説明

β2アドレナリン受容体アゴニストおよびムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有するジアルキルフェニル化合物

本発明は、式I(式中、RおよびRは明細書に記載の通り)の化合物、あるいはその医薬として許容される塩または溶媒和物または立体異性体に関する。本発明はまた、このような化合物を含む医薬組成物および組合せ、このような化合物を調製するための方法および中間体、ならびに例えば慢性閉塞性肺疾患および喘息などの肺障害を治療するためのこのような化合物を使用する方法にも関する。一つの実施形態において、本発明は、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する新規なジアルキルフェニル化合物を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、βアドレナリン受容体アゴニストおよびムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有する新規なジアルキルフェニル化合物に関する。本発明はまた、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物を調製するための方法および中間体、ならびにこのような化合物を例えば肺障害を治療するために使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(先行技術)
喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺障害は、気管支拡張剤で通常治療する。肺障害を治療するために使用される気管支拡張剤の1タイプは、アルブテロール、ホルモテロールおよびサルメテロールなどのβアドレナリン受容体(アドレノセプター)アゴニストから構成される。これらの化合物は、一般に吸入によって投与される。気管支拡張剤の他のタイプは、イプラトロピウムおよびチオトロピウムなどのムスカリン受容体アンタゴニスト(抗コリン化合物)から構成される。これらの化合物もまた、典型的には吸入によって投与される。
【0003】
βアドレナリン受容体アゴニストとムスカリン受容体アンタゴニストとの組合せを含有する医薬組成物は、肺障害の治療に使用するために当技術分野において公知である。例えば、2002年8月13日に発行された特許文献1には、臭化チオトロピウムなどのムスカリン受容体アンタゴニスト、およびフマル酸ホルモテロールなどのβアドレナリン受容体アゴニストを含有する医薬組成物が開示されている。
【0004】
さらに、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する化合物が、当技術分野において公知である。例えば、2006年11月28日に発行された特許文献2には、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有するビフェニル化合物が開示されている。βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する化合物は、このような化合物が単一分子の薬物動態を有する一方、2つの独立した作用機序によって気管支拡張を実現するため非常に望ましい。
【0005】
肺障害を治療するときに、吸入によって投与する場合、患者が治療剤を1日1回またはそれ未満で投与するのみでよいように、長時間作用性、すなわち少なくとも約24時間の持続時間を有する治療剤を提供することが特に有用である。当技術分野で以前に開示されているすべての2通りに作用する化合物は、この望ましい特徴を有さない。
【特許文献1】米国特許第6,433,027号明細書
【特許文献2】米国特許第7,141,671号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、吸入によって患者に投与する場合長時間作用性を有する、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する新規な化合物への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する新規なジアルキルフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、吸入によって哺乳動物に投与する場合、他の特徴の中でも長時間作用性、すなわち少なくとも約24時間の持続時間を有することが見出された。したがって、本発明の化合物は、肺障害を治療するための治療剤として有用および有効であることが見込まれる。
【0008】
したがって、その組成物の態様の1つでは、本発明は、式I
【0009】
【化11】

(式中、Rはメチルまたはエチルであり、Rはメチルまたはエチルである)の化合物、あるいはその医薬として許容される塩または溶媒和物または立体異性体に関する。
【0010】
本発明の特定の態様では、式Iの化合物は、式II
【0011】
【化12】

(式中、RおよびRは、(任意の特定のまたは好ましい実施形態を含めて)本明細書に記載されている通りである)を有する化合物、あるいは医薬として許容されるその塩または溶媒和物である。
【0012】
その組成物の態様のその他では、本発明は、医薬として許容される担体および式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0013】
所望であれば、本発明の化合物は、ステロイド性抗炎症剤などの他の治療剤と組み合わせて投与することができる。したがって、その組成物の態様のその他では、本発明は、(a)式Iの化合物と、(b)第2の治療剤とを含む医薬組成物に関する。その組成物の態様のその他では、本発明は、(a)式Iの化合物と、(b)第2の治療剤と、(c)医薬として許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0014】
その組成物の態様のまたその他では、本発明は、治療剤の組合せに関し、その組合せは、(a)式Iの化合物と、(b)第2の治療剤とを含む。その組成物の態様のその他では、本発明は、医薬組成物の組合せに関し、この組合せは、(a)式Iの化合物および第1の医薬として許容される担体を含む第1の医薬組成物と、(b)第2の治療剤および第2の医薬として許容される担体を含む第2の医薬組成物とを含む。本発明はまた、このような医薬組成物を含有するキットにも関する。
【0015】
本発明の化合物は、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する。したがって、式Iの化合物は、喘息および慢性閉塞性肺疾患などの肺障害を治療するための治療剤として有用であることが見込まれる。
【0016】
したがって、その方法の態様の1つでは、本発明は、肺障害を治療するための方法に関し、この方法は、治療を必要としている患者に式Iの化合物の治療有効量を投与するステップを含む。本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患または喘息を治療する方法にも関し、この方法は、患者に式Iの化合物の治療有効量を投与するステップを含む。さらに、その方法の態様のその他では、本発明は、哺乳動物において気管支拡張を生じさせる方法に関し、この方法は、哺乳動物に式Iの化合物の気管支拡張を生じさせる量を投与するステップを含む。本発明はまた、哺乳動物においてムスカリン受容体をアンタゴナイズし、かつβアドレナリン受容体をアゴナイズする方法にも関し、この方法は、哺乳動物に式Iの化合物を投与するステップを含む。
【0017】
本発明の化合物は、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有するので、このような化合物は、研究道具としてもまた有用である。したがって、その方法の態様のまたその他では、本発明は、式Iの化合物を研究道具として使用する方法に関し、この方法は、式Iの化合物を使用した生物学的アッセイを行うステップを含む。
【0018】
本発明の化合物は、新規な化合物を評価するためにも使用することができる。したがって、その方法の態様のその他では、本発明は、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価する方法に関し、この方法は、(a)試験化合物で生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)式Iの化合物で生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を提供するステップと(ステップ(a)は、ステップ(b)の前、後、または同時に行う)、(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値をステップ(b)からの第2のアッセイ値と比較するステップとを含む。
【0019】
本発明はまた、式Iの化合物を調製するのに有用な方法および新規な中間体にも関する。したがって、その方法の態様のその他では、本発明は、式Iの化合物の調製方法に関し、この方法は、(本明細書に記載されている)式6の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップを含む。
【0020】
その方法の態様のその他では、本発明は、式Iの化合物の調製方法に関し、この方法は、(a)還元剤の存在下にて式4の化合物を式5の化合物と反応させ、式6の化合物を得るステップと、(b)式6の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップとを含む(化合物4、5および6は、本明細書に記載されている通りである)。
【0021】
本発明の特定の実施形態では、式Iの化合物は、式6の化合物を脱保護することによって調製され、式中、ヒドロキシル保護基はシリル基である。したがって、その方法の態様のまたその他では、本発明は、式Iの化合物を調製する方法に関し、この方法は、式6a
【0022】
【化13】

(式中、R、RおよびRは、独立に、C1〜4アルキル、フェニル、−C1〜4アルキル−(フェニル)から選択され、またはR1a、R1bおよびR1cのうちの1つは、−O−(C1〜4アルキル)である)の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップを含む。
【0023】
他の実施形態では、本明細書に記載する方法は、式Iの化合物の医薬として許容される塩を形成するステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載する他の方法、および本明細書に記載する方法のいずれかによって調製された生成物に関する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、式III
【0025】
【化14】

(式中、Yは、−CHO、−CN、−CHOH、−CH(OR3a)OR3b、−C(O)OH、−C(O)OR3c、ブロモおよびヨード(式中、R3aおよびR3bは、独立に、C1〜6アルキルから選択され、またはR3aおよびR3bは結合してC2〜6アルキレンを形成し、R3cは、C1〜6アルキルから選択される)から選択され、RおよびRは、(任意の特定または好ましい実施形態を含めて)本明細書に記載されている通りである)の化合物あるいはその塩または立体異性体に関し、この化合物は、式Iの化合物の調製における中間体として有用である。式IIIの特定の実施形態では、RおよびRはメチルである。式IIIの他の特定の実施形態では、Yは−CHOである。式IIIのさらに他の特定の実施形態では、RおよびRはメチルであり、Yは−CHOである。
【0026】
本発明はまた、治療のための式Iの化合物の使用にも関する。さらに、本発明は、肺障害の治療用の医薬の製造のための式Iの化合物の使用、および研究道具としての式Iの化合物の使用に関する。本発明の他の態様および実施形態は、本明細書において開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
その組成物の態様の1つでは、本発明は、新規な式Iの化合物に関する。式Iの化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含有し、したがって、本発明は、別段の指示がない限りラセミ混合物、純粋な立体異性体(すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマー)、立体異性体が濃縮した混合物などを対象とする。本明細書において特定の立体異性体が示されまたは命名されている場合、別段の指示がない限り、少量の他の立体異性体は、このような他の異性体の存在によって全体として組成物の有用性がなくならない限り本発明の組成物中に存在してもよいことを当業者は理解しよう。
【0028】
特に、式Iの化合物は、下記の部分式において記号*で示されている炭素原子でキラル中心を含有する。
【0029】
【化15】

本発明の特定の実施形態では、記号*で識別されている炭素原子は(R)配置を有する。この実施形態では、式Iの化合物は、記号*で示されている炭素原子において(R)配置を有し、またはこの炭素原子において(R)配置を有する立体異性体の形態で濃縮されている。
【0030】
式Iの化合物はいくつかの塩基性基(例えば、アミノ基)も含有し、したがって、式Iの化合物は遊離塩基としてまたは様々な塩の形態で存在できる。すべてのこのような形態は、本発明の範囲内に含められる。さらに、式Iの化合物の溶媒和物またはその塩は、本発明の範囲内に含められる。
【0031】
したがって、別段の指示がない限り、本明細書において化合物への言及、例えば、式Iの化合物または化合物6への言及には、その化合物の塩および立体異性体および溶媒和物への言及が含まれることを当業者であれば理解するであろう。
【0032】
さらに本明細書で使用する場合、文脈が明らかに別のことを指示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には、対応する複数形が含まれる。
【0033】
本発明の化合物およびその中間体を命名するために本明細書において使用される命名法は一般に、市販のAutoNomソフトウェア(MDL社、San Leandro、California)を使用して得た。典型的には、式Iの化合物は、ビフェニル−2−イルカルバミン酸のピペリジン−4−イルエステル誘導体と命名した。
【0034】
代表的な実施形態
下記の置換基および値は、本発明の様々な態様および実施形態の代表的な例を提供することを意図している。これらの代表値は、このような態様および実施形態をさらに規定および例示することを意図し、他の実施形態を除外または本発明の範囲を限定することを意図しない。これに関しては、特定の値または置換基が好ましいという表現は、特別に示されない限り、本発明から他の値または置換基を排除することを決して意図しない。
【0035】
一実施形態では、Rはメチルであり、Rはメチルである。
【0036】
他の実施形態では、Rはエチルであり、Rはエチルである。
【0037】
他の実施形態では、Rはメチルであり、Rはエチルである。
【0038】
他の実施形態では、Rはエチルであり、Rはメチルである。
【0039】
したがって、その組成物の態様の1つでは、本発明は、
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa);
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジエチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIb);
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2−メチル−5−エチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIc);
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2−エチル−5−メチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IId)
から選択された式Iの化合物またはその医薬として許容される塩に関する。
【0040】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスについて記載する場合、下記の用語は、別段の指示がない限り下記の意味を有する。
【0041】
「アルキル」という用語は、直鎖状または分枝状でよい一価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義がない限り、このようなアルキル基は典型的には、1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基には、例示として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0042】
炭素原子の特定の数が、本明細書において使用される特定の用語のために意図されている場合、炭素原子の数は用語の前に示される。例えば、「C1〜3アルキル」という用語は、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を有し、炭素原子は任意の化学的に許容できる配置にある。
【0043】
「アルキレン」という用語は、直鎖状または分枝状でよい二価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義がない限り、このようなアルキレン基は典型的には、1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキレン基には、例示として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0044】
「アミノ保護基」という用語は、アミノ基での望ましくない反応を防止するのに適切な保護基を意味する。代表的なアミノ保護基には、それだけに限らないが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0045】
「カルボキシ保護基」という用語は、カルボキシ基での望ましくない反応を防止するのに適切な保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基には、それだけに限らないが、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などのエステルが挙げられる。
【0046】
「本発明の化合物」または「式Iの化合物」または「式IIの化合物」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の指示がない限り、特定の化合物、あるいはその医薬として許容される塩または溶媒和物または立体異性体を意味する。
【0047】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0048】
「ヒドロキシル保護基」という用語は、ヒドロキシル基での望ましくない反応を防止するのに適切な保護基を意味する。代表的なヒドロキシル保護基には、それだけに限らないが、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などのトリ(C1〜6アルキル)シリル基を含めたシリル基;ホルミル、アセチルなどのC1〜6アルカノイル基を含めたエステル(アシル基);ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などのアリールメチル基が挙げられる。さらに、2個のヒドロキシル基はまた、例えば、アセトンなどのケトンとの反応によって形成されるプロパ−2−イリジンなどのアルキリデン基として保護されることもできる。
【0049】
「脱離基」という用語は、求核置換反応などの置換反応において他の官能基または原子によって置換することのできる官能基または原子を意味する。例示として、代表的な脱離基には、それだけに限らないが、クロロ、ブロモおよびヨード基;メシラート、トシラート、ブロシラート、ノシラートなどのスルホン酸エステル基;およびアセトキシ、トリフルオロアセトキシなどのアシルオキシ基が挙げられる。
【0050】
「質量中央径」または「MMD」という用語は、粒子を言及するために使用される場合、粒子の塊の半分がそれより大きい直径の粒子に含まれ、半分がそれより小さい直径の粒子に含まれるような直径を意味する。
【0051】
「微粉化された」または「微粉化された形態の」という用語は、別段の指示がない限り、粒子の少なくとも約90パーセントが約10μm未満の直径を有する粒子を意味する。
【0052】
「あるいは医薬として許容されるその塩または溶媒和物または立体異性体」という用語は、本明細書で使用する場合、式Iの化合物の立体異性体の医薬として許容される塩の溶媒和物などの、塩、溶媒和物および立体異性体のすべての置換を含むことが意図されている。
【0053】
「医薬として許容される塩」という用語は、哺乳動物などの患者に投与するために許容できる塩を意味する(例えば、所与の投与計画において哺乳動物への許容できる安全性を有する塩)。代表的な医薬として許容される塩には、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンホスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタリンスルホン酸、ナフタレン−1,5−二スルホン酸、ナフタレン−2,6−二スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸およびキシナホ酸などの塩が含まれる。
【0054】
「その保護された誘導体」という用語は、化合物の1つまたは複数の官能基が、保護基または封鎖基との望ましくない反応を受けることから保護または遮断される、特定の化合物の誘導体を意味する。保護することができる官能基には、例示として、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。このような官能基のための適切な保護基は、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年およびそこで引用されている参考文献における教示に例示されるように、当業者には周知である。
【0055】
「その塩」という用語は、酸の水素が、金属カチオンまたは有機カチオンなどのカチオンで置換される場合に形成される化合物を意味する。本発明では、カチオンは典型的には、式Iの化合物のプロトン化した形態を含む、すなわち1つまたは複数のアミノ基が酸によってプロトン化されている。好ましくは、塩は、医薬として許容される塩であるが、患者への投与を意図していない中間化合物の塩については、これは必要でない。
【0056】
「溶媒和物」という用語は、溶質、すなわち式Iの化合物またはその医薬として許容される塩の1個または複数の分子と、溶媒の1個または複数の分子とで形成される複合体または凝集物を意味する。このような溶媒和物は典型的には、溶質および溶媒のモル比が実質的に固定した結晶性固体である。代表的な溶媒には、例示として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0057】
「治療有効量」という用語は、治療を必要としている患者に投与した場合、治療を行うのに十分な量を意味する。
【0058】
「治療する」または「治療」という用語は、本明細書で使用する場合、哺乳動物(特に、ヒト)などの患者において疾患または病状(COPDまたは喘息など)を治療することまたは治療を意味し、
(a)疾患または病状が起こることを予防すること、すなわち患者の予防的治療、
(b)疾患または病状を回復させること、すなわち患者の疾患または病状を解消または退行させること、
(c)疾患または病状を抑えること、すなわち患者の疾患または病状の進行を遅らせ、または阻止すること、あるいは
(d)患者の疾患または病状の症状を軽減すること
が含まれる。
【0059】
本明細書において使用されるすべての他の用語は、当業者であれば理解するように、それらの通常の意味を有することが意図されている。
【0060】
一般の合成手順
本発明の化合物は、下記の一般方法および手順を使用して、あるいは当業者が容易に利用可能なまたは公知の他の情報を使用することによって、容易に利用可能な出発物質から調製することができる。下記の手順は本発明の特定の実施形態または態様を例示する場合があるが、同一または同様の方法を使用して、あるいは当業者には公知の他の方法、試薬および出発物質を使用することによって、本発明の他の実施形態または態様を調製することができることを当業者であれば理解するであろう。典型的または好ましい作業条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が所与である場合、特に明記しない限り、他の作業条件もまた使用することができることはまた理解されよう。最適な反応条件は典型的には、反応物、溶媒および使用する量などの様々な反応パラメーターによって変化するが、当業者であれば、常套の最適化手順を使用して適切な反応条件を容易に決定することができる。
【0061】
さらに、当業者であれば明らかであろうように、特定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防止するため、従来の保護基が必要または所望である場合がある。特定の官能基のための適切な保護基の選択、ならびにこのような官能基の保護および脱保護のための適切な条件および試薬は、当技術分野で周知である。本明細書に記載する手順において例示した以外の保護基を所望であれば使用してもよい。
【0062】
一実施形態では、式I
【0063】
【化16】

