説明

β−アミロイド疾患およびシヌクレイノパチーを処置するための化合物、組成物、および方法

ジヒドロキシアリール化合物および薬学的に許容されるエステル、その合成、それらを含む医薬組成物、および、アルツハイマー病などで見られるβ−アミロイド疾患やパーキンソン病などで見られるシヌクレイノパチーの処置におけるその使用、および、このような処置のための医薬の製造におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、Espositoらの2008年10月3日出願の“Compounds, Compositions and Methods for the Treatment of β-Amyloid Diseases and Synucleinopathies”という発明の名称を有する米国特許出願第12/244,968号に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、ビス−ジヒドロキシアリール化合物および薬学的に許容される塩、その合成、それらを含む医薬組成物、および、アルツハイマー病などで観察されるAβアミロイド疾患およびパーキンソン病などで観察されるシヌクレイノパチーの処置におけるその使用、および該処置のための医薬の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
アルツハイマー病は、細胞外アミロイド・プラークにおける凝集物として、および脳血管壁内のアミロイドとして存在する、β−アミロイド蛋白質またはAβと名付けられている原繊維形態の39〜43アミノ酸のペプチド蓄積によって特徴付けられている。アルツハイマー病における原繊維Aβアミロイド凝集物の堆積は、患者に対して有害であると考えられており、最終的に、アルツハイマー病に独特の特徴である毒性および神経細胞死を引き起こす。多くの証拠が、アミロイド、より具体的にはAβ凝集物の形成、堆積、蓄積および/または残留が、アルツハイマー病の病因の主要な原因となる要素であることを示唆している。さらに、アルツハイマー病の他にも、幾つかの他のアミロイド疾患が、Aβ凝集物の形成、堆積、蓄積および残留を伴う。該疾患は、ダウン症や、コンゴレッド親和性血管障害、例えばDutch型の遺伝性脳溢血および脳β−アミロイド血管障害を含み、これらに限定されない障害を含む。
【0004】
パーキンソン病は、アミロイドの多くの特性を示す異常原繊維蛋白質堆積物の形成、堆積、蓄積、凝集および/または残留によって特徴付けられる、もうひとつのヒト疾患である。パーキンソン病において、α−シヌクレインのフィラメント凝集物からなる、細胞質性レヴィー小体の蓄積は、病原上重要であり、かつ治療標的として重要であると考えられている。α−シヌクレインの形成、堆積、蓄積、凝集および/または残留を阻害し得るか、あるいは、予め形成されたα−シヌクレイン原繊維または凝集物(またはその一部)を破壊(disrupt)し得る新規の薬物もしくは化合物は、パーキンソン病および関連するシヌクレイノパチーの処置における、可能性のある治療とみなされる。アミロイド様原繊維または凝集物を形成し得るα−シヌクレインの35アミノ酸のフラグメントは、in vitro で、またはパーキンソン病の患者の脳で観察される。α−シヌクレインのこの部分がパーキンソン病、シヌクレイノパチーおよび関連疾患を有する全ての患者で観察されるレヴィー小体形成に重要であると考えられることから、該α−シヌクレインのフラグメントは、非常に重要な治療標的である。さらに、原繊維または凝集物を形成し、コンゴレッドおよびチオフラビンS(アミロイド原繊維凝集物を検出するために用いられる特異的な染色)陽性であるα−シヌクレインタンパク質は、レヴィー小体の一部として、パーキンソン病、レヴィー小体疾患(Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin pp. 920-933, 1912; Pollanen et al, J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993; Spillantini et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998; Arai et al, Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999)、多系統萎縮症(multiple system atrophy)(Wakabayashi et al, Acta Neuropath. 96:445-452, 1998)、レヴィー小体認知症、およびレヴィー小体型のアルツハイマー病を有する患者の脳で見出された。パーキンソン病において、凝集物がこの疾患を有する患者の脳で発生し、これがコンゴレッドおよびチオフラビンS陽性であり、かつ優勢なβ−プリーツシート状二次構造を含む。
【0005】
アルツハイマー病の治療標的としてのアミロイド
アルツハイマー病はまた、社会に重い経済的負担をもたらす。近年の研究で、家庭もしくは療養所で重度認識障害を有するアルツハイマー病患者1人を介護する費用は、1年当たり$47,000以上であると概算した(A Guide to Understanding Alzheimer's Disease and Related Disorders)。2から20年に及び得る疾患のために、家族および社会のアルツハイマー病に対する全費用は、信じ難いほどである。患者および介護人の医療費用および逸失賃金に換算して、米国におけるアルツハイマー病の年間経済負担額は、800億ドルから1000億ドルと見積もられている(2003 Progress Report on Alzheimer's Disease)。
【0006】
タクリン塩酸塩(“Cognex”)は、アルツハイマー病に対して初めてFDAで承認された薬物であり、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である(Cutler and Sramek, N. Engl. J. Med. 328:808 810, 1993)。しかし、この薬物は、アルツハイマー病患者において認知改善については殆ど成功を示さず、また当初から重大な副作用、例えば肝臓毒性があった。2番目にFDAで承認された薬物であるドネペジル(“Aricept”)は、これもまたアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、アルツハイマー病患者において、僅かな認知改善を示すことから、タクリンより有効である(Barner and Gray, Ann. Pharmacotherapy 32:70-77, 1998; Rogers and Friedhoff, Eur. Neuropsych. 8:67-75, 1998)が、治癒剤とは考えられていない。従って、アルツハイマー病患者のためのより有効な処置の要請があることは明らかである。
【0007】
アルツハイマー病は、β−アミロイド蛋白質、Aβ、またはβ/A4と呼ばれる、39〜43個のアミノ酸ペプチドの堆積および蓄積によって特徴付けられる (Glenner and Wong, Biochem. Biophys. Res. Comm. 120:885-890, 1984; Masters et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4245-4249, 1985; Husby et al., Bull. WHO 71:105-108, 1993)。Aβは、幾つかの異なる組換え変異体が存在するβ−アミロイド前駆体蛋白質(APPs)と呼ばれるより大きな前駆体蛋白質から、プロテアーゼで切断されることによって誘導される。APPsの最も多い形態は、695個、751個、および770個のアミノ酸からなる蛋白質を含む(Tanzi et al., Nature 31:528-530, 1988)。
【0008】
小さいAβペプチドは、アルツハイマー病を有する患者の脳において、アミロイド堆積物の“プラーク”を作る主要な成分である。さらに、アルツハイマー病は、神経細胞質中で異常に蓄積する、1組のらせん状フィラメントからなる多くの神経原繊維の“もつれ(tangles)”の存在によって特徴付けられる(Grundke-Iqbal et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4913-4917, 1986; Kosik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4044-4048, 1986; Lee et al., Science 251:675-678, 1991)。アルツハイマー病の病理的特徴は、従って、プラークの中心核に堆積しているβ−アミロイドと共に、“プラーク”および“もつれ”の存在である。アルツハイマー病で見出される他の主要なタイプの病変は、脳柔組織および脳の外にある髄膜の血管壁の両方の血管壁におけるβ−アミロイドの堆積である。血管壁に局在化したβ−アミロイド堆積は、脳血管性アミロイドまたはコンゴレッド親和性血管障害と呼ばれる(Mandybur, J. Neuropath. Exp. Neurol. 45:79-90, 1986; Pardridge et al., J. Neurochem. 49:1394-1401, 1987)。
【0009】
長年、アルツハイマー病における“β−アミロイド”の重要性について、そしてこの疾患の“プラーク”および“もつれ”の特徴がこの疾患の原因であるのか、または単なる結果であるのかに関して進行中の科学的論争がある。最近の数年間は、研究により、β−アミロイドが、実際、アルツハイマー病における原因因子であって、単なる無関係の共存者とみなすべきではないことが示されている。細胞培養物中のアルツハイマー病のAβ蛋白質は、短期間での神経細胞の分解を引き起こすことが示されている (Pike et al., Br. Res. 563:311-314, 1991; J. Neurochem. 64:253-265, 1995)。研究により、原繊維構造(優先的にβ−プリーツシート状二次構造からなる)が神経毒性効果の原因であることが示唆されている。Aβはまた、海馬の切片培養において神経毒性があり(Harrigan et al., Neurobiol. Aging 16:779-789, 1995)、トランスジェニックマウスにおいて、神経細胞死を誘発する(Games et al., Nature 373:523-527, 1995; Hsiao et al., Science 274:99-102, 1996)ことが見出された。アルツハイマー病のAβのラットの脳への注射はまた、記憶障害および神経機能不全を引き起こす(Flood et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3363-3366, 1991; Br. Res. 663:271-276, 1994)。
【0010】
おそらく、Aβアミロイドが直接的にアルツハイマー病の病因に関与する最も説得力のある証拠は、遺伝子研究から得られる。Aβの生産が、その前駆体、そのβ−アミロイド前駆体蛋白質をコードする遺伝子における変異に起因し得ることが見出された(Van Broeckhoven et al., Science 248:1120-1122, 1990; Murrell et al., Science 254:97-99, 1991; Haass et al., Nature Med. 1:1291-1296, 1995)。早発性家族性アルツハイマー病の原因であるβ−アミロイド前駆体蛋白質遺伝子における変異の同定は、アミロイドがこの疾患の基となる病原プロセスの中心であることを最も強く支持する。4個の報告された病原性変異が見出されており、それらが家族性アルツハイマー病の発症におけるAβの重要性を証明している(Hardy, Nature Genet. 1:233-234, 1992にレビュー)。これらの全ての研究が、ヒトの患者の脳において、Aβ原繊維の形成、凝集、堆積、蓄積、および/または残留を減少させる、除去する、または予防する薬物を提供することが、有効な治療薬として役立つことを示唆している。
【0011】
パーキンソン病およびシヌクレイノパチー
パーキンソン病は、細胞質内のレヴィー小体の存在によって病理学的に特徴付けられる神経変性疾患である(Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin, pp. 920-933, 1912; Pollanen et al., J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993)。その主要な成分は、α−シヌクレインからなるフィラメントであり(Spillantini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998; Arai et al., Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999)、それは140アミノ酸の蛋白質である(Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993)。早発性家族性パーキンソン病の病因となるα−シヌクレインにおける2個の主要な変異が報告されており、レヴィー小体がパーキンソン病および関連障害における神経変性に機構的に関与することが示唆される(Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997; Kruger et al., Nature Genet. 18:106-108, 1998)。近年、in vitro の研究により、リコンビナントのα−シヌクレインが、実際にレヴィー小体様原繊維または凝集物を形成し得ることが示されている(Conway et al., Nature Med. 4:1318-1320, 1998; Hashimoto et al., Brain Res. 799:301-306, 1998; Nahri et al., J. Biol. Chem. 274:9843-9846, 1999)。非常に重要なことに、パーキンソン病関連α−シヌクレイン変異の両方ともがこの凝集プロセスを加速し、このような in vitro 研究がパーキンソン病の病原に関連性を有し得ることを証明する。α−シヌクレイン凝集および原繊維形成は、核形成依存重合化プロセスの基準を満たす(Wood et al., J. Biol. Chem. 274:19509-19512, 1999)。これに関して、α−シヌクレイン原繊維形成または凝集は、アルツハイマー病のβ−アミロイド蛋白質(Aβ)原繊維の原繊維形成または凝集と類似している。α−シヌクレイン・リコンビナント蛋白質、および35個のα−シヌクレインのアミノ酸ペプチドフラグメントである非Aβ成分(NACとして知られている)は、共に37℃でインキュベートした際に原繊維または凝集物を形成する能力を有し、かつ、例えばコンゴレッド(偏光下で観察した際に赤/緑複屈折性(birefringence)を示す)、およびチオフラビンS(陽性な蛍光を示す) (Hashimoto et al., Brain Res. 799:301-306, 1998; Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993)などのアミロイド染色に陽性である。
【0012】
シヌクレインは、α−、β−およびγ−シヌクレインから構成されるシナプス前の神経細胞小蛋白質のファミリーであり、その中でα−シヌクレイン凝集物のみが幾つかの神経疾患に関連している (Ian et al., Clinical Neurosc. Res. 1:445-455, 2001; Trojanowski and Lee, Neurotoxicology 23:457-460, 2002)。幾つかの神経変性疾患の病因におけるシヌクレイン(特にα−シヌクレイン)の役割は、幾つかの観察から明らかとなっている。病理学的に、シヌクレインは、パーキンソン病の特徴である封入体であるレヴィー小体の主要成分として同定され、そしてそのフラグメントが、種々の神経疾患、アルツハイマー病のアミロイド・プラークから単離された。生化学的に、リコンビナントのα−シヌクレインは、レヴィー小体認知症、パーキンソン病、および多系統萎縮症の患者から単離されたα−シヌクレインの超構造的特徴を再現した原繊維または凝集物を形成することが示された。さらに、シヌクレイン遺伝子の変異の同定は、たとえ家族性パーキンソン病のまれな場合においても、シヌクレイン病理および神経変性疾患の間に、明確な関連を示す。例えばパーキンソン病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症、およびレヴィー小体型のアルツハイマー病などの疾患のスペクトルにおける、α−シヌクレインの共通の関与から、“シヌクレイノパチー”の総称の下にこれらの疾患を分類する。
【0013】
パーキンソン病のα−シヌクレイン原繊維または凝集物およびアルツハイマー病のAβ原繊維は共に、優先的にβ−プリーツシート状構造からなる。アルツハイマー病のAβアミロイド原繊維形成を阻害することが見出された化合物はまた、本発明の実施例で示されているように、α−シヌクレイン原繊維形成または凝集の阻害に有効であることが示されている。従って、これらの化合物はまた、アルツハイマー病に対する治療薬としても効力を有するのに加えて、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーのための治療薬としても提供される。
【0014】
パーキンソン病およびアルツハイマー病は、主にβ−プリーツシート状二次構造が富化されたミスフォールドされたタンパク質からなる不溶性凝集物の不適切な蓄積によって特徴付けられる(Cohen et al., Nature 426:905-909, 2003; Chiti et al., Annu. Rev. Biochem., 75:333-366, 2006にレビュー)。パーキンソン病では、α−シヌクレインが、レヴィー小体の一部として、これらの凝集物の主要な成分であり、ミスフォールドおよび凝集する傾向を増大させるα−シヌクレインの変異が、家族性パーキンソン病で観察されている(Polymeropoulos et al., Science 276:1197-1199, 1997; Papadimitriou et al., Neurology 52:651-654, 1999)。
【0015】
特に電子伝達系の複合体Iでの損傷の結果としてのミトコンドリア機能不全もまた、パーキンソン病の共通の特徴である(Schapira et al., J. Neurochem., 54:823-827, 1990; reviewed in Greenamyre et al., IUBMB Life, 52:135-141, 2001)。パーキンソン病の病因におけるミトコンドリア欠損の直接的な証拠は、第1に、パーキンソン症毒素N−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)の活性な代謝物であるMPP+(1−メチル−4−フェニル−2,3−ジヒドロピリジニウム)が、複合体Iを阻害するという観察から得られた(Nicklas et al., Life Sci., 36:2503-2508, 1985)。続いて、他の複合体Iの阻害剤であるロテノンが、MPTPモデルで見られるドーパミン作動性神経細胞の挙動の変化および損傷に加えて上記のα−シヌクレイン陽性細胞質内凝集物を再現することから、α−シヌクレイン凝集についての改善されたモデルであることが示された。このタイプのロテノン毒性は、ラット(Betarbet et al., Nat. Neurosci., 3:1301-1306, 2000; Panov et al., J. Biol. Chem., 280:42026-42035, 2005)、ラットの脳切片(Sherer et al., J. Neurosci., 23:10756-10764, 2003; Testa et al., Mol. Brain Res., 134:109-118, 2005)、線虫(Ved et al., J. Biol. Chem., 280:42655-42668, 2005)および培養細胞(Sherer et al., J. Neurosci., 22:7006-7015, 2002)を含む多くのモデル系で見られ、複合体Iの阻害から生じる酸化的損傷の増大の結果であることが示されている。
【0016】
酸化的損傷と変異α−シヌクレイン病因との関係性をよりよく理解するために、A53T α−シヌクレインを過剰発現する神経芽細胞株(BE−M17細胞を使用)が当技術分野で確立されている。これらの細胞において、A53T α−シヌクレインは、種々の酸化的ストレス誘発薬物に応答して凝集し、ミトコンドリア機能不全および細胞死を増大させる (Ostrerova-Golts et al., J. Neurosci., 20:6048-6054, 2000)。これらの細胞は、酸化的ストレス誘発剤としてのロテノン処理に反応性であり、従って、α−シヌクレイン凝集/原繊維形成を阻害する薬物を試験するのに特に有用である。
【0017】
アルツハイマー病およびパーキンソン病で起こるアミロイド形成、堆積、蓄積および/または残留を阻止する、潜在的な治療剤としての新規化合物または新規薬剤の発見および同定が、強く求められている。
【発明の概要】
【0018】
本発明の概要
本発明は、ビス−ジヒドロキシアリール化合物およびその薬学的に許容される塩に関する。本化合物は、β−アミロイド疾患およびシヌクレイノパチーの処置に有用である。
【0019】
本化合物は、式:
【化1】

