説明

「酵母/レスベラトロール発酵」エキスを含有するパーソナルケア組成物

酵母−ポリフェノール発酵エキス、及び該酵母−ポリフェノール発酵エキスを含有するパーソナルケア組成物が開示される。同様に該酵母/ポリフェノールエキス及び該パーソナルケア組成物を調製及び使用する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、パーソナルケア組成物、及びそれを製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、酵母−ポリフェノール発酵エキスを含有するパーソナルケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酵母及びその誘導体の使用が、化粧品用途において非常に好評になってきている。これは、酵母は、真核性であり、ヒトの細胞と類似の細胞生物学的過程を有し、ストレス下で有益なタンパク質の生成を引き起こすことが知られているという事実によって後押しされている。酵母誘導体の使用及び酸素摂取の増加による局所皮膚適用でのそれらの利点についての多くの史実も存在する。例えば、米国特許第4,540,571号は、皮膚呼吸を改善する酵母誘導体を開示している。酵母細胞誘導体は、皮膚細胞中のコラーゲン及びエラスチンの生成を刺激することも報告されている。
【0003】
最近の研究は、酵母細胞エキスは、創傷治癒を刺激する「増殖因子」を促進する能力を有することを示唆している。例えば、米国特許第7,217,417号は、酵母細胞誘導体を創傷治癒用のゲルベースの製剤に組み込む方法を開示している。
【0004】
局所適用について、最も一般に使用される酵母は、パン酵母としても知られているサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。サッカロミセスは、FDAによって「一般に安全と認められる(GRAS)」微生物として分類されている。しかし、サッカロミセス・セレビシエ又はその誘導体を含有する製品は、通常、強烈な色及び特徴のある臭気を有する。したがって、皮膚への有益な効果、及び同時に望ましい美的価値をもたらす酵母及び酵母エキスに対する化粧品産業における需要が存在する。
【0005】
数種の植物に見出されるポリフェノールであるレスベラトロール(3,4,5−トランスヒドロキシスチルベン)は、心臓血管疾患、糖尿病及び癌の治療についてのその可能性のある健康上の利益のためにたいへん興味深い。レスベラトロールは赤ワイン中のその存在についてよく知られており、ブドウの皮から抽出することができる。レスベラトロールは、例えば、イタドリ(ポリュゴヌム・クスピダツム(Polygonum cuspidatum))などの種々の植物の葉に豊富に見出すこともできる。レスベラトロールは、ポリフェノールと日常的に呼ばれ又は称される植物から単離される生物活性分子のファミリーに関連すると考えられている。ポリフェノールは、1分子当たり2つ以上のフェノール単位又は構成単位の存在を特徴とする、植物に見出される化学物質の一群である。ポリフェノールには、例えば、フラボノイド又はイソフラボノイド、カテキン、アントシアニン及びプロアントシアニンが含まれる。
【0006】
広範囲の種におけるいくつかの研究によって、レスベラトロールが細胞機能及び寿命にプラスに作用する能力が実証されている。レスベラトロールは、カロリー摂取の減少をなんら必要とせずにカロリー制限を模倣することによって細胞寿命に影響を与えることが示唆されている。J.Biol Chem.280巻、(2005年)17187頁においてBorra T.M.らによって開示されたように、主にタンパク質の「サーチュイン(Sirtuin)」ファミリーに属する特定のタンパク質の活性化によって、これは達成される。
【0007】
カロリー制限に加えて、レスベラトロールは、DNA修復機構を誘発すること、抗発癌特性及び抗酸化特性を含めた潜在的な健康上の利益についても評価されてきている。
【0008】
Ciolino H.P.らは、レスベラトロールは、細胞のDNA損傷による老化過程を逆転させるために使用され得ることを開示している。Mol Pharm 56巻(1999年)4号、760頁。さらに、レスベラトロールは、シクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼを含めた数種の炎症性酵素の活性をin vitroで阻害することが見出されている。Pinto M.D.ら、「Resveratorol is a potent inhibitor of the dioxygenase activity of lipoxygenase.」J Agic Food Chem.47巻(12号)、4842〜4846頁(1999年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レスベラトロールは、局所及び経口適用において利点を示しているが、固有の化学的不安定性という欠点があり、その天然型で皮膚細胞に多少細胞毒性があることが示されている。これは、極めて水不溶性でもあり、このことによってこの分子を含むスキンケア製品及びヘアケア製品を配合することが困難になっている。より有用で使用がより容易であるレスベラトロールに基づく新規成分を開発する必要が依然としてある。そのようなものとして、パーソナルケア組成物における使用のためのレスベラトロール及び酵母の代謝経路の組み合わせた有利な効果を提供する成分の需要があることが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、培地でピキア属(Pichia)の酵母の細胞を後期対数増殖期(ここで、その培地の炭素源は消費される)へ増殖させるステップ;増殖因子としてのポリフェノールの非細胞毒性用量にこれらの細胞を曝露するステップであってそれにより酵母の代謝経路を通して新たな活性成分を生成するステップ;及び、濾過又は溶解によって新たな活性成分を分離するステップであってそれにより新しい活性物質を含有する酵母−ポリフェノール発酵エキスを提供するステップ;を含む方法によって生成される酵母−ポリフェノール発酵エキスに関する。1つの好ましい実施形態において、ポリフェノールは、約0.001グラム/リットルから1.0グラム/リットルの濃度で有機溶媒中に分散されたレスベラトロールであり、酵母はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0011】
