説明

じん性および耐熱性に優れた発泡体

【課題】均一な微細気泡構造を有し、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供する。
【解決手段】本発明の発泡体は、球状気泡を有する発泡体であって、該球状気泡の平均孔径が20μm未満であり、該発泡体の密度が0.15g/cm〜0.9g/cmであり、180°の折り曲げ試験でクラックが発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、じん性および耐熱性に優れた発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体は、吸水材、保水材、クッション材、断熱材、吸音材、分離膜、反射材、回路基板などの各種基板、印刷版などの保持部材、支持部材、研磨プロセス用の研磨パッドおよびそれを支持するための定盤、半導体や各種基板などを裏面から真空引きなどにより保持または搬送するために用いる支持台、などの様々な用途で幅広く利用されている。
【0003】
発泡体は、従来、湿式凝固法や乾式転写法、化学発泡剤を用いた化学的発泡法、熱膨張性プラスチックマイクロバルーンや、熱可塑性樹脂の水分散液を用いた物理的発泡法、熱可塑性樹脂の水分散液に空気を混合した機械的発泡法、などによって発泡層を成形することによって得られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかし、湿式凝固法で得られる発泡体は、多孔質体ではあるものの、孔径サイズが厚さ方向で不均一となっており、十分な機械的強度を発現できないという問題がある。また、湿式凝固させるためには長時間が必要であるという問題がある。
【0005】
乾式転写法で得られる複合シートや、熱可塑性樹脂の水分散液に空気を混合した機械的発泡法で得られる複合シートは、孔径サイズが厚さ方向にほぼ均一に分布している。しかし、気体により孔を形成させるため、孔径サイズの制御が困難であるために大きな径の孔が生じてしまう場合があり、十分な機械的強度を発現できないという問題がある。また、乾式転写法では、製造工程において有機溶剤などの環境負荷物質を使用する必要があり、環境配慮のために、樹脂中に含まれる環境負荷物質を最終的に加熱乾燥などによって除去しなければならないという問題があった。
【0006】
化学発泡剤を用いた化学的発泡法で得られる発泡体や、熱膨張性プラスチックマイクロバルーンで得られる発泡体は、その製造工程において高い温度制御性が要求されるため、必然的に価格の高い大きな専用設備が必要となるという問題がある。また、化学発泡剤を用いた化学的発泡法で得られる発泡体や、熱膨張性プラスチックマイクロバルーンで得られる発泡体は、それに含まれる発泡層の大きさが発泡処理前の3〜5倍の大きさになってしまい、孔の径も大きくなってしまうため、十分な機械的強度を発現できないという問題がある。
【0007】
熱可塑性樹脂の押出成形によって発泡体を得る場合、加熱保存において寸法変化が著しく、熱可塑性樹脂の溶融等によって気泡構造が潰れてしまい、十分な耐熱性を発現できないという問題がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
熱可塑性樹脂の水分散液を用いた物理的発泡法で得られる発泡体は、微多孔体ではあるものの、多孔質層の密度の制御範囲が0.5g/cm〜0.9g/cmという狭い範囲に限られてしまう。また、水分散液の塗布時のクリアランスとしては50μm〜600μm程度が適当であり、水分を揮発させることによって処理前よりも多孔質層の厚みが低下することから、多孔質層の厚みの制御範囲が狭くなってしまうという問題がある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
一方、W/O型エマルションは、特に、W/O型のHIPE(高不連続相エマルション)として知られ(例えば、特許文献4参照)、外部油相に重合性モノマーを含むW/O型HIPEを形成して重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが行われている。例えば、90%の水相成分を含み、且つ、油相成分中にスチレンモノマーを用いる、W/O型HIPEを調製した後に重合することにより、エマルションの油相および水相の幾何学的配置を検討することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、油相と水相とを親油性の乳化剤を用いて撹拌することによってW/O型HIPEを調製した後に重合を行い、該W/O型HIPEの前駆体の相関係によって決定される気泡形状を有する硬質の多孔質体が形成されることが報告されている。
【0010】
W/O型エマルションを重合させることによって形成される多孔質体の物性は、該W/O型エマルションを構成する成分の種類および該W/O型エマルションを調製する際の乳化条件によって左右される。
【0011】
例えば、少なくとも90重量部の水と、重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相とを含んでなる、W/O型HIPEから、吸収性の多孔性ポリマーを調製する方法が報告されている(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
少なくとも水相成分と、重合性モノマーと界面活性剤および重合触媒を含む油相成分とを含んでなる、W/O型HIPEに対して、重合を行った後に洗浄と脱水を繰返すことにより、約100mg/cc未満の乾燥密度を有する疎水性多孔質体を調製する方法が報告されている(例えば、特許文献6参照)。
【0013】
例えば、W/O型HIPEの調製からその重合までを連続して行う、多孔質架橋重合体の製造方法が報告されている(例えば、特許文献7参照)。
【0014】
例えば、W/O型HIPEを光重合してフォームを製造する方法が報告されている(例えば、特許文献8参照)。
【0015】
上記のように、W/O型エマルションから多孔質体を製造することはいくつか知られている。しかし、このような多孔質体については、いくつかの問題がある。
【0016】
例えば、連続油相成分として(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーとソルビタンモノオレイン酸などの親油性乳化剤からなるW/O型HIPE、または、連続油相成分として(メタ)アクリル系モノマーと芳香族ウレタンアクリレートとソルビタンモノオレイン酸などの親油性乳化剤からなるW/O型HIPEを用い、光重合して発泡体を製造する方法が報告されている。しかし、架橋型(メタ)アクリル系重合体からなる発泡体は、高い気泡率を有する発泡体として提供し得る点では優れるものの、気泡構造の均一性が十分ではないという問題や、該発泡体の180°折り曲げ試験および80%以上の高圧縮試験によって該発泡体に亀裂(クラック)が発生するなど、じん性に劣るという問題がある(例えば、特許文献8参照)。
【0017】
また、W/O型エマルションの連続油相成分組成(例えば、モノマー/架橋剤含量、乳化剤量、乳化剤種類の選択)、乳化時の温度、撹拌条件などがごく僅かに変化するだけでも、W/O型エマルションのエマルション状態が壊れてしまい、それらの少なくとも一部が水相または油相へと明確に分離してしまう。このため、目的とする発泡体を得るために好適なW/O型エマルションの調製は、容易に行えるものではない。
【0018】
すなわち、従来、均一な微細気泡構造を有し、じん性および耐熱性に優れた発泡体を提供することは極めて困難なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−9952号公報
