説明

がん療法のための治療用テトラヒドロイソキノリン系組成物

がん細胞に対して選択性を有するが、正常細胞に対してはあったとしてもわずかしか有害な副作用を示さない、がんの治療のための治療用テトラヒドロイソキノリン組成物を開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年11月21日に出願された米国特許仮出願第60/866,606号の優先権の恩典を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、がん療法のための組成物およびそれらの組成物の使用方法に関する。より具体的には、本発明は、がん治療のための合成テトラヒドロイソキノリン系組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
米国癌学会(American Cancer Society)によると、2005年には、約1,372,910の新たながん症例があり、同時期にさらに100万症例の基底細胞および扁平上皮細胞の皮膚がんがあった。1995〜2000年に診断されたがんについての5年生存率は、64%であり、主として治療法の改善および早期発見によるものであった。依然として、3分の1を超えるがん患者が5年間生存するとは期待できず、5年間生存したがん患者のうち、著しい割合の患者が、がんを再発すると考えられ、10年およびそれ以上での生存率の減少につながった。
【0004】
世界中の大多数の学術研究機関および多くの製薬会社は、新たな抗がん剤(cancer-fighting agent)の開発に焦点を当てた多数の腫瘍学研究計画があり、毎年合成される新たな化合物はかなりの数である。しかしながら、種々の型のがんと闘う薬剤の必要性は依然として残っており、かつがん細胞に対しては選択的であるが正常細胞に損傷が及ばないようにする薬剤が、特に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、下記式 (I) の組成物に関する。

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【0006】
本発明は、がんの治療のための式 (I) の化合物の使用方法にも関する。一態様において、該方法は、本明細書に記載される1つまたは複数の化合物で神経膠腫を治療する方法である。
【0007】
一態様において、がんの治療のための組成物は、

である。
【0008】
組成物は、下記式 (II) に記載の組成物としても提供される。

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】培養した正常ラットの脳星状細胞およびC6神経膠腫に対する、6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩(EDL-291)の用量/反応曲線を図示したものを提供する。生存細胞の割合を薬物の濃度に対してグラフ化する。Aにおいて、異なる濃度のEDL-291での処置の4日後に生存する細胞の割合を示す。C6神経膠腫(EC50=0.6μM)が、脳星状細胞(EC50=26μM)よりもEDL-291に感受性であることに注目されたい。
【図2】EDL291処置動物およびEDL291未処置動物のそれぞれで測定した、C6神経膠腫の腫瘍体積を示すグラフである。動物を、1日2回(BID)、7日間、担体溶液のみ(対照、n=9)または40 mg/Kg体重のEDL-291(n=9)で処置した。腫瘍の体積を測定し、mm3で表示した。EDL-291処置動物は、対照ラットで認められた腫瘍よりも平均して32%小さい腫瘍を有した(student t 検定、p=0.02)。
【図3】移植C6神経膠腫の増殖に対するEDL-291の効果を説明する2つの顕微鏡写真を示す。Aは担体溶液のみで処置した動物から採取したものであり、BはEDL-291処置動物から採取したものである。この一連の実験において、腫瘍を脳に埋め込み、3日間定着させた。次いで、薬物の腹腔内投与により動物を7日間処置した。EDL-291における暗青色の腫瘍(B) は、対照動物 (A) における腫瘍よりも小さい。Bにおけるスケールバーは1 mmである。
【図4】図4aおよび図4bは、腫瘍の大きさに対するEDL-291の効果を説明するグラフである。個々の動物に関する結果を4aに示し、同じデータを、棒グラフにおける平均値と該平均値の標準誤差として4bに示す。40 mg/kgでの急性毒性についての証拠はない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明者らは、がん細胞に対する選択的細胞毒性をもつ組成物を合成した。本発明によって記載される組成物は、下記式 (I) に記載の置換テトラヒドロキソキノリン化合物を含む。

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、-F、-Cl、-Br、または-Iである。
【0011】
本発明者らにより、正常細胞に対する毒性の検出可能な兆候を示さないが、数日のうちに腫瘍を破壊することが示された、特に有効な本発明の組成物は、