本発明の別の態様は、酵母−ポリフェノール発酵エキス及び保存剤を含有するパーソナルケア組成物に関し、ここで、この保存剤は、酸、アルコール、グリコール、パラベン、第4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド放出化合物、ハロゲン化化合物及びこれらの組合せからなる群から選択される。酵母−ポリフェノール発酵エキスは、パーソナルケア組成物の総重量に対して0.0001重量%から95重量%、好ましくは0.01重量%〜50重量%、最も好ましくは0.01重量%〜10重量%の間の濃度で存在する。保存剤は、パーソナルケア組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の間の濃度で存在する。パーソナルケア組成物は、化粧品として許容される媒体、及び他の活性成分をさらに含有し得る。
【0012】
本発明の1つのさらなる態様は、酵母−ポリフェノール発酵エキスの有効量を提供するステップ及びこのエキスをパーソナルケア組成物に加えるステップを含む、パーソナルケア組成物の調製方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】酵母/レスベラトロール発酵過程の期間にわたる発酵パラメーターの変化を描いたグラフである。
【0014】
【図2】未処理酵母エキス(対照)及びレスベラトロール処理酵母エキスの2D電気泳動比較を示す図である。
【0015】
【図3】未処理酵母エキス(対照)及びレスベラトロール処理酵母エキスの2Dゲルレーザー密度計比較を示す図である。
【0016】
【図4】ヒト表皮角化細胞への酵母/レスベラトロール発酵エキスの処理による遺伝子の相対的発現のグラフである。
【0017】
【図5】COX1酵素への酵母/レスベラトロール発酵エキスの効果を例示するグラフである。
【0018】
【図6】IV型コラーゲンタンパク質への酵母/レスベラトロール発酵エキスの効果を例示するグラフである。
【0019】
【図7】メラニンの発現への酵母/レスベラトロール発酵エキスの効果を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の「酵母−ポリフェノール発酵エキス」は、発酵と称される特殊過程により得られる。生きている真核微生物及び/又は原核微生物が、酸素の存在下(好気発酵として知られている)又は酸素が無いか殆ど無い状態(嫌気性発酵として知られている)のいずれかで栄養培地で増殖する場合に発酵は起こる。発酵過程は、1種の微生物で又は2種以上の微生物で同時又は逐次(しばしば共発酵と呼ばれる)に行われ得る。栄養培地は、一般に、タンパク質、糖、鉱物などの明確な混合物である。このような培地は、当業者に知られており、様々な市販供給源から入手可能であり得る。
【0021】
酵母を代謝させる過程は、例えば、酵母、桿菌、かび、植物細胞などの種々の微生物で起こり得る。本発明の組成物に特に好ましいのは、酵母を用いてなされる発酵である。本明細書で使用される「酵母」という用語は、単一の酵母細胞、複数の酵母細胞及び/又は酵母細胞の培養物を包含することを意図している。本発明の酵母は、限定はされないが、ネルロスポラ属(Neurospora)、ケラトストメッラ属(Ceratostomella)、ケラビケプス属(Claviceps)、クシュラリア属(Xylaria)、ロセッリニア属(Rosellinia)、ヘロチウム属(Helotium)、スクレロチニア属(Sclerotinia)、ツロストマ属(Tulostoma)、リゾポゴン属(Rhizopogon)、トルンココルメッラ属(Truncocolumella)、ムコル属(Mucor)、リゾプス属(Rhizopus)、エントモプトラ属(Entomophthora)、ジクトスチュリウム属(Dictostylium)、ブラストクラジア属(Blastocladia)、シュンキュトリウム属(Synchytrium)、サプロレグニア属(Saprolegnia)、ペロノスポラ属(Peronospora)、アルブゴ属(Albugo)、ピュチウム属(Pythium)、ピュトプトラ属(Phytophthora)、プラスモジオポラ属(Plasmodiophora)、ツベル属(Tuber)、ヒュドヌム属(Hydnum)、レカノラ属(Lecanora)、ロッセラ属(Roccella)、ペルツサリア属(Pertusaria)、ウスネア属(Usnea)、エベルニア属(Evernia)、ラマリナ属(Ramalina)、アレクトリア属(Alectoria)、クラドニア属(Cladonia)、パルメリア属(Parmelia)、ケトラリア属(Cetraria)、アガリクス属(Agaricus)、カンタレッルス属(Cantharellus)、オンパロツス属(Omphalotus)、コプリヌス属(Coprinus)、ラクタリウス属(Lactarius)、マラスミウス属(Marasmius)、プレウロツス属(Pleurotus)、ポリオタ属(Pholiota)、ルッスラ属(Russula)、ラクタリウス属(Lactarius)、ストロパリア属(Stropharia)、エントロマ属(Entoloma)、レピオタセア属(Lepiotaceae)、コルチキウム属(Corticium)、ペッリクラリア属(Pellicularia)、トリコロマ属(Tricholoma)、ボルバリア属(Volvaria)、クリトキュベ属(Clitocybe)、フラッムリナ属(Flammulina)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スキゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、サッカロミセタセア属(Saccharomycetaceae)、エルロチウム属(Eurotium)、アスペルギッルス属(Aspergillus)、チエラビア属(Thielavia)、ペジザ属(Peziza)、プレクタニア属(Plectania)、モルセラ属(Morchella)、ユンネア属(Wynnea)、ヘルベッラ属(Helvella)、ギュロミトラ属(Gyromitra)、パッラレス属(Phallales)、ジクチュオペラ属(Dictyophera)、ムチヌス属(Mutinus)、クラトルス属(Clathrus)、プセウドコルス属(Pseudocolus)、リュコペルドン属(Lycoperdon)、カルバチア属(Calvatia)、ゲアストルム属(Geastrum)、ラジイゲラ属(Radiigera)、アストレウス属(Astreus)、ニズラリア属(Nidularia)、ガストロキュベ属(Gastrocybe)、マコワニテス属(Macowanites)、ガストロボレツス属(Gastroboletus)、アルバトレッルス属(Albatrellus)、ネオレンチヌス属(Neolentinus)、ニグロポルス属(Nigroporus)、オリゴポルス属(Oligoporus)、ポリュポルス属(Polyporus)、フィスツリナ属(Fistulina)、フォメス属(Fomes)、ボレツス属(Boletus)、フスコボレチヌス属(Fuscoboletinus)、レッキヌム属(Leccinum)、ピュッロポルス属(Phylloporus)、スイッルス属(Suillus)、ストロビロミュケス属(Strobilomyces)、ボレテッルス属(Boletellus)、トレメッラ属(Tremella)、アウリクラリア属(Auricularia)、ダクリュミュケス属(Dacrymyces)、メラムプソラ属(Melampsora)、クロナルチウム属(Cronartium)、プッキニア属(Puccinia)、ギュムノスポランギウム属(Gymnosporangium)、チッレチア属(Tilletia)、ウロキュスチス属(Urocystis)、セプトバシジウム属(Septobasidium)、ヒュグロキュベ属(Hygrocybe)、ヒュグロポルス属(Hygrophorus)、ヒュグロトラマ属(Hygrotrama)、ネオヒュグロポルス属(Neohygrophorus)、コルチナリウス属(Cortinarius)、ギュムノピルス属(Gymnopilus)、トリコピュトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)、モニリア属(Monilia)、カンジダ属(Candida)、ケルコスポレッラ属(Cercosporella)、ペニキッリウム属(Penicillium)、ブラストミュケス属(Blastomyces)、ケルコスポラ属(Cercospora)、ウスチラギノイデア属(Ustilaginoidea)、ツベルクラリア属(Tubercularia)、フサリウム属(Fusarium)、リゾクチニア属(Rhizoctinia)、オゾニウム属(Ozonium)、スクレロチウム属(Sclerotium)、ゲオグロッスム属(Geoglossum)又はアルミッラリア属(Armillaria)を含めた当業者に知られている種々の真菌ファミリーのものであり得る。特に興味深いのは、サッカロミセタセア属ファミリーに属する真菌である。より興味深いのは、ピキア属に属する真菌である。最も興味深いのは、パストリス(pastoris)種に属する真菌である。1つの好ましい実施形態において、ピキア・パストリスが発酵過程で使用される。
【0022】
一般に、ピュルム・アスコミュケテス(phylum Ascomycetes)に属する酵母は、条件的嫌気性菌である、すなわち、これらは、酸素の存在下でも不存在下でも増殖し得る。本発明の目的のため、酵母を好気的に増殖させた。及びそれ故、空気は増殖のために重要である。
【0023】
ポリフェノールは、様々なよく知られた皮膚への利点に関与する、植物及び果実に見出される重要な成分である(Svobodova A、Jitka Psotova、Daniela Walterova、Natural phenolics in the prevention of UV−Induced skin damage、Biomed.Papers 147巻(2号)、137〜145頁 2003年)。一般に、ポリフェノールは植物から抽出される。本発明の目的について、ポリフェノールは合成手段によっても調製することができる。好ましくは、本発明の発酵過程における使用に適するポリフェノールは、50%より大きい、より好ましくは70%より大きい、最も好ましくは80%より大きい純度を有する。
【0024】
驚くべきことに、ピキア属に属する酵母、例えば、ピキア・パストリスが、発酵の重要段階中に成長因子として、ポリフェノール、例えば、レスベラトロールの非細胞毒性量に曝露される場合、その酵母はその代謝経路を変更し、皮膚に有益な新しい活性物質を生成することが見出された。生成された新しい活性物質は相対的に安定しており、より望ましくない代謝物への急速な転換を受けることがない。一方、新しい活性物質は、望ましい色及び臭気も有しており、したがって、パーソナルケア組成物用の改善された成分となる。
【0025】
本発明の酵母/ポリフェノールエキスは、限定はされないが、栄養ブロス、細胞タンパク質物質、細胞核物質、細胞質物質及び/又は細胞壁成分を含む酵母の細胞質成分及び細胞外成分を含有する。一般に、上記エキスは、相対的に水溶性であり、例えば、1グラム以上の酵母エキスが1グラムの水に溶解する。上記エキスは、限定はされないが、水性グリコール及び水性グリセロールなどの水/有機溶媒混合物にも溶解性であり得る。
【0026】
酵母発酵過程は、撹拌槽バイオリアクター中で実施することができる。このようなバイオリアクターの例には、例えば、New Brunswick Scientific(ニュージャージー州、Edison)又はApplikon Biotechnology(カリフォルニア州、Foster City)から入手可能な発酵槽が含まれ得る。
【0027】
本発明の「酵母−ポリフェノール発酵エキス」を生成するために、ピキア・パストリス細胞培養物を増殖培地で25℃から32℃の間で増殖させることができる。一般に酵母発酵培地の一例は、一般にCRC pressによって発行された「Handbook of Microbiological Media」に見出すことができる。本発明の目的について、酵母の発酵用の特定の増殖培地が使用される。この増殖培地は化学的に明確な培地であり、動物由来生成物をまったく有さない。1つの好ましい実施形態において、本発明の培地の唯一の炭素源はグリセロールからのものである。
