説明

端末部材

【課題】敷設作業現場で行われる、電力ケーブルの終端部分に端末部材を装着する作業を、より容易とする。
【解決手段】端末部材10は、電力ケーブルの終端部分を収容するための筒状の本体12と、終端部分を未挿入の状態において、本体の内面の少なくとも一部に塗布されたグリース22と、を含む。したがって、電力ケーブルを端末部材の内部に挿入する作業を行う作業者の手が汚されることが防止される。また、端末部材及び/又は電力ケーブルにテープを巻き付ける作業を行う必要がある場合に、テープの粘着性能の低下を抑制することができ、電力ケーブルの終端部分を端末部材の内部に挿入する作業が、より容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの終端部分用の端末部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、一般的に、ケーブル導体、ケーブル絶縁体、ケーブル半導体層、ケーブル遮蔽層、及び、ケーブルシースを、径方向に順に有している。電力ケーブルの終端部分は、その先端から順に、ケーブル導体、絶縁体、半導体層、遮蔽層、接地部材、及び、ケーブルシースが露出するよう処理された後に、ケーブル遮蔽層に接地部材が取り付けられている。
【0003】
このような電力ケーブルの終端部分は、端末部材の内部に挿入(挿通を含む。以下同じ。)される。端末部材内への挿入を容易とするために、電力ケーブルの終端部分にはグリースが塗布され、その後、電力ケーブルが端末部材の内部に挿入される。このような技術については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−32645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力ケーブルの終端部分に端末部材を装着する作業は、敷設作業現場で行われる。したがって、電力ケーブルの終端部分に端末部材を装着する作業をより容易とすることが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、電力ケーブルの終端部分用の端末部材に関するものである。この端末部材は、終端部分を収容するための筒状の本体と、終端部分を未挿入の状態において、本体の内面の少なくとも一部に塗布されたグリースと、を含む。
【0007】
この端末部材の内面には、グリースが塗布されている。したがって、電力ケーブルを端末部材の内部に挿入する作業を行う作業者の手が汚されることが防止される。その結果、当該作業の作業性が改善される。また、端末部材及び/又は電力ケーブルにテープを巻き付ける作業を行う必要がある場合に、テープの粘着性能の低下を抑制することができる。故に、その結果、電力ケーブルの終端部分を端末部材の内部に挿入する作業が、より容易になる。
【0008】
一実施形態では、電力ケーブルの終端部分において、ケーブル導体の外周面を覆うケーブル絶縁体が露出するよう、当該ケーブル絶縁体の外周面を覆うケーブル半導電層が剥ぎ取られ得る。この形態においては、本体は、電力ケーブルの終端部分を挿入するための挿入口を有する一端と、露出されたケーブル絶縁体とケーブル半導電層の境界、又は、露出されたケーブル絶縁体とケーブル半導電層を覆う半導電テープとの境界を収容する第1収容部と、を含み、グリースは、第1収容部と一端との間の本体の内面において凸状に塗布された凸部を含み得る。この形態によれば、端末部材の内面に設けたグリースの凸部によって、ケーブル絶縁体とケーブル半導電層の境界に生じ得る空隙を埋めることが可能となる。
【0009】
一実施形態においては、グリースの凸部は、本体の中心軸線周りに環状に形成されていてもよい。この形態によれば、端末部材の内面に設けたグリースの凸部の形状を、ケーブル絶縁体とケーブル半導電層又は半導電テープとの境界の形状に近づけることが可能である。
【0010】
一実施形態においては、凸部は、本体の中心軸線周りに螺旋状に形成されていてもよい。電力ケーブルは、回転されつつ端末部材内に挿入されるので、グリースの凸部が螺旋状に形成されていることにより、ケーブル絶縁体とケーブル半導電層又は半導電テープとの境界にグリースを付着させることが可能となる。
【0011】
