硫黄固化体製品の補修方法
【課題】溶融状態の硫黄含有資材を補修材料として要補修箇所に流し込んで荒仕上げした後、該補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げする硫黄固化体製品の補修方法を提供する。
【解決手段】硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行うものである。
【解決手段】硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行うものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法に関し、詳しくは、溶融状態の硫黄含有資材を補修材料として要補修箇所に流し込んで荒仕上げした後、該補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げする硫黄固化体製品の補修方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却硬化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)製品を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を充填して冷却硬化させていた。
【0005】
従来の硫黄固化体製品においては、所定の形状をした型枠内に溶融状態の硫黄含有資材を充填して冷却硬化させた後に上記型枠を外すと、冷却硬化した硫黄固化体と型枠部材との間に溜まった空気により、硫黄固化体製品の表面に空洞ができたり、陥没した状態が現れることがあった。この場合は、硫黄固化体製品の仕上がりがきれいではなく製品価値が劣ることがあった。或いは、既に設置済みの硫黄固化体製品にひび割れ又は欠損等の不良箇所が発生することがあった。
【0006】
このような場合、上記硫黄固化体製品の表面の空洞や陥没箇所、又は既設の硫黄固化体製品の不良箇所を補修する必要がある。従来、このような硫黄固化体製品を補修するには、加熱溶融させた後、凝固させることにより物理的性質を回復する自己修復可能なコンクリート(例えば、硫黄と骨材とを含む硫黄硬化型セメント組成物からなる)を加熱溶融させる加熱溶融工程と、前記加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを成形する成形工程とを行う構造物の補修方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005− 82475号公報
【特許文献3】特開2005−306701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3に記載された構造物の補修方法においては、加熱溶融工程において加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを所望の形状に整え、凝固させることにより成形するものであり、成形工程としては型枠を用いて成形したり、単に表面の形状を整えることにより成形しているだけであって、硫黄固化体製品の表面の空洞や陥没箇所等を十分に補修できるとは言えない。例えば、型枠を用いて成形する際に、その型枠内に加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを充填すると、その部分に新たに空洞や陥没箇所ができることがある。また、表面の形状を整えることにより成形する際に、例えばグラインダー等で自己修復可能なコンクリートを研削すると、高速回転する砥石との摩擦熱で上記自己修復可能なコンクリートが溶けてしまい、所望の形状に整えることができないことがある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、溶融状態の硫黄含有資材を補修材料として要補修箇所に流し込んで荒仕上げした後、該補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げする硫黄固化体製品の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による硫黄固化体製品の補修方法は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融する工程と、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込む工程と、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させる硬化工程と、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りする荒仕上げ工程と、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りする最終仕上げ工程と、を行うものである。
【0011】
このような方法により、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行う。
【0012】
また、上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均す均し工程を行ってもよい。これにより、上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均しを行う。
【0013】
さらに、上記荒仕上げ工程は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取るものである。これにより、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取ることで、荒仕上げを行う。
【0014】
さらにまた、上記荒仕上げ工程は、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削するものとしてもよい。これにより、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削することで、荒仕上げを行う。
【0015】
また、上記最終仕上げ工程は、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削するものである。これにより、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削することで、最終仕上げを行う。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行うことができる。したがって、最終仕上げにおいて、例えばグラインダー等で補修部分の補修材料を研削しても該補修材料が溶けないようにして、硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を所望の形状に整えて補修することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、溶融状態の補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均すことができる。したがって、上記補修材料を要補修箇所の隅々まで行き渡らせて補修することができる。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明によれば、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取ることで、荒仕上げを行うことができる。したがって、加熱された金属製ヘラを補修部分の補修材料に当てることで、その周囲の硫黄固化体製品を溶かすことなく、補修部分の補修材料だけを再溶融して要補修箇所を補修することができる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、グラインダーを補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削することで、荒仕上げを行うことができる。したがって、高速回転する目の粗い砥石で補修部分の補修材料を荒削りすることで、短時間で荒仕上げを行うことができる。
