説明

α−オレフィン/スチレン類共重合体およびその製造方法

【課題】耐熱酸化性に優れたα−オレフィン/スチレン類共重合体およびその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物共存下にα−オレフィンとスチレン類の共重合によってα−オレフィン/スチレン類共重合体の製造方法。スチレン類の含有率が20〜60mol%の範囲であり、かつランダム共重合体である少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種のスチレン類の共重合体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン/スチレン類共重合体の製造方法に関し、更に詳しくは、特定の触媒系を用いることにより耐熱酸化性に優れたα−オレフィン/スチレン類共重合体を効率的に製造する方法に関するものである。さらに本発明は、新規なα−オレフィン/スチレン類共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン/スチレン類共重合体は耐熱酸化性に優れていること(非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3)が報告されている。プロピレン/スチレン類の共重合体は、従来、三塩化チタンとトリエチルアルミニウム、ハロゲン化遷移金属化合物とトリアルキルアルミニウムなどのいわゆるチーグラー−ナッタ触媒を用いる方法(特許文献1、非特許文献1、非特許文献4および非特許文献5)によって製造されていた。しかしながら、不均一系のこれらの触媒により得られるプロピレン/スチレン類の共重合体は、プロピレンおよびスチレン類の単独重合体を相当量含み、共重合体自身の組成も不均質であるという問題を有していた。更に、触媒自身の活性が低く脱灰工程が必要であって、共重合体中のスチレン類の含量が10重量%以下と低い点も改善すべき課題となっている。
【0003】
1990年前半より、幾何拘束型触媒(CGC:Constrained Geometry Catalyst)を初めとする特徴ある均一系錯体の重合触媒を用いてスチレン系共重合体を合成しようとする提案が(特許文献2、非特許文献5および非特許文献6)なされているが、ほとんどがエチレンとの共重合体合成に関するものである。
【0004】
最近、プロピレンとスチレン類の共重合に関する報告(非特許文献7、非特許文献8および非特許文献9)も見られるが、共重合体中のスチレン含量が依然として低い(16mol%以下)という問題が解決されておらず、より高いスチレン含有量のプロピレン/スチレン共重合体の開発が望まれていた。エチレンとスチレン類に比べ、プロピレンとスチレン類の共重合に関する報告の少なさは、プロピレンのメチル基とスチレンのフェニル基の立体障害に起因すると推定されるが、これまでにこの問題を解決する触媒系が見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−206602号公報
【特許文献2】Eur.Pat.Appl.,0416815A2,1990
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】工業化学雑誌、1963、第66巻、p.1350
【非特許文献2】工業化学雑誌、1964、第67巻、p.258
【非特許文献3】工業化学雑誌、1967、第70巻、p.739
【非特許文献4】Macromolecules,USA,1989,Vol.22,p.2875
【非特許文献5】Macromol.Rapid Commun.,Germany,WILEY−VCH,1998,Vol.19,p.327
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.,USA,ACS,2004,Vol.126,p.13910
【非特許文献7】European Polymer Journal,Elsevier,The Netherlands,1999,Vol.35,p.1073
【非特許文献8】Macromolecules,USA,ACS,1989,Vol.22,p.2875
【非特許文献9】ACS symposium series,USA,ACS,2000,Vol.749,p.81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、耐熱酸化性に優れ、均質な組成を有するα−オレフィンとスチレン類の共重合体を高活性で得る製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を続けた結果、α−オレフィンとスチレン類の共重合において特定の周期表第4族遷移金属化合物を主触媒として用いることで、均質な組成のα−オレフィンとスチレン類のランダム共重合体が生成することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]
一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物の1種または2種以上の存在下にα−オレフィンとスチレン類とを共重合させてα−オレフィン/スチレン類共重合体を得る工程を含む、α−オレフィン/スチレン類共重合体の製造方法。
【化1】