[式中、
とR、および、RとRは、2位と3位;2位と4位;2位と5位;2位と6位;3位と5位;3位と6位;4位と5位;4位と6位;および5位と6位からなる群から選択される位置群の何れか1つに独立して位置するヒドロキシル基であり;
Rは、スルホンアミド、ヘテロアリール、トリシクロアルキルおよび−C(O)NR'(ここで、R'はHまたはCHから選択される。)から選択される。]
の化合物またはその薬学的に許容されるエステルまたは塩である。
【0020】
本化合物の塩、エステル、エノールエーテルまたはエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、溶媒和物、水和物またはプロドラッグを含む、本化合物の何れかの薬学的に許容される誘導体もまた提供される。薬学的に許容される塩は、アミン塩、例えばN,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン類、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−パラ−クロロベンジル−2−ピロリジン−1'−イルメチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン類、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの塩(これらに限定されない)、アルカリ金属塩、例えばリチウム、カリウムおよびナトリウムの塩(これらに限定されない)、アルカリ土類金属塩、例えばバリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩(これらに限定されない)、遷移金属塩、例えば亜鉛塩(これに限定されない)、および、他の金属塩、例えばリン酸水素ナトリウム塩およびリン酸二ナトリウム塩(これらに限定されない)、鉱酸の塩、例えば塩酸塩および硫酸塩(これらに限定されない)、有機酸塩、例えば酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酪酸、吉草酸およびフマル酸の塩(これらに限定されない)を含み、これらに限定されない。
【0021】
有効濃度の1種以上の本発明で提供される化合物またはその薬学的に許容される誘導体、例えば化合物の塩、エステル、エノールエーテルまたはエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、溶媒和物、水和物またはプロドラッグを含む、アミロイド疾患の処置に有効な量を送達する、適切な経路および手段によって投与するための医薬製剤もまた提供される。
【0022】
製剤は、何れかの望ましい経路によって投与するのに適当な組成物であり、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、分散錠剤、丸薬、カプセル剤、散剤、吸入用乾燥粉末、持続性放出製剤、鼻および呼吸器に送達するためのエアゾール、経皮送達および他の何れかの適当な経路で送達するためのパッチを含む。組成物は、経口投与、注射可能な水性または油性溶液またはエマルジョンとしての皮下、筋肉内もしくは静脈内注射を含む注射による非経腸投与、経皮投与および他の選択される経路に適当なものであるべきである。
【0023】
β−アミロイドまたはα−シヌクレイン原繊維または凝集物を破壊する、脱凝集する、およびそれの除去、減少または排除を起こすために、本化合物および組成物を用いる方法が提供され、それによってβ−アミロイド疾患およびシヌクレイノパチーのための新規の処置が提供される。
【0024】
β−アミロイド原繊維の形成、堆積、蓄積または残留に関連する疾患を含み、これらに限定されないアミロイド疾患またはアミロイド症の1つ以上の症状を処置、予防または寛解する方法もまた提供される。
【0025】
アミロイド疾患は、アルツハイマー病、ダウン症、Dutch型アミロイド症を伴う遺伝性脳溢血、および脳β−アミロイド血管障害を含み、これらに限定されない。
【0026】
シヌクレイン疾患またはシヌクレイノパチーの1つ以上の症状を処置、予防または寛解する方法もまた提供される。一つの態様において、本方法は、α−シヌクレイン原繊維形成を阻害または予防し、α−シヌクレイン原繊維増殖を阻害または予防し、そして/または、予め形成されたα−シヌクレイン凝集物およびα−シヌクレイン関連タンパク質堆積物の分解、破壊および/または脱凝集を起こす。シヌクレイン疾患は、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レヴィー小体疾患、レヴィー小体型のアルツハイマー病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症およびグアムのパーキンソン認知症(Parkinsonism-dementia complex of Guam)を含み、これらに限定されない。
【0027】
図面の簡単な説明
本特許または本出願は、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラーの図面を含む本特許または特許出願明細書の複製は、要求に応じ、かつ必要な費用の支払いにより、庁に提出される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】図1Aは、アルツハイマー病Aβ原繊維が1:1(wt/wt)で試験した化合物によって破壊されていることを示した円二色性スペクトルの幾つかを示す。
【図1B】図1Bは%阻害をグラフで示す。
【図2】図2は、α−シヌクレインが37℃で4日間撹拌後にβ−シートが多い構造を形成することを示す比較円二色性スペクトルを示す。
【図3A】図3Aは、試験化合物が1:1(wt/wt)でα−シヌクレイン凝集を阻害することを示す円二色性スペクトルの幾つかを示す。
【図3B】図3Bは%阻害をグラフで示す。
【図4A】図4Aは、試験化合物が1:0.1(wt/wt)でα−シヌクレイン凝集を阻害することを示す円二色性スペクトルの幾つかを示す。
【図4B】図4Bは、%阻害をグラフで示す。
【図5】図5は、試験化合物がAβ原繊維形成または凝集を阻害するというチオTによって測定した結果をグラフに要約している。
【図6】図6は、試験化合物がAβ原繊維形成または凝集を阻害するというコンゴレッドによって測定した結果をグラフに要約している。
【図7】図7は、試験化合物がα−シヌクレイン原繊維形成または凝集を阻害するというチオTによって測定した結果をグラフに要約している。
【図8】図8は、α−シヌクレイン原繊維形成または凝集を阻害するというコンゴレッドによって測定した結果をグラフに要約している。
【図9】図9A〜Dは、チオフラビンS陽性凝集物の数に対するロテノンの効果を証明する蛍光顕微鏡写真の例である。図9Aはビークルのみであり、図9Bは1μMのロテノンであり、図9Cは5μMの低倍率写真であり、図9Dは5μMの高倍率写真である。図9Eは、ロテノン処置に応答するチオフラビンSの定量分析を要約している。
【図10】図10A〜Cは、ポジティブコントロール化合物の適用後のチオフラビンS陽性凝集物の減少を示す蛍光顕微鏡写真(緑色の蛍光)の例である。図10Aは非処置であり、図10Bは500ng/mlのポジティブコントロール化合物を示し、図10Cは1μg/mlのポジティブコントロール化合物を示す。図10Dは凝集の用量依存性減少の定量分析を要約している。
【図11】図11A〜Dは、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在に対する用量に依存した化合物1の効果を証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図11Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図11B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物1を示す。図11Eは化合物1の効果の定量分析を要約している。
【図12】図12A〜Dは、化合物2が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を非常に減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図12Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図12B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物2を示す。図12Eは化合物2の抗凝集効果の定量分析を要約している。
【図13】図13A〜Dは、化合物3が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図13Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図13B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物3を示す。図13Eは化合物3の抗凝集効果の定量分析を要約している。
【図14】図14A〜Dは、化合物4が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に僅かに減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図14Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図14B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物4を示す。図14Eは化合物4の効果の定量分析を要約している。
【図15】図15A〜Dは、化合物5が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に少し減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図15Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図15B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物5を示す。図15Eは化合物5の抗凝集効果の定量分析を要約している。
【図16】図16A〜Dは、化合物6が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量に用量依存的に僅かに影響を及ぼすことを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図16Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図16B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物6を示す。図16Eは化合物6の効果の定量分析を要約している。
【図17】図17A〜Cは、化合物7が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に中程度減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図17Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図17B〜Cはそれぞれ500ng/mlおよび2μg/mlの化合物7を示す。図17Dは化合物7の抗凝集効果の定量分析を要約している。
【図18】図18A〜Dは、化合物8が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に中程度減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図18Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図18B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物8を示す。図18Eは化合物8の抗凝集効果の定量分析を要約している。
【図19】図19A〜Dは、化合物9が、細胞におけるロテノン誘発チオフラビンS陽性凝集物の存在量を用量依存的に減少させることを証明する蛍光顕微鏡写真(緑色)の例である。図19Aは非処置(ロテノンのみ)であり、図19B〜Dはそれぞれ500ng/ml、1μg/mlおよび2μg/mlの化合物9を示す。図19Eは化合物9の抗凝集効果の定量分析を要約している。*は1μMのロテノンのみと比較してp<0.05である。
【図20】図20は、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、2日間のロテノンによる処置後の細胞生存率が35〜45%減少したことを示すグラフである。
【図21】図21は、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ポジティブコントロール化合物のロテノン誘発毒性を阻害する能力を示すグラフである。
【図22A】図22Aは、化合物1が10μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図22B】図22Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物1の能力を示すグラフである。
【図23A】図23Aは、化合物2が25μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図23B】図23Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物2の能力を示すグラフである。
【図24A】図24Aは、化合物3が50μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図24B】図24Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物3の能力を示すグラフである。
【図25A】図25Aは、化合物4が25μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図25B】図25Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物4の能力を示すグラフである。
【図26A】図26Aは、化合物5が25μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図26B】図26Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、化合物5がロテノン誘発毒性から保護する能力がないことを示すグラフである。
【図27A】図27Aは、化合物6が50μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図27B】図27Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物6の能力を示すグラフである。
【図28A】図28Aは、化合物7が50μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図28B】図28Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物7の能力を示すグラフである。
【図29A】図29Aは、化合物8が25μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図29B】図29Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、ロテノン誘発毒性から保護する化合物8の能力を示すグラフである。
【図30A】図30Aは、化合物9が25μg/mlまで非毒性であることを示すグラフである。
【図30B】図30Bは、XTT細胞毒性アッセイによって測定した、化合物9がロテノン誘発毒性から保護する能力がないことを示すグラフである。
【図31】図31は、梁横断時間(beam traversal time)および化合物処置の効果を示すグラフである。化合物2および7による処置は、梁横断試験において運動能力を改善する。3月間の処置で、化合物2は、梁横断試験において、同じ月齢のビークル処置マウスと比べて、有意に(p<0.05)、49%まで運動能力を改善する(横断時間の短縮によって測定)。6月間の処置で、化合物7は、梁横断試験において、同じ月齢のビークル処置マウスと比べて、有意に(p<0.05)、35%まで運動能力を改善する。さらに、化合物7は、同じ月齢のビークル処置マウスと比べて、3月間の処置で、39%まで運動能力を改善する全般的な傾向を示す。
【図32】図32は、ポール試験における回転時間および化合物の効果を示すグラフである。化合物7による処置は、ポール試験において運動能力を改善する。3月間の処置で、化合物7は、ポール試験において運動能力を改善する(回転時間の短縮によって測定)傾向があり、6月間の処置で、化合物7は、処置前の運動能力と比べて、有意に(p<0.01)、41%まで運動能力を改善する。化合物7による6月間の処置は、16月齢の非遺伝子組み換えマウスと同様である。ビークル処置マウスは、処置前、3月間および6月間の処置で、同様の運動能力であった。
【図33】図33は、梁横断時間および化合物7の効果を示すグラフである。6週間の処置で、化合物7は、梁横断試験において、同じ月齢のビークル処置マウスと比べて(**はp<0.01)、運動能力を著しく改善する(横断時間において36%の短縮が測定された)。バーは平均値+SEMを表し、グループ当たりn=8である。
【図34】図34(パネルA〜F)は、化合物7による処置が、免疫組織化学によって証明された通り、18月齢のトランスジェニックマウスの脳内のα−シヌクレインレベルの減少をもたらすことを示す顕微鏡写真である。化合物7で処置したマウス(パネルC〜D)は、ビークル処置マウス(パネルA〜B)と比べて、著しく少ない前頭皮質中の神経細胞内ヒトα−シヌクレインを示す。非遺伝子組み換え野生型マウスの脳は、ヒトα−シヌクレイン染色が全く見られず、導入遺伝子誘発ヒトα−シヌクレインのための抗体特異性についてのコントロールとして示す(EおよびF)。画像分析および定量により、化合物7による処置が、α−シヌクレイン陽性な対象の著しい81%の減少を起こすことが明らかとなった。データは、陽性な対象が占める%面積として表す。バーは平均値+SEMを表し、ビークル処置マウスについてはn=5、化合物7処置マウスについてはn=11、非遺伝子組み換え(Non-Tg)マウスについてはn=4。***は一元配置ANOVAおよびテューキー−クラメール・ポストホック検定によってビークル処置マウスに対してp<0.001である。
【図35】図35のパネルAは、化合物7またはビークルコントロールで6月間処置されたα−シヌクレイントランスジェニックマウスから得た前脳部分の粒子状フラクション中のα−シヌクレインのレベルを示すウェスタンブロットの写真である。パネルBは、化合物7で処置した後、α−シヌクレインのモノマーレベルの著しい減少、全体で69%、メスで58%の減少を示した、2個の独立したウェスタンブロットからバンド強度を定量した平均値を表す棒グラフを示す。α−シヌクレインモノマーのバンド強度は、25kDaのバンド(負荷コントロール)のバンド強度に対して正規化された。**はビークル処置マウスに対してp<0.05、**はp<0.01である。バーは平均値+SEMを表す。
【図36】図36のパネルAは、化合物7またはビークルコントロールで6月間処置されたα−シヌクレイントランスジェニックマウスから得た前脳部分のサイトゾルフラクション中のα−シヌクレインのレベルを示すウェスタンブロットの写真である。パネルBは、化合物7で処置した後、α−シヌクレインのモノマーレベルの著しい減少、全体で73%、メスにおいて48%の減少を示す、パネルAのウェスタンブロットからバンド強度を定量して表した棒グラフを示す。α−シヌクレインモノマーのバンド強度は、β−アクチンのバンド(負荷コントロール)のバンド強度に対して正規化された。*はビークル処置マウスに対してp<0.05である。バーは平均値+SEMを表す。
【図37】図37のパネルAは、化合物7またはビークルコントロールで6週間処置された4〜5月齢のα−シヌクレイントランスジェニックマウスから得た前脳部分の粒子状フラクション中のα−シヌクレインのレベルを示すウェスタンブロットの写真である。パネルBは、化合物7による処置が、ビークル処置コントロールと比べて、α−シヌクレインのモノマーレベルを著しい45%の減少を起こすことを示す、4個の独立したウェスタンブロットからバンド強度を定量した平均値を表す棒グラフを示す。α−シヌクレインモノマーのバンド強度は、25kDaのバンド(負荷コントロール)のバンド強度に対して正規化された。*はビークル処置マウスに対してp<0.05である。バーは平均値+SEMを表す。
【図38】図38のパネルAは、化合物7またはビークルコントロールで6週間処置された4〜5月齢のα−シヌクレイントランスジェニックマウスから得た前脳部分のサイトゾルフラクション中のα−シヌクレインのレベルを示すウェスタンブロットの写真である。パネルBは、化合物7による処置が、ビークル処置コントロールと比べて、α−シヌクレインのモノマーレベルを著しい71%の減少を起こすことを示す、4個の独立したウェスタンブロットからバンド強度を定量した平均値を表す棒グラフを示す。α−シヌクレインモノマーのバンド強度は、α−チューブリンのバンド(負荷コントロール)のバンド強度に対して正規化された。**はビークル処置マウスに対してp<0.01である。バーは平均値+SEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
定義
本明細書において、下記の用語は、既知技術の文献中の他の場所でまたは他の点で異なって用いられているか否かを問わず、下記の意味を有する。
【0030】
本明細書で用いられるとき、“アミロイド疾患”または“アミロイド症”は、Aβアミロイド原繊維の形成、堆積、蓄積または残留に関連する疾患である。このような疾患は、アルツハイマー病、ダウン症、Dutch型アミロイド症を伴う遺伝性脳溢血、および脳β−アミロイド血管障害を含み、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で用いられるとき、“シヌクレイン疾患”または“シヌクレイノパチー”は、α−シヌクレインの形成、堆積、蓄積、残留または凝集に関連する疾患である。このような疾患は、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レヴィー小体疾患、レヴィー小体型のアルツハイマー病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症およびグアムのパーキンソン認知症を含み、これらに限定されない。
【0032】
“原繊維形成”は、β−アミロイド原繊維、フィラメント、封入体、堆積物、およびα−シヌクレイン原繊維、フィラメント、封入体、堆積物、凝集物などの、形成、堆積、蓄積、凝集および/または残留を言う。
【0033】
“原繊維形成の阻害”は、このようなβ−アミロイド原繊維またはα−シヌクレイン原繊維様堆積物または凝集物の形成、堆積、蓄積、凝集および/または残留の阻害を言う。
【0034】
“原繊維または原繊維形成の破壊”は、通常優先的にβ−プリーツシート状二次構造で存在する、予め形成されたβ−アミロイドまたはα−シヌクレイン凝集物の破壊を言う。本発明で提供される化合物によるこのような破壊は、チオフラビンT蛍光測定、コンゴレッド結合、円二色性スペクトル、チオフラビンSおよびα−シヌクレイン凝集およびXTT細胞毒性アッセイなどの細胞ベースアッセイなどの種々の方法によって評価され、本明細書で示した実施例によって証明される、アミロイドまたはシヌクレイン凝集物の著しい減少または分解を含んでもよい。
【0035】
“神経保護”または“神経保護の”は、神経細胞の損傷(神経変性)を防ぎ、軽減し、緩和し、寛解し、そして/または和らげる化合物の能力を言う。
【0036】
“哺乳動物”は、ヒト、ならびに、コンパニオン・アニマル(ネコ、イヌなど)、実験動物(例えばマウス、ラット、モルモットなど)および農場動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど)などのヒト以外の哺乳動物の双方を含む。
【0037】
“薬学的に許容される賦形剤”は、一般的に安全で非毒性で望ましい医薬組成物を製造するのに慣用的に有用な賦形剤を意味し、獣医の使用またはヒトの薬学的使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよく、またエアゾール組成物の場合はガス状であってもよい。
【0038】
“治療有効量”は、一般的に、疾患を処置するために対象または動物に投与する際に、疾患について処置、予防または症状の寛解に望ましい程度影響を与えるのに十分な量である。或る態様において、“治療有効量”または“治療有効投与量”は、処置されない対象と比べて、測定可能な量で、一つの態様において少なくとも20%、他の態様において少なくとも40%、他の態様において少なくとも60%、さらに他の態様において少なくとも80%まで、β−アミロイドまたはα−シヌクレイン凝集物の形成、堆積、蓄積および/または残留を阻害する、減少させる、破壊する、分解する、あるいは、これらの状態に関連する疾患、例えばアミロイド疾患もしくはシヌクレイノパチー(synucleinopathy)の1つ以上の症状を処置する、予防するまたは寛解する量である。哺乳類の対象を処置するための本発明で提供される化合物またはその組成物の有効量は、約0.1〜約1000mg/kg体重/日、例えば約1〜約100mg/kg/日、他の態様において、約10〜約500mg/kg/日である。広範囲の開示された組成物の投与量は、安全かつ有効であると考えられる。
【0039】
用語“徐放性成分”は、本明細書で、ポリマー、ポリマー・マトリックス、ゲル、透過性膜、リポソーム、ミクロスフィアなど、またはこれらの組み合わせを含み、これらに限定されない、有効成分の持続放出を助ける化合物と定義される。
【0040】
複合体が水溶性であるならば、それは、リン酸緩衝食塩水などの適切な緩衝液中で、または他の生理学的に相溶性の溶液中で製剤化され得る。あるいは、得られた複合体が水性溶媒に貧溶性であるならば、Tweenまたはポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤と共に製剤化され得る。従って、本化合物およびその生理学的溶媒は、噴射吸入または吸気吸入(口または鼻の何れかから)による投与、または、経口、頬側、非経腸または直腸投与などにより投与するよう製剤化され得る。
【0041】
本明細書で用いられるとき、化合物の薬学的に許容される誘導体は、その塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、溶媒和物、水和物またはプロドラッグを含む。このような誘導体は、このような誘導体化のための既知の方法を用いて、当業者によって容易に製造され得る。製造した化合物は、実質的に毒性の影響なしで動物またはヒトに投与され、薬学的に活性であるか、またはプロドラッグの何れかである。
【0042】
薬学的に許容される塩は、アミン塩、例えばN,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン類、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−パラ−クロロベンジル−2−ピロリジン−1'−イルメチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン類、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの塩(これらに限定されない);アルカリ金属塩、例えばリチウム、カリウムおよびナトリウムの塩(これらに限定されない);アルカリ土類金属塩、例えばバリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩(これらに限定されない);遷移金属塩、例えば亜鉛塩(これに限定されない);および他の金属塩、例えばリン酸水素ナトリウム塩およびリン酸二ナトリウム塩(これらに限定されない);さらに、鉱酸の塩、例えば塩酸塩および硫酸塩(これらに限定されない);および有機酸塩、例えば酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酪酸、吉草酸およびフマル酸の塩(これらに限定されない)を含み、これらに限定されない。
【0043】
薬学的に許容されるエステルは、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸およびボロン酸を含む(これらに限定されない)酸の基の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルおよびヘテロシクリルのエステルを含み、これらに限定されない。薬学的に許容されるエノールエーテルは、式:C=C(OR) (ここで、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。)の誘導体を含み、これらに限定されない。薬学的に許容されるエノールエステルは、式:C=C(OC(O)R) (ここで、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。)の誘導体を含み、これらに限定されない。薬学的に許容される溶媒和物および水和物は、1個以上の溶媒または水分子、または、1〜約100個の、または1〜約10個の、または1〜約2、3または4個の溶媒または水分子を有する化合物の複合体である。
【0044】
本明細書で用いられるとき、“処置”は、疾患または障害の1つ以上の症状が寛解するか、またはそれ以外の方法で有益に変化する何れかの方法を意味する。疾患の“処置”は、例えば予め形成されたβ−アミロイドまたはα−シヌクレイン凝集の破壊によって、疾患にかかりやすいがまだ罹患していないかまたは疾患の症状を示していない対象において、疾患の発症を予防すること(予防的処置)、疾患を阻止する(その進行を遅らせるもしくは阻止する)こと、疾患の症状または副次的な影響を軽減すること(対症療法的処置を含む)、および疾患を緩和する(疾患の回復をもたらす)ことを含む。
【0045】
本明細書で用いられるとき、特定の化合物または医薬組成物の投与による特定の障害の症状の寛解は、本組成物の投与に帰するまたは関連し得る何らかの緩和であって、永続的であっても一時的であってもよく、持続的であっても一過性であってもよい。
【0046】
本明細書で用いられるとき、α−シヌクレイン原繊維の形成、堆積、蓄積、凝集および/または残留の阻害は、パーキンソン病、レヴィー小体疾患および多系統萎縮症などのα−シヌクレインが関与する多数の疾患を処置するのに有効であると考えられる。
【0047】
本明細書で用いられるとき、プロドラッグは、in vivoに投与された後、1つ以上の工程またはプロセスによって代謝されて、または別の方法で変換されて、生物学的、薬学的または治療的に活性な形態の化合物となる化合物である。プロドラッグを製造するために、薬学的に活性な化合物は、代謝プロセスによって活性な化合物を再度生じるよう修飾される。プロドラッグは、薬物の代謝安定性または輸送特性を変えるために、あるいは、副作用または毒性をマスクするために、あるいは、薬物の風味を改善するために、あるいは、薬物の他の特性を変化させるために設計されてもよい。in vivoでの薬力学的プロセスおよび薬物代謝の知識によって、当業者は、薬学的に活性な化合物が既知となったならば、その化合物のプロドラッグを設計し得る(例えば、Nogrady (1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York, pages 388-392を参照のこと)。
【0048】
幾つかの本発明の化合物の化学構造を示している。化合物名は、様々なIUPAC名である[http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac で見出される、the coalition of the Commission on Nomenclature of Organic Chemistry and the Commission on Physical Organic Chemistryにより設立された承認IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)システムにより誘導される名前、付加もしくは置換によってIUPAC名から誘導される名前(例えば“ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル”に代わって“フェニル”から誘導される“3,4−メチレンジオキシフェニル”を用いることによって)、および反応物の名前から誘導される名前(例えば“N−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,4−ジヒドロキシベンズアミド”の代わりに“3,4−ジヒドロキシ安息香酸 3,4−ジヒドロキシアニリド”を用いることによって)]。しかし、使用される名前は化学構造と明示的に等しく、当業者によってたやすく理解され得ると考えられる。
【0049】
“薬学的薬剤”または“薬理学的薬剤”または“医薬組成物”は、好ましくは純粋な形態またはほぼ純粋な形態での、処置に用いられる化合物または複数化合物の組み合わせを言う。本明細書において、薬学的薬剤または薬理学的薬剤は、本発明の化合物を含む。本化合物は、望ましくは80%均一まで精製され、好ましくは90%均一まで精製される。99.9%均一まで精製された化合物および組成物が好都合であると考えられる。試験または確認として、HPLCで適当な均一な化合物は、当業者に1つの鋭いピークのバンドとして識別されるものを得る。
【0050】
本発明で提供される化合物は、キラル中心を含んでいてもよいと理解されるべきである。このようなキラル中心は、(R)または(S)配置の何れか、あるいはそれらの混合物であってもよい。従って、本発明で提供される化合物は、エナンチオマーとして純粋であっても、立体異性体混合物またはジアステレオマー混合物であってもよい。アミノ酸残基の場合では、当該残基は、L型またはD型の何れであってもよい。天然由来のアミノ酸残基の配置は、一般的にL型である。特記しない場合、残基はL型である。本明細書で用いられるとき、用語“アミノ酸”は、ラセミ体またはD型またはL型の何れかであるα−アミノ酸を言う。従って、アミノ酸記号の前に置いた記号“d”(例えばdAla、dSer、dValなど)は、アミノ酸のD−異性体を言う。アミノ酸記号の前に置いた記号“dl”(例えばdlPip)は、アミノ酸のL−およびD−異性体を言う。本発明で提供される化合物のキラル中心は、in vivoでエピマー化を起こし得ると理解されるべきである。同様に、in vivoでエピマー化が起こる化合物においては、(R)体の化合物の投与は、その(S)体の化合物の投与と等価であると当業者に認識される。
【0051】
本明細書で用いられるとき、“実質的に純粋”は、当業者が純度を評価するために用いる分析の標準的な方法、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)によって、容易に検出可能な不純物が無いように見えると決定される程十分に均一なこと、あるいは、さらに精製しても物質の物理学的および化学的性質、例えば酵素活性および生物学的活性に検出可能な変化がない程十分に純粋なことを意味する。実質的に化学的に純粋な化合物を得るための本化合物の精製方法は、当業者に知られている。実質的に化学的に純粋な化合物は、しかしながら、立体異性体の混合物であってもよい。このような例において、さらなる精製は、本化合物の比活性を増大させ得る。
【0052】
本明細書で用いられるとき、アルキル、アルケニルおよびアルキニル炭素鎖は、特記しない限り、1〜20個の炭素を含むか、または1または2〜16個の炭素を含み、直鎖または分枝鎖である。2〜20個の炭素のアルケニル炭素鎖は、或る態様において、1〜8個の二重結合を含み、2〜16個の炭素のアルケニル炭素鎖は、或る態様において、1〜5個の二重結合を含む。2〜20個の炭素のアルキニル炭素鎖は、或る態様において、1〜8個の三重結合を含み、2〜16個の炭素のアルキニル炭素鎖は、或る態様において、1〜5個の三重結合を含む。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基の例は、本明細書において、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル、アリル(プロペニル)およびプロパルギル(プロピニル)を含み、これらに限定されない。本明細書で用いられるとき、低級アルキル、低級アルケニルおよび低級アルキニルは、約1個または約2個の炭素から約6個までの炭素を有する炭素鎖を言う。本明細書で用いられるとき、“アルカ(エン)(イン)イル”は、少なくとも1個の二重結合および少なくとも1個の三重結合を含むアルキル基を言う。
【0053】
本明細書で用いられるとき、“シクロアルキル”は、或る態様において3〜10個の炭素原子の、他の態様において3〜6個の炭素原子の飽和の単環式または多環式環系を言い;シクロアルケニルおよびシクロアルキニルは、それぞれ、少なくとも1個の二重結合および少なくとも1個の三重結合を含む、単環式または多環式環系を言う。シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基は、或る態様において、3〜10個の炭素原子を含み、シクロアルケニル基では、さらなる態様において、4〜7個の炭素原子を含み、シクロアルキニル基では、さらなる態様において、8〜10個の炭素原子を含む。シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル基の環系は、1個の環で構成されても2個以上の環で構成されてもよく、2個以上の環は、縮合していても、架橋していても、スピロ結合で連結されていてもよい。“シクロアルカ(エン)(イン)イル”は、少なくとも1個の二重結合および少なくとも1個の三重結合を含むシクロアルキル基を言う。
【0054】
本明細書で用いられるとき、“アリール”は、6〜19個の炭素原子を含む芳香族性の単環式または多環式の基を言う。アリール基は、非置換または置換フルオレニル、非置換または置換フェニル、および非置換または置換ナフチルなどの基を含み、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロアリール”は、或る態様において約5〜約15個の環員であって、その1個以上、一つの態様において1〜3個の環原子が、窒素、酸素または硫黄を含む炭素以外の元素であるヘテロ原子である、単環式または多環式芳香環系を言う。ヘテロアリール基は、所望によりベンゼン環に縮合していてもよい。ヘテロアリール基は、フリル、イミダゾリル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、キノリニルおよびイソキノリニル、イミダゾール、トリアゾールおよびピラゾールを含み、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロシクリル”は、一つの態様において3〜10員の、他の態様において4〜7員の、さらなる態様において5〜6員であって、その1個以上、或る態様において1〜3個の環原子が、窒素、酸素または硫黄を含みこれらに限定されない炭素以外の元素であるヘテロ原子である単環式または多環式の非芳香環系を言う。ヘテロ原子(複数を含む)が窒素である態様において、窒素は、所望によりアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アシル、グアニジノで置換されていてもよく、あるいは、窒素は、置換基が上記の通り選択される場合、4級化してアンモニウム基を形成してもよい。
【0057】
本明細書で用いられるとき、“アラルキル”は、アルキルの1個以上の水素原子がアリール基によって置き換えられているアルキル基を言う。
本明細書で用いられるとき、“ヘテロアラルキル”は、アルキルの1個以上の水素原子がヘテロアリール基によって置き換えられているアルキル基を言う。
【0058】
本明細書で用いられるとき、“ハロ”、“ハロゲン”または“ハライド”は、F、Cl、BrまたはIを言う。
本明細書で用いられるとき、シュードハライドまたはシュードハロ基は、ハライドと実質的に類似する挙動をする基である。このような化合物は、ハライドと同様の方法で用いられ、同様の方法で処理され得る。シュードハライドは、シアニド、シアネート、チオシアネート、セレノシアネート、トリフルオロメトキシおよびアジドを含み、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で用いられるとき、“ハロアルキル”は、1個以上の水素原子がハロゲンによって置き換えられているアルキル基を言う。このような基は、クロロメチル、トリフルオロメチルおよび1−クロロ−2−フルオロエチルを含み、これらに限定されない。
本明細書で用いられるとき、“ハロアルコキシ”は、RO− (ここで、Rはハロアルキル基である。)を言う。
【0060】
本明細書で用いられるとき、“スルフィニル”または“チオニル”は、−S(O)−を言う。本明細書で用いられるとき、“スルホニル”または“スルフリル”は、−S(O)−を言う。本明細書で用いられるとき、“スルホ”は、−S(O)O−を言う。
【0061】
本明細書で用いられるとき、“カルボキシ”は、二価の基:−C(O)O−を言う。
本明細書で用いられるとき、“アミノカルボニル”は、−C(O)NHを言う。
本明細書で用いられるとき、“アルキルアミノカルボニル”は、−C(O)NHR (ここで、Rは、低級アルキルを含むアルキルである。)を言う。
【0062】
本明細書で用いられるとき、“ジアルキルアミノカルボニル”は、−C(O)NR'R (ここで、R'およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルを含むアルキルである。)を言い;“カルボキサミド”は、式:−NR'COR (ここで、R'およびRは、それぞれ独立して、低級アルキルを含むアルキルである。)を言う。
【0063】
本明細書で用いられるとき、“アリールアルキルアミノカルボニル”は、−C(O)NRR' (ここで、RおよびR'の一方が低級アリールを含むアリール、例えばフェニルであり、RおよびR'の他方が低級アルキルを含むアルキルである。)を言う。
【0064】
本明細書で用いられるとき、“アリールアミノカルボニル”は、−C(O)NHR (ここで、Rは、低級アリールを含むアリール、例えばフェニルである。)を言う。
【0065】
本明細書で用いられるとき、“ヒドロキシカルボニル”は、−COOHを言う。
本明細書で用いられるとき、“アルコキシカルボニル”は、−C(O)OR (ここで、Rは、低級アルキルを含むアルキルである。)を言う。
【0066】
本明細書で用いられるとき、“アリールオキシカルボニル”は、−C(O)OR (ここで、Rは、低級アリールを含むアリール、例えばフェニルである。)を言う。
【0067】
本明細書で用いられるとき、“アルコキシ”および“アルキルチオ”は、RO−およびRS− (ここで、Rは、低級アルキルを含むアルキルである。)を言う。
【0068】
本明細書で用いられるとき、“アリールオキシ”および“アリールチオ”は、RO−およびRS− (ここで、Rは、低級アリールを含むアリール、例えばフェニルである。)を言う。
【0069】
本明細書で用いられるとき、“アルキレン”は、一つの態様において1〜約20個の炭素原子を有する、他の態様において1〜12個の炭素を有する、直鎖、分枝鎖または環状の、或る態様において直鎖または分枝鎖の、二価の脂肪族炭化水素基を言う。さらなる態様において、アルキレンは、低級アルキレンを含む。所望により、アルキレン基の間に、1個以上の酸素、S(=O)およびS(=O)基を含む硫黄、または、−NR−および−NRR− (ここで、窒素の置換基は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または、COR' (ここで、R'は、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−OYまたは−NYY (ここで、Yは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。)である。)の基を含む置換または非置換の窒素原子が挿入されていてもよい。アルキレン基は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−(CH)−)、メチレンジオキシ(−O−CH−O−)およびエチレンジオキシ(−O−(CH)−O−)を含み、これらに限定されない。用語“低級アルキレン”は、1〜6個の炭素を有するアルキレン基を言う。或る態様において、アルキレン基は、1〜3個の炭素原子のアルキレンを含む低級アルキレンである。
【0070】
本明細書で用いられるとき、“アザアルキレン”は、−(CRR)−NR−(CRR)− (ここで、nおよびmはそれぞれ独立して0〜4の整数である。)を言う。本明細書で用いられるとき、“オキサアルキレン”は、−(CRR)−O−(CRR) (ここで、nおよびmは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。)を言う。本明細書で用いられるとき、“チアアルキレン”は、−(CRR)−S−(CRR)−、−(CRR)−S(=O)−(CRR)−、および、−(CRR)−S(=O)−(CRR)−(ここで、nおよびmはそれぞれ独立して0〜4の整数である。)を言う。
【0071】
本明細書で用いられるとき、“アルケニレン”は、或る態様において2〜約20個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合を有し、他の態様において1〜12個の炭素を有する、直鎖、分枝鎖または環状の、一つの態様において直鎖または分枝鎖の、二価の脂肪族炭化水素基を言う。さらなる態様において、アルケニレン基は、低級アルケニレンを含む。所望により、アルケニレン基の間に、1個以上の酸素、硫黄、または、置換または非置換窒素原子(ここで、窒素置換基はアルキルである。)が挿入されていてもよい。アルケニレン基は、−CH=CH−CH=CH−および−CH=CH−CH−を含み、これらに限定されない。用語“低級アルケニレン”は、2〜6個の炭素を有するアルケニレン基を言う。或る態様において、アルケニレン基は、3〜4個の炭素原子のアルケニレンを含む低級アルケニレンである。
【0072】
本明細書で用いられるとき、“アルキニレン”は、一つの態様において2〜約20個の炭素原子および少なくとも1個の三重結合を有し、他の態様において1〜12個の炭素を有する、直鎖、分枝鎖または環状の、或る態様において直鎖または分枝鎖の、二価の脂肪族炭化水素基を言う。さらなる態様において、アルキニレンは低級アルキニレンを含む。所望により、アルキニレン基の間に、1個以上の酸素、硫黄、または、置換または非置換窒素原子(ここで、窒素置換基はアルキルである。)が挿入されていてもよい。アルキニレン基は、−C≡C−C≡C−、−C≡C−および−C≡C−CH−を含み、これらに限定されない。用語“低級アルキニレン”は、2〜6個の炭素を有するアルキニレン基を言う。或る態様において、アルキニレン基は、3〜4個の炭素原子のアルキニレンを含む低級アルキニレンである。
【0073】
本明細書で用いられるとき、“アルカ(エン)(イン)イレン”は、一つの態様において2〜約20個の炭素原子、少なくとも1個の三重結合、および少なくとも1個の二重結合を有し;他の態様において1〜12個の炭素を有する、直鎖、分枝鎖または環状の、或る態様において直鎖または分枝鎖の、二価の脂肪族炭化水素基を言う。さらなる態様において、アルカ(エン)(イン)イレンは、低級アルカ(エン)(イン)イレンを含む。所望により、アルキニレン基に沿って、1個以上の酸素、硫黄、または、置換または非置換の窒素原子(ここで、窒素置換基はアルキルである。)が挿入されていてもよい。アルカ(エン)(イン)イレン基は、−C=C−(CH)−C≡C− (ここでnは1または2である。)を含み、これに限定されない。用語“低級アルカ(エン)(イン)イレン”は、6個までの炭素を有するアルカ(エン)(イン)イレン基を言う。或る態様において、アルカ(エン)(イン)イレン基は、約4個の炭素原子を有する。
【0074】
本明細書で用いられるとき、“シクロアルキレン”は、或る態様において3〜10個の炭素原子の、他の態様において3〜6個の炭素原子の、二価の飽和の単環式または多環式環系を言い;シクロアルケニレンおよびシクロアルキニレンは、それぞれ少なくとも1個の二重結合および少なくとも1個の三重結合を含む、二価の単環式または多環式環系を言う。シクロアルケニレンおよびシクロアルキニレン基は、或る態様において3〜10個の炭素原子を含んでいてもよく、シクロアルケニレン基では、或る態様において4〜7個の炭素原子を含み、シクロアルキニレン基では、或る態様において8〜10個の炭素原子を含む。シクロアルキレン、シクロアルケニレンおよびシクロアルキニレン基の環系は、1個の環から構成されても2個以上の環から構成されてもよく、2個以上の環は、縮合していても、架橋していても、スピロ結合で連結していてもよい。“シクロアルカ(エン)(イン)イレン”は、少なくとも2個の二重結合および少なくとも1個の三重結合を含むシクロアルキレン基を言う。
【0075】
本明細書で用いられるとき、“アリーレン”は、一つの態様において5〜約20個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を有する、他の態様において5〜12個の炭素を有する、単環式または多環式の、或る態様において単環式の、二価の芳香族基を言う。さらなる態様において、アリーレンは、低級アリーレンを含む。アリーレン基は、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンを含み、これらに限定されない。用語“低級アリーレン”は、6個の炭素を有するアリーレン基を言う。
【0076】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロアリーレン”は、環系中の原子の1個以上が、或る態様において1〜3個が、窒素、酸素または硫黄を含みこれらに限定されない炭素以外の元素であるヘテロ原子である、一つの態様において環中に約5〜約15個の原子を有する、二価の単環式または多環式芳香環系を言う。用語“低級ヘテロアリーレン”は、環中に5または6個の原子を有するヘテロアリーレン基を言う。
【0077】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロシクリレン”は、環系中の1〜3個を含む1個以上の原子が、窒素、酸素または硫黄を含みこれらに限定されない炭素以外の元素であるヘテロ原子である、或る態様において3〜10個の環員の、一つの態様において4〜7個の環員の、他の態様において5〜6個の環員の、二価の単環式または多環式非芳香環系を言う。
【0078】
本明細書で用いられるとき、“置換アルキル”、“置換アルケニル”、“置換アルキニル”、“置換シクロアルキル”、“置換シクロアルケニル”、“置換シクロアルキニル”、“置換アリール”、“置換ヘテロアリール”、“置換ヘテロシクリル”、“置換アルキレン”、“置換アルケニレン”、“置換アルキニレン”、“置換シクロアルキレン”、“置換シクロアルケニレン”、“置換シクロアルキニレン”、“置換アリーレン”、“置換ヘテロアリーレン”および“置換ヘテロシクリレン”は、それぞれ、1個以上の置換基(ここで、置換基は本明細書で定義した通りであり、一つの態様においてQから選択される。)、或る態様において1個、2個、3個または4個の置換基で置換されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびヘテロシクリレン基を言う。
【0079】
本明細書で用いられるとき、“アルキリデン”は、他の基の1つの原子と結合して二重結合を形成する、=CR'R”などの二価の基を言う。アルキリデン基は、メチリデン(=CH)およびエチリデン(=CHCH)を含み、これらに限定されない。本明細書で用いられるとき、“アリールアルキリデン”は、R'またはR”の何れかがアリール基であるアルキリデンを言う。“シクロアルキリデン”基は、R'およびR”が結合して炭素環を形成しているものである。“ヘテロシクリリデン”基は、R'およびR”の少なくとも1個が鎖中にヘテロ原子を含み、かつ、R'およびR”が結合してヘテロ環式環を形成しているものである。
【0080】
本明細書で用いられるとき、“アミド”は、二価の基:−C(O)NH−を言う。“チオアミド”は、二価の基:−C(S)NH−を言う。“オキシアミド”は、二価の基:−OC(O)NH−を言う。“チアミド”は、二価の基:−SC(O)NH−を言う。“ジチアミド”は、二価の基:−SC(S)NH−を言う。“ウレイド”は、二価の基:−HNC(O)NH−を言う。“チオウレイド”は、二価の基:−NC(S)NH−を言う。
【0081】
本明細書で用いられるとき、“セミカルバジド”は、−NHC(O)NHNH−を言う。“カルバゼート”は、二価の基:−OC(O)NHNH−を言う。“イソチオカルバゼート”は、二価の基:−SC(O)NHNH−を言う。“チオカルバゼート”は、二価の基:−OC(S)NHNH−を言う。“スルホニルヒドラジド”は、二価の基:−SONHNH−を言う。“ヒドラジド”は、二価の基:−C(O)NHNH−を言う。“アゾ”は、二価の基:−N=N−を言う。“ヒドラジニル”は、二価の基:−NH−NH−を言う。
【0082】
本明細書で用いられるとき、“スルホンアミド”は、スルホン基がアミン基に連結している−RSONH−を言う。
本明細書で用いられるとき、“イミダゾール”は、一般式:Cを有するヘテロ環式芳香族有機化合物を言う。
【0083】
本明細書で用いられるとき、“トリアゾール”は、分子式:Cを有する1対の異性体化学化合物の何れか1つを言う。
本明細書で用いられるとき、“ピラゾール”は、3個の炭素原子および2個の隣接する位置にある窒素原子からなるヘテロ環式5員環を言う。
【0084】
本明細書で用いられるとき、“アダマンタン”は、一般式:C1016を有するトリシクロアルキルを言う。
【0085】
示された置換基の数が特記されていない場合(例えばハロアルキル)は何れも、1個以上の置換基が存在してもよい。例えば、“ハロアルキル”は、1個以上の同一または異なるハロゲンを含んでいてもよい。他の例として、“C1−3アルコキシフェニル”は、1個、2個または3個の炭素を含む、1個以上の同一または異なるアルコキシ基を含んでいてもよい。
【0086】
本明細書で用いられるとき、全ての保護基、アミノ酸および他の化合物についての略号は、特記しない限り、その一般的な用法、認められている略号、または、IUPAC-IUB委員会生化学命名法に従うものである((1972) Biochem. 11:942-944を参照のこと。)。
【0087】
本発明の化合物
本発明の化合物は、下記の化合物である:
【化2】

