース(糖)バックボーンにより連結したリボヌクレオチドからなる分子を意味する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボ−フラノースモイエティにおいてヒドロキシル基を有する、グアニン、シトシン、ウラシル、又はアデニンを意味する。当業界で知られるとおり、遺伝子コードは、DNA中の塩基としてチミジンを使用し、そしてRNA中ではウラシルを使用する。当業者は、核酸配列中でチミジンをウラシルにより如何にして置換することによりDNA配列をRNAに、又はその逆に変換することを知っている。
【0035】
「患者」は、外植された細胞又は細胞自体のドナー又はレシピエントである生物を意味する。「患者」は、発明の核酸分子が投与され得る生物を意味する。好ましくは、患者は、哺乳類又は哺乳類細胞、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、無尾のサル(apes)、有尾のサル(monkeys)、ブタ、イヌ、ネコ等であるか、又は移植のために使用されるこれらの動
物の細胞である。より好ましくは、患者はヒト又はヒト細胞である。
【0036】
用語「シヌクレイン」は、アルファ−シヌクレイン(特に、ヒト又はマウス)又はベータ−シヌクレイン(特にヒト又はマウス)を意味してよい。ヒトアルファ−シヌクレインをコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号AF163864(配列番号:7)にて利用可能である。ヒトアルファ−シヌクレイン配列の2つの変種が受け入れ番号NM000345(配列番号:14)及び受け入れ番号NM 007308(配列番号:23)にて利用可能である。マウスのアルファ−シヌクレインは受け入れ番号AF163865(配列番号:10)にて利用可能である。
【0037】
用語「BACE1」は、ベータサイトアミロイド前駆体蛋白質分解酵素タイプ1(特に、ヒト又はマウス)を意味してよい。BACE1の幾つかの変種が配列決定されており、変種A,B,C及びDを含む。幾つかの科学文献においては、BACE1はASP2及びメマプシン2としても知られている。ヒトBACE1及びそれに関連する変種をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM 138971(配列番号:20)、受け入れ番号NM 138972(配列番号:19)、受け入れ番号NM 138973(配列番号:21)及び受け入れ番号NM 012104(配列番号:18)として利用可能である。マウス相同体の配列は、受け入れ番号NM 011792(配列番号:22)として利用可能である。
【0038】
用語「ハンチンチン」は、ハンチントン病遺伝子(IT−15)によりコードされる蛋白質産物を意味してよい(特に、ヒト又はマウス)。ヒトIT−15をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号AH003045(配列番号:9)にて利用可能である。マウスの配列は、受け入れ番号U24233(配列番号:12)にて利用可能である。
【0039】
用語「アタキシンー1」は、脊髄小脳失調症1型遺伝子によりコードされる蛋白質産物を意味してよい(特に、ヒト又はマウス)。ヒトSCA1をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM 000332(配列番号:15)にて利用可能である。マウスのsca1は、受け入れ番号NM 009124(配列番号:13)にて利用可能である。
【0040】
用語「アタキシンー3」は、脊髄小脳失調症3型遺伝子によりコードされる蛋白質産物を意味してよい(特に、ヒト又はマウス)。ヒトSCA3をコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号NM 004993(スプライス変種1)(配列番号:16)及びN
M 030660(スプライス変種2)(配列番号:17)にて利用可能である。(マウスの相同体の配列は利用不可能である。)
用語「アトロフィンー1」は、歯状核赤核(DRPLA)遺伝子によりコードされる蛋白質産物を意味してよい(特に、ヒト又はマウス)。ヒトDRPLAをコードする全ヌクレオチド配列は、受け入れ番号XM 032588(配列番号:8)にて利用可能である。マウスの配列は、受け入れ番号XM 132846(配列番号:11)にて利用可能である。
【0041】
用語「修飾」は、レファレンス配列又はレファレンス蛋白質に実質上類似の誘導体を含む。
本明細書にて使用される「核酸分子」は、ヌクレオチドを有する分子を意味する。当該核酸は、一本鎖又は二本鎖又は複数鎖であることができ、そして修飾されたか又は修飾されていないヌクレオチド又は非ヌクレオチド又は様々な混合物及びそれらの組み合わせを含んでよい。本発明による核酸分子の例は、蛋白質の生産のためにコードするためのそのより一般的な手段を必ずしも有さないとしても、小干渉RNAをコードする遺伝子である。
【0042】
「小干渉RNA」は、基質結合領域内に特定の遺伝子標的への相補性を有し、且つ、標的RNAを分割するために宿主細胞内の酵素を特異的に導くように作用する核酸分子を意味する。即ち、RNA標的に対するその配列及びその相同性の特異性のために、小干渉RNAは、RNA鎖の分割を引き起こし、それによりもはや転写不可能になるために標的RNA分子を不活性化することができる。これらの相補性領域は、小干渉RNAの標的DNAへの十分なハイブリダイゼーションを可能にさせ、即ち、分割を許容させる。100パーセントの相補性が生物活性にはしばしば必要とされるため好まれるが、90%ほどの相補性も、この発明においては有用かもしれない。本出願において記載された特定の小干渉RNAは、限定を意味せず、当業者は、この発明の小干渉RNA内の重要な全てが一つ又は複数の標的核酸領域に相補な特定の基質結合部位をそれが有することであると認識する。
【0043】
小干渉RNAは、標的RNA(通常はメッセンジャーRNA)の一部に相補性を有する(か又は、と塩基対を形成できる)二本鎖RNA剤である。通常、そのような相補性は100%であるが、所望ならそれ未満であり得て、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。例えば、21塩基のうちの19塩基が対合してよい。幾つかの例においては、様々な対立遺伝子変種の間の選択が必要な場合、標的遺伝子に対して100%相補性が必要とされることにより、標的配列を他の対立遺伝子配列から有効に識別する。対立遺伝子標的間を選択する場合、長さの選択も重要であるが、何故ならば、それが、パーセント相補性及び対立遺伝子の相違の間を識別する可能性に関与する他の因子だからである。
【0044】
XXXX
小干渉RNA配列は、小干渉RNA及び標的RNAを、相補塩基対相互作用を通して一緒に導くのに十分な長さを必要とされる。発明の小干渉RNAは長さを変えてよい。小干渉RNAの長さは、好ましくは、10ヌクレオチドより長いか又は等しく、そして標的RNAと安定に相互作用するのに十分な長さであり;好ましくは15−30ヌクレオチド;より特定すれば15から30の何れかの整数のヌクレオチド、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30である。「十分な長さ」は、予測された条件下で意図された機能を提供するのに十分長い長さの、15ヌクレオチドより大きいか又は等しいオリゴヌクレオチドを意味する。「安定な相互作用」は、小干渉RNAと標的核酸の相互作用を意味する(例えば、生理条件下で標的中の相補ヌクレオチドと水素結合を形成することにより)。
【0045】
「含む(comprising)」は、限定ではないが、単語「comprising」に従う如何なるものも含むことを意味する。即ち、用語「含む(comprising)」の使用は、列挙された要素が必要であるか又は強制的かであるが、他の要素は任意であって存在してもしなくてもよいことを示す。
【0046】
「からなる(consisting of)」は、限定ではないが、単語「consisting of」に従う如何なるものも含むことを意味する。即ち、「からなる(consisting of)」なる句は、列
挙された要素が必要であるか又は強制的かであり、そして他の要素は存在しなくてよいことを示す。
【0047】
「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、当該句の後に列挙された如
何なる要素も含むことを意味し、そして列挙された要素に関する開示の中で特定された活性又は作用に干渉しないか又は寄与しない他の要素に限定される。即ち、「本質的にからなる(consisting essentially of)」なる句は、列挙された要素が必要であるか又は強
制的かであるが、そして他の要素は任意であって、それらが列挙された要素の活性又は作用に影響するか否かに依存して存在してもしなくてもよいことを示す。
【0048】