(式(I)中、R1〜R11は、独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子若しくはC1〜C10の置換基を有することができるアリール基、またはハロゲン原子若しくはC1〜C10の置換基を有することができるシリル基を示すか、またはR2とR3、R5とR6若しくはR6とR7、R8とR9若しくはR9とR10は、独立に、結合してC1〜C5の環状構造を形成してもよく、前記環状構造を構成する炭素原子は、独立に、水素原子またはハロゲン原子を置換基として有することができるC1〜C10のアルキル基を有することができ、X1とX2はハロゲン原子を有することができるC1〜C10のアルキル基またはハロゲン原子を示し、Mは周期表第4族遷移金属を示す。)
[2]
前記一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物に加えて、(a)アルミノキサンおよび(b)有機アルミニウム化合物の一種類または二種類以上を共存させ、その下に前記共重合を実施する、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物に加えて、(a)アルミノキサンの一種類または二種類以上を共存させ、その下に前記共重合を実施する、[1]に記載の製造方法。
[4]
式(I)中、周期表第4族遷移金属を示すMは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
前記α−オレフィン/スチレン類共重合体がランダム共重合体である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
スチレン類の含有率が20〜60mol%の範囲であり、かつランダム共重合体である少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種のスチレン類の共重合体。
[7]
前記共重合体は、アタクチック共重合体である[6]に記載の共重合体。
[8]
前記共重合体は、数平均分子量(Mn)が、10,000〜1,000,000の範囲である[6]または[7]に記載の共重合体。
[9]
前記共重合体は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、1〜3の範囲である[6]〜[8]のいずれかに記載の共重合体。
[10]
前記共重合体は、ガラス転移温度が−50〜70℃の範囲である[6]〜[9]のいずれかに記載の共重合体。
[11]
前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、または1−ヘキセンである[6]〜[10]のいずれかに記載の共重合体。
[12]
前記スチレン類がスチレン、p−メチルスチレン、またはp−エチルスチレンである[6]〜[11]のいずれかに記載の共重合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、α−オレフィンとスチレン類との共重合を特定の周期表第4族遷移金属化合物共存下に行うことにより、耐熱酸化性に優れたα−オレフィン/スチレン共重合体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明で得られたプロピレン/スチレン共重合体の13C−NMRチャートである。
【図2】本発明で得られた1−ヘキセン/スチレン共重合体の13C−NMRチャートである。
【図3】本発明で得られたプロピレン/スチレン共重合体の13C−NMRチャートで、プロピレン部の3級炭素とスチレン部の3級炭素のスペクトル部を拡大したものである。プロピレン部の3級炭素は仕込みのスチレン量が増大するに連れてスチレン隣接プロピレン部3級炭素の共鳴線が増大した。一方、スチレン部の3級炭素は、仕込みのスチレン量が増大するに連れてスチレン隣接スチレン部3級炭素の共鳴線増大が観測された。
【図4】プロピレン/スチレン共重合体中のスチレン含量とTgの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<製造方法>
以下に本発明を詳細に説明する。
(1)α−オレフィン
本発明に用いられるα−オレフィンは、例えば、C3〜C18のものであることができ、好ましくはC3〜C6である。α−オレフィンの具体例としては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1などを挙げることが出来る。好ましいα−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1であり、スチレンと組み合わせて共重合を行った際に重合性が最も高いと言う意味でプロピレンが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、1種類のみ単独で共重合に用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0013】
(2)スチレン類
スチレン類としては、スチレン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、および1種または2種の置換基を有するスチレンを挙げることができる。置換基の位置は特に制限はなく、オルト、メタおよびパラのいずれの位置でもよい。スチレンが有する置換基としては、置換基を有しても良いC3〜C6のアルキル基、C2〜C4のアルケニル基、C3〜C6のアルコキシル基、ハロゲン、水酸基等を挙げることができる。置換基を有しても良いC3〜C6のアルキル基の置換基としては、アセチル基を挙げることができる。スチレン類の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−プロピルスチレン、p−i−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−i−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンなどを挙げることが出来る。ヒドロキシスチレンを用いる場合には、あらかじめトリメチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムと接触させ、ヒドロキシ基部を保護することが望ましい。特に、スチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレンが上述のα−オレフィンと組み合わせた際に高い活性で共重合体を与える(即ち、スチレンとの共重合性が高い)と言う点で好ましい。これらのスチレン類は、1種類のみ単独で共重合に用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
(3)周期表第4族遷移金属化合物
本発明のα−オレフィン/スチレン類共重合体の製造には、一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物を重合触媒として用いる。一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物は、無置換あるいは置換シクロペンタジエニル基を配位子として一つ有する、いわゆるハーフメタロセン化合物であり、α−オレフィンとスチレン類化合物の共重合性に優れる。
【0015】
【化2】

【0016】
式(I)中、周期表第4族遷移金属を示すMは、具体的にはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであることができ、触媒としてα−オレフィンとスチレン類の共重合に用いた際に最も高い活性を示す、即ち共重合に用いた際に単位時間当たりの生成ポリマー量が多いと言う意味でチタンが好ましい。
【0017】
1およびX2は、独立に、C1〜C10のハロゲン原子を含有して良いアルキル基またはアリール基、もしくはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ペンタフルオロフェニル基などのハロゲン置換のアリール基などを挙げることが出来る。
【0018】
1〜R11は水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いアリール基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いシリル基を示す。中でも、R1〜R3は、独立に、C1〜C10のアルキル基またはアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子を含有しても良い。R1〜R11は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ペンタフルオロフェニル基などのハロゲン置換のアリール基、無置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基等のシリル基を挙げることが出来る。
【0019】
あるいは、R2とR3、R5とR6またはR6とR7、R8とR9またはR9とR10は結合してC1〜C5の環状構造を形成することができる。R5とR6が環状構造を形成するときは、R6とR7は環状構造を形成せず、逆に、R6とR7が環状構造を形成するときは、R5とR6は環状構造を形成しない。同様に、R8とR9が環状構造を形成するときは、R9とR10は環状構造を形成せず、逆に、R9とR10が環状構造を形成するときは、R8とR9は環状構造を形成しない。前記環状構造を構成する炭素原子がC2〜C5の場合、複数の炭素原子の間の結合は、飽和または不飽和であることができ、前記環状構造を構成する炭素原子は、独立に、水素原子またはハロゲン原子を置換基として有することができるC1〜C10のアルキル基を有することができる。
【0020】
一般式(1)で示される周期表第4族遷移金属化合物の具体例としては、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−フルオレニル)シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−フルオレニルシラン)チタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(イソプロピル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(イソプロピル)フルオレニルシラン]チタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−フルオレニル)シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−フルオレニル)シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチルなどが挙げられる。
【0021】
これらの周期表第4族遷移金属化合物は、重合に際して1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。また、シリカなどの担体をあらかじめ固体触媒調製を行う場合に際しては、これらの遷移金属化合物を1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。
【0022】
(4)アルミノキサンおよび有機アルミニウム化合物
本発明においては、上記周期表第4族遷移金属化合物を、この遷移金属化合物を活性化する特定の助触媒と組み合わせることにより、高い活性を発現させることが出来き、その結果、共重合に用いた際に単位時間当たりに生成するα−オレフィン/スチレン類共重合体量が多くなる。上記特定の助触媒としては、(a)アルミノキサン、および(b)有機アルミニウム化合物を挙げることが出来、これらを単独で用いても良いし、適切に組み合わせて使用しても良い。
【0023】
(a)アルミノキサン
アルミノキサンとは、下記繰返し単位(i)および(ii)を含む化合物である。
【化3】