(式中、Pはヒドロキシル保護基であり、R3aおよびR3bは、独立に、C1〜6アルキルから選択され、またはR3aおよびR3bは結合してC2〜6アルキレンを形成する)の化合物は、スキームIに例示されるように合成される。
【0064】
スキームIに示されるように、化合物1は、約0.95〜約1.05モル当量の化合物2と反応し、化合物3を提供することができる。このマイケル反応は典型的には、約0℃〜約75℃、典型的には約40℃〜約45℃の範囲の温度で、約8〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、ジクロロメタンまたはジクロロメタンとメタノールとの混合物またはエタノールなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、生成物を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。あるいは、化合物3を含有する反応混合物を、合成の次のステップにおいて直接使用することができる。
【0065】
次いで、化合物3は酸性水溶液と反応して、アセタール基が加水分解され、アルデヒド化合物4が提供される。例示として、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを含めた任意の適切な酸をこの反応において用いることができる。加水分解反応は典型的には、約0℃〜約30℃、典型的には約20℃〜約25℃の範囲の温度で、約1〜約6時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン/エタノール、アセトニトリルなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、生成物を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0066】
次いで、化合物4は還元剤の存在下にて約0.95〜約1.5モル当量の化合物5と反応して、化合物6が生じる。例示として、水酸化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシホウ水素化ナトリウム、シアノホウ水素化ナトリウムなどの金属水素化物試薬、または水素およびパラジウム炭素などの金属触媒を含めて、任意の適切な還元剤をこの反応において使用してもよい。この還元的アルキル化反応は典型的には、約−20℃〜約30℃、典型的には約0℃〜約5℃の範囲の温度で、約1〜約6時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、適切な希釈剤、ならびにジクロロエタンおよびメタノールなどのプロトン性溶媒中で行われる。反応が完了すると、生成物を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0067】
次いで、化合物6を脱保護し、式Iの化合物を得る。化合物6を脱保護するために使用する特定の条件は、用いる保護基によるであろう。例えば、Pが、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジ−tert−ブチルメチルシリル、tert−ブトキシジフェニルシリルなどのシリル保護基(すなわち、本明細書に記載されているような式6aの化合物)である場合、この脱保護反応は典型的には、化合物6aをフッ化物イオンの源と反応させることによって行われる。特定の実施形態では、フッ化物イオンの源は、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩である。フッ化物イオンの他の適切な源には、フッ化テトラブチルアンモニウム、18−クラウン−6を有するフッ化カリウム、フッ化水素、ピリジンフッ化水素酸塩などが挙げられる。この反応は典型的には、約0℃〜約50℃、典型的には約10℃〜約25℃の範囲の温度で、約24〜約72時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、ジクロロエタンなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、生成物を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0068】
化合物1は当技術分野において公知であり、または公知の手順を使用して市販の出発物質および試薬から調製することができる。例えば、米国特許出願公開第US2004/0167167(A1)号およびR. Naitoら、Chem. Pharm. Bull.、46(8)号、1286〜1294頁(1998年)を参照されたい。例示として、化合物1はスキームIIに例示されているように調製することができる。
【0069】
【化17】

スキームIIに示されるように、ビフェニル−2−イソシアネート(7)をN−保護4−ヒドロキシピペリジン8(式中、Pはベンジルなどのアミノ保護基である)と反応させ、カルバメート中間体9を提供する。この反応は典型的には、約20℃〜約100℃、典型的には約60℃〜約80℃の範囲の温度で、約6〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。所望であれば、この反応は、ジクロロメタン、トルエンなどの適切な希釈剤中で行うことができる。あるいは、この反応は希釈剤の非存在下にて行うことができる。反応が完了すると、生成物9を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。あるいは、化合物9を含有する反応混合物を合成の次のステップにおいて直接使用する。
【0070】
次いで、アミノ保護基Pを、従来の手順を使用して化合物9から除去し、化合物1を得る。例えば、Pがベンジル基である場合、パラジウム触媒などの触媒の存在下にて、水素またはギ酸アンモニウムを使用して化合物9を脱保護することができる。代表的な触媒には、例示として、パラジウム炭素、水酸化パラジウムオンカーボンなどが挙げられる。この反応は典型的には、約20℃〜約50℃、典型的には約40℃の範囲の温度で、約6〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、化合物1を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0071】
式2の化合物は、当技術分野において公知であり、または公知の手順を使用して市販の出発物質および試薬から調製することができる。例示として、式2の化合物は、スキームIIIに示されるように調製することができる。
【0072】
【化18】

スキームIIIに示されるように、式10(式中、Xはブロモまたはヨードである)のアニリン化合物を、最初にアミノ基で保護し、式11(式中、P3aはアミノ保護基であり、P3bは水素またはアミノ保護基である)の化合物を得る。ベンジル、4−メトキシベンジル、トリフルオロアセチルなどの任意の適切なアミノ保護基を使用することができる。例えば、式10の化合物は、塩化ベンジル、臭化ベンジルまたはヨウ化ベンジルなどの約2またはそれ以上のモル当量、好ましくは約2.5〜約3.0モル当量のハロゲン化ベンジルと反応させ、化合物11(式中、P3aおよびP3bは両方ともベンジルである)を得ることができる。この反応は典型的には、約0℃〜約50℃、典型的には約30℃の範囲の温度で、約18〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの適切な希釈剤中で行われる。典型的には、この反応はまた、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの適切な塩基の存在下でも行われる。反応が完了すると、化合物11を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0073】
この反応において用いることができる代表的な式10の化合物には、2,5−ジメチル−4−ヨードアニリン、2,5−ジエチル−4−ヨードアニリン、2−エチル−4−ヨード−5−メチルアニリン、5−エチル−4−ヨード−2−メチルアニリン、4−ブロモ−2,5−ジメチルアニリン、4−ブロモ−2,5−ジエチルアニリン、4−ブロモ−2−エチル−5−メチルアニリン、4−ブロモ−5−エチル−2−メチルアニリンなどが挙げられる。このような化合物は、(例えば、Spectra Group社、Millbury、OHから)市販されており、または従来の手順を使用して市販の出発物質および試薬から調製することができる。
【0074】
次いで、化合物11を、約1〜約2モル当量のn−ブチルリチウムまたはtert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム試薬と接触させ、X基がリチウムと置換されている対応するアニオンを形成する。この反応は典型的には、約−70℃〜約0℃、典型的には約−20℃の範囲の温度で、約0.25〜約1時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどの適切な希釈剤中で行われる。
【0075】
このようにして得られたリチウムアニオンは単離されないが、in situで過剰なモル濃度のN,N−ジメチルホルムアミドと反応し、化合物12が提供される。一般に、約2〜約4モル当量のN,N−ジメチルホルムアミドが使用される。この反応は典型的には、約−70℃〜約0℃、典型的には約−20℃〜約0℃の範囲の温度で、約0.5〜約2時間または反応が実質的に完了するまで行われる。反応が完了すると、化合物12を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0076】
次いで、酸触媒の存在下にて化合物12をアルコールまたはジオールと反応させることによって、化合物12のアルデヒド基をアセタールとして保護する。任意の適切なアルコールまたはジオールを、この反応において使用することができる。例えば、代表的なアルコールおよびジオールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。一般に、過剰なモル濃度のアルコールまたはジオール、好ましくは約2〜約4モル当量をこの反応において用いる。
【0077】
任意の適切な酸触媒をこの反応において使用して、アセタールの形成を容易にしてもよい。代表的な酸触媒作用には、例示として、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩酸などが挙げられる。
【0078】
反応は典型的には、約50℃〜約100℃、典型的には約60℃〜約80℃の範囲の温度で、約12〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、トルエン、キシレンなどの適切な希釈剤中で行われる。典型的には、共沸蒸留による、または分子ふるいの使用によるなどの生成した水が除去されるのを可能とするような方法で反応が行われる。反応が完了すると、化合物13を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。あるいは、化合物13を含有する反応混合物を、合成の次のステップにおいて直接使用することができる。
【0079】
アセタールの形成後に、化合物13のアミノ基を、標準的試薬および条件を使用して脱保護し、化合物14を形成させる。例えば、P3aおよびP3bがベンジル基である場合、水素およびパラジウム触媒などの触媒を使用して、化合物13を脱保護できる。代表的な触媒には、例示として、パラジウム炭素、水酸化パラジウムオンカーボンなどが挙げられる。この反応は典型的には、約20℃〜約50℃、典型的には約25℃〜約30℃の範囲の温度で、約4〜約12時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、メタノール、エタノール、エタノール/酢酸エチル混合物などの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、化合物14を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0080】
次いで、化合物14をハロゲン化アクリロイル15(式中、Xはクロロ、ブロモまたはヨードである)と反応させて、化合物2を形成する。この反応は典型的には、約−20℃〜約25℃、典型的には約0℃〜約5℃の範囲の温度で、約0.5〜約6時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下にて、ジクロロメタンなどの適切な希釈剤中で行われる。一般に、約1〜1.2モル当量のハロゲン化アクリロイルおよび約1〜約2モル当量の塩基を、この反応において使用する。反応が完了すると、化合物2を典型的には、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。
【0081】
式5の化合物は、当技術分野において公知であり、または公知の手順を使用して市販の出発物質および試薬から調製することができる。例示として、式5の化合物は、スキームIVに示されるように調製することができる。
【0082】
【化19】

スキームIVに例示したように、式5の化合物は、式16(式中、Pはベンジルなどのヒドロキシル保護基であり、Xはクロロ、ブロモまたはヨードなどの脱離基である)の化合物から調製することができる。式16の化合物は、当技術分野において公知である。例えば、2001年7月31日に発行された米国特許第6,268,533(B1)号およびR. Hettら、Organic Process Research & Development、1998年、2号、96〜99頁は、2−ブロモ−4’−ベンジルオキシ−3’−ニトロアセトフェノンから出発するN−[2−ベンジルオキシ−5−((R)−2−ブロモ−1−ヒドロキシエチル)フェニル]ホルムアミド(すなわち、化合物16の(R)エナンチオマー(式中、Pはベンジルであり、Xはブロモである)である)の調製を記載している。その合成は、K.Muraseら、Chem. Pharm. Bull.、25(6)号、1368〜1377頁(1977年)に記載されている。所望であれば、ボランジメチルスルフィド錯体などの非キラル還元剤を使用して、2−ブロモ−4’−ベンジルオキシ−3’−ニトロアセトフェノンを還元することによって化合物16のラセミ体を調製することができる。
【0083】
化合物16のヒドロキシル基を、従来の手順および試薬を使用して保護し、化合物17(式中、Pはヒドロキシル保護基である)を提供する。特定の実施形態では、ヒドロキシル保護基は、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルヘキシルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルなどのシリル保護基である。例えば、化合物16は、約1.1〜約1.3モル当量のイミダゾールの存在下にて、約0.95〜約1.2モル当量の塩化tert−ブチルジメチルシリルと反応して、化合物17(式中、Pはtert−ブチルジメチルシリルである)を提供することができる。この反応は典型的には、約0℃〜約50℃の範囲の温度、典型的には室温で、約24〜約48時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、化合物17は典型的には、抽出、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。さらに例示するために、N−{2−ベンジルオキシ−5−[(R)−2−ブロモ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]フェニル}ホルムアミドの合成は、2004年12月9日に公開された米国特許出願公開第US2004/0248985(A1)号の実施例2に記載されている。
【0084】
次いで、化合物17をベンジルアミン(すなわち、Bn−NH)と反応させて、化合物18(式中、Bnは、C1〜4アルキルまたはC1〜4アルコキシから独立に選択される、ベンジル基のフェニル環上に1〜3個の置換基を有する非置換ベンジル基または置換ベンジル基である)を得る。代表的なベンジルアミンには、ベンジルアミン、3,4−ジメトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、4−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。この反応は典型的には、化合物17を約2〜約4モル当量のベンジルアミンと、約40℃〜約100℃、典型的には約80℃〜約90℃の範囲の温度で、約5〜約24時間または反応が実質的に完了するまで接触させることによって行われる。一般に、この反応は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、化合物18は典型的には、抽出、クロマトグラフィー、再結晶などの従来の手順を使用して単離される。
【0085】
次いで、従来の手順および試薬を使用したベンジル基Bn、次いでPの除去によって、化合物5を得る。一実施形態では、BnおよびPの両方は、同一の反応混合物中で除去されるベンジル基である。典型的には、この反応は、パラジウム触媒などの触媒の存在下にて化合物5を水素と反応させることによって行われる。代表的な触媒には、水酸化パラジウムオンカーボン、パラジウム炭素などが挙げられる。一般に、この脱ベンジル化反応は、酢酸、ギ酸などの酸の存在下にて行われる。この反応は典型的には、約10℃〜約50℃の範囲の温度、典型的には室温で、約6〜約24時間または反応が実質的に完了するまで行われる。一般に、この反応は、メタノール、エタノールなどの適切な希釈剤中で行われる。反応が完了すると、化合物5を典型的には、抽出、クロマトグラフィーなどの従来の手順を使用して単離する。特定の実施形態では、化合物5は、酢酸塩として単離される。
【0086】
式Iの化合物はまた他の合成手順によっても調製することができることを当業者であれば理解するであろう。例えば、合成ステップを行う特定の順番は変更することができ、または様々な中間体を用いることができる。例示として、式III
【0087】
【化20】