【0028】
ポリフェノール供給計画を開始するために、ポリフェノールの非細胞毒性用量を、細胞に毒性でない有機溶媒中に分散させてポリフェノール供給バッチを提供することができる。本明細書で使用される非毒性用量は、細胞の生存に損失がない用量として定義される。1つの好ましい実施形態において、有機溶媒中のポリフェノールの濃度は、少なくとも0.001グラム/リットルから1.0グラム/リットルである。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、細胞がそれらの後期対数増殖期にあり、培地の炭素源が消費(バイオリアクター中の炭素源をモニターすることによって確認)された場合に、ポリフェノールのバッチ供給を開始する。極めて疎水性であるポリフェノールについて、これらのポリフェノールが水性増殖培地で沈殿しないことを確実にするために発酵過程をモニターすることが重要である。
【0030】
「酵母−ポリフェノール発酵エキス」は、最初にバイオマスを分離し、次いで酵母の細胞外分泌物から活性成分を抽出することによって得ることができる。別法として、酵母細胞を、当業者に知られている方法によって溶解して「酵母/ポリフェノール発酵溶解物」を得ることができる。一般に、この方法は、化学的手段、酵素的手段若しくは物理的手段による又はこれらの組合せによる酵母細胞壁の破壊を含む。「酵母−ポリフェノール発酵エキス」を、クロマトグラフィー、溶媒抽出、遠心分離、デカンテーション、濾過若しくは炭素処理、又は当業者に知られている他の手段によってさらに精製することができる。一実施形態において、「酵母−ポリフェノール発酵エキス」を、当業者に知られている任意の手段、例えば、蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、ベルト又はドラム乾燥によってさらに濃縮する。
【0031】
発酵過程の重要段階中に、酵母、例えば、ピキア・パストリスをポリフェノール増殖因子に曝露した後、この酵母は、ポリフェノールの処理にかけていない酵母と比べて著しいゲノム変異及びプロテオーム変化を有する。さらに、酵母マイクロアレイの検査は、発酵しているピキア・パストリス中の様々な遺伝子は、ポリフェノールによる処理の結果として上方調節されているか下方調節されているかいずれかであることを示している。上方調節された及び下方調節されたという用語は、ポリフェノールが、酵母中のシグナル遺伝子(signally genes)が活性化される(上方調節された)又は不活性化(下方調節された)されるように与える影響を意味する。酵母遺伝子の上方及び下方調節は、ポリフェノールが存在しなかった場合に普通に発現されなかったであろうタンパク質を酵母に発現させるタンパク質発現の変化をもたらすことがある。
【0032】
さらに、ピキア・パストリスは、ポリフェノールを摂取し、ポリフェノールを、例えば、ポリフェノールの糖又はタンパク質誘導代謝物などの化学的誘導体に変換し始めることがある。ポリフェノールを消化するプロセスを始める手段として、酵母はこれを行うことがある。特に、酵母がタンパク質をポリフェノールとポリフェノールの利用できるヒドロキシル基の1つにおいて化学的に結びつける場合、このような分子は新しいタンパク質として2Dゲル電気泳動で出現することがある。これらの新しい化学的に変化したポリフェノール分子を、酵母が一般に発現する通常の代謝タンパク質と区別することは難しい。しかし、MALDI−TOF質量分析などのいくつかの技術を使用して、2D−ゲルからのタンパク質を確認することができる。さらに、ポリフェノールのタンパク質及び糖代謝物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で試験することができる。理論に拘束されることなく、発酵によって形成されるポリフェノールの二次代謝物は、酵母−ポリフェノール発酵エキスが、酵母だけ又はポリフェノール単独では得られない有益な方法でヒトの皮膚を刺激する能力において重要な役割を果たし得ることが考えられる。
【0033】
ヒトの皮膚に影響を与える酵母−ポリフェノール発酵エキスの効果は、当業者に知られている多くの方法で測定することができる。特に、酵母−ポリフェノール発酵エキスは、皮膚に対するそれらの効果について、例えば、角化細胞若しくは線維芽細胞などの特定の皮膚細胞のヒトゲノムマイクロアレイなどの分析技術を使用することによって、或いは個別の皮膚細胞、組織モデル又は生体外若しくは生体内皮膚モデルのタンパク質発現分析によって調べることができる。これらの試験モデルにおいて、特定の遺伝子及び/又はタンパク質を、上記エキス処理の結果として上方調節又は下方調節することができる。皮膚状態を調節し得る遺伝子及びタンパク質は、スクリーニングにおいて特に興味深い。本発明の目的について特に興味深いのは、炎症、細胞外マトリックス発現、メラニン調節、皮膚の湿潤、落屑などに関連する遺伝子及びタンパク質である。特に興味深いのは、シクロオキシゲナーゼ発現、特にシクロオキシゲナーゼ1及び2並びに同様に細胞外マトリックスタンパク質発現、特に、I、IV及びVI型コラーゲン発現に関連するタンパク質である。さらに、皮膚メラニン発現への上記エキスの影響も非常に興味深い。
【0034】
これら及び他の重要な皮膚タンパク質の発現に対する酵母−ポリフェノール発酵エキスの効果は、ヒトゲノムマイクロアレイ解析及びタンパク質発現、並びに限定はされないが、改善された保湿性、しわの減少、減少した色素沈着、改善された肌の色合いなどを含めた当業者によく知られている非侵襲的試験方法によってモニターすることができる。酵母−ポリフェノール発酵エキスの用途は、SilFloシリコーンモデリング、PRIMOS及びVISIO写真システムなどの技術で測定された場合に、例えば、測定された皮膚のしわの減少によって明らかになり得る。さらに、経表皮水分損失(TEWL)又はキュートメーター(cutometer)若しくはコーネオメトリック(corneometric)測定を使用して、保湿性を測定することができる。同様に、皮膚色素沈着は、比色計を使用して測定することができた。このような試験技術は当業者によく知られており、Handbook of non−invasive methods and the skin、第2版、Serup J、Jemec GBE、Grove GL(編)、Taylor and Francis(フロリダ州、Boca Raton)2006年に見出すことができる。