【特許文献2】特開2001−38837号公報
【特許文献3】国際公開パンフレット第2002/101141号明細書
【特許文献4】米国特許第3565817号明細書
【特許文献5】特公平3−66323号公報
【特許文献6】特表2003−514052号公報
【特許文献7】特表2001−163904号公報
【特許文献8】特表2003−510390号公報
【非特許文献1】「中および高不連続相比の水/ポリマーエマルション」(LissantおよびMahan、Journal of Colloid and Interfacecience,Vol.42,No.1,1973年1月、201〜208頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、均一な微細気泡構造を有し、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の発泡体は、
球状気泡を有する発泡体であって、
該球状気泡の平均孔径が20μm未満であり、
該発泡体の密度が0.15g/cm〜0.9g/cmであり、
180°の折り曲げ試験でクラックが発生しない。
【0022】
好ましい実施形態においては、本発明の発泡体は、125℃で22時間保存したときの寸法変化率が±5%未満である。
【0023】
好ましい実施形態においては、本発明の発泡体は、125℃で14日間保存したときの引張強度変化率が±20%未満である。
【0024】
好ましい実施形態においては、本発明の発泡体は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。
【0025】
好ましい実施形態においては、上記貫通孔の平均孔径が5μm以下である。
【0026】
好ましい実施形態においては、本発明の発泡体は、シート状の発泡体シートである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、均一な微細気泡構造を有し、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することができる。
【0028】
本発明の発泡体は、精密に制御された三次元網目構造を有するので、優れた耐熱性や優れた機械的物性を発現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図2】実施例2で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図3】実施例3で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図4】実施例4で得られた発泡体を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図である。
【図5】実施例5で得られた発泡体を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図である。
【図6】比較例1で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図7】比較例2で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図8】比較例3で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図9】比較例4で得られた発泡体の断面SEM写真の写真図である。
【図10】本発明の発泡体の断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
≪≪A.発泡体≫≫
本発明の発泡体は、球状気泡を有する発泡体である。
【0031】
なお、本明細書において「球状気泡」とは、厳密な真球状の気泡でなくても良く、例えば、部分的にひずみのある略球状の気泡や、大きなひずみを有する空間からなる気泡であっても良い。
【0032】
本発明の発泡体が有する球状気泡の平均孔径は、20μm未満であり、好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。本発明の発泡体が有する球状気泡の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは1μmである。本発明の発泡体が有する球状気泡の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体の球状気泡の平均孔径を精密に小さく制御でき、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することができる。
【0033】
本発明の発泡体の密度は、0.15g/cm〜0.9g/cmであり、好ましくは0.15g/cm〜0.7g/cmであり、より好ましくは0.15g/cm〜0.5g/cmである。本発明の発泡体の密度が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体の密度の範囲を広く制御した上で、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することができる。
【0034】
本発明の発泡体は、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有していても良い。この連続気泡構造は、ほとんどまたは全ての隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造であっても良いし、該貫通孔の数が比較的少ない半独立半連続気泡構造であっても良い。
【0035】
隣接する球状気泡間に有する貫通孔は、発泡体の物性に影響する。例えば、貫通孔の平均孔径が小さいほど、発泡体の強度が高くなる傾向がある。図10に、本発明の複合シートの発泡層の断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図を示す。
【0036】
隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することができる。
【0037】
本発明の発泡体は、好ましくは、表面開口部を有する。
【0038】
本発明の発泡体が表面開口部を有する場合、該表面開口部の平均孔径は、上限値として、好ましくは5μmであり、より好ましくは4μmであり、さらに好ましくは3μmである。表面開口部の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。表面開口部の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、じん性および耐熱性に優れた、新規な発泡体を提供することができる。
【0039】
本発明の発泡体は、180°の折り曲げ試験でクラックが発生しない。このことは、本発明の発泡体が、非常に優れたじん性を有することを示している。
【0040】
本発明の発泡体は、125℃で22時間保存したときの寸法変化率が、好ましくは±5%未満であり、より好ましくは±3%以下であり、さらに好ましくは±1%以下である。本発明の発泡体において125℃で22時間保存したときの寸法変化率が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体は非常に優れた耐熱性を有し得る。
【0041】