(式中、Yは−CN、−C(O)OHまたは−C(O)OR3cである)の化合物は、従来の手順および試薬を使用して還元して、アルデヒド4(すなわち、式中、Yは−CHOである)を提供することができる。さらに、このような化合物は、アルコール(すなわち、Yは−CHOHである)に還元することができ、次いで標準的手順および試薬を使用してアルコールを酸化し、アルデヒド4(すなわち、式中、Yは−CHOである)を提供することができる。
【0088】
所望であれば、式Iの化合物の遊離塩基の形態を医薬として許容される酸と接触させることによって、式Iの化合物の医薬として許容される塩を調製することができる。
【0089】
本発明の代表的な化合物またはその中間体を調製するための特定の反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、下記の実施例に記載されている。
【0090】
医薬組成物、組合せおよび製剤
本発明の化合物は典型的には、医薬組成物または製剤の形態で患者に投与される。このような医薬組成物は、それだけに限らないが、吸入、経口、経鼻、(経皮を含めた)局所および非経口投与方法が挙げられる任意の許容できる投与経路によって患者に投与することができる。特定の投与方法に適した本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、医薬として許容される塩、溶媒和物など)は、本明細書において議論されている医薬組成物に使用することができることが理解されよう。
【0091】
したがって、その組成物の態様の1つでは、本発明は、医薬として許容される担体または賦形剤と式Iの化合物とを含む医薬組成物に関する。任意選択で、このような医薬組成物は、所望であれば他の治療剤および/または配合剤を含有してもよい。
【0092】
本発明の医薬組成物は典型的には、式Iの化合物の治療有効量を含有する。しかし、当業者であれば、医薬組成物は、治療有効量を超える量(すなわち、バルク組成物)、または治療有効量未満の量(すなわち、治療有効量を達成するための多回投与のために設計されている個々の単位用量)を含有することができることを理解するであろう。
【0093】
典型的には、医薬組成物は、約0.01〜約10重量%などの約0.01〜約30重量%の治療剤を含めて、約0.01〜約95重量%の治療剤を含有する。
【0094】
任意の従来の担体または賦形剤を、本発明の医薬組成物において使用することができる。特定の担体または賦形剤、あるいは担体または賦形剤の組合せの選択は、特定の患者を治療するために使用される投与方法、あるいは病状または病態のタイプによるであろう。これに関しては、特定の投与方法のための適切な医薬組成物の調製は、十分に製薬技術の当業者の範囲内である。
【0095】
本発明の医薬組成物に使用される担体または賦形剤は、市販である。例えば、このような材料は、Sigma社(St.Louis、MO)から購入することができる。さらに例示するために、従来の製剤技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)における教示によって例示されるように当業者には周知である。
【0096】
医薬として許容される担体としての機能を果たす材料の代表的な例には、それだけに限らないが、下記が挙げられる。(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロース、ならびにその誘導体、(4)トラガカント粉末、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバターおよび坐薬ワックスなどの賦形剤、(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質なしの水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液溶液、(21)クロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンなどの圧縮噴射ガス、ならびに(22)医薬組成物に用いられる他の無毒適合性の物質。
【0097】
本発明の医薬組成物は典型的には、本発明の化合物を、医薬として許容される担体および任意選択の成分と完全および密接に混合またはブレンドすることによって調製される。必要に応じてまたは所望により、このようにして得られた均一にブレンドされた混合物は、次いで従来の手順および装置を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤、缶、カートリッジ、ディスペンサーなどに成形または充填することができる。
【0098】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、吸入投与に適切である。吸入投与のために適切な医薬組成物は典型的には、エアロゾルまたは粉末の形態であろう。このような組成物は一般に、ネブライザー吸入器、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)または同様の送達装置などの周知の送達装置を使用して投与される。
【0099】
本発明の特定の実施形態では、治療剤を含む医薬組成物は、ネブライザー吸入器を使用して吸入によって投与される。このようなネブライザー装置は典型的には、治療剤を含む医薬組成物を患者の気道に運ぶ霧として噴霧する高速空気流を生じる。したがって、噴霧吸入器での使用のために製剤される場合、治療剤を典型的には、適切な担体に溶解し、溶液を形成する。あるいは、治療剤を微粉化し、適切な担体と混合し、微粉化粒子の懸濁液を形成することができる。吸入によって治療剤を投与するのに適切なネブライザー装置は、当業者には周知であり、またはこのような装置は市販である。例えば、代表的なネブライザー装置または製品には、Respimat Softmist Inhalaler(Boehringer Ingelheim社)、AERx Pulmonary Delivery System(Aradigm社)、PARI LC Plus Reusable Nebulizer(Pari GmbH社)などが挙げられる。
【0100】
噴霧吸入器に使用するための代表的な医薬組成物は、約0.05μg/mL〜約10mg/mLの式Iの化合物を含む等張水溶液を含む。一実施形態では、このような溶液は、約4〜約6のpHを有する。
【0101】
本発明の他の特定の実施形態では、治療剤を含む医薬組成物は、ドライパウダー吸入器を使用して吸入によって投与される。このようなドライパウダー吸入器は典型的には、吸気の間に患者の呼吸流に分散する易流動性粉末として治療剤を投与する。易流動性粉末を実現するために、治療剤は典型的には、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸(PLA)、ポリラクチド−co−グリコリド(PLGA)またはこれらの組合せなどの適切な賦形剤で製剤される。治療剤は典型的には、微粉化され、適切な担体と混合され、吸入に適切なブレンドを形成する。したがって、本発明の一実施形態では、式Iの化合物は、微粉化された形態である。
【0102】
ドライパウダー吸入器で使用するための代表的な医薬組成物は、乾燥粉砕ラクトースおよび式Iの化合物の微粉化粒子を含む。
【0103】
このような乾燥粉末製剤は、例えば、ラクトースを治療剤と混合し、次いで成分を乾燥ブレンドすることによって作製することができる。あるいは、所望であれば、治療剤は、賦形剤なしで製剤することができる。次いで、医薬組成物は典型的には、乾燥粉末送達装置で使用するために、乾燥粉末ディスペンサー、あるいは吸入カートリッジまたはカプセルに充填される。
【0104】
吸入によって治療剤を投与するのに適切なドライパウダー吸入用送達装置は、当業者には周知であり、またはこのような装置は市販である。例えば、代表的なドライパウダー吸入用送達装置または製品には、Aeolizer(Novartis社)、Airmax(IVAX社)、ClickHaler(Innovata Biomed社)、Diskhaler(GlaxoSmithKline社)、Diskus/Accuhaler(GlaxoSmithKline社)、Easyhaler(Orion Pharma社)、Eclipse(Aventis社)、FlowCaps(Hovione社)、Handihaler(Boehringer Ingelheim社)、Pulvinal(Chiesi社)、Rotahaler(GlaxoSmithKline社)、SkyeHaler/Certihaler(SkyePharma社)、Twisthaler(Schering−Plough社)、Turbuhaler(AstraZeneca社)、Ultrahaler(Aventis社)などが挙げられる。
【0105】
本発明のまた他の特定の実施形態では、治療剤を含む医薬組成物は、定量吸入器を使用して吸入によって投与される。このような定量吸入器は典型的には、圧縮噴射ガスを使用して一定量の治療剤を放出する。したがって、定量吸入器を使用して投与される医薬組成物は典型的には、液化噴射剤中に治療剤の溶液または懸濁液を含む。CClFなどのクロロフルオロカーボン、ならびに1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)などのヒドロフルオロアルカン(HFA)を含めた任意の適切な液化噴射剤を用いることができる。クロロフルオロカーボンがオゾン層に影響を与えることについての懸念から、HFAを含有する製剤が、一般に好ましい。HFA製剤のさらなる任意選択の成分には、エタノールまたはペンタンなどの共溶媒、ならびにトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチン、およびグリセリンなどの界面活性剤が挙げられる。
【0106】
定量吸入器に使用するための代表的な医薬組成物は、約0.01重量%〜約5重量%の式Iの化合物、約0重量%〜約20重量%のエタノールおよび約0重量%〜約5重量%の界面活性剤を含み、残りはHFA噴射剤である。
【0107】
このような組成物は典型的には、冷却または加圧ヒドロフルオロアルカンを、治療剤、(存在する場合は)エタノールおよび(存在する場合は)界面活性剤を含有する適切な容器に加えることによって調製する。懸濁液を調製するために、治療剤を微粉化し、次いで噴射剤と混合する。次いで製剤を、定量吸入装置の一部を形成するエアロゾル缶に充填する。
【0108】
吸入によって治療剤を投与するのに適切な定量吸入装置は、当業者には周知であり、またはこのような装置は市販である。例えば、代表的な定量吸入装置または製品には、AeroBid Inhaler System(Forest Pharmaceuticals社)、Atrovent Inhalation Aerosol(Boehringer Ingelheim社)、Flovent(GlaxoSmithKline社)、Maxair Inhaler(3M社)、Proventil Inhaler(Schering社)、Serevent Inhalation Aerosol(GlaxoSmithKline社)などが挙げられる。
【0109】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口投与に適切である。経口投与に適切な医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤の形態;あるいは水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは水中油型または油中水型液体エマルジョンとして;あるいはエリキシル剤またシロップ剤としてなどでよく、各々が活性成分として所定の量の本発明の化合物を含有する。
【0110】
固体剤形の経口投与用である場合(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤などとして)、本発明の医薬組成物は典型的には、活性成分として本発明の化合物、およびクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの1種または複数の医薬として許容される担体を含む。任意選択でまたは代わりとして、このような固体剤形はまた、(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤あるいは増量剤、(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの湿潤剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および/または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶液遅延剤、(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)セチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリンおよび/またはベントナイト粘土などの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはその混合物などの滑沢剤、(10)着色剤、ならびに(11)緩衝剤も含む。
【0111】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および香料剤、保存料および抗酸化剤もまた、本発明の医薬組成物中に存在することができる。医薬として許容される抗酸化剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。錠剤、カプセル剤、丸剤などのためのコーティング剤には、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸、メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)などの腸溶性コーティングに使用されるコーティング剤が挙げられる。
【0112】
所望であれば、本発明の医薬組成物はまた、例示として、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、または他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを使用して活性成分の徐放または制御放出を実現するために製剤することもできる。
【0113】
さらに、本発明の医薬組成物は、任意選択で乳白剤を含有してもよく、任意選択で遅延するような方法で、消化管の特定の部分のみに、または優先的に活性成分を放出するように製剤してもよい。使用することのできる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切であれば1種または複数の上記の賦形剤と共にマイクロカプセル化形態でもよい。
【0114】
経口投与用の適切な液体剤形には、例示として、医薬として許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。このような液体剤形は典型的には、活性成分;ならびに例えば水または他の溶媒などの不活性希釈剤;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含む。懸濁剤は、活性成分に加えて、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物などの懸濁化剤を含有してもよい。
【0115】
経口投与用の場合、本発明の医薬組成物は、単位剤形に包装することができる。「単位剤形」という用語は、患者への投与に適切な物理的個別単位を意味し、すなわち、各ユニットが、単独または1種もしくは複数のさらなるユニットと組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性剤を含有する。例えば、このような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤などでよい。
【0116】
本発明の化合物はまた、公知の経皮的送達系および賦形剤を使用して経皮的にも投与することができる。例えば、本発明の化合物は、プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、アザシクロアルカン−2−オンなどの浸透エンハンサーと混合し、パッチまたは同様の送達系に組み入れることができる。ゲル化剤、乳化剤および緩衝液を含めたさらなる賦形剤を、所望であればこのような経皮的組成物に使用することができる。
【0117】
さらに、本発明の化合物は、非経口的、すなわち、静脈内、皮下または筋肉内に投与することができる。非経口投与のために、式Iの化合物は典型的には、滅菌水、生理食塩水、植物油などの非経口投与のために許容される担体に溶解する。例示として、静脈内用組成物は典型的には、式Iの化合物の滅菌水溶液を含み、溶液は約4〜約7の範囲のpHを有する。
【0118】
所望であれば、本発明の化合物は、1種または複数の他の治療剤と組み合わせて投与することができる。この実施形態では、本発明の化合物は、他の治療剤と物理的に混合して両方の薬剤を含有する組成物を形成するか、または各薬剤が別々の異なる組成物中に存在し、それを患者に同時または順次に投与するかのいずれかである。
【0119】
例えば、式Iの化合物は、従来の手順および装置を使用して第2の治療剤と混合して、式Iの化合物と第2の治療剤とを含む組成物を形成することができる。さらに、治療剤は、医薬として許容される担体と混合して、式Iの化合物、第2の治療剤および医薬として許容される担体を含む医薬組成物を形成することができる。この実施形態では、組成物の成分を典型的には、混合またはブレンドし、物理的混合物を生じさせる。次いで、物理的混合物を、本明細書に記載する経路のいずれかを使用して治療有効量で投与する。
【0120】
あるいは治療剤は、患者へ投与する前は、別々の異なったままでよい。この実施形態では、治療剤は投与前に物理的に混合していないが、別々の組成物として同時または順次に投与される。例えば、式Iの化合物は、各治療剤のために別々の区画(例えば、ブリスターパック)を用いる吸入送達装置を使用して、他の治療剤と同時または順次に吸入によって投与することができる。あるいは、別々の送達装置、すなわち各治療剤に1つの送達装置を使用して、組合せを投与することができる。さらに、治療剤は、異なる投与経路、すなわち1つは吸入で、他方は経口投与によって送達することができる。
【0121】
本発明の化合物と相容性のある任意の治療剤を、このような化合物と組み合わせて使用することができる。特定の実施形態では、第2の治療剤は、吸入によって効果的に投与される。例示として、本発明の化合物と共に使用してもよい治療剤の代表的なタイプには、それだけに限らないが、ステロイド性抗炎症剤(副腎皮質ステロイドおよびグルココルチコイドを含めた)、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、およびPDE阻害剤;PDE阻害剤、アデノシン2bモジュレーターおよびβアドレナリン受容体アゴニストなどの気管支拡張剤;グラム陽性の抗生物質、グラム陰性の抗生物質、および抗ウイルス剤などの抗感染症薬;抗ヒスタミン剤;プロテアーゼ阻害剤;Dアゴニストおよびニューロキニンモジュレーターなどの求心性遮断剤;およびムスカリン受容体アンタゴニスト(抗コリン剤)などの抗炎症剤が挙げられる。このような治療剤の多くの例は、当技術分野で周知である。本発明の化合物と組み合わせて投与される他の治療剤の適切な用量は典型的には、約0.05μg/日〜約500mg/日の範囲である。
【0122】
本発明の特定の実施形態では、式Iの化合物は、ステロイド性抗炎症剤と組み合わせて投与される。本発明の化合物と組み合わせて使用することができるステロイド性抗炎症剤の代表的な例には、それだけに限らないが、ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;プロピオン酸ブチキソコルト;20R−16α,17α−[ブチリデンビス(オキシ)]−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−17β−(メチルチオ)アンドロスタ−4−エン−3−オン(RPR−106541);シクレソニド;デキサメタゾン;6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸(S)−(2−オキソテトラヒドロフラン−3S−イル)エステル;フルニソリド;プロピオン酸フルチカソン;メチルプレドニゾロン;フランカルボン酸モメタゾン;プレドニゾロン;プレドニゾン;ロフレポニド;ST−126;トリアムシノロンアセトニドなど、または医薬として許容されるその塩が挙げられる。このようなステロイド性抗炎症剤は市販であり、または従来の手順および試薬を使用して調製することができる。例えば、ステロイド性抗炎症剤の調製および使用は、2004年6月15日に発行された米国特許第6,750,210(B2)号;2004年7月6日に発行された米国特許第6,759,398(B2)号;2003年3月25日に発行された米国特許第6,537,983号;2002年2月14日に公開された米国特許出願公開第US2002/0019378(A1)号;およびそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0123】
ステロイド性抗炎症剤が用いられる場合、典型的には、本発明の化合物と同時投与したときに治療的に有益な効果を生じる量で投与される。典型的には、ステロイド性抗炎症剤は、用量当たり約0.05μg〜約500μgを実現するのに十分な量で投与されるであろう。
【0124】
下記の例では、代表的な本発明の医薬組成物を例示する。
【0125】
(実施例A)
乾燥粉末組成物
微粉化された本発明の化合物(100mg)を、粉砕ラクトース(25g)とブレンドする(例えば、粒子の約85%以下が約60μm〜約90μmのMMDを有し、15%以上の粒子が15μm未満のMMDを有するラクトース)。次いで、このブレンドされた混合物を、用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を実現するのに十分な量で可剥性のブリスターパックの個々のブリスターに充填する。ブリスターの内容物を、ドライパウダー吸入器を使用して投与する。
【0126】
(実施例B)
乾燥粉末組成物
微粉化された本発明の化合物(1g)を、粉砕ラクトース(200g)とブレンドし、化合物と粉砕ラクトースとの重量比が1:200のバルク組成物を形成する。ブレンドされた組成物を、用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を送達することができる乾燥粉末吸入装置に詰める。
【0127】
(実施例C)
乾燥粉末組成物
微粉化された本発明の化合物(100mg)および微粉化されたステロイド性抗炎症剤(500mg)を、粉砕ラクトース(30g)とブレンドする。次いで、このブレンドされた混合物を、用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を得るのに十分な量で、可剥性のブリスターパックの個々のブリスターに充填する。ブリスターの内容物を、ドライパウダー吸入器を使用して投与する。
【0128】
(実施例D)
定量吸入器用組成物
微粉化された本発明の化合物(10g)を、レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することによって調製した溶液に分散させる。このようにして得られた懸濁液を噴霧乾燥し、次いで微粉化し、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉化された組成物を形成する。次いで、微粉化された組成物を、定量吸入器によって投与される場合用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を実現するのに十分な量の加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含有する定量吸入カートリッジに充填する。
【0129】
(実施例E)
ネブライザー用組成物
本発明の化合物(25mg)を、クエン酸緩衝(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解する。化合物が溶解するまで混合物を攪拌し、超音波処理する。溶液のpHを調べ、必要に応じて1Nの水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり加えることによってpH5に調節する。用量当たり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を実現するネブライザー装置を使用して溶液を投与する。
【0130】
(実施例F)
硬質ゼラチンカプセル
本発明の化合物(50g)、噴霧乾燥ラクトース(440g)およびステアリン酸マグネシウム(10g)を完全にブレンドする。このようにして得られた組成物を、経口投与される硬質ゼラチンカプセル(カプセル当たり500mgの組成物)に充填する。
【0131】
(実施例G)
経口懸濁液
下記の成分を完全に混合し、経口投与用懸濁液を形成する。
【0132】
【化21】