である。
【0012】
本発明の組成物は、下記式 (II) によっても記載される。

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【0013】
本発明の組成物は、薬理学的に許容されるその塩も含んでもよい。本発明の組成物は、ヒトおよび動物における種々の型のがんの治療のために提供される。例えば、本発明の化合物は、神経膠腫、網膜芽細胞腫、および他の型のがんの治療に極めて有効であることが分かっている。本発明の組成物の治療的有効量は、全ての薬学的組成物でそうであるように、がんの種類、個体の体重、個体の年齢等に応じて、個体間で異なり得る。しかしながら、がん療法および薬理学の技術分野における当業者には、本組成物の治療的有効量が、本明細書での本発明者らによる開示に基づいて、容易に決定され得る。式 (I) の化合物の有用な投与量は、インビトロ活性と動物モデルにおけるインビボ活性での投与量とを比較することにより決定され得る。マウスおよび他の動物における有効投与量のヒトへの外挿法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号等において公知である。
【0014】
本発明の組成物は、腫瘍学のための医用薬剤を患者に投与することが公知である種々の手段によってヒトまたは動物対象に投与され得、該手段としては、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、組成物がポンプを経由もしくは封入を経由して提供され得るか、または放出調整組成物に関連し得る、薬学的リザーバーによる投与、ならびに当業者に公知である他の手段が挙げられる。
【0015】
化合物が、安定で無毒の酸塩または塩基塩を形成するために、十分に塩基性または酸性である場合、化合物を塩として投与することが適当であり得る。薬学的に許容される塩の例としては、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸で形成された、有機酸付加塩であり、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、およびα-グリセロリン酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、および炭酸塩を含む、適した無機塩も形成され得る。
【0016】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である標準的な手法を用いて、例えば、アミン等の十分に塩基性である化合物を、生理学的に許容されるアニオンを与える適した酸と反応させることにより得られ得る。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)塩、またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩を作製することもできる。
【0017】
式 (I) の化合物は、例えば経口経路、非経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、局所経路または皮下経路等の選択した投与経路に適合した種々の様式により、例えばヒト患者等の哺乳類対象に投与され得る、薬学的組成物として製剤化することができる。本化合物は、例えば、不活性な希釈剤または同化可能な食用担体等の薬学的に許容される媒体と組み合わせて、全身投与または経口投与され得る。それらを、硬シェルゼラチンカプセルまたは軟シェルゼラチンカプセル中に封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、または患者の食事の食品に直接組み入れてもよい。治療的経口投与のために、活性化合物を、1種または複数種の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびカシェ剤等の形成に用いてもよい。このような組成物および調製物は、少なくとも約0.1%の活性化合物を含有すべきである。組成物および調製物の割合は、もちろん変動してもよい。
【0018】
錠剤、トローチ剤、丸剤、およびカプセル剤等は、以下のものも含有してもよい:例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンもしくはゼラチン等の結合剤;例えばリン酸二カルシウム等の賦形剤;例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプンおよびアルギン酸等の崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ならびに例えば精製白糖、果糖、乳糖もしくはアスパルテーム等の甘味剤、またはペパーミント、ウインターグリーンオイルもしくはチェリー香味料等の香味剤を添加してもよい。単位剤形がカプセルである場合には、該カプセルは、前記種類の材料に加えて、例えば植物油またはポリエチレングリコール等の液体担体を含有してもよい。種々の他の材料が、コーティングとして存在しても、またはそうでなければ固形単位剤形の物理的形態を変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラックまたは糖等でコーティングされていてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としての精製白糖または果糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーまたはオレンジの香料等の香味料を含有してもよい。もちろん、任意の単位剤形を調製する際に用いる任意の材料は、薬学的に許容され、かつ使用する量において実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性調製物および装置に組み込まれていてもよい。
【0019】
活性化合物はまた、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与され得る。活性化合物またはその塩の溶液は、水で調製され得、任意で無毒の界面活性剤と混合されてもよい。分散体は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物中で、ならびにオイル中で調製することもできる。保管および使用の通常条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するために保存剤を含有してもよい。
【0020】
注射または注入に適した薬学的剤形としては、活性成分を含み、無菌注射用または無菌注入用の溶液または分散体の即時調製物に適合し、リポソーム中に封入されていてもよい、無菌水溶液もしくは無菌分散体または無菌散剤をあげることができる。最終的な剤形は、製造条件および保管条件の下で、無菌で、液状で、かつ安定であるべきである。液体担体または媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、植物油、無毒のグリセリルエステル、およびそれらの適した混合物を含む、溶媒または液状分散媒であり得る。固有流動率を、例えば、リポソームの形成により、分散体の場合には必要とされる粒度の維持により、または界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチオマーサル等により達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収を、吸収遅延薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによりもたらすことができる。
【0021】
無菌注射用溶液は、活性化合物を必要とされる量で前記の列挙した種々の他の成分とともに適当な溶媒中に組み込むことにより調製され、必要に応じて、その後、濾過滅菌される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉剤の場合、好ましい調製方法は減圧乾燥および凍結乾燥技術であり、該方法は、あらかじめ無菌濾過した溶液中に存在する任意の付加的な所望の成分を加えた活性成分の粉末を与える。
【0022】
局所投与に関して、本化合物は、例えば該化合物が液体である場合に、純粋な形で適用され得る。しかしながら、固体または液体であってもよい皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて、それらを組成物または製剤として皮膚に投与することが、一般的に望ましい場合がある。有用な固体担体としては、例えば、タルク、粘土、結晶セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉砕化した固体が挙げられ得る。有用な液体担体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコールもしくはグリコール、または任意で無毒の界面活性剤の助けによって本化合物を有効なレベルで溶解または分散させることができる、水-アルコール/グリコール混和物が挙げられ得る。例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性無機材料等の増粘剤も液体担体とともに使用して、使用者の皮膚に直接適用するための、例えばパスタ剤、ゲル剤、軟膏剤、または石けん剤を形成させてもよい。
【0023】
本明細書に記載される組成物を用いてがんを治療する方法において、投与は、患者の医師により決定される投与スケジュールに従って提供され得、かつ例えば毎日、1日おきに、1日2回等の比較的規則正しい間隔であり得る。本発明の化合物は、神経膠腫、網膜芽細胞腫、ならびに神経系、呼吸器系、胃腸系、心血管系内で生じるがん、肺、肝臓、腸のがん、例えば黒色腫等の皮膚がん、乳がん、および前立腺がんを含むが、これらに限定されない種々の他のがんの治療に有用であり得る。
【0024】
6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリジン-4-イルベンジル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 3 および6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリジン-4-イルベンジル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 4 の合成を、スキーム1に示す。1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 を、無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3の存在下、ピリジン-4-ボロン酸 2 と反応させて、化合物 3 を得、これを2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、化合物 4 を得た(スキーム-1)。
【0025】
無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いる、2-メトキシピリジン-3-ボロン酸 5 との、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 の鈴木カップリングにより、6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 6 を合成した。化合物 6 を、2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 7 を得た。シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下、7 をホルムアルデヒドと反応させて、6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン 8 を得、これを2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン・塩酸塩 9 を得た(スキーム-2)。
