説明

Δ4,5グリクロニダーゼおよびその使用

本発明は、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼを提供する。本発明の1つの実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、組換え的に産生されたグリクロニダーゼである。組換え発現は、1つの実施形態において発現ベクターにより達成され得る。発現ベクターは、配列番号2(必要に応じてプロモーターと作動可能に連結される)についての核酸であり得る。別の実施形態において、発現ベクターは、配列番号4についての核酸またはこれらの改変体であり得、また必要に応じてプロモーターと作動可能に連結され得る。1つの実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、発現ベクターを含有する宿主細胞を使用して産生される。別の実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、合成グリクロニダーゼである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、Δ4,5グリクロニダーゼおよびその使用に関連する。特に、本発明は、種々の目的に有用である実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼに関連し、グリコサミノグリカン(GAG)の分析、サンプル中に存在するグリコサミノグリカンの配列決定、同定、定量および精製、溶液からのグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン)の取り出しおよび、血管形成の阻害、凝析の調節などを含む。本発明はまた、Δ4,5グリクロニダーゼ、および/または、Δ4,5グリクロニダーゼでの酵素的分解より産生されたGAGフラグメントを使用することにより、癌を処置する方法ならびに、細胞増殖(cellular proliferation)および/または転移を阻害する方法にもまた関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グリコサミノグリカン(GAG)は、細胞外マトリックスの常在物として天然に偏在的に存在し、かつ多岐にわたる系統発生学の多くの異なる生物体の細胞表面に存在する、直鎖の酸性の多糖類である(Habuchi,O.(2000)Biochim Biophys Acta 1474,115−27;Sasisekharan,R.,Bulmer,M.,Moremen,K.W.,Cooney,C.L.,およびLanger,R.(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90,3660−4)。構造的役割に加えて、GAGは、細胞増殖および分化、細胞接着および遊走、ならびに組織形態形成のために必須の多数の生化学的シグナル事象(Tumova,S.,Woods,A.,およびCouchman,J.R.(2000)Int J Biochem Cell Biol 32,269−88)の重大な調節因子として作用する。
【0003】
ヘパラン硫酸様グリコサミノグリカン(GAGSまたはHSGAG)は、細胞表面および細胞外マトリックスの両方に存在する。ヘパリン様グリコサミノグリカンは、細胞外マトリックスの重要な構成要素であり、広範囲の細胞活動(侵襲、遊走、増殖(proliferation)および接着が挙げられる)を調節すると考えられる(Khodapkarら 1998;Woodsら,1998)。HSGAGは、多様な分子(増殖因子、モルフォジェン、酵素、細胞外タンパク質が挙げられる)に結合してこれらの生物学的活性を調節することにより、これらの機能のいくつかを達成する。HSGAGは、グルコサミンおよびウロン酸(イズロン酸またはグルクロン酸のいずれか)から構成される二糖類繰り返しユニットからなる、長さにおいて変動する複合多糖類の一群である。HSGAGについての高度な複雑性は、これらの多分散性および2つの異なるウロン酸構成要素の潜在性から生じるだけでなく、二糖類ユニットの4つの位置での差次的な改変からもまた生じる。3つの位置、ウロン酸のviz.、C2およびグルコサミンのC3、C6位は、O−硫酸化され得る。さらに、グルコサミンのC2は、N−アセチル化またはN−硫酸化され得る。一緒に、これらの改変は、理論的に32の潜在的二糖類ユニットを生じ得、HSGAGに、潜在的に、DNA(4塩基)またはタンパク質(20アミノ酸)のいずれかよりも濃密な情報を与えた。これは、HSGAGが大多数の多様な生物学的プロセス(血管形成(Sasisekharan,R.,Moses,M.A.,Nugent,M.A.,Cooney,C.L.およびLanger,R.(1994)Proc Natl Acad Sci USA,1524−8)、胚発生(Binari,R.ら(1997)Development,2623−32;Tsuda,M.ら(1999)Nature,276−80.;およびLin,X.,ら(1999)Development,3715−23)およびアルツハイマー病(McLaurin,J.,ら(1999)Eur J Biochem,1101−10およびLindahl,B.ら(1999)J Biol Chem,30631−5)におけるβ−原線維の形成が挙げられる)に関与することを可能とする潜在的構造改変体のこの膨大さである。
【0004】
HSGAGの1つの特異的な例は、ヘパリンである。ヘパリン(マスト細胞により産生される高度に硫酸化されたHSGAG)は、広く使用される臨床的抗凝固剤であり、そして最初のバイオポリマー性薬物の1つであり、少炭水化物薬物の1つである。ヘパリンは、主に2つの機構(これらの両方とも、アンチトロンビンIII(AT−III)のこのポリマーに含まれる特異的な五糖類配列、HNAc/S,6SGHNS,3S、6S2SNS,6Sとの結合に関与する)を介してその効果を誘発する。HSGAGは、血管形成(Folkman,J.,Taylor,S.,およびSpillberg,C.(1983)Ciba Found Symp 100,132−49)および癌生物学(Blackhall,F.H.,Merry,C.L.,Davies,E.J.およびJayson,G.C.(2001)Br J Cancer 85,1094−8)から微生物病原学(Shukla,ら(1999)Cell 99,13−22)までの範囲にわたる広範囲な生物学的プロセスにおいて中心的存在としてもまた現れた。HSGAGは、発生の複数の局面における基本的役割を担うこともまた最近示された(Perrimon,N.およびBernfield,M.(2000)Nature 404,725−8)。HSGAGの複数の生物学的事象を統合する能力もまた、これの構造的複雑性および情報密度の結果であるようである(Sasisekharan,RおよびVenkataraman,G.(2000)Curr Opin Chem Biol 4,626−31)。
【0005】
HSGAGの構造および化学は、相当よく理解されているが、特異的なHSGAG配列がいかに異なる生物学的プロセスを調節するかに際しての情報は、得るのが難しいことがわかっている。これらのHSGAG配列を決定することは、技術的課題であった。HSGAGは、天然には極めて限られた量で存在し、これは、他のバイオポリマー(例えばタンパク質および核酸)とは異なり、容易に増幅し得ない。次に、これらの高度に帯電した特徴および構造的不均質性のために、HSGAGは、生物学的供給元から高純度の状態で容易に単離されない。さらに、HSGAGをDNA配列決定または制限地図作成と類似な様式で切断するための配列特異的なツールがないことが、配列決定を課題としてきた。
【0006】
最近、HSGAG構造の理解を発展させるための努力により、焦点が、HSGAG生合成に関与する酵素のクローニングおよび特徴付けに配置された。HSGAGの構造を解明するための別の戦略は、特異的なHSGAG分解手順、(化学的または酵素学的切断が挙げられる)を分析的方法論(HSGAGの配列に対するゲル電気泳動またはHPLCが挙げられる)と組み合わせて使用されてきた。最近、本発明者らは、配列決定手順を導入し、この配列決定手順は、バイオインフォマティクスのフレームワークと、生物学的に重要なHSGAG(抗凝血の調節に関与する糖類配列を含む)を迅速に配列決定するための質量分析的電気泳動的手順およびキャピラリー電気泳動的手順とを連関させる。この配列決定方法論は、未知のグリコサミノグリカンポリマーを配列特異的な様式で改変または分解するための化学的ツールまたは酵素学的ツールを使用する(Venkataraman,G.ら,Science,286,537−542(1999),ならびに米国特許出願番号第09/557,997号および同第09/558,137号(両方とも、2000年4月24日に出願され、共通発明主体を有する))。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
Δ4,5グリクロニダーゼを、F.heparinumゲノムからクローニングして、続いてE.coliの中での可溶性で、高活性な酵素としてのその組換え発現を、達成した。従って、1つの局面において、本発明は、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼを提供する。本発明の1つの実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、組換え的に産生されたグリクロニダーゼである。組換え発現は、1つの実施形態において発現ベクターにより達成され得る。発現ベクターは、配列番号2(必要に応じてプロモーターと作動可能に連結される)についての核酸であり得る。別の実施形態において、発現ベクターは、配列番号4についての核酸またはこれらの改変体であり得、また必要に応じてプロモーターと作動可能に連結され得る。1つの実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、発現ベクターを含有する宿主細胞を使用して産生される。別の実施形態において、実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼは、合成グリクロニダーゼである。
【0008】
別の局面において、本発明のグリクロニダーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはこれらの機能性改変体である。さらに別の局面において、このポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列、またはこれらの機能性改変体を有する。
【0009】
本発明のさらに別の局面において、Δ4,5グリクロニダーゼのポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。この単離されたポリペプチドは、いくつかの実施形態において、配列番号1に示されるか、またはこれらの機能性改変体である。他の実施形態において、この単離されたポリペプチドは、配列番号3に示されるか、またはこれらの機能性改変体である。
【0010】
1つの局面において、本発明は、ネイティブなグリクロニダーゼより高い比活性を有する単離されたΔ4,5不飽和グリクロニダーゼを含有する組成物である。いくつかの実施形態において、比活性は、1分当たり1ピコモルの酵素当たり少なくとも約60ピコモルの基質の加水分解である。1つの実施形態において、Δ4,5グリクロニダーゼは、ネイティブな酵素より約2倍高い比活性を有する。別の実施形態において、Δ4,5グリクロニダーゼは、約3倍高い比活性を有する。Δ4,5グリクロニダーゼの比活性は、他の実施形態において、ネイティブな酵素の活性より約4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍またはこれらの間の任意の整数倍高くあり得る。
【0011】
本発明のさらに別の局面において、単離された核酸分子が提供される。この核酸は、(a)ストリンジェントな条件下で配列番号2または配列番号4として示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子とハイブリダイズし、かつそれぞれ配列番号1または配列番号3として示されるアミノ酸配列を有するΔ4,5不飽和グリクロニダーゼをコードする核酸分子、(b)遺伝コードの縮退によりコドン配列において(a)の核酸分子と異なる核酸分子、あるいは(c)(a)または(b)の相補体である。1つの実施形態において、この単離された核酸分子は、配列番号1をコードする。別の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号2として示されるヌクレオチド配列を含む。また他の実施形態において、この単離された核酸分子は、配列番号3をコードし、さらに他の実施形態において、この単離された核酸分子は、配列番号4として示されるヌクレオチド配列を含む。
【0012】
本明細書に記載される組成物またはベクターのいずれかの薬学的組成物もまた、本発明の中に含まれる。
【0013】
他の局面において、本発明は、グリコサミノグリカンをΔ4,5不飽和グリクロニダーゼで切断する方法に関連する。この方法は、グリコサミノグリカンとグリクロニダーゼとをグリコサミノグリカンを切断するために有効な量で接触させることにより実施され得る。1つの実施形態において、本発明は、この方法に従って調製されたグリコサミノグリカンである。
【0014】
他の局面において、本発明は、少なくとも1つの二糖類ユニットから構成されるグリコサミノグリカンを切断する方法をもまた提供する。この方法は、グリコサミノグリカンと本発明のグリクロニダーゼとを、グリコサミノグリカンを切断するために有効な量で接触させることにより実施され得る。いくつかの実施形態において、グリコサミノグリカンは、長鎖糖類である。他の実施形態において、グリコサミノグリカンは、2−0硫酸化ウロニデートを含まないか、またはグリコサミノグリカンは、N−置換型グリコサミンを含まない。なお別の実施形態において、グリコサミノグリカンは、6−0硫酸化される。いくつかの実施形態における二糖類ユニットは、ΔUHNAc;ΔUHNAc,6S;ΔUHNS,6S;またはΔUHNSである。別の実施形態において、本発明は、グリコサミノグリカンのΔ4,5グリクロニダーゼによる切断の産物をもまた提供する。いくつかの実施形態において、グリクロニダーゼは、LMWHを生成するために使用される。
【0015】
本発明は、グリコサミノグリカンの分析のための方法をもまた提供する。1つの局面において、本発明は、グリコサミノグリカンと本発明のグリクロニダーゼとを、グリコサミノグリカンを分析するために有効な量で接触させることにより、グリコサミノグリカンを分析する方法である。1つの実施形態において、この方法は、サンプルの中の特定のグリコサミノグリカンの存在を同定するための方法である。別の実施形態において、この方法は、サンプルの中のグリコサミノグリカンの同一性を決定するための方法である。さらに別の実施形態において、この方法は、サンプルの中のグリコサミノグリカンの純度を決定するための方法である。なおさらなる実施形態において、この方法は、サンプルの中のグリコサミノグリカンの組成物を決定するための方法である。別の実施形態において、この方法は、グリコサミノグリカンの中で糖類ユニットの配列を決定するための方法である。他の実施形態において、これらの方法は、さらなる分析技術(例えば、質量分析、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動およびHPLC)を含み得る。いくつかの実施形態において、グリコサミノグリカンは、LMWHである。
【0016】
他の局面において、本発明は、ヘパリン含有液体と本発明のグリクロニダーゼとを、ヘパリン含有液体からヘパリンを取り出すために有効な量で接触させることにより、ヘパリン含有液体からヘパリンを取り出す方法である。1つの実施形態において、グリクロニダーゼは、固体支持体に固定化される。別の実施形態において、ヘパリナーゼもまた、提供され、このヘパリナーゼもまた、固体支持体に固定化される。
【0017】
別の局面において、本発明は、血管形成を阻害するために有効な量の、本明細書に記載の薬学的調製物のいずれかを、これを必要とする被検体に投与することにより、血管形成を阻害する方法である。
【0018】
別の局面において、癌を処置するために有効な量の、本明細書に記載の薬学的調製物のいずれかを、これを必要とする被検体に投与することにより、癌を処置する方法もまた、提供される。
【0019】
本発明のなお別の局面は、有効量の、本明細書中に記載される細胞増殖を阻害するための薬学的調製物のいずれかの、これを必要とする被験体への投与により、細胞増殖を阻害する方法である。
【0020】
別の局面において、これを必要とする被験体に投与することにより凝固疾患を処置する方法は、本発明のグリクロニダーゼを使用して、LMWHを調製した。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態において、グリクロニダーゼは、ヘパリナーゼによる治療と同時にまたはヘパリナーゼによる治療の後に使用される。
【0022】
本発明の他の局面において、薬学的組成物および治療方法は、Δ4,5不飽和グリクロニダーゼおよび切断されたGAGフラグメント単独あるいは切断されたGAGフラグメントを組み合わせて使用して、提供される。
【0023】
本発明の他の局面は、Δ4,5不飽和グリクロニダーゼと共にヘパリナーゼのような他の酵素を含有する組成物を提供する。
【0024】
他の局面において、薬学的に受容可能なキャリア中の本発明の組成物またはベクターの薬学的調製物が、提供される。
【0025】
本発明の各限定は、種々の実施形態を包含する。従って、任意の1つのエレメントまたはエレメントの組み合わせに関連する本発明の各限定は、本発明の各局面に含まれ得ることが予測される。
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明は、幾つかの局面において、Δ4,5グリクロニダーゼ、その実質的に純粋な形態、およびその使用に関連する。特に、本発明は、一部で、Δ4,5グリクロニダーゼのクローニングから生じ、ここで、本発明により、当業者はこの酵素を大量に、かつ実質的に純粋な形態で生成することが可能となる。本発明は、グリコサミノグリカンの構造を決定して、細胞のプロセスにおけるこれらの役割を明らかにするために使用され得る別のツールをもまた、提供する。培養物から生成される酵素よりも高い比活性を有する、Δ4,5グリクロニダーゼの実質的に純粋な調製物が生成され得ることもまた、発見されている。本発明はまた、グリコサミノグリカン(GAG)の切断、ならびにGAGのサンプルの分析およびこれらの配列決定もまた、提供する。本発明はまた、酵素および/またはその切断産物(GAGフラグメント)を用いた、細胞増殖、新脈管形成、および/または凝固障害のコントロールを通じた、癌の処置方法および予防方法をもまた、提供する。
【0027】
本発明の1つの局面により、当業者が、本発明の開示を踏まえて、標準的技術(組換え技術、直接合成、突然変異誘発などが挙げられる)によって、Δ4,5グリクロニダーゼの実質的に純粋な調製物の精製が可能となる。例えば、組換え技術を使用して、配列番号1のアミノ酸を有するか、または配列番号2の核酸によってコードされる、Δ4,5グリクロニダーゼの実質的に純粋な調製物を精製し得る。本発明の他の局面において、配列番号1のアミノ酸を有するか、または配列番号4の核酸によってコードされる、Δ4,5グリクロニダーゼの実質的に純粋な調製物が、調製され得る。当業者はまた、配列番号1または配列番号3の中の所望のアミノ酸置換を生成するために、標準的な部位特異的変異誘発技術により、適切なコドンを置換し得る。部位特異的変異誘発の開始点としての遺伝コードの縮重のみに起因して、配列番号1または配列番号3の等価物と異なる、任意の配列もまた使用し得る。次いで、変異核酸配列は、適切な発現ベクター内に連結され得、そしてE.coliのような宿主細胞内で発現され得る。生じたΔ4,5グリクロニダーゼを、次いで、以下に開示する技術を含む技術によって精製し得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「実質的に純粋な」は、タンパク質が、実際的かつその意図される使用に適切な範囲で、本質的に他の物質を含まないことを意味する。特に、タンパク質は、十分に純粋であり、かつその宿主細胞の他の生物学的構成物を十分に除去される場合、例えば、タンパク質配列決定または薬学的調製物の精製に有用である。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「実質的に純粋なΔ4,5不飽和グリクロニダーゼ」は、単離されているかまたは合成されており、約90%より高く夾雑物を除去した、Δ4,5不飽和グリクロニダーゼの調製物である。夾雑物は、Δ4,5不飽和グリクロニダーゼが、通常、自然状態で混在し、この酵素の活性を妨げる物質である。好ましくは、物質は、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、またはさらに約99%より高く、夾雑物を除去される。純度は、当該分野で公知の手段によって、評価され得る。物質の純度を評価するための1つの方法は、特定の活性アッセイの使用を通して達成され得る。先行技術において記載されている(F.heparinumから単離される)ネイティブのΔ4,5グリクロニダーゼは、F.heparinumの細菌培養物からの酵素収集において内在する不純物のために、低い比活性を有する。