2,3−ジヒドロキシ安息香酸 3,4−ジヒドロキシアニリド(化合物1)、
【0088】
【化3】

3,4−ジヒドロキシ安息香酸 2,3−ジヒドロキシアニリド(化合物2)、
【0089】
【化4】

2,3−ジヒドロキシ安息香酸 2,3−ジヒドロキシアニリド(化合物3)、
【0090】
【化5】

3,4−ジヒドロキシ安息香酸 3,4−ジヒドロキシ−N−メチルアニリド(化合物4)、
【0091】
【化6】

3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸 3,4−ジヒドロキシフェニルスルホンアミド(化合物5)、
【0092】
【化7】

2,4−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−イミダゾール(化合物6)、
【0093】
【化8】

3,5−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール(化合物7)、
【0094】
【化9】

3,5−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−ピラゾール(化合物8)、
【0095】
【化10】

1,3−ビス−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アダマンタン(化合物9)。
【0096】
本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、実施例1〜5を含む本明細書の知識および開示を考慮して、当業者に一般的に知られている方法によって製造され得る。
【0097】
これらの化合物の製造に用いられる出発物質および反応剤は、例えばAldrich Chemical Company (Milwaukee, WI)、Bachem (Torrance, CA)、Sigma (St. Louis, MO)またはLancaster Synthesis Inc. (Windham, NH)から市販されているか、あるいは、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, vols. 1-17, John Wiley and Sons, New York, NY, 1991;Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, vols. 1-5 and supps., Elsevier Science Publishers, 1989;Organic Reactions, vols. 1-40, John Wiley and Sons, New York, NY, 1991;March J.: Advanced Organic Chemistry, 4th ed., John Wiley and Sons, New York, NY;および Larock: Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, New York, 1989などの参考文献に記載された手順に従って、当業者に周知の方法によって製造される。
【0098】
ほとんどの場合において、ヒドロキシ基のための保護基が導入され、最終的に除去される。適当な保護基は、Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis, Second Edition, John Wiley and Sons, New York, 1991.に記載されている。他の出発物質または初期の中間体は、上に挙げた物質の加工、例えば当業者に周知の方法によって製造され得る。
【0099】
本発明の出発物質、中間体および化合物は、沈殿、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含む慣用の方法を用いて、単離され、精製され得る。本化合物は、物理学的定数および分光学的方法を含む慣用の方法を用いて特性決定され得る。
【0100】
薬理および有用性
本発明で提供される化合物は、それ自体で用いられても、無機酸または有機酸から誘導される薬学的に許容される塩の形態で投与されても、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて用いられてもよい。フレーズ“薬学的に許容される塩”は、安全な医学的判断の範囲内で、不適当な毒性、刺激、アレルギー反応などがなく組織と接触させて使用するのに適当であり、かつ、妥当な利益/危険比に見合う塩を意味する。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。塩は、本発明で提供される化合物の最後の単離および精製の際にそのまま製造され得るか、あるいは、個別に、酸性または塩基性の薬物を、それぞれ適当な塩基または酸と反応させることによって、製造され得る。有機酸または無機酸から誘導される典型的な塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、グルコン酸塩、フマル酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩および重炭酸塩を含み、これらに限定されない。有機塩基または無機塩基から誘導される典型的な塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、モノアルキルアンモニウム塩、例えばメグルミン塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩およびテトラアルキルアンモニウム塩を含み、これらに限定されない。
【0101】
有効成分の実際の投与量および本発明で提供される医薬組成物の投与方法は、特定の患者について、有効な治療的応答を達成するために変更し得る。本発明で提供される化合物についてのフレーズ“治療有効量”は、何らかの医学的処置に応用可能な妥当な利益/危険比で障害を処置するのに十分な化合物の量を意味する。しかし、本発明で提供される化合物および組成物の1日使用量の総量は、安全な医学的判断の範囲内で、担当医によって決定されると理解される。本発明で提供される化合物の1日投与量の総量は、約0.1〜約1000mg/kg/日の範囲であり得る。経口投与の目的については、投与量は、約1〜約500mg/kg/日の範囲であり得る。望ましいならば、有効な1日投与量は、投与の目的のために多数回投与に分割されてもよく;結果として1回投与組成物がこの量を含むのであっても、1日投与量を構成するようその約数となる量を含むのであってもよい。ある特定の患者において、具体的な治療有効量は、処置される障害および障害の重症度;患者の病歴、用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事、投与時間、投与経路、処置期間、用いられる具体的な化合物の排出速度、用いられる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に用いられる薬物などを含む種々の要因に依存する。
【0102】
提供される化合物は、1種以上の非毒性の薬学的に許容される希釈剤、担体、アジュバント、および抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などと共に製剤化され得る。例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散剤の場合では必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。幾つかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射液からの薬物の吸収速度を遅らせることが望ましい。このことは、結晶性または非晶質の薬物を水への溶解度が低いビークル、例えば油脂に懸濁することによって達成され得る。薬物の吸収速度は、溶解速度に依存し、次いで、結晶の大きさや結晶形に依存し得る。注射可能な医薬の吸収の遅延は、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンの使用によって達成され得る。
【0103】
本発明で提供される化合物は、経腸または非経腸で、固体または液体の形態で投与され得る。非経腸の輸液に適当な組成物は、生理学的に許容される等張性の滅菌処理された水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌処理された注射可能な溶液または分散液に再構成するための滅菌処理された粉末を含み得る。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビークルの例は、水、エタノール、ポリオール類(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、植物油(例えばオリーブ油)、注射可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチル、および、これらの適当な混合物を含む。これらの組成物はまた、アジュバント、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。懸濁液は、活性な化合物に加えて、懸濁剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント・ゴム、または、これらの物質の混合物を含んでもよい。
【0104】
本発明で提供される化合物はまた、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内または鼻腔内への注射または輸液により、あるいは、滅菌処理された注射可能なまたは油性懸濁液の形態の点滴方法によって投与され得る。本組成物は、滅菌処理された注射可能な水性または油性懸濁液の形態であってもよい。これらの懸濁液は、上記の湿潤剤および懸濁剤の適当な分散を用いて、既知技術に従って製剤化され得る。滅菌処理された注射可能な製剤はまた、1,3−ブタンジオールの溶液などの、非毒性の非経腸で許容される希釈剤または溶媒における滅菌処理された注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。用いられ得る許容されるビークルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌可能な固定化油は、溶媒または懸濁媒体として慣用液に用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む何れかの混合固定化油が慣用的に用いられ得る。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射可能な製剤における使用が見出された。投与レジメは、最適な治療応答を提供するよう調製され得る。例えば、幾つかの分割投与形を1日で投与してもよく、または、投与量は、治療の状況の緊急度に比例して減少させてもよい。
【0105】
注射可能なデポー形が、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中の薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造される。ポリマーに対する薬物の比および用いられる特定のポリマーの性質に依存して、薬物の放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。注射可能なデポー製剤はまた、生体組織に相容性であるリポソームまたはミクロエマルジョン中に薬物をトラップすることによって製造される。注射可能な製剤は、例えば、滅菌フィルターによる濾過によって、または、使用直前に滅菌水または他の滅菌処理された注射可能な媒体に溶解または分散され得る滅菌処理された固体組成物に滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0106】
経口投与のための固体投与形は、カプセル剤、錠剤、丸薬、散剤および顆粒剤を含む。このような固体投与形において、活性な化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または、(a)充填剤または希釈剤、例えば澱粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールおよびケイ酸;(b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖およびアラビアゴム;(c)湿潤剤(humectant)、例えばグリセロール;(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、じゃがいも澱粉またはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(f)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤(wetting agent)、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;(h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト・クレイ;および(i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物と混合され得る。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合において、投与形はまた、緩衝剤を含んでもよい。同様のタイプの固体組成物はまた、乳糖などの賦形剤および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、軟ゼラチンおよび硬ゼラチンカプセル剤中に充填して用いられてもよい。
【0107】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤の固体投与形は、腸溶性コーティングや他の医薬製剤の分野で周知のコーティングなどのコーティングおよびシェルと共に製造され得る。これらは、所望により不透明化剤を含んでもよく、また、それらが消化器の特定の部分でのみまたは消化器の特定の部分で優先的に有効成分を放出するような、所望により遅延した方法で放出するような組成物であってもよい。用いられ得る包埋組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。錠剤は、錠剤の製造に適当な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合した化合物を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム;顆粒化剤および崩壊剤、例えばトウモロコシ澱粉またはアルギン酸;結合剤、例えばトウモロコシ澱粉、ゼラチン、またはアラビアゴム;および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は、コートされていなくても、消化器中での崩壊と吸収を遅らせることによってより長時間に亘って持続作用を提供するための既知の方法によってコートされていてもよい。例えば、徐放性材料(time delay material)、例えばモノステアリン酸グリセロールまたはジステアリン酸グリセロールなどを用いてもよい。経口使用のための製剤はまた、化合物を不活性な固体の希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合した硬ゼラチンカプセル剤、あるいは、有効成分を水性もしくは油性媒体、例えば落花生油、液体パラフィンまたはオリーブ油と混合した軟ゼラチンカプセル剤として与えられ得る。
【0108】
経口投与のための液体投与形は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシルを含む。活性な化合物に加えて、液体投与形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、溶解剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、および、これらの混合物を含んでもよい。不活性な希釈剤の他にも、経口組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味剤および香料を含んでもよい。
【0109】
水性懸濁液は、水性懸濁液を製造するのに適当な賦形剤と混合した化合物を含む。このような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロース ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴム、およびアラビアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然由来のリン脂質、例えばレシチン、または脂肪酸とアルキレン オキシドの縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとエチレン オキシドの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、脂肪酸(例えばヘキシトール)から誘導される部分エステルとエチレン オキシドの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または、脂肪酸および無水ヘキシトールからの部分エステルとエチレン オキシドの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁液はまた、1種以上の保存料、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1種以上の着色料、1種以上の風味剤、または1種以上の甘味料、例えばショ糖またはサッカリンを含んでもよい。
【0110】
油性懸濁液は、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ごま油またはココヤシ油に、またはミネラル・オイル、例えば液体パラフィンに懸濁することによって製剤化され得る。油性懸濁液は、濃厚化剤、例えば蜜蝋、硬パラフィンまたはセチルアルコールを含んでもよい。甘味料、例えば下記に示した甘味料、および風味剤は、味のよい経口製剤を提供するために加えられ得る。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を添加することによって保存され得る。水の添加によって水性懸濁液を製造するのに適当な分散可能な粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1種以上の保存料と混合した有効成分を提供する。適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、すでに上で記載されているものにより例示される。また、さらなる賦形剤、例えば甘味料および風味剤が存在してもよい。
【0111】
本発明で提供される化合物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油または落花生油、またはミネラル・オイル、例えば液体パラフィン、またはこれらの混合物であってもよい。適当な乳化剤は、天然由来のゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカント・ゴム、天然由来のリン脂質、例えば大豆レシチン、および、脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されるエステルもしくは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、および、エチレン オキシドと該部分エステルの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。エマルジョンはまた、甘味料および風味剤を含んでもよい。シロップ剤およびエリキシルは、甘味料、例えばグリセロール、ソルビトールまたはショ糖と共に製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑剤、保存料、風味剤および着色料を含んでもよい。
【0112】
一つの態様において、本化合物は、投与を助け投与量を一定にする単位投与形に製剤化される。単位投与形は、本明細書で用いられるとき、処置されるべき対象のための単位投与として適した物理的に別個の単位を言い、それぞれは、治療有効量の本化合物および少なくとも1種の薬学的賦形剤を含む。医薬製品は、β−アミロイド疾患、例えばアミロイド症、例えばアルツハイマー病、または、α−シヌクレイン原繊維形成に関連する疾患、例えばパーキンソン病の処置などの意図される処置方法を示したラベルを付けたまたはラベルを伴った容器内の単位投与形を含む。直腸または膣投与用組成物は、好ましくは、本発明で提供される化合物を、室温で固体であるが体温で液体であって直腸または膣腔内で融解して活性な化合物を放出する適当な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用蝋と混合することによって製造され得る坐剤である。
【0113】
本発明で提供される化合物はまた、リポソームの形態で投与され得る。リポソームを形成する方法は、当技術分野で既知である(Prescott, Ed., Methods in Cell Biology l976, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y.)。当技術分野で知られているように、リポソームは、一般的に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中で分散された単層または多層の水和した脂質結晶によって形成される。非毒性で生理学的に許容され、代謝可能であって、リポソームを形成し得る脂質は何れも用いられ得る。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明で提供される化合物に加えて、安定剤、保存料、賦形剤などを含んでいてもよい。好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0114】
本発明で提供される化合物はまた、体内で、加水分解酵素、例えばエステラーゼおよびホスファターゼと接触した後、活性な医薬成分がin vivoで放出される“プロドラッグ”の形態で投与され得る。用語“薬学的に許容されるプロドラッグ”は、本明細書で用いられるとき、安全な医学的判断の範囲内で、不適当な毒性、刺激、アレルギー反応などがなく組織と接触させて使用するのに適当であり、かつ、妥当な利益/危険比に見合う、意図された使用に有効な本発明で提供される化合物のプロドラッグを表す。徹底的な議論は、T. Higuchi and V. Stella (Higuchi, T. and Stella, V. Pro-drugs as Novel Delivery Systems, V. 14 of the A.C.S. Symposium Series; Edward B. Roche, Ed., Bioreversible Carriers in Drug Design 1987, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press)で提供されており、これは、言及することによって本明細書に組み込まれる。
【0115】
本発明で提供される化合物またはその薬学的に許容される誘導体はまた、特定の組織、受容体または処置される対象の身体の他の領域に標的化するよう製剤化され得る。このような標的化法の多くは、当技術分野で周知である。本明細書では、全てのこのような標的化法を、本組成物における使用に意図している。標的化法の非限定的な例については、例えば米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号および第5,709,874号を参照のこと。
【0116】
一つの態様において、組織標的化リポソーム、例えば腫瘍標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液はまた、薬学的に許容される担体として適当であり得る。これらは、当技術分野で既知の方法に従って製造され得る。例えば、リポソーム製剤は、米国特許第4,522,811号に記載された通りに製造され得る。簡単には、リポソーム、例えば多重膜小胞(MLV)は、卵のホスファチジルコリンおよび脳ホスファチジルセリン(モル比7:3)をフラスコ内で乾燥させることによって製剤化され得る。二価カチオンを含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)中の本発明で提供される化合物の溶液を加え、脂質フィルムが分散するまでフラスコを振盪する。得られた小胞を洗浄して被包されなかった化合物を除き、遠心分離によってペレットにして、PBSに再度懸濁する。
【0117】
徐放剤
本発明はまた、本発明の化合物を望ましい標的(すなわち脳または全身の臓器)へ、高循環レベル(10−9Mから10−4Mの間)で、送達するための徐放剤の使用を含む。アルツハイマー病またはパーキンソン病の処置のための好ましい態様において、本化合物の循環レベルは、10−7Mまで維持されている。レベルは、患者の全身に循環しているか、または、好ましい態様において、脳組織中に存在し、最も好ましい態様において、脳または他の組織中のβ−アミロイドまたはα−シヌクレイン原繊維堆積物に局在化している。
【0118】
本化合物のレベルは、望ましい時間に亘って維持され、この開示を用いて当業者が容易に決定し得ると解される。好ましい態様において、本発明は、一定のレベルの治療化合物が、血清中10−8Mと10−6Mの間で48〜96時間維持されるような徐放剤を含む投与の独特の態様を含む。
【0119】
このような徐放性および/または放出時間指定製剤は、当業者に周知の送達デバイスの持続放出方法によって、例えば米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第4,710,384号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号および第5,733,566号(これらの開示はそれぞれ言及することによって本明細書に組み込まれる)に記載された方法によって製造され得る。これらの医薬組成物は、例えばヒドロキシプロピルメチル セルロース、他のポリマー・マトリックス、ゲル、浸透膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアなどを用いて、1種以上の活性な化合物の遅延または持続放出を提供するために用いられ得る。当業者に既知の適当な徐放剤は、本明細書で記載されたものを含み、本発明の医薬組成物と共に使用するために容易に選択され得る。従って、錠剤、カプセル剤、ジェルカップ(gelcap)、カプレット、散剤などであってこれらに限定されない、持続放出に適合される経口投与に適当な1回単位投与形が、本発明に包含される。
【0120】
好ましい態様において、徐放剤は、活性な化合物と、微晶性セルロース、マルトデキストリン(maltodextrin)、エチルセルロースおよびステアリン酸マグネシウム(これらに限定されない)を含む。上記の通り、開示された化合物の性質と相容性である被包のための既知の方法が全て本発明に包含される。徐放剤は、本発明の医薬組成物の粒子または顆粒を、様々な厚さのゆっくりと溶解し得るポリマーでコートすることによって、あるいは、ミクロカプセル化によって被包される。好ましい態様において、徐放剤は、哺乳動物への投与後約48時間から約72時間で医薬組成物の崩壊が可能であるよう、厚さを変えた(例えば約1ミクロンから200ミクロン)コーティング物質で被包される。別の態様において、コーティング物質は食物承認添加剤である。
【0121】
他の態様において、徐放剤は、ゆっくりと溶解し得るポリマー担体と共に薬物を錠剤に打錠することによって製造されるマトリックス崩壊デバイスである。一つの好ましい態様において、コートされた粒子は、約0.1〜約300ミクロンの間のサイズ範囲を有する(米国特許第4,710,384号および第5,354,556号に開示。これらは言及されることによってその全体が本明細書に組み込まれる)。それぞれの粒子は、ポリマー全体に均一に分布した有効成分を有するミクロマトリックスの形態である。
【0122】
例えば米国特許第4,710,384号(言及することによってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような、打錠の際に壊れるのを妨ぐのに十分な可塑性を持たせるために、コーティング中に比較的高いパーセンテージの可塑剤を有する徐放剤が、開示されている。可塑剤の具体的な量は、コーティングの性質および用いられる特定の可塑剤に依存して変化する。量は、形成された錠剤の放出性を試験することによって、容易に経験的に決定され得る。薬物の放出が速すぎるならば、可塑剤をより多く用いる。放出性はまた、コーティングの厚さの関数である。実質的な量の可塑剤が用いられた場合、コーティングの徐放能力は減少する。従って、コーティングの厚さは、可塑剤の量の増大に対応してわずかに増大する。一般的に、このような態様において、可塑剤は、約15〜30%(コーティング中の徐放性物質に対して)で、好ましくは20〜25%で存在し、そしてコーティングの量は、10〜25重量%(活性な物質の重量に対して)であり、好ましくは15〜20重量%である。何れの慣用の薬学的に許容される可塑剤も、コーティングに組み込まれ得る。
【0123】
本発明の化合物は、徐放性および/または放出時間指定製剤として製剤化され得る。全ての徐放性医薬製剤は、非持続性の対応物によって達成される薬物治療改善の一般的なゴールを有する。理想的には、医学的処置において最適に設計された徐放剤の使用は、状態を治療するまたは制御するために用いられる薬物が最少量となることによって特徴付けられる。徐放剤の利点は、1)組成物の活性を延長し、2)投与頻度を減らし、そして3)患者のコンプライアンスを増大させることを含み得る。さらに、徐放剤は、作用の開始時間、または他の特性、例えば組成物の血液レベルに影響を与えるために用いられることができ、副作用の発生に影響を与えることができる。
【0124】
本発明の徐放剤は、望ましい治療効果を迅速に生じる治療組成物の量を始めに放出し、そして延長された時間に亘って治療効果のレベルを維持する量を徐々に継続的に放出するよう設計される。この体内の一定レベルを維持するために、治療組成物は、体から代謝され排出される組成物を補う速度で、投与形から放出されなければならない。
【0125】
有効成分の持続放出は、様々な誘発剤、例えばpH、温度、酵素、水、または他の生理学的条件または化合物によって刺激され得る。本発明の内容において、用語“持続放出成分”は、本明細書で、ポリマー、ポリマー・マトリックス、ゲル、透過膜、リポソーム、ミクロスフェアなど、またはそれらの組み合わせを含みこれらに限定されない、有効成分の持続放出を容易にする化合物(複数の場合を含む)と定義される。
【0126】
複合体が水溶性であるならば、それは、リン酸緩衝食塩水などの適切な緩衝液中で、または他の生理学的に相溶性の溶液中で製剤化され得る。あるいは、得られた複合体が水性溶媒に貧溶性であるならば、Tweenまたはポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤と共に製剤化され得る。従って、本化合物およびその生理学的溶媒は、噴射吸入または吸気吸入(口または鼻の何れかから)による投与、または、経口、頬側、非経腸または直腸投与などで投与するために製剤化され得る。
【0127】
経口投与用製剤は、活性な化合物の制御放出を与えるために、適当に製剤化され得る。好ましい態様において、本発明の化合物は、液体の形態に容易に製剤化され得る別個の微粒子の制御放出粉末として製剤化される。徐放性粉末は、有効成分、および所望により少なくとも1種の非毒性ポリマーを有する賦形剤を含む粒子を含む。
【0128】
粉末は、液体ビークルに分散されても懸濁されてもよく、有用な時間で徐放性を維持する。これらの分散液もしくは懸濁液は、崩壊速度の点で化学安定性および安定性の双方を有する。粉末は、可溶性、不溶性、浸透性、不浸透性または生体分解性であり得るポリマーを含む賦形剤を含んでいてもよい。ポリマーは、ポリマーであってもコポリマーであってもよい。ポリマーは、天然ポリマーであっても合成ポリマーであってもよい。天然ポリマーは、ポリペプチド(例えばゼイン)、多糖類(例えばセルロース)およびアルギン酸を含む。代表的な合成ポリマーは、米国特許第5,354,556号(言及することによってその全体が組み込まれる)の第3欄33〜45行目に記載されているものを含み、これらに限定されない。特に適当なポリマーは、米国特許第5,354,556号(言及することによってその全体が組み込まれる)の第3欄46行目〜第4欄8行目に記載されているものを含み、これらに限定されない。
【0129】
本発明の徐放性化合物は、例えば筋肉内注射または皮下組織や様々な体腔へのインプラント、および経皮デバイスによって、非経腸投与のために製剤化され得る。一つの態様において、筋肉内注射は、水性または油性懸濁液として製剤化される。水性懸濁液において、持続放出効果は、幾らかは、複合体形成時の活性化合物の溶解性の減少、または崩壊速度の減少による。同様の方法は、活性化合物を油から周囲の水性媒体へ分配することによって活性化合物の放出速度を決定する油性懸濁液および溶液でも行われる。油溶性で、かつ望ましい分配性を有する活性化合物のみが適当である。筋肉内注射に用いられ得る油は、ごま油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、扁桃油、大豆油、綿実油およびひまし油を含み、これらに限定されない。
【0130】
数日から数年の範囲の時間に亘って持続放出を与える薬物送達の高度に発展させた形態は、薬物含有ポリマーデバイスを、皮下または様々な体腔中に埋め込むことである。インプラントに用いられるポリマー物質は、生体適合性でかつ非毒性でなければならず、ヒドロゲル、シリコン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル コポリマーまたは生分解ポリマーを含み、これらに限定されない。
【0131】
本化合物の活性の評価
アルツハイマー病のβ−アミロイドタンパク質(Aβ)原繊維およびパーキンソン病のα−シヌクレイン凝集物の破壊剤/阻害剤としての本発明で提供される化合物の生物学的活性を、予め形成されたアルツハイマー病のアミロイド原繊維(すなわちAβ1−42原繊維からなる)およびパーキンソン病のα−シヌクレイン凝集物の分解/破壊を起こす化合物の効果を決定することによって評価した。1つの研究において、化合物およびEDTA(ネガティブコントロールとして)の効果を決定するために、チオフラビンT蛍光測定を用いた。このアッセイにおいて、チオフラビンTは、原繊維アミロイドに特異的に結合し、この結合により、485nmでの蛍光増加が起こり、この増加は存在する原繊維の量に正比例する。蛍光が強ければ強い程、存在する原繊維または凝集物の量も多い(Naki et al, Lab. Invest. 65:104-110, 1991; Levine III, Protein Sci. 2:404-410, 1993; Amyloid: Int. J. Exp. Clin. Invest. 2:1-6, 1995)。
【0132】
コンゴレッド結合アッセイにおいて、アミロイド(Aβ1−42原繊維またはα−シヌクレイン凝集物)のコンゴレッドへの結合を変化させる試験化合物の能力を定量した。このアッセイにおいて、Aβ1−42原繊維またはα−シヌクレイン凝集物および試験化合物を3日間インキュベートし、0.2μmフィルターで減圧濾過した。フィルターをコンゴレッドで染色した後、フィルターに残ったAβ1−42原繊維またはα−シヌクレイン凝集物の量を定量した。フィルターを適切に洗浄した後、試験化合物の存在下でフィルター上のコンゴレッドの退色(試験化合物の非存在下でのアミロイドタンパク質のコンゴレッド染色と比較)は、凝集したコンゴレッド親和性Aβ1−42原繊維またはα−シヌクレイン凝集物の量を試験化合物が減少させる/変化させる能力を示した。
【0133】
組み合わせ治療
他の態様において、本化合物は、他の治療薬と組み合わせて、またはそれと連続して投与され得る。このような他の治療薬は、アミロイド症およびシヌクレイン疾患の1つ以上の症状を処置、予防または寛解すると知られているものを含む。このような治療薬は、ドネペジル塩酸塩(Aracept)、酒石酸リバスチグミン(Exelon)、タクリン塩酸塩(Cognex)およびガランタミン臭化水素酸塩(Reminyl)を含み、これらに限定されない。
【0134】
本化合物および組成物の使用方法
本発明で提供される化合物および組成物は、β−アミロイド原繊維の形成、堆積、蓄積または残留に関連する疾患を含みこれらに限定されないβ−アミロイド疾患または障害の1つ以上の症状を処置し、予防しまたは寛解する方法に有用である。或る態様において、本発明で提供される化合物および組成物は、アルツハイマー病、ダウン症、Dutch型アミロイド症を伴う遺伝性脳溢血、および脳β−アミロイド血管障害を含みこれらに限定されない疾患の1つ以上の症状の処置、予防または寛解に有用である。
【0135】
α−シヌクレイン原繊維形成を阻害または予防する方法、α−シヌクレイン原繊維増殖を阻害または予防する方法、および、予め形成されたα−シヌクレイン凝集物およびα−シヌクレイン関連タンパク質堆積物の分解、破壊および/または脱凝集を起こす方法もまた提供される。
【0136】
或る態様において、本発明で提供される化合物および組成物によって処置される、予防されるまたは症状が寛解するシヌクレイン疾患またはシヌクレイノパチーは、α−シヌクレイン原繊維を含むシヌクレイン凝集物の形成、堆積、蓄積または残留に関連する疾患を含み、これらに限定されない。或る態様において、このような疾患は、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レヴィー小体疾患、レヴィー小体型のアルツハイマー病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症およびグアムのパーキンソン認知症を含む。
【0137】
一つの態様において、
【化11】

