説明

くし形(ブロック)共重合体

本発明は、くし形(ブロック)共重合体に関する。これらくし形(ブロック)共重合体は、
I リビング・フリーラジカル重合によって得られた、重合している任意選択で置換されたスチレン単位と無水マレイン酸単位とを含む少なくとも1種の(ブロック)共重合体
を、
II 第一級アミノ末端基を含む少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンと150℃の反応温度で反応させることによって、
かつ、該反応生成物の遊離型カルボキシル基の少なくとも25mol%を100℃より低い反応温度で、任意選択でHOの添加後に、その後塩化することによって得られる。
また本発明は、これらくし形共重合体の湿潤剤および分散剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くし形(ブロック)共重合体に関する。これらくし形(ブロック)共重合体は、
I リビング・フリーラジカル重合によって得られた、重合している任意選択で置換されたスチレン単位と無水マレイン酸単位とを含む少なくとも1種の(ブロック)共重合体
を、
II 第一級アミノ末端基を含む少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンと150℃以上の反応温度で反応させることによって、
かつ、該反応生成物の遊離型カルボキシル基の少なくとも25mol%を100℃より低い反応温度で、任意選択でHOの添加後に、その後塩化することによって得られる。
【背景技術】
【0002】
特に顔料向けの湿潤剤および分散剤として、多くのくし形共重合体を使用することができることが知られている。したがって、スチレン/無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)をポリアルキレンオキシドアミンおよびポリアルキレンオキシドグリコールと反応させることによって得られるくし形共重合体が、先行技術から既に公知である。米国特許第6310143号には、このようにして生成されるくし形共重合体が記載されているが、これらくし形共重合体は、イミド構造に加えて、主鎖に対する側鎖のアミド結合およびエステル結合を強制的に含んでいなければならず、その結果、これらくし形共重合体は、分散剤および湿潤剤としての数々の用途に必要な耐加水分解性を示さない。
【0003】
同じことが、米国特許第6406143号から公知のくし形共重合体にも当てはまる。これらのくし形共重合体はイミド基を含まないが、代わりに、スチレン/無水マレイン酸共重合体の主鎖との側鎖のアミドおよびエステル結合だけを含む。
【0004】
したがって、この先行技術の背景に対して、側鎖として線状ポリアルキレンオキシド重合体を有するスチレン/無水マレイン酸共重合体に基づくくし形共重合体を提供する必要性があった。これらのくし形共重合体は、際立った耐加水分解性だけでなく、際立った湿潤および分散効果を有し、したがって、理想的には多くの応用分野に、特に顔料ペーストの製造および様々の製品におけるその使用に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6310143号
【特許文献2】米国特許第6406143号
【特許文献3】米国特許第6291620号
【特許文献4】国際特許出願公開第WO98/01478号
【特許文献5】国際特許出願公開第WO98/58974号
【特許文献6】国際特許出願公開第WO99/31144号
【特許文献7】欧州特許出願公開第EP0270126号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Polym.Int.2000,49.993
【非特許文献2】Aust.J.Chem 2005,58,379
【非特許文献3】J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2005,43,5347
【非特許文献4】Chem.Rev.2001,101,3661
【非特許文献5】Angewandte Chemie Int.Ed.2004,43,6186
【非特許文献6】W.Herbst、K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、1997(出版社:Wiley−VCH、ISBN:3−527−28836−8)
【非特許文献7】G.Buxbaum「Industrial Inorganic Pigments」、1998(出版社:Wiley−VCH、ISBN:3−527−28878−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、線状ポリアルキレンオキシド側鎖を有するスチレン/無水マレイン酸共重合体に基づくくし形共重合体を提供することであった。これらの共重合体により、固形物の分散液における、特に顔料分散液の湿潤および分散効果が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によるくし形(ブロック)共重合体を提供することによって達成される。このくし形(ブロック)共重合体は、
I 制御されたラジカル重合によって得られた、重合している任意選択で置換されたスチレン単位と無水マレイン酸単位とを含む少なくとも1種の(ブロック)共重合体
を、