本発明の発泡体は、125℃で14日間保存したときの引張強度変化率が、好ましくは±20%未満であり、より好ましくは±18%以下である。本発明の発泡体において125℃で14日間保存したときの引張強度変化率が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体は非常に優れた耐熱性を有し得る。
【0042】
本発明の発泡体は、引張強度が、好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは0.15MPa以上であり、さらに好ましくは0.2MPa以上である。本発明の発泡体において引張強度が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体は非常に優れた機械的物性を有し得る。
【0043】
本発明の発泡体は、50%圧縮荷重が、好ましくは3000kPa以下であり、より好ましくは1000kPa以下であり、さらに好ましくは200kPa以下である。本発明の発泡体において50%圧縮荷重が上記範囲内に収まることにより、本発明の発泡体は非常に優れた柔軟性を有し得る。
【0044】
本発明の発泡体の材料は、球状気泡を有する発泡体であって、該球状気泡の平均孔径が20μm未満であり、該発泡体の密度が0.15g/cm〜0.9g/cmであり、180°の折り曲げ試験でクラックが発生しないものであれば、任意の適切な材料の発泡体を採用し得る。
【0045】
本発明の発泡体は、任意の適切な形状を採り得る。実用的には、好ましくは、本発明の発泡体はシート状の発泡体シートである。本発明の発泡体が発泡体シートである場合、その厚み、長辺および短辺の長さは、任意の適切な値を採り得る。
【0046】
≪≪B.発泡体の製造方法≫≫
本発明の発泡体は、任意の適切な方法で製造し得る。本発明の発泡体は、好ましくは、W/O型エマルションを賦形および重合することによって製造し得る。
【0047】
本発明の発泡体の製造方法としては、例えば、連続的に連続油相成分と水相成分を乳化機に供給して本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、続いて、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「連続法」が挙げられる。本発明の発泡体の製造方法としては、また、例えば、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することで本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「バッチ法」が挙げられる。
【0048】
W/O型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0049】
本発明の発泡体は、より具体的には、好ましくは、
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製する工程(I)と、
得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と、
賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)と、
得られた含水重合体を脱水する工程(IV)と、
を含む製造方法によって製造することができる。ここで、得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)とは少なくとも一部を同時に行っても良い。
【0050】
≪B−1.W/O型エマルションを調製する工程(I)≫
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションは、連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションである。W/O型エマルションは、より具体的に説明すると、連続油相成分中に水相成分が分散したものである。
【0051】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、W/O型エマルションを形成し得る範囲で任意の適切な比率を採り得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要な因子となり得る。具体的には、本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔質ポリマー材料の密度、気泡サイズ、気泡構造、および多孔構造を形成する壁体の寸法などを決定する上で重要な因子となり得る。
【0052】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率は、下限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%であり、さらに好ましくは50重量%であり、特に好ましくは55重量%であり、上限値として、好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%であり、特に好ましくは80重量%である。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0053】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;タルク;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの充填剤;顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。
【0054】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、例えば、連続油相成分と水相成分を連続的に乳化機に供給することでW/O型エマルションを形成する「連続法」や、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することでW/O型エマルションを形成する「バッチ法」などが挙げられる。
【0055】
本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する際、エマルション状態を得るための剪断手段としては、例えば、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、ミクロ流動化装置などを用いた高剪断条件の適用が挙げられる。また、エマルション状態を得るための別の剪断手段としては、例えば、動翼ミキサーまたはピンミキサーを使用した振盪、電磁撹拌棒などを用いた低剪断条件の適用による連続および分散相の穏やかな混合が挙げられる。
【0056】
「連続法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、ピンミキサーなどが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または、混合方法でW/O型エマルション中に水相成分をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。
【0057】
「バッチ法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、手動での混合や振盪、被動動翼ミキサー、3枚プロペラ混合羽根などが挙げられる。
【0058】
連続油相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。連続油相成分を調製する方法としては、代表的には、例えば、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む混合シロップを調製し、続いて、該混合シロップに、重合開始剤、架橋剤、その他の任意の適切な成分を配合し、連続油相成分を調製することが好ましい。