【0020】
また、請求項5に係る発明によれば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削することで、最終仕上げを行うことができる。したがって、高速回転する砥石で補修部分の補修材料を仕上げ削りすることで、短時間で最終仕上げを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8は、本発明による硫黄固化体製品の補修方法の工程を示す説明図である。この硫黄固化体製品の補修方法は、硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修するものである。
【0022】
まず、図1において、硫黄固化体製品1の表面に現れた空洞又は陥没箇所等の要補修箇所2を確認する。そして、上記要補修箇所2に補修材料を流し込んで補修するための準備として、刷毛3などを用いてその要補修箇所2内を掃除して、塵埃等を除去する。
【0023】
次に、図2に示すように、金属製の適宜の容器4内に、硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体5を入れて電気ヒータ又はガスヒータ等により加熱し、該硫黄固化体5を補修材料として硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融する(溶融工程)。
【0024】
ここで、上記硫黄含有資材について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0025】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは120〜150℃の温度で行われる。
【0026】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば150℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0027】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0028】
以下の説明では、このような硫黄固化体又は改質硫黄固化体を設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して、溶融状態の硫黄含有資材として用いる。
【0029】
次に、図2に示す溶融工程で溶かされて溶融状態の硫黄含有資材を補修材料6として、図3に示すように、硫黄固化体製品1の要補修箇所2に流し込む(流し込み工程)。
【0030】
この状態で、図4に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して均しを行ってもよい(均し工程)。この場合、例えば温風ヒータ7を用いて、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6の上方又は周囲から、上記設定温度範囲内に加熱された温風を吹きかけて溶融状態を維持し、補修材料6を均せばよい。これにより、上記要補修箇所2が複雑な凹部形状を有する場合でも、補修材料6を要補修箇所2の隅々まで行き渡らせることができる。上記温風ヒータ7の具体例としては、設定温度350℃程度の温風を、作業者が狙った方向に向けて噴出できるホットエアーガンと呼ばれるものがある。なお、この均し工程は、要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が、その要補修箇所2の隅々まで行き渡る可能性がある場合は行わなくてもよい。
【0031】
その後、図5に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を徐冷硬化させる(硬化工程)。すなわち、硫黄固化体製品1の要補修箇所2に補修材料6を流し込んだ状態で常温の雰囲気中に放置して、上記補修材料6を徐々に冷却して硬化させる。これにより、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が固化して硫黄固化体製品1と一体化する。
【0032】
次に、図6に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6が硬化した補修部分について該補修材料6を荒削りして荒仕上げする(荒仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱された金属製ヘラ8を上記補修部分の補修材料6に当てて再溶融し、上記金属製ヘラ8で該補修材料6を均したり、削り取ったりすればよい。具体的には、前述の温風ヒータ7(例えばホットエアーガン)を用いて、その温風ヒータ7から噴出される温風を金属製ヘラ8に吹きかけて上記設定温度範囲内に加熱し、この加熱された金属製ヘラ8を上記補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6のみを再溶融する。そして、図6(a)に示すように、上記金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に押し当て、再溶融された補修材料6にアイロンをかけるようにして該補修材料6を均して荒仕上げする。或いは、図6(b)に示すように、上記金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に当て、再溶融された補修材料6の余計な部分を削り取って荒仕上げする。
【0033】
この場合、上記加熱された金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に当てることで、その周囲の硫黄固化体製品1を溶かすことなく、補修部分の補修材料6だけを再溶融して要補修箇所2を補修することができる。
【0034】