II 第一級アミノ末端基を含む少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンと150℃以上の反応温度で反応させることによって、
かつ、反応生成物の遊離型カルボキシル基の少なくとも25mol%を100℃より低い反応温度で、IIとともに、任意選択で他の第三級アミンを用いて、任意選択でHOの添加後に、その後塩化することによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この反応において主鎖として使用するSMA樹脂は、任意選択で置換されたスチレン/無水マレイン酸共重合体であり、1〜15個のC原子を有するアルキル基で、好ましくはメチルで、6〜18個のC原子を有するアリール基、ハロゲン、好ましくは塩素、または少なくとも1つのニトロ基で、スチレンを任意選択で置換することが可能である。
【0010】
したがって、本発明によれば、用語「SMA樹脂」の「S」とは、置換スチレンも無置換スチレンも共に意味すると取られる。
【0011】
SMA樹脂は、安定(stable)、交互(alternating)、傾斜型(gradient−type)またはブロック型構造を有することができる。
本発明による重合体向けのSMA樹脂は、好ましくは以下の制御されたフリーラジカル重合プロセスによって生成される。
−たとえばPolym.Int.2000,49,993、Aust.J.Chem 2005,58,379、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.2005,43,5347、米国特許第6291620号、国際特許出願公開第WO98/01478号、国際特許出願公開第WO98/58974号および国際特許出願公開第WO99/31144号に開示されているような、一定の重合調節剤を使用する場合には「MADIX」および「付加開裂連鎖移動」としても知られ、ここでは単にRAFTと表される「可逆的付加開裂連鎖移動プロセス」(RAFT)、あるいは
−たとえばChem.Rev.2001,101,3661に開示されているような、重合調節剤(NMP)としてニトロキシル化合物を用いる制御された重合。
【0012】
米国特許第6291620号に記載されているC−RAFTプロセスが、重合技術として特に好ましい。対応する開示は、本願の開示の一部として本明細書に取り入れられる。SMA樹脂は、特に好ましくは、連鎖移動剤としての2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの存在下で制御されたラジカル重合よって生成される。
【0013】
このようにして生成されるSMA樹脂中の任意選択で置換されたスチレン/無水マレイン酸のモル比は、好ましくは1:1〜8:1である。任意選択で置換されたスチレン/無水マレイン酸の1:1〜2:1のモル比が特に好ましい。使用するSMA樹脂の数平均分子量は、好ましくは1000g/mol〜20,000g/molである(GPCによって決定される)。
【0014】
本発明によるSMA樹脂を調製するために使用する一官能性開始剤は、一方向のみに成長する重合体連鎖(polymer chain)を開始する。特定のリビング・フリー、制御された重合プロセスにおいて使用する一官能性開始剤は、当業者に公知である。使用することができる開始剤は、たとえば、アゾジイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤、過酸化ジベンゾイルや過酸化ジクミルなどの過酸化物化合物、ならびにペルオキソ二硫酸カリウムなどの過硫酸塩である。
【0015】
重合調節剤の例が上で挙げた文献に述べられている。2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシル(TEMPO)またはN−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ−(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシルが、たとえばNMPに適しており、一方チオカルボン酸エステル、キサントゲン酸エステルまたは2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが、たとえばRAFTに適している。
【0016】
さらに、NMPにおいては、たとえばChem.Rev.2001,101,3661、「V.Approaches to Alkoxyamines」に、またはAngewandte Chemie Int.Ed.2004,43,6186に記載されているように、開始剤の重合調節剤との付加物を使用することができる。
【0017】
重合は有機溶媒中で進行することができる。適切な溶媒の例は、キシレンなどの芳香族化合物または2−メトキシプロピルアセテートや酢酸ブチルなどのカルボン酸エステルである。
【0018】
重合温度は、重合技術および使用する開始剤の半減期に依存する。重合温度は一般に60℃〜200℃、好ましくは100℃〜160℃である。
【0019】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体を生成するために使用するポリアルキレンオキシドモノアミン類は、好ましくは、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位で構成され、末端基として第一級アミノ基を有するC〜Cのモノアルコール開始ポリエーテル類である。エチレンオキシド単位対プロピレンオキシド単位の重量比は、好ましくは5:95〜100:0、特に好ましくは30:70〜70:30となるべきである。使用するポリアルキレンオキシドモノアミンの数平均分子量は、好ましくは500g/mol〜3000g/molである(アミン価(amine value)から、またはH−NMR分光法によって決定される)。