このようにして得られた懸濁液は、懸濁液10mL当たり100mgの活性成分を含有する。懸濁液を経口投与する。
【0133】
(実施例H)
注射用組成物
本発明の化合物(0.2g)を、0.4Mの酢酸ナトリウム緩衝液(2.0mL)とブレンドする。このようにして得られた溶液のpHを、必要に応じて0.5Nの塩酸水溶液または0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を使用してpH4に調節し、次いで注射用に十分な水を加え、20mLの総容量とする。次いで、混合物を無菌フィルター(0.22ミクロン)で濾過し、注射による投与に適した滅菌溶液を提供する。
【0134】
有用性
本発明の化合物は、βアドレナリン受容体アゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する、したがって、このような化合物は、βアドレナリン受容体またはムスカリン受容体によって媒介される病状、すなわち、βアドレナリン受容体アゴニストまたはムスカリン受容体アンタゴニストで治療することによって回復する病状を治療するために治療剤として有用であることが見込まれる。このような病状は、Eglenら、Muscarinic Receptor Subtypes:Pharmacology and Therapuetic Potential、DN&P、10(8)号、462〜469頁(1997年);Emilienら、Current Therapeutic Uses and Potential of beta-Adrenoceptor Agonists and Antagonists、European J. Clinical Pharm.、53(6)号、389〜404頁(1998年)およびそこで引用されている参考文献の教示によって例示されているように当業者には周知である。このような病状には、例示として、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎および喘息様気管支炎および気腫)、喘息、肺線維症などの可逆性気道閉塞と関連がある肺障害または疾患が挙げられる。他の状態には、早期分娩、うつ病、うっ血性心不全、皮膚疾患(例えば、炎症性、アレルギー性、乾癬性および増殖性皮膚疾患)、消化性酸を低下させることが望ましい状態(例えば、消化性潰瘍および胃潰瘍)および筋肉疲労疾患が挙げられる。
【0135】
したがって、一実施形態では、本発明は、肺障害を治療するための方法に関し、この方法は治療を必要としている患者に式Iの化合物の治療有効量を投与するステップを含む。肺障害を治療するために使用する場合、本発明の化合物は典型的には、1日当たりの多回用量、1日当たりの単回用量または1週間当たりの単回用量で吸入によって投与されるであろう。一般に、肺障害を治療するための用量は、約10μg/日〜約500μg/日の範囲であろう。
【0136】
その方法の態様の1つでは、本発明は、慢性閉塞性肺疾患または喘息を治療する方法に関し、この方法は患者に式Iの化合物の治療有効量を投与するステップを含む。一般に、COPDまたは喘息を治療するための用量は、約10μg/日〜約500μg/日の範囲であろう。「COPD」という用語は、Barnes、Chronic Obstructive Pulmonary Disease、N. Engl. J. Med.、2000年:343号:269〜78頁、およびそこで引用されている参考文献の教示によって例示されているような、慢性閉塞性気管支炎および気腫を含めた種々の呼吸状態を含むことを当業者は理解している。
【0137】
吸入によって投与する場合、本発明の化合物は典型的には、気管支拡張を生じる効果を有する。したがって、その方法の態様のその他では、本発明は、哺乳動物において気管支拡張を生じさせる方法に関し、この方法は、哺乳動物に、式Iの化合物の気管支拡張を生じさせる量を投与するステップを含む。一般に、気管支拡張を生じさせる用量は、約10μg/日〜約500μg/日の範囲であろう。
【0138】
治療剤として使用する場合、本発明の化合物は、任意選択で他の治療剤または薬剤と組み合わせて投与される。特に、ステロイド性抗炎症剤と共に本発明の化合物を投与することによって、三重の治療(すなわち、βアドレナリン受容体アゴニスト活性、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性および抗炎症活性)を、2種の治療剤のみを使用して達成することができる。2種の治療剤を含有する医薬組成物(および組合せ)は典型的には、3種の治療剤を含有する組成物と比較して、製剤および/または投与がより容易であるため、このような2種の成分の組成物は、3種の治療剤を含有する組成物よりも有意な利点を提供する。したがって、特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、組合せおよび方法は、ステロイド性抗炎症剤をさらに含む。
【0139】
本発明の化合物は、βアドレナリンアゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有するため、このような化合物は、βアドレナリン受容体またはムスカリン受容体を有する生体系または生体試料を調査または研究するための研究道具としても有用である。さらに、このような化合物は、例えば、βアドレナリンアゴニスト活性およびムスカリン受容体アンタゴニスト活性の両方を有する新規な化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。このような生体系または生体試料は、βアドレナリン受容体および/またはムスカリン受容体を含み得る。βアドレナリンおよび/またはムスカリン受容体を有する任意の適切な生体系または生体試料は、in vitroまたはin vivoのいずれかで行うことのできるこのような研究において用いることができる。このような研究に適切である代表的な生体系または生体試料には、それだけに限らないが、細胞、細胞抽出物、形質膜、組織試料、哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタなど)などが挙げられる。
【0140】
研究道具として使用される場合、βアドレナリン受容体および/またはムスカリン受容体を含む生体系または生体試料を典型的には、本発明の化合物のβアドレナリン受容体をアゴナイズする量またはムスカリン受容体をアンタゴナイズする量と接触させる。次いで、化合物によってもたらされる生体系または生体試料への作用を、放射性リガンド結合アッセイにおける結合、または機能アッセイにおけるリガンドによって媒介される変化を測定することによる、あるいは哺乳動物における気管支保護アッセイにおいて化合物によって実現する気管支保護の量を決定することによるなどの従来の手順および装置を使用して決定または測定する。代表的な機能アッセイにおけるリガンドによって媒介される変化には、細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)におけるリガンドによって媒介される変化;(cAMPを合成する)酵素アデニル酸シクラーゼの活性におけるリガンドによって媒介される変化;受容体によって触媒される[35S]GTPSのGDPへの交換を介した、グアノシン5’−O−(チオ)三リン酸([35S]GTPS)の単離された膜への取込みにおけるリガンドによって媒介される変化;細胞内遊離カルシウムイオンのリガンドによって媒介される変化(例えば、蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices社のFLIPR(登録商標)によって測定される)などが挙げられる。本発明の化合物は、本明細書において挙げた機能アッセイにおいて、または同様の性質のアッセイにおいて、βアドレナリン受容体のアゴナイズ、または活性化をもたらし、ムスカリン受容体のアンタゴナイズ、または活性化の減少をもたらすことが予想される。本発明の化合物は典型的には、約0.1ナノモル〜約100ナノモルの範囲の濃度でこれらの研究において使用されるであろう。
【0141】
さらに、本発明の化合物は、他の化合物を評価するための研究道具として使用することができる。本発明のこの態様では、式Iの化合物は、アッセイにおいて試験化合物および式Iの化合物によって得られる結果の比較を可能にする標準物質として使用される。例えば、試験化合物または試験化合物の群についてのβアドレナリン受容体および/またはムスカリン受容体の結合データ(例えば、in vitroの放射性リガンド置換アッセイによって決定される)を、式Iの化合物のβアドレナリン受容体および/またはムスカリン受容体結合データと比較して、望ましい結合を有する試験化合物、すなわち式Iの化合物とほぼ同じまたはより優れた結合を有する試験化合物があれば同定する。あるいは例えば、気管支保護効果を、哺乳動物における気管支保護アッセイにおいて試験化合物および式Iの化合物について決定することができ、このデータをほぼ同じまたはより優れた気管支保護効果を提供する試験化合物を同定するために比較する。本発明のこの態様には、別々の実施形態として、(i)(適切なアッセイを使用した)比較データの作製、および(ii)対象となる試験化合物を同定するための試験データの分析の両方が挙げられる。
【0142】
本発明の化合物の特性および有用性は、当業者には周知である様々なin vitroおよびin vivoアッセイを使用して示すことができる。例えば、代表的なアッセイを、下記の実施例においてさらに詳細に記載する。
【実施例】
【0143】
下記の調製および実施例は、本発明の特定の実施形態および態様を例示するために提示する。しかし、特定の実施形態および態様の例示は、別段の指示がない限り本発明の範囲を何ら限定することを意図しない。
【0144】
下記の実施例において使用するすべての試薬、出発物質および溶媒は、民間の供給業者(Aldrich社、Fluka社、Sigma社など)から購入し、別段の指示がない限りさらに精製せずに使用した。
【0145】
下記の実施例において、HPLC分析は典型的には、Agilent社から供給されるZorbax Bonus RP2.1×50mmカラム(C14カラム)を備えたAgilent社(Palo Alto、CA)Series1100機器(3.5ミクロン粒径を有する)を使用して行った。214nmのUV吸光度で検出を行った。移動相「A」は、2%アセトニトリル、97.9%水、および0.1%トリフルオロ酢酸(v/v/v)であり、移動相「B」は、89.9%アセトニトリル、10%水、および0.1%トリフルオロ酢酸(v/v/v)であった。HPLC(10〜70)データは、6分間にわたり0.5mL/分の流量の10%〜70%の移動相Bのグラジエントで得た。HPLC(5〜35)データは、5分間にわたり0.5mL/分の流量の5%〜35%の移動相Bのグラジエントで得た。HPLC(10〜90)データは、5分間にわたり0.5mL/分の流量の10%〜90%の移動相Bのグラジエントで得た。
【0146】
液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)データを典型的には、Applied Biosystems社(Foster City、CA)モデルAPI−150EX機器で得た。LCMS10〜90データは、5分間にわたり10%〜90%の移動相Bのグラジエントで得た。
【0147】
小規模の精製を、典型的には、Applied Biosystems社のAPI150EX Prep Workstationシステムを使用して行った。移動相「A」は、0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水(v/v)であり、移動相「B」は、0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(v/v)であった。少量の試料(約3〜50mgの回収試料サイズ)のために、下記の条件を典型的には使用した。20mL/分の流量;15分グラジエントおよび5ミクロン粒子を有する20mm×50mmのPrism RPカラム(Thermo Hypersil−Keystone、Bellefonte、PA)。より大量の試料(すなわち、粗試料約100mg超)のためには、下記の条件を典型的には使用した。60mL/分の流量;30分グラジエントおよび10ミクロン粒子を有する41.4mm×250mmのMicrosorb BDSカラム(Varian社、Palo Alto、CA)。
【0148】
(実施例1)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イソシアナート(97.5g、521mmol)および4−ヒドロキシ−1−ベンジルピペリジン(105g、549mmol)(両方ともAldrich社、Milwaukee、WIから市販されている)を、共に70℃で12時間加熱し、その間にビフェニル−2−イルカルバミン酸1−ベンジルピペリジン−4−イルエステルの形成をLCMSによってモニターした。次いで、反応混合物を50℃に冷却し、エタノール(1L)を加え、次いで6Mの塩酸(191mL)をゆっくりと加えた。次いで反応混合物を周囲温度に冷却し、ギ酸アンモニウム(98.5g、1.56mol)を加え、溶液を窒素ガスで20分間激しく泡立てた。次いで、パラジウム(活性炭上で10重量%(乾量基準))(20g)を加えた。反応混合物を40℃で12時間加熱し、次いでセライトパッドで濾過した。次いで溶媒を減圧下で除去し、1Mの塩酸(40mL)を粗残渣に加えた。次いで、水酸化ナトリウム(10N)を加え、pHを12に調節した。水層を酢酸エチル(2×150mL)で抽出し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、次いで溶媒を減圧下で除去し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(155g、100%)を得た。HPLC (10〜70) Rt = 2.52; MS m/z: [M+H+] C18H20N2O2計算値297.15;実測値297.3。
【0149】
(実施例2)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸
ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(50g、67.6mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、アクリル酸(15.05mL、100mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を、還流させながら50℃で18時間加熱し、次いで溶媒を除去した。メタノール(600mL)を加え、この混合物を75℃で2時間加熱し、次いで室温に冷却し、濃厚なスラリーを形成させた。固体を濾過によって回収し、メタノール(50mL)で洗浄し、空気乾燥し、3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(61g、96%純度)を白色粉末として得た。
【0150】
(実施例3)
N−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}−ホルムアミド酢酸塩
ステップA N−{5−[(R)−2−ベンジルアミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ベンジルオキシフェニル}ホルムアミド
500mLの三つ口丸底フラスコに、N−{2−ベンジルオキシ−5−[(R)−2−ブロモ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]フェニル}ホルムアミド(100g、215mmol)およびN−メチル−2−ピロリドン(300mL)を加えた。ベンジルアミン(69.4mL、648mol)を加え、反応混合物を窒素でフラッシュした。次いで反応混合物を90℃に加熱し、約8時間攪拌した。次いで反応混合物を室温に冷却し、水(1.5L)および酢酸エチル(1.5L)を加えた。層を分離し、有機層を水(500mL)、水と飽和ブラインとの1:1混合物(計500mL)で洗浄し、次いで再び水(500mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、粗N−{5−[(R)−2−ベンジルアミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ベンジルオキシフェニル}ホルムアミド(100g、90%収率、75〜80%純度)をオレンジ色から茶色の濃厚な油として得た。
【0151】
ステップB N−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}−ホルムアミド酢酸塩
粗N−{5−[(R)−2−ベンジルアミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ベンジルオキシフェニル}ホルムアミド(100g、194mmol)を、メタノール(1L)および酢酸(25mL、291mmol)に溶解した。このようにして得られた混合物を、乾燥窒素でパージし、次いで水酸化パラジウムオンカーボン(20g、20重量%、約50%水)を加えた。反応混合物に、室温にて攪拌しながら約10時間水素を泡立たせた。次いで、混合物を乾燥窒素でパージし、混合物をセライトで濾過した。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、酢酸エチル(600mL)を残渣に加えた。この混合物を約2時間攪拌し、その時点で濃厚な黄色のスラリーが生じた。スラリーが濾過し、沈殿物を空気乾燥し、N−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}ホルムアミド酢酸塩(48g、98%純度)を黄色から白色の固体として得た。
LCMS (10〜70) Rt = 3.62; [M+H+]実測値311.3。
【0152】
(実施例4)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ステップA メチル2,5−ジメチル−4−ニトロベンゾアート
攪拌した2,5−ジメチル−4−ニトロベンゾアート(480mg、2.4mmol)の乾燥メタノール(8.2mL)溶液に、0℃で乾燥窒素下にて塩化チオニル(0.538mL、7.38mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を放置して室温まで温め、約7時間攪拌した。さらなる塩化チオニル(0.300mL)を加え、室温で一晩攪拌を続けた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解した。この溶液を、飽和水性炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮し、メチル2,5−ジメチル−4−ニトロベンゾアート(578mg)を淡黄色の固体として得た。HPLC (10〜70) Rt = 4.61; 1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 2.57 (3H, s), 2.61 (3H, s), 3.94 (3H, s), 7.82 (1H, s), 7.87 (1H, s)。
【0153】
ステップB メチル4−アミノ−2,5−ジメチルベンゾアート
メタノールと水との9:1混合物(計25mL)中のメチル2,5−ジメチル−4−ニトロベンゾアート(523mg、2.5mmol)の攪拌した溶液に、0℃で塩化アンモニウム(401mg、7.5mmol)を加えた。亜鉛(1.63g、25mmol)を1部ずつ加え、このようにして得られた混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、反応混合物をセライトで濾過し、セライトパッドをメタノールで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、このようにして得られた残渣を酢酸エチルに溶解した。この溶液を飽和水性炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、メチル4−アミノ−2,5−ジメチルベンゾアート(450mg)を黄色の油として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.14 (3H, s), 2.53 (3H, s), 3.83 (3H, s), 3.85 (2H, br s), 6.48 (1H, s), 7.72(1H, s)。
【0154】
ステップC メチル4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチルベンゾアート
ジクロロメタン(3.6mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.413mL)中の3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(670mg、1.82mmol)およびメチル4−アミノ−2,5−ジメチルベンゾアート(390mg、2.18mmol)の攪拌した溶液に、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(829mg、2.18mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、混合物を飽和水性炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、3%〜5%メタノールを含有するジクロロメタンで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、メチル4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチルベンゾアート(568mg、59%収率)を得た。LCMS (10〜70) Rt = 4.55; [M+H+] 実測値530.4。
【0155】
ステップD ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
攪拌した1Mの水素化アルミニウムリチウムのTHF(1.52mL、1.52mmol)溶液に、0℃でメチル4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチルベンゾアート(400mg、0.76mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を0℃で30分間攪拌し、次いで1Mの水酸化ナトリウム水溶液(5mL)と水(5mL)との1:1混合物を加え、2時間攪拌を続けた。ジクロロメタンを加え、有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。5%メタノールを含有するジクロロメタンで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステルを得た。LCMS (10〜70) Rt = 3.94; [M+H+] 実測値502.5。
【0156】
ステップE ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(151mg、0.3mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、0℃でジメチルスルホキシド(128μL、1.8mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(157μL、0.9mmol)を加えた。15分後に、三酸化硫黄ピリジン錯体(143mg、0.9mmol)を加え、0℃での攪拌を1時間続けた。水を加え反応をクエンチし、層を分離した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(150mg、100%収率)を得て、それをさらに精製せずに使用した。[M+H+] 実測値500.4。
【0157】
ステップF ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ジクロロメタンとメタノールとの1:1混合物(計3.0mL)中のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(150mg、0.30mmol)およびN−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}ホルムアミド(112mg、0.36mmol)の溶液を、室温で30分間攪拌した。トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(191mg、0.9mmol)を加え、このようにして得られた混合物を室温で一晩攪拌した。酢酸を加え反応をクエンチし、混合物を減圧下で濃縮し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステルを得て、それをさらに精製せずに使用した。LCMS (10〜70) Rt = 4.55; [M+H+] 実測値794.6。
【0158】
ステップG ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル(238mg、0.30mmol)のジクロロメタン(3.0mL)懸濁液に、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(147μL、0.90mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩攪拌し、次いで混合物を減圧下で濃縮した。分取−RP−HPLC(グラジエント:0.05%TFAを含む水中で2〜50%アセトニトリル)によって残渣を精製した。適切な画分を回収し、混合、凍結乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルをジトリフルオロ酢酸塩(50mg、97%純度)として得た。LPLC (2〜90) Rt = 2.76; [M+H+] 実測値680.8。
【0159】
(実施例5)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ステップA ジベンジル−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アミン
オーバーヘッド攪拌機、温度制御および添加漏斗を備えた2リットルの丸底フラスコに、4−ヨード−2,5−ジメチルアニリン(100.0g、0.405mol)(Spectra Group社、Millbury、OHから)を加えた。エタノール(1L)および固体炭酸カリウム(160g、1.159mol)を加え、次いでニートの臭化ベンジル(140mL、1.179mol)を一度に加えた。このようにして得られた混合物を30℃で約18時間攪拌し、その時点でHPLCは98%超の変換を示す。次いで、混合物を室温に冷却し、ヘキサン(1L)を加えた。この混合物を15分間攪拌し、次いで濾紙で濾過し、固体を取り出し、濾過ケーキをヘキサン(200mL)で洗浄した。回転エバポレーターを使用して、濾液の容量を約500mLまでに減らし、濃塩酸(30mL)を加えた。次いで残りの溶媒を、回転エバポレーターを使用して除去した。このようにして得られた残渣に、ヘキサン(500mL)を加え、この混合物を約30分攪拌し、その時点で易流動性のスラリーが形成された。スラリーを濾過し、濾過ケーキをヘキサン(200mL)で洗浄し、乾燥し、ジベンジル−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アミン塩酸塩(115g、62%収率、97.5%純度)を緑がかった色の固体として得た。
【0160】
ジベンジル−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アミン塩酸塩を、3Lのフラスコに移し、トルエン(1L)および1Mの水酸化ナトリウム水溶液(1L)を加えた。このようにして得られた混合物を1時間攪拌し、次いで層を分離した。有機層を希釈したブライン(500mL)で洗浄し、溶媒を回転蒸発によって除去し、ジベンジル−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アミン(80g)を半固体の濃厚な油として得た。(あるいはこのステップにおいて、ジクロロメタンをトルエンの代わりに使用することができる)。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ2.05 (3H, s), 2.19 (3H, s), 3.90 (4H, s), 6.91 (1H, s), 7.05-7.20 (10H, m),7.42 (1H, s); MS [M+H+] 実測値428。
【0161】
ステップB 4−ジベンジルアミノ−2,5−ジメチルベンズアルデヒド塩酸塩
オーバーヘッド攪拌機、温度制御および添加漏斗を備えた1リットルの三つ口丸底フラスコに、ジベンジル−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アミン(15g、35mmol)を加えた。トルエン(300mL)を加え、このようにして得られた混合物を約15分間攪拌した。反応フラスコを乾燥窒素でパージし、約−20℃に冷却し、ヘキサン中の1.6Mのn−ブチルリチウム(33mL、53mmol)を、添加漏斗によって1滴ずつ加えた。添加の間、反応混合物の内部温度を−10℃未満に維持した。添加が完了したときに、このようにして得られた混合物を約−15℃で15分間攪拌した。次いでN,N−ジメチルホルムアミド(10mL、129mmol)を1滴ずつ加え、その間内部反応温度を0℃未満に維持した。次いでこのようにして得られた混合物を−20℃〜0℃で約1時間攪拌した。次いで1Mの塩酸水溶液(200mL)を5分間にわたって加え、このようにして得られた混合物を15分間攪拌した。次いで層を分離し、有機層を希釈したブライン(100mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、4−ジベンジルアミノ−2,5−ジメチルベンズアルデヒド塩酸塩(11.5g、90%収率、95%純度)を濃厚な油として得て、静置すると固化した。生成物は、約3〜5%のデス−ヨード副生成物を含有した。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ2.42 (3H, s), 2.50 (3H, s), 4.25 (4H, s), 6.82 (1H, s), 7.10-7.30 (10H, m),7.62 (1H, s), 10.15 (1H, s); MS [M+H+] 実測値330.3。
【0162】
ステップC 4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルアミン
500mLの丸底フラスコに、4−ジベンジルアミノ−2,5−ジメチルベンズアルデヒド塩酸塩(11.5g、31.4mmol)およびトルエン(150mL)を加え、このようにして得られた混合物を、塩が完全に溶解するまで攪拌した。次いで反応フラスコを乾燥窒素で5分間パージした。エチレングリコール(5.25mL、94.2mmol)およびp−トルエンスルホン酸(760mg、6.2mmol)を加え、このようにして得られた混合物を60℃〜80℃で約20時間加熱した。次いで溶媒を、40℃にてロータリーエバポレーターで(約40分にわたって)ゆっくりと除去した。トルエン(100mL)を残渣に加え、溶媒を再び40℃にてロータリーエバポレーターゆっくり除去した。別の一定分量のトルエン(100mL)を使用してこの処理を繰り返し、混合物を乾燥するまで蒸発させた。酢酸エチル(150mL)および飽和水性炭酸水素ナトリウム(100mL)を残渣に加え、層を分離した。有機層をブライン(50mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、粗ジベンジル−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチル−フェニル)アミン(11.4g)を得た。
【0163】
粗ジベンジル−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチル−フェニル)アミンを、エタノールと水との2:1混合物(計150mL)に溶解し、このようにして得られた混合物を乾燥窒素で5分間にわたりパージした。パラジウム炭素(2.3g、10重量%、約50%水を含有)および固体炭酸水素ナトリウム(1.0g)を加え、このようにして得られた混合物を、25℃〜30℃にて約1atmの水素で約8時間水素化した。次いで、混合物をセライトで濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルアミン(5.6g、92%収率)を濃厚な油として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ2.05 (3H, s), 2.22 (3H, s), 3.7-3.9 (4H, m), 3.95 (4H, s), 5.59 (1H, s), 6.72(1H, s), 7.0-7.25 (11H, m)。
【0164】
ステップD N−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド
500mLの丸底フラスコに粗4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルアミン(5.6g、29mmol)、ジクロロメタン(100mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.6mL、43.5mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を、成分が溶解するまで室温で攪拌し、次いで混合物を0℃に冷却した。次いで、塩化アクリロイル(2.35mL、29mmol)を5分間にわたって1滴ずつ加えた。反応混合物を0℃〜5℃で1時間攪拌し、次いで水(50mL)を加え、約30分間攪拌を続け、その時点で微細固体が形成された。混合物を濾過し、固体を収集した。次いで、濾液の層を分離し、有機層を減圧下で乾燥するまで濃縮した。ジクロロメタン(50mL)を残渣に加え、易流動性のスラリーが生じるまでこの混合物を攪拌した。(上記の微細固体を回収するために使用したのと同じ漏斗を使用して)スラリーを濾過し、濾過ケーキをジクロロメタン(10mL)で洗浄し、乾燥し、N−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(3.1g、97%純度)を白色からオフホワイトの固体として得た。
【0165】
次いで、上記からの濾液を乾燥するまで蒸発させ、メタノール(10mL)を残渣に加えた。この混合物を15分間攪拌し、次いで沈殿物を濾過によって回収し、メタノール(5mL)で洗浄し、乾燥し、N−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(0.8g、95%純度)の2回目の収穫を得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ2.10 (3H, s), 2.23 (3H, s), 3.85-4.10 (4H, m), 5.60-6.40 (3H, m), 5.59 (1H, s),7.18 (1H, s), 7.23 (1H, s)。
【0166】
ステップE ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩
50mLの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(1.2g、4.04mmol)およびN−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(1.0g、4.04mmol)を加えた。エタノール(10mL)およびジクロロメタン(10mL)を加え、スラリーを形成させた。反応混合物を45℃〜50℃で約18時間加熱し、次いで室温に冷却した。1Mの塩酸水溶液(10mL)を加え、このようにして得られた混合物を約3時間激しく攪拌した。ジクロロメタン(10mL)を加え、このようにして得られた混合物を約5分間攪拌した。次いで、層を分離し、有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、粗ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩(1.9g)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.2-1.4 (2H, m), 1.58-1.75 (2H, m), 2.0-2.17 (2H, m), 2.19 (3H, s), 2.38 (3H,s), 2.41-2.50 (4H, m), 2.5-2.75 (2H, m), 4.31-4.42 (1H, m), 7.10-7.35 (9H, m),7.55 (1H, s), 7.75 (1H, s), 8.59 (1H, s), 9.82 (1H, s), 9.98 (1H, s); MS [M+H+] 実測値500.2。
【0167】
ステップF ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
2Lの三つ口丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル塩酸塩(38g、70mmol)およびN−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}ホルムアミド酢酸塩(33.6g、91mmol)を加えた。ジクロロメタン(500mL)およびメタノール(500mL)を加え、このようにして得られた混合物を、乾燥窒素下にて室温で約3時間攪拌した。次いで反応混合物を0℃〜5℃に冷却し、固体トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(44.5g、381mmol)を10分間にわたって1部ずつ加えた。反応混合物を、0℃から室温に約2時間にわたってゆっくりと温め、次いで0℃に冷却した。飽和水性炭酸水素ナトリウム(500mL)およびジクロロメタン(500mL)を加えた。この混合物を完全に攪拌し、次いで層を分離した。有機層をブライン(500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、粗ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル(55g、86%純度)を黄色の固体として得た。
【0168】
粗生成物(30g)を、2%メタノールを含有するジクロロメタン(計150mL)に溶解し、2%メタノールおよび0.5%水酸化アンモニウムを含有するジクロロメタンを詰めて平衡化したシリカゲルカラム(300g)に充填した。生成物を、2%メタノールおよび0.5%水酸化アンモニウム(1L)を含有するジクロロメタン、4%メタノールおよび0.5%水酸化アンモニウム(1L)を含有するジクロロメタン、ならびに5%メタノールおよび0.5%水酸化アンモニウム(約3L)を含有するジクロロメタンを使用してカラムから溶出した。画分(200mL)を回収し、90%超の純度を有するそれらの画分を、混合し、減圧下で濃縮し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル(21.6g、96.5%純度)を黄色がかった固体として得た。MS [M+H+] 実測値794.6。
【0169】
ステップG ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルフッ化水素酸塩
1Lの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(21.5g、27.1mmol)およびジクロロメタン(200mL)を加えた。このようにして得られた混合物を、成分が溶解するまで室温で攪拌し、次いでトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(8.85mL、54.2mmol)を加え、このようにして得られた混合物を25℃で約48時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、濃厚なペーストを得た。ジクロロメタン(100mL)および酢酸エチル(200mL)をペーストに加え、このようにして得られた混合物を30分間攪拌した。このようにして得られたスラリーを、乾燥窒素下にてゆっくりと濾過し、濾過ケーキをジクロロメタンと酢酸エチルとの1:2混合物(計100mL)で洗浄し、窒素下にて2時間乾燥し、次いで真空下にて一晩乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルをフッ化水素酸塩(25g、96.9%純度)として得たが、これは硬質クレー様の固体であった。MS [M+H+] 実測値680.8。
【0170】
ステップH ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルフッ化水素酸塩(25g)を、移動相として1%トリフルオロ酢酸を含有する水中のアセトニトリルの10%〜50%混合物を使用した3つの等量のバッチで、6インチ逆相カラム(Microsorb固相)によって精製した。99%超の純度の画分を混合し、次いで1容の水で希釈した。このようにして得られた混合物を0℃に冷却し、混合物のpHが約7.5〜8.0となるまで固体炭酸水素ナトリウムを加えた。約5分以内に、白色スラリーが生じた。スラリーを30分間攪拌し、次いで濾過した。濾過ケーキを水(500mL)で洗浄し、約4時間で空気乾燥し、次いで一晩真空乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(12g、99+%純度)を半結晶質の遊離塩基として得た。
【0171】
(実施例6)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ステップA ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
500mLの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(17.0g、58mmol)およびN−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(13.1g、52.9mmol)を加えた。エタノール(150mL)およびジクロロメタン(150mL)を加え、スラリーを形成させた。反応混合物を50℃〜55℃で約24時間加熱し、次いで室温に冷却した。溶媒の大部分をロータリーエバポレーターで除去し、濃厚なスラリーとした。エタノール(試薬グレード)を加え、約200mLの総容量とし、このようにして得られた混合物を80℃に加熱し、次いでゆっくりと室温に冷却した。このようにして得られた濃厚な白色スラリーを濾過し、エタノール(20mL)で洗浄し、真空乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(23.8g、約98%純度)を白色固体として得た。
【0172】
ステップB ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
500mL丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(15g、27.6mmol)およびアセトニトリル(150mL)を加え、スラリーを形成させた。2Mの塩酸水溶液(75mL)を加え、このようにして得られた混合物を30℃で1時間攪拌した。次いで、混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(150mL)を加えた。2Mの水酸化ナトリウム水溶液(75mL)を加え、pHを調べ、次いで溶液のpHが9〜10の範囲となるまでさらなる2Mの水酸化ナトリウムを加えた。層を分離し、有機層を希釈したブライン(75mL;1:1ブライン/水)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(12.5g、約98%純度)を得た。所望であれば、エタノール(3容のエタノール)でスラリーを形成し、スラリーを80℃に加熱し、次いで室温にゆっくり冷却し、濾過によって単離することによって、この中間体の純度を増すことができる。
【0173】
ステップC ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルイミノ]メチル}−2,5−ジメチル−フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
250mLの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(7.1g、14.2mmol)およびN−{5−[(R)−2−アミノ−1−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)エチル]−2−ヒドロキシフェニル}ホルムアミド酢酸塩(5.8g、15.6mmol)を加えた。メタノール(100mL)を加え、スラリーを形成させ、この混合物を45℃〜50℃で窒素下にて1時間攪拌した。次いで、混合物を室温に冷却し、トルエン(50mL)を加え、溶媒を35℃〜45℃の範囲の温度にてロータリーエバポレーターで除去した。トルエン(50mL)を残渣に加え、溶媒を除去し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルイミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(12g)を黄色からオレンジ色の固体として得た。
【0174】
ステップD ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
水素化フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルイミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(4.6g)および2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)を加えた。このようにして得られた混合物を、固体が溶解するまで(約5分)攪拌し、次いで混合物を窒素でパージした。白金担持カーボン(920mg、5重量%、担持活性炭)を加え、混合物を50psiで6時間水素化した(Parr shaker)。次いで、混合物をセライトで濾過し、セライトを2−メチルテトラヒドロフラン(10mL)で洗浄した。濾液に、チオプロピル修飾シリカゲル(溶液の20重量%、Silicycle)を加え、この混合物を25℃〜30℃で3時間攪拌した。次いで、混合物をセライトで濾過し、濃縮し、溶媒を除去した。残渣をメタノール(残渣1g毎に5mL)に溶解し、次いでこのようにして得られた溶液を、激しく攪拌した飽和水性炭酸水素ナトリウムと水(残渣1g毎に40mL)との1:1混合物にゆっくり加えた。このようにして得られたオフホワイトのスラリーを20分間攪拌し、次いで濾過した。濾過ケーキを水(20容)で洗浄し、3時間空気乾燥し、次いで室温で一晩真空乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(80%回収、約96%純度)を得た。
【0175】
ステップE ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルL−酒石酸塩
200mLの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(tert−ブチルジメチルシラニルオキシ)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]−メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(3.8g、4.8mmol)および2−メチルテトラヒドロフラン(40mL)を加えた。このようにして得られた混合物を、成分が溶解するまで室温で攪拌し(約15分)、次いでトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(0.94mL、5.76mmol)を加え、得られた混合物を25℃で約24時間攪拌した。この混合物に、飽和水性炭酸水素ナトリウムと水との1:1混合物(40mL)および2−メチルテトラヒドロフランを加え、このようにして得られた混合物を固体が溶解するまで攪拌した(溶液のpH約8)。層を分離し、有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、固形のL−酒石酸(650mg)を加えた。このようにして得られた混合物を25℃〜30℃で18時間攪拌し、次いで濾紙で濾過した。濾過ケーキを2−メチルテトラヒドロフラン(10mL)、イソプロパノール(10mL)で洗浄し、直ちに真空下に置き、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルL−酒石酸塩(3.7g、>97%純度)を得た。