【0059】
親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、代表的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0060】
<B−1−1.水相成分>
水相成分としては、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる水性流体を採用し得る。取り扱いやすさや低コストの観点から、好ましくは、イオン交換水などの水である。
【0061】
水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、水溶性の塩などが挙げられる。水溶性の塩は、W/O型エマルションをより安定化させるために有効な添加剤となり得る。このような水溶性の塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。水相成分に含まれ得る添加剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0062】
<B−1−2.連続油相成分>
連続油相成分は、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む。連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。
【0063】
親水性ポリウレタン系重合体は、該親水性ポリウレタン系重合体を構成するポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール単位中のポリオキシエチレン比率、または、配合する水相成分量にもよるが、例えば、好ましくは、エチレン性不飽和モノマー70〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、エチレン性不飽和モノマー75〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜25重量部の範囲である。また、例えば、水相成分100重量部に対し、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜25重量部の範囲である。親水性ポリウレタン系重合体の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0064】
(B−1−2−1.親水性ポリウレタン系重合体)
親水性ポリウレタン系重合体は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。
【0065】
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合は、上記のように5重量%〜25重量%であり、下限値として、好ましくは10重量%であり、より好ましくは15重量%であり、上限値として、好ましくは25重量%であり、より好ましくは20重量%である。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンは、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させる効果を発現するものである。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が5重量%未満の場合、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させることが困難になるおそれがある。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が25重量%を超える場合、HIPE条件に近づくにつれてW/O型エマルションからO/W型(水中油型)エマルションに転相するおそれがある。
【0066】
従来の親水性ポリウレタン系重合体は、ジイソシアネート化合物と疎水性長鎖ジオール、ポリオキシエチレングリコールならびにその誘導体、低分子活性水素化合物(鎖伸長剤)を反応させることによって得られるが、このような方法で得られる親水性ポリウレタン系重合体中に含まれるポリオキシエチレン基の数は不均一であるため、このような親水性ポリウレタン系重合体を含むW/O型エマルションは乳化安定性が低下するおそれがある。一方、本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションの連続油相成分に含まれる親水性ポリウレタン系重合体は、上記のような特徴的な構造を有することにより、W/O型エマルションの連続油相成分に含ませた場合に、乳化剤等を積極的に添加せずとも、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を発現することができる。
【0067】
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この場合、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物との比率は、NCO/OH(当量比)で、下限値として、好ましくは1であり、より好ましくは1.2であり、さらに好ましくは1.4であり、特に好ましくは1.6であり、上限値として、好ましくは3であり、より好ましくは2.5であり、さらに好ましくは2である。NCO/OH(当量比)が1未満の場合は、親水性ポリウレタン系重合体を製造する際にゲル化物が生成しやすくなるおそれがある。NCO/OH(当量比)が3を超える場合は、残存ジイソシアネート化合物が多くなってしまい、本発明の発泡体を得るために用い得るW/O型エマルションが不安定になるおそれがある。
【0068】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ADEKA株式会社製のポリエーテルポリオール(アデカ(登録商標)プルロニックL−31、L−61、L−71、L−101、L−121、L−42、L−62、L−72、L−122、25R−1、25R−2、17R−2)や、日本油脂株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プロノン(登録商標)052、102、202)などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0069】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体や三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。ジイソシアネートの三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。ジイソシアネート化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0070】
ジイソシアネート化合物は、ポリオールとのウレタン反応性などの観点から、その種類や組み合わせ等を適宜選択すれば良い。ポリオールとの速やかなウレタン反応性や水との反応の抑制などの観点からは、脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0071】