【0024】
繰返単位(i)中、R12は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子または水酸基で置換されていても良い。
【0025】
繰返単位(i)、(ii)からなるアルミノキサンは下記一般式(II)のように表現することが出来る。
【化4】

【0026】
C1〜C20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基などである。アルキル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C1〜C6である。C2〜C20のアルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などである。アルケニル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C2〜C6である。C6〜C20のアリール基は、例えば、例えば、フェニル基、トリル基などを挙げることができる。アリール基は、入手の容易さ等を考慮すると、C6〜C10である。
【0027】
12としてのハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。アルキル基、アルケニル基およびアリール基は、置換基としてのハロゲン原子を、各基の炭素数に応じて例えば、1〜20個有することができる。
【0028】
12は、より好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、フッ素または塩素である。
【0029】
繰返単位(ii)中、R13は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。
繰返単位(i)中、R13は上記R12で例示した基と同一のものを用いることができる。
【0030】
繰返単位(i)および(ii)の合計数は2〜30の範囲であり、繰返単位(i)および(ii)の順番は任意である。
繰返単位(i)および(ii)の合計数(o+p)が2未満では、アルミノキサン繰返単位の連鎖が形成されないため触媒性能を十分発現させることが出来ず、30を超えるとアルミノキサン同士の会合のため触媒反応に寄与できるアルミノキサンユニットの量が低下し触媒性能の十分な発現を妨げてしまう。繰返単位(i)および(ii)の合計数は、アルミノキサンユニット連鎖の特徴を効率的に発現するという観点から、5〜10の範囲であることが好ましい。アルミノキサン化合物において、繰返単位(i)および(ii)の順番は任意である。
【0031】
アルミノキサン化合物は、環状化合物であるか、または線状化合物であることができる。環状化合物であるか、線状化合物であるかは、製造時の条件により異なる。線状化合物である場合、末端のアルミニウムにはR12またはR13が2個結合した構造を有する。
【0032】
好ましいポリアルミノキサン化合物は、例えば、繰返単位(i)のR12および繰返単位(ii)のR13がメチル基であるポリメチルアルミノキサン、繰返単位(i)のR12および繰返単位(ii)のR13がイソブチル基またはn−オクチル基であるポリイソブチルアルミノキサンまたはポリn−オクチルアルミノキサン、繰返単位(i)のR12がメチル基、繰返単位(ii)のR13がエチル基、イソブチル基あるいはn−ヘキシル基でo/pの比が1〜10のポリアルミノキサン化合物である。
【0033】
本発明に用いられるアルミノキサン化合物の繰返単位(i)−(R12)AlO−と(ii)−(R13)AlO−の結合はブロック的あるいはランダム的またはそれらの混在した結合となっていてもよい。また、ポリアルミノキサン化合物は線状構造あるいは環状構造およびそれらの混在した構造であってよい。
【0034】
本発明に用いられるアルミノキサンは、トリアルキルアルミニウムと水との反応により得られるもの、トリアルキルアルミニウムとケトン類化合物またはカルボン酸類化合物との反応により得られるものなど、合成法に依らず用いることが出来る。また、これらを複数種併用して重合に用いても良い。また、上記アルミノキサンは通常溶媒に溶解した溶液状体で用いられるが、SiO2やAl23などの担体上に固定化担持した形での使用も可能である。
【0035】
(b)有機アルミニウム化合物
共存してよいアルキルアルミニウム化合物は、一般式(III)
【化5】

