説明

くさび・ソケット終端装置、引張クランプおよびエレベータシステム

【課題】エレベータシステムの引張部材を提供する。
【解決手段】圧縮性コーティングが外側に施された平形引張部材を終端させるのに適した引張部材終端装置であって、前記装置は、くさびおよびソケットを備えており、これらは、所定角度に配置された互いに協働する面をそれぞれ有し、これによって、これらの間に前記引張部材が把持されるようになっている。前記角度によって、前記引張部材が確実に固定されるとともに、前記引張部材に悪影響を及ぼす圧力や応力が加わることが回避されている。本発明では、さらに、安全クランプを任意で引張部材終端装置に備えることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに関し、特に、このようなエレベータシステムの引張部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な牽引式エレベータシステムは、かご、つりあいおもり、かごとつりあいおもりとを連結させる複数のロープ、ロープを移動させる牽引滑車、および牽引滑車を回転させる機械を備えている。これらのロープは、鋼製ワイヤが重ねられたものもしくは捻られたものからなり、滑車は、鋳鉄からなる。
【0003】
一般的な鋼製ロープおよび鋳鉄の滑車は、信頼性が非常に高く、かつコスト効率が良いことがわかっているが、これらを利用する際には制限がある。このような制限の1つは、ロープと滑車との間の牽引力である。ロープと滑車との間の牽引力を増大させる通常の技術を利用した場合、ロープの耐久性が劣化したり、摩耗が激しくなったり、もしくはロープ圧力が増大したりする。
【0004】
鋼製ロープを利用する際のもう1つの制限は、鋼製ワイヤロープの柔軟性および疲労特性である。鋼製ロープの最小直径は、必要な疲労特性によって主に決まるため、ロープの厚さが比較的大きくなる。鋼製ロープの断面が比較的厚いことによって、それ自体の柔軟性が低減され、これによって、滑車の直径を比較的大きくすることが必要となる。滑車の直径が大きいほど、エレベータシステムを駆動するために機械が要するトルクが大きくなるため、エレベータシステムの大きさおよびコストが増大する。
【0005】
一般的な円形ロープのもう1つの欠点は、滑車の直径が小さい場合に、ロープ圧力が大きくなり、このようなロープの耐用期間が短くなることである。ロープ圧力は、ロープが滑車の周りを移動する際に発生するものであるが、ロープの張力に正比例し、かつ滑車の直径Dおよびロープの直径に反比例する。さらに、滑車の溝部の形状(滑車の溝部を切り込むといった、牽引力を増大させる技術を含む)によって、ロープに加わる最大ロープ圧力がさらに増大する。
【0006】
一般的なロープ駆動式エレベータ設備では、ロープ用のくさび形クランプが、終端させるために利用されている。くさび形クランプは、その対向する傾斜壁部と、ケーブルが巻き付けられている涙滴形状くさびと、の間にエレベータロープを固定することによって、利用される。このようなくさびは、ロープに張力が加わった状態で、ロープをくさび形クランプの壁部との間に把持するよう機能する。このような設計の利点は、くさびの角度が比較的鋭いことによって、大きなクランピング力が得られることである。鋼製ロープは、圧縮強度が大きいため、大きなクランピング力が発生しても、このようなロープに、破砕やクリープといった悪影響が及ぶことはない。
【0007】
エレベータシステムに利用される一般的な円形状の鋼製ロープの欠点を解消するために、比較的平坦な引張部材を含めて、被覆された引張部材が開発されている。このような平坦な引張部材は、複数の独立した荷重搬送用コードがコーティング共通層に収容されたものを備えている。このような用途に利用されているタイプの引張部材の例が、1998年2月26日に出願された「エレベータ用の引張部材」という名称の米国特許出願09/031,108号、および1998年12月22日に出願された「エレベータ用の引張部材」という名称の一部継続する特許出願(代理人明細書98−2143号)に詳細に記載されている。これらの特許出願には、この点が明確に開示されている。
【0008】
このようなコーティング層によって、個々のコードが包囲され、かつ/または分離されており、さらに、牽引滑車と係合する係合面が画定されている。このような引張部材の構成によって、ロープ圧力をより均一に引張部材全体に分散させることができ、さらに、牽引力を増大させるとともに滑車の直径を小さくすることができる。
【0009】