[式中、R、R、RおよびRは独立して位置するヒドロキシル基であり;
Rは、ヘテロアリール、−C(O)NR'(ここで、R'はHまたはCHから選択される。)、スルホンアミド、トリシクロアルキルから選択される。
Rが−C(O)NR'であって、ヒドロキシル基RとRまたはヒドロキシル基RとRの一方が3位と4位にあるとき、他方のヒドロキシル基は、2位と3位;2位と4位;2位と5位;2位と6位;3位と5位;3位と6位;4位と5位;4位と6位;および5位と6位からなる群から選択される位置群の一つに存在するように位置する。]
の化合物またはその薬学的に許容されるエステルまたは塩
からなる群から選択される化合物である。
【0138】
他の態様において、
【化12】

[式中、R、R、RおよびRは、独立して位置するヒドロキシル基であり、
Rは、−C(O)NR'であって、R'はHまたはCHから選択され、そして、
ヒドロキシル基RとRまたはヒドロキシル基RとRの一方が3位と4位にあるとき、他方のヒドロキシル基は、2位と3位;2位と4位;2位と5位;2位と6位;3位と5位;3位と6位;4位と5位;4位と6位;および5位と6位からなる群から選択される位置群の1つに存在するように位置する。]
の化合物およびその薬学的に許容される塩
からなる群から選択される化合物を提供する。
【0139】
他の態様において、本発明の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0140】
他の態様において、Aβアミロイドまたはα−シヌクレイン凝集物の形成、堆積、蓄積または残留を処置する方法であって、該凝集物を有効量の本発明の化合物で処置することを含む方法が提供される。
【0141】
他の態様において、β−アミロイド疾患またはシヌクレイノパチーに罹患している哺乳動物においてβ−アミロイド疾患またはシヌクレイノパチーを処置する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0142】
他の態様において、シヌクレイノパチーに罹患している哺乳動物において、運動能力を改善する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法が提供される。
他の態様において、パーキンソン病に罹患している哺乳動物において、運動機能不全の進行を阻止する方法であって、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0143】
下記の非限定的な実施例は、例示のためにのみ示され、本発明を限定しないと考えられ、本実施例の多くの明らかな変更は、その意図または範囲から逸脱せずに可能である。
【0144】
実施例
一般的な実験的手順
全ての溶媒を使用前に蒸留し、35℃以下の温度でロータリーエバポレーターによって除去した。Merck シリカゲル 60, 200〜400メッシュ, 40〜63μmを、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに用いた。TLCを、初めにUVランプで、次いでバニリン溶液(EtOH中1% バニリン、1% HSO)に浸し、加熱することによって可視化するMerck DC-plastikfolien Kieselgel 60 F254を用いて行った。質量スペクトルをKratos MS-80 装置で測定した。NMRスペクトルを、25℃で、Hについては500または300MHzで、13Cについては125または75MHzで、Varian INOVA-500またはVXR-300 spectrometerで測定した。化学シフトを、溶媒ピーク:CHClでは7.25ppm、CDClでは77.0ppm、または、(CH)COでは2.15ppm、(CD)COでは30.5ppm、または、CHODでは3.30ppm、CDODでは39.0ppmを参照ピークとしてδスケールで、ppmで示す。
【0145】
HPLC条件
EzChrom Elite softwareで操作し、ガードカラム(Phenomenex ODS 4×3mm, 5μm)を有するC18カラム(Phenomenex Prodigy 5μm 100A, 250×4.6mm)を備えた、Agilent HP1100 装置を用いて、30℃で、サンプルを分析した。ピークを280nmで検出した。移動相は、水中アセトニトリル(0.1% TFA含有)であった:t=11%、t20=11%、t30=100%、t31=11%、t40=11%。流速は1mL/分であり、注入体積は5μlであった。
【実施例】
【0146】
実施例1:スルホンアミド(2)の合成
3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸 3,4−ジヒドロキシフェニルスルホンアミド(化合物5)
【化13】

【0147】
スルホンアミド(2)の合成を、塩化 3,4−メチレンジオキシベンゼンスルホニル(1,2−メチレンジオキシベンゼンから製造 (Tao, E.V.P.; Miller, W.D. 米国特許第5,387,681号, 1995))を、3,4−メチレンジオキシアニリンと反応させ、スルホンアミド(1)を良い収率で得ることによって行った。標準条件下、三臭化ホウ素で脱保護し、遊離のフェノール性スルホンアミドを合理的な収率で得た。
【0148】
ジクロロメタン(DCM)(10ml)中の塩化 1,3−ベンゾジオキソール−5−スルホニル(Tao, E.V.P.; Miller, W.D. 米国特許第5,387,681号, 1995)(1g)の溶液に、撹拌しながら、ジクロロメタン(10ml)中の3,4−メチレンジオキシアニリン(0.62g)の溶液を、続いてピリジン(1ml)を加えた。混合物を2時間還流し、冷却し、ジクロロメタン(150ml)で希釈し、水性HCl(1M, 2×100ml)で洗浄し、乾燥し、真空で蒸発させ、粗生成物を褐色のゴム状物質として得た。ジクロロメタン中5〜10% 酢酸エチルで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、純粋なスルホンアミド(1)を薄褐色のゴム状物質として得た(1.34g, 92%)。95% エタノールから結晶化し、薄褐色の結晶として生成物を得た。
HPLC 29.6分。
1H NMR ((CD3)2CO) 8.75 (1H, s), 7.39 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.24 (1H, d, J 2Hz), 7.02 (1H, d, J 9Hz), 6.86 (1H, d, J 2Hz), 6.81 (1H, d, J 9Hz), 6.72 (2H, dd, J 2, 9Hz), 6.23 (2H, s) and 6.06 (2H, s).
HREIMS 実測値 344.0201; MNa+, C14H11NNaO6Sでは344.0199となる。
【0149】
乾燥DCM(50ml)中のスルホンアミド(1)(0.7g)の溶液に、三臭化ホウ素(0.5ml)を加え、混合物を室温で3時間置いた。メタノール(滴下、5ml)を注意深く加え、反応物を室温で24時間置いた。混合物を1mlになるまで真空で蒸発させ、さらにメタノール(20ml)を加え、これを4回繰り返し、溶媒を真空で蒸発させることによって除去した。クロロホルム中0〜20% メタノールで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、薄褐色のゴム状物質を得た。さらに、水中0〜50% アセトニトリルで溶出するC-18逆相シリカで精製し、凍結乾燥し、純粋な生成物(2)を明褐色の粉末として得た(295mg, 45%)。
HPLC 12.9分, 95%。
1H NMR (CD3OD) 7.05 (1H, d, J 2Hz), 7.03 (2H, dd, J 2, 9Hz), 6.76 (1H, d, J 9Hz), 6.57 (1H, d, J 2Hz), 6.56 (1H, d, J 9Hz) and 6.31 (2H, dd, J 2, 9Hz).
HREIMS 実測値 296.0241, M-, C12H10NO6Sでは296.0234となる。
【0150】
実施例2:イミダゾール(4)の合成
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)イミダゾール(化合物6)
【化14】

【0151】
ピペロニロニトリル(Thurkauf et al. J Med Chem. 1995, 38 (12), 2251-2255)から形成されるアミジノベンゼン、および、3,4−メチレンジオキシアセトフェノンから Lee らによって記載された方法(Korean Chem Soc. 2003, 24 (4), 407-408)に従って形成されるブロモケトン(Castedo et al. Tetrahedron 1982, 38 (11), 1569-70)から、Li らによって記載された方法(Li et al. Organic Process Research and Development 2002, 6, 682-3)に従ってイミダゾール環を形成した。標準条件下、三臭化ホウ素で脱保護し、遊離のフェノール性イミダゾールを良い収率で得た。
【0152】
Liによって記載された方法に従って、テトラヒドロフラン(THF)(16ml)および水(4ml)中の3−アミジノベンゼン (Thurkauf et al. J Med Chem. 1995, 38 (12), 2251-2255)(0.5g, 3mmol)および重炭酸カリウム(1.20g, 12mmol)の混合物を激しく加熱還流した。THF(4ml)中のブロモケトン(Castedo et al. Tetrahedron 1982, 38 (11), 1569-70; および Lee et al. Korean Chem Soc. 2003, 24 (4), 407-408)(0.729g, 3mmol)を30分かけて加え、還流をさらに2時間維持した。THFを真空で蒸発させることによって除去し、残渣を酢酸エチルで抽出し、乾燥し、真空で蒸発させ、粗生成物を褐色の固体として得た。95% エタノールから結晶化し、純粋なイミダゾール(3)を薄黄色の結晶性固体として得た(0.54g, 58%)。
HPLC 27.9分。
NMR ((CD3)2CO) 7.45 - 7.70 (5H, m), 7.02 (1H, d, J 9Hz), 6.95 (1H, d, J 9Hz), 6.15 (2H, s) and 6.09 (2H, s).
HREIMS 実測値 309.0875; MH+, C17H12N2O4では309.0870となる。
【0153】
乾燥DCM(50ml)中のイミダゾール(3)(0.5g)の溶液に、三臭化ホウ素(1.0ml)を加え、混合物を室温で3時間置いた。メタノール(滴下、5ml)を注意深く加え、反応物を室温で24時間置いた。混合物を1mlになるまで真空で蒸発させ、さらにメタノール(30ml)を加え、これを4回繰り返し、次いで溶媒を真空で蒸発させることによって除去した。クロロホルム中0〜20% メタノールで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物(4)を薄褐色の固体として得た(0.27g, 58%)。
HPLC 16.3分, 99%。
1H NMR (CD3OD) 7.59 (1H, s), 7.36 (1H, d, J 2Hz), 7.31 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.16 (1H, d, J 2Hz), 7.10 (2H, dd, J 2, 9Hz), 6.98 (1H, d, J 9Hz) and 6.88 (1H, d, J 9Hz).
HREIMS 実測値 285.0873; MH+, C15H13N2O4では285.0870となる。
【0154】
実施例3:トリアゾール(7)の合成
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール(化合物7)
【化15】