次に、図7に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6について荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りして最終仕上げする(最終仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料6にグラインダー9を当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、エアーサンダーと呼ばれる圧縮空気駆動式のグラインダー9に、エアージェットと呼ばれる冷却装置10を装着し、該冷却装置10に接続されたエアホース11から圧縮空気を供給して上記冷却装置10を作動させると共に、その圧縮空気でグラインダー9の砥石12を高速回転させて、この砥石12で上記要補修箇所2の補修材料6を研削して最終仕上げする。
【0035】
ここで、上記冷却装置10としてのエアージェットは、パイプ内の旋回気流の中心温度は周辺部より低いという「渦動理論」を応用したもので、ボルテックスチューブとも呼ばれ、噴出される冷却空気は外気よりも最大31℃程度低くなると言われている。したがって、上記冷却装置10から噴出される冷却空気で駆動されるグラインダー9の砥石12は外気よりも冷却され、当然硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却される。これにより、最終仕上げにおいて、グラインダー9で補修部分の補修材料6を研削しても該補修材料6が溶けないようにして、硫黄固化体製品1の表面の要補修箇所2を所望の形状に整えて補修することができる。
【0036】
なお、この最終仕上げ工程は、図7に示すものに限られず、前記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りすることができるならば、どのような方法で行ってもよい。例えば、グラインダー9とは別個のエアダクトによって要補修箇所2の補修材料6に向けて直接冷却空気を供給し、上記補修材料6を硫黄の融点未満の温度に冷却しながらグラインダー9で補修部分の補修材料6を研削してもよい。この場合は、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0037】
以上のような工程を実行することにより、図8に示すように、硫黄固化体製品1の表面の要補修箇所2に流し込まれて硬化した補修材料6の表面を平らに仕上げて、補修が完了する。
【0038】
図9は、図6に示す荒仕上げ工程の他の実施例を示す説明図である。この実施例は、グラインダー9を上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が硬化した補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6を研削するものである。具体的には、エアーサンダーと呼ばれる圧縮空気駆動式のグラインダー9に目の粗い砥石12を装着し、エアホース11から圧縮空気を供給してグラインダー9の砥石12を高速回転させて上記要補修箇所2の補修材料6を荒削りする。ここで、グラインダー9の砥石12は目の粗いものを用いることで、補修材料6と砥石12との摩擦熱で上記補修材料6が溶けることはない。この場合は、高速回転する目の粗い砥石12で補修部分の補修材料6を荒削りすることにより、短時間で荒仕上げを行うことができる。なお、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0039】
図10〜図19は、本発明による硫黄固化体製品の補修方法の他の実施例を示す説明図である。この実施例による硫黄固化体製品の補修方法は、図10に示すように、硫黄固化体製品1の端部において角部にできた欠損部13を要補修箇所2として補修するものである。
【0040】
まず、図10において、硫黄固化体製品1の端部の角部にできた欠損部13を要補修箇所2として確認する。そして、上記要補修箇所2(欠損部13)に補修材料を流し込んで補修するための準備として、刷毛3などを用いてその要補修箇所2内を掃除して、塵埃等を除去する。
【0041】
次に、図11に示すように、金属製の適宜の容器4内に、硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体5を入れて電気ヒータ又はガスヒータ等により加熱し、該硫黄固化体5を補修材料として硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融する(溶融工程)。
【0042】
次に、図12に示すように、硫黄固化体製品1の角部の欠損部13を外側から覆うように、上記硫黄固化体製品1の角部の立ち上がり面に耐熱テープ14を貼り付ける。この耐熱テープ14は、後の工程で上記欠損部13に補修材料を流し込む際の型枠の役目をするもので、例えばアルミニウムテープから成る。なお、耐熱性を有するテープであるならば、他の材料から成るテープであってもよい。或いは、薄い鉄板でもよい。
【0043】
次に、図11に示す溶融工程で溶かされて溶融状態の硫黄含有資材を補修材料6として、図13に示すように、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2(欠損部13)に流し込む(流し込み工程)。
【0044】
この状態で、図14に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して均しを行ってもよい(均し工程)。この場合、例えば温風ヒータ7(ホットエアーガン)を用いて、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6の上方又は側方から、上記設定温度範囲内に加熱された温風を吹きかけて溶融状態を維持し、補修材料6を均せばよい。これにより、上記要補修箇所2(欠損部13)が複雑な凹部形状を有する場合でも、補修材料6を要補修箇所2の隅々まで行き渡らせることができる。なお、この均し工程は、要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が、その要補修箇所2の隅々まで行き渡る可能性がある場合は行わなくてもよい。
【0045】
その後、図15に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を徐冷硬化させる(硬化工程)。すなわち、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2に補修材料6を流し込んだ状態で常温の雰囲気中に放置して、上記補修材料6を徐々に冷却して硬化させる。これにより、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が固化して硫黄固化体製品1と一体化する。その後、図16に示すように、上記硫黄固化体製品1の角部の立ち上がり面に貼り付けられた耐熱テープ14を剥がして、要補修箇所2の補修材料6を露出させる。
【0046】
次に、図17に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6が硬化した補修部分について該補修材料6を荒削りして荒仕上げする(荒仕上げ工程)。この場合、例えば、グラインダー9を上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が硬化した補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、電気サンダーと呼ばれる電気モータ駆動式のグラインダー9に目の粗い砥石12を装着し、電気を供給してグラインダー9の砥石12を高速回転させて上記要補修箇所2の補修材料6を荒削りする。ここで、グラインダー9の砥石12は目の粗いものを用いることで、補修材料6と砥石12との摩擦熱で上記補修材料6が溶けることはない。この場合は、高速回転する目の粗い砥石12で補修部分の補修材料6を荒削りすることにより、短時間で荒仕上げを行うことができる。なお、上記グラインダー9は、電気サンダーに限られず、前述のエアーサンダーであってもよい。