【0176】
ステップF ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル
250mLの丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルL−酒石酸塩(3.5g)およびメタノール(35mL)を加え、このようにして得られた混合物を15分間攪拌した。飽和水性炭酸水素ナトリウムと水(70mL)との1:1混合物を、5分にわたり加え、攪拌を2時間続けた。このようにして得られたオフホワイトスラリーを濾過し、濾過ケーキを水(20mL)で洗浄し、2時間空気乾燥し、次いで一晩真空乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル(2.3g)を半結晶質の遊離塩基として得た。
【0177】
JEOL ECX−400NMR分光計を使用して周囲温度で、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル(DMSO−d約0.75mL中に22.2mg)の試料について、Hおよび13C NMRスペクトルを得た。
【0178】
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6), 主異性体, δ 9.64 (br, 1H), 9.54 (br s, 1H), 9.43 (s,1H), 8.67 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 8.03 (d, J = 1.9, 1H), 7.25-7.45 (m, 9H), 〜7.3(nd, 1H), 7.07 (s, 1H), 6.88 (dd, J = 8.2, 1.9, 1H), 6.79 (d, J = 8.2, 1H),5.15 (br, 1H), 4.53 (dd, J = 7.3, 4.7, 1H), 4.47 (m, 1H), 〜3.65 および 〜3.60 (AB対,2H), 2.68 (br m, 2H), 〜2.59 (nd, 4H), 2.44 (br t, J = 6.5, 2H), 2.20 (s, 3H), 〜2.17(br m, 2H), 2.14 (s, 3H), 1.73 (br, 2H), 1.44 (br q, J = 〜9.0, 2H).
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6), 副異性体, δ 9.64 (br, 1H), 9.43 (s 1H), 9.26 (br d,J = 〜7.0, 1H), 8.67 (s, 1H), 8.50 (br d, J = 〜7.0, 1H), 7.25-7.45 (m, 9H), 〜7.3(nd, 1H), 7.07 (s, 1H), 〜7.07 (nd, 1H), 6.95 (dd, J = 8.3, 1.8, 1H), 6.83 (d, J=8.3, 1H), 5.15 (br, 1H), 4.47 (m, 1H), 〜3.65 および 〜3.60 (AB対, 2H), 2.68 (br m,2H), 〜2.59 (nd, 2H), 2.44 (br t, J = 6.5, 2H), 2.20 (s, 3H), 〜2.17 (br m, 2H),2.14 (s, 3H), 1.73 (br, 2H), 1.44 (br q, J = 〜9.0, 2H).
13C NMR(100 MHz, DMSO-d6), 主異性体, δ 170.0, 159.9, 153.9, 145.5, 139.3,137.6, 135.2, 135.0, 134.8, 133.4, 133.4, 130.2, 130.2, 128.6, 128.2, 127.8,127.4, 127.2, 127.0, 126.1, 125.7, 125.6, 121.7, 118.6, 114.5, 71.4, 70.0,57.4, 53.9, 50.3, 50.1, 33.7, 30.7, 18.2, 17.5.
13C NMR(100 MHz, DMSO-d6), 副異性体, δ 170.0, 163.4, 153.9, 147.8, 139.3,137,6, 135.7, 135.2, 135.0, 134.8, 133.4, 133.4, 130.2, 130.2, 128.6, 128.2,127.8, 127.4, 127.2, 127.0, 126.1, 125.7, 123.0, 119.6, 115.6, 71.0, 70.0,57.3, 53.9, 50.3, 50.1, 33.7, 30.7, 18.2, 17.5。
【0179】
Hおよび13C NMRスペクトルは、主要な異性体(約82モルパーセント)および少量の異性体(約18モルパーセント)の存在を示し、これは−NH−C(O)H結合での回転障害から生じる回転異性体であると思われた。フェニル基は、主要な異性体においてカルボニル酸素に対してsynであり、少量の異性体においてはantiであると考えられる。
【0180】
(実施例7)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルの形態IIの種結晶
半結晶質のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(500mg)をメタノール(50mL)に溶解し、曇点に達するまで水を加えた。このようにして得られた混合物を25℃で3時間攪拌し、このようにして得られた結晶質を濾過によって単離し、結晶質のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(420mg)を得た。この結晶質の遊離塩基は、約142℃〜約150℃で吸熱性熱流中にピークを示す示差走査熱量測定(DSC)トレース;ならびに約20.7±0.3、21.6±0.3、22.5±0.3および23.2±0.3の2θ値において他のピークの中で有意な回折ピークを有する粉末X線回折(PXRD)図形を有することが決定された。この結晶質の遊離塩基の形態を形態IIと表す。この化合物の形態IIおよび他の結晶質の遊離塩基の形態についてのさらなる情報は、本発明の譲受人に譲渡され本明細書と同日付で出願された米国特許出願第__号(整理番号P−222−US1)および2006年4月25日に出願された米国仮出願第60/794,709号(これらの開示内容は、全内容が参照により本明細書中に組み込まれている)に開示されている。
【0181】
(実施例8)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルの形態IIの結晶化
オーバーヘッド攪拌機、温度制御および添加漏斗を備えた3Lの三つ口丸底フラスコに、半結晶質のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(14g)およびメタノール(1.4L)を加えた。水(500mL)を一度に加え、次いで曇点に達するまでさらなる水(200mL)をゆっくりと加えた。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルの形態II(50mg)の種結晶を加え、このようにして得られた混合物を25℃で3時間攪拌し、その時点で易流動性のスラリーが生じた。水(300mL)を15分間にわたり加え、このようにして得られた混合物を25℃で一晩攪拌した。次いで混合物を濾過し、濾過ケーキを水(100mL)で洗浄し、約2時間空気乾燥し、次いで真空下にて室温で48時間乾燥し、結晶質のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(12.5g、99.6%純度)を得た。この結晶塩を形態IIであると決定した。
【0182】
(実施例9)
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]−ピペリジン−4−イルエステル
ステップA 4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルアミン
ジクロロメタンとメタノール(400mL)との1:1混合物中の2,5−ジメチルアニリン(20g、165mmol)の溶液に、炭酸水素ナトリウム(20.8g、250mmol)およびジクロロヨウ素酸テトラメチルアンモニウム(I)(44.7g、165mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を室温で1時間攪拌し、次いで水(500mL)を加えた。有機層を取り出し、5%水性チオ硫酸ナトリウム(500mL)およびブライン(500mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下にて濃縮し、4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルアミン(39.6g、98%収率)を得た。生成物をさらに精製せずに使用した。
【0183】
ステップB N−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド
4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルアミン(37.2g、151mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、炭酸水素ナトリウム(25.4g、302mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を0℃に冷却し、塩化アクリオリル(12.3mL、151mmol)を25分にわたってゆっくり加えた。このようにして得られた混合物を室温で一晩攪拌し、次いで濾過した。濾液の容量を約100mLまでに減らし、沈殿物が形成された。沈殿物を濾過、乾燥し、水(1L)で洗浄し、次いで再び乾燥し、N−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(42.98g、95%純度、90%収率)を得た。生成物をさらに精製せずに使用した。
【0184】
ステップC ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)−エチル]ピペリジン−4−イルエステル
N,N−ジメチルホルムアミドとイソプロパノール(700mL)との6:1v/v混合物中のN−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニル)アクリルアミド(32.2g、107mmol)の溶液に、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(36.3g、123mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を50℃で24時間、次いで80℃で24時間加熱した。次いで反応混合物を室温に冷却し、真空下にて濃縮した。残渣をジクロロメタン(1L)に溶解し、この溶液を1Nの塩酸水溶液(500mL)、水(500mL)、ブライン(500mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。エタノール(400mL)を加え、このようにして得られた混合物を真空下にて約400mLの容量まで濃縮し、その時点で沈殿物が形成された。沈殿物を濾過、乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(59.6g、84%純度、79%収率)を得た。m/z: [M+H+] C29H32IN3O3計算値598.49; 実測値598.5。
【0185】
ステップD 4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチル安息香酸メチルエステル
N,N−ジメチルホルムアミドとメタノール(600mL)との5:1v/v混合物中のビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヨード−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(56g、94mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(49mL、281mmol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(3.9g、9.4mmol)および酢酸パラジウム(II)(2.1g、9.4mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を一酸化炭素でパージし、次いで一酸化炭素雰囲気下にて70℃〜80℃で一晩攪拌した(バルーン圧力)。反応混合物を真空下にて濃縮し、残渣をジクロロメタン(500mL)に溶解した。この混合物を1Nの塩酸水溶液(500mL)、水(500mL)、次いでブライン(500mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次いで真空下にて濃縮した。残渣をエタノールと混合し(エタノール対残渣、約5:1v/w)、すべての固形物が溶解するまで混合物を加熱した。この溶液を室温にゆっくりと冷却し、このようにして得られた沈殿物を濾過によって単離し、4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチル安息香酸メチルエステル(47.3g、97%純度、92%収率)を得た。m/z: [M+H+] C31H35N3O5計算値530.63; 実測値530.4。
【0186】
ステップE ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチル−フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
4−{3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオニルアミノ}−2,5−ジメチル安息香酸メチルエステル(49.8g、93.9mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液を0℃に冷却し、水素化アルミニウムリチウム(10.7g、281.7mmol)を1部ずつ加えた(10×1.07g)。このようにして得られた混合物を3時間攪拌し、次いで水(10.7mL)、次いで1Nの水酸化ナトリウム水溶液(10.7mL)およびさらなる水(32.1mL)を加えた。この混合物を一晩攪拌し、次いで濾過した。有機層を真空下にて濃縮し、残渣を酢酸エチルと混合した(酢酸エチル対残渣、約5:1v/w)。この混合物をすべての固形物が溶解するまで加熱し、次いで溶液を室温に冷却した。このようにして得られた沈殿物を濾過し、乾燥し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(24.6g、95%純度、47.5%収率)を得た。この材料をさらに精製せずに使用した。m/z: [M+H+] C30H35N3O4計算値502.62; 実測値502.5。
【0187】
ステップF ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(5.0g、10mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(8.7mL、50mmol)およびジメチルスルホキシド(5.6mL、100mmol)を加えた。このようにして得られた混合物を0℃に冷却し、三酸化硫黄ピリジン錯体(8.0g、50mmol)を加えた。反応混合物を0℃で1時間攪拌し、次いで水(300mL)を加えた。有機層を取り出し、1Nの塩酸水溶液(300mL)およびブライン(300mL)で洗浄した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−ホルミル−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルを含有するこのようにして得られた溶液を、さらに精製せずに使用した。m/z: [M+H+] C30H33N3O4計算値500.60; 実測値500.4。
【0188】
(実施例10)
ヒトM、M、MおよびMムスカリン受容体を発現している細胞からの細胞培養および膜調製
クローン化されたヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプを各々安定的に発現しているCHO細胞株を、10%FBSおよびジェネテシン250μg/mLを添加したHams F−12培地中でほぼ集密的にまで増殖させた。細胞を5%CO、37℃のインキュベーター中で増殖させ、dPBS中の2mMのEDTAによって浮遊させた。細胞を5分の650×gでの遠心分離によって回収し、細胞ペレットを−80℃で凍結保存するか、または使用するために膜を直ちに調製した。膜調製のために、細胞ペレットを溶解緩衝液中で再懸濁させ、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG社;20秒×2破裂)でホモジナイズした。粗膜を、40,000×gで4℃にて15分間遠心分離した。次いで、膜ペレットを再懸濁緩衝液で再懸濁させ、Polytron組織破壊器で再びホモジナイズした。Lowryら、1951年、Journal of Biochemistry、193号、265頁に記載されている方法によって膜懸濁液のタンパク質濃度を決定した。すべての膜を−80℃にて一定分量で凍結保存するか、または直ちに使用した。一定分量の調製したhM受容体膜を、PerkinElmer社(Wellesley、MA)から直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0189】
(実施例11)
ムスカリン受容体についての放射性リガンド結合アッセイ
クローン化されたムスカリン受容体についての放射性リガンド結合アッセイを、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて100μLの総アッセイ容量で行った。hM、hM、hM、hMまたはhMムスカリン性サブタイプのいずれかを安定的に発現しているCHO細胞膜を、下記の特定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)にアッセイ緩衝液で希釈した。同様のシグナル(cpm)を得るために、hMでは10μg、hMでは10〜15μg、hMでは10〜20μg、hMでは10〜20μg、およびhMでは10〜12μgであった。アッセイプレートへの添加の前に、Polytron組織破壊器を使用して膜を短時間ホモジナイズした(10秒)。L−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech社、Buckinghamshire、England)を0.001nM〜20nMの範囲の濃度で使用して、放射性リガンドのK値を決定するための飽和結合研究を行った。1nMおよび11の異なる試験化合物濃度の[H]−NMSを用いて、試験化合物のK値を決定するための置換アッセイを行った。最初に試験化合物を、希釈用緩衝液中で400μMの濃度まで溶解し、次いで希釈用緩衝液(5×)で10pM〜100μMの範囲の最終濃度まで段階希釈した。添加順序およびアッセイプレートの容量は、下記の通りであった。放射性リガンド25μL、希釈した試験化合物25μL、および膜50μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートした。1%BSA中で前処理したGF/Bガラス繊維フィルタプレート(PerkinElmer社)で急速に濾過することによって結合反応を終了させた。フィルタプレートを洗浄緩衝液(10mMのHEPES)で3度すすぎ、結合していない放射能を除去した。次いで、プレートを空気乾燥し、Microscint−20液体シンチレーション流体(PerkinElmer社)50μLを各ウェルに加えた。次いで、プレートをPerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer社)で計数した。結合データを、1サイト競合モデルを使用して、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)で非線形回帰分析によって分析した。試験化合物についてのK値を、Cheng−Prusoff式(Cheng Y;Prusoff WH.(1973年)Biochemical Pharmacology、22(23)号:3099〜108頁)を使用して、放射性リガンドの観察されたIC50値およびK値から計算した。K値をpK値に変換し、相乗平均および95%信頼区間を決定した。次いで、これらの要約統計量をデータ報告のためにK値に戻した。
【0190】
このアッセイにおいて、より低いK値は、試験化合物が試験した受容体に対して高い結合親和性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、M、M、M、MおよびMムスカリン受容体サブタイプについて10nM未満のK値を有することが見出された。
【0191】
(実施例12)
ヒトβ、βまたはβアドレナリン受容体を発現している細胞からの細胞培養および膜調製
クローン化されたヒトβおよびβアドレナリン受容体を安定的に発現しているヒト胎児腎(HEK−293)細胞株、またはクローン化されたヒトβアドレナリン受容体を安定的に発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を、ジェネテシン500μg/mLの存在下にてDMEMまたは10%FBSを含むHams F−12培地中で、ほぼ集密的にまで増殖させた。細胞単層を、PBS中の2mMのEDTAで浮遊させた。細胞を、1,000rpmの遠心分離によってペレットにし、細胞ペレットを−80℃で凍結保存するか、または使用するために膜を直ちに調製した。βおよびβ受容体を発現している膜の調製のために、細胞ペレットを、溶解緩衝液(10mMのHEPES/HCl、10mMのEDTA、pH7.4、4℃)で再懸濁し、氷上のタイトフィット型のDounceガラスホモジナイザー(30ストローク)を使用してホモジナイズした。よりプロテアーゼ感受性であるβ受容体を発現している膜については、細胞ペレットを、50mL緩衝液(Roche Molecular Biochemicals社、Indianapolis、IN)当たり1錠の「Complete Protease Inhibitor Cocktail Tablets with 2mM EDTA」を添加した溶解緩衝液(10mMのTris/HCl、pH7.4)中でホモジナイズした。ホモジネートを20,000×gで遠心分離し、このようにして得られたペレットを、上記のように再懸濁および遠心分離によって溶解緩衝液で一度洗浄した。次いで、最終的なペレットを、氷冷の結合アッセイ緩衝液(75mMのTris/HCl(pH7.4)、12.5mMのMgCl、1mMのEDTA)中で再懸濁した。Lowryら、1951年、Journal of Biological Chemistry、193号、265頁;およびBradford、Analytical Biochemistry、1976年、72号、248〜54頁に記載されている方法によって、膜懸濁液のタンパク質濃度を決定した。すべての膜を一定分量で−80℃にて凍結保存するか、または直ちに使用した。
【0192】
(実施例13)
ヒトβ、βおよびβアドレナリン受容体についての放射性リガンド結合アッセイ
アッセイ緩衝液(75mMのTris/HCl(pH7.4、25℃)、12.5mMのMgCl、1mMのEDTA、0.2%BSA)中にヒトβ、βまたはβアドレナリン受容体を含有する膜タンパク質10〜15μgを用いて、96ウェルマイクロタイタープレート中で100μLの総アッセイ容量で結合アッセイを行った。βおよびβ受容体について[H]−ジヒドロアルプレノロール(NET−720、100Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)、および0.01nM〜20nMの範囲の10または11の異なる濃度での[125I]−(−)−ヨードシアノピンドロール(NEX−189、220Ci/mmol、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)を使用して、放射性リガンドのK値を決定するための飽和結合研究を行った。10pM〜10μMの範囲の10または11の異なる濃度の試験化合物について、1nMの[H]−ジヒドロアルプレノロール、および0.5nMの[125I]−(−)−ヨードシアノピンドロールを用いて、試験化合物のK値を決定するための置換アッセイを行った。非特異的結合を、10μMのプロプラノロールの存在下にて決定した。アッセイを37℃で1時間インキュベートし、次いで、0.3%ポリエチレンイミンで予浸した、βおよびβ受容体のためのGF/B、またはβ受容体のためのGF/Cガラス繊維フィルタプレート(Packard BioScience社、Meriden、CT)で急激に濾過することによって結合反応を終了させた。フィルタプレートを濾過緩衝液(75mMのTris/HCl(pH7.4、4℃)、12.5mMのMgCl、1mMのEDTA)で3度洗浄し、結合していない放射能を除去した。次いで、プレートを乾燥し、Microscint−20液体シンチレーション流体(Packard BioScience社、Meriden、CT)50μLを加え、Packard Topcount液体シンチレーションカウンター(Packard BioScience社、Meriden、CT)でプレートを計数した。結合データを、1サイト競合のための3パラメーターモデルを使用して、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)を用いて非線形回帰分析によって分析した。10μMのプロプラノロールの存在下にて決定するように、曲線最小を非特異的結合についての値に固定した。Cheng−Prusoff式(Cheng Y、およびPrusoff WH.、Biochemical Pharmacology、1973年、22号、23号、3099〜108頁)を使用して、放射性リガンドの観察されたIC50値およびK値から、試験化合物についてのK値を計算した。
【0193】
このアッセイにおいて、より低いK値は、試験化合物が、試験した受容体に対して高い結合親和性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、βアドレナリン受容体については10nM未満のK値、ならびにβおよびβアドレナリン受容体については1000nM超のK値を有することが見出された。
【0194】
(実施例14)
ムスカリン受容体サブタイプに対する拮抗作用の機能アッセイ
アッセイA cAMP蓄積のアゴニスト媒介性阻害の遮断
このアッセイにおいて、hM受容体を発現しているCHO−K1細胞における、試験化合物がフォルスコリン媒介性cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を遮断する能力を測定することによって、hM受容体に対するアンタゴニストとしての試験化合物の機能的有効性を決定した。メーカーの指示に従って、125I−cAMP(NEN SMP004B、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)を用いたFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを使用して、ラジオイムノアッセイフォーマットでcAMPアッセイを行った。上記の細胞培養および膜調製の節で記載したように、細胞をdPBSで一度すすぎ、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mMのEDTA)で浮遊させた。離れた細胞を、dPBS50mL中で650×gの遠心分離によって5分間2度洗浄した。次いで、細胞ペレットをdPBS10mL中で再懸濁させ、Coulter Z1 Dual Particle Counter(Beckman Coulter社、Fullerton、CA)で細胞を計数した。細胞を650×gで再び5分間遠心分離し、1.6×10〜2.8×10細胞/mLのアッセイ濃度まで刺激緩衝液中で再懸濁した。
【0195】
試験化合物を最初に、希釈用緩衝液(BSA(0.1%)1mg/mLを添加したdPBS)で400μMの濃度まで溶解し、次いで希釈用緩衝液で100μM〜0.1nMの範囲の最終的なモル濃度まで段階希釈した。オキソトレモリンを同様に希釈した。
【0196】
アデニル酸シクラーゼ活性のオキソトレモリン阻害を測定するために、フォルスコリン25μL(dPBSに希釈して25μMの最終濃度)、希釈したオキソトレモリン25μL、および細胞50μLを、アゴニストアッセイウェルに加えた。オキソトレモリン阻害性アデニル酸シクラーゼ活性を遮断する試験化合物の能力を測定するために、フォルスコリンおよびオキソトレモリン25μL(各々25μMおよび5μMの最終濃度、dPBS中に希釈)、希釈した試験化合物25μL、および細胞50μLを、残りのアッセイウェルに加えた。
【0197】
反応物を37℃で10分間インキュベートし、氷冷の検出緩衝液100μLを加えることによって反応を停止した。プレートを密封し、室温で一晩インキュベートし、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer社、Wellesley、MA)で翌朝計数した。メーカーの利用者マニュアルに記載されているように、試料およびcAMP標準物質について観察した計数に基づいて、生成したcAMPの量(pmol/ウェル)を計算した。非線形回帰(1サイト競合式)を使用して、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)を用いた非線形回帰分析によってデータを分析した。Cheng−Prusoff式を使用して、各々、Kおよび[L]として、オキソトレモリン濃度反応曲線のEC50とオキソトレモリンアッセイ濃度とを使用して、Kobsを計算した。
【0198】
このアッセイにおいて、より低いKobs値は、試験化合物が、試験した受容体においてより高い機能活性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、hM受容体を発現しているCHO−K1細胞における、フォルスコリン媒介性cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害の遮断について、約10nM未満のKobs値を有することが見出された。
【0199】
アッセイB アゴニスト媒介性[35S]GTPγS結合の遮断
この機能アッセイにおいて、hM受容体を発現しているCHO−K1細胞において、オキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を遮断する試験化合物の能力を測定することによって、試験化合物のhM受容体のアンタゴニストとしての機能的有効性を決定した。
【0200】
使用時に、凍結した膜を解凍し、次いでウェル毎にタンパク質5〜10μgの最終的標的組織濃度でアッセイ緩衝液中に希釈した。Polytron PT−2100組織破壊器を使用して膜を短時間ホモジナイズして、次いでアッセイプレートに加えた。
【0201】
各実験において、アゴニストであるオキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激に対するEC90値(90%最大反応のための有効濃度)を決定した。
【0202】
オキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻害する試験化合物の能力を決定するために、下記を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。[35S]GTPγS(0.4nM)を含むアッセイ緩衝液25μL、オキソトレモリン(EC90)25μLおよびGDP(3uM)、希釈した試験化合物25μLおよびhM受容体を発現しているCHO細胞膜25μL。次いで、アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートした。PerkinElmer96ウェルハーベスターを使用して、アッセイプレートを、1%BSAで前処理したGF/Bフィルターで濾過した。プレートを氷冷の洗浄緩衝液で3秒間3度洗浄し、次いで空気乾燥または真空乾燥した。Microscint−20シンチレーション液体(50μL)を各ウェルに加え、各プレートを密封し、Topcounter(PerkinElmer社)で放射能を計数した。非線形回帰(1サイト競合式)を使用して、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)を用いた非線形回帰分析によって、データを分析した。Cheng−Prusoff式を使用して、各々、Kおよび[L]、リガンド濃度として、試験化合物の濃度反応曲線のIC50値とアッセイにおけるオキソトレモリン濃度とを使用してKobsを計算した。
【0203】
このアッセイにおいてより低いKobs値は、試験化合物が、試験した受容体においてより高い機能活性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、hM受容体を発現しているCHO−K1細胞におけるオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合の遮断について、約10nM未満のKobs値を有することが見出された。
【0204】
アッセイC FLIPRアッセイを介したアゴニスト媒介性カルシウム放出の遮断
この機能アッセイにおいて、試験化合物が細胞内カルシウムのアゴニスト媒介性増加を阻害する能力を測定することによって、hM、hMおよびcM受容体のアンタゴニストとしての試験化合物の機能的有効性を決定した。
【0205】
アッセイを行う前夜に、受容体を安定的に発現しているCHO細胞を、96ウェルFLIPRプレートに播いた。Cellwash(MTX Labsystems社)を使用して、FLIPR緩衝液(カルシウムおよびマグネシウムを含有しないハンクス緩衝塩溶液(HBSS)中の10mMのHEPES(pH7.4)、2mMの塩化カルシウム、2.5mMのプロベネシド)で、播いた細胞を2度洗浄し、増殖培地を除去した。洗浄後、各ウェルはFLIPR緩衝液50μLを含有した。次いで細胞を、50μL/ウェルの4μMのFLUO−4AM(2×溶液を作製した)と共に、5%二酸化炭素下にて37℃で40分間インキュベートした。色素インキュベーション期間に続いて、細胞をFLIPR緩衝液で2度洗浄し、各ウェル中に50μLの最終容量とした。
【0206】
オキソトレモリンについての細胞内Ca2+放出の用量依存的な刺激を決定し、それによって試験化合物をEC90濃度でのオキソトレモリン刺激に対して測定できた。細胞を最初に化合物希釈用緩衝液と共に20分間インキュベートし、次いでオキソトレモリンを加えた。式EC=((F/100−F)^1/H)*EC50と関連した下記のFLIPR測定およびデータ整理の節において詳しく述べる方法に従って、オキソトレモリンについてのEC90値を作成した。EC90濃度のオキソトレモリンを試験アッセイプレートの各ウェルに加えて、3×ECのオキソトレモリン濃度を、刺激プレートにおいて調製した。
【0207】
FLIPRのために使用したパラメーターは、0.4秒の曝露長さ、0.5ワットのレーザー強度、488nmの励起波長、および550nmの放射波長であった。オキソトレモリンを加える前の10秒間の蛍光の変化を測定することによってベースラインを決定した。オキソトレモリン刺激に続いて、FLIPRによって1.5分間0.5〜1秒毎に蛍光の変化を連続的に測定して、最大蛍光変化を得た。
【0208】
蛍光変化を、各ウェルについて最大蛍光マイナスベースライン蛍光として表した。シグモイド用量反応についてのビルトインモデルを使用して、GraphPad Prism(GraphPad Software社、San Diego、CA)で、非線形回帰による試験化合物濃度の対数に対して生データを分析した。Cheng−Prusoff式(Cheng & Prusoff、1973年)に従って、KとしてオキソトレモリンEC50値およびリガンド濃度についてのオキソトレモリンEC90を使用して、PrismによってアンタゴニストKobs値を決定した。
【0209】
このアッセイにおいて、より低いKobs値は、試験化合物が、試験した受容体においてより高い機能活性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、hM、hMおよびcM受容体を安定的に発現しているCHO細胞におけるアゴニスト媒介性カルシウム放出の遮断について、約10nM未満のKobs値を有することが見出された。
【0210】
(実施例15)
ヒトβ、βまたはβアドレナリン受容体を非相同的に発現しているHEK−293およびCHO細胞株における細胞全体cAMPフラッシュプレートアッセイ
メーカーの指示に従って、[125I]−cAMP(NEN SMP004、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)を用いたFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを使用して、ラジオイムノアッセイフォーマットでcAMPアッセイを行った。βおよびβ受容体アゴニストの有効性(EC50)の決定のために、クローン化されたヒトβおよびβ受容体を安定的に発現しているHEK−293細胞株を、10%FBSおよびジェネテシン(500μg/mL)を添加したDMEM中でほぼ集密的にまで増殖させた。β受容体アゴニストの有効性(EC50)の決定のために、クローン化されたヒトまたはβアドレナリン受容体を安定的に発現しているCHO−K1細胞株を、10%FBSおよびジェネテシン(250μg/mL)を添加したHams F−12培地中でほぼ集密的にまで増殖させた。細胞をPBSですすぎ、2mMのEDTAまたはトリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mMのEDTA)を含有するdPBS(CaClおよびMgClを含有しないDulbecco’s Phosphate Buffered Saline)中で細胞を引き剥がした。Coulter細胞カウンターで細胞を計数した後、細胞を1,000rpmの遠心分離によってペレットにし、室温まで予熱したIBMX(PerkinElmer Kit)を含有する刺激緩衝液中に1.6×10〜2.8×10細胞/mLの濃度まで再懸濁した。このアッセイにおいて1ウェル毎に約40,000〜80,000細胞を使用した。試験化合物(DMSO中10mM)を、Beckman Biomek−2000中に0.1%BSAを含有するPBS中に希釈し、100μM〜1pMの範囲の11の異なる濃度で試験した。反応物を37℃で10分間インキュベートし、[125I]−cAMP(NEN SMP004、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)を含有する冷たい検出緩衝液100μLを加えることによって反応を停止させた。生成したcAMPの量(pmol/ウェル)を、メーカーの利用者マニュアルに記載されるように、試料およびcAMP標準物質について観察された計数に基づいて計算した。シグモイド式によるGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)を用いた非線形回帰分析によって、データを分析した。Cheng−Prusoff式(Cheng YおよびPrusoff WH.、Biochemical Pharmacology、1973年、22号、23号、3099〜108頁)を使用して、EC50値を計算した。
【0211】
このアッセイにおいて、より低いEC50値は、試験化合物が、試験した受容体においてより高い機能活性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、βアドレナリン受容体については約10nM未満のEC50値、βアドレナリン受容体については約30nMのEC50値、およびβアドレナリン受容体については700nM超のEC50値を有することが見出された。
【0212】
(実施例16)
ヒトβアドレナリン受容体を内因性発現する肺上皮細胞株の細胞全体のcAMPフラッシュプレートアッセイ
このアッセイにおいて、内因性レベルのβアドレナリン受容体を発現している細胞株を使用して、試験化合物のアゴニストの有効性および固有活性を決定した。ヒト肺上皮細胞株(BEAS−2B)(ATCC CRL−9609、American Type Culture Collection社、Manassas、VA)(January Bら、British Journal of Pharmacology、1998年、123、4、701〜11頁)からの細胞を、完全無血清培地(エピネフリンおよびレチノイン酸を含有するLHC−9培地、Biosource International社、Camarillo、CA)中で75〜90%密集度まで増殖した。アッセイの前日に、培地を、LHC−8(エピネフリンまたはレチノイン酸を含有せず、Biosource International社、Camarillo、CA)に切り換えた。メーカーの指示に従って[125I]−cAMP(NEN SMP004、PerkinElmer Life Sciences社、Boston、MA)を用いたFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを使用して、ラジオイムノアッセイフォーマットでcAMPアッセイを行った。
【0213】
アッセイの日に、細胞をPBSですすぎ、PBS中の5mMのEDTAでかき落とすことによって浮遊させ、計数した。1,000rpmの遠心分離によって細胞をペレットにし、600,000細胞/mLの最終濃度で事前に37℃に温めた刺激緩衝液中で再懸濁した。このアッセイにおいて、細胞を100,000〜120,000細胞/ウェルの最終濃度で使用した。試験化合物を、Beckman Biomek−2000中のアッセイ緩衝液(75mMのTris/HCl(pH7.4、25℃)、12.5mMのMgCl、1mMのEDTA、0.2%BSA)中に段階希釈した。試験化合物を、アッセイにおいて10μM〜10pMの範囲の11の異なる濃度で試験した。反応物を37℃で10分間インキュベートし、氷冷の検出緩衝液100μLを加えることによって反応を停止した。プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートし、Topcountシンチレーションカウンター(Packard BioScience社、Meriden、CT)で翌朝計数した。メーカーの利用者マニュアルに記載されるように、試料およびcAMP標準物質について観察した計数に基づいて、反応物mL当たりの生成したcAMPの量を計算した。データを、シグモイド用量反応についての4−パラメーターモデルを使用したGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software社、San Diego、CA)で非線形回帰分析によって分析した。
【0214】
このアッセイにおいて、より低いEC50値は、試験化合物が、試験した受容体においてより高い機能活性を有することを示す。ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(化合物IIa)は、完全βアゴニストであるイソプロテレノール(1.0)と比較して0.3超の固有活性値と共に、10nM未満のEC50値を有することが見出された。
【0215】
(実施例17)
気管支保護の有効性および持続時間を決定するためのアイントホーフェンアッセイ
このアッセイにおいて、モルモットを使用して試験化合物の気管支保護の有効性および持続時間を決定した。このアッセイは、Einthoven(1892年)Pfugers Arch. 51号:367〜445頁;およびMohammedら(2000年)Pulm Pharmacol Ther. 13(6)号:287〜92頁に記載されている手順から派生した。このアッセイにおいて、通気圧の変化は気道抵抗の代替的測定値としての役割を果たす。試験化合物による前処理に続いて、プロプラノロールの存在下にて静脈内メタコリンに対する気管支収縮の用量反応曲線を使用してムスカリンアンタゴニストの有効性を決定した。同様に、ヒスタミンを使用してβアゴニストの気管支保護の有効性を決定した。プロプラノロールの非存在下にてメタコリンを使用して、併せた気管支保護の有効性を決定した。
【0216】
250〜400gの体重の雄Duncan−Hartleyモルモット(Harlan社、Indianapolis、IN)を使用してアッセイを行った。投与溶液5mLを使用して全身曝露投与チャンバー(R+S Molds、San Carlos、CA)において、試験化合物またはビヒクル(すなわち、滅菌水)を、10分にわたって吸入(IH)により投与した。22psiの圧力のBioblend(5%CO;21%O;および74%Nの混合物)によって推進されるLC Star Nebulizer Set(モデル22F51、PARI Respiratory Equipment社、Midlothian、VA)から生じるエアロゾルに、動物を曝露させた。吸入による投与後様々な時点で肺機能を評価した。
【0217】
アッセイの開始前75分に、モルモットをケタミン(43.7mg/kg)キシラジン(3.5mg/kg)/アセプロマジン(1.05mg/kg)の混合物の筋内(IM)注射で麻酔した。この混合物の追加用量(開始用量の50%)を必要に応じて投与した。頸静脈および頸動脈を分離し、生理食塩水を充填したポリエチレンカテーテル(各々micro−renathaneおよびPE−50、Beckton Dickinson社、Sparks、MD)でカニューレ処置した。頸動脈を圧力トランスデューサーに接続し、血圧測定を可能とし、メタコリンまたはヒスタミンの静脈注射のために頸静脈カニューレを使用した。次いで、気管を切開して取り除き、14G針(#NE−014、Small Parts社、Miami Lakes、FL)でカニューレ処置した。カニューレ挿入が完了すると、2.5mLの体積を超えない1mL/100g体重のストローク体積、毎分100ストロークの速度で設定した人工呼吸器(モデル683、Harvard Apparatus社、MA)を使用して、モルモットに人工呼吸を施した。Biopac(TSD137C)前置増幅器に接続したBiopacトランスデューサーを使用して、気管カニューレ内の通気圧(VP)を測定した。加温パッドを使用して体温を37℃に維持した。データ収集の開始前に、ペントバルビタール(25mg/kg)を腹腔内(IP)投与し、自発呼吸を抑制し、安定的なベースラインを得た。Biopac Windows(登録商標)データ収集インターフェースでVPの変化を記録した。ベースライン値を少なくとも5分間収集し、その後モルモットを2倍増の用量の気管支収縮剤(メタコリンまたはヒスタミン)によってIVで非累積的に攻撃誘発した。メタコリンを気管支収縮剤として使用した場合、動物をプロプラノロール(5mg/kg、IV)で前処理し、試験化合物の抗ムスカリン作用を分離させた。メタコリンまたはヒスタミンに対する用量反応曲線の構築の30分前にプロプラノロールを投与した。Acknowledgeデータ収集ソフトウェア(Santa Barbara、CA)を使用して、VPの変化を記録した。研究の完了後、動物を安楽死させた。
【0218】
VPの変化を水のcmで測定した。VPの変化(cm HO)=ピーク圧力(気管支収縮性攻撃誘発後)−ピークベースライン圧力である。メタコリンまたはヒスタミンに対する用量反応曲線を、Windows(登録商標)用GraphPad Prism、バージョン3.00(GraphPad Software社、San Diego、California)を使用して、4つのパラメーターロジスティック式に当てはめた。下記の式を使用した。
【0219】
【化22−1】