【0155】
Bentissによって記載された方法(Bentiss et al. J Heterocyclic Chem. 1999, 36, 149-152)に従って、ピペロニロニトリルの二量化反応により4−アミノトリアゾール環を形成し、Bentissによって記載された方法(Bentiss et al. J. Heterocyclic Chem. 2002, 39, 93-96.)に従って脱アミン化を行い、トリアゾール(6)を良い収率で得た。標準条件下、三臭化ホウ素で脱保護し、遊離のフェノール性トリアゾール(7)を良い収率で得た。
【0156】
Bentissによって記載された方法 (Bentiss et al. J Heterocyclic Chem. 1999, 36, 149-152)に従って、エチレングリコール(5ml)中の、芳香族性ニトリル(1g)、ヒドラジン水和物(1g)およびヒドラジン塩酸塩(0.5g)の混合物を、溶液で、130℃で5時間加熱した。溶液を冷却し、水(7ml)で希釈し、固体生成物を濾過し、DCMで洗浄し、乾燥させ、粗生成物を得た。メタノールから再結晶し、純粋な4−アミノトリアゾール(5)を薄黄色の固体として得た(0.65g, 66%)。
HPLC 27.0分。
1H NMR ((CD3)2CO) 7.62 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.42 (2H, d, J 2Hz), 6.94 (2H, d, J 9Hz), 6.15 (2H, s) and 5.93 (4H, s).
HREIMS 実測値 325.0937; MH+, C16H13N4O4では325.0931となる。
【0157】
Bentissによって記載された方法 (Bentiss et al. J. Heterocyclic Chem. 2002, 39, 93-96)に従って、次亜リン酸水溶液(50%, 5ml)中のアミノトリアゾール(5)(0.5g)の溶液に、撹拌しながら、水(1.5ml)中の亜硝酸ナトリウム(0.6g)の溶液をゆっくりと加えた。混合物を室温でさらに1時間撹拌し、薄橙色の沈殿物を集めて、水で洗浄し、乾燥し、トリアゾール(6)を得た(0.38g, 80%)。
HPLC 29.48分。
1H NMR ((CD3)2CO) 7.81 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.70 (2H, d, J 2Hz), 7.10 (2H, d, J 9Hz) and 6.20 (4H, s).
HREIMS 実測値 310.0818; C16H12N3O4では310.0822となる。
【0158】
乾燥DCM(50ml)中のトリアゾール(6)(0.5g)の溶液に、三臭化ホウ素(1.0ml)を加え、混合物を室温で3時間置いた。メタノール(滴下、5ml)を注意深く加え、反応物を室温で24時間置いた。混合物を1mlになるまで真空で蒸発させ、さらにメタノール(30ml)を加え、これを4回繰り返し、次いで溶媒を真空で蒸発させることによって除去した。クロロホルム中の0〜20% メタノールで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物(7)を薄褐色の固体として得た(0.24g, 52%)。
HPLC 16.1分, 97%。
1H NMR (CD3OD) 7.46 (2H, d, J 2Hz), 7.41 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.15 (1H, s) and 6.96 (2H, d, J 9Hz).
HREIMS 実測値 286.0815; MH+, C14H12N3O4では286.0822となる。
【0159】
実施例4:ピラゾール(9)の合成
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)ピラゾール(化合物8)
【化16】

【0160】
1,3−ジケトン(Lopez et al. Planta Med. 1998, 64 (1), 76-77)(Choshiらによって記載された方法 (Chem. Pharm. Bull. 1992, 40 (4), 1047-1049)に従って製造)を、ヒドラジン水和物と、Finkらによって記載された方法(Chemistry and Biology 1999, 6, 205-219)に従って反応させ、ピラゾール(8)を良い収率で得た。標準条件下、三臭化ホウ素で脱保護し、遊離のフェノール性ピラゾール(9)を良い収率で得た。
【0161】
Finkらによって記載された方法(Chemistry and Biology 1999, 6, 205-219)に従って、DMF/THF(3:1, 12ml)中の、ジケトン(Choshi et al. Chem. Pharm. Bull. 1992, 40 (4), 1047-1049 および Lopez et al. Planta Med. 1998, 64 (1), 76-77)(1g)およびヒドラジン塩酸塩(1g, 5当量)の懸濁液を、24時間還流した。水を加え、混合物をジクロロメタンで抽出し、乾燥し、真空で蒸発させ、粗生成物(8)を黄色の固体として得た。ジクロロメタン中0〜20% 酢酸エチルで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、ピラゾール(8)を薄黄色の固体として得た(0.49g, 50%)。
HPLC 30.3分。
1H NMR ((CD3)2CO) 7.47 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.46 (2H, d, J 2Hz), 7.04 (1H, s), 7.02 (2H, d, J 9Hz) and 6.14 (4H, s).
HREIMS 実測値 309.0859; MH+, C17H13N2O4では309.0870となる。
【0162】
乾燥DCM(50ml)中のピラゾール(8)(0.46g)の溶液に、三臭化ホウ素(0.4ml)を加え、混合物を室温で3時間置いた。メタノール(滴下、5ml)を注意深く加え、反応物を室温で24時間置いた。混合物を1mlになるまで真空で蒸発させ、さらにメタノール(30ml)を加え、これを4回繰り返し、次いで溶媒を真空で蒸発することによって除去した。クロロホルム中0〜20% メタノールで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、ピラゾール(9)を薄黄色の固体として得た(0.285g, 67%)。
HPLC 25.9分, 98%。
1H NMR (CD3OD) 7.26 (2H, d, J 2Hz), 7.22 (2H, dd, J 2, 9Hz), 7.15 (1H, s) and 6.93 (2H, d, J 9Hz).
HREIMS 実測値 285.0879; C15H13N2O4では285.0870となる。
【0163】
実施例5:アダマンタン(10)の合成
1,3−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)アダマンタン(化合物9)
【化17】