【0030】
本発明はまた、配列番号1のアミノ酸配列を有するΔ4,5グリクロニダーゼおよびその機能的改変体の単離されたポリペプチド(タンパク質全長または部分的なタンパク質を含む)を提供する。配列番号3のアミノ酸配列有する単離されたポリペプチドもまた、本発明によって提供される。ポリペプチドは、生物学的サンプルから単離され得、そして発現系に適切な発現ベクターの構築、発現ベクターの発現系への導入、および組み換え的に発現されるタンパク質の単離によって、種々の原核生物発現系または真核生物発現系において組み換え的に発現され得る。ポリペプチドはまた、十分に確立されたペプチド合成の方法を使用して、化学的に合成され得る。
【0031】
ポリペプチドに関して本明細書中で使用される場合、「単離される」は、そのネイティブ環境から分離され、そしてその同定または使用を可能にするために十分な量で存在することを意味する。タンパク質またはポリペプチドに関する場合、「単離される」は、例えば:(i)発現クローニングによって選択的に産生されるか、または(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製されることを意味する。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、そうである必要はないが、実質的に純粋であり得る。単離されたポリペプチドは、薬学的調製物中で薬学的に受容可能なキャリアと混合され得るため、ポリペプチドは、少ない重量パーセンテージの調製物のみを構成し得る。それにもかかわらず、ポリペプチドは、生物系において混在し得る物質から分離されているので、単離される(すなわち、他のタンパク質から単離される)。
【0032】
従って、用語「Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチド」は、天然に存在するΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドと同様、改変体を包含する。本明細書中で使用される場合、Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドの「改変体」は、ネイティブのΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドの一次アミノ酸配列に1つ以上の改変を含むポリペプチドである。改変体は、非改変の(天然に存在する)配列のポリペプチドにと比較して機能の変化を有さない、改変Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドを含む。Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチド改変体を産生する改変は、代表的に、Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドをコードする核酸になされ、これとしては、(1)Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドの特性(例えば、発現系におけるタンパク質安定性またはタンパク質間結合の安定性)を増強する;(2)Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドに対する新規の活性または特性を提供する(例えば、検出可能部分の添加);あるいは(3)他の分子(例えば、ヘパリン)との等価またはよりよい相互作用を提供するための、欠失、点変異、切断(truncation)、アミノ酸置換、およびアミノ酸または非アミノ酸部分の付加が、挙げられ得る。あるいは、改変(例えば、切断、リンカー分子の付加、検出可能部分(例えば、ビオチン)の付加、脂肪酸の付加など)は、ポリペプチドに直接行われ得る。改変はまた、Δ4,5グリクロニダーゼアミノ酸配列の全てまたは一部からなる融合タンパク質を包含する。当業者は、タンパク質配列の変更における、タンパク質立体構造の効果を予測する方法に精通し得、従って、公知の方法に従って改変Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドを「設計」し得る。このような方法の1つの例は、DahiyatおよびMayoによって、Science 278:82−87,1997において記載され、これにより、タンパク質は、新規に設計され得る。方法は、既知のタンパク質に適用され、ポリペプチド配列の一部分のみを変化させ得る。DahiyatおよびMayoの計算方法の適用により、ポリペプチドの特異的な改変体を提案し、そしてこの改変体が所望の立体構造を保持するか否かを試験し得る。
【0033】
改変体としては、特異的に改変され、その生理学的活性に非関連のこのポリペプチドの特徴を変化させたΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドが、挙げられ得る。例えば、システイン残基は、望まないジスルフィド結合を阻止するために、置換され得るか、または欠失され得る。同様に、特定のアミノ酸は、発現系(例えば、酵母発現系(KEX2プロテアーゼ活性が存在する)における二塩基性アミノ酸残基)において、プロテアーゼによるタンパク分解を除去することによってΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドの発現を増大するために変換され得る。
【0034】
Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドをコードする核酸の変異は、好ましくはコード配列のアミノ酸読み取り枠を保存し、そして好ましくは、ハイブリダイズして種々のポリペプチドの発現に有害であり得る二次構造(例えば、ヘアピンまたはループ)を形成しやすい領域を、核酸内に作らない。
【0035】
変異は、アミノ酸置換を選択することによって、またはポリペプチドをコードする核酸内の選択部位のランダム変異誘発によってなされ得る。次いで、改変体ポリペプチドは、どの変異が所望の特性を有する改変体ポリペプチドを提供するかを決定するために、1つ以上の活性について発現され、そして試験される。さらなる変異は、ポリペプチドのアミノ酸配列についてサイレントであるが、特定の宿主における転写のための優先(preferred)コドンを提供する改変体(または非改変体Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチド)に対してなされ得る。例えば、E.coliにおける核酸の翻訳についての優先コドンは、当業者に周知である。なお他の変異は、Δ4,5グリクロニダーゼの遺伝子またはcDNAクローンの非コード配列に対して、ポリペプチドの発現を増大させるために、なされ得る。
【0036】
アミノ酸置換の1つの型は、「保存的置換」と呼ばれる。本明細書中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」または「保存的置換」は、置換後のアミノ酸残基が、置換前の残基と同様に荷電し、置換前の残基と同様かまたはこれより小さいサイズである、アミノ酸置換をいう。アミノ酸の保存的置換としては、以下の群のアミノ酸間で行われる置換が挙げられる:(a)低分子非極性アミノ酸(A、M、I、L、およびV);(b)低分子極性アミノ酸(G、S、TおよびC);(c)アミドアミノ酸(QおよびN);(d)芳香族アミノ酸(F、YおよびW);(e)塩基性アミノ酸(K、RおよびH);ならびに(f)酸性アミノ酸(EおよびD)。中性に荷電し、そして残基をより小さい残基と置換する置換もまた、この残基が異なった群にあっても、「保存的置換」とみなされ得る(例えば、フェニルアラニンをより小さなイソロイシンで置換する)。用語「保存的アミノ酸置換」はまた、アミノ酸アナログまたは改変体の使用をいう。
【0037】
アミノ酸の置換、付加、または欠失を行うための方法は、当該分野で周知である。用語「保存的置換」、「非保存的置換」、「非極性アミノ酸」、「極性アミノ酸」、および「酸性アミノ酸」は、全て、先行技術の用語と一致して使用される。これらの用語のそれぞれは、当該分野で周知であり、生化学教科書(例えば、保存的置換および非保存的置換、ならびにその極性、非極性、または酸性の定義をもたらすアミノ酸の特性について記載する、Geoffrey Zubay著「Biochemistry」Addison−Wesley Publishing Co.,1986編)のような多くの刊行物に広範に記載されている。
【0038】
当業者は、慣用的スクリーニングアッセイ(好ましくは、本明細書中に記載される生物学的アッセイ)を使用して、置換の効果を予測し得る。ペプチド特性(熱安定性、酵素活性、疎水性、タンパク分解性分解の感受性、またはキャリアもしくはマルチマーへ凝集する傾向が挙げられる)の改変は、当業者に周知である。タンパク質化学およびタンパク質構造のさらなる詳細な説明については、Schulz,G.E.ら,Principles of Protein Structure,Springer−Verlag,New York,1979ならびにCreighton,T.E.,Proteins:Structure and Molecular Principles,W.H.FreemanおよびCo.,San Francisco,1984を参照のこと。
【0039】
さらに、いくつかのアミノ酸置換は、非保存的置換である。特定の実施形態では、置換は、活性部位または結合部位から離れており、非保存的置換は容易に耐性であるが、但し、これらは、天然のΔ4,5グリクロニダーゼの三次構造特徴を保存しているかまたは天然のΔ4,5グリクロニダーゼに類似した三次構造を保存しており、その結果、活性部位および結合部位を保存する。非保存的置換(例えば、上記の群(または上に示さない他の2つのアミノ酸群)の内の置換よりむしろ群の間の置換)は、(a)置換の範囲内のペプチド骨格の構造(b)標的部位における分子の電荷または疎水性あるいは(c)側鎖の体積の維持に際したそれらの効果においてより顕著に異なる。
【0040】
実施形態の別のセットでは、配列番号2の単離された核酸等価物は、実質的に純粋な本発明のΔ4,5グリクロニダーゼおよびその機能的改変体をコードする。なおさらなる実施形態では、配列番号4の単離された核酸等価物もまた、与えられる。本発明に従って、Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供され、以下を含む:(a)配列番号2または配列番号4およびΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドまたはその一部をコードする配列の核酸等価物からなる群から選択される分子に対して、ストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズする核酸分子、(b)Δ4,5グリクロニダーゼポリペプチドまたはその一部をそれぞれコードする(a)の欠失、付加および置換、(c)遺伝コードの縮重に起因して、コドン配列において(a)または(b)の核酸分子と異なる核酸分子、ならびに、(d)(a)、(b)または(c)の相補体。
【0041】
本発明はまた、ネイティブ物質に存在するコドンに対して代替的なコドンを有する縮重核酸もまた含む。例えば、セリン残基は、コドンTCA,AGT、TCC、TCG、TCTおよびAGCによってコードされる。6個のコドンは、それぞれセリン残基をコードする目的に対しては等価である。従って、インビトロまたはインビボで、セリンをコードする任意のヌクレオチドトリプレットを使用し、タンパク質合成装置に、伸張するΔ4,5グリクロニダーゼポリペプチドにセリン残基を組込むよう指示し得ることが、当業者には明らかである。同様に、他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:CCA、CCC、CCGおよびCCT(プロリンコドン);CGA、CGC、CGG、CGT、AGAおよびAGG(アルギニンコドン);ACA、ACC、ACGおよびACT(トレオニンコドン);AACおよびAAT(アスパラギンコドン);およびATA、ATCおよびATT(イソロイシンコドン)。他のアミノ酸残基は、複数のヌクレオチド配列により同様にコードされ得る。従って、本発明は、遺伝コードの縮重に起因して、生物学的に単離された核酸とコドン配列において異なる縮重核酸を含む。
【0042】
核酸に関して本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、以下:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された;(ii)クローニングによって組換え的に産生された;(iii)切断およびゲル分離により精製された;または(iv)例えば、化学合成により合成された、を意味する。単離された核酸は、当該分野で周知の組換えDNA技術により容易に操作され得る核酸である。従って、5’制限部位および3’制限部位が既知であるベクターに含まれるヌクレオチド配列またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているヌクレオチド配列は、単離されたとみなされるが、その天然の宿主中に、そのネイティブの状態で存在する核酸配列は単離されない。単離された核酸は、実質的に精製され得るが、精製される必要はない。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター中に単離された核酸は、純粋ではなく、その中にそれが属していた細胞内の少量のみの物質を含み得る。しかし、当業者に公知の標準的技術により容易に操作し得るので、この用語が本明細書で使用される場合、このような核酸が単離される。
【0043】
本発明の1つの実施形態は、組換え的に産生されるΔ4,5グリクロニダーゼを提供する。このような分子は、1つ以上の調節配列に作動可能に結合したコード配列を含むベクターを使用して組換え的に産生され得る。本明細書で使用される場合、コード配列および調節配列は、それらがコード配列の発現または転写を調節配列の影響下または制御下に配置するように共有結合する場合、「作動可能に結合した」と言われる。コード配列が機能性タンパク質に翻訳されることが所望される場合、コード配列は作動可能に調節配列に結合される。5’調節配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写を生じる場合、および2つのDNA配列の間の結合の性質が、(1)フレームシフト変異の誘導を生ぜず、(2)プロモーター領域のコード配列の転写を指示する能力を妨害せず、または(3)対応するRNA転写物のタンパク質へ翻訳される能力を妨害しない場合、2つのDNA配列は、作動可能に結合したと言われる。従って、生じる転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるように、プロモーター領域がDNA配列の転写に影響し得る場合、プロモーター領域はコード配列に作動可能に結合される。
【0044】
遺伝子発現に必要な調節配列の詳細な性質は、種間または細胞型間で異なるが、必要な場合、一般には、転写および翻訳の開始にそれぞれ関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列(例えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列など)を含む。特に、このような5’非転写調節配列は、作動可能に結合した遺伝子の転写調節に対するプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。プロモーターは、構成的であってもよくまたは誘導性であってもよい。所望の場合、調節配列はまた、エンハンサー配列または上流のアクチベーター配列を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、異なる遺伝的環境間での輸送または宿主細胞中での発現のために、制限処理および連結によって所望の配列が挿入され得る多数の核酸のいずれかであり得る。ベクターは、代表的にはDNAからなるが、RNAベクターもまた利用され得る。ベクターとしては、プラスミドおよびファージミドが挙げられるが、これらに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞中で複製し得、ベクターが確定できる様式で切断され得、そして、新規組換えベクターが宿主細胞内で複製するその能力を保持するように所望のDNA配列が連結され得る1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によりさらに特徴付けられる。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、宿主細菌内でプラスミドのコピー数が増加するにつれて多数回生じ得るかまたは有糸分裂により宿主が複製するにつれて宿主あたり1回だけ生じ得る。ファージの場合、溶菌期の間に複製は能動的に生じ得るか、または溶原期の間に受動的に生じ得る。発現ベクターは、所望のDNA配列が、作動可能に調節配列に結合し、RNA転写物として発現され得るように制限および連結により挿入され得るベクターである。ベクターは、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされたかまたはされていない細胞の同定に使用するために適した1つ以上のマーカー配列をさらに含み得る。例えば、マーカーは、抗生物質または他の化合物に対する耐性または感受性のいずれかを増加させるかまたは減少させるタンパク質をコードする遺伝子、その活性が当該分野で標準的なアッセイによって検出され得る酵素をコードする遺伝子(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)および形質転換またはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に可視的に影響する遺伝子を含む。DNAセグメント中に存在し、これに作動可能に結合した構造遺伝子産物を、自律的に複製し、発現し得るベクターが好ましい。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件」とは、当業者に公知のパラメーターをいう。ストリンジェントな条件の一つの例は、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02% フィコール、0.02% ポリビニルピロリドン、0.02% ウシ血清アルブミン(BSA)、25mM NaHPO(pH7)、0.5% SDS、2mM EDTA)中で65℃でのハイブリダイゼーションである。SSCは、0.15M 塩化ナトリウム/0.15M クエン酸ナトリウム、pH7であり;SDSは、ドデシル硫酸ナトリウムであり;そしてEDTAは、エチレンジアミン四酢酸である。同程度のストリンジェンシーを生じる他の条件、試薬なども使用され得る。当業者は、このような条件およびここに挙げられていない条件についても精通している
当業者はまた、このような分子(これらは、慣用的に単離され、その後関連した核酸が単離される)の発現に関して細胞をスクリーニングする方法論についても精通している。従って、実質的に純粋な本発明のΔ4,5グリクロニダーゼのホモログおよび対立遺伝子ならびにそれらをコードする核酸は、慣用的に入手され得、そして、本発明は、開示された特定の配列に限定することを意図しない。当業者は、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ核酸のホモログおよび対立遺伝子の明白な同定を可能にする様式で、条件を操作し得ることが理解される。当業者はまた、このような分子(慣用的に単離され、その後関連した核酸分子が単離され、そして配列決定される)の発現のための細胞およびライブラリーをスクリーニングするための方法論にも精通している。
【0047】
一般に、ホモログおよび対立遺伝子は、代表的には、配列番号2および1のそれぞれの等価物と少なくとも約40%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも約50%のアミノ酸同一性を共有する。本発明のホモログおよび対立遺伝子はまた、配列番号4および3それぞれの核酸等価物およびアミノ酸等価物を含むことを意図する。いくつかの例では、配列は、少なくとも約50%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも約65%のアミノ酸同一性を共有し、そして、なお他の例では、配列は、少なくとも約60%のヌクレオチド同一性および/または少なくとも約75%のアミノ酸同一性を共有する。相同性は、NCBI(Bethesda、Maryland)により開発された、インターネット(ftp:/ncbi.nlm.nih.gov/pub/)を介して利用され得る種々の公に利用可能なソフトウェアツールを使用して計算され得る。例示的なツールとしては、http://wwww.ncbi.nlm.nih.gov.で入手可能なBLASTシステムが挙げられる。Pairwise and Clustal W alignments(BLOSUM 30 matrix setting)ならびにKyte−Doolittle疎水性親水性分析も、Mac Vetor配列解析ソフトウェア(Oxford Molecular Group)を使用して入手され得る。前述の核酸のWatson−Crick相補体もまた、本発明に含まれる。