本発明は、疾患の原因となる蛋白質又は疾患を悪化させる蛋白質の発現を静まらせるようにデザインされて、一つ又は複数の植え付けられた柔組織内カテーテルを通して送達される小干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内送達により、ポリグルタミン疾患(例えば、ハンチントン病及び脊髄小脳失調症1型)、パーキンソン病、及びアルツハイマー病を治療するための手段及び道具を提供する。特に、本発明は、(1)ハンチンチン蛋白質の発現を静まらせるようにデザインされた小干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内送達によりハンチントン病を治療するための方法;(2)アタキシン1蛋白質の発現を静まらせるようにデザインされた小干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内送達により脊髄小脳失調症1型を治療するための方法;(3)アルファ−シヌクレイン蛋白質の発現を静まらせるようにデザインされた小干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内送達によりパーキンソン病を治療するための方法;及び(4)ベータ−アミロイド分割酵素1(BACE1)の発現を静まらせるようにデザインされた小干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内送達によりアルツハイマー病を治療するための方法である。
【0049】
前に示されたとおり、本明細書にて開示された小干渉RNA(又はsiRNA)は、15から30ヌクレオチドの長さの二重鎖RNAのセグメントである。RNA干渉として知られる細胞反応を導くために使用される。RNA干渉においては、二重鎖RNAをダイサー(Dicer)として知られる細胞内酵素により消化し、siRNA二重鎖を生じさせる。
当該siRNA二重鎖は別の細胞内酵素複合体に結合して、それにより、siRNA配列に相同(又は相補)な如何なるmRNA分子をも標的とするように活性化される。活性化された酵素複合体は標的となったmRNAを分割し、それを破壊して、その対応する蛋白質生産物の合成を指示するために使用されることを妨害する。いまだ完全には理解されていない手段によると、RNA干渉のプロセスは自己増幅であるらしい。最近の証拠は、RNA干渉が、ウイルス感染に対する防御のための古代からの先天的な機構のみならず(多くのウイルスが外来RNAを細胞に導入する)、極めて根本的なレベルでの遺伝子制御でもあることを示唆する。RNA干渉は、植物、昆虫、下等動物及び哺乳類において生じることがわかり、そして他の遺伝子沈静化技術、例えば、アンチセンス又はリボザイムよりも劇的に一層有効であることがわかった。バイオテクノロジーとして使用された場合に、siRNAは、侵入性二重鎖RNAウイルスからのダイサー酵素により生産されるはずのものに類似した、RNAの短い二重鎖分子を細胞内へ導入すること(又は細胞に生産させること)を含む。人工により導入されたRNA干渉プロセスは、次に、その点から継続する。
【0050】
小干渉RNAを患者の脳に送達するには、siRNA分子自体を脳の細胞に導入するよりもsiRNAをコードするDNAを導入することが好ましい方法になる。特定の治療用siRNAをコードするDNA配列は、(a)標的mRNAの小さくて接近可能な部分の配列(公的なヒトゲノムデータベースにおいて利用可能)、及び(b)DNAが細胞により転写されたときに対応するRNA配列の生産をもたらすことになるDNAを如何にして特定するかについてよく知られた科学のルールを知って、特定することができる。DNA配列が特定されたなら、実験室の供給者からオーダーされた合成分子から実験室において構築することができ、そしてDNAの細胞への送達のためのいくつかの択一の「ベクター」の一つへ、標準の分子生物学の方法を用いて挿入することができる。患者の脳のニューロンに送達されたなら、それらのニューロン自体が、治療用のsiRNAになるRNAを、挿入されたDNAのRNAへの転写により生産することになる。上記結果は、細胞自体が標的化遺伝子を静まらせることになるsiRNAを生産することになる。上記結果は、細胞により生産された標的化蛋白質の量の減少になる。
小干渉RNA及び小干渉RNAベクター
本発明によれば、冒された細胞により生産された特定のmRNAに対する小干渉RNAがニューロンないで疾患関連蛋白質の生産を妨害する。本発明によれば、小干渉RNAを標的化細胞に送達するようにデザインされた特別に仕立てられたベクターの使用である。デザインされた小干渉RNAの成功は、神経変性疾患を治療するための脳の標的化細胞へのそれらの好結果の送達に基づいて予測される。
【0051】
小干渉RNAはヒト細胞内で特定のmRNA分子を標的とすることが可能であることが示された。小干渉RNAベクターは、ヒト細胞をトランスフェクトして、標的RNAの分割を誘導してそれによりコードされる蛋白質の生産を中断させる小干渉RNAを生産するように構築することができる。
【0052】
本発明の小干渉RNAベクターは、神経性病原蛋白質の生産自体を抑圧するか、又は当該神経性病原蛋白質の生産又はプロセシングに関与する蛋白質の生産を抑圧することにより、病原性蛋白質の生産を妨害する。治療剤の患者への繰り返しの投与は、患者の生活の質を改善するために多数のニューロン内の変化を達成するために必要かもしれない。個々のニューロンにおいては、しかしながら、変化は、治療上の利益を提供するのに十分長年にわたる。神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、又は脊髄小脳失調症1型を罹患した多数の患者の絶望的な状況は、治療による利益が治療上の送達及び投与の危険の先を行く強い見込みを提供する。他の治療剤及び投与経路により神経病原性蛋白質の生産におけるいくらかの減少を達成することは可能かもしれないが、ニューロンのインビボトランスフェクションを指示することを含む好結果の治療法の開発は、小干渉RNAベクターの標的化細胞への送達に基づく最良のアプローチを提供するかもしれない。
【0053】
脳内のニューロンへの外来DNAの送達のための好ましいベクターは、アデノ随伴ウイルス、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス血清型2又は組換えアデノ随伴ウイルス血清型5である。あるいは、他のウイルスベクター、例えば、単純ヘルペスウイルスを、外来DNAの中枢神経系ニューロンへの送達のために使用してよい。非ウイルスベクター、例えばプラスミドDNAを単独又はリポソーム化合物又はポリエチレンアミンとの複合体にして使用することにより、外来DNAを脳内のニューロンに送達してよいということもあり得る。
【0054】
注目に値するのは、本明細書にて例示された抗アタキシン1小干渉RNA、並びに神経変性疾患を治療するための他の小干渉RNAが、本発明の態様のほんとうにしかしいくつかの例である。動物を用いた神経外科の手法を用いた実験は、神経科学において実施され
たものとして知られており、候補の小干渉RNAを同定するのに使用することができる。これらの経験的な方法により同定された標的の分割部位及び小干渉RNAは、主題の神経変性疾患に罹った患者に投与されたときに最大の治療効果を導くものである。
【0055】
本発明の核酸分子に関して、小干渉RNAは、実際の蛋白質コード配列内又は5’非翻訳領域あるいは3’非翻訳領域の何れかの中で、標的化蛋白質の生産をコードするmRNA配列内の相補配列を標的とする。ハイブリダイゼーション後に、宿主の酵素はmRNA配列の分割ができる。小干渉RNAが有効であるためには、完璧な相補性又は極めて高度な相補性が必要とされる。パーセント相補性は、第2の核酸配列と水素結合を形成することができる(例えば、ワトソンアンドクリック塩基対)核酸分子内の隣接する残基のパーセンテージを示す(例えば、10のうちの5、6、7、8、9、10は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%相補性である)。「完璧な相補性」は、核酸配列の全ての隣接する残基が第2の核酸配列の中の同じ数の隣接する残基と水素結合することを意味する。しかしながら、注目すべきは、siRNA内の単一のミスマッチ又は塩基置換が小干渉RNAの遺伝子沈黙化活性を実質上は低下させ得ることである。
【0056】
アルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロフィン−1のRNA内の特定された部位を標的とする小干渉RNAは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症3型、及び/又は歯状核赤核を細胞又は組織内で治療する新規な治療アプローチを表す。
【0057】
本発明の好ましい態様において、小干渉RNAは15から30ヌクレオチドの長さである。特定の態様において、当該核酸分子は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドの長さである。好ましい態様において、siRNA配列の長さは19から30塩基対であり得て、より好ましくは21から25塩基対であり、そしてより好ましくは21から23塩基対であり得る。
【0058】