親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは5000であり、より好ましくは7000であり、さらに好ましくは8000であり、特に好ましくは10000であり、上限値として、好ましくは50000であり、より好ましくは40000であり、さらに好ましくは30000であり、特に好ましくは20000である。
【0072】
親水性ポリウレタン系重合体は、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有していても良い。親水性ポリウレタン系重合体の末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有することにより、本発明の効果がより一層発現され得る。
【0073】
(B−1−2−2.エチレン性不飽和モノマー)
エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用し得る。エチレン性不飽和モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0074】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは80重量%であり、より好ましくは85重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基も含む概念)を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
【0076】
炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0077】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは0重量%であり、より好ましくは2重量%であり、上限値として、好ましくは20重量%であり、より好ましくは15重量%である。極性モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0078】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0079】
(B−1−2−3.重合開始剤)
連続油相成分には、好ましくは、重合開始剤が含まれる。
【0080】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0081】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0082】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);などを挙げることができる。
【0083】
重合開始剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0084】
重合開始剤の含有割合は、連続油相成分全体に対し、下限値として、好ましくは0.05重量%であり、より好ましくは0.1重量%であり、上限値として、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる多孔質材料中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して5.0重量%を超える場合には、得られる多孔質材料の機械的物性が低下するおそれがある。
【0085】
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度や照射時間、モノマーおよび溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。そして、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換して、または、減圧処理によって脱気しておくことが好ましい。
【0086】
(B−1−2−4.架橋剤)
連続油相成分には、好ましくは、架橋剤が含まれる。
【0087】
架橋剤は、典型的には、ポリマー鎖同士を連結して、より三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる多孔質材料に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、多孔質材料の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。
【0088】
本発明の発泡体を製造する上では、好ましくは、架橋剤として、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類の架橋剤を用いる。
【0089】
本発明の発泡体を製造する上では、より好ましくは、架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する。ここで、多官能(メタ)アクリレートとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、多官能(メタ)アクリルアミドとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリルアミドである。
【0090】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。
【0091】
多官能(メタ)アクリルアミドとしては、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
【0092】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサン−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
【0093】
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
【0094】
重合反応性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴマージ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートである。
【0095】
重合反応性オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上である。重合反応性オリゴマーの重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは10000以下である。
【0096】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは30重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは80重量%である。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して30重量%未満の場合、得られる発泡体の凝集力が低下してしまうおそれがあり、じん性と柔軟性の両立が困難になるおそれがある。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して100重量%を超える場合、W/O型エマルションは乳化安定性が低下してしまい、所望の発泡体が得られないおそれがある。