【0048】
Δ4,5グリクロニダーゼ関連遺伝子(例えば、Δ4,5グリクロニダーゼのホモログおよび対立遺伝子)のスクリーニングにおいて、放射性活性プローブをともに用いて、前述の条件を使用してサザンブロットが行なわれ得る。DNAが完全に移動した膜を洗浄した後、膜は、放射性活性シグナルを検出するために、X線フィルムに配置され得るかまたはリン酸画像化プレート(phosphoimager plate)に配置され得る。
【0049】
原核生物の系では、複製部位およびコントロール配列を含むプラスミドベクターは、使用され得る宿主と適合する種に由来する。適切なプラスミドベクターの例としては、pBR322、pUC18、pUC19などが挙げられ;適切なファージベクターまたはバクテリオファージベクターとしては、λgt10、λgt11などが挙げられ;適切なウイルスベクターとしては、pMAM−neo、pKRCなどが挙げられる。本発明の選択されたベクターが、選択された宿主細胞内で、自律的に複製する能力を有することが好ましい。有用な原核宿主としては、例えば、E.coli、Flavobacterium heparinum、Bacillus、Streptomyces、Pseudomonas、Salmonella、Serratiaなどの細菌が挙げられる。
【0050】
純粋な本発明のΔ4,5グリクロニダーゼを、原核細胞中で実質的に発現させるために、実質的に純粋な本発明のΔ4,5グリクロニダーゼの核酸配列を機能性原核細胞プロモーターに作動可能に結合することが好ましい。このようなプロモーターは、構成的であってもよく、またより好ましくは、調節性(例えば、誘導性または活性化)であってもよい。構成的なプロモーターの例としては、バクテリオファージλのintプロモーター、pBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子配列のblaプロモーターおよびpPR325のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子配列のCATプロモーターなどが挙げられる。誘導性原核プロモーターの例としては、バクテリオファージλの主要な右プロモーターおよび左プロモーター(PおよびP)、E.coliのtrp、recA、lacZ、lacIおよびgalプロモーター、B.subtilisのα−アミラーゼ(Ulmanenら、J.Bacteriol.162:176〜182(1985))およびB.subtilisのζ−28特異的プロモーター(Gilmanら、Gene sequence 32:11〜20(1984))、Bacillusのバクテリオファージのプロモーター(Gryczan、In:The Molecular Biology of the Bacilli、Academic Press、Inc.、NY(1982))およびStreptomycesプロモーター(Wardら、Mol.Gen.Genet.203:468〜478(1986))が挙げられる。
【0051】
原核プロモーターは、Glick(J.Ind.Microbiol.1:277〜282(1987))、Cenatiempo(Biochimie 68:505〜516(1986))およびGottesman(Ann.Rev.Genet.18:415〜442(1984))に概説される。
【0052】
原核細胞中の適切な発現もまた、コードする配列の上流のリボソーム結合部位の存在を必要とする。このようなリボソーム結合部位は、例えば、Goldら(Ann.Rev.Microbiol.35:365〜404(1981))により開示される。
【0053】
原核生物細胞は正常な真核生物性のグリコシル化を有する本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ(glycuronidase)を産生し得ないので、真核生物宿主の本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ発現は、グリコシル化が所望される場合に、有用である。好ましい真核生物宿主としては、例えば、インビボまたは組織培養物中のいずれかにおける、酵母、真菌、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が挙げられる。宿主として有用であり得る哺乳動物細胞としては、HeLa細胞、線維芽細胞起源の細胞(例えば、VEROまたはCHO−K1)、またはリンパ球起源の細胞(例えば、ハイブリドーマSP2/0−AG14または骨髄腫P3x63Sg8)ならびにそれらの誘導体が挙げられる。好ましい哺乳動物宿主細胞としては、SP2/0およびJ558L、ならびに、正確な翻訳後プロセシングのためのより良い能力を提供し得る神経細胞芽腫(例えば、IMR 332)が挙げられる。移植可能な器官の胚細胞および成熟細胞または、本発明の幾つかの局面に従うと有用である。
【0054】
さらに、植物細胞はまた、宿主細胞として利用可能であり、そして、植物細胞と適合性である制御配列(例えば、ノパリン合成酵素プロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列)が、利用可能である。
【0055】
別の好ましい宿主は、例えば、Drosophila larvaeのような昆虫宿主である。宿主として昆虫細胞を使用する場合、このDrosophilaアルコールデヒドロゲナーゼプロモーターが、使用され得る(Rubin,Science 240:1453−1459(1988))。あるいは、バキュロウイルスベクターが、操作されて大量の本発明のΔ4,5グリクロニダーゼを昆虫細胞中で発現し得る(Jasny,Science 238:1653(1987);Miller et al.,Genetic Engineering(1986),Setlow,J.K.,et al.,eds.,Plenum,Vol.8,pp.277−297)。
【0056】
解糖系酵素をコードする遺伝子に由来するプロモーターおよび終止エレメントを取り込み、そして、グルコースが豊富な培地において酵母が増殖した場合に大量に産生される一連の酵母遺伝子配列発現系のいずれかがまた、利用され得る。既知の解糖系遺伝子配列はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供し得る。酵母は、これらが転写後のペプチド改変を保持し得る点において、実質的な利益を提供する。強力なプロモーター配列および酵母中での所望のタンパク質の産生のために利用され得る高コピー数のプラスミドを利用する、多くの組換えDNAストラテジーが存在する。酵母は、クローニングした哺乳動物遺伝子配列産物上のリーダー配列を認識して、リーダー配列を有する配列(すなわち、プレペプチド)を分泌する。
【0057】
広範な多様性の転写および翻訳の調節配列が、その宿主の性質に依存して、利用され得る。この転写および翻訳の調節シグナルは、ウイルス性の供給源(例えば、アデノウイウルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サルウイルスなど)に由来し得、ここで、この調節シグナルは、高いレベルの発現を有する特定の遺伝子配列に関連する。あるいは、哺乳動物発現産物(例えば、アクチン、コラーゲン、ミオシンなど)からのプロモーターが、使用され得る。抑制または活性化を可能にする転写開始調節シグナルが、選択され得、その結果、それらの遺伝子配列の発現は、調節され得る。テンプレート感受性である調節シグナルも興味深いものであり、その結果、温度を変更することのよって、発現が、抑制または開始され得るか、または化学的調節(すなわち、代謝調節)に供される。
【0058】
これまで議論されたように、真核生物宿主における本発明のΔ4,5グリクロニダーゼの発現は、真核生物調節配列を使用して達成される。このような領域は、一般的に、RNA合成の開始を方向付けるのに十分なプロモーター領域を含む。好ましい真核生物プロモーターとしては、例えば、マウス金属結合性タンパク質I遺伝子配列のプロモーター(Hamer et al.,J.Mo1.Appl.Gen.1:273−288(1982));ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight,Cell 31 :355−365(1982));SV40初期プロモーター(Benoist et al.,Nature(London)290:304−310(1981));酵母gal4遺伝子配列プロモーター(Johnston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:6971−6975(1982);Silver et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)81:5951−5955(1984))が挙げられる。
【0059】
広く知られているように、真核生物性mRNAの翻訳は、最初のメチオニンをコードするコドンにて開始される。この理由のために、真核生物性プロモーターと、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼをコードするDNA配列との間の連結は、メチオニンをコードし得る介在するコドン(すなわち、AUG)のいずれをも含まないことを確認することが可能である。このようなコドンの存在によって、(AUGコドンが、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼをコードする配列と同じリーディングフレーム中にある場合に)融合タンパク質を形成するか、または(そのAUGコドンが本発明のΔ4,5グリクロニダーゼをコードする配列を同じリーディングフレームにない場合に)フレームシフト変異を生じる。
【0060】
1つの実施形態において、所望の遺伝子配列を宿主細胞染色体に組み入れ得るベクターが使用される。その導入されたDNAをそれらの染色体に安定して組み入れた細胞は、その発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカーを導入することによっても選択され得る。このマーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性を提供し得るか、または例えば、抗生物質、重金属などに対する殺生物剤耐性を与え得る。この選択マーカー遺伝子配列は、発現されるDNA遺伝子配列に直接的に連結するか、または同時トランスフェクトによってその同じ細胞に導入され得るかのいずれかである。さらなるエレメントはまた、Δ4,5グリクロニダーゼmRNAの最適な合成であり得る。これらのエレメントとしては、スプライシングシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサー、および終止シグナルが挙げられる。このようなエレメントを組み込むcDNA発現ベクターとしては、Okayama,Molec.Cell.Biol.3:280(1983)によって記載されたベクターが挙げられる。
【0061】
好ましい実施形態において、その導入配列は、レシピエント宿主において自己複製可能であるプラスミドまたはウイルスベクターに対して取り込まれ得る。広範なベクターのいずれもが、この目的のために使用され得る。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択するのに重要な因子としては、以下が挙げられる:そのベクターを含むレシピエント細胞が認識されかつそのベクターを含まないそれらのレシピエント細胞から選択される容易性;特定の宿主において所望されるベクターの高いコピー数;および異なる種の宿主細胞の間のベクターを「シャトル」することできるか否かということ。好ましい原核生物ベクターとしては、E.coli中で複製可能なプラスミド(例えば、pBR322、ColEl、pSC101、pACYC 184、およびπVX)が挙げられる。このようなプラスミドは、例えば、Sambrook,et al(MolecularCloning :A Laboratory Manual,second edition,edited by Sambrook,Fritsch,& Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory,1989))によって開示される。Bacillusプラスミドとしては、pC194,pC221,pT127などが挙げられる。このようなプラスミドは、Gryczan(The Molecular Biology of the Bacilli,Academic Press,NY(1982),pp.307−329)らによって開示される。適切なStreptomycesプラスミドとしては、pIJ101(Kendall et al.,J.Bacteriol.169:4177−4183(1987))、およびStreptomycesバクテリオファージ(例えば、ΦC31(Chater et al.,Sixth International Syrnposiuna on Actinomaycetales Biology,Akademiai Kaido,Budapest,Hungary(1986),pp.45−54))が挙げられる。シュードモナスプラスミドは、John et al.(Rev.Infect.Dis.8:693−704(1986)),およびIzaki(Jpn.J.Bacteriol.33:729−742(1978))によって概説されている。
【0062】
好ましい真核生物性プラスミドとしては、例えば、BPV、EBV、SV40、2−ミクロンサークル(micron circle)など、またはそれらの誘導体が挙げられる。このようなプラスミドは、当該分野で周知である(Botstein et al.,Miatni Wntr.Symp.19:265−274(1982);Broach,The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces :Life Cycle and Inheritance,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,p.445−470(1981);Broach,Cell 28:203−204(1982);Bollonet al.,J.Clin.Hematol.Oncol.10:39−48(1980);Maniatis,Cell Biology :A Comprehensive Treatise,Vol.3,Gene Sequence Expression,Academic Press,NY,pp.563−608(1980))。他の好ましい真核生物ベクターは、ウイルスベクターである。例えば、限定されることなく、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、ならびに種々のレトロウイルスが、使用され得る。それらのウイルスベクターとしては、挿入DNAまたは挿入RNの発現を引き起こすDNAウイルスまたはRNAウイルスのいずれかが挙げられ得る。
【0063】
一旦、そのベクターまたはその構築物を含むDNA配列が、発現ために調製されると、そのDNA構築物は、種々の適切な手段(すなわち、形質転換、トランスフェクション、結合体化、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接的マイクロインジェクションなど)のうちのいずれかによって、適切な宿主細胞に導入され得る。さらに、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼをコードするDNAまたはRNAは、細胞に直接的に注入され得るか、または、微粒子に付着されたあとに細胞膜を介して推進され得る。そのベクターの導入の後に、レシピエント細胞は、選択的培地中で増殖して、この選択培地によって、ベクターを含む細胞の増殖について選択が行われる。このクローニングされた遺伝子配列の発現によって、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼが産生される。これは、細胞の導入自体またはその細胞導入の後に、形質転換した細胞中で生じ、(例えば、神経芽腫細胞に対するブロモオキシウラシルの投与などによって)分化する。
【0064】
本発明はまた、その基質特異性および比活性に起因して、酵素的なツールとしてのΔ4,5グリクロニダーゼの使用を提供する。組換え酵素と天然の酵素との直接的なより厳格な比較において、少なくともいくつかの組換え酵素(Δ4,5Δ20)が、同一反応条件下で測定さた場合、天然のフラボバクテリアの(Flavobacterial)酵素と比較して、少なくとも2倍よりも高い比活性を保持し、そして、ある場合においては、大まかに3倍高い比活性を保持したことが見出された。さらに、クローニングされた酵素の活性は、E.coli中における組換え発現によって損なわれない。
【0065】
この組換えΔ4,5グリクロニダーゼは、急激なイオン強度依存性を示した。これらの結果は、下記の実験において使用された二硫酸化されたヘパリンジサッカリドのイオン特性ならびに基質結合および/または触媒作用において機能し得る酵素中で存在する多くのイオン性残基の両方がある場合に興味深い。それらの荷電している残基の多くは、構造的および機能的に関連する酵素において保存されている。基質の観点から、調べた非飽和ジサッカリドの全ては、ウロン酸のC6カルボキシレートに起因して負の電荷(pH6.4)を保持する。この酸は、特にΔ4,5結合の近傍に存在する場合に、重要な構造的決定因子として作用することが可能である。6−Oスルフェートの(例えば、ΔUHNS,6S中の)電荷の中和は、別の寄与因子である。酵素的な観点から、その組換えグリクロニダーゼ(Δ4,5Δ20)は、47の塩基性残基(理論的には、pI8.5)を保持する。これらの位置の塩基性残基は、その位置が、調べた様々なグリクロニダーゼの間で一様に保存されたR151を含む。おそらくは、R151は、ウロン酸のカルボキシレートと相互作用する。同時に、Δ4,5はまた、44の酸性残基を保持する。これらのうちの少なくとも10個が高度に保存されている。塩濃度を増加することによって、これらのイオン性残基(酸性残基または塩基性残基のいずれ)のうちの幾つかを電荷的にマスキングすると、酵素活性が干渉され得る。ヘパリナーゼに関して、類似のイオン強度依存性の観察がなされている。[Ernst S,et al Expression in Escherichia coli,purification and characterization of heparinase I from Flavobacterium heparinum.Biochem J.1996 Apr 15;315(pt 2):589−97.]。
【0066】
6.4の最適のベル形pHプロファイル(bell−shaped pH profile)もまた、本発明において観察される。6.4pH最適値は、F.heparinumΔ4,5について当初に報告された結果ならびにBacillus.sp.GL1から精製された不飽和のグルクロニル加水分解酵素についてより最近報告された結果[Hashimoto,W.ら(1999)ArchBiochem Biophys 368,367−74]と概ね一致する。この結果は、触媒において機能する1つ以上のヒスチジン残基と必然的に関係する。11つのヒスチジンが一次配列内に存在するが、3つのヒスチジン(H115、H201、およびH218)が高度に保存されているようである。興味深いことに、触媒的に重要なヒスチジンはまた、全3つのヘパリンリアーゼ[Pojasek,K.,Shriver,Z.,Hu,Y.,およびSasisekharan,R.(2000)Biochemistry 39,4012−9]ならびにFlavobacterium heparinumからのコンドロイチンACリアーゼ[Huang,W.,Boju,L.,Tkalec,L.,Su,H.,Yang,H.O.,Gunay,N.S.,Linhardt,R.J.,Kim,Y.S.,Matte,A.,およびCygler,M.(2001)Biochemistry 40,2359−72]に存在する。酵素のこれら2つのクラスは、いくぶん異なる機構(すなわち、β−脱離 対 加水分解)によってグリコサミノグリカンを切断するが、これらの両方ともは、おそらく、酸−塩基触媒(すわなち、イミダゾール)に関連する。
【0067】
基質特異性の問題が、現在、以下の3つの構造的観点より考慮されている:(1)グリコシド結合の性質;(2)不飽和二糖の相対的硫酸化パターン;および(3)糖鎖長の役割(例えば、二糖 対 四糖)。本発明者らの結果は、組換えΔ4,5グリクロニダーゼについて、コンドロイチン/デルマタンおよび/またはヒアルロン酸よりもむしろ、ヘパリンを最良の基質にする1→3結合よりも1→4結合に対する明らかな先性があることを示す。しかし、この結合位置が重要であるものの、必須ではないことに注意されたい。コンドロイチンおよびヒアルロン酸A4,5二糖の両方は、非常にゆっくりとした速度であるが、ヘパリン二糖を加水分解するために必要とされたよりもより高濃度の酵素を使用して加水分解された。