(式中、R14、R15およびR16はそれぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基などの炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。また、R14、R15およびR16の内、最低一つは炭化水素基、アルコキシ基またはアリロキシ基である。) で表すことができる。
【0036】
一般式(III)中のR14、R15およびR16としては、より具体的に示すと、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基またはイソオクチル基などのアルキル基、フェニル基またはトリル基などのアリール基などを挙げることができ、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子、メトキシ基またはエトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリロキシ基を挙げることができる。
【0037】
このようなアルキルアルミニウム化合物の具体例として、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを、トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウムを、またジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどの含ハロゲンアルキルアルミニウムを挙げることができる。ここに挙げたアルキルアルミニウム化合物の中で好ましいものは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミ二ウム、トリイソブチルアルミニウム、およびジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドである。
【0038】
本発明の製造方法において、周期表第4族遷移金属化合物と(a)アルミノキサン、(b)有機アルミニウム化合物との混合割合は、種々重合条件により適切に設定できる。
【0039】
(a)のアルミノキサンを単独で用いる場合、周期表第4族遷移金属化合物に対するモル比で20〜10000でよく、好ましくは50〜2000、より好ましくは50〜1000の範囲である。この範囲とすることで、良好な生産性が得られるというだけでなく、周期表第4族遷移金属化合物が十分活性化され共重合活性を発現でき、また周期表第4族遷移金属化合物の分解などの不活性化を抑制できるという利点がある。さらに、この範囲とすることで、共重合終了時のクエンチおよびワークアップ時の発熱やポリマー中に残留するアルミニウム残渣量を低減できるという利点もある。
【0040】
(a)のアルミノキサンと(b)の有機アルミニウム化合物を併用する場合、以下の条件を満たすことが共重合時の重合活性を高く保つというという観点から適当である。周期表第4族遷移金属化合物に対するモル比で示すと、
・周期表第4族遷移金属化合物:(a):(b)=1:20:10〜1:6000:3000
・(a)/2>(b)
・(a)+(b)<9000
の条件を満たすことが望ましい。
【0041】
モノマー(α−オレフィン+スチレン類)に対する触媒の割合は特に制限がないが、周期表第4族遷移金属化合物に対するモル比で示すと、通常1,000〜2,000,000でよく、好ましくは10,000〜2,000,000の範囲である。この範囲とすることで十分な触媒活性が得られるために、共重合体からの触媒除去操作が容易になるか、または不要になるという利点がある。さらに、周期表第4族遷移金属化合物の共重合活性に見合わないほどの多量のモノマーを使用することはモノマーの有効利用という点から問題があり、結果として、生産性の低下をもたらすことになる。
【0042】
重合に供する溶液中のモノマー濃度についても特に制限はないが、モノマー濃度が低すぎると生産性の低下するため、通常1質量%以上に設定することが適当である。モノマー濃度の上限は特にないが、液粘性の高いスチレン類モノマーを用いる際には溶媒を使用することが望ましい。この際、用いられる溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒のいずれも利用することが出来、ハロゲン原子を有していても良い。具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、オルトジクロロベンゼンなどのハロゲン含有芳香族炭化水素系溶媒およびそれらの混合溶媒である。より好ましくはペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼンおよびそれらの混合溶媒である。
【0043】
重合温度は特に制限はないが、通常−30℃〜200℃の範囲で実施され、好ましくは−10℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に制限がなく、通常1分間〜100時間の範囲で実施することが出来る。
【0044】
得られる共重合体の分子量は、モノマーと触媒との比や重合温度を調整することにより制御することが出来る。また、水素などの添加によっても共重合体分子量を調整することが出来る。
【0045】
本発明の製造方法により得られるα−オレフィン/スチレン共重合体は、数平均分子量(Mn)が、例えば、10,000〜1,000,000の範囲であり、より好ましくは20,000〜500,000の範囲であることがきる。
【0046】
また、本発明の製造方法においては、得られるα−オレフィン/スチレン共重合体ガラス転移温度(Tg)を、α−オレフィンとスチレン類化合物との共重合比および共重合するα−オレフィンの種類により、−50℃〜100℃の範囲で制御することが出来る。
【0047】
本発明の周期表第4族遷移金属触媒を用いた均一系重合および担体を利用して調製した不均一系触媒を使用する重合は、重合形式として、溶媒を用いる溶液重合、溶媒を用いないバルク重合や気相重合等のいずれの方法においても重合は可能である。また、連続重合、回分式重合のいずれの方法においても好ましい性能を発揮し、分子量調節剤としての水素なども必要に応じて用いることが出来る。
【0048】
<α−オレフィン/スチレン共重合体>
本発明は、上記本発明の製造方法で得られたα−オレフィン/スチレン共重合体の内、スチレン類の含有率が20〜60mol%の範囲であり、かつランダム共重合体であるα−オレフィン/スチレン共重合体を包含する。本発明のα−オレフィン/スチレン共重合体は、少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種のスチレン類の共重合体である。
【0049】
本発明のα−オレフィン/スチレン共重合体は、スチレン類の含有率が20〜60mol%の範囲であり、かつランダム共重合体である。
スチレン類の含有率が20mol%未満であり、かつランダム共重合体は、従来も知られていた。しかし、スチレン類の含有率が20mol%以上のランダム共重合体は知られておらず、かつその製造方法も知られていなかった。一方、スチレン類の含有率が60mol%を超える共重合体は、スチレン類の単独重合体を少なからず含むものであることから、α−オレフィン/スチレン共重合体とは言えない。
【0050】
本発明の共重合体は、アタクチック共重合体である。本発明で得られる共重合体が、常温合成で得られるアタクチック共重合体であることで、特別な冷却装置を必要とせず、また高い重合活性で共重合体が得られるという利点がある。
【0051】
本発明の共重合体は、数平均分子量(Mn)が、10,000〜1,000,000の範囲であり、好ましくは15,000〜500,000の範囲であり、より好ましくは20,000〜300,000の範囲である。また、本発明の共重合体は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、例えば、1〜3の範囲であることができ、好ましくは1.3〜2.2の範囲である。
【0052】
本発明の共重合体は、共重合体を形成するモノマー成分にもよるが、ガラス転移温度が、例えば、−50〜70℃の範囲である。好ましくは、ガラス転移温度は、例えば、−30〜65℃の範囲である。ガラス転移温度を上記範囲に調整することで、本発明の共重合体の性質を、低反発フォオームから形状記憶フォームという性質に、任意に制御できるという利点を有する。
【0053】
本発明の共重合体におけるα−オレフィンは、前記本発明の製造方法で挙げられたα−オレフィンを例示できるが、その中でも特に、耐熱酸化性に優れた共重合体が得られるという観点から、プロピレン、1−ブテン、および1−ヘキセンが好ましい。
【0054】
本発明の共重合体におけるスチレン類は、前記本発明の製造方法で挙げられたスチレン類を例示できるが、その中でも特に、耐熱酸化性に優れた共重合体が得られるという観点から、スチレン、p−メチルスチレン、およびp−エチルスチレンが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。以下の反応は乾燥窒素ガス雰囲気下に行った。また、各特性の評価は下記の方法により行った。
【0056】
(1)(共)重合体の分子量および分子量分布
(共)重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ウォーターズ社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)150Cを用いて測定した。溶媒はo−ジクロルベンゼを用い、測定温度140℃で行い、単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線によるユニバーサル法により求めた。
【0057】
(2)(共)重合体のミクロ構造解析
日本電子社製NMR測定装置を用い、溶媒として用いたC22Cl4に(共)重合体を溶解させ、125℃にて13C−NMR測定を実施した。得られたNMRチャートの解析から、(共)重合体のミクロ構造解析を行った。NMRチャートよりプロピレンとスチレンの共重合体中のスチレン含有率を求める式を例として下に示す。