平形の引張部材を終端させ、かつ固定する方法には、引張部材をバーに巻き付け、一対のプレートによってこの端部を把持するステップが含まれる。これらのプレートは、これらに設けられた孔に複数の固定具が通されることによって固定される。平形引張部材を終端させる他の方法として、くさび形端部固定具を用いるものがある。この場合、くさび部材が、引張部材の端部に配置され、一対のプレートによって把持される。このような構成では、一方のプレートが、くさび部材と協働するくさび形断面を有し、第2のプレートが、均一な厚さの断面を有する。これらのプレートも、同様に、これらに設けられた孔に複数の固定具が通されることによって固定される。このようなタイプの終端方法の欠点は、終端部の張力搬送能力が、固定具により得られるクランピング力のみに依存することである。さらに、くさびタイプの固定具によって、部材の終端位置が制限され、これによって、調整性が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した技術があるにもかかわらず、出願人の譲渡人の指導の下にいる科学者や技術者は、エレベータシステムを駆動するための、より効率的で、かつ耐久性の良い方法および装置の開発に努めている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、圧縮性コーティングが外側に施された引張部材のための終端装置は、くさびを備えており、これは、互いに協働するジョー面を有するソケットの内部に配置されている。ロープは、前記くさびに巻き付けられ、ソケット内部に挿入され、部材の張力により生じる力と、くさびとジョー面との協働により生じる力と、によって把持される。
【0012】
本発明の主な特徴は、くさびの長さや幅を含めて、くさびの形状、特にくさびの角度にある。くさびの寸法および角度は、引張部材の圧縮応力容量を上回ることなくロープの滑りを防止するのに十分なクランピング力を発生させることができるように、決定されている。さらに、ロープ張力がくさび全体に効果的に分散するように、くさびの頂部は、半円形とされている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の引張部材終端装置を備えたエレベータシステムの斜視図。
【図2】終端クランプの実施例を示す斜視図であり、任意で利用することができる張力クランプ装置が示されている。
【図3】線3−3に沿って示された図2の実施例の断面図。
【図4】他の実施例を示す斜視図であり、旋回ブロックが示されている。
【図5】線5−5に沿って示された図4の実施例の断面図。
【図6】くさび、引張部材およびジョー面の概略的断面図であり、関連する形状および力が示されている。
【図7】くさびの実施例を示す斜視図であり、隆起部および固定機構が示されている。
【図8】図2の引張クランプのプレートを示す斜視図。
【図9】図2の引張クランプのプレートを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、牽引式エレベータシステム12が示されている。エレベータシステム12は、かご14,つりあいおもり16、牽引駆動装置18および機械20を備えている。牽引駆動装置18は、かご14とつりあいおもり16とを連結させている引張部材22と、牽引滑車24と、を備えている。滑車24が回転することによって、引張部材22、ひいてはかご14およびつりあいおもり16が移動するように、引張部材22が滑車24と係合している。引張部材22は、終端クランプ30によってつりあいおもり16およびかご14に連結されている。歯車付装置20が図示されているが、このような構成は、単に例示的なものであり、本発明は、歯車付装置および歯車を備えていない装置のいずれにも適用することができる。さらに、比較的平坦な引張部材22が図示されているが、このような構成もまた単に例示的なものであり、本発明を、被覆された円形の引張部材といった他のタイプの引張部材に適用することも可能である。
【0015】
図2に、終端クランプ30の実施例が、より詳細に示されている。引張部材22は、くさび32に巻き付けられ、かつソケット34内部に収容されている。取付けロッド36がピン38によりソケット34に取り付けられており、この取付けロッド36によって終端クランプ30がかご14およびつりあいおもり16に取り付けられている。取付けロッド36は、コッターピン42により固定的に位置決めされたねじ付きナット40によって、つりあいおもり16およびかご14に連結されている。図2には、さらに、任意で備えることができる引張クランプ50が示されており、引張部材22が、2重に重なった状態で、プレート56,58の溝部52,54の内部に把持されている。
【0016】
図3を参照すると、クランプ30によって、引張部材22が確実に終端されている。使用中、図示されているように、引張部材22の先行する部分44がソケット34の底部における孔46に挿入され、引張部材22の包囲部47がくさび32に巻き付けられ、後続の部分48が孔46から戻される。続いて、くさび32が、ソケット34の開口部60に収容され、図2に示された把持位置に置かれる。このような把持位置では、先行した部分44および後続の部分48が、それぞれ、ソケット34のジョー面62,64の間に把持される。引張部材22と取付けロッド36とが軸方向にほぼ整列するように、終端クランプ30が設計されており、これによって、荷重伝達が効果的に行われるとともに、終端クランプの望ましくない回転が回避されている。
【0017】
図3をさらに参照すると、エレベータシステム(図1)の通常運転中、引張部材22の先行した部分44の張力(T)は、矢印66で示された方向に向かい、包囲部47に作用して、孔46の方向にくさび32をさらにソケット34内部に押し込む。引張部材22の荷重によりくさび32がソケット34内部に押し込まれることによって、矢印68で示されるクランピング力により先行部分44がジョー面62との間で把持され、かつ矢印70で示されるクランピング力により後続の部分44がジョー面64との間で把持される。クランピング力68,70は、ジョー62,64に対してそれぞれ垂直に、かつくさび32の各部分に対して垂直に作用し、垂直力(Fn)として示されている。ジョー62,64により得られるクランピング力と、包囲部47に作用する摩擦力と、が、引張部材22の全張力(T)に対抗することによって、引張部材がクランプ30内部に固定される。