【0068】
本発明者らはまた、ヘパリン二糖中の特異的硫酸化に関して、Δ4,5グリクロニダーゼの速度論的パターンを示す。まず第一に、本発明者らは、非還元末端に2−O硫酸化ウロニデート(uronidate)(ΔU2S)を含む不飽和二糖が、Δ4,5グリクロニダーゼによって、一般的に切断されないことを見出した。さらに、2−O−硫酸化二糖の、非2−O−含有二糖基質(例えば、ΔUHNAc)の加水分解を競合阻害する能力がないことは、さらに、2−O硫酸の存在が、酵素へのこの二糖の結合を妨げることを示唆する。
【0069】
グルコサミンに存在する特異的な硫酸基の効果を考慮すると、この酵素は、6−O−硫酸化に対する段階的な優先を有するが、不飽和アミンまたは硫酸化アミンに対して明らかな選択を有すると、大まかに要約され得る。この階層は、試験した全ての非2−O−含有ヘパリン二糖がこの酵素によって切断されたという事実を考慮すると、完全には区別できない。そのかわり、相対的な速度論的パラメーターに基づいている。グルコサミンのN位および6位での明らかな基質識別は、いくぶん前後関係(特に6−O−硫酸化の場合)によると思われる。すなわち、6−O硫酸化は、糖基質に好ましい選択性を与え得るが、この位置作用は、脱アセチル化アミン(例えば、ΔUHNAc6S 対 ΔUHNH26SまたはΔUHNs,6s)の存在によって相殺され得る。
【0070】
Δ4,5が、いわゆるグルコサミンについての「N位」識別に沿う2−O−硫酸化ウロニデート(uronidate)に対して実証する構造的優先性は、グリコサミノグリカンの組成分析用の分析手段としてのグルコロニダーゼの使用が活用され得る。本発明者らは、以下の実施例に記載される本発明者らの速度論的に規定された基質特異性決定に全体的に基づいて、特定の二糖「ピーク」が消失すること(すなわち、232nmでの吸光度のグリクロニダーゼ依存的な喪失に起因して)によって、程度および相対速度を予測することが可能であった。試験された全ての2−O−硫酸含有二糖は、Δ4,5グリクロニダーゼによる加水分解に対して耐性であった。他方、残りの二糖は、それらの相対的な基質特異性に対応する時間依存的な様式(すなわち、ΔUHNAc6s>ΔUHNS,6s>ΔUHNS)において加水分解された。
【0071】
この実験において、別の重要でありかつ驚くべき観察がなされた、すなわち、Δ4,5グリクロニダーゼはまた、Δ4,5不飽和四糖を加水分解する。この特定の四糖が、二糖ΔUNSと同等の基質であることに注目することはまた、非常に興味深い。この観察は、最初に報告された[Hovingh, P. and Linker, A. (1977)Biocheen J165, 287−93]ように、増加する分子量に否定的に基づく酵素によって使用される基質識別について議論の余地があり得る。
【0072】
従って、本発明はまた、本明細書中に記載される実質的に純粋なΔ4,5グリクロニダーゼを用いるグリコサミノグリカンの切断を提供する。本発明のΔ4,5グリクロニダーゼを使用して、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼとHSGAG基質とを接触させることによってHSGAGを特異的に切断し得る。本発明は、HSGAGを切断するのに有用な多様なインビトロ、インビボおよびエキソビボの方法において有用である。
【0073】
本明細書中で使用される場合、用語「HSGAG」、「GAG」および「グリコサミノグリカン」は、ヘパリン様/ヘパラン基質様の構造および特性を有する分子のファミリーをいうように、交換可能に使用される。これらの分子としては、低分子量ヘパリン(LMWH)、ヘパリン、生物工学的に調製されたヘパリン、化学修飾されたヘパリン、合成ヘパリン、およびヘパラン硫酸が挙げられるが、これらに限定されない。用語「生物工学的ヘパリン」は、化学的に修飾され、そして例えば、Raziら,Bioche.J.1995 Jul 15;309(Pt 2):465−72に記載される多糖の天然の供給源から調製されるヘパリンを含む。化学的に修飾されたヘパリンは、Yatesら,Carbohydrate Res(1996)Nov 20;294:15−27によって記載され、そして当業者に公知である。合成ヘパリンは、当業者に周知であり、そしてPetitou,M.ら,Bioorg Med Chem Lett.(1999)Apr 19;9(8):1161−6に記載される。
【0074】
グリコサミノグリカンのサンプルの分析はまた、Δ4,5グリクロニダーゼ単独または他の酵素と組み合せて用いることで可能である。他のHSGAG分解酵素としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヘパリナーゼ−I、ヘパリナーゼ−II、ヘパリナーゼ−III、ヘパリナーゼ−IV、D−グリクロニダーゼおよびL−イズロニダーゼ(iduronidase)、ヘパリナーゼの修飾バージョン、それらの改変体および機能的に活性なフラグメント。
【0075】
本発明のΔ4,5グリクロニダーゼの比活性を試験するために使用され得る方法は、当該分野で公知であり、例えば、実施例に記載される方法である。これらの方法を使用して、Δ4,5グリクロニダーゼの改変体および機能的に活性化フラグメントの機能もまた評価され得る。kcat値は、Δ4,5グリクロニダーゼ酵素の活性を評価するために、任意の酵素活性アッセイを用いて決定され得る。いくつかのこのようなアッセイは、当該分野で周知である。例えば、kcatを測定するためのアッセイは、Ernst,S.E.,Venkataraman,G.,Winkler,S.,Godavarti,R.,Langer,R.,Cooney,C.およびSasisekharan.R.(1996)Biochem.J.315,589−597に記載される。「ネイティブのΔ4,5グリクロニダーゼkcat値」は、F. heparinumの細胞溶解物から得られたネイティブのΔ4,5グリクロニダーゼの酵素活性の測定値である(以下の実施例にもまた記載される)。従って、本明細書中で提供される開示に基づいて、当業者は、機能的改変体のようなネイティブΔ4,5グリクロニダーゼ分子に関して変更された酵素活性を有する他のΔ4,5グリクロニダーゼ分子を同定することができる。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「比活性」は、Δ4,5グリクロニダーゼの調製物の酵素活性をいう。一般に、本発明の実質的に純粋なかつ/または単離されたΔ4,5グリクロニダーゼが、1ピコモルの酵素あたり、1分あたり、少なくとも約60ピコモルの加水分解された基質の比活性を有する。これは、一般に、ヘパリン二糖ΔUHNAのような基質を用いて、酵素に対して、1秒あたり少なくとも約10のkcatに対応する。
【0077】
グリコサミノグリカン上のΔ4,5グリクロニダーゼの活性に起因して、Δ4,5グリクロニダーゼによって生成された生成物プロファイルは、Δ4,5グリクロニダーゼ単独、または他の酵素と組み合せることによって生成された分解産物の型または量を試験するための当該分野で公知の任意の方法によって決定され得る。当業者はまた、Δ4,5グリクロニダーゼを使用して、サンプル中のグリコサミノグリカンの純度もまた評価し得ることを認識する。生成物の型および量を決定するための1つの好ましい方法は、Rhomberg,A.J.ら,PNAS,v.95,p.4176−4181,(April 1998)に記載される(これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)。Rhombergの参考文献において開示される方法は、ヘパリナーゼによって生成される酵素生成物を同定するために、質量分析法およびキャピラリー電気泳動技術の組み合わせを使用する。Rhombergの研究は、HSGAGオリゴ糖を生成するのにHSGAGを分解するためにヘパリナーゼを使用する。MALDI(マトリクス−補助レーザー脱着イオン化(Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization))質量分析は、基質、酵素および酵素反応の最終生成物の同定および半定量的測定のために使用され得る。キャピラリー電気泳動技術は、生成物の小さな差異をも分解するために生成物を分離し、そして生成された生成物を定量するために、質量分析と組み合せて適用される。キャピラリー電気泳動は、二糖とそのセミカルバゾン誘導体との間の差異さえも分解し得る。多糖および他のポリマーを配列決定するための詳細な方法は、同時係属中の米国特許出願番号第09/557,997号および同第09/558,137号(ともに2000年4月24日出願されており、共有に係る)に開示されている。これらの両方の出願の内容全体は、参考として本明細書に援用される。
【0078】
簡単に述べると、この方法は、酵素消化、およびその後の質量分析法およびキャピラリー電気泳動法によって、実施される。この酵素アッセイは、Δ4,5グリクロニダーゼに関して等しく実施されて結果を比較し得る限り、種々の様式にて実施される。Rhombergの参考文献において記載される例において、酵素反応は、1mLの酵素溶液を5mLの基質溶液に添加することによって、実施される。その後、この消化は、室温(22℃)にて実行され、そしてその反応は、その反応混合物のうちの0.5mLを取り出してMALDIマトリックス溶液(例えば、カフェイン酸(約12mg/mL)および70%アセトニトリル/水)4.5mLに添加することによって、種々の時点で停止される。その後、その反応混合物は、MALDI質量分析法に供される。このMALDI表面は、XiangおよびBeavis(XiangおよびBeavis(1994)Rapid.Commun.Mass.Spectrom.8,199〜204)の方法によって、調製される。100分の1の基礎(basic)ペプチド(Arg/Gly)15が、このオリゴ糖溶液に添加される前にマトリックスと予め混合される。1〜3ピコモルのオリゴ糖を含むサンプル/マトリックス混合物の1mLアリコートを、上記表面上に配置する。結晶化が(代表的には60秒間以内に)生じた後に、過剰の液体を水でリンスする。その後、MALDI質量分析スペクトルを、337ナノメートル窒素レーザーを取り付けたPerSeptive Biosystems(Framingham,MA)Voyager Elite反射時間飛行機器を使用することによって、直線様式で得る。遅延抽出を使用して、分解能を増加する(22kV、93%でのグリッド、0.15%でのガイドワイヤ、パルス遅延150ns、1,000での低質量ゲート、平均128ショット)。質量スペクトルを、タンパク質化(Arg/Gly)15についてのシグナルおよび上記オリゴ糖とのその複合体についてのシグナルを使用することによって、外部較正する。
【0079】
その後、キャピラリー電気泳動が、非コーティング溶融シリカキャピラリー(内径75μm、外径363μm、1det 72.1cm、および1tot 85cm)によって、Hewlett−Packard3D CEユニットにて実施され得る。分析物は、230nmでのUV検出および延長光路セル(Hewlett−Packard)を使用することによって、モニターされる。その電解質は、10mL硫酸デキストランおよび50mM Tris/リン酸(pH2.5)の溶液である。硫酸デキストランを使用して、ヘパリンオリゴ糖とシリカ壁との非特異的相互作用が抑制される。分離が、検出器側のアノード(逆の極性)を用いて、30kVにて実行される。1/5−ナフタレンジスルホン酸と2−ナフタレンスルホン酸(各々10μM)との混合物が、内部標準として使用される。
【0080】
生成物プロフィールを評価するための他の方法もまた、使用され得る。例えば、他の方法としては、粘性のようなパラメータに依存する方法(Jandik,K.A.,Gu,K.およびLinhardt,R.J.(1994)Glycobiology 4:284〜296)または全UV吸光度のようなパラメータに依存する方法(Ernst,S.ら(1996)Biochem.J.315:589〜597)または質量分析法またはキャピラリー電気泳動単独が、挙げられる。
【0081】
本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ分子はまた、HSGAGを配列決定するためのツールとしても有用である。多糖および他のポリマーを配列決定するための詳細な方法は、同時係属中の米国特許出願番号09/557,997および同09/558,137(両方とも、2000年4月24日に出願され、共通の発明者を有する)において開示される。これらの方法は、配列決定プロセスにおいて、ヘパリナーゼのようなツールを使用する。本発明のΔ4,5グリクロニダーゼは、そのようなツールとして有用である。
【0082】
本開示を考慮すると、当業者は、Δ4,5グリクロニダーゼ分子を単独でかまたは他の酵素と組み合わせて使用して、HSGAGフラグメント組成物および/またはGAGフラグメント組成物の実質的に純粋な調製物を生成することが可能になる。これらのGAGフラグメントは、治療的有用性を有し得る。そのグリクロニダーゼ分子および/またはGAGフラグメントは、GAGフラグメント治療が有用な治療として同定された何らかの型の状態の処置(例えば、凝固の予防、新脈管形成の阻害、増殖の阻害)のために、使用され得る。このGAGフラグメント調製物は、HSGAG供給源から調製される。「HSGAG供給源」は、本明細書中で使用される場合、標準的技術(酵素分解などが挙げられる)を使用して、GAGフラグメントを生成するように操作され得る、ヘパリン様/硫酸ヘパリン様グリコサミノグリカン組成物を指す。上記のように、HSGAGとしては、単離されたヘパリン、化学修飾されたヘパリン、バイオテクノロジーにより調製されたヘパリン、合成ヘパリン、硫酸ヘパリン、およびLMWHが挙げられるが、これらに限定されない。従って、HSGAGは、天然の供給源から単離され得、直接合成によって調製され得、変異誘発などによって調製され得る。
【0083】
従って、本発明の方法により、被験体および処置される障害に依存して、当業者は、GAGフラグメントの適切な組成物を調製または同定することが可能になる。GAGフラグメントのこれらの組成物は、単独でか、またはΔ4,5グリクロニダーゼおよび/または他の酵素と組み合わせて、使用され得る。同様に、Δ4,5グリクロニダーゼおよび/または他の酵素もまた、インビボでGAGフラグメントを生成するために使用され得る。
【0084】
本発明の組成物は、GAGフラグメント治療が有用な治療として同定された任意の型の状態の処置のために、使用され得る。従って、本発明は、治療が有用である種々のインビトロ方法、インビボ方法、およびエキソビボ方法において有用である。例えば、GAGフラグメントは、凝固を予防するため、癌細胞の増殖および転移を阻害するため、新脈管形成を予防するため、新生血管形成を予防するため、乾癬を予防するために、有用であることが公知である。このGAGフラグメント組成物はまた、インビトロアッセイにおいて使用され得る(例えば、品質コントロールサンプル)。
【0085】
これらの障害の各々は、当該分野で周知であり、そして例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine(McGraw Hill,Inc.,New York)(これは、参考として援用される)において記載される。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の調製物は、新脈管形成を阻害するために使用される。新脈管形成を阻害するために有効な量のこのGAGフラグメント調製物が、その処置を必要とする被験体に投与される。新脈管形成とは、本明細書中で使用される場合、新たな血管の不適切な形成である。「新脈管形成」は、しばしば、内皮細胞が、内皮に対してマイトジェンである一群の増殖因子を分泌して、内皮細胞の伸長および増殖を引き起こして、新生血管の生成をもたらす場合に、腫瘍においてしばしば生じる。新脈管形成性マイトジェンのうちのいくつかは、内皮細胞増殖因子に関連するヘパリン結合ペプチドである。新脈管形成の阻害は、動物モデルにおける腫瘍後退を引き起こし得る。このことは、治療抗癌剤としての使用を示唆する。新脈管形成を阻害するために有効な量とは、腫瘍へと増殖する血管の数を減少するために十分なGAGフラグメント調製物の量である。この量は、腫瘍および新脈管形成の動物モデルにおいて評価され得る。それらの動物モデルの多くは、当該分野で公知である。
【0087】
このΔ4,5グリクロニダーゼは、いくつかの実施形態において、支持体上に固定される。このグリクロニダーゼは、任意の型の支持体に固定され得るが、その支持体がインビボまたはエキソビボで使用されるべき場合、その支持体は、滅菌されておりかつ生体適合性であることが、望ましい。生体適合性支持体とは、被験体において使用される場合に、免疫損傷反応または他の型の損傷反応を引き起こさない、支持体である。このΔ4,5グリクロニダーゼは、当該分野で公知の任意の方法によって固定され得る。多くの方法が、タンパク質を支持体に固定するために公知である。「固体支持体」とは、本明細書中で使用される場合、ポリペプチドが固定され得る任意の固体物質を指す。
【0088】
固体支持体としては、例えば、膜(例えば、天然セルロースおよび改変セルロース(例えば、ニトロセルロースもしくはナイロン))、セファロース、アガロース、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、ポリアクリルアミド、ポリビニリデンジフルオリド、他のアガロース、および磁鉄鉱(磁気ビーズを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。このキャリアは、全体的に不溶性または部分的に可溶性であり得、そして可能な任意の構造的構成を有し得る。従って、その支持体は、ビーズのように球状であっても、あるいは試験管もしくはマイクロプレートウェルの内面または稈の外面のように円筒状であってもよい。あるいは、この表面は、例えば、シート、試験片、マイクロプレートウェルの底面などのように、平坦であり得る。
【0089】
本発明のΔ4,5グリクロニダーゼはまた、GAG含有流体から活性GAGを除去するために使用され得る。GAG含有流体は、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼと接触されて、そのGAGは分解される。本発明の1つの実施形態において、そのΔ4,5グリクロニダーゼは、当該分野で慣習的であるように、固体支持体上に固定される。固定されたΔ4,5グリクロニダーゼを含む固体支持体は、体外医療デバイス中の血液が凝固することを防ぐために、系統的ヘパリン処理用体外医療デバイス(例えば、血液透析器、ポンプ−酸化器)において使用され得る。固定されたΔ4,5グリクロニダーゼを含む支持体膜は、血液が身体に戻る前にGAGを中和するために、そのデバイスの端部に配置される。
【0090】
従って、Δ4,5グリクロニダーゼ分子は、凝固に関連する障害を処置または予防するために有用である。「凝固に関連する疾患」とは、本明細書中で使用される場合、血液を組織に供給することを担う血管の遮断に起因する、心筋梗塞または脳梗塞について観察されるような、組織への血液供給の中断により特徴付けられる状態を指す。脳虚血性発作または脳虚血は、脳への血液供給が遮断される虚血状態の一形態である。脳への血液供給のこの中断は、種々の原因(血管自体の内因的遮断または閉塞、遠位で生じた閉塞源、灌流圧の減少もしくは不十分な脳血流を生じる血液粘度の増加、またはクモ膜下腔または脳内組織における血管破裂を含む)から生じ得る。
【0091】
Δ4,5グリクロニダーゼまたはそれを用いて生成されるGAGフラグメントが、凝固に関連する疾患を処置するために、単独でかまたは治療剤と組み合わせて、使用され得る。凝固に関連する疾患の処置において有用な治療剤の例としては、抗凝固剤、抗血漿剤、および血栓崩壊剤が挙げられる。
【0092】
抗凝固剤は、血液成分の凝固を防止し、従って、血餅形成を防止する。抗凝固剤としては、ヘパリン、ワルファリン、クマジン、ジクマロール、フェンプロクモン、アセノクマロール、エチルビスクマセテート、およびインダンジオン誘導体が挙げられる。
【0093】
抗血小板剤は、血小板凝集を阻害する。そしてこれは、しばしば、一過性虚血性発作または脳卒中を経験した患者における血栓崩壊性発作を予防するために使用される。抗血小板剤としては、アスピリン、チエノピリジン誘導体(例えば、チクロポジンおよびクロピドグレル、ジピリダモールおよびスルフィンピラゾン)、ならびにRGD模倣物、そしてまた、抗トロンビン剤(例えば、ヒルジンであるが、これに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