【0164】
Luらによって記載された方法(Lu et al. J Med Chem 2005, 48 (14), 4576-4585)に従って、カテコールを1,3−アダマンタン−ジオールと反応させ、付加物(10)を合理的な収率で得た。
【0165】
Luによって記載された方法に従って、メタンスルホン酸(2ml)中のカテコール(1.0g)およびアダマンタン−ジオール(0.5g)の溶液を、80℃で3時間加熱し、室温で一夜置いた。水を加え、混合物をクロロホルム中10% メタノールで抽出した。これを乾燥し、真空で蒸発させ、白色の固体を得た。クロロホルム中0〜20% メタノールで溶出するシリカゲルのカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物を白色の固体として得た。ジエチルエーテル/40% 石油エーテルから結晶化し、純粋な生成物(10)を白色の結晶性固体として得た(210mg, 20%)。
HPLC 29.8分, 98%。
1H NMR (CD3OD) 6.82 (2H, t, J 1.5Hz), 6.68 (4H, d, J 1.5Hz), 2.22 (2H, bs), 1.87 (8H, m) and 1.77 (2H, bs).
HREIMS 実測値 387.1369; MCl-, C22H24ClO4では387.1369となる。
【0166】
実施例6:本発明の化合物は、アルツハイマー病Aβ 1−42原繊維または凝集物の強力な破壊剤である
先の実施例で製造した化合物は、アルツハイマー病β−アミロイド蛋白質(Aβ)原繊維の強力な破壊剤/阻害剤であることが見出された。一連の試験において、予め形成されたアルツハイマー病のアミロイド原繊維(すなわちAβ 1−42原繊維からなる)の分解/破壊を引き起こす、本化合物の効力を分析した。
【0167】
パートA:チオフラビンT蛍光測定
1つの試験において、本化合物およびEDTA(ネガティブ・コントロールとして)の効果を決定するために、チオフラビンT蛍光測定を用いた。このアッセイにおいて、チオフラビンTはアミロイド原繊維に特異的に結合し、この結合により、形成されたアミロイド原繊維の量に正比例する485nmでの蛍光の増加が起こる。蛍光が強い程、形成したアミロイド原繊維の量が多い(Naki et al., Lab. Invest. 65:104-110, 1991; Levine III, Protein Sci. 2:404-410, 1993; Amyloid: Int. J. Exp. Clin. Invest. 2:1-6, 1995)。
【0168】
この試験において、30μlの先に原繊維化したAβ 1−42(rPeptide)の1mg/ml溶液(蒸留水中)を、37℃で3日間、単独で、または1つの本化合物もしくはEDTAの存在下でインキュベートした(Aβ:試験化合物(重量比)=1:1、1:0.1、1:0.01または1:0.001)。3日間のコ−インキュベーション後、50μlの各インキュベーション混合物を、150μlの蒸留水および50μlのチオフラビンT溶液(すなわち250mMのリン酸緩衝液(pH 6.8)中500mMのチオフラビンT)を含む96ウェル・マイクロタイタープレートに移した。ELISAプレート蛍光測定器を用いて、485nmでの蛍光の放出を測定し(励起波長444nm)、緩衝液のみまたは化合物のみをブランクとして引いた。
【0169】
3日間のインキュベーションの結果を図5にグラフで示す。例えば、EDTA(図5中の‘−C')は、試験した濃度全てで、Aβ 1−42原繊維の有意な阻害を起こさなかったのに対し、本化合物は全て、予め形成されたAβ 1−42原繊維の用量依存性の破壊/分解を起こした。試験した化合物全てが、ポジティブコントロール化合物から得られた結果(図5中の‘+C')と同様に、予め形成されたAβ 1−42原繊維を破壊するのに有効であった。例えば、Aβ:試験化合物(wt/wt)の比1:1で用いた場合に、コントロールにおける99%と比較して、該化合物全てが少なくとも96%阻害を起こした。Aβ:試験化合物(wt/wt)の比1:0.1では、コントロールにおける92%と比較して、阻害レベルは86〜95%の範囲であった。この試験は、本発明の化合物が、アルツハイマー病タイプのAβ原繊維の強力な破壊剤/阻害剤であることを示しており、通常用量依存性でその効果を示す。
【0170】
パートB:コンゴレッド
コンゴレッド結合アッセイにおいて、試験化合物が、コンゴレッドへのβ−アミロイド結合を変化させる能力を定量する。このアッセイにおいて、Aβ 1−42(チオTアッセイについて調製した通り)および試験化合物を3日間インキュベートし、次に0.2μm フィルターで減圧濾過した。コンゴレッドでフィルターを染色した後、フィルターに残ったAβ 1−42の量を定量した。フィルターを適切に洗浄した後、試験化合物の存在下で、フィルター上のコンゴレッドの退色(試験化合物の非存在下でのアミロイド蛋白質のコンゴレッド染色と比較して)は、凝集したコンゴレッド親和性Aβの量を減らす/変化させる、試験化合物の能力を示した。
【0171】
1つの試験において、化合物またはEDTAの非存在下または増大する量の存在下(Aβ:試験化合物(重量比)=1:1、1:0.1、1:0.01または1:0.001)で、コンゴレッドに結合するAβ原繊維の能力を測定した。3日間インキュベーションした結果を図6にグラフで示す。EDTA(図6中の‘−C')が、試験した濃度全てで、コンゴレッドへのAβ 1−42原繊維結合の有意な阻害を起こさなかったのに対して、本化合物は、コンゴレッドへのAβ結合の用量依存性阻害を起こし、その幾つかはポジティブコントロール化合物の効果(図6中の‘+C')を越えている。例えば、ポジティブコントロール化合物は、Aβ:試験化合物(wt/wt)の比1:1で用いた場合にはAβ 1−42原繊維へのコンゴレッドの結合を有意(p<0.01)に73.5%阻害し、Aβ:試験化合物(wt/wt)の比1:0.1で用いた場合にはコンゴレッド結合を有意(p<0.01)に10.4%阻害する。化合物6、8および9は、上記の比の両方で、ポジティブコントロール化合物の結果を越える。チオTアッセイの結果と同様に、この試験もまた、本発明の化合物がコンゴレッドへのAβ原繊維結合の強力な阻害剤であり、通常、用量依存でその効果を奏することを示した。
【0172】
パートC:円二色性スペクトルデータ
円二色性(CD)分光分析は、アミロイド原繊維の二次構造コンホメーション破壊に対する試験化合物の効果を決定するために用いられ得る方法である。1つの試験において、本実施例に記載した通り、Aβ 1−42原繊維のβ−シート・コンホメーションに対する種々の本発明の化合物の効果を決定するために、円二色性分光分析を用いた。この試験のために、Aβ 1−42(rPeptide Inc., Bogart, GA)を、凍結および凍結乾燥前にpHを10以上に維持しながら、始めに、50mM NaOH溶液から凍結乾燥した。次に、ペプチドを20mMの酢酸緩衝液(pH 4.0)中で濃度1mg/mlで再構成した。ペプチドの最終濃度を0.5mg/mlとし、Aβ 1−42:試験化合物(wt/wt)の比が1:1および1:0.1となるように、試験化合物またはビークルの希釈および添加を行った。試験化合物を添加しなかった場合、反応混合物に添加されたビークルの量は、試験化合物を送達するために用いられる量と同量であった。化合物またはビークルの存在下で37℃で5日間インキュベーションした後、CDスペクトルをJasco 810 spectropolarimeter (Easton, MD)で測定した。全てのCDスペクトルを0.05cmまたは0.1cmの石英セル中で測定した。波長トレースを、190〜270nmで、0.1nm増加で、バンド幅2nmで、スキャン速度50nm/分で、応答時間1秒で、データピッチ0.1nmでスキャンした。系全体を平衡化し、窒素を継続的に10ml/分で吹き付けた。ビークルを添加したAβ 1−42の10回のスペクトルをインキュベーション前に測定して平均値を求め、インキュベーション時間後の “Aβ 1−42+試験化合物”またはビークルの10回のスペクトルの平均値から引いた。スペクトルの平均値を、その度の楕円率から、式:
[Ψ]=(Ψ/d)×c
(ここで、Ψは度における楕円率であり、dは光路長(mm)であり、cは濃度(mg/ml)である。)を用いて比楕円率に変換した。この方法において、初期溶解時間で得られた値とインキュベーション後に得られた値の間で起こったペプチド構造の変化を評価し得る。
【0173】
図1Aは、この試験で得られたCDスペクトルの幾つかを示す。インキュベーション後の20mM 酢酸緩衝液中のAβ 1−42のみ(図1A中のビークル)は、通常、多くのβ−シート構造を有するアミロイドタンパク質の典型的なCDスペクトルを示し、218nmで観察された最小値を示す。しかし、幾つかの化合物の存在下で、218nmで観察される最小値の減少(Aβ 1−42のみと比較)によって示される通り、Aβ 1−42原繊維中のβ−シート構造の著しい破壊(ランダムコイルまたはα−へリックスの著しい増大)が明らかであった。
【0174】
図1Bは、ポジティブコントロール化合物と比較して、Aβ 1−42原繊維形成のβシート構造の阻害に対する化合物1および2の効果を示す。CD試験により、アルツハイマー病Aβ原繊維のβ−シート構造特性を破壊/分解させる能力を有することが示された。試験結果はまた、チオフラビンT蛍光測定およびコンゴレッド結合型アッセイを用いた先の実施例を確認する。
【0175】
実施例7:本発明の化合物がパーキンソン病α−シヌクレイン原繊維または凝集物の強力な破壊剤である
本発明の試験化合物は、パーキンソン病α−シヌクレイン原繊維または凝集物の強力な破壊剤/阻害剤であることが見出された。α−シヌクレインは、37℃で数日間インキュベートしたとき、原繊維または凝集物を形成することが証明されている。α−シヌクレインは、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーの病因に重要な役割を果たすとみなされている。このセットの試験において、予め形成されたパーキンソン病α−シヌクレイン原繊維または凝集物を分解/破壊する本化合物の効力を分析した。
【0176】
パートA:チオフラビンT蛍光測定データ
1つの試験において、本化合物およびEDTA(ネガティブ・コントロール(−C)として)の効果を決定するために、チオフラビンT蛍光測定を用いた。このアッセイにおいて、チオフラビンTはα−シヌクレイン原繊維または凝集物に特異的に結合し、この結合により、存在するα−シヌクレイン原繊維または凝集物の量に正比例する485nmでの蛍光の増加が起こる。蛍光が強い程、存在するα−シヌクレイン原繊維または凝集物の量が多い(Naki et al, Lab. Invest. 65:104-110, 1991; Levine III, Protein Sci. 2:404-410, 1993; Amyloid: Int. J. Exp. Clin. Invest. 2:1-6, 1995)。
【0177】
この試験において、30μlのα−シヌクレイン(rPeptide)の1mg/ml溶液(蒸留水中)を37℃で1400rpmで4日間撹拌して先に原繊維化させ、続いて37℃で3日間単独でまたは化合物もしくはEDTAの存在下でインキュベートした(α−シヌクレイン:試験化合物(重量比)=1:1、1:0.1、1:0.01または1:0.001)。3日間のコ−インキュベーション後、50μlの各インキュベーション混合物を、150μlの蒸留水および50μlのチオフラビンT溶液(すなわち250mMのリン酸緩衝液(pH 6.8)中500mMのチオフラビンT)を含む96ウェル・マイクロタイタープレートに移した。ELISAプレート蛍光測定器を用いて、485nmでの蛍光の放出を測定し(励起波長444nm)、緩衝液のみまたは化合物のみをブランクとして引いた。
【0178】
3日間のインキュベーションの結果を図7にグラフで示す。例えばEDTAは、試験した濃度全てで、α−シヌクレイン原繊維または凝集物の有意な阻害を起こさなかったのに対し、本化合物は全て、予め形成されたα−シヌクレイン原繊維または凝集物の用量依存性の破壊/分解を様々な程度で起こした。例えば、α−シヌクレイン:化合物の比が1:0.01であるとき、ポジティブコントロール化合物(図7中+C)は有意(p<0.01)に77.4%阻害し、一方、他の試験化合物は、45〜83%の範囲であった。化合物1、4、5および6は、ポジティブコントロール化合物と非常に類似した結果を表した。この試験は、本発明の化合物が、パーキンソン病α−シヌクレイン原繊維または凝集物の強力な破壊剤/阻害剤であり、通常、用量依存でその効果を奏することを示した。
【0179】
パートB:コンゴレッド
コンゴレッド結合アッセイにおいて、試験化合物が、コンゴレッドへのα−シヌクレイン結合を変化させる能力を定量する。このアッセイにおいて、α−シヌクレイン(チオTアッセイで調製した通りに先に原繊維化させた)および試験化合物を3日間インキュベートし、次に0.2μm フィルターで減圧濾過した。コンゴレッドでフィルターを染色した後、フィルターに残ったα−シヌクレインの量を定量した。フィルターを適切に洗浄した後、試験化合物の存在下で、フィルター上のコンゴレッドの退色(試験化合物の非存在下でのアミロイド蛋白質のコンゴレッド染色と比較して)は、凝集したコンゴレッド親和性α−シヌクレインの量を減らす/変化させる、試験化合物の能力を示した。
【0180】
1つの試験において、化合物またはEDTAの非存在下または増大する量の存在下(α−シヌクレイン:化合物(重量比)=1:1、1:0.1、1:0.01または1:0.001)で、コンゴレッドに結合するα−シヌクレイン原繊維または凝集物の能力を測定した。3日間インキュベーションした結果を図8にグラフで示す。EDTA(−C)が、試験した濃度全てで、コンゴレッドへのα−シヌクレイン原繊維結合の有意な阻害を起こさなかったのに対して、試験した化合物は、コンゴレッドへのα−シヌクレイン結合を用量依存で阻害した。例えば、ポジティブコントロール化合物(+C)は、比(wt/wt)=1:1で、有意に(p<0.01)、α−シヌクレイン原繊維または凝集物へのコンゴレッドの結合を78.5%阻害する。試験された化合物全てについて同じ比で、阻害範囲が60〜100%であった。この試験は、本発明の化合物はまた、パーキンソン病型αシヌクレイン原繊維のコンゴレッドへの結合の強力な阻害剤であることを示し、通常、用量依存でその効果を奏することを示した。
【0181】
パートC:円二色性スペクトル
円二色性(CD)分光分析は、α−シヌクレインの二次構造コンホメーションに対する試験化合物の効果を決定するために用いられ得る方法である。α−シヌクレインモノマーの凝集物または原繊維への自己凝集が二次構造、すなわちβシート形成なしには起こり得ないことから、CD分光分析は、原繊維化または凝集プロセスを阻害する試験化合物の能力を測定するために用いられ得る。
【0182】
1つの試験において、本実施例に記載した通り、α−シヌクレインのβ−シート・コンホメーションに対する種々の本発明の化合物の効果を決定するために、円二色性分光分析を用いた。この試験のために、α−シヌクレイン(rPeptide Inc., Bogart, GA)を、9.5mM リン酸緩衝液(PBS)に溶解して1mg/mlとした。得られたストックを同じ緩衝液で希釈して、ペプチドの最終濃度が0.25mg/mlとなるように試験化合物またはビークルの何れかを加えて、α−シヌクレイン:化合物の比(wt/wt)を1:1および1:0.1とした。ビークル処置サンプルのCDスペクトルを測定した後、全てのサンプルを4日間インキュベーションし、その後、全てのα−シヌクレイン/化合物またはビークル反応液についてスペクトルを得た。CDスペクトルをJasco 810 spectropolarimeter (Easton, MD)で測定した。全てのCDスペクトルを0.10cmの石英セル中で測定した。波長トレースを、190〜270nmで、0.1nm増加で、バンド幅2nmで、スキャン速度50nm/分で、応答時間32秒で、データピッチ0.5nmでスキャンした。系全体を平衡化し、窒素を継続的に10L/分で吹き付けた。データを加工するために、ビークルを添加した緩衝液の10回のスペクトルをインキュベーション前に測定して平均値を求め、インキュベーション時間後の “α−シヌクレイン+試験化合物”またはビークルの10回のスペクトルの平均値から引いた。スペクトルの平均値を、その度の楕円率から、式:
[Ψ]=(Ψ/d)×c
(ここで、Ψは度における楕円率であり、dは光路長(mm)であり、cは濃度(mg/ml)である。)を用いて比楕円率に変換した。この方法において、初期溶解時間で得られた値とインキュベーション後に得られた値の間で起こったペプチド構造の変化を評価し得る。
【0183】
図2は、37℃で0日目と4日間のインキュベーション後に得られたCDスペクトルを示す。ビークル処置PBS緩衝液中のα−シヌクレインのみが0時間でランダムコイルの特徴を示し、4日間インキュベーションした後、多くのβ−シート構造を有するタンパク質に典型的な、218nmで最小値を示すCDスペクトルを示す。しかし、幾つかの化合物の存在下で、218nmで観察される最小値の強度の減少(α−シヌクレイン単独と比較して)を示すため、α−シヌクレインによるβ−シート構造の形成を著しく阻害することが明らかであった。
【0184】
図3Aは、この試験で得られた幾つかのCDスペクトルを示す。0時間でのα−シヌクレインは、ランダムコイルペプチドを示すスペクトルを生じ、100%阻害のコントロールデータを提供する。インキュベーション後、α−シヌクレインのスペクトルは、β−シート構造を予測させるものであり、より高次の凝集物が形成したことを示しており、0%阻害のコントロールデータを提供するために用いられる。コントロールに用いられるサンプルと試験化合物処置サンプルの間の定量的な関係を確実にするために、これらのサンプルはビークル処置される。これらの2つのスペクトルは、それぞれ100%原繊維および0%原繊維と仮定されるポジティブコントロールとネガティブコントロールを確立することにより、試験化合物処置サンプルにおける原繊維形成の%阻害の正確な定量を可能とする。これらのコントロールの%が積算値のみであるのにもかかわらず、低限が0〜5%阻害であって、上限が95〜100%であるという推測されるのに十分でない不確実性が存在する。同一のα−シヌクレインのストック溶液を用いて、等容積のアリコートに分けて、それに個別の試験化合物またはビークルを加え、定量の正確さを確実とするために平行処理をする各バッチの実行でコントロールが得られる。図3Aで示したスペクトルは、α−シヌクレイン:化合物の比が1:1(wt/wt)で得られたものである。これらのCDスペクトルは、本発明の化合物が、パーキンソン病α−シヌクレイン原繊維または凝集物に特徴的なβ−シート構造の形成を阻害する能力を有することを証明している。
【0185】
図3Bは、ポジティブコントロール化合物(+C)と比較した場合のα−シヌクレインのβ−シート構造の阻害に対する化合物の効果を示す。ポジティブコントロール(+C1)は開始時、0時間でのビークル処置スペクトルであり、一方、ネガティブコントロール(−C)は、4日間ビークル処置スペクトルである。
【0186】
図4Aは、この試験で得られた幾つかのCDスペクトルを示す。これらのスペクトルは図3Aで表したものと同じ方法で得られ、処理された。これらのスペクトルは、ビークル処置サンプルのスペクトルで見られたβ−シートの特徴がない。
【0187】
図4Bは、ポジティブコントロール化合物(+C)と比較した場合のα−シヌクレインのβ−シート構造の阻害に対する化合物の効果を示す。ポジティブコントロール(+C1)は、開始時、0時間でのビークル処置スペクトルであり、一方、ネガティブコントロール(−C)は4日間ビークル処置スペクトルである。
【0188】
この試験結果はまた、本発明の化合物が強力な抗α−シヌクレイン原繊維化剤であるというチオフラビンT蛍光測定およびコンゴレッド結合型アッセイを用いた先の実施例を確認するものである。
【0189】
実施例8:本発明の化合物はパーキンソン病に関連するα−シヌクレイン凝集物の強力な破壊剤/阻害剤である
パーキンソン病は、α−シヌクレインを主要成分とする、神経細胞内の不溶性凝集物、いわゆるレヴィー小体の蓄積によって特徴付けられる (Dauer et al., Neuron, 39:889-909, 2003を参照のこと。)。α−シヌクレインにおける常染色体優性変異が家族性パーキンソン病の原因のサブセットをもたらし、これらの変異がα−シヌクレイン凝集およびレヴィー小体形成の可能性を増大させるため、凝集したα−シヌクレインは、病因および疾患の進行に直接関与するとされている(Polymeropoulos et al., Science 276:1197-1199, 1997; Papadimitriou et al., Neurology 52:651-654, 1999)。構造試験により、細胞内のレヴィー小体ではβ−プリーツシート状二次構造を有する程度が大きいミスフォールドされたタンパク質の割合が大きいことが明らかとなった。パーキンソン病に関連するα−シヌクレイン凝集物の阻害/破壊における試験化合物の効力を決定するために、これらの試験を行った。
【0190】
従って、本化合物の治療可能性を試験するために、2種の細胞をベースとするアッセイを利用した。両方のアッセイにおいて、ミトコンドリア酸化ストレスおよびα−シヌクレイン凝集を誘発するためにロテノンを用いる。第1のアッセイは、α−シヌクレイン原繊維および凝集物を含むβ−シートを多く含む構造への、蛍光色素チオフラビンSの結合を利用する。従って、α−シヌクレイン凝集物の量を減少させる化合物の能力を試験するために、固定化した細胞のチオフラビンS陽性な染色の程度の定量的評価を用いる。第2のアッセイにおいて、生存細胞中の無傷な機能性ミトコンドリアに依存するXTT細胞毒性アッセイを用いて、細胞生存率を評価する。従って、ミトコンドリア毒性およびその結果生じるα−シヌクレイン凝集物蓄積に関連する生存率の減少を緩解させる化合物の能力を試験するために、XTT細胞毒性アッセイを用いる。他の方法で表すならば、XTT細胞毒性アッセイは、化合物の神経保護効果を測定するために用いる。これらの試験を、下記の実施例で表す。
【0191】
これらの試験を行うために、ヒトのα−シヌクレイン凝集物を実験的に誘発する細胞培養モデルを用いた。A53T変異ヒトα−シヌクレインで安定にトランスフェクトしたBE−M17ヒト神経芽腫細胞を得た。細胞培養試薬をGibco/Invitrogenから購入し、10% FBS、ペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および500μg/ml G418を添加したOPTIMEM中で、先に記載された通りに(Ostrerova-Golts et al., J. Neurosci., 20:6048-6054, 2000)、細胞を増殖させた。
【0192】
チオフラビンSは、一般的に、脳組織を含むインサイチュで(Vallet et al., Acta Neuropathol., 83:170-178, 1992)および培養細胞で(Ostrerova-Golts et al., J. Neurosci., 20:6048-6054, 2000)、アミロイドを含む構造を検出するために用いられ、一方、チオフラビンTは、しばしば、可溶性アミロイドタンパク質のβ−プリーツシート状構造に富化した原繊維への凝集を分析するためのin vitro試薬として用いられる (LeVine III, Prot. Sci., 2:404-410, 1993)。従って、先に記載された方法を少し修飾して(Ostrerova-Golts et al., J. Neurosci., 20:6048-6054, 2000)、培養細胞で酸化ストレス誘発剤(この場合はロテノン)に応答して形成されるβ−ひだ状構造を多く含む凝集物を検出するために、チオフラビンSの組織化学を用いた。簡単に言えば、これらの試験において、細胞をポリ−D−リジン被覆ガラススライドチャンバー上で、約3×10細胞/cm2で増殖させた。24時間後、示された通りに、500nM、1μMまたは5μMのロテノン(Sigma)またはビークル(0.05% DMSO)で細胞を処置した。ロテノン(またばビークル)を添加した直後に、ロテノン存在下で、化合物を示した濃度で加えるか、または細胞培養培地のみ(化合物なし)を加えた。同じ処置を48時間後に繰り返した。さらに48時間後、3% パラホルムアルデヒドで細胞を25分間固定化した。PBS洗浄後、細胞を、50% エタノール中0.015% チオフラビンSと共に25分間インキュベートした後、50% エタノール中で4分間2回、脱イオン水で5分間2回洗浄し、次いで光退色から保護することを意図された水をベースとするマウント剤(mountant)を用いてマウントした。チオフラビンSに結合する凝集物を、特記しない限りHigh Q FITC フィルターセット(480〜535nmのバンド幅)および20×対物レンズを用いて、蛍光顕微鏡写真で検出した。条件毎に8および16個の間の代表的な像を、処置条件について知らされていない実験者によって、選択し、画像化し、処理させた。チオフラビンSに陽性な凝集物の量を評価するために、チオフラビンSに陽性な封入体によって覆われた領域当たりの総面積を決定した。この目的のために、プリセットサイズまたはピクセル強度閾値変数を超えないバックグラウンド蛍光を、Q-capture ソフトウェアを用いて除いた。見かけの、非細胞関連蛍光を手動で除いた。特記しない限り、データは、グループの平均値±SEMを表す。統計学的分析をGraphPad Prism (GraphPad Inc)で行った。平均値(2つのサンプル)の間の相違は、スチューデントt検定によって評価した。多くの平均値間の相違は、一元配置ANOVA、次いでテューキーの多重比較検定によって評価した。
【0193】
チオフラビンSに結合した凝集物を定量的に検出するアッセイの能力を確認するために、A53T α−シヌクレインを過剰発現するBE−M17細胞の染色を行い、その結果により、ビークル処置コントロール細胞と比較してチオフラビンS陽性凝集物のロテノン用量依存性増大が明らかとなった(図9A〜D)。40×対物レンズで得られたより高倍率の画像は、チオフラビンS陽性凝集物が細胞内および細胞質に存在し(図9D)、それがパーキンソン病に関連する病理学的特徴である細胞質内レヴィー小体の蓄積と類似していることを示した。チオフラビンS陽性凝集物によって覆われた領域の定量により、5μMのロテノンが強固な凝集を誘発するのに十分であり(図9E)、従って、これらの凝集物の形成を減少させる化合物の能力を試験するのに有効な用量であることが確認された。
【0194】
上記のプロトコルを用いて、A53T α−シヌクレインを過剰発現するロテノン処理BE−M17細胞において、チオフラビンS陽性凝集物を減少させ、予防し、除去する能力について、化合物を試験した。これらの化合物を用いた実験で得られた結果の例を下に記載する。
【0195】