【0026】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(3-メトキシピリジン-4-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 12 の合成を、スキーム3に示す。1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 を、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3の存在下、3-メトキシピリジン-4-ボロン酸 10 と反応させて、6,7-ジメトキシ-1-[4-(3-メトキシピリジン-4-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 11 を得、次いでこれを2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、化合物 12 を得た。1-(2'-メタンスルホニル-アミノビフェニル-4-イルメチル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 14 を、2M HClのジエチルエーテル溶液と反応させることにより、N-[4'-(6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-イルメチル)ビフェニル-2-イル]-メタンスルホンアミド・塩酸塩 15 を調製した。イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いる、(2-メチルスルホニルアミノフェニル)-ボロン酸 13 との化合物 1 の鈴木カップリングにより、化合物 14 を得た(スキーム-4)。
【0027】
無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いる、2-アセチルアミノフェニルボロン酸 16 との、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 の鈴木カップリングにより、1-(2'-アセチルアミノビフェニル-4-イルメチル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 17 を合成した。化合物 17 を、2M HClのジエチルエーテル溶液と反応させて、N-[4'-(6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-1-イルメチル)-ビフェニル-2-イル]アセトアミド・塩酸塩 18 を得た(スキーム-5)。
【0028】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 23 の合成を、スキーム6に示す。1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 を、無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3の存在下、4-メトキシピリジン-3-ボロン酸 19 と反応させることにより、6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 20 を調製した。化合物 20 を2M HClのジエチルエーテル溶液と反応させて、6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 21 を得た。メタノール中、シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下、21 をホルムアルデヒドと反応させて、6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン 22 を得、次いでこれを2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、化合物 23 を得た。
【0029】
酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いる、2,4-ジメトキシピリミジン-5-ボロン酸 24 との、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 の鈴木カップリングにより、1-[4-(2,4-ジメトキシピリミジン-5-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 25 を合成した。化合物 25 を2M HClのジエチルエーテル溶液と反応させて、1-[4-(2,4-ジメトキシピリミジン-5-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 26 を得た(スキーム-7)。
【0030】
6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリミジン-5-イルベンジル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン・塩酸塩 29 の合成をスキーム8に示す。無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いて、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1 を、ピリジン-5-ボロン酸 27 と反応させることにより、6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリミジン-5-イルベンジル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 28 を合成した。化合物 28 を2M HClのジエチルエーテル溶液で処理して、化合物 29 を得た。
【0031】
1-[4-(2-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 31 を、2M HClのジエチルエーテル溶液と反応させることにより、1-[4-(2-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 32 を合成した。無水イソプロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3の存在下、2-クロロピリジン-3-ボロン酸 30 との、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1の鈴木カップリングにより、化合物 31 を調製した(スキーム-9)。
【0032】
全ての試薬および溶媒は、Aldrich、Frontier Scientific Inc.、Combi-Blocks Inc.、synthonixから購入し、さらに精製することなく用いた。反応は、窒素雰囲気下で実施した。プロトンNMRスペクトルは、DMSO-d6 を用いてBruker ARX 300分光計(300 MHz)で記録し、スペクトルデータは、割り当てられた構造と一致した。ケミカルシフト値は100万分の1(δ)として報告した。カップリング定数(J)はHzで提供し、分裂パターンは以下のように表す:s, 1重線;d, 2重線;t, 3重線;q, 4重線;m, 多重線。質量スペクトルは、ポジティブおよびネガティブモードでのBrucker ESQUIREエレクトロスプレー/イオントラップ器で収集した。通常の薄層クロマトグラフィ(TLC)は、シリカゲルプレート(Analtech, Inc., 250ミクロン)で実施した。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル(Merck, 等級60, 230-400メッシュ)で行った。
【0033】
化合物3、6、11、14、17、20、25、28、および31の調製のための一般手法:
無水イソプロパノール中で、1-(4-ブロモベンジル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 1(1当量)、酢酸パラジウム (II)(4 mol%)、およびトリフェニルホスフィン(8 mol%)の混合物を、乾燥条件下、室温で30分間攪拌した。この混合物に、置換ピリジン/ピリミジン/フェニルボロン酸(2当量)およびNa2CO3(4当量)を連続的に添加し、該混合物を16時間還流させた。減圧下で溶媒を濃縮し、残渣を酢酸エチルと飽和NaHCO3水溶液間で分配させた。二層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。合併した有機層を、水で、次いで食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、未精製の残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0034】
化合物4、7、12、15、18、21、26、29、および32の調製のための一般手法:
2M HClのジエチルエーテル溶液(20当量)を、6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル(1当量)のジエチルエーテル溶液に添加し、反応混合物を終夜攪拌した。混合物を濾過して、残渣をエーテルで洗浄し、風乾した。未精製の残渣をメタノール-エーテルから結晶化し、6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩を得た。
【0035】
化合物8および22の調製のための一般手法:
メタノール中のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(2当量)および塩化亜鉛(1当量)を、メタノール中で攪拌した6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ピリジンベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩(1当量)とホルムアルデヒド(10当量、37%水溶液)の混合物に、室温で添加した。反応混合物を同じ温度で終夜攪拌し、減圧下で濃縮し、残渣を1N HCl水溶液で処理して、酢酸エチルで抽出した。有機相を、水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、CHCl3を添加して、減圧下で再び蒸発させ、6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ピリジンベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンをオイル状の塊として得、これをいずれの精製もすることなくさらなる工程に用いた。
【0036】
化合物9および23の調製のための一般手法:
2M HClのジエチルエーテル溶液(20当量)を、6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ピリジンベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1当量)のジエチルエーテル溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温まで温め、終夜攪拌した。反応混合物を濾過して、残渣をエーテルで洗浄し、風乾した。未精製の残渣をメタノール-エーテルから結晶化し、6,7-ジメトキシ-1-[4-置換ピリジンベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩を得た。
【0037】
6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリジン-4-イル-ベンジル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (3)
酢酸エチル-ヘキサン(20:80〜90:10 v/v)をフラッシュカラムクロマトグラフィーのための溶離液として用いた(50%)。MS (ES+) m/z 483 (M+Na)
【0038】
6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリジン-4-イルベンジル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (4)
生成物を黄色着色粉末として70%の収率で得た。