【0020】
150℃以上の反応温度における(ブロック)共重合体Iとの反応は、反応生成物の遊離型カルボキシル基を塩化するために使用するポリアルキレンオキシドモノアミンとは異なるポリアルキレンオキシドモノアミンを用いて行うことができる。このポリアルキレンオキシドモノアミンは好ましくは同一である。
【0021】
さらに、塩化に必要なポリアルキレンオキシドモノアミンのうち最大50%を、別のアミノ化合物で、好ましくは、たとえばN,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど、少なくとも1つの第三級モノアミン化合物で置き換えることができる。
【0022】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いるリビング・フリーラジカル重合によって生成された少なくとも1種のSMA樹脂を、最初は部分的に適切な溶媒に溶解させることによって得られる。そこに少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンを、SMA樹脂のアミノ成分単位対無水マレイン酸単位のモル比75%〜25%で添加し、(ブロック)共重合体の無水物構造の好ましくは少なくとも25mol%、特に好ましくは少なくとも50mol%が反応してしまうような期間、150℃以上の反応温度、好ましくは160℃以上で反応させる。この場合、第一級アミノ基は、(ブロック)共重合体の無水物構造とほぼ例外なく反応して、イミド構造をもたらす。最初に添加した溶媒は、好ましくは反応中蒸留によって取り除く。イミド形成時に水が形成されるため、(ブロック)共重合体のさらなる無水物構造が放出されてカルボン酸機能をもたらすことができる。反応温度が低下したら、必要に応じて反応混合物に追加の水を任意選択で添加する。遊離型カルボキシル基のさらなる塩化のためにさらなるポリアルキレンオキシドモノアミン、好ましくは、150℃以上における反応に既に使用したポリアルキレンオキシドモノアミンもしくはそれとは異なるポリアルキレンオキシドモノアミン、および/または任意選択で加えて上で述べたような低分子量第三級モノアミンを添加する前に、反応混合物を好ましくは100℃未満に冷却する。
【0023】
ポリアルキレンオキシドモノアミン成分は、好ましくは2回に分けて添加する。第1の割当分は、無水物基からイミド構造への上で述べた所望の転化率に沿って算出し、一方このポリアルキレンモノアミンの、および任意選択でやはり使用する第三級モノアミンの残りまたは第2の割当分は、反応生成物の遊離型カルボキシル基の少なくとも25mol%の、好ましくは50mol%の塩化の程度に従って決定する。
【0024】
ポリアルキレンオキシドモノアミン成分との反応中に(ブロック)共重合体用の溶媒を使用することによっても、(ブロック)共重合体の無水物基すべてが確実に、この反応の最初から概して同等に反応することができる。より均質な生成物が、このようにして得られる。
【0025】
塩化した反応生成物は、水を添加することによって希釈することができる。
【0026】
本発明によれば、くし形(ブロック)共重合体は、重合体を意味し、基本重合体または主鎖としてアミドおよびイミド結合を介して線状重合体側鎖とその共重合体またはブロック共重合体が実質的に共有結合していると取られる。
【0027】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、先行技術から公知の多くの用途向けの湿潤剤および分散剤として適している。したがって、これらくし形(ブロック)共重合体を、たとえば、コーティング材料、印刷インク、インクジェットプリンタ用などインクジェットプロセス用のインク、紙コーティング、革および織物染料、ペースト、顔料コンセントレート、セラミックス、化粧品の製造または加工において、好ましくは顔料および/または充填剤などの固形物が存在する場合はいつでも使用することができる。本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、たとえばポリ塩化ビニル類、飽和または不飽和ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリスチレン類、ポリアクリレート類、ポリアミド類、エポキシ樹脂、ポリエチレン類やポリプロピレン類などのポリオレフィン類など、合成、半合成または天然高分子に基づく鋳造(casting)および/または成形(moulding)組成物の製造または加工において使用することもできる。本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、たとえば、鋳造組成物、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、印刷回路板、工業用の、木材および家具用コーティング、車両用コーティング、船舶用塗料、防食塗料、缶およびコイル用コーティング、装飾用および建築用塗料の製造において使用することができ、従来の公知の結合剤および/または溶媒とを、顔料と任意選択で充填剤とを、本発明によるくし形(ブロック)共重合体および従来の補助剤とを任意選択で組み込むことが可能である。