【0018】
終端クランプ30の他の実施例が、図4および図5に示されているが、ここでは、取付けロッド36が、ピン38により旋回ブロック72に取り付けられており、旋回ブロック72が、旋回ピン74によりソケット34に旋回可能に取り付けられているとともに、コッターピン76により固定されている。このような特殊な実施例では、図示されているように、引張部材22の先行部分44が、ソケット34の底部における孔46に挿入され、引張部材の包囲部47がくさび32に巻き付けられ、後続の部分48が孔44から戻される。くさび32は、ソケット34の開口部60に収容され、図5に示された把持位置に置かれる。このような把持位置では、先行した部分44および後続の部分48が、それぞれ、ソケット34のジョー面62,64の間に把持される。このような実施例では、くさび32および引張部材22がソケット34内部に収容された後に、旋回ブロック72が収容されるようになっており、これによって、以下でより詳細に説明するように、引張部材の張力が失われた場合にくさびが偶発的にソケットから外れることが回避される。さらに、このような特定の実施例では、引張部材22および取付けロッド36が軸方向にほぼ整列した状態に維持されるようになっており、これによって、荷重伝達が効果的に行われる。旋回ブロック72によって、取付けロッド36もしくはソケット34に過度な応力を加えることなく、かご14もしくはつりあいおもり16に対する引張部材22の角度をずらすことができる。図2および図3に示された実施例より優れた、このような特定の実施例の他の利点は、ソケットの全長を縮小することができることである。これは、くさび32がソケット34の頂部から挿入されるためである。続いて、旋回ブロック72がくさび32と近接した位置まで挿入されるため、終端クランプ30の全長を小さくすることができる。
【0019】
くさび32の形状は、垂直力68,70を発生させて引張部材22を適切に把持するための重要な要素である。垂直力Fnを決定する、くさび32の関連するパラメータが、図6に示されており、78として示されている長さ(L)、80として示されている深さ(d)、82として示されている、中心線83からクランピング面33,35までの角度φ、および引張部材22(図2)の幅(W)がこれに含まれる。垂直力68,70を制御するための他の要素として、引張部材22の張力(T)が挙げられ、これは、66として示されている。パラメータLおよびパラメータdは、ある程度φに依存し、一般的に、昇降路(図示せず)内部の利用できるスペースによって制限される。張力Tの公称値が得られると、力Fn68,70(図3および図5)の公称値は、φに逆比例する。すなわち、φが小さすぎる場合、Fnが大きくなり、引張部材22に圧縮クリープが生じる。このことは、引張部材22の外側にウレタンコーティングが施されている場合、もしくは他の柔軟性エラストマのコーティングが施されている場合には、特に重要である。このようなコーティングの、回復不可能な変形つまりクリープを発生させることなく耐えることが可能な最大圧縮応力(σC)は、約5MPaであるためである。これに対して、φが大きすぎると、垂直力は小さくなり、引張部材が終端クランプ30内部で滑る。このことは、引張部材22の圧縮応力を減少させるのに、特に好都合である。圧縮応力を減少させる1つの方法は、クランピング力が加わる長さLを減少させることであるが、これは、通常、昇降路の要件により制限される。上述した物理的パラメータを考慮すると、σCを超えないようにするために、φの最小値を、以下の式から決定することができる。
【0020】
φ=tan-1[T/(σC*L*W)]
本発明を、Tが約2500Nである引張部材22に適用する際には、通常、dを約60〜70mm、Lを約140mm、φを約9〜10度とする。
【0021】
ここで、図6を参照しながら、図4および図5に示された終端クランプ30の特定の実施例に関して本発明を説明する。一般的な引張部材22は、上述した関連出願に記載されているように、ウレタンコーティングが外側に施され、かつ幅が30mmである平坦な柔軟性ロープからなり、最大引張容量が30000Nである。当該技術分野で周知のように、エレベータロープの安全率は約12に設定され、これによって、引張部材22の最大引張力が約2500Nになる。くさび32の長さLが140mm、角度φが10度である場合、以下のように、直径dを幾何学的に求めることができる。
【0022】
d=2(Ltanφ)=2(140tan20/2)=49.37mm
Tが2500Nである場合、Fnは、以下のように決定することができる。
【0023】
Fn=T/sinφ=2500/sin(20/2)=14,396N
Fnは、先行部分44の面積全体に分散するため、引張部材22の圧縮応力σは、くさび32とジョー面62との間に把持される先行した部分の面積Aの関数となり、以下のように計算することができる。