1μMのロテノンのみで処置した細胞において、チオフラビンS陽性凝集物が存在した(図10A)。500ng/ml(図10B)または1μg/ml(図10C)のポジティブコントロール化合物の添加により、これらのロテノン誘発凝集物は、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、それぞれ87%および91%まで、著しく減少した(図10Dに示した通り)。従って、ポジティブコントロール化合物は、ヒトのA53T α−シヌクレインを発現する細胞において、チオフラビンS陽性凝集物の減少、予防および/または除去に非常に有効である。
【0196】
500ng/mlから2μg/mlまで(図11B〜D)の化合物1の添加により、ロテノンのみで処置した細胞と比べてロテノン誘発凝集物の量は減少しなかった(図11DおよびE)。
【0197】
図12に示した通り、1μMのロテノンで処置した細胞において、500ng/mlおよび2μg/mlの化合物2の添加により、ロテノン誘発凝集物の量は39〜44%まで減少し、5μMのロテノンで処置した細胞において、1μg/mlの化合物2の添加により、ロテノン誘発凝集物の量は著しく67%まで減少した(図12E)。
【0198】
図13A〜Eは、化合物3の効果を示す。1μMのロテノンで処置した細胞において、500ng/mlから2μg/mlまでの化合物3の添加により、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は41〜63%まで減少した。
【0199】
500ng/mlから2μg/mlまでの化合物4の添加により、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は減少しなかった(図14A〜E)。
【0200】
図15A〜Eは、化合物5の効果を示す。1μMのロテノンで処置した細胞において、1〜2μg/mlの化合物3の添加により、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は25〜49%まで減少した。
【0201】
化合物6の添加は、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量に有意な効果を有しなかった(図16A〜E)。
【0202】
500ng/mlおよび2μg/mlの化合物7の添加により、1μMのロテノンで処置した細胞において、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は、それぞれ60%および74%まで著しく減少した。5μMのロテノンで処置した細胞において、500ng/mlおよび2μg/mlの化合物7の添加により、ロテノン誘発凝集物の量は、それぞれ31%および67%まで減少した(図17A〜E)。
【0203】
図18A〜Eは、化合物8の効果を示す。1μMのロテノンで処置した細胞において、1μg/mlの化合物8の添加により、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は56%まで減少した。5μMのロテノンで処置した細胞において、1μg/mlまたは2μg/mlの化合物8の添加により、ロテノン誘発凝集物の量はそれぞれ48%および38%まで減少した。
【0204】
500ng/mlから2μg/mlまでの化合物9の添加により、1μMのロテノンで処置した細胞において、ロテノンのみで処置した細胞と比べて、ロテノン誘発凝集物の量は19%から60%まで減少した(図19A〜E)。5μMのロテノンで処置した細胞において、このロテノン投与量で予測されるよりもベースラインの染色が低かったが、化合物9の添加によってロテノン誘発凝集物の量は減少しなかった。
【0205】
結論として、試験した多くの化合物は、特に化合物2、3、5、7、8および9は、A53T α−シヌクレイン発現BE−M17細胞において、α−シヌクレイン凝集物の形成、堆積および/または蓄積を、有効に、かつ強力に、減少させ、予防し、阻害し、および/または除去する。
【0206】
実施例9:本発明の化合物がロテノン誘発細胞毒性から保護する
XTT細胞毒性アッセイ(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)は、A53T α−シヌクレインが酸化ストレス依存性メカニズムを介して、BE−M17細胞における細胞死を増加させることを証明するために、先に用いられたものである(Ostrerova-Golts et al., J. Neurosci., 20:6048-6054, 2000)。研究により、α−シヌクレインのレヴィー小体への蓄積は、パーキンソン病および関連の障害における神経変性に機構的に寄与することが示された (Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997; Kruger et al., Nature Genet. 18:106 108, 1998)。ここで、ロテノン誘発細胞毒性から保護する試験化合物の能力(神経保護能力)を測定するために、XTT細胞毒性アッセイ(以後XTTアッセイと称する)を用いた。このアッセイは、代謝活性な生存細胞のみで、黄色のテトラゾリウム塩XTTの橙色ホルマザン色素(490nm付近で光を吸収する)への変換が起こるという原理に基づいている。従って、490nmでの吸光度は、細胞生存率に比例する。このアッセイにおいて、細胞をウェル当たり10細胞で96ウェル組織培養皿に播いた。24時間後、示された通りに、細胞を500nMまたは2μMのロテノンまたはビークル(0.05% DMSO)で処置した。ロテノン添加直後に、化合物を示された濃度で加えた。コントロールとして、化合物をロテノンなしで加え(ビークルのみ, 0.05% DMSO)、試験された投与量で毒性なしという結果を得た。非処置細胞には、細胞培養培地のみを与えた(化合物なし、ロテノン有りまたは無し)。40〜44時間処置後、馴化培地を除去し、製造者の推奨に従って、100μlの新しい培地および50μlのXTT標識反応混合物と置き換えた。5〜6時間後、490nmの吸光度を測定し、700nmの参照波長の吸光度で補正した。500nMおよび2μMのロテノンでの処置により、ロテノンなしの非処置細胞と比べて、通常、35〜45%まで生存率が減少した(図20)。試験化合物処置によって除かれたロテノン誘発吸光度(生存率)減少の割合として、細胞死の%阻害を計算した。
【0207】
10〜25μg/mlのポジティブコントロール化合物による処置は、両方のロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を25〜33%まで阻害する(図21)。
【0208】
各化合物で実験を行い、その結果を図22〜30に示す。図22〜30のパネルAは、化合物の毒性をグラフに示し、一方、図22〜30のパネルBは、両方のロテノン投与量で測定された、ロテノン誘発生存率減少の化合物による阻害を示す。
【0209】
10μg/mlの化合物1による処置は、この化合物が非毒性であることを示すが、それより多い投与量では幾らかの毒性を示した(図22A)。10μg/mlの化合物1による処置は、両方のロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を約18〜27%まで阻害した(図22B)。
【0210】
10〜25μg/mlの化合物2による処置はこの化合物が非毒性であることを示すが、50μg/mlの投与量で幾らかの毒性を示した(図23A)。25μg/mlの化合物2による処置は、両方のロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を約20〜28%まで阻害した(図23B)。
【0211】
10〜50μg/mlの化合物3による処置はこの化合物が全ての試験された投与量で比較的非毒性であることを示している(図24A)。10〜50μg/mlの化合物3による処置は、両方のロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を約17〜28%まで阻害した(図24B)。
【0212】
10および25μg/mlの化合物4による処置は、この化合物が非毒性であることを示すが、50μg/mlの投与量で僅かな毒性を示した(図25A)。25μg/mlの化合物4による処置が特に有効であり、500nMのロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を約50%まで阻害し、一方、2μMでは、観察された阻害は約26%であった(図25B)。
【0213】
10μg/mlまたは25μg/mlの化合物5による処置は、この化合物が非毒性であることを示すが、50μg/mlでは僅かな毒性を示した(図26A)。化合物5による処置は、何れのロテノン投与量でもロテノン誘発生存率減少の阻害を全く起こさなかった(図26B)。
【0214】
10〜50μg/mlの化合物6による処置は、この化合物が試験された全ての投与量で非毒性であることを示す(図27A)。50μg/mlの化合物6による処置は、500nMのロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を約10%まで阻害したが、2μMのロテノンでは、観察された阻害は、試験された化合物の全投与量について、約12〜16%であった(図27B)。
【0215】
1〜50μg/mlの化合物7による処置は、この化合物が非毒性であることを示し、より多い投与量(100〜150μg/ml)でさえ、非常に僅かな毒性を示すのみであった(図28A)。50μg/mlの化合物7による処置は、500nMのロテノン投与量で、ロテノン誘発生存率減少を最大で約25%の阻害を示した(図28B)。
【0216】
10〜25μg/mlの化合物8による処置は、この化合物が比較的非毒性であることを示す(図29A)。50μg/mlで幾らか低い毒性にもかかわらず、本化合物は、明らかに、高いロテノン毒性から幾らか保護する。この結論は、形態学的解析(示さず)によって支持される。50μg/mlの化合物8による処置は、2μMのロテノンで、ロテノン誘発細胞生存率減少を約18%まで阻害されることを示した(図29B)。
【0217】
10〜25μg/mlの化合物9による処置は、この化合物が比較的非毒性であることを示し、一方、より多い投与量では幾らかの毒性を示した(図30A)。化合物9による処置は、ロテノン投与量の何れでも、ロテノン誘発生存率減少の認められる阻害を全く起こさなかった(図30B)。
【0218】
結論として、試験された多くの化合物は、ロテノン誘発細胞毒性を阻害するのに効力があり、このことは、α−シヌクレイン毒性からの神経保護活性を証明している。
【0219】
実施例10:本発明の化合物で処置されたα−シヌクレイントランスジェニックマウスの改善された運動能力
パーキンソン病関連マウスモデルにおいて、化合物の可能性のある効力を評価するために、マウスのThy−1プロモーターの制御下で野生型ヒトα−シヌクレインを過剰発現するトランスジェニックマウス(Rockenstein E, et al., 2002. J Neurosci Res 68:568-578)を用いた。ヒトα−シヌクレイントランスジェニックマウスは、パーキンソン病についての有用なモデルであることが証明されており、従って、以下の幾つかの理由について、潜在的な治療薬を試験するのに適当な系である:(1)α−シヌクレイン凝集物の存在が、免疫組織化学的方法(染色)および生化学的方法(ウェスタンブロット)の双方によって検出可能である。これらの凝集物は、パーキンソン病の病理学的特徴であるレヴィー小体(主にα−シヌクレインからなる細胞内封入体)に類似している(Rockenstein E, et al., 2002. J. Neurosci. Res. 68:568-578 and Hashimoto M, et al., 2003 Ann N Y Acad Sci 991:171-188);(2)マウスは、線条体中のチロシン・ヒドロキシラーゼ免疫反応性神経突起の喪失によって示される、黒質線条体経路におけるドーパミン欠損を経験する(Hashimoto M, et al., 2003 Ann N Y Acad Sci 991:171-188)。この欠損はまた、ヒトのPD患者においても見られる;(3)マウスは、梁横断試験などの運動機能依存性行動試験において、運動緩慢、平衡および協調の喪失、および、筋肉弱体化を含む機能不全を示す(Fleming SM, et al., 2004 J Neurosci 24:9434-9440 and Fleming SM, et al.,2006 Neuroscience 142:1245-1253)。
【0220】
同様の運動機能不全がヒトPD患者において見られる。運動能力を改善するか機能不全を最少化する可能性のある化合物の効力を評価するために、処置前0月目、処置3月目および6月目に、化合物処置マウスおよびビークル処置マウスで、挑戦的梁横断試験を行った。化合物が有効であったならば、これらの化合物を投与されたマウスは、同じ齢のビークル処置マウスより良い運動能力を示すか、および/または試験化合物処置が示したグループ内での年齢依存性運動能力減少を寛解させると予測される。例えば、試験化合物が有効であったならば、化合物処置マウスは、ビークル処置マウスよりも速く梁を横断すると予測される。あるいは、グループ内の年齢依存性機能障害が減少する(例えば化合物処置後の運動能力が処置前の運動能力と同様であるか、または、より良くなるが、ビークル処置マウスは同じ時間で段々と悪くなる)。
【0221】
梁横断試験
運動能力の測定法の1つである梁横断試験において、マウスを、各サイドに取り付けた支持梁を有し、動物のホームケージに繋がる狭い梁を横断するよう、1日5回、2日間訓練する。3日目に、梁の表面に網状格子を置き、網目と梁の表面の間を約1cmの狭い空間とすることによって、試験をより挑戦的にする。5回の試験の間、動物をビデオ録画し、横断時間、かかる歩数およびスリップの回数を、薬物処置について知らされていない調査者によって記録する(Fleming SM, et al., 2006. Neuroscience 142:1245-1253)。
【0222】
化合物2を3月間投与されたトランスジェニックマウスは、ビークル処置された月齢の一致した(15月齢)コントロールマウスと比べて、顕著かつ有意な49%の改善を示した(図31)。しかし、6月間の処置後は、この月齢のビークル処置マウスと同様の運動能力であった(図31)。総合すると、これらのデータは、化合物2は、梁横断試験において、運動機能不全の開始を遅らせることを示している。
【0223】
化合物7を6月間投与されたトランスジェニックマウスは、ビークル処置された月齢の一致した(15月齢)コントロールマウスと比べて、顕著かつ有意な35%の改善を示した(図31)。さらに、化合物7で3月間のみ処置した後でも、ビークル処置コントロールと比べて運動能力が39%改善した(図31)。総合すると、これらのデータは、化合物7の処置が、梁横断試験において、年齢依存性の機能不全の進行を予防することを示している。
【0224】
実施例11:本発明の化合物で処置されたα−シヌクレイントランスジェニックマウスの改善された運動能力
ポール試験において化合物の潜在的な効力を評価するために、化合物処置マウスおよびビークル処置マウスを、処置前(0月目)、処置3月目および6月目に評価した。トランスジェニックマウスは、上記の実施例10に記載されたものであり、1日1回、50mg/kg/日で腹腔内注射をした。梁横断試験において潜在的な効力を評価するために、化合物処置マウスおよびビークル処置マウスを処置5〜6週で評価した。化合物が有効であったならば、試験化合物を投与されたマウスは、同じ月齢のビークル処置マウスより良い挙動をし、そして/または試験化合物処置が示したグループ内で時間経過による運動機能不全を寛解させる(運動能力の改善)と予測される。例えば、試験化合物が有効であったならば、化合物処置マウスは、ビークル処置マウスと比べて、梁をより速く横断すると予測される。あるいは、時間経過によるグループ内の運動機能不全を改善する(例えば化合物処置後の挙動が化合物処置前より良く、一方、同じ時間経過で、ビークル処置マウスは、同様の挙動であるかまたは段々と悪くなる)と予測される。
【0225】
A) ポール試験
運動能力の測定法の1つであるポール試験において、1日目に、ポールの頂点に上向きに置いた後、木製のポールを降りるように、マウスを訓練する(2回)。2日目に、マウスを5回試験して、下向きになる時間(回転時間)、降りる時間(移動時間)およびポール上に居る時間の総計を、薬物処置について知らされていない調査者によって記録する。
【0226】
化合物7を3月間投与されたトランスジェニックマウス(n=11)(15月齢)は、ポール試験において、処置前の運動能力と比べて、運動能力改善(回転時間減少)の傾向を示した。化合物7による6月間の処置後(n=11)、マウス(18月齢)は、ポール試験において、処置前の運動能力と比べて、著しい41%の改善を示し、その運動能力は、16月齢の非遺伝子組み換えマウスと同様であった(図32)。対照的に、ビークル処置マウスの運動能力は、処置3月目および6月目で、処置前の運動能力と同程度であった。これらの結果は、化合物7がポール試験において運動能力を改善することを示している。
【0227】
B) より若いトランスジェニックマウスにおける梁横断試験
化合物7(またはビークルコントロール)で6週間処置した、より若い(3月齢)α−シヌクレイントランスジェニックマウス(グループ当たりn=8)において運動能力を測定するために、少し修飾した梁横断試験(3日間に代えて2日間とする)を用いた。マウスを1日目に6回、各サイドに取り付けた支持梁を有し、動物のホームケージに繋がる狭い梁(4個の部分に分離している)を横断するよう訓練する。2日目に、梁の表面に網状格子を置き、網目と梁の表面の間を約1cmの狭い空間とすることによって、より大きな負荷をかけて試験を行う。5回の試験の間、マウスをビデオ録画し、横断時間、かかる歩数およびスリップの回数を、薬物処置について知らされていない調査者によって記録する(Fleming SM, et al., 2006. Neuroscience 142:1245-1253)。
【0228】
化合物7を6週間投与したトランスジェニックマウスは、ビークル処置された月齢の一致した(4〜5月齢)コントロールマウスと比べて、著しい36%の改善(梁横断時間)を示した(図33)。かかる歩数または歩数に対するスリップ回数(過ちの割合)については、有意な効果はなかった。総合すると、これらの結果は、化合物7が梁横断試験において運動能力を改善することを示している。
【0229】
実施例12:α−シヌクレイントランスジェニックマウスの脳におけるα−シヌクレイン陽性な神経細胞内免疫染色の減少
化合物7の処置が、老齢α−シヌクレイントランスジェニックマウス(上記)においてα−シヌクレインレベルを減少させるかどうかを測定するために、α−シヌクレイン免疫染色および画像解析を行った。非特異的抗体結合をブロックした後、マウスの脳の切片をヒトα−シヌクレインに対するウサギのポリクローナル抗体(Chemicon AB5038P; 1:500希釈)と共に、4℃で一夜インキュベートした。2日目に、リン酸緩衝食塩水(PBS)で濯いだ後、切片をビオチン化二次抗体(ヤギ抗ウサギ, VectorLabs)と共に、1:200希釈で、室温で1時間インキュベートした。PBSで濯いだ後、切片をVector labs アビジン−ビオチン複合体(ABC)と共に、室温で30分間インキュベートした。切片をPBSで3回濯ぎ、Vector DAB中で4分間反応させた(製造者の推奨に従って)。トリス緩衝液で濯ぐことによってDABの反応をクエンチした。切片を装填したスライドにマウントし、一夜乾燥させた。スライドにカバーガラスをして撮像した。
【0230】
画像分析および定量のために、解剖学的に平衡化したマウスの間で、皮質の3つの画像をQ-Image デジタルカメラおよびQ-Capture ソフトウェアでデジタル化した(拡大率100×)。Image-Pro ソフトウェアを用いて各像を処理した。予め決定したピクセル色区分閾値および最小対象領域を各像に適用した。画像化の人為的結果を除き、α−シヌクレイン陽性な免疫標識された対象が占める%面積を決定するために、データをエクスポートして処理した。
【0231】
マウスを、12月齢から18月齢まで、1日1回、50mg/kg/日の腹腔内注射で6月間処置した。図34は、化合物7で処置したマウス(パネルC〜D)では、ビークル処置マウス(パネルA〜B)と比較して、前頭の皮質中の神経細胞内ヒトα−シヌクレインが著しく減少したことを示している。非遺伝子組み換え野生型マウスの脳は、ヒトα−シヌクレイン染色が全く見られず、導入遺伝子誘発ヒトα−シヌクレインのための抗体特異性についてのコントロールとして示されている(EおよびF)。画像解析および定量により、化合物7の処置がα−シヌクレイン陽性な対象物の著しい81%の減少を起こすことが明らかとなった。
【0232】
化合物7の6月間の処置は、ビークル処置コントロールと比べて、ヒトα−シヌクレイントランスジェニックマウスの前頭皮質中のα−シヌクレインレベルを劇的に減少させる。このデータは、本発明の化合物で6月間処置したトランスジェニックマウスにおいて、運動能力の改善が示されたという我々のデータとよく相関している。
【0233】
実施例13:α−シヌクレイントランスジェニックマウスの脳中のα−シヌクレインレベルの減少
18月齢および4〜5月齢のトランスジェニック(上記)および非トランスジェニックマウスの双方から得た前脳領域の粒子状フラクション(膜)およびサイトゾルフラクションの双方におけるα−シヌクレインの濃度を分析するために、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびウェスタンブロッティングを用いた。双方のフラクションは、潜在的に、SDS−PAGE還元条件下で、ほとんどモノマーに還元される凝集α−シヌクレインの病理学的蓄積を含む。
【0234】
6月間の化合物処置(動物が18月齢であった場合)または6週間の化合物処置(動物が4〜5月齢であった場合)の後にα−シヌクレイントランスジェニックマウスを屠殺した後、脳を取り、正中線に沿って二分した(上記の処置レジメ)。両方の月齢のビークル処置コントロールを同様に処理した。右側の半脳を頭中線に沿って二分して、前脳部分と後脳部分を得た。二分した半脳をドライアイス/エタノール浴で瞬間凍結し、−80℃で保存した。不溶性の粒子状物質(膜)から可溶性のサイトゾルフラクションを分離するために、脳を生化学分画にかけた。簡単に言えば、脳を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Calbiochem)を加えた9容積のHEPES緩衝液(界面活性剤なし)中でホモジナイズした。溶解の間にα−シヌクレイン/膜の相互作用の破壊を最少にするために、穏やかなホモジナイゼーションを、適合ガラスホモジナイザー(Kontes #19)中のテフロン乳棒で、容易に行った。次いで、全細胞ライセートを低速で遠心分離して、壊れていない細胞および細胞小器官(例えば核)をペレット(P1)にした。膜をペレット(P2)にするために(このフラクションはミトコンドリアなどの細胞小器官を含んでもよい)、上清(S1)を225,000×gで4℃で1時間遠心分離した。その上清(S2)が“サイトゾル”フラクションであった。2.5容積のホモジナイゼーション緩衝液をピペットで入れることによってペレット(P2)を再度懸濁し、氷上で5×1秒超音波処理し、それを“粒子状”または“膜”フラクションとした。総タンパク質濃度をMicroBCAアッセイ(Pierce)によって決定した。レーン毎に等量のタンパク質(25μg)についてSDS−PAGE(Bio-Rad Criterion, 4〜12% ビス−トリスゲル, ゲル当たり26ウェル)を行い、ニトロセルロース(BioRad)に移した。ブロットに亘って一致した移動能率を、ポンソーS色素による可逆的な染色および平台スキャナーでの撮像によって確認した。脱染色したブロットをブロックし、精製ウサギポリクローナル抗体AB5038P (Chemicon)で、次に抗ウサギIgG/HRP二次抗体(Abcam)およびSuperSignal West Pico化学発光基質(Pierce)でプローブし、α−シヌクレインを検出した。ウェスタンブロットでのα−シヌクレインについてのAB5038P抗体の特異性は、50倍モル過剰の精製ヒトα−シヌクレインと共に抗体を予め吸着させ、25kDaで移動するバンドを除いて全てのシグナルが消失していたことによって確認した(図中に25kDaの非特異的バンドを表した)。
【0235】
動物を、12月齢から18月齢まで、1日1回、50mg/kg/日の腹腔内注射で6月間処置した。化合物7は、ビークル処置マウスと比べて、粒子状フラクション中のα−シヌクレインレベルを著しく69%まで減少させ(図35)、サイトゾルフラクション中のα−シヌクレインレベルを著しく73%まで減少させた(図36)。これらのコホートが性別が混じっていた(通常グループ当たり2匹がオス)ため、そしてα−シヌクレインレベルにおいて性別関連可変性が見られる場合があるため、我々は、メスのみを別に分析した。重要なことは、化合物7は、メスのみで分析した場合に、粒子状フラクション中のα−シヌクレインレベルを著しく58%まで減少させ(図35)、サイトゾルフラクション中48%まで減少させた(図36)。
【0236】
本化合物が、より短い時間で処置されたより若い動物において、同様にα−シヌクレインの減少をもたらすかどうかを試験するために、化合物(またはビークル)を、メスのマウスのみに、1日1回、50mg/kg/日の腹腔内注射を、約3月齢から約4〜5月齢まで6週間投与した。化合物7の処置は、ビークル処置マウスと比べて、粒子状フラクション中のα−シヌクレインレベルを著しく45%まで減少させ(図37)、サイトゾルフラクション中のα−シヌクレインレベルを著しく71%まで減少させた(図38)。後脳部分(小脳部分を除く)を分析した場合に、化合物7の処置による同様のα−シヌクレインレベルの減少(ビークル処置コントロールと比べて)が見られた(データ示さず)。
【0237】
総合すると、これらの結果は、α−シヌクレイン凝集物を破壊するまたは減少させることによって、化合物処置は、排泄のための良好な基質である可溶性α−シヌクレインの形態(モノマーを含む)をより多くもたらし得ることを示唆している。
【0238】
実施例14:本発明の化合物の組成物
本発明の化合物は、前述のように、医薬組成物の形態で投与されることが望ましい。適当な医薬組成物およびその製造方法は、当業者に周知であり、そして Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, ed., 20th edition, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA などの論文に記載されている。
代表的な組成物は下記の通りである。
【0239】
経口錠剤製剤
本発明の化合物の経口錠剤製剤を下記の通り製造する。
【表1】