【0097】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは1重量%であり、より好ましくは5重量%であり、上限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは20重量%である。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して1重量%未満の場合、耐熱性が低下してしまい、含水重合体を脱水する工程(IV)において収縮によって気泡構造が潰れてしまうおそれがある。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して30重量%を超える場合、得られる発泡体のじん性が低下してしまい、脆性を示してしまうおそれがある。
【0098】
架橋剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0099】
(B−1−2−5.連続油相成分中のその他の成分)
連続油相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれ得る。このようなその他の成分としては、代表的には、好ましくは、触媒、酸化防止剤、有機溶媒などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0100】
触媒としては、例えば、ウレタン反応触媒が挙げられる。ウレタン反応触媒としては、任意の適切な触媒を採用し得る。具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウリレートが挙げられる。
【0101】
触媒の含有割合は、目的とする触媒反応に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0102】
触媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0103】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0104】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0105】
酸化防止剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0106】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。
【0107】
有機溶媒の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0108】
有機溶媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0109】
≪B−2.W/O型エマルションを賦形する工程(II)≫
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法としては、任意の適切な賦形方法を採用し得る。例えば、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法が挙げられる。
【0110】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法を採用する場合、塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いる方法が挙げられる。
【0111】
≪B−3.賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)≫
工程(III)において、賦形されたW/O型エマルションを重合する方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法や、活性エネルギー線の照射によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ活性エネルギー線の照射によって重合する方法が挙げられる。
【0112】
加熱によって重合する場合、重合温度(加熱温度)は、下限値として、好ましくは23℃であり、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは70℃であり、特に好ましくは80℃であり、最も好ましくは90℃であり、上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは110℃である。重合温度が23℃未満の場合は、重合に長時間を要し、工業的な生産性が低下するおそれがある。重合温度が150℃を越える場合は、得られる発泡体の孔径が不均一となるおそれや、発泡体の強度が低下するおそれがある。なお、重合温度は、一定である必要はなく、例えば、重合中に2段階や多段階で変動させてもよい。
【0113】
活性エネルギー線の照射によって重合する場合、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源が入手しやすい。
【0114】
活性エネルギー線の波長は、下限値として、好ましくは200nmであり、より好ましくは300nmであり、上限値として、好ましくは800nmであり、より好ましくは450nmである。
【0115】
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0116】
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003-13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより重合反応の効率を精密に調節することができる。
【0117】
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
【0118】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面にW/O型エマルションを塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。
【0119】
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが必要であり、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0120】
≪B−4.得られた含水重合体を脱水する工程(IV)≫
工程(IV)では、得られた含水重合体を脱水する。工程(III)で得られた含水重合体中には水相成分が分散状態で存在する。この水相成分を脱水により除去して乾燥することにより、本発明の発泡体が得られる。
【0121】
工程(IV)における脱水方法としては、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせ、などが挙げられる。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、常温とは23℃を意味する。
【0123】
(分子量測定)
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0124】
(エマルションの静置保存安定性)
調製したW/O型エマルションを容量50mlの容器に約30g秤量し、調製直後からの遊離水の発生状況を観察し、常温下での静置保存安定性を評価した。
○:24時間後も遊離水なし
△:1時間までにわずかに遊離水発生
×:1時間までに遊離水発生
【0125】
(平均孔径の測定)