【0035】
例えば、図4に示されたように、ヒト表皮角化細胞のヒト遺伝子マイクロアレイ解析によって、酵母−レスベラトロール発酵エキスは、様々な皮膚代謝機能に関与するいくつかの遺伝子を上方調節することが示されている。したがって、本発明による酵母−ポリフェノール発酵エキスをパーソナルケア組成物に使用し得ることが理解される。
【0036】
本発明のパーソナルケア組成物は、有効量の「酵母−ポリフェノール発酵エキス」及び酸、アルコール、グリコール、パラベン、第4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド放出化合物及びハロゲン化化合物からなる群から選択される少なくとも1種の保存剤を含有することができる。例示的なアルコールには、フェノキシエタノール、イソプロピルアルコール、及びベンジルアルコールが含まれ、例示的なグリコールには、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びペンチレングリコールが含まれ、例示的なパラベン(パラヒドロキシ安息香酸としても知られている)には、メチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンが含まれ、例示的な第4級窒素含有化合物には、塩化ベンザルコニウム、クォーターニウム−15が含まれ、例示的なイソチアゾールには、メチルイソチアゾリン、メチルクロロイソチアゾリンが含まれ、例示的なアルデヒド放出剤には、DMDMヒダントイン、イミダゾリジニル尿素及びジアゾリジニル尿素が含まれ、例示的な抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロールが含まれ、例示的なハロゲン化化合物には、トリクロサン及びクロロヘキシデンジグルコネートが含まれる。本発明の目的のために有用な保存剤の例は、Steinberg,D.「Frequency of Use of Preservatives 2007」Cosmet.Toilet.117巻、41〜44頁(2002年)及び、「Preservative Encyclopedia」Cosmet.Toilet.117巻、80〜96頁(2002年)に見出すことができる。さらに、Ciccognani D.による論文である「Cosmetic and Drug Microbiology」、Orth DS編、Francis & Taylor、(フロリダ州、Boca Raton)(2006年)中のCosmetic Preservation Using Enzymesに記載されたものなどの酵素保存剤系も本発明の組成物との使用に有用であり得る。
【0037】
パーソナルケア組成物中に存在する「酵母−ポリフェノール発酵エキス」の量は、パーソナルケア組成物の総重量に対して0.001%から95%の間、好ましくは0.01%から50%の間、より好ましくは0.01%から10%の間である。保存剤は、組成物の総重量に対して0.01重量%から10重量%の間の濃度で存在する。
【0038】
さらに、「酵母−ポリフェノール発酵エキス」は、水、界面活性剤、乳化剤、コンディショナー、皮膚軟化剤、ワックス、油、ポリマー、増粘剤、固定剤、着色剤、湿潤剤、保湿剤、安定剤、希釈剤、溶媒及び香料などの他の機能性成分を場合によって含有し得る。加えて、パーソナルケア組成物は、植物薬、栄養補助食品、薬用化粧品、治療剤、医薬品、抗真菌剤、抗菌剤、ステロイドホルモン、ふけ予防剤、にきび抑制成分、日焼け止め、保存剤などの活性成分を含有し得る。
【0039】
「酵母−ポリフェノール発酵エキス」は、限定はされないが、ローション、軟膏、クリーム、スプレー、スプリッツ(spritzes)、水性混合物ゲル若しくは水性アルコール混合物ゲル、泡状整髪剤、パッチ、パッド、マスク、湿潤布(moistened cloth)、ワイプ(wipe)、固体スティック、透明スティック、口紅、エアゾールクリーム、無水粉末、タルク、トニック、油、乳濁液及びバスソルトを含めた様々なタイプの化粧品製剤に使用することができる。このような化粧品製剤は、皮膚への局所塗布剤として使用し得る。
【0040】
本発明の「酵母−ポリフェノール発酵エキス」は、このエキスを単独で含むことができ、又は、限定はされないが、リポソーム、ニオソーム、サブミクロン乳濁液、ポリマー封入剤、ゲル、クリーム、ローション、及びこれらの組合せを含めた様々な薬品送達媒体に封入された「酵母−ポリフェノール発酵エキス」を含むことができる。
【実施例】
【0041】
以下の例は、本発明の技術を例示することを意図しており、特許請求の範囲を制限することを意図していない。
【0042】
(例1 酵母/レスベラトロール発酵エキスの調製)
(微生物及び培地)
酵母細胞培養物はATCC(ピキア・パストリス #60372)から入手した。保存培養物を酵母−ペプトン−ブドウ糖(YPD)寒天プレート上で維持した。親保存培養物をYPD培養液中で増殖させ−20℃に維持した。酵母窒素ベース(YNB)増殖培地で発酵を行い、2.7% HPO、0.09% CaSO、1.8% KSO、1.5% MgSO、0.41% KOH、4% グリセロール(Sigma ミズーリ州、St.Louis)を含むグリセロールを補充した。レスベラトロール(>98%)をWilshire Technologies(ニュージャージー州、Princeton)から購入した。Antifoam sigma−emulsion Bをこのプロセス中使用した(Sigma、ミズーリ州、St.Louis)。
【0043】
(発酵槽)
振とうフラスコ試験による処理の最適化後、このプロセスを2L及び15L発酵段階に拡大した(2L New Brunswick Scientific、(ニュージャージー州、Edison)及び15L Applikon Biotechnology(カリフォルニア州、Foster City))。
【0044】
(ストレス条件)