血栓崩壊剤は、血栓塞栓性発作を引き起こす血餅を溶解する。血栓崩壊剤は、急性静脈血栓塞栓症および肺塞栓の処置において使用されており、当該分野で周知である(例えば、Hennekensら、J Am Coll Cardiol;第25巻(補遺7)、p18S〜22S(1995);Holmesら、J Am Coll Cardiol;第25巻(補遺7)、p10S〜17S(1995)を参照のこと)。血栓崩壊剤としては、プラスミノゲン、a−アンチプラスミン、ストレプトキナーゼ、アンチストレプラーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、およびウロキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。「tPA」とは、本明細書中で使用される場合、ネイティブtPAおよび組換えtPA、ならびにネイティブtPAの酵素活性もしくは線維溶解活性を保持する改変形態のtPAが挙げられるが、これらに限定されない。tPAの酵素活性は、プラスミノゲンをプラスミンに変換するその分子の能力を評価することによって、測定され得る。tPAの線維溶解活性は、当該分野で公知の任意のインビトロ血餅溶解活性(例えば、Carlsonら、Anal.Biochem.168,428〜435(1988)により記載される精製血餅溶解アッセイおよびBennett,W.F.ら、1991、J.Biol.Chem.266(8):5191〜5201(その内容全体が、本明細書中に参考として援用される)により記載されるその改変形態)によって決定され得る。
【0095】
本発明の組成物は、ヘパリナーゼおよびヘパリナーゼの分解産物(HSGAGフラグメント)と同じ目的のために有用である。従って、例えば、本発明の成分は、癌細胞の増殖および転移を処置および予防するために有用である。従って、本発明の別の局面に従って、癌を有する被験体または癌を有するリスクがある被験体を処置するための方法が、提供される。
【0096】
HSGAGは(コラーゲンとともに)、細胞表面−細胞外マトリックス(ECM)境界面の重要な成分である。コラーゲン様タンパク質は、組織に付着して組織を形成するために必要な細胞外足場を細胞に提供するが、その複合体多糖は、その足場により生じる空間を満たし、そして多数のシグナル伝達分子(増殖因子、サイトカインなどのような)に特異的に結合してそれらの生物学的活性を調節することによって、分子スポンジとして作用する。細胞は、別個のHSGAG配列を合成し、そして多くのシグナル伝達分子に特定的に結合することによって種々の生物学的プロセスを調節するその配列中に存在する異常な情報内容を使用することによって、それら自体をこれらの配列で修飾することが最近認識されている。
【0097】
本発明はまた、腫瘍細胞の増殖および転移の処置および予防のための治療GAGフラグメントの使用を企図する。本明細書中で使用される治療GAGフラグメントは、他のネイティブヘパリナーゼおよび/または改変ヘパリナーゼとおそらく一緒にΔ4,5グリクロニダーゼの使用を介して同定された、GAGの片またはフラグメントである分子を指す。
【0098】
本発明はまた、腫瘍の処置のため、および転移を予防するための、治療GAGフラグメントを同定するためのスクリーニングアッセイもまた包含する。このアッセイは、腫瘍または単離された腫瘍細胞を、Δ4,5グリクロニダーゼおよび/または他のネイティブヘパリナーゼもしくは改変ヘパリナーゼで処理し、そして生じたGAGフラグメントを単離することによって、達成される。驚くべきことに、これらのGAGフラグメントは、腫瘍細胞の増殖および転移の予防において治療活性を有する。従って、本発明は、個別化された治療を包含し、この治療において、腫瘍または腫瘍の一部が、被験体から単離され、そして治療GAGフラグメントを調製するために使用される。これらの治療フラグメントは、さらなる腫瘍細胞の増殖もしくは転移から、またはその腫瘍が未だ転移性ではない場合は転移の開始から、被験体を保護するために、その被験体に再投与され得る。あるいは、そのフラグメントは、同じ型の腫瘍または異なる型の腫瘍を有する異なる被験体において、使用され得る。
【0099】
用語「治療GAGフラグメント」とは、本明細書中で使用される場合、腫瘍細胞の増殖および/または転移を防止する点で治療活性を有する、GAGを指す。そのような化合物は、Δ4,5グリクロニダーゼを使用して治療フラグメントが生成され得るか、またはそれらは、新規に合成され得る。推定GAGフラグメントは、本明細書中に記載されるかまたは当該分野で公知のアッセイのいずれかを使用して、治療活性について試験される。従って、治療GAGフラグメントは、腫瘍がΔ4,5グリクロニダーゼと接触された亜場合に同定されたGAGフラグメントの配列に基づいて生成されるかまたはその化合物の活性に干渉しない小さな変化を有する、合成GAGフラグメントであり得る。あるいは、治療GAGフラグメントは、腫瘍がΔ4,5グリクロニダーゼと接触された場合に生成される、単離されたGAGフラグメントであり得る。
【0100】
本発明は、被験体において腫瘍細胞の増殖もしくは転移を処置および/または予防するのに有用である。用語腫瘍細胞増殖を「処置する」および「処置すること」とは、本明細書中で使用される場合、癌もしくは腫瘍細胞の増殖または転移を完全または部分的に阻害すること、および癌または腫瘍細胞の増殖もしくは転移の任意の増加を阻害することをいう。
【0101】
「癌を有する被験体」は、検出可能な癌性細胞を有する被験体である。癌は、悪性の癌でも非悪性の癌でもよい。癌または腫瘍としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胆管癌;脳の癌;乳癌;頚部癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;リンパ腫;肝癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);黒色腫;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、ならびに他の癌腫および肉腫。
【0102】
「癌を有する危険性のある被験体」は、本明細書中で使用される場合、癌を発生する可能性の高い被験体である。これらの被験体としては、例えば、遺伝的異常を有する被験体(この異常の存在は、癌を発生するより高い可能性と相関性を有することが実証されている)、および癌原因因子(例えば、タバコ、アスベスト、または他の化学的毒素)に曝された被験体、または以前に癌を処置され、現在寛解している被験体が挙げられる。癌を発生する危険性のある被験体がΔ4,5グリクロニダーゼまたはその分解産物によって処置される場合、この被験体は、癌細胞が発生する際にそれらを殺傷し得る。
【0103】
有効量の本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ、改変体Δ4,5グリクロニダーゼまたは治療的GAGが、このような処置を必要とする被験体に投与される。有効量は、他の医学的に受容できない副作用を引き起こすことのない、状態または状態の症状における所望の改善(例えば、癌については、細胞増殖または転移の減少である)を生じる量である。慣用的に過ぎない実験によりこのような量が決定され得る。投与の様式に依存して、1ng/kg〜100mg/kgの範囲の用量が、有効であると考えられる。絶対的な量は、種々の因子(投与が他の処置方法と組み合わされているか否か、投薬回数および個々の患者のパラメータ(年齢、身体状態、体格および体重を含む)が挙げられる)に依存し、そして慣用的な実験により決定され得る。最大用量、すなわち、合理的な医学的判断に従った最高安全用量が使用され得ることが、一般的に好ましい。投与の様式は、任意の医学的に受容可能な様式(経口、皮下、静脈内を含む)であり得る。
【0104】
本発明の幾つかの局面において、Δ4,5グリクロニダーゼまたは治療的GAGの有効量は、障壁を超えて腫瘍細胞の浸潤を防止するのに有効な量である。癌の浸潤および転移は、細胞接着特性の変化を含む複雑なプロセスであり、これにより、形質転換細胞は、細胞外マトリクス(ECM)を通って浸潤および移動し、固定非依存的増殖特性を獲得する(Liotta,L.A.ら,Cell 64:327〜336,1991)。これらの変化の幾つかは、局所性接着因子において生じ、これらは、膜関連の細胞骨格、および細胞内シグナル伝達分子を含む細胞/ECM接触点である。転移性疾患は、腫瘍細胞の散在性の病巣がそれらの増殖および伝播を支持する組織を播種する場合に生じ、この腫瘍細胞の二次的拡散は、癌の大部分に関連する罹患率および死亡率の原因である。従って、用語「転移」は、本明細書中で使用される場合、最初の腫瘍部位から離れた腫瘍細胞の浸潤および移動をいう。
【0105】
腫瘍細胞に対する障壁は、インビトロでの人工的な障壁であり得るか、またはインビボでの天然の障壁であり得る。インビトロでの障壁としては、細胞外マトリクスコーティング膜(例えば、Matrigel)が挙げられるが、これに限定されない。従って、Δ4,5グリクロニダーゼ組成物またはその分解産物は、Matrigel浸潤アッセイシステム(Parish,C.R.ら,「A Basement−Membrane Permaebility Assay which Correlates with the Metastatic Potential of Tumour Cells」,Int.J.Cancer,1992,52:378〜383に詳細に記載されるように)における腫瘍細胞浸潤を阻害するそれらの能力について試験され得る。Matrigelは、以下を含む再構築された基底膜である:IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、パーレカン(perlecan)(これは、bFGFに結合し、局在化する))、ビトロネクチンならびに形質転換増殖因子−β(TGF−β)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ならびにプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型(PAI−1)として公知のセルピン。転移についてのインビトロおよびインビボのアッセイにおける他のものは、先行技術(例えば、米国特許第5,935,850号(1999年8月10日発行)(これは、参考として援用される)を参照のこと)に記載される。インビボでの障壁は、被験体の身体中に存在する細胞障壁をいう。
【0106】
一般的に、治療目的のために投与される場合、本発明の処方物は、薬学的に受容可能な溶液中で適用される。このような調製物は、慣用的に、薬学的に受容可能な濃度の塩、緩衝化剤、保存剤、適合性キャリア、アジュバント、および必要に応じて他の治療成分を含み得る。
【0107】
本発明の組成物は、そのまま(ニート)投与されても、薬学的に受容可能な塩の形態で投与されてもよい。医薬中で使用される場合、この塩は、薬学的に受容可能であるべきであるが、薬学的に受容可能でない塩は、その薬学的に受容可能な塩を調製するために便利に使用され得、本発明の範囲から排除されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に受容可能な塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩)として調製され得る。
【0108】
適切な緩衝化剤としては、以下が挙げられる:酢酸および酢酸塩(1〜2%W/V);クエン酸およびクエン酸塩(1〜3%W/V);ホウ酸およびホウ酸塩(0.5〜2.5%W/V);ならびにリン酸およびリン酸塩(0.8〜2%W/V)。適切な保存剤としては、以下が挙げられる:塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9%W/V);パラベン(0.01〜0.25%W/V)およびチメロサール(0.004〜0.02%W/V)。
【0109】
本発明は、医療用途のための薬学的組成物を提供し、これは、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼ、改変体Δ4,5グリクロニダーゼ、または治療的GAGフラグメントを1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要に応じて他の治療成分と共に含む。用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、本明細書中で使用され、以下でより完全に記載されるように、ヒトまたは他の動物への投与に適した1つ以上の適合性の固体充填材または液体充填材、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。本発明において、用語「キャリア」は、天然または合成の有機成分または無機成分を示し、これと活性成分とが合わされて、適用を容易にする。薬学的組成物の成分はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が存在しないような様式で、本発明のΔ4,5グリクロニダーゼまたは他の組成物と共に、そして互いに混合され得る。
【0110】
種々の投与経路が利用可能である。選択される特定の様式は、もちろん、選択される特定の活性因子、試験される特定の状態および治療有効性に必要な用量に依存する。本発明の方法は、一般的に言うと、医学的に受容可能な任意の投与様式を使用して実施され得、これは、臨床的に受容できない副作用を引き起こすことなく有効なレベルの免疫応答を生じる任意の様式を意味する。好ましい投与様式は、非経口投与である。用語「非経口」は、皮下注射、静脈内、筋内、複腔内、胸骨内の注射または注入技術を含む。他の投与様式としては、経口、粘膜、直腸、膣、舌下、鼻腔内、気管内、吸入、眼内、経皮などが挙げられる。
【0111】
経口投与について、これらの化合物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアと活性化合物とを合わせることによって容易に処方され得る。このようなキャリアにより、本発明の化合物は、処置される被験体による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方され得る。経口使用のための薬学的調製物は、固体賦形剤として得られ得、必要に応じて、得られる混合物をすり砕き、そして所望であれば、適切な補助物質を加えた後に、顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖剤コアを得る。適切な賦形剤は、特に、充填材(例えば、糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む));セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))である。所望であれば、崩壊剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))が加えられ得る。必要に応じて、経口処方物はまた、内部の酸性状態を中和するための生理食塩水または緩衝液中に処方され得るか、またはいずれのキャリアもなしで投与され得る。
【0112】
糖剤コアは、適切なコーティングを提供される。この目的のために、濃縮された糖溶液が使用され得、これは、必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。染料または色素が、活性化合物投薬の異なる組み合わせの識別のため、またはこの組み合わせを特徴付けるために錠剤または糖剤コーティングに加えられ得る。
【0113】
経口的に使用され得る薬学的調製物は、ゼラチンから作製される押し嵌めカプセル、およびゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作製される柔軟で密封されたカプセルを含み得る。押し嵌めカプセルは、充填材(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)および/または潤沢剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)ならびに必要に応じて安定化剤と混合された活性成分を含み得る。柔軟カプセルにおいて、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液状パラフィン、または液状ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定化剤が加えられ得る。経口投与のために処方されるマイクロスフェアもまた、使用され得る。このようなマイクロスフェアは、当該分野で十分に定義されている。経口投与のための全ての処方物は、このような投与に適した投薬であるべきである。
【0114】
頬投与について、これらの組成物は、従来の様式で処方される錠剤またはロゼンジの形態を取り得る。
【0115】
吸入による投与については、本発明に従う使用のための化合物は、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切な気体)の使用と共に、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示(aerosol spray presentation)の形態で従来的に送達され得る。加圧されたエアロゾルの場合、用量単位は、決められた量で送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。この化合物と適切な粉末基材(例えば、ラクトースまたはデンプン)の粉末混合物を含む、吸入器または注入器での使用のためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチン)が処方され得る。
【0116】
これらの化合物は、全身的に送達することが望まれる場合、注入(例えば、ボーラス注入または持続注入)による非経口投与のために処方され得る。注入のための処方物は、保存剤が添加された、単位用量形態(例えば、アンプル中)または複数用量容器中に提供され得る。これらの組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態を取り得、そして処方剤(formulatory agent)(例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤)を含み得る。
【0117】
非経口投与のための薬学的処方物としては、水溶性形態の活性化合物の薬学的形態が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油状の注入懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油のような脂肪油またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注入懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールもしくはデキストランのような懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。必要に応じて、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含み得る。
【0118】
あるいは、活性化合物が、使用前の適切なビヒクル(例えば、滅菌の発熱物質を含まない水)との構成されるための粉末形態であり得る。
【0119】
この化合物はまた、坐剤または保持浣腸(例えば、ココア脂または他のグリセリドのような従来の坐剤の基剤を含む)のような経直腸組成物または経膣組成物として処方され得る。
【0120】
以前に記載された処方物に加えて、化合物はまた、除放性調製物(depot preparation)として処方され得る。このような長期間活性処方物は、適切なポリマー性材料もしくは疎水性材料(例えば、受容可能な油中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいはやや難溶性の(sparingly soluble)誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方され得る。
【0121】
薬学的組成物はまた、適切な固体相キャリアもしくはゲル相キャリアまたは賦形剤を含み得る。このようなキャリアまたは賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、スターチ、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
適切な液体薬学的調製物形態または固体薬学的組成物形態は、例えば、吸入のための水性溶液または生理食塩水であり、これらは、微小金粒子上で微小カプセル化され、渦巻き状に覆われ、コーティングされ、リポソーム中に含まれ、皮膚への注入のために噴霧され(nebulize)、噴霧され(aerosol)、錠剤化され、または皮膚中に切り傷をつけられる鋭利な物体上で乾燥される。それらの薬学的組成物としてはまた、顆粒剤、粉剤、錠剤、コーティングされた錠剤、(微小)カプセル、坐剤、シロップ剤、乳濁液、懸濁液、クリーム、ドロップまたは徐放性活性化合物を有する調製物が挙げられ、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、香料、甘味料または溶解剤のような賦形剤および添加剤および/または助剤が、その調製において、上記のとおり慣習的に使用される。種々の薬物送達システムにおける使用のために、薬学的組成物が、適切である。薬物送達のための方法の手短な総説として、Langer,Science 249:1527−1533,1990(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0123】