一実施形態においては、凸部の高さは、上記境界まで達するよう設定されていてもよい。この形態によれば、上記境界に確実にグリースを付着させ得る。
【0012】
一実施形態においては、凸部の高さは、ケーブル導体に接触しないよう設定されていてもよい。この形態によれば、ケーブル導体へのグリースの付着を防止し得る。
【0013】
一実施形態においては、本体は、電力ケーブルの終端部分のケーブルシースを収容する第2収容部であって、上記一端に連続する第2収容部を含むことができ、第2収容部における本体の内面は、該本体の中心軸線周りに環状に設けられており内側に突出している凸部を含んでいてもよい。なお、第2収容部は、ケーブルシースを収容するが、ケーブルシース以外の電力ケーブルの他の部分を収容してもよい。この形態によれば、本体内に電力ケーブルを挿入することにより、当該凸部が本体の一端を封止する。したがって、端末部材を電力ケーブルの終端部分に装着する作業の容易性がより向上され得る。
【0014】
一実施形態においては、本体の外面は、上記中心軸線方向において内面の凸部と同一の位置において当該中心軸線周りに環状に設けられており外側へ突出している凸部を含んでいてもよい。この形態によれば、内面と外面の凸部が一体となって、これら凸部の強度を高める。その結果、本体の一端において、より向上された封止が実現され得る。
【0015】
一実施形態においては、第2収容部の凸部以外の部分の厚みは、本体の一端と反対側の当該本体の他端を含む部分の厚みより小さくてもよい。この形態によれば、ケーブルを挿入することによって本体内部に溜まった空気を、第2収容部を押圧することにより、本体一端の挿入口から抜き出すことが可能となる。
【0016】
一実施形態で示されるケーブルの終端部分の処理方法においては、端末部材の本体の内面の少なくとも一部にグリースを塗布する工程は、電力ケーブルの敷設作業現場において実施されてもよい。この処理方法によれば、電力ケーブルを端末部材の内部に挿入する作業を行う作業者の手が汚されることが防止される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、電力ケーブルの終端部分を端末部材に装着する作業をより容易とする端末部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態に係る端末部材を、電力ケーブルと共に示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る端末部材を一部破断して電力ケーブルと共に示す平面図である。
【図3】一実施形態に係る端末部材の断面図である。
【図4】一実施形態に係る端末部材の断面図であり、電力ケーブルが挿入された状態を示す図である。
【図5】別の一実施形態に係る端末部材の断面図である。
【図6】一実施形態に係る端末部材にグリースを塗布する工程を示す図である。
【図7】別の一実施形態に係る端末部材にグリースを塗布する工程を示す図である。
【図8】図1に示す端末部材とは異なる形態の端末部材の平面図及び正面図である。
【図9】図1に示す端末部材とは異なる形態の端末部材の平面図及び一部破断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0020】
まず、図1〜図4を参照して一実施形態に係る端末部材について説明する。図1は、一実施形態に係る端末部材を、電力ケーブルと共に示す斜視図である。図2は、一実施形態に係る端末部材を一部破断して電力ケーブルと共に示す平面図である。図3は、一実施形態に係る端末部材の断面図である。図4は、一実施形態に係る端末部材の断面図であり、電力ケーブルが挿入された状態を示す図である。
【0021】
図1〜図4に示す端末部材10は、電力ケーブル100の終端部分に取り付けられる部材である。図1及び図2に示すように、電力ケーブル100は、ケーブル導体100a、ケーブル絶縁体100b、ケーブル半導電層100c、ケーブル遮蔽層100d、及び、ケーブルシース100fを含み得る。
【0022】
ケーブル絶縁体100bは、絶縁性の樹脂等により構成されるものであり、ケーブル導体100aの外周面を覆っている。ケーブル半導電層100cは、例えば、EP(エチレン−プロピレン)ゴム等により構成され半導電性を有し、ケーブル絶縁体100bの外周面を覆っている。ケーブル遮蔽層100dは、このケーブル半導電層100cの外周面を覆っている。ケーブルシース100fは、ケーブル遮蔽層100d外周面を覆っている。