式中、Xは用量の対数であり、Yは反応である。YはMinで開始し、S字形で漸近的にMaxに達する。
【0220】
準最大用量のメタコリンまたはヒスタミンに対する気管支収縮性反応の阻害率を、下記の式を使用して試験化合物の各用量で計算した。反応の阻害%=100−((ピーク圧力(気管支収縮性攻撃誘発後、処理)−ピークベースライン圧力(処理)*100%/(ピーク圧力(気管支収縮性攻撃誘発後、水)−ピークベースライン圧力(水)×100)。GraphPad Softwareからの4つのパラメーターロジスティック式を使用して阻害曲線を当てはめた。ID50(気管支収縮性反応の50%阻害を生じるために必要な用量)およびEmax(最大阻害)もまた、必要に応じて推定した。
【0221】
試験化合物の吸入後の異なる時点での気管支保護の程度を使用して、薬力学的半減期(PD T1/2)を推定した。1相指数関数的減衰式(GraphPad Prism、バージョン4.00)を使用した非線形回帰当てはめを使用してPD T1/2を決定した。Y=スパン*exp(−K*X)+プラトー;スパン+プラトーで開始し、速度定数Kでのプラトーへ減衰する。PD T1/2=0.69/K。プラトーを0に制限した。
【0222】
投与後1.5時間で、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(IIa)は、メタコリンによって誘発される気管支収縮およびヒスタミンによって誘発される気管支収縮の両方について約50μg/mL未満のID50を有することが見出された。
【0223】
さらに、この化合物は、単一の準最大用量(100μg/mL)として投与された場合、約72時間までの有意な気管支保護を生じた。このアッセイにおいて、サルメテロール(3μg/mL)(βアドレナリン受容体アゴニスト)は、6〜14時間有意な気管支保護を示し、チオトロピウム(10μg/mL)(ムスカリン受容体アンタゴニスト)は、72時間を超えて有意な気管支保護を示した。
【0224】
(実施例18)
気管支保護の有効性および持続時間を決定するためのプレチスモグラフモルモットアッセイ
このアッセイにおいて、モルモットアッセイを使用して試験化合物の気管支保護の有効性および持続時間を決定した。
【0225】
250〜350gの体重の6匹の雄モルモット(Duncan−Hartley(HsdPoc:DH)Harlan社、Madison、WI)の群を、ケージカードで個々に識別した。研究の間、動物に食物および水を自由に取らせた。試験化合物を、全身曝露投与チャンバー(R&S Molds、San Carlos、CA)中で吸入によって10分にわたって投与した。エアロゾルが中央の多岐管から6つの個々のチャンバーに同時に送達されるように投与チャンバーを配置した。モルモットを、試験化合物またはビヒクル(WFI)のエアロゾルに曝露した。LC Star Nebulizer Set(モデル22F51、PARI Respiratory Equipment社、Midlothian、VA)を使用して、22psiの圧力で気体混合物(CO=5%、O=21%およびN=74%)によって推進されるエアロゾルを水溶液から発生させた。この作業圧力でネブライザーを通る気体流は、毎分約3Lであった。発生したエアロゾルを陽圧によってチャンバーに送った。エアロゾル化溶液の送達の間に非希釈空気を使用した。10分の噴霧の間に、約1.8mLの溶液を噴霧した。充填したネブライザーの噴霧前および噴霧後の重量を比較することによって、この値を重量測定法で測定した。
【0226】
吸入によって投与した試験化合物の気管支保護効果を、投与後1.5時間、24時間、48時間および72時間で全身プレチスモグラフィーを使用して評価した。肺の評価の開始の45分前に、各モルモットを、ケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)の筋肉内注射で麻酔した。手術部位を剪毛し、70%アルコールで清浄にし、首の腹側面の2〜3cm正中線切開を行った。頸静脈を分離し、生理食塩水を充填したポリエチレンカテーテル(PE−50、Becton Dickinson社、Sparks、MD)でカニューレ処置し、生理食塩水中のアセチルコリンまたはヒスタミンの静脈内注入を可能とした。次いで、気管を切開して取り除き、14GのTeflonチューブ(#NE−014、Small Parts社、Miami Lakes、FL)でカニューレ処置した。必要であれば、麻酔混合物のさらなる筋肉内注射によって麻酔を維持した。麻酔の深さをモニターし、動物が足をつまむことに反応する場合、または呼吸数が毎分100呼吸を超える場合は調節した。
【0227】
カニューレ挿入を完了すると、動物をプレチスモグラフ(#PLY3114、Buxco Electronics社、Sharon、CT)に入れ、食道圧カニューレ(PE−160、Becton Dickinson社、Sparks、MD)を挿入して、肺駆動圧を測定した。Teflon気管チューブをプレチスモグラフの開口に取り付け、モルモットがチャンバーの外側からの大気を吸うことを可能にした。次いで、チャンバーを密封した。加熱灯を使用して体温を維持し、10mLのキャリブレーションシリンジ(#5520シリーズ、Hans Rudolph社、Kansas City、MO)を使用して、モルモットの肺を4mLの空気で3回膨張させ、下気道が崩壊しないこと、および動物が過換気にならないことを確認した。
【0228】
ベースラインがコンプライアンスについて0.3〜0.9mL/cm HOの範囲であり、抵抗性について0.1〜0.199cm HO/mL/秒の範囲であることを決定した後、肺の評価を開始した。肺の値の収集および誘導のために、Buxco肺測定コンピュータプログラムを使用した。このプログラムを開始させることにより、実験プロトコルおよびデータ収集が開始された。各呼吸でプレチスモグラフ内に生じる経時的な体積の変化を、Buxco圧力トランスデューサーによって測定した。ある期間にわたるこのシグナルを統合することによって、流れの測定を各呼吸について計算した。Sensym圧力トランスデューサー(TRD4100)を使用して収集したこのシグナルおよび肺駆動圧の変化を、Buxco(MAX2270)前置増幅器を介してデータ収集インターフェース(SFT3400およびSFT3813)に接続した。すべての他の肺のパラメーターを、これらの2種の入力から導いた。
【0229】
ベースライン値を5分間収集し、その後モルモットをアセチルコリンまたはヒスタミンで攻撃誘発した。試験化合物のムスカリンアンタゴニスト効果を評価する場合、アセチルコリンによる攻撃誘発の15分前に、プロパノロール(5mg/Kg、iv)(Sigma−Aldrich社、St.Louis、MO)を投与した。アセチルコリン(Sigma−Aldrich社、St.Louis、MO)(0.1mg/mL)を、下記の用量および実験の開始からの所定の時間でシリンジポンプ(sp210iw、World Precision Instruments社、Sarasota、FL)から静脈内に1分間注入した。5分で1.9μg/分、10分で3.8μg/分、15分で7.5μg/分、20分で15.0μg/分、25分で30μg/分および30分で60μg/分。あるいは、プロパノロールで前処理せずにアセチルコリン攻撃誘発モデルで試験化合物の気管支保護効果を評価した。
【0230】
試験化合物のβアドレナリン受容体アゴニスト効果を評価する場合、下記の用量および実験の開始からの所定の時間でシリンジポンプからヒスタミン(25μg/mL)(Sigma−Aldrich社、St.Louis、MO)を、静脈内に1分間注入した。5分で0.5μg/分、10分で0.9μg/分、15分で1.9μg/分、20分で3.8μg/分、25分で7.5μg/分および30分で15μg/分。各アセチルコリンまたはヒスタミン投与の後3分で、抵抗性またはコンプライアンスがベースライン値に回復しない場合は、モルモットの肺を、10mLのキャリブレーションシリンジからの4mLの空気で3回膨張させた。記録した肺のパラメーターには、呼吸数(呼吸/分)、コンプライアンス(mL/cm HO)および肺抵抗(cm HO/mL/秒)が含まれた。このプロトコルの35分で肺機能測定が完了すると、モルモットをプレチスモグラフから取り出し、二酸化炭素窒息で安楽死させた。
【0231】
データを2種の方法の1つで評価した。
【0232】
(a)肺抵抗(R)(cm HO/mL/秒)を、圧力変化と流量変化の比から計算した。アセチルコリン(60μg/分、IH)に対するR反応を、ビヒクルおよび試験化合物について計算した。各前処理時間でのビヒクル処置動物における平均アセチルコリン反応を計算し、対応する前処理時間における各試験化合物用量での、アセチルコリン反応の阻害率を計算するために使用した。「R」についての阻害用量反応曲線を、Windows(登録商標)用GraphPad Prism、バージョン3.00(GraphPad Software社、San Diego、California)を使用して4つのパラメーターロジスティック式に当てはめ、気管支保護ID50(アセチルコリン(60μg/分)気管支収縮反応を50%阻害するのに必要な用量)を評価した。下記の式を使用した。
【0233】
【化22−2】