好ましい態様において、発明は、所望の標的のRNAに関して高度の特異性を呈する核酸に基づく遺伝子阻害剤の一つのクラスを生産する方法を提供する。例えば、小干渉RNAは、好ましくは、疾患又は症状の特定の治療が発明の一つ又はいくつかの核酸分子により提供され得るように、アルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロフィン−1のRNAをコードする標的RNAの高度に保存された配列領域を標的とする。さらに、一般に、干渉RNA配列は一対のアデニン塩基(AA)で始まる標的配列内の領域を同定することにより選択される(実施例を参照)。siRNAは適切な転写酵素又は発現ベクターを用いてインビトロ又はインビボで構築することができる。
【0059】
siRNAはDNAオリゴヌクレオチドを用いてインビトロで構築することができ。これらのオリゴヌクレオチドは、サイレンサーsiRNAに含まれるT7プロモータープライマーの5’末端に相補な8塩基配列を含むように構築することができる(Ambion構築キット1620)。各々の遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、供給されたT7プロモータープライマーにアニールさせ、そしてクレノー断片によるフィルイン反応がRNAへの転写のための完全長DNA鋳型を生成する。2つのインビトロで転写されたRNA(一方が他方に対してアンチセンス)をインビトロ転写反応により生成し、次に、互いをハイブリダイズさせて二重鎖RNAを作成する。二重鎖RNA生成物をDNase(DNA転写鋳型を除去するため)及びRNase(二重鎖RNAの末端をポリッシュするため)で処理し、そしてカラムを精製することにより、細胞内で送達されて試験され得るsiR
NAを提供する。
【0060】
哺乳類細胞内でsiRNAを発現するsiRNAベクターの構築は、典型的に発現する、siRNAの構造を模倣する短いヘアピンRNAの発現を推進するようにRNAポリメラーゼIIIプロモーターを使用する。このヘアピンをコードする挿入物は、短いスペーサー配列により分断された2つのインバーテッドリピートを有するようにデザインされる。一つのインバーテッドリピートはsiRNAが標的とするmRNAに相補である。3’末端に添加された一列のチミジンは、ポリメラーゼIII転写停止部位として機能する。細胞内に入ったら、当該ベクターは構成的にヘアピンRNAを発現する。ヘアピンRNAは標的遺伝子の発現の沈黙化を誘導するsiRNAにプロセシングされ、これはRNA干渉(RNAi)と呼ばれる。
【0061】
これまでに記載されてきたほとんどのsiRNA発現ベクターにおいては、3つの異なるRNAポリメラーゼIII(polIII)のうちの一つが、小干渉siRNAの発現を推進させるのに使用される(1−5)。これらのプロモーターは、よく特性決定されたヒト及びマウスのU6プロモーター及びヒトのH1プロモーターを含む。RNApolIIIがsiRNA発現を推進するのに選択されたのは、それが哺乳類細胞において相対的に大量の小RNAを発現し、そしてそれが一列の3−6のウリジンを取り込んだ際に転写を終結するからである。
【0062】
構築された核酸分子は、必要とされるときに特定の組織又は細胞標的物に外因的に送達され得る。あるいは、核酸分子(例えば、小干渉RNA)は、特定の細胞に送達されるDNAプラスミド、DNAウイルスベクター、及び/又はRNAレトロウイルスベクターから発現され得る。
【0063】
標的とされた細胞又は組織に送達された小干渉RNA配列は、アルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロフィン−1の発現の核酸に基づく阻害剤(例えば、翻訳阻害剤)であり、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症3型、及び/又は歯状核赤核を含む神経変性疾患及び細胞又は組織内のアルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又は細胞又は組織内のアトロフィン−1のレベルに関連する他の症状、及びアルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロフィン−1のレベルに関連するあらゆるその他の疾患又は症状の予防に有用である。
【0064】
核酸に基づく発明の阻害剤は、直接添加されるか、又はカチオン脂質と複合体形成されるか、リポソーム内にパッケージされるか、ウイルスベクター内にパッケージされるか、又はさもなくば標的細胞又は組織に送達され得る。上記核酸又は核酸複合体は、関連の組織へ、エクスビボ又はインビボで注射、注入ポンプ又はステントを通して、バイオポリマーへのそれらの取り込みを伴うか又は伴わずに局所投与することができる。好ましい態様において、上記核酸阻害剤は十分な長さであり及び/又は配列番号:7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23にて特定されたそれらの相補な基質配列に安定に相互作用する配列を含む。そのような小干渉RNAの例は、アタキシン1に関しての配列番号に関して配列番号:1、2、3、4にも示される。
【0065】
別の側面において、発明は、この発明の核酸分子及び/又は発現ベクターを一つ又は複数含む哺乳類細胞を提供する。一つ又は複数の核酸分子は、個別に同じか又は異なる部位
を標的としてよい。
【0066】
発明の別の側面において、標的RNA分子と相互作用してアルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又は細胞又は組織内のアトロフィン−1のRNAの活性を阻害する小干渉RNAは、DNA又はRNAベクターに挿入される転写ユニットから発現される。当該組換えベクターは、好ましくは、DNAプラスミド又はウイルスベクターである。ウイルスベクターから発現された小干渉RNAは、限定ではないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、又はアデノウイルスのベクター配列を基にして構築できた。好ましくは、小干渉RNAを発現できる組換えベクターは、上記のとおりに送達され、そして標的細胞内に存在する。あるいは、ウイルスベクターは、小干渉RNAの一過性発現を提供するように使用してよい。そのようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与してよい。発現されたら、小干渉RNAは標的RNAに結合して、宿主の機構を使用することによりその発現及びそれによりその機能を阻害する。小干渉RNA発現ベクター、又は小干渉RNA自体の送達は、頭蓋内接近装置の使用による。
【0067】
本発明の核酸分子は、個々に、又は他の薬剤との組み合わせ又は他の薬剤と共に使用されることにより、上記の疾患又は症状を治療することができる。例えば、アルファ−シヌクレイン(パーキンソン病)、及びベータ部位APP−分割酵素(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、及びアタキシン−1(脊髄小脳失調症1型)に伴う疾患又は症状を治療するためには、当業者には明らかなとおり、個々に、又は治療に適した条件下で一つ又は複数の薬剤と組み合わせて、患者を治療するか、又は他の適切な細胞を処置してよい。
【0068】
さある態様において、記載された小干渉RNAは、上記の疾患又は症状を治療するために他の公知の治療法と組み合わせて使用することができる。
別の好ましい態様において、発明は、核酸に基づく阻害剤(例えば、小干渉RNA)及びパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症3型、及び歯状核赤核の進行及び/又は維持に関与する蛋白質をコードするRNA(例えば、アルファ−シヌクレイン、BACE1(例えば変種A,B,C,及びDのような変種を含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/又はアトロフィン−1)の発現をダウン制御するか又は阻害するための、それらの使用法を提供する。
【0069】
本発明は、公知の真核プロモーターから細胞内で発現することができる核酸分子も提供する(例えば、Izant and Weintraub,1985,Science,−229,345;McGarry and Lindquist,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 83,399;Scanlon et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,88,10591−5;Kashani−Sabet et al.,1992,Antisense Res.Dev.,2,3−15;Dropulic et al.,1992,J Virol.,66,1432−41;Weerasinghe et al.,1991,J
Virol.,65,5531−4;Ojwang et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,10802−6;Chen et al.,1992,Nucleic Acids Res.,20,4581−9;Sarver et al.,1990,247,1222−1225;Thompson et al.,1995,Nucleic Acids Res.,23,2259;Good et al.,1997,GeneTherapy,4,45;これらの文献の全ては引用によりそれらの全体が本明細書に編入される)。当業者は、あらゆる核酸が適切なDNA/RNAベクターから真核細胞内で発現できることを十分に理解する。そのような核酸の活性は、リボザイムによる主要な転写物からのそれらの放出により増加させるこ