【0039】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (6)
クロロホルム-メタノール(100:0〜98.2:0.2 v/v)をフラッシュカラムクロマトグラフィーのための溶離液として用いた(67%)。NMRスペクトルにおいて、2組のピークが1:0.3の比率で現れた。

【0040】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (7)
生成物を黄色着色粉末として51%の収率で得た。

【0041】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(2-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (9)
生成物を黄色粉末として得た。

【0042】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(3-メトキシピリジン-4-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (11)
酢酸エチル-ヘキサン(20:80〜90:10 v/v)をフラッシュカラムクロマトグラフィーのための溶離液として用いた(58%)。NMRスペクトルにおいて、2組のピークが1:0.3の比率で現れた。

【0043】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(3-メトキシピリジン-4-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (12)
生成物を黄色着色粉末として71%の収率で得た。

【0044】
1-(2'-メタンスルホニルアミノビフェニル-4-イルメチル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (14)
酢酸エチル-ヘキサン(20:80〜60:40 v/v)をフラッシュカラムクロマトグラフィーのための溶離液として用いた(58%)。NMRスペクトルにおいて、2組のピークが1:0.5の比率で現れた。MS (ES+) m/z 575 (M+Na)
【0045】
N-[4'-(6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-l-イルメチル)-ビフェニル-2-イル]-メタンスルホンアミド・塩酸塩 (15)
生成物を黄色着色粉末として52%の収率で得た。

【0046】
1-(2'-アセチルアミノビフェニル-4-イルメチル)-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (17)
酢酸エチル-ヘキサン(20:80〜60:40 v/v)をフラッシュカラムクロマトグラフィーのための溶離液として用いた(67%)。MS (ES+) m/z 539 (M+Na)
【0047】
N-[4'-(6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-イルメチル)ビフェニル-2-イル]アセトアミド・塩酸塩 (18)
生成物を白色粉末として66%の収率で得た。

【0048】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (20);6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (21)
生成物を淡黄色粉末として86%の収率で得た。

【0049】
6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (23)
生成物を黄色粉末として得た。

【0050】
1-[4-(2,4-ジメトキシピリミジン-5-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (25);1-[4-(2,4-ジメトキシピリミジン-5-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (26)
生成物を淡黄色粉末として80%の収率で得た。

【0051】
6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリミジン-5-イルベンジル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (28);6,7-ジメトキシ-1-(4-ピリミジン-5-イルベンジル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (29)
生成物を淡黄色粉末として86%の収率で得た。