【0023】
電力ケーブル100の終端部分においては、図1及び図2に示すように、先端100tから順に、ケーブル導体100a、ケーブル絶縁体100b、ケーブル半導電層100c、及びケーブル遮蔽層100dが、露出するように、ケーブル絶縁体100b、ケーブル半導電層100c、ケーブル遮蔽層100d、及び、ケーブルシース100fが剥ぎ取られている。また、露出されたケーブル遮蔽層100dの外周面には、導電性を有する接地部材100eが取り付けられている。
【0024】
一実施形態においては、図1及び図2に示すように、ケーブル半導電層100cの外周面を覆うように、半導電テープ100gが当該ケーブル半導電層100cに巻かれ得る。また、接地部材100eに電気的に接続された接地線100iが後方に延ばされていてもよく、当該接地線100iを介在させて半導電テープ100gの一部、接地部材100e及びケーブルシース100fを覆うように、絶縁テープ100hが巻かれ得る。
【0025】
かかる電力ケーブル100の終端部分は、端末部材10の内部に挿入される。図1〜図3に示すように、端末部材10は、略筒状の本体12を備えている。本体12は、外皮14、及び、電界緩和部16を含み得る。外皮14は、本体12の外郭を構成する部分であり、略筒状の形状を有している。外皮14は、例えば、シリコーンゴムといった樹脂により構成され得る。電界緩和部16は、外皮14の内孔に設けられており、外皮14と共に、本体12の内面を画成している。電界緩和部16は、例えば、EPDMといった材料から構成され得る。
【0026】
図3に示すように、本体12は、その先端12tから後端12sに向かう方向において順に、第1の部分12a及び第2の部分12bを含んでいる。第1の部分12aの先端(他端)側の部分は、外皮14によって構成されており、その内面は、外皮14によって画成されている。第1の部分12aの後端(一端)側の部分は、外皮14と電界緩和部16によって構成されており、その内面は電界緩和部16によって構成されている。また、第2の部分12bは、外皮14によって構成されており、その内面は外皮14によって構成されている。
【0027】
第1の部分12aの内径は、第2の部分12bの内径より小さくなっており、第1の部分12aと第2の部分12bとの間は、斜面によって連結されている。第1の部分12aの内孔には、図4に示すように、ケーブル導体100aの一部、ケーブル絶縁体100b、及び、ケーブル半導電層100cが収容され得る。第1の部分12aの内孔の径は、例えば、ケーブル絶縁体100bの外径と同等である。一方、第2の部分12bの内孔には、ケーブル遮蔽層100d、接地部材100e、及び、ケーブルシース100fが収容され得る。
【0028】
一実施形態においては、第1の部分12aの先端には、当該先端の開口を閉じるように、端子20が設けられ得る。端子20は、金属製の部材であり、その先端側で閉塞した筒状部、及び、当該筒状部の先端から前方に延在する板状部を含んでいる。端子20の筒状部の後端側の部分は、第1の部分12aの内孔に収容されている。ケーブル導体100aの先端は、端子20の筒状部の内孔に挿入される。ケーブル導体100aと端子20との電気的接触は、端子20の筒状部を圧着又は圧縮することにより確保される。
【0029】
図3に示すように、端末部材10は、グリース22を含んでいる。グリース22は、電力ケーブル100の終端部分を挿入する前の状態において、予め本体12の内面に塗布されている。グリース22は、本体12の内面の略全体にわたって薄く塗布された薄層部22aを含んでいる。グリース22は、電力ケーブル100の終端部分の端末部材10の内部への挿入を容易にする。即ち、グリース22が本体12の内面に塗布されていることにより、作業者の手にグリースが付着することが防止され、電力ケーブル100の終端部分を端末部材10の内部に挿入する工程が容易となり得る。また、グリース22は、端末部材10の絶縁性を高め得る。
【0030】
グリース22には、例えば、シリコーングリース又はフッ素系のグリースといった種々のグリースを用い得る。また、グリース22には、本体12の膨潤等の影響がない油分を含むものを用い得る。さらに、グリース22には、体積抵抗率が1TΩ・m以上の特性を有するものを用い得る。