式中、Xは用量の対数であり、Yは反応である(Rにおけるアセチルコリン誘導性増加の阻害率)。YはMinで開始し、S字形で漸近的にMaxに達する。
【0234】
(b)下記の式(American Thoracic Society、Guidelines for methacholine and exercise challenge testing、1999年、Am J Respir Crit CareMed. 2000年;161号:309〜329頁に記載されているPC20値を計算するために使用される式から誘導した)を使用して、一連のアセチルコリンまたはヒスタミン攻撃誘発に対する流量および圧力から誘導された肺抵抗値を使用して、ベースライン肺抵抗の倍増をもたらすのに必要なアセチルコリンまたはヒスタミンの量として定義されるPD量を計算した。
【0235】
【化23】

式中、
=C前のアセチルコリンまたはヒスタミンの濃度
=肺抵抗(R)に少なくとも2倍の増加をもたらすアセチルコリンまたはヒスタミンの濃度
=ベースラインR
=C後のR
=C後のR
である。
【0236】
スチューデント両側t検定を使用してデータの統計解析を行った。P−値<0.05は、有意であるとみなした。
【0237】
2004年8月24日に公開された米国特許出願公開第US2004/0167167(A1)号に記載されている化合物50を、このアッセイにおいて試験した。化合物50の化学構造は下記の通りである。
【0238】
【化24】