【0052】
1-[4-(2-クロロ-ピリジン-3-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸=tert-ブチル=エステル (31);1-[4-(2-クロロ-ピリジン-3-イル)ベンジル]-6,7-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩 (32)
生成物を淡黄色粉末として94%の収率で得た。

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】
【表1】




【0063】
N-(2-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-エチル)-2-(4-ブロモフェニル)アセトアミド 35、5-(4-ブロモベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・シュウ酸塩 37、および5-(4-ブロモベンジル)-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 38 の合成をスキーム-10に示す。DMF中、トリエチルアミンの存在下、シアノホスホン酸ジエチルを用いる、4-ブロモフェニル酢酸 34との2-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-エチルアミン・塩酸塩 33 のカップリングにより、化合物35を合成した。無水アセトニトリル中でPOCl3を用いるビシュラー・ナピエラルスキー反応により、アミド 35 を環化して、5-(4-ブロモベンジル)-7,8-ジヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン 36 を得、これをNaBH4で還元し、メタノール中でシュウ酸二水和物を用いて、シュウ酸塩 37 に変換した。ジクロロメタン中、化合物 37 を1N NaOHで処理して、遊離アミンを得、このアミンを、THF中、1N NaOH存在下、二炭酸ジ-tert-ブチルで保護して、化合物 38 を得た。
【0064】
無水DMF中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3を用いる、4-クロロピリジン-3-ボロン酸=ピナコール=エステル 39 との、化合物 38 の鈴木カップリングにより、5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 40 を合成した。ジクロロメタン中、化合物 40 をトリフルオロ酢酸で処理して、化合物5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)-ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・トリフルオロアセテート 41 を得た。37% HCl、1N NaOHを用いて、次いでMeOH-エーテル中、2M HCl/エーテルを用いて、化合物 41 を処理することにより、5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・二塩酸塩 42 に到達した(スキーム-11)。
【0065】
5-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・二塩酸塩 45 の合成をスキーム-12に示す。化合物 38 を、無水2-プロパノール中、酢酸パラジウム (II)、トリフェニルホスフィンおよびNa2CO3の存在下、4-メトキシピリジン-3-ボロン酸 19 と反応させて、5-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 43 を得、これを、ジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸で処理して、5-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・トリフルオロ酢酸塩 44 を得た。化合物 44 を、37% HCl、1N NaOH、次いでMeOH-エーテル中、2M HCl/エーテルで、処理することにより、45 を得た。
【0066】
N-(2-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-エチル)-2-(4-ブロモフェニル)アセトアミド 35
無水DMF(25 mL)中で攪拌した4-ブロモフェニル酢酸 34(2.000 g, 9.300 mmol)および2-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-エチルアミン・塩酸塩 33(2.063 g, 10.230 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(2.823 g, 27.900 mmol)、次いでシアノホスホン酸ジエチル(1.669 g, 10.230 mmol)を0℃で添加し、反応混合物を、室温で終夜攪拌し、氷水中に注いだ。沈殿物を濾取し、水で洗浄し、風乾した。未精製の生成物をCHCl3-ヘキサンを用いて再結晶化して、化合物 35 を白色固体(3.133 g, 93%)として得た。

【0067】
5-(4-ブロモベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・シュウ酸塩 37
無水アセトニトリル(225 mL)中で攪拌したN-(2-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-エチル)-2-(4-ブロモフェニル)アセトアミド 35(9.400 g, 25.951 mmol)の溶液に、オキシ塩化リン(119.372 g, 778.83 mmol)を添加し、6時間還流させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、それにメタノールを添加し、溶媒を減圧下で再び濃縮した。得られた残渣をメタノールに溶解し、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(17.700 g, 467.118 mmol)を添加し、混合物を室温で終夜攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をCHCl3に溶解し、1N NaOH溶液、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。有機層を減圧下で蒸発させ、オイル状の塊をCHCl3に溶解した。シュウ酸二水和物(6.543 g, 51.902 mmol)のメタノール溶液を、室温で攪拌しながら前記溶液に添加した後、エーテルを添加した。混合物を、同じ温度で2時間攪拌し、冷蔵庫内に終夜で保存した。固体を濾取し、エーテルで洗浄し、風乾して、37 を白色個体(9.5 g, 84%)として得た。

【0068】
5-(4-ブロモベンジル)-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 38
5-(4-ブロモベンジル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・シュウ酸塩 37(9.400 g, 21.547 mmol)のジクロロメタン(300 mL)溶液に1N NaOH(430 mL)を添加し、混合物を室温で2時間攪拌した。2層を分離し、水層をジクロロメタン(2×100 mL)で抽出し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して、遊離アミンを黄色オイルとして得、これをテトラヒドロフラン(100 mL)に溶解した。この溶液に、1N NaOH水溶液(85 mL)、次いでテトラヒドロフラン(70 mL)中の二炭酸ジ-t-ブチル(7.054 g, 32.320 mmol)を0℃で添加した。反応混合物を室温で終夜攪拌し、溶媒を減圧下で濃縮した。残渣を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。未精製の残渣を、EtOAc-ヘキサン(30:70〜40:60 v/v)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固形粉末 38(7.405 g, 77 %)を得た。NMRスペクトルにおいて、2組のピークが1:2の比率で現れた。