【0028】
従来の結合剤の例は、ポリウレタン、硝酸セルロース、セルロースアセトブチレート、アルキド、メラミン、ポリエステル、塩化ゴム、エポキシおよびアクリレートに基づく樹脂である。
【0029】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、たとえば自動車車体向けのカソードまたはアノードのエレクトロ−浸漬コーティング(electro−dipcoating)など、水性コーティングの製造向けの湿潤剤および分散剤としても適している。分散剤としての使用のさらなる例は、下塗り(render)、ケイ酸塩塗料、エマルション塗料、水で希釈可能なアルキドに基づく水性コーティング組成物、アルキドエマルション、ハイブリッド系、2成分系、ポリウレタンおよびアクリレート分散液である。
【0030】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、固形物、好ましくは顔料コンセントレートのコンセントレートを製造するためにも特に適している。この目的を達成するために、それらくし形(ブロック)共重合体を最初に、有機溶媒、可塑剤および/または水などのキャリア媒体(carrier medium)に導入し、分散させようとする固形物を中で撹拌する。これらのコンセントレートは、結合剤および/または他の補助剤を追加で含むことができる。しかしながら、有利には、本発明によるくし形(ブロック)共重合体を使用して、安定な結合剤を含まない顔料コンセントレートを製造することも可能である。同様に、本発明によるくし形(ブロック)共重合体を使用して、顔料プレスケーキから流動性を有する(flowable)顔料コンセントレートを製造することも可能である。この場合、本発明によるくし形(ブロック)共重合体を、水をまだ含むことができるプレスケーキに導入し、得られたブレンドを分散させる。固形物のこのようなコンセントレート、好ましくは顔料コンセントレートをその後、たとえばアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂など様々な基質に組み込むことができる。溶媒なしで本発明によるくし形(ブロック)共重合体に直接分散している顔料が、顔料着色(pigmenting)熱可塑性および熱硬化性プラスチック調合物には特に適している。
【0031】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、「サーマルインクジェット」や「バブルジェット(登録商標)プロセス」などの「ノンインパクト」印刷プロセス用のインクの製造においても有利に使用することができる。これらのインクは、たとえば、水性インク調合物、溶液型(solvent−based)インク調合物、紫外線用途向けの溶媒を含まないまたは低溶媒インク、ならびに溶融インク(waxy ink)でよい。
【0032】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、メークアップ(make−up)、おしろい、口紅、髪染料、クリーム、マニキュアおよび日焼け止め製剤を製造するためなど、化粧品の製造においても使用することができる。これらの化粧品は、W/OまたはO/Wエマルション、溶液、ゲル、クリーム、ローション、スプレーなど、従来の調合物の形をとることができる。本発明によるくし形(ブロック)共重合体またはこれら共重合体の上記ブレンドは、これら化粧品を製造するために使用する分散液中の分散剤として、ここでは既に使用されていることがある。これらの分散液は、たとえば水、ヒマシ油、シリコーン油など従来の化粧品キャリア媒体、ならびにたとえば有機顔料および二酸化チタンや酸化鉄などの無機顔料などの固形物を含むことができる。
【0033】
本発明はまた、本発明によるくし形(ブロック)共重合体の湿潤剤および分散剤としての使用も提供する。これら湿潤剤および分散剤は、好ましくは上述の用途に使用される。
【0034】
別の用途は、基板上着色コーティングの製造であり、基板上に着色コーティングが塗布され、塗布された着色コーティングが加熱処理または硬化または架橋される。
【0035】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体を任意選択で、従来の先行技術の結合剤と共に、それら共重合体の用途において使用することができる。ポリオレフィン類における使用では、たとえば、本発明による少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体と共に、キャリア材料として適当な低分子量ポリオレフィンを使用することが有利となることがある。
【0036】
本発明による1つの使用は、とりわけ、粉状および/または繊維状粒子の形の分散性固形物の製造、特に分散性顔料またはプラスチック充填剤の製造も含み、本発明によるくし形(ブロック)共重合体でこれらの粒子を被覆することが可能である。有機または無機固形物のこのようなコーティングは、たとえば、欧州特許出願公開EP−A−0270126号に記載されているように、公知のやり方で塗布される。溶媒または乳化剤は、この場合取り除いても、またはブレンド中に残っていてもよく、ペーストが形成される。このようなペーストは、任意選択で結合剤を、またさらなる補助剤および添加剤を含むことができる標準的な商品である。
【0037】