【0058】
(3)(共)重合体のガラス転移温度(Tg)
(共)重合体のガラス転移温度(Tg)はセイコー社製示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0059】
(4)共重合体の熱酸化性の評価
本発明で得られた共重合体の熱酸化性評価を、非特許文献1および3に記載された林らの方法に準じて行った。ここでの熱酸化性の評価は、145℃における酸化の誘導期間を測定することにより行った。なお、誘導期間の測定は300minを上限とした。尚、本明細書において熱酸化性の評価の結果、耐熱酸化性がある、とは、加熱下において酸素による共重合体の酸化が起こりにくいことを意味する。
【0060】
[参考例1]
(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチルの合成
(1) Octamethyloctahydrodibenzofluorene(OctFlu)の合成
【化6】

【0061】
フルオレン誘導体であるoctamethyloctahydrodibenzofluorene (OctFlu) の合成はMillerらの文献(Polyhedron,Elsevier,The Netherlands,2005,Vol.24,p.1314)を基に,上記スキーム1に従い行った.
【0062】
フルオレン(10.0 g, 60 mmol)と2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサン(22.3 g, 122 mmol)をニトロメタン(450 ml)に溶解し、この混合溶液にAlCl3 (10.7 g, 80 mmol)のニトロメタン溶液(40 ml)を10分かけて室温で滴下した後20時間攪拌した。反応溶液を氷水(500 ml)にゆっくり注ぎ、淡黄色の固体を析出させた後にろ過して固体を得た。この固体をエタノール(400 ml)に加え2時間環流させた後ゆっくりと室温に戻した。これをろ過し、薄い乳白色の固体を得た。さらにこの固体をヘキサン(300 ml)に加え2時間還流させた後ゆっくりと室温に戻し、ろ過をすることによりOctFluの白色粉末を収率50 %で得た。生成物の同定は1H NMRによって行った。
【0063】
(2) t-BuNHSiMe2OctFluの合成
錯体4の配位子t-BuNHSiMe2OctFluはCaiらの文献(Macromolecules,USA,ACS,2005,Vol.38,p.8135)を基に、以下のスキーム2に従い合成した。
【0064】
0 ℃に冷却したOctFlu(4.5 g, 12 mmol)のTHF溶液(80 ml)に1.1 mol当量の1.60 M n-BuLiヘキサン溶液(8.0 ml, 13 mmol)を滴下した。これを室温に戻した後3時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン(60 ml)を加え攪拌し、しばらく静置した後に上澄みをシリンジで除去して黄色粉末のリチウム塩を得た。得られたリチウム塩に再びヘキサンを加え縣濁液にした後、4.0 mol当量のSiMe2Cl2(5.6 ml, 46 mmol)のヘキサン溶液に-78 ℃で滴下した。ゆっくり室温に戻して一晩攪拌した後、溶媒および未反応のSiMe2Cl2を減圧留去し、残渣から生成物をヘキサン抽出してLiClと分離した。ヘキサンを減圧留去して淡黄色粉末のOctFluSiMe2Clを収率95%で得た。
【0065】
0 ℃に冷却したt-BuNH2(1.3 ml, 12 mmol)のジエチルエーテル溶液(30 ml)に1.1 mol当量の1.60 M n-BuLiヘキサン溶液(8.3 ml, 13 mmol)を滴下した。これを室温に戻した後4時間攪拌してアニオン化した。このアニオン化溶液を0 ℃に冷却したOctFluSiMe2Cl(5.3 g, 11 mmol)のジエチルエーテル溶液(120 ml)に滴下し、ゆっくり室温まで戻して一晩攪拌した。溶媒および未反応のt-BuNH2を減圧留去し、生成物をヘキサン抽出によりLiClやt-BuNH3Clと分離した後、溶液を濃縮し、-30 ℃で再結晶を行うことで橙色のt-BuNHSiMe2OctFluを得た。
【0066】
【化7】

【0067】
(3) (t-BuNSiMe2OctFlu)TiMe2 (4)の合成
(t-BuNSiMe2OctFlu)TiMe2 (4)はCaiらの錯体1〜3の合成に関する文献(Macromolecules,USA,ACS,2005,Vol.38,p.8135)を基に、以下のスキーム3に従い合成した。
【化8】