とができる(Draper et al.,PCT WO93/23569,及びSullivan et al.,PCT WO94/02595;Ohkawa et al.,1992,Nucleic Acids Symp.Ser.,27,15−6;Taira et al.,1991,Nucleic Acids Res.,19,5125−30;Ventura et al.,1993,Nucleic Acids
Res.,21,3249−55;Chowira et al.,1994,J Biol.Chem.,269,25856;これらの文献の全ては引用によりそれらの全体が本明細書に編入される)。
【0070】
発明の別の側面において、本発明のRNA分子は、好ましくは、DNA又はRNAベクターに挿入された転写ユニット(例えば、Couture et al.,1996,TIG.,12,5 10を参照)から発現させる。組換えベクターは、好ましくは、DNAプラスミド又はウイルスベクターである。小干渉RNAを発現するウイルスベクターは、限定ではないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス又はアルファウイルスに基づいて構築することができた。
【0071】
好ましくは、核酸分子を発現できる組換えベクターは、上記のとおりに送達されて、標的細胞内で生存する。あるいは、ウイルスベクターは、核酸分子の一過性発現を提供するものを使用してよい。そのようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与されるかもしれない。発現されたら、核酸分子は、標的のmRNAに結合する。核酸分子発現ベクターの送達は、記載された頭蓋内接近装置による単一送達、複数送達、又は長期にわたる送達によることができる。
【0072】
一つの側面において、発明は、本発明の核酸分子の少なくとも一つの機能セグメントをコードする核酸配列を含む発現ベクターを特徴とする。本発明の核酸分子をコードする核酸配列は、その核酸分子の発現を許容する様式にて、作動可能なように連結される。
【0073】
別の側面において、発明は、a)転写開始領域(例えば、真核pol I,II,又はIIIの開始領域);b)本発明の核酸剤少なくとも一つをコードする核酸配列;及びc)転写終結領域(例えば、真核pol I,II,又はIIIの終結領域);を含む発現ベクターを特徴とし、但し、当該配列は上記核酸分子の発現及び/又は送達を許容する様式にて、上記開始領域及び終結領域に、作動可能なように連結される。
【0074】
核酸分子の配列の転写は、真核RNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II),又はRNAポリメラーゼIII(pol III)のプロモーターから推進され、当業界においては公知であり理解されている。これらの文献の全ては引用により本明細書に編入される。幾人かの研究者は、RNA分子がそのようなプロモーターから発現できて哺乳類細胞内で機能できることを証明した(例えば、Kashani−Sabet et al.,1992,Antisense Res.Dev.,2,3−15;Ojwang et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,10802−6;Chen et al.,1992,Nucleic Acids Res.,20,4581−9;Yu et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,6340−4;L’Huillier et al.,1992,EMBO J,11,4411−8;Lisziewicz et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,8000−4;Thompson et al.,1995,Nucleic Acids Res.,23,2259;Sullenger & Cech,1993,Science,262,1566)。より特定すれば、転写ユニット、例えばU6小核(snRNA)、転移RNA(tRNA)及びアデノウイルスVA RNAをコードする遺伝子由来のものは、細胞内で小干渉RNAのような所望のRNA分子を高濃度で生成する
のに有用である(Thompson et al.,前出;Couture and Stinchcomb,1996,前出;Noonberg et al.,1994,Nucleic Acids Res.,22,2830;Noonberg et al.,合衆国特許第5,624,803号;Good et al.,1997,Gene
Ther.,4,45;Beigelman et al.,国際PCT公開番号WO96118736;これらの文献の全ては引用によりそれらの全体が本明細書に編入される)。上記の小干渉RNA転写ユニットは、哺乳類細胞への導入のための様々なベクターに取り込むことができ、限定ではないが、プラスミドDNAベクター、、ウイルスDNAベクター(例えばアデノウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクター)、又はウイルスRNAベクター(例えば、レトロウイルス又はアルファウイルスベクター)を含む(総説として、Couture and Stinchcomb,1996,前記を参照)。
【0075】
脊髄小脳失調症1型なる疾患のための小干渉RNAに基づく治療を用いたアタキシン1のmRNAの減少のための標的化は、しかし、発明の一つの態様であることも重要である。他の態様は、ハンチントン病の治療のためのヒト脳の線条体(striatum)へ投与される抗ハンチンチン小干渉RNAの使用、及びパーキンソン病の治療のためのヒト脳の黒質へ投与される抗アルファ−シヌクレイン小干渉RNAの使用を含む。
【0076】
発明において治療剤として使用される小干渉RNAを構築するための例示の方法(即ち、DNA鋳型からのインビトロ転写及び二重鎖RNAへのアッセンブリー、又はアッセンブリー随伴ウイルス発現ベクターへのRNAのヘアピン構造をコードするDNAのクローン化)は、治療用の小干渉RNAを作成するためのたった2つの可能な手段を提供する。小干渉RNAを製造するための他の大規模で、より有効な方法を使用することにより、発明の本質を変えることなく、ヒト患者を治療するために使用される臨床グレード及び臨床も量を提供してよい。
【0077】
当業者は、レミントンズファーマシューティカルサイエンス(17版、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア、1985)及びグッドマンアンドギルマンズザファーマシューティカルベーシスオブセラピュティックス(第8版、パーガモンプレス、エルムスフォード、ニューヨーク、1990)のように広く知られた利用可能な源において論じられた原理及び手法に精通しており、どちらも引用により本明細書に編入される。
【0078】
本発明の好ましい態様において、siRNA剤又はその前駆体又は誘導体を含む組成物は、ヒト又は他の哺乳類への送達による投与のために適合された薬剤組成物として標準手法に従い製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は滅菌の等張の水性バッファー中の溶液である。
【0079】
必要な場合、上記組成物は、可溶化剤及び注射部位の如何なる痛みも改善するための局所麻酔剤を含んでもよい。一般に、上記成分はユニット投薬量にて別々か又は混合されて供給され、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はセーシェイ(sachette)のような密封シールされたコンテナ中の乾燥した凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物のようにである。組成物を注入により投与する場合、滅菌の医薬グレードの水又は塩水を含む注入ボトルを用いて投薬することができる。注射により組成物を投与する場合、注射物又は塩水のための滅菌水のアンプルを用意することにより、投与前に成分が混合される。
【0080】
静脈内投与以外の場合、組成物は、マイナーな量の湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤を含み得る。組成物は、流体溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ポリマー又は徐放製剤であり得る。組成物は、慣用の結合剤及び担体と共に製剤化でき、当業界で知られているはずである。製剤は、標準の担体、例えば医薬グレードのマニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウ
ム、等、医薬の製造においてよく確立された官能基を有する不活性な担体を含み得る。様々な送達システムが公知であり、リポソーム、ミクロ粒子、ミクロカプセル等の中に封入物を含む本発明の治療剤を投与するために使用できる。