【0031】
一実施形態においては、グリース22は、薄層部22aよりも厚く凸状に塗布された凸部22bを含み得る。凸部22bは、ケーブル絶縁体100bと半導電テープ100gとの境界にグリースを付着させ得る。或いは、半導電テープ100gが巻かれていない場合には、凸部22bは、ケーブル絶縁体100bとケーブル半導電層100cとの境界にグリースを付着させ得る。
【0032】
一実施形態においては、凸部22bは、本体12の第1収容部12cから後端12sの間の内面、又は、本体12の第1収容部12cより後端12s側の内面に形成され得る。第1収容部12cは、本体12の第1の部分12aに含まれる部分である。この第1収容部12cには、ケーブル絶縁体100bと半導電テープ100gとの境界、又は、ケーブル絶縁体100bとケーブル半導電層100cとの境界が収容され得る。かかる位置に凸部22bが形成されているので、電力ケーブル100の終端部分を端末部材10の内部に挿入することにより、凸部22bのグリースを、ケーブル絶縁体100bと半導電テープ100gとの境界、又は、ケーブル絶縁体100bとケーブル半導電層100cとの境界に付着させることができる。
【0033】
また、図3に示すように、凸部22bは、一実施形態においては、本体12の中心軸線周りに環状に形成されていてもよい。上述した境界は、環形状を有しているので、かかる形状の凸部22bにより、グリースの形状を、当該境界の形状に近づけることが可能となる。
【0034】
また、一実施形態においては、凸部22bの高さ(厚み)は、ケーブル導体100aに接触せず、且つ、上記境界まで達するよう設定され得る。これにより、ケーブル導体100aにグリースが付着することが防止され、且つ、上記境界にグリースを付着させることが可能となる。なお、グリース22には、端末部材10を保管及び使用する環境等に応じて所望のちょう度変化を有するものを選択し得る。例えば、グリース22として、輸送時等の間に生じ得る熱変形をするために、80℃でのちょう度変化が実質的にないものを選択してもよい。
【0035】
再び図3を参照する。図3に示すように、一実施形態においては、本体12の第2の部分12b、即ち、ケーブルシース100fを収容する第2収容部の内面には、本体12の中心軸線周りに一以上の環状の凸部12dが形成され得る。当該凸部12dは、本体12に一体成形され得る。
【0036】
凸部12dは、本体12の第2の部分12bの内面から内側に突出している。凸部12dの径は、電力ケーブル100の終端部分を端末部材10の内部に挿入する前の状態においては、ケーブルシース100f又はテープ100hの外周面の径より若干小さく設定され得る。凸部12dは、ケーブルシース100f又はテープ100hを弾性変形させるように、これら対象物に接触する。これによって、凸部12dは、本体12の後端側の開口、即ち挿入口を封止し得る。かかる凸部12dにより、従来においては必要であったテープによる本体の開口の封止をより簡易なものとすることができるか、又は、省略することが可能となる。さらに、作業者の手がグリースによって汚されることが防止されるので、本体12の開口の封止をテープによって補強する場合であっても、この補強作業がより容易なものとなる。
【0037】
また、一実施形態においては、本体12の第2の部分12bの凸部12d以外の厚みは、第1の部分12aの厚みより小さく設定され得る。この形態によれば、電力ケーブル100の終端部分を端末部材10の内部に挿入する際に本体12内に溜まる空気を、第2の部分12bを押圧することによって、後端の開口から抜き出すことが可能となる。
【0038】
また、一実施形態においては、本体12の第2の部分12bの外面には、上記中心軸線方向において凸部12dと同一の位置に、凸部12eが形成され得る。凸部12eは、外側に突出しており、環状に設けられ得る。かかる凸部12eにより、第1の部分12aに比して厚みの薄い第2の部分12bに設けられた凸部12dの強度を高めることができる。その結果、凸部12dによる封止をより確実なものとすることができる。
【0039】