この組成物は、単位投薬形態において従来提示され得、薬学分野で周知の任意の方法により調製され得る。全ての方法は、活性Δ4,5グリクロニダーゼを1つ以上の補助成分を構成するキャリアと結合させる工程を包含する。一般的に、組成物は、ポリマーを液体キャリア、細かく分割された固体キャリア、またはその両方と均一かつ密接に結合させることにより調製され、次いで、必要ならば、生成物を形作る。ポリマーは、凍結乾燥されて貯蔵され得る。
【0124】
他の送達システムとしては、徐放性(time release)、遅延放出性または徐放性の送達システムが挙げられ得る。このようなシステムは、本発明のヘパリナーゼの繰り返される投与を避け得、被験体および医師への利便性を増加させる。多くの型の放出送達システムが、当業者に利用可能であり、既知である。これらのシステムとしては、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ポリ無水物およびポリカプロラクタンのようなポリマーに基づくシステム;コレステロール、コレステロールエステルのようなステロールおよびモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドのような脂肪酸または中性脂肪である非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドに基づくシステム;ワックスコーティング、従来の結合剤および賦形剤を使用する圧縮錠剤、部分的に縮合した注入物などが挙げられる。具体的な例としては、(a)多糖がマトリックス中の形態に含まれ、米国特許第4,452,775号(Kent);同第4,667,014号(Nestorら);ならびに同第4,748,034号および同第5,239,660号(Leonard)に見出される、侵食システムならびに(b)活性化合物がポリマーを介して制御された速度で浸透する、米国特許第3,832,253号(Higuchiら)および同第3,854,480(Zaffaroni)に見出される拡散システムが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポンプに基づくハードウェア送達システムが使用され、そのいくらかが移植のために適合される。
【0125】
被験体は、ヒトまたは非ヒト脊椎動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ)である。
【0126】
癌処置を経る患者に投与される場合、Δ4,5グリクロニダーゼまたは治療GAG化合物が、他の抗癌剤を含むカクテルで投与され得る。化合物はまた、放射療法の副作用を処置する薬剤(例えば、抗催吐薬、放射保護剤など)を含むカクテルで投与され得る。
【0127】
本発明の化合物と同時に投与され得る抗癌薬物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール;ヒドロクロリド;アクロニン;アドリアマイシン;アドーズレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビスアントレン;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトールメシレート;クロロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシレート;ジアジクオン;ドセタキソール;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロキシフェン;クエン酸ドロキシエン;ドロスタノロンプロピオネート;ズアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドホスフェート;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンホスフェート;フルオロウラシル;フルオロシタビン;ホスキドン;ホストリエチンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−n1;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;マイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストール;酢酸メレゲストル;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルファイマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;プロマイシン;塩酸プロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセイトナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トロミフェン;酢酸トレストロン;トリシリビンホスフェート;トリメトレキサート;トリメトキレキサートグルクロネート;トリプトレリン;塩酸チュブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。
【0128】
Δ4,5グリクロニダーゼまたは治療GAG化合物はまた、標的化分子に結合され得る。標的化分子は、特定の細胞または分子について特異的である任意の分子または化合物であり、これを使用して、細胞または組織にΔ4,5グリクロニダーゼまたは治療GAGを向け得る。好ましくは、標的化分子は、癌細胞または腫瘍に特異的に相互作用する分子である。例えば、標的化分子は、腫瘍抗原を認識し、特異的に相互作用するタンパク質または他の型の分子であり得る。
【0129】
腫瘍−抗原としては、以下が挙げられる:Melan−A/M−ART−1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸結合抗原(CRC)−−C017−1A/GA733、癌胎児抗原(CEA)、ならびに免疫原性エピト−プCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)、ならびにその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞レセプター/CD3−ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−AB2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、およびγ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1、CT−7、cdc27、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク質(APC)、ホドリン、P1A、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質のようなウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、EBVコード核抗原(EBNA)−1およびc−erB−2。
【0130】
本発明はさらに、以下の実施例により例示され、これらの実施例はさらなる限定としては解釈されるべきではない。本願にわたって引用される参照(文献参照、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の全ての内容が、本明細書中で参考として明示的に援用される。
【実施例】
【0131】
(材料および方法)
化学物質および試薬。他に述べられない限り、生化学薬品を、Sigma Aldrich Chemical(St.Louis,MO)から購入する。二糖類を、Calbiochem(San Diego,CA)から購入した。λZAPII遺伝子ライブラリー構築およびスクリーニングのための試薬を、Stratagene(La Jolla,CA)から得た。制限エンドヌクレアーゼを、New England Biolabs(Beverly,MA)から購入した。DNAオリゴヌクレオチドプライマーを、Invitrogen/Life Technologies(Carlsbad,CA)により製造した。さらなる分子クローニング試薬を、列挙された製造者から得た。
【0132】
細菌株および増殖条件。F.heparinum(Pedobacter heparinus)を、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)ストック番号13125からの凍結乾燥したストックとして得た。再び水和した培養物を、6.4mM NaHPO、7.6mM NaHPO、12mM KHPO、14.3mM KHPO、1.7mM NaCl、および1.9mM NHCl、pH6.9を含む規定された培地で1.5〜2の間の最適密度(A600)に穏やかに振って30℃で嫌気的に増殖し、そして0.1mM微量金属CaCl、FeSO、CuSO、NaMoO、CoCl、およびMnSO(10mM HSOにおける100Xストックから加えた)、0.8%グルコース、0.05%メチオニン、0.05%ヒスチジン、2mM MgSO、および0.1%ヘパリンで補充され、全てを滅菌条件下で加えた。E.coli株は、PCRクローニングおよびサブクローニングのためのTOP10(Invitrogen)またはDH5αならびに組換えタンパク質発現のためのBL21(DE3)(Novagen,Madison WI)を含んだ。バクテリオファージ宿主細胞XL−1−Blue MRF’およびSOLRを、Stratageneから得た。
【0133】
グリクロニダーゼペプチドおよびタンパク質配列の精製。4,5−グリクロニダーゼを、McLean,M.W.,Bruce,J.S.,Long,W.F.,およびWilliamson,F.B.,1984,Eur J Biochem 145,607−15に記載されるような方法を使用して10リットル発酵培養物から精製した。
【0134】
F.heparinum genomic DNA由来のΔ4,5グリクロニダーゼ遺伝子の分子クローニング。
【0135】
フラボバクテリア(Flavobacterial)ゲノムDNAを、カラム当たりおよそ2×10の細胞を使用するグラム陰性細菌についての製造者の指示書に従うQIAGEN DNeasy DNA精製キットを使用して、10mLのフラボバクテリア培養物から単離した。精製後、ゲノムDNAをエタノールで沈殿させ、TE(0.5mg/mLでpH7.5)に再懸濁した。ゲノムDNAの質を、0.5%アガロースゲルでの電気泳動により、そしてフラボバクテリア特異的プライマーを使用するPCRにより260/280nmで分光学的に確かめた。
【0136】
以下の縮重プライマーを、最初、ピーク19および24(実施例1)に対応するペプチドから合成した:5’GARACNCAYCARGGNYTNACNAAYGAR3’(配列番号5)(ピーク19順)、5’YTCRTTNGTNARNCCYTGRTGNGTYTC3’(配列番号6)(ピーク19逆);5’AAYTAYGCNGAYTAYTAYTAY3’(配列番号7)(ピーク24順);5’RTARTARTARTCNGCRTARTT3’(配列番号8)(ピーク24逆)。すべての4つのプライマーは、すべての可能なペアリング(順および逆)を用いるPCRアッセイでスクリーニングした。PCR反応条件は、100μlの反応容積中に、200ngのゲノムDNA、200ピコモルの各順および逆プライマー、200μMのdNTP、1単位のVent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を含めた。35サイクルを、52℃のアニーリング温度、および72℃における1.5分の伸長を用いて終了した。プライマー19順および24逆を用いて増幅した450bpの産物をゲル精製し、そして直接DNA配列決定に供し、これは、ピーク12に加えてペプチドピーク19および24に対応する翻訳配列を含むことを確認した。同じDNAをまた、6000Ci/mmoleの200μCiα32P[dCTP](NEN、Boston、MA)、50〜100ngのDNA、およびPrime−it IIランダムプライミングキット(Stratagene)(プローブ1)を用いるランダムプライミングにより、32P放射能標識した。非取り込み32PdNTPは、G−50 Quick−スピンカラム(Roche Biochemicals、New Jersey)を用いるゲル濾過により除去した。標識反応は、代表的には、10cpm/μgを超える比活性をもつ約50ngの放射能標識DNAを生じた。
【0137】
DNAハイブリダイゼーションプローブ2は、最初、縮重プライマー26 5’CARACNTAYACNCCNGGNATGAAY3’(配列番号9)(ピーク26順)および20ピコモルの逆、非縮重プライマー54(5’TTCATGGTCGTAACCGCATG3’)(配列番号10);後者のオリゴヌクレオチドは、ピーク8のΔ4、5 DNA配列3’に対応する、を用いることを除き、上記に記載のようにPCRによって生成された。このPCRフラグメントの直接配列決定は、ピーク26およびピーク13ペプチドの存在を確認した。DNAサザンハイブリダイゼーション(以下)で用いたDNAプローブ3は、プライマー68(5’TATACACCAGGCATGAACCC3’)(配列番号11)および74(5’CCCAGTATAAATACTCCAGGT3’)(配列番号12)を用いてゲノムDNAからPCR増幅した。
【0138】
(F.heparinumゲノムライブラリーのプラークハイブリダイゼーションスクリーニング)
λZAPIIゲノムライブラリー(Stratagene)を記載のように[Sasisekharan、R.、Bulmer、M.、Moremen、K.W.Cooney、C.L.、およびLanger、R.(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90、3660〜4]構築した。増幅されたライブラリー(1×1010pfu/mL)は、100×150mmのLBプレート上に約1×10pfu(約50,000pfu/プレート)で塗末した。プラークをナイロンメンブレン(Nytran Supercharge、Schleicher and Schuell)上に乗せ、そして次のハイブリダイゼーションスクリーニングを、標準的な方法および溶液[Current Protocols in Molecular Biology、1987、John Wiley and Sons、New York]を用いて終了した。DNAは、1200ジュール/cmで30秒の間のUV照射(Stratagene Stratalinker)により各フィルターに架橋した。ハイブリダイゼーションは、10〜10cpmの放射能標識プローブ(約0.25ng/mL)を用いて42℃で実施した。低ストリンジェンシー洗浄は、2×SSC、0.1%SDS中、室温で実施し;高ストリンジェンシー洗浄は、0.2×SSCおよび0.1%SDS中、58〜60℃で実施した。ハイブリダイズしたプラークは、蛍光体造影(Molecular Dynamics)および/または32Pオートラジオグラフィーにより可視化した。ポジティブクローンの三次スクリーニングを終了し、そして組換えファージを、ExAssist妨害−耐性ヘルパーファージおよびSOLR株を、製造業者のプロトコール(Stratageene)に従って用い、二本鎖ファージミド(pBluescript)として切り出した。組換え体は、T7およびT3プライマーの両方を用いるDNA配列決定により特徴付けた。
【0139】
(Δ4、5 5’末端の単離のためのflavobacterium BglII−EcoR1サブゲノムライブラリーの生成)
1μgのゲノムDNAを、個々に20単位のEcoR1、BglII、およびHindIIIで切断するか、または二重消化した。制限産物を、1×TAE緩衝液中で泳動される1%アガロースゲル上のゲル電気泳動により分離した。サザンDNAハイブリダイゼーションは、32P放射能標識プローブ3を用い、標準的なプロトコール[Current Protocols in Molecular Biology、1987、John Wiley and Sons、New York]に従って終了した。このサザン分析を基に、5μgのFlavobacterialのゲノムDNAを、Bgl−II−EcoR1で消化し、そしてDNAを、分析ゲルについて記載されたのと同一の条件下で泳動される調製1%アガロースゲル上で分離した。約1〜2kbの範囲のDNAをゲル精製し、そしてBglII−EcoR1カセットとしてpLITMUS中に連結した。ポジティブクローンを、プライマー68および74を用いるPCRコロニースクリーニングにより識別し、そしてDNA配列決定により確認した。
【0140】
(Δ4、5遺伝子のPCRクローニングおよびE.coli中の組換え発現)
完全長グリクロニダーゼ遺伝子を、ゲノムDNAから、順プライマー85 5’TGTTCTAGACATATGAAATCACTACTCAGTGC3’(配列番号13)および逆プライマー86 5’GTCTCGAGGATCCTTAAGACTGATTAATTGTT3’(配列番号14)(Nde1およびXho1制限部位は太字で注記される)、200ngのゲノムDNA、およびVent DNAポリメラーゼ(Polymerase)を用い、35サイクルについて直接PCR増幅した。dAオーバーハングを、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いる72℃での最終の10分の伸長で生成した。PCR産物をゲル精製し、TOPO/TA PCRクローニングベクター(Invitrogen)中に連結し、そしてOne−shot TOP10化学的コンピテント細胞中に形質転換した。ポジティブクローンを、青/白コロニー選択により識別し、そしてPCRコロニースクリーニングにより確認した。この1.2kbΔ4,5遺伝子を、発現プラスミドpET28a(Novagen)中にNde1−Xho1カセットとしてサブクローン化した。最終の発現クローンは、プラスミドDNA配列決定により確認した。
【0141】
M21(Δ4,5Δ20)で開始するΔ4,5グリクロニダーゼの発現には、順プライマー95 5’TGT TCT AGA CAT ATG ACA GTT ACG AAA GGC AA3’(配列番号15)(これもまた、その5’末端の近傍にNde1制限部位を含む)を、プライマー85(上記)の代わりに用いた。元の発現プラスミドpET28a/Δ4,5の50ngを、合計20サイクルを含むPCR反応中のDNAテンプレートとして用いた。その他は、クローニングは、完全長遺伝子について記載されたようであった。pET28a/Δ4,5プラスミドおよびpET28aΔ4,5Δ20プラスミドの両方を、N−末端の6×Hisタグ化タンパク質としての発現のためにBL21(DE3)中に形質転換した。1リットル培養物を、40μg/mLのカナマイシンを補填したLB培地中、室温(約20℃)で増殖させた。タンパク質発現を、1.0のA600で添加された500μMのIPTGで誘導した。誘導した培養物を、15時間増殖させた(これもまた室温)。
【0142】
(組換えΔ4,5グリクロニダーゼの精製)
細菌細胞を、6000×gで20分間の遠心分離によって回収し、そして40mLの結合緩衝液(50mM Tris−HCL、pH7.9、0.5M NaCl、および10mMイミダゾール)中に再懸濁した。溶解は、0.1mg/mLのリゾチームの添加により開始し(室温で20分間)、次に、40〜50%出力のMisonex XL音波発生機を用い、氷−水浴中の間欠的な音波処理をした。粗溶解液を、低速遠心分離(18,000×g;4℃;15分)により分画し、そして上清液を、0.45ミクロンのフィルターを通じて濾過した。6×−HisタグΔ4,5グリクロニダーゼを、200mMのNiSOで予備充填し、そして次に結合緩衝液で平衡化された5mLのHi−Trapカラム(Pharmacia Biotech、New Jersey)上のNi2+キレーションクロマトグラフィーによって精製した。カラムは、約3〜4mL/分の流速で操作し、50mMのイミダゾールでの中間洗浄ステップを含めた。このΔ4,5酵素を、カラムから、高イミダゾール溶出緩衝液(50mM Tris−HCL、pH7.9、0.5M NaCl、および250mMイミダゾール)を用いる5mLフラクションで溶出した。ピークフラクションを、4リットルのリン酸緩衝液(0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.0、0.5M NaCl)に対して一晩透析し、イミダゾールを除いた。
【0143】
6×Hisタグは、穏やかに転置して4℃で一晩、2単位/mg組換えタンパク質のビオチン化トロンビンを添加することにより効率的に切断された。トロンビンは、Thrombin Capture Kit(Novagen)を用い、4℃で2時間のストレプトアビジンアガロースへの結合により捕捉した。切断されたペプチド5’MGSSHHHHHHSSGLVPR3’(配列番号16)は、1000倍容量のリン酸緩衝液に対する最終透析によって取り出した。
【0144】