【0081】
さらに別の好ましい態様において、小干渉RNA又はその前駆体又は誘導体を含む治療剤は、中性の形態又は塩の形態にて製剤化することができる。薬学上受容可能な塩は、遊離のアミノ基、例えば塩化水素酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸等由来のもの、及び遊離のカルボキシル基、例えばナトリウム、カリウム、アノモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン又は類似物由来のものにより形成されるものを含む。
【0082】
特定の疾患又は症状の治療において有効となる本発明の治療剤の量は、疾患又は症状の性質に依存し、そして治療剤の投与においてよく確立された標準の臨床技術により決定することができる。製剤に用いられる正確な投与量は、投与の経路及び疾患又は疾患の重度の判定に依存し、そして開業医の判定及び患者の要求に従い決定されるべきである。頭蓋内投与のための適切な投薬量の範囲は、一般に、マイクロリットルあたり約10から1015感染ユニットのウイルスベクターを1から3000マイクロリットルの単一の注射容量中に含んで送達される。マイクロリットルあたりのベクターの追加量の感染ユニットは、一般に、約10、50、100、200、500、1000、又は2000マイクロリットルにて送達されるウイルスベクターの約10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014感染ユニットを含むはずである。有効な投薬量は、インビトロ又はインビボ試験システム由来の投薬量応答性曲線から推定してよい。
【0083】
本発明の神経変性疾患のための小干渉RNAベクターの治療のためには、接近部分を有する複数のカテーテルを、完全治療のための所定の患者において植え付けることができる。好ましい態様において、大脳又は大脳半球辺り一つの部分及びカテーテルシステムが存在し、そしておそらくは数個である。植え付けが神経外科により実施されたなら、患者の神経科医は、時間をかけて治療効果を監視しながら、週から月の時間をかけて、小干渉RNA発現ベクターの繰り返しの丸薬注射からなる治療のコースを実施できる。上記装置は、フルコースの治療のために数カ月又は数年植え付けられたままであり得る。治療の効果を確認後に、接近部分を任意に取り外してよいかもしれず、カテーテルをシールするか又は捨てるか又はむしろ取り外すことができる。装置の材料は、磁気共鳴イメージングを干渉しないべきであり、もちろん、小干渉RNA調製物は、接近部分及びカテーテル材料及びあらゆる表面被覆と和合性であらなければならない。
【0084】
他に定義しない限り、本明細書にて使用される科学用語及び技術用語及び命名は、この発明の属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染の手法、分子生物学の方法等は、当業界において使用される一般の方法である。そのような標準の技術は、例えばサムブルックら(1989、モリキュラークローニング−コールドスプリングハーバーラボラトリーズ)及びアウスベルら(1994、カレントプロトコルインモリキュラーバイオロジー、ワイリー、ニューヨーク)に記載された参照マニュアルにおいて見いだすことができる。
【0085】
siRNA発現プラスミド及び/又はウイルスベクターの構築において使用されるポリメラーゼ鎖反応(PCR)は公知の技術に従い実施される。例えば、合衆国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;及び第4,965,188号を参照(3つの合衆国特許全ての開示を引用により本明細書に編入する)。通常、PCRは、ハイブリダイズする条件下での核酸サンプルの処理(例えば、熱安定DNAポリメラーゼの存在下)を含み、検出される特定の配列の各鎖に関して一つのオリゴヌ
クレオチドプライマーを用いる。合成された各プライマーの伸長産物は2つの核酸鎖の各鎖に相補であり、当該プライマーはハイブリダイズする特定の配列の各鎖に十分に相補である。各プライマーから合成された伸長産物は、同じプライマーを用いた伸長産物のさらなる合成のための鋳型としても機能し得る。伸長産物の合成の十分な数のラウンドの後に、サンプルを分析することにより、検出される一つ又は複数の配列が存在するか否かを評価する。増幅された配列の検出は、公知の技術等に従い、ゲル電気泳動後のEtBr染色の後の可視化によるか、又は検出可能な標識を用いて実施してよい。PCR技術に関する総説は、PCRプロトコル、A Guide to Methods and Amplifications,Michael et al.,編纂、アカデミックプレス、1990を参照。
装置
前に記載された小干渉RNAを用いることにより、本発明は、脳の標的位置への小干渉RNAの送達のための装置、システム、及び方法を提供する。送達の構想された経路は、局所の脳組織へ直接にAAV又は他のベクターを含む小容量の流体を注射するための手段を提供する、植え付けられた、内在の、柔組織内カテーテルの使用を通してである。これらのカテーテルの近位末端を、患者の頭蓋内に外科手術により固定された、植え付けられた大脳内の接近部分、又は患者の胴部内に位置する植え付けられた薬剤ポンプに、接続してよい。
【0086】
本発明の範囲内の送達装置の例はモデル8506建久装置を含み(ミネアポリスのメドトロニック社、ミネアポリス)、頭蓋上に皮下に植え付けることができ、そして治療剤を脳に送達する接近部分を提供する。送達は、定位に植え付けられたポリウレタンカテーテルを通して生じる。モデル8506を図4及び5に描写する。モデル8506と共に機能し得るカテーテルの2つのモデルは、引用により本明細書に編入される合衆国特許第6,093,180号に開示されている大脳内脳室への送達のためのメドトロニック社のモデル8770脳室カテーテル、及び引用により本明細書に編入される合衆国特許連続番号09/540,444及び09/625,751に開示されている脳組織自体への送達のためのメドトロニック社のIPA1カテーテルを含む。後者のカテーテルはその遠位末端上に複数の出口を有することにより、カテーテルの通路に沿って治療剤を複数の部位へ送達する。上記の装置に加えて、本発明による小干渉RNAベクターの送達は、様々な装置により達成することができ、限定ではないが、合衆国特許第5,735,814号、第5,814,014号、及び第6,042,579号を含み、全ては引用により本明細書に編入される。本発明の教示及び当業者の教示を用いて、これら及び他の装置及びシステムが本発明による神経変性疾患の治療のための小干渉RNAベクターの送達に適しているかもしれないことを認識する。
【0087】
好ましい態様において、上記方法は、さらに、脳の外部にポンプを植え付けるが、当該ポンプはカテーテルの近位末端につながれ、そして予め決定された投薬量の少なくとも一つの小干渉RNA又は小干渉RNAベクターをカテーテルの放出部分を通して送達するために上記ポンプを操作する工程を含む。さらなる態様は、少なくとも一つの小干渉RNA又は小干渉RNAベクターの、脳の外部のポンプへの供給を定期的に清新する工程をさらに含む。
【0088】
即ち、本発明は、合衆国特許第5,735,814号及び第6,042,579号に教示されたような植え付け可能なポンプ及びカテーテルを用いること、及びさらに合衆国特許第5,814,014号に教示されたような注入システムの一部としてセンサーを用いることによる、小干渉RNAベクターの送達を含む。他の装置及びシステムを本発明の方法により使用することができ、例えば、引用により本明細書に編入される合衆国特許連続番号09/872,698(2001年6月1日出願)及び09/864,646(2001年5月23日出願)に開示された装置及びシステムである。
【0089】
要約すると、本発明は、小干渉RNAベクターをヒト中枢神経系に送達するため、即ちニューロン内の病理蛋白質の生産を低下させることにより神経変性疾患を治療するための方法を提供する。
【0090】
本発明は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症1型、2型、及び3型を含む神経変性障害及び/又は疾患、及び/又は病理蛋白質の生産により引き起こされるか又は悪化させられるあらゆる神経変性疾患、又は変異蛋白質による新規の病理機能の獲得により引き起こされる他のあらゆる神経変性疾患のための治療法としての使用に向けられる。
実施例
実施例1:ヒトアタキシン1のmRNAを標的とする小干渉RNAの構築
発明の態様の一例として、我々は、ヒトアタキシン1のmRNAを標的とする小干渉RNAを作成した。この小干渉RNAは、細胞培養において、ヒト細胞内のヒトアタキシン1のmRNAの量を低下させる。脊髄小脳失調症1型(SCA1)の治療剤として、この同じ小干渉RNA又は類似の小干渉RNAは、植え付けられた接近部分及カテーテルを用いて、患者の脳の小脳の細胞に送達される。結果は、これらの細胞内のアタキシン1蛋白質の量の低下であり、それにより患者のSCA1疾患の進行を遅延させるか又は停止させる。
【0091】