なお、凸部12dの断面形状は、対象物に与える面圧が確保されれば、任意の形状であってよい。例えば、凸部12dは、三角形といった多角形の断面形状、又は、半円の断面形状を有し得る。
【0040】
以下、別の実施形態に係る端末部材について説明する。図5は、別の一実施形態に係る端末部材の断面図である。図5に示す端末部材10Aでは、図3の凸部22bに代えて、グリース22は、凸部22cを含んでいる。凸部22cは、本体12の中心軸線周りに螺旋状に設けられている。電力ケーブル100の終端部分は回転されつつ端末部材10Aの内部に挿入され得るので、螺旋状に設けた凸部22cによっても、グリースを上述した境界に付着させることが可能である。
【0041】
以下、端末部材10及び10Aの作製方法について説明する。図6は、一実施形態に係る端末部材にグリースを塗布する工程を示す図であり、図3に示す端末部材10の凸部22bを形成する工程を示している。
【0042】
端末部材10の本体12にグリースを塗布する方法においては、まず、その表面にグリースを塗布したスポンジ等の弾性体を、本体12の内孔に挿入する。次いで、当該弾性体を本体12から抜き取ることによって、グリース22の薄層部22aを形成することができる。
【0043】
次いで、図6の(a)に示すように、先端が閉塞され表面に複数の孔が形成された円筒状の射出器50を第2の部分12bの所定位置に挿入する。そして、射出器50の孔からグリースを射出しつつ、当該射出器50を回転させる。これにより、環状の凸部22bを形成することができる。さらに、環状の凸部22bを形成した後、図6の(b)に示すように、射出器50を本体12の内孔から抜き取ることによって、グリースが塗布された端末部材10が完成する。
【0044】
図7は、別の一実施形態に係る端末部材にグリースを塗布する工程を示す図であり、図5に示す端末部材10Aの凸部22cを形成する工程を示している。端末部材10Aの本体12にグリースを塗布する方法においては、上述した工程と同様に、本体12の内面にグリース22の薄層部22aを形成する。
【0045】
次いで、図7の(a)に示すように、先端が閉塞され表面に孔が形成された円筒状の射出器60を第2の部分12bの所定位置に挿入する。そして、射出器60の孔からグリースを射出しつつ、当該射出器60を回転させると共に後方へ移動させる。これにより、螺旋状の凸部22cを形成することができる。更に、凸部22cを形成した後、図7の(b)に示すように、射出器60を本体12の内孔から抜き取ることによって、グリースが塗布された端末部材10Aが完成する。
【0046】
なお、上述した端末部材10及び10Aの内面にグリースを塗布する工程は、グリース未塗布の端末部材を製造後、電力ケーブルの終端部分に装着するまでに存在すればよい。すなわち、グリース未塗布の端末部材を製造した工場においてグリースの塗布作業が行われても、電力ケーブルの敷設作業現場において、端末部材を終端部分に装着する直前にグリースの塗布作業が行われてもよい。グリース未塗布の端末部材を製造した工場においてグリースの塗布作業が行われる場合には、電力ケーブルの敷設作業現場においては、グリースの塗布工程を省略し得る。一方、電力ケーブルの敷設作業現場において、端末部材を終端部分に装着する直前にグリースの塗布作業が行われる場合には、端末部材を保管する環境を考慮したグリースを選択する必要はなくなり、使用する環境に応じた本体12の膨潤等の影響がない油分を含むグリースを選択し得る。
【0047】
このようにして得られた端末部材10を電力ケーブル100の終端部分に装着する際には、一例として以下の手順で行われる。
【0048】
作業現場において切断された、またはあらかじめ切断された電力ケーブル100の先端100tから順に、ケーブル導体100a、ケーブル絶縁体100b、ケーブル半導電層100c、及びケーブル遮蔽層100dが、規定長露出するように、ケーブルシース100f、ケーブル遮蔽層100d、ケーブル半導電層100c、及び、ケーブル絶縁体100bを剥ぎ取った後、露出されたケーブル遮蔽層100dの外周面に、導電性を有する接地部材100eを取り付け半導電テープ100g、及び、絶縁テープ100hを巻き付ける。次に、電力ケーブル100の先端100tを端末部材10の後端12sから端子20内に充分に挿入されるまで端末部材10に挿入する。そして、端子20を圧着工具や圧縮工具等により圧着又は圧縮し、機械的、電気的に接続する。その後、第2の部分12bを押圧し、電力ケーブル100の終端部分を端末部材10の内部に挿入する際に本体12内に溜まった空気を後端の開口から抜き出す。最後に必要に応じて、本体12の開口周辺にテープを巻き付けて補強することにより、電力ケーブル100の終端部分への端末部材10の装着が完了する。