タンパク質濃度は、タンパク質アッセイ(Bio−Rad、Hercules、CA)によって決定し、そしてΔ4,5Δ20に対する理論モル吸光係数ε=88,900を用いてUV分光光度法により確認した。タンパク質精製は、SDS−PAGE、その後のCoomassie Brilliant Blue染色によって評価した。
【0145】
(コンピューターを利用する方法)
シグナル配列推定を、最大YカットオフおよびSカットオフ設定をそれぞれ0.36および0.88としたvon Heijneコンピューター方法を用いるSignalP V1.1によって作製した[Nielsen,H.、Engelbrecht,J.、Brunak,S.、およびvon Heijne,G.、1997、Protein Eng 10、1〜6]。グリクロニダーゼの複数配列アラインメントは、10.0のオープンギャップペナルティー、0.20のギャップ伸長ペナルティー、そして疎水性および残基特異的ギャップペナルティーの両方をオンに予備設定されたCLUSTAL Wプログラム(バージョン1.81)を用い、選択されたBLASTPデータベース配列(120ビットを超え、そして6%より少ないギャップのスコアをもつ)から作製された。
【0146】
(酵素活性のアッセイおよび動力学的パラメーターの決定)
標準的な反応を30℃で実施し、そして100μlの反応容量中、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH6.4、50mMのNaCl、500μMの二糖類基質および200nMの酵素を含めた。ヘパリン二糖類の加水分解は、232nmで測定されるΔ4,5発色団の損失を測定することにより分光学的に決定した。基質加水分解は、各二糖類基質について実験的に決定される以下のモル吸光係数を用いて算出した:ΔUHNAc,ε232=4,524;ΔUHNAc6S,ε232=4,300;ΔUHNS,ε232=6,600;ΔUHNS,6S,ε232=6,075;ΔUHNH26S,ε232=4,826;ΔU2SNS,ε232=4,433。初期速度(V)は、<10%基質代謝を表す直線状活性から外挿し、そして偽一次オーダー動力学に適合させた。動力学実験には、各個々の基質に対する二糖類濃度を、48〜400μM濃度まで変化させた。K値およびkcat値は、非線形最小自乗回帰によってMichaelis Menten等式に適合したV対[S]曲線から外挿した。
【0147】
グリクロニダーゼ活性に対するイオン強度の相対的影響を測定するための実験には、NaCl濃度を、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.4)、200μMのΔUHNS,6S、および100μMの酵素中、その他は標準的な反応条件下で、0.05Mから1Mまで変化させた。触媒活性に対するpHの影響は、pH5.2、5.6、6.0、6.4、6.8、7.2および7.8の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中でΔUHNS,6S濃度を変化して動力学的に決定した。データは、上記のようにMichaelis Menten動力学に適合させ、そして相対kcat/K比をpHの関数としてプロットした。
【0148】
(キャピラリー電気泳動によるΔ4,5グリクロニダーゼ活性の検出)
200μgのヘパリン(Celsus Laboratories)を、100μlの反応容積中100mMのNaClで50mMのPIPES緩衝液、pH6.5を含めた特定の改変で、記載のように[Venkataraman,G.、Shriver,Z.、Raman,R.、およびSasisekharan,R.、1999、Science 286、537〜42]徹底的ヘパリナーゼ消化に供した。ヘパリナーゼ処理後、25ピコモルのΔ4,5グリクロニダーゼを当初の反応の半分に加えた(30℃で予備平衡化)。20μlのアリコートを、1分および30分で取り出し、そして活性を、95℃で10分間加熱することによりクエンチした。20μlのマイナスΔ4,5コントロール(これもまた10分加熱した)を、0時点で用いた。二糖類生成物を、先に記載のように[Rhomberg,A.J.、Ernst,S.、Sasisekharan,R.、およびBiemann,K.、1998、Proc.Natl.Acad.Sci USA 95、4176〜81]正極性モード下、25分泳動されるキャピラリー電気泳動により分離した。
【0149】
(分子量決定)
分子量決定は、記載のように[Rhomberg,A.J.、Ernst,S.、Sasisekharan,R.、およびBiemann,K.、1998、Proc.Natl.Acad.Sci USA 95、4176〜81]、MALDI−MSにより実施した。
【0150】
(実施例1:F.heparinumゲノムからのΔ4,5グリクロニダーゼ遺伝子の分子クローニング)
Δ4,5グリクロニダーゼ遺伝子をクローン化するために、本発明者らは、精製酵素のプロテアーゼ処理後、一連のΔ4,5グリクロニダーゼ由来のペプチドを単離した。ネイティブ酵素は、先に記載のような[McLean,M.W.、Bruce,J.S.、Long,W.F.およびWilliamson,F.B.、1984,Eur J Biochem 145,607〜15]5−ステップのクロマトグラフィースキームを用いて、F.heparinumの発酵培養物から直接精製した。精製の程度は、最終的に逆相クロマトグラフィーにより特徴付けられ、これは、単一の主要ピークを示した(図1A)。本発明者らは、精製酵素の制限トリプシン消化により多くのペプチドを生成し得た。26ペプチドフラグメントを、逆相クロマトグラフィーにより分離した(図1B)。これら26から、少なくとも8つのペプチド(主要ピーク8、12、13、19、24、および26に対応する)は十分な収率および純度であり、そしてタンパク質配列決定のために選択された(図1C)。
【0151】
この情報に基づいて、本発明者らは、ピーク19、24、および26に対応する縮重プライマーを設計した。これらのプライマーを使用して、Δ4,5特異的配列をPCR増幅し、Flavobacterialゲノムライブラリーをスクリーニングするための適切なDNAハイブリダイゼーションプローブとして使用した。特に、2つのプライマー対(ピーク19順方向およびピーク24逆方向)の組み合わせは、約450塩基対の別のPCR増幅産物を与えた。対応するDNA配列の翻訳は、それがピーク19および24に対応する予期されたアミノ酸配列を含んだことを示した。ピーク12ペプチドはまた、この領域にマップされた。本発明者らは、その最初のプラークハイブリダイゼーションにおいてこの別のPCR増幅DNAフラグメント(プローブ1として称される、図2A)を使用した。このスクリーニングにおいて得られた最も5’末端のクローン(クローンG5Aによって表される)は、推定ORFのカルボキシ末端に対応する予測された遺伝子サイズの約半分を含んだ。不変に、単離されたクローンの全ては、それらのそれぞれの5’末端にEcoR1部位を有していた。遺伝子のもう一方の半分を有するファージライブラリーからクローンを単離する試みにおいて、本発明者らは、さらなるプラークを再スクリーニングし、このとき、元のプローブ1と直列している第2のN末端特異的なDNAハイブリダイゼーションプローブ(プローブ2)を使用した。この第2の戦略はまた、完全にインタクトなΔ4,5遺伝子を有する任意のクローンを生じなかった。しかし、部分的に重なるクローン(G5H)は、約540塩基対によって、Δ4,5の既知の5’配列を伸長した。
【0152】
グルクロニダーゼ遺伝子の5’末端を得るための試みにおいて、代替のアプローチを行った。この失われた領域のサイズを、ネイティブタンパク質の分子量に基づいて、約45アミノ酸(または135塩基対)であると推定した。本発明者らは、Δ4,5遺伝子の5’末端に隣接する潜在的に有用なDNA制限部位を同定するためにDNAサザン分析を完了した(図2B)。この制限マッピングは、最終的に、ハイブリダイゼーションプローブ3(この3’末端は、この制限部位のすぐ5’側に位置する)とともに遺伝子内のEcoR1部位の使用を含み、残りのアミノ末端についての本発明者らの検索を肯定的に偏らせた。この精錬されたマップに基づいて、本発明者らは、約1.5kb Bgl II−Eco−R1 Δ4,5フラグメントを首尾良く単離し、そしてpLITMUS内にサブクローニングした。Δ4,5遺伝子の5’末端を、このサブゲノムクローンの直接DNA配列決定から得た。
【0153】
(結果)
2つの重複クローニング方法から得られた全長遺伝子の要約を図2Cに示す。重複するΔ4,5クローンからコンパイルされた(そして単一のPCR増幅ゲノムクローンの直接配列決定によって確認した)DNA配列分析を、図3に示す。このΔ4,5コード配列は、402アミノ酸タンパク質をコードするORFに対応する1209塩基対を含む。全長酵素に対するアミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号3および4として与えられる。翻訳されるタンパク質について45,621ダルトンの予測される分子量は、MALDI−MSによって決定される精製されたFlavobacterial酵素についての45,566ダルトンの実験的分子量と非常によく対応する。本発明者らが配列情報を得た全てのペプチドが、このΔ4,5ORFにマップする。さらなる一次配列分析に基づいて、本発明者らはまた、残基G20とM21との間に推定切断部位をまた有する、アミノ酸1〜20にわたる同様な細菌シグナル配列を同定した(図4B)。顕著に疎水性のアミノ末端の存在(ヒドロパシープロット、図4Aを参照のこと)、およびAXXAペプチダーゼ切断モチーフの同定は、この仮説をさらに支持する[von Heijne,G.,1988,Biochim Biophys Acta 947,307−33]。
【0154】
NCBIタンパク質データベースでの関連する配列についての検索は、いくつかの機能的に関連する酵素を導いた。選択されたグルクロニルヒドロラーゼを用いる本発明者らのクローニングした酵素の複数の配列アライメントにおいて、本発明者らは、一次配列レベルで、30%の上方の同一性および50%近い類似性にほぼ対応する相同性を見出した(図4C)。この関連性は、酵素配列の大部分にわたった(N末端を除く)。このアライメントに基づいて、本発明者らは、F.heparinum Δ4,5グリクロニダーゼ内にいくつかの高度に保存された位置を見出し、これは、特に、いくつかの芳香族残基および酸性残基を含んだ。可能な触媒に重要である他の不変なアミノ酸は、H115およびR151を含む。
【0155】
(実施例2:Δ4,5グリクロニダーゼの組換え発現および精製)
PCRを使用して、本発明者らは、F.heparinumゲノムから、全長酵素およびN−末端20アミノ酸シグナル配列を欠く「成熟」酵素(Δ4,5Δ20)の両方を、T7ベースの発現プラスミドにクローンした。pET28aへのクローニングは、N−末端6× His−タグ融合タンパク質としてのグリクロニダーゼの発現を可能にした。パイロット発現研究は、全長酵素について焦点を当てた。これらの最初の実験において、本発明者らは、いくつかの異なる誘導条件(例えば、温度、時間、および誘導の長さ、さらにIPTG濃度)を試験した。全ての場合において、全長酵素は、ほぼ排他的に不溶性画分として存在した。酵素を封入体から直接精製し、次いで、見かけ上誤って折り畳まれたタンパク質を再び折り畳む試みは、最初、成功しなかった;溶解性は、界面活性剤(例えば、CHAPS)の組み合わせ使用、増加した塩濃度、およびグリセロールの存在によって部分的に達成されるものの、部分精製された酵素は、大部分不活性であった。
【0156】
この不溶性についての可能な説明は、最初の20アミノ酸にわたる野生型タンパク質配列内の非常に疎水性の領域の存在に向けられる。このN末端配列はまた、切断可能な原核生物シグナル配列を含むと予測され、最も可能性のある切断部位は、位置G20とM21との間に存在する(図3)。この配列において、本発明者らはまた、アラニン反復5’AXXAXXAXXXXA3’(配列番号17)を見出し、これは、実際の切断認識配列の一部として役立ち得る[von Heijne,G.,1988,Biochim Biophys Acta 947,307−33]。このシグナルペプチドは、グリクロニダーゼについてのペリプラズム位置を示し、分泌(成熟)タンパク質のN末端配列が、M21で開始する。本発明者らは、この成熟改変体(Δ4,5Δ20)を組換えによって発現し、ここで、シグナル配列は、N末端6X His精製タグによって完全に置換された。推定シグナル配列を欠く酵素の組換え発現は、顕著に異なる結果を生じた。この場合、可溶性組換え発現レベルは、慣用的に、誘導された細胞1L当たり数百mgのタンパク質に達した。この酵素のヘパリン二糖ΔUHNacに対する比活性は、同様に頑強であった。
【0157】
(結果)
Δ4,5Δ20の発現および精製の要旨を、図5および表1に要約する。2工程の精製は、Ni+2キレーションクロマトグラフィー、続く、トロンビン切断を含み、6× His精製タグを除去し、代表的には、200mg以上の90%を超える純度の酵素を生じた(SDS−PAGE、続くCoomassie Brilliant Blue染色によって評価された)。活性の約3倍の精製を、単一のクロマトグラフィー工程で達成した。最も注目することとして、ΔUHNAcに作用する組換え酵素の比活性は、文献に報告された[Warnick,C.T.およびLinker,A.,1972,Biochemisty 11,568−72]ような値をはるかに超えた。酵素のN末端からの6× Hisタグの除去が、最適な加水分解活性に必要でなかったものの、ヒスチジンタグの存在は、特により高い酵素濃度において、長時間にわたって、タンパク質沈殿を起こさせるようであった。従って、このタグは、全ての引き続く生化学実験のために除去した。この様式において、組換えタンパク質は、少なくとも2週間4℃で安定であり、この間、これは、記載される緩衝液条件下で10mg/mLを超えるタンパク質濃度で溶液中に残った。
【0158】
44,209ダルトンの分子量を、MALDI−MSによって組換え酵素(すなわち、Δ4,5Δ20)について決定した。N末端20アミノ酸シグナル配列を欠く酵素についてのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号1および2として得られる。この実験的に確立された分子量は、そのアミノ酸組成に基づいて、43,956ダルトンの理論値と一致する。この値は、ネイティブな酵素について同様に測定された45,566ダルトンの分子量と比較して、1357ダルトンだけ物理的に異なる。この分子量の差は、大部分は、20アミノ酸シグナル配列内の組換えタンパク質の操作された除去によって説明される。しかし、本発明者らは、2つの酵素集団間の観察された差異を主に説明するグリコシル化のような差示的な翻訳後修飾の可能性を排除できない。不運なことに、化学的ブロックは、本発明者らがネイティブタンパク質のN末端配列を決定することを阻んだ。
【0159】
【表1】

【0160】
表1。組換えΔ4,5グリクロニダーゼについての精製の要約。各画分についての比活性は、100μl反応容量で、800ngのタンパク質および120μMの非スルホン化ヘパリン二糖(DiS)ΔUHNAcを使用して測定した。精製倍率は、粗製の溶解物について測定された比活性に対して計算した。
【0161】
(実施例3:最適な酵素活性のための生化学的条件)
Δ4,5グリクロニダーゼ活性についての最適反応条件を決定するために、本発明者らは、緩衝液、pH、温度およびイオン強度の関数として初期反応速度を分析した(図6)。これらの実験について、本発明者らは、二硫酸化ヘパリン二糖基質ΔUHNS,6Sを使用した。flavobacteriaによるヘパリン/ヘパリンスルフェート様グリコサミノグリカンの分解、およびこの酵素および関連する酵素の最初の生化学的特徴付けについて公知であること[Warnick,C.TおよびLinker,A.,1972,Biochemisty 11,568−72]に基づいて、本発明者らは、ヘパリン二糖が、Δ4,5グリクロニダーゼについての最適な基質であると仮定した。酵素活性は、232nmにおける吸収度の損失によって慣用的にモニターされ、これは、非還元末端からのウロン酸の加水分解に間接的に対応する。
【0162】
(結果)
これらの条件において、本発明者らは、50mMと100mMとの間で最適であったNaCl濃度活性依存性を観察した。100mMを超えるNaCl濃度は、比活性に対する有意かつ相対的に鋭い負の影響を示した(図6A)(すなわち、100mM NaClで測定される100%活性に対して、約60%の阻害が、250mMで存在する。NaCl滴定曲線において観察される急な変化は、酵素機能のいくつかの局面においてイオン的相互作用の重要な役割を示す。
【0163】
グリクロニダーゼについての観察されるpHプロフィールは、ベル型(図6C)であり、6.4が最適なpHである。興味深いことに、初期反応速度は、測定された最も高い温度(特に、42℃)で有意に減少した(図6B)。しかし、これらの温度での相対的な酵素安定性を評価するための、30℃、37℃および42℃でのプレインキュベーション実験は、標準的な30℃反応条件下で引き続いて測定した場合、相対的な酵素活性で有意な変化を示さなかった。このような実験の結果は、熱不安定性がその問題でないことを強く示唆する。
【0164】
Δ4,5グリクロニダーゼインビトロ反応条件を最適化するための最終の変数として、本発明者らはまた、二価金属イオンについての任意の要件を考慮した。本発明者らは、金属が、触媒作用に必要とされるか、または任意の適切な程度まで酵素を活性化するかのいずれかであるという証拠は見出さなかった。
【0165】
最適なΔ4,5グリクロニダーゼ活性についての反応条件を確立したので、本発明者らは、次に、F.heparinumから直接精製されたネイティブ酵素に対する組換え酵素(Δ4,5Δ20)の比活性を比較した(図7)。両方の酵素画分の活性を、同一反応条件下で並行して測定した。この比較において、組換えΔ4,5は、ネイティブ酵素に比較して約3倍高いグリクロニダーゼ比活性を有した。これらの観察された速度は、クローンされたΔ4,5酵素が、E.coliにおいてその組換え発現によって悪影響されない様式で、「野生型」活性を有することを極めて明瞭に示す。
【0166】
(実施例4:Δ4,5グリクロニダーゼ基質特異性)
種々のグリコサミノグリカンジサッカリド基質に作用するΔ4,5グリクロニダーゼの特異性を研究した。試験した種々の基質は、ヘパリンおよびコンドロイチンジサッカリドの両方、ならびにヒアルロナデートを含んだ。特に、本発明者らは、グリコシド結合位置(1→4対1→3)に関連する任意の構造的識別、およびジサッカリド内の相対的硫酸化状態の可能性を考慮した。各基質について、各反応速度パラメータを、Michaelis−Menten仮定に適合する基質飽和プロフィールに基づいて決定した(図8)。これらの反応速度値を表2に列挙する。ヘパリンジサッカリドについて、kcat値は、約2から15sec−1まで有意に変化し、一方、各個のジサッカリドの見かけのK値は、同程度であり、約100〜300μMの範囲であった。
【0167】
(結果)
ヘパリンジサッカリドΔU2SNSは、試験したいかなる濃度においても、数時間にわたる長期のインキュベーション時間後でさえ、基質ではなかった。試験した条件下で加水分解され、かつそれらについての反応速度論パラメーターが決定され得たヘパリンジサッカリドについて、興味深い基質選択性が明らかになった。この序列およびこれらの条件下で、2つのジサッカリドΔUHNAcおよびΔUHNac6Sが、最良の基質であり、これと較べてΔUHNH26SおよびΔUHNSは、基質として良好ではなかった。ΔUHNS,6Sについての反応速度論値は、これら2つの境界間のほぼ中間に低下した。
【0168】
これらのデータは、ヘパリンがコンドロイチン/デルマタンおよび/またはヒアルロンより良い基質であることを示すが、これらの化合物も基質である。基質反応速度を測定するための条件下で加水分解された非ヘパリンジサッカリドはなかった。この結果は、1→3結合よりも1→4結合に強い選択性のある、結合部位に関してΔ4,5の明確な識別性を示す。同時に、酵素反応をはるかに長い時間経過(12時間以上)、かなり高い酵素濃度で実施した場合、これらのジサッカリドは種々の程度までゆっくりと加水分解した。約18時間後、一硫酸化コンドロイチンジサッカリド(ΔUGalNac6S)の80%より多くが加水分解され、一方、硫酸化されていないコンドロイチン(ΔUGalNAc)およびヒアルロナンジッサカリド(ΔUH)はなお、それぞれ、約40%および65%存在していた。従って、結合位の重要性は絶対的ではない。ガラクトサミン内のコンドロイチン6−O硫酸化の明確なポジティブな効果は、ヘパリン基質についての本発明者らの結果と一致し、そして基質特異性を示すことにおいて、この位置の影響についてのさらなる証拠を提供する。
【0169】