【0047】
次に、図18に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6について荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りして最終仕上げする(最終仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料6にグラインダー9を当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、エアーサンダーと呼ばれるグラインダー9に、エアージェットと呼ばれる冷却装置10を装着し、該冷却装置10に接続されたエアホース11から圧縮空気を供給して上記冷却装置10を作動させると共に、その圧縮空気でグラインダー9の砥石12を高速回転させて、この砥石12で上記要補修箇所2の補修材料6を研削して最終仕上げする。
【0048】
ここで、前述のように、上記冷却装置10から噴出される冷却空気で駆動されるグラインダー9の砥石12は外気よりも冷却され、当然硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却される。これにより、最終仕上げにおいて、グラインダー9で補修部分の補修材料6を研削しても該補修材料6が溶けないようにして、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2を所望の形状に整えて補修することができる。
【0049】
なお、この最終仕上げ工程は、図18に示すものに限られず、前記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りすることができるならば、どのような方法で行ってもよい。例えば、グラインダー9とは別個のエアダクトによって要補修箇所2の補修材料6に向けて直接冷却空気を供給し、上記補修材料6を硫黄の融点未満の温度に冷却しながらグラインダー9で補修部分の補修材料6を研削してもよい。この場合は、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0050】
以上のような工程を実行することにより、図19に示すように、硫黄固化体製品1の端部の角部の要補修箇所2に流し込まれて硬化した補修材料6の表面を所望の形状に仕上げて、補修が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による硫黄固化体製品の補修方法を実行する前の準備段階を示す説明図である。
【図2】上記硫黄固化体製品の補修方法における溶融工程を示す説明図である。
【図3】上記硫黄固化体製品の補修方法における流し込み工程を示す説明図である。
【図4】上記硫黄固化体製品の補修方法における均し工程を示す説明図である。
【図5】上記硫黄固化体製品の補修方法における硬化工程を示す説明図である。
【図6】上記硫黄固化体製品の補修方法における荒仕上げ工程を示す説明図である。
【図7】上記硫黄固化体製品の補修方法における最終仕上げ工程を示す説明図である。
【図8】上記硫黄固化体製品の補修方法における補修完了状態を示す説明図である。
【図9】図6に示す荒仕上げ工程の他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明による硫黄固化体製品の補修方法の他の実施例を実行する前の準備段階を示す説明図である。
【図11】他の実施例の補修方法における溶融工程を示す説明図である。
【図12】他の実施例の補修方法において、硫黄固化体製品の角部の立ち上がり面に耐熱テープを貼り付けた状態を示す説明図である。
【図13】他の実施例の補修方法における流し込み工程を示す説明図である。
【図14】他の実施例の補修方法における均し工程を示す説明図である。
【図15】他の実施例の補修方法における硬化工程を示す説明図である。
【図16】他の実施例の補修方法において、硫黄固化体製品の角部の立ち上がり面に貼り付けられた耐熱テープを剥がした状態を示す説明図である。
【図17】他の実施例の補修方法における荒仕上げ工程を示す説明図である。
【図18】他の実施例の補修方法における最終仕上げ工程を示す説明図である。
【図19】他の実施例の補修方法における補修完了状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1…硫黄固化体製品
2…要補修箇所
4…容器
5…硫黄固化体
6…補修材料
7…温風ヒータ
8…金属製ヘラ
9…グラインダー
10…冷却装置
11…エアホース
12…砥石
13…欠損部
14…耐熱テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法に関し、詳しくは、溶融状態の硫黄含有資材を補修材料として要補修箇所に流し込んで荒仕上げした後、該補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げする硫黄固化体製品の補修方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却硬化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)製品を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を充填して冷却硬化させていた。
【0005】
従来の硫黄固化体製品においては、所定の形状をした型枠内に溶融状態の硫黄含有資材を充填して冷却硬化させた後に上記型枠を外すと、冷却硬化した硫黄固化体と型枠部材との間に溜まった空気により、硫黄固化体製品の表面に空洞ができたり、陥没した状態が現れることがあった。この場合は、硫黄固化体製品の仕上がりがきれいではなく製品価値が劣ることがあった。或いは、既に設置済みの硫黄固化体製品にひび割れ又は欠損等の不良箇所が発生することがあった。
【0006】
このような場合、上記硫黄固化体製品の表面の空洞や陥没箇所、又は既設の硫黄固化体製品の不良箇所を補修する必要がある。従来、このような硫黄固化体製品を補修するには、加熱溶融させた後、凝固させることにより物理的性質を回復する自己修復可能なコンクリート(例えば、硫黄と骨材とを含む硫黄硬化型セメント組成物からなる)を加熱溶融させる加熱溶融工程と、前記加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを成形する成形工程とを行う構造物の補修方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005− 82475号公報