この化合物は、本発明の化合物のフェニル環上に存在するアルキル基を欠いている。このアッセイにおいて、化合物50は、3μg/mL〜300μg/mLの範囲の用量では投与後24時間で有意な気管支保護を示した。化合物50についての24時間でのPD2×バルブは、ビヒクル(水)群と同様であった。
【0239】
このアッセイにおいて、サルメテロール(100μg/mL)(βアドレナリン受容体アゴニスト)は、少なくとも24時間有意な気管支保護を示し、チオトロピウム(10μg/mL)(ムスカリン受容体アンタゴニスト)は、少なくとも24時間有意な気管支保護を示した。
【0240】
本発明を特定の態様またはその実施形態を参照して説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、または等価物で代用することができることは、当業者であれば理解されよう。さらに、引用される特許法および特許に関する規則で認められている限りは、本明細書において引用したすべての公開資料、特許および特許出願は、各書類が個別に本明細書において本明細書中に組み込まれているのと同一程度に参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、
は、メチルまたはエチルであり、
は、メチルまたはエチルである)
の化合物、あるいはその医薬として許容される塩または溶媒和物または立体異性体。
【請求項2】
式II
【化2】

(式中、
は、メチルまたはエチルであり、
は、メチルまたはエチルである)
を有する、請求項1に記載の化合物またはその医薬として許容される塩。
【請求項3】
式IIa
【化3】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式IIa
【化4】

の化合物の医薬として許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
医薬として許容される担体と、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物とを含む医薬組成物。
【請求項6】
(a)請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物と、
(b)ステロイド性抗炎症剤と、
(c)医薬として許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項7】
(a)請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物と、
(b)ステロイド性抗炎症剤と
を含む、治療剤の組合せ。
【請求項8】
(a)請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物および第1の医薬として許容される担体を含む第1の医薬組成物と、
(b)ステロイド性抗炎症剤および第2の医薬として許容される担体を含む第2の医薬組成物と
を含み、該第1および第2の医薬組成物が別々の医薬組成物である、キット。
【請求項9】
治療を必要としている患者に、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を投与するステップを含む、肺障害を治療する方法。
【請求項10】
患者に、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患または喘息を治療する方法。
【請求項11】
哺乳動物に、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の気管支拡張を生じさせる量を投与するステップを含む、哺乳動物において気管支拡張を生じさせる方法。
【請求項12】
哺乳動物に、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含む、哺乳動物においてムスカリン受容体をアンタゴナイズし、かつβアドレナリン受容体をアゴナイズする方法。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を使用して生物学的アッセイを行うステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を研究道具として使用する方法。
【請求項14】
(a)試験化合物で生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を提供するステップと、
(b)請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物で該生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を提供するステップと、
(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値をステップ(b)からの第2のアッセイ値と比較するステップと
を含み、ステップ(a)が、ステップ(b)の前、後または同時に行われる、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価する方法。
【請求項15】
前記生物学的アッセイが、ムスカリン受容体結合アッセイまたはβアドレナリン受容体結合アッセイである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的アッセイが、哺乳動物における気管支保護アッセイである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
式6
【化5】

(式中、Pはヒドロキシル保護基である)
の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップを含む、請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項18】
式6a
【化6】

(式中、R、RおよびRは、独立に、C1〜4アルキル、フェニル、−C1〜4アルキル−(フェニル)から選択され、またはR1a、R1bおよびR1cのうちの1つは、−O−(C1〜4アルキル)である)
の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップを含む、請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項19】
(a)式4
【化7】

の化合物を、式5
【化8】

(式中、Pはヒドロキシル保護基である)
の化合物と還元剤の存在下にて反応させ、式6
【化9】

の化合物を得るステップと、
(b)式6の化合物を脱保護し、式Iの化合物を得るステップと
を含む、請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項20】
遊離塩基の形態の式Iの化合物を医薬として許容される酸と接触させるステップを含む、請求項1に記載の化合物の医薬として許容される塩を調製する方法。
【請求項21】
式III
【化10】

(式中、
は、−CHO、−CN、−CHOH、−CH(OR3a)OR3b、−C(O)OH、−C(O)OR3c、ブロモおよびヨード(式中、R3aおよびR3bは、独立に、C1〜6アルキルから選択され、またはR3aおよびR3bは連結して、C2〜6アルキレンを形成し、R3cは、C1〜6アルキルから選択される)から選択され、
は、メチルまたはエチルであり、
は、メチルまたはエチルである)
の化合物あるいはその塩または立体異性体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を調製するための中間体。
【請求項22】
およびRがメチルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
が−CHOである、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
が−CHOであり、RおよびRがメチルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(R)−2−(3−ホルミルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシエチルアミノ]メチル}−2,5−ジメチルフェニル−カルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステルL−酒石酸塩である、請求項4に記載の化合物。
【請求項26】
治療に使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
肺障害の治療用の医薬の製造のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−541209(P2009−541209A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507757(P2009−507757)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/009925
【国際公開番号】WO2007/127196
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】