【0240】
該成分を均一に混合し、次に水の助けを借りて顆粒にして、顆粒を乾燥する。次いで、乾燥させた顆粒を、適当な用量の本化合物を与える大きさの錠剤に打錠する。所望によりフィルム形成剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、顔料(例えば二酸化チタン)および可塑剤(例えばフタル酸ジエチル)の懸濁液を適用して、溶媒の蒸発によりフィルムを乾燥することによって、錠剤をコートする。フィルム・コートは、例えば錠剤重量の2〜6%を構成し得る。
【0241】
経口カプセル製剤
本実施例の前の章の顆粒を、意図された用量に適当な大きさの硬ゼラチンカプセルに充填する。カプセル剤は、望ましいならば封をするためにバンドを付ける。
【0242】
ソフトゲル製剤
ソフトゲル製剤は、下記のように製造される。
【表2】

本化合物を、必要であれば粘稠化剤を加えたポリエチレングリコールに、溶解または分散する。次いで、望ましい用量の本化合物を与えるのに十分な量の製剤を、ソフトゲルに充填する。
【0243】
非経腸製剤
非経腸製剤を下記の通り製造する。
【表3】

本化合物を食塩水に溶解し、得られた溶液を滅菌処理し、バイアル、アンプルに充填するか、適切な場合はシリンジに予め充填する。
【0244】
制御放出経口製剤
徐放剤を、米国特許第4,710,384号の方法によって、下記の通り製造し得る。
1kgの本発明の化合物を、modified Uni-Glatt powder coater 中で、Dow Type 10 エチルセルロースでコートする。スプレー溶液は、90%アセトン−10%エタノール中のエチルセルロースの8%溶液である。ひまし油を可塑剤として存在するエチルセルロースの20%の量で加える。スプレー条件は、下記の通りである。1)スピード 1L/時;2)フラップ 10〜15%;3)入口温度 50℃;4)出口温度 30℃;5)コーティングのパーセント 17%。コートされた化合物は、74〜210ミクロンの間の粒子サイズで篩過される。該範囲内の異なるサイズの粒子の良好な混合を保証するように注意する。400mgのコートされた粒子を、100mgの澱粉と混合し、混合物をハンド・プレスで、1.5トンで打錠し、500mgの制御放出錠剤を得る。
【0245】
本発明は、本明細書中に記載された具体的な態様による範囲に限定されない。実際、記載された事に加えて、本発明の様々な修飾は、前述の記載から当業者に明らかである。該修飾は、添付の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。様々な文献が、本明細書中で引用されており、その開示は言及することによってその全体が組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは、独立して位置するヒドロキシル基であり;
Rは、イミダゾール、トリアゾールおよびピラゾールからなる群から選択されるヘテロアリールである。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物。
【請求項2】
Rがイミダゾールである、請求項1に記載された化合物。
【請求項3】
Rがトリアゾールである、請求項1に記載された化合物。
【請求項4】
Rがピラゾールである、請求項1に記載された化合物。
【請求項5】
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)イミダゾール;
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール;
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)ピラゾール;
およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載された化合物。
【請求項6】
請求項1に記載された化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
Aβアミロイドまたはα−シヌクレイン凝集物の形成、堆積、蓄積または残留を阻害する方法であって、有効量の請求項1に記載された化合物で凝集物を処置することを含む方法。
【請求項8】
化合物が、
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−イミダゾール、
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−ピラゾール、
およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項7に記載された方法。
【請求項9】
β−アミロイド疾患またはシヌクレイノパチーに罹患している哺乳動物においてβ−アミロイド疾患またはシヌクレイノパチーを処置する方法であって、治療有効量の請求項1に記載された化合物を投与することを含む方法。
【請求項10】
β−アミロイド疾患が、アルツハイマー病、ダウン症、Dutch型アミロイド症を伴う遺伝性脳溢血、および脳β−アミロイド血管障害からなる群から選択される、請求項9に記載された方法。
【請求項11】
β−アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項10に記載された方法。
【請求項12】
シヌクレイノパチーが、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レヴィー小体疾患、レヴィー小体型のアルツハイマー病、レヴィー小体認知症、多系統萎縮症およびグアムのパーキンソン認知症からなる群から選択される、請求項9に記載された方法。
【請求項13】
シヌクレイノパチーがパーキンソン病である、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
化合物が、
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−イミダゾール、
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−ピラゾール、
およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項9に記載された方法。
【請求項15】
シヌクレイノパチーに罹患している哺乳動物において、運動能力を改善する方法であって、治療有効量の請求項1に記載された化合物を投与することを含む方法。
【請求項16】
パーキンソン病に罹患している哺乳動物において、運動機能不全の進行を阻止する方法であって、治療有効量の請求項1に記載された化合物を投与することを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2012−504617(P2012−504617A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530077(P2011−530077)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048855
【国際公開番号】WO2010/039308
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502234824)プロテオテック・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】PROTEOTECH, INC.
【Fターム(参考)】