供給バッチ培養物を酵母窒素ベース(YNB)増殖培地で29℃で増殖させ、グリセロール(2.7% HPO、0.09% CaSO、1.8% KSO、1.5% MgSO、0.41% KOH、4% グリセロール)を補充した。pHを2M NHOHによる滴定によって5.0±0.5で一定に保った。溶解酸素濃度を滅菌できるDOプローブで測定し、撹拌速度を100から600rpmの間に調節することによって酸素飽和度を30%で保った。通気速度を1VVMに設定した。0.001mg/mlの濃度でレスベラトロールの供給を開始した。卓上スケールからパイロットスケールに、さらに生産に、この方法を首尾良く拡大した。
【0045】
酵母/レスベラトロール供給バッチ発酵プロセスの概観を図1に示す。pH、温度及び他の発酵パラメーターを、バッチプロセスを反映させるために常にモニターした。レスベラトロール供給段階は、栄養が制限された環境での微生物によるレスベラトロールの摂取に重点を置く。
【0046】
さらなる試験の目的について、レスベラトロールの供給を開始して4、8、12、24時間後に回収された試料は、光学密度及び生存細胞計数の変化により測定して細胞の毒性の証拠がないことを示している。
【0047】
(例2 酵母タンパク質発現に対する酵母−レスベラトロール発酵プロセスの効果)
(2次元ゲル電気泳動)
ポリフェノール供給計画による酵母の代謝変化を確認するために、2次元ゲル電気泳動及び遺伝子マイクロアレイ解析を、対照(すなわち、レスベラトロール増殖因子を含まない酵母エキス)及び本発明の方法により生成された酵母−レスベラトロール発酵エキスに対して実施した。1次元目IEFは、それらの等電点に基づくタンパク質の分離に重点を置き、タンパク質をロードするためのマニホールドを備えるEttanIPGphorシステムを使用して行った。2次元目SDS−PAGEは、DALT VI Electrophoresis Unit(GE−Amersham、ニュージャージー州、Piscataway)(2,6)を用いて、それらの分子量によりポリペプチドを分離するための電気泳動法である。妨害物質及び不純物を除去するために、酵母細胞エキスをGE Amershamにより提供されている2D Clean−up kitを用いて精製した。各々の精製酵母試料をチオ尿素再水和溶液(7M 尿素及び2M チオ尿素、2% Chaps、0.5% Pharmalyte)で終夜再水和した。再水和した試料を1次元目IEFにロードした。1次元目IEFに続いて、ストリップを平衡させ2次元DALT VIにロードした。10〜500ngタンパク質濃度の範囲の感度を有するクーマシーを用いてゲルを染色した。2次元ゲル電気泳動法の詳細は、米国特許出願公開第2006/0110815 A1号に見出すことができる。対照、すなわち未処理酵母発酵エキス、及び酵母−レスベラトロール発酵エキスの2次元ゲル電気泳動の結果を表2に示す。
【0048】
図3は、対照と本発明の酵母/レスベラトロールのレーザーデンシトメーター比較を示している。参照スポット番号付け、pI、及びMWは、変化するポリペプチドスポットについて与えられ、試料において解析される。>1.7倍だけ対照と対比して本発明の酵母/レスベラトロールが増加し<0.05のp値を有するポリペプチドスポットをサークルで強調表示している。合計626スポットを分析した。
【0049】
結果は、発酵プロセスの重要段階中に酵母をレスベラトロール増殖因子に曝露した後、酵母は著しいプロテオーム変化を有する(すなわち、レスベラトロール処理の結果として、新しいタンパク質が発現されたか、より古い既存のタンパク質が現在、抑制されつつあるかのいずれかである)ことを示している。
【0050】
(例3 ヒト表皮角化細胞の遺伝子マイクロアレイ解析)
例1に例示された手順におけるレスベラトロールでの処理後、酵母細胞を遠心分離し、ペレットをRNA Later(Ambion)中に再懸濁し4℃で貯蔵した。RiboPure RNA抽出キット(Ambion)を用いて酵母から全RNAを抽出し、続いてMessage AMP aRNA Kit(Ambion)を用いてmRNAを増幅した。アレイについて、MicroMaxアレイ標識化キット(Perkin Elmer)を使用してCy−3又はCy−5のいずれかで、aRNAの試料を蛍光標識した。次いで、標識化したaRNAを酵母ゲノムDNAマイクロアレイチップ(Agilent Technologies)に適用し、終夜ハイブリダイズした。その翌日、チップを洗浄し、Axon 4100A DNAマイクロアレイスキャナーでスキャンし、Axon Genepix−Pro(登録商標)ソフトウェアを用いて解析した。遺伝子マイクロアレイ解析に使用された方法は、米国特許出願公開第2006/0110815号に見出すことができる。
【0051】
ヒト表皮角化細胞遺伝子マイクロアレイから得られた興味ある遺伝子を、皮膚機能におけるそれらの潜在的役割について注意深くスクリーニングした。ヒト表皮角化細胞遺伝子マイクロアレイから生成された分子チップは、様々に異なって発現された遺伝子において特徴的な結果を示した。特定の遺伝子についての時間−応答を得るために、興味ある遺伝子を異なる処理時間で観察した。レスベラトロール栄養計画への時間関連応答を得るために、遺伝子発現をモニターした。様々な皮膚代謝機能に関与するいくつかの遺伝子の上方調節を検出した。図4に示したように、酵母/レスベラトロール発酵エキスは、NOS1、FER1、DEFB4、LAMB3、COX1、COX2、COL4A1、COL1A1、COL1A2、COL6A1、COL6A2及びSOD1などの遺伝子に統計的に有意な変化を引き起こす。NOS3、TMMP1、DHCR7及びVEGFAなどの多くの他の遺伝子も酵母/レスベラトロール発酵エキスの適用によって上方調節された。
【0052】
遺伝子マイクロアレイ解析の目的について、「上方調節」又は「上方調節された」という用語は、遺伝子がRNAを過剰発現していることを意味する。「下方調節」又は「下方調節された」という用語は、RNAが過小発現されていることを意味する。
【0053】
(例4 全層評価)
本発明の酵母/レスベラトロール発酵エキスをMatTek全層皮膚組織モデルで試験した。この皮膚モデルは、1)ヒト表皮の多層の高度に分化したモデルを形成するために培養された正常なヒト由来表皮角化細胞及び、2)真皮を形成するためにコラーゲン基質中に播種されたヒト線維芽細胞からなる。到着後、組織を使用されるまで4℃で貯蔵した。使用のために、組織をアガロース輸送トレイから取り出し、4mlのアッセイ培養液を含む6ウェルプレートに置き、37±2℃及び5±1% COで終夜平衡させた。終夜の平衡の後、培養液を4mlの新しい培養液に取り替え、次いで、50μlの試験物質を組織に局所的に適用した。次いで、組織を37±2℃及び5±1% COで24時間インキュベートした。