具体的に顔料の場合、本発明によるくし形(ブロック)共重合体の添加による顔料表面の改質、すなわち、コーティングは、顔料の合成中または顔料の合成後に、すなわち、顔料懸濁液に、または顔料仕上げ時もしくは顔料仕上げ後にそれら共重合体を添加することによって進めることができる。
【0038】
このようにして前処理を施した顔料は、表面処理されていない顔料に対する取込み可能性(incorporability)の高まりによって、また粘度、凝集性および光沢挙動の向上によって、またより高い色強度によって区別される。
【0039】
本発明によるくし形(ブロック)共重合体は、モノ−、ジ−、トリ−およびポリアゾ顔料、オキサジン、ジオキサジン、チアジン顔料、ジケトピローロピロール、フタロシアニン、ウルトラマリンおよび他の金属錯体顔料、インジゴイド顔料、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キナクリドン、メチン顔料、アントラキノン、ピラントロン、ペリレンおよび他の多環式カルボニル顔料など、数々の顔料用の湿潤剤および分散剤として適切である。本発明に従って分散性である有機顔料のさらなる例は、モノグラフ:W.Herbst、K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、1997(出版社:Wiley−VCH、ISBN:3−527−28836−8)に見ることができる。本発明に従って分散性である無機顔料の例は、カーボンブラック、黒鉛、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、鍾乳石(lithophone)、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウムに基づく混合金属酸化物(たとえば、ニッケル/チタニウムイエロー、バナジウム酸ビスマス/モリブデン酸塩イエローまたはクロム/チタンイエロー)に基づく顔料である。さらなる例は、モノグラフ:G.Buxbaum「Industrial Inorganic Pigments」、1998(出版社:Wiley−VCH、ISBN:3−527−28878−3)に記載されている。無機顔料が、純鉄、酸化鉄および酸化クロムあるいは混合酸化物に基づく磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅または黄銅から作製される金属効果顔料、ならびに真珠光沢顔料、蛍光性および燐光性発光顔料であってもよい。
【0040】
金属または半金属(semimetal)の酸化物または水酸化物からなる一定の等級のカーボンブラックまたは粒子や、金属および/または半金属酸化物または水酸化物の混合からなる粒子など、ナノスケールの、粒径が100nm未満の有機または無機固形物を、本発明によるくし形(ブロック)共重合体またはこれら共重合体の上記ブレンドの助けを借りて分散させることができる。この目的に適している酸化物は、アルミニウム、シリコン、亜鉛、チタンの酸化物および/または酸化物/水酸化物であり、これら酸化物および/または酸化物/水酸化物は、このような極めて微細な固形物を製造するために使用することができる。これら酸化物もしくは水酸化物または酸化物/水酸化物粒子は、様々な方法、たとえば、イオン交換プロセス、プラズマプロセス、ゾル−ゲルプロセス、沈殿、粉砕(たとえば、研削による)または火炎(flame)加水分解等によって製造することができる。これらナノスケールの固形物は、無機コアと有機シェルで、またはその逆で構成される「ハイブリッド」粒子を含むこともできる。
【0041】
本発明に従って分散させることができる粉状または繊維状充填剤は、とりわけ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、珪藻土、ケイ質土、石英、シリカゲル、滑石、カオリン、雲母、パーライト、長石、スレート粉、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、方解石、ドロマイト、ガラスまたは炭素の粉状または繊維状粒子で構成される充填剤である。分散性顔料または充填剤のさらなる例を、欧州特許出願公開EP−A−0270126号にも見ることができる。たとえば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの難燃剤、ならびにたとえばシリカなどのマット剤を同様に、本発明によるくし形(ブロック)共重合体を用いて見事に分散させ安定させることができる。
【0042】
したがって本発明は、本発明による少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体および少なくとも1種の顔料と、1種の有機キャリア媒体および/または水と、任意選択で結合剤および従来の補助剤とを含むコーティング材料、ペーストおよび成形組成物も提供する。
【0043】
したがって本発明は、本発明による少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体で被覆された上記顔料も提供する。
【実施例】
【0044】
I スチレン/無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)の生成
1.1 重合体1:スチレン対MSA比が2:1である交互型SMA樹脂