【0049】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は、これら実施形態に限定されることなく、種々の変形態様を構成し得る。例えば、端末部材としては、図8に示すいわゆる三叉管のような単心または複数心線用の絶縁保護カバーや図9に示す雨覆といった、ケーブルの終端部分が挿入されることにより電力ケーブルの終端部分に設置される部材が含まれる。また、端末部材10に設けられる凸部12dは、外皮14と一体に構成されていなくてもよく、例えば、外皮14に装着されるOリング等であってもよい。
【0050】
なお、本発明は、電力ケーブルの敷設作業現場において、必要に応じて追加的にケーブルの終端部分の外周面にグリースを塗布することを否定するものではない。
【符号の説明】
【0051】
10…端末部材、12…本体、12a…第1の部分、12b…第2の部分、12c…第1収容部、12d…凸部、12e…凸部、14…外皮、16…電界緩和部、20…端子、22a…薄層部、22b…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの終端部分用の端末部材であって、
前記終端部分を収容するための筒状の本体と、
前記終端部分を未挿入の状態において、前記本体の内面の少なくとも一部に塗布されたグリースと、
を備える端末部材。
【請求項2】
前記電力ケーブルの終端部分においては、ケーブル導体の外周面を覆うケーブル絶縁体が露出するよう、該ケーブル絶縁体の外周面を覆うケーブル半導電層が剥ぎ取られており、
前記本体は、前記電力ケーブルの終端部分を挿入するための挿入口を有する一端と、露出された前記ケーブル絶縁体と前記ケーブル半導電層の境界、又は、露出された前記ケーブル絶縁体と前記ケーブル半導電層を覆う半導電テープとの境界を収容する第1収容部と、を含み、
前記グリースは、前記第1収容部と前記一端との間の前記本体の内面において凸状に塗布された凸部を含む、
請求項1に記載の端末部材。
【請求項3】
前記凸部は、前記本体の中心軸線周りに環状又は螺旋状に形成されている、請求項2に記載の端末部材。
【請求項4】
前記凸部の高さは、前記境界まで達するよう設定されている、請求項2又は3に記載の端末部材。
【請求項5】
前記凸部の高さは、前記ケーブル導体に接触しないよう設定されている、請求項2〜4の何れか一項に記載の端末部材。
【請求項6】
前記本体は、前記電力ケーブルの前記終端部分のケーブルシースを収容する第2収容部であって、前記一端に連続する該第2収容部を含んでおり、
前記第2収容部における前記本体の内面は、該本体の中心軸線周りに環状に設けられており内側に突出している凸部を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の端末部材。
【請求項7】
前記本体の外面は、前記中心軸線方向において前記内面の前記凸部と同一の位置において該中心軸線周りに環状に設けられており外側へ突出している凸部を含んでいる、請求項6に記載の端末部材。
【請求項8】
前記第2収容部の前記凸部以外の部分の厚みは、前記本体の前記一端と反対側の該本体の他端を含む部分の厚みより小さい、請求項6又は7に記載の端末部材。
【請求項9】
電力ケーブルの終端部分用の端末部材の前記終端部分を収容するための筒状の本体の内面の少なくとも一部にグリースを塗布する工程と、
前記終端部分を端末部材に挿入する工程とを有する電力ケーブルの終端部分の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−130235(P2012−130235A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10506(P2011−10506)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】