【0054】
(COXアッセイ)
膜をトリス緩衝食塩水(TBS:20mM トリス、pH7.5、150mM NaCl)中で平衡させ、Bio−Dot精密濾過装置にアセンブルした。アセンブル後、200μlのTBSをBio−Dot中で使用された各ウェルに添加し、全てのウェルを通した十分な流れが存在することを確実にするために真空を適用した。次に、各細胞培地試料(400μl)又はタンパク質ホモジネート試料(約5μG)を装置中の1ウェルに割り当て、適切なウェルに適用した。試料を低真空下で濾過した。膜が処置の間に乾燥しないことを確実にするために、試料が割り当てられていないウェルにTBSを添加した。ブロッティング処置の最後に、追加の200μlを適用し、各ウェルを通して濾過した。次いで、膜をBio−Dot装置から取り出し、TBS中で5〜10分間洗浄し、次いでブロッキング溶液(トリス緩衝食塩水[20mM トリス、pH7.5、150mM NaCl、1% 脱脂粉乳)中に置き、ロッキングプラットフォーム上で室温において最低1時間インキュベートした。アッセイの結果を図5に示す。
【0055】
(IV型コラーゲンアッセイ)
一連のI型Cペプチド標準を0ng/mlから500ng/mlの範囲で調製した。ELISAマイクロプレートをプレートフレームから不必要なストリップをいずれも除去することによって調製した。使用する各ウェルに、100μlの試料又は標準を添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄用緩衝液で3回洗浄した。最後の洗浄液を除去後、100μlの検出溶液を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを再び上記のように洗浄した。最後の洗浄液を除去した時、100μlの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、50μlの停止液を各ウェルに添加し、プレートリーダーを用いて460nmで、プレートを読み取った。アッセイの結果を図6に示す。
【0056】
(SkinEthic組織のメラニンアッセイ)
SkinEthicの日焼け表皮モデルは、ヒト表皮の多層の高度に分化したモデルを形成するために共培養された正常なヒト由来の表皮角化細胞及びメラニン細胞からなる。このモデル中のメラニン細胞は、メラニン合成を増加(皮膚の色素沈着剤)し得る又は減少(皮膚の美白剤)し得る試験物質によって影響され得る、長期の組織中のメラニン蓄積の基礎レベルをもたらすメラニン形成を受ける。図7に示された結果は、本発明の酵母/レスベラトロール発酵エキスがメラニンの発現を最少化したことを実証している。
【0057】
(例5 リポソーム封入酵母/レスベラトロール発酵エキスの調製)
「酵母/レスベラトロール発酵エキス」の試料を、リン脂質及び大豆から得られたレシチン層を含むリポソームに加えた。Hydraulic Engineering Corporation(カリフォルニア州、Brea)から入手した高圧ホモジナイザーを用いて、この溶解物をリポソームと一緒にスラリーにした。この乳白色混合物は、リポソーム成分で封入された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を含有していた。
【0058】
(例6 マルトデキストリンで封入された酵母/レスベラトロール発酵エキスの調製)
「酵母/レスベラトロール発酵エキス」の試料をマルトデキストリンに封入し、国際公開第2003/068161号中の方法を使用して噴霧乾燥して、マルトデキストリンで封入された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」の無水粉末を本質的に提供した。
【0059】
以下の提案例は、例1を使用して調製された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を使用して調製し得る本発明によるスキンケア組成物を例示している。
【0060】
(提案例7 油中水乳濁液)
本例は、例1に開示のとおり調製された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を組み込んでいる高内相油中水乳濁液を例示している。
【表1】

【0061】
(提案例8 水中油クリーム)
本例は、例1に開示のとおり調製された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を組み込んでいる水中油クリームを例示している。
【表2】

【0062】
(提案例9 アルコールローション)
本例は、例1に開示のとおり調製された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を組み込んでいるアルコールローションを例示している。
【表3】

【0063】
(提案例10 サブミクロン乳濁液濃縮物)
本例は、例1に開示のとおり調製された「酵母/レスベラトロール発酵エキス」を含有するサブミクロン乳濁液濃縮物を例示している。
【表4】


(提案例11)
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地でピキア属(Pichia)の酵母の細胞を後期対数増殖期(ここで、前記培地の炭素源は消費される)へ増殖させるステップ、
増殖因子としてのポリフェノールの非細胞毒性用量に前記細胞を曝露するステップであって、それにより前記酵母の代謝経路を通して新たな活性物質を生成する、ステップ、及び、
濾過又は溶解によって前記新たな活性物質を分離するステップであって、それにより該新たな活性物質を含有する酵母−ポリフェノール発酵エキスを提供する、ステップ、
を含む方法によって生成される、酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項2】
前記ポリフェノールがレスベラトロールである、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項3】