ヒトアタキシン1に対する小干渉RNAは、ヒトアタキシン1のヌクレオチド配列から構築された。ヒトアタキシン1の配列はNCBIより提供される好適にアクセス可能なヌクレオチドデータベースから引き出され、NCBI受け入れ番号NM 000332(配列番号:15)として引き出すことができる。アタキシン1のヒトmRNA配列の一部が、小干渉RNA分割のための有力な部位であることが同定され、そしてMFOLD分析により一本鎖であるとも予測された。NCBI受け入れ番号NM 000332(配列番号:15)においては、抗アタキシン1のsiRNA標的物の3つの対が構築された:
1.945から965の部位におけるmRNA配列を標的とする抗−アタキシン1siRNA:
配列番号:1 5’−AACCAAGAGCGGAGCAACGAA −3’
配列番号:2 ’− GGTTCTCGCCTCGTTGCTTAA−
2.1671から1691の部位におけるmRNA配列を標的とする抗−アタキシン1siRNA:
配列番号:3 5’−AACCAAGAGCGGAGCAACGAA −3’
配列番号:4 ’− GGTTCTCGCCTCGTTGCTTAA−
3.2750から2770の部位におけるmRNA配列を標的とする抗−アタキシン1siRNA:
配列番号:5 5’−AACCAGTACGTCCACATTTCC −3’
配列番号:6 ’− GGTCATGCAGGTGTAAAGGAA−
一連の6デオキシオリゴヌクレオチドの断片がデザインされ、並べられ、そしてMWGバイオテック社のカスタムオリゴヌクレオチド合成サービスから購入されて、上記の3つの標的部位を構成する6つの断片を提供した。さらに、これらのオリゴヌクレオチドは、siRNA構築キット(アンビオン社、カタログ番号1620)に含まれるT7プロモータープライマーの5’末端に相補な8つの塩基配列を含むように構築した。各々の特定のオリゴヌクレオチドを供給されたT7プロモータープライマーにアニールさせ、クレノーでフィルインさせることによりRNAへの転写のための完全長のDNA鋳型を生成した。2つのインビトロ転写されたRNA(一方が他方に対してアンチセンス)をインビトロ転
写反応により生成し、次に互いにハイブリダイズさせることにより、二重鎖RNAを作成した。二重鎖RNA産物は、DNase(DNA転写鋳型を除去するため)及びRNase(二重鎖RNAの末端をポリッシュするため)で処理し、そしてカラムを精製することにより、細胞内で送達されて試験され得るsiRNAを提供した。
実施例2:ヒトアタキシン1のmRNAを標的とする小干渉RNAの送達
実施例1において記載された、構築されたsiRNA分子1−3をHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞により生産されたRNAを回収し、そしてアッセイすることにより、ヒトアタキシン1のmRNAの量を測定した。
【0092】
図1は、HEK293培養物からの全RNAのマイクログラムあたりのアタキシン1メッセンジャーRNA(mRNA)に関しての定量性逆転写ポリメラーゼ鎖反応(qRT−PCR)アッセイの結果を示す。4つの細胞集団をアッセイした。1つ目は、アタキシン1のmRNA発現に対して公知の関連性がない「ハウスキーピング遺伝子」GAPDHに対するsiRNAにより一時的にトランスフェクトされた293H細胞であった。(GAPDHに対するsiRNAはアンビオン社により、siRNAを作成及試験するかれらの市販のキットにおいて標準プロトコルとして供給された。)2つ目は、アタキシン1のmRNA配列内の1671位におけるアタキシン1のmRNAに対するsiRNAにより一時的にトランスフェクトされた293H細胞であった。3つ目は、アタキシン1日のmRNAに対するリボザイム(アタキシン1のmRNA配列中の1364位にてアタキシン1のmRNAを分割する)を含むプラスミドを一時的にトランスフェクトされた293H細胞であった。4つ目は、0945位のアタキシン1のmRNAに対するsiRNAを一時的にトランスフェクトされた293H細胞であった。トランスフェクションの48時間の時間点において、全ての細胞集団を全細胞RNAに関して同時に回収した。
【0093】
ゲルの描写に際しては、RT−PCR反応の増幅されたDNA産物を分子サイズによりゲル電気泳動を用いて分離し、そして強度の違うバンドとして可視化できる。記載された各細胞集団を一連の平行反応を用いてアッセイし、各ゲルの上部又は底部のレーンのセットとして示した。レーンの各セットはレーンあたり2つのバンドを含む。上部のバンドは、細胞mRNAから逆転写された内在DNAと競合させるために反応物に加えられた公知の量のDNAから増幅されたDNA産物である。所定のレーンの中のバンドが同じ強度ならば、オリジナルの細胞サンプル中の細胞mRNAの量が、反応チューブに加えられた公知の量のDNAの量と等しいと推定される。レーンを横切って左から右へ、加えられた公知DNA標準物の量が示されたピコグラムの量だけ低下する。上記アッセイは、バンドの強度が、DNA標準物に関してのもっとも明るいものからその下の細胞産物に関してのもっとも明るいものまで「クロスオーバーする」レーンのセットに関して検索することにより判断され、DNA標準物の量が今は細胞mRNAの量よりも低いことを示す。
【0094】
図1に示すゲルの上では、レーンの上部のセットが、アタキシン1のmRNAに対するリボザイムによりトランスフェクトされた細胞からである。この細胞サンプルからのバンドとDNA標準物からのバンドの比較は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNAの量が全細胞RNAのマイクログラムあたり.505から.303ピコグラムの間であることを示す。レーンの底部のセットは、0945位のアタキシンに対するsiRNAによりトランスフェクトされた細胞からである。これらのレーンの分析は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNAの量が全細胞RNAのマイクログラムあたり.303から.202ピコグラムの間であることを示す。
【0095】
図2に示すゲルの上では、レーンの上部のセットが、GAPDHに対する対照siRNAによりトランスフェクトされた細胞からである。これらのレーンの分析は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNAの量が全細胞RNAのマイクログラムあたり.711から.400ピコグラムの間であることを示す。最後に、レーンの底部のセットは、1671位のアタキシンに対する別のsiRNAによりトランスフェクトされた細胞からである。これらのレーンの分析は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNAの量が全細胞RNAのマイクログラムあたり.404から.303ピコグラムの間であることを示す。
【0096】
要約すると、この分析の結果は、
【0097】
【表1】

であった。
【0098】
これらのデータは、アタキシン1に対するAT1671とAT0945の両者がトランスフェクションの48時間以内にこれらの細胞中でアタキシン1のmRNAの量を低下させるのに有効であったこと、及び上記siRNAはアタキシン1のmRNAの低下に関して、この抗アタキシン1リボザイムよりも有効であったことを示す。
【0099】
発明において治療剤として使用される小干渉RNAを構築するための例示の方法(即ち、インビトロ転写及びハイブリダイゼーションを用いたオリゴヌクレオチドからアッセンブリー)は、治療用小干渉RNAを作成するための唯一の可能性のある手段である。小干渉RNAを製造するための他の大規模でより有効な方法を用いることにより、請求の範囲に記載されたように、発明の本質を変更することなく、又はこの発明の精神及び範囲から逸脱することなく、ヒト患者を治療するために使用される臨床グレード及び臨床量を生じさせてよい。
実施例3:小干渉RNAを用いたアタキシン1の発現の対立遺伝子特異的低下
ヘテロ接合体患者においては、単一ヌクレオチド多型(SNP)が変異体と正常な長さの対立遺伝子の間で異なったなら、適切なsiRNAが選択的に変異対立遺伝子のみの発現を低下させるかもしれない。我々は、SCA1開始コドンから+927下流の位置においてSNPに関して対立遺伝子特異的RT−PCRを用いて、293、DAOY,SK−N−SH,及び−ラ細胞を試験した(受け入れ番号NT 007592を参照)。ヒーラ細胞は927Cを発現するが927T対立遺伝子を発現せず、293細胞は927Tを発現するが927C対立遺伝子を発現しない。DAOY及びSK−N−SH細胞は療法の対立遺伝子バリアントを発現する。我々は、この部位を中心とする対立遺伝子特異的siRNAを創製した。これらのsiRNAバリアントによる内在SCA1のmRNAの対立遺伝子特異的抑圧に関するアッセイの結果が与えられる。
実施例4:小干渉RNAウイルスベクターの構築
選択可能なレポータープラスミドpAAV−U6−TracerをsiRNAをクローン化するために構築する。(図3を参照。)プラスミドpAAV−U6−Tracerは、アデノ随伴ウイルスのインバーテッドターミナルリピート(ITR)を含み、pSilencer(アンビオン)からのU6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターを周囲に含み、及びpTracer(インビトロジェン)由来のEF1aプロモーター,緑色蛍光蛋白質、Zeocin耐性、及びSV40ポリAを含む。siRNAを発現するためのオリゴヌクレオチドを、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターからの3’方向に下流の複数クローニング領域へクローン化する。