作製した発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を低真空走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で800倍〜5000倍にて撮影した。得られた画像を用いて任意範囲の球状気泡、貫通孔および表面開口部について大きいものから約30個迄の孔の長軸長さを測定し、その測定値の平均値を平均孔径とした。
【0126】
(孔径の分散度)
作製した発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を低真空走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で800倍〜5000倍にて撮影した。得られた画像を用いて任意範囲の球状気泡、貫通孔および表面開口部について大きいものから約30個迄の孔の長軸長さを測定し、その測定値の平均値を平均孔径とした。球状気泡、貫通孔および表面開口部のそれぞれの孔径の分散度は、求めた平均孔径の値を用いて式1で算出した。
分散度=((データ−平均値)の2乗)の総和÷個数 ・・・・式1
【0127】
(孔径の標準偏差)
作製した発泡体シートをミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を低真空走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で800倍〜5000倍にて撮影した。得られた画像を用いて任意範囲の球状気泡、貫通孔および表面開口部について大きいものから約30個迄の孔の長軸長さを測定し、その測定値の平均値を平均孔径とした。球状気泡、貫通孔および表面開口部のそれぞれの孔径の標準偏差は、平均孔径の値より算出した分散度を用いて式2で算出した。
標準偏差=(分散度)の平方根 ・・・・式2
【0128】
(発泡体の密度の測定)
作製した発泡体を100mm×100mmの大きさに5枚切りだして試験片とし、重量を体積で除して見掛け密度を求めた。得られた見掛け密度の平均値を発泡体の密度とした。
【0129】
(50%圧縮荷重の測定)
作製した発泡体の50%圧縮荷重を、JIS−K−6767の圧縮荷重試験に準拠して測定した。試験片を圧縮速度10mm/分の条件で50%の圧縮状態としたときの値を50%圧縮荷重の値とした。
【0130】
(引張強度の測定)
作製した発泡体の引張強度を、JIS−K−7113に準拠して、引張速度=50mm/分で測定した。
【0131】
(引張強度変化率の測定)
作製した発泡体を、125℃のオーブンに14日間保存した後に、JIS−K−7113に準拠して、引張速度=50mm/分で引張強度を測定し、該加熱保存処理の前後における引張強度の変化率を求めた。
【0132】
(加熱寸法変化率の測定)
作製した発泡体の加熱寸法変化を、JIS−K−6767の高温時の寸法安定性評価に準拠して測定した。すなわち、作製した発泡体を100mm×100mmの大きさに切りだして試験片とし、125℃のオーブンに22時間保存した後に、JIS−K−6767の高温時の寸法安定性評価に準拠して、該加熱保存処理の前後における寸法の変化率を求めた。
【0133】
(180°の折り曲げ試験)
作製した発泡体を縦方向(MD:Machine Direction)または横方向(TD:Transverse Direction)に対して100mm×100mmに切断し、測定用サンプルとした。測定用サンプルの端部から約50mmを折り曲げ点とし、長尺方向に180°曲げて端部を重ねた後、重ね合わせた端部側から折り曲げ点側に向かって1kgローラーで一往復した後の、折り曲げ点のクラックの発生状態を目視で確認した。サンプルはn=3で測定した。
【0134】
〔製造例1〕:混合シロップ1の調製
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)からなるモノマー溶液173.2重量部と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−62(分子量2500、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)100重量部と、ウレタン反応触媒としてジブチル錫ジラウレート(キシダ化学(株)製、以下「DBTL」と略す)0.014重量部とを投入し、攪拌しながら、水素化キシリレンジイソシアネート(武田薬品(株)製、タケネート600、以下「HXDI」と略す)12.4重量部を滴下し、65℃で4時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.6であった。その後、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)1.5重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成社製、以下、「AA」と略す)12重量部を加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1とした。
【0135】
〔製造例2〕:混合シロップ2の調製
製造例1におけるシロップ1の調製において、2EHA中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとDBTLを投入し、攪拌しながら、HXDIを滴下し、65℃で4時間反応させた後、メタノールの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート(キシダ化学(株)製、以下「HEA」と略す)5.6重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを48重量部、極性モノマーとしてAAを12重量部加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ2とした。
【0136】
〔製造例3〕:混合モノマー1の調製
モノオレイン酸ソルビタン(花王社製、商品名「レオドールSP−O10V」)を20重量部、2EHAを72重量部、AAを8重量部、均一になるまで十分に混合撹拌し、混合モノマー1とした。
【0137】
〔実施例1〕
製造例1で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「NKエステルA−HD−N」)(分子量226)10重量部、反応性オリゴマーとして、ポリテトラメチレングリコール(以下、「PTMG」と略す)とイソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)から合成されるポリウレタンの両末端がHEAで処理された、両末端にエチレン性不飽和基を有するウレタンアクリレート(以下、「UA」と略す)(分子量3720)56重量部、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名「ルシリンTPO」)0.5重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」)1.0重量部を均一混合し、連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。一方、上記油相100重量部に対して水相成分(以下、「水相」と称する)としてイオン交換水300重量部を常温下、上記油相を仕込んだ乳化機である攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