【0024】
A=L*W=140*30=4200mm2
引張部材22の圧縮応力は、以下のように求めることができる。
【0025】
σ=Fn/A=14,397/4,200=3.43MPa
このような特定の例では、材料の圧縮応力の限界値を上回ることがなく、これによって、クリープが生じない。
【0026】
先行する部分44におけるTに対抗する終端クランプ30の能力が重要であるが、これは、Fnと、引張部材22とジョー面62との間の摩擦係数(μ)と、に相関する。図示されている例では、引張部材22にウレタンコーティングが施されており、さらに、くさび32のみならず、ジョー面62が平滑な鋼からなる。これらの表面の間の摩擦係数値μは、控えめにみて、約0.25である。ソケット34内部にくさび32を適切に把持するためには、先行する部分44がTの大部分に対抗することが必要である。但し、残りの部分を包囲部47に伝達することも可能である。クランピングの論理から得られる以下の関係式によって、例えばμ=0.25の場合の最大対抗力Frつまり対抗することができる張力の大きさが得られる。
【0027】
Fr=μ*Fn=0.25*14,397=3,599N
従って、与えられた例のTの最大値が2500Nであることを考慮すると、引張部材22の先行部分44が全張力Tに対抗し、これによって、引張部材が終端クランプ30内部で滑ることがない。
【0028】
引張部材22と、ジョー面62,64と、くさび32と、の間における摩擦係数を増大させることを意図した、本発明の他の実施例では、ジョーおよびくさびの面が粗いものとされている。ある特定の実施例では、サンドブラスト処理によって、面が粗くされている。面にサンドブラストを行うことによって、摩擦係数を0.35以上の値まで増大させることができる。面の摩擦係数を増大させる他の方法には、エッチング、機械加工、ローレットなどが挙げられる。摩擦係数が増大するだけでなく、このような粗い表面によって、微小な凹凸部が形成される。ウレタンコーティングは、大きな荷重が加わる状態でコールドフローが起こり易いという特性を有する。上述したような荷重が加わる状態では、ウレタンコーティングのコールドフローが発生してくさびおよびソケットの凹凸部の内部もしくはこの周囲へと入り込み(固定機構とも称される)、これによって、僅かではあるが効果的な機械的固定機能が得られる。このような固定機構によって、終端クランプの、引張部材22の滑りを防止する能力が向上する。固定機構を、溝部、線(図7)、切り込み、ダイアモンドパターン等とすることも、本発明の範囲内に含まれる。固定機構によって、上述した、必要な垂直力を減少させることができることは、認識すべきである。記載したような固定機構を設けることによって、長さLを減少させたり、もしくは角度φを増大させることができ、これによって、クリープが起こるリスクをさらに低減させることができる。
【0029】
くさび32の他の実施例が、図7に示されているが、ここでは、隆起部84,86が設けられており、これによって、これらの間に溝部88が設けられている。隆起部84,86の高さは、引張部材22のコーティング内部のコード(cord)の高さとほぼ同じである。例えば、特定の実施例では、引張部材22の厚さが3mmであり、1.4mmのコードがその内部に含まれている。このような実施例では、隆起部84,86によって、深さが約1mmの溝部88が画定される。引張部材22が溝部88の内部に配置され、くさび32が、上述したようにソケット34内部に収容される。隆起部84,86を設けることの利点は、コーティング材料のコールドフローが見込まれる場合に、引張部材22を溝部88の内部に入れることができることである。加えて、隆起部84,86の寸法は、ソケット34内部におけるくさび32のずれを制限することによって、圧縮応力による引張部材22の破壊を防止することができるような大きさとなっている。予想された垂直力Fnよりも大きい場合、垂直力Fnは、隆起部84,86に伝達され、これらがジョー面62,64に近づくことによって、ソケット34内部でのくさび32の移動が防止される。
【0030】
図2、図8および図9を参照すると、終端クランプ30とともに任意で利用することができる、上述した引張クランプ50が示されている。引張クランプ50を用いる目的は、終端させるとともに部材22の張力に対抗するようにすることを容易とし、かつ先行する部分44および後続部分48がソケット34内部に収容された状態で、これらの間の張力を均等化することである。万一、引張クランプ22の張力が減少した場合(例えば、エレベータかご14が突然停止した場合)に、引張クランプ50が、終端クランプ30を補助するよう機能する。引張クランプ50は、ソケット34に挿入される前の位置で、後続の部分48および先行する部分に締め付けられる。引張クランプ50は、引張部材22と係合した状態では、引張部材22上での移動が不可能となっている。図示および説明が行われるようなプレート56,58が理想的であるが、一方のプレートに引張部材用溝を備え、他方のプレートには溝部を設けないようにすることも、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