【0069】
5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 40
無水DMF(20 mL)中、4-クロロピリジン-3-ボロン酸=ピナコール=エステル 39(0.515 g, 2.150 mmol)、5-(4-ブロモベンジル)-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 38(0.800 g, 1.792 mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.016 g, 0.072 mmol)、トリフェニルホスフィン(0.038 g, 0.143 mmol)およびNa2CO3(0.760 g, 7.169 mmol)の混合物を、16時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、シリカを通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を水で抽出し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。未精製の生成物を、EtOAc-ヘキサン(20:80〜40:60 v/v)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、薄黄色オイル状の塊 38(0.250 g, 29%)を得た。MS (ES+) m/z 501 (M+Na)
【0070】
5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・二塩酸塩 42
5-[4-(4-クロロピリジン-3-イル)ベンジル]-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 40(0.220 g, 0.459 mmol)の無水ジクロロメタン(10 mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(4.190 g, 36.744 mmol)を、0℃で添加し、反応混合物を室温まで温め、同じ温度で2時間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮し、ジクロロメタンを用いて繰り返し蒸発させた。残渣を水性HClで処理し、濾過した。濾液を、1N NaOHを用いて塩基性にし、CHCl3で抽出し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。オイル状の塊をMeOH(15 mL)に溶解し、次いでジエチルエーテル(60 mL)に溶解した。2 M HClのジエチルエーテル(30 mL)溶液を前記溶液に0℃で添加し、混合物を室温まで温め、終夜攪拌した。反応混合物を濾過し、残渣をエーテルで洗浄し、メタノール-エーテルから結晶化して、42 を灰白色固体(0.103 g, 50%)として得た。

【0071】
5-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 43
無水2-プロパノール(20 mL)中、4-メトキシピリジン-3-ボロン酸水和物 19(0.716 g, 4.684 mmol)、5-(4-ブロモベンジル)-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-6-カルボン酸=tert-ブチル=エステル 38(1.043 g, 2.342 mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.021 g, 0.094 mmol)、トリフェニルホスフィン(0.049 g, 0.187 mmol)およびNa2CO3(0.993 g, 9.368 mmol)の混合物を、16時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、シリカを通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を減圧下で濃縮した。未精製の残渣をアセトン-ヘキサン(20:80〜50:60 v/v)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、43(0.389 g, 35%)を得た。MS (ES+) m/z 497 (M+Na)
【0072】
5-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン・二塩酸塩 45
42の手法に従って、化合物 45 を合成した。生成物を灰白色粉末として80%の収率で得た。
【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】
【表2】