メトキシプロピルアセテート27.3gと、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン4.2gと、スチレン3.3gとを、140℃まで加熱する。反応温度に達したら、メトキシプロピルアセテート21.7gに部分的に溶解させた無水マレイン酸14.4gとAMBN2.3gとを、100分以内に添加し、スチレン26.8gを85分以内に添加する。
【0045】
その後1時間の反応時間の後、重合体溶液を室温まで冷却する。
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの残留量:0.1%
:2775g/mol
【0046】
1.2 重合体2:ジブロック共重合体
メトキシプロピルアセテート27.3gと、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン4.2gとを、140℃まで加熱する。反応温度に達したら、メトキシプロピルアセテート21.7gに部分的に溶解させた無水マレイン酸14.4gとAMBN2.3gとを、100分以内に添加し、スチレン26.8gを85分以内に添加する。その後15分の反応時間の後、メトキシプロピルアセテート10gに部分的に溶解させたAMBN1gと、スチレン10gとを、100分以内に添加する。
【0047】
その後1時間の反応時間の後、重合体溶液を室温まで冷却する。
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの残留量:0.08%
:3156g/mol
【0048】
II くし形共重合体を得るためのSMA樹脂の反応
2.1 くし形共重合体1(比較例)
重合体1のメトキシプロピルアセテート溶液100gを、150gのJeffamine M 2070と160℃で4時間反応させ、メトキシプロピルアセテートを蒸留によって取り除く。
この混合物を、固形物含有量40重量%まで水で希釈する。
【0049】
2.1 くし形共重合体2
重合体1のメトキシプロピルアセテート溶液100gを、120gのJeffamine M 2070と160℃で4時間反応させ、メトキシプロピルアセテートを蒸留によって取り除く。
【0050】
続いて、反応物を室温まで冷却し、30gのJeffamine M 2070と混合する。
【0051】
最後のステップにおいて、この混合物を固形物含有量40重量%まで水で希釈する。
【0052】
Jeffamine M 2070:アミン末端EO/POポリエーテル、製造業者:Huntsman
【0053】
III 適用試験
3.1 水性顔料コンセントレート用調合物
【表1】

【0054】
調合物の成分を、Dispermat CVの助けを借りて40℃および10,000rpmで40分間分散させる。
【0055】
3.2 コーティング材料用調合物
【表2】

【0056】
コーティング材料を製造するために、これらの成分を10分間機械的に均質化し、塗布する。
【0057】
3.3 試験結果
顔料コンセントレートの粘度
3.1または3.2によるコーティング
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
光沢および曇り度(haze)は、Byk Gardner社製の曇り度−光沢測定装置の助けを借りて測定する。
【0060】
3.4 溶媒含有紫外線コーティング材料
3.4.1 組成
【表5】

【0061】
3.4.2 組成
【表6】

【0062】
顔料および分散剤(くし形共重合体)を続けて秤量し、反応性溶媒TPGDAに入れる。この混合物を、dispermatの助けを借りて800rpmおよび40℃で30分間分散させる。分散させたら、研削しようとする材料をアクリレート成分に添加し、2000rpmでさらに10分間均質化する。その後、このコーティング材料を塗布する。
【0063】
3.5.1 3.4.1による紫外線コーティング材料の試験結果
【表7】

【0064】
3.5.2 3.4.2による紫外線コーティング材料の試験結果
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
I 制御されたラジカル重合によって得られた、重合している任意選択で置換されたスチレン単位と無水マレイン酸単位とを含む少なくとも1種の(ブロック)共重合体
を、
II 第一級アミノ末端基を含む少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンと150℃以上の反応温度で反応させることによって、
かつ、該反応生成物の遊離型カルボキシル基の少なくとも25mol%を100℃より低い反応温度で、任意選択でHOの添加後に、その後塩化することによって得られるくし形(ブロック)共重合体。
【請求項2】
前記(ブロック)共重合体Iが、好ましくは連鎖移動化合物として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いたC−RAFT重合によって得られたことを特徴とする請求項1に記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項3】
前記(ブロック)共重合体Iが、前記任意選択で置換されたスチレン単位/無水マレイン酸単位の交代型、傾斜型またはブロック型構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項4】