【特許文献3】特開2005−306701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3に記載された構造物の補修方法においては、加熱溶融工程において加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを所望の形状に整え、凝固させることにより成形するものであり、成形工程としては型枠を用いて成形したり、単に表面の形状を整えることにより成形しているだけであって、硫黄固化体製品の表面の空洞や陥没箇所等を十分に補修できるとは言えない。例えば、型枠を用いて成形する際に、その型枠内に加熱溶融した自己修復可能なコンクリートを充填すると、その部分に新たに空洞や陥没箇所ができることがある。また、表面の形状を整えることにより成形する際に、例えばグラインダー等で自己修復可能なコンクリートを研削すると、高速回転する砥石との摩擦熱で上記自己修復可能なコンクリートが溶けてしまい、所望の形状に整えることができないことがある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、溶融状態の硫黄含有資材を補修材料として要補修箇所に流し込んで荒仕上げした後、該補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げする硫黄固化体製品の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による硫黄固化体製品の補修方法は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融する工程と、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込む工程と、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させる硬化工程と、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りする荒仕上げ工程と、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りする最終仕上げ工程と、を行うものである。
【0011】
このような方法により、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行う。
【0012】
また、上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均す均し工程を行ってもよい。これにより、上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均しを行う。
【0013】
さらに、上記荒仕上げ工程は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取るものである。これにより、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取ることで、荒仕上げを行う。
【0014】
さらにまた、上記荒仕上げ工程は、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削するものとしてもよい。これにより、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削することで、荒仕上げを行う。
【0015】
また、上記最終仕上げ工程は、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削するものである。これにより、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削することで、最終仕上げを行う。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融し、上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込み、上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させ、上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りして荒仕上げを行い、上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りして最終仕上げを行うことができる。したがって、最終仕上げにおいて、例えばグラインダー等で補修部分の補修材料を研削しても該補修材料が溶けないようにして、硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を所望の形状に整えて補修することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、溶融状態の補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均すことができる。したがって、上記補修材料を要補修箇所の隅々まで行き渡らせて補修することができる。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明によれば、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取ることで、荒仕上げを行うことができる。したがって、加熱された金属製ヘラを補修部分の補修材料に当てることで、その周囲の硫黄固化体製品を溶かすことなく、補修部分の補修材料だけを再溶融して要補修箇所を補修することができる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、グラインダーを補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削することで、荒仕上げを行うことができる。したがって、高速回転する目の粗い砥石で補修部分の補修材料を荒削りすることで、短時間で荒仕上げを行うことができる。
【0020】
また、請求項5に係る発明によれば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削することで、最終仕上げを行うことができる。したがって、高速回転する砥石で補修部分の補修材料を仕上げ削りすることで、短時間で最終仕上げを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8は、本発明による硫黄固化体製品の補修方法の工程を示す説明図である。この硫黄固化体製品の補修方法は、硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修するものである。
【0022】
まず、図1において、硫黄固化体製品1の表面に現れた空洞又は陥没箇所等の要補修箇所2を確認する。そして、上記要補修箇所2に補修材料を流し込んで補修するための準備として、刷毛3などを用いてその要補修箇所2内を掃除して、塵埃等を除去する。
【0023】
次に、図2に示すように、金属製の適宜の容器4内に、硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体5を入れて電気ヒータ又はガスヒータ等により加熱し、該硫黄固化体5を補修材料として硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融する(溶融工程)。
【0024】
ここで、上記硫黄含有資材について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0025】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは120〜150℃の温度で行われる。
【0026】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば150℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0027】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0028】
以下の説明では、このような硫黄固化体又は改質硫黄固化体を設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して、溶融状態の硫黄含有資材として用いる。
【0029】
次に、図2に示す溶融工程で溶かされて溶融状態の硫黄含有資材を補修材料6として、図3に示すように、硫黄固化体製品1の要補修箇所2に流し込む(流し込み工程)。
【0030】
この状態で、図4に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して均しを行ってもよい(均し工程)。この場合、例えば温風ヒータ7を用いて、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6の上方又は周囲から、上記設定温度範囲内に加熱された温風を吹きかけて溶融状態を維持し、補修材料6を均せばよい。これにより、上記要補修箇所2が複雑な凹部形状を有する場合でも、補修材料6を要補修箇所2の隅々まで行き渡らせることができる。上記温風ヒータ7の具体例としては、設定温度350℃程度の温風を、作業者が狙った方向に向けて噴出できるホットエアーガンと呼ばれるものがある。なお、この均し工程は、要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が、その要補修箇所2の隅々まで行き渡る可能性がある場合は行わなくてもよい。
【0031】
その後、図5に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を徐冷硬化させる(硬化工程)。すなわち、硫黄固化体製品1の要補修箇所2に補修材料6を流し込んだ状態で常温の雰囲気中に放置して、上記補修材料6を徐々に冷却して硬化させる。これにより、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が固化して硫黄固化体製品1と一体化する。
【0032】
次に、図6に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6が硬化した補修部分について該補修材料6を荒削りして荒仕上げする(荒仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱された金属製ヘラ8を上記補修部分の補修材料6に当てて再溶融し、上記金属製ヘラ8で該補修材料6を均したり、削り取ったりすればよい。具体的には、前述の温風ヒータ7(例えばホットエアーガン)を用いて、その温風ヒータ7から噴出される温風を金属製ヘラ8に吹きかけて上記設定温度範囲内に加熱し、この加熱された金属製ヘラ8を上記補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6のみを再溶融する。そして、図6(a)に示すように、上記金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に押し当て、再溶融された補修材料6にアイロンをかけるようにして該補修材料6を均して荒仕上げする。或いは、図6(b)に示すように、上記金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に当て、再溶融された補修材料6の余計な部分を削り取って荒仕上げする。
【0033】
この場合、上記加熱された金属製ヘラ8を補修部分の補修材料6に当てることで、その周囲の硫黄固化体製品1を溶かすことなく、補修部分の補修材料6だけを再溶融して要補修箇所2を補修することができる。
【0034】
次に、図7に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6について荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りして最終仕上げする(最終仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料6にグラインダー9を当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、エアーサンダーと呼ばれる圧縮空気駆動式のグラインダー9に、エアージェットと呼ばれる冷却装置10を装着し、該冷却装置10に接続されたエアホース11から圧縮空気を供給して上記冷却装置10を作動させると共に、その圧縮空気でグラインダー9の砥石12を高速回転させて、この砥石12で上記要補修箇所2の補修材料6を研削して最終仕上げする。
【0035】
ここで、上記冷却装置10としてのエアージェットは、パイプ内の旋回気流の中心温度は周辺部より低いという「渦動理論」を応用したもので、ボルテックスチューブとも呼ばれ、噴出される冷却空気は外気よりも最大31℃程度低くなると言われている。したがって、上記冷却装置10から噴出される冷却空気で駆動されるグラインダー9の砥石12は外気よりも冷却され、当然硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却される。これにより、最終仕上げにおいて、グラインダー9で補修部分の補修材料6を研削しても該補修材料6が溶けないようにして、硫黄固化体製品1の表面の要補修箇所2を所望の形状に整えて補修することができる。
【0036】
なお、この最終仕上げ工程は、図7に示すものに限られず、前記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りすることができるならば、どのような方法で行ってもよい。例えば、グラインダー9とは別個のエアダクトによって要補修箇所2の補修材料6に向けて直接冷却空気を供給し、上記補修材料6を硫黄の融点未満の温度に冷却しながらグラインダー9で補修部分の補修材料6を研削してもよい。この場合は、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0037】
以上のような工程を実行することにより、図8に示すように、硫黄固化体製品1の表面の要補修箇所2に流し込まれて硬化した補修材料6の表面を平らに仕上げて、補修が完了する。
【0038】