【0078】
がん細胞の破壊およびがんの治療のための薬剤として本明細書に開示される組成物の有用性を実証する、以下の限定されない例によって、本発明をさらに記載する。
【0079】
実施例
スクリーニングおよび用量反応アッセイ法
テネシー大学医療科学センターのDr. Duane D. Millerの研究室で、本明細書に記載のように、6,7-ジメトキシ-1-[4-(4-メトキシピリジン-3-イル)ベンジル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン・塩酸塩(EDL-291)を合成した。手短に言えば、スクリーニングアッセイ法のための処置濃度および細胞操作に関して、初代培養の星状細胞およびC6神経膠腫細胞株の培養を同じように処理した。細胞を、トリプシン処理し、ウェル中103 細胞/mm2の細胞密度で96-ウェルプレートに移した。細胞を、100μLの10%FCS BME中、湿気のある5%CO2大気を含む37℃のインキュベータ内で、終夜増殖させた。
【0080】
EDL291を、完全に溶解して100μMの原液を作製し、一連の濃度となるよう希釈した。これらの初期溶液の20μLアリコットを、180μLの2%FCS BMEに添加して、試験濃度にした。媒体溶液を対照として試験した。特定の実験のために共溶媒濃度を変更しないように希釈した。処置の直前に、10%FCS BMEを細胞から除去し、180μLの処置培地で置き換えた。培養した細胞(ATCCから購入した、ラット脳星状細胞またはC6神経膠腫の正常な初代培養)を、試験化合物とともに4日間インキューベートした。細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%クレシルバイオレット染色剤(Cresylecth violet stain)で染色し、定量化した。化合物(スクリーニング)または濃度(用量反応曲線)当たりの各用量について4ウェルとして、スクリーニングデータを収集した。また、未処置の8ウェルの平均増殖を各プレートに対する陰性対照(100%増殖)として用いた。用量反応曲線のための細胞を、同じ培地中で増殖させ、スクリーニングアッセイ法と同様の方法で取り扱った。
【0081】
データ分析
各化合物の細胞毒性の特性は、パーセント生存率として報告し、未処置(100%対照)細胞のA560で割った処置細胞に対する平均A560として算出し、百分率として表した。100%未満の値は、細胞増殖抑制効果または細胞毒性効果を示す。用量反応曲線およびEC50値は、濃度に対するパーセント生存率のグラフにより得られる。
【0082】
移植のための細胞培養
C6神経膠腫を脳内に移植する研究のために、β-ガラクトシダーゼ・マーカーを保持する、本発明者らの研究室で産生させたC6細胞株を用いた。該細胞株を、pCMVβ発現ベクター(Clontech、パロアルト、カリフォルニア州)で形質移入し、G418(GibcoBRL)を用いて安定な形質移入体を選択した。神経膠腫細胞を、T-75培養フラスコ内で、5×103 細胞/cm2 の密度で培養した。10%ウシ胎仔血清を含むBME中で、細胞を、コンフルエンスまで成長させた。移植の前日に、培養物を、10%ラット血清(Equitech-Bio Inc.、カーヴィル、テキサス州)を含むBME中に置いたハンクス液ですすいだ。
【0083】
生存外科手術(Survival surgery)
外科手術のために、合計18匹の雄性Sprague-Dawleyラット(250〜350g)に、(13 mg/kgのロムポム(Rompom) および87 mg/kgのケタラールで)深く麻酔をかけた。ラットが確実に、深く麻酔にかかったままであり、かつ痛みに無反応であるように、外科手術の間、該ラットをモニターした。頭蓋を外科的に露出させ、穿頭孔(bur hole)を頭蓋に設置し、注入カニューレを大脳皮質より5 mm下の尾状核内に入れた。約5×105の神経膠腫細胞を20分間かけて脳内に送達させた。注入カニューレを取り外し、切開部を外科用ステープルで閉じた。動物を回復させて、動物飼育施設(animal care facility)に戻した。
【0084】
処置前の3日間、腫瘍を増殖させた。この後7日間、腹腔内送達によりEDL-291(40 mg/kg)を1日に2回送達させた。動物を2処置群のどちらかに分類した:担体溶液(ハンクス液、10%DMSOを加えたHBSS)のみを受けさせた9匹のラット群、およびEDL-291を受けさせた9匹のラット群。処置期間中、動物を毎日モニターした。動物を7日間処置した後、26 mg/kgのロムピウム(Rompium)および174 mg/kg ケタラールでラットに深く麻酔をかけ、心臓を介して生理食塩水、次いでリン酸緩衝液(pH 7.4)中の4%パラホルムアルデヒドを灌流させた。脳を頭蓋から取り出し、24時間、後固定し、次いで30%ショ糖溶液中に置いた。脳を、凍結ミクロトームで50μMに切り出した。5組の切片のうちのある1組を、スライドガラス上にのせ、Nissl法により染色した。
【0085】
腫瘍の大きさの測定
それぞれの動物における腫瘍の大きさを測った。解剖顕微鏡に搭載のデジタルカメラを用いて、それぞれの病状(case)からの連続切片を写真に撮った。同じ倍率でスケールも写真に撮った。デジタル画像をコード化し、1人の研究員が該コードを管理した。NIH画像プログラム用いてデジタル画像を分析して、腫瘍の体積を決定した。この作業は、盲検法(XW)で行われた。コードを解除し、データを編集してStudent t検定を用いて分析した。
【0086】
結果
EDL-291のインビトロ試験
神経膠腫を選択的に死滅させるEDL-291の有効性の初期試験として、本発明者らは、培養したラット脳星状細胞を死滅させるEDL-291の能力と比較した。これらの正常な脳星状細胞およびC6神経膠腫に対するEDL-291の効果を試験した場合に、反応における明白な違いがあった。正常な脳星状細胞よりもC6神経膠腫細胞は、EDL-291の効果に対する感受性であった。正常な星状細胞は22.8μMのEC50を有し、C6神経膠腫は0.6μMのEC50を示した。従って、正常な脳星状細胞を死滅させるために必要とされるEDL-291の用量と比べて、C6神経膠腫を死滅させるEDL-291の有効濃度に36倍の違いがあった。これらのデータは、EDL-291が、正常な星状細胞と比べて、培養した神経膠腫に対して高選択性であることを明示している。
【0087】
EDL-291の効果のインビボ分析
担体溶液(HBSS)で処置した対照動物において、比較的大きな腫瘍が脳内で観察された。C6神経膠腫を、局部の血管に付着した周囲の組織に浸潤している細胞を伴う大きな塊として認めることができた。浸潤は、腫瘍の大部分からかなり離れている細胞標識した血管を含めたかなり広範囲なものであった。腫瘍の大きさにおける有意差(p=0.02)が、EDL-291処置動物で認められた。処置の7日後、EDL-291で処置した腫瘍は、対照動物における腫瘍よりも小さいことは明らかであった。2群における腫瘍の大きさの指標を与えるために、本発明者らは、連続切片から腫瘍を再構成して、それぞれの病状の総腫瘍体積を決定した。切片の写真を撮って、NIH画像プログラムを用いて腫瘍部分を測定した。全ての動物に関するデータを図3に示す。担体溶液のみで処置したラット(対照動物)に関して、腫瘍の大きさは、5.8〜14.4 mm3の範囲であった。EDL-291処置動物は、他方の群で観察された腫瘍よりも小さい腫瘍を有した。EDL-291処置群における他の動物の全てが腫瘍を有したが、これらの腫瘍は、対照処置群において観察された腫瘍よりも平均して小さかった。EDL-291処置動物における腫瘍の大きさは、1.3〜9.1 mm3の範囲であった。EDL-155処置群と対照群との間のこの違いは、p=0.02のレベル(student t検定)で有意である。対照群の1匹の動物における腫瘍が生着せず、この動物はデータ分析から除外した。
【0088】
外科手術のために、合計18匹の雄性Sprague-Dawleyラット(250〜350g)に、(13 mg/kgのロムポム および87 mg/kgのケタラールで)深く麻酔をかけた。ラットが確実に、深く麻酔にかかったままであり、かつ痛みに無反応であるように、外科手術の間、該ラットを観察した。頭蓋を外科的に露出させ、穿頭孔を頭蓋に設置し、注入カニューレを大脳皮質より5 mm下の尾状核内に入れ、約5×105の神経膠腫細胞を20分間かけて脳内に送達させた。注入カニューレを取り外し、切開部を外科用ステープルで閉じた。動物を回復させて、動物飼育施設に戻した。
【0089】
腫瘍細胞移植の約3日後、それに続く7日間、動物は、1日に2回、EDL-291(40 mg/kg)の腹腔内投与を受け始めた。動物を2処置群のどちらかに分類した:担体(ハンクス液、つまりHBSS中の10%DMSO)のみを受けさせた9匹のラット群、およびEDL-291を受けさせた9匹のラット。処置期間中、動物を毎日観察した。8日の生存期間後、該ラットに26 mg/kgのロムポムおよび174 mg/kg ケタラールで深く麻酔をかけ、心臓を介して生理食塩水、次いでリン酸緩衝液(pH 7.4)中の4%パラホルムアルデヒドを灌流させた。脳を頭蓋から取り出し、24時間、後固定し、次いで30%ショ糖溶液中に置いた。脳を、凍結ミクロトームで50μMに切り出した。5組の切片のうちのある1組を、スライドガラス上にのせ、Nissl法により染色した。
【0090】
それぞれの動物における腫瘍の大きさを測った。解剖顕微鏡に搭載のデジタルカメラを用いて、それぞれの病状からの連続切片を写真に撮った。同じ倍率でスケールも写真に撮った。デジタル画像をコード化し、1人の発明者(Eldon E. Geisert)が該コードを管理した。NIH画像プログラム用いてデジタル画像を分析して、腫瘍の体積を決定した。この作業は、盲検法で行われた。コードを解除し、データを編集してStudent t検定を用いて分析した。
【0091】
担体溶液(HBSS)で処置した対照動物において、脳内に比較的大きい腫瘍が観察された(図1A)。C6神経膠腫が、大きな腫瘤として観察され、かつこの腫瘤の範囲外に、細胞は、局部の血管に付着した周囲の組織に浸潤していることが観察された(図1B)。これは、腫瘍の大部分からかなり離れている細胞標識した血管を含めたかなり広範囲なものであった。腫瘍は、媒体対照動物と比較して、EDL-291処置動物においてより小さいことが明らかであった。2群における腫瘍の大きさの指標を与えるために、本発明者らは、連続切片から腫瘍を再構成して、それぞれの病状の総腫瘍体積を決定した。切片の写真を撮って、NIH画像プログラムを用いて腫瘍部分を測定した。全ての動物に関するデータを図2に示す。EDL-291処置は、媒体対照動物と比較して、腫瘍の大きさにおける統計的に有意な減少をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 (I) の化合物:

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【請求項2】
R2が、

である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R3が-OCH3である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R2が、

である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R3がClである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
下記式 (I) に記載の化合物の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、がんを治療する方法:

式中、R1は、H、H2Cl、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【請求項7】
式 (I) の化合物のR2が、

である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
式 (I) の化合物のR3が-OCH3である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式 (I) の化合物のR2が、

である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
式 (I) の化合物のR3がClである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
がんが、神経膠腫、網膜芽細胞腫、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、皮膚がん、乳がん、および前立腺がんからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項12】
がんが、神経膠腫または網膜芽細胞腫である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
下記式 (II) の組成物:

式中、R1は、H、CH3、または-COOC(CH3)3であり;
R2は、

であり;かつ
R3およびR4は、それぞれ独立して、H、-OCH3、-CF3、-NHSO2CH3、-NHCOCH3、-SO2CH3、-N(CH3)2、-CN、-NO2、-NH2、-CO2CH3、-OCF3、-CH3、F、Cl、Br、またはIである。
【請求項14】
請求項13記載の化合物の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、がんを治療する方法。
【請求項15】
がんが、神経膠腫、網膜芽細胞腫、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、皮膚がん、乳がん、および前立腺がんからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
がんが、神経膠腫または網膜芽細胞腫である、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510324(P2010−510324A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538511(P2009−538511)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/085416
【国際公開番号】WO2008/064329
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(504326686)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション (22)
【Fターム(参考)】