【0068】
0 ℃に冷却したt-BuNHSiMe2OctFlu (1.75 g, 3.5 mmol)のジエチルエーテル溶液(80 ml)に2.2 mol当量の1.60 M n-BuLiヘキサン溶液(4.8 ml, 7.6 mmol)を滴下し、ゆっくり室温まで戻しながら2時間攪拌した。2.5 mol当量の1.04 M MeLiヘキサン溶液(8.3 mmol, 8.7 ml)を加え数分間攪拌し、この溶液を室温で等モルのTiCl4 (0.4 ml, 3.8 mmol)のヘキサン溶液(45 ml)に加え、一晩攪拌した。溶媒を減圧留去し、ヘキサンで抽出した後、-30 ℃で再結晶を行うことにより赤色の結晶の(t-BuNHSiMe2OctFlu)TiMe2 (4)を0.8 g、収率40 %で得た。生成の確認は1H NMR、質量分析、元素分析によって行った。以下に1H NMRデータ、表1に元素分析値を示す。
【0069】
1H NMR date (C6D6, ref. C6H6: 7.14 ppm): δ 0.02 (s, 6H, Ti(CH3)2), 0.82 (s, 6H, (CH3)2Si), 1.28 (s, 9H, N-C(CH3)3), 1.39, 1.35, 1.36, 1.42 (s, 24H, Oct-CH3), 1.64 (s, 8H, Oct-CH2), 7.82, 8.22 (s, 4H, Oct-CH1).
【0070】
【表1】

【0071】
4がη1型配位構造を有しているのか確認する為にX線結晶構造解析を行った。ORTEP図を以下に示す。これより、中心金属はOctFlu基に対してη3型配位をしていることが分かり、4はη1型配位構造を有していないことが分かった。
【0072】
【化9】

【0073】
配位場の広さを確認する為に、中心金属からのC9、C10、C13(上記構造式中)の距離を、当研究室でこれまでに合成した架橋型フルオレニルアミドジメチルチタン錯体の中で最も配位場の広い3と比較した。要約を表2に示す。C9との距離は4の方が3に比べ短いのに対して、C10およびC13においてはあまり差が無いことが分かる。これは4のOctFlu基の方が3のフルオレニル基よりも下向きに開いていることを意味しているので、4の方が3よりも配位場が広いということが分かった。
【0074】
【表2】

【0075】
[参考例2]
(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチルの合成
(1)3,6−ジ-t−ブチルフルオレンの合成
フルオレン誘導体である3,6−ジ-t−ブチルフルオレンは、Caiらの文献(Macromolecules,USA,ACS,2005,Vol.38,p.8135)を基に合成した。
【0076】
(2)t−BuNSiMe2(3,6−di−t−BuFlu)の合成
3,6−ジ-t−ブチルフルオレン(13.6g,48.9mmol)のジエチルエーテル溶液(120ml)にn−ブチルリチウム(31.2ml,1.57Mヘキサン溶液,48.9mmol)を0℃で1時間かけて添加した。室温で3時間攪拌し、溶媒を真空下に除去した。残渣をヘキサン100mlにて洗浄し、3,6−ジ-t−ブチルフルオレンのリチウム塩を得た。これにヘキサン100ml添加してサスペンジョン化し、−78℃に冷却したジエチルエーテル100mlに溶解したジクロロジメチルシラン(13.5ml,0.111mol)溶液へ添加した。このサスペンジョンを室温で更に8時間攪拌した後に、真空下に乾固処理を行った。ヘキサン30mlを加え、上澄み液を採取し、続いて溶媒を真空下に除去した。その結果、3,6−ジ−t−ブチル−9−クロロジメチルシリルフルオレン(16.0g,43.1mmol)がオフホワイトの固体として得られた。n−ブチルリチウム(8.22ml,1.57Mヘキサン溶液,12.9mmol)を0℃に冷却したt−ブチルアミン(1.38ml,12.9mmol)を30mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液に10minで添加した。室温で4時間攪拌した後に、この溶液は50mlジエチルエーテルに溶解した6−ジ−t−ブチル−9−クロロジメチルシリルフルオレン(4.77g,12.9mmol)中へ0℃て添加した。室温下に一晩攪拌すると、オレンジ色のサスペンジョンが得られた。リチウムクロライドを除去した溶液を乾固すると黄色のt−BuNSiMe2(3,6−di−t−BuFlu)固体(4.19g,10.3mmol)が収率79.8%で得られた。
【0077】
(3)(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル(t−BuNSiMe2(3,6−di−t−BuFlu)TiMe2)の合成
t−BuNSiMe2(3,6−di−t−BuFlu)固体(4.19g,10.3mmol)をジエチルエーテル30mlに溶解した溶液へメチルリチウム(47.5ml、1.02Mジエチルエーテル溶液,48.4mmol)を0℃で添加し、室温で5時間更に攪拌した。生成したジリチウム塩の溶液を四塩化チタン(1.12ml,10.3mmol)のペンタン溶液(60ml)へ室温下に添加した。溶媒を減圧下に除去し、残渣にヘキサン100mlを加え、得られたヘキサン溶液へMeMgBrを2当量添加した。生成物をヘキサン60mlで抽出し、得られたヘキサン溶液を−30℃で一晩冷却晶析すると赤色のt−BuNSiMe2(3,6−di−t−BuFlu)TiMe2が3.04g(6.30mmol)、収率61.2%で得られた。
【0078】
[参考例3]
dMMAOの調製
スターラーチップを入れ、3方コックを付けた300mlのナス型フラスコに東ソー・ファインケム社製のMMAO−3A/トルエン溶液(Al濃度6.5wt%)を100ml導入し、真空ポンプ使用による減圧下に溶媒と共存するアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウム)を室温で6時間かけて留去した。得られた固体残留物に乾燥ヘプタンを100ml添加し、十分攪拌した後に上記と同様な減圧下に溶媒を留去した。この操作を計9度繰り返すことにより、MMAO−3A/トルエン中に共存するアルキルアルミニウムを完全に除去したdMMAOを14.8g得た。
【0079】
[実施例1]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、参考例3で合成したdMMAO(0.245g,4mmol)、乾燥トルエン28.5ml、スチレン(0.51g,0.55ml)を導入した後に大気圧下においてプロピレンガスを導入し飽和させた。次いでTi錯体として参考例1で合成した(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチル[(t-BuNSiMe2OctFlu)TiMe2 (4)](20μmol,0.0118g)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は20℃で1.5時間実施し少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、共重合体を析出させた。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより1.5gの共重合体を取得した。この時の重合活性は50kg/mol−Ti・hrであった。
【0080】
【化10】