図9は、図6に示す荒仕上げ工程の他の実施例を示す説明図である。この実施例は、グラインダー9を上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が硬化した補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6を研削するものである。具体的には、エアーサンダーと呼ばれる圧縮空気駆動式のグラインダー9に目の粗い砥石12を装着し、エアホース11から圧縮空気を供給してグラインダー9の砥石12を高速回転させて上記要補修箇所2の補修材料6を荒削りする。ここで、グラインダー9の砥石12は目の粗いものを用いることで、補修材料6と砥石12との摩擦熱で上記補修材料6が溶けることはない。この場合は、高速回転する目の粗い砥石12で補修部分の補修材料6を荒削りすることにより、短時間で荒仕上げを行うことができる。なお、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0039】
図10〜図19は、本発明による硫黄固化体製品の補修方法の他の実施例を示す説明図である。この実施例による硫黄固化体製品の補修方法は、図10に示すように、硫黄固化体製品1の端部において角部にできた欠損部13を要補修箇所2として補修するものである。
【0040】
まず、図10において、硫黄固化体製品1の端部の角部にできた欠損部13を要補修箇所2として確認する。そして、上記要補修箇所2(欠損部13)に補修材料を流し込んで補修するための準備として、刷毛3などを用いてその要補修箇所2内を掃除して、塵埃等を除去する。
【0041】
次に、図11に示すように、金属製の適宜の容器4内に、硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体5を入れて電気ヒータ又はガスヒータ等により加熱し、該硫黄固化体5を補修材料として硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して溶融する(溶融工程)。
【0042】
次に、図12に示すように、硫黄固化体製品1の角部の欠損部13を外側から覆うように、上記硫黄固化体製品1の角部の立ち上がり面に耐熱テープ14を貼り付ける。この耐熱テープ14は、後の工程で上記欠損部13に補修材料を流し込む際の型枠の役目をするもので、例えばアルミニウムテープから成る。なお、耐熱性を有するテープであるならば、他の材料から成るテープであってもよい。或いは、薄い鉄板でもよい。
【0043】
次に、図11に示す溶融工程で溶かされて溶融状態の硫黄含有資材を補修材料6として、図13に示すように、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2(欠損部13)に流し込む(流し込み工程)。
【0044】
この状態で、図14に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱して均しを行ってもよい(均し工程)。この場合、例えば温風ヒータ7(ホットエアーガン)を用いて、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6の上方又は側方から、上記設定温度範囲内に加熱された温風を吹きかけて溶融状態を維持し、補修材料6を均せばよい。これにより、上記要補修箇所2(欠損部13)が複雑な凹部形状を有する場合でも、補修材料6を要補修箇所2の隅々まで行き渡らせることができる。なお、この均し工程は、要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が、その要補修箇所2の隅々まで行き渡る可能性がある場合は行わなくてもよい。
【0045】
その後、図15に示すように、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6を徐冷硬化させる(硬化工程)。すなわち、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2に補修材料6を流し込んだ状態で常温の雰囲気中に放置して、上記補修材料6を徐々に冷却して硬化させる。これにより、上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が固化して硫黄固化体製品1と一体化する。その後、図16に示すように、上記硫黄固化体製品1の角部の立ち上がり面に貼り付けられた耐熱テープ14を剥がして、要補修箇所2の補修材料6を露出させる。
【0046】
次に、図17に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6が硬化した補修部分について該補修材料6を荒削りして荒仕上げする(荒仕上げ工程)。この場合、例えば、グラインダー9を上記要補修箇所2に流し込まれた補修材料6が硬化した補修部分の補修材料6に当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、電気サンダーと呼ばれる電気モータ駆動式のグラインダー9に目の粗い砥石12を装着し、電気を供給してグラインダー9の砥石12を高速回転させて上記要補修箇所2の補修材料6を荒削りする。ここで、グラインダー9の砥石12は目の粗いものを用いることで、補修材料6と砥石12との摩擦熱で上記補修材料6が溶けることはない。この場合は、高速回転する目の粗い砥石12で補修部分の補修材料6を荒削りすることにより、短時間で荒仕上げを行うことができる。なお、上記グラインダー9は、電気サンダーに限られず、前述のエアーサンダーであってもよい。
【0047】
次に、図18に示すように、上記要補修箇所2の補修材料6について荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りして最終仕上げする(最終仕上げ工程)。この場合、例えば、硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料6にグラインダー9を当てて該補修材料6を研削すればよい。具体的には、エアーサンダーと呼ばれるグラインダー9に、エアージェットと呼ばれる冷却装置10を装着し、該冷却装置10に接続されたエアホース11から圧縮空気を供給して上記冷却装置10を作動させると共に、その圧縮空気でグラインダー9の砥石12を高速回転させて、この砥石12で上記要補修箇所2の補修材料6を研削して最終仕上げする。
【0048】
ここで、前述のように、上記冷却装置10から噴出される冷却空気で駆動されるグラインダー9の砥石12は外気よりも冷却され、当然硫黄の融点(119℃)未満の温度に冷却される。これにより、最終仕上げにおいて、グラインダー9で補修部分の補修材料6を研削しても該補修材料6が溶けないようにして、硫黄固化体製品1の角部の要補修箇所2を所望の形状に整えて補修することができる。
【0049】
なお、この最終仕上げ工程は、図18に示すものに限られず、前記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料6を仕上げ削りすることができるならば、どのような方法で行ってもよい。例えば、グラインダー9とは別個のエアダクトによって要補修箇所2の補修材料6に向けて直接冷却空気を供給し、上記補修材料6を硫黄の融点未満の温度に冷却しながらグラインダー9で補修部分の補修材料6を研削してもよい。この場合は、上記グラインダー9は、エアーサンダーに限られず、電気モータ駆動式の電気サンダーであってもよい。