上述したように、引張クランプ50は、引張部材用溝部52,54をそれぞれ有する一対のプレート56,58を備えており、これらの溝部の深さは、引張部材22の厚さとほぼ同じである。さらに、固定具53を通すための穿孔51が設けられている。プレート56,58の先端部55は、先行する部分44および後続の部分48をソケット34から引張クランプ50へと円滑に移動させることができるように、十分に湾曲されている。
【0032】
使用時には、先行する部分44がプレート56の溝部52に挿入され、後続の部分48がプレート58の溝部54に挿入され、これらのプレートが、固定具53によって合わせて組み立てられる。ボルト53が締められた状態では、引張部材22は、溝部52,54内部に把持され、プレート56,58により固定されることによって滑らなくなる。このような方法では、引張クランプ50に対する引張部材の移動を防止することができる。
【0033】
終端クランプ30と組み合わせて引張クランプ50が任意で利用される場合、かご14により発生する全張力を、先行する部分44および後続の部分48に分配することができる。このことを考慮すると、以上で確立された、クランピング性能を決定するための分析は、各ケーブルへの張力の分配に対応するよう改善される。
【0034】
好適な実施例について図示および記載が行われたが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および置き換えを行うことも可能である。従って、本発明は、例示的に説明されたにすぎず、これに制限されるものではないことは認識すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマコーティングを有する平坦な引張部材のためのくさび・ソケット終端装置であって、
前記くさびは、長さLを有するクランピング面および角度φを有し、前記引張部材が、張力Tおよび幅Wを有し、前記エラストマコーティングが最大圧縮応力容量σCを有し、
前記長さおよび角度の関係は、以下の式
φ=tan-1(T/(σC*L*W))
で示されることを特徴とするくさび・ソケット終端装置。
【請求項2】
引張部材の先行部分および後続部分を2重に重ねた状態で把持するための引張クランプであって、
前記先行部分を受容する溝部が設けられた第1のプレートおよび前記後続部分を受容する溝部が設けられた第2のプレートと、
固定具を挿入して、前記先行部分および前記後続部分を前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に把持するために、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートにそれぞれ設けられた少なくとも1つの固定具孔と、
を備えていることを特徴とする引張クランプ。
【請求項3】
前記プレートは概ね平坦であり、前記プレートの少なくとも1つの端部が湾曲した前縁を有することを特徴とする請求項2記載の引張クランプ。
【請求項4】
エレベータかご、つりあいおもり、およびつりあいおもりとエレベータかごとの間に延びた引張部材を備えたエレベータシステムであって、
前記引張部材が、くさび・ソケット終端装置により前記かごおよび前記つりあいおもりの少なくとも一方に連結されている先行部分および後続部分を有するとともに、引張クランプを備えており、前記引張クランプは、
前記先行部分を受容する溝部が設けられた第1のプレートと、
前記後続部分を受容する溝部が設けられた第2のプレートと、
固定具を挿入して、前記先行部分および前記後続部分を2重に重ねた状態で前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に把持するために、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートにそれぞれ設けられた少なくとも1つの固定具孔と、
を備えていることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
平坦な引張部材のための終端装置であって、
前記引張部材は、最大圧縮応力容量σCを有するエラストマコーティングが施されているとともに幅Wを有するものであり、前記引張部材には、張力Tが加えられるものにおいて、前記終端装置は、
ソケットと、
くさびと、
を備えており、
前記くさびは、前記くさびに巻き付けられる前記引張部材とともに、前記ソケット内部に嵌合されるようになっており、さらに、長さLを有するとともに角度φに設けられたクランピング面を有し、
前記角度φおよび前記長さLは、以下の式
φ≧tan-1(T/(σC*L*W))
により示される関係を有することを特徴とする終端装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158095(P2011−158095A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77276(P2011−77276)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2000−592215(P2000−592215)の分割
【原出願日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】