【0081】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は150,000で、Mw/Mnは1.65であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は1.8mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は0.74℃であった。
【0082】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は100minであり、プロピレン(誘導期間7min)に比べ耐熱酸化性があることを確認した。
【0083】
[実施例2]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
スチレン(1.02g,1.10ml)を導入したことと乾燥トルエンを27.9ml導入したこと以外は、実施例1(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.56gの共重合体を取得した。重合活性は19kg/mol−Ti・hrであった。
【0084】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は90,000で、Mw/Mnは1.75であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は4.1mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は4.0℃であった。
【0085】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は230minであり、プロピレンに比べ耐熱酸化性があることを確認した。
【0086】
[実施例3]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
スチレン(3.03g,3.3ml)を導入したこと、乾燥トルエンを25.7ml導入したことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例1(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.40gの共重合体を取得した。重合活性は10kg/mol−Ti・hrであった。
【0087】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は57,000で、Mw/Mnは1.38であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は11.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は14.0℃であった。
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0088】
[実施例4]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
スチレン(9.07g,10ml)を導入したこと、乾燥トルエンを19ml導入したことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例1(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.17gの共重合体を取得した。重合活性は4.2kg/mol−Ti・hrであった。
【0089】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は12,000で、Mw/Mnは2.39であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は28.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は33.0℃であった。
【0090】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0091】
[実施例5]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
スチレン(18.13g,19.95ml)を導入したこと、乾燥トルエンを9.05ml導入したことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例1(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.19gの共重合体を取得した。重合活性は4.8kg/mol−Ti・hrであった。
【0092】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は17,000で、Mw/Mnは1.72であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は44.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は45.0℃であった。
【0093】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0094】
[実施例6]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
スチレン(27.20g,29.93ml)を導入したこと、乾燥トルエンを導入しなかったことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例1(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.24gの共重合体を取得した。重合活性は6.1kg/mol−Ti・hrであった。
【0095】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は16,000で、Mw/Mnは2.17であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は54.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は45.0℃と94.0℃の二つ観測された。
【0096】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0097】
[実施例7]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
溶媒に乾燥ODCBを25.7ml導入したことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例3(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.40gの共重合体を取得した。重合活性は10kg/mol−Ti・hrであった。
【0098】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は57,000で、Mw/Mnは1.38であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は11.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は14.0℃であった。
【0099】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0100】
[実施例8]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
溶媒に乾燥ヘプタンを25.7ml導入したことと重合時間を2時間としたこと以外は、実施例3(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.16gの共重合体を取得した。重合活性は3.9kg/mol−Ti・hrであった。
【0101】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は23,000で、Mw/Mnは1.68であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は19.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は24.0℃であった。
【0102】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0103】
[実施例9]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、dMMAO(0.245g,4mmol)、乾燥トルエン25.7ml、スチレン(3.03g,3.3ml)を導入した後に大気圧下においてプロピレンガスを導入し飽和させた。次いでTi錯体として参考例2で合成した(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル(20μmol,0.0097g)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は20℃で2時間実施し少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、共重合体を析出させた。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより0.16gの共重合体を取得した。この時の重合活性は4.0kg/mol−Ti・hrであった。
【0104】
【化11】