【0100】
HEK293細胞を、pAAV−siRNA、pHepler,及びpAAV−RCで同時トランスフェクトすることにより、ウイルス生産細胞を作成するが、pAAV−
とpHelperプラスミドは3つのプラスミドAAV生産システム(アヴィジェン社)の一部である。生産細胞293を培養により成長させ、そして組換えウイルスを単離するのに使用し、二次細胞:ヒーラ細胞、DAOY細胞、及びSK−N−SH細胞をトランスフェクトするのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、抗アタキシン1のリボザイム(図1の上部のレーン)mRNAを含むか又はアタキシン1に対するsiRNA(図1の底部レーン)を伴うプラスミドをトランスフェクトされたHEK293H細胞から得られたアタキシン1のmRNAのアッセイ(当業界公知の定量性RT−PCR法)を示す。
【図2】図2は、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)のmRNAを標的とする対照siRNAをトランスフェクトされたHEK293H細胞から得られたmRNAに比較した、抗−アタキシン1の小干渉RNA(底部レーン)をトランスフェクトされたHEK293H細胞から得られたアタキシン1のmRNAのアッセイ(当業界公知の同じ定量性RT−PCR法)を示す。
【図3】図3は、アデノ随伴ウイルス発現ベクターpAAV−siRNAの構築を示す。
【図4】図4は、研究装置(ミネアポリスのメドトロニック社による、MNモデル8506)を示し、頭蓋上に皮下により植え付けることが可能であり、治療剤が脳に送達されるアクセス部分を提供する。
【図5】図5は、研究装置(ミネアポリスのメドトロニック社による、MNモデル8506)を示し、頭蓋上に皮下により植え付けることが可能であり、治療剤が脳に送達されるアクセス部分を提供する。
【図6】図6は、本明細書にて記載された様々な神経変性疾患の関連、及びそれらの意図された標的化遺伝子産物に向けられた小干渉RNAベクターによる処置の位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を治療するための医療用システムであって、
a.頭蓋内接近装置;
b.脳内の予め決定された位置に局在化するためのマッピング手段;
c.送達可能な量の小干渉RNA又は小干渉RNAをコードするベクター;及び
d.小干渉RNA又は小干渉RNAをコードするベクターを頭蓋内接近装置から脳の上記の位置に送達するための送達手段
を含むシステム。
【請求項2】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項3】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項4】
神経変性疾患がハンチントン病である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項5】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症1型である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項6】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症2型である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項7】
神経変性疾患がマシャード−ヨーゼフ病としても知られる脊髄小脳失調症3型である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項8】
神経変性疾患がDRPLAとしても知られる歯状核赤核である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項9】
頭蓋内接近装置が頭蓋内カテーテルである、請求項1記載の医療用システム。
【請求項10】
頭蓋内接近装置が頭蓋内接近部分である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項11】
予め決定された位置が黒質である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項12】
予め決定された位置がマイネルト基底核又は大脳皮質である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項13】
予め決定された位置が尾状核、被殻、又は線条体である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項14】
予め決定された位置が小脳の歯状核、栓状核、球状核、室頂核(集合的には深部小脳核)、又は大脳皮質である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項15】
予め決定された位置が視床下核である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項16】
小干渉RNAがアルファ−シヌクレインのmRNAに相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項17】
小干渉RNAがベータアミロイド分割酵素1型、又はBACE1のmRNAに相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項18】
小干渉RNAがハンチンチン蛋白質のコードを含むIT15遺伝子からのmRNA転写物
に相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項19】
小干渉RNAがアタキシン1のコードを含むSCA1遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項20】
小干渉RNAがアタキシン2のコードを含むSCA2遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項21】
小干渉RNAがマシャード−ヨーゼフ蛋白質としても知られるアタキシン3のコードを含むSCA3遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項22】
小干渉RNAがアトロフィン1蛋白質のコードを含むDRPLA遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項23】
小干渉RNAが配列番号:1−44のいずれか一つを実質上提供する、請求項1記載の医療用システム。
【請求項24】
送達手段が外部シリンジから頭蓋内接近部分への注射である、請求項1記載の医療用システム。
【請求項25】
送達手段が注入ポンプである、請求項1記載の医療用システム。
【請求項26】
注入ポンプが電気機械ポンプである、請求項25記載の医療用システム。
【請求項27】
注入ポンプが浸透圧ポンプである、請求項1記載の医療用システム。
【請求項28】
神経変性疾患を治療する方法であって、ニューロン中の蛋白質の発現又は生産を変調することからなり、当該蛋白質の発現又は生産を低下させる薬学上受容可能な担体中の小干渉RNAの頭蓋内送達による上記方法。
【請求項29】
脳内の位置に小干渉RNAを送達するための方法であって、
a.頭蓋内接近装置を外科手術により植え付け;そして
b.小干渉RNA及び/又は小干渉RNAをコードするベクターを脳内の予め決定された部位に注入する
工程を含む方法。
【請求項30】
脳内の位置に小干渉RNAを送達するための方法であって、
a.頭蓋内接近装置を外科手術により植え付け;そして
b.小干渉RNA及び/又は小干渉RNAをコードするベクターを脳内の予め決定された部位に注入するが、但し、神経変性疾患の少なくとも一つの特性を低下させるか又はその進行を遅くするか又は停止させる
工程を含む方法。
【請求項31】
神経変性疾患が診断された後にカテーテルを実施する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
神経変性疾患が診断された後及び神経変性疾患の兆候が出現する前にカテーテルを植え付ける工程を実施する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
神経変性疾患が診断された後及び神経変性疾患の兆候が出現した後にカテーテルを植え付ける工程を実施する、請求項31記載の方法。
【請求項34】
頭蓋内接近送達装置が頭蓋内カテーテルの近位末端につながれた頭蓋内接近部分である、請求項29、30又は31記載の方法。
【請求項35】
脳の外部にポンプを植え付ける工程をさらに含み、但し、当該ポンプは頭蓋内カテーテルの近位末端につながれた、請求項29、30又は31記載の方法。
【請求項36】