前記酵母がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項4】
前記培地が動物由来生成物をまったく含有しない、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項5】
前記ポリフェノールが、約0.001グラム/リットルから1.0グラム/リットルの濃度で有機溶媒中に分散している、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項6】
細胞タンパク質物質、細胞核物質、細胞質物質、細胞壁成分、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の細胞成分を含有する、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項7】
本質的に水溶性である、請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス。
【請求項8】
請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキス及び保存剤を含有するパーソナルケア組成物であって、
前記保存剤が、酸、アルコール、グリコール、パラベン、第4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド放出化合物、ハロゲン化化合物、及びこれらの組合せからなる群から選択される、
パーソナルケア組成物。
【請求項9】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、細胞タンパク質物質、細胞核物質、細胞質物質、細胞壁成分、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の細胞成分を含有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項10】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、本質的に水溶性である、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項11】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、前記パーソナルケア組成物の総重量に対して0.0001重量%から95重量%の間の濃度で存在する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項12】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、前記パーソナルケア組成物の総重量に対して0.01重量%から50重量%の間の濃度で存在する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項13】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、前記パーソナルケア組成物の総重量に対して0.01重量%から10重量%の間の濃度で存在する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項14】
前記保存剤が、前記パーソナルケア組成物の総重量に対して0.01重量%から10重量%の間の濃度で存在する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項15】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、酵母−レスベラトロール発酵エキスである、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項16】
前記酵母−ポリフェノール発酵エキスが、前記エキスの放出速度を制御するための封入剤中に封入されている、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項17】
前記封入剤が、リポソーム、ニオソーム、サブミクロン乳濁液、ポリマー封入剤、ゲル、クリーム、ローション、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項18】
化粧品として許容される媒体をさらに含有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項19】
水、界面活性剤、乳化剤、コンディショナー、皮膚軟化剤、ワックス、油、ポリマー、増粘剤、固定剤、着色剤、湿潤剤、保湿剤、安定剤、希釈剤、溶媒、香料、植物薬、栄養補助食品、薬用化粧品、治療剤、医薬品、抗真菌剤、抗菌剤、ステロイドホルモン、ふけ予防剤、にきび抑制成分、日焼け止め、保存剤、及びこれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1種の成分をさらに含有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項20】
酵母−ポリフェノール含有パーソナルケア組成物を調製する方法であって、
(1)請求項1に記載の酵母−ポリフェノール発酵エキスの有効量を提供するステップ、
(2)前記酵母−ポリフェノール発酵エキスをパーソナルケア組成物に加えるステップであって、それにより酵母−ポリフェノール含有パーソナルケア組成物を提供する、ステップ、
を含む、方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−528909(P2011−528909A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520214(P2011−520214)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/051634
【国際公開番号】WO2010/011885
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(502075397)アーチ パーソナル ケア プロダクツ、エル.ピー. (6)
【Fターム(参考)】