得られたW/O型エマルションを常温で1時間静置保存した後、光照射後の厚さが1mmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ1mmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて20分間に亘って加熱することによって、厚さ約1mmの発泡体(1)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図1に示した。
【0138】
〔実施例2〕
実施例1において、製造例1で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに、製造例2で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ2を用いた以外は、実施例1と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
次に、実施例1と同様に、厚さ約1mmの発泡体(2)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図2に示した。
【0139】
〔実施例3〕
実施例2において、水相としてイオン交換水122重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例2と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は55/45であった。
次に、実施例1と同様に、厚さ約1mmの発泡体(3)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図3に示した。
【0140】
〔実施例4〕
実施例2において、水相としてイオン交換水567重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例2と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。水相と油相の重量比は85/15であった。
次に、実施例1と同様に、厚さ約1mmの発泡体(4)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた発泡体を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図を図4に示した。
【0141】
〔実施例5〕
実施例2において、ウレタンアクリレートの代わりに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジアクリレート(日立化成工業社製、商品名「ファンクリルFA−P321A」)(分子量898)を用いた以外は、実施例2と同様に行い、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
次に、実施例1と同様に、厚さ約1mmの発泡体(5)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた発泡体を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図を図5に示した。
【0142】
〔比較例1〕
実施例1において、製造例1で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の代わりに、製造例3で得られた混合モノマー1を用いた以外は、実施例1と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。なお、乳化工程中に遊離水の発生を確認した。また、水相と油相の重量比は75/25であった。
次に、得られたW/O型エマルションについて、成形する直前に、目視で確認できるエマルション表面の遊離水を除去した以外は、実施例1と同様に行い、厚さ約700μmの発泡体(C1)を得た。
結果を表2に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図6に示した。
【0143】
〔比較例2〕
比較例1において、ウレタンアクリレートの代わりに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジアクリレート(日立化成工業社製、商品名「ファンクリルFA−P321A」)(分子量898)を用いた以外は、比較例1と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。エマルション調製から30分後に遊離水の発生を確認した。
次に、得られたW/O型エマルションについて、成形する直前に、目視で確認できるエマルション表面の遊離水を除去した以外は、実施例1と同様に行い、厚さ約1mmの発泡体(C2)を得た。
結果を表2に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図7に示した。
【0144】
〔比較例3〕
実施例2において、NKエステルA−HD−Nを使用せず、且つ、反応性オリゴマーとしてのUAを20重量部用いた以外は、実施例2と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
次に、実施例1と同様に行い、厚さ約1mmの高含水架橋重合体を得た後、130℃にて20分間に亘って加熱することによって、発泡体全体が収縮し、気泡構造が部分的に潰れた厚さ約300μmの発泡体(C3)を得た。
結果を表2に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図8に示した。
【0145】
〔比較例4〕
実施例2において、NKエステルA−HD−Nを40重量部用い、且つ、反応性オリゴマーとしてのUAを用いなかった以外は、実施例2と同様に行い、W/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
次に、実施例1と同様に、厚さ約1mmの発泡体(C4)を得た。
結果を表2に示した。
また、得られた発泡体の断面SEM写真の写真図を図9に示した。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の発泡体は、クッション材、絶縁、断熱材、防音材、防塵材、濾過材、反射材などをはじめとする無数の用途に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状気泡を有する発泡体であって、
該球状気泡の平均孔径が20μm未満であり、
該発泡体の密度が0.15g/cm〜0.9g/cmであり、
180°の折り曲げ試験でクラックが発生しない、
発泡体。
【請求項2】
125℃で14日間保存したときの寸法変化率が±5%未満である、請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
125℃で14日間保存したときの引張強度変化率が±20%未満である、請求項1または2に記載の発泡体。
【請求項4】
隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する、請求項1から3までのいずれかに記載の発泡体。
【請求項5】
前記貫通孔の平均孔径が5μm以下である、請求項4に記載の発泡体。
【請求項6】
シート状の発泡体シートである、請求項1から5までのいずれかに記載の発泡体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−51985(P2012−51985A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194124(P2010−194124)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】