予め決定された投薬量の小干渉RNA又は小干渉RNAをコードするベクターをポンプから頭蓋内カテーテルの放出部分を通して送達するようにポンプを操作する工程を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一つの物質によりポンプを定期的に清新する工程をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
ポンプが注入ポンプである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
注入ポンプが電気機械ポンプである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
注入ポンプが浸透圧ポンプである、請求項38記載の方法。
【請求項41】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項42】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項43】
神経変性疾患がハンチントン病である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項44】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症1型である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項45】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症2型である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項46】
神経変性疾患がマシャード−ヨーゼフ病としても知られる脊髄小脳失調症3型である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項47】
神経変性疾患がDRPLAとしても知られる歯状核赤核である、請求項28又は30記載の方法。
【請求項48】
予め決定された位置が黒質である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項49】
予め決定された位置がマイネルト基底核又は大脳皮質である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項50】
予め決定された位置が尾状核、被殻、又は線条体である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項51】
予め決定された位置が小脳の歯状核、栓状核、球状核、室頂核(集合的には深部小脳核)、又は大脳皮質である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項52】
予め決定された位置が視床下核である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項53】
小干渉RNAがアルファ−シヌクレインのmRNAに相補である、請求項28、29又は
30記載の方法。
【請求項54】
小干渉RNAがベータアミロイド分割酵素1型、又はBACE1のmRNAに相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項55】
小干渉RNAがハンチンチン蛋白質のコードを含むIT15遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項56】
小干渉RNAがアタキシン1のコードを含むSCA1遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項57】
小干渉RNAがアタキシン2のコードを含むSCA2遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項58】
小干渉RNAがマシャード−ヨーゼフ蛋白質としても知られるアタキシン3のコードを含むSCA3遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項59】
小干渉RNAがアトロフィン1蛋白質のコードを含むDRPLA遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項60】
小干渉RNAが送達ベクターにより送達される、請求項28、29又は30記載の方法。
【請求項61】
送達ベクターがアデノ随伴ウイルス又はAAVである、請求項60記載の方法。
【請求項62】
送達ベクターがアデノウイルスである、請求項60記載の方法。
【請求項63】
送達ベクターが単純ヘルペスウイルス又はHSVである、請求項60記載の方法。
【請求項64】
送達ベクターがレンチウイルスである、請求項60記載の方法。
【請求項65】
送達ベクターがDNAプラスミドである、請求項60記載の方法。
【請求項66】
DNAプラスミドがリポソーム化合物と複合している、請求項65記載の方法。
【請求項67】
DNAプラスミドがポリエチルアミン(PEI)と複合している、請求項65記載の方法。
【請求項68】
配列番号:1−4による配列、又はその部分配列、又は神経変性疾患に付随する蛋白質をコードするRNAの相補鎖にハイブリダイズ可能な塩基配列を含む小干渉RNA。
【請求項69】
神経変性疾患に付随する蛋白質ををコードするRNA配列にハイブリダイズ可能なRNA配列を含むことにより上記蛋白質をコードするRNA配列の分割を引き起こす、小干渉RNA。
【請求項70】
神経変性疾患に付随する蛋白質ををコードするRNA配列にハイブリダイズ可能なRNA配列をコードするDNA配列を含むことにより上記蛋白質をコードするRNA配列の分割を引き起こす、小干渉RNA。
【請求項71】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項72】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項73】
神経変性疾患がハンチントン病である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項74】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症1型である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項75】
神経変性疾患が脊髄小脳失調症2型である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA医療用システム。
【請求項76】
神経変性疾患がマシャード−ヨーゼフ病としても知られる脊髄小脳失調症3型である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項77】
神経変性疾患がDRPLAとしても知られる歯状核赤核である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項78】
小干渉RNAがアルファ−シヌクレインのmRNAに相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項79】
小干渉RNAがベータアミロイド分割酵素1型、又はBACE1のmRNAに相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項80】
小干渉RNAがハンチンチン蛋白質のコードを含むIT15遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項81】
小干渉RNAがアタキシン1のコードを含むSCA1遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項82】
小干渉RNAがアタキシン2のコードを含むSCA2遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項83】
小干渉RNAがマシャード−ヨーゼフ蛋白質としても知られるアタキシン3のコードを含むSCA3遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。
【請求項84】
小干渉RNAがアトロフィン1蛋白質のコードを含むDRPLA遺伝子からのmRNA転写物に相補である、請求項68、69又は70記載の小干渉RNA。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−6938(P2012−6938A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162422(P2011−162422)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2005−510322(P2005−510322)の分割
【原出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(507020152)メドトロニック,インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】