【0105】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は16,000で、Mw/Mnは2.00であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は3.9mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は4.0℃であった。
【0106】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った250minであり、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0107】
[実施例10]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
dMMAO(0.245g,4mmol)に加えてトリメチルアルミニウム0.5mmol添加したこと以外は、実施例3(1)と同様に共重合を実施した。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.40gの共重合体を取得した。重合活性は13kg/mol−Ti・hrであった。
【0108】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は52,000で、Mw/Mnは1.42であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は10.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は12.0℃であった。
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0109】
[実施例11]
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
dMMAOの代わりに市販のポリメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製 TMAO−211トルエン溶液,Al濃度 9.0wt%)を4mmol用いたこと以外は、実施例3(1)と同様に共重合を実施した。TMAO−211トルエン溶液中にはアルミニウムに結合したMe−基量に対するトリメチルアルミニウム由来のMe−基量で45mol%のトリメチルアルミニウムが含まれていた。濾別洗浄、減圧乾燥後に、0.48gの共重合体を取得した。重合活性は12kg/mol−Ti・hrであった。
【0110】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は51,000で、Mw/Mnは1.30であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は11.0mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は15.0℃であった。
【0111】
[実施例12]
(1)1−ヘキセンとスチレンの共重合体の合成
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、dMMAO(0.245g,4mmol)、乾燥トルエン25.7ml、スチレン(3.03g,3.3ml)とプロピレンの代わりに1−ヘキセン(2.44g,3.60ml)を導入したこと以外は実施例1(1)と同様に重合を行った。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより0.13gの共重合体を取得した。この時の重合活性は3.2kg/mol−Ti・hrであった。
【0112】
(2)1−ヘキセン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は12,900で、Mw/Mnは1.85であった。また、13C−NMRより求めたスチレン含有量は22.9mol%で、DSC測定により求めたガラス転移温度は−22.0℃であった。
【0113】
(3)熱酸化性の評価
得られた共重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0114】
(参考例1)
(1)スチレンの単独重合体の合成
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、dMMAO(0.245g,4mmol)、乾燥トルエン28.5ml、スチレン(3.03g,3.3ml)を導入した。次いでTi錯体として(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド(20μmol,0.0118g)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は20℃で2時間実施し少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、共重合体を析出させた。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより0.03gの共重合体を取得した。この時の重合活性は0.75kg/mol−Ti・hrであった。
【0115】
(2)スチレン単独重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は3,500で、Mw/Mnは1.28であった。また、DSC測定により求めたガラス転移温度は82.0℃であった。
【0116】
(3)熱酸化性の評価
得られた重合体の145℃における酸化の誘導期間は測定を行った300minを超え、プロピレンに比べ高い耐熱酸化性があることを確認した。
【0117】
(比較例1)
(1)プロピレンとスチレンの共重合体の合成
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、トリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(Ph3C[B(C654])(0.0184g,20μmol)、乾燥トルエン25.7ml、スチレン(3.03g,3.3ml)、トリイソブチルアルミニウムの1Mトルエン溶液(0.5mmol,0.5ml)を導入した。次いでTi錯体として(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド(20μmol,0.0118g)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は20℃で1時間実施し少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、共重合体を析出させた。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより0.19gの共重合体を取得した。この時の重合活性は9.5kg/mol−Ti・hrであった。
【0118】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は5,200で、Mw/Mnは1.67であった。また、DSC測定により求めたガラス転移温度は92℃であった。
【0119】
(比較例2)
(1)プロピレンとスチレンの反応
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、トリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(Ph3C[B(C654])(0.0184g,20μmol)、乾燥トルエン25.7ml、スチレン(3.03g,3.3ml)、トリイソブチルアルミニウムの1Mトルエン溶液(0.5mmol,0.5ml)を導入した。Ti錯体を添加せず、20℃で1時間の反応を行った。反応後に少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて反応を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、共重合体を析出させた。濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより0.20gの共重合体を取得した。この時の重合活性は10kg/mol−Ti・hrであった。
【0120】
(2)プロピレン/スチレン共重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は4,900で、Mw/Mnは1.70であった。また、DSC測定により求めたガラス転移温度は91℃であった。本結果と比較例1の結果より、トリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを用いた場合、スチレンのカチオン重合が進行しているとの結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、耐熱酸化性に優れたα−オレフィン/スチレン類共重合体を製造することが出来、その価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物の1種または2種以上の存在下にα−オレフィンとスチレン類とを共重合させてα−オレフィン/スチレン類共重合体を得る工程を含む、α−オレフィン/スチレン類共重合体の製造方法。
【化1】

(式(I)中、R1〜R11は、独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子若しくはC1〜C10の置換基を有することができるアリール基、またはハロゲン原子若しくはC1〜C10の置換基を有することができるシリル基を示すか、またはR2とR3、R5とR6若しくはR6とR7、R8とR9若しくはR9とR10は、独立に、結合してC1〜C5の環状構造を形成してもよく、前記環状構造を構成する炭素原子は、独立に、水素原子またはハロゲン原子を置換基として有することができるC1〜C10のアルキル基を有することができ、X1とX2はハロゲン原子を有することができるC1〜C10のアルキル基またはハロゲン原子を示し、Mは周期表第4族遷移金属を示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物に加えて、(a)アルミノキサンおよび(b)有機アルミニウム化合物の一種類または二種類以上を共存させ、その下に前記共重合を実施する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)で示される周期表第4族遷移金属化合物に加えて、(a)アルミノキサンの一種類または二種類以上を共存させ、その下に前記共重合を実施する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
式(I)中、周期表第4族遷移金属を示すMは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記α−オレフィン/スチレン類共重合体がランダム共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
スチレン類の含有率が20〜60mol%の範囲であり、かつランダム共重合体である少なくとも1種のα−オレフィンと少なくとも1種のスチレン類の共重合体。
【請求項7】
前記共重合体は、アタクチック共重合体である請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
前記共重合体は、数平均分子量(Mn)が、10,000〜1,000,000の範囲である請求項6または7に記載の共重合体。
【請求項9】
前記共重合体は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、1〜3の範囲である請求項6〜8のいずれかに記載の共重合体。
【請求項10】
前記共重合体は、ガラス転移温度が−50〜70℃の範囲である請求項6〜9のいずれかに記載の共重合体。
【請求項11】
前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、または1−ヘキセンである請求項6〜10のいずれかに記載の共重合体。
【請求項12】
前記スチレン類がスチレン、p−メチルスチレン、またはp−エチルスチレンである請求項6〜11のいずれかに記載の共重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174018(P2011−174018A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40798(P2010−40798)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月16日〜18日 社団法人高分子学会主催の「第58回高分子討論会」において文書をもって発表
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【Fターム(参考)】