ジサッカリドについて反応速度で規定された基質特異性に基づいて、本発明者らは、これらの結果を評価しようと試み、同時に、HSGAG組成分析のための酵素ツールとしてΔ4,5グリクロニダーゼの有用性を研究した。このように、Δ4,5は、ヘパリン/ヘパランスルフェートの従来のヘパリナーゼから生じるジサッカリドの組成を評価する際に非常に有用であるはずである。この特定の実験について、本発明者らは、ヘパリナーゼカクテルで200μgのヘパリンを予め処理した。この徹底した消化のすぐ後に、比較的短い(1分間)または長い(30分間)のΔ4,5グリクロニダーゼ処理を、最適な反応条件下で行った。次いで、ジサッカリド産物を、キャピラリー電気泳動によって分離した。次いで、Δ4,5処理したサッカリドの電気泳動移動度を、同一条件下で実施した未処理のコントロール(すなわち、ヘパリナーゼ処理のみ)と直接比較した(図9)。7個のジサッカリドピークが、ヘパリナーゼのみのコントロールに対応するキャピラリー電気泳動図に存在した(A)。これらのピークの各個の構造の割当てを、すでに確立された組成分析に基づいて行った。大部分について、これらのΔ4,5含有サッカリドの分解能は、各交互のピーク(1、3、5)が非還元末端で2−O硫酸化ウロン酸を有するジサッカリドに対応するようなものである。予想通り、これらのピークの相対振幅および面積は、Δ4,5プレインキュベーションのタイムコース全体にわたって同じままであった。この不変の結果は、18時間に及んだ。一方、2−O硫酸基を欠くジサッカリドに対応するピークは、消失された。さらに、これらの消失の相対速度は、先の反応速度論実験で決定した基質のそれぞれの選択性にきれいに対応する。ΔUHNAc6S(ピーク8)は、1分以内にほぼ加水分解され;ΔUHNS,6S(ピーク4)およびΔUHNS(ピーク6)は,それぞれ、約75%および50%加水分解された。これら後者2つの基質は、30分までに完全に消費された。
【0170】
割り当てられたジサッカリドに加えて、Δ4,5グリクロニダーゼはまた、ヘパリナーゼ生成テトラサッカリドに作用した(図9のピーク2として同定される)。テトラサッカリドとしてのピーク2の割り当てを、MALDI−MSによって確かめ、これは、1036.9の質量を示し、これは、4つの硫酸基を有する一アセチル化テトラサッカリドに対応する。このテトラサッカリドのジサッカリド分析はさらに、これが非還元末端で2−O硫酸基を含まないことを示した。このΔ4,5酵素は、1分後に出発物質の約半分を加水分解した。このテトラサッカリドについての加水分解の相対速度は、ジサッカリドΔUHNS(ピーク6)で観察された速度にほぼ対応する。この興味深い結果は、テトラサッカリドのようなより長い鎖のサッカリドが、実際にΔ4,5触媒加水分解の基質であることを、明らかに示す。
【0171】
【表2】

【0172】
表2.ヘパリンジサッカリドの反応速度パラメータ。kcatおよびKの値を、図9に示されるMichaelis−Menten曲線の非線形回帰分析から決定した。*N.A.ΔU2SNSについて、活性は検出しなかった。
【0173】
本明細書で引用される上記の特許、特許出願および参考文献の各々は、その全体が参考として援用される。本発明に従う現在好ましい実施形態が記載されてきたが、他の改変、変更および変化が本明細書中に記載の教示から当業者に示唆されることが考えられる。従って、全ての変更、修正および変化が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は、フラボバクテリウム属からのΔ4,5グリクロニダーゼの精製および結果として生じたタンパク分解を図示する。図1Aは、精製酵素のゲル濾過クロマトグラフィーである。図1Bは、ネイティブなタンパク質のトリプシン処理後の、逆相HPLCによるΔ4,5ペプチドの精製である。図1Cは、Bにおいて単離された、選択ペプチドのアミノ酸配列である。ピーク8、ピーク12、ピーク13、ピーク19、ピーク24およびピーク26は、それぞれ配列番号18〜23である。
【図2】図2は、Δ4,5遺伝子クローンの概略マップを提供する。図2A:部分のカルボキシ末端クローンG5AおよびG5H(黒矢印)を、それぞれプローブ1およびプローブ2を用いて、λZAPフラボバクテリウム属ライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングによって単離した。G5Aの5’末端を区切るEcoR1制限部位もまた示す。図2B:Δ4,5 5’末端を得るための、サザンハイブリダイゼーションによる戦略。オートラジオグラムおよびその対応する制限マップを示す。ゲノムDNAを、EcoR1のみ(レーン1)で制限処理したか、またはそれぞれHindIII(レーン2)、BamH1(レーン3)もしくはBglII(レーン4)と共に、二重消化した。使用したDNAハイブリダイゼーションプローブ3を、N末端プライマー68およびN末端プライマー74(両方ともEcoR1部位の5’側である)を使用して、PCRにより増幅した。BglII−EcoR1 約1.5kb DNAフラグメント(灰色のバー)を、サブクローニングおよびDNA配列決定のために単離した。図2C:図2Aおよび図2Bに示される重複クローンからまとめた、全長Δ4,5遺伝子(1.2kb)の概略図である。
【図3】図3は、Δ4,5グリクロニダーゼ遺伝子配列を図示する。全長遺伝子を、図2に概説した方法を使用して単離した。アミノ酸配列および核酸配列を、配列番号3および配列番号4にそれぞれ与える。ここで、コードDNA配列および隣接DNA配列の両方が示される。1209塩基対のCDS(コード配列)は、推定402アミノ酸のタンパク質をコードするORFを含む。開始コドンおよび終止コドンを、太字で強調する。潜在的シャイン−ダルガーノ(SD)配列を、箱で囲む。推定シグナル配列を下線で示し、そしてその切断部位を、垂直矢印で定めた。EcoR1制限部位は、二重線で示した。PCR(DNAハイブリダイゼーションプローブ1およびDNAハイブリダイゼーションプローブ2を増幅する)に使用した縮重プライマー対(矢印で示す)、ならびにどちらの向きの配列情報が得られたかについての精製Δ4,5ペプチドの相対的位置(灰色で網掛けする)もまた示す。
【図4−1】図4Aは、Δ4,5グリクロニダーゼ一次配列分析を図示する。図4Aは、ヒドロパシープロット(Kyte−Doolittle)である。正の値は、疎水性の増大を表す。図4Bは、Δ4,5グリクロニダーゼ一次配列分析を図示する。図4Bは、アミノ酸1〜65を使用する理論的シグナル配列決定である。指数を、グラム陰性菌上に連なるネットワークを使用するシグナルPV.1.1を使用し、計算した。G20とM21との間に位置する推定切断部位を、垂直矢印で表す。
【図4−2】図4Cは、Δ4,5グリクロニダーゼ一次配列分析を図示する。図4Cは、選択グリクロニルヒドロラーゼを用いた、全長Δ4,5グリクロニダーゼのCLUSTAL W多重アラインメントである。タンパク質配列を、タンパク質データベースの最初のBLASTP検索から選択した。同一のアミノ酸を、暗灰色で網掛けし、近不変位置(near invariant position)をチャコールグレーで網掛けし、そして保存的置換を明灰色で示す。Gen Bank登録番号を、以下に示す:Bacillus sp.(AB019619);Streptococcus pneumoniae(AE008410);Streptococcus pyogenes(AE006517);Agaricus bisporsus(AJ271692);Bactobacillus halodurans(AP001514)。
【図5】図5は、組換えΔ4,5Δ20タンパク質発現および精製の結果を提供する。アミノ酸配列および核酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2として与えられる。6×HIS N末端融合タンパク質としてのBL21(DE3)中での発現後の種々の精製段階における、Δ4,5タンパク質画分のSDS−PAGE。ここで、クーマシー−ブリリアントブルーで染色した12%ゲルを示す。レーン2は、誘導されなかった細菌細胞由来の溶解物であり;レーン3は、誘導培養物由来の粗細胞溶解物であり;レーン4は、Ni+2キレート化クロマトグラフィー精製であり;レーン5は、N末端6×His精製タグを除去するためのトロンビン切断である。分子量マーカー(レーン1およびレーン6)もまた示す。
【図6】図6は、Δ4,5グリクロニダーゼ生化学反応条件の効果を図示する。図6A:[NaCl]滴定;B:反応温度の効果;C:pHプロフィール。相対酵素活性は、初期速度に由来し、これは、100mM NaCl(A)または30℃(C)に基準化した。pHプロフィールについてのkcat値およびK値を、方法(および図8)で記載するように、Michaelis−Menten動態学から外挿した。3実験全てにおいて、二硫酸化ヘパリンジサッカリドΔUHNS,6Sを使用した。
【図7】図7は、ネイティブ酵素および組換え酵素の動態学比較を示す。相対比活性を、同一反応条件下(200nMの酵素および500μMのヘパリンジサッカリド基質(ΔUHNAc)を含む)で、両酵素画分について測定した。フラボバクテリウム属Δ4,5(黒丸);組換えΔ4,5(白丸)。
【図8】図8は、ジサッカリド基質特異性を図解する。図8A:硫酸化を変化させてのヘパリンジサッカリドについての動態学プロフィール。200nMの酵素を使用して、標準条件下で初期速度を決定した。体積 対 [S]曲線を、非線形最小2乗分析を用いて、Michaelis−Menten定常状態動態学に当てはめた。図8B:図Aに示したデータのLineweaver−Burke表示。ΔUHNac,6S(λ);ΔUHNac(O);ΔUHNS,6S(σ);ΔHNS(Δ);ΔUHNH2,16S(+)ΔU2SNS(+、活性なし)。
【図9】図9は、HSGAG組成分析におけるヘパリナーゼおよびΔ4,5グリクロニダーゼの、タンデム使用を図示する。200μgのヘパリンを、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIIおよびヘパリナーゼIIIで完全消化し、その後、Δ4,5を、種々の長さの時間で添加した。ジサッカリド生成物を、キャピラリー電気泳動で分離した。各ピークについて示される糖組成物の割り当てを、MALDI−MSによって確認した。A:Δ4,5酵素を含まないコントロール;(破線)。B:分(部分)Δ4,5インキュベーション;C:30分(完全)Δ4,5インキュベーション。
【配列表】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋なΔ4,5不飽和グリクロニダーゼ。
【請求項2】
前記グリクロニダーゼが組換え生成されたグリクロニダーゼである、請求項1に記載のグリクロニダーゼ。
【請求項3】
前記グリクロニダーゼが、合成グリクロニダーゼである、請求項1に記載のグリクロニダーゼ。
【請求項4】
前記グリクロニダーゼが、配列番号1のアミノ酸を有するペプチド、またはその機能的改変体である、請求項1に記載のグリクロニダーゼ。
【請求項5】
単離されたポリペプチドであって、
配列番号1のアミノ酸配列を有するΔ4,5不飽和グリクロニダーゼ、またはその機能的改変体を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項6】
前記グリクロニダーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
ネイティブのグリクロニダーゼより高い比活性を有する単離されたΔ4,5不飽和グリクロニダーゼを含む、組成物。
【請求項8】
前記グリクロニダーゼが、グルクロニダーゼ1ピコモルあたり、1分内に、少なくとも約60ピコモルの加水分解された基質の比活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記Δ4,5不飽和グリクロニダーゼが、ネイティブのグリクロニダーゼよりも少なくとも約2倍高い比活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記Δ4,5不飽和グリクロニダーゼが、ネイティブのグリクロニダーゼよりも少なくとも約3倍高い比活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記Δ4,5不飽和グリクロニダーゼが、ネイティブのグリクロニダーゼよりも少なくとも約4倍高い比活性を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
単離された核酸分子であって、以下:
(a)ストリンジェントな条件下で、配列番号2で記載されるヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズし、かつ配列番号1として記載されるアミノ酸配列を有するΔ4,5不飽和グリクロニダーゼをコードする、核酸分子;
(b)遺伝コードの縮重に起因して、コドン配列が該(a)の核酸分子とは異なる核酸分子、および
(c)(a)または(b)の相補体、
からなる群から選択される、単離された核酸分子。
【請求項13】
前記単離された核酸分子が、配列番号1をコードする、請求項12に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
前記単離された核酸分子が、配列番号2で記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の単離された核酸分子。
【請求項15】
プロモーターに作動可能に連結された請求項10に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
プロモーターに作動可能に連結された請求項14に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
薬学的調製物であって、以下:
請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物またはベクターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、調製物。
【請求項20】
グリコサミノグリカンを切断する方法であって、以下:
グリコサミノグリカンを、該グリコサミノグリカンを切断するのに有効な量で、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリクロニダーゼと接触させる、工程、
を包含する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法に従って調製されたグリコサミノグリカン。
【請求項22】
ヘパリン含有流体からヘパリンを取り出す工程であって、以下:
ヘパリン含有流体を、該ヘパリン含有流体からヘパリンを取り出すのに十分な量で、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリクロニダーゼと接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記グリクロニダーゼが、固体支持体に固定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヘパリナーゼもまた、前記固体支持体に固定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
グリコサミノグリカンを分析する方法であって、以下:
グリコサミノグリカンを、該グリコサミノグリカンを分析するのに有効な量で、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリクロニダーゼと接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記方法が、サンプル中の特定のグリコサミノグリカンの存在を同定するための方法である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、サンプル中のグリコサミノグリカンの純度を決定するための方法である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、サンプル中のグリコサミノグリカンの組成を決定するための方法である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、グリコサミノグリカンのサッカリド単位の配列を決定するための方法である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
質量分光法、NMR分光法、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動およびHPLCからなる群から選択されるさらなる分析技術をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのジサッカリド単位から構成されるグリコサミノグリカンを切断する方法であって、以下:
少なくとも1つのジサッカリド単位から構成されるグリコサミノグリカンを、該グリコサミノグリカンを切断するのに有効な量で、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリクロニダーゼと接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項32】
前記グリコサミノグリカンが、ΔUHNAcジサッカリド単位から構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記グリコサミノグリカンが、ΔUHNAc,6Sジサッカリド単位から構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記グリコサミノグリカンが、ΔUHNS,6Sジサッカリド単位から構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記グリコサミノグリカンが、ΔUHNSジサッカリド単位から構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記グリコサミノグリカンの長さが、2サッカリド単位を越える、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記グリコサミノグリカンが、2−0硫酸化ウロニデートを含まない、請求粉30に記載の方法。
【請求項38】
前記グリコサミノグリカンが、6−0硫酸化されている、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記グリコサミノグリカンが、N非置換グリコサミンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
新脈管形成を阻害する方法であって、その必要のある被験体に、新脈管形成を阻害するために有効な量の請求項19に記載の薬学的調製物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
癌を処置する方法であって、その必要のある被験体に、癌を処置するために有効な量の請求項19に記載の薬学的調製物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項42】
細胞増殖を阻害する方法であって、その必要のある被験体に、細胞増殖を阻害するために有効な量の請求項19に記載の薬学的調製物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項43】
凝固障害を処置する方法であって、その必要のある被験体に、請求項19に記載の組成物を、該凝固障害を処置するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項44】
前記グリクロニダーゼの使用が、ヘパリナーゼを用いる処置と同時であるか、またはその後である、請求項20、22または31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
薬学的調製物であって、請求項19に記載の組成物および薬学的に受容可能なキャリアを含む、調製物。
【請求項46】
新脈管形成を阻害する方法であって、その必要のある被験体に、請求項21に記載の組成物を、新脈管形成を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項47】
癌を処置する方法であって、その必要のある被験体に、請求項21に記載の組成物を、癌を処置するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項48】
細胞増殖を阻害する方法であって、その必要のある被験体に、請求項21に記載の組成物を、細胞増殖を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項49】
凝固障害を処置する方法であって、その必要のある被験体に、請求項21に記載の組成物を、該凝固障害を処置するのに有効な量で投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−504437(P2006−504437A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567979(P2004−567979)
【出願日】平成15年5月5日(2003.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/013938
【国際公開番号】WO2004/069152
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】