前記(ブロック)共重合体Iの、任意選択で置換されたスチレン単位対無水マレイン酸単位のモル比が、1:1〜8:1、好ましくは1:1〜2:1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項5】
前記150℃以上の反応温度での反応中、第一級アミノ末端基を含む前記ポリアルキレンオキシドモノアミンの一部のみが反応することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項6】
第一級アミノ末端基を含む前記ポリアルキレンオキシドモノアミンの少なくとも50重量%が、150℃以上で反応することを特徴とする請求項5に記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項7】
第一級アミノ末端基を含む前記ポリアルキレンオキシドモノアミン成分が、エチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位で構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項8】
前記エチレンオキシド単位対前記プロピレンオキシド単位のモル比が5:95〜100:0、好ましくは30:70〜70:30であることを特徴とする請求項7に記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項9】
第一級アミノ末端基を含む前記ポリアルキレンオキシドモノアミンの総量のうち第1の部分が、前記150℃以上の反応温度での反応中に添加され、残部が、100℃未満に前記反応温度を下げた後、任意選択で第三級モノアミンの添加を伴って添加されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項10】
前記塩化が、さらなるアミノ成分の添加を伴って行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項11】
使用する前記さらなるアミノ成分が、第一級アミノ末端基を含む少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンであって、第一級アミノ末端基を含み前記反応に既に使用され、任意選択で第三級モノアミンと混合される前記ポリアルキレンオキシドモノアミンとは異なる少なくとも1種のポリアルキレンオキシドモノアミンであることを特徴とする請求項10に記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項12】
前記塩化のために水が添加されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のくし形(ブロック)共重合体に基づく湿潤剤および分散剤。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体の、湿潤剤および分散剤としての使用。
【請求項15】
固形物、好ましくは顔料および/または充填剤向けの請求項14に記載の使用。
【請求項16】
固形物のコンセントレート、好ましくは顔料コンセントレート、好ましくは顔料コンセントレートまたは顔料ペーストの製造および/または加工における請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
コーティング材料、印刷インク、インクジェットプロセス用のインク、紙コーティング、革および/または織物染料、セラミックス、化粧品の製造および/または加工における請求項14〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
合成、半合成または天然高分子に基づく鋳造および/または成形組成物の製造および/または加工における請求項14〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
従来の補助剤、好ましくは従来の結合剤も使用されることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
湿潤剤および分散剤として請求項1〜12のいずれかに従って得られる少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体と、少なくとも1種の固形物、好ましくは顔料と、任意選択で有機媒体または水性媒体と、任意選択で少なくとも1種の結合剤および/または任意選択でさらなる従来の補助剤、好ましくは少なくとも1種のさらなる従来の湿潤剤および分散剤とを含むコーティング材料、ペーストまたは成形組成物。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに従って得られる少なくとも1種のくし形(ブロック)共重合体によってその表面が改質された顔料。

【公表番号】特表2010−514862(P2010−514862A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543386(P2009−543386)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011328
【国際公開番号】WO2008/080579
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(596089399)ビック−ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【Fターム(参考)】