【0050】
以上のような工程を実行することにより、図19に示すように、硫黄固化体製品1の端部の角部の要補修箇所2に流し込まれて硬化した補修材料6の表面を所望の形状に仕上げて、補修が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による硫黄固化体製品の補修方法を実行する前の準備段階を示す説明図である。
【図2】上記硫黄固化体製品の補修方法における溶融工程を示す説明図である。
【図3】上記硫黄固化体製品の補修方法における流し込み工程を示す説明図である。
【図4】上記硫黄固化体製品の補修方法における均し工程を示す説明図である。
【図5】上記硫黄固化体製品の補修方法における硬化工程を示す説明図である。
【図6】上記硫黄固化体製品の補修方法における荒仕上げ工程を示す説明図である。
【図7】上記硫黄固化体製品の補修方法における最終仕上げ工程を示す説明図である。
【図8】上記硫黄固化体製品の補修方法における補修完了状態を示す説明図である。
【図9】図6に示す荒仕上げ工程の他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明による硫黄固化体製品の補修方法の他の実施例を実行する前の準備段階を示す説明図である。
【図11】他の実施例の補修方法における溶融工程を示す説明図である。
【図12】他の実施例の補修方法において、硫黄固化体製品の角部の立ち上がり面に耐熱テープを貼り付けた状態を示す説明図である。
【図13】他の実施例の補修方法における流し込み工程を示す説明図である。
【図14】他の実施例の補修方法における均し工程を示す説明図である。
【図15】他の実施例の補修方法における硬化工程を示す説明図である。
【図16】他の実施例の補修方法において、硫黄固化体製品の角部の立ち上がり面に貼り付けられた耐熱テープを剥がした状態を示す説明図である。
【図17】他の実施例の補修方法における荒仕上げ工程を示す説明図である。
【図18】他の実施例の補修方法における最終仕上げ工程を示す説明図である。
【図19】他の実施例の補修方法における補修完了状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1…硫黄固化体製品
2…要補修箇所
4…容器
5…硫黄固化体
6…補修材料
7…温風ヒータ
8…金属製ヘラ
9…グラインダー
10…冷却装置
11…エアホース
12…砥石
13…欠損部
14…耐熱テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、
上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融する工程と、
上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込む工程と、
上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させる硬化工程と、
上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りする荒仕上げ工程と、
上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りする最終仕上げ工程と、
を行うことを特徴とする硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項2】
上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均す均し工程を行うことを特徴とする請求項1記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項3】
上記荒仕上げ工程は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取るものであることを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項4】
上記荒仕上げ工程は、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項5】
上記最終仕上げ工程は、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項1】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融状態の硫黄含有資材を冷却硬化させて成型した硫黄固化体製品の表面の要補修箇所を補修する硫黄固化体製品の補修方法であって、
上記硫黄含有資材を冷却硬化させた硫黄固化体を補修材料として硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して溶融する工程と、
上記溶融状態の補修材料を上記要補修箇所に流し込む工程と、
上記流し込まれた補修材料を徐冷硬化させる硬化工程と、
上記補修材料が硬化した補修部分について該補修材料を荒削りする荒仕上げ工程と、
上記荒仕上げ後の補修部分を硫黄の融点未満の温度に冷却しながら上記補修材料を仕上げ削りする最終仕上げ工程と、
を行うことを特徴とする硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項2】
上記補修材料の流し込み工程と硬化工程との間で、上記要補修箇所に流し込まれた補修材料を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱して均す均し工程を行うことを特徴とする請求項1記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項3】
上記荒仕上げ工程は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱された金属製ヘラを上記補修部分の補修材料に当てて再溶融し、上記金属製ヘラで該補修材料を削り取るものであることを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項4】
上記荒仕上げ工程は、グラインダーを上記補修部分の補修材料に当てて該補修材料を研削するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【請求項5】
上記最終仕上げ工程は、上記硫黄の融点未満の温度に冷却された補修部分の補修材料にグラインダーを当てて該補修材料を研削するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硫黄固化体製品の補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−105828(P2010−105828A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276